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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】光受容感度の抑制又は低減剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/02 20060101AFI20221213BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20221213BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20221213BHJP
   A23L 33/13 20160101ALI20221213BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20221213BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20221213BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20221213BHJP
   C12N 15/52 20060101ALN20221213BHJP
   C12N 9/00 20060101ALN20221213BHJP
   C12N 9/99 20060101ALN20221213BHJP
   A61P 25/18 20060101ALN20221213BHJP
   A61P 25/20 20060101ALN20221213BHJP
   A61P 25/06 20060101ALN20221213BHJP
   A61P 25/08 20060101ALN20221213BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
A61K38/02
A61P27/02
A61P43/00 111
A61K9/08
A61K39/395 D
A61K31/713
A61K31/7105
A61K48/00
A61K31/519
A23L33/18
A23L33/13
C12Q1/02
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
C12N15/52 Z
C12N9/00
C12N9/99
A61P25/18
A61P25/20
A61P25/06
A61P25/08
A61K45/00 ZNA
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019506326
(86)(22)【出願日】2018-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2018010660
(87)【国際公開番号】W WO2018169090
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】P 2017053811
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017248490
(32)【優先日】2017-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】古川 貴久
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0268705(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0115619(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0235733(US,A1)
【文献】特表2002-500180(JP,A)
【文献】Brain Research Bulletin,2008年,Vol.76,pp.412-423
【文献】Molecular Vision,2017年03月,Vol.23,pp.171-178
【文献】JEONG JOO-WON et al.,Regulation and Destabilization of HIF-1α by ARD1-Mediated Acetylation,Cell,2002年11月27日,vol.111,pp.709-720
【文献】OBIN MARTIN S. et al.,Ubiquitinylation and Ubiquitin-dependent Proteolysis in Vertebrate Photoreceptors (Rod Outer Segments),The Journal of Biological Chemistry,1996年06月14日,vol.271, No.24,pp.14473-14484
【文献】KIGOSHI YU et al.,Journal of Biological Chemistry,2011年09月23日,vol.286, no.38,pp.33613-33621
【文献】FUJIYAMA-NAKAMURA Sally et al.,BTB protein, dKLHL18/CG3571, serves as an adaptor subunit for a dCul3 ubiquitin ligase complex,Genes to Cells,2009年,vol.14,pp.965-973,DOI:10.1111/j.1365-2443.2009.01323.x
【文献】遠藤 智之 他,網膜色素変性症原因遺伝子産物KLHL7の標的分子の探索,つくば生物ジャーナル,2014年,vol.13, no.1,p.85
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P 25/
A61P 27/
A23L 33/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Klhl18を阻害又は抑制する物質を含有する、網膜の光受容感度の抑制又は低減剤であって、
Klhl18を阻害又は抑制する物質が、Klhl18の発現及び/若しくは活性を阻害若しくは抑制する物質、又はKlhl18複合体を構成するタンパク質の活性を阻害する物質であり、
Klhl18のC末端断片、抗Klhl18抗体及び抗Unc119抗体から選択されるKlhl18とUnc119との結合を阻害する物質、
Klhl18遺伝子に対するsiRNA、shRNA、dsRNA、microRNA、アンチセンスポリヌクレオチド及びアプタマーから選択される核酸、
Unc119発現ベクター、
MG-132、ボルテゾミブ、ジスルフィラム、サリノスポラミドA、カーフィルゾミブ、ラクタシスチン、TMC-95、ペプチドアルデヒド、ケトアルデヒド、ペプチドホウ酸、及びそれらの薬学的に許容される塩から選択されるプロテアソーム阻害剤、又は
MLN4924およびDI-591から選択されるKlhl18複合体を構成するタンパク質の活性を阻害する物質である、剤。
【請求項2】
網膜を保護、網膜の変性を抑制、網膜の老化を抑制及び/又は感覚過敏を抑制する、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
光受容に関連する症状を改善又は予防する、請求項1又は2に記載の剤。
【請求項4】
光受容に関連する症状が、加齢黄斑変性、網膜色素変性症、レーベル黒内障、スタルガルト病及び錐体桿体ジストロフィーから選択された少なくとも一種である、請求項3に記載の剤。
【請求項5】
Klhl18が配列番号3又は12に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である請求項1~4のいずれかに記載の剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の剤を含む、光受容に関連する症状の改善又は予防用医薬組成物。
【請求項7】
注射用又は点眼用である請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載の剤を含む、光受容に関連する症状の改善又は予防用食品組成物。
【請求項9】
Klhl18の発現及び/若しくは活性を誘導又は促進する物質を含有する、網膜の光受容感度を増強又は維持するための剤であって、Klhl18の発現及び/若しくは活性を誘導又は促進する物質が、Klhl18発現ベクターである、剤。
【請求項10】
Klhl18をコードする遺伝子及びUnc119をコードする遺伝子を導入した細胞に被験物質を添加し、該細胞におけるUnc119のユビキチン量が、被験物質を添加しなかった細胞におけるUnc119のユビキチン量と比較して減少する場合に、前記被験物質は光受容に関連する症状に対して改善作用又は予防作用を有すると判定する、光受容に関連する症状を改善又は予防する物質のスクリーニング方法。
【請求項11】
Klhl18をコードする遺伝子及びUnc119をコードする遺伝子を導入した細胞に被験物質を添加し、該細胞におけるUnc119の発現量が、被験物質を添加しなかった細胞におけるUnc119の発現量と比較して増加する場合に、前記被験物質は光受容に関連する症状に対して改善作用又は予防作用を有すると判定する、光受容に関連する症状を改善又は予防する物質のスクリーニング方法。
【請求項12】
Klhl18とUnc119を含む溶液に被験物質を添加し、Klhl18とUnc119との相互作用が、被験物質を添加しなかった場合の相互作用と比較して減少する場合に、前記被験物質は光受容に関連する症状に対して改善作用又は予防作用を有すると判定する、光受容に関連する症状を改善又は予防する物質のスクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユビキチン化を阻害又は抑制する物質を含有する、光受容感度の抑制又は低減剤に関する。
【背景技術】
【0002】
我々は外界の情報の約9割を視覚で取り入れている。視覚の障害はQOL(Quality of Life)を著しく低下させ、日常生活、移動、コミュニケーション等の社会活動を大幅に制限し健康寿命を短くするだけでなく、障害を持つ者の介護を担う者にとっても大きな負担となる。高齢者の視覚障害は認知症やうつ病等のリスクも増加させることから、失明につながる網膜関連疾患の治療法や予防法および老化による視覚障害の予防や克服も喫緊の課題となっている。
【0003】
我々が物を見るとき、網膜視細胞が光を受けて光受容反応がおこり電気信号へ変換され、最終的に脳に情報が送られて視覚に至る。その反面、光の長期暴露によって代謝老廃物や細胞ストレスの蓄積が徐々に進み、視細胞や網膜色素上皮の老化や細胞死等を引き起こし、加齢黄斑変性や網膜色素変性を含む視覚障害につながると考えられている。
【0004】
加齢黄斑変性は、中心が見えにくい、ゆがむ等の症状を伴う目疾患であり、先進国では高齢者の失明原因の上位を占める。網膜色素変性症は、視細胞の変性又は脱落による視野欠損及び夜盲を特徴とし、最終的には失明に至る進行性の疾患である。
【0005】
現在、こうした疾患等に対して遺伝子治療、神経保護治療及び再生医療による治療が試みられているが、真に有効な治療方法及び予防方法は存在しない。
【0006】
一方、ユビキチンは、真核生物に存在する進化的に保存された76アミノ酸残基からなるタンパク質であり、これがユビキチン化酵素により標的タンパク質に鎖状に共有結合し、分解シグナルとして作用する。その後、ユビキチン化された標的タンパク質は、ユビキチンを認識するプロテアソームにより分解される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、光受容感度の抑制又は軽減剤を提供することである。
本発明の他の目的は、光受容感度を増強又は維持するための剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記のようなユビキチン化酵素は、網膜においても確認されているものの、その機能については、明らかになっていない。
このような中、本発明者は、意外なことに、網膜におけるユビキチン化と網膜の光受容感度とが関連していることを突き止めた。そして、このような知見に基づいて、さらに、より具体的な検討を進めた結果、網膜に発現するユビキチン化酵素Klhl18の遺伝子を欠損又は機能を阻害することにより、桿体視細胞の光に対する応答機能が減弱し、網膜の光受容感度が低下することを見出し、さらに検討を重ねて、種々の新知見を得て、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の発明に関する。
[1]ユビキチン化を阻害又は抑制する物質を含有する、光受容感度の抑制又は低減剤。
[2]網膜を保護、網膜の変性を抑制、網膜の老化を抑制及び/又は感覚過敏を抑制する、前記[1]に記載の剤。
[3]光受容に関連する症状を改善又は予防する、前記[1]又は[2]に記載の剤。
[4]光受容に関連する症状が、加齢黄斑変性、網膜色素変性症、レーベル黒内障、スタルガルト病、錐体桿体ジストロフィー、糖尿病網膜症、黄斑浮腫、網膜虚血、光過敏性発作、光感受性てんかん、精神疾患、光線黄斑症、眼精疲労、網膜機能低下、睡眠障害、片頭痛及び光障害から選択された少なくとも一種である、前記[3]に記載の剤。
[5]ユビキチン化を阻害又は抑制する物質が、ユビキチン化酵素を阻害又は抑制する物質及び/又はユビキチン化そのものを阻害又は抑制する物質を含有する前記[1]~[4]のいずれかに記載の剤。
[6]ユビキチン化酵素が、光受容感度を調節又は制御する能力を有する前記[5]に記載の剤。
[7]ユビキチン化酵素が下記の(A)又は(B)のタンパク質である前記[5]又は[6]に記載の剤。
(A)配列番号3、6、9、12、15、18、21、24、27、30又は33に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)配列番号3、6、9、12、15、18、21、24、27、30又は33に示されるアミノ酸配列において、一個以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質
[8]ユビキチン化酵素を阻害又は抑制する物質が、ユビキチン化酵素の結合阻害物質、ユビキチン化酵素タンパク質の一部、プロテアソーム阻害剤、抗体、siRNA、shRNA、dsRNA、microRNA、アンチセンスポリヌクレオチド、アプタマー、遺伝子ターゲティング用物質及びユビキチン化複合体タンパク質の活性阻害物質の少なくともいずれか一種である前記[5]~[7]のいずれかに記載の剤。
[9]ユビキチン化そのものを阻害又は抑制する物質が、ユビキチン化酵素の標的タンパク質の全長又はその一部、ユビキチン化酵素の標的タンパク質をコードする遺伝子の発現を誘導又は促進する物質の少なくともいずれか一種である前記[5]~[8]のいずれかに記載の剤。
[10]前記[1]~[9]のいずれかに記載の剤を含み、光受容感度を抑制又は低減(又は光受容に関連する症状を改善又は予防)するための組成物。
[11]注射用組成物又は点眼用組成物である前記[10]記載の組成物。
[12]食品組成物である前記[10]記載の組成物。
[13]ユビキチン化を阻害又は抑制する物質。
[14]ユビキチン化酵素の結合阻害物質、ユビキチン化酵素タンパク質の一部、抗体、siRNA、shRNA、dsRNA、microRNA、アンチセンスポリヌクレオチド、アプタマー、遺伝子ターゲティング用物質、ユビキチン化複合体タンパク質の活性阻害物質、ユビキチン化酵素の標的タンパク質の全長又はその一部、ユビキチン化酵素の標的タンパク質をコードする遺伝子の発現を誘導又は促進する物質のいずれか一種である、前記[13]に記載の物質。
[15]前記[1]~[12]のいずれかに記載の剤又は組成物を製造するための、ユビキチン化を阻害又は抑制する物質の使用。
[16]動物のユビキチン化を阻害又は抑制し、光受容感度を抑制又は低減(又は光受容に関連する症状を改善又は予防)する方法。
[17]動物に、前記[1]~[12]のいずれかに記載の剤又は組成物を投与する、前記[16]に記載の方法。
[18]ユビキチン化酵素、ユビキチン化酵素をコードする遺伝子及びユビキチン化酵素の発現を誘導又は促進する能力を有する物質の少なくとも一種を含有し、光受容感度を増強又は維持するための剤。
[19] ユビキチン化酵素をコードする遺伝子及び標的タンパク質をコードする遺伝子を導入した細胞に被験物質を添加し、該細胞における前記標的タンパク質のユビキチン量が、被験物質を添加しなかった細胞におけるユビキチン量と比較して減少する場合に、前記被験物質は光受容に関連する症状に対して改善作用又は予防作用を有すると判定する、光受容に関連する症状を改善又は予防するための剤のスクリーニング方法。
[20] ユビキチン化酵素をコードする遺伝子を導入した細胞に被験物質を添加し、該細胞における前記標的タンパク質の発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における該標的タンパク質の発現量と比較して増加する場合に、前記被験物質は光受容に関連する症状に対して改善作用又は予防作用を有すると判定する、光受容に関連する症状を改善又は予防するための剤のスクリーニング方法。
[21] 被験物質を添加した場合のユビキチン化酵素と標的タンパク質あるいはユビキチン化酵素とユビキチン リガーゼ複合体構成タンパク質との相互作用が、被験物質を添加しなかった場合の相互作用と比較して減少する場合に、前記被験物質は光受容に関連する症状に対して改善作用又は予防作用を有すると判定する、光受容に関連する症状を改善又は予防するための剤のスクリーニング方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、光受容感度の抑制又は軽減剤を提供することができる。
また、本発明では、光受容感度を増強又は維持するための剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、網膜ユビキチン化酵素Klhl18のマウス網膜における発現箇所をノーザンブロッティングにより解析した結果を示す図である。EtBr:エチジウムブロマイド、28S:28SリボソームRNA、18S:18SリボソームRNA
図2図2は、マウスKlhl18RNAのマウス網膜切片における発現箇所をin situハイブリダイゼーションにより解析した結果を示す図である。
図3A図3Aは、マウスKlhl18遺伝子欠損マウス作製用のES細胞をスクリーニングした際の5’側領域におけるサザンハイブリダイゼーションの結果を示す図である。
図3B図3Bは、マウスKlhl18遺伝子欠損マウス作製用のES細胞をスクリーニングした際の3’側領域におけるサザンハイブリダイゼーションの結果を示す図である。
図4図4は、RT-PCR解析により、マウスKlhl18遺伝子欠損マウス網膜におけるマウスKlhl18遺伝子の発現が消失していることを示す図である。
図5図5は、野生型マウス網膜切片及びマウスKlhl18遺伝子欠損マウス網膜切片をトルイジンブルー染色した結果を示す図である。
図6図6は、野生型及びマウスKlhl18遺伝子欠損マウス網膜におけるUnc119タンパク質量をウエスタンブロッティングにより解析した結果を示す図である。
図7A図7Aは、暗条件下における野生型又はKlhl18KOマウスの桿体機能を網膜電図により測定した結果を示す図である。
図7B図7Bは、図7Aで測定した網膜電図の測定結果の各刺激強度におけるa波の値をグラフにした図である。
図7C図7Cは、図7Aで測定した網膜電図の測定結果の各刺激強度におけるb波の値をグラフにした図である。
図8A図8Aは、明条件下における野生型又はKlhl18KOマウスの錐体機能を網膜電図により測定した結果を示す図である。
図8B図8Bは、図8Aで測定した網膜電図の測定結果の各刺激強度におけるa波の値をグラフにした図である。
図8C図8Cは、図8Aで測定した網膜電図の測定結果の各刺激強度におけるb波の値をグラフにした図である。
図9図9は、暗条件下又は明条件下における野生型マウス又はKlhl18KOマウス網膜内のトランスデューシンαタンパク質を免疫染色した結果を示す図である。
図10図10は、Klhl18タンパク質に対する阻害効果をウエスタンブロッティングにより解析した結果を示す図である。
図11図11は、Klhl18タンパク質に対するMG-132(プロテオソーム阻害剤)の阻害効果をウエスタンブロッティングにより解析した結果を示す図である。
図12A図12Aは、免疫沈降法を用いたHA-Unc119タンパク質とFLAG-Klhl18タンパク質との相互作用解析の結果を示す図である。
図12B図12Bは、免疫沈降法を用いたHA-Klhl18タンパク質とFLAG-Unc119タンパク質との相互作用解析の結果を示す図である。
図13図13は、Klhl18タンパク質によるHA-Unc119タンパク質のユビキチン化の解析結果を示す図である。
図14図14は、免疫沈降法を用いたHA-Unc119タンパク質と、Flag-Klhl18タンパク質の全長、N末端側タンパク質、又はC末端側タンパク質との相互作用解析の結果を示す図である。
図15図15は、Klhl18タンパク質に対するMLN4924(Nedd8活性化酵素阻害剤)の阻害効果をウエスタンブロッティングにより解析した結果を示す図である。
図16図16は、pCAGIGプラスミド及びpCAGIG-N-3xFLAG-Unc119プラスミドにおける挿入遺伝子の模式図である。
図17図17は、in vivo エレクトロポレーション後のマウス網膜におけるEGFPタンパク質及びトランスデューシンαタンパク質の局在を蛍光免疫染色により解析した図である。
図18図18は、光障害実験のタイムスケジュールを示した模式図である。
図19図19は、光障害実験後の野生型又はKlhl18 KOマウスの錐体機能を網膜電図により測定した結果を示す図である。
図20図20は、光障害実験後の野生型又はKlhl18 KOマウスの網膜視細胞層の厚さを測定した結果を示す図である。
図21図21は、光障害実験後の野生型又はKlhl18 KOマウスのマウス網膜における視細胞マーカー陽性細胞を蛍光免疫染色により解析した結果を示す図である。
図22A図22Aは、明暗条件下における野生型又はKlhl18 KOマウスの網膜におけるUnc119タンパク質の発現量を蛍光免疫染色により解析した結果を示す図である。
図22B図22Bは、明暗条件下における野生型又はKlhl18 KOマウスのマウス網膜におけるUnc119タンパク質の発現量をウエスタンブロッティングにより解析した結果を示す図である。
図23図23は、RPE65遺伝子欠損マウスにおけるKlhl18タンパク質欠損の影響について網膜電図を測定した結果を示す図である。
図24図24は、MLN4924(Nedd8活性化酵素阻害剤)投与マウスにおける網膜電図を測定した結果を示す図である。
図25図25は、MLN4924(Nedd8活性化酵素阻害剤)投与マウスにおける網膜を蛍光免疫染色により解析した結果を示す図である。
図26図26は、MLN4924(Nedd8活性化酵素阻害剤)投与マウスにおける網膜視細胞層の厚さを測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<剤>
本発明の剤は、光受容感度を抑制又は軽減するために使用できる。そして、このような剤は、ユビキチン化(網膜におけるユビキチン化)を阻害又は抑制する物質(物質(A)などということがある)を含有する。すなわち、網膜におけるユビキチン化と光受容感度とが関連しており、そのため、ユビキチン化を阻害又は抑制することで、光受容感度を抑制又は軽減でき、ひいては、光受容に関連する症状の改善又は予防につながる。
なお、本発明において、「症状」には疾患等も含まれる。
また、本発明において、「改善」には治療等も含まれ、その改善の程度は特に限定されず、症状の寛解、完治等も含む。「予防」も、その程度は特に限定されるものではなく、発症の阻止、進行の抑制を含む意味に用いる。
物質(A)は、ユビキチン化を阻害又は抑制できればよく、そのユビキチン化を阻害又は抑制するメカニズムは特に限定されない。例えば、物質(A)は、ユビキチン化そのものを阻害又は抑制する物質であってもよく、ユビキチン化に関する酵素(ユビキチン化酵素)を阻害又は抑制する物質であってもよく、ユビキチン化に関する酵素どうしの相互作用を阻害又は抑制する物質であってもよく、いずれの機能を有する物質であってもよい。
物質(A)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
物質(A)は、代表的には、ユビキチン化酵素を阻害又は抑制する物質、ユビキチン化そのものを阻害又は抑制する物質である。そのため、物質(A)は、少なくともユビキチン化酵素を阻害又は抑制する物質及びユビキチン化そのもの(自体)を阻害又は抑制する物質の少なくともいずれかを含んでいてもよい。
以下、ユビキチン化酵素などを含め、本発明を詳述する。
【0012】
[ユビキチン化酵素]
ユビキチン化酵素は、例えば、網膜で機能し、標的にユビキチンを結合させる能力を有するものであってもよい。なかでも、網膜で発現しているユビキチン化酵素であることが好ましい。特に、ユビキチン化酵素は、網膜の光受容感度を調節又は制御する能力を有するものであることが好ましく、網膜の光受容感度に関係するタンパク質をユビキチン化する酵素であることが好ましく、網膜の光受容感度の調節又は制御に関係するタンパク質をユビキチン化する酵素であることがさらに好ましい。
【0013】
ユビキチン化酵素のタンパク質は、例えば、配列番号3又は12で表されるものであってもよく、配列番号3又は12で表されるもののアイソフォームであってもよい。アイソフォームとしては、例えば、配列番号6、9、15、18、21、24、27、30又は33で表されるもの等が挙げられる。
またユビキチン化酵素のタンパク質には、ユビキチン化作用を有する限り、構成アミノ酸の一部が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたものも含まれる。このような場合、置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸の数は、1個以上であれば特に限定されず、例えば、20個以下、15個以下、10個以下、7個以下、5個以下、3個以下、1~2個、1個などであってもよい。
【0014】
本発明におけるユビキチン化酵素は、特に生物種の由来を限定されないが、例えば、霊長類、ペット、げっ歯類由来のものが好ましく、霊長類、ペット由来のものがより好ましく、ヒト由来のものがさらに好ましい。
【0015】
ユビキチン化の標的とする対象は、例えば、配列番号36又は51で表されるものであってもよく、配列番号36又は51で表されるもののアイソフォームであってもよい。アイソフォームとしては、例えば、39、42、45、48、54又は57等で表されるアミノ酸配列からなるもの、配列番号34、35、37、38、40、41、43、44、46、47、49、50、52、53、55又は56等で表される塩基配列でコードされるタンパク質等であってもよい。
配列番号35、38、41、44、47、50、53又は56で表される塩基配列は、Unc119をコードする遺伝子の塩基配列(配列番号34、37、40、43、46、49、52又は55)の第73位~第861位、第26位~第619位、第26位~第553位、第165位~第602位、第73位~第795位、第72位~第794位、第72位~第734位又は第420位~第857位にそれぞれ該当する。
【0016】
具体的なユビキチン化酵素としては、Klhl18等が例示される。Klhl18は、ショウジョウバエにおいて、E3ユビキチン リガーゼのCullin3タンパク質による標的タンパク質のユビキチン化に関与することが報告されており(Sally Fujiyama-Nakamura et al., Genes to Cells, 2009, 14, 965-973)、またCullin3タンパク質と複合体を形成し、オーロラA(Aurora A)タンパク質をユビキチン化すること、及び有糸分裂開始に関与することがこれまでに報告されている(Saili Moghe et al., Biol. Open., 2012, 1(2), 82-91)。
【0017】
Klhl18(Kelch-like18)は、BTBドメイン、BACKドメイン及び6つのKelchドメインから構成されている。これらの各ドメインは、タンパク質間相互作用に関与するドメインである。BTBドメインは、Cullinファミリータンパク質と相互作用する機能を有し、BACKドメインは、BTBドメインとCullinファミリータンパク質を相互作用させる機能を有し、Kelchドメインは、標的タンパク質と相互作用する機能を有する。
【0018】
具体的なユビキチン化の標的とする対象としては、Unc119などが例示される。トランスデューシンalphaサブユニットに結合するUnc119は、トランスデューシンalphaサブユニットの細胞体から外節への輸送に関与しており、Unc119遺伝子欠損マウスでは、暗順応化においてトランスデューシンalphaサブユニットの細胞体から外節への輸送が阻害されることが報告されている(Nat Neurosci. 2011 Jun 5;14(7):874-80.)。また、常染色体優性型(autosomal dominant)の錐体桿体ジストロフィー(cone-rod dystrophy)において、Unc119遺伝子の変異が1家系で報告されている(Invest Ophthalmol Vis Sci. 2000 Oct;41(11):3268-77.)。
【0019】
ユビキチン化酵素が機能する細胞は、網膜内の細胞であればよく、例えば、視細胞、双極細胞、神経節細胞、水平細胞、アマクリン細胞、ミュラー細胞等が挙げられるが、視細胞が好ましい。ユビキチン化酵素が機能する視細胞は、桿体視細胞、錐体視細胞のどちらであってもよいが、桿体視細胞であることが好ましい。
【0020】
[ユビキチン化を阻害又は抑制する物質]
物質(A)としては、例えば、ユビキチン化酵素の発現及び/又は活性を阻害又は抑制する物質等が挙げられる。このような物質は、例えば、ユビキチン化酵素そのものを阻害又は抑制してもよく、ユビキチン化酵素をコードする遺伝子の発現を阻害又は抑制してもよく、ユビキチン化酵素と標的タンパク質との相互作用を阻害するドミナントネガティブとして機能してもよく、ユビキチン化複合体タンパク質の活性を阻害又は抑制してもよく、これらのいずれの機能を有していてもよい。
【0021】
他の態様として、物質(A)は、例えば、ユビキチン化そのものを阻害又は抑制する物質、ユビキチン化を直接的に阻害又は抑制する物質等であってもよい。このような物質は、例えば、ユビキチン化酵素の標的タンパク質を過剰発現等させることで、ユビキチン化酵素のユビキチン化そのものを阻害又は抑制する機能を有していてもよい。
【0022】
ユビキチン化酵素をコードする遺伝子は、例えば、配列番号1、2、10又は11で表されるポリヌクレオチド、該ユビキチン化酵素と同一又は同様の機能を有するアイソフォームをコードするポリヌクレオチド(配列番号4、5、7、8、13、14、16、17、19、20、22、23、25、26、28、29、31又は32)であってもよく、配列番号1、2、4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、19、20、22、23、25、26、28、29、31又は32で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、Klhl18をコードする塩基配列であってもよい。
配列番号2、5、8、11、14、17、20、23、26、29又は32で表される塩基配列は、Klhl18をコードする遺伝子の塩基配列(配列番号1、4、7、10、13、16、19、22、25、28又は31)の第101位~第1825位、第96位~第1835位、第99位~第1430位、第127位~第1851位、第27位~第1781位、第27位~第1766位、第27位~第1766位、第226位~第1644位、第226位~第1629位、第226位~第1614位又は第319位~第1737位にそれぞれ該当する。
【0023】
配列番号1、2、4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、19、20、22、23、25、26、28、29、31又は32で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号1、2、4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、19、20、22、23、25、26、28、29、31又は32で表される塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNA等が用いられる。
【0024】
本明細書において「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「核酸」又は「核酸分子」と交換可能に使用される。本発明の遺伝子は、RNA(例えば、mRNA)の形態、又はDNAの形態(例えば、cDNA又はゲノムDNA)で存在することができる。DNAは、二本鎖でもよく一本鎖でもよい。一本鎖DNA又はRNAは、コード鎖(センス鎖)又は非コード鎖(アンチセンス鎖)のいずれであってもよい。また、本発明のポリヌクレオチドは、その5’側又は3’側でタグ標識(タグ配列又はマーカー配列)をコードするポリヌクレオチドに融合されていてもよい。
【0025】
ハイブリダイゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行うことができる。
本発明において「ストリンジェントな条件」は、一般的な条件、例えば、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition,1989,Vol2,p11.45等に記載された条件を指す。具体的には、完全ハイブリッドの融解温度(Tm)より5~10℃低い温度でハイブリダイゼーションが起こる場合を指す。
【0026】
具体的な物質(A)には、例えば、ユビキチン化酵素の結合阻害物質、ユビキチン化酵素タンパク質の一部、プロテアソーム阻害剤、ユビキチン化酵素に対する抗体、ユビキチン化酵素に対するsiRNA、shRNA、dsRNA、microRNA、アンチセンスポリヌクレオチド、遺伝子ターゲティング用物質、ユビキチン化複合体タンパク質の活性阻害物質、ユビキチン化酵素のユビキチン化そのものを阻害又は抑制する物質等が挙げられる。これらの物質は、単体であってもよいし、混合したもの等であってもよい。また、これらの物質は、その入手ルートにおいて特に限定されず、人工的に作られたものであってもよく、動植物由来であってもよく、混合物から精製したもの(例えば、抽出物)などのいずれであってもよい。
【0027】
(ユビキチン化酵素の結合阻害物質)
ユビキチン化酵素の結合阻害物質は、ユビキチン化酵素とタンパク質との結合を阻害できる物質であればよい。ユビキチン化酵素が結合するタンパク質としては、例えば、ユビキチン化複合体を構成するタンパク質であってもよいし、ユビキチン化酵素の標的タンパク質等であってもよい。結合阻害物質は、例えば、ユビキチン化酵素を変性又は変質させる物質等であってもよい。ユビキチン化酵素を変性又は変質させる物質は、例えば、ユビキチン化酵素の立体構造を変化させる物質でもよいし、ユビキチン化酵素の結合に関連する部位をブロックする物質等でもよい。立体構造を変化させる物質は、例えば、ユビキチン化酵素の全体又は一部の立体構造を変化させる物質でもよいし、ユビキチン化酵素自体を分解する物質等であってもよい。ユビキチン化酵素の一部の立体構造を変化させる場合には、例えば、当該立体構造は、少なくともその一部にユビキチン化酵素の結合部位等を含んでいてもよい。ユビキチン化酵素の結合に関連する部位は、例えば、結合部位(結合ドメイン)等であってもよい。結合部位(結合ドメイン)をブロックする物質は、例えば、ユビキチン化酵素の結合部位に結合し、標的タンパク質との結合を阻害する物質であってもよいし、ユビキチン化酵素が認識する標的タンパク質の認識部位を隠す物質等であってもよい。
前記ユビキチン化酵素の結合を阻害する物質は、例えば、血液網膜関門又は血液脳関門の透過性を有するものであってもよく、血液網膜関門又は血液脳関門の透過性を上げることができるもの等であってもよい。
【0028】
なお、ユビキチン化酵素の結合阻害物質は、公知の物質を利用してもよく、公知又は自体公知の方法等を利用して特定、設計又は探索することもできる。
例えば、ユビキチン化酵素の結合に関連する部位(結合部位など)を特定し、当該特定された部位の情報(例えば、形状、構造、化学的性質など)に基づいて、結合阻害物質を設計してもよい。
このような方法において、ユビキチン化酵素の結合に関連する部位の特定方法としては、特に限定されず、慣用の方法を利用できる。例えば、ユビキチン化酵素のアミノ酸配列(例えば、配列番号3、6、9、12、15、18、21、24、27、30又は33)又はユビキチン化酵素の標的タンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号36、39、42、45、48、51、54又は57)をもとにタンパク質の三次元の立体構造を推定するために、公知のソフトウェア(例えば、分子シミュレーション用ソフト)等を利用してユビキチン化酵素側又はユビキチン化酵素の標的タンパク質側の結合部位を特定してもよい。分子シミュレーション用ソフトとしては、例えば、SWISS-model(http://swissmodel.expasy.org)、myPresto(Medicinally Yielding PRotein Engineering SimulaTOr)、PALLAS、MUSES等が挙げられる。PALLASは、X線解析・NMR・分子動力学シミュレーションなどによって得られたタンパク質構造アンサンブルの中からドッキングに適した2~3個のタンパク質構造セットを選択することができる。MUSESは、高精度活性判別システムであって、PALLASによって選択した化合物から、活性化合物と不活性化合物を判別することができる。
また、ユビキチン化酵素の立体構造を変化させる物質は、特に限定されるものではないが、例えば、分子動力学シミュレーション等によって、特定してもよい。分子動力学シミュレーションを用いることにより、例えば、物質との結合又は相互作用前後のユビキチン化酵素の立体構造変化を推定でき、ユビキチン化酵素の立体構造を変化させる物質を特定することができる。分子動力学シミュレーションとしては、例えば、myPresto等が挙げられる。
【0029】
(ユビキチン化酵素タンパク質の一部)
ユビキチン化酵素タンパク質の一部は、例えば、ユビキチン化酵素と標的タンパク質との相互作用を阻害するドミナントネガティブとしての機能などを有していてもよい。ユビキチン化酵素タンパク質の一部としては、ユビキチン化の活性に関わる領域を含まないKlhl18タンパク質、標的タンパク質結合領域であるKlhl18タンパク質の一部を含み、ユビキチン化の活性に関わる領域を含まないKlhl18タンパク質等が挙げられ、Klhl18タンパク質のC末端側298残基を一部に含み全長でないタンパク質、Klhl18タンパク質のC末端側298残基、Klhl18タンパク質のC末端側298残基中に存在し、ユビキチン化酵素を阻害又は抑制する能力を有する部位等が挙げられる。
【0030】
(プロテアソーム阻害剤)
プロテアソーム阻害剤としては、例えば、MG-132、ボルテゾミブ、ジスルフィラム、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)、サリノスポラミドA、カーフィルゾミブ、ラクタシスチン、TMC-95、ペプチドアルデヒド、ペプチド性ケトアミド、ケトアルデヒド、ペプチド性エポキシケトン、ペプチドホウ酸、それらの薬学的に許容される塩等が挙げられる。
【0031】
(抗体)
抗体としては、ユビキチン化酵素を認識するものであればよい。例えば、アンタゴニスト性である抗体、すなわち、ユビキチン化酵素の機能の1又は2以上を阻害する抗体、並びにアゴニスト抗体等が挙げられる。また、ヒト抗体、非ヒト抗体、非ヒト抗体のヒト化抗体等の形態であってもよい。これらの抗体は、市販されているもの、自ら作製したもの等であってもよい。抗体を作製するために、ユビキチン化酵素ポリペプチド又はペプチド(ユビキチン化酵素の抗原性フラグメント)を、別の分子に結合させるか、又はアジュバントとともに投与等して作製してもよい。コード配列は、免疫原をインビボで発現させることができる発現カセット又はベクターの一部であってもよい(例えば、Katsumi(1994)Hum.Gene Ther.5:1335-9を参照のこと)。ポリクローナル又はモノクローナル抗体を生成する方法は、当業者に公知であり、科学文献及び特許文献等に記載された方法等の公知の方法又は自体公知の方法等を使用してもよい。
【0032】
ヒト抗体は、例えば、米国特許第5,877,397号;同第5,874,299号;同第5,789,650号;および同第5,939,598号によって記載されるように、ヒト抗体のみを産生するように操作されたマウスにおいて作製することができる。これらのマウス由来のB細胞は、モノクローナルヒト抗体産生細胞を産生するために、標準的な技術を用いて(例えば、ミエローマ等の不死化細胞株と融合させることによって、または、細胞株を永続化させる他の技術によってかかるB細胞を操作することによって)不死化することができる(例えば、米国特許第5,916,771号および同第5,985,615号を参照のこと)。抗体はまた、伝統的な動物を用いるインビボ方法に加えて、インビトロで、例えば、組み換え抗体結合部位を発現するファージディスプレイライブラリーを用いて、作製することもできる。
【0033】
非ヒト(例えば、げっ歯類)抗体の「ヒト化」の形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小の配列を含むキメラ抗体である。ヒト化抗体は、超可変領域が所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類等の非ヒト種の超可変領域からの残基によって置換されるヒト免疫グロブリンである。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、ヒト抗体又は非ヒト抗体では見られない残基を含む場合がある。これらの修飾は、抗体の能力を更に改善するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、一般的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、これらのドメインでは、超可変ループの全て又は実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのループに対応し、FRの全て又は実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のFRに対応する。ヒト化抗体は、一般的にはヒト免疫グロブリンの定常領域を含み、場合により、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含む。ヒト化技術の例については、例えば、参考として本明細書で援用される、Queenら、の米国特許第5,585,089号、同第5,693,761号;同第5,693,762号;及び同第6,180,370号に記載されている。
【0034】
完全なモノクローナルおよびポリクローナル抗体に加えて、多様な遺伝子操作抗体および抗体フラグメント(例えば、F(ab’)2、Fab’、Fab、FvおよびsFvフラグメント)、ならびに抗原結合機能および親抗体の特異性を保持する他のフラグメントを、標準的な方法を用いて作製することができる。例えば、モノクローナル抗体の短縮バージョンは、所望のモノクローナル抗体フラグメントを好適な宿主において発現するプラスミドを作製する組み換え方法によって生成することができる。Ladner(米国特許第4,946,778号および同第4,704,692号)は、シグナルポリペプチド鎖抗体を生成するための方法を記載する。
【0035】
本明細書において、「抗原性フラグメント」とは、1または2以上のエピトープを含むポリペプチドの一部を指す。エピトープは、基本的に抗原からの直鎖配列を含む直線的なものであっても、他の配列によって遺伝子的に分離されているがポリペプチドリガンドに対する結合部位においては構造的に一体化する配列を含む立体構造的なものであってもよい。「抗原性フラグメント」は、5000、1000、500、400、300、200、100、50、25、20、10または5アミノ酸長までのいずれであってもよい。
【0036】
本明細書において、用語「フラグメント」とは、ペプチドまたはポリペプチドであって、ポリペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列の、少なくとも5個の近接するアミノ酸残基、少なくとも10個の近接するアミノ酸残基、少なくとも15個の近接するアミノ酸残基、少なくとも20個の近接するアミノ酸残基、少なくとも25個の近接するアミノ酸残基、少なくとも40個の近接するアミノ酸残基、少なくとも50個の近接するアミノ酸残基、少なくとも60個の近接するアミノ酸残基、少なくとも70個の近接するアミノ酸残基、少なくとも80個の近接するアミノ酸残基、少なくとも90個の近接するアミノ酸残基、少なくとも100個の近接するアミノ酸残基、少なくとも125個の近接するアミノ酸残基、少なくとも150個の近接するアミノ酸残基、少なくとも175個の近接するアミノ酸残基、少なくとも200個の近接するアミノ酸残基、または少なくとも250個の近接するアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むものを指す。
【0037】
特定の態様において、タンパク質またはポリペプチドのフラグメントは、タンパク質またはポリペプチドの少なくとも一つの機能を保持する。別の態様において、タンパク質またはポリペプチドのフラグメントは、タンパク質またはポリペプチドのフラグメントの少なくとも1、2、3、4、または5つの機能を保持する。好ましくは、抗体のフラグメントは、抗原に対して特異的に結合する能力を保持する。
【0038】
(siRNA)
siRNA(short interfering RNA)は、約20塩基又はそれ未満の長さの二本鎖RNAであり、細胞内に導入することにより標的となる遺伝子の発現を抑制することができる。siRNAに特異的なタンパク質が結合して、RISC複合体が形成され、この複合体は、siRNAと同じ配列を有するmRNAを認識して結合し、siRNAの中央部でmRNAを切断する。本発明におけるsiRNAは、RNAiを引き起こしユビキチン化酵素遺伝子からのタンパク質の生成を阻害することができるものであれば特に限定されないが、例えば、人工的に化学合成されるか又は生化学的に合成されたもの、生物体内で合成されたもの、又は約40塩基以上の二本鎖RNAが体内で分解されてできた10塩基対以上の短鎖二本鎖RNAが挙げられる。siRNAの配列と、標的として切断するmRNAの配列とは100%一致していることが好ましいが、切断活性が残存している限り100%一致していないものであってもよい。
【0039】
siRNAは、公知の方法又は自体公知の方法により設計し、調製することができる。例えば、GenBank等のデータベースから取得したユビキチン化酵素の配列情報に基づいて、mRNA上の標的配列のセンス鎖およびアンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中、約90~約95℃で約1分程度変性させた後、約30~約70℃で約1~約8時間アニーリングさせることにより調製してもよいし、siRNAの前駆体となるショートヘアピンRNA(shRNA)を合成し、これを、ダイサー(dicer)を用いて切断することにより調製してもよい。
【0040】
(shRNA)
shRNA(short hairpin RNA)とは、一本鎖RNAで部分的に回文状の塩基配列を含むことにより、分子内で二本鎖構造をとり、ヘアピンのような構造となる約20塩基対以上の分子のことである。そのようなshRNAは、細胞内に導入された後、細胞内で約20塩基の長さに分解され、siRNAと同様にRNAiを引き起こすことができる。本発明におけるshRNAは、RNAiを引き起こしKlhl18遺伝子からのタンパク質の生成を阻害することができるものであれば特に限定されないが、3’突出末端を有していることが好ましく、二本鎖部分の長さは約10ヌクレオチド以上が好ましく、約20ヌクレオチド以上がより好ましい。
【0041】
shRNAは、公知の方法又は自体公知の方法により設計し、調製することができる。例えば、GenBank等のデータベースから取得したユビキチン化酵素の配列情報に基づいて、mRNA上の標的配列のセンス鎖およびアンチセンス鎖に対して適当なループ構造を形成しうる長さ(例えば5~25塩基程度)のスペーサー配列を間に挿入して連結した塩基配列を含むオリゴRNAをデザインし、これをDNA/RNA自動合成機で合成することにより調製してもよい。
【0042】
本明細書においては、生体内でユビキチン化酵素遺伝子のmRNAに対するsiRNAを生成し得るようにデザインされた核酸もまた、ユビキチン化酵素遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的若しくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸に包含されるものとして定義される。そのような核酸としては、例えば、上記したshRNAやsiRNAを発現するように構築された発現ベクター等が挙げられる。shRNAを発現するベクターには、例えば、タンデムタイプとステムループ(ヘアピン)タイプとがある。前者はsiRNAのセンス鎖の発現カセットとアンチセンス鎖の発現カセットをタンデムに連結したもので、細胞内で各鎖が発現してアニーリングすることにより2本鎖のsiRNA(dsRNA)を形成するというものである。一方、後者はshRNAの発現カセットをベクターに挿入したもので、細胞内でshRNAが発現しdicerによるプロセシングを受けてdsRNAを形成するというものである。プロモーターとしては、例えば、polIII系プロモーター等を使用することができる。polIII系プロモーターとしては、例えば、マウスおよびヒトのU6-snRNAプロモーター、ヒトH1-RNasePRNAプロモーター、ヒトバリン-tRNAプロモーター等が挙げられる。また、転写終結シグナルとしては、例えば、4個以上Tが連続した配列を用いてもよい。
【0043】
上記のようにして構築したsiRNA若しくはshRNA発現カセットを、次いでプラスミドベクターやウイルスベクター等に挿入して用いてもよい。このようなベクターとしては、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、センダイウイルス等のウイルスベクター、動物細胞発現プラスミド等が挙げられる。
【0044】
(dsRNA)
dsRNA(double-stranded RNA)は、細胞内で変換されてsiRNAを生成する分子のことを意味する。従って、本発明においては上記siRNAを生成するdsRNAを使用しても良い。本発明におけるdsRNAは、RNAiを引き起こしユビキチン化酵素遺伝子からのタンパク質の生成を阻害することができるものであれば特に限定されないが、dsRNAの配列と、標的として切断するmRNAの配列とは100%一致することが好ましい。しかし、RNAiによる切断活性が残存する限り、必ずしも100%一致していないものであってもよい。
【0045】
dsRNAは、公知の方法又は自体公知の方法により設計し、調製することができる。
【0046】
(microRNA)
microRNAは、遺伝子発現を調節し、全長10~50個ヌクレオチド、好ましくは、15~40個ヌクレオチド、より好ましくは、17~25個ヌクレオチドで構成された一本鎖RNA分子を意味する。microRNAは、細胞内で発現されないオリゴヌクレオチドであって、短いステム-ループ構造を有する。microRNAは、1又は2以上のmRNAと全体又は部分的に相同性を有することが好ましいが、前記mRNAと相補的な結合を通じてターゲット遺伝子発現を抑制させるものであれば特に限定されない。
【0047】
microRNAは、公知の方法又は自体公知の方法により設計し、調製することができる。例えば、上述のsiRNAについて記載した方法に準じて調製してもよい。
【0048】
(アンチセンスポリヌクレオチド)
アンチセンスポリヌクレオチドは、ユビキチン化酵素遺伝子からのタンパク質の生成を阻害することができるものであれば良く、例えば、ユビキチン化酵素遺伝子のDNA配列中の連続する5~100の塩基配列に対しハイブリダイズできるものである。また、アンチセンスポリヌクレオチドは、DNA又はRNAのいずれであっても良く、修飾されたものであっても良い。アンチセンスポリヌクレオチドの塩基数は、好ましくは5~50、より好ましくは9~25である。
【0049】
アンチセンスポリヌクレオチドは、公知の方法又は自体公知の方法により設計し、調製することができる。
【0050】
(アプタマー)
アプタマーは、特定の分子標的に特異的に結合する核酸分子やペプチドを意味する。本発明では、ユビキチン化酵素の活性や発現を抑制させるものであれば特に限定されない。
【0051】
(遺伝子ターゲティング用物質)
遺伝子ターゲティングは、内在性の遺伝子の改変に相同組換え等を用いて、遺伝子の削除、遺伝子の導入、点変異の導入等を行うことができる。遺伝子ターゲティング方法としては、例えば、ゲノム編集等が挙げられる。ゲノム編集によれば、目的ゲノム領域のヌクレオチドを特異的に変更すること(削除、置換、挿入)ができる。より具体的には、ゲノム編集は、ゲノム領域の特定部位、例えば特定の遺伝子座において二本鎖切断(double-strand break:DSB)し、目的のゲノム領域と相同なDNA配列を単離後、改変を加えて細胞へ導入し、ゲノム配列と外来性相同配列との間で生じる組換えを利用してゲノムを改変することができる。
遺伝子ターゲティング用物質は、ゲノム配列を改変することができるものであればよく、例えば、DNA、RNA等であってもよい。遺伝子ターゲティング用物質の態様は、ゲノム配列を改変することができる限り、特に限定されるものでなく、例えば、遺伝子ターゲティング用ベクター(プラスミド)であってもよいし、ウイルスのDNA、RNA又はその一部等であってもよい。ゲノム編集の遺伝子ターゲティング用ベクター(プラスミド)は、例えば、ユビキチン化酵素をコードする遺伝子(ゲノム配列)を改変してユビキチン化を阻害又は抑制できるものであってもよく、ユビキチン化酵素と相互作用してユビキチン化に関係するタンパク質などのゲノム配列を改変してユビキチン化を阻害又は抑制できるもの等であってもよい。遺伝子ターゲティング用物質を含むウイルスは、ゲノム配列を改変することができる限り、特に限定されず、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス等であってもよい。
【0052】
ゲノム編集としては、特に限定されないが、例えば、公知又は自体公知のゲノム編集を用いてもよい。公知又は自体公知のゲノム編集としては、例えば、CRISPR/Cas9(clustered regularly interspaced short palindromic repeats/CRISPR associated proteins 9)等のシステムが挙げられる。
【0053】
遺伝子ターゲティング用物質は、公知又は自体公知の方法により設計し、作製することができる。また、遺伝子ターゲティング用物質は、公知又は自体公知の方法により、生体、培養細胞などに導入することができる。
【0054】
(ユビキチン化複合体タンパク質の活性阻害物質)
ユビキチン化複合体タンパク質の活性阻害物質としては、例えば、ユビキチン化複合体を構成するタンパク質の活性を阻害する物質等が挙げられる。ユビキチン化複合体を構成するタンパク質の活性を阻害する物質としては、例えば、Cullin3タンパク質の活性を阻害する、MLN4924、DI-591;Cullin2,3,4Aタンパク質の活性を阻害するSuramin、E1ユビキチン リガーゼのインヒビターPYR-41等が挙げられる。
【0055】
ユビキチン化複合体タンパク質を構成するタンパク質としては、例えば、Cullin1,2,3,4A,4B,5,7,9、ROC1タンパク質、E1ユビキチン リガーゼ、E2ユビキチン リガーゼ、ユビキチンタンパク質等が挙げられる。
【0056】
(ユビキチン化酵素のユビキチン化そのものを阻害又は抑制する物質)
ユビキチン化酵素のユビキチン化そのものを阻害又は抑制する物質としては、例えば、ユビキチン化酵素の標的タンパク質、ユビキチン化酵素の標的タンパク質をコードする遺伝子及びユビキチン化酵素の標的タンパク質の発現を誘導又は促進する物質等が挙げられる。ユビキチン化酵素の標的タンパク質としては、例えば、標的タンパク質の全長、標的タンパク質の一部等が挙げられ、標的タンパク質の一部としては、標的タンパク質においてユビキチン化される領域を含む一部のタンパク質等が挙げられる。この標的タンパク質としては、例えば、本願明細書の段落[0018]に記載のもの等が挙げられる。
【0057】
[光受容に関連する症状及び剤の具体的用途]
本発明の剤は、前記のように、光受容感度(光感度)を抑制又は低減するという機能を有する。そのため、当該機能に関係又は関連する症状の改善や予防に有効である。具体的には、光受容感度の制御は、光受容の根幹(始点)をなすものであるから、光受容感度を抑制又は低減することで、光受容(光受容全体)に関連する症状を改善又は予防することができる。例えば、光受容感度を抑制又は低減することで、直接的に光受容を調節する機能(例えば、明順応、暗順応)などを抑制又は阻害することができるし、さらにそれ以降の一連の光受容機能(例えば、光刺激をシグナルに変換する機能、変換されたシグナルを細胞に伝える機能、変換されたシグナルを脳に伝える機能など)を抑制又は阻害することもできる。
なお、光受容に関連する症状(症状(B)などということがある)は、光受容により影響を受ける症状であればよく、代表的には、光受容により進行又は悪化する症状であってもよい。
このような症状は、光受容により影響を受ける症状であれば、その発生(発症)原因は特に限定されず、必ずしも光受容に起因するものである必要はない。例えば、網膜変性は、光受容によりその症状が悪化ないし進行するものの、その発生原因は、光受容によらないものもある。本発明では、このような光受容によらない症状の改善又は予防も対象とする。
【0058】
症状(B)は、例えば、網膜における症状であってもよく、網膜を介して発生する症状等であってもよい。網膜を介して発生する症状は、例えば、脳における症状等であってもよい。網膜において発生する症状は、例えば、日常生活において受ける光刺激又は光ストレスが原因となる症状であってもよく、強い光を浴びることが原因となる症状等であってもよい。網膜を介した脳における症状は、例えば、感覚過敏が原因となる症状等であってもよい。
【0059】
具体的には、本発明の剤は、例えば、網膜保護剤[例えば、網膜の状態及び/又は機能を維持又は保持するための剤(例えば、網膜障害、光照射誘導性の網膜変性による視力低下、視野狭窄、失明等の網膜障害、光照射による眼精疲労等を予防又は軽減する剤等)]、網膜変性抑制剤(例えば、網膜細胞の変性を防ぐ又は網膜細胞を変性から保護するための剤)、網膜老化抑制剤(例えば、網膜細胞における傷害の蓄積を抑制するための剤)、感覚過敏の改善剤又は抑制剤(例えば、光刺激に対する感覚過敏により引き起こされ、又は悪化する症状を改善又は抑制するための剤)、光誘発性疾患の改善剤又は予防剤(例えば、光刺激により発症する疾患を改善又は予防するための剤)、光誘発性障害の改善剤又は予防剤(光刺激により誘発される障害を改善又は予防するための剤)等として用いてもよい。
【0060】
より具体的には、本発明の剤は、加齢黄斑変性、網膜色素変性症、レーベル黒内障、スタルガルト病(若年性黄斑変性)、錐体桿体ジストロフィー、糖尿病網膜症、黄斑浮腫、網膜虚血、光過敏性発作、光感受性てんかん、光線黄斑症、眼精疲労、網膜機能低下(例えば、老化によるもの等)、睡眠障害、片頭痛、光障害(例えば、屋外明所での活動、スポーツ、登山、コンピュータディスプレイ等から発せられる青色光等による光障害)、感覚過敏又は視覚認知障害を伴う精神疾患[例えば、鬱病、抑鬱状態、双極障害(躁鬱病)、自閉症、精神発達障害、統合失調症等]等の改善又は予防のために使用してもよい。
前記記載から光受容感度を抑制することで、上記疾患又は症状を改善又は予防できることは明らかであるが、例えば、ヒト網膜色素変性症の原因遺伝子として知られるRPE65遺伝子又はSag(Arrestin)遺伝子を欠損させたマウスは、遺伝性の網膜色素変性症モデルマウスとして視細胞の変性が見られる。ここでRPE65遺伝子の欠損による視細胞の変性は、ビタミンA代謝異常によるものであり、一方、Sag遺伝子の欠損による視細胞の変性は、視細胞の光受容反応の異常によるものであり、それぞれの遺伝子欠損による視細胞変性の機序は異なる。またトランスデューシンの1つであるGnat1遺伝子を欠損させたマウスは、光受容感度抑制マウスとして知られている。前述のRPE65遺伝子欠損マウス又はSag遺伝子欠損マウスにGnat1遺伝子欠損マウスを掛け合わせると、RPE65遺伝子欠損又はSag遺伝子欠損による遺伝性の網膜変性が抑制されることが報告されている(BioEssays. 2006, 28: 344-354; Nat. Genet., 2002, 32, 254-260)。これらの報告は、本発明の剤が上記疾患又は症状の改善又は予防のために使用できることの理解を助けるものである。
【0061】
[他の成分等]
本発明の剤は、ユビキチン化を阻害又は抑制する物質を含んでいればよく、物質(A)の種類、剤形、投与形態や所望の薬効等に応じて、適宜、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、他の薬理活性成分、担体、添加剤(防腐剤、界面活性剤、安定剤、等張化剤、pH調整剤など)などが挙げられる。他の成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0062】
[投与方法、剤形等]
本発明の剤又は物質(A)の投与形態(又は剤形)は、光受容に関連する症状の改善又は予防機能を発現できる限り特に限定されず、例えば、経口又は非経口投与(剤)などであってもよい。
非経口剤としては、注射剤(例えば、眼内注射剤、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点眼剤、点滴剤、外用剤(例えば、経鼻投与製剤、経皮製剤、軟膏剤)、坐剤(例えば、直腸坐剤、膣坐剤)等が挙げられる。経口剤としては、例えば、ユビキチン化酵素を阻害又は抑制する物質を、薬学的に許容される担体と混合して調製した、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等の固形剤;水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等の液剤;例えばゼリー状製剤等の半固形製剤等が挙げられる。
【0063】
特に、本発明の剤又は物質(A)は、網膜のユビキチン化を効率よく阻害又は抑制できる態様で適用するのが好ましい。このような観点から、本発明の剤は、注射剤(眼内注射剤、硝子体注入)、点眼剤(眼科組成物)などの形態であるのが好ましく、眼内注射、点眼などにより投与するのが好ましい。
【0064】
このように、本発明の剤又は物質(A)は、各種態様の剤(組成物、医薬組成物)を構成する。そのため、本発明には、前記剤(又は物質)を含む組成物[例えば、注射用組成物、眼科組成物(点眼用組成物)など]も含まれる。
【0065】
また、本発明の剤又は物質(A)は、食品の分野で使用されうる。すなわち、本発明の剤(又は物質(A))は、食品用添加剤であってもよい。このような食品用添加剤は、食品を構成する。そのため、本発明には、前記剤(又は物質(A))を含む食品(食品組成物)も含まれる。
【0066】
食品としては、例えば、栄養補助食品、バランス栄養食品、健康食品、栄養機能食品、特定保健用食品、病者用食品等の飲食品が挙げられる。これらの食品の製造方法は、光受容に関連する症状の改善又は予防機能を得られる食品が発揮できるのであれば特に限定されない。当該食品の好適な具体例として、粉末、顆粒、カプセル、錠剤等の形態を有するサプリメントが例示される。また、上記形態以外にも、当該食品としては、ガム、キャンディー、グミ、錠菓、クッキー、ケーキ、チョコレート、アイスクリーム、ゼリー、ムース、プリン、ビスケット、コーンフレーク、チュアブルタブレット、ウエハース、煎餅等の菓子類;炭酸飲料、清涼飲料、乳飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、果汁飲料、栄養飲料、アルコール飲料、ミネラルウォーター等の飲料類;粉末ジュース,粉末スープ等の粉末飲料;ドレッシング、ソース等の調味料;パン類;麺類;かまぼこ等の練り製品;ふりかけ等があげられる。また、経口摂取用の形態以外に、経管摂取用(流動食等)の形態としてもよい。
【0067】
本発明の食品における剤の含有割合については、対象者の年齢、性別、健康状態、その他の条件等により適宜選択できる適用量や食品の形態等に応じて適宜調節することができる。また、本発明の剤による改善又は予防効果をより効果的に発現させるために、剤を多く含む食品として提供してもよい。
【0068】
本発明において、剤を投与する対象となる動物としては、ヒト、非ヒト動物のいずれであってもよく、特に限定されないが、例えば、哺乳動物が挙げられる。哺乳動物としては、例えば、ヒト、サル、オランウータン、チンパンジー、ゴリラ等の霊長類、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、ニワトリ、アヒル、ガチョウ等の鳥類等が挙げられる。哺乳動物は、好ましくは霊長類(ヒト等)又はペットであり、より好ましくはヒト、イヌ又はネコであり、さらに好ましくはヒトである。
【0069】
本発明の剤又は物質(A)の投与量(又は摂取量)は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルート、投与間隔等によっても異なる。例えば、一回量として物質(A)が、約0.0001mg~約100g程度、約0.001mg~約50g程度、約0.01mg~約10g程度、約0.1mg~約1g程度等含まれていてもよい。抗体は、投与対象(例えば、霊長類)、投与ルート(例えば、硝子体への投与)等にもよるが、例えば、一回量として抗体が、約0.01mg~約100mg程度、約0.1mg~約50mg程度、約1mg~約20mg程度、約1.5mg~約10mg程度等含まれていてもよい。また、プロテアソーム阻害剤は、投与対象(例えば、ペット)、投与ルート(例えば、硝子体への投与)等にもよるが、例えば、一回量としてプロテアソーム阻害剤が、約0.001mg~約10mg程度、約0.01mg~約1mg程度、約0.05mg~約0.5mg程度、約0.07mg~約0.1mg程度等含まれていてもよい。
抗体の投与間隔は、投与対象(例えば、霊長類)、投与ルート(例えば、硝子体への投与)等にもよるが、例えば、抗体を1ヶ月ごとに1回の投与を連続して3回行ってもよく、2ヶ月ごとに1回の投与を行う等してもよい。プロテアソーム阻害剤の投与間隔は、投与対象(例えば、ペット)、投与ルート(例えば、硝子体への投与)等にもよるが、例えば、プロテアソーム阻害剤を毎日投与してもよいし、数日ごとに投与してもよいし、数週間ごとに投与等してもよい。
【0070】
本発明の剤又は物質(A)の投与環境は、網膜のユビキチン化を効率よく阻害又は抑制できる態様であれば特に制限されるものでなく、暗い環境(暗所)又は明るい環境(明所)のどちらの環境であってもよい。Klhl18のユビキチン化をより抑制させる目的から、明るい環境(明所)において投与されるのが好ましい。
【0071】
本発明の剤又は物質(A)の投与環境において、明るい環境(明所)における照度は、例えば、300 lux以上、500 lux以上、800 lux以上、1,000 lux以上等であれば特に限定されるものではないが、上限を設けるのであれば、例えば、1,000,000 lux以下、200,000 lux以下等が挙げられる。暗い環境(暗所)における照度は、例えば、0 lux以上300 lux未満、0 lux以上200 lux以下、0 lux以上100 lux以下、0 lux以上50 lux以下、0 lux以上10 lux以下、0 lux以上8 lux以下、0 lux以上5 lux以下、0 lux以上3 lux以下、0 lux以上1 lux以下、0 lux以上0.5 lux以下、0 lux以上0.1 lux以下等が挙げられる。
【0072】
[阻害評価]
ユビキチン化を阻害又は抑制する程度は、例えば、培養細胞を用いた強制発現実験、FRET法等のインビトロ(in vitro)の実験などで評価又は判断してもよい。培養細胞を用いた強制発現実験により評価又は判断する場合は、例えば、20~100%の範囲でユビキチン化を阻害又は抑制できればよく、50~100%の範囲が好ましく。70~100%の範囲がより好ましく、90~100%の範囲がさらに好ましい。
【0073】
<スクリーニング方法>
本発明は、ユビキチン化酵素を用いる、ユビキチン化を抑制又は阻害する物質、若しくは光受容に関連する症状を改善又は予防するための剤のスクリーニング方法を包含する。本明細書において「スクリーニング」とは、多数の試験物質の中から目的の活性を有する物質を篩い分けること、又は、ある試験物質について、その物質が目的の性質を有する物質であるか否かを検出することである。
【0074】
本発明の好ましい態様において、指標とする光受容に関連する症状の改善作用又は予防作用は、ユビキチン化酵素の標的タンパク質のユビキチン化の程度で評価される。ユビキチン化の程度の評価は、前記の判断を用いてもよい。
前記標的タンパク質のユビキチン化の程度は、例えば、ユビキチン化酵素をコードする遺伝子及び標的タンパク質をコードする遺伝子を導入した細胞を用いて、被験物質を添加した細胞における標的タンパク質のユビキチン量が、被験物質を添加しなかった細胞におけるユビキチン量と比較して減少する場合に、前記被験物質は光受容に関連する症状に対して改善作用又は予防作用を有すると判定される。また、前記ユビキチン量が増加する場合には、前記被験物質はユビキチン化酵素の活性を増強する物質であると判定することも可能である。さらに、前記ユビキチン量は、例えば、細胞からタンパク質を抽出し、ウエスタンブロッティング法等を用いて、定量的な検出を行うことにより測定することができる。
【0075】
他の態様において、指標とする光受容に関連する症状の改善作用又は予防作用は、ユビキチン化酵素の活性で評価されてもよい。前記ユビキチン化酵素の活性は、前記タンパク質の発現量で表されてもよく、例えば、ユビキチン化酵素をコードする遺伝子を導入した細胞を用いて、被験物質を添加した細胞における前記標的タンパク質の発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における該標的タンパク質の発現量と比較して増加する場合に、前記被験物質は光受容に関連する症状に対して改善作用又は予防作用を有すると判定される。また、前記標的タンパク質が減少する場合には、前記被験物質はユビキチン化酵素の活性を増強する物質であると判定することも可能である。前記発現量は、例えば、例えば、細胞からタンパク質を抽出し、ウエスタンブロッティング法等を用いて、定量的な検出を行うことにより測定することができる。又は、当該タンパク質の細胞内存在量を、公知又は自体公知の方法で定量的に測定して、タンパク質の発現量としてもよい。
【0076】
スクリーニングに用いる細胞の種類は、ユビキチン化酵素及び/又はユビキチン化酵素の標的タンパク質の存在下で生育でき、導入したユビキチン化酵素及び/又はユビキチン化酵素の標的タンパク質を産生できる細胞であれば特に限定されない。例えば、HEK293T細胞、Neuro2a細胞、NIH3T3細胞等が挙げられる。細胞の培養条件としては、通常の培養条件、例えば、市販のDMEM培地を用いる他、本発明のスクリーニング方法の実行を妨げない培養条件であれば、特段の限定無く適用することができる。
【0077】
また、本発明のスクリーニング方法の一態様として、ユビキチン化に関する酵素と標的タンパク質同士あるいはユビキチン化に関する酵素とユビキチン リガーゼ複合体構成タンパク質同士の相互作用を阻害又は抑制する物質をスクリーニングする方法を挙げることができる。具体的には、例えば、被験物質を添加した場合のユビキチン化酵素と標的タンパク質あるいはユビキチン化酵素とユビキチン リガーゼ複合体構成タンパク質との相互作用が、被験物質を添加しなかった場合の相互作用と比較して減少する場合に、前記被験物質は光受容に関連する症状に対して改善作用又は予防作用を有すると判定される。また、ユビキチン化酵素と前記標的タンパク質あるいはユビキチン化酵素とユビキチン リガーゼ複合体構成タンパク質との相互作用が増強する場合には、前記被験物質はユビキチン化酵素の活性を増強する物質であると判定することも可能である。ここで、相互作用としては、ユビキチン化酵素と標的タンパク質の複合体(タンパク質会合)を指標とすることができ、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動、Fluorescence Resonance Energy Transfer)、Alpha screen(化学増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイ、Amplified Luminescence Proximity Homogeneous Assay)、免疫沈降、ウエスタンブロッティング、タンパク質の35S-メチオニン標識化、タンパク質マイクロシークエンシング、銀染色及び二次元ゲル電気泳動などの公知の手法により評価することができる。一例としては、例えば、被験物質の存在又は非存在下での、Klhl18タンパク質とUnc119タンパク質のタンパク質相互作用を、FRET法により測定して評価する態様を挙げることができる。
【0078】
本発明のスクリーニング方法が対象とする被験物質は、ユビキチン化を阻害又は抑制する物質であればよい。さらにユビキチン化酵素、ユビキチン化酵素をコードする遺伝子、ユビキチン化酵素の発現を阻害又は抑制する能力を有することが好ましい。例えば、前記物質(A)等が挙げられる。また前記被験物質は、それらの混合物であってもよい。
【0079】
<光受容感度を増強又は維持するための剤>
本発明は、光受容感度を増強又は維持するための剤を包含する。本発明において、光受容感度を増強又は維持するための剤としては、ユビキチン化を誘導、促進又は維持する能力を有する物質を含有していれば特に限定されないが、例えば、ユビキチン化酵素(例えば、前記のユビキチン化酵素)、ユビキチン化酵素をコードする遺伝子(例えば、前記のユビキチン化酵素をコードする遺伝子)、ユビキチン化酵素の発現を誘導又は促進する能力を有する物質、ユビキチン化酵素の活性を向上する能力を有する物質及びユビキチン化酵素と前記標的タンパク質あるいはユビキチン化酵素とユビキチン リガーゼ複合体構成タンパク質との相互作用を増強する能力を有する物質のいずれかを単独で含有していてもよく、これらの2以上を含有していてもよい。ユビキチン化酵素の発現を誘導又は促進する能力を有する物質は、例えば、転写因子等であってもよい。転写因子としては、ユビキチン化酵素の発現を誘導又は促進する能力を有していればよく、例えば、直接又は間接的にユビキチン化酵素の発現を誘導又は促進するものであってもよい。直接的とは、例えば、転写因子がユビキチン化酵素の発現を誘導又は促進すること等をいう。間接的とは、例えば、転写因子が他のタンパク質などを介してユビキチン化酵素の発現を誘導又は促進すること等をいう。直接的にユビキチン化酵素の発現を誘導又は促進する転写因子としては、例えば、Otx2(Orthodenticle homeobox 2)、Crx(Cone-rod homeobox)、Nrl(Neural retina leucine zipper)等が挙げられる。また、ユビキチン化酵素の発現を誘導又は促進する能力を有する物質は、例えば、転写因子をコードする遺伝子等であってもよい。転写因子をコードする遺伝子としては、例えば、転写因子をコードする遺伝子そのものであってもよく、転写因子をコードする遺伝子を一部に含むものなどであってもよい。
転写因子のアミノ酸配列及び塩基配列は、公知のデータベース等から入手することができる。
【0080】
光受容感度を増強又は維持するための剤は、例えば、網膜の光受容感度の低下に関連する症状等に使用してもよい。光受容感度の低下に関連する症状は、光受容により影響を受ける症状であればよく、代表的には、光受容により進行又は悪化する症状であってもよい。
このような症状は、光受容により影響を受ける症状であれば、その発生(発症)原因は特に限定されず、必ずしも光受容に起因するものである必要はない。本発明では、光受容によらない症状の改善又は予防も対象とする。
網膜の光受容感度を増強又は維持するための剤は、例えば、夜盲等の改善剤又は予防剤等として用いてもよい。
【0081】
光受容感度を増強又は維持するための剤の投与環境は、網膜のユビキチン化を効率よく増強又は維持できる態様であれば特に制限されるものでなく、暗い環境(暗所)又は明るい環境(明所)のどちらの環境であってもよい。Klhl18のユビキチン化作用をより増強させる目的から、暗い環境(暗所)において投与されるのが好ましい。
【0082】
光受容感度を増強又は維持するための剤の投与環境において、明るい環境(明所)における照度は、例えば、300 lux以上、500 lux以上、800 lux以上、1,000 lux以上等であれば特に限定されるものではないが、上限を設けるのであれば、例えば、1,000,000 lux以下、200,000 lux以下等が挙げられる。暗い環境(暗所)における照度は、例えば、0 lux以上300 lux未満、0 lux以上200 lux以下、0 lux以上100 lux以下、0 lux以上50 lux以下、0 lux以上10 lux以下、0 lux以上8 lux以下、0 lux以上5 lux以下、0 lux以上3 lux以下、0 lux以上1 lux以下、0 lux以上0.5 lux以下、0 lux以上0.1 lux以下等が挙げられる。
【0083】
以下にいくつかの実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものでない。
【実施例
【0084】
[実施例1](Klhl18遺伝子のマウス組織における発現解析)
(ノーザンブロッティング)
(1)ノーザンブロッティング解析用のプローブ作製
生後14日齢のICRマウス(オリエンタル酵母工業株式会社より購入)の網膜から、Trizol試薬(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて、添付のプロトコールに従い、RNAを抽出した後、定法に従ってcDNAライブラリを作製した。作製したcDNAライブラリを鋳型として、Ex Taq(TaKaRa社製)を用いて、添付のプロトコールに従い、PCRを行いKlhl18遺伝子を増幅した。PCRに用いたプライマーは、フォワードプライマー(配列番号58)、及びリバースプライマー(配列番号59)を用いた。増幅したPCR断片をpGEM-T-easyプラスミド(Promega社製)にLigation High Ver.2(TOYOBO社製)を用いて、添付のプロトコールに従い、PCR断片をプラスミドに組み込み、pGEM-T-easy-Klhl18プラスミドを作製した。
上記で作製したpGEM-T-easy-Klhl18プラスミドから、制限酵素EcoRIによりKlhl18DNA断片を切り出した。その後、RediprimeTM Ramdom Prime Labelling System(GE Healthcare社製)を用いて、添付のプロトコールに従い、32P dCTP(PerkinElmer社製)で切り出したKlhl18DNA断片を放射性標識して、ノーザンブロッティング用のプローブを作製した。
(2)RNAの調製及びハイブリダイゼーション
4週齢のICRマウス(オリエンタル酵母工業株式会社より購入)を定法に従い解剖し、網膜、大脳、小脳、脳幹、胸腺、心臓、肺、腎臓、肝臓、脾臓、筋肉、小腸、卵巣及び精巣を摘出し、Trizol試薬(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて、添付のプロトコールに従い、RNAを精製した。RNAに5μLのホルムアミド、0.75μLのMOPSバッファー(pH7.0)(0.4M MOPS、100mM NaOAc、20mM EDTA・2Na)、及び2μLのホルムアルデヒドを加え、65℃で10分間熱処理した後に氷上で2分間急冷したものを電気泳動サンプルとした。5%のMOPSバッファー及び16.5%のホルムアルデヒドを含む変性1%アガロースゲル電気泳動により、得られたRNAを電気泳動(100V、135分)して分離した。泳動バッファーにはMOPSを使用した。その後、電気泳動後のアガロースゲルのRNAを20×SSC(Saline Sodium Citrate buffer)による毛細管現象により、ナイロンメンブレン(Pall社製)に転写し、転写したRNAは80℃で2時間加熱処理することによりナイロンメンブレンに固定した。作製したメンブレンをハイブリダイゼーションバッファー(7% SDS、50% ホルムアミド、0.12M リン酸ナトリウムバッファー(pH7.2)、0.25M 塩化ナトリウム)に浸し、37℃で1時間以上、前ハイブリダイゼーションを行った。前ハイブリダイゼーション終了後、実施例1の(1)で作製した60ngのプローブ及び断片化した鮭精子DNAが終濃度100μg/mLとなるようにハイブリダイゼーションバッファーに加えたものを、前ハイブリダイゼーション後のメンブレンに加え、43℃で一晩ハイブリダイズした。ハイブリダイゼーション終了後、ナイロンメンブレンを2×SSC(Saline Sodium Citrate buffer)/0.1% SDSを用いて洗浄した後、0.1×SSC/0.1% SDSを用いて50℃で洗浄した。洗浄したナイロンメンブレンをX線フィルム(FUJIFILM社製)で露光し、現像機(FPM100、FUJIFILM社製)を用いてX線フィルムを現像した。
【0085】
(結果)
実施例1より、Klhl18遺伝子はマウス網膜組織に特異的に発現していることを明らかにした(図1)。
【0086】
[実施例2](Klhl18遺伝子のマウス網膜における発現解析)
(in situ ハイブリダイゼーション)
(1)in situ ハイブリダイゼーション解析用のプローブ作製
実施例1で作製したpGEM-T-easy-Klhl18プラスミドを、定法に従い
、制限酵素ApaIで制限酵素処理し、該プラスミドを直鎖化した。直鎖化したDNAを鋳型として、SP6 RNA Polymerase(GE Healthcare社製)を用いて、添付のプロトコールに従い、ジゴキシゲニン(digoxigenin;DIG)標識されたアンチセンス鎖RNAを合成した。アンチセンス鎖RNA合成後、鋳型とした直鎖状DNAはRNase free DNase(GE Healthcare社製)を用いて分解した。合成したアンチセンス鎖RNAはエタノール沈殿により精製後、滅菌水50μLに溶解し、-80℃に保存した。
(2)ハイブリダイゼーション
生後9日齢、生後21日齢のICRマウス(オリエンタル酵母工業株式会社より購入)の網膜を定法に従い回収し、4% パラホルムアルデヒド/PBS(Phosphate Buffer Saline)を用いて4℃で一晩固定した。固定後の網膜をPBSで洗浄した後、30% スクロース/PBSに浸けて、網膜内の4% パラホルムアルデヒド/PBSと置換した。その後、O.C.T.コンパウンド(Sakura Finetek社製)を用いて、網膜を包埋した。新鮮凍結法の網膜サンプルは、上記固定操作を省いて包埋した。
クライオスタットにより16μmの厚さの網膜凍結切片を作製し、スライドグラス上に貼り付け、その後、凍結切片を室温にて乾燥させた。乾燥後の切片を4% パラホルムアルデヒド/PBT(0.1% Tween-20、PBS)で15分間処理した。切片をPBTで洗浄した後、6% H/PBTで5分間、脱色処理し、PBTで洗浄した。次に切片をProteinase K(Roche社製)/PBTで4分間処理した後、2mg/mLグリシン/PBTで15分間処理してProteinase Kによる反応を停止させた後、PBTにて洗浄した。次に4% パラホルムアルデヒド/0.2% グルタルアルデヒド/PBTで15分間、後固定した後、PBTで洗浄した。続いて50% ホルムアミド/5×SSC(Saline Sodium Citrate buffer)(pH4.5)/50μg yeast RNA/1%SDSで70℃、1時間、前ハイブリダイゼーションを行った。実施例2で作製したプローブを用いて、2μg プローブ/50% ホルムアミド/5×SSC(Saline Sodium Citrate buffer)(pH4.5)/50μg yeast RNA/1%SDSのハイブリダイゼーション液を調製し、前ハイブリダイゼーション終了後に、切片に載せ、70℃で一晩ハイブリダイゼーションした。
(3)発色及び解析
切片を50% ホルムアミド/4×SSC(Saline Sodium Citrate buffer)(pH4.5)/1%SDSで70℃、15分間処理し、これを3回繰り返して切片を洗浄した。次に50% ホルムアミド/2×SSC(pH4.5)で65℃、15分間処理し、これを3回繰り返して切片を洗浄した。さらに切片を0.1% Tween-20/TBSで洗浄し、5%正常ヒツジ血清/0.1%Tween-20/TBSで1時間処理した。続いて抗体反応液(抗DIG抗体、1%正常ヒツジ血清、0.1%Tween-20、TBS)で4℃、一晩処理した。切片を0.1%Tween-20/TBSおよびNTMT(100mM 塩化ナトリウム、100mM Tris-HCl(pH9.5)、50mM 塩化マグネシウム、0.1% Tween-20、2mM レバミゾール(Levamisole))で洗浄した後、NBT/BCIPで反応させた。発色後、切片をNTMTで洗浄し、PBT(pH5.5)により発色反応を停止させた。4% パラホルムアルデヒド/0.1%グルタルアルデヒド/PBTで10分間処理およびPBTで洗浄後、封入剤で封入した。封入した標本は正立型顕微鏡の微分干渉検鏡対物レンズにより観察した。
【0087】
(結果)
実施例2より、Klhl18遺伝子は生後9日目及び生後21日目のマウス網膜視細胞層に特異的かつ強く発現していることを明らかにした(図2)。
【0088】
[実施例3](Klhl18遺伝子欠損マウスの作製)
(1)Klhl18遺伝子へテロ相同組換えES細胞株の取得
ES細胞として、C57BL/6Nマウス系統由来のES細胞株JM8A3を用いた。ES細胞には、DMEM培養液(Sigma社製)に非動化仔牛血清(FBS)、L-glutamine(GIBCO社製)、MEM Non-Essential Amino Acids Solution(GIBCO社製)、Na-pyruvate(GIBCO社製)、Penicillin(100μg/mL)/Streptomycin(100μg/mL)(ナカライテスク社製)、2-メルカプトエタノール(ナカライテスク社製)、LIF(CHEMICON社製)を添加したES細胞用培地を用いた。また、フィーダ細胞として、ネオマイシン耐性遺伝子をトランスジーンとして持つマウス胎児由来初代繊維芽細胞(Primary Embryonic Fibroblast cells)をマイトマイシンC処理により分裂停止させたものを用いた。Klhl18KOベクターは、KOMP(Knockout Mouse Project、米国)より購入したもの(Clone name:PRPGS00036_C_D09)を使用した。Klhl18KOベクターをAsiSI(NEW ENGLAND BIOLABS社製)で切断することにより直鎖化し、次いで直鎖化DNA断片を240V、500μFの条件でマウスES細胞にエレクトロポレーションし、ターゲティングベクターの導入を行った。
エレクトロポレーション実施後24時間後から、260μg/mLの抗生物質G418(ナカライテスク社製)を含有する培地中でES細胞を培養することにより、ネオマイシン耐性クローン(ターゲティングベクターが導入されたES細胞)を選別し、選別開始後8~10日後のES細胞のコロニーを回収した。回収したES細胞のコロニーは、0.25%Trypsin/EDTAにより、COインキュベータ内で37℃、5分間処理することで細胞をほぐした。その後96wellのフィーダープレートへ移し、ES細胞がコンフルエントになるまで培養した。フィーダープレート内のES細胞が90%~100%コンフルエントになったら、0.25%Trypsin/EDTAにより再度細胞をほぐし、一部をDNA抽出用に準備した96wellプレートへ移し、残りのES細胞はfreezing medium(DMSO:FBS:ESDMEM+LIF(DMEM培養液(Sigma社製)、L-glutamine(GIBCO社製)、MEM Non-Essential Amino Acids Solution(GIBCO社製)、Na-pyruvate(GIBCO社製)、Penicillin(100μg/mL)/Streptomycin(100μg/mL)(ナカライテスク社製)、2-メルカプトエタノール(ナカライテスク社製)、LIF(CHEMICON社製)、FBS)=1:1:3)を加えて-80℃で凍結保存した。
ES細胞をDNA抽出用に準備した96wellプレートで90%~100%コンフルエントになるまで増殖させた後、各wellのES細胞をPBSで2回洗浄した。Lysis buffer(10mM Tris(pH7.5)、10mM EDTA、10mM 塩化ナトリウム、0.5% sarcosyl、200μg/mL proteinase K)を各wellに50μLずつ加え、60℃で一晩処理した。翌日10mM塩化ナトリウム/エタノールを各wellに100μLずつ加え、液を混ぜずにそのまま4℃で30分間以上静置した。その後上清を除き、70%エタノールによりDNAを洗浄した。DNAを風乾させ、RNase(20μg/mL)を添加した10倍希釈TEにDNAを溶解した。その後、取得した各クローンのゲノムDNAを試料として以下のようにサザンブロッティングを行うことにより、目的とする変異型アリルを含むヘテロ相同組換え体をスクリーニングした。
サザンブロッティング用のプローブは、以下の方法で作製した。5’側のプローブを作製するために、ES細胞のゲノムDNAを鋳型に用いて、かつ50μMのフォワードプライマーFoward5’(配列番号60)、50μMのリバースプライマーReverse5’(配列番号61)及びEx Taq(TaKaRa社製)を用いて、添付のプロトコールに従いPCRを行った。同様にして、3’側のプローブを作製するために、ES細胞のゲノムDNAを鋳型に用いて、かつ50μMのフォワードプライマーFoward3’(配列番号62)、50μMのリバースプライマーReverse3’(配列番号63)及びEx Taq(TaKaRa社製)を用いて、添付のプロトコールに従いPCRを行った。得られたPCR産物を1%アガロースゲルにて電気泳動した後、当該ゲル上で検出された、それぞれ約330bp及び約536bpのバンドを切り出し、T-EASYベクター(Promega社)にクローニングした。クローニングされたプラスミドをEcoRI(TaKaRa社)で消化した後、消化物(DNA)をアガロースゲル電気泳動した。330bp及び536bpのDNA断片をそれぞれ切り出し、得られたDNA断片をグラスビーズを用いて精製した。精製されたDNA断片を32P dCTP標識して以下で用いた。
各クローンから調製したゲノムDNA(10μg)を制限酵素KpnI(遺伝子相同組換え領域の5’側の確認用)又はBamHI(遺伝子相同組換え領域の3’側の確認用)で完全消化した後、消化物を0.8%アガロースゲル電気泳動した。電気泳動後のゲルからニトロセルロース膜(PALL社製)に転写した後、上記で32P標識した5’側のプローブ又は3’側のプローブを用いてハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション後、オートラジオグラフィーにて検出した結果を図3A及び3Bに示す。目的とする変異が導入されていれば、野生型アリルを示すKpnI断片29Kbは9.6Kbの大きさに縮小して検出されるはずである。さらに目的とする変異が導入されていれば、野生型アリルを示すBamHI断片9Kbは7.1Kbの大きさに縮小して検出されるはずである。サザンブロッティングの結果、野生型細胞では、KpnI断片29Kbのみが検出され、BamHI断片9Kbのみが検出された。これに対して、Klhl18遺伝子へテロ相同組換えのクローン(クローン番号B5,C5、D4,F1、G4,H3,H4及びH5)では、9.6KbのKpnI断片及び7.1KbのBamHI断片が検出された(図3A及び3B)。以上のことから、上記クローンにおいて目的とする相同組換えが生じたKlhl18遺伝子へテロ相同組換えES細胞株であることが確認できた。
【0089】
(2)Klhl18遺伝子欠損マウスの作製
上記(1)で得られたKlhl18遺伝子へテロ相同組換えES細胞株のうち、1種類の株(クローン番号C5)をC57BL/6J系マウス胚盤胞へ注入することにより、キメラマウスを作製した。即ち、上記Klhl18遺伝子へテロ相同組換えES細胞株をC57BL/6J系マウス胚盤胞に注入し、仮親の子宮に移植して、キメラマウスを得た。得られたキメラマウスの雄をさらに野生型C57BL/6Jマウスの雌と交配して初代(F1)マウスを得た。これらのF1マウスから、サザンブロッティングにより、Klhl18flox/wtマウスを選別した。その後、このF1のKlhl18flox/wtマウスは、CAG-Creマウス(熊本大学生命資源研究・支援センターより入手、MGI ID: MGI:2176435)との交配によって、Klhl18flox/wt CAG-Cre+/-マウス(以下、Klhl18 ヘテロKOマウスという)を得た。このKlhl18flox/wt CAG-Cre+/-マウス同士を交配させることにより、Klhl18遺伝子を完全に欠損するKlhl18flox/flox CAG-Cre+/-マウス(以下、Klhl18 KOマウスという)を得た。
【0090】
[実施例4](Klhl18 KOマウスにおけるKlhl18遺伝子の発現量の確認)
実施例3で得られたKlhl18 KOマウス及び野生型マウスを12週齢まで、室温23℃、湿度55%、明暗各12時間に維持された飼育室で飼育した。飼育されたマウスを定法に従い解剖し、マウス網膜を摘出した。即ち、マウス網膜組織にTrizol試薬(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を1mL加え、これをホモジナイザーでホモジナイズした。このホモジナイズされた混和物を室温で5分間保持した後、これに200μLのクロロホルムを加えた。得られた混合物をボルテックスで十分に混合した後、更に室温で3分間保持した。その後、得られた上清に上清と等量のイソプロパノールを加えた後、これを遠心分離(14,000rpm、半径 5cm、4℃、15分間)することによりRNAを沈殿させた。沈殿させたRNAを回収し、これを100μLの滅菌水に懸濁した。得られたRNA溶液中のRNA濃度を分光光度計を用いて測定した。そして、このようにして調製されたRNA2μgを鋳型に用いて、Super Script II(Invitrogen社)を用いて逆転写を行った。得られた逆転写物20μLのうち1μLを鋳型に用いて、マウスKlhl18遺伝子用プライマー(KO用フォワード、KO用リバース)及びrTaq(PCR用酵素、TaKaRa社製)を用いて、添付のプロトコールに従い、PCRを行った。陽性コントロールには、β-アクチンを使用し、マウスβ-アクチン用プライマー(フォワードプライマー(配列番号64);リバースプライマー(配列番号65))を用いて、添付のプロトコールに従い、PCRを行った。
【0091】
(結果)
実施例4より、Klhl18 KOマウスにおいて、Klhl18遺伝子の発現は消失していることを明らかにした(図4)。
【0092】
[実施例5](Klhl18遺伝子欠損によるマウス網膜組織への影響)
(トルイジンブルー染色)
1ヶ月齢のKlhl18 KOマウス及び野生型(C57BL/6J系)マウス(日本SLC社より購入)を用いて、実施例2の(2)に記載の方法により、各マウス網膜の切片を作製した。作製したマウス網膜の切片をPBSで洗浄し、0.1% toluidine blue(Sigma社製)/PBSで1分間染色した。染色後、切片をPBSで3回洗浄し、標本を封入剤で封入した。封入した標本は正立型顕微鏡の微分干渉検鏡対物レンズにより観察した。
【0093】
(結果)
実施例5より、マウス網膜組織における各細胞層(視細胞外節、視細胞層、内神経細胞層及び神経節細胞層)において、Klhl18遺伝子を欠損させることによるマウス網膜組織への影響は見られなかった(図5)。
【0094】
[実施例6](Klhl18タンパク質の標的Unc119タンパク質への影響)
(ウエスタンブロッティング)
1ヶ月齢のKlhl18 KOマウス及び野生型(C57BL/6J系)マウス(日本SLCより購入)より、定法に従い採取した網膜組織は、2×サンプルバッファー (0.1M Tris-HCl(pH6.8)、1% SDS、5% βメルカプトエタノール、10% グリセロール、0.02% BPB)に溶解し、100℃で5分間熱処理を行った。SDS-PAGEを行った後、ゲル中のタンパク質をPVDF膜(Merck Millipore社製)に12V、90分間の条件で電気的に転写した。タンパク質を転写したPVDF膜はブロッキング溶液(5% スキムミルク、0.05% Tween-20/TBS)を用いて、室温で1時間振盪してブロッキングした。ブロッキング終了後、PVDF膜はブロッキング溶液で希釈した一次抗体と4℃で一晩反応させた。一次抗体には、抗Unc119抗体(マウスモノクローナル、Dr. Haeseleer (University of Washington、米国)より譲渡(Haeseleer、2008)、1:10希釈)及びα-Tublin(マウスモノクローナル、Sigma社製、1:6,000希釈)をそれぞれ使用した。一次抗体反応終了後のPVDF膜は0.05% Tween-20/TBSを用いて室温で10分間振盪して3回洗浄した。洗浄後のPVDF膜はブロッキング溶液で希釈した二次抗体と室温で1時間反応させた。二次抗体には、抗マウスIgG(H+L)HRP付加抗体(ヤギポリクローナル、Zymed社製、1:6,000希釈)を使用した。二次抗体反応終了後、再び0.05% Tween-20/TBSを用いて室温で10分間振盪して3回洗浄した。洗浄後、PVDF膜を化学発光試薬(Chemi-Lumi One(ナカライテスク社製)またはPierce Western Blotting Substrate Plus(Thermo Fisher Scientific社))に反応させ、X線フィルムに感光させた後、現像機を用いて目的タンパク質の検出を行った。
【0095】
(結果)
実施例6より、網膜ユビキチン化酵素Klhl18タンパク質がUnc119タンパク質を標的とすることが、野生型及びKlhl18 KOタンパク質由来のバンドを比較することで確認された(図6)。さらに、Klhl18 KOマウスの網膜において、ユビキチン化の欠損によりUnc119タンパク質量が増加することが確認された(図6)。
【0096】
[実施例7](Klhl18タンパク質欠損による視覚機能への影響)
(網膜電図(Electroretinogram;ERG)検査)
生後2ヶ月齢の野生型又はKlhl18 KOマウスを明順応又は暗順応させた。明順応は約1000lux下で1時間以上、暗順応は暗室で4時間以上マウスを置いて行った。暗順応又は明順応させたマウスにケタミン(Ketamine、マウス体重あたり100mg/kg)及びキシラジン(Xylazine、マウス体重あたり10mg/kg)を混合した生理食塩水を腹腔内注射し麻酔を行った。次に、マウス瞳孔を0.5%トロピカミド(tropicamide)及び0.5%フェニレフリン塩酸塩(phenylephrine HCl)混合液を点眼して散瞳させた。ERG検査は白色LEDストロボ光を発する電極(PuREC;メイヨー社製)を被験マウス眼球の角膜に接触させ、LED Visual Stimulator(LS-100,メイヨー社製)にて刺激光で刺激し、TA-100(メイヨー社製)にて波形を記録して行った(図7A及び図8A)。暗条件下網膜電図(scotopic ERG)においては、-4.0~1.0 log cd-s/mの光度範囲に渡る4段階強度(-4.0、-3.0、-1.0及び1 log cd-s/m)のストロボ光刺激による桿体視細胞機能検査測定を行い、明条件下網膜電図(photopic ERG)においては、-0.5~1.0 log cd-s/mの光度範囲に渡る4段階強度(-0.5、0、0.5及び1 log cd-s/m)のストロボ光刺激による錐体視細胞機能測定を行った。得られた波形データから、a波及びb波を数値化し、それぞれの測定値は平均値±標準誤差で示した。明条件下網膜電図は桿体視細胞機能を抑制するために1.3 log cd/mの白色背景光を照射する条件下において測定した。
【0097】
(結果)
実施例7により、暗順応条件下において、Klhl18 KOマウスでは、a波及びb波ともに値が低下していた(図7B及び7C)。これにより、暗所における機能(主に網膜桿体視細胞由来の機能)において、Klhl18 KOマウスは、野生型マウスと比較して、光刺激に対する反応が弱く、桿体視細胞の機能が減弱していることが確認された(図7A~C)。これは、Klhl18遺伝子を欠損し、網膜視細胞においてKlhl18タンパク質の機能が失われることにより、網膜視細胞全体が明順応化した状態にあることを示している。
これに対し、明順応条件下において、a波及びb波の値は、野生型マウス及びKlhl18 KOマウスともに正常であった(図8B及び8C)。これにより、明所における機能(主に網膜錐体視細胞由来の機能)において、光刺激に対する反応は、Klhl18 KOマウスと野生型マウスの間に違いは見られず、明所における機能は正常であった(図8A~C)。
【0098】
[実施例8](Klhl18 KOマウス網膜における光シグナル伝達タンパク質トランスデューシンαの局在解析)
(1)明条件及び暗条件下マウス網膜の採取
生後2ヶ月齢の野生型又はKlhl18 KOマウスを明順応又は暗順応させた。明順応は約1000lux下で1時間以上、暗順応は暗室で4時間以上マウスを置いて行った。眼球を明順応条件では約1000lux下、暗順応条件では暗室において赤ランプ下で回収し、4%paraformaldehyde/PBSを用いて60分から90分間固定した。固定終了後PBSで洗浄し、OCTコンパウンドで包埋した。
【0099】
(2)免疫組織化学染色
上記条件のもと採取した網膜を用いて、実施例2の(2)に記載の方法により、各マウス網膜の切片を作製した。切片をPBSで2回洗浄した後、ブロッキングバッファー(4% Nomal donkey serum/0.1% TritonX-100/PBS)で室温、1時間ブロッキングした。その後、一次抗体を4℃で、一晩反応させた。切片をPBSで3回洗浄した後、二次抗体を室温で、2時間反応させた。一次抗体には、抗GαT1抗体(トランスデューシン、ウサギポリクローナル、Santa Cruz社製、1:500希釈)を用い、二次抗体には、Alexa Flour 488標識抗ウサギ抗体(Thermo Fisher Scientific社製、1:500希釈)を用いた。二次抗体の反応終了後、PBSで3回洗浄し、封入剤を用いて封入した。全ての蛍光画像は、共焦点レーザスキャン顕微鏡(LSM700、Carl Zeiss社製)を用いて獲得した。
【0100】
(結果)
実施例8により、Klhl18 KOマウス網膜では、野生型マウス網膜と比較して、暗条件下においても光シグナル伝達タンパク質であるトランデューシンαタンパク質が視細胞層に局在していることが確認された(図9)。網膜の視細胞において、明順応下ではトランスデューシンalpha(α)サブユニットが外節から細胞体へと移動することにより光受容感度が下がること、暗順応下では逆に細胞体から外節に移動することにより光受容感度が上がることが知られている。これはKlhl18 KOマウス網膜が、暗条件下にもかかわらず明順応化していることを示している。
【0101】
[実施例9](網膜ユビキチン化酵素Klhl18タンパク質の機能阻害実験;Klhl18タンパク質のC末断片)
(1)プラスミドの作製
(pCAG-N-3xFLAG-Klhl18)
マウスKlhl18遺伝子のタンパク質(574残基)翻訳領域全長はpCMV-SPORT6-Klhl18プラスミドDNA(GenBank accession no.BC025563)(Open Biosystems社製)を鋳型として、KOD-plus-(TOYOBO社製)を用いて、添付のプロトコールに従い、PCRにより増幅した。PCRに用いたプライマー配列はフォワードプライマー(配列番号66)及びリバースプライマー(配列番号67)を用いた。PCRにより増幅したDNA断片を制限酵素ClaI(NEW ENGLAND BIOLABS社製)及びNotI(TaKaRa社製)を用いて制限酵素処理した。同様に制限酵素ClaI及びNotIを用いてpCAG-N-3xFLAG(Omori et al.、Proc Natl Acad Sci U.S.A.107,22671-22676,2010)プラスミドを制限酵素処理した。制限酵素処理したDNA断片及びpCAG-N-3xFLAGプラスミドをLigation High Ver.2(TOYOBO社製)を用いて、添付のプロトコールに従って組み込み、FLAGタグ付加全長Klhl18タンパク質発現プラスミドpCAG-N-3xFLAG-Klhl18を作製した。
(pCAG-N-3xFLAG-C-Klhl18)
マウスKlhl18遺伝子のC末側タンパク質(C末側298残基)翻訳領域は、上記のFLAGタグ付加Klhl18発現プラスミドpCAG-N-3xFLAG-Klhl18を鋳型として、KOD-plus-(TOYOBO社製)を用いて、添付のプロトコールに従い、PCRにより増幅した。PCRに用いたプライマー配列はフォワードプライマー(配列番号68)及びリバースプライマー(配列番号69)を用いた。PCRにより増幅したDNA断片を制限酵素EcoRI(TaKaRa社製)及びSalI(TaKaRa社製)を用いて制限酵素処理した。同様にpCAG-N-3xFLAGプラスミドを制限酵素EcoRI及びXhoI(TOYOBO社製)を用いて制限酵素処理した。制限酵素処理したC末側タンパク質断片及びpCAG-N-3xFLAGプラスミドを、Ligation High Ver.2(TOYOBO社製)を用いて、添付のプロトコールに従って組み込み、FLAGタグ付加C末側Klhl18タンパク質発現プラスミドpCAG-N-3xFLAG-C-Klhl18を作製した。
(pCAG-N-2xHA-Unc119)
マウスUnc119遺伝子のタンパク質(262残基)翻訳領域全長は、成体C57BL/6N野生型マウス網膜cDNAを定法に従い作製し、それを鋳型として、KOD-plus-(TOYOBO社製)を用いて、添付のプロトコールに従い、PCRにより増幅した。PCRに用いたプライマー配列はフォワードプライマー(配列番号70)及びリバースプライマー(配列番号71)を用いた。PCRにより増幅したDNA断片を制限酵素XhoI(TOYOBO社製)及びNotIを用いて制限酵素処理した。同様にpCAG-N-2xHAプラスミドを制限酵素XhoI及びNotIを用いて制限酵素処理した。制限酵素処理したDNA断片及びpCAG-N-2xHAプラスミドを、Ligation High Ver.2(TOYOBO社製)を用いて、添付のプロトコールに従って組み込み、HAタグ付加Unc119タンパク質発現プラスミドpCAG-N-2xHA-Unc119を作製した。
【0102】
(2)阻害実験
HEK293T細胞株は、抗生物質(ペニシリン(Penicillin、100μg/mL)/ストレプトマイシン(Streptomycin、100μg/mL))及び10% FBSを添加したDMEM(和光純薬社製)を用い、37℃、CO濃度5%条件下で培養した。HEK293T細胞へのFLAGタグ付加全長Klhl18タンパク質発現プラスミド及び/又はFLAGタグ付加C末側Klhl18タンパク質発現プラスミド及び/又はHAタグ付加Unc119タンパク質発現プラスミド導入は、定法に従い、リン酸カルシウム法により行った。詳細には、プラスミド導入を行う前日に細胞を100mmシャーレに1×106細胞となるように播きなおした。プラスミド導入を行う直前に培養培地を交換した。各プラスミドDNAをそれぞれの組合せに応じて1μg、滅菌水と混合し、このDNA溶液に0.5M 塩化カルシウム(終濃度 125mM)を加え、さらにこの混合溶液と等量の2×BES(50mM BES、280mM NaCl、1.5mM NaHPO・12HO、pH6.95)を加えて混合した。この混合液を細胞に滴下して24時間培養した。24時間後に培地を新しいものに交換し、さらに24時間培養した後に細胞を回収した。
回収した細胞は、実施例6と同様の方法により、ウエスタンブロッティングに用いた。一次抗体は、抗HA抗体(ラットモノクローナル、Roche社製、1:10,000希釈)を用い、二次抗体は、抗ラットIgG(H+L)HRP付加抗体(ヤギポリクローナル、Zymed社製、1:6,000希釈)を使用した。
【0103】
(結果)
実施例9により、マウスKlhl18遺伝子のC末側タンパク質(C末側298残基)は、全長Klhl18タンパク質による標的Unc119タンパク質の分解を抑制できることが確認された(図10)。
【0104】
[実施例10](網膜ユビキチン化酵素Klhl18タンパク質の機能阻害実験;プロテオソーム阻害剤(MG-132))
実施例9で作製したpCAG-N-3xFLAG-Klhl18プラスミド及び/又はpCAG-N-2xHA-Unc119プラスミドのHEK293T細胞への導入は、定法に従い、リン酸カルシウム法により行った。プロテオソーム阻害剤MG-132(Merck Millipore社製)は、DMSO(Dimethyl Sulfoxide)に10mMになるように溶解したストック溶液を作製した。その後、0.1% MG-132含有培地(最終濃度10μM)又はコントロールとして、0.1% DMSO含有培地と交換し、培地交換6時間後に細胞を回収した。回収した細胞は、実施例9と同じ方法により、ウエスタンブロッティングを行った。
Neuro2a細胞に対しても、同様の実験手順に従って実験を行った。
【0105】
(結果)
実施例10により、プロテアソーム阻害剤MG-132は、全長Klhl18タンパク質による標的Unc119タンパク質の分解を抑制できることが確認された(図11)。Neuro2a細胞においても、同様の効果が確認された。
【0106】
[実施例11](Klhl18とUnc119の結合解析実験1)
(1)プラスミドの作製
(pCAG-N-3xFLAG-Unc119)
実施例9において作製したpCAG-N-2xHA-Unc119からUnc119 cDNA断片をXhoIとNotIを用いて制限酵素処理した後、同じくXhoIとNotIを用いて制限酵素処理したpCAG-N-2xHAプラスミドにLigation High Ver.2(TOYOBO社)を使用して組み込み、HAタグ付加Unc119発現プラスミドpCAG-N-3xFLAG-Unc119を作製した。
(pCAG-N-2xHA-Klhl18)
実施例9において作製したpCAG-N-3xFLAG-Klhl18からKlhl18 cDNA断片をClaIとNotIを用いて制限酵素処理した後、同じくClaIとNotIを用いて制限酵素処理したpCAG-N-2xHAプラスミドにLigation High Ver.2(TOYOBO社)を使用して組み込み、FLAGタグ付加全長Klhl18発現プラスミドpCAG-N-2xHA-Klhl18を作製した。
【0107】
(2)免疫沈降法
実施例9で作製したpCAG-N-3xFLAG-Klhl18及びpCAG-N-2xHA-Unc119、並びに実施例11で作製したpCAG-N-3xFLAG-Unc119及びpCAG-N-2xHA-Klhl18を使用して免疫沈降法を行った。免疫沈降にはAnti-FLAG M2 Affinity Gel(Sigma)を使用した。HEK293T細胞にKlhl18発現プラスミドpCAG-N-3xFLAG-Klhl18とUnc119発現プラスミドpCAG-N-2xHA-Unc119、並びにKlhl18発現プラスミドpCAG-N-2xHA-Klhl18とUnc119発現プラスミドpCAG-N-3xFLAG-Unc119の組み合わせで共発現させ、Lysis buffer(TBS,1% NP-40,1 mM EDTA,5μg/μL Aprotinin,2 μg/μL Leupeptin,3 μg/μL Pepstatin A,1 mM PMSF)で細胞をlysisし、遠心(14,000 rpm、半径 5.4cm、4℃、10分間)した。遠心後、上清にAnti-FLAG M2 Affinity Gelを加え4℃で一晩反応させた。沈降物の溶出にはFLAG peptide(Sigma)を使用した。免疫沈降のサンプルはウエスタンブロッティングにより解析した。
【0108】
(結果)
実施例11により、pCAG-N-3xFLAG-Klhl18とpCAG-N-2xHA-Unc119が相互作用することが確認された(図12A)。また、FlagタグとHAタグを入れ替えて実験を行った場合でも、同様にpCAG-N-3xFLAG-Unc119とpCAG-N-2xHA-Klhl18が相互作用することが確認された(図12B)。
【0109】
[実施例12](Klhl18タンパク質によるUnc119タンパク質のユビキチン化解析)
(1)プラスミド作製
(pCAG-N-6xHis-Ub)
マウスユビキチンタンパク質(76残基)翻訳領域全長は成体C57BL/6野生型マウス網膜cDNAを鋳型として、KOD-plus-(TOYOBO社)を用いてPCRにより増幅した。PCRにはフォワードプライマー(配列番号72)及びリバースプライマー(配列番号73)を使用した。PCRにより増幅したDNA断片をXhoIとNotIを用いて制限酵素処理した後、同様にXhoIとNotIを用いて制限酵素処理したpCAG-N-6xHisプラスミドにLigation High Ver.2(TOYOBO社)を使用してそれぞれ組み込み、6Hisタグ付加ユビキチンタンパク質発現プラスミドpCAG-N-6xHis-Ubを作製した。
(pCAG-Klhl18-swap)
マウスKlhl18遺伝子の蛋白質(574残基)翻訳領域全長は、成体129Sv/Ev野生型マウス網膜cDNAを鋳型として、KOD-plus-(TOYOBO社)を用いてPCRにより増幅した。PCRには、フォワードプライマー(配列番号74)とリバースプライマー(配列番号75)を使用した。PCRにより増幅したDNA断片をpCR-Blunt IIプラスミドにLigation High Ver.2(TOYOBO社)を使用して組み込み、pCR-BluntII-Klhl18-swapを作製した。次にpCR-BluntII-Klhl18-swapプラスミドとpCAG-N-3xFlag-Klhl18プラスミドをXmaIとSacIを用いて制限酵素処理し、pCAG-N-3xFlag-Klhl18から切り出されたXmaI-SacI DNA断片をpCR-BluntII-Klhl18-swapから切り出されたXmaI-SacI DNA断片と入れ替える形でLigation High Ver.2(TOYOBO社)を使用して組み込み、Flagタグ付加Klhl18発現プラスミドpCAG-N-3xFlag-Klhl18-swapを作製した。
作製したpCAG-N-3xFlag-Klhl18-swapを鋳型として、KOD-plus-(TOYOBO社)により以下に示す配列のプライマーを用いてPCRにより増幅した。PCRには、フォワードプライマー(配列番号76)及びリバースプライマー(配列番号77)を使用した。PCRにより増幅したDNA断片をpCR-Blunt IIにLigation High Ver.2(TOYOBO社)を使用して組み込み、pCR-BluntII-Klhl18-N末+Kozakプラスミドを作製した。pCR-BluntII-Klhl18-N末+KozakプラスミドはEcoRIとHindIIIを用いて、pCAG- N-3xFlag-Klhl18-swapプラスミドはHindIIIとNotIを用いて制限酵素処理し、インサートDNA断片を得た。これらのインサートDNA断片をEcoRIとNotIを用いて制限酵素処理したpCAGGSII(Omori et al., 2010)にLigation High Ver.2(TOYOBO社)を使用してそれぞれ組み込み、タグ付加なしKlhl18発現プラスミドpCAG-Klhl18-swapを作製した。
【0110】
(2)ユビキチン化解析実験
Neuro2a細胞にpCAG-N-6xHis-Ubプラスミド、pCAG-N-2xHA-Unc119プラスミド、pCAG-Klhl18-swapプラスミドを定法に従い導入し、それらを発現させ、Lysis buffer(20 mM Tris-HCl(pH 7.5),0.5 M NaCl,8 M Urea,5 mM imidazole)で細胞を溶解し、ソニケーターで破砕した後、遠心(14,000 rpm、半径 5.4cm、4℃、10分間)した。遠心後、上清にNi-NTA-agarose beads(QIAGEN)を加え4℃で一晩反応させた。沈降物はLysis bufferで洗浄し、2xSDS Sample bufferを加えサンプル化し、SDS-PAGE、ウエスタンブロッティングにより解析した。
【0111】
(結果)
実施例12により、Klhl18タンパク質が、Unc119タンパク質をユビキチン化することが確認された(図13)。
【0112】
[実施例13](Klhl18タンパク質とUnc119タンパク質との結合解析実験2)
(1)プラスミド作製
(pCAG-N-3xFLAG-N-Klhl18)
マウスKlhl18遺伝子のN末側タンパク質(N末側276残基) 翻訳領域は作製したpCAG-Klhl18-swapプラスミドを鋳型として、PrimeSTAR Max(Takara社)を用いてPCRにより増幅した。PCRには、フォワードプライマー(配列番号78)及びリバースプライマー(配列番号79)を用いた。PCRにより増幅したDNA断片をpCAG-N-3xFLAGプラスミドに組み込み、FLAGタグ付加N末側Klhl18発現プラスミドpCAG-N-3xFLAG-N-Klhl18を作製した。
【0113】
(2)免疫沈降法
実施例9で作製したpCAG-N-2xHA-Unc119プラスミド及びpCAG-N-3xFLAG-C-Klhl18プラスミド、並びに実施例13で作製したpCAG-N-3xFLAG-N-Klhl18プラスミドを使用して、実施例11と同様の方法により免疫沈降法を行った。
【0114】
(結果)
実施例13により、Unc119タンパク質は、Klhl18の全長タンパク質及びKlhl18のC末端側タンパク質と相互作用することが確認された(図14)。これらの結果から、Unc119タンパク質は、Klhl18タンパク質のC末端領域を介して相互作用していることが確認された。
【0115】
[実施例14](網膜ユビキチン化酵素Klhl18タンパク質の機能阻害実験;Nedd8活性化酵素阻害剤(MLN4924))
実施例10と同様の方法で、pCAG-N-3xFLAG-Klhl18プラスミド及び/又はpCAG-N-2xHA-Unc119プラスミドをHEK293T細胞へ導入した。MLN4924(Active Biochem社)は、DMSO(Dimethyl Sulfoxide)に溶解した100 μMストック溶液を作製し、細胞回収の6時間前に0.3% MLN4924ストック溶液(最終濃度 0.3 μM) または0.3% DMSO(コントロール)となるように0.1% DMSO含有培地と交換し、培地交換6時間後に細胞を回収した。回収した細胞は、実施例9と同じ方法により、ウエスタンブロッティングを行った。
【0116】
(結果)
実施例14により、Nedd8活性化酵素阻害剤MLN4924は、全長Klhl18タンパク質による標的Unc119タンパク質の分解を抑制できることが確認された(図15)。
【0117】
[実施例15](in vivo エレクトロポレーション)
(1)プラスミド作製
(pCAGIG-N-3xFLAG-Unc119)
実施例11で作製したpCAG-N-3xFLAG-Unc119をSalIとNotIで制限酵素処理することにより得られたCAGプロモーターとN-3xFLAG-Unc119領域を、同じくSalIとNotIで制限酵素処理したpCAGIG(Matsuda and Cepko,2004)にLigation High Ver.2を使用して組み込むことで、FLAGタグ付加Unc119-IRES-EGFP発現プラスミドを作製した(図16)。
【0118】
(2)in vivo エレクトロポレーション
pCAGIG-N-3xFLAG-Unc119プラスミド及びコントロール用のpCAGIGプラスミドの導入は、生後0日(P0)のICRマウス(オリエンタル酵母工業株式会社から購入)に対して行った。マウスを氷冷麻酔し、30ゲージの注射針(TERUMO)を用いて瞼を切り開き、角膜と網膜の境界に小孔をあけた。この小孔に33ゲージのマイクロシリンジ(伊藤製作所)を挿入し、網膜下に0.3 μLのDNA溶液(5 μg/μL)を導入し、定法に従って、電極を用いて80 V、50 msの電気パルスを950 msの間隔をおいて5回加えた。エレクトロポレーションを行った網膜は1か月齢で回収し、定法に従って免疫染色を行った。
【0119】
(結果)
実施例15により、暗条件下において、Unc119タンパク質が過剰発現したEGFP陽性の視細胞において、細胞体でのトランスデューシンαのシグナルが増加していることが確認された(図17)。以上の結果から、Klhl18欠損マウスにおけるトランスデューシンαの局在変化は、過剰量のUnc119により引き起こされることが示唆された。
【0120】
[実施例16](マウス網膜に対する光障害実験)
(1)光障害
成体マウス(Klhl18 KOマウスをBALB/cマウス(日本SLC)と掛け合わせてアルビノ化し、Rpe65遺伝子がコードする蛋白質の450番目のアミノ酸が両アレルともロイシンになっているマウス、4~5週齢)を約24時間暗黒下で飼育し、十分に暗順応させる。散瞳剤サイプレジン(参天製薬株式会社)を点眼したのち、周囲の4面と床が鏡張りの箱の中にマウスを入れ、30分後にブルーLEDライトから青色の光を照射する。ライトの波長は約450nmで、マウスに到達する光は約7000ルクスである。3時間青色ライトを照射したのち通常の環境で飼育する。2日目からは、12時間明暗サイクルの室内照明に合わせて、約11時間の暗所飼育の後に散瞳剤(サイプレジン)を与え、30分後にブルーライトを3時間照射する。ブルーライトの照射を計6日間繰り返した。以上のタイムラインを図18に示した。翌日、実施例7と同様の方法でERGを測定した。
【0121】
(結果)
実施例16により、光障害を誘導したKlhl18 KOマウスの網膜電図では、a波(視細胞活動)及びb波(双極細胞活動)の電位が光障害を誘導した野生型コントロールマウスより、数値が高くなっていることが確認された(図19)。この結果は、Klhl18を欠損又は阻害などすることにより、光障害による視細胞の障害が抑制されることを支持するものである。
【0122】
(2)トルイジンブルー染色による視細胞層の厚みの計測
実施例2の(2)に記載の方法により、光障害を誘導した野生型コントロール及びKlhl18 KOマウスの網膜の切片を作製した。作製したマウス網膜の切片を用いて、実施例5に記載の方法により視細胞層の厚みを計測した。具体的には、作製した切片をPBSで洗浄し、0.1% toluidine blue(Sigma社)/PBSで1分間染色した。染色後、切片をPBSで3回洗浄し、標本を封入剤で封入した。封入した標本は正立型顕微鏡の微分干渉検鏡対物レンズにより観察した。視細胞層の厚みを視神経の距離に応じて計測した。
【0123】
(結果)
光障害を誘導したKlhl18 KOマウスの網膜では、光障害を誘導した野生型コントロールマウス網膜より、視細胞層の厚みが保持されていることが確認された(図20)。この結果は、Klhl18を欠損又は阻害などすることにより、光障害による視細胞の変性が抑制されることを支持するものである。
【0124】
(3)蛍光免疫染色
作製したマウス網膜の切片を用いて、蛍光免疫染色を行った。具体的には、実施例2の(2)に記載の方法により作製したマウス網膜の切片をPBSで2回洗浄した後、ブロッキングバッファー(4% Normal donkey serum/0.1% TritonX-100/PBS)で室温、1時間ブロッキングした。その後、一次抗体を4℃で、一晩反応させた。切片をPBSで3回洗浄した後、二次抗体を室温で、2時間反応させた。一次抗体には、抗Rhodopsin抗体(ロドプシン、ウサギポリクローナル、Santa Cruz社製、1:500希釈)又は抗S-opsin抗体(S-オプシン(青色錐体オプシン)、ヤギポリクローナル、Santa Cruz社製、1:500希釈)を用い、二次抗体には、それぞれAlexa Flour 488標識抗ウサギ抗体(Thermo Fisher Scientific社製、1:500希釈)及びCy3(Jackson ImmunoResearch Laboratories社、1:500希釈)抗体を使用した。二次抗体の反応終了後、PBSで3回洗浄し、封入剤を用いて封入した。全ての蛍光画像は、共焦点レーザスキャン顕微鏡(LSM700、Carl Zeiss社製)を用いて獲得した。
【0125】
(結果)
光障害を誘導したKlhl18 KOマウスの網膜の蛍光免疫染色解析において、桿体視細胞(マーカー:rhodopsin)及び錐体視細胞(マーカー:S-opsin)のシグナルの強さと厚みが、光障害を誘導した野生型コントロールマウスに比べてより保持されていることが確認された(図21)。この結果は、Klhl18を欠損又は阻害などすることにより、光障害による視細胞の変性が阻害され、視細胞が維持されていることを支持するものである。
【0126】
[実施例17](明暗条件下の網膜におけるUnc119の発現量解析)
(1)抗マウスUnc119抗体作製
(1-1)プラスミド作製
(pGEX4T-1-Unc119)
抗マウスUnc119抗体作製のための抗原部位は129 Adult retina cDNAを鋳型として、PrimeSTAR Max DNA Polymerase(TaKaRa)を用いてPCRにより増幅した。PCRには、フォワードプライマー(配列番号80)及びリバースプライマー(配列番号81)を使用した。PCRにより増幅したDNA断片をEcoRIとSalIを用いて制限酵素処理した後、同じくEcoRIとSalIを用いて制限酵素処理したpGEX4T-1プラスミドにLigation High Ver.2を使用して組み込み、GSTタグ付加Unc119発現プラスミドpGEX4T-1-Unc119を作製した。
【0127】
(1-2)GSTタグ付加Unc119タンパク質の発現及び精製
pGEX4T-1-Unc119プラスミドを大腸菌BL21(DE3)にトランスフォーメーションした。この大腸菌を100 mL LB培地(Amp)で一晩前培養し、その大腸菌培養液を吸光度OD600が0.2前後になるようにLB培地(Amp)で希釈した。その後、培養液の吸光度OD600が0.6前後になるまで大腸菌を培養し、終濃度1 mM IPTGを加えて25℃で3.5時間、GST-Unc119タンパク質を発現誘導した。
GST-Unc119タンパク質の発現を誘導したBL21(DE3)を0.1 M EDTA,1% Triton X-100,1mM PMSF,2μg/ml Leupeptin,5μg/ml Aprotinin,3μg/ml PepstatinA in PBS中で超音波破砕した。遠心分離(10,000 rpm、半径 5.4cm、10分間、4℃)後、上清をGlutathione SepharoseTM 4B(GE Healthcare)に吸着させ、1% NP-40,150 mM NaCl,20 mM Tris(pH7.4),5 mM EDTA,1 mM PMSF,2ug/ml Leupeptin,5μg/ml Aprotinin,3μg/ml PepstatinAで樹脂を洗った。樹脂からの溶出には20 mM Glutathione/120 mM NaCl/100 mM Tris(pH 8.0)を用いた。
【0128】
(1-3)抗マウスUnc119抗体の作製
定法に従って、精製した抗原を2週間おきに5回モルモットに注射した。最後の抗原注射から1週間後に採血してUnc119に対する抗血清を得た。
【0129】
(2)明暗条件下のマウス網膜タンパク質の回収
明順応は約1,000 lux下で約4時間、暗順応は暗室で約4時間マウスを置いて行った。明順応、暗順応条件下で野生型マウス、Klhl18 KOマウスそれぞれの眼球から網膜を回収し、Lysis buffer(TBS,1% NP-40,1 mM EDTA,5 μg/μL Aprotinin,2 μg/μL Leupeptin,3 μg/μL Pepstatin A,1 mM PMSF) でピペッティングにより溶解させ、氷上に30分間静置した。遠心(14,000 rpm、半径 5.4cm、10分間、4℃)した後、上清を回収し、等量の2×サンプルバッファー(0.1 M Tris-HCl(pH 6.8),1% SDS,βメルカプトエタノール,グリセロール,BPB)を加え、室温で30分間静置した。
【0130】
(3)ウエスタンブロッティング及び免疫染色による解析
実施例6と同様の方法により、回収したタンパク質を用いてウエスタンブロッティングを行った。ウエスタンブロッティングにおける抗Unc119抗体は1:500希釈で使用した。
明順応、暗順応条件下で野生型マウス及びKlhl18 KOマウスからそれぞれ眼球を回収し、4% PFA/PBS中で室温30分間静置した。固定終了後PBSで洗浄し30% Sucrose/PBSに一晩置いた。すべてのサンプルはO.C.Tコンパウンドで包埋し、実施例2の(2)に記載の方法により、切片を作製し、免疫染色を行った。一次抗体は抗Unc119抗体を1:200希釈で使用した。
【0131】
(結果)
実施例17により、明条件下の野生型マウス網膜におけるUnc119タンパク質量が、暗条件下の野生型マウス網膜におけるUnc119タンパク質量よりも多いことが確認された(図22A及び図22B)。Klhl18 KOマウス網膜におけるUnc119タンパク質量は、明暗条件下のどちらにおいても、野生型マウス網膜のUnc119タンパク質量よりも多いことが確認された(図22A及び図22B)。この結果より、明条件下よりも暗条件下において、Klhl18タンパク質はUnc119タンパク質を効率よく分解することが示唆された。
【0132】
[実施例18](RPE65遺伝子欠損マウスにおけるKlhl18タンパク質欠損による視覚機能への影響)
(1)RPE65遺伝子欠損マウスの作製
RPE65欠損マウスはCRISPR/Cas9システムを用いて作製した。マウスRPE65遺伝子のエクソン2内とエクソン3内に、CRISPR/Cas9の標的となる2種類のガイドRNA配列をデザインし、ガイドRNAの配列を含むオリゴDNAを作製して、RPE65 CRISPR-51とRPE65 CRISPR-31、RPE65 CRISPR-52とRPE65 CRISPR-32をそれぞれ等量(100pg)ずつ混ぜ、65℃で10分加温した後、20℃で30分静置しアニーリングさせ2本鎖DNAとした。アニーリングはBbsI(NEB社)で処理したpX330ベクター(Addgene社)にLigation High ver.2キット(TOYOBO社)を用いて組み込んだ。ガイドRNAの配列を含むオリゴDNAとして、配列番号82~85で示されるDNAを用いた。
作製した2種類のプラスミドDNAを生理食塩水にそれぞれ3ng/μL(計6ng/μL)の濃度になるように調整し、それをマイクロピペットプラー装置(P-97/IVF、Sutter社)を用いて先端を鋭利化しガラス針にしたガラスキャピラリー(G1.2、Narishige社)に充填し、倒立顕微鏡下(AxioVert200、Zeiss社)においてマニュピレーター(TranferMan NK2、Eppendorf社)を用いて、BDF1マウス(C57BL/6N雌とDBA2雄を掛け合わせた子、日本SLC社)の受精卵前核にインジェクションし、インジェクションした受精卵を偽妊娠雌マウス(ICRマウス、SLC社)に卵管移植して、生まれてきたマウスのうちRPE65遺伝子にDNA塩基欠損変異を持つ個体をシークエンス解析によって選別し、RPE65ヘテロ欠損マウスを作製した。RPE65ヘテロ欠損マウス同士を交配し、RPE65完全欠損マウス(RPE65 KOマウスという)を得た。
【0133】
(2)RPE65遺伝子とKlhl18遺伝子のダブル欠損マウスの作製
上記で得られたRPE65 KOマウスと、実施例3で作製したKlhl18 KOマウスとを交配させることにより、RPE65遺伝子とKlhl18遺伝子のヘテロ欠損マウスを得た。RPE65遺伝子とKlhl18遺伝子のヘテロ欠損マウス同士を交配し、RPE65遺伝子とKlhl18遺伝子を完全に欠損するマウス(ダブルKOマウスという)を得た。
【0134】
(3)網膜電図(Electroretinogram;ERG)検査
生後6ヶ月齢のRPE65欠損マウス又はダブルKOマウスを用意する以外は、実施例7と同様にして、明順応又は暗順応させ、ERGを測定した。
【0135】
(結果)
上記より、ダブルKOマウスの網膜電図では、暗所条件下及び明所条件下のいずれにおいても電位がRPE65欠損マウスより高くなっていることが確認された(図23)。この結果は、RPE65欠損マウスの網膜視細胞の変性が、Klhl18の欠損によって抑制されることを示しており、Klhl18を欠損又は阻害などすることが遺伝性の網膜色素変性症の改善又は予防に有効であることが示唆される。
【0136】
[実施例19](ユビキチン化複合体タンパク質の活性阻害物質を投与したマウスに対する光障害実験)
暗黒下で7時間飼育し暗順応させた4週齢のBALB/cマウス(日本SLC社)に、暗所下でMLN4924(Chemscene社)を背中部に皮下注射した(60mg/kg)。4時間後に、周囲の4面と床が鏡張りの箱の中にマウスを入れてブルーLEDライトから青色の光を照射した。ライトの波長は約450nmで、マウスに到達する光は約7000ルクスである。3時間青色ライトを照射したのち通常の環境で10時間飼育した。これを1サイクルとし、計3日間繰り返した。最後の青色光照射から4日後に、実施例16と同様にして、網膜電図(ERG)測定および網膜解剖により組織解析を行った。なお、コントロールとしては、DMSOを投与したマウスを用いた。
【0137】
(結果)
上記より、MLN4924を投与したマウスにおいては、a波(視細胞活動)及びb波(双極細胞活動)の電位がコントロールマウスより高くなっていることが確認された(図24)。この結果は、MLN4924投与により、光障害による網膜生理機能低下が抑制されることを示している。
【0138】
また、網膜の蛍光免疫染色解析において、桿体視細胞(マーカー:rhodopsin)及び錐体視細胞(マーカー:S-opsin、M-opsin)のシグナルの強さと厚みが、MLN4924を投与したマウスの方がコントロールマウスに比べてより保持されていることが確認された(図25)。この結果は、MLN4924投与により、光障害による視細胞の変性が阻害され、視細胞が維持されていることを支持するものである。
【0139】
さらに、MLN4924を投与したマウスの網膜では、コントロールマウスの網膜より、視細胞層の厚みが保持されていることが確認された(図26)。この結果は、MLN4924投与により、光障害による視細胞の変性が抑制されることを支持するものである。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
図23
図24
図25
図26
【配列表】
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