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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20221213BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221213BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20221213BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20221213BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221213BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221213BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20221213BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20221213BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20221213BHJP
   C09J 7/22 20180101ALI20221213BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J11/06
C09J133/06
C09J7/38
B32B27/00 M
B32B27/18 D
G02B5/30
G02B1/111
C09J133/14
C09J7/22
C09J133/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018181847
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020050772
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 史恵
(72)【発明者】
【氏名】塚田 高士
(72)【発明者】
【氏名】大津賀 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 昌世
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-011362(JP,A)
【文献】特開2009-019162(JP,A)
【文献】特開2017-222797(JP,A)
【文献】特開2017-197600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00
B32B 27/18
G02B 5/30
G02B 1/111
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光板の偏光子の保護層の材質がポリメチルメタクリレート(PMMA)である偏光板用の表面保護フィルムであって、
樹脂フィルムの片面に、アクリル系ポリマーと、(F)帯電防止剤と、(C)架橋剤とを含有する粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が積層されている粘着フィルムが用いられてなり、
前記(F)帯電防止剤が、下記一般式(1)で示される融点25~80℃のイオン性化合物であり、
・A (1)
[一般式(1)中、Kはピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、モルホリニウムからなる群から選択した1種のカチオンであり、Aはイミド基を含有しない、トリフルオロメタンスルホナートアニオン、ペンタフルオロエタンスルホナートアニオンからなる群から選ばれる1種のアニオンである。]
前記アクリル系ポリマーが、ガラス転移点温度が0℃以下のアクリル系ポリマーであり、
前記アクリル系ポリマー100重量部に対して、前記イオン性化合物を0.01~10重量部の割合で必須成分として含有してなることを特徴とする表面保護フィルム
【請求項2】
前記アクリル系ポリマーが、
(A)アルキル基の炭素数C1~18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部に対して、(B-1)水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.01~10重量部、および/または、(B-2)カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.01~0.5重量部の割合で、共重合させた共重合体のアクリル系ポリマーであり、
前記(A)アルキル基の炭素数C1~18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部のうち、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートからなる群から選択した少なくとも1種を50重量部以上の割合で含有してなり、
前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(C)架橋剤として3官能以上のイソシアネート化合物を0.1~10重量部の割合で含有してなり、
前記粘着剤組成物が、さらに、(D)金属キレート化合物の架橋促進剤と、(E)ケトエノール互変異性体化合物とを含有してなることを特徴とする請求項1に記載の表面保護フィルム
【請求項3】
前記(B-1)水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であり、
前記(B-2)カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーが、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸からなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項に記載の表面保護フィルム
【請求項4】
前記粘着剤組成物が、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(D)金属キレート化合物の架橋促進剤を0.001~0.5重量部と、前記(E)ケトエノール互変異性体化合物を0.1~300重量部との割合で含有してなり、
前記(D)金属キレート化合物の架橋促進剤が、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、鉄キレート化合物からなる群の中から選択された少なくとも1種以上であり、
前記(E)/前記(D)の重量部比率が、70~1000であることを特徴とする請求項2または3に記載の表面保護フィルム
【請求項5】
前記粘着剤層の表面抵抗率が、1.0×10+12Ω/□以下であり、
前記粘着剤層の、PMMA基材およびTAC基材の表面に、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用の樹脂組成物を用いて形成された低屈折率層に対する剥離帯電圧、及び、PMMA基材およびTAC基材の表面に何も処理されていないプレーン層に対する剥離帯電圧が共に±0.3kV以下であり、
前記粘着剤層が、偏光子に保護層を積層し、保護層の表面が、フッ素化合物を含有する組成物で低反射表面処理された偏光板である被着体に貼り合せ後、温度60℃、湿度90%RHの雰囲気下に48hr放置し、前記雰囲気下から取り出し1日後の耐汚染性能が、前記被着体の表面に対して「汚染なし」であり、
前記粘着剤層の、前記PMMA基材の表面に施された前記低屈折率層に対する粘着力が、低速の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.04~0.2N/25mmであり、且つ、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が2.0N/25mm以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の表面保護フィルム
【請求項6】
前記樹脂フィルムの片面の、前記粘着剤層が形成された側とは反対面に、帯電防止処理および防汚処理がされている請求項1~5のいずれか1項に記載の表面保護フィルム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止剤を含有する粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルム、表面保護フィルムに関する。さらに詳細には、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、バランスがとれた粘着力を有する等の優れた粘着性能とともに、帯電防止性能と耐汚染性能との両立を図ることが可能な粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルム、表面保護フィルムを提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶ディスプレイを構成する部材である偏光板などの光学部材の製造工程においては、光学部材の表面を一時的に保護するための表面保護フィルムが貼合される。このような表面保護フィルムは、光学部材を製造する工程のみに使用され、光学部材を液晶ディスプレイに組み込む時点で、光学部材から剥離して除去される。このような光学部材の表面を保護するための表面保護フィルムは、光学部材の製造工程においてのみに使用されるため、一般には、工程フィルムと呼ばれることもある。
【0003】
このように光学部材を製造する工程において使用される表面保護フィルムは、光学的に透明性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムの片面に粘着剤層が形成されている。表面保護フィルムは、光学部材に貼合するまで、その粘着剤層を保護するために、離型処理された離型フィルムが、粘着剤層の表面に貼合されている。
そして、偏光板などの光学部材は、表面保護フィルムが貼合された状態で、液晶表示板の表示能力、色相、コントラスト、異物混入などの光学的評価を伴う製品検査を受ける。このため、表面保護フィルムに対する要求性能としては、粘着剤層に気泡や異物、及び粘着剤組成物の低分子量成分が付着していないこと、即ち、耐汚染性能を有することが求められている。
また、偏光板などの光学部材から表面保護フィルムを剥がす際に、粘着剤層と被着体とが剥がれる時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電が、液晶ディスプレイの電気制御回路の故障に影響することが懸念される。このため、表面保護フィルムの粘着剤層には、優れた帯電防止性能を有することが求められている。
さらに、近年では、偏光板の偏光子の保護層(保護フィルムと呼ばれることもある。)として、従来、用いられているトリアセチルセルロース(TAC)以外に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、環状オレフィン系ポリマー、ポリカーボネートなどの、偏光板の表面保護フィルムを剥がす時に、剥離帯電を起こし易い材料の採用が拡大している。このため、偏光板の表面保護フィルム用の粘着剤層に求められる帯電防止性能が、従来に比べて優れていることが必要とされている。
また、最終的に偏光板などの光学部材から表面保護フィルムを剥がすときには、速やかに剥離できることが求められている。いわゆる、高速剥離によっても、速やかに剥離できるように、粘着力が剥離速度によっても変化が少ないことが求められている。
【0004】
このように、近年においては、表面保護フィルムを構成する粘着剤層に対して、(1)低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ること、(2)耐汚染性能を有すること、(3)優れた帯電防止性能を有することなどが、表面保護フィルムを使用するに当たっての使い易さの点から求められている。
しかし、表面保護フィルムを構成する粘着剤層に対する要求性能について、これら(1)~(3)のそれぞれ、個々の要求性能を満たすことは出来ても、表面保護フィルムの粘着剤層に求められる(1)~(3)の全ての要求性能を、同時に満たすことは非常に困難な課題であった。
【0005】
このような課題を解決するために、例えば、(1)低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ること、(2)耐汚染性能を有すること、及び、(3)優れた帯電防止性能を有することについては、それぞれ、次のような提案が知られている。
【0006】
(1)低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ることに関しては、炭素数が7以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有共重合性化合物との共重合体を主成分とし、これを架橋剤で架橋処理してなるアクリル系の粘着剤層では、長期間接着した場合に粘着剤の被着体側への移着が生じ、また被着体に対する接着力の経時上昇性が大きいという問題があった。これを回避するため、炭素数が8~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとアルコール性水酸基を有する共重合性化合物との共重合体を用い、これを架橋剤で架橋処理した粘着剤層を設けたものが知られている(特許文献1)。
また、上記と同様の共重合体に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有共重合性化合物との共重合体を少量配合し、これを架橋剤で架橋処理した粘着剤層を設けたものなどが提案されている。しかし、これらは、表面張力が低くて表面が平滑なプラスチック板などの表面保護に使用すると、加工時や保存時の加熱により浮きなどの剥離現象を生じる問題や、手作業領域である高速での剥離時の再剥離性に劣るという問題もあった。
【0007】
これらの問題を解決するため、a)炭素数が8~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする(メタ)アクリル酸アルキルエステル100重量部に、b)カルボキシル基含有共重合性化合物1~15重量部と、c)炭素数が1~5の脂肪族カルボン酸のビニルエステル3~100重量部とを加えてなる単量体混合物の共重合体に、上記のb)成分のカルボキシル基に対して当量以上の架橋剤を配合した粘着剤組成物が提案されている(特許文献2)。
特許文献2に記載の粘着剤組成物では、加工時や保存時において、浮きなどの剥離現象を生じることがなく、その上、接着力の経時上昇性が小さくて再剥離性に優れており、長期保存、特に高温雰囲気下で長期保存しても小さな力で再剥離でき、その際被着体上に糊残りを生じず、また高速剥離を行ったときでも小さな力で再剥離できるとしている。
しかし、特許文献2に記載の粘着剤組成物では、実施例1~3における粘着剤層のゲル分率が90%であり、共重合体から未重合モノマーあるいはオリゴマーが溶出し易い。また、特許文献2には、帯電防止性能及び耐汚染性能に関する記載はなく、剥離帯電を起こし易い材料を被着体とした場合に、優れた帯電防止性能及び耐汚染性能を備えた粘着剤層に改良することが難しいという問題があった。
【0008】
また、(2)耐汚染性能を有することについては、0質量部以上0.5質量部未満のカルボキシル基含有モノマー、0.6~9質量部のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーおよび99.4~90.5質量部の(メタ)アクリル酸エステルモノマーからなり、重量平均分子量が10万以上100万未満である(メタ)アクリル系共重合体100質量部;およびカルボジイミド系架橋剤0.1~5質量部を含む粘着剤組成物が開示されている(特許文献3)。
特許文献3に記載の粘着剤組成物では、特定組成の(メタ)アクリル系共重合体の架橋剤としてカルボジイミド系架橋剤を使用することを特徴とする。これにより、粘着剤層に、オートクレーブ処理時の圧力及び温度による収縮に追従しうる架橋構造を提供できる。このため、粘着剤組成物を使用して形成された粘着剤層は、高温・高圧条件下(オートクレーブ処理時)であっても発泡を抑制・防止でき、耐汚染性能に優れ、また、透明性にも優れるとしている。
しかし、特許文献3に記載の粘着剤組成物では、耐汚染性能が改良されているものの、優れた粘着性能とともに、帯電防止性能を両立させることは実現できておらず、更に解決すべき課題として残されている。
【0009】
また、(3)優れた帯電防止性能を有することについては、表面保護フィルムに帯電防止性を付与させるための方法として、基材フィルムに帯電防止剤を練り込む方法などが知られている。帯電防止剤としては、例えば、(a)第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1~3級アミノ基などのカチオン性基を有する各種のカチオン性帯電防止剤、(b)スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基などのアニオン性基を有するアニオン性帯電防止剤、(c)アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系などの両性帯電防止剤、(d)アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系などのノニオン性帯電防止剤、(e)上記の様な帯電防止剤を高分子量化した高分子型帯電防止剤、などが開示されている(特許文献4)。
しかし、特許文献4に記載の表面保護フィルムにおいては、被着体へのゴミの付着に係わる帯電防止性能の付与に関する記載はあるものの、優れた粘着性能とともに、耐汚染性能を両立させる解決手段は記載されておらず、更に解決すべき課題として残されている。
【0010】
また、近年では、帯電防止剤を基材フィルムに含有させたり、あるいは基材フィルムの表面に塗布したりするのではなく、直接に粘着剤層に含有させることが提案されている。例えば、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が、ポリエーテル基を主鎖中に含むポリエーテルエステル系可塑剤に溶解された状態で分散されていることを特徴とする制電性粘着剤組成物が開示されている(特許文献5)。
特許文献5に記載の粘着剤組成物では、可塑剤として飽和又は不飽和の非環式炭化水素基を有するモノ又はジカルボン酸と、炭素数1~20の非環式炭化水素基を有するアルコールとから形成されるエステル、あるいは、前記不飽和の非環式炭化水素基中の不飽和基がエポキシ化されたエステルからなる可塑剤を使用することが開示されている。このような飽和又は不飽和の非環式炭化水素基を有するモノ又はジカルボン酸は、粘着剤層に使用されるアクリル共重合体を構成するアクリル単量体の炭素数と近い炭素数を有することにより、制電性粘着剤組成物との相溶性が良好になり、可塑剤アクリル系制電性粘着剤組成物中に好適に保持されるため、ブリードアウトが抑制されるとしている。
しかし、特許文献5に記載の制電性粘着剤組成物においては、帯電防止性能及びブリードアウトの改良技術の開示は有るものの、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度における粘着力のバランス等の粘着性能に優れたものが得られることの記載はなく、優れた粘着性能を有する粘着剤組成物を得るという課題が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開昭63-225677号公報
【文献】特開平11-256111号公報
【文献】特開2011-122054号公報
【文献】特開平11-070629号公報
【文献】特開2014-118469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のとおり、表面保護フィルムを構成する粘着剤層に対して、(1)低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスを取ること、(2)耐汚染性能を有すること、(3)優れた帯電防止性能を有すること、を同時に解決する従来技術は見当たらない。
また、従来から、帯電防止性能を備えた粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層、およびそれを用いた表面保護フィルムの、帯電防止性能と、被着体への耐汚染性能との関係はトレードオフの関係であり、帯電防止性能を維持したまま、耐汚染性能を改善することは困難であった。
更に近年では、表面保護フィルムが貼合される被着体の材質の種類が増え、且つ、被着体の表面処理した状態も多岐にわたるため、全ての被着体に対して耐汚染性能と帯電防止性能とを同時に発現させることが増々難しくなっている。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、バランスがとれた粘着力を有する等の優れた粘着性能とともに、帯電防止性能と、耐汚染性能との両立を図ることが可能な粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルム、表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の発明者らは、帯電防止剤として、融点25~80℃のトリフルオロメタンスルホナートアニオン、又はペンタフルオロエタンスルホナートアニオンを有する、室温で固体状のイオン性化合物を含有する粘着剤組成物が、被着体に対して、帯電防止性能と耐汚染性能とを同時に発現し得ることを見出し、本願発明を完成するに至った。
本発明の、帯電防止剤として、融点25~80℃の、ピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、モルホリニウムからなる群から選択した1種のカチオン、及びトリフルオロメタンスルホナートアニオン、又はペンタフルオロエタンスルホナートアニオンを有する、室温で固体状のイオン性化合物を含有する粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルム、表面保護フィルムは、優れた粘着性能とともに、帯電防止性能と耐汚染性能との両立を実現できており、従来技術の課題を解決したものである。
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明は、アクリル系ポリマーと、(F)帯電防止剤と、(C)架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、前記(F)帯電防止剤が、下記一般式(1)で示される融点25~80℃のイオン性化合物であり、
・A (1)
[一般式(1)中、Kはピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、モルホリニウムからなる群から選択した1種のカチオンであり、Aはイミド基を含有しない、トリフルオロメタンスルホナートアニオン、ペンタフルオロエタンスルホナートアニオンからなる群から選ばれる1種のアニオンである。]
前記アクリル系ポリマーが、ガラス転移点温度が0℃以下のアクリル系ポリマーであり、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して、前記イオン性化合物を0.01~10重量部の割合で必須成分として含有してなることを特徴とする粘着剤組成物を提供する。
【0016】
前記アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数C1~18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部に対して、(B-1)水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.01~10重量部、および/または、(B-2)カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.01~0.5重量部の割合で、共重合させた共重合体のアクリル系ポリマーであり、前記(A)アルキル基の炭素数C1~18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部のうち、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートからなる群から選択した少なくとも1種を50重量部以上の割合で含有してなり、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(C)架橋剤として3官能以上のイソシアネート化合物を0.1~10重量部の割合で含有してなり、前記粘着剤組成物が、さらに、(D)金属キレート化合物の架橋促進剤と、(E)ケトエノール互変異性体化合物とを含有してなることが好ましい。
【0017】
前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層の表面抵抗率が、1.0×10+12Ω/□以下であり、前記粘着剤層の、PMMA基材およびTAC基材の表面に、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用の樹脂組成物を用いて形成された低屈折率層に対する剥離帯電圧、及び、PMMA基材およびTAC基材の表面に何も処理されていないプレーン層に対する剥離帯電圧が共に±0.3kV以下であり、前記粘着剤層が、偏光子に保護層を積層し、保護層の表面が、フッ素化合物を含有する組成物で低反射表面処理された偏光板である被着体に貼り合せ後、温度60℃、湿度90%RHの雰囲気下に48hr放置し、前記雰囲気下から取り出し1日後の耐汚染性能が、前記被着体の表面に対して「汚染なし」であり、前記粘着剤層の、前記PMMA基材の表面に施された前記低屈折率層に対する粘着力が、低速の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.04~0.2N/25mmであり、且つ、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が2.0N/25mm以下であることが好ましい。
【0018】
前記(B-1)水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であり、
前記(B-2)カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーが、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸からなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0019】
前記粘着剤組成物が、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(D)金属キレート化合物の架橋促進剤を0.001~0.5重量部と、前記(E)ケトエノール互変異性体化合物を0.1~300重量部との割合で含有してなり、前記(D)金属キレート化合物の架橋促進剤が、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、鉄キレート化合物からなる群の中から選択された少なくとも1種以上であり、前記(E)/前記(D)の重量部比率が、70~1000であることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、樹脂フィルムの片面に、上記の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が積層されていることを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0021】
また、本発明は、上記の粘着フィルムが用いられた、表面保護フィルムを提供する。
【0022】
また、本発明は、上記の粘着フィルムが用いられた、偏光板用の表面保護フィルムを提供する。
【0023】
また、本発明は、光学フィルムの少なくとも一方の面に、上記の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が積層されている粘着剤層付き光学フィルムを提供する。
【0024】
また、本発明は、前記樹脂フィルムの片面の、前記粘着剤層が形成された側とは反対面に、帯電防止処理および防汚処理がされている粘着フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係わる粘着剤組成物は、従来の表面保護フィルム用の粘着剤組成物と比べて、優れた粘着性能、及び、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する。
特に、本発明に係わる表面保護フィルムは、被着体が、光学フィルムの表面に積層された、フッ素化合物を含有する防汚層、又は、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用の組成物を用いて形成された低屈折率層において、従来技術による表面保護フィルムに比べて、優れた粘着性能、及び、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有しており、帯電防止性能と、耐汚染性能との両立に、著しい効果がある。
すなわち、本発明に係わる粘着剤組成物、及びそれを用いた表面保護フィルムは、優れた粘着性能、及び、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を備えているため、産業上の利用価値が極めて大である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
本実施形態の粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーと、(F)帯電防止剤と、(C)架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、前記(F)帯電防止剤が、下記一般式(1)で示される融点25~80℃のイオン性化合物であり、
・A (1)
[一般式(1)中、Kはピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、モルホリニウムからなる群から選択した1種のカチオンであり、Aはイミド基を含有しない、トリフルオロメタンスルホナートアニオン、ペンタフルオロエタンスルホナートアニオンからなる群から選ばれる1種のアニオンである。]
前記アクリル系ポリマーが、ガラス転移点温度が0℃以下のアクリル系ポリマーであり、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して、前記イオン性化合物を0.01~10重量部の割合で必須成分として含有してなることを特徴とする。
【0027】
本実施形態の粘着剤組成物に用いられるアクリル系ポリマーは、粘着剤組成物の主剤ポリマーであり、ガラス転移点温度が0℃以下のアクリル系ポリマーである。また、アクリル系ポリマーは、(A)アルキル基の炭素数C1~18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分とする共重合体が好ましい。
【0028】
(A)アルキル基の炭素数C1~18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、直鎖、分枝状、環状のいずれでもよい。
【0029】
本実施形態の粘着剤組成物に用いられるアクリル系ポリマーは、(A)アルキル基の炭素数C1~18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部のうち、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートからなる群から選択した少なくとも1種を50重量部以上の割合で含有してなることが好ましく、60重量部以上の割合で含有することがより好ましく、75重量部以上の割合で含有することが特に好ましい。
【0030】
本実施形態の粘着剤組成物に用いられるアクリル系ポリマーは、(B-1)水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種以上、および/または、(B-2)カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種以上を共重合させた共重合体のアクリル系ポリマーであることが好ましい。前記アクリル系ポリマーには、(B-1)水酸基を含有する共重合性ビニルモノマー、(B-2)カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも一方が共重合されればよく、両方が共重合されてもよい。
前記アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数C1~18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部に対して、(B-1)水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.01~10重量部、および/または、(B-2)カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.01~0.5重量部の割合で、共重合させた共重合体のアクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0031】
本実施形態の粘着剤組成物に用いられるアクリル系ポリマーには、(B-1)水酸基を含有する共重合可能なモノマーを共重合させてもよい。(B-1)水酸基を含有する共重合可能なモノマーとしては、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等からなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
(B-1)水酸基を含有する共重合可能なモノマーを共重合させる場合は、(A)アルキル基の炭素数C1~18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部に対して、(B-1)水酸基を含有する共重合可能なモノマーを0.01~10.0重量部の割合で含有してなることが好ましく、0.5~7.0重量部の割合で含有してなることがより好ましく、1.0~6.0重量部の割合で含有してなることが特に好ましい。
【0032】
本実施形態の粘着剤組成物に用いられるアクリル系ポリマーには、(B-2)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーを共重合させてもよい。(B-2)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸等からなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
(B-2)カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを共重合させる場合は、(A)アルキル基の炭素数C1~18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部に対して、0.01~0.5重量部の割合で含有してなることが好ましく、0.01~0.4重量部の割合で含有してなることがより好ましく、0.01~0.3重量部の割合で含有してなることが特に好ましい。
【0033】
本実施形態に係わる粘着剤組成物に含有させるアクリル系ポリマーの製造方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法等、適宜、公知の重合方法が使用可能である。アクリル系ポリマーの共重合体の重量平均分子量は、例えば50万~300万が挙げられる。アクリル系ポリマーの酸価は、0.1~1.0であることが好ましい。これにより、耐汚染性能を改善することができる。ここで、「酸価」とは、酸の含有量を表す指標の一つであり、カルボキシル基を含有するポリマー1gを中和するのに要する、水酸化カリウムのmg数で表される。
【0034】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、(F)帯電防止剤を含有する。本実施形態の(F)帯電防止剤は、下記一般式(1)で示される融点25~80℃のイオン性化合物である。
【0035】
・A (1)
[一般式(1)中、Kはピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、モルホリニウムからなる群から選択した1種のカチオンであり、Aはイミド基を含有しない、トリフルオロメタンスルホナートアニオン、ペンタフルオロエタンスルホナートアニオンからなる群から選ばれる1種のアニオンである。]
【0036】
前記イオン性化合物は、常温で固体であることが好ましい。常温は、例えば25℃未満の温度であり、具体的には、23℃で固体のイオン性化合物であることが好ましい。本実施形態に係わる粘着剤組成物は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、前記イオン性化合物を0.01~10重量部の割合で必須成分として含有してなる。
【0037】
(F)帯電防止剤の具体例としては、例えば、1-オクチル-2-メチルピリジニウム トリフルオロメタンスルホナート塩、1,2,3-トリメチルイミダゾリウム ペンタフルオロエタンスルホナート塩、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム トリフルオロメタンスルホナート塩、1-ヘキシル-4-メチルピリジニウム ペンタフルオロエタンスルホナート塩、1-オクチル-3-メチルピリジニウム トリフルオロメタンスルホナート塩、n-オクチルピリジニウム トリフルオロメタンスルホナート塩等が挙げられる。
【0038】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、さらに、(C)架橋剤として、3官能以上のイソシアネート化合物を含有する。3官能以上のイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパンや、グリセリン等の3価以上のポリオールとのアダクト体などが挙げられる。(C)架橋剤である3官能以上のイソシアネート化合物の割合としては、例えば、アクリル系ポリマーの100重量部に対して、0.1~10重量部の割合で含有するのが好ましく、0.1~6重量部の割合で含有するのがより好ましい。
【0039】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、(E)ケトエノール互変異性体化合物を含有してもよい。(E)ケトエノール互変異性体化合物としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等のβ-ケトエステルや、アセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン等のβ-ジケトンが挙げられる。これらは、ポリイソシアネート化合物を架橋剤とする粘着剤組成物において、架橋剤の有するイソシアネート基をブロックすることにより、架橋剤の配合後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物のポットライフを延長することができる。(E)ケトエノール互変異性体化合物は、特にアセチルアセトン、アセト酢酸エチルからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、(E)ケトエノール互変異性体化合物を0.1~300重量部の割合で含有することが好ましい。
【0040】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、(D)金属キレート化合物の架橋促進剤を含有してもよい。(D)金属キレート化合物の架橋促進剤は、ポリイソシアネート化合物を架橋剤とする場合に、前記共重合体と架橋剤との反応(架橋反応)に対して触媒として機能する物質であればよい。(D)金属キレート化合物の架橋促進剤は、中心金属原子Mに、1以上の多座配位子Lが結合した化合物である。金属キレート化合物は、金属原子Mに結合する1以上の単座配位子Xを有してもよく、有しなくてもよい。金属キレート化合物の具体例としては、トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(III)、鉄トリスアセチルアセトネート、チタニウムトリスアセチルアセトネート、ルテニウムトリスアセチルアセトネート、亜鉛ビスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)鉄(III)、ビス(2,4-ヘキサンジオナト)亜鉛、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)チタン、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)アルミニウム、テトラキス(2,4-ヘキサンジオナト)ジルコニウム等が挙げられる。
【0041】
(D)金属キレート化合物の架橋促進剤としては、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、鉄キレート化合物からなる群の中から選択された少なくとも1種以上の金属キレート化合物であることが好ましい。前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、(D)金属キレート化合物の架橋促進剤を0.001~0.5重量部の割合で含有することが好ましい。
【0042】
(E)ケトエノール互変異性体化合物は、(D)金属キレート化合物の架橋促進剤とは反対に、架橋を抑制する効果を有することから、(E)ケトエノール互変異性体化合物と(D)金属キレート化合物の架橋促進剤との割合を適切に設定することが好ましい。粘着剤組成物のポットライフを長くし、貯蔵安定性を向上させるには、(E)/(D)の重量部比率が、70~1000であることが好ましく、70~700であることがより好ましく、70~300であることが特に好ましい。ここで、(E)/(D)の重量部比率とは、(E)の重量部を(D)の重量部で除算して得られた商の値である。
【0043】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、任意成分として、(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物を含有してもよい。(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物は、ポリエーテル基を有するシロキサン化合物であり、通常のシロキサン単位〔-SiR -O-〕の他に、ポリエーテル基を有するシロキサン単位〔-SiR(RO(RO))-O-〕を有する。ここで、Rは1種又は2種以上のアルキル基又はアリール基、R及びRは1種又は2種以上のアルキレン基、Rは1種又は2種以上のアルキル基やアシル基等(末端基)を示す。ポリエーテル基としては、ポリオキシエチレン基〔(CO)〕やポリオキシプロピレン基〔(CO)〕等のポリオキシアルキレン基が挙げられる。ポリエーテル基を有するシロキサン単位において、ポリエーテル基の末端がOH基(上記一般式においてR=H)であってもよい。
【0044】
(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物は、HLB値が6~12であるポリエーテル変性シロキサン化合物であることが好ましい。また、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物が0.01~0.5重量部含まれることが好ましく、0.02~0.35重量部含まれることがより好ましく、0.02~0.25重量部含まれることが特に好ましい。HLB値とは、例えばJIS K3211(界面活性剤用語)等に規定する親水親油バランス(親水性親油性比)である。
ポリエーテル変性シロキサン化合物は、例えば、水素化ケイ素基を有するポリオルガノシロキサン主鎖に対し、不飽和結合及びポリオキシアルキレン基を有する有機化合物をヒドロシリル化反応によりグラフトさせることによって得ることができる。具体的には、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン重合体等が挙げられる。
【0045】
(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物を粘着剤組成物に配合することにより、粘着剤層の粘着力及びリワーク性能を改善することができる。(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物の重量平均分子量は、10000以下であることが好ましい。アクリル系ポリマーとの相溶性の観点からは、HLB値が低く、分子量が低い方が相溶性は良好であるが、分子量が低いポリエーテル変性シロキサン化合物であれば、HLB値が比較的高く、ポリマーとの相溶性がやや低くても、優れた帯電防止性が得られる。
【0046】
本実施形態の粘着剤組成物は、上述の添加剤に限らず、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤、酸化防止剤などの公知の添加剤が適宜に配合されてもよい。これらは、単独で、もしくは2種以上を併せて用いることができる。
【0047】
本実施形態の粘着剤組成物は、偏光板の偏光子の保護層に貼合される表面保護フィルム用の粘着剤組成物として好適である。ここで、偏光板の偏光子の保護層が、TAC系フィルム、PMMA系フィルム、PET系フィルムからなる群より選択された1種が挙げられる。ここで、TACはトリアセチルセルロース、PMMAはポリメチルメタクリレート、PETはポリエチレンテレフタレートの略称である。
また、偏光板の偏光子の保護層の表面に施されている表面処理が、未処理、AG処理、LR処理、AR処理、AG-LR処理、AG-AR処理からなる群より選択された1種であってもよい。ここで、AGとはアンチグレア(Anti Glare)、LRとはローリフレクション(Low Reflection)、ARとはアンチリフレクション(Anti Reflection)である。
【0048】
本実施形態の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層は、粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であることが好ましく、5.0×10+11Ω/□以下であることがより好ましく、1.0×10+11Ω/□以下であることが特に好ましい。表面抵抗率が大きいと、粘着剤層を被着体から剥離する時に発生した静電気を逃がす性能に劣る。このため、表面抵抗率を十分に小さくすることにより、粘着剤層を被着体から剥離する時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電圧が低減され、被着体に影響することを抑制することができる。
【0049】
本実施形態の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層は、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用の樹脂組成物を用いて形成された低屈折率層に対する、粘着剤層の剥離帯電圧が±0.3kV以下、すなわち、-0.3~+0.3kVの範囲内であることが好ましい。低屈折率層形成用の組成物に用いられるフッ素化合物としては、フッ素化オレフィン類、フッ素化ビニルエーテル類、フッ素化アルキル(メタ)アクリレート等の1種又は2種以上の重合物である含フッ素共重合体、フッ素化アルキル基含有シラン化合物等の縮合物が挙げられる。含フッ素共重合体は、フッ素化されたモノマーに加えて、オレフィン類、ビニルエーテル類、(メタ)アクリレート等の、フッ素化されていないモノマーが共重合されていてもよい。低屈折率層は、高屈折率層等と組み合わせて反射防止層を構成してもよい。
【0050】
低屈折率層に対する剥離帯電圧を測定する際に、表面に低屈折率層を形成するための基材としては、PMMA基材およびTAC基材が挙げられる。また、本実施形態の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層は、PMMA基材およびTAC基材の表面に何も処理されていないプレーン層に対する剥離帯電圧が±0.3kV以下、すなわち、-0.3~+0.3kVの範囲内であることが好ましい。
【0051】
粘着剤層が、被着体に貼り合せ後、温度60℃、湿度90%RHの雰囲気下に48hr放置し、前記雰囲気下から取り出し1日後の耐汚染性能が、前記被着体の表面に対して「汚染なし」であることが好ましい。被着体としては、偏光子に保護層を積層し、保護層の表面が、フッ素化合物を含有する組成物で低反射表面処理された偏光板が挙げられる。低反射表面処理に用いられるフッ素化合物を含有する組成物は、上述のフッ素化合物を含有する低屈折率層形成用の樹脂組成物と同一でもよく、異なってもよい。保護層としては、PMMA基材およびTAC基材などが挙げられる。
【0052】
本実施形態の粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤層の、前記PMMA基材の表面に施された前記低屈折率層に対する粘着力は、低速の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.04~0.2N/25mmであり、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が2.0N/25mm以下であることが好ましく、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が0.2~1.6N/25mmであることがより好ましい。これにより、粘着力が剥離速度によっても変化が少ない性能が得られ、高速剥離によっても、速やかに剥離することが可能になる。また、貼り直しのため、一旦、表面保護フィルムを剥がすときにも、過大な力を必要とせず、被着体から剥がし易い。
【0053】
本実施形態の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層のゲル分率は、95~100%であることが好ましく、97~100%であることがより好ましい。このように粘着剤層のゲル分率が高いことにより、低速の剥離速度において、粘着力が過大にならず、共重合体からの未重合モノマーあるいはオリゴマーの溶出が低減して、リワーク性や高温・高湿度における耐久性が改善され、被着体の汚染を抑制することができる。
【0054】
本実施形態の粘着フィルムは、本実施形態の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、樹脂フィルムの片面または両面に形成してなる。また、本実施形態の表面保護フィルムは、本実施形態の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、樹脂フィルムの片面に形成してなる表面保護フィルムである。本実施形態の粘着剤組成物は、優れた帯電防止性能を備え、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスが優れ、さらに、耐汚染性能を有する。このため、偏光板の表面保護フィルムの用途として好適に使用することができる。
【0055】
粘着剤層の基材フィルムや、粘着面を保護する離型フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。
樹脂フィルムの片面の、前記粘着剤層が形成された側とは反対面に、帯電防止処理および防汚処理がされていてもよい。帯電防止処理としては、帯電防止剤の塗布や練り込み等が挙げられる。防汚処理としては、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による処理が挙げられる。離型フィルムには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系の離型剤などにより離型処理が施されてもよい。
【0056】
また、光学フィルムの少なくとも一方の面に、本実施形態の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層を積層することにより、粘着剤層付き光学フィルムを得ることができる。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。光学部材が適用される機器としては、液晶パネル、有機ELパネル、タッチパネル等が挙げられる。
偏光板用の表面保護フィルムなどの光学用の表面保護フィルム及び粘着フィルムの場合、基材フィルム及び粘着剤層は、十分な透明性を有することが好ましい。
【実施例
【0057】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0058】
<アクリル系ポリマーの製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に、2-エチルヘキシルアクリレート100重量部、8-ヒドロキシオクチルアクリレート6.0重量部、アクリル酸0.1重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、実施例1に用いるアクリル系ポリマーを得た。
[実施例2~6及び比較例1~3]
モノマーの組成を各々、表1の(A)、(B-1)、(B-2)の記載のようにした以外は、上記の実施例1に用いるアクリル系ポリマー溶液と同様にして、実施例2~6及び比較例1~3に用いるアクリル系ポリマー溶液を得た。
【0059】
<粘着剤組成物及び表面保護フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造した実施例1のアクリル系ポリマー溶液に対して、架橋剤(コロネートHX)2.5重量部、帯電防止剤(1-オクチル-2-メチルピリジニウム トリフルオロメタンスルホナート塩)1.5重量部、架橋触媒(チタニウムトリスアセチルアセトネート)0.1重量部、アセチルアセトン8.5重量部を加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)の上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去し、厚さが20μmの粘着剤層を得た。その後、基材フィルム(一方の面に帯電防止及び防汚処理されたPETフィルム)の、帯電防止及び防汚処理された面とは反対の面に、離型フィルム付き粘着剤層を転写させ、「基材フィルム/粘着剤層/離型フィルム」の積層構成を有する実施例1の表面保護フィルムを得た。
[実施例2~6及び比較例1~3]
添加剤の組成を各々、表1の(C)~(F)の記載のようにした以外は、上記の実施例1の表面保護フィルムと同様にして、実施例2~6及び比較例1~3の表面保護フィルムを得た。
【0060】
【表1】
【0061】
表1において、各成分の重量部は、(A)アルキル基の炭素数C1~18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計を100重量部として求めた。
なお、表1において、(C)~(F)の各欄では、アクリル系ポリマーを100重量部として、各成分の含有割合(重量部)を括弧( )内の数値で示した。
また、表1に用いた各成分の略記号の化合物名を、表2に示す。なお、コロネート(登録商標)HX、同HL及び同Lは東ソー株式会社の商品名であり、タケネート(登録商標)D-140N、D-127N、D-110Nは三井化学株式会社の商品名である。
【0062】
【表2】
【0063】
(F)帯電防止剤のうち、F-1~F-6およびF-9は、融点が25℃以上80℃以下であり、常温で固体のイオン性化合物である。F-7およびF-8は、融点が80℃超過であり、常温で固体のイオン性化合物である。
【0064】
<試験方法及び評価>
実施例1~6及び比較例1~3における表面保護フィルムを、それぞれ、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で7日間エージングした後、以下の試験方法により評価した。
【0065】
<粘着力の試験方法>
離型フィルムを剥がして、粘着剤層を表出させた表面保護フィルムを、粘着剤層を介して偏光板の表面に貼合し、1日放置した後、50℃、5気圧、20分間オートクレーブ処理し、室温でさらに12時間放置したものを、粘着力の測定試料とした。得られた測定試料を、180°方向に引張試験機を用いて低速度(0.3m/min)又は高速度(30m/min)において剥がして測定した剥離強度を粘着力とした。
ここで、前記偏光板の偏光子の保護層は、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる群から選択した1種である。
また、LR偏光板、及びAG-LR偏光板は、前記偏光板の偏光子の保護層の表面が、フッ素化合物を含有する組成物で低反射表面処理が施されている。
【0066】
<表面抵抗率の試験方法>
表面保護フィルムをエージングした後、偏光板に貼合する前に、離型フィルムを剥がして粘着剤層を表出し、抵抗率計ハイレスタUP-HT450(三菱化学アナリテック製)を用いて粘着剤層の表面抵抗率を測定した。
【0067】
<剥離帯電圧の試験方法>
離型フィルムを剥がして、粘着剤層を表出させた表面保護フィルムを、被着面にフッ素化合物を含有する低屈折率層形成用の組成物を用いて形成された低屈折率層を有する偏光板に貼合した。表面保護フィルムを、30m/minの引張速度で180°剥離した際に、被着体が帯電して発生する電圧(帯電圧)を高精度静電気センサSK-035、SK-200(株式会社キーエンス製)を用いて測定し、測定値の最大値を剥離帯電圧とした。
【0068】
<耐汚染性能の試験方法>
ガラス板の片面上に、低反射(LR)表面処理を施した偏光板を、貼合機を用いて、粘着剤層(両面粘着テープ)を介して貼合した。その後、前記偏光板の表面に、表面保護フィルムを、貼合機を用いて貼合した。被着体に貼り合せ後、温度60℃、湿度90%RHの雰囲気下に48hr放置し、前記雰囲気下から取り出し1日後に、表面保護フィルムを剥がし、偏光板の表面の汚染状態を目視にて観察した。耐汚染性能の判断基準は、前記偏光板の表面に対して汚染なしの場合を「○」、わずかに汚染ありの場合を「△」、汚染ありの場合を「×」と評価した。
【0069】
表3に、実施例1~6及び比較例1~3における、表面保護フィルムについての評価結果を示す。「表面抵抗率」は、「m×10+n」を「mE+n」とする方式(ただし、mは任意の実数値、nは正の整数)により表記した。
「剥離帯電圧」の欄は、試験で用いた偏光板の偏光子の保護層の材質(TACまたはPMMA)及び表面処理(PlainまたはAG-LR)を示す。「表面処理」のPlainは未処理を意味する。「耐汚染性能」の欄にも、同様にして、試験で用いた偏光板の偏光子の保護層の材質(PMMA)及び表面処理(AG-LR)を示した。
【0070】
【表3】
【0071】
実施例1~6の表面保護フィルムは、被着体である偏光板に対する、低速の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.04~0.2N/25mmであり、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が2.0N/25mm以下であり、粘着性能が優れていた。
また、実施例1~6の表面保護フィルムは、粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であり、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用の組成物を用いて形成された低屈折率層に対する、粘着剤層の剥離帯電圧が-0.3~+0.3kVの範囲内であり、帯電防止性能が優れていた。
また、実施例1~6の表面保護フィルムは、低屈折率層を有しない未処理のPMMA基材およびTAC基材に対しても、粘着剤層の剥離帯電圧が-0.3~+0.3kVの範囲内であり、帯電防止性能が優れていた。
さらに、実施例1~6の表面保護フィルムは、被着体に貼り合せ後、温度60℃、湿度90%RHの雰囲気下に48hr放置し、前記雰囲気下から取り出し1日後にも被着体である低反射表面処理を施した偏光板に対する汚染がなく、耐汚染性能にも優れていた。
すなわち、実施例1~6の表面保護フィルムについての、表3に示された評価結果では、本発明の課題を解決できたことが実証されている。
【0072】
比較例1の表面保護フィルムでは、融点が80℃超過の帯電防止剤を含有している。このため、比較例1の表面保護フィルムは、粘着剤層の粘着力が大きく、剥離帯電圧が高く、耐汚染性能も悪かった。
また、比較例2の表面保護フィルムは、融点が80℃超過の帯電防止剤を含有している。このため、比較例2の表面保護フィルムは、粘着剤層の粘着力が大きく、剥離帯電圧が高く、耐汚染性能も悪かった。
また、比較例3の表面保護フィルムは、融点が25~80℃であっても、アニオンがイミド基を有する帯電防止剤を含有している。このため、比較例3の表面保護フィルムは、PMMA基材に対して、剥離帯電圧が高く、耐汚染性能も悪かった。
このように、比較例1~3の表面保護フィルムでは、本発明の課題を解決することができなかった。