(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】成膜装置、成膜方法、および電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/54 20060101AFI20221213BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221213BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20221213BHJP
H01L 51/48 20060101ALI20221213BHJP
H01L 31/18 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C23C14/54 G
H05B33/14 A
H05B33/10
H01L31/04 184
H01L31/04 420
(21)【出願番号】P 2018185795
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【氏名又は名称】中村 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155871
【氏名又は名称】森廣 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【氏名又は名称】川口 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】松本 行生
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-183229(JP,A)
【文献】特開2009-299156(JP,A)
【文献】特開2009-108381(JP,A)
【文献】特開2011-111679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/54
H01L 51/50
H05B 33/10
H01L 51/48
H01L 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜対象物と、該成膜対象物に向かって成膜材料を飛翔させて該成膜対象物に成膜する成膜源と、が配置されるチャンバと、
前記チャンバ内の所定の成膜待機領域と成膜領域との間で、前記成膜源を前記成膜対象物に対して相対的に移動させる移動手段と、を有する成膜装置であって、
前記成膜領域と前記成膜待機領域との間を仕切る仕切り位置と、前記成膜領域と前記成膜待機領域を開放する
ために前記仕切り位置と前記成膜対象物の成膜面に直交する第1の方向における位置が異なる開放位置と
、の間を移動可能なシャッタ部材を有することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記成膜領域は前記成膜源と前記成膜対象物とが対向する領域であり、前記成膜待機領域は前記成膜源と前記成膜対象物とが対向しない領域であることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記成膜待機領域と前記成膜領域とは、前記成膜対象物の成膜面に直交する第1の方向と交差する第2の方向に並んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記移動手段は、前記成膜源を前記第2の方向に前記成膜対象物に対して相対的に移動させることで前記成膜源を前記成膜待機領域から前記成膜領域へと移動させ、
前記成膜領域内で、前記移動手段が、前記成膜源を前記第2の方向に前記成膜対象物に対して相対的に移動させることで前記成膜対象物に成膜することを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記シャッタ部材は、前記チャンバ内の空間を部分的に仕切ることによって、前記成膜領域と前記成膜待機領域とを仕切ることを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記シャッタ部材は、前記成膜対象物の成膜面に直交する第1の方向に移動することで
、前記仕切り位置と前記開放位置との間を移動することを特徴とする請求項1から
5のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記シャッタ部材は、前記仕切り位置と前記開放位置との間で、直線的に移動することを特徴とする請求項1から
6のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記シャッタ部材は、支点を中心にして揺動する構成となっていることを特徴とする請求項1から
7のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記シャッタ部材は、巻取り軸に巻取りおよび巻き戻すことによって移動する構成となっている請求項1から
8のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記シャッタ部材は、前記チャンバ側に支持されており、前記移動手段による前記成膜源と前記成膜対象物の相対移動の際に、前記成膜源に対して相対的に移動することを特徴とする請求項1から
9のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記シャッタ部材は、前記成膜源側に支持されており、前記移動手段による前記成膜源と前記成膜対象物の相対移動の際に、前記成膜源とともに前記成膜対象物に対して相対移動することを特徴とする請求項1から
9のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項12】
前記成膜源は、スパッタリングカソードであることを特徴とする請求項1から
11のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項13】
前記成膜源は、前記チャンバ内に配置されるターゲットを介して前記成膜対象物と対向する位置に配置される磁場発生手段を有することを特徴とする請求項1から
12のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項14】
前記成膜源は、前記チャンバ内に配置される円筒状のターゲットの内部に配置される磁場発生手段を有することを特徴とする請求項1から
13のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項15】
前記円筒状のターゲットを回転駆動する回転駆動部をさらに備えることを特徴とする請求項
14に記載の成膜装置。
【請求項16】
前記成膜対象物への成膜の前に、前記成膜待機領域において、前記成膜源の周囲にプラズマを生成させることを特徴とする請求項
12から
15のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項17】
成膜源をチャンバ内の成膜待機領域に待機させ、前記成膜源から成膜材料が飛翔する状態とする準備工程と、
前記成膜待機領域から前記チャンバ内の成膜領域に、前記準備工程で前記成膜材料が飛翔する状態となった前記成膜源を成膜対象物に対して相対的に移動させ、前記成膜源から飛翔する成膜材料を前記成膜対象物に堆積させて成膜する成膜工程と、を有する成膜方法であって、
前記成膜領域と前記成膜待機領域との間を仕切る仕切り位置と、前記成膜領域と前記成膜待機領域を開放する
ために前記仕切り位置と前記成膜対象物の成膜面に直交する第1の方向における位置が異なる開放位置と
、の間を移動可能なシャッタ部材を設け、
前記準備工程では、前記シャッタ部材を前記仕切り位置に位置させて前記成膜領域と前記成膜待機領域とを仕切り、
前記成膜工程では、前記シャッタ部材を前記開放位置に位置させ、前記成膜待機領域か
ら前記成膜領域へと前記成膜源を前記成膜対象物に対して相対的に移動させることを特徴とする成膜方法。
【請求項18】
成膜源をチャンバ内の成膜待機領域に待機させ、前記成膜源から成膜材料が飛翔する状態とする準備工程と、
前記成膜待機領域から前記チャンバ内の成膜領域に、前記準備工程で前記成膜材料が飛翔する状態となった前記成膜源を成膜対象物に対して相対的に移動させ、前記成膜源から飛翔する成膜材料を前記成膜対象物に堆積させて成膜する成膜工程と、を有する電子デバイスの製造方法であって、
前記成膜領域と前記成膜待機領域との間を仕切る仕切り位置と、前記成膜領域と前記成膜待機領域を開放する
ために前記仕切り位置と前記成膜対象物の成膜面に直交する第1の方向における位置が異なる開放位置と
、の間を移動可能なシャッタ部材を設け、
前記準備工程では、前記シャッタ部材を前記仕切り位置に位置させて前記成膜領域と前記成膜待機領域とを仕切り、
前記成膜工程では、前記シャッタ部材を前記開放位置に位置させ、前記成膜待機領域から前記成膜領域へと前記成膜源を前記成膜対象物に対して相対的に移動させることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置、成膜方法、および電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板等の成膜対象物に成膜する成膜装置として、成膜対象物と成膜源を対向させて配置し、成膜源と成膜対象物とを相対移動させながら成膜を行う成膜装置が知られている。特許文献1には、ターゲットのスパッタ面をスパッタリングすることでターゲットからスパッタリング粒子(成膜材料)を放出させ、このスパッタリング粒子を基板上に堆積させて薄膜を形成する成膜装置(スパッタ装置)が記載されている。この成膜装置では、ターゲットからスパッタリング粒子を放出させながら、ターゲットを備えたカソードユニットを基板と平行に移動させて成膜を行う。成膜にあたっては、基板がスパッタ面と対面しない領域(成膜待機領域)にカソードユニットがある状態でスパッタリング粒子の放出が開始される。
【0003】
成膜待機領域にある成膜源からの成膜材料の成膜対象物への意図していない堆積が生じると、成膜される膜の膜厚や膜質の均一性を低下させてしまう。特許文献1では、ターゲットの周囲に遮蔽板(遮蔽部材)を設けるとともに、成膜待機位置と基板との間の距離を一定以上離すように構成している。これにより、成膜待機位置にあるカソードユニットのターゲットから放出されるスパッタリング粒子が基板に到達しにくいようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ターゲットと基板との間の距離を大きくした場合、装置のフットプリント(設置面積)が増大したり、チャンバの大型化により真空設備が大規模化してしまったりするという課題があった。また、たとえば、スパッタリングを行う際には不活性ガス等のガスを導入して行うため、雰囲気中にはガス分子が存在し、放出されたスパッタリング粒子は雰囲気中のガス分子と衝突して散乱する。そのため、スパッタリング粒子等の成膜材料は必ずしも直線的に飛翔するわけではなく、ターゲットと基板との間の距離を大きくするだけでは、基板へのスパッタリング粒子の入射の抑制は不十分である。
【0006】
そこで本発明は、上述の課題に鑑み、成膜待機領域で成膜源から放出される成膜材料が成膜領域側に飛翔することを抑制し、成膜対象物に付着することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての成膜装置は、成膜対象物と、該成膜対象物に向かって成膜材料を飛翔させて該成膜対象物に成膜する成膜源と、が配置されるチャンバと、
前記チャンバ内の所定の成膜待機領域と成膜領域との間で、前記成膜源を前記成膜対象物に対して相対的に移動させる移動手段と、を有する成膜装置であって、
前記成膜領域と前記成膜待機領域との間を仕切る仕切り位置と、前記成膜領域と前記成膜待機領域を開放するために前記仕切り位置と前記成膜対象物の成膜面に直交する第1の方向における位置が異なる開放位置と、の間を移動可能なシャッタ部材を有することを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明の別の側面としての成膜方法は、成膜源をチャンバ内の成膜待機領域に待機させ、前記成膜源から成膜材料が飛翔する状態とする準備工程と、前記成膜待機領域から前記チャンバ内の成膜領域に、前記準備工程で前記成膜材料が飛翔する状態となった前記成膜源を成膜対象物に対して相対的に移動させ、前記成膜源から飛翔する成膜材料を前記成膜対象物に堆積させて成膜する成膜工程と、を有する成膜方法であって、前記成膜領域と前記成膜待機領域との間を仕切る仕切り位置と、前記成膜領域と前記成膜待機領域を開放するために前記仕切り位置と前記成膜対象物の成膜面に直交する第1の方向における位置が異なる開放位置と、の間を移動可能なシャッタ部材を設け、前記準備工程では、前記シャッタ部材を前記仕切り位置に位置させて前記成膜領域と前記成膜待機領域とを仕切り、前記成膜工程では、前記シャッタ部材を前記開放位置に位置させ、前記成膜待機領域から前記成膜領域へと前記成膜源を前記成膜対象物に対して相対的に移動させることを
特徴とする。
【0009】
さらにまた、本発明の別の側面としての電子デバイスの製造方法は、成膜源をチャンバ内の成膜待機領域に待機させ、前記成膜源から成膜材料が飛翔する状態とする準備工程と、前記成膜待機領域から前記チャンバ内の成膜領域に、前記準備工程で前記成膜材料が飛翔する状態となった前記成膜源を成膜対象物に対して相対的に移動させ、前記成膜源から飛翔する成膜材料を前記成膜対象物に堆積させて成膜する成膜工程と、を有する電子デバイスの製造方法であって、前記成膜領域と前記成膜待機領域との間を仕切る仕切り位置と、前記成膜領域と前記成膜待機領域を開放するために前記仕切り位置と前記成膜対象物の成膜面に直交する第1の方向における位置が異なる開放位置と、の間を移動可能なシャッタ部材を設け、前記準備工程では、前記シャッタ部材を前記仕切り位置に位置させて前記成膜領域と前記成膜待機領域とを仕切り、前記成膜工程では、前記シャッタ部材を前記開放位置に位置させ、前記成膜待機領域から前記成膜領域へと前記成膜源を前記成膜対象物に対して相対的に移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、成膜待機領域で成膜源から放出される成膜材料が成膜領域側に飛翔することを抑制し、成膜対象物に付着することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(A)は実施形態1の成膜装置の構成を示す模式図、(B)は(A)の第1成膜待機領域の拡大図、(C)は(A)のシャッタ部材の概略拡大斜視図。
【
図2】(A)は
図1(A)の上面図、(B)は回転カソードの磁石ユニットを示す斜視図。
【
図3】本発明の実施形態2の成膜装置の構成を示す模式図。
【
図4】(A)および(B)は本発明の実施形態3の成膜装置の構成を示す模式図、(C)はシャッタ部材を模式的に示す斜視図。
【
図5】(A)および(B)は本発明の実施形態4の成膜装置の構成を示す模式図。
【
図6】(A)は本発明の実施形態5の成膜装置の構成を示す模式図、(B)はシャッタ部材の駆動機構を模式的に示す斜視図。
【
図7】本発明の実施形態6の成膜装置の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲をそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成およびソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
[実施形態1]
まず、
図1(A),(B)および
図2(A)を参照して、実施形態1の成膜装置1の基本的な構成について説明する。本実施形態に係る成膜装置1は、半導体デバイス、磁気デバイス、電子部品などの各種電子デバイスや、光学部品などの製造において成膜対象物2(基板上に積層体が形成されているものも含む)上に薄膜を堆積形成するために用いられる。より具体的には、成膜装置1は、発光素子や光電変換素子、タッチパネルなどの電子デバイスの製造において好ましく用いられる。中でも、本実施形態に係る成膜装置1は、有機EL(ErectroLuminescence)素子などの有機発光素子や、有機薄膜太陽電池などの有機光電変換素子の製造において特に好ましく適用可能である。なお、本発明における電子デバイスは、発光素子を備えた表示装置(例えば有機EL表示装置)や照明装置(例えば有機EL照明装置)、光電変換素子を備えたセンサ(例えば有機CMOSイメージセンサ)も含むものである。
【0014】
図8は、有機EL素子の一般的な層構成を模式的に示している。
図8に示すとおり、有機EL素子は、基板に陽極、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極の順番に成膜される構成が一般的である。本実施形態に係る成膜装置1は、有機膜上に、スパッタリングによって、電子注入層や電極(陰極)に用いられる金属や金属酸化物等の積層被膜を成膜する際に好適に用いられる。また、有機膜上への成膜に限定されず、金属材料や酸化物材料等のスパッタで成膜可能な材料の組み合わせであれば、多様な面に積層成膜が可能である。
【0015】
成膜装置1は、
図1(A)に示すように、チャンバ10と、駆動機構(直線駆動機構12)と、を有する。チャンバ10の内部には、成膜対象物2と、成膜対象物2に向かって成膜材料であるスパッタ粒子を飛翔させて成膜対象物2に成膜する成膜源としての回転カソードユニット3(以下、単に「カソードユニット3」と称する。)と、が配置される。駆動機構は、カソードユニット3が成膜対象物2に対して相対移動するように、カソードユニット3および成膜対象物2の少なくとも一方を駆動する。本実施形態では、駆動機構である直線駆動機構12が、カソードユニット3を駆動する。カソードユニット3は、直線駆動機構12により、成膜対象物2と対向し、成膜対象物2に成膜する成膜領域Aと、成膜対象物2と対向せず、成膜対象物2に成膜しない成膜待機領域Bとの間で移動可能となっている。すなわち、本実施形態において、直線駆動機構12は、成膜源を成膜待機領域Bと成膜領域Aとの間で成膜対象物2に対して相対的に移動させる移動手段である。成膜待機領域Bは、成膜領域Aに対して上流側と下流側の2か所にあるが、以下の説明では、カソードユニット3が、図中右側の一方の成膜待機領域Bに待機して、成膜領域Aを、図中左側に移動して成膜対象物2に成膜するものとして説明する。本発明は移動方向Fに対して直交する第1の方向Gに移動可能な、成膜領域Aと成膜待機領域Bとの間を仕切るシャッタ部材7設けたものである。
【0016】
チャンバ10には、不図示のガス導入手段および排気手段が接続され、内部を所定の圧力に維持することができる構成となっている。すなわち、チャンバ10の内部には、スパッタガス(アルゴン等の不活性ガスや酸素や窒素等の反応性ガス)が、ガス導入手段により導入され、また、チャンバ10の内部からは、真空ポンプ等の排気手段によって排気が行われ、チャンバ10の内部の圧力は所定の圧力に調圧される。
【0017】
成膜対象物2は、ホルダ21に保持され、チャンバ10の天井壁10d側に水平に配置されている。成膜対象物2は、例えば、チャンバ10の側壁に設けられた不図示のゲートバルブから搬入されて成膜され、成膜後、ゲートバルブから排出される。図示例では、成膜対象物2の成膜面2aが重力方向下方を向いた状態で成膜が行われる、いわゆるデポア
ップの構成となっているが、これには限定はされない。たとえば、成膜対象物2がチャンバ10の底面側に配置されてその上方にカソードユニット3が配置され、成膜対象物2の成膜面2aが重力方向上方を向いた状態で成膜が行われる、いわゆるデポダウンの構成で
あってもよい。あるいは、成膜対象物2が垂直に立てられた状態、すなわち、成膜対象物2の成膜面が重力方向と平行な状態で成膜が行われる構成であってもよい。
【0018】
カソードユニット3は、移動方向に所定間隔を隔てて並列に配置された一対の回転カソード3A,3Bを備えている。二つの回転カソード3A,3Bは、
図2(A)に示すように、両端が移動台230上に固定されたサポートブロック210とエンドブロック220によって支持されている。また、回転カソード3A,3Bは、円筒形状のターゲット35とその内部に配置される磁石ユニット30を有する。サポートブロック210とエンドブロック220によってターゲット35は回転自在に支持されており、磁石ユニット30は固定状態で支持されている。なお、ここでは磁石ユニット30は回転しないものとしたが、これに限定はされず、磁石ユニット3も回転または揺動してもよい。移動台230は、リニアベアリング等の搬送ガイドを介して一対の案内レール250に沿って成膜対象物2の成膜面2aと平行な方向(ここでは水平方向)に移動自在に支持されている。図中、案内レール250と平行な方向をX軸、垂直な方向をZ軸、水平面で案内レール250と直交する方向をY軸とすると、カソードユニット3は、その回転軸はY軸方向に向けた状態で、回転軸を中心に回転しながら、成膜対象物2に対して平行に、すなわちXY平面上をX軸方向に移動する。
【0019】
回転カソード3A,3Bのターゲット35は、この実施形態では円筒形状で、成膜対象物2に成膜を行う成膜材料の供給源として機能する。ターゲット35の材質は特に限定はされないが、例えば、Cu、Al、Ti、Mo、Cr、Ag、Au、Niなどの金属単体、あるいは、それらの金属元素を含む合金または化合物が挙げられる。ターゲット35の材質としては、ITO、IZO、IWO、AZO、GZO、IGZOなどの透明導電酸化物であってもよい。ターゲット35は、これらの成膜材料が形成された層の内側に、別の材料からなるバッキングチューブ35aの層が形成されている。このバッキングチューブ35aには、電源13が電気的に接続され、電源13からバイアス電圧が印加されるカソードとして機能する。バイアス電圧はターゲットそのものに印加してもよく、バッキングチューブが無くてもよい。なお、チャンバ10は接地されている。また、ターゲット35は円筒形のターゲットであるが、ここで言う「円筒形」は数学的に厳密な円筒形のみを意味するのではなく、母線が直線ではなく曲線であるものや、中心軸に垂直な断面が数学的に厳密な「円」ではないものも含む。すなわち、本発明におけるターゲット2は、中心軸を軸に回転可能な円筒状のものであればよい。
【0020】
磁石ユニット30は、成膜対象物2に向かう方向に磁場を形成するもので、
図2(B)に示すように、回転カソード3Aの回転軸と平行方向に延びる中心磁石31と、中心磁石31を取り囲む中心磁石31とは異極の周辺磁石32と、ヨーク板33とを備えている。周辺磁石32は、中心磁石31と平行に延びる一対の直線部32a,32bと、直線部32a,32bの両端を連結する転回部32c、32dとによって構成されている。磁石ユニット3によって形成される磁場は、中心磁石31の磁極から、周辺磁石32の直線部32a,32bへ向けてループ状に戻る磁力線を有している。これにより、ターゲット35の表面近傍には、ターゲット35の長手方向に延びたトロイダル型の磁場のトンネルが形成される。この磁場によって、電子が捕捉され、ターゲット35の表面近傍にプラズマを集中させ、スパッタリングの効率が高められている。
【0021】
ターゲット35は、回転駆動装置であるターゲット駆動装置11によって回転駆動される。ターゲット駆動装置11は、特に、図示していないが、モータ等の駆動源を有し、動力伝達機構を介してターゲット35に動力が伝達される一般的な駆動機構が適用され、たとえば、サポートブロック210あるいはエンドブロック220等に搭載されている。一方、移動台230は、直線駆動機構12によって、X軸方向に直線駆動される。直線駆動機構12についても、特に図示していないが、回転モータの回転運動を直線運動に変換す
るボールねじ等を用いたねじ送り機構、リニアモータ等、公知の種々の直線運動機構を用いることができる。
【0022】
なお、2動台230には大気ボックスが組み込まれ、直線運動に追従するリンク機構により構成される大気アーム機構60の一端が連結されている。大気アーム機構60は、内部が大気圧に保持された中空の複数のアーム61,62を有し、これらのアーム61,62は関節部63にて互いに回転自在に連結されている。一方のアーム61の端部はチャンバ10の底壁10aの取付部に回転自在に連結されており、他方のアーム62の端部は移動台230の取付部に回転自在に連結されている。大気アーム機構60の内部には、直線駆動機構12やターゲット駆動装置11のモータに接続する電力ケーブルや制御信号用の信号ケーブル、冷却水を流すためのチューブ等が収納されている。
【0023】
成膜待機領域Bには、この成膜待機領域Bに待機するカソードユニット3と対向する対向部材4が、チャンバ10に対して固定されている。対向部材4は、カソードユニット3と所定間隔を隔てて対向する水平(XY平面)に延びる水平板部4aと、水平板部4aの反成膜領域側(移動方向上流側)の端部からチャンバの底壁側に向けて垂直(YZ平面)に延びる垂直板部4bとを有している。チャンバ10の底壁10aを基準にして、水平板部4aの高さは、成膜領域Aに位置する成膜対象物2と、ほぼ同じ高さに配置されている。水平板部4aの成膜領域A側の端部は、成膜対象物2のホルダ21との間に、シャッタ部材7が通過する程度の隙間が設けられている。
【0024】
また、カソードユニット3の成膜領域A側および成膜領域Aと反対側には、第1カソードユニット3と共に成膜対象物2に対して移動する第1遮蔽部材51及び第2遮蔽部材52が配置されている。この第1遮蔽部材51と第2遮蔽部材52は、移動台230に固定された底板部53にて連結され」ている。また、第1遮蔽部材51と第2遮蔽部材52の高さは、カソードユニット3の、各カソードのターゲット35の頂部の高さ程度となっている。
【0025】
カソードユニット3が成膜待機領域Bに位置する状態では、第2遮蔽部材52が対向部材4の垂直板部4bに近接し、第1遮蔽部材51の位置が、対向部材4の水平板部4aの成膜領域A側の端部と、X軸方向に、ほぼ同一位置にある。この対向部材4の水平板部4aと第1遮蔽部材51との間に、成膜領域Aと成膜待機領域Bとを連通する開口Cが形成され、この開口Cをシャッタ部材7で塞ぐことによって、成膜領域Aと成膜待機領域Bが仕切られるようになっている。
【0026】
シャッタ部材7は、この実施形態1では、略長方形の板状部材で、長辺がY軸方向に延び、短辺がZ軸方向に延び、第1遮蔽部材51の成膜領域側の側面に沿って、Z軸と平行の第1の方向Gに直線的に往復移動自在に組付けられている。シャッタ部材7は、成膜領域Aと成膜待機領域B間を仕切る仕切り位置G1と、成膜領域Aと成膜待機領域B間を開放する開放位置G2との間を移動可能となっている。ここでは、仕切り位置G1および開放位置G2は、シャッタ部材7が仕切り方向に移動する側の先端7aの位置とする。図示例では、仕切り位置G1は、シャッタ部材7の先端7aがチャンバ10の天井壁10d側に移動し、対向部材4の端部と成膜対象物2のホルダ21間の隙間Hに進入して天井壁10d側に達した位置である。この仕切り位置G1では、図示例では、隙間Hを所定量突き抜けているが、隙間Hの途中まででもよい。また、開放位置G2は、シャッタ部材7の先端7aが第1遮蔽部材51の対向端部5a付近まで移動した位置である。開放位置G2については、シャッタ部材7の先端7aが隙間Hから下方に抜けて、開口Cの途中まででもよい。シャッタ部材7を仕切り位置G1と開放位置G2との間を移動可能に構成し、成膜源が成膜待機領域Bにあるときにシャッタ部材7を仕切り位置G1に位置させる。これにより、成膜源を成膜領域Aと成膜待機領域Bとの間で移動可能にしつつ、装置の大型化を
避けつつ、成膜待機領域Bにある成膜源から放出された成膜材料が成膜領域A側へと飛翔することを抑制することができる。
【0027】
シャッタ部材7は、駆動用の空気圧シリンダ等のアクチュエータ8によって直線的に往復駆動される。
図1(C)は、アクチュエータ8を二点鎖線で模式的に示したもので、たとえば、空気圧シリンダの場合には、圧空がオンの場合に空気圧シリンダが伸長してシャッタ部材7を仕切り位置G1まで移動し、圧空がオフの場合に空気圧シリンダが収縮して開放位置G2に移動する。アクチュエータとしては、空気圧シリンダ等の流体圧を利用したアクチュエータに限定されず、たとえば、モータの回転を直線運動に変換するねじ送り機構を用いてもよいし、リニアモータを利用することもでき、種々の直線駆動機構を利用することができる。
【0028】
次に、成膜装置1による成膜方法について説明する。まず、カソードユニット3を成膜待機領域Bにて待機させる。この状態では、アクチュエータ8によって、シャッタ部材7が仕切り位置G1にあり、シャッタ部材7によって、成膜領域Aと成膜待機領域Bとが仕切られている。この成膜待機領域Bにて、成膜工程(本スパッタ構成)に先立って、カソードユニット3を駆動し、第1回転カソード3A及び第2回転カソード3Bにバイアス電位を付与する。これにより、各ターゲット35を回転させてスパッタ粒子を放出させてプリスパッタ(準備工程)を行う。プリスパッタは、各ターゲット35の周囲に形成されるプラズマの生成が安定するまで行われることが好ましい。
【0029】
このプリスパッタ工程において、各ターゲット35から放出されるスパッタ粒子のうち、チャンバ10の天井壁10dに向けて飛翔するスパッタ粒子は、対向部材4の水平板部4aで遮蔽され、また、成膜領域Aに向けて移動方向に飛翔するスパッタ粒子は、第1遮蔽部材51及びシャッタ部材7にて遮蔽される。さらに、成膜領域Aと反対側に飛翔するスパッタ粒子は第2遮蔽部材52及び対向部材4の垂直板部4bによって遮蔽される。このように、プリスパッタ工程においてはシャッタ部材7によって成膜待機領域Bと成膜領域Aとが仕切られているため、プリスパッタにおいて発生する成膜材料が成膜領域Aへと飛翔し、成膜領域Aに配置されている成膜対象物2に付着することを抑制できる。
【0030】
一定時間プリスパッタを行った後、本スパッタ工程に移行する。本スパッタ工程への移行の際は、まず、シャッタ部材7を仕切り位置G1から開放位置G2へと移動させる。その後、カソードユニット3のターゲット35を回転駆動させてスパッタリングを行いながら、直線駆動機構12を駆動して成膜領域Aに進入させる。そして、成膜領域A内で、カソードユニット3を成膜対象物2に対して所定速度で移動させる。この間、磁石ユニット30によって、成膜対象物2に面するターゲット35の表面近傍にプラズマが集中して生成され、プラズマ中の陽イオン状態のガスイオンがターゲット35をスパッタし、飛散したスパッタ粒子が成膜対象物2に堆積する。カソードユニット3の移動に伴って、カソードユニット3の移動方向上流側から下流側に向けて、順次、スパッタ粒子が堆積されていくことで成膜される。成膜領域Aを通過すると、カソードユニット3が反対側の成膜待機領域Bに進入し、直線駆動機構12を停止すると共に、カソードユニット3の駆動を停止する。さらに、必要に応じて、往復移動させて、成膜を実行するようにしてもよく、その場合、左側の成膜待機領域Bについても、右側の成膜待機領域Bと同様に、シャッタ部材7を設けるようにしてもよい。
【0031】
次に、本発明の成膜装置の他の実施形態について説明する。以下の説明では、主として、実施形態1と異なる点についてのみ説明し、同一の構成部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0032】
[実施形態2]
図3(A)は、本発明の実施形態2の成膜装置201を示している。上記実施形態2では、シャッタ部材7がカソードユニット3に設けられていたが、この実施形態2では、シャッタ部材27はチャンバ10側に設けられており、チャンバ10の外側から駆動されるようになっている。すなわち、シャッタ部材27が仕切り位置G1に移動する方向の先端27aはチャンバ10の底壁10a側の端部(図中、下端)であり、仕切り位置G1は、第1遮蔽部材51の端部51aよりも基端部51b側に移動した位置となっている。なお、図示例では、シャッタ部材27が開放位置G2の場合、シャッタ部材27が、チャンバ10の天井壁10dを突き抜けるように記載しているが、模式的に示したもので、たとえば、シャッタ部材27が突き抜けないように天井壁10dとの間に十分な空間を設けるようにしてもよいし、天井壁10dにシャッタ部材27が摺動自在に案内されるガイド部材を設け、摺動部にシール部材を装着するようにしてもよいし、種々の構成を採用することができる。シャッタ部材27を駆動するアクチュエータ28は、チャンバ10の外側に位置し、駆動用のロッド281が、チャンバ10の天井壁10dを貫通する貫通穴にシール部材を介して摺動自在に挿通される。アクチュエータとしては、実施形態1と同様に、空気圧シリンダ等の流体圧を利用したアクチュエータに限定されず、たとえば、モータの回転を直線運動に変換するねじ送り機構を用いてもよいし、リニアモータを利用することもでき、種々の直線駆動機構を利用することができる。
【0033】
[実施形態3]
図4は、本発明の実施形態3に係る成膜装置301を示している。
図4(A)は、シャッタ部材37が仕切り位置、
図4(B)はシャッタ部材37が開放位置の状態を示し、
図4(C)はシャッタ部材の概略構成を示す斜視図である。上記実施形態1および2は、シャッタ部材7,27を、第1の方向Gに、仕切り位置G1と開放位置G2間に直線的にス
ライドさせる構成であったが、この実施形態3は、シャッタ部材37を、第1の方向Gに円弧状に揺動させるようになっている。
【0034】
すなわち、シャッタ部材37は、シャッタ本体371と、シャッタ本体371を支持する揺動アーム372とを有する構成で、揺動アーム372の一端が対向部材4の水平部材4aに支持されている。シャッタ本体371の断面形状(XZ面の断面)は、この支点Oを中心にして描いた円の一部である円弧形状で、仕切り位置G1にて、その下端に位置する先端37aが、第1遮蔽部材51の成膜領域A側の側面の端部に近い位置に当接し、反対側の端部37bが、成膜対象物2のホルダ21と対向部材4の水平板部4aの先端との隙間Hに位置し、シャッタ本体371が、開口Cを覆うようになっている(
図4(A)参照)。また、開放位置G2においては、シャッタ本体371の仕切り方向の先端37aが第1遮蔽部材51から離間し、成膜対象物2のホルダ21と対向部材4の水平板部4aとの隙間H近傍に位置し、シャッタ本体371の反対側の端部37bがチャンバ10の天井壁10dに当接している(
図4(B)参照)。シャッタ部材37を回転駆動する回転アクチュエータ38は、
図4(C)に示すように、モータ等の回転動作機構を有する機構であればよく、たとえば、揺動アーム372の支点位置に設けた軸373に作動連結される。
【0035】
[実施形態4]
図5は、本発明の実施形態4に係る成膜装置401を示している。
図5(A)は、シャッタ部材47が仕切り位置、
図5(B)はシャッタ部材47が開放位置の状態を示している。この実施形態4も、上記実施形態3と同様に、シャッタ部材47の移動軌跡が、ほぼ仕切り位置G1と解放位置G2の間を、円弧状に揺動させるようになっているが、実施形態3と異なる点は、シャッタ部材47がカソードユニット3に揺動自在に支持されている点で相違している。
【0036】
すなわち、シャッタ部材47は、シャッタ本体471と、シャッタ本体471を支持する揺動アーム472とを有する構成で、揺動アーム472の一端が、第1遮蔽部材51に
回転自在に支持されている。図示例では第1遮蔽部材51の端部5aに支持軸473に回転自在に支持されている。シャッタ本体471の断面形状(XZ面の断面)は、この支時軸473を中心にして描いた円の一部である円弧形状で、仕切り位置G1にて、その上端に位置する先端47aが、対向部材4の水平板部4aの成膜領域側の端部4cに当接するが、反対側の端部47bが、第1遮蔽部材51からは所定間隔を隔てて離れている。
【0037】
したがって、仕切り位置においては、開口Cを完全に遮蔽するのではなく、下端側が開放された状態になっており、成膜待機領域Bで発生したスパッタ粒子が下端側から成膜領域側に回りこむ可能性があるが、シャッタ本体471によって成膜対象物2と面す側は仕切られているので、成膜待機領域で生じたスパッタ粒子が成膜対象物2に付着する可能性が低くなっている(
図5(A)参照)。また、開放位置G2においては、シャッタ本体471の仕切り方向の先端47aは水平板部4aの成膜領域側の端部4cから離れ、反対側の端部47bが、チャンバ10の底壁10a側に移動し、第1遮蔽部材51に当接する(
図5(B)参照)。
シャッタ部材37を回転駆動する回転アクチュエータについては、特に図示しないが、実施形態3と同様に、モータ等の回転動作機構を有する機構が、揺動アーム472の支持軸473に作動連結される。
【0038】
[実施形態5]
図6は、本発明の実施形態5に係る成膜装置501を示している。
図6(A)は、シャッタ部材57が仕切り位置の状態を示している。上記実施形態3および4では、シャッタ部材37,47を揺動させる構成となっていたが、この実施形態5は、シャッタ部材57
を、巻取ることによって、仕切り位置G1と開放位置G2に切り替えるようにしたものである。すなわち、
図6(B)に示すように、シャッタ部材57は、Y軸方向に延びる細長い剛性板部が、Z軸方向に屈曲自在に多数連結されたシャッタ本体571と、このシャッタ本体571を巻き取る巻取り軸572を備え、巻取り軸572がチャンバ10側に固定されている。この巻取り軸572は、隙間Hに対して対向部材4の水平板部4aに設けられ、成膜対象物2のホルダ21には、巻取り,巻き戻し時のシャッタ本体571を案内す
る円弧状のガイド573が設けられている。
【0039】
シャッタ部材57は、仕切り位置G1にて、シャッタ部材57が隙間Hを通して巻き戻されて伸長し、その先端57aが第1遮蔽部材51の成膜領域A側の側面近傍に位置している。したがって、この実施形態5においても、実施形態4と同様に、仕切り位置において、開口Cを完全に遮蔽するのではなく、下端側が開放された状態になっている。
したがって、成膜待機領域で発生したスパッタ粒子が下端側から成膜領域側に回りこむ可能性があるが、シャッタ部材57によって成膜対象物2と面する側は仕切られているので、成膜待機領域Bで生じたスパッタ粒子が成膜対象物2に付着するおそれが小さい。また、開放位置G2においては、シャッタ部材57の先端57aは隙間Hの位置まで移動して開放される。シャッタ部材57を巻取る回転アクチュエータについては、特に図示しないが、モータ等の回転動作機構を有する機構が、巻取り軸9に作動連結される。
【0040】
[実施形態6]
図7は、本発明の実施形態6に係る成膜装置601を示している。上記実施形態5では、シャッタ部材57がチャンバ10側に設けた巻取り軸672に巻き取られる構成となっていたが、この実施形態6は、シャッタ部材67を、カソードユニット3側に設けたものである。すなわち、巻取り軸672は、第1遮蔽部材51の成膜領域A側の側面に回転自在に取り付けられており、この巻取り軸69にシャッタ部材67の端部が連結されている。そして、仕切り側の先端67aが、隙間Hを通り、ガイド673を介して、対向部材4の水平板部4aの上面に案内されている。ホルダ21には、円弧状のガイド673が設けられている。
シャッタ本体671は、仕切り位置G1にて、開口Cが完全に遮蔽され、また、開放位置G2においては、シャッタ本体671の先端67aは隙間Hの位置まで移動して開放される。シャッタ部材67を巻取る回転アクチュエータについては、特に図示しないが、実施形態5と同様に、モータ等の回転動作機構が第1遮蔽部材51に設けられ、巻取り軸69に作動連結される。
【0041】
[その他の実施形態]
なお、上記実施形態では、カソードユニット3が、2つの回転カソード3A,3Bを2連配置となっているが、3つ以上でもよいし、一つでもよい。また、カソードユニット3ではなく、ターゲットが平板上のプレーナカソードユニットとしてもよい。さらに、本発明は、スパッタ成膜装置に限定されるものではなく、スパッタリングを用いない蒸着方式の成膜源についても適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 成膜装置
2 成膜対象物
3 回転カソードユニット(成膜源)
7,27,37,47,57,67 シャッタ部材
10 チャンバ
12 直線駆動機構(成膜源駆動機構)
A 成膜領域、B 成膜待機領域
F 移動方向
G 第1の方向、G1 仕切り位置、G2 開放位置