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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ステム
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/04 20060101AFI20221213BHJP
   H01L 23/48 20060101ALI20221213BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20221213BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20221213BHJP
【FI】
H01L23/04 E
H01L23/48 Y
H01L23/02 F
H01S5/022
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018195284
(22)【出願日】2018-10-16
(65)【公開番号】P2020064942
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海沼 正夫
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-170865(JP,A)
【文献】特開2005-260223(JP,A)
【文献】特開2006-269987(JP,A)
【文献】特開平11-233876(JP,A)
【文献】特開2005-033019(JP,A)
【文献】特開2004-311923(JP,A)
【文献】特開2004-146777(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111721(WO,A1)
【文献】特開2004-134614(JP,A)
【文献】国際公開第2007/132672(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/04
H01L 23/48
H01L 23/02
H01S 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部の上面から立ち上がる立ち上がり部と、前記本体部を厚さ方向に貫通する貫通孔とを有するベース部材と、
前記ベース部材の貫通孔に挿通されて固定材で前記貫通孔に固定され、一方の端部が前記ベース部材の本体部の上面から突出するリードと、
前記ベース部材の立ち上がり部と前記リードの一方の端部との間の空隙に挿入されて前記立ち上がり部に取り付けられ、前記一方の端部に電気的に接続される基板と、
を有し、
前記リードは、前記一方の端部の先端に、前記基板が挿入される前記空隙を拡げる方向に湾曲し、前記本体部の上面から離れるほど前記リードの中心軸からの距離が前記リードの中心軸と前記リードの外周面との距離から小さくなり且つ前記一方の端部の先端において前記リードの中心軸からの距離が最小となる曲面であって、丸いエッジである前記曲面を有することを特徴とするステム。
【請求項2】
前記リードは、前記一方の端部とは反対側に位置する他方の端部の先端に、前記曲面と同じ形状の曲面を有することを特徴とする請求項1に記載のステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステムに関する。
【背景技術】
【0002】
光素子等の半導体素子が搭載されるステムでは、円板状のベース部材から立ち上がる立ち上がり部とベース部材の貫通孔に挿通されたリードとの間の空隙に、半導体素子実装用の基板が挿入され、基板とリードとが電気的に接続される。なお、ベース部材の貫通孔に挿通されたリードは、ガラス等の固定材で貫通孔に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-49190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ステムでは、リードが切断加工により形成されるので、リードの先端に尖ったエッジが形成されるのが一般的である。このため、ベース部材の立ち上がり部とベース部材の貫通孔に挿通されたリードとの間の空隙に基板が挿入される際に、基板が、リードの先端における、尖ったエッジに引っ掛かることがある。特に、貫通孔に対するリードの固定態様により、立ち上がり部とリードとの間の空隙が狭い場合に、該空隙に挿入される基板が、リードの先端におけるエッジに引っ掛かり易くなる。その結果、基板の挿入性が低下する虞がある。ステムでは、基板の挿入性の低下は、ステムの組み立て性を悪化させる要因となり、好ましくない。
【0005】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、基板の挿入性を向上することができるステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の開示するステムは、一つの態様において、本体部と、前記本体部の上面から立ち上がる立ち上がり部と、前記本体部を厚さ方向に貫通する貫通孔とを有するベース部材と、前記ベース部材の貫通孔に挿通されて固定材で前記貫通孔に固定され、一方の端部が前記ベース部材の本体部の上面から突出するリードと、前記ベース部材の立ち上がり部と前記リードの一方の端部との間の空隙に挿入されて前記立ち上がり部に取り付けられ、前記一方の端部に電気的に接続される基板と、を有し、前記リードは、前記一方の端部の先端に、前記基板が挿入される前記空隙を拡げる方向に湾曲する曲面、又は、前記空隙を拡げる方向に傾斜する傾斜面を有する。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示するステムの一つの態様によれば、基板の挿入性を向上することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例に係るステムの構成の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、リードの上端部の先端に、丸いエッジである曲面が形成された例1を示す図である。
図3図3は、リードの上端部の先端に、円錐状の傾斜面が形成された例2を示す図である。
図4図4は、リードの上端部の先端に、平坦なエッジである傾斜面が形成された例3を示す図である。
図5図5は、ベース部材の立ち上がり部とリードの上端部との間の空隙に基板を挿入する工程の一例を示す説明図である。
図6図6は、比較例の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示するステムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により開示技術が限定されるものではない。また、実施例において同一の機能を有する構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0010】
[ステムの構成]
図1は、実施例に係るステム1の構成の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、ステム1は、ベース部材10と、リード20と、基板30とを有する。
【0011】
ベース部材10は、例えば、金属材料等から形成され、リード20や基板30等が設けられる基材である。ベース部材10は、本体部11と、本体部11の上面から立ち上がる立ち上がり部12とを有する。
【0012】
本体部11は、例えば、円板状に形成されている。本体部11には、本体部11を厚さ方向に貫通する貫通孔11aが形成されている。
【0013】
立ち上がり部12は、例えば、貫通孔11a側に位置する側面が平坦な半円柱状に形成されている。立ち上がり部12の、貫通孔11a側に位置する側面は、基板30が取り付けられる取付面12aとされている。
【0014】
リード20は、例えば、円柱状に形成されており、電気信号を伝送する。リード20は、ベース部材10の貫通孔11aに挿通されて固定材15で貫通孔11aに固定されている。固定材15は、リード20の、貫通孔11aに対応する外周面を被覆して封止している。固定材15は、リード20とベース部材10との間の絶縁性を確保する機能と、リード20を貫通孔11aに固定する機能とを有する。固定材15の材料としては、例えば、ガラスや絶縁性樹脂等が用いられる。
【0015】
また、リード20は、上端部21がベース部材10の本体部11の上面から突出している。リード20の上端部21が本体部11の上面から突出することにより、ベース部材10の立ち上がり部12とリード20の上端部21との間に、所定幅の空隙が形成されている。この空隙には、基板30が挿入される。以下では、ベース部材10の立ち上がり部12とリード20の上端部21との間の空隙を、適宜「基板30が挿入される空隙」と呼ぶものとする。
【0016】
リード20は、上端部21の先端に、基板30が挿入される空隙を拡げる方向に湾曲する曲面21aを有する。すなわち、リード20は、上端部21の先端に近付くほどリード20の中心軸からの距離が小さくなる曲面21aを有する。例えば、リード20は、上端部21の先端に、半球状の曲面21aを有している。半球状の曲面21aは、例えば、リード20を切断することで形成された上端部21に対してバレル加工を施すことにより、形成される。
【0017】
基板30は、半導体素子実装用の基板であり、ベース部材10の立ち上がり部12とリード20の上端部21との間の空隙に挿入されて立ち上がり部12に取り付けられている。例えば、基板30は、半導体素子が実装される表面30aに対する裏面と、立ち上がり部12の取付面12aとが金錫等のろう材で接合されることにより、立ち上がり部12に取り付けられる。
【0018】
また、基板30は、リード20の上端部21に電気的に接続されている。例えば、基板30は、半導体素子が実装される表面30a上の導体パターン(不図示)と、リード20の上端部21とが金錫等のろう材35で接合されることにより、リード20の上端部21に電気的に接続される。
【0019】
ところで、ステム1では、リード20が切断加工により形成されるので、リード20の先端に尖ったエッジが形成されるのが一般的である。このため、ベース部材10の立ち上がり部12とリード20の上端部21との間の空隙に基板30が挿入される際に、基板30が、リード20の先端における、尖ったエッジに引っ掛かることがある。特に、ベース部材10の貫通孔11aに対するリード20の固定態様により、立ち上がり部12とリード20の上端部21との間の空隙が狭い場合に、当該空隙に挿入される基板30が、リード20の先端におけるエッジに引っ掛かり易くなる。その結果、基板30の挿入性が低下する虞がある。
【0020】
そこで、本実施例のステム1では、図1に示したように、リード20の上端部21の先端に、基板30が挿入される空隙を拡げる方向に湾曲する曲面21aを形成している。これにより、ベース部材10の立ち上がり部12とリード20の上端部21との間の空隙に基板30が挿入される際に、該空隙に挿入される基板30とリード20の上端部21の先端との接触が抑制され、該空隙に基板30が円滑に挿入される。また、仮にリード20の上端部21と基板30とが接触した場合でも、リード20の上端部21の先端の曲面21aが、ベース部材10の立ち上がり部12とリード20の上端部21との間の空隙に基板30を円滑に案内する。その結果、基板30の挿入性を向上することができる。
【0021】
なお、上述の説明では、リード20の上端部21の先端に、半球状の曲面21aが形成される場合を例に示したが、曲面の形状は、半球状に限られない。例えば、リード20の上端部21の先端に、丸いエッジである曲面が形成されてもよい。図2は、リード20の上端部21の先端に、丸いエッジである曲面が形成された例1を示す図である。図2に示すリード20は、上端部21の先端に、丸いエッジである曲面21bを有している。丸いエッジである曲面21bは、例えば、リード20を切断することで形成された上端部21に対してエッチング処理を施すことにより、形成される。
【0022】
また、リード20は、曲面21aに代えて、上端部21の先端に、基板30が挿入される空隙を拡げる方向に傾斜する傾斜面を形成する構成としてもよい。例えば、リード20の上端部21の先端に、円錐状の傾斜面が形成されてもよい。図3は、リード20の上端部21の先端に、円錐状の傾斜面が形成された例2を示す図である。図3に示すリード20は、上端部21の先端に、円錐状の傾斜面21cを有している。円錐状の傾斜面21cは、例えば、リード20を切断することで形成された上端部21に対して切削加工を施すことにより、形成される。
【0023】
また、リード20の先端に、平坦なエッジである傾斜面が形成されてもよい。図4は、リード20の上端部21の先端に、平坦なエッジである傾斜面が形成された例3を示す図である。図4に示すリード20は、上端部21の先端に、平坦なエッジである傾斜面21dを有している。平坦なエッジである傾斜面21dは、例えば、リード20を切断することで形成された上端部21に対して面取り加工を施すことにより、形成される。
【0024】
[ステムの製造方法]
図1に示したステム1は、例えば以下のような製造方法により製造することができる。まず、金属材料に冷間鍛造プレス等のプレス加工を施すことにより、本体部11及び立ち上がり部12が一体化されたベース部材10を作製する。続いて、ガラス材料等を成形して筒状体を作製する。続いて、筒状体をベース部材10の本体部11の貫通孔11aに嵌め込み、リード20を筒状体の孔に挿通させる。続いて、筒状体を加熱して溶融させ、溶融後の筒状体を冷却して固化させる。これにより、リード20の、貫通孔11aに対応する外周面が固定材15で封止され、リード20は、固定材15で貫通孔11aに固定される。続いて、ベース部材10の立ち上がり部12とリード20の上端部21との間の空隙に基板30を挿入する。本実施例のステム1では、リード20の上端部21の先端に、基板30が挿入される空隙を拡げる方向に湾曲する曲面21aを形成している。これにより、ベース部材10の立ち上がり部12とリード20の上端部21との間の空隙に基板30が挿入される際に、該空隙に挿入される基板30とリード20の上端部21の先端との接触が抑制され、該空隙に基板30が円滑に挿入される。また、仮にリード20の上端部21と基板30とが接触した場合でも、リード20の上端部21の先端の曲面21aが、ベース部材10の立ち上がり部12とリード20の上端部21との間の空隙に基板30を円滑に案内する。続いて、基板30の裏面と立ち上がり部12の取付面12aとを金錫等のろう材で接合することにより、基板30を立ち上がり部12に取り付ける。続いて、基板30の、半導体素子が実装される表面30a上の導体パターンと、リード20の上端部21とを金錫等のろう材35で接合することにより、基板30をリード20の上端部21に電気的に接続する。このようにして、図1に示したステム1が製造される。
【0025】
[作用及び効果]
次に、本実施例に係るステム1の作用及び効果について説明する。図5は、ベース部材10の立ち上がり部12とリード20の上端部21との間の空隙に基板30を挿入する工程の一例を示す説明図である。ステム1では、リード20の上端部21の先端に、基板30が挿入される空隙を拡げる方向に湾曲する曲面21aを形成している。これにより、図5に示すように、ベース部材10の立ち上がり部12とリード20の上端部21との間の空隙に基板30が挿入される際に、該空隙に挿入される基板30とリード20の上端部21の先端との接触が抑制され、該空隙に基板30が円滑に挿入される。また、仮にリード20の上端部21と基板30とが接触した場合でも、リード20の上端部21の先端の曲面21aが、ベース部材10の立ち上がり部12とリード20の上端部21との空隙に基板30を円滑に案内する。その結果、基板30の挿入性を向上することができる。
【0026】
ここで、比較例を用いて効果を説明する。図6は、比較例の構成の一例を示す図である。図6に示す比較例では、リード120の上端部121の先端に、尖ったエッジ121aを形成している。リード120の上端部121の先端に、尖ったエッジ121aが形成されている比較例では、ベース部材10の立ち上がり部12とリード20の上端部21との間の空隙に基板30が挿入される際に、基板30が、尖ったエッジ121aに引っ掛かることがある。その結果、比較例では、基板30の挿入性が低下する虞がある。基板30の挿入性の低下は、ステム1の組み立て性を悪化させる要因となり、好ましくない。
【0027】
一方、本実施例に係るステム1では、リード20の上端部21の先端に、基板30が挿入される空隙を拡げる方向に湾曲する曲面21aを形成している。これにより、空隙に挿入される基板30とリード20の上端部21の先端との接触が抑制される。若しくは、基板30が、曲面21aによって、ベース部材10の立ち上がり部12とリード20の上端部21との空隙に円滑に案内される。その結果、隙間に対する基板30の挿入性を向上することができる。
【0028】
以上のように、本実施例に係るステム1は、ベース部材10と、リード20と、基板30とを有する。ベース部材10は、本体部11と、本体部11の上面から立ち上がる立ち上がり部12と、本体部11を厚さ方向に貫通する貫通孔11aとを有する。リード20は、ベース部材10の貫通孔11aに挿通されて固定材15で貫通孔11aに固定され、上端部21がベース部材10の本体部11の上面から突出する。基板30は、ベース部材10の立ち上がり部12とリード20の上端部21との間の空隙に挿入されて立ち上がり部12に取り付けられ、上端部21に電気的に接続される。そして、リード20は、上端部21の先端に、基板30が挿入される空隙を拡げる方向に湾曲する曲面(例えば、曲面21a又は曲面21b)、又は、基板30が挿入される空隙を拡げる方向に傾斜する傾斜面(例えば、傾斜面21c又は傾斜面21d)を有する。これにより、基板30の挿入性を向上することができる。
【0029】
以上、種々の実施例について説明してきたが、開示の技術は上述した実施例に限定されるものではなく、種々の変形態様を構成可能である。例えば、リード20は、上端部21とは反対側に位置する下端部の先端に、曲面21a又は曲面21bと同じ形状の曲面を形成する構成としてもよい。若しくは、リード20は、上端部21とは反対側に位置する下端部の先端に、傾斜面21c又は傾斜面21dと同じ形状の傾斜面を形成する構成としてもよい。これにより、リード20の両端のうちいずれの端部がベース部材10の貫通孔11aに挿通された場合でも、基板30の挿入性を向上することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 ステム
10 ベース部材
11 本体部
11a 貫通孔
12 立ち上がり部
15 固定材
20 リード
21 上端部
21a、21b 曲面
21c、21d 傾斜面
30 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6