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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】自動分析装置及び自動分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/86 20060101AFI20221213BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20221213BHJP
   G01N 33/96 20060101ALI20221213BHJP
   C12Q 1/56 20060101ALI20221213BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALI20221213BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20221213BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01N33/86
G01N35/02 G
G01N33/96
C12Q1/56
C12Q1/37
C12M1/34 Z
C12M1/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021032192
(22)【出願日】2021-03-02
(62)【分割の表示】P 2019138425の分割
【原出願日】2016-02-12
(65)【公開番号】P2021099360
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2015057503
(32)【優先日】2015-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藪谷 千枝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直人
(72)【発明者】
【氏名】牧野 彰久
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-224384(JP,A)
【文献】国際公開第2012/173260(WO,A1)
【文献】特開2014-190954(JP,A)
【文献】特開平02-287261(JP,A)
【文献】須長宏行,全自動血液凝固分析装置コアプレスタ2000の特長とその有用性(測定原理からミキシングテストまで),生物試料分析,日本,2009年12月20日,Vol.32, No.5,pp. 386-392,http://j-jabs.umin.jp/32/32.386.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/86
G01N 35/02
G01N 33/96
C12Q 1/56
C12Q 1/37
C12M 1/34
C12M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検体容器を収容し保持する検体容器保持部と、
被検血漿及び/又は前記被検血漿の凝固時間を補正するため添加する正常血漿を分注する検体分注機構と、
被検血漿のみ、正常血漿のみ、又は少なくとも1つの混合比にて前記被検血漿及び正常血漿を混合する混合血漿が分注された反応容器へ試薬を分注する試薬分注機構と、
前記反応容器内の試薬が添加された前記被検血漿、正常血漿及び/又は混合血漿に光源からの光を照射し、得られる散乱光及び/又は透過光に基づき凝固時間を測定する測定部と、
クロスミキシングテストの依頼があった場合、前記クロスミキシングテストのために調製された混合血漿の異なる混合比の検体数が、同一ボトル内に残っている試薬で測定が可能な検体数以下のとき、前記クロスミキシングテストを実行するよう決定する制御部と、を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記測定部は、即時型又は遅延型の前記凝固時間の測定を行うものであり、
前記制御部は、前記即時型の分析依頼を受け付けると、分析を実行するかどうかを決定することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記異なる混合比の検体数が前記測定可能な検体数を上回る場合にアラームを表示する表示部を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記測定部は、APTTの前記凝固時間の測定を行うものであることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
少なくとも、複数の検体容器を収容し保持する検体容器保持部と、検体分注機構と、試薬分注機構と、測定部と、制御部と、を有する自動分析装置を用いた自動分析装置であって、
前記検体分注機構により、被検血漿及び/又は前記被検血漿の凝固時間を補正するため添加する正常血漿を、前記検体容器保持部に収容される複数の前記検体容器へ分注し、
前記検体容器内で、少なくとも1つの混合比にて前記被検血漿及び正常血漿を混合する混合血漿を調製し、
調整された前記混合血漿を反応容器に収容すると共に、前記試薬分注機構により前記反応容器へ試薬を分注し、
前記測定部により、前記反応容器内の試薬が添加された前記混合血漿に、光源からの光を照射し、得られる散乱光及び/又は透過光に基づき凝固時間を測定するものであって、
クロスミキシングテストの依頼があった場合、前記制御部が、前記クロスミキシングテストのために調製された混合血漿の異なる混合比の検体数が、同一ボトル内に残っている試薬で測定が可能な検体数以下のとき、前記クロスミキシングテストを実行するよう決定することを特徴とする自動分析方法。
【請求項6】
請求項5に記載の自動分析方法において、
前記測定部は、即時型又は遅延型の前記凝固時間の測定を行い、
前記制御部は、前記即時型の分析依頼を受け付けると、分析を実行するかどうかを決定することを特徴とする自動分析方法。
【請求項7】
請求項5に記載の自動分析方法において、
前記制御部は、前記異なる混合比の検体数が前記測定可能な検体数を上回る場合、表示部にアラームを表示させることを特徴とする自動分析方法。
【請求項8】
請求項5に記載の自動分析方法において、
前記測定部は、APTTの前記凝固時間の測定を行うことを特徴とする自動分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液,尿などの生体試料の定性・定量分析を行う自動分析装置に係り、特に、血液の凝固・止血検査に好適な自動分析装置及び自動分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固検査は、血液凝固線溶系の病態把握、DIC(播種性血管内凝固症候群)の診断、血栓治療効果の確認、血友病の診断などの目的で行われている。特に、血液凝固時間測定は、検体と試薬とを混合し、フィブリン塊が形成されるまでの時間(以下、血液凝固時間と称する)を測定するもので、先天的、後天的に異常がある場合、血液凝固時間は延長する。
【0003】
しかし、単に、血液凝固時間の測定を行うだけでは、その原因が血液凝固因子欠乏による活性低下(欠損型)なのか、血液凝固系を構成する成分又は血液凝固時間測定試薬中の成分等に対する抗体の血液凝固反応阻害(インヒビター型)による活性低下なのかを鑑別することはできない。
一方で、治療においては、血液凝固時間の延長原因が欠損型なのか、インヒビター型なのかによって治療方針が異なるため、その原因を明確にすることが必要である。
【0004】
血液凝固時間の延長の原因を鑑別するための方法として、正常血漿添加によるクロスミキシングテスト(血液凝固補正試験、または交差混合試験とも言う)がある。クロスミキシングテストでは、被検血漿に正常血漿を添加し、その血液凝固時間の補正の程度をグラフ化して判定する。クロスミキシングテストの最も代表的な利用例はAPTTの延長要因の判定であるが、その他、PT(プロトロンビン時間)、dPT(希釈PT)、dAPTT(希釈APTT)、KCT(カオリン凝固時間)及びdRVVT(希釈ラッセル蛇毒時間)などの項目で実施することもある。
ところで、APTTは、血液凝固検査を実施しているほとんどの施設で実施可能である主要項目であるにもかかわらず、現状ではクロスミキシングテストが頻繁に実施されているとは言い難い。施設内で実施できずに外部委託先に検査を依頼する場合には、結果を受け取るまでに時間を要し、血友病などの重篤な疾患に対する発見と治療開始の遅れにつながる。このような状況を生じさせる理由は、検体の調製とインキュベーション作業が煩雑であり、その結果の解釈も明瞭でないため、検査者の熟練を要するためである。
【0005】
上記の問題を解決するため、特許文献1が提案されている。特許文献1では、被検血漿のみ、正常血漿のみ及び、被検血漿と正常血漿を少なくとも1種の混合比で混合した試料(混合血漿)につき、それぞれ、血液凝固時間を測定し、得られた測定値のプロットによる折れ線グラフの下面積(A)と、被検血漿のみ及び正常血漿のみの測定値を結ぶ直線の下面積(B)との差分を求め、この差分の面積比(A-B)/(B)と、所定の基準面積比Yとを比較し、比較結果に基づき、インヒビター型か欠乏型かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2009/153964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、被検血漿と正常血漿の混合を自動化する方法は開示されておらず、用手法で調製する場合には、作業の煩雑化あるいは、作業者の熟練度により得られる混合血漿の混合比の精度にばらつきが生じ得る。
【0008】
そこで、本発明は、被検血漿と正常血漿とを所定の混合比にて得られる混合血漿の調製を自動化可能とする自動分析装置及び自動分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の自動分析装置は、複数の検体容器を収容し保持する検体容器保持部と、被検血漿及び/又は前記被検血漿の凝固時間を補正するため添加する正常血漿を分注する検体分注機構と、被検血漿のみ、正常血漿のみ、又は少なくとも1つの混合比にて前記被検血漿及び正常血漿を混合する混合血漿が分注された反応容器へ試薬を分注する試薬分注機構と、前記反応容器内の試薬が添加された前記被検血漿、正常血漿及び/又は混合血漿に光源からの光を照射し、得られる散乱光及び/又は透過光に基づき凝固時間を測定する測定部と、クロスミキシングテストの依頼があった場合、前記クロスミキシングテストのために調製された混合血漿の異なる混合比の検体数が、同一ボトル内に残っている試薬で測定が可能な検体数以下のとき、前記クロスミキシングテストを実行するよう決定する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の自動分析方法は、少なくとも、複数の検体容器を収容し保持する検体容器保持部と、検体分注機構と、試薬分注機構と、測定部と、制御部と、を有する自動分析装置を用いた自動分析方法であって、前記検体分注機構により、被検血漿及び/又は前記被検血漿の凝固時間を補正するため添加する正常血漿を、前記検体容器保持部に収容される複数の前記検体容器へ分注し、前記検体容器内で、少なくとも1つの混合比にて前記被検血漿及び正常血漿を混合する混合血漿を調製し、調整された前記混合血漿を反応容器に収容すると共に、前記試薬分注機構により前記反応容器へ試薬を分注し、前記測定部により、前記反応容器内の試薬が添加された前記混合血漿に、光源からの光を照射し、得られる散乱光及び/又は透過光に基づき凝固時間を測定するものであって、クロスミキシングテストの依頼があった場合、前記制御部が、前記クロスミキシングテストのために調製された混合血漿の異なる混合比の検体数が、同一ボトル内に残っている試薬で測定が可能な検体数以下のとき、前記クロスミキシングテストを実行するよう決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被検血漿と正常血漿とを所定の混合比にて得られる混合血漿の調製を自動化可能とする自動分析装置及び自動分析方法を提供することが可能となる。
【0012】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例に係る実施例1の自動分析装置の全体概略構成図である。
図2】クロスミキシングテストの概略図である。
図3図1に示す自動分析装置の処理フローを示すフローチャートである。
図4】クロスミキシングテスト測定依頼時の操作画面の表示例である。
図5】クロスミキシングテスト測定依頼時の操作画面の表示例である。
図6】検体分注機構による正常血漿吸引時の状態を示す図である。
図7】検体分注機構による被検血漿吸引時の状態を示す図である。
図8】検体分注機構による正常血漿又は被検血漿吐出時の状態を示す図である。
図9】攪拌機構による混合血漿の攪拌状態を示す図である。
図10】実施例1の自動分析装置によるクロスミキシングテスト結果を示す図である。
図11】本発明の他の実施例に係る実施例2の自動分析装置の全体概略構成図である。
図12図11に示す自動分析装置における検体ラックの搬送順の説明図である。
図13図11に示す自動分析装置におけるクロスミキシングテストの際の検体ラックの搬送順を説明する図である。
図14図11に示す自動分析装置におけるクロスミキシングテスト時の検体分注位置の説明図である。
図15】本発明の他の実施例に係る実施例3の自動分析装置の処理フローを示すフローチャートである。
図16】実施例3によるクロスミキシングテスト依頼時の操作画面の表示例である。
図17】本発明の他の実施例に係る実施例4の自動分析装置の処理フローを示すフローチャートである。
図18】実施例4の自動分析装置の動作を示すタイミングチャートである。
図19】本発明の他の実施例に係る実施例5の自動分析装置の処理フローを示すフローチャートである。
図20】本発明の他の実施例に係る実施例6の自動分析装置の処理フローを示すフローチャートである。
図21】実施例6によるクロスミキシングテスト依頼時の操作画面の表示例である。
図22】正常血漿のみ、被検血漿のみ、及び5種の混合比による混合血漿を示す図である。
図23】正常血漿のみ、被検血漿のみ及び3種の混合比による混合血漿を示す図である。
図24】正常血漿のみ、被検血漿のみ及び1種の混合比による混合血漿を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、「被検血漿」とは、入院或いは通院患者の血漿及び、健康診断等における被検者の血漿の双方を含む。また、本明細書では、「正常血漿」、「被検血漿」及び「各種混合比にて混合された混合血漿」の総称として、血液凝固時間を測定するための検体という場合もある。また、本明細書において、「一般検体」とは、被検者の検体のことである。
【0015】
図2は、クロスミキシングテストの概略図である。被検血漿に正常血漿を添加し、正常血漿の割合が0、10、20、50、80、90、100%となるように混合して調製した検体を準備し、APTTの測定を行う。測定結果(血液凝固時間)と正常血漿の割合の関係をプロットし、グラフを作成する。図2に示すように、横軸は正常血漿比率(%)、縦軸はAPTT(血液凝固時間)である。例えば、図2の実線(a)のように欠損型では、正常血漿の添加によりAPTT延長が補正され、下に凸のパターンを示す。一方、インヒビター型では、図2の実線(b)に示すように、正常血漿を添加してもAPTT延長が補正されにくく、上に凸のパターンを示す。しかし、第VIII因子に対するインヒビターの反応は、時間および温度依存性を有するため、混和(混合)直後の反応(以下、即時反応と称する)では明確な、上に凸の形状を示さず、37℃で一定時間インキュベーションした後の反応(以下、遅延反応と称する)において上に凸の形状を示すようになることがある。
従って、クロスミキシングテストでは即時反応及び遅延反応の両方を測定することが推奨されている。
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の一実施例に係る実施例1の自動分析装置の全体概略構成図である。ここでは、基本的な血液凝固検査の流れについて図1を用いて説明するが、以下の例に限定されない。
自動分析装置100は、検体分注機構101、検体ディスク102、試薬分注機構106、試薬ディスク107、反応容器ストック部111、反応容器搬送機構112、検出ユニット113、反応容器廃棄部117、操作部118、記憶部119及び制御部120から概略構成されている。
【0017】
検体分注機構101は、時計回り及び反時計回りに回転する検体ディスク102に配置された検体容器103に収容された検体を吸引し、反応容器ストック部111に収容される反応容器104へ吐出する。検体分注機構101は、先端部に検体分注プロープ101aを備え、制御部120によって制御される検体用シリンジポンプ105の動作により検体の吸引動作、及び吐出動作を実行する。
【0018】
試薬分注機構106は、試薬ディスク107に配置された試薬容器108に収容された試薬を吸引し、反応容器ストック部111に収容された反応容器104へ吐出する。試薬分注機構106は、先端部に試薬分注プローブ106aを備え、制御部120によって制御される試薬用シリンジポンプ110の動作により試薬の吸引動作、及び吐出動作を実行する。
また、試薬分注機構106は、試薬昇温機構109を内蔵する。試薬分注機構106によって吸引された試薬の温度は、制御部120により制御される試薬昇温機構109によって適温(所定の温度)へ昇温される。
【0019】
反応容器搬送機構112は、反応容器ストック部111に収容された反応容器104の搬送及び設置を行うものである。反応容器搬送機構112は、反応容器104を把持して水平面内で円弧状に回動することにより、反応容器104を反応容器ストック部111から検出ユニット113の反応容器設置部114へ搬送及び設置する。
【0020】
検出ユニット113は、反応容器104を載置するための、少なくとも1つ以上の反応容器設置部114を有する。検出ユニット113は、反応容器設置部114に挿入した反応容器104内の検体の光強度を測定する。なお、本実施例では、検出ユニット113を1つ配置した場合を示しているが、複数の検出ユニット113を有するよう構成しても良い。検出ユニット113における検出原理の例を以下に述べる。光源115から照射された光は、反応容器104内の反応溶液で散乱される。検出部(受光部)116は、フォトダイオードなどから構成されている。検出部116は、反応容器104内の反応溶液(検体)で散乱された散乱光を受光し、光/電変換を行うことによって、受光した散乱光の強度を示す測光信号をA/D変換器121に出力する。A/D変換器121でA/D変換された散乱光の測定信号は、インタフェース122を介して制御部120に入力される。検出ユニット113の動作は、制御部120により制御される。ここで、制御部120は、分析動作制御部120a及び演算部120bから構成される。分析動作制御部120a及び演算部120bは、例えば、CPU等のプロセッサにより実現され、図示しないROM又は記憶部119に格納される各種プログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより、制御及び演算を実行する。
すなわち、分析動作制御部120aは、検体分注機構101及び検体ディスク102を制御し検体分注を行う。また、分析動作制御部120aは、試薬分注機構106及び試薬ディスク107を制御し、反応容器104内の検体へ試薬を吐出する。更に、分析動作制御部120aは、反応容器104の移動、反応容器104の廃棄等の自動分析装置の動作を制御する。
演算部120bは、検体と試薬との混合反応の程度に応じて時間変化する光強度の測定値から得られるシグナル値と、予め定めた判定閾値との比較結果に基づいて、検体の反応時間を測定する測定処理を実施するものである。算出された凝固時間は、表示部118cに出力されるとともに、記憶部119に記憶される。なお、算出結果としての凝固時間を、インタフェース122を介してプリンタ123に印字出力しても良い。
【0021】
検出部116は、反応容器104内の反応溶液(検体)による散乱光を受光する構成に限られない。例えば、検出部116を、反応容器104内の反応溶液(検体)を透過する透過光の強度を検出する構成としても良い。また、上記散乱光検出方式及び透過光検出方式の双方を用いた検出部116としても良い。更に、上記の他、粘凋度を利用する検出器116としても良い。
反応容器搬送機構112は、測定が終了した反応容器104を把持し、反応容器廃棄部117へ廃棄する。
なお、処理能力を向上させる目的で、測定開始試薬を添加する前の検体を加温しておく、検出器を有さないインキュベーター124を備える構成としても良い。
【0022】
自動分析装置100で分析される検体の分析項目は、入力部としてのキーボード118bや表示部118cに表示された操作画面を介して操作部118から制御部120へ入力される。なお、表示部118cに表示された分析項目をマウス118aによりポインタ等で操作することによって分析項目を入力するGUI(Graphical User Interface)を用いるよう構成しても良い。
【0023】
なお、図1では、全ての構成要素を示すため便宜的に、反応容器ストック部111、検体ディスク102及び試薬ディスク107が離間配置されるよう表記しているが、実際の配置は、検体ディスク102と反応容器ストック部111が、検体分注機構101を構成する検体分注プローブ101aの水平面内における円弧状の移動軌跡の範囲内に配置されている。また、試薬ディスク107と反応容器ストック部111は、試薬分注機構106を構成する試薬分注プローブ106aの水平面内における円弧状の移動軌跡の範囲内に配置されている。従って、上方より見た場合、これら検体ディスク102、反応容器ストック部111及び試薬ディスク107は、略トライアングル状に配されている。
【0024】
続いて、本実施例の自動分析装置100におけるクロスミキシングテストの依頼と検体の調製方法について、以下に詳細に説明する。図3は、図1に示す自動分析装置の処理フローを示すフローチャートであり、特に、クロスミキシングテスト依頼時の検体調製方法のフローを示している。
まず、自動分析装置100は、クロスミキシングテストの依頼を受け付ける(ステップS101)。依頼の受け付け方法には、ホストコンピューターを利用したネットワークシステムを介して受信する方式と、操作者が操作部118から測定依頼することによって、入力されるクロスミキシングテスト測定依頼を受け付ける方式がある。以下では、操作画面を介して測定依頼が入力される場合を一例として説明する。
【0025】
図4及び図5は、クロスミキシングテスト測定依頼時に、操作部118を構成する表示部108cに表示される操作画面の表示例を示している。図4に示すように、クロスミキシングテスト測定依頼画面(操作画面)は、検体の種別、すなわち、一般検体、緊急検体及びコントロールのうち何れであるかを表示する領域を有する。図4では、一般検体に対するクロスミキシング測定依頼であることを示している。また、クロスミキシング測定依頼画面(操作画面)は、検査項目選択/指定領域127を有する。操作者は、この操作画面からクロスミキシングテストを実施する項目を、検査項目選択/指定領域127より指定できる。図4に示す例では、項目APTTが選択指定された状態を示している。また、操作画面は、正常血漿比率を選択指定可能な領域を有する。図4に示す例では、正常血漿の割合が0、10、20、50、80、90、100%の7条件の全てが設定された状態を示している。なお、ここで、設定される正常血漿比率は、図4に示す7条件に限られるものではなく、例えば、0%、100%を含む3条件以上、すなわち、被検血漿のみ、正常血漿のみ、及び少なくとも1つの混合比の混合血漿があれば良く、その他の混合比については任意に設定可能である。
【0026】
図4に示すように、測定項目と正常血漿比率が設定されると、分析動作制御部120aは、測定に必要な正常血漿量、被検血漿量を計算し、条件ごとに異なる正常血漿量及び被検血漿量をそれぞれ決定し、検体分注機構101の動作を制御する。その際、図5に示すように、必要な正常血漿量、被検血漿量を表示部118cに表示することによって、操作者に知らせる。操作者が必要な血漿量を把握することができることは、操作者が必要量を計算する負担を軽減すると共に、調製の途中で血漿量が不足するのを未然に防ぐことができるという効果がある。ここで、図5では操作者が正常血漿、被検血漿、空検体容器の設置位置を指定するようになっているが、装置が設置位置を指定するように制御しても良い。また、図5では、正常血漿の設置ポジションとして「100」、被検血漿の設置ポジションとして「101」、及び空検体容器の開始ポジションとして「102」が設定された状態を示している。ここで、各ポジションは、検体ディスク102中の検体容器103の位置を表すものであり、必ずしも、数字のみで特定されるものでは無く、例えば、アルファベットと数字との組み合わせで、検体容器103の位置を特定しても良い。
また、ホストコンピューターを利用したネットワークシステムから依頼を受け付ける場合には、測定項目や測定条件の設定をすることなく分析が可能である。
【0027】
図5に示す状態で、「スタート」ボタンが押下される(ステップS102)と、正常血漿量、被検血漿量、空検体容器の有無を確認する(ステップS103)。ここで、空検体容器とは、個体識別媒体を有する使い捨て閉栓可能な容器とする。個体識別媒体とは、検体を識別するためのものであって、例えば、バーコード或いはRFID等が用いられる。被検者検体の個体識別媒体には、検体を識別する検体IDの他に、測定依頼情報等が含まれる。空検体容器に貼付する個体識別媒体には、任意の番号を割り当て、正常血漿、被検血漿を混合した後の混合血漿を管理するために用いられる。正常血漿量、被検血漿量、空検体容器の有無の確認は、検体分注機構101の液面検知機能、すなわち、検体分注機構101の先端に設けられた検体分注プローブ101aが、液面に接触又は近接することで変化する静電容量或いは抵抗値など電気的な特性の変化を利用して、液面を検知する。また、小型カメラ等による撮影機能(CCD、CMOS、PMTなどのセンサー)を用いて撮像し、液面高さから液量を計算する構成としても良い。以下では、検体分注機構101の液面検知機能を利用し、個体識別媒体としてバーコードを用いる場合を一例として説明する。
【0028】
時計回り及び反時計回りに回転する検体ディスク102の回転により、図5で指定されたポジションに設置された被検者検体および空検体容器が、読取部125の前を通過するときに、被検者検体の個体識別媒体であるバーコードが読み取られる。読み取られたバーコードにより特定される被検者検体に対する依頼項目を照合すると共に、設置された空検体容器において作成される正常血漿比率や元の被検者検体情報と各混合血漿のIDとを照合させる。続いて、図6に示すように、検体ディスク102中の検体容器103のうち、正常血漿が充填された検体容器103aを、検体分注機構101の分注ポジションに移動し、検体分注プローブ101aの液面検知機能により正常血漿の量を確認する。同様にして、被検血漿が充填された検体容器103bが分注ポジションに移動し、検体分注プローブ101aの液面検知機能により、被検血漿の量を確認する(図7)。さらに空検体容器に対しては、検体分注プローブ101aの液面検知機能により、液面への接触がなくかつ、当該検体容器の底へ接触する(異常下降検知)場合に、設置された検体容器が空であることを認識する。
【0029】
図3に戻り、ステップS104では、容器設置チェックの結果、正常血漿量、被検血漿量が必要量に満たない、または、空検体容器が所定のポジションに必要個数設置されていない場合は、混合血漿調製を中止し、システムアラームを表示する(ステップS105)。これにより、測定途中での血漿の不足、或いは空検体容器が設置されていない場所、すなわち、検体(正常血漿、被検血漿、或いは混合血漿)が既に分注されている検体容器に、更に分注することによる検体ディスク102を汚染するリスクを回避できる。
【0030】
ステップS104にて、正常血漿量、被検血漿量が必要量以上準備され、空検体容器が必要個数設置されたことが確認できた場合には、空検体容器への正常血漿の分注を開始する(ステップS106)。
ここで、正常血漿の分注動作について説明する。時計回り及び反時計回りに回転する検体ディスク102の回転により、正常血漿が充填された検体容器103aを分注ポジションに移動し、検体分注機構101が正常血漿を吸引する(図6)。図6に示す例では、検体ディスク102が反時計回りにステップ状に回転する場合を示しており、その各ステップにおける移動距離は、相互に隣接配置される2つの検体容器103のピッチに相当する。これにより、読取部125により検体容器103に貼付されたバーコードが上述のように読み取られ、検体IDが識別された後、検体ディスク102の回転方向に沿って、読取部125より前方に位置する検体分注機構101の直下(検体分注ポジション)に位置付けられる。すなわち、各検体容器103は、常に、読取部125により検体IDが識別された後、分注ポジションに位置付けられる。
【0031】
次に、検体ディスク102のステップ状の回転により、分注ポジションに位置付けられる検体容器103は、被検血漿が充填された検体容器103bであるため(図7)、検体分注機構101を構成する検体分注プローブ101aより吸引された正常血漿を吐出することは無い。続いて、分注ポジションに位置付けられる検体容器は、空検体容器103cであり、検体分注プローブ101a内に吸引された正常血漿を吐出する(図8)。この動作を繰り返し、空検体容器103d~103iに正常血漿の分注を行う。正常血漿の分注が完了する(ステップS107)と、引き続き被検血漿の分注を行う(ステップS108)。
【0032】
ステップS108における被検血漿の分注動作は、検体ディスク102の回転により、先ず、被検血漿が充填された検体容器103bが分注ポジションに位置付けられ、検体分注機構101の検体分注プローブ101aにより、被検血漿が吸引される(図7)。続いて、検体ディスク102の回転により、分注ポジションに位置付けられる検体容器は、ステップS106にて正常血漿が吐出された検体容器103cである。検体分注プローブ101aは、吸引された被検血漿を検体容器103cに吐出する(図8)。同様の手順で、検体容器103d~103iに対し、検体分注プローブ101aにより被検血漿が分注される。全ての被検血漿の分注が完了するまで繰り返す(ステップS109)。
なお、ステップS106及びステップS108にて、検体分注機構101を構成する検体分注プローブ101aより、各検体容器103c~103iへの正常血漿及び被検血漿の吐出量は、例えば、図4にて示した操作画面により設定された正常血漿比率に対応する。
図3に戻り、ステップS110では、図9に示すように、攪拌機構126の直下に位置付けられた検体容器103c内に分注された正常血漿及び被検血漿の混合血漿を、攪拌機構126により撹拌する。ここで、攪拌機構126は、例えば、図9に示すように、先端に設けられた攪拌翼或いはへら状の棒を、検体容器103c内の混合血漿に浸潤させて回転することにより実行される。なお、攪拌機構126は、攪拌翼或いはへら状の棒を回転させる方式に限られない。例えば、検体容器内の混合血漿に超音波を照射し攪拌する構成としても良い。また、これに替えて、検体ディスク102を正逆反転(時計回り、反時計回りに)回動させる構成、或いは、検体分注プローブ101aから検体容器103へ正常血漿又は被検血漿を吐出する際の吐出圧、すなわち、検体用シリンジポンプ105の吐出圧により混合血漿を攪拌するよう構成しても良い。
【0033】
このように、本実施例の自動分析装置100では、上述の図4に示した操作画面により、設定された各種正常血漿比率の混合血漿を、検体分注機構101及び攪拌機構126により、自動的に調製することが可能となる。
【0034】
なお、図3では、正常血漿の分注(ステップS106)後に、被検血漿の分注(ステップS108)を行う構成としたが、これに限られず、被検血漿の分注後に正常血漿を分注し混合血漿を調製する構成としても良い。また、正常血漿と被検血漿のコンタミネーション防止の観点から、正常血漿、被検血漿の分注を独立して行う構成としたがこれに限られるものでは無い。例えば、検体分注機構101の洗浄が十分でコンタミネーションの心配がない場合には、混合血漿を一つ一つ作製(調製)することも可能である。この場合には、空検体容器103cに必要量の正常血漿を分注した後に、必要量の被検血漿を分注する。検体容器103cの混合血漿作製後、空検体容器103dの混合血漿の作製を行うように、空検体容器毎に順次、混合血漿を作製する。
【0035】
また、2種類の検体が分注された時点、図3ではステップS109まで終了した時点で、表示部118cに調製終了の画面を表示し、調製済検体の入った検体容器を操作者が閉栓、攪拌し、再度検体ディスク102上に設置しても良い。この場合には、検体攪拌機構126を備える必要がないため、装置を小型化できる。
【0036】
検体調製の終了後、103c~103i上に調製された7本の混合血漿を用いて分析を実施する。なお、このように検体調製に引き続いてすぐに実施する測定を即時型の測定と定義する。図3のステップS111では、7本のそれぞれ異なる正常血漿比率の混合血漿が収容される検体容器103c~103iに貼付されたバーコートを、読取部125で読み取り、それぞれ、正常血漿のみ、被検血漿のみ、5種の混合比、すなわち、10、20、50、80、90%の正常血漿比率の混合血漿を特定し、その後ステップS112へ進む。ステップS112では、それぞれの検体容器103c~103iに収容される検体を、検体分注機構101により、反応容器ストック部111内に収容される、異なる反応容器104へ分注する。その後、反応容器搬送機構112により、各反応容器104を検出ユニット113へ移動し、上述のように反応容器104を反応容器設置部114へセットし、散乱光及び/又は透過光の強度を示す測光信号を検出する。ここで、7本の調製済検体の検体容器には、ステップS103で照合した正常血漿比率と被検者検体IDを認識し、測定結果との照合を可能にする機能を持つ。
【0037】
ところで、クロスミキシングテストにおいて通常の分析と異なるのは、一つの被検者検体に対し、複数の(この場合、7つ)APTT凝固時間を算出し、一つのグラフを作成して、診断に用いることである。即時型の測定終了後の結果表示は、例えば、図10の実線(a)に示すように各混合血漿の正常血漿比率を横軸に、APTT凝固時間を縦軸としてプロットすることによって得られるグラフを操作部118cに表示する(ステップS113)。個別識別媒体による測定結果の照合とグラフの自動作成機能によって、操作者による測定結果の入力ミスを防ぐことができ、信頼性のある結果を提供できる。このとき、好ましくはインタフェース122を介してプリンタ123から結果を印字するのが良い。
【0038】
即時型測定後、引き続き遅延型の測定を実施する場合には(ステップS114)、即時型測定後の混合血漿(残余検体)の容器を閉栓し、37℃で一定時間インキュベーションする。インキュベーションはインキュベーター124で実施するが、インキュベーター124を有しない構成の装置の場合は、装置外で実施する。ここでは、装置の省スペース化、低コスト化を目的として装置にインキュベーター124は設けず、装置外でインキュベーションする場合について説明する。装置では測定終了時刻を起点とし、インキュベーション時間をカウントする。この時、操作者はインキュベーション時間を予め設定しておくことによって、操作画面からインキュベーションの終了時刻を知ることができる。また、好ましくは、インキュベーション終了時刻に近づいたときにインキュベーションの終了を知らせる表示を出力する(スッテプS115)。これによって、操作者は、インキュベーション中の検体の状況を把握し、忘れずに測定することができる。操作者はインキュベーションを終えた混合血漿を開栓し、検体ディスク102へ設置し、測定スタートボタンを押下する。測定スタートボタンが押下されると(ステップS116)、検体ディスク102の回転により、図5に示した操作画面にて指定されたポジションに設置された混合血漿IDを読み込み、ステップS103で照合した正常血漿比率と被検者検体IDを認識し、依頼項目を照合し(ステップS117)、遅延型の測定を実施する(ステップS118)。測定を終えると 、図10の実線(b)で示す遅延型のグラフを作成し(ステップS119)、即時型の結果との照合を行う(ステップS120)。この時、図2のように即時型及び遅延型のグラフを1つに合成しても良く、又は、それぞれ異なる2つのグラフに分割して表示しても良い。
【0039】
以上のように、本実施例によれば、混合血漿の作製、即時型/遅延型の分析、即時型/遅延型の結果照合が自動で実行されるため、操作者の熟練度による測定結果のばらつきや、人為的な検体取違いなどのミスをなくし、より信頼性を高めることが可能となる。
また、操作者の負担が軽減され、迅速に結果を得ることが可能となる。
更にまた、被検血漿と正常血漿とを所定の混合比にて得られる混合血漿の調製を自動化可能とする自動分析装置及び自動分析方法を実現できる。
【実施例2】
【0040】
図11は、本発明の他の実施例に係る実施例2の自動分析装置の全体概略構成図である。本実施例では、自動分析装置を、検体ラック201、検体ラック供給部202、検体ラック収納部203、検体ラック201を分析部210に搬送する搬送ライン204、帰還ライン205、ラック待機部206、待機部ハンドリング機構207、ラック戻し機構208、第1読取部(搬送ライン)209、及び分析部210を備える。すなわち、検体容器103を搭載するための機構として、検体容器103を検体ラック201に搭載し、検体ラック201を搬送する各種搬送機構を有する点が実施例1と異なる。その他の点は、実施例1と同様である、実施例1と同様の構成要素に同一の符号を付し以下では説明を省略する。
【0041】
図11に示すように、搬送ライン204に沿って分析部210を複数接続可能な構成であるが、本実施例では凝固検査を実施するための分析部を少なくとも一つ備える構成とする。凝固検査を実施するための分析部210の基本的な構成および、基本的な分析の流れは実施例1と概ね同様であるが、検体は搬送ライン204を介して供給されるため、検体ディスク102を有さない。
以下では、実施例1と大きく異なる検体の供給方法について詳細に説明する。
本実施例の自動分析装置において、搬送ライン204に沿って配置される分析部210の搬送系は、検体に対する分析依頼情報を照合するための第2読取部(分析部)211、搬送ライン204から検体ラック201を受け取る第1ラックハンドリング機構212、分注開始まで検体ラック201を待機させ得る機能を備える、検体ラック201の検体容器内の検体分注を実施する分注ライン213、クロスミキシング用混合血漿の調製時に検体ラック201を退避させる退避エリア214、及び検体分注後の検体ラック201を帰還ライン205に搬送する第2ラックハンドリング機構215を備える。
【0042】
まず、一般的な分析、すなわち、キャリブレーター、コントロール、一般検体などの分析を実施する際の検体供給の流れ、すなわち、検体ラックの搬送順について図12を用いて説明する。
操作部118を介して分析依頼が受け付けられると、検体ラック供給部202に並べられた検体ラック201は、図12において、矢印(a)にて示すように、搬送ライン204に移載された後、検体ラック201及び検体ラック201に収容される検体容器に貼付された個体識別媒体(例えば、バーコード等)は、第1読取部(搬送ライン)209により読み取られ、検体ラック番号及び検体容器番号が認識される(図12中の矢印(b))。その後、第1読取部(搬送ライン)209により読み取られた検体は、分注ライン213に検体ラック201があれば、検体ラック待機部206に収容されて分析を待つ(図12中の矢印(c))。分注ライン213の検体の分注が終了した段階で待機していた検体ラック201は,分析部210に送られ、第2読取部(分析部)211にて検体ラック番号及び検体容器番号が認識される(図12中の(d))。続いて、第1ラックハンドリング機構)212を介して、分注ライン213に引き込まれ(図12中の(e))、検体分注機構101によって検体が分注される。このとき、分注ライン213に検体ラック201がなければ、検体ラック待機部206へ収容されることなく直接、分注ライン213に搬送される。
【0043】
検体分注機構101による分注が終了した検体を収容する検体ラック201は、第2ラックハンドリング機構215を介して帰還ライン205に搬送され(図12中の(f))、待機部ハンドリング機構207を介して検体ラック待機部206へ搬送される(図12中の(g))。ここで、測定結果を待ち、再検がないと判断された場合は、待機部ハンドリング機構207を介して帰還ライン205へ移載され(図12中の(h))、検体ラック収納部203へと搬送される(図12の(i))。
【0044】
図13に、クロスミキシングテストの検体調製における検体供給の流れ、すなわち、検体ラックの搬送順を示す。
操作部118から分析依頼が受け付けられると、検体ラック供給部202に並べられた検体ラック201は、搬送ライン204に移載された後(図13中の矢印(a))、検体ラック201及び検体ラック201に収容される検体容器に貼付された個体識別媒体(例えば、バーコード)が、第1読取部(搬送ライン)209により読み取られ、検体ラック番号及び検体容器番号が認識される(図13中の(b))。第1読取部(搬送ライン)209によりクロスミキシングテストの依頼が確認された場合には、正常血漿、被検血漿及び空検体容器が収容された検体ラック201が全て照合され、かつ、分注ライン213に分析中の検体がなくなるまで、ラック待機部206に収容されて分析を待つ(図13中の矢印(c))。このとき、被検血漿、正常血漿及び空検体容器を収容する検体ラックが全て同一の検体ラックに収容されていても、二つ以上の検体ラックにまたがって収容されていても良い。
【0045】
分注ライン213に分析中の検体がなく、分析対象である被検血漿、正常血漿、及び空検体容器を収容する検体ラック201が確認できた時点で、分析対象となる被検血漿が収容された検体ラック、空検体容器を収容する検体ラックの順に、分析部210に搬送される。そして、第2読取部(分析部)211にて、検体ラック番号及び検体容器番号が認識される(図13中の(d))。続いて、第2ラックハンドリング機構215を介して分注ライン213(図13中の(e))に送られ、上述の実施例1と同様に、検体分注機構101の液面検知機能、異常下降検知機能により、被検血漿、正常血漿が必要量充填されていること、及び混合血漿調製用に必要とする検体容器103が空であることを確認する。
ここで、被検血漿量、正常血漿量、及び空検体容器が正しく設置されていない場合は、第1ラックハンドリング機構212を介して一旦搬送ライン204に戻された後、第2ラックハンドリング機構215を介して、帰還ライン205へ搬送され、検体ラック収納部203に戻されると、システムアラームを出力して、検体調製を中止する。
【0046】
一方、被検血漿量、正常血漿量、及び空検体容器が正しく設置されていることを確認できた検体ラック201は、第1ラックハンドリング機構212を介して、一旦搬送ライン204に戻され、第2ラックハンドリング機構215を介して、再度分注ライン213に搬送される。搬送された検体ラック201の被検血漿を吸引し、引き続き、空検体容器へと吐出する。このとき、空検体容器が別の検体ラックに収容されている場合には、分注ライン213上に設けられた、退避エリア214に検体ラックを配置させ、検体分注機構101の水平面内における円弧状の回転動作により、空検体容器へと吐出する(図14)。同様の動作を繰り返し、被検血漿、正常血漿を分注することにより、混合血漿を作製する。このとき、実施例1で示した攪拌機構126が、分注ライン213上にアクセス可能なように配置され、混合血漿の混合を実施可能な構成とすることが望ましい。
【0047】
調製済の検体が収容された検体ラックは、第1ラックハンドリング機構212を介して、搬送ライン204に戻され、第2ラックハンドリング機構215を介して、帰還ライン205に送られる(図13中の(g))。その後、調製済の検体が収容された検体ラック201は、待機部ハンドリング機構207を介して、検体ラック待機部206(図13中の(h))に引き込まれ、分析を待つ。ここで、図11のように、分析部210に攪拌機構126を備えない構造の場合には、第2ラックハンドリング機構215を介して、帰還ライン205に送られ(図13中の(g))、検体ラック収納部203に戻される(図13中の (g))。操作者は返送された検体ラックから調製済検体を回収し、攪拌後に再びラック供給部202に設置し、任意の項目(例えばAPTT)の分析を実施する(即時型の測定)。分析方法については、実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0048】
分析が終了した検体は、第2ラックハンドリング機構215を介して、帰還ライン205に送られ(図13中の(g))、検体ラック収納部203に戻される(図13中の(g))。操作者は、検体ラック収納部203に戻された検体を回収し、37℃で一定時間インキュベーションを実施し、再び検体ラック供給部202に設置して遅延型の測定を実施する。
【0049】
本実施例によれば、実施例1の効果に加え、検体ラックの搬送方向を制御することで、即時測定及び遅延測定を容易に行うことが可能となる。
【実施例3】
【0050】
図15は、本発明の他の実施例に係る実施例3の自動分析装置の処理フローを示すフローチャートである。本実施例では、自動分析装置自体の構成は、上述の実施例1又は実施例2の何れの構成としても良く、検体容器内で測定対象の検体を調製(混合血漿を作成)することに替えて、正常血漿、被検血漿を反応容器内に直接分注し、測定対象検体の調製を行う点が実施例1及び実施例2と異なる。すなわち、本実施例では、正常血漿、被検血漿を、直接反応容器内に分注した後に試薬を添加することで測定を実施することから、上述の実施例1及び実施例2のように、正常血漿及び被検血漿を別の容器で混合し、混合血漿を作製した後、測定時に反応容器へ分注し直す方法に比べ検体のロスが少ない。
【0051】
図15に示すように、まず、自動分析装置が、クロスミキシングテストの依頼を、操作部118を介して受け付ける(ステップS301)。その後、上述の実施例1及び実施例2と同様に、図5に示す「スタート」ボタンの押下を認識する(ステップS302)までは実施例1と同様である。
【0052】
図16に示すように、本実施例のクロスミキシング測定依頼画面では、実施例1と同様に正常血漿比率設定、検査項目選択/指定領域127による分析項目の選択指定が操作者により指定される。ここで、図16に示すように、本実施例では操作画面上に被検者IDに加え、正常血漿ID及び被検血漿/正常血漿のポジションを入力可能とする領域が設けられている。「スタート」ボタンが押下されると、被検血漿/正常血漿のバーコード等の個体識別媒体が貼付されている場合には、検体ディスク102の回転により、読取部125の前を通過する被検血漿/正常血漿の検体IDを認識する。検体IDの読み取りに失敗した場合、或いは個体識別媒体が貼付されていない場合には、図16の操作画面上の被検血漿/正常血漿の検体ID及びポジションの欄に、手入力することによって認識が可能である。また、ホストコンピューターを利用したネットワークシステムから依頼を受け付ける場合には、測定項目や測定条件の設定をすることなく分析が可能である。
【0053】
スタートボタンが押下される(ステップS302)と、検体分注機構101は検体ディスク102上に設置された正常血漿を吸引し、反応容器104に分注する(ステップS303)。続いて被検血漿を吸引し、反応容器104に分注する(ステップS304)。こ
こでは、正常血漿、被検血漿の順に分注する手順を示したが、これらステップS303とS304の順番は逆でも良い。また、正常血漿を吸引後、反応容器104に吐出することなく被検血漿を吸引し、反応容器104にまとめて吐出しても良い。
【0054】
当該測定が即時型測定であれば(ステップS305)、反応容器搬送機構112が反応容器を把持し、検出ユニット113へ移動する(ステップS306)。その後、試薬分注機構106による試薬分注(ステップS307)、および検出(ステップS308)を実施し、図16に示す操作画面にて設定した正常血漿比率の全ての検体の測定が完了するまで繰り返す(S309)、測定完了後に即時型測定結果のグラフを作成する(ステップS310)。
【0055】
また、ステップS305にて、当該反応容器の測定が即時型測定でない場合、すなわち遅延型測定である場合、反応容器104をインキュベーター124に移動し(ステップS311)、加温開始時刻を記憶する。図16に示す操作画面にて設定した正常血漿比率の全ての混合血漿の調製(ステップS312)を繰り返し、全ての混合血漿のインキュベーションを行う。加温終了時刻になった段階(ステップS313)で、反応容器搬送機構112が反応容器104を把持し、反応容器104を検出ユニット113へ移動する(ステップS314)。本実施例では、自動分析装置内でインキュベーション時間を管理できるため、インキュベーション時間の不足、または超過による誤った結果を出力するリスクを軽減することができる。ここで、クロスミキシングテストのインキュベーションを実施中であることが分かるように操作画面に時間を表示する。さらに好ましくはインキュベーション時間をフレキシブルに設定できる機能を有する。その後、試薬分注機構106による試薬分注(ステップS315)、および検出(ステップS316)を行う。調製した全ての検体の測定が完了するまで繰り返し(ステップS317)、測定完了後に遅延型測定結果のグラフを作成する(ステップS318)。
【0056】
次にステップS319では、ステップS310により得られた即時測定結果のグラフおよびステップS318による遅延型測定結果のグラフを照合し最終結果とする(ステップS319)。
【0057】
このように、本実施例によれば、正常血漿、被検血漿を反応容器104に直接分注し、混合血漿の調製、インキュベーション、測定、測定結果の出力を全自動で実施することにより、操作者の習熟度に依らない信頼性の高い結果を提供することが可能となる。また、更に、調製に使用する検体の量を減らすことによる被検者の負担を軽減できる。
また、本実施例では、正常血漿及び被検血漿が充填された検体容器のポジションを直接入力することも可能な構成であることから、検体ID管理機能を用いないで運用している施設においても適用できる。
【実施例4】
【0058】
図17に本発明の他の実施例に係る実施例4の自動分析装置の処理フローを示す。実施例1~実施例3では、クロスミキシングテストの実施方法を説明してきたが、自動分析装置はクロスミキシングテストだけを実施しているわけではなく通常は、凝固線溶系の病態把握、DIC(播種性血管内凝固症候群)の診断、血栓治療効果の確認などを目的とした検査に使用されている。すなわち、クロスミキシング検査用の混合血漿がインキュベーションを終えて遅延型分析を実施する際に、通常の分析依頼が混み合っていればクロスミキシング用の混合血漿をすぐに分析できるとは限らない。そこで、本実施例による自動分析装置では検体の分類ごとに検査の優先度を選択できる機能を有する点が、実施例1~実施例3と異なる。
【0059】
本実施例で説明する自動分析装置において、臨床検査における手術前の血液凝固能の検査時や外来患者への検査結果の即日報告の際などに求められる迅速性に対応するため、通常の検体よりも優先して分析することができる機能を有する。ここでは、これらの迅速性が求められる検体を総称して緊急検体と定義し、一般検体よりも優先して分析を実施できることを特徴とする。一方で、クロスミキシング検査用の混合血漿においては、インキュベーションの時間を管理しているため、一定時間のインキュベーションが終了した場合には直ちに測定したい要求がある。そこで、操作者のニーズに合わせて、検体分類別に優先度を選択でき、優先度に従って測定順を決定する処理について図17を用いて説明する。図17では、優先度を「緊急検体測定>遅延型クロスミキシングテスト>一般検体測定」と設定した場合を例にとって説明するが、優先度の設定は、この形態に限定されるものでは無い。
【0060】
遅延型クロスミキシング用に調製した混合血漿のインキュベーションが終了した時点において(ステップS401)、装置が待機状態でない場合は以下のフローに従う(ステップS402)。計画されている項目の中に緊急検体の依頼の有無を判定し(ステップS403)、緊急検体の依頼が無い場合にはスッテプS406へ進み、一般検体の依頼よりも優先して遅延型クロスミキシングテストを実施するように再スケジューリングを行う(ステップS406)。しかし、緊急検体の分析が依頼されている場合には、まず緊急検体、クロスミキシングテスト、一般検体の順で分析を実施するので、緊急検体の分析中、クロスミキシング用の混合血漿をインキュベーター124に、一旦待機させる(ステップS404)。緊急検体の分析が完了した時点で(ステップS405)、一般検体の依頼よりも優先して遅延型クロスミキシングテストを実施するように再スケジューリングを行う(ステップS406)。ここで、遅延型クロスミキシング用に調製した混合血漿のインキュベーションが終了した時点において(ステップS401)、装置が待機状態であれば上記のようなスケジューリングは必要なく以下の通り、クロスミキシングテストの分析を開始する。
まず、遅延型クロスミキシング用に調製した混合血漿をインキュベーター124から検出ユニット113へ移動させる(ステップS407)。続いて、調製した混合血漿に対し試薬を分注し(ステップS408)、検出(ステップS409)を行う。遅延型クロスミキシング用に調製した混合血漿の全ての分析が終了するまで、ステップS407~ステップS409までの処理を繰り返し実行する。混合血漿の分析が完了すると(ステップS410)、クロスミキシングテストの結果を算出し出力する(ステップS411)。
【0061】
その後、一般検体の依頼が残っている場合には(ステップS412)、一般検体を分析し(ステップS413)、一般検体の分析が完了したら(ステップS414)、自動分析装置は、待機状態となる(ステップS415)。
【0062】
図18は、図17に示す自動分析装置の動作を示すタイミングチャートである。図18に示すように、自動分析装置自体が待機状態において、一般検体の測定依頼を受け付けると、自動分析装置は、一般検体の測定のため稼働状態となる。この時、仮に、緊急検体の測定依頼を受け付けると、予め上述の通り、緊急検体の測定処理が最も優先度が高く、次にクロスミキシングテスト用検体(混合血漿)の遅延型測定、一般検体の測定が最も低い優先度が設定されている。よって、緊急検体処理を優先する。緊急検体処理完了後、再び、一般検体処理を開始中に、クロスミキシングテスト用混合血漿のインキュベーション時間が終了すると、一旦、一般検体の処理を中断し、遅延型測定を開始する。遅延型測定実行中に、緊急検体の測定依頼を受け付けた場合は、仮に、緊急検体処理の優先度が高く設定された場合であっても、緊急検体処理は、遅延型測定が終了するまで待機状態となり、クロスミキシングテストの終了後、緊急検体の分析を実施する。
【0063】
このように、本実施例によれば、実施例1及び実施例2の効果に加え、一般検体、緊急検体の割り込み処理等、予め操作者が各検体に対する優先度を設定することにより、設定された優先度に基づき自動分析装置が分析を実行でき、検体の取り違え等の人為的なミスを低減でると共に、効率的に自動分析装置を動作させることが可能となる。
【実施例5】
【0064】
図19は、本発明の他の実施例に係る実施例5の自動分析装置の処理フローを示すフローチャートである。本実施例では、混合血漿検体数に基づいて試薬管理を行う点が、上述の実施例1から実施例4と異なる。なお、試薬管理方法以外の構成は、実施例1から実施例4と同様であるため、以下ではその説明を省略する。
クロスミキシングテストでは、例えば、7つの測定値を一組の結果として扱うことから、一組の測定に対して同一ロット(好ましくは同一ボトル)の試薬を確保する必要がある。特に、測定項目がAPTTの場合にはキャリブレーションを実施しないため、ロットの異なる試薬では、測定結果にばらつきが生じやすい。また、同一ロットであっても装置内でしばらく保存されていた試薬容器(試薬ボトル)内の試薬と新規に開封した試薬容器(試薬ボトル)の試薬では、ばらつきが生じやすい。そこで本実施例の自動分析装置では、クロスミキシングテストの分析依頼を確認した場合には、少なくとも一回、一組の測定を実施することができる試薬を確保することが重要である。図19に示すように、即時型の分析依頼を受け付けると(ステップS501)、制御部120は、必要なテスト数(調製した混合血漿数)と試薬残量の確認を実行する。すなわち、「混合血漿検体数≦試薬残テスト数」の関係にあるか否かを判定する(ステップS502)。ステップS502による判定結果が「否」、すなわち、混合血漿検体数が試薬残テスト数を上回る場合、ステップS504へ進み、アラームを表示部118cに表示する。また、ステップS502による判定の結果、混合血漿検体数が試薬残テスト数以下の場合、ステップS503へ進み、クロスミキシングテストを実行(分析実行)する。
【0065】
また、制御部120は、同一項目の試薬ボトルが複数設置されている場合には、少なくとも一組の測定において、ボトルをまたいで分析を実施することがないように制御する。例えば、ボトル1の残テスト数が「3テスト」、ボトル2の残テストが「100テスト」で、クロスミキシングテストが7ポイント(7条件)での依頼であった場合、「混合血漿検体数(7本)≧ボトル1の試薬残テスト数」となるため、ボトル1での分析をキャンセルし、ボトル2の残テスト数と照合する。ボトル2であれば、「混合血漿検体数(7本)≦ボトル2の試薬残テスト数」であるため、クロスミキシングテスト(分析)を実行する。また、仮に分析可能な試薬ボトルが一つもない場合には、システムアラームを出力して分析開始をキャンセルする(ステップS504)。
【0066】
本実施例によれば、一組のクロスミキシングテストに関して分析の途中で試薬不足を発生させることなく、同一ボトルの試薬を用いた分析が可能となる。また、これにより、信頼性の高い結果を提供できる。
【実施例6】
【0067】
図20は、本発明の他の実施例に係る実施例6の自動分析装置の処理フローを示すフローチャートである。本実施例では、混合血漿の調製方法が上述の実施例1~実施例5と異なる。その他、自動分析装置の構成、一般的な凝固検査の流れについては、実施例1又は実施例2と同様であるため、以下では重複する説明を省略する。また、検体の調製方法に関しても、実施例1と同様の点はできる限り説明を簡略化する。
【0068】
上述の実施例1及び実施例2では、図5に示すように、必要な正常血漿量、被検血漿量を表示部118cに表示し、操作者に知らせることによって途中で検体不足が発生するリスクを回避する構成とした。しかし、万が一、操作者のミスによって正常血漿量及び/又は被検血漿量が不足していた場合には、調製の途中で検体不足が発生し、調製途中の検体が無駄となる。そこで本実施例の自動分析装置では、仮に、上記のように準備すべき正常血漿及び/又は被検血漿が不足していた場合であっても、検体を無駄にすることなく、有効な測定を可能とする。
【0069】
図20に示すように、自動分析装置においてクロスミキシングテストの依頼が受け付けられ(ステップS601)、測定項目と正常血漿比率が設定されると、分析動作制御部120aは次の処理を実行する。すなわち、分析動作制御部120aは、測定に必要な正常血漿量及び被検血漿量を計算し、条件ごとに異なる正常血漿量及び被検血漿量をそれぞれ決定し、検体分注機構101の動作を制御する。
続いて、図5に示す操作画面上の「スタート」ボタンが押下されると、分析動作制御部120aは、この「スタート」ボタンの押下を認識する(ステップS602)。続いて、空検体容器の有無を確認する(ステップS603)。空検体容器有無の確認方法については、図3のステップS103の処理(実施例1)と同様である。
ステップS604では、ステップS603の実行により得られた空検体容器数がN(Nは自然数)以上であるか否かを判定する。なお、ここでNは、例えば、図5に示す操作画面上で設定された正常血漿比率に対応する空検体容器数である7個が設定される。判定の結果、空検体容器が所定のポジションに必要個数設置されていない場合は、検体調製を中止し、システムアラームを表示部118cに表示する(ステップS605)。一方、判定の結果、所定のポジションに空検体容器が設置されている場合には、ステップS606へ進み、血漿量のチェックを、検体分注機構101の液面検知機能により実行する。
【0070】
ところで、クロスミキシングテストにおける測定数は、最低3ポイントが推奨されている。換言すれば、クロスミキシングテストは3ポイント以上ならば実施可能である。図21に本実施例のクロスミキシングテスト依頼時の操作画面の表示例を示す。図21示すように、クロスミキシングテスト測定依頼画面に、正常血漿比率の優先度を選択可能な領域を有する。図21に示す例では、優先度の高いものから順に3段階に分けて入力可能としている。すなわち、優先度設定領域に設定される優先度は、「優先度1>優先度2>優先度3」の関係にある。また、正常血漿比率が0%、50%、及び100%に優先度1が、正常血漿比率が10%及び20%に優先度2が、また、正常血漿比率が80%及び90%に優先度3が設定された状態を示している。これら設定された優先度は、記憶部119に格納される。
また、図22から図24に、各正常血漿比率に対応する正常血漿量及び被検血漿量の関係を示している。図22に示すように、正常血漿比率が、0、10、20、50、80、90、100%の7条件で、それぞれ200μLの混合血漿を作製し、クロスミキシングテストを実施する場合には、正常血漿、被検血漿はそれぞれ700μL以上必要となる。ここで、仮に、いずれか一方または両方が必要量に満たない場合でも、少ない血漿量でも有効な分析結果を得る方法について説明する。
【0071】
ここで、図20に戻り、ステップS607では、正常血漿量がX以上か否か、及び被検血漿量がY以上か否か判定する。ここで、Xは、図22に示す例では、700μLであり、Yは、同様に700μLである。判定の結果、「正常血漿量≧X」及び「被検血漿量≧Y」のうち、何れか一方又は両方が条件を満たさない場合、すなわち、血漿量が必要量に満たない場合、ステップS608へ進む。
ステップS608では、測定ポイント数を変更するために、記憶部119に格納される各正常血漿比率に設定された優先度を参照し、優先度3に対応する条件を除外し血漿量の再演算を実行する。ステップS609では、「正常血漿量≧(X-XP3)」及び「被検血漿量≧(Y-YP3)」を満たすか否かを判定する。ここで、優先度3を除外した条件で測定する際の正常血漿量(X-XP3)は、360μL、優先度3を除外した条件で測定する際の被検血漿量(Y-YP3)は、640μLである(図23)。判定の結果、「正常血漿量≧(X-XP3)」及び「被検血漿量≧(Y-YP3)」のうち、何れか一方又は両方が条件を満たさない場合、ステップS610へ進む。一方、判定の結果、上記条件を満たす場合には、ステップS613へ進む。
【0072】
ステップS610では、優先度1のみが設定された条件、すなわち、優先度2及び優先度3の条件が除外された条件で測定する際の血漿量の再計算を行う。ここで、正常血漿量300μL及び被検血漿量300μLが、再計算後の血漿量として得られる(図24)。
次に、ステップS611へ進み、「正常血漿量≧(X-XP3-XP2)」及び「被検
血漿量≧(Y-YP3-YP2)」を満たすか否か判定する。判定の結果、正常血漿量
≧(X-XP3-XP2)」及び「被検血漿量≧(Y-YP3-YP2)」のうち、
何れか一方又は両方が条件を満たさない場合、ステップS612へ進み、表示部118cへシステムアラームを出力し、混合血漿の調製を中止する。一方、判定の結果、上記条件を満たす場合には、ステップS613へ進む。
【0073】
ステップS613では、分析動作制御部120aは、検体分注機構101及び試薬分注機構106を制御し、正常血漿及び被検血漿の分注を開始する。なお、正常血漿及び被検血漿の分注は、上述の実施例1と同様であるため、ここでは説明を省略する。全ての正常血漿及び被検血漿の分注が完了する(ステップS614)と、分析動作制御部120aは、攪拌機構126を制御し、混合血漿の攪拌を実行する(ステップS615)。混合血漿撹拌後、分析が実行される。
図20では、優先度を3段階に設定する場合を例に説明したが、これに限られものでは無く、優先度は任意に設定可能である。
【0074】
本実施例によれば、上述の実施例1及び実施例2の効果に加え、当初設定された正常血漿比率に対応する測定に必要な、正常血漿量及び/又は被検血漿量に満たない場合であっても、有効なクロスミキシング測定結果を得ることが可能となる。
【0075】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の実施例の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
100・・・自動分析装置,101・・・検体分注機構,101a・・・検体分注プローブ,102・・・検体ディスク,103・・・検体容器,104・・・反応容器,105・・・検体用シリンジポンプ,106・・・試薬分注機構,106a・・・試薬分注プローブ,107・・・試薬ディスク,108・・・試薬容器,108a・・・試薬,109・・・試薬昇温機構,110・・・試薬用シリンジポンプ,111・・・反応容器ストック部,112・・・反応容器搬送機構,113・・・検出ユニット,114・・・反応容器設置部,115・・・光源,116・・・検出部(受光部),117・・・反応容器廃棄部,118・・・操作部,118a・・・マウス,118b・・・キーボード,118c・・・表示部,119・・・記憶部,120・・・制御部,120a・・・分析動作制御部,120b・・・演算部,121・・・A/D変換器,122・・・インタフェース,123・・・プリンタ,124・・・インキュベーター,125・・・読取部,126・・・攪拌機構,127・・・検査項目選択/指定領域,201・・・検体ラック,202・・・検体ラック供給部,203・・・検体ラック収納部,204・・・搬送ライン,205・・・帰還ライン,206・・・検体ラック待機部,207・・・待機部ハンドリング機構,208・・・ラック戻し機構,209・・・第1読取部(搬送ライン),210・・・分析部,211・・・第2読取部(分析部),212・・・第1ラックハンドリング機構,213・・・分注ライン,214・・・退避エリア,215・・・第2ラックハンドリング機構
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