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特許7193335バイアル瓶の搬送移載装置及び搬送移載方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】バイアル瓶の搬送移載装置及び搬送移載方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/28 20060101AFI20221213BHJP
   A61J 3/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B65G47/28 E
B65G47/28 F
A61J3/02 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018240169
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020100479
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】潮 尚
(72)【発明者】
【氏名】下坂 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】大村 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】上口 博司
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-107029(JP,U)
【文献】実開昭61-002326(JP,U)
【文献】実開平04-125245(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第103896036(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/22-47/32
A61J 1/00-19/06
F26B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のバイアル瓶を起立姿勢で搬送路に沿って1列に整列させて搬送する搬送手段と、搬送路に設けられる移載場所に1列で集積された所定本数のバイアル瓶を、バイアル瓶に充填された物質を凍結乾燥する凍結乾燥装置に移載する移載手段とを備えるバイアル瓶の搬送移載装置において、
移載場所の上流側の搬送路の部分に設けられた割出手段を備え、割出手段は、この割出手段の設置位置より上流側の搬送路の部分から各バイアル瓶間に隙間を空けずに搬送されてくるバイアル瓶を1本ずつ割出して、この割出手段の設置位置の下流側の搬送路の部分にバイアル瓶を各バイアル間に所定幅の隙間を空けた状態で送り出すように構成され、移載場所に所定本数のバイアル瓶が1列で且つ各バイアル瓶間に所定幅の隙間を空けた状態で集積され、
前記割出手段が、外周部に各1本のバイアル瓶を受入れ可能な周方向間隔で設けられた複数の歯部を有する歯車状の回転体を有し、前記回転体が、樹脂製であると共にバイアル瓶の半分の高さより小さい歯幅を有して、当該バイアル瓶の半分の高さと同程度の位置に設置されることを特徴とするバイアル瓶の搬送移載装置。
【請求項2】
前記移載場所の上流側の搬送路の部分に、バイアル瓶1本分の間隔を存して当該バイアル瓶の搬送方向にのびる一対のガイド板が設けられ、一方のガイド板に前記搬送方向に長手の開口が開設されて、前記回転体が、当該開口を通して前記ガイド板の内側に少なくとも2つ以上の歯部が常に突出するように設置されることを特徴とする請求項1記載のバイアル瓶の搬送移載装置。
【請求項3】
多数のバイアル瓶を起立姿勢で搬送路に沿って1列に整列させて搬送する搬送工程と、搬送路に設けられる移載場所に1列で集積された所定本数のバイアル瓶を、バイアル瓶に充填された物質を凍結乾燥する凍結乾燥装置に移載する移載工程とを含むバイアル瓶の搬送移載方法において、
前記搬送工程は、外周部に各1本のバイアル瓶を受入れ可能な周方向間隔で設けられた複数の歯部を備え、樹脂製であると共にバイアル瓶の半分の高さより小さい歯幅を有して当該バイアル瓶の半分の高さと同程度の位置となるように移載場所の上流側の搬送路の部分に設置される歯車状の回転体を持つ割出手段によって、この割出手段の設置位置より上流側の搬送路の部分から各バイアル瓶間に隙間を空けずに搬送されてくるバイアル瓶を1本ずつ割出して、割出手段の設置位置の下流側の搬送路の部分にバイアル瓶を各バイアル間に所定幅の隙間を空けた状態で送り出し、移載場所に所定本数のバイアル瓶を1列で且つ各バイアル瓶間に所定幅の隙間を空けた状態で集積する集積工程を含むことを特徴とするバイアル瓶の搬送移載方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイアル瓶の搬送移載装置及び搬送移載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス製のバイアル瓶に充填された物質(溶解された薬剤等)を凍結乾燥する凍結乾燥装置に、バイアル瓶を搬送移載する搬送移載装置は例えば特許文献1で知られている。このものは、多数のバイアル瓶を起立姿勢で搬送路に沿って1列に整列させて、各バイアル瓶間に隙間を空けずに搬送する搬送手段と、搬送路に設けられる移載場所に1列で各バイアル瓶間に隙間を空けずに集積された所定本数のバイアル瓶を凍結乾燥装置に移載する移載手段とを備える。
【0003】
ここで、ガラス製のバイアル瓶は寸法公差を有することが知られている(例えば、φ16~18mmバイアル瓶は±0.15~0.5mm)。このため、1列に集積されたバイアル瓶の最後尾(移載場所の最上流側位置)では、累積した寸法公差によって、バイアル瓶1本分程の空隙が生じる場合がある。この場合、移載場所に1列で集積されたバイアル瓶を凍結乾燥装置に移載することを繰り返して、バイアル瓶を複数列千鳥状に配列すると、バイアル瓶が空隙を埋めるように移動することで、千鳥状のバイアル瓶配列が崩れる、いわゆる千鳥崩れが発生するという問題がある。これを防ぐには、「1列」の先頭から最後尾までの距離を短くすれば良いが、それでは凍結乾燥装置でのロットあたりの処理量を増加させることができない。そして、このような千鳥崩れは、凍結乾燥後のバイアル瓶を凍結乾燥装置から搬出するのを困難にし、また、押し込み時に偏荷重を発生させ、バイアル瓶同士の衝突によりバイアル瓶が破損するため、入庫時の千鳥崩れの発生を防止する搬送移載装置の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4574326号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、以上の点に鑑み、簡略な機構によって、バイアル瓶の入庫時の千鳥崩れを防止し、多列の整列入庫状態を保つことができるバイアル瓶の搬送移載装置及び搬送移載方法を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、多数のバイアル瓶を起立姿勢で搬送路に沿って1列に整列させて搬送する搬送手段と、搬送路に設けられる移載場所に1列で集積された所定本数のバイアル瓶を、バイアル瓶に充填された物質を凍結乾燥する凍結乾燥装置に移載する移載手段とを備える本発明のバイアル瓶の搬送移載装置は、移載場所の上流側の搬送路の部分に設けられた割出手段を備え、割出手段は、この割出手段の設置位置より上流側の搬送路の部分から各バイアル瓶間に隙間を空けずに搬送されてくるバイアル瓶を1本ずつ割出して、この割出手段の設置位置の下流側の搬送路の部分にバイアル瓶を各バイアル間に所定幅の隙間を空けた状態で送り出すように構成され、移載場所に所定本数のバイアル瓶が1列で且つ各バイアル瓶間に所定幅の隙間を空けた状態で集積され、前記割出手段が、外周部に各1本のバイアル瓶を受入れ可能な周方向間隔で設けられた複数の歯部を有する歯車状の回転体を有し、前記回転体が、樹脂製であると共にバイアル瓶の半分の高さより小さい歯幅を有して、当該バイアル瓶の半分の高さと同程度の位置に設置されることを特徴とする。この場合、前記移載場所の上流側の搬送路の部分に、バイアル瓶1本分の間隔を存して当該バイアル瓶の搬送方向にのびる一対のガイド板が設けられ、一方のガイド板に前記搬送方向に長手の開口が開設されて、前記回転体が、当該開口を通して前記ガイド板の内側に少なくとも2つ以上の歯部が常に突出するように設置されることが好ましい。
【0007】
上記課題を解決するために、多数のバイアル瓶を起立姿勢で搬送路に沿って1列に整列させて搬送する搬送工程と、搬送路に設けられる移載場所に1列で集積された所定本数のバイアル瓶を、バイアル瓶に充填された物質を凍結乾燥する凍結乾燥装置に移載する移載工程とを含む本発明のバイアル瓶の搬送移載方法は、前記搬送工程が、外周部に各1本のバイアル瓶を受入れ可能な周方向間隔で設けられた複数の歯部を備え、樹脂製であると共にバイアル瓶の半分の高さより小さい歯幅を有して当該バイアル瓶の半分の高さと同程度の位置となるように移載場所の上流側の搬送路の部分に設置される歯車状の回転体を持つ割出手段によって、この割出手段の設置位置より上流側の搬送路の部分から各バイアル瓶間に隙間を空けずに搬送されてくるバイアル瓶を1本ずつ割出して、割出手段の設置位置の下流側の搬送路の部分にバイアル瓶を各バイアル間に所定幅の隙間を空けた状態で送り出し、移載場所に所定本数のバイアル瓶を1列で且つ各バイアル瓶間に所定幅の隙間を空けた状態で集積する集積工程を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、移載場所に所定本数のバイアル瓶が1列で且つ各バイアル瓶間に所定幅の隙間を空けた状態(バイアル瓶間のピッチが一定となる状態)で集積されることで、各バイアル瓶の寸法公差が各バイアル瓶間の所定幅の隙間によって打ち消される(各バイアル瓶の寸法公差は、割出手段による所定幅の各隙間の位置決め公差と合算され、ピッチ誤差へと転換される)ため、寸法公差が累積することなく、移載場所に所定本数のバイアル瓶を集積させることができる。これにより、1列に集積されたバイアル瓶の最後尾でバイアル瓶1本分程の空隙が生じず、バイアル瓶の入庫時の千鳥崩れを防止することができる。
【0009】
こで、上記従来例の搬送移載装置は、移載場所の上流側の搬送路の部分にカウントセンサ及びストッパが設けられ、所定本数のバイアル瓶がカウントセンサを通過した時に、ストッパによって後続のバイアル瓶が通過しないように押さえられる。一方、本発明においては、前記割出手段を上記の如く歯車状の回転体で構成すれば、回転体の回転回数を基に割出されたバイアル瓶数をカウントすることができ、しかも、回転体の回転を停止させればバイアル瓶が通過しないように押さえることができる。これにより、回転体がカウントセンサ及びストッパとしての役割を果たすようになり、カウントセンサ及びストッパを不要にできて、上記従来のものに比べて部品点数を減らすことができ、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の搬送移載装置を説明する部分省略断面図。
図2】本発明の実施形態の搬送移載装置を説明する部分省略平面図。
図3図2のIII-III線に沿う断面図。
図4】本発明の実施形態の割出動作を説明する部分拡大平面図。
図5】本発明の実施形態の変形例に係る回転体の歯部を示す部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、φ16mmのガラス製バイアル瓶を、これに充填された薬剤を凍結乾燥する凍結乾燥装置に搬送移載する場合を例に本発明の搬送移載装置及び搬送移載方法の実施形態を説明する。以下において、鉛直方向をZ軸方向、水平な面内で互いに直交する2軸をX軸方向及びY軸方向とする。
【0012】
図1及び図2を参照して、1は、バイアル瓶Vcに充填された薬剤を凍結乾燥する凍結乾燥装置である。凍結乾燥装置1は、凍結乾燥槽11と、薬剤から気化した水蒸気を吸着するコールドトラップ12と、凍結乾燥槽11内を真空引きする真空ポンプ13とを備える。気密容器としての凍結乾燥槽11内には、バイアル瓶Vcの並置が可能な棚板14がZ軸方向に間隔を存して複数設置されている。各棚板14には、加熱冷却機構141が組み込まれ、棚板14を加熱又は冷却することで、棚板14からの伝熱によってバイアル瓶Vcに充填された薬剤を加熱又は冷却できるようにしている。この場合、特に図示して説明しないが、凍結乾燥槽11には駆動手段が設けられ、各棚板14がZ軸方向に昇降されるようになっている。
【0013】
コールドトラップ12は、凍結乾燥槽11に内蔵される凝縮管121と、凝縮管121に冷媒を供給する冷凍機122とを備え、凝縮管121が常時一定の温度(例えば、-50℃程度)に冷却されるようになっている。真空ポンプ13としては、排気管131を介して凍結乾燥槽11に接続される、例えばメカニカルブースターポンプとその背圧側の油回転真空ポンプとで構成され、凍結乾燥槽11内を所定圧力まで真空引きできるようになっている。なお、冷凍機122、加熱冷却機構141や駆動手段は、公知のものを利用することができるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0014】
凍結乾燥槽11のX軸方向一側面には、Y軸方向に長手の開口112が形成され、開閉扉113によって開閉されるようになっている。そして、バイアル瓶Vcが開口112を通して棚板14に並置されるようになっている。棚板14へのバイアル瓶Vcの自動ローディング及び自動アンローディングを行う搬送移載装置Tmは、多数のバイアル瓶Vcを起立姿勢でY軸方向に長手の搬送路2に沿って、1列に整列させて搬送する搬送手段たるコンベア3と、凍結乾燥槽11の開口112に対しX軸方向に対面するように搬送路2に設けられた移載場所21に1列で集積された所定本数のバイアル瓶Vcを凍結乾燥装置1に移載する移載手段4とを備える。以下においては、移載場所21から凍結乾燥槽11の開口112に向かう方向をX軸プラス方向、その逆方向をX軸マイナス方向とする。
【0015】
移載場所21の上流側の搬送路2の部分には、X軸方向にバイアル瓶1本分の間隔を存して、Y軸方向に沿って伸びる一対のガイド板22a,22bが設けられ、多数のバイアル瓶Vcを起立姿勢で搬送路2に沿って1列に整列させて搬送できるようになっている。移載場所21には、X軸プラス方向側のガイド板22aと同一のX軸方向位置に存するガイド板22cがZ軸方向に昇降自在に設けられている。また、移載場所21には、Y軸方向に長手の押し面41aを持つ第1押し板41が設けられている。この場合、第1押し板41の待機位置では、その押し面41aがガイド板22cと協働して、多数のバイアル瓶Vcを起立姿勢で1列に整列させる役割を果たす。
【0016】
コンベア3は、搬送路2に沿ってY軸方向に間隔を置いて配置される複数個の駆動ローラ31とこれらの駆動ローラ31に跨って掛け渡される無端状の搬送ベルト32とを備える。また、コンベア3は、移載場所21に1列で集積された所定本数のバイアル瓶Vcのうち、最下流側位置のバイアル瓶Vcの停止位置をY軸方向にバイアル瓶Vcの略半径分(即ち、所定幅の隙間を含めたバイアル瓶Vc間のピッチの半分)ずらして停止することができるようになっている。これにより、移載場所21に1列で集積されたバイアル瓶Vcを移載手段4で移載するときに、バイアル瓶Vcを複数列千鳥状に配列することができる。
【0017】
移載手段4は、第1押し板41に、図外のエアシリンダ等の駆動手段の駆動軸42が連結されて構成される。第1押し板41はX軸方向に進退できるようになっている。他方、凍結乾燥槽11内には、第1押し板41に対向させて第2押し板51が設けられ、第2押し板51がX軸方向に進退できるようになっている。
【0018】
搬送路2と凍結乾燥槽11の棚板14との間には、凍結乾燥槽11の開口112を通してバイアル瓶Vcを橋渡す渡し板6が設けられている。移載手段4は、移載場所21に1列で集積された所定本数のバイアル瓶Vcを、渡し板6を介して棚板14に移載可能としている。渡し板6は、その上面を移載場所21における搬送ベルト32の上面と面一とした固定の仮置板部61と、仮置板部61のX軸プラス方向の端部に起伏自在に連結される渡し板部62とで構成される。開閉扉113を開けた状態で渡し板部62をX軸方向に倒すと、図外の駆動手段により上昇または下降させることで高さ位置を一致させた棚板14のX軸マイナス方向の端部に渡し板部62のX軸プラス方向端部が係止される。これにより、渡し板6を介して棚板14と搬送路2とが略同一平面内に位置し、第1押し板41によって移載場所21に1列で集積されたバイアル瓶Vcを凍結乾燥槽11の棚板14へと移載することができる。
【0019】
ところで、移載場所21に1列で各バイアル瓶Vc間に隙間を空けずに多数のバイアル瓶Vcを集積させると、各バイアル瓶Vcの寸法公差が蓄積して、1列に集積されたバイアル瓶Vcの最後尾(移載場所21の最上流側位置)では、バイアル瓶Vc1本分程の空隙が生じる場合がある。これは、入庫時の千鳥崩れの原因となり、各バイアル瓶Vcが多列かつ整列した状態ではなく崩れた状態で棚板14へ移載されてしまう。この結果、凍結乾燥処理が終了した後のバイアル瓶Vcが出庫される際の工程内において、コンベア3に対して均等にバイアル瓶Vcを移載できず、コンベア3の下流工程(バイアル瓶Vc出庫工程)にて閉塞を発生させる場合がある。
【0020】
本実施形態では、移載場所21の上流側の搬送路2の部分に、割出手段7として、外周部に各1本のバイアル瓶Vcを受入れ可能な周方向間隔で設けられた複数(本実施形態では12個)の歯部7aを有する歯車状の回転体7を設けた。具体的には、ガイド板22bにY軸方向に長手の開口23を開設し、この開口23を通してガイド板22bの内側に少なくとも2つ以上の歯部7aが常に突出するように回転体7を設置した。Z軸方向における回転体7の高さ位置は、図3に示すように、バイアル瓶Vcの倒瓶防止のため、バイアル瓶Vcの半分の高さと同程度の位置またはそれよりも低い位置に設置される(これにより、バイアル瓶Vcの底面とコンベア3の表面とで発生する摩擦外乱を効果的に抑止できる)。回転体7の回転中心には図示省略のモータの駆動軸7bが連結され、回転体7が、図2にて時計回り方向に一定の角速度で回転されるようになっている。この場合、モータには、回転体7の回転角が検知できるようにエンコーダ等の検知手段が付設されている。回転体7の角速度は、ガイド板22aと歯部7aとで構成される、各バイアル瓶Vcの拘束が解かれる場所(リリースポイント)が、コンベア3上で一定ピッチ(即ち、所定幅の隙間とバイアル瓶Vcの胴径値とを加えたもの)が刻まれるように設定される。そして、回転体7の回転によって、回転体7の上流側の搬送路2の部分から各バイアル瓶Vc間に隙間を空けずに搬送されてくるバイアル瓶Vcが1本ずつ割出される。割出されたバイアル瓶Vcは、後述するように、後続のバイアル瓶Vcとの間に所定幅(0.4mm~1.0mm)の隙間Gpを空けた状態で回転体7の下流側の搬送路2の部分に送り出される。
【0021】
上記搬送移載装置Tmは、公知のマイクロコンピュータやシーケンサ等を備えた図示省略の制御手段を備え、制御手段は、回転体7を回転させるモータをだけでなく、例えば駆動ローラ31や押し板41,51の作動を統括制御するようになっている。以下、図4も参照して、上記実施形態の搬送移載装置Tmを用いて、凍結乾燥装置1に対してバイアル瓶Vcを搬送移載する搬送移載方法について具体的に説明する。
【0022】
先ず、バイアル瓶Vcに薬剤を充填するのに先立って、バイアル瓶Vcに対して洗浄及び滅菌が施される。滅菌としては、蒸留水の蒸気を利用した蒸気滅菌(121℃以上、20分)が利用される。洗浄及び滅菌が終了すると、起立姿勢としたバイアル瓶Vcに薬剤が充填される。薬剤が充填されたバイアル瓶Vcは搬送路2に移送され、一対のガイド板22a,22bで、多数のバイアル瓶Vcが起立姿勢で搬送路2に沿って1列に整列されて搬送される。このとき、回転体7は、一の歯部7aが開口23を通してガイド板22bの内側に突出した状態(以下、これを回転体7の原点位置とする)で停止されている。搬送路2に沿ってバイアル瓶Vcが移送されてくると、回転体7の一の歯部7aに最下流側のバイアル瓶Vcの側面が当接してこのバイアル瓶Vcが通過しないように押さえられる。このため、後続のバイアル瓶Vc2~Vcもせき止められ、これらのバイアル瓶Vc1~Vcは、各バイアル瓶Vc間に隙間を空けずに1列に整列される(図4(a)参照)。
【0023】
次に、回転体7が時計回り方向に予め設定される角速度で回転させる。回転体7が原点位置から時計回り方向に30度以下の回転角で回転される間は、回転体7の一の歯部7aが、常時最下流側のバイアル瓶Vcの側面に当接し、バイアル瓶Vcが回転体7の角速度で下流側に移動するようになる。つまり、バイアル瓶Vcは一の歯部7aより下流側に移動しない(図4(b)参照)。そして、回転体7の回転角が30度(リリースポイント)に達すると、一の歯部7aが開口23内に没入し、バイアル瓶Vcが一の歯部7aから解放されて割出される(ガイド板22a、22bの間隔がバイアル瓶Vcの胴径と同一の場合)。なお、実際の設計においてはガイド板22a、22bの間隔はコンベア3によるバイアル瓶Vcの搬送時の閉塞を防ぐためにバイアル瓶Vcの胴径の公差最大値以上の寸法を必要とするため、バイアル瓶Vcは一の歯部7aが開口23内に没入する前に開放される。つまり、開放位置は一の歯部7aとガイド板22aとの距離が、バイアル瓶Vcの公称胴径となった位置を中心として、バイアル瓶Vcの公差および回転体7の歯部7aの公差(製造誤差)および回転体7の回転振れ量を合計した分だけ開放位置がばらつく(これがバイアル瓶間のピッチ誤差となる)。これらの問題の対処については後述する。以降、割出されたバイアル瓶Vcはコンベア3の搬送速度で下流側へと搬送される。
【0024】
一の歯部7aが開口23内へ没入する以前に、次の歯部7aが開口23を通してガイド板22bの内側に突出し、Vcを待ち受けている。この次の歯部7aに後続のバイアル瓶Vcの側面が当接すると、回転体7が原点位置から時計回り方向に60度以下の回転角で回転される間は、回転体7の次の歯部7aが、常時最下流側のバイアル瓶Vcの側面に当接し、バイアル瓶Vcが回転体7の角速度で下流側に移動するようになる。なお、バイアル瓶Vcと次の歯部7aとの当初接触位置をバイアル瓶Vcの側面とする構成にしたことにより、バイアル瓶Vcをガイド板22aへ向けて押し付ける分力を抑えることができるため、割出手段での閉塞を防ぐことが可能となっている。このとき、バイアル瓶Vcよって、更に後続のバイアル瓶Vc3、Vcがせき止められながら、下流側に移動する一方で、最下流側のバイアル瓶Vcと後続のバイアル瓶Vcとの間に、回転体7の角速度とコンベア3の搬送速度との速度に応じて徐々に隙間が生じる(図4(c)参照)。
【0025】
回転体7が時計回り方向に60度回転されると、バイアル瓶Vcは次の歯部7aから解放されて割出される。これにより、バイアル瓶Vcとバイアル瓶Vcとの間に所定幅の隙間Gpが空いた状態となる(図4(d)参照)。以降、上記動作を繰り返して、隙間を開けずに搬送されてくるバイアル瓶が1本ずつ割出され、割出されたバイアル瓶Vcは、各バイアル瓶Vc間に所定幅の隙間Gpを空けた状態で下流側の搬送路2の部分に送り出される。
【0026】
次に、上記検知手段によって回転体7が回転数を検知し、これが所定値に達すると、所定本数のバイアル瓶Vcが割出されたとして、回転体7の回転を停止させる。この場合、回転体7より上流側の搬送路2の部分にあるバイアル瓶Vcは、上記同様、原点位置にある回転体7の歯部7aによって再度せき止められる。回転体7により割出されたバイアル瓶Vcは、各バイアル瓶Vc間に所定幅の隙間Gpを空けた状態でコンベア3により搬送され、移載場所21に第1の所定本数のバイアル瓶Vcが1列で且つ各バイアル瓶Vc間に所定幅の隙間Gpを空けた状態(所定のバイアル瓶Vc間のピッチを保った状態)で集積される。
【0027】
最後に、移載場所21に1列で集積された第1の所定本数のバイアル瓶Vcは、第1押し板41をX軸プラス方向に所定の第1ストロークで移動させることで、渡し板6の仮置板部61に移載される。更に、上記と同様にして、回転体7により割出された第1の所定本数より1本少ない第2の所定本数のバイアル瓶Vcが移載場所21にコンベア3により搬送される。この場合、第2の所定本数のバイアル瓶Vcのうち最下流側位置のバイアル瓶Vcの停止位置を、Y軸方向にバイアル瓶Vcの半径分(即ち、所定のバイアル瓶Vc間のピッチの半分)ずらす。そして、上記と同様にして、移載場所21に1列で集積された第2の所定本数のバイアル瓶Vcは、第1押し板41をX軸プラス方向に第1ストロークで移動させると、第1の所定本数のバイアル瓶Vcの列を第2の所定本数のバイアル瓶Vcの列の双方が接触し、2列の状況となり、さらに移動することで、渡し板6の仮置板部61に移載されていく(この接触移動を行う際、各列のバイアル瓶Vc間ピッチが不整合の状態で第1押し板41をX軸プラス方向に所定の第1ストロークで移動させると、列の崩れが発生し、倒瓶や入庫/出庫での閉塞等、様々な問題を招来する)。この操作を繰り返して、Y軸方向に1列に集積されたバイアル瓶VcがX軸方向に千鳥状に複数列並置される。
【0028】
他方、凍結乾燥槽11においては、バイアル瓶Vcを移載済みの棚板14を上昇させると共に、開閉扉113を開位置に移動し、この状態で渡し板部62をX軸方向に倒して空の棚板14のX軸マイナス方向の端部に渡し板部62のX軸プラス方向の端部を係止させる。そして、Y軸方向に1列に整列されたバイアル瓶VcがX軸方向に千鳥状に複数列並置されると、第1押し板41をX軸プラス方向に所定の第2ストロークで移動させることで、各バイアル瓶Vcは千鳥状に並置された状態のまま棚板14に移載される。この操作を繰り返して、複数の棚板14にバイアル瓶Vcを移載し、これが完了すると、渡し板部62を仮置板部61側に起こして戻し、開閉扉113を閉位置に移動した後、凍結乾燥が行われる。凍結乾燥の工程自体は公知であるため、ここでは詳細な説明は省略する。凍結乾燥が終了すると、棚板14を下降させると共に、開閉扉113を開位置に移動し、この状態で渡し板部62を倒して棚板14のX軸マイナス方向の端部に渡し板部62のX軸プラス方向の端部を係止させる。そして、第2押し板51をX軸マイナス方向に所定のストロークで移動させると、凍結乾燥済みのバイアル瓶Vcが渡し板6を介して移載場所21に移載され、各バイアル瓶Vcは移載場所21の下流側へ搬送される。
【0029】
以上説明したように、本実施形態によれば、移載場所21に所定本数のバイアル瓶Vcが1列で且つ各バイアル瓶Vc間に所定幅の隙間Gpを空けた状態で集積されることで、各バイアル瓶Vcの寸法公差が各バイアル瓶Vc間の所定幅の隙間Gpによって打ち消されるため、寸法公差が累積することなく、移載場所21に所定本数のバイアル瓶Vcを集積させることができる。これにより、1列に集積されたバイアル瓶Vcの最後尾でバイアル瓶1本分程の空隙が生じず、バイアル瓶Vcの入庫時の千鳥崩れを防止することができる。この場合、回転体7の回転回数を基に割出されたバイアル瓶Vcの本数をカウントすることができ、回転体7の回転を停止させればバイアル瓶Vcが通過しないように押さえることができるため、回転体7は、カウントセンサ及びストッパの機能を有する。これによれば、カウントセンサ及びストッパを設ける必要がなく、部品点数を減らすことができ、有利である。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、図2図4に示すように、回転体7を対称歯形歯車としたものを例に説明したが、これに限定されるものではない。図5に示すように、変形例に回転体70として、歯部70a回転方向側の面Ro(即ち、回転体7の歯部7aとバイアル瓶Vcが接触しない側の歯面)を面取りした非対称歯形歯車を用いることができる。この面取りと同時に歯たけ方向を回転体7の回転中心からオフセットすることも有効な手段となる。この回転体70を用いれば、回転体7がバイアル瓶Vcを割り出す際、回転体70の歯部7aおよび歯部7aがガイド板22bより突出している条件で歯部7aをガイド板22bの内側面の直下に配置する(つまり、後続のバイアル瓶Vcと干渉しない位置)ことが可能となると同時に回転体70の歯部7aを3枚、ガイド板22bの内側面から突き出すことが可能となる。これは歯部7aが十分に立ち上がった後にバイアル瓶Vcとの接触を可能にする構成となるため、ガイド板22aへ向けて押し付ける分力をさらに抑えることができ、有利である。
【0031】
また、前述したバイアル瓶Vc間のピッチ誤差を抑える視点からは、回転体7および歯部7aは一体として製作されることが望ましい。これは汎用のバイアル瓶Vcの公差を許容する以上、回転体7側の精度を向上させることでばらつきを抑える必要があるからである。当然ながら、回転体7を軸支する構造はモーメント荷重を受けても、回転振れ量が劣化しない構成であることが求められる。更に、リリースポイントにおいてバイアル瓶Vcを円滑に割出す面からは、歯部7aおよびガイド板22aの材質はフッ素樹脂で構成されることが望ましい。上記実施形態では、回転体7はフッ素樹脂を素材として切削加工により歯部7aを含めた一体物として製作されている。他の材質では摩擦係数の問題で安定した割り出しが困難である。
【0032】
また、上記実施形態では、割出手段が歯車状の回転体7である場合を例に説明したが、隙間を空けずに搬送されてくるバイアル瓶Vcを1本ずつ割出し、各バイアル瓶Vc間に所定幅の隙間Gpを空けた状態で送り出することができるものであれば、これに限定されるものではない。特に図示して説明しないが、例えば、一対の駆動ローラ間に無端状のベルトを巻き掛けると共に、ベルトの表面に所定間隔で複数の突片を形成したものを用い、ガイド板22bの開口23を通してガイド板22bの内側に少なくとも2以上の突片が常に突出するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0033】
Gp…所定幅の隙間、Tm…搬送移載装置、Vc…バイアル瓶、1…凍結乾燥装置、2…搬送路、21…移載場所、3…搬送手段(コンベア)、4…移載手段、7…割出手段(歯車状の回転体)。
図1
図2
図3
図4
図5