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特許7193218シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法
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  • 特許-シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法 図1
  • 特許-シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/06 20060101AFI20221213BHJP
   C08G 77/42 20060101ALI20221213BHJP
   C08G 77/50 20060101ALI20221213BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20221213BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 8/895 20060101ALI20221213BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20221213BHJP
【FI】
C08G77/06
C08G77/42
C08G77/50
C09D201/00
C09D183/04
A61K8/02
A61K8/895
C09D7/65
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018244389
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020105330
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】脇田 万里
(72)【発明者】
【氏名】谷口 裕子
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 武
(72)【発明者】
【氏名】神崎 康枝
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-226812(JP,A)
【文献】特開平07-196815(JP,A)
【文献】特開2013-213041(JP,A)
【文献】特開2018-177881(JP,A)
【文献】特開2011-105662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00- 77/62
C09D183/00-183/16
A61K 8/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(I)、(II)および(III)を含む、シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法;
工程(I):
(a)炭素数2~20のアルケニル基を分子内に少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン、
(b)ケイ素原子結合水素原子を分子内に少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および
(d)(d1-1)R Si(OA) (式中、R は炭素原子数1~20のアルキル基または炭素原子数6~20のアリール基であり、Aは独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基またはフェニル基)で表される加水分解性シラン、および、
Si(OA) (式中、Aは独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基またはフェニル基)で表される加水分解性シランを物質量比が8:2~3:7の範囲内で含む、加水分解性シランの混合物
を含む混合物を、水中に乳化する工程
工程(II):
工程(I)で得た乳化物を(c)ヒドロシリル化反応触媒の存在下で硬化させ、球状のシリコーンエラストマー粒子を得る工程
工程(III):
工程(II)と同時または工程(II)の後に、シリコーンエラストマー粒子の表面を(d)加水分解性シランの縮合反応物であるシリコーン樹脂により被覆する工程。
【請求項2】
(a)成分のアルケニル基含有量(Alk)と(b)成分のケイ素原子結合水素原子含有量(H)のモル比が
H/Alk=0.7~1.5
の範囲にある、請求項1に記載のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法。
【請求項3】
さらに、工程(III)で得たシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子(凝集物を含む)を含む水系分散体から、水分を除去する工程を有する、請求項1または請求項2に記載のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法。
【請求項4】
さらに、工程(III)で得たシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子(凝集物
を含む)を機械的手段を用いて解砕して、レーザー回折散乱法により測定される平均一次粒子径が0.5~20μmであるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を得る工程を有する、請求項1~のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法を含む、有機樹脂添加剤の製造方法。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法を含む、塗料原料またはコーティング剤原料の製造方法。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法を含む、化粧料原料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その表面がシリコーン樹脂により被覆されたシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンエラストマー粒子は、化粧料、塗料、インキ、熱硬化性有機樹脂、熱可塑性有機樹脂等の改質添加剤として使用されており、特に、熱硬化性有機樹脂の内部応力緩和剤や有機樹脂フィルムの表面潤滑剤として好適に使用されている。特に、シリコーンエラストマー粒子は耐熱性、エラストマー骨格に由来する柔軟性に優れることから、高機能の有機樹脂、特に半導体用樹脂基材や機能性有機樹脂フィルム、それらに対する樹脂コーティング等において、内部応力緩和剤として特に好適である。
【0003】
一方、シリコーンエラストマー粒子は帯電しやすく、上記の熱硬化性有機樹脂に添加した場合、凝集しやすく、樹脂中への均一分散性に劣り、硬化後の有機樹脂について応力緩和剤として期待される性能が不十分となる場合がある。このため、特許文献1~4(特に、特許文献3)には、シリコーン粒子表面をSiO3/2で表されるシルセスキオキサン単位からなるシリコーン樹脂により被覆してなり、有機樹脂への分散性等が改善されたシリコーン複合粒子およびその内部応力緩和剤または化粧料組成物等の用途が提案されている。しかしながら、これらのシリコーン複合粒子は、シリコーンエラストマー粒子を単独で配合する場合に比べて、有機樹脂への分散性および応力緩和性が改善されているが、シルセスキオキサン単位からなるシリコーン樹脂構造で表面が被覆されているので、飛散しやすく、かつ、容器(ビニール等の有機樹脂製の内袋を含む)に付着して取扱作業性が悪化する場合がある。さらに、その吸油性等についても改善の余地を残しており、化粧料原料としてさらに感触の改善が求められていた。
【0004】
さらに、本件出願人等は、特許文献5~特許文献7においてケイ素原子結合加水分解性基を有するケイ素化合物(シロキサン、シラン等)で架橋性シリコーン粒子の表面を被覆したコア-シェル型の架橋シリコーン粒子等を提案している。しかしながら、これらの文献に記載のシリコーン樹脂被覆架橋シリコーン粒子であっても、上記の一次粒子の凝集に由来する問題を十分に解決できず、その性能および工業的生産効率等は未だ改善の余地を残していた。
【0005】
特に、これらの文献にかかるシリコーン複合粒子およびシリコーン樹脂被覆架橋シリコーン粒子は、シリコーン粒子の合成後、当該シリコーン粒子をシルセスキオキサン等のシリコーン樹脂で被覆するため、複数の容器を用いる多段階の製造工程が必要であり、工業的生産効率に優れるシリコーン樹脂被覆架橋シリコーン粒子の製造方法が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-132878号公報
【文献】特開2011-105663号公報
【文献】特開2011-168634号公報
【文献】特開2011-102354号公報
【文献】特開2003-226812号公報
【文献】国際特許公開 WO2006/098334
【文献】国際特許出願番号PCT/JP2018/46703
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の電子顕微鏡写真
図2】比較例4のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の電子顕微鏡写真
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、工業的スケールで容易に生産することができ、かつ、その製造プロセスが平易かつ簡便であるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、当該シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子について、有機樹脂添加剤、化粧料原料その他の用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、鋭意検討の結果、本発明者らは、(a)炭素数2~20のアルケニル基を分子内に少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン、(b)ケイ素原子結合水素原子を分子内に少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および(d)加水分解性シランを含む混合物を、水中に乳化し、(c)ヒドロシリル化反応触媒の存在下で硬化させ、球状のシリコーンエラストマー粒子を得、これと同時または球状のシリコーンエラストマー粒子を形成させた後に、シリコーンエラストマー粒子の表面を(d)加水分解性シランの縮合反応物であるシリコーン樹脂により被覆することを特徴とする製造方法により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
また、本発明者らは、上記のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造工程を含む有機樹脂添加剤、化粧料原料その他の製造方法により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明の目的は、
[1]以下の工程(I)、(II)および(III)を含む、シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法により達成される。
工程(I):
(a)炭素数2~20のアルケニル基を分子内に少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン、
(b)ケイ素原子結合水素原子を分子内に少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および
(c)加水分解性シラン
を含む混合物を、水中に乳化する工程
工程(II):
工程(I)で得た乳化物を(d)ヒドロシリル化反応触媒の存在下で硬化させ、球状のシリコーンエラストマー粒子を得る工程
工程(III):
工程(II)と同時または工程(II)の後に、シリコーンエラストマー粒子の表面を(c)加水分解性シランの縮合反応物であるシリコーン樹脂により被覆する工程
【0012】
好適には、本発明の目的は、下記のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法により達成される。
[2]上記の工程(I)における(c)加水分解性シランが、
(c1)RSi(OA) (式中、Rは1価有機基であり、Aは独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基またはフェニル基)で表される加水分解性シラン、
RSi(OA) (式中、Rは1価有機基であり、Aは独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基またはフェニル基)で表される加水分解性シラン、および
Si(OA) (式中、Aは独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基またはフェニル基)で表される加水分解性シランから選ばれる2種類以上の加水分解性シランの混合物、または
(c2)RSi(OA) (式中、Rは1価有機基であり、Aは独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基またはフェニル基)で表される加水分解性シラン
である、[1]に記載のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法。
[3]上記の工程(I)における(c)加水分解性シランが、
(c1-1)R Si(OA) (式中、Rは炭素原子数1~20のアルキル基または炭素原子数6~20のアリール基であり、Aは独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基またはフェニル基)で表される加水分解性シラン、および、
Si(OA) (式中、Aは独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基またはフェニル基)で表される加水分解性シランを物質量比が8:2~3:7の範囲内で含む、加水分解性シランの混合物である、[1]または[2]に記載のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法。
[4](a)成分のアルケニル基含有量(Alk)と(b)成分のケイ素原子結合水素原子含有量(H)のモル比が
H/Alk= 0.7 ~ 1.5
の範囲にある、[1]~[3]のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法。
[5]さらに、工程(III)で得たシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子(凝集物を含む)を含む水系分散体から、水分を除去する工程を有する、[1]~[4]のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法。
[6]さらに、工程(III)で得たシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子(凝集物を含む)を機械的手段を用いて解砕して、レーザー回折散乱法により測定される平均一次粒子径が0.5~20μmであるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を得る工程を有する、[1]~[5]のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法。
[7][1]~[6]のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法を含む、有機樹脂添加剤の製造方法。
[8][1]~[6]のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法を含む、塗料原料またはコーティング剤原料の製造方法。
[9][1]~[6]のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法を含む、化粧料原料の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造法は、工業的スケールで容易に実施でき、簡便かつサイクルタイムが短いため、生産効率に著しく優れる。さらに、本発明の製造方法により得られたシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子はエポキシ樹脂等の硬化性有機樹脂への分散性および吸油性に優れ、かつ、従来のシリコーンエラストマー粒子に比べて二次凝集性が低いため取扱作業性に優れるものであるので、応力緩和特性等の機能に優れた有機樹脂添加剤、感触等に優れる化粧料原料その他の用途に好適に使用可能である。さらに、本発明にかかるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を含む化粧料組成物により、使用感に優れた化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法等について、詳細に説明する。
【0015】
[シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の形成]
本発明にかかるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法は、(a)炭素数2~20のアルケニル基を分子内に少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン、
(b)ケイ素原子結合水素原子を分子内に少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および(d)加水分解性シランを含む混合物を、水中に乳化し、(c)ヒドロシリル化反応触媒の存在下で硬化させ、球状のシリコーンエラストマー粒子を得、これと同時または球状のシリコーンエラストマー粒子を形成させた後に、シリコーンエラストマー粒子の表面を(d)加水分解性シランの縮合反応物であるシリコーン樹脂により被覆する方法が挙げられる。なお、シリコーンエラストマー粒子自体、それを与えるシリコーンエラストマー粒子形成用架橋性組成物の詳細、加水分解性シランの詳細については、後述する。
【0016】
具体的には、本発明にかかるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法は、
以下の工程(I)、(II)および(III)を含む製造方法により好適に得ることができる。
工程(I):
(a)炭素数2~20のアルケニル基を分子内に少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン、
(b)ケイ素原子結合水素原子を分子内に少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および
(d)加水分解性シラン
を含む混合物を、水中に乳化する工程
工程(II):
工程(I)で得た乳化物を(c)ヒドロシリル化反応触媒の存在下で硬化させ、球状のシリコーンエラストマー粒子を得る工程
工程(III):
工程(II)と同時または工程(II)の後に、シリコーンエラストマー粒子の表面を(d)加水分解性シランの縮合反応物であるシリコーン樹脂により被覆する工程
【0017】
上記の方法においては、シリコーンエラストマー粒子形成用架橋性組成物の構成成分である、(a)成分,(b)成分および(d)加水分解性シランを含む混合物を界面活性剤水溶液中に乳化し、硬化させた後、または硬化とともに、シリコーンエラストマー粒子表面をシリコーン樹脂で被覆したシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を得ることができる。また、乳化粒子径を調整することで、粒径を容易に調整することができる。この界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、ベタイン系が例示される。界面活性剤の種類や含有量により、得られるシリコーンエラストマー粒子の粒径が異なる。粒径の小さいシリコーンエラストマー粒子を調製するためには、この界面活性剤の添加量は、架橋性組成物100質量部に対して0.5~50質量部の範囲内であることが好ましい。一方、粒径の大きいシリコーンエラストマー粒子調製するためには、この界面活性剤の添加量は、架橋性組成物100質量部に対して0.1~10質量部の範囲内であることが好ましい。なお、分散媒として水の添加量は、架橋性組成物100質量部に対して20~1,500質量部、50~1000質量部の範囲内であることが好ましい。
【0018】
シリコーンエラストマー粒子形成用架橋性組成物および加水分解性シランを水中に均一に分散させるため乳化機を用いることが好ましい。この乳化機としては、ホモミキサー、パドルミキサー、ヘンシェルミキサー、ホモディスパー、コロイドミル、プロペラ攪拌機、ホモジナイザー、インライン式連続乳化機、超音波乳化機、真空式練合機が例示される。
【0019】
次いで、上記の方法により調製された、加水分解性シランを含むシリコーンエラストマー粒子形成用架橋性組成物の水系分散液を、加熱または室温で放置することにより、この水分散液中の架橋性シリコーンエラストマー組成物を硬化させて、シリコーンエラストマー粒子の水系分散液を調製することができる。シリコーンエラストマー粒子の水系分散液を加熱する場合には、その加熱温度は100℃以下であることが好ましく、特に、10~95℃であることが好ましい。また、架橋性シリコーンエラストマー組成物の水系分散液を加熱する方法としては、例えば、この水系分散液を直接加熱する方法、この水系分散液を熱水中へ添加する方法が挙げられる。
【0020】
さらに、上記シリコーンエラストマー粒子の水系分散液の形成と共に、またはシリコーンエラストマー粒子の水系分散液の形成の後、当該水系分散液中に含まれる加水分解性シランの加水分解縮合反応により、シリコーンエラストマー粒子表面をシリコーン樹脂により被覆することができる。シリコーン樹脂による被覆条件は、後述する。
【0021】
上記のシリコーン樹脂による被覆により、シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の水系分散液を得ることができる。当該水系分散液は室温で安定であり、そのまま化粧料原料、水系の塗料・コーティング剤用の添加剤として使用することができる。
【0022】
さらに、シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の水系分散液から水を除去することにより、シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を調製することができる。当該水系分散液から水を除去する方法としては、例えば、真空乾燥機、熱風循環式オーブン、スプレードライヤーを用いて乾燥する方法が挙げられる。なお、スプレードライヤーの加熱・乾燥温度は、シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の耐熱性、架橋温度等に基づいて適宜設定する必要がある。なお、得られた微粒子の二次凝集を防止するため、シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の温度を、その表面を被覆するシリコーン樹脂のガラス転移温度以下に制御することが好ましい。このようにして得られたシリコーンエラストマー粒子は、サイクロン、バッグフィルター等で回収できる。
【0023】
[解砕/分級操作]
本発明のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法は、上記の方法であるが、水分の除去等により得られたシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子が凝集している場合は、ジェットミル、ボールミル、ハンマーミル等の粉砕機で機械力を用いて解砕する工程を有してよくかつ好ましい。さらに、特定の粒子径以下となるように、ふるいを用いて分級されていてもよい。特に凝集物を含むシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を機械力を用いて解砕してから利用することにより、粗大粒子を含まない均一な機能性粒子を得ることができ、各種有機樹脂への分散性、応力緩和特性、化粧料に配合した場合の使用感等が改善される。
【0024】
[平均一次粒子径]
本発明のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法は、その平均一次粒子径において特に限定されるものではないが、有機樹脂の応力緩和を目的として添加される有機樹脂添加剤の場合、レーザー回折散乱法により測定される平均一次粒子径が0.5~20μmであることが好ましく、0.5~15μmであることがより好ましい。なお、シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の粒子径は、被覆前のシリコーンエラストマー粒子、被覆量および上記の解砕/分級工程に応じて制御される。
【0025】
[シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造上の利点]
本発明のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を上記の製造方法により得た場合、シリコーン樹脂によるシリコーンエラストマー粒子の表面の被覆状態が均一かつ滑らかになり、シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の二次凝集が効果的に抑制され、経時的な凝集粒子径の増大等の取扱作業性の問題を生じにくい。さらに、当該製造方法は、シリコーンエラストマー粒子形成用架橋性組成物および加水分解性シランを含む混合物を乳化して水性分散体を形成し、硬化反応およびシリコーン樹脂による表面被覆を同一容器(すなわち、ワンポッド)中で行うため、被覆前のシリコーンエラストマー粒子を単離して反応溶液を形成させ、加水分解性シランを反応溶液中に滴下する従来のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製法に比べて、短時間かつ高効率で製造を行うことができる利点がある。
【0026】
本発明の製造方法にかかるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子は、その表面の一部又は全部がシリコーン樹脂で被覆されている。好適には、RSiO2/2(Rは一価有機基)で表されるDシロキサン単位、RSiO3/2(Rは一価有機基)で表されるTシロキサン単位およびSiO4/2で表されるQシロキサン単位から選ばれる2種類のシロキサン単位からなるシリコーン樹脂(すなわち、DQ,DTおよびTQシリコーン樹脂)またはRSiO3/2(Rは一価有機基)で表されるTシロキサン単位(シルセスキオキサンともいう)により被覆され、シリコーンエラストマー粒子内の少なくとも二つのケイ素原子が炭素数2~20のシルアルキレン基により架橋された構造を有するものである。なお、以下、単に「シリコーンエラストマー粒子」という場合は、シリコーン樹脂により被覆乃至複合化される前のシリコーンエラストマー粒子を表すものとする。
【0027】
[被覆前のシリコーンエラストマー粒子]
まず、シリコーンエラストマー粒子は、その粒子内に少なくとも二つのケイ素原子が炭素数2~20のシルアルキレン基により架橋された構造を有する。このようなシルアルキレン架橋構造は、異なるシロキサン分子間で、炭素数2~20のアルケニル基とケイ素原子結合水素原子のヒドロシリル化反応が進行することにより形成されることが好ましい。本発明において、シリコーンエラストマー粒子を構成するシロキサン中のケイ素原子と他のケイ素原子間を架橋するシルアルキレン基は、炭素数2~16のシルアルキレン基であることが好ましく、この炭素数は2~8の範囲がより好ましく、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基またはヘキシレン基であることが特に好ましい。
【0028】
本発明に係るシリコーンエラストマー粒子は、シリコーン樹脂により被覆される前の平均一次粒子径において特に限定されるものではないが、有機樹脂の応力緩和を目的として添加される有機樹脂添加剤の場合、レーザー回折散乱法により測定される平均一次粒子径が0.4~19μmであることが好ましい。かかるシリコーンエラストマー粒子は、さらに、SiO4/2で表されるシロキサン単位からなるシリコーン樹脂により表面が被覆され、さらに、必要に応じて分級されて、最終的にレーザー回折散乱法により測定される平均一次粒子径が0.5~20μmのシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を与えるものである。なお、被覆後は、被覆前のシリコーンエラストマー粒子に比べて粒子の平均一次粒子径が増大することは言うまでもない。
【0029】
本発明に係るシリコーンエラストマー粒子の形状としては、例えば、球状、真球状、楕円状、不定形状が挙げられ、特に、球状、真球状であることが好ましい。なお、本発明においては、加水分解性シラン類を架橋反応性シリコーン原料と共に乳化することで、シリコーン樹脂で被覆された球状のシリコーンエラストマー粒子を含む水系サスペンジョンを一の反応容器中で得ることができ、当該水系サスペンジョンを真空乾燥機、熱風循環式オーブン、スプレードライヤーを用いて乾燥する方法により、球状のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を直接製造することができるため、被覆していないシリコーンエラストマー粒子を別途製造し、その表面を被覆する必要は必ずしもない。
【0030】
本発明に係るシリコーンエラストマー粒子は、化粧料原料としての使用感、有機樹脂に配合した場合の応力緩和およびべたつき防止等の技術的効果の見地から、弾性を有するエラストマー粒子であり、好適には、その硬化前のシリコーンエラストマー粒子形成用架橋性組成物をシート状に硬化させた場合、JIS K6301に規定されるJIS A硬度計による測定で、10~80の範囲であることが好ましい。シリコーンエラストマー粒子形成用架橋性組成物をシート状に硬化して測定されるゴムシートのJIS-A硬度が前記範囲内であると、得られるシリコーンエラストマー粒子は、凝集性が十分に抑えられ、流動性、分散性、さらさら感、なめらかさ、柔らかな感触に富んだものとなりやすく、さらに、前記のJIS-A硬度を選択することで、有機樹脂に配合した場合の応力緩和性を改善可能であり、かつ、シリコーン樹脂被覆後の取扱作業性にも優れるものである。さらに、シリコーン樹脂被覆後の粒子について、それを配合した化粧料組成物の使用感を改善することができる。なお、本発明に係るシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を有機樹脂の応力緩和剤に用いる場合には、前記のJIS-A硬度が30~80、特に50~80の範囲であるシリコーンエラストマー粒子を用いることが特に好ましい。
【0031】
本発明に係るシリコーンエラストマー粒子は、さらに、単位質量あたりのケイ素原子結合水素の含有量は300ppm以下であってよい。当該ケイ素原子結合水素の含有量は、さらに250ppm以下であることが望ましく、また、さらに200ppm以下であることが望ましい。更には、150ppm以下であることが望ましく、100ppm以下であることが望ましく、50ppm以下であること、そして更には、20ppm以下であることが望ましい。本発明に係るシリコーンエラストマー粒子において、このケイ素原子結合水素が多くなると、他のシリコーンエラストマー粒子中に残存する反応性官能基と架橋反応が進行して、経時的にシリコーンエラストマー粒子またはシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子について凝集をもたらすことになる。さらに、本発明において、シリコーンエラストマー粒子中のケイ素原子結合水素を低減することで、これらの粒子を保存する際に経時的に可燃性の水素ガスが発生することを抑制し、容器の膨張や発火等の問題を生じることなく、得られるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を、有機樹脂添加剤その他の用途において、安全に取り扱うことができる利点がある。
【0032】
なお、シリコーンエラストマー粒子中のケイ素原子結合水素を測定する方法として、アルカリを接触させてガスクロマトグラフィー(ヘッドスペース法)を用いる方法が代表的である。たとえば、シリコーンエラストマー粒子に対し、単位質量に対して等量の40%濃度の水酸化カリウムのエタノール溶液を添加して1時間静置し、反応終点までに発生した水素ガスを捕集し、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーにより定量することで同定することが可能である。
【0033】
[シリコーンエラストマー粒子形成用架橋性組成物]
上記のシリコーンエラストマー粒子は、分子内に少なくとも二つのケイ素原子が炭素数4~20のシルアルキレン基により架橋された構造を有するものであり、以下の成分を含む架橋性組成物をヒドロシリル化反応により硬化させて得ることができる。
(a)炭素数2~20のアルケニル基を分子内に少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン、
(b)ケイ素原子結合水素原子を分子内に少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および
(c)ヒドロシリル化反応触媒
【0034】
成分(a)は、炭素数2~20のアルケニル基を分子内に少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサンであり、その構造は特に限定されず、直鎖状、環状、網状、一部分岐を有する直鎖状から選ばれる1種類以上の構造であってよいが、特に、直鎖状のオルガノポリシロキサンが好ましい。また、成分(a)の粘度は、上記の架橋性組成物を水中に分散させることができる粘度またはスプレードライヤー等で分散可能な粘度範囲であることが好ましい。具体的には、25℃において、20~100,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、20~10,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0035】
シリコーンエラストマー粒子の吸油性および分散性の見地から、成分(a)は、式:-(CH3)2SiO-で示されるジメチルシロキサン単位の含有量が、分子末端のシロキサン単位以外の全シロキサン単位の90モル%以上である、直鎖状のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。同様に、得られるシリコーンエラストマー粒子の吸油性および配合後の樹脂部品を備える電子部品等の接点障害の改善の見地から、成分(a)から低重合度(重合度3~20)の環状または鎖状オルガノポリシロキサンをストリッピング等で事前に除去しておくことも好ましい。
【0036】
成分(a)中の炭素数2~20のアルケニル基には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基が例示される。反応性の観点や凝集性の観点から、アルケニル基の炭素数は2~16の範囲、2~8の範囲が好ましく、特に、ビニル基またはヘキセニル基の使用が好ましい。また、アルケニル基は、オルガノポリシロキサンの分子鎖末端にあることが好ましいが、側鎖にあってもよく、またその双方にあってもよい。また、アルケニル基以外のケイ素原子に結合している基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基等のアラルキル基;3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等の非置換もしくは置換の一価炭化水素基が例示される。
【0037】
好適には、成分(a)は、下記化学式(1)で表わされる直鎖状のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【化1】
【0038】
式(1)中、R11は、各々独立に、非置換またはハロゲン原子により置換された炭素原子数1~20のアルキル基(例えば、メチル基等)、炭素原子数6~22のアリール基(例えば、フェニル基等)または水酸基であり、工業的にはメチル基またはフェニル基であることが好ましい。Rは、炭素原子数2~20のアルケニル基であり、ビニル基またはヘキセニル基であることが特に好ましい。Rは、R11またはRで表わされる基である。mは0以上の数であり、nは1以上の数である。ただし、m、n、およびRは、上記式(1)で表わされるオルガノポリシロキサン分子中の炭素原子数2~12のアルケニル基中のビニル(CH2=CH-)部分の含有量が0.5~3.0質量%となる数であり、かつ、成分(a)の粘度が25℃において、20~10,000mPa・sとなる数である。
【0039】
成分(a)は、下記構造式(2)で表される、分子鎖両末端および側鎖にヘキセニル基を有するオルガノポリシロキサンであってよく、構造式(2)のヘキセニル基の一部又は全部がビニル基であるオルガノポリシロキサンであってもよい。
【化2】
(式(2)中、m1は0以上の数でありn1は各々正の数であり、m1は式(2)で表される分子中のヘキセニル基(-(CHCH=CH)中のビニル(CH2=CH-)部分の含有量が0.5~3.0質量%の範囲、より好ましくは1.0~2.0質量%の範囲となる数である。また、m1+n1は、式(2)で表されるオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が20mPa・s以上となる範囲の数であり、より好適には、100~500mPa・sとなる数である。)
【0040】
また、成分(a)は、(R11 SiO)Siで表される、分子鎖末端にアルケニル基を有する、分岐型のオルガノポリシロキサンであってもよい。式中、Rは、炭素原子数2~20のアルケニル基であり、R11は、各々独立に、非置換またはハロゲン原子により置換された炭素原子数1~20のアルキル基(例えば、メチル基等)、炭素原子数6~22のアリール基(例えば、フェニル基等)または水酸基である。より具体的には、
(ViMeSiO)Si,(HexMeSiO)Siで表される分岐型のオルガノポリシロキサンであってもよく、式中のViはビニル基、Meはメチル基、Hexはヘキセニル基を表すものである。
【0041】
(b)ケイ素原子結合水素原子を分子内に少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、成分(a)の架橋剤であり、1分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有することが好ましく、その水素原子の分子中における結合位置は特に限定されない。
【0042】
水素原子以外で、成分(b)が含有するケイ素原子に結合する有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、およびオクチル基等のアルキル基が例示され、メチル基であることが好ましい。また、成分(b)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造としては、直鎖状、分岐鎖状、および分岐状環状のいずれか又はそれらの1つ以上の組み合わせが例示される。なお、ケイ素結合水素原子の一分子中の数は全分子の平均値である。
【0043】
成分(b)の25℃における粘度は1~1,000mPa・sであり、好ましくは5~500mPa・sである。これは、25℃における成分(b)の粘度が1mPa・s未満であると、成分(b)がそれを含む架橋性組成物中から揮発し易くなり、1,000mPa・sを超えると、そのような成分(b)を含む架橋性組成物の硬化時間が長くなったり、硬化不良の原因になる場合がある。このような成分(b)は、特に限定されないが、例えば、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、および環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体が例示される。
【0044】
ここで、成分(a)のアルケニル基含有量(Alk)と成分(b)のケイ素原子結合水素原子含有量(H)のモル比(=ヒドロシリル化反応における反応比)であるH/Alkの値が0.7~1.5の範囲にあることが好ましい。前記のH/Alkの下限は0.80以上、0.85以上、0.90以上、0.95以上であることが好ましく、上限は1.50以下であり、更に好ましくは、1.30以下である。H/Alkの上限が前記の値を超えると、反応後に未反応のケイ素原子結合水素原子が残りやすく、逆に、H/Alk上限が前記の値未満では反応後に未反応アルケニル基が残りやすい。これらは硬化反応性基であるので、粒子中に多量に残存していると、経時的に粒子間での架橋反応の原因となり、得られたシリコーンエラストマー粒子またはシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子について凝集や分散不良、さらに、反応性水素原子が残留している場合は経時的に可燃性の水素ガス発生の原因となる場合がある。特に好適には、H/Alkの値が0.9~1.30の範囲であると、硬化反応性基が完全に消費されて架橋反応が終結し、粒子間の経時的な凝集を効果的に抑制可能である。
【0045】
成分(c)はヒドロシリル化反応触媒であり、上記の架橋性組成物中に存在するケイ素原子結合アルケニル基と、ケイ素原子結合水素原子との付加反応(ヒドロシリル化反応)を促進する触媒である。好ましいヒドロシリル化反応触媒は、白金系金属を含むヒドロシリル化反応触媒であり、具体的には、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、塩化白金酸とケトン類との錯体、塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯体、四塩化白金、白金微粉末、アルミナまたはシリカの担体に固体状白金を担持させたもの、白金黒、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体、これらの白金系触媒を含むメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性有機樹脂粉末の白金系触媒が例示される。特に、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体、塩化白金酸とテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンとの錯体、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、及び白金テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン錯体等の白金アルケニルシロキサン錯体が好ましく使用できる。なお、ヒドロシリル化反応を促進する触媒としては、鉄、ルテニウム、鉄/コバルトなどの非白金系金属触媒を用いてもよい。
【0046】
架橋性組成物への成分(c)の添加量は触媒量であればよく、通常、上記の架橋性組成物の全質量に対して、成分(c)が含有する白金系金属量が1~1,000ppmの範囲となる量が好ましく、5~500ppmの範囲となる量がさらに好ましい。なお、本発明者らが特開2014-122316号公報で提案する方法により、シリコーンエラストマー粒子中の白金金属量を低減してもよい。
【0047】
成分(c)を架橋性組成物に添加するタイミングは、シリコーンエラストマー粒子の形成方法に応じて選択可能であり、事前に組成物中に添加してもよく、成分(a)または成分(b)を異なるスプレーラインから供給し、そのいずれかに添加して噴霧中に混和する形態であってもよい。同様に、シリコーンエラストマー粒子を水中への乳化を経て形成する水系サスペンジョンを経由する場合、架橋性組成物にあらかじめ添加してもよく、別途成分(c)を含む乳化物を水中に添加してもよい。
【0048】
上記の架橋性組成物は、ヒドロシリル化反応抑制剤に代表される硬化遅延剤を含んでも良い。かかる硬化遅延剤は、アセチレン系化合物、エンイン化合物、有機窒素化合物、有機燐化合物、およびオキシム化合物が例示される。具体的な化合物としては、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、および1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ETCH)等のアルキンアルコール;3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ブチン、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ペンチン、3,5-ジメチル-3-トリメチルシロキシ-1-ヘキシン、3-メチル-3-ペンテン-1-イン、および3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;1-エチニル-1-トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2-ジメチル-3-ブチノキシ)ジメチルシラン、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニロキシ))シラン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、および1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサンが例示できる。その添加量は、成分(a)100質量部当り0.001~5質量部の範囲内であるが、使用する硬化遅延剤の種類、用いるヒドロシリル化反応触媒の特性と使用量等に応じて適宜設計可能である。
【0049】
当該架橋性組成物には、本発明の技術的効果を損なわない範囲で、上記成分以外の成分を含むことができる。例えば、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル等のエーテル類;ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等のシリコーン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類等の有機溶剤;ポリジメチルシロキサンまたはポリジメチルジフェニルシロキサンなどの非反応性のオルガノポリシロキサン(25℃において、0.5~10mPas程度の低粘度である鎖状または環状のオルガノポリシロキサンを含む);フェノール系、キノン系、アミン系、リン系、ホスファイト系、イオウ系、またはチオエーテル系などの酸化防止剤;トリアゾール系またはベンゾフェノン系などの光安定剤;リン酸エステル系、ハロゲン系、リン系、またはアンチモン系などの難燃剤;カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、または非イオン系界面活性剤などからなる1種類以上の帯電防止剤;染料;顔料などを含むことができる。
【0050】
[シリコーン樹脂による被覆]
本発明のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子は、シリコーンエラストマー粒子の表面の一部又は全部が、シリコーン樹脂、好適には、RSiO2/2(Rは一価有機基)で表されるDシロキサン単位、RSiO3/2(Rは一価有機基)で表されるTシロキサン単位およびSiO4/2で表されるQシロキサン単位から選ばれる2種類のシロキサン単位からなるシリコーン樹脂(すなわち、DQ,DTおよびTQシリコーン樹脂)または、RSiO3/2(Rは一価有機基)で表されるTシロキサン単位からなるシリコーン樹脂、特に好適には、DQシリコーン樹脂により被覆されてなることを特徴とする。
【0051】
具体的には、当該被覆に用いるシリコーン樹脂は、
i)RSiO2/2(Rは一価有機基)で表されるDシロキサン単位、およびSiO4/2で表されるQシロキサン単位からなるDQシリコーン樹脂、
ii)RSiO2/2(Rは一価有機基)で表されるDシロキサン単位、およびRSiO3/2(Rは一価有機基)で表されるTシロキサン単位からなるDTシリコーン樹脂、および
iii)RSiO3/2(Rは一価有機基)で表されるTシロキサン単位、およびSiO4/2で表されるQシロキサン単位からなるTQシリコーン樹脂
から選ばれる1種類以上のシリコーン樹脂、または
iv)RSiO3/2(Rは一価有機基)で表されるTシロキサン単位からなるTシリコーン樹脂
である。
【0052】
本発明において、好適には、シリコーン樹脂はDQシリコーン樹脂であり、R SiO2/2(Rは炭素原子数1~20のアルキル基または炭素原子数6~20のアリール基)で表されるDシロキサン単位、およびSiO4/2で表されるQシロキサン単位からなり、その物質量比が8:2~3:7の範囲内にあるDQシリコーン樹脂が特に好ましい。シリコーン樹脂を構成するD単位は2のシロキサン結合を形成し、直鎖状のシロキサン結合を形成する一方、Q単位は4のシロキサン結合を形成し、高度に分岐したネットワーク、網状のシロキサン結合を形成することから、D単位の量が前記範囲にあると、適度に柔軟なポリジオルガノシロキサン構造がシリコーン樹脂中に多量に含まれることになり、シリコーンエラストマー粒子表面におけるシリコーン樹脂膜の平滑性、柔軟性および追従性が改善され、特に効果的に、二次凝集粒子の形成を抑制する。
【0053】
上記のシリコーン樹脂は、シリコーンエラストマー粒子表面でこれらのシロキサン単位を与えるシラン化合物を加水分解反応または脱水/脱アルコール縮合反応させることで得ることができる。
【0054】
より具体的には、上記のシリコーン樹脂は、RSi(OA) (式中、Rは1価有機基であり、Aは独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基またはフェニル基)で表される加水分解性シラン、RSi(OA) (式中、Rは1価有機基であり、Aは独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基またはフェニル基)で表される加水分解性シラン、およびSi(OA) (式中、Aは独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基またはフェニル基)で表される加水分解性シランから選ばれる2種類以上の加水分解性シランの混合物または、RSi(OA) (式中、Rは1価有機基であり、Aは独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基またはフェニル基)で表される加水分解性シランを縮合反応させることで得ることができる。
【0055】
式中、Rは一価有機基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基等のアラルキル基;3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;アクリロキシ基、メタクリロキシ基、エポキシ基等の一価炭化水素基が例示される。工業的には、Rがメチル基またはフェニル基である加水分解性シランの使用が好適である。
【0056】
式中、“OA”は加水分解性の水酸基、アルコキシ基またはフェノキシ基であり、Aは独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基またはフェニル基である。シリコーン樹脂を与える縮合反応性の見地から、特に、OAは、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基およびブトキシ基である炭素原子数1~4のアルコキシ基であることが好ましく、上記の加水分解性シランにおいて、OAが炭素原子数1~4のアルコキシ基であることが特に好ましい。
【0057】
本発明におけるシリコーン樹脂は、ジオルガノジアルコキシシラン、オルガノトリアルコキシシラン、およびテトラアルコキシシランから選ばれる2種類の加水分解性シランの縮合反応物のみからなるシリコーン樹脂またはオルガノトリアルコキシシランの縮合反応物のみからなるシリコーン樹脂であることが好ましく、ジオルガノジアルコキシシランおよびテトラアルコキシシランの縮合反応物のみからなり、かつ、その物質量比が8:2~3:7の範囲内にあるDQシリコーン樹脂であることが特に好ましい。特に好適には、ジメチルジメトキシシランとテトラエトキシシランの縮合反応物であるDQシリコーン樹脂が例示される。
【0058】
加水分解性シランの縮合反応物を用いるシリコーンエラストマー粒子表面の被覆は、特に制限されるものではないが、水中において、上記のシリコーンエラストマー粒子とアルカリ性物質との存在下で、上記の加水分解性シランを加水分解縮合させて、シリコーンエラストマー粒子の表面をシリコーン樹脂で被覆することによって得られるものであってよい。なお、アルカリ性物質または酸性物質を添加するタイミングは任意であるが、シリコーンエラストマー粒子の表面を均一に被覆する見地から、上記のシリコーンエラストマー粒子を形成する架橋反応性シリコーン原料および加水分解性シランを水中に乳化したエマルジョンを形成した後、架橋反応性シリコーンのヒドロシリル化反応の後、または当該反応と共に、アルカリ性物質を当該エマルジョン中に添加することが好ましい。
【0059】
好適には、上記の上記の加水分解性シランは、上記のシリコーンエラストマー粒子を形成する架橋反応性シリコーン原料中に添加され、プロペラ翼、平板翼などの通常の攪拌機を用いて均一に混合した状態で水中に乳化されることが好ましい。
【0060】
上記の乳化状態において、シリコーンエラストマー粒子の表面を均一に被覆する見地から、シリコーンエラストマー粒子とアルカリ性物質を含む水系反応液の温度は10~60℃であることが好ましく、より好ましくは10~40℃の範囲である。上記温度範囲であれば、シリコーンエラストマー粒子の表面で加水分解性シランの加水分解・縮合反応が穏やかに進行し、均一なシリコーン樹脂による被覆がなされる。なお、反応液の攪拌は所望のシリコーン樹脂による被覆反応が完結するまで継続し、反応完結のために上記温度より高い温度(例えば40℃以上の加熱下)で行ってもよい。
【0061】
アルカリ性物質または酸性物質は加水分解性シランの加水分解・縮合反応触媒として作用する。本発明においては、アルカリ性物質が好ましく、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。アルカリ性物質はそのまま添加してもアルカリ性水溶液として添加してもよい。アルカリ性物質の添加量は、シリコーンエラストマー粒子とアルカリ性物質を含む水系反応液について、該アルカリ性物質を含む水分散液のpHが10.0~13.0、好ましくは10.5~12.5の範囲となる量である。当該pHの範囲外であると、各加水分解性シランに由来するD,T,Qの各シロキサン単位からなるシリコーン樹脂によるシリコーンエラストマー粒子の被覆が不十分となる場合がある。
【0062】
アルカリ性物質は特に限定されず、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;アンモニア;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド;またはモノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミンなどのアミン類等を使用することができる。なかでも、揮発させることにより、得られるシリコーン微粒子の粉末から容易に除去できることから、アンモニアが最も適している。アンモニアとしては、市販されているアンモニア水溶液を用いることができる。
【0063】
上記の加水分解・縮合反応の後、得られた本発明のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子はそのまま水系の分散液(水系サスペンジョン)として用いてもよいが、好適には、反応溶液から、水分を除去することで、シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を単離する。当該水系分散液から水を除去する方法としては、例えば、真空乾燥機、熱風循環式オーブン、スプレードライヤーを用いて乾燥する方法が挙げられる。なお、この操作の前処理として、加熱脱水、濾過分離、遠心分離、デカンテーション等の方法で分散液を濃縮してもよいし、必要ならば分散液を水で洗浄してもよい。
【0064】
本発明のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子において、シリコーン樹脂による被覆量は特に制限されるものではないが、シリコーン樹脂による被覆量が、シリコーンエラストマー粒子100質量部に対して5.0~40.0質量部の範囲であることが好ましく、5.0~20.0質量部の範囲が特に好ましい。前記下限未満では、前記のシリコーン樹脂による被覆量が不十分となって有機樹脂に対する均一分散性等の技術的効果が不十分となる場合がある。一方、被覆量が前記上限を超えると、特に、シリコーン樹脂中のSiO4/2で表されるQシロキサン単位およびRSiO3/2で表されるTシロキサン単位に由来する硬質な物性が強く反映されて、シリコーンエラストマー粒子に由来する弾力および弾性体としての性質が損なわれ、化粧料組成物に配合した場合の感触や使用感の悪化や有機樹脂に配合した場合の応力緩和性などが低下する場合がある。
【0065】
上記のシリコーン樹脂による被覆量は、シリコーン樹脂を形成する加水分解性シランの上記シリコーンエラストマー粒子形成用架橋性組成物への添加量をコントロールすることにより、容易に制御することができる。
【0066】
[シリコーン樹脂によるシリコーンエラストマー粒子の被覆状態]
本発明にかかるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子は、上記の製造工程を採用することで、シリコーンエラストマー粒子表面が、シリコーン樹脂により均一かつ滑らかに被覆され、シリコーン樹脂表面の突起や凹凸が極めて少ない被覆状態を実現することができる。特に球状のシリコーンエラストマー粒子において、シリコーン樹脂による被覆状態が均一であると、滑らかな粒子表面が粒子間の二次凝集を抑制し、二次粒子径の増大を抑制する一方、表面摩擦を生じにくくなるため、応力緩和性や潤滑性、さらに、化粧料に配合した場合の良好な感触を実現することができる。
【0067】
[有機樹脂添加剤および有機樹脂、塗料、コーティング剤の原料の製造法]
本発明にかかるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子は、有機樹脂に対する均一分散性および所望により応力緩和特性等に優れ、かつ、配合時に飛散/容器への付着が起こり難いので取り扱い作業性に著しく優れるため、本発明にかかるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造工程を含む有機樹脂、塗料、コーティング剤の原料の製造方法は有用である。
【0068】
特に、当該シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を配合した有機樹脂を硬化させてなる部材、塗膜またはコーティング皮膜は、柔軟性(コート層の柔らかさを含む)、耐久性および基材への密着・追従性が改善され、特に可撓性および耐熱衝撃性に優れるため、電子材料に用いる高機能性有機樹脂、塗料またはコーティング剤として極めて有用である。
【0069】
[有機樹脂]
本発明にかかるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を含む有機樹脂として、硬化性有機樹脂組成物または熱可塑性樹脂が好適に例示される。このうち、硬化性樹脂は半導体基板等の電子材料に適する。より具体的には、硬化性有機樹脂組成物として、フェノール樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、キシレン-ホルムアルデヒド樹脂、ケトン-ホルムアルデヒド樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、イミド樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アニリン樹脂、スルホン-アミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、これらの樹脂の共重合樹脂が例示され、これらの硬化性樹脂を二種以上組み合わせることもできる。特に、硬化製樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、およびシリコーン樹脂からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。このエポキシ樹脂としては、グリシジル基や脂環式エポキシ基を含有する化合物であればよく、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ポリビニルフェノール型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジフェニルサルホン型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、クレゾール・ナフトール共縮合型エポキシ樹脂、ビスフェニルエチレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、スピロクマロン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、テルペン型エポキシ樹脂、フェノールシクロヘキサン型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂、イミド基含有エポキシ樹脂、マレイミド基含有エポキシ樹脂、アリル基変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂が例示される。また、このフェノール樹脂としては、ポリビニルフェノール型、フェノールノボラック型、ナフトール型、テルペン型、フェノールジシクロペンタジエン型、フェノールアラルキル型、ナフトールアラルキル型、トリフェノールアルカン型、ジシクロペンタジエン型、クレゾール・ナフトール共縮合型、キシレン・ナフトール共縮合型が例示される。また、シリコーン樹脂としては、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂中のシラノール基、あるいはケイ素原子結合アルコキシ基とを反応させてなるエポキシ変性シリコーン樹脂が例示される。このような硬化性樹脂の硬化機構としては、熱硬化型、紫外線、あるいは放射線等の高エネルギー線硬化型、湿気硬化型、縮合反応硬化型、付加反応硬化型が例示される。また、このような硬化性樹脂の25℃における性状は限定されず、液状、あるいは加熱により軟化する固体状のいずれであってもよい。
【0070】
本発明にかかるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を含む有機樹脂には、その他任意の成分として、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、光増感剤、高級脂肪酸金属塩、エステル系ワックス、可塑剤等を配合することができる。この硬化剤としては、カルボン酸やスルホン酸等の有機酸およびその無水物;有機ヒドロキシ化合物;シラノール基、アルコキシ基、またはハロゲノ基を有する有機ケイ素化合物;一級または二級のアミノ化合物が例示され、これらを二種以上組み合わせることもできる。また、この硬化促進剤としては、三級アミン化合物、アルミニウムやジルコニウム等の有機金属化合物;ホスフィン等の有機リン化合物;その他、異環型アミン化合物、ホウ素錯化合物、有機アンモニウム塩、有機スルホニウム塩、有機過酸化物、ヒドロシリル化用触媒が例示される。また、この充填剤としては、ガラス繊維、石綿、アルミナ繊維、アルミナとシリカを成分とするセラミック繊維、ボロン繊維、ジルコニア繊維、炭化ケイ素繊維、金属繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、フェノール繊維、天然の動植物繊維等の繊維状充填剤;溶融シリカ、沈澱シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、酸化亜鉛、焼成クレイ、カーボンブラック、ガラスビーズ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、クレイ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、カオリン、雲母、ジルコニア等の粉粒体状充填剤が例示され、これらを二種以上組み合せることもできる。エポキシ系樹脂の場合、アミン系の硬化剤を含むことが特に好ましい。
【0071】
本発明にかかるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子は、上記以外の熱可塑性樹脂に添加剤として配合してもよく、表面潤滑剤や応力緩和剤等の物理的特性の改質剤または光散乱剤等の光学的特性の改質剤として利用することができる。熱可塑性樹脂の種類は特に制限されるものではなく、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン系共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン系共重合体、テトラブルオロエチレン等のフッ素系高分子、ポリビニルエーテル類、セルロース系高分子からなる群より選択される少なくとも一種の重合体、またはこれらの組み合わせかなる複合樹脂であってもよい。本発明のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子は、こららの熱可塑性樹脂(マスターバッチ含む)中に二軸・単軸押し出し機やニーダーミキサー等の混合装置を用いて均一に分散することができ、フィルム状等、所望の形状に成型して利用してもよい。
【0072】
本発明にかかるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の添加量は、有機樹脂に求められる物性に応じて適宜選択可能であるが、一般的に有機樹脂100質量部に対して0.1~30質量部の範囲であり、0.5~10質量部の範囲であってよい。当該粒子の添加量が前記下限未満では、樹脂等に対する応力緩和特性等の性能が不十分となる場合があり、得られる有機樹脂硬化物の可撓性および耐熱衝撃性が低下し、特に、吸湿後の耐熱衝撃性が低下する傾向があるからである。一方、前記上限を超えると、配合後の有機樹脂や塗料・コーティング剤が増粘して取扱作業性が低下する場合があるほか、得られる有機樹脂硬化物の機械的特性が低下する傾向があるからである。
【0073】
さらに、本発明にかかるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子は有機樹脂に配合した場合に、応力緩和作用に優れるため、プリント配線板用のエポキシ樹脂等に配合してプリプレグを形成してもよく、さらに、銅箔の片面に本発明のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を含有する樹脂層を備えたプリント配線板用のフィラー粒子含有樹脂層付銅箔を形成させて、銅張積層板(CCL)用途に利用することができる
【0074】
[塗料、コーティング剤]
本発明にかかるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を含む塗料・コーティング剤として、常温硬化型、常温乾燥型、加熱硬化型が例示され、また、その性状により、水性、油性、粉状が例示され、さらに、ビヒクルの樹脂により、ポリウレタン樹脂塗料、ブチラール樹脂塗料、長油性フタル酸樹脂塗料、アルキッド樹脂塗料、アミノ樹脂とアルキッド樹脂からなるアミノアルキッド樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、フェノール樹脂塗料、シリコーン変性エポキシ樹脂塗料、シリコーン変性ポリエステル樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料が例示される。
【0075】
本発明にかかるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の添加量は、塗料・コーティング剤に求められる物性に応じて適宜選択可能であるが、得られる塗膜に均一で柔らかな艶消し性を付与するためには、塗料の固形分100質量部に対して、0.1~150質量部の範囲内であることが好ましく、さらに、0.1~100質量部の範囲内であることが好ましく、特に、0.1~50質量部の範囲内、0.1~20質量部の範囲内であることが好ましい。当該粒子の添加量が前記下限未満では、塗膜に対する艶消し性、密着性、および応力緩和特性等の性能が不十分となる場合があり、前記上限を超えると、配合後の有機樹脂や塗料・コーティング剤が増粘して取扱作業性が低下する場合がある。
【0076】
本発明にかかるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を含む塗料・コーティング剤には、メタノール、エタノール等のアルコール;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル;N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のオレフィン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等の有機溶剤;補強性シリカ等の公知の無機充填剤、有機充填剤、硬化促進剤、シランカップリング剤、カーボンブラック等の顔料、染料、酸化防止剤、高分子化合物からなる増粘剤、難燃剤、耐候性付与剤を含有してもよい。
【0077】
[化粧料組成物]
本発明にかかるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子は、化粧料原料としても有用であり、その表面の一部又は全部がシリコーン樹脂により被覆されているので、従来公知のシリコーンエラストマー粒子やシリコーン複合粒子に比べて吸油特性および他の化粧料原料(特に油性原料)への均一分散性に優れ、肌や髪上に塗布した場合、化粧料の油っぽさ、べたつきを抑制し、滑らかな広がりと柔らかい感触を付与し、使用感に優れるという利点を有する。さらに、本発明のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子は、飛散しにくく、容器に付着しにくいことから取扱作業性および配合安定性に優れるものである。
【0078】
本発明にかかるシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を含む化粧料組成物は、特にその種類において限定されるものではないが、石鹸、ボディシャンプー、洗顔クリーム等の洗浄用化粧料;化粧水、クリーム・乳液、パック等の基礎化粧品;おしろい、ファンデーション等のベースメークアップ化粧料;口紅、ほほ紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラ等の眉目化粧料;マニキュア等のメークアップ化粧料;シャンプー、ヘアリンス、整髪料、育毛剤、養毛剤、染毛剤等の頭髪用化粧料;香水、オー・デ・コロン等の芳香性化粧料;歯磨き;浴用剤;脱毛剤、髭剃り用ローション、制汗・消臭剤、日焼け防止剤等の特殊化粧料が例示される。また、これらの化粧料組成物の剤形としては、水性液状、油性液状、乳液状、クリーム状、フォーム状、半固形状、固形状、粉状が例示される。また、これらの化粧料組成物をスプレーにより用いることもできる。
【0079】
これらの化粧料組成物において、上記のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の含有量は、化粧料組成物中の0.5~99.0質量%の範囲内であることが好ましく、特に、1.0~95質量%の範囲内であることが好ましい。これは、上記のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の含有量が上記の範囲の上限を超える場合には、化粧料としての効果が失われるからであり、また、上記範囲の下限未満であると、化粧料組成物の使用感等が改善されにくくなるからである。
【0080】
本発明のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子は、前記の特許文献2(特開2011-105663号公報)、特許文献3(特開2011-168634号公報)、特許文献4(特開2011-102354号公報)、特許文献5(国際特許公開 WO2017/191798)および特開2014-122316号公報において提案されているシリコーン粒子(シリコーンゴムパウダー等)またはシリコーン複合粒子を含む化粧料組成物(特に、各処方例)について、これらのシリコーン系粒子の一部又は全部を置き換えて使用することができ、これらの特許文献において提案されている化粧料組成物の使用感および生産効率をさらに改善できる場合がある。
【0081】
さらに、本発明のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子は、上記の特許文献等に開示された化粧料組成物の用途および処方について、これらのシリコーン系粒子の一部又は全部を置き換えて適用することができ、かつ、それらの使用は本願発明の範囲に包含される。また、本発明のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子は、上記の特許文献等に開示された化粧料組成物に開示された化粧品用媒体(水性媒体または油性媒体)、油性媒体(油剤、揮発性油剤を含む)、水、着色剤、アルコール類、水溶性高分子、皮膜形成剤、油剤、油溶性ゲル化剤、有機変性粘土鉱物、界面活性剤、樹脂、塩類、保湿剤、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、清涼剤、抗炎症剤、美肌用成分(美白剤、細胞賦活剤、肌荒れ改善剤、血行促進剤、皮膚収斂剤、及び抗脂漏剤等)、ビタミン類、アミノ酸類、核酸、ホルモン、包接化合物等、生理活性物質、医薬有効成分、香料等の任意成分を組み合わせて使用してもよく、かつ好ましい。
【0082】
特に、本発明のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子は、従来公知のシリコーン粒子やシルセスキオキサンで被覆されたシリコーン複合粒子に比べて、吸油性に優れるので、特に油剤等の油性化粧料原料を含む化粧料組成物および処方において、特に好適な使用感を実現することができる。
【0083】
本発明の化粧料を製造するには、上記のような本発明の化粧品原料と他の化粧品原料を単に均一混合することにより容易に製造できる。混合手段としては、通常化粧品の製造に使用されている各種の混合装置、混練装置が使用できる。かかる装置としては、例えば、ホモミキサー、パドルミキサー、ヘンシェルミキサー、ホモディスパー、コロイドミキサー、プロペラ攪拌機、ホモジナイザー、インライン式連続乳化機、超音波乳化機、真空式練合機が例示される。
【実施例
【0084】
本発明のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子およびその製造方法を、実施例および比較例により詳細に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。実施例中の粘度は25℃における値である。また、各シリコーン粒子の特性を次のようにして測定した。なお、実施例等において特に断りがない場合、シリコーン粒子とは、シリコーン硬化物からなる粒子(硬化シリコーン粒子)の総称であり、エマルジョンを含まない。
【0085】
[シリコーン粒子のJIS A硬さ]
シリコーンエラストマー粒子の原料である、硬化性シリコーン組成物を加熱オーブンにて150℃で1時間加熱して、シート状に硬化させた。この硬さをJIS K 6253に規定されるJIS A 硬度計により測定した。
【0086】
[エマルジョン粒子の平均一次粒子径]
白金触媒を添加する前のエマルジョンを、レーザー回折式粒度分布測定器(ベックマン・コールター社のLS-230)により測定し、そのメジアン径(累積分布の50%に相当する粒径、50%粒径)を平均粒子径とした。
【0087】
[シリコーン粒子(粉末)の平均二次粒子径]
エタノールを分散媒として、レーザー回折式粒度分布測定器(堀場製作所のLA-750)で硬化シリコーン粒子の粒径を測定し、エタノール中での硬化シリコーン粒子のメジアン径(累積分布の50%に相当する粒径、D90、μm)や算術分散度(粒径分布の分散度合いを示す、SD、μm2)の値を得た。測定試料は、300mLのカップに硬化シリコーン粒子(1g)とエタノール(100mL)を攪拌羽および超音波振動機を用いて分散した。
【0088】
[エポキシ樹脂溶液への均一分散性]
エポキシ樹脂溶液(固形分59.2%)35gに、シリコーン粒子7gを添加し、ホモディスパーで攪拌し、ブルックフィールドE-型粘度計で混合物の粘度を測定した。
なお、エポキシ樹脂溶液は以下の処方で調製した。
難燃型エポキシ樹脂(DIC社製、商品名「EPICLON 1121N-80M」)434.8g
他官能エポキシ樹脂(三菱化学社製、商品名「jER154」)122.3g
2-ブタノン 89.4g
2-メトキシエタノール 158.6g
【0089】
実施例、比較例で使用した、成分(A)と成分(B)の平均式を下記に列挙する。
以下の式において、ViはCH=CH-で表されるビニル基、MeはCH-で表されるメチル基、HexはCH2=CH-C48-で表されるヘキセニル基をそれぞれ示す。
[化1-1]
MeHexSiO-(MeSiO)57-(MeHexSiO)-SiHexMe
アルケニル基含有率は、2.7wt%。粘度は100mPa・s。
[化1-2]
(MeViSiO)Si、
アルケニル基含有率は、23.25wt%。粘度は3mPa・s。
[化1-3]
MeViSiO-(MeSiO)141-(MeViSiO)-SiViMe
アルケニル基含有率は、1.08wt%。粘度は370mPa・s。
[化2-1]
(MeSiO1/2(MeSiO2/2(HMeSiO2/211(MeSiO3/2
ケイ素原子結合水素原子含有量は、0.825wt%。粘度は15mPa・s。
[化2-2]
MeSiO1/2-(MeSiO2/239-(HMeSiO2/212-SiMe
ケイ素原子結合水素原子含有量は、0.309wt%。粘度は47mPa・s。
【0090】
[実施例1]
[化1-1]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンと、[化2-1]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンを質量比89:11で、室温で均一に混合した。テトラエトキシシラン14質量部、ジメチルジメトキシシラン10質量部を加え、更に混合した。次に、この組成物をポリオキシエチレンソルビタンラウレート3.0質量部と純水20質量部からなる25℃の水溶液中に分散し、さらにコロイドミルにより均一に乳化した。その平均一次粒子径は1.4μmであった。その後、純水350質量部を加えて希釈してエマルジョンを調製した。次に、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(本組成物中、白金金属が質量単位で10ppmとなる量)をポリオキシエチレンソルビタンラウレートと純水で水分散液として、エマルジョンに加えて攪拌した後、このエマルジョンを50℃で1時間静置してヒドロシリル化反応を行った後、28%アンモニア水20質量部を添加した。このときの液のpHは11であった。更に1時間静置してシランの縮合反応を行い、シリコーン樹脂で被覆されたシリコーンゴム粒子の均一な水系サスペンジョンを調製した。次に、この水系サスペンジョンを小型スプレードライヤー(アシザワニロ社製)で乾燥し、シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を得た。得られたシリコーンエラストマー粒子のJIS-A硬度は68であり、その平均二次粒子径は2.2μmであった。
【0091】
[実施例2]
[化1-2]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンと、[化2-2]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンを質量比25:75で、室温で均一に混合した。テトラエトキシシラン9質量部、ジメチルジメトキシシラン4質量部を加え、更に混合した。次に、この組成物をポリオキシエチレンソルビタンラウレート3.0質量部と純水20質量部からなる25℃の水溶液中に分散し、さらにコロイドミルにより均一に乳化した。その平均一次粒子径は1.4μmであった。その後、純水350質量部を加えて希釈してエマルジョンを調製した。次に、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(本組成物中、白金金属が質量単位で10ppmとなる量)をポリオキシエチレンソルビタンラウレートと純水で水分散液として、エマルジョンに加えて攪拌した後、このエマルジョンを50℃で3時間静置してヒドロシリル化反応を行った後、28%アンモニア水20質量部を添加した。このときの液のpHは11であった。更に1時間静置してシランの縮合反応を行い、シリコーン樹脂で被覆されたシリコーンゴム粒子の均一な水系サスペンジョンを調製した。次に、この水系サスペンジョンを小型スプレードライヤー(アシザワニロ社製)で乾燥し、シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を得た。得られたシリコーンエラストマー粒子のJIS-A硬度は83であり、その平均二次粒子径は3.2μmであった。
【0092】
[実施例3]
[化1-3]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンと、[化2-1]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンを質量比96:4で、室温で均一に混合した。テトラエトキシシラン14質量部、ジメチルジメトキシシラン10質量部を加え、更に混合した。次に、この組成物をポリオキシエチレンソルビタンラウレート3.0質量部と純水20質量部からなる25℃の水溶液中に分散し、さらにコロイドミルにより均一に乳化した。その平均一次粒子径は1.1μmであった。その後、純水350質量部を加えて希釈してエマルジョンを調製した。次に、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(本組成物中、白金金属が質量単位で10ppmとなる量)をポリオキシエチレンソルビタンラウレートと純水で水分散液として、エマルジョンに加えて攪拌した後、このエマルジョンを50℃で3時間静置してヒドロシリル化反応を行った後、28%アンモニア水20質量部を添加した。このときの液のpHは11であった。更に1時間静置してシランの縮合反応を行い、シリコーン樹脂で被覆されたシリコーンゴム粒子の均一な水系サスペンジョンを調製した。次に、この水系サスペンジョンを小型スプレードライヤー(アシザワニロ社製)で乾燥し、シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を得た。得られたシリコーンエラストマー粒子のJIS-A硬度は50であり、その平均二次粒子径は4.0μmであった。
【0093】
[実施例4]
[化1-1]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンと、[化2-1]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンを質量比89:11で、室温で均一に混合した。テトラエトキシシラン14質量部、ジフェニルジメトキシシラン7質量部を加え、更に混合した。次に、この組成物をポリオキシエチレンアルキル(C12―14)エーテル3質量部と純水20質量部からなる25℃の水溶液中に分散し、さらにコロイドミルにより均一に乳化した。その平均一次粒子径は0.9μmであった。その後、純水350質量部を加えて希釈してエマルジョンを調製した。次に、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(本組成物中、白金金属が質量単位で10ppmとなる量)をポリオキシエチレンアルキル(C12―14)エーテルと純水で水分散液として、エマルジョンに加えて攪拌した後、このエマルジョンを50℃で1時間静置してヒドロシリル化反応を行った後、28%アンモニア水20質量部を添加した。このときの液のpHは11であった。更に1時間静置してシランの縮合反応を行い、シリコーン樹脂で被覆されたシリコーンゴム粒子の均一な水系サスペンジョンを調製した。次に、この水系サスペンジョンを小型スプレードライヤー(アシザワニロ社製)で乾燥し、シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を得た。得られたシリコーンエラストマー粒子のJIS-A硬度は68であり、その平均二次粒子径は1.6μmであった。
【0094】
[比較例1]
[化1-1]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンと、[化2-1]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンを質量比89:11で、室温で均一に混合した。次に、この組成物をポリオキシエチレンアルキル(C12―14)エーテル3質量部と純水20質量部からなる25℃の水溶液中に分散し、さらにコロイドミルにより均一に乳化した。その平均一次粒子径は1.5μmであった。その後、純水350質量部を加えて希釈してエマルジョンを調製した。次に、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(本組成物中、白金金属が質量単位で10ppmとなる量)をポリオキシエチレンアルキル(C12―14)エーテルと純水で水分散液として、エマルジョンに加えて攪拌した後、このエマルジョンを50℃で1時間静置してシリコーンゴム粒子の均一な水系サスペンジョンを調製した。次に、この水系サスペンジョンを小型スプレードライヤー(アシザワニロ社製)で乾燥し、シリコーンエラストマー粒子を得た。得られたシリコーンエラストマー粒子のJIS-A硬度は68であり、その平均二次粒子径は3.1μmであった。
【0095】
[比較例2]
[化1-2]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンと、[化2-2]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンを質量比25:75で、室温で均一に混合した。次に、この組成物をポリオキシエチレンアルキル(C12―14)エーテル3.0質量部と純水20質量部からなる25℃の水溶液中に分散し、さらにコロイドミルにより均一に乳化した。その平均一次粒子径は1.3μmであった。その後、純水350質量部を加えて希釈してエマルジョンを調製した。次に、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(本組成物中、白金金属が質量単位で10ppmとなる量)をポリオキシエチレンアルキル(C12―14)エーテルと純水で水分散液として、エマルジョンに加えて攪拌した後、このエマルジョンを50℃で3時間静置してシリコーンゴム粒子の均一な水系サスペンジョンを調製した。次に、この水系サスペンジョンを小型スプレードライヤー(アシザワニロ社製)で乾燥し、シリコーンエラストマー粒子を得た。得られたシリコーンエラストマー粒子のJIS-A硬度は83であり、その平均二次粒子径は4.6μmであった。
【0096】
[比較例3]
[化1-3]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンと、[化2-1]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンを質量比96:4で、室温で均一に混合した。次に、この組成物をポリオキシエチレンアルキル(C12―14)エーテル3.0質量部と純水20質量部からなる25℃の水溶液中に分散し、さらにコロイドミルにより均一に乳化した。その平均一次粒子径は1.5μmであった。その後、純水350質量部を加えて希釈してエマルジョンを調製した。次に、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(本組成物中、白金金属が質量単位で10ppmとなる量)をポリオキシエチレンアルキル(C12―14)エーテルと純水で水分散液として、エマルジョンに加えて攪拌した後、このエマルジョンを50℃で3時間静置してシリコーンゴム粒子の均一な水系サスペンジョンを調製した。次に、この水系サスペンジョンを小型スプレードライヤー(アシザワニロ社製)で乾燥し、シリコーンエラストマー粒子を得た。得られたシリコーンエラストマー粒子のJIS-A硬度は50であり、その平均二次粒子径は56.7μmであった。
【0097】
[比較例4]
[化1-1]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンと、[化2-1]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンを質量比89:11で、室温で均一に混合した。次に、この組成物をポリオキシエチレンアルキル(C12―14)エーテル3.0質量部と純水20質量部からなる25℃の水溶液中に分散し、さらにコロイドミルにより均一に乳化した。平均一次粒子径は1.0μmであった。その後、純水350質量部を加えて希釈してエマルジョンを調製した。次に、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(本組成物中、白金金属が質量単位で10ppmとなる量)をポリオキシエチレンアルキル(C12―14)エーテルと純水で水分散液として、エマルジョンに加えて攪拌した後、このエマルジョンを50℃で1時間静置して、シリコーンゴム粒子の均一な水系サスペンジョンを調製した。得られたシリコーンエラストマー粒子のJIS-A硬度は68であり、その平均一次粒子径は1.0μmであった。
【0098】
調製例1で得たシリコーンエラストマー粒子水分散液500gを攪拌翼を備えた撹拌装置の付いた容量2リットルのガラスフラスコに移し、水500g、および28%アンモニア水20gを添加した。このときの液のpHは11であった。5~10℃に温度調整した後、テトラエトキシシラン 35g(加水分解・縮合反応後のSiO4/2で表されるシロキサン単位からなるシリコーン樹脂が被覆前のシリコーンエラストマー粒子100質量部について15質量部となる量)を30分かけて滴下し、さらに1時間攪拌を行った。この間、液温を5~10℃に保った。次いで、55~60℃まで加熱し、その温度を保ったまま1時間攪拌を行い、テトラエトキシシランの加水分解・縮合反応を完結させた。
【0099】
得られたシリコーンエラストマー粒子/テトラエトキシシランの加水分解・縮合反応液をろ過した。脱水物をステンレスのトレイに移し、熱風循環乾燥機中で105℃の温度で乾燥し、乾燥物をジェットミルで解砕し、流動性のある微粒子を得た。この微粒子を電子顕微鏡で観察したところ、粒子表面がシリコーン樹脂で被覆された球状粒子であり、表面がSiO4/2で表されるシロキサン単位からなるシリコーン樹脂により被覆されたシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子となっていることが確認された。得られたシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の平均一次粒子径は5.3μmであった。
【0100】
[実施例5]
[化1-1]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンと、[化2-1]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンを質量比89:11で、室温で均一に混合した。ジメチルジメトキシシラン3重量部とメチルトリメトキシシラン16質量部を加え、更に混合した。次に、この組成物をポリオキシエチレンソルビタンラウレート3質量部と純水20質量部からなる25℃の水溶液中に分散し、さらにコロイドミルにより均一に乳化した。その平均一次粒子径は1.3μmであった。その後、純水350質量部を加えて希釈してエマルジョンを調製した。次に、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(本組成物中、白金金属が質量単位で10ppmとなる量)をポリオキシエチレンソルビタンラウレートと純水で水分散液として、エマルジョンに加えて攪拌した後、このエマルジョンを50℃で1時間静置してヒドロシリル化反応を行った後、28%アンモニア水20質量部を添加した。このときの液のpHは11であった。更に1時間静置してシランの縮合反応を行い、シリコーン樹脂で被覆されたシリコーンゴム粒子の均一な水系サスペンジョンを調製した。次に、この水系サスペンジョンを小型スプレードライヤー(アシザワニロ社製)で乾燥し、シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を得た。得られたシリコーンエラストマー粒子のJIS-A硬度は68であり、その平均二次粒子径は2.5μmであった。
【0101】
[実施例6]
[化1-1]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンと、[化2-1]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンを質量比89:11で、室温で均一に混合した。メチルトリメトキシシラン16質量部とテトラエトキシシラン7質量部を加え、更に混合した。次に、この組成物をポリオキシエチレンソルビタンラウレート3質量部と純水20質量部からなる25℃の水溶液中に分散し、さらにコロイドミルにより均一に乳化した。その平均一次粒子径は1.0μmであった。その後、純水350質量部を加えて希釈してエマルジョンを調製した。次に、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(本組成物中、白金金属が質量単位で10ppmとなる量)をポリオキシエチレンソルビタンラウレートと純水で水分散液として、エマルジョンに加えて攪拌した後、このエマルジョンを50℃で1時間静置してヒドロシリル化反応を行った後、28%アンモニア水20質量部を添加した。このときの液のpHは11であった。更に1時間静置してシランの縮合反応を行い、シリコーン樹脂で被覆されたシリコーンゴム粒子の均一な水系サスペンジョンを調製した。次に、この水系サスペンジョンを小型スプレードライヤー(アシザワニロ社製)で乾燥し、シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を得た。得られたシリコーンエラストマー粒子のJIS-A硬度は68であり、その平均二次粒子径は1.6μmであった。
【0102】
[実施例7]
[化1-1]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンと、[化2-1]の平均式で示されるポリオルガノシロキサンを質量比89:11で、室温で均一に混合した。メチルトリメトキシシラン20質量部を加え、更に混合した。次に、この組成物をポリオキシエチレンソルビタンラウレート3質量部と純水20質量部からなる25℃の水溶液中に分散し、さらにコロイドミルにより均一に乳化した。その平均一次粒子径は1.0μmであった。その後、純水350質量部を加えて希釈してエマルジョンを調製した。次に、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(本組成物中、白金金属が質量単位で10ppmとなる量)をポリオキシエチレンソルビタンラウレートと純水で水分散液として、エマルジョンに加えて攪拌した後、このエマルジョンを50℃で1時間静置してヒドロシリル化反応を行った後、28%アンモニア水20質量部を添加した。このときの液のpHは11であった。更に1時間静置してシランの縮合反応を行い、シリコーン樹脂に被覆されたシリコーンゴム粒子の均一な水系サスペンジョンを調製した。次に、この水系サスペンジョンを小型スプレードライヤー(アシザワニロ社製)で乾燥し、シリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を得た。得られたシリコーンエラストマー粒子のJIS-A硬度は68であり、その平均二次粒子径は2.6μmであった。
【0103】
実施例1~7、比較例1~4について、その特性を表1に示した。また、シリコーンエラストマー粒子中のケイ素原子間のシルアルキレン結合の化学種、被覆がない場合のJIS硬度、およびシリコーンエラストマー粒子表面の被覆に用いるシリコーン樹脂の種類(D,Q,Tで表されるシロキサン単位)について、表中に示した。
【表1】

*ジフェニル基を含むDシロキサン単位
【0104】
[総括]
本発明にかかる製造方法により、平均二次粒子径が比較的小さく、エポキシ樹脂との混合粘度も低く抑えられたシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子を合成することが出きた(実施例1~7)。一方、本発明と異なり、予めシリコーンエラストマー粒子を合成してからシリコーン樹脂による被覆を行った比較例4においては、平均二次粒子径が増大して凝集しやすくなり、かつ、エポキシ樹脂との混合粘度も大幅に増大した。特に、実施例1と比較例4を電子顕微鏡写真(図1図2)で対比した場合、実施例1の被覆状態が均一かつ滑らかであるのに対し、比較例4は突起、凹凸が多く見られ、粒子表面の状態が明らかに異なるものである。
【0105】
[処方例]
本発明の製造方法により得られたシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子は、前記の特許文献2(特開2011-105663号公報)、特許文献3(特開2011-168634号公報)、特許文献4(特開2011-102354号公報)、特許文献5(国際特許公開 WO2017/191798)および特開2014-122316号公報において提案されているシリコーン粒子(シリコーンゴムパウダー等)またはシリコーン複合粒子を含む化粧料組成物の各処方例について、これらのシリコーン系粒子の一部又は全部を置き換えて使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の製造方法は、工業的スケールで簡便に実施でき、かつ、生産効率に著しく優れるだけでなく、得られたシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子の経時的な凝集が抑制されているため保存安定性、取扱作業性および配合安定性に優れ、有機樹脂、油性原料等への均一分散性が優れるので、添加剤として配合しやすく、上記の硬化性有機樹脂(半導体材料、塗料・コーティング剤等)に対する有機樹脂添加剤として有用である。さらに、本発明のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子は、化粧品原料として化粧料に配合した場合には、その感触を向上させることができるので、皮膚化粧料、メークアップ化粧料等に使用可能である。また、その物性を生かし、本発明の本発明のシリコーン樹脂被覆シリコーンエラストマー粒子は、を電子材料への応用として、熱硬化性樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物等の添加剤、あるいはプラスチックフィルムの表面潤滑剤等にも利用可能である。
図1
図2