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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】通信装置、及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 69/08 20220101AFI20221214BHJP
   H04L 12/44 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H04L69/08
H04L12/44 200
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021538531
(86)(22)【出願日】2019-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2019030510
(87)【国際公開番号】W WO2021024306
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秦野 智也
(72)【発明者】
【氏名】吉野 學
【審査官】宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-142837(JP,A)
【文献】特開2005-078650(JP,A)
【文献】吉野 學 Manabu YOSHINO,新アクセスシステムアーキテクチャ(FASA) Introduction of New FASA Concept for Future Access Sys,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.116 No.123 IEICE Technical Report,日本,一般社団法人電子情報通信学会 The Institute of Ele,2016年06月30日,第116巻,第81-86頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00-13/18,41/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソフトウェア化された機能が複数の部品に部品化され、ネットワークに接続された複数の通信装置によって前記部品がそれぞれ実行されることによって前記機能を実現する通信システムにおける前記通信装置であって、
前記部品を実行し自装置と処理信号を送受信することで前記機能を自装置と共に実現する他の通信装置へ送信される情報をカプセル化するカプセル化機能部
を備える通信装置。
【請求項2】
他の通信装置へ送信される前記情報に対して送信の優先度を制御する優先制御機能部
をさらに備える請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
他の通信装置から送信された前記情報が破棄された場合、前記他の通信装置に対して前記情報の再送要求を行う再送制御機能部
をさらに備える請求項1又は請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記情報の宛先である他の通信装置に対して前記情報が送信されるように制御する宛先制御機能部
をさらに備える請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項5】
宛先が自己の通信装置ではない前記情報を破棄することにより、前記宛先が前記自己の通信装置である前記情報のみを取得する宛先制御機能部
をさらに備える請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項6】
他の通信装置へ送信される前記情報を暗号化する暗号化機能部、及び、前記情報の宛先である他の通信装置を認証する対向装置認証機能部のうち少なくとも一方
をさらに備える請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記複数の通信装置には、PONインターフェース装置と、少なくとも1つのサーバ装置とが含まれ、
前記PONインターフェース装置は、
PONインターフェースを実現するハードウェアであるハードウェア部と、
前記PONインターフェースを実現する前記部品であって、前記ハードウェアに構成が依存する前記部品を実行する機器依存部品実行部と、
を備え、
前記サーバ装置は、
前記PONインターフェースを実現する前記部品であって、前記ハードウェアに構成が依存しない前記部品を実行する機器無依存部品実行部
を備える請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項8】
ソフトウェア化された機能が複数の部品に部品化され、ネットワークに接続された複数の通信装置によって前記部品がそれぞれ実行されることによって前記機能を実現する通信システムによる通信方法であって、
前記部品を実行し自装置と処理信号を送受信することで前記機能を自装置と共に実現する他の通信装置へ送信する情報をカプセル化するカプセル化ステップ
を有する通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信装置を備える通信システムには、例えば、PON(Passive Optical Network)システムがある。PONシステムは、顧客の宅内等に設置される光加入者線終端装置(ONU: Optical Network Unit)と、局舎に設置される通信装置である光加入者線端局装置(OLT: Optical Line Terminal)と、光分配網(ODN: Optical Distribution Network)とを備える。ODNは、複数のONUと複数のOLTとを接続する場合がある。
【0003】
通信装置において、装置の準拠規格、世代、方式、システム、機器種別、製造ベンダの少なくともいずれかに関して依存性の低い機能を部品化し、当該機能のアプリケーションプログラミングインターフェース(API: Application Programming Interface)等の入出力インターフェース(IF: Interface)の少なくとも一部を明確化し、汎用性・移植性・拡張性を高めることで、準拠規格、世代、方式、システム、機器種別、製造ベンダの少なくともいずれかが異なる機器間での共用や独自機能の追加を容易とすることができる(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】“FASAホームページへようこそ”、[online]、NTTアクセスサービス研究所、[令和1年7月10日検索]、インターネット〈URL:http://www.ansl.ntt.co.jp/j/FASA/index.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通信機器であるOLTの機能を部品化する場合、PONインターフェース部とコンピュート部とが、物理的に1つの機器によって実装されるケースと、2つ以上の機器(又はプラットフォーム)に分散して実装されるケースと、が考えられる。1つの機器によって実装されるケースでは、例えばWBS(White Box Switch)等が用いられる。
【0006】
一方、2つ以上の機器(又はプラットフォーム)に分散して実装されるケースでは、例えば、PONインターフェース部として機能する機器と、コンピュート部として機能する機器(例えばサーバ)と、に分離させる構成がある。この場合、例えば、PONインターフェース部として機能する機器が、PONプロトコルによってONUとの通信を行う機能と、主信号を転送する機能とを担い、コンピュート部として機能する機器(例えばサーバ)が、制御信号の処理を行う機能と、OLT機能の処理全般を管理する機能とを担うような構成が考えられる。なお、ここでいう制御信号とは、例えば、DBA(Dynamic Bandwidth Allocation:動的帯域割当)における「GATE」や「GRANT」等の信号、及び、OMCI(ONU Management and Control Interface)及びOAM(Operation Administration and Maintenance)等に関わる信号等である。
【0007】
このように、OLTを構成するPONインターフェース部とコンピュート部とが複数の機器(又はプラットフォーム)に分散して備えられる場合、これらの機能部間において互いに制御信号の送受信が行われる必要がある。また、各機能部を備える複数の機器は、互いに距離的に離れた場所に設置される場合がある。例えば、時間的な制約が相対的に少ない機能であるOAM等の機能は、効率化のため、PONインターフェースから離れた場所に設置され、複数のPONインターフェース部に対応すべく一つの機器に集約される場合がある。このように、OLTを構成する複数の機器は、必ずしも、互いに近傍に設置され、直接通信接続されているわけではない。
【0008】
このように、各機能部を備える複数の機器が互いに距離的に離れた場所に設置される場合、ネットワークにおいて、当該複数の機器間の通信と、他の外部の機器による通信とが、混在することがある。この場合、例えば、制御信号が、宛先である機器とは異なる機器へ届くことにより、誤接続が生じるリスク等が高くなる。そのため、通信対象の機器と確実に通信が行われるための仕組みが必要である。
【0009】
また、各機能部を備える複数の機器が互いに距離的に離れた場所に設置される場合、当該複数の機器間の通信において、相対的にセキュアでないネットワークを経由して通信させなければならないことがある。この場合、例えば、悪意のあるユーザによって盗聴、改竄、及びなりすまし等が行われるリスク等が高くなる。そのため、安全に通信が行われるための仕組みが必要である。
【0010】
しかしながら、従来技術では、OLTを構成する複数の機器が、互いに近傍に設置され、直接通信接続されることが前提として設計されているため、通信対象の機器と確実に通信が行われるための仕組み、及び、安全に通信が行われるための仕組み等が含まれていない。これにより、従来、複数の機器を柔軟に配置することができないという課題があった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の機器を柔軟に配置することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、ソフトウェア化された機能が複数の部品に部品化され、ネットワークに接続された複数の通信装置によって前記部品がそれぞれ実行されることによって前記機能を実現する通信システムにおける前記通信装置であって、前記部品を実行し自装置と処理信号を送受信することで前記機能を自装置と共に実現する他の通信装置へ送信される情報をカプセル化するカプセル化機能部を備える通信装置である。
【0013】
また、本発明の一態様は、ソフトウェア化された機能が複数の部品に部品化され、ネットワークに接続された複数の通信装置によって前記部品がそれぞれ実行されることによって前記機能を実現する通信システムによる通信方法であって、前記部品を実行し自装置と処理信号を送受信することで前記機能を自装置と共に実現する他の通信装置へ送信する情報をカプセル化するカプセル化ステップを有する通信方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、複数の機器を柔軟に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来技術による通信システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る通信システムの機能構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る通信制御機能部の機能構成を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る通信制御機能部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する本実施形態では、OLTの機能が複数の部品に部品化され、それぞれの部品が、PONインターフェース部として機能する機器と、コンピュート部として機能する機器と、に分散して備えられる構成である通信システムを想定している。なお、PONインターフェース部として機能する機器とは、例えば、後述するPONインターフェース10であり、コンピュート部として機能する機器とは、例えば、後述するサーバ20a及びサーバ20bである。
【0017】
本実施形態に係る通信システム1の構成についての説明を分かり易くするため、まず、従来技術による通信システム5の構成について説明する。図1は、従来技術による通信システム5の構成を示すブロック図である。
【0018】
通信システム5は、PONにおける例えばODN等の光ファイバ網を経由する信号(例えば光信号)によって、他の通信装置(例えばONU)との通信を行うシステムである。通信システム5は、OLTとして機能する。図1に示すように、通信システム1は、PONインターフェース50と、サーバ60aと、サーバ60bと、EMS70と、を含んで構成される。なお、通信システム5が、その他のサーバ(図示せず)を備えている構成であってもかまわない。
【0019】
PONインターフェース50、サーバ60a、及びサーバ60bは、ハードウェア又はソフトウェア又はそれらの組み合わせの部品又は部品化した機能を備える。例えば、PONインターフェース50、サーバ60a、及びサーバ60bは、サービス毎あるいは通信事業者毎に異なる機能等を、汎用化した入出力インターフェース(例えば、FASA(登録商標)(Flexible Access System Architecture:新アクセスシステムアーキテクチャ)アプリケーションAPI(非特許文献1参照))を用いて実現されるアプリケーション(例えば、FASA(登録商標)アプリケーション(非特許文献1参照))等のソフトウェア部品と、当該ソフトウェア部品に汎用化した当該入出力インターフェースを提供すると共に標準化されている等の理由で、サービスや要求に応じた変更が不要な機能を提供するアクセスネットワーク装置の基盤的構成要素(例えば、FASA(登録商標)基盤(非特許文献1参照))とを備える。ここで、汎用化した入出力インターフェースが用いられることにより、機能の追加や入替が容易になり、様々な要求のサービスを柔軟かつ迅速に提供される。なお、以下の説明においては、アプリケーションを「アプリ部」と記載することがある。
【0020】
図1に示すように、PONインターフェース50は、PONに関する処理を実行するハードウェアであるハードウェア部500と、PONに関する処理を実行するソフトウェアであるソフトウェア部501と、を含んで構成される。また、ソフトウェア部501は、機器依存アプリ部502を含んで構成される。
【0021】
機器依存アプリ部502とは、ハードウェア部500に構成が依存する機能部である。すなわち、機器依存アプリ部502は、ハードウェア部500が準拠する標準規格や機器の製造ベンダに依存する機能部である。言い換えれば、機器依存アプリ部502は、他のハードウェアとの互換性が低く、新たに製造されたハードウェア(特に、準拠する標準や製造ベンダが異なるハードウェア)にはそのまま用いることができないアプリケーションからなる機能部である。なお、ソフトウェア部501が、ハードウェア部500に構成が依存しない機能部である機器無依存アプリ部(図示せず)をさらに備えている構成であっても構わない。
【0022】
図1に示すように、サーバ60aは、OLT機能管理部600と、機器無依存アプリ部601と、を含んで構成される。また、サーバ60bは、機器無依存アプリ部601を含んで構成される。
【0023】
機器無依存アプリ部601とは、ハードウェア部500に構成が依存しない機能部である。すなわち、機器依存アプリ部601は、ハードウェア部500が準拠する標準規格や機器の製造ベンダに依存しない機能部である。言い換えれば、機器依存アプリ部601は、他のハードウェアとの互換性が高く、新たに製造されたハードウェア(特に、準拠する標準や製造ベンダが異なるハードウェア)にそのまま用いることができるアプリケーションからなる機能部である。なお、機器無依存アプリ部601に設けられるアプリケーションの具体例として、ネットワーク機器における設定処理を行うアプリケーション、設定の変更処理を行うアプリケーション、ネットワークの監視・管理・認証を行うアプリケーション、及びアルゴリズム処理を行うアプリケーション等がある。
【0024】
OLT機能管理部600は、EMS70から出力された制御信号の入力を一元的に受け付ける。OLT機能管理部600は、EMS70から出力された制御信号に基づいて、通信システム5の各機能部へ、各種の命令、及び状態確認行うための情報等を出力する。また、OLT機能管理部600は、機器無依存アプリ部601、機器依存アプリ部502、及びハードウェア部500に対する、設定の実施、変更及び削除、また状態の監視を行う。
【0025】
なお、EMS(Element Management System)70は、ネットワークを構成する機器(すなわち、PONインターフェース50、サーバ60a、及びサーバ60b)を管理するシステムである。
【0026】
機器依存アプリ部502、及び機器無依存アプリ部601は、OLTの機能が部品化(ソフトウェア化)された機能部である。機器依存アプリ部502は、上述したように、PONインターフェース50が備えるハードウェア部500に構成が依存するアプリケーションである。そのため、機器依存アプリ部502は、PONインターフェース50が備えるソフトウェア部501に備えられる必要がある。
【0027】
機器無依存アプリ部601は、例えば、OLTのDBA機能及びOAM機能等の基本機能を有する。また、機器無依存アプリ部601は、例えば、OLT上でのオプション機能及びエッジコンピューティング機能を含む。なお、機器無依存アプリ部601が、PONインターフェース50に備えられている構成であっても構わない。
【0028】
上述したように、通信システム5は、OLTの機能が部品化され、各部品が、PONインターフェース50とサーバ(サーバ60a及びサーバ60b)とに分散して搭載される。そのため、通信システム5がOLTとして機能するためには、上述した各機能部が、互いに処理信号を送受信する必要がある。図1に示すように、サーバ60aのOLT機能管理部600とサーバ60bの機器無依存アプリ部601との間の通信、及び、サーバ60aのOLT機能管理部600とPONインターフェース50のソフトウェア部501との間の通信は、互いに異なる機器に備えられた機能部間の通信である。
【0029】
しかしながら、とくに機器間の距離が物理的に互いに離れている場合には、ネットワークにおいて他の機器による通信と混在する可能性が高くなり、例えば誤接続等が生じるリスクが生じる。また、この場合、セキュアでないネットワークを経由して通信が行われる可能性が高くなり、例えば盗聴及び改竄等のリスクが生じる。これにより、従来、このような通信システムにおいては、離れた場所に複数の機器を分散して配置することが難しく、機器の配置が制限される。これに対し、以下に説明する本発施形態に係る通信システム1は、上記の課題を解決することができる。
【0030】
[通信システムの構成]
以下、係る通信システム1の機能構成について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る通信システム1の機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、通信システム1は、PONインターフェース10と、サーバ20aと、サーバ20bと、EMS30と、ネットワーク40とを含んで構成される。なお、通信システム1が、その他のサーバ(図示せず)を備えている構成であってもかまわない。
【0031】
図2に示すように、PONインターフェース10は、PONに関する処理を実行するハードウェアであるハードウェア部100と、PONに関する処理を実行するソフトウェアであるソフトウェア部101と、通信制御機能部400と、を含んで構成される。また、ソフトウェア部101は、ハードウェア部100に構成が依存する機能部である機器依存アプリ部102を含んで構成される。なお、ソフトウェア部101が、ハードウェア部100に構成が依存しない機能部である機器無依存アプリ部をさらに備える構成であっても構わない。
【0032】
図2に示すように、サーバ20aは、OLT機能管理部200と、機器無依存アプリ部201と、通信制御機能部400とを含んで構成される。また、サーバ20bは、機器無依存アプリ部201と、通信制御機能部400とを含んで構成される。
【0033】
OLT機能管理部200は、EMS30から出力された制御信号の入力を一元的に受け付ける。OLT機能管理部200は、EMS30から出力された制御信号に基づいて、通信システム1の各機能部へ、各種の命令、及び状態確認行うための情報等を出力する。また、OLT機能管理部200は、機器無依存アプリ部201、機器依存アプリ部102、及びハードウェア部100に対する、設定の実施、変更及び削除、また状態の監視を行う。
【0034】
機器依存アプリ部102、及び機器無依存アプリ部201は、OLTの機能が部品化(ソフトウェア化)された機能部である。機器依存アプリ部102は、上述したように、PONインターフェース10が備えるハードウェア部100に構成が依存するアプリケーションである。そのため、機器依存アプリ部102は、PONインターフェース10が備えるソフトウェア部101に備えられる必要がある。
【0035】
機器無依存アプリ部201は、例えば、OLTのDBA機能及びOAM機能等の基本機能を有する。また、機器無依存アプリ部201は、例えば、OLT上でのオプション機能及びエッジコンピューティング機能を含む。なお、機器無依存アプリ部201は、PONインターフェース10にも備えられている構成であっても構わない。
【0036】
上述したように、通信システム1は、OLTの機能が部品化され、各部品が、PONインターフェース10とサーバ(サーバ20a及びサーバ20b)とに分散して搭載される。そのため、通信システム1がOLTとして機能するためには、上述した各機能部が、互いに処理信号を送受信する必要がある。図2に示すように、サーバ20aのOLT機能管理部200とサーバ20bの機器無依存アプリ部201との間の通信、及び、サーバ20aのOLT機能管理部200とPONインターフェース10のソフトウェア部101との間の通信は、互いに異なる機器に備えられた機能部間の通信である。
【0037】
図2に示すように、PONインターフェース10と、サーバ20aと、サーバ20bとは、互いにネットワーク40を介して通信接続される。なお、ネットワーク40は、相対的にセキュアでない区間を含むことがある。また、図2に示すように、PONインターフェース10、サーバ20a、及びサーバ20bは、それぞれ通信制御機能部400を備えており、当該通信制御機能部400を介してネットワーク40に通信接続する構成である。
【0038】
[通信制御機能部の機能構成]
以下、通信制御機能部400の機能構成について説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る通信制御機能部400の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように、通信制御機能部400は、カプセル化機能部401と、優先・再送制御機能部402と、宛先制御機能部403とを含んで構成される。
【0039】
カプセル化機能部401は、転送される信号情報を、ネットワーク40によって転送可能なパケット又はフレームにカプセル化する。カプセル化された信号情報は、ネットワーク40で用いられる転送プロトコル(例えば、IP(Internet Protocol)、イーサネット(登録商標)、又はATM(Asynchronous Transfer Mode:非同期転送モード)等)によって、ネットワーク40を介して宛先となる機器へ届けられる。
【0040】
この際、ネットワーク40において、例えばVLAN(Virtual Local Area Network:仮想LAN)又はVPN(Virtual Private Network)等のトンネリング技術を活用できる場合には、カプセル化機能部401は、信号情報に対して当該トンネリング技術に係るタグ付け及びラベリング等の処理を行う。これにより、各機器は、ネットワーク40を介して他の機器へ、安全かつ確実に信号情報を転送することができる。なお、ネットワーク40においてトンネリング技術が活用できない場合には、カプセル化機能部401は、例えばIPSec(IP Security Architecture)又はSSL(Secure Socket Layer)等を用いて、信号情報をセキュアなパケットにカプセル化するようにしてもよい。
【0041】
なお、通信制御機能部400が、カプセル化機能部401とは別に、例えば、暗号化機能部(図示せず)をさらに備える構成であってもよい。ここでいう暗号化機能部(図示せず)とは、送信側と受信側との間において、暗号化鍵を共有し、当該暗号鍵を用いて処理信号を暗号化する機能部である。
【0042】
なお、通信制御機能部400が、例えば、対向装置認証機能部(図示せず)をさらに備える構成であってもよい。ここでいう対向機器認証機能部(図示せず)とは、通信が行われる前に、宛先である機器の正常性、及び通信経路の正常性を確認する機能部である。なお、これらの正常性確認は、例えば、定期的に、SSL又はVPNの開始時に、又は再接続時等に行われるようにしてもよい。なお、これらの正常性確認の方法として、例えば、各機器が、信頼できる機器又は信頼できる機能部品からそれぞれ証明を受けて、当該証明に基づいて正常性の確認がなされるような方法を用いることができる。
【0043】
優先・再送制御機能部402は、信号情報を転送する際に、転送の優先度を制御することによって、信号情報が破棄されないように制御する処理を行う。又は、優先・再送制御機能部402は、信号情報が破棄された場合に、送信元の機器に対して当該信号情報の再送を要求する処理を行う。これにより、優先・再送制御機能部402は、各機能部に対して、信号情報の破棄による影響を与えないようにすることができる。
【0044】
なお、レイヤー2又はレイヤー3における信号情報の破棄の影響は、一般に、レイヤー4又は更に上位のレイヤーにおいて優先制御及び再送制御がなされることによって吸収される。これにより、通信システムの各種処理への影響が防がれる。しかしながら、本実施形態においては、各機器の信号処理において、これらの機能(すなわち、レイヤー4又は更に上位のレイヤーにおいて優先制御及び再送制御を行う機能)は具備されていない。したがって、本実施形態に係る通信制御機能部400には、上述した優先・再送制御機能部402が備えられる必要がある。
【0045】
宛先制御機能部403は、宛先となるサーバ(サーバ20a又はサーバ20b)、又は宛先となるPONインターフェース10へ確実に信号情報が送信されるように制御する機能を有する。例えば、宛先制御機能部403は、信号情報の宛先ごとにP2P(Peer to Peer)方式でVPNをそれぞれ構築する。これにより、宛先制御機能部403は、所望の宛先へ確実に信号情報が届けられるように制御することができる。
【0046】
または、宛先制御機能部403が、宛先が自己の機器である信号情報のみを受領する機能を有する構成であってもよい。この場合、例えば、宛先制御機能部403は、宛先が自己の機器ではない信号情報を受信した場合には、当該信号情報を破棄することで上記の機能を実現することができる。
【0047】
なお、従来の一般的な通信技術においては、レイヤー2及びレイヤー3のいずれにおいても、ネットワークのルーティング機能によって信号情報が宛先の機器へ届けられる。又は、従来の一般的な通信技術においては、信号情報がマルチキャスト化された上で、受信側において宛先が自己の機器ではない信号情報が破棄さることによって、信号情報が宛先の機器へ届けられる。しかしながら、本実施形態においては、各機器の信号処理において、これらの機能(すなわち、ルーティング及びマルチキャスト化等の機能)は具備されていない。したがって、本実施形態に係る通信制御機能部400には、上記の宛先制御機能部403が備えられる必要がある。
【0048】
[通信制御機能部の動作]
以下、通信制御機能部400の動作の一例について説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る通信制御機能部400の動作を示すフローチャートである。
【0049】
通信制御機能部400は、他の機器へ送信される信号情報を、自己の機器が備える他の機能部(例えば、ソフトウェア部101又は機器無依存アプリ部201)から取得する(ステップS001)。カプセル化機能部401は、取得した信号情報をカプセル化する(ステップS002)。優先・再送制御機能部402は、上記の信号情報に対して送信の優先度を設定する(ステップS003)。
【0050】
宛先制御機能部403は、上記の信号情報の宛先である他の機器に対して当該信号情報が送信されるように宛先設定を行う(ステップS004)。通信制御機能部400は、上記の信号情報を、ネットワーク40を介して宛先である他の機器へ送信する(ステップS005)。以上で、図4のフローチャートが示す通信制御機能部400の動作が終了する。
【0051】
なお、通信システム1は、上記ステップS002からステップS004までの処理のうち一部のみを実行する構成であってもよい。例えば、通信システム1は、ステップS002のカプセル化の処理のみを行い、ステップS003の優先度設定、及びステップS004の宛先設定の処理を省略する構成であってもよい。
【0052】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る通信システム1では、OLTを構成する機能が複数の機器によって構成され、当該複数の機器間の通信が安全かつ確実に行われるようにするための通信制御機能部400が、当該複数の機器のそれぞれに設けられる。通信制御機能部400が設けられることで、OLTを構成する機器間に、各種のネットワーク及び装置等が存在していても、通信を行うことが可能になる。また、以上説明したように、当該機能部は、例えば、信号情報をセキュアなパケットにカプセル化するとともに、優先制御、再送制御、及び宛先制御等を行う。なお、優先制御、再送制御、及び宛先制御は必ずしも全て実行される必要はない。
【0053】
上述したように、OLTの機能が部品化された複数の部品がPONインターフェース部とコンピュート部とに物理的に分散して備えられる場合、機能部間で制御信号のやりとりが行われる必要がある。特に各機能部を備える機器が距離的に互いに離れた場所に設置されている場合、従来、ネットワークにおいて当該機器間の通信と他の通信とが混在することにより誤接続のリスクが生じたり、セキュアでないネットワークを経由することにより改竄及び盗聴等のリスクが生じたりする場合があった。これに対し、上述した本発明の一実施形態に係る通信システム1は、OLTを構成する機能が複数の機器に分散して備えられる構成において、当該複数の機器間の通信を制御する通信制御機能部400を備える。これにより、通信システム1は、信号情報をカプセル化して安全に信号情報の転送を行ったり、優先制御等により信号情報が破棄されることなく宛先である機器へ確実に転送したりすることができる。
【0054】
また、これにより、本実施形態に係る通信システム1にでは、OLTを構成する複数の機器が、隣接して配置されるようにしたり、又は直接通信接続されるようにしたりする必要がない。これにより、本実施形態によれば、各機器を互いに離れた場所に配置させることが可能になるため、より柔軟に機器の配置を行うことが可能になる。
【0055】
なお、上述した実施形態においては、一例として、通信システム1が、PONシステムにおけるOLTの機能を実現する通信システムである場合について説明した。但し、本発明が適用対象とする装置(又はシステム)はこれに限られるものではなく、上記の通信システム1は、例えば、アクセス装置、又は転送装置等に適用することも可能である。
【0056】
上述した実施形態における通信システム1の少なくとも一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1・・・通信システム、5・・・通信システム、10・・・PONインターフェース、20a,20b・・・サーバ、40・・・ネットワーク、50・・・PONインターフェース、60a,60b・・・サーバ、100・・・ハードウェア部、101・・・ソフトウェア部、102・・・機器依存アプリ部、200・・・OLT機能管理部、201・・・機器無依存アプリ部、400・・・通信制御機能部、401・・・カプセル化機能部、402・・・優先・再送制御機能部、403・・・宛先制御機能部、500・・・ハードウェア部、501・・・ソフトウェア部、502・・・機器依存アプリ部、600・・・OLT機能管理部、601・・・機器無依存アプリ部
図1
図2
図3
図4