(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】注出用スパウトおよび包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 33/38 20060101AFI20221213BHJP
B65D 51/20 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B65D33/38 BRG
B65D51/20
(21)【出願番号】P 2018187757
(22)【出願日】2018-10-02
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】小野 松太郎
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-008074(JP,A)
【文献】特開2013-112408(JP,A)
【文献】特開平11-301714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/38
B65D 51/20
B65D 75/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する容器本体内の前記内容物を注出させるための注出用スパウトであって、
前記内容物を流通させる流通口を有する外筒体と、
前記流通口から導入された
前記内容物を導く流路を有し、前記外筒体の内側に設けられる内筒体と、
前記流通口を閉止する蓋部と、を備え、
前記内筒体は、前記外筒体に対して前記流通口に近づく方向にスライド移動可能であって、このスライド移動により前記蓋部を変位させて前記流通口を開放
し、
前記内筒体は、環状の底壁と、前記底壁から前記外筒体の軸方向に沿って突出する内周壁を備え、
前記内周壁に、前記スライド移動によって前記蓋部を押圧して変位させる複数の押圧凸部が形成され、
複数の前記押圧凸部は、前記内周壁の周方向に間隔をおいて形成されている、注出用スパウト。
【請求項2】
前記底壁の内底面には、周方向に間隔をおいて、複数の当接突起が形成されている、請求項
1に記載の注出用スパウト。
【請求項3】
前記内筒体は、前記底壁から前記外筒体の軸方向に沿って突出する外周壁を備える、請求項
1または
2に記載の注出用スパウト。
【請求項4】
前記蓋部は、連結部材を介して前記外筒体に接続されている、請求項1~
3のうちいずれか1項に記載の注出用スパウト。
【請求項5】
請求項1~
4のうちいずれか1項に記載の注出用スパウトと、前記容器本体とを備える包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注出用スパウトおよび包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、注出用スパウトを有する包装容器は、内容物の注ぎ出しを容易にするため、広く用いられている(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)。この種の包装容器は、他の包装容器に内容物を補充するための詰め替え用の容器として用いられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-203421号公報
【文献】特開2018-095259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記包装容器では、内容物を他の容器に移し替える作業の途中で内容物がこぼれ出ることがあった。例えば、包装容器を傾けながら注出用スパウトを詰め替え対象の容器の口に合わせる際などに、内容物がこぼれ出ることがあった。
【0005】
本発明の一態様は、内容物を他の容器に注入する作業において内容物がこぼれ出るのを抑制できる注出用スパウトおよび包装容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、内容物を収容する容器本体内の前記内容物を注出させるための注出用スパウトであって、前記内容物を流通させる流通口を有する外筒体と、前記流通口から導入された内容物を導く流路を有し、前記外筒体の内側に設けられる内筒体と、前記流通口を閉止する蓋部と、を備え、前記内筒体は、前記外筒体に対して前記流通口に近づく方向にスライド移動可能であって、このスライド移動により前記蓋部を変位させて前記流通口を開放する、注出用スパウトを提供する。
【0007】
前記内筒体は、環状の底壁と、前記底壁から前記外筒体の軸方向に沿って突出する内周壁を備え、前記内周壁は、前記スライド移動によって前記蓋部を押圧して変位させることが好ましい。
【0008】
前記底壁の内底面には、周方向に間隔をおいて、複数の当接突起が形成されていることが好ましい。
【0009】
前記内筒体は、前記底壁から前記外筒体の軸方向に沿って突出する外周壁を備えることが好ましい。
【0010】
前記蓋部は、連結部材を介して前記外筒体に接続されていることが好ましい。
【0011】
本発明の他の形態は、前記注出用スパウトと、前記容器本体とを備える包装容器を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、内容物を他の容器に注入する作業において内容物がこぼれ出るのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図1に示す包装容器の注出用スパウトの断面図である。
【
図3】
図2に示す注出用スパウトの一部を拡大した図である。
【
図4】
図2に示す注出用スパウトを分解した断面図である。
【
図6】
図2に示す注出用スパウトを一方の面から見た斜視図である。
【
図7】
図2に示す注出用スパウトを他方の面から見た斜視図である。
【
図9】
図1に示す包装容器の使用方法を説明する断面図である。
【
図10】
図9に続く使用方法を説明する断面図である。
【
図11】前図に示す注出用スパウトの一部を拡大した図である。
【
図13】前図に示す注出用スパウトの一部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している場合がある。
【0015】
[実施形態の包装容器]
図1は、実施形態の包装容器1の一部断面図である。
図2は、包装容器1の注出用スパウト2の断面図である。
図3は、注出用スパウト2の一部を拡大した図である。
図4は、注出用スパウト2を分解した断面図である。
図5は、注出用スパウト2の平面図である。
図6は、注出用スパウト2を一方の面から見た斜視図である。
図7は、注出用スパウト2を他方の面から見た斜視図である。
図8は、包装容器1の全体斜視図である。
【0016】
図8に示すように、包装容器1は、注出用スパウト2と、容器本体50とを備える。容器本体50は、天面フィルム51と、正面フィルム52と、背面フィルム53と、底面フィルム54とを備える。天面フィルム51は、容器本体50の天面部を形成する。正面フィルム52と背面フィルム53とは、包装容器1の胴部を形成する。正面フィルム52と背面フィルム53とは、両方の側縁部どうしが重ねあわされて互いに接合される。底面フィルム54は、包装容器1の底面部を形成する。
【0017】
内容物が充てんされた包装容器1は、底面フィルム54を下にした状態(正立状態)でスタンディング可能となる。内容物は、特に限定されないが、例えば液体である。
【0018】
天面フィルム51、正面フィルム52、背面フィルム53および底面フィルム54として使用するフィルムとしては、例えば、基材フィルムとシーラント層とを有する積層体が用いられる。基材フィルムは、例えば、二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ポリアミド、二軸延伸ポリエステル等によって構成される。シーラント層は、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂によって構成される。天面フィルム51、正面フィルム52、背面フィルム53および底面フィルム54として使用するフィルムは、可撓性である。
【0019】
図1に示すように、注出用スパウト2は、スパウト本体3と、キャップ4とを備える。
図2および
図4に示すように、スパウト本体3は、外筒体5と、内筒体6と、蓋部7とを備える。外筒体5は、基部8と、注出筒部9とを備える。X方向は基部8の長さ方向である。Y方向は基部8の幅方向である。Z方向は基部8の厚さ方向である。
図8に示すように、スパウト本体3は、天面フィルム51の中央部に設けられている。なお、スパウト本体の位置は天面フィルムの中央部に限らない。
【0020】
図1および
図2に示すように、基部8は、概略、矩形の板状に形成されている(
図6参照)。基部8は、例えば、注出筒部9の基端9aに対して、外側方(X方向およびY方向)に張り出して形成されている。
図1に示すように、基部8の第1面8aは、天面フィルム51の内面に接合される。
注出筒部9は、円筒状とされている。注出筒部9は、基部8の第1面8a(
図1における上面)から、Z方向(
図1における上方)に突出している。
図1および
図2におけるC1は注出筒部9の中心軸である。なお、基部8の形状は矩形に限らず、円形、楕円形などでもよい。
【0021】
図4および
図7に示すように、基部8の第2面8b(第1面8aと反対の面。
図2参照)の中央には、スパウト本体3の内部空間に通じる流通口10aが形成されている。
図2に示す流路10は、内筒体6の内側の流路であって、流通口10aから注出筒部9の先端にかけて形成されている。流路10は、容器本体50の内容物を、注出筒部9の先端開口である注出口9bから外部に注出させることができる。
図1に示すように、注出筒部9の外周面には、ネジ部13が形成されている。
【0022】
図4~
図6に示すように、内筒体6は、外筒体5の内部に設けられる。
図4および
図5に示すように、内筒体6は、底壁21と、内周壁22と、外周壁23と、複数の係止部24とを備える。底壁21は、中央に円形状の流通口21aを有する円環板状に形成されている。底壁21の中心軸は、注出筒部9の中心軸C1と一致する。
【0023】
底壁21の内底面21bには、複数のリブ25(当接突起)が形成されている。リブ25は、底壁21の径方向に延在する凸部である。リブ25は、内底面21b(
図4における上面)から内筒体6の先端方向(
図4における上方)に突出している。
図5に示すように、複数のリブ25は、底壁21の周方向に間隔をおいて形成されている。
【0024】
図4に示すように、内周壁22は、第1突出部22Aと、第2突出部22Bとを備える。第1突出部22Aは、底壁21の内周縁から基端方向(
図4における下方)に突出する円筒状とされている。第2突出部22Bは、底壁21の内周縁から内筒体6の先端方向(
図4における上方)に突出する円筒状とされている。第1突出部22Aと第2突出部22Bとは同径である。第1突出部22Aおよび第2突出部22Bの中心軸は、注出筒部9の中心軸C1と一致する。
【0025】
第1突出部22Aの基端部(
図4における下端部)には、複数の押圧凸部33が形成されている。押圧凸部33は、第1突出部22Aの基端部から基端方向(
図4における下方)に突出する。複数の押圧凸部33は、第1突出部22Aの周方向に間隔をおいて形成されている。隣り合う押圧凸部33,33の間の空間を凹状空間34という。
【0026】
外周壁23は、円筒状とされ、底壁21の外周縁から、内筒体6の先端方向(
図4における上方)に突出している。外周壁23の中心軸は、注出筒部9の中心軸C1と一致する。外周壁23は、内周壁22に対して間隔をおいて設けられている。
【0027】
図3に示すように、複数の係止部24は、外周壁23の外周面に周方向に間隔をおいて設けられている。係止部24は、基体部26と、基体部26から上方に延出するラッチアーム27とを備える。ラッチアーム27は、径方向に弾性的に曲げ変形可能である。ラッチアーム27は、内筒体6が外筒体5内に挿入される際に、注出筒部9の内周面の係止凸部28を乗り越えて係止凸部28に係止する。これにより、内筒体6は上方移動が規制される。ラッチアーム27は、注出筒部9の内周面に対する摩擦力により内筒体6の下方移動を規制する。
【0028】
図7に示すように、蓋部7は、流通口10aを開閉自在に閉止する。蓋部7は、例えば、円板状に形成されている。蓋部7は、基部8とは別体であってもよいし、基部8と一体に形成されていてもよい。蓋部7の外径は、流通口10aの内径とほぼ等しい。そのため、蓋部7が流通口10aに嵌め込まれることによって流通口10aは閉止される。この蓋部7の形態を「閉止形態」という。蓋部7が流通口10aから外れると、流路10は開放される。この蓋部7の形態を「開放形態」という。
【0029】
蓋部7は、連結部材29を介して基部8に連結されていてもよい。連結部材29は、例えば、蓋部7と基部8とを連結する帯状の連結体である。連結部材29は、厚さ方向に曲げ変形可能である。蓋部7および連結部材29は、基部8と一体に形成されていてもよい。
【0030】
図1に示すように、キャップ4は、主板部14と、筒状部15とを備える。主板部14は円板状に形成されている。筒状部15は主板部14の周縁部から延出する円筒状に形成されている。筒状部15の内周面には、ネジ部13に螺合するネジ部(図示略)が形成されている。キャップ4は、主板部14の内面が注出筒部9の先端に当接することによって注出口9bを閉止する。
【0031】
スパウト本体3およびキャップ4は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂により成形される。樹脂としては、石油由来の樹脂、植物由来の樹脂などを用いることができる。スパウト本体3およびキャップ4の構成材料は、成形可能な材質であれば樹脂に限定されない。
【0032】
[他の包装容器]
図9に示すように、詰め替え対象の包装容器30は、包装容器1(
図1参照)に収容された内容物が補充されて使用される容器である。包装容器30は、容器本体31と、内容物を注出するための口元部40とを備える。口元部40は、容器本体31から上方に突出している。口元部40は、概略、円筒状に形成されている。口元部40の内部空間は、内容物を容器本体31内に導く流路である。
【0033】
[実施形態の包装容器の使用方法]
図9および
図10は、包装容器1の使用方法を説明する断面図である。
図11は、注出用スパウト2の一部を拡大した図である。
図12は、包装容器1の使用方法を説明する断面図である。
図13は、注出用スパウト2の一部を拡大した図である。
図9~
図13を参照して、包装容器1の使用方法の一例を説明する。詳しくは、包装容器1に収容されている内容物を包装容器30に補充する方法(すなわち、包装容器30の内容物を詰め替える方法)について説明する。
【0034】
図9に示すように、注出用スパウト2からキャップ4(
図1参照)を取り外し、包装容器1を倒立状態(スパウト本体3を容器本体50の下部に位置させた状態)とする。この状態では、蓋部7は流通口10aを閉止しているため、包装容器1に収容されている内容物は注出されない。なお、
図9では、包装容器1は倒立状態となっているが、包装容器1は、正立状態(スパウト本体3を容器本体50の上部に位置させた状態)と倒立状態との間の傾斜状態であってもよい。
【0035】
次いで、
図10および
図11に示すように、包装容器1のスパウト本体3を、包装容器30の口元部40に合わせる。口元部40は外筒体5に挿入される。
図10および
図11では、蓋部7は流通口10aを閉止した状態にある。
図10および
図11における内筒体6の位置を「第1位置P1」という。
【0036】
図12および
図13に示すように、包装容器1のスパウト本体3を口元部40に向けて進行させる。口元部40の先端はリブ25に当たる。スパウト本体3をさらに進行させると、口元部40の先端はリブ25を押圧するため、外筒体5が下降する一方で、内筒体6はその高さ位置を維持する。すなわち、内筒体6は、外筒体5に対して、相対的に上方にスライド移動する。その結果、内周壁22の基端部(第1突出部22Aの上端。詳しくは押圧凸部33)は蓋部7を容器本体50側(
図12および
図13の上方)に押圧する。これにより、蓋部7は流通口10aから外れる。蓋部7が外れることによって流通口10aは開放される。
【0037】
図12および
図13における内筒体6の位置を「第2位置P2」という。第2位置P2は、第1位置P1に比べて容器本体50に近い内筒体6の位置である。第2位置P2において、押圧凸部33の先端部分は、基部8の第2面8bから容器本体50側に突出してもよい。
【0038】
押圧凸部33は、第1突出部22Aの周方向に間隔をおいて形成されているため、蓋部7が押圧凸部33の先端に当接する位置にあっても、凹状空間34を通して内容物の流通は可能である。そのため、内筒体6が第2位置P2にあるときには、蓋部7は第1突出部22Aの先端開口を閉止しない。
【0039】
図12に示すように、包装容器1の内容物は流通口10aを通して流路10に流入し、流路10を通って注出口9bから流出し、口元部40を通して包装容器30の容器本体31に流入する。これによって、包装容器1の内容物を包装容器30に移し替えることができる。
この際、口元部40の先端はリブ25に当たるため、口元部40の先端と内底面21bとの間には隙間が確保される。そのため、
図13に矢印で示すように、前記隙間を通してスパウト本体3内から外部へのエア抜きが可能であるため、詰め替え作業を短時間で行うことができる。
【0040】
包装容器1は、スパウト本体3を包装容器30の口元部40に位置合わせし、口元部40が内筒体6を押圧して流通口10aが開放されるまで閉止形態(
図11参照)を維持できる。したがって、内容物を他の包装容器30に注入する作業において内容物がこぼれ出るのを抑制できる。
【0041】
包装容器1は、注出筒部9と外周壁23の径を口元部40の径より大きくできるため、十分な内径を有する流路10を確保できる。そのため、内容物を他の包装容器30に詰め替える作業において、内容物の流量を大きくし、詰め替え作業に要する時間を短縮できる。
包装容器1は、内筒体6が外周壁23を有するため、内筒体6は姿勢を維持したままスライド移動する。そのため、内筒体6を安定的に動作させることができる。
【符号の説明】
【0042】
1…包装容器、2…注出用スパウト、5…外筒体、6…内筒体、7…蓋部、10a…流通口、10…流路、21…底壁、21b…内底面、22…内周壁、23…外周壁、25…リブ(当接突起)、29…連結部材、50…容器本体。