(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/14 20060101AFI20221213BHJP
C08K 5/544 20060101ALI20221213BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20221213BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C08L101/14
C08K5/544
A61F13/53 300
A61F13/15 141
(21)【出願番号】P 2019538402
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(86)【国際出願番号】 KR2018012433
(87)【国際公開番号】W WO2019103316
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-11-24
(31)【優先権主張番号】10-2017-0159735
(32)【優先日】2017-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、チン-ウ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン-サム
(72)【発明者】
【氏名】チェ、チン-ウク
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-014741(JP,A)
【文献】特開2004-346089(JP,A)
【文献】特開2001-039802(JP,A)
【文献】特表2012-526878(JP,A)
【文献】特開平03-059075(JP,A)
【文献】特開平02-274763(JP,A)
【文献】特表2008-534714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
A61F 13/00-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和された水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合体を含む高吸水性樹脂粒子;
シラン系化合物の4級アンモニウム塩を含む粒子状抗菌剤;および
キレート剤を含み、
前記粒子状抗菌剤は、前記高吸水性樹脂粒子100重量部に対して、
0.5~2重量部含まれ、前記キレート剤は、前記高吸水性樹脂粒子100重量部に対して、
0.5~2重量部含まれる高吸水性樹脂組成物。
【請求項2】
前記粒子状抗菌剤は、下記化学式1の化合物を含む、請求項1に記載の高吸水性樹脂組成物:
[化学式1]
Si(OH)
3-R1-N
+(R2R3R4)・X
-
前記化学式1において、R1は、炭素数2~5のアルキレン基であり、R2~R4は、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基であって、これらの少なくとも1つは、炭素数10以上の長鎖アルキル基であり、Xは、ハロゲンである。
【請求項3】
有機酸およびシリケート系塩の混合物をさらに含む、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂組成物。
【請求項4】
前記キレート剤は、EDTAのナトリウム塩(EDTA-2Na)、エチレンジアミンテトラ酢酸、シクロヘキサンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、エチレングリコール-ビス-(アミノエチルエーテル)-N,N,N’-トリ酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン-N,N,N’-トリ酢酸、およびトリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の高吸水性樹脂組成物。
【請求項5】
前記有機酸は、クエン酸(citric acid)、フマル酸(fumaric acid)、マレイン酸(maleic acid)、および乳酸(lactic acid)からなる群より選択される1種以上を含む、請求項3に記載の高吸水性樹脂組成物。
【請求項6】
前記シリケート系塩は、シリケート陰イオンと、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の陽イオンとが結合した塩を含む、請求項3または5に記載の高吸水性樹脂組成物。
【請求項7】
前記有機酸およびシリケート塩の混合物の総重量に対して、有機酸を90~99.5重量%含む、請求項3、5または6に記載の高吸水性樹脂組成物。
【請求項8】
前記有機酸およびシリケート系塩の混合物は、前記高吸水性樹脂粒子100重量部に対して、0.5~5重量部含まれる、請求項3、5~7のいずれか1項に記載の高吸水性樹脂組成物。
【請求項9】
前記高吸水性樹脂粒子は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体および開始剤を含む単量体組成物に由来する残留鉄イオンを、3ppmw以下の含有量でさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の高吸水性樹脂組成物を含む衛生用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
本出願は、2017年11月27日付の韓国特許出願第10-2017-0159735号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、高吸水性樹脂組成物に関し、基本的な吸水性能の低下なく、向上した抗菌および消臭特性を示す高吸水性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百から1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発業者ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などのそれぞれ異なる名前で名付けている。このような高吸水性樹脂は、生理用品として実用化され始め、現在は、幼児用紙おむつなどの衛生用品のほか、園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、およびシップ用などの材料や電気絶縁分野に至るまで幅広く使用されている。
【0004】
しかし、このような高吸水性樹脂は、幼児用紙おむつや、成人用おむつのような衛生用品または使い捨て吸水製品に最も幅広く適用されている。なかでも、成人用おむつに適用される場合、バクテリア増殖に起因する2次的な臭いは消費者に不快感を大きく呼び起こす問題を招いている。このような問題を解決するために、以前から高吸水性樹脂組成物に多様な消臭または抗菌機能性成分を導入しようとする試みが行われている。
【0005】
しかし、このような多様な消臭/抗菌機能性成分を導入した従来の試みにおいては、高吸水性樹脂の消臭/抗菌特性が十分でなかっただけでなく、高吸水性樹脂の安定性を低下させて基本的な吸水性能の低下をもたらしたり、このような機能性成分自体が過度に高価であることから、高吸水性樹脂組成物の単価が過度に上昇するなどの欠点があった。
【0006】
これにより、高吸水性樹脂の基本的な吸水性能の低下なく、より向上した抗菌および消臭特性を示し、優れた経済性を有する高吸水性樹脂組成物の開発が求められ続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、基本的な吸水性能の低下なく、向上した抗菌および消臭特性を示す高吸水性樹脂組成物およびこれを含む衛生用品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和された水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合体を含む高吸水性樹脂粒子;およびシラン系化合物の4級アンモニウム塩を含む粒子状抗菌剤を含む高吸水性樹脂組成物を提供する。
【0009】
本発明はまた、前記高吸水性樹脂組成物を含む衛生用品を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高吸水性樹脂組成物によれば、保水能、加圧吸水能などの基本的な吸水性能の低下なく、成人用おむつなどの衛生用品で臭いを誘発するバクテリアに対する非常に向上した抗菌特性およびこれによる消臭特性が発現できる。特に、相対的に安価な原料の相乗効果によりこのような消臭/抗菌特性を発現させることができるので、高吸水性樹脂組成物の低単価および経済性にも大きく寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0012】
発明は、多様な変更を加えられて様々な形態を有し得ることから、特定の実施例を例示して下記に詳細に説明する。しかし、これは、発明を特定の開示形態について限定しようとするものではなく、発明の思想および技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0013】
以下、発明の具体的な実施形態により高吸水性樹脂組成物についてより詳細に説明する。
【0014】
発明の一実施形態による高吸水性樹脂組成物は、
酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和された水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合体を含む高吸水性樹脂粒子;および
シラン系化合物の4級アンモニウム塩を含む粒子状抗菌剤を含むことができる。
【0015】
このような一実施形態の高吸水性樹脂組成物によれば、従来高吸水性樹脂に適用されたことのない、シラン系化合物の4級アンモニウム塩形態の粒子状抗菌剤を用いて、従来知られたものより向上した消臭/抗菌特性を示すことができる。特に、本発明者らの継続的な実験の結果によれば、このような成分が高吸水性樹脂粒子に好ましく作用して、成人用おむつなどで悪臭成分として作用するバクテリアを非常に効果的に除去することができ、その結果、一実施形態の高吸水性樹脂組成物が大きく向上した消臭特性を示すことが確認された。
【0016】
しかも、これらの成分は、高吸水性樹脂組成物の安定性などを阻害せず、前記一実施形態の高吸水性樹脂組成物が基本的な吸水性能を優れたものに維持することができ、その単価も比較的低くて、高吸水性樹脂組成物の低単価と、経済性にも大きく寄与することができる。
【0017】
そのため、一実施形態の高吸水性樹脂組成物は、成人用おむつなどの各種衛生用品に非常に好ましく適用可能である。
【0018】
以下、一実施形態の高吸水性樹脂組成物について、各成分ごとにより具体的に説明する。
【0019】
一実施形態の高吸水性樹脂組成物は、特有の抗菌/消臭効果のために、シラン系化合物の4級アンモニウム塩を含む粒子状抗菌剤を含むが、このような粒子状抗菌剤は、下記化学式1の化合物を主成分として含むことができる:
[化学式1]
Si(OH)3-R1-N+(R2R3R4)・X-
前記化学式1において、R1は、炭素数2~5のアルキレン基であり、R2~R4は、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基であって、これらの少なくとも1つは、炭素数10以上の長鎖アルキル基であり、Xは、ハロゲンである。
【0020】
より具体的な例において、前記粒子状抗菌剤は、下記化学式2の構造を有することができ、このような化学式2を主成分とする粒子状抗菌剤は、商品名「Biosafe」であって商業的に入手可能である:
【0021】
【0022】
前記粒子状抗菌剤としては、このような商業化された製品を入手して使用したり、米国特許第6572926号、第6146688号、第7851653号、または第7858141号などに公知の方法で直接合成して使用してもよい。
【0023】
このような粒子状抗菌剤は、粒子状態で高吸水性樹脂に添加して使用可能であり、よって、一実施形態の高吸水性樹脂組成物がより優れた消臭/抗菌特性を示すことができる。
【0024】
このような粒子状抗菌剤は、前記高吸水性樹脂粒子100重量部に対して、0.2~5重量部、あるいは0.5~4重量部の含有量で含まれる。これにより、高吸水性樹脂組成物の抗菌/消臭特性をさらに向上させながらも、このような成分によって高吸水性樹脂粒子の安定性が低下したり、吸水特性などが低下することを最小化することができる。
【0025】
一方、一実施形態の樹脂組成物は、追加的な抗菌/消臭特性を達成するために、EDTAまたはそのアルカリ金属塩を含むキレート剤、ならびに/あるいは有機酸およびシリケート系塩の混合物をさらに含んでもよい。
【0026】
このうち、前記キレート剤としては、当業者に広く知られたキレート剤、例えば、EDTAのナトリウム塩(EDTA-2Na)や、アミン酢酸化合物を使用することができ、なかでも、EDTAのナトリウム塩(EDTA-2Na)を好ましく使用することができる。その他にも、エチレンジアミンテトラ酢酸、シクロヘキサンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、エチレングリコール-ビス-(アミノエチルエーテル)-N,N,N’-トリ酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン-N,N,N’-トリ酢酸、およびトリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸からなる群より選択されたアミン酢酸化合物や、多様なキレート剤を使用してもよいことはもちろんである。
【0027】
このようなキレート剤は、前記高吸水性樹脂粒子上に存在して、前記粒子状抗菌剤や、有機酸およびシリケート系塩の混合物と相乗効果を起こすことができ、その結果、一実施形態の高吸水性樹脂組成物が向上した消臭/抗菌特性を示すようにできる。
【0028】
このようなキレート剤は、前記高吸水性樹脂粒子100重量部に対して、0.1~3重量部、あるいは0.5~2重量部の含有量で含まれる。これにより、高吸水性樹脂組成物の抗菌/消臭特性をさらに向上させながらも、このような成分によって高吸水性樹脂粒子の安定性が低下したり、吸水特性などが低下することを最小化することができる。
【0029】
一方、一実施形態の高吸水性樹脂組成物はまた、有機酸およびシリケート系塩の混合物をさらに含んでもよい。このような有機酸と、シリケート塩も高吸水性樹脂粒子上に存在する。
【0030】
このようなシリケート塩は、シリケート陰イオンと、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の陽イオンとがイオン結合した塩形態になり、粒子状態で存在する。このようなシリケート塩粒子は、150μm以上~600μm未満の粒径を有する粒子を約80~約98重量%、または約90~約99重量%、または約92~約99.3重量%含むことができる。
【0031】
また、前記シリケート塩と混合された有機酸は、高吸水性樹脂粒子上に600μm以下の粒径、あるいは150μm~600μmを有する粒子状態で存在する。
【0032】
前記有機酸およびシリケート塩がこのような粒子状態および粒度分布を有することによって、高吸水性樹脂粒子上に適切に維持され、バクテリア/悪臭成分をより選択的かつ効率的に吸着して物理的/化学的に除去することができる。その結果、一実施形態の高吸水性樹脂組成物がより向上した抗菌/消臭特性を示すことができる。さらに、このような粒子状態によって、高吸水性樹脂と混合された時、ケーキングを誘発しないアンチケーキング(anti-caking)性能を示すこともできる。
【0033】
前記有機酸およびシリケート系塩の混合物は、その総重量に対して、有機酸を約90~99.5重量%、あるいは約95~99.3重量%、あるいは約97~99.0重量%含むことができる。これにより、前記高吸水性樹脂粒子の内部および/または表面に多い個数の酸性点(acid site)が生じ得る。このような酸性点を含む場合、各種悪臭成分を物理的に吸着するだけでなく、前記酸性点の水素陽イオン(H+)が悪臭成分と結合してアンモニウム塩を形成することによって、悪臭成分の除去がより効果的になる。
【0034】
前記有機酸は、クエン酸(citric acid)、フマル酸(fumaric acid)、マレイン酸(maleic acid)、および乳酸(lactic acid)からなる群より選択される1種以上を含むことができるが、これに限定されることはない。
【0035】
一方、前述した有機酸およびシリケート系塩の混合物は、水溶性エチレン系不飽和単量体が重合された高吸水性樹脂と混合して、おむつなどの衛生用品に適用可能である。
【0036】
発明の一実施形態によれば、前記有機酸およびシリケート系塩の混合物は、前記高吸水性樹脂100重量部に対して、約0.5~約5重量部、あるいは約0.8~約5重量部、または約1~約4重量部含まれる。前記成分が過度に少なく含まれると、前記有機酸などによる消臭特性が十分でなくなり、過度に多く含まれる場合、高吸水性樹脂の物性を阻害する恐れがある。
【0037】
前記有機酸およびシリケート系塩の混合物は、前記有機酸と、シリケート塩とを混合する通常の方法によって用意される。このような混合物は、これら2つの成分を予め混合して用意されてもよいが、後述のように、高吸水性樹脂粒子の製造後、粒子状抗菌剤およびキレート剤などと共にそれぞれ混合されてもよい。
【0038】
一方、前述した粒子状抗菌剤と、選択的にキレート剤、および前記有機酸およびシリケート塩の混合物などと混合する前記高吸水性樹脂の種類や製造方法は、当該技術分野で通常使用される方法に従い、前記高吸水性樹脂にこれらの成分を混合する段階および方法も特に限定されない。
【0039】
例えば、前記高吸水性樹脂は、水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含む単量体組成物を熱重合または光重合を進行させて得られた含水ゲル状重合体に対して乾燥、粉砕、分級などを経て得られ、必要に応じて、表面架橋や微粉再造粒工程などをさらに行ってもよい。
【0040】
参照として、本明細書において、「高吸水性樹脂」は、文脈により、酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和された水溶性エチレン系不飽和単量体が重合された架橋重合体、または前記架橋重合体を乾燥および粉砕してパウダー(powder)形態にしたベース樹脂を意味したり、または前記架橋重合体や前記ベース樹脂に対して追加の工程、例えば、表面架橋、微粉再造粒、乾燥、粉砕、分級などを経て製品化に適した状態にしたものをすべて包括するものとして使用される。
【0041】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、高吸水性樹脂の製造に通常使用される任意の単量体を特別な限定なく使用可能である。ここでは、陰イオン性単量体とその塩、非イオン系親水性含有単量体およびアミノ基含有不飽和単量体およびその4級化物からなる群より選択されるいずれか1つ以上の単量体を使用することができる。
【0042】
具体的には、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタアクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、またはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、または(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体およびその4級化物からなる群より選択されたいずれか1つ以上を使用することができる。
【0043】
さらに好ましくは、アクリル酸またはその塩、例えば、アクリル酸またはそのナトリウム塩などのアルカリ金属塩を使用することができるが、このような単量体を用いてより優れた物性を有する高吸水性樹脂の製造が可能になる。前記アクリル酸のアルカリ金属塩を単量体として用いる場合、アクリル酸を苛性ソーダ(NaOH)のような塩基性化合物で中和させて使用することができる。
【0044】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重合時に使用される重合開始剤は、高吸水性樹脂の製造に一般に使用されるものであれば特に限定されない。
【0045】
具体的には、前記重合開始剤は、重合方法によって、熱重合開始剤またはUV照射による光重合開始剤を使用することができる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などの照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によってある程度の熱が発生するので、追加的に熱重合開始剤を含むこともできる。
【0046】
前記光重合開始剤は、紫外線のような光によってラジカルを形成できる化合物であればその構成の限定なく使用可能である。
【0047】
発明の一実施形態によれば、前記単量体組成物は、高吸水性樹脂の原料物質として内部架橋剤をさらに含んでもよい。前記内部架橋剤としては、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の水溶性置換基と反応できる官能基を1個以上有しかつ、エチレン性不飽和基を1個以上有する架橋剤;あるいは前記単量体の水溶性置換基および/または単量体の加水分解によって形成された水溶性置換基と反応できる官能基を2個以上有する架橋剤を使用することができる。
【0048】
前記内部架橋剤の具体例としては、炭素数8~12のビスアクリルアミド、ビスメタアクリルアミド、炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アクリレート、または炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルなどが挙げられ、より具体的には、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリレート、エチレンオキシ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシ(メタ)アクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリントリアクリレート、トリメチロールトリアクリレート、トリアリルアミン、トリアリールシアヌレート、トリアリルイソシアネート、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、およびプロピレングリコールからなる群より選択された1つ以上を使用することができる。
【0049】
前述した製造方法において、高吸水性樹脂の前記単量体組成物は、必要に応じて、増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0050】
前述した水溶性エチレン系不飽和単量体、光重合開始剤、熱重合開始剤、内部架橋剤、および添加剤のような原料物質は、溶媒に溶解した単量体組成物溶液の形態で用意される。
【0051】
一方、このような単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を形成する方法も、通常使用される重合方法であれば、特に構成の限定はない。
【0052】
具体的には、重合方法は、重合エネルギー源によって、大きく熱重合および光重合に分けられ、通常、熱重合を進行させる場合、ニーダー(kneader)のような撹拌軸を有する反応器で行われ、光重合を進行させる場合、移動可能なコンベヤベルトを備えた反応器で行われるが、前述した重合方法は一例であり、発明が前述した重合方法に限定されない。
【0053】
この時、このような方法で得られた含水ゲル状重合体の通常の含水率は、約40~約80重量%であってもよい。一方、本明細書全体において、「含水率」は、全体含水ゲル状重合体の重量に対して占める水分の含有量で、含水ゲル状重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱により重合体の温度を上げて乾燥する過程で、重合体中の水分蒸発に応じた重量減少分を測定して計算された値で定義する。この時、乾燥条件は、常温から約180℃まで温度を上昇させた後、180℃で維持する方式で、総乾燥時間は、温度上昇段階5分を含む20分に設定して、含水率を測定する。
【0054】
次に、得られた含水ゲル状重合体を乾燥する。
【0055】
この時、必要に応じて、前記乾燥段階の効率を高めるために、乾燥前に粗粉砕する段階をさらに経てもよい。
【0056】
この時、使用される紛砕機は構成の限定はないが、具体的には、垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダ(Turbo grinder)、回転切断式紛砕機(Rotary cutter mill)、切断式紛砕機(Cutter mill)、円板紛砕機(Disc mill)、シュレッド破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、チョッパ(chopper)、および円板式切断機(Disc cutter)からなる粉砕機器の群より選択されるいずれか1つを含むことができるが、前述した例に限定されない。
【0057】
この時、粗粉砕段階は、含水ゲル状重合体の粒径が約2~約10mmとなるように粉砕することができる。
【0058】
前記のように粗粉砕されたり、あるいは粗粉砕段階を経ていない重合直後の含水ゲル状重合体に対して乾燥を行う。
【0059】
前記乾燥段階の乾燥方法も、含水ゲル状重合体の乾燥工程で通常使用されるものであれば、その構成の限定なく選択使用可能である。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を進行させることができる。このような乾燥段階進行後の重合体の含水率は、約0.1~約10重量%であってもよい。
【0060】
次に、このような乾燥段階を経て得られた乾燥した重合体を粉砕する。
【0061】
粉砕段階後に得られる重合体粉末は、粒径が約150~約850μmであってもよい。このような粒径に粉砕するために用いられる紛砕機は、具体的には、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)、またはジョグミル(jog mill)などを用いることができるが、前述した例に発明が限定されることはない。
【0062】
そして、このような粉砕段階の後に最終製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、粉砕後に得られる重合体粉末を粒径に応じて分級する別途の過程を経ることができる。好ましくは、粒径が約150~約850μmの重合体を分級する。
【0063】
発明の一実施形態によれば、前記粉砕または分級された重合体に表面架橋する段階をさらに行ってもよい。この時、前記表面架橋剤としては、重合体が有する官能基と反応可能な化合物であればその構成の限定はない。このような表面架橋剤の例としては、多価アルコール化合物、多価アルキレンカーボネート化合物、または多価エポキシ化合物などが挙げられる。
【0064】
このような過程で得られた高吸水性樹脂粒子と、前述した粒子状抗菌剤と、選択的にキレート剤と、有機酸およびシリケート塩の混合物を均等に混合して、発明の一実施形態による高吸水性樹脂組成物を得ることができる。
【0065】
この時、混合する方法は特に限定されず、例えば、高吸水性樹脂粒子と、粒子状抗菌剤などを反応槽に入れて混合したり、高吸水性樹脂に粒子状抗菌剤などを含む溶液を噴射する方法、連続的に運転されるミキサのような反応槽に高吸水性樹脂と粒子状抗菌剤などを連続的に供給して混合する方法などを使用することができる。
【0066】
一方、前述した一実施形態の高吸水性樹脂組成物において、前記高吸水性樹脂粒子は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体および/または開始剤を含む単量体組成物に由来する残留鉄イオンを、全体単量体に対して3ppmw以下、あるいは0.1~3ppmwの含有量でさらに含んでもよいし、この場合、すでに前述したキレート剤を共に含むことができる。
【0067】
高吸水性樹脂粒子の製造過程中には、通常、レドックス開始剤などの重合開始剤が使用され、このような開始剤に由来する鉄イオンは、単量体および/または高吸水性樹脂粒子内に残留しうる。しかし、このような鉄イオンは、高吸水性樹脂組成物の物性の低下をもたらすことがあるが、一実施形態の組成物は、キレート剤を共に含むことによって、前記鉄イオンの残留量が低減される。その結果、一実施形態の高吸水性樹脂組成物は、より優れた物性を示すことができる。
【0068】
前述のように得られた発明の一実施形態による高吸水性樹脂組成物は、優れた抗菌/消臭効能および基本的な吸水特性を示すことができる。
【実施例】
【0069】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるのではない。
【0070】
[実施例:高吸水性樹脂組成物の製造]
(比較例2)
アクリル酸単量体100重量部に対して、苛性ソーダ(NaOH)38.9重量部および水103.9重量部を混合し、前記混合物に、熱重合開始剤のソジウムペルスルフェート0.1重量部、光重合開始剤のジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド0.01重量部、および架橋剤のポリエチレングリコールジアクリレート0.3重量部を添加して、単量体組成物を用意した。
【0071】
前記単量体組成物を、内部温度が80℃に維持され、水銀UVランプの光源で10mWの強さを有する紫外線照射装置が上部に設けられた連続式ベルト重合反応器の重合ベルト上で243kg/hrの流量で流しながら紫外線を1分間照射し、追加的に2分間無光源状態で重合反応を進行させた。
【0072】
重合が完了して出るゲルタイプの重合シートは、シュレッダータイプのカッターを用いて1次カッティングした後、ミートチョッパにより粗粉砕した。この後、180℃の温度で30分間熱風乾燥機により乾燥した後、回転式ミキサを用いて粉砕し、180μm~850μmに分級して、ベース樹脂を製造した。
【0073】
前記ベース樹脂に、エチレングリコールジグリシジルエポキシド(ethylene glycol diglycidyl epoxide)0.1重量%を投入して均一に混合した後、140℃で1時間表面処理反応を進行させて、高吸水性樹脂を得た。
【0074】
前記高吸水性樹脂100重量部に対して、製品名:Biosafe(化学式2を含む)のシラン系化合物の4級アンモニウム塩を含む粒子状抗菌剤2重量部を入れて、Ploughshare blenderを用いて、500rpm、2分間撹拌を実施した。このように製造された高吸水性樹脂組成物を比較例2にした。
【0075】
(比較例3)
比較例2と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0076】
前記高吸水性樹脂100重量部に対して、製品名:Biosafe(化学式2を含む)のシラン系化合物の4級アンモニウム塩を含む粒子状抗菌剤2重量部、99重量%のクエン酸が1重量%のソジウムメタシリケート塩と混合された混合物2.02重量部を入れて、Ploughshare blenderを用いて、500rpm、2分間撹拌を実施した。このように製造された高吸水性樹脂組成物を比較例3にした。
【0077】
(実施例3)
比較例2と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0078】
前記高吸水性樹脂100重量部に対して、製品名:Biosafe(化学式2を含む)のシラン系化合物の4級アンモニウム塩を含む粒子状抗菌剤2重量部、EDTAのナトリウム塩(EDTA-2Na)1重量部を入れて、Ploughshare blenderを用いて、500rpm、2分間撹拌を実施した。このように製造された高吸水性樹脂組成物を実施例3にした。
【0079】
(実施例4)
比較例2と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0080】
前記高吸水性樹脂100重量部に対して、製品名:Biosafe(化学式2を含む)のシラン系化合物の4級アンモニウム塩を含む粒子状抗菌剤2重量部、99重量%のクエン酸が1重量%のソジウムメタシリケート塩と混合された混合物2.02重量部、EDTAのナトリウム塩(EDTA-2Na)1重量部を入れて、Ploughshare blenderを用いて、500rpm、2分間撹拌を実施した。このように製造された高吸水性樹脂組成物を実施例4にした。
【0081】
(比較例1)
比較例2と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。このような高吸水性樹脂自体を比較例1にした。
【0082】
[高吸水性樹脂の物性評価]
前記実施例3~4および比較例1~3の高吸水性樹脂組成物に対して下記の方法で物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0083】
(1)抗菌/消臭性能テスト
Proteus mirabillis(ATCC29906)が390000CFU/mlで接種された人工尿50mlを35℃のオーブンで12時間培養した。このような人工尿および12時間培養した後の人工尿を対照群とし、150mlの塩水でよく洗浄してCFU(Colony Forming Unit)を測定して、これによって対照群の物性として算出した。
実施例または比較例の高吸水性樹脂組成物2gを前記Proteus mirabillis(ATCC29906)が390000CFU/mlで接種された人工尿50mlに加えて、これを35℃のオーブンで12時間培養した。このような12時間培養した後の人工尿を150mlの塩水でよく洗浄してCFU(Colony Forming Unit)を測定した。これによって、各実施例および比較例の抗菌/消臭特性を算出/評価した。
【0084】
(2)保水能(CRC、Centrifugal Retention Capacity)
保水能の測定はEDANA法WSP241.3を基準とした。用意された高吸水性樹脂組成物試料0.2gをティーバッグに入れて、0.9%塩水溶液に30分間沈殿する。この後、250G(gravity)の遠心力で3分間脱水した後、塩水溶液が吸収された量を測定した。
【0085】
【0086】
前記表1を参照すれば、実施例の高吸水性樹脂組成物は、機能性添加剤の付加にもかかわらず、比較例に比べて、少なくとも同等水準の保水能を維持しながらも、向上した抗菌/消臭特性を示すことが確認された。