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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】レベルシフト回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 19/0185 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
H03K19/0185 220
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017078034
(22)【出願日】2017-04-11
(65)【公開番号】P2018182492
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-02-25
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡野 淳一
【合議体】
【審判長】角田 慎治
【審判官】山中 実
【審判官】土居 仁士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0207506(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0186921(US,A1)
【文献】特開2009-033329(JP,A)
【文献】特開平05-343980(JP,A)
【文献】特開2010-124049(JP,A)
【文献】特開2010-268170(JP,A)
【文献】特開2002-135107(JP,A)
【文献】特開平09-083339(JP,A)
【文献】特開平11-328962(JP,A)
【文献】特開2010-258929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 19/0185 220
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧VDD1とVSS1の間で変化する入力電圧のレベルに応じて電圧VDD2とVSS2の間で電圧が変化する第1ノードと、
電圧VDD1とVSS1の間で変化する入力電圧のレベルに応じて電圧VDD2とVSS2の間で前記第1ノードと相補的に電圧が変化する第2ノードと、
前記第1ノードと第3ノードとの間に接続され電圧VDD2とVSS2で動作する第1非反転バッファ回路と、
前記第2ノードと第4ノードとの間に接続され電圧VDD2とVSS2で動作する第2インバータ回路と、
ゲートが前記第3ノードに接続されソースが電圧VDD2又はVSS2の一方の電源に接続されドレインが第5ノードに接続された第1導電型の第3トランジスタと、
ゲートが前記第4ノードに接続されソースが電圧VDD2又はVSS2の他方の電源に接続されドレインが前記第5ノードに接続された第2導電型の第5トランジスタと、
前記第5ノードに接続されるラッチ回路と、
ゲートが前記第2ノードに接続されソースが電圧VDD2又はVSS2の前記第2導電型の第5トランジスタのソースと同じ側の電源に接続された第2導電型の第3トランジスタと、
前記第2導電型の第3トランジスタのドレインと前記第1ノードとの間に接続された第1抵抗と、
ゲートが前記第1ノードに接続されソースが電圧VDD2又はVSS2の前記第2導電型の第5トランジスタのソースと同じ側の電源に接続された第2導電型の第4トランジスタと、
前記第2導電型の第4トランジスタのドレインと前記第2ノードとの間に接続された第2抵抗と、
を備え、
前記各電圧は、VDD1>VSS1,VDD2>VSS2,VDD2≧VDD1,VSS2≧VSS1であり、
前記第1ノードと前記第2ノードとが共にLレベルで同相となった場合には前記第3ノード及び前記第4ノードが相補関係になり、前記第1導電型の第3トランジスタと前記第2導電型の第5トランジスタが共にOFFとなることを特徴とするレベルシフト回路。
【請求項2】
請求項1に記載のレベルシフト回路において、
前記第1非反転バッファ回路と前記第2インバータ回路は、ヒステリシスを有することを特徴とするレベルシフト回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレベルシフト回路おいて、
前記ラッチ回路は、電圧VDD2とVSS2で動作する第3インバータ回路と第4インバータ回路をループ接続してなり、前記第3インバータ回路の入力側と前記第4インバータ回路の出力側が、前記第5ノードに接続されていることを特徴とするレベルシフト回路。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のレベルシフト回路において、
前記第1導電型の第3トランジスタと前記第2導電型の第5トランジスタは、電流駆動能力に差が設けられていることを特徴とするレベルシフト回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電源電圧を持つデジタル半導体装置に適用されるレベルシフト回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路は、素子ごとに耐えうる耐圧が定められている。MOS型トランジスタにおいては、ソース・ドレイン間の耐圧、ゲート・ソース間の耐圧を考慮する必要がある。近年では、素子の性能を高めるため、ゲート・ソース間の耐圧を下げ、ゲート長を短くしたMOSトランジスタが多用されるようになった。
【0003】
<第1従来例>
図2にその耐圧対策を施した第1従来例のレベルシフト回路20を示す(特許文献1)。このレベルシフト回路20は、電圧VDD1とVSS1の間で変化する信号電圧を、電圧VDD2とVSS2の間で変化する信号電圧にレベルシフトする回路である。電圧関係は、VDD1>VSS1,VDD2>VSS2,VDD2≧VDD1,VSS2≧VSS1である。
【0004】
このレベルシフト回路20において、ラッチ回路22は、ノードN21とノードN22の間に逆並列接続された2個のインバータ回路からなり、電圧VDD2とVSS2で動作する。インバータ回路INV21は、信号入力端子21とノードN23の間に接続され、電圧VDD1とVSS1で動作する。インバータ回路INV22は、ノードN23とノードN24の間に接続され、電圧VDD1とVSS1で動作する。第1反転駆動回路23は、ノードN21,N22,N23に接続されている。第2反転駆動回路24は、ノードN21,N22,N24に接続されている。このようにして第1反転駆動回路23と第2反転駆動回路24は対称構造となっている。25、25Xは相補の出力端子である。MN21~MN24はNMOSトランジスタ、MP21~MP28はPMOSトランジスタである。トランジスタMN21,MP21の導通抵抗はトランジスタMP23,MP25の導通抵抗より小さく設定され、トランジスタMN22,MP22の導通抵抗はトランジスタMP24,MP26の導通抵抗より小さく設定されている。
【0005】
第1の反転駆動回路23は、ノードN23の電圧がVSS1からVDD1に変化するときにノードN21の電圧をVDD2からVSS2近くに変化させる。また、ノードN24の電圧がVSS1からVDD1に変化するとき、トランジスタMP23,MP25を一時的に同時にON状態にさせて、ノードN21の電圧VDD2の端子に対するインピーダンスを一時的に低下させる。
【0006】
第2の反転駆動回路24は、ノードN24の電圧がVSS1からVDD1に変化するときにノードN22の電圧をVDD2からVSS2近くに変化させる。また、ノードN23の電圧がVSS1からVDD1に変化するとき、トランジスタMP24,MP26を一時的に同時にON状態にさせて、ノードN22の電圧VDD2の端子に対するインピーダンスを一時的に低下させる。
【0007】
このレベルシフト回路20は、ノードN21の最低電圧をトランジスタMP21で「VSS2+Vthp21」にクランプし、ノードN22の最低電圧をトランジスタMP22で「VSS2+Vthp22」クランプして、VDD2~VSS2の側の素子の耐圧に問題がないようにしている。Vthp21はトランジスタMP21の閾値電圧、Vthp22はトランジスタMP22の閾値電圧である。また、ノードN21,N22がVDD2方向に遷移する際に、ノードN21,N22とVDD2側との間のインピーダンスを一時的に低下させるので、信号の伝搬遅延を低減できる。また、差動信号とすることにより、伝搬を妨げるノイズ等の外因からの保護を行っている。
【0008】
<第2従来例>
図3に耐圧対策を施した別の第2従来例のレベルシフト回路30を示す(特許文献2)。このレベルシフト回路30も、電圧VDD1とVSS1の間で変化する信号電圧を、電圧VDD2とVSS2の間で変化する信号電圧にレベルシフトする回路である。VDD1,VSS1,VDD2、VSS2の電圧関係は、図2におけるものと同じである。
【0009】
このレベルシフト回路30において、31は入力端子である。ラッチ回路32は、ノードN31~N34に接続され、バッファBUF31、遅延回路DL1、インバータ回路INV33,INV34がリング接続され、電圧VDD2とVSS2で動作する。第1反転駆動回路33は、ノードN32,N34,N35,N37に接続され、電圧VDD2,VSS2,VSS1で動作する。第2反転駆動回路34は、ノードN31,N36,N38に接続され、電圧VDD2,VSS2,VSS1で動作する。セレクタ回路35は、ノードN33,N34,N37,N38に接続され、電圧圧VDD2とVSS2で動作する。インバータ回路INV31は、信号入力端子31とノードN35の間に接続され、電圧VDD1とVSS1で動作する。インバータ回路INV32は、ノードN35とノードN36の間に接続され、電圧VDD1とVSS1で動作する。36は出力端子である。MN31~MN33はNMOSトランジスタ、MP31~MP37はPMOSトランジスタ、ORはオア回路である。
【0010】
第1のラッチ回路32は、ノードN31の電圧をインピーダンス変換してノードN32に出力し、ノードN32の電圧変化を遅延してノードN33に出力し、ノードN33の電圧を論理反転してノードN34に出力し、ノードN34の電圧を論理反転してノードN31に出力する。
【0011】
第1反転駆動回路33は、ノードN35の電圧がVSS1からVDD1に変化するときにノードN37の電圧をVDD2からVSS2の電圧付近に変化させる。また、ノードN35の電圧がVSS1であるときにおいてノードN34の電圧がVSS2からVDD2に変化するときにノードN37の電圧をVDD2に変化させる。また、ノードN35の電圧がVSS1でノードN34の電圧がVSS2であるときにおいてノードN32の電圧がVDD2からVSS2に変化するとノードN37の電圧をVDD2に変化させる。
【0012】
第2反転駆動回路34は、ノードN36の電圧がVSS1からVDD1に変化するときにノードN31の電圧をVDD2からVSS2の電圧付近に変化させる。また、ノードN36の電圧がVSS1であるときにおいてノードN38の電圧がVDD2からVSS2の電圧に変化するときノードN31の電圧をVSS2からVDD2に変化させる。
【0013】
セレクタ35は、ノードN33の電圧がVSS2でノードN34の電圧がVDD2のときにノードN37とノードN38の間を接続する。また、ノードN33の電圧がVDD2でノードN34の電圧VSS2のときにノードN37とノードN38の間を切断するとともにノードN38の電圧VDD2にする。
【0014】
このレベルシフト回路30では、ノードN37の最低電圧をトランジスタMP31で「VSS2+Vthp31」にクランプし、ノードN31の最低電圧をトランジスタMP32で「VSS2+Vthp32」クランプして、VDD2~VSS2の側の素子の耐圧に問題がないようにしている。Vthp31はトランジスタMP31の閾値電圧、Vthp32はトランジスタMP32の閾値電圧である。また、第1反転駆動回路33と第2反転駆動回路34を非対称とし、ノードN31のインピーダンスが時定数をもって変化するようにして、各ノードが遷移する際にVDD2とVSS1の電源間に流れる貫通電流を極力減らすことで、伝搬遅延を少なくして伝搬遅延がずれる要素そのものを低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特許第4249597号公報
【文献】特許第5643158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、図2のレベルシフト回路では、ラッチ回路22によってノイズ耐性は向上するが、電位を引き出すノードN21,N22の遷移遅延がアンバランスとなりやすい。特に、貫通電流を抑えるためにラッチ回路22の素子サイズを最低限とする傾向にあるため、伝搬遅延のアンバランスがより大きくなりがちである。そして、伝搬遅延のアンバランスが大きくなると、デジタル信号の長さ情報(パルス幅情報)が失われることとなる。この場合、クロックの単一エッジに同期して動作するデジタル回路では問題が起きないが、時間情報をアナログ量として使用するデジタル回路、例えばPWM変調を用いたD級増幅器においては、SN比やTHD(全高調波歪)の悪化を引き起こしてしまう。
【0017】
また、図3のレベルシフト回路では、非常に高速で伝搬遅延差を抑えた出力電圧を得ることができるが、相補となるべきノードN35,N36がノイズ等の何らかの理由で相補関係とならなかった場合に、インピーダンス変化を行わせる回路が正帰還のループとなって発振状態となり、正しい情報を次段の回路が得ることができなくなる。
【0018】
本発明の目的は、立上りと立下りの伝搬遅延を均一化し、ノイズ耐性を高めたレベルシフト回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、電圧VDD1とVSS1の間で変化する入力電圧のレベルに応じて電圧VDD2とVSS2の間で電圧が変化する第1ノードと、電圧VDD1とVSS1の間で変化する入力電圧のレベルに応じて電圧VDD2とVSS2の間で前記第1ノードと相補的に電圧が変化する第2ノードと、前記第1ノードと第3ノードとの間に接続され電圧VDD2とVSS2で動作する第1非反転バッファ回路と、前記第2ノードと第4ノードとの間に接続され電圧VDD2とVSS2で動作する第2インバータ回路と、ゲートが前記第3ノードに接続されソースが電圧VDD2又はVSS2の一方の電源に接続されドレインが第5ノードに接続された第1導電型の第3トランジスタと、ゲートが前記第4ノードに接続されソースが電圧VDD2又はVSS2の他方の電源に接続されドレインが前記第5ノードに接続された第2導電型の第5トランジスタと、前記第5ノードに接続されるラッチ回路と、ゲートが前記第2ノードに接続されソースが電圧VDD2又はVSS2の前記第2導電型の第5トランジスタのソースと同じ側の電源に接続された第2導電型の第3トランジスタと、前記第2導電型の第3トランジスタのドレインと前記第1ノードとの間に接続された第1抵抗と、ゲートが前記第1ノードに接続されソースが電圧VDD2又はVSS2の前記第2導電型の第5トランジスタのソースと同じ側の電源に接続された第2導電型の第4トランジスタと、前記第2導電型の第4トランジスタのドレインと前記第2ノードとの間に接続された第2抵抗と、を備え、前記各電圧は、VDD1>VSS1,VDD2>VSS2,VDD2≧VDD1,VSS2≧VSS1であり、前記第1ノードと前記第2ノードとが共にLレベルで同相となった場合には前記第3ノード及び前記第4ノードが相補関係になり、前記第1導電型の第3トランジスタと前記第2導電型の第5トランジスタが共にOFFとなることを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載のレベルシフト回路において、前記第1非反転バッファ回路と前記第2インバータ回路は、ヒステリシスを有することを特徴とする。
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載のレベルシフト回路おいて、前記ラッチ回路は、電圧VDD2とVSS2で動作する第3インバータ回路と第4インバータ回路をループ接続してなり、前記第3インバータ回路の入力側と前記第4インバータ回路の出力側が、前記第5ノードに接続されていることを特徴とする。
請求項4にかかる発明は、請求項1、2又は3に記載のレベルシフト回路において、前記第1導電型の第3トランジスタと前記第2導電型の第5トランジスタは、電流駆動能力に差が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第3ノードと第4ノードが相補関係になるので、立ち上がりと立ち下がりの伝搬遅延を均一化でき、高品位な電圧信号を後段の回路へ伝送でき、伝搬させるデジタル信号をアナログ量として使用するすべての回路の高性能化に寄与する。また、第5ノードがハイインピーダンスになってもラッチ回路により直前の電圧が保持されて出力されるので、ノイズ耐性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例のレベルシフト回路の回路図である。
図2】従来のレベルシフト回路の回路図である。
図3】従来の別のレベルシフト回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に本発明の実施例のレベルシフト回路10を示す。このレベルシフト回路10は、電圧VDD1とVSS1の間で変化する信号電圧を、電圧VDD2とVSS2の間で変化する信号電圧にレベルシフトする回路である。電圧は、VDD1>VSS1、VDD2>VSS2、VDD2≧VDD1、VSS2≧VSS1の関係にある。
【0023】
11は電圧VDD1~VSS1の振幅でのデジタル信号が入力される入力端子、INV1は電圧VDD1~VSS1で動作しその電圧範囲の耐圧を持つインバータ回路、MN1,MN2はドレイン・ソース間にVDD2~VSS1の電圧範囲に十分な耐圧を持つ高耐圧NMOSトランジスタである。入力端子11はトランジスタMN1のゲートとインバータ回路INV1の入力側に接続される。入力端子11の電圧を反転させたインバータ回路INV1の出力側は、トランジスタMN2のゲートに接続される。トランジスタMN1,MN2のソースは電圧VSS1の電源に接続される。
【0024】
MP1,MP2はドレイン・ソース間がVDD2~VSS1の電圧範囲に十分な耐圧を持つ高耐圧PMOSトランジスタである。トランジスタMP1,MP2のゲートは電圧VSS2の電源に接続される。トランジスタMP1のドレインはトランジスタMN1のドレインに、トランジスタMP2のドレインはトランジスタMN2のドレインに接続される。
【0025】
R1,R2は抵抗である。MP3,MP4はVDD2~VSS2の電圧範囲に十分な耐圧を持つ低耐圧PMOSトランジスタである。トランジスタMP3,MP4のソースは電圧VDD2の電源に接続される。トランジスタMP3のゲートはトランジスタMP2のソースに接続され、トランジスタMP4のゲートはトランジスタMP1のソースに接続される。トランジスタMP3のドレインは抵抗R1を介してトランジスタMP1のソースに接続される。トランジスタMP4のドレインは抵抗R2を介してトランジスタMP2のソースに接続される。トランジスタMP1のソースをノードN1、トランジスタMP2のソースをノードN2とする。これら抵抗R1,R2、トランジスタMP3,MP4はノードN1,N2の電圧をラッチするラッチ機能をもつ。
【0026】
BUF1は電圧VDD2~VSS2で動作する非反転バッファ回路、INV2は電圧VDD2~VSS2で動作するインバータ回路である。ノードN1は非反転バッファ回路BUF1の入力端子に接続され、ノードN2はインバータ回路INV2の入力端子に接続される。非反転バッファ回路BUF1の出力側はノードN3、インバータ回路INV2の出力側はN4である。
【0027】
MN3はドレイン・ソース間がSS2~VDD2の電圧範囲に十分な耐圧を持つ低耐圧NMOSトランジスタである。MP5はドレイン・ソース間がVSS2~VDD2の電圧範囲に十分な耐圧を持つ低耐圧PMOSトランジスタである。トランジスタMN3はソースが電圧VDD2の電源に接続され、ゲートがノードN3に接続される。トランジスタMP5はソースが電圧VDD2の電源に接続され、ゲートがノードN4に接続される。トランジスタMN3,MP5のドレインはノードN5に接続される。
【0028】
12はノードN5に接続されるラッチ回路であり、トランジスタMN3,MP5に対して電流駆動能力が十分低く、かつ、トランジスタMN3,MP5のオフ時のリーク電流より小さいリーク電流となるように、電圧VDD2~VSS2で動作するインバータ回路INV3,INV4を2個ループ接続して構成されている。
【0029】
BUF2は電圧VDD2~VSS2で動作する非反転バッファ回路であり、この非反転バッファ回路BUF2の出力端子が端子端子13に接続される。
【0030】
次に動作の説明をする。まず、ノードN1,N2の信号の生成について説明する。この部分は特殊なものではなく、従来例をそのまま用いることができ、例えば図2におけるN21,N22にノードN1,N2を接続しても実施可能である。入力端子11に入力する信号によってトランジスタMN1が駆動され、入力端子11に入力する信号をINV1で反転した信号によってトランジスタMN2が駆動される。
【0031】
ここで、トランジスタMN1がON、トランジスタMN2がOFFである場合で説明する。トランジスタMN1がONした際、ノードN1は、速やかにトランジスタMP1でクランプされている電位(VSS2+Vthmp1)に落ちる。Vthmp1はトランジスタMP1の閾値電圧である。これにより、ゲートがノードN1に接続されているトランジスタMP4はONする。このとき、トランジスタMN2はOFFのため、ノードN2の電位はトランジスタMP4のONによって持ち上げられる。また、ノードN2を引き上げているトランジスタMP2とトランジスタMP4との間には抵抗R2が存在するので、ノードN2の電位変化には一定の時定数が存在する。トランジスタMN1がOFF、トランジスタMN2がONになるケースでは、上記説明とは関係が逆になる。
【0032】
トランジスタMN1がOFF→ONするケースでは、ノードN3が“H”→“L”になる(“H”はVDD2/2より高いレベル、“L”はVDD2/2より低いレベル)時点で、ノードN2はまだ遅れを持っており、直近の状態の“L”のままである。すなわち、ノードN4は“H”のままである。ノードN5にはトランジスタMN3,MP5の他にラッチ回路12が接続されているので、ノードN5が不定の電圧を持つことが回避される。時定数を持ってノードN2の電圧が持ち上がってくると、ノードN4が“H”→“L”に遷移し、このタイミングで、ノードN5の新しい値が確定する。ノードN5の信号はバッファ回路BUF2を介して出力端子13に出力される。上記と逆に、トランジスタMN1がOFF、トランジスタMN2がONになるケースでは、関係が逆になる。
【0033】
以上から本実施例によれば、ノードN1,N2のうちの時定数によって必ず遅れてくる側の電位を、伝搬させる値として採用するものであるため、ノードN5に生じる電圧の立ち上がりの伝搬遅延と立ち下がりの伝搬遅延のズレが少なくなる。つまり、ノードN1,N2に生成される電圧をそのまま使用してトランジスタMN3,MP5を駆動する構成に対して、非反転バッファ回路BUF1とインバータINV2を使用することで、トランジスタMN3,MP5のうちの最後に動作する側を駆動する電圧の時定数が一定となるので、ノードN5の電圧の遅延時間のズレを少なくすることができる。
【0034】
また、ノードN5がラッチ回路12によって保持されるので、遷移中に発生するノイズに対して不感帯を設けることができ、ノイズの影響を受けにくくなる。
【0035】
さらに、電圧がVDD1~VSS1で動作する回路側においてなにかしらの原因でノードN1,N2が共に“L”になるような通常ではありえないケースが発生して、トランジスタMN3,MP5が共にOFFしてノードN5がハイインピーダンスになった場合であっても、ラッチ回路12によって直前の値が保持されるので、出力端子13に異常な不定な電圧が出力することはなく安全性が高い。
【0036】
さらに、非反転バッファ回路BUF1をシュミットトリガ・バッファ回路に置き換えるとともにインバータ回路INV2をシュミットトリガ・インバータ回路に置き換えたり、あるいはそれら非反転バッファ回路BUF1やインバータ回路INV2を構成するトランジスタのチャネル幅Wを調整することで、意図的に伝搬遅延にずれを発生させる場合には、上記した不感帯を容易に変更できる。
【0037】
近年の集積回路が低電圧側の電圧VSS基準で動作することと、構成上本来的にあまり発生しないものと考えられることではあるがノードN1,N2が“H”に張り付くするケースでは、トランジスタMN3,MP5の間に貫通電流が発生してしまうが、トランジスタMN3,MP5やラッチ回路12のトランジスタのサイズバランスを調整してその駆動能力に差をつけることで、貫通時の出力値を一定の方向へシフトすることが可能である。多少の論理ゲートを追加する余裕があるならば、ノードN1,N2が共に“H”の場合が生じないような補償回路を付加することも可能である。
【0038】
なお、以上の実施例では、電源電圧をVDD1>VSS1,VDD2>VSS2,VDD2≧VDD1,VSS2≧VSS1の条件で説明したが、PMOSトランジスタをNMOSトランジスタに置き換え、NMOSトランジスタをPMOSトランジスタに置き換えた場合は、電源電圧の高低関係を逆にすればよい。また、請求項ではPMOSトランジスタとNMOSトランジスタの一方を第1導電型、他方を第2導電型として記載している。
【符号の説明】
【0039】
11:入力端子、12:ラッチ回路、13:出力端子端子
図1
図2
図3