(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】情報通信装置および情報通信方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/497 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
G01N33/497 A
(21)【出願番号】P 2019056801
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187078
【氏名又は名称】甲原 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】唐津 勇作
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-506689(JP,A)
【文献】特表2011-523030(JP,A)
【文献】特開2014-165817(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0335315(US,A1)
【文献】特表2016-511456(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0004908(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の呼気に基づいて変化する二酸化炭素濃度を検出する第1の検出部と、
前記二酸化炭素濃度が第1の条件を満たす場合に起動し、前記使用者の前記呼気に含まれる呼気情報を検出する第2の検出部と、
外部装置の動作の制御に用いられる、前記呼気情報に応じた制御信号を生成する信号生成部と、
生成された前記制御信号を出力する通信部と、を備え、
前記第1の条件は、第1の閾値未満であった前記二酸化炭素濃度が前記第1の閾値以上になることを含む、情報通信装置。
【請求項2】
前記第1の閾値は、空気中の二酸化炭素濃度の参照値よりも大きく、且つ、呼気中の二酸化炭素濃度の参照値よりも小さい、請求項1に記載の情報通信装置。
【請求項3】
前記第2の検出部は、互いに異なる複数の前記呼気情報を検出し、
前記信号生成部は、前記複数の呼気情報の組み合わせに応じて、前記制御信号を生成する、請求項1または2に記載の情報通信装置。
【請求項4】
前記第2の検出部は、前記呼気の出し方に応じて変化する圧力を前記呼気情報として検出する圧力センサを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の情報通信装置。
【請求項5】
前記第2の検出部は、前記呼気の出し方に応じて変化する温度を前記呼気情報として検出する温度センサを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の情報通信装置。
【請求項6】
前記第2の検出部は、前記呼気の出し方に応じて変化する湿度を前記呼気情報として検出する湿度センサを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の情報通信装置。
【請求項7】
前記第2の検出部は、前記二酸化炭素濃度が前記第1の条件を満たした後で、前記二酸化炭素濃度が第2の条件を満たす場合に、前記第2の検出部を停止する、請求項1から6のいずれか一項に記載の情報通信装置。
【請求項8】
前記第2の条件は、第2の閾値以上であった前記二酸化炭素濃度が前記第2の閾値未満になることを含む、請求項7に記載の情報通信装置。
【請求項9】
前記第2の閾値は、空気中の二酸化炭素濃度の参照値よりも大きく、且つ、前記第1の閾値以下である、請求項8に記載の情報通信装置。
【請求項10】
使用者の呼気に基づいて変化する二酸化炭素濃度を第1の検出部によって検出するステップと、
前記二酸化炭素濃度が第1の条件を満たす場合に動作する第2の検出部によって、前記使用者の前記呼気に含まれる呼気情報を検出するステップと、
外部装置の動作の制御に用いられる、前記呼気情報に応じた制御信号を生成するステップと、
生成された前記制御信号を出力するステップと、を含み、
前記第1の条件は、第1の閾値未満であった前記二酸化炭素濃度が前記第1の閾値以上になることを含む、情報通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は情報通信装置および情報通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の呼気を検出して、呼気に応じた信号を出力する装置が知られている。装置から出力される信号を、外部装置の制御に用いることで、使用者は呼気によって外部装置を操作することが可能である。
【0003】
例えば、特許文献1は、MEMS検知および処理モジュールが、使用者の呼気の排出によって生成された運動エネルギーを検知し、検知した運動エネルギーに応じた1つまたは複数の制御信号を生成するシステムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、使用者の呼気に類似する運動エネルギーを有する現象によって、誤検出をするおそれがある。例えば、MEMS検知および処理モジュールに風が吹き込むことで、誤って制御信号を生成するおそれがあった。
【0006】
本開示は、使用者の呼気を正確に検出して、外部装置を操作するために、検出した呼気に応じて複数パターンの制御信号を生成できる情報通信装置および情報通信方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の情報通信装置は、
使用者の呼気に基づいて変化する二酸化炭素濃度を検出する第1の検出部と、
前記二酸化炭素濃度が第1の条件を満たす場合に起動し、前記使用者の前記呼気に含まれる呼気情報を検出する第2の検出部と、
外部装置の動作の制御に用いられる、前記呼気情報に応じた制御信号を生成する信号生成部と、
生成された前記制御信号を出力する通信部と、を備え、
前記第1の条件は、第1の閾値未満であった前記二酸化炭素濃度が前記第1の閾値以上になることを含む。
【0008】
本開示の情報通信方法は、
使用者の呼気に基づいて変化する二酸化炭素濃度を第1の検出部によって検出するステップと、
前記二酸化炭素濃度が第1の条件を満たす場合に動作する第2の検出部によって、前記使用者の前記呼気に含まれる呼気情報を検出するステップと、
外部装置の動作の制御に用いられる、前記呼気情報に応じた制御信号を生成するステップと、
生成された前記制御信号を出力するステップと、を含み、
前記第1の条件は、第1の閾値未満であった前記二酸化炭素濃度が前記第1の閾値以上になることを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、使用者の呼気を正確に検出して、外部装置を操作するために、検出した呼気に応じて複数パターンの制御信号を生成できる情報通信装置および情報通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】情報通信装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】複数の呼気情報の組み合わせと生成される制御信号との対応関係を示す図である。
【
図3】口を大きく開いている場合の呼気の出し方を例示する図である。
【
図4】口をすぼめている場合の呼気の出し方を例示する図である。
【
図5】情報通信装置の動作の第1例を説明するためのフローチャート図である。
【
図6】情報通信装置の動作の第2例を説明するためのフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本開示の一実施形態に係る情報通信装置10を示す概略構成図である。情報通信装置10は、使用者が呼気によって外部装置を操作することを可能にする。すなわち、情報通信装置10は、呼気によって外部装置を操作するユーザインタフェースとして機能する。ここで、外部装置は、情報通信装置10と異なる機器または装置である。後述するように、使用者は、呼気の出し方を変えることによって、外部装置の複数の動作を制御可能である。
【0012】
(情報通信装置)
情報通信装置10は、第2の検出部20と、第1の検出部30と、制御部50と、記憶部70と、通信部100と、を備える。第2の検出部20は、圧力を測定する圧力センサ21と、温度を測定する温度センサ22と、湿度を測定する湿度センサ23と、を備える。制御部50は、判定部40と、信号生成部90と、を備える。
【0013】
情報通信装置10は、使用者の呼気に含まれる情報(以下「呼気情報」ともいう。)を検出し、検出された呼気情報に応じた制御信号を外部装置に出力する。制御信号は、外部装置の動作の制御に用いられる信号である。使用者は、情報通信装置10を用いることによって、呼気で外部装置の動作を制御できる。
【0014】
外部装置は、一例として医療現場で患者が呼気によって意思を表示するために用いられる支援装置であり得る。情報通信装置10は、患者が息を吹き込むことによって、呼気の出し方に応じて、支援装置に様々な表示を行わせる制御装置として機能してもよい。別の例として、外部装置は、ゲームコントローラであり得る。情報通信装置10は、使用者の頭部に装着可能であってもよいし、ゲームコントローラの一部に設けられてもよい。情報通信装置10は、使用者が息を吹きかけることによって、ボタンを押すこととは異なる動作を実行可能であってよい。別の例として、外部装置は、車両に設けられたオーディオ機器等の車載装置であり得る。情報通信装置10は、例えば使用者の頭部に装着される。情報通信装置10は、使用者が息を吹きかけることによって、使用者が接触することなく曲の選択およびボリュームの制御を実行可能であってよい。ここで、外部装置は、これらの例に限定されず、複数の動作を実行する多様な機器であり得る。例えば、外部装置は、デジタルカメラ等の撮像装置、コンピュータもしくはスマートフォン等の情報処理装置、マイクロフォン等の収音装置、スピーカー、パネルディスプレイもしくはヘッドマウントディスプレイ等の表示装置、または医療機器等であってもよい。
【0015】
(第1の検出部)
第1の検出部30は、使用者の呼気に基づいて変化する二酸化炭素濃度を検出するCO2センサを含む。なお、二酸化炭素濃度が「呼気に基づいて変化する」とは、使用者が呼気を吹き込むことによって二酸化炭素濃度が変化することを意味する。CO2センサは、情報通信装置10の外気を取り込む開口部の近くに設けられて、開口部に取り込まれた外気の二酸化炭素濃度を検出する。使用者が開口部に息を吹き込むと、開口部に取り込まれる外気の二酸化炭素濃度が増加する。このことは、CO2センサの検出値(二酸化炭素濃度)に基づいて、例えば息が吹き込まれたか否かを判定可能であることを意味する。使用者が開口部に息を吹き込むことによって生じる二酸化炭素濃度の変化を逃さないように、CO2センサは常時、または、適切な間隔(例えば1秒間隔)で動作する。CO2センサは、例えば非分散型赤外線分析法を用いたガスセンサを用いてもよい。CO2センサは、例えば電気化学式ガスセンサを用いてもよい。ただし、CO2センサは、これらのセンサに限定されない。第1の検出部30は、二酸化炭素濃度の検出値を、制御部50に出力する。
【0016】
(第2の検出部)
第2の検出部20は、呼気に含まれる呼気情報を検出する。第2の検出部20は、第1の検出部30によって検出された二酸化炭素濃度に基づいて息が吹き込まれたと判定された場合に起動する。すなわち、第2の検出部20は、息が吹き込まれるまで動作しないため、消費電力を抑えることが可能である。第2の検出部20は、例えば圧力センサ21を含んでよい。第2の検出部20は、例えば温度センサ22を含んでよい。第2の検出部20は、例えば湿度センサ23を含んでよい。本実施形態において、第2の検出部20は複数のセンサを含んでおり、それぞれが互いに異なる呼気情報を検出する。具体的には、第2の検出部20は、圧力センサ21、温度センサ22および湿度センサ23を含む。第2の検出部20は、これらのセンサの検出値を制御部50に出力する。息が吹き込まれているときにこれらのセンサが検出した検出値は、呼気に含まれる呼気情報に対応する。すなわち、「呼気情報」は、息が吹き込まれているときの各センサの検出値(例えば圧力、温度および湿度)である。ここで、第2の検出部20は、これらのセンサの一部を備えなくてよい。例えば、第2の検出部20は、圧力センサ21だけを備えてもよい。また、第2の検出部20は、これらのセンサに限定されない。例えば、第2の検出部20は、圧力センサ21に代えて、気体用流量センサを含んでもよい。
【0017】
(圧力センサ)
圧力センサ21は、呼気の出し方に応じて変化する圧力を検出するセンサである。使用者が呼気を強く出した場合(例えば使用者が息を強く吹き込んだ場合)には、呼気を弱く出した場合(例えば息を弱く吹き込んだ場合)と比べて、圧力が高くなる。このことは、圧力センサ21の検出値(圧力)に基づいて、呼気の強弱を判定可能であることを意味する。圧力センサ21は例えばピエゾ抵抗効果による電気抵抗の変化を原理とするセンサを用いてもよい。圧力センサ21は、圧力による金属ゲージの歪みによって生じる電気信号の変化を原理とする薄膜式圧力センサを用いてもよい。ただし、圧力センサ21は、これらのセンサに限定されない。
【0018】
(温度センサ)
温度センサ22は呼気の出し方に応じて変化する温度を検出するセンサである。後述するように、使用者が口を大きく開けて呼気を出した場合には、口をすぼめて呼気を出した場合と比べて、温度が高くなる。このことは、温度センサ22の検出値(温度)に基づいて、使用者の口の開け方(例えば口を大きく開いているかすぼめているか)を判定可能であることを意味する。温度センサ22は、例えば温度により抵抗が変化する白金抵抗を用いてもよい。温度センサ22は、例えば温度に応じた出力電圧を出すIC(Integrated Circuit)温度センサを用いてもよい。ただし、温度センサ22は、これらのセンサに限定されない。
【0019】
(湿度センサ)
湿度センサ23は呼気の出し方に応じて変化する湿度を検出するセンサである。後述するように、使用者が口を大きく開けて呼気を出した場合には、口をすぼめて呼気を出した場合と比べて、湿度が高くなる。このことは、上述した温度センサ22と同様に、湿度センサ23の検出値(湿度)に基づいて、使用者の口の開け方(例えば口を大きく開けているかすぼめているか)を判定可能であることを意味する。湿度センサ23は、湿度変化によって生じる電極間の抵抗の変化を原理とする高分子抵抗式湿度センサを用いてもよい。湿度センサ23は、湿度変化によって生じる電極間の静電容量の変化を原理とする高分子静電容量式湿度センサを用いてもよい。ただし、湿度センサ23は、これらのセンサに限定されない。
【0020】
(制御部)
制御部50は、情報通信装置10を全体的に制御する。本実施形態において、制御部50は、判定部40および信号生成部90として機能する。制御部50は、例えばマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置により実現される。
【0021】
(判定部)
判定部40は、第1の検出部30によって検出された二酸化炭素濃度に基づいて息が吹き込まれたか否かを判定する。この判定は、二酸化炭素濃度が第1の条件を満たすか否かで行われる。具体的には、判定部40は、二酸化炭素濃度が第1の条件を満たす場合、息が吹き込まれたと判定し、二酸化炭素濃度が第1の条件を満たさない場合、息が吹き込まれていないと判定する。本実施形態において、第1の条件は、第1の閾値th1未満であった二酸化炭素濃度が当該第1の閾値th1以上になることを含むが、これに限られない。例えば、第1の条件は、第1の閾値th1未満であった二酸化炭素濃度が当該第1の閾値th1以上になった後、第1の閾値th1以上である状態が所定時間継続したことをさらに含んでもよい。
【0022】
ここで、第1の閾値th1は、空気中の二酸化炭素濃度の参照値(以下、「空気中参照値」ともいう。)よりも大きく、且つ、呼気中の二酸化炭素濃度の参照値(以下、「呼気中参照値」ともいう。)よりも小さい範囲において、任意に定められてもよい。本実施形態において「空気中参照値」は、人間の一般的な生活環境における空気中の二酸化炭素濃度とみなすことができる値である。例えば、空気中参照値は、換気された屋内における一般的な二酸化炭素濃度とされる250ppm以上1000ppm以下の任意の値であるが、これに限られず、実用上空気中の二酸化炭素濃度とみなすことができる任意の値であってもよい。一方、本実施形態において「呼気中参照値」は、呼気中の二酸化炭素濃度とみなすことができる値である。例えば、呼気中参照値は、人間の呼気における一般的な二酸化炭素濃度とされる20000ppm以上60000ppm以下の任意の値であるが、これに限られず、実用上呼気中の二酸化炭素濃度とみなすことができる任意の値であってもよい。第1の閾値th1未満であった二酸化炭素濃度が当該第1の閾値以上になることは、使用者によって息が吹き込まれたことを意味する。一例において、第1の閾値th1は、二酸化炭素濃度の空気中参照値よりも十分大きくなるように定められてもよい。本実施形態では、第1の閾値th1は、例えば20000ppmに設定されてよい。第1の閾値th1を空気中参照値に比べて十分高い値に設定することによって、判定部40は息が吹き込まれたことを確実に判定することができる。
【0023】
判定部40は、二酸化炭素濃度が第1の条件を満たした場合に、第2の検出部20を起動させる起動信号を生成する。判定部40は、生成した起動信号を、第2の検出部20に出力する。第2の検出部20が備える圧力センサ21、温度センサ22および湿度センサ23は、起動信号によって起動する。つまり、非動作状態であった圧力センサ21、温度センサ22および湿度センサ23は、起動信号によって動作状態に変化して、使用者の呼気に含まれる呼気情報を検出する。なお、第2の検出部20が非動作状態(すなわち、停止した状態)であるときの消費電力は、動作状態(すなわち、起動した状態)と比べて小さく、あるいはゼロである。
【0024】
判定部40は、第1の検出部30によって検出された二酸化炭素濃度が第1の条件を満たした後で(すなわち、息が吹き込まれたと判定した後で)、息の吹き込みが終わったか否かを判定する。この判定は、二酸化炭素濃度が第2の条件を満たすか否かで行われる。具体的には、判定部40は、二酸化炭素濃度が第2の条件を満たす場合、息の吹き込みが終わったと判定し、二酸化炭素濃度が第2の条件を満たさない場合、息の吹き込みが終わっていないと判定する。本実施形態において、第2の条件は、第2の閾値th2以上であった二酸化炭素濃度が当該第2の閾値th2未満になることを含むが、これに限られない。例えば、第2の条件は、第2の閾値th2以上であった二酸化炭素濃度が当該第2の閾値th2未満になってから所定時間が経過することをさらに含んでもよい。
【0025】
ここで、第2の閾値th2は、二酸化炭素濃度の空気中参照値よりも大きく、且つ、二酸化炭素濃度の呼気中参照値よりも小さい範囲において、任意に定められてもよい。第2の閾値th2以上であった二酸化炭素濃度が当該第2の閾値th2未満になることは、使用者による息の吹き込みが終わったことを意味する。一例において、第2の閾値th2は、二酸化炭素濃度の空気中参照値よりも大きく、且つ、第1の閾値th1以下となるように定められてもよい。かかる構成によれば、二酸化炭素濃度が第1の条件を満たした後、息の吹き込みが終わったことによって第2の条件が満たされる確実性(すなわち、息の吹き込みが終わったと判定する精度)が向上する。逆にいえば、二酸化炭素濃度が第1の条件を満たした後、息の吹き込みが終わっても第2の条件が満たされないという不都合(すなわち、息の吹き込みが終わったことを判定できないという不都合)の発生する蓋然性が低減する。本実施形態では、第2の閾値th2は、例えば第1の閾値th1の10分の1である2000ppmに設定されてよい。第2の閾値th2を第1の閾値th1に比べて十分低い値に設定することによって、判定部40は、息の吹き込みが終わったことを確実に判定することができる。
【0026】
判定部40は、二酸化炭素濃度が第2の条件を満たした場合に、第2の検出部20を停止させる停止信号を生成する。判定部40は、生成した停止信号を、第2の検出部20に出力する。第2の検出部20が備える圧力センサ21、温度センサ22および湿度センサ23は、停止信号によって停止する。つまり、動作状態であった圧力センサ21、温度センサ22および湿度センサ23は、停止信号によって非動作状態に変化して、使用者の呼気に含まれる呼気情報を検出することを停止する。
【0027】
上記のように、第2の検出部20(圧力センサ21、温度センサ22および湿度センサ23)は、第1の検出部30が検出した二酸化炭素濃度に応じた間欠動作を行う。一方、第1の検出部30は、使用者が開口部に息を吹き込むことによって生じる二酸化炭素濃度の変化を逃さないように、常時、または、比較的短い間隔で動作する。つまり、第1の検出部30は、第2の検出部20に比べて動作時間が長い。したがって、第1の検出部30として消費電力の小さいセンサを用いることで、情報通信装置10の全体の消費電力を低下させることができる。換言すると、情報通信装置10は、第2の検出部20を常時または比較的短い間隔で動作させる必要が無いので、情報通信装置10の全体の消費電力を低下させることができる。
【0028】
(信号生成部)
信号生成部90は、外部装置の動作の制御に用いられる、呼気情報に応じた制御信号を生成する。本実施形態において、第2の検出部20は互いに異なる複数の呼気情報(圧力、温度および湿度)を検出する。信号生成部90は、複数の呼気情報の組み合わせに応じた制御信号を生成する。したがって、信号生成部90は、複数の呼気情報の組み合わせに応じて、複数パターンの制御信号を生成可能である。ここで、複数パターンの制御信号の候補(以下、複数パターンの候補制御信号)は、記憶部70に記憶されている。また、複数の呼気情報の組み合わせと生成される制御信号との対応関係も、記憶部70に記憶されている。
図2に示す例では、それぞれ呼気情報である「圧力」および「温度または湿度」の組み合わせに応じた4パターンの候補制御信号(制御信号A~D)が示されている。詳細には、呼気情報の1つである「圧力」が、例えば所定の基準値以上であるか否かに基づいて「低」または「高」の2パターンに分類されている。また、それぞれ呼気情報の1つである「温度」または「湿度」が、例えば所定の基準値以上であるか否かに基づいて「低」または「高」の2パターンに分類されている。「圧力」が「低」且つ「温度または湿度」が「低」である場合に対応する候補制御信号は「制御信号A」である。「圧力」が「低」且つ「温度または湿度」が「高」である場合に対応する候補制御信号は「制御信号B」である。「圧力」が「高」且つ「温度または湿度」が「低」である場合に対応する候補制御信号は「制御信号C」である。そして、「圧力」が「高」且つ「温度または湿度」が「高」である場合に対応する候補制御信号は「制御信号D」である。ただし、候補制御信号の種類数、および複数の呼気情報の組み合わせと生成される制御信号との対応関係は、
図2に示す例に限られない。信号生成部90による制御信号の生成の詳細については後述する。
【0029】
(記憶部)
記憶部70は、制御部50が用いるデータおよびプログラムを記憶する。記憶部70は、例えば測定前の初期状態の圧力、温度および湿度のデータ(すなわち、息が吹き込まれるより前に第2の検出部20が検出した圧力、温度および湿度の検出値)を記憶してもよい。また、記憶部70は、例えば各測定データを記憶してもよい。記憶部70は、例えば、メモリ等の記憶装置により実現される。記憶部70は1つのメモリで構成されても、複数のメモリで構成されてもよい。ただし、測定データが記憶されれば特に制限されない。
【0030】
記憶部70は、例えばCPUである制御部50を、判定部40として機能させるプログラムを記憶してよい。また、記憶部70は、制御部50を、信号生成部90として機能させるプログラムを記憶してよい。つまり、制御部50が記憶部70からプログラムを読み込むことによって、ソフトウェアとして判定部40および信号生成部90の処理が実行されてもよい。
【0031】
(通信部)
通信部100は、外部装置との通信を実行する。本実施形態において、通信部100は、信号生成部90において生成された制御信号を外部装置に出力する。通信部100は、例えば外部メモリインタフェース、汎用非同期送受信器(UART:Universal Asynchronous Receiver Transmitter)インタフェース、拡張シリアル・ペリフェラル・インタフェース(eSPI:)、汎用入出力(GPIO:General-purpose input/output)インタフェース、パルス符号変調(PCM:Pulse Code Modulation)および/もしくはIC間サウンド(I2S:Inter-IC Sound)インタフェース、集積回路間(I2C:Inter-Integrated Circuit)バスインタフェース、ユニバーサルシリアルバス(USB:Universal Serial Bus)インタフェース、ブルートゥース(登録商標)インタフェース、ジグビー(登録商標)インタフェース、IrDA(Infrared Data Association)インタフェース、または、無線USB(W-USB:Wireless―Universal Serial Bus)インタフェースのうち、1つまたは複数を介して実現される。通信部100は、制御対象の機器(すなわち、外部装置)と有線無線どちらで接続されてもよい。ただし、通信部100は、これらの実現手段に限定されるものではなく、信号生成部90において生成された信号が外部に出力されれば特に制限されない。
【0032】
(制御信号の生成)
本実施形態において、複数の呼気情報である「圧力」および「温度または湿度」の組み合わせに応じた制御信号が生成される。使用者は、呼気の出し方によって、「圧力」および「温度または湿度」を調整し得る。例えば呼気の出し方は、「呼気の強さ」および「使用者の口の開け方」の2つの要素によって定まる。
図3は、使用者が口を大きく開いている場合の呼気の出し方を例示する図である。一方、
図4は、使用者が口をすぼめている場合の呼気の出し方を例示する図である。
図3のように口を大きく開いている場合には、
図4のように口をすぼめている場合と比べて、周囲の空気の巻き込み量が少なくなり、結果として呼気の温度および湿度が高くなる。また、
図3のように口を大きく開いている場合、および
図4のように口をすぼめている場合のどちらの場合であっても、使用者は呼気に強弱をつけることができる。つまり、使用者は、呼気の強弱を、口の形にかかわらず調整することが可能である。具体的には、呼気が強い場合(すなわち、息を強く吹き込んでいる場合)には、呼気が弱い場合(すなわち、息を弱く吹き込んでいる場合)と比べて、呼気の強さが強くなる。したがって、口の開け方と呼気の強弱の組み合わせによって、合計4パターンの「呼気の出し方」が存在する。情報通信装置10は、呼気を圧力センサ21、温度センサ22および湿度センサ23で検出し、検出された値の大小を判定することで、
図2に示すように合計4パターンの制御信号A~Dを生成できる。
【0033】
例えば、圧力センサ21および温度センサ22で呼気情報を検出することによって上記の4パターンの制御信号A~Dのいずれかが生成される場合、あらかじめ圧力の閾値と温度の閾値とが記憶部70に記憶される。信号生成部90は、圧力センサ21の検出値と圧力の閾値とを比較する。信号生成部90は、圧力センサ21の検出値が圧力の閾値を超える場合に、呼気の圧力が第1状態(例えば「高」)であると判定する。信号生成部90は、圧力センサ21の検出値が圧力の閾値以下の場合に、呼気の圧力が第2状態(例えば「低」)であると判定する。信号生成部90は、温度センサ22の検出値が温度の閾値を超える場合に、呼気の温度が第1状態(例えば「高」)であると判定する。信号生成部90は、温度センサ22の検出値が温度の閾値以下の場合に、呼気の温度が第2状態(例えば「低」)であると判定する。信号生成部90は、呼気の圧力が第1状態(例えば「高」)であって、且つ、呼気の温度が第1状態(例えば「高」)である場合に、第1の制御信号(制御信号D)を生成する。信号生成部90は、呼気の圧力が第1状態(例えば「高」)であって、且つ、呼気の温度が第2状態(例えば「低」)である場合に、第2の制御信号(制御信号C)を生成する。信号生成部90は、呼気の圧力が第2状態(例えば「低」)であって、且つ、呼気の温度が第1状態(例えば「高」)である場合に、第3の制御信号(制御信号B)を生成する。信号生成部90は、呼気の圧力が第2状態(例えば「低」)であって、且つ、呼気の温度が第2状態(例えば「低」)である場合に、第4の制御信号(制御信号A)を生成する。このように、信号生成部90は、複数の呼気情報の組み合わせに応じて、複数パターンの制御信号を生成することができる。ここで、別の例として、圧力センサ21および湿度センサ23で呼気を検出してもよい。このとき、あらかじめ圧力の閾値と湿度の閾値とが記憶部70に記憶され、信号生成部90は上記と同じように複数パターンの制御信号を生成することができる。また、信号生成部90は、さらに第1の検出部30が検出した二酸化炭素濃度も「呼気情報」として取得してよい。例えば、信号生成部90は、二酸化炭素濃度の時間変化の違いに応じて、呼気の出し方を分類してよい。このとき、信号生成部90は、さらに多くのパターンの制御信号の生成が可能になる。
【0034】
(フローチャート)
情報通信装置10の制御部50は、
図5のフローチャートの処理を実行することによって、呼気に応じて複数の制御信号を生成できる情報通信方法を実現する。
【0035】
情報通信装置10は、第1の検出部30によって、二酸化炭素濃度の検出を開始する(ステップS1)。ステップS1以降、例えば一定間隔で二酸化炭素濃度が検出される。
【0036】
ステップS2は、息が吹き込まれたか否かを判定するステップである。具体的には、情報通信装置10は、第1の検出部30のよって検出された二酸化炭素濃度が第1の条件を満たす場合に(ステップS2のYES)、息が吹き込まれたと判定し、第2の検出部20を起動させて、呼気情報を検出可能な状態にする(ステップS3)。一方、情報通信装置10は、第1の検出部30のよって検出された二酸化炭素濃度が第1の条件を満たさない場合に(ステップS2のNO)、息が吹き込まれていないと判定し、ステップS2の処理を繰り返す。
【0037】
情報通信装置10は、起動した第2の検出部20(圧力センサ21、温度センサ22および湿度センサ23)によって、複数の呼気情報(圧力、温度および湿度)を検出する(ステップS4)。情報通信装置10は、温度および湿度の一方を選択的に検出してもよい。検出されたデータは記憶部70に保存される。
【0038】
ステップS5は、息の吹き込みが終わったか否かを判定するステップである。具体的には、情報通信装置10は、第1の検出部30にて検出された二酸化炭素濃度が第2の条件を満たす場合に(ステップS5のYES)、息の吹き込みが終わったと判定し、第2の検出部20を停止させる(ステップS6)。一方、情報通信装置10は、第1の検出部30にて検出された二酸化炭素濃度が第2の条件を満たさない場合に(ステップS5のNO)、息の吹き込みが終わっていないと判定し、ステップS5の処理を繰り返す。
【0039】
情報通信装置10は、ステップS4で検出された呼気情報に応じた制御信号を生成し、外部装置に出力する(ステップS7)。詳細には、情報通信装置10は、ステップS4で検出された複数の呼気情報(圧力、温度および湿度)の組み合わせに応じた制御信号(例えば制御信号A、B、CまたはD)を生成する。そして、情報通信装置10は、生成した制御信号を通信部100から外部機器に出力する。その後、情報処理装置10は、ステップS2の処理に戻る。
【0040】
以上述べたように、本実施形態に係る情報通信装置10は、使用者の呼気に基づいて変化する二酸化炭素濃度を検出する第1の検出部30と、二酸化炭素濃度が第1の条件を満たす場合に起動し、使用者の呼気に含まれる呼気情報を検出する第2の検出部20と、外部装置の動作の制御に用いられる、呼気情報に応じた制御信号を生成する信号生成部90と、生成された制御信号を出力する通信部100と、を備える。ここで、第1の条件は、第1の閾値th1未満であった二酸化炭素濃度が当該第1の閾値th1以上になることを含む。かかる構成によれば、使用者の呼気を正確に検出して、外部装置を操作するために、検出した呼気に応じて複数パターンの制御信号を生成できる。このため、使用者は、呼気の出し方を変えることによって、外部装置の複数の動作を制御可能である。
【0041】
本発明を諸図面および実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形および修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段または各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段またはステップ等を1つに組み合わせたり、あるいは分割したりすることが可能である。
【0042】
例えば、上述した実施形態において、情報通信装置10が、息の吹き込みが終わったと判定すると、第2の検出部20を停止させる構成について説明した(ステップS5およびS6)。ここで、情報通信装置10は、第2の検出部20を用いて「大気情報」を検出してから第2の検出部20を停止させてもよい。「大気情報」は、息の吹き込みが終わった後に、第2の検出部20に含まれる各センサが検出した検出値に対応する。すなわち、第2の検出部20は、息の吹き込みが終わった後の各センサの検出値(圧力、温度および湿度)を、大気情報として検出する。かかる構成における情報通信装置10の動作について、
図6のフローチャートを参照して詳細に説明する。
図6に示すステップS11-S15は、それぞれ
図5に示すステップS1-S5と同一であるため、説明は省略する。情報通信装置10は、第1の検出部30にて検出された二酸化炭素濃度が第2の条件を満たす場合に(ステップS15のYES)、息の吹き込みが終わったと判定し、第2の検出部20によって、少なくとも1つの大気情報(例えば、圧力、温度および湿度のうち少なくとも1つ)を検出する(ステップS16)。ここで、情報通信装置10は、息の吹き込みが終わった後に第1の検出部30によって検出された二酸化炭素濃度も、大気情報として取得してよい。したがって、例えば圧力、温度、湿度、および二酸化炭素濃度のうち、少なくとも1つに対応する少なくとも1つの大気情報が検出される。大気情報を検出すると、情報通信装置10は、判定部40により、第2の検出部20を停止させる停止信号を生成し、第2の検出部20に出力することによって、第2の検出部20を停止させる(ステップS17)。情報通信装置10は、呼気情報と大気情報との差分を算出する(ステップS18)。そして、情報通信装置10は、当該差分に応じた制御信号を信号生成部90により生成し、通信部100を介して外部装置に出力する(ステップS19)。このように、呼気情報そのものに代えて、呼気情報と大気情報との差分に応じた制御信号を生成および出力する構成も可能である。
【0043】
また、上述した実施形態において、情報通信装置10が、使用者の口の開け方と呼気の強弱の組み合わせに応じて、合計4パターンの「呼気の出し方」を判別する構成について説明した。しかしながら、情報通信装置10が判別する「呼気の出し方」は、4パターンより少なくてもよいし、多くてもよい。例えば、情報通信装置10は、呼気の圧力を「低」、「中」および「高」の3パターンに分類し、呼気の温度または湿度を「低」、「中」および「高」の3パターンに分類してもよい。かかる場合、情報通信装置10が、使用者の口の開け方と呼気の強弱の組み合わせに応じて、合計9パターンの「呼気の出し方」を判別可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 情報通信装置
20 第2の検出部
21 圧力センサ
22 温度センサ
23 湿度センサ
30 第1の検出部
40 判定部
50 制御部
70 記憶部
90 信号生成部
100 通信部