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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20221214BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20221214BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20221214BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20221214BHJP
【FI】
H01L21/304 601Z
H01L21/304 631
B24B9/00 601H
B24B7/04 A
B23K26/53
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018164507
(22)【出願日】2018-09-03
(65)【公開番号】P2020038870
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリック アイゼンバーグ
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-131942(JP,A)
【文献】特開2014-017432(JP,A)
【文献】特開2017-204555(JP,A)
【文献】特開2000-173961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 9/00
B24B 7/04
B23K 26/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数のデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを有し、外周に面取り部を有したウェーハの裏面を研削して仕上げ厚みへと薄化するウェーハの加工方法であって、
ウェーハの該表面から該面取り部に切削ブレードを該仕上げ厚みに至る深さへと切り込ませるとともに外周縁に沿って切削して該面取り部を除去するトリミングステップと、
該トリミングステップを実施した後、ウェーハの該裏面を研削して該仕上げ厚みへと薄化する研削ステップと、を備え、
該トリミングステップを実施する前に、該外周余剰領域で且つ該トリミングステップで該切削ブレードを切り込ませる位置よりもウェーハの内側でウェーハに対して透過性を有する波長のレーザビームを該外周縁に沿って照射してウェーハの該表面から該切削ブレードの切り込み深さに至る環状の改質領域を形成するレーザ加工ステップと、を更に備え、 該トリミングステップで発生したクラックが該デバイス領域に伸長することを該環状の改質領域でせき止める、ウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの裏面を研削して仕上げ厚みへと薄化するウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハの裏面を研削して薄化した際にウェーハ外周縁の面取り部に所謂シャープエッジが形成され、該シャープエッジに欠けが生じてウェーハが損傷するおそれを防止するために、研削前に切削ブレードで面取り部を除去する所謂エッジトリミング(例えば、特許文献1参照)が広く採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-173961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、通常のダイシングで使用される例えば幅20μm程度の切削ブレードに比べて、エッジトリミングでは幅1mm程度の厚いブレードを使用する上、ウェーハを直線状ではなく環状に切削するために切削負荷が通常のダイシングよりもウェーハに大きくかかり、チッピングと呼ばれる欠けやクラックが切削溝の縁に発生しやすい。そして、発生したクラックがデバイスに達するとデバイスを損傷してしまうため問題となる。
【0005】
よって、ウェーハの裏面を研削して薄化する加工方法においては、ウェーハの外周縁の面取り部をトリミングする際に発生するクラックによってデバイスが損傷してしまうことを防ぐという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、表面に複数のデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを有し、外周に面取り部を有したウェーハの裏面を研削して仕上げ厚みへと薄化するウェーハの加工方法であって、ウェーハの該表面から該面取り部に切削ブレードを該仕上げ厚みに至る深さへと切り込ませるとともに外周縁に沿って切削して該面取り部を除去するトリミングステップと、該トリミングステップを実施した後、ウェーハの該裏面を研削して該仕上げ厚みへと薄化する研削ステップと、を備え、該トリミングステップを実施する前に、該外周余剰領域で且つ該トリミングステップで該切削ブレードを切り込ませる位置よりもウェーハの内側でウェーハに対して透過性を有する波長のレーザビームを該外周縁に沿って照射してウェーハの該表面から該切削ブレードの切り込み深さに至る環状の改質領域を形成するレーザ加工ステップと、を更に備え、該トリミングステップで発生したクラックが該デバイス領域に伸長することを該環状の改質領域でせき止める、ウェーハの加工方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るウェーハの加工方法は、トリミングステップを実施する前に、外周余剰領域で且つトリミングステップで切削ブレードを切り込ませる位置よりもウェーハの内側でウェーハに対して透過性を有する波長のレーザビームを外周縁に沿って照射してウェーハの表面から切削ブレードの切り込み深さに至る環状の改質領域を形成するレーザ加工ステップを実施することで、トリミングステップで発生したクラックがデバイス領域に伸長することを環状の改質領域でせき止めることが可能となる。即ち、面取り部をトリミングする際に発生するクラックによってデバイスが損傷してしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ウェーハの一例を示す斜視図である。
図2】ウェーハの一例を示す断面図である。
図3】レーザ加工ステップの一例を説明する説明図である。
図4】環状の改質領域がウェーハに形成されている状態を拡大して示す断面図である。
図5】環状の改質領域が形成されたウェーハの一例を示す平面図である。
図6】ウェーハの厚み方向において集光点位置を変更して複数回レーザビームをウェーハに照射して環状の改質領域を形成している状態を説明する断面図である。
図7】細孔と変質領域とからなる環状の改質領域が形成されたウェーハの一例を示す平面図である。
図8】ウェーハの面取り部をトリミングしている状態を説明する断面図である。
図9】ウェーハの裏面を研削して仕上げ厚みへと薄化している状態を説明する断面図である。
図10】貼り合わせウェーハの一例を示す斜視図である。
図11】貼り合わせウェーハの一例を示す断面図である。
図12】貼り合わせウェーハに施すレーザ加工ステップの一例を説明する説明図である。
図13】改質層とクラックとが貼り合わせウェーハのウェーハに形成されている状態を拡大して示す断面図である。
図14】環状の改質領域がウェーハに形成された状態を拡大して示す断面図である。
図15】貼り合わせウェーハの面取り部をトリミングしている状態を説明する断面図である。
図16】貼り合わせウェーハのウェーハの裏面を研削して仕上げ厚みへと薄化している状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
以下に、本発明に係るウェーハの加工方法(以下、実施形態1のウェーハの加工方法とする。)の各ステップについて説明する。
【0010】
(1-1)レーザ加工ステップの一例
図1、2に示すウェーハWは、例えば、シリコンを母材とする外形が円形の半導体ウェーハであり、その表面Waには、デバイス領域Wa1と、デバイス領域Wa1を囲繞する外周余剰領域Wa2とが設けられている。デバイス領域Wa1は、直交差する複数の分割予定ラインSで格子状に区画されており、格子状に区画された各領域にはIC等のデバイスDがそれぞれ形成されている。図1において下方を向いているウェーハWの裏面Wbは、後に研削される被研削面となる。ウェーハWの外周は、例えば面取り加工されており断面が略円弧状の面取り部Wdが形成されている。
なお、ウェーハWはシリコン以外にガリウムヒ素、サファイア、窒化ガリウム又はシリコンカーバイド等で構成されていてもよい。
【0011】
ウェーハWは、例えば、図3に示すレーザ加工装置1に搬送される。レーザ加工装置1は、ウェーハWを吸引保持する保持テーブル10と、保持テーブル10に保持されたウェーハWに対して透過性を有する波長のレーザビームを照射可能なレーザビーム照射手段11とを少なくとも備えている。
【0012】
保持テーブル10は、Z軸方向の軸心周りに回転可能であるとともに、図示しない移動手段によって加工送り方向であるX軸方向及び割り出し送り方向であるY軸方向に往復移動可能となっている。保持テーブル10は、例えば、その外形が円形状であり、ポーラス部材からなりウェーハWを保持する平坦な保持面10aを備えている。そして保持面10aに連通する図示しない吸引源が生み出す吸引力が保持面10aに伝達されることで、保持テーブル10は保持面10a上でウェーハWを吸引保持できる。
【0013】
レーザビーム照射手段11は、レーザビーム発振器119から発振されたレーザビームを、伝送光学系を介して集光器111の内部の集光レンズ111aに入光させることで、保持テーブル10で保持されたウェーハWにレーザビームを集光して照射できる。レーザビームの集光点の高さ位置は、図示しない集光点位置調整手段によりZ軸方向に調整可能となっている。
【0014】
レーザ加工装置1は、ウェーハWの面取り部Wdの座標位置及びウェーハWの中心の座標位置を認識するアライメント手段14を備えている。アライメント手段14は、図示しない光照射手段と、ウェーハWからの反射光を捕らえる光学系および光学系で結像された被写体像を光電変換して画像情報を出力する撮像素子等で構成されたカメラ140とを備えている。
【0015】
レーザ加工ステップにおいては、まず、図3に示すように、表面Waを上側に向けて保持テーブル10の保持面10a上にウェーハWが載置され、保持テーブル10によってウェーハWが吸引保持される。保持テーブル10の回転中心とウェーハWの中心とは略合致した状態になっている。
【0016】
例えば、図示しない移動手段が保持テーブル10をアライメント手段14の下方まで移動させ、エッジアライメントが実施される。即ち、保持テーブル10が回転し、保持テーブル10に保持されたウェーハWの外周縁がカメラ140で複数箇所撮像される。そして、例えば外周縁の離間した3点の座標が検出され、該3点の座標に基づく幾何学的演算処理により、保持テーブル10上におけるウェーハWのより正確な中心座標が求められる。
【0017】
そして、ウェーハWの該中心座標の情報及び予め認識されているウェーハWのサイズの情報を基にして、保持テーブル10が水平方向に移動されて、外周余剰領域Wa2で且つ後述するトリミングステップで図4に示す切削ブレード613を切り込ませる位置Y2よりもウェーハWの内側の所定位置Y1が集光器111の直下に位置するように、保持テーブル10が所定位置に位置付けられる。
【0018】
次いで、集光レンズ111aによって集光されるレーザビームの集光点位置を、ウェーハWの内部の所定の高さ位置、即ち、例えば、図3に示すウェーハWの仕上げ厚みL1に至る深さとなる高さ位置Z2よりも少しだけ下方の高さ位置Z3(切削ブレード613の切り込み深さ位置)に位置付ける。仕上げ厚みL1は、デバイスDの上面の高さ位置Z1から高さ位置Z2までの厚みである。そして、レーザビーム発振器119からウェーハWに対して透過性を有する波長のレーザビームを所定の繰り返し周波数でパルス発振させ、レーザビームを保持テーブル10で保持されたウェーハWの内部に集光し照射する。
なお、レーザビームの出力は、例えば、ウェーハWに形成される改質層から上下にクラックが発生する条件に設定されるが、出力を下げて改質層から上下にクラックが発生しない条件に設定されてもよい。また、集光点位置の設定も上記例に限定されるものではない。
【0019】
集光点位置に到達する前のレーザビームは、ウェーハWに対して透過性を有しているが、集光点位置に到達したレーザビームはウェーハWに対して局所的に非常に高い吸収特性を示す。そのため、図4に示すように、集光点位置付近のウェーハWはレーザビームを吸収して改質され、集光点位置から上下方向(主に上方)に向かって改質層が伸びるように形成される。また、改質層から上下方向に微細なクラックが同時に形成されていく。即ち、改質層とクラックとを含む改質領域MがウェーハWに形成されていく。形成された改質領域Mは、ウェーハWの表面Waまでその上端が到達している。
【0020】
レーザビームをウェーハWの外周縁に沿って照射しつつ、保持テーブル10を所定の回転速度でZ軸方向の軸心周りに360度回転させることで、図5に示すようにウェーハWの内部に表面Waの外周余剰領域Wa2から切削ブレード613の切り込み深さに至る円環状の改質領域Mが形成される。なお、図5に示すウェーハWの外周余剰領域Wa2における二点鎖線よりも外側の領域は、切削ブレード613でトリミングされる領域となる。
【0021】
円環状の改質領域Mの形成は上記例に限定されるものではない。例えば、ウェーハWの仕上げ厚みが厚い場合(切削ブレード613の切り込み深さを深くする場合)等においては、レーザビームをウェーハWの外周縁に沿って照射しつつ、保持テーブル10を所定の回転速度でZ軸方向の軸心周りに360度回転させる毎に、ウェーハWの厚み方向(Z軸方向)で集光点位置を上側に所定間隔ずらしつつ、レーザビームを複数パスウェーハWに照射してもよい。
【0022】
即ち、ウェーハWを保持する保持テーブル10を360度1回転して形成された図6に示す改質層MaとクラックCとを含む環状の改質領域M(-Z方向から1段目の改質領域M)の上方に、改質層MaとクラックCとを含む2段目の環状の改質領域Mをさらに形成してもよい。さらに、3段目の改質層及びクラック、4段目の改質層及びクラック(図6には不図示)を表面Waに至るまで形成していく。この場合には、例えば、1段目の改質層Maの上側に伸びているクラックCと2段目の改質層Maの下側に伸びるクラックCとがつながった状態になる。その他の各段におけるクラックCも同様につながった状態になる。そして、ウェーハWの内部に表面Waの外周余剰領域Wa2から切削ブレード613の切り込み深さとなる高さ位置Z3に至る円環状の改質領域Mが形成される。
なお、各段のクラックCではなく、各段の改質層Ma自体をウェーハWの厚み方向に繋げて改質領域Mを形成してもよいが、各段のクラックCをつなげる方が少ないパスのレーザビーム照射で、ウェーハWの内部に表面Waの外周余剰領域Wa2から切削ブレード613の切り込み深さに至る円環状の改質領域Mを形成できるので効率的である。
【0023】
また、円環状の改質領域Mの形成において、保持テーブル10をZ軸方向の軸心周りに360度回転させる毎に厚み方向(Z軸方向)に集光点位置を上側に所定間隔ずらしつつレーザビームを複数パス照射するのではなく、図3に示すレーザビーム発振器119から発振されたレーザビームをビームスプリッター等によって分岐させて複数の光路のレーザビームとし、複数の光路のレーザビームの各集光点をウェーハWの厚み方向の異なる位置に位置付ける。そして、保持テーブル10を所定の回転速度でZ軸方向の軸心周りに360度1回転させることで、複数の集光点においてウェーハWの内部を同時に改質して、ウェーハWの内部に表面Waの外周余剰領域Wa2から切削ブレード613の切り込み深さに至る円環状の改質領域Mを形成してもよい。
【0024】
(1-2)レーザ加工ステップの別例
以下に、レーザ加工ステップの別例について説明する。
エッジアライメントが、先に説明した(1-1)レーザ加工ステップの一例と同様に行われ、外周余剰領域Wa2で且つ後述するトリミングステップで図8に示す切削ブレード613を切り込ませる位置Y2よりもウェーハWの内側の所定位置Y1が集光器111の直下に位置するように、図3に示す保持テーブル10が位置付けられる。
【0025】
例えば、図3に示す集光レンズ111aの上方や下方に別途のレンズをさらに配設したり、図3に示す集光レンズ111aを例えば球面収差を有する集光レンズとしたりすることで、パルスレーザビームの集光点をウェーハWの厚み方向に延在するように位置付け可能とする。
そして、ウェーハWの厚み方向に集光点を線状に延在させた状態でレーザビーム発振器119からウェーハWに対して透過性を有する波長のレーザビームを所定の繰り返し周波数でパルス発振させ、レーザビームをウェーハWの内部に集光し照射する。
なお、光軸方向に収差が生じた状態でウェーハWにレーザビームを照射できればよく、よって、所定の拡がり角を持っているパルスレーザビームをレーザビーム発振器119から発振し、集光レンズ111aで集光するようにしてもよい。
【0026】
レーザビームの照射によって、ウェーハWの内部には、図7に示すウェーハWの厚み方向(Z軸方向)に伸長した細孔Mcまたは図示しないクラックと、細孔Mc又はクラックを囲繞しウェーハWの厚み方向に伸長した変質領域Mdが形成される。即ち、ウェーハWの表面Waから切削ブレード613の切り込み深さに至り細孔Mc又はクラックと変質領域Mdとからなる改質領域Mg(所謂、シールドトンネル)がウェーハWに形成されていく。
そして、レーザビームをウェーハWの外周縁に沿って照射しつつ、保持テーブル10を所定の回転速度でZ軸方向の軸心周りに360度回転させることで、図7に示すようにウェーハWの内部に該改質領域Mgが環状に形成される。本例においては互いに隣接する変質領域Md同士が一部重なるように形成されているが、変質領域Mdは重ならなくてもよく、変質領域Md間にクラックが形成される条件で加工してもよい。
なお、図7に示すウェーハWの外周余剰領域Wa2における二点鎖線よりも外側の領域は、切削ブレード613でトリミングされる領域となる。
【0027】
(2)トリミングステップ
以下に、図5、8に示す改質領域Mが形成されたウェーハWについてのトリミングステップについて説明する。なお、ウェーハWが図7に示す改質領域Mgが形成されたウェーハWであっても、トリミングステップは以下に説明する手順と同様に実施される。
改質領域Mが形成されたウェーハWは、図8に示す切削装置6の保持テーブル65に搬送され、表面Waを上側に向けて保持テーブル65の保持面65a上で吸引保持される。保持テーブル65は、Z軸方向の軸心周りに回転可能であると共に、X軸方向に往復移動可能となっている。
切削装置6が備えるウェーハWをトリミングする切削手段61は、軸方向がY軸方向であるスピンドル610と、スピンドル610を回転させる図示しないモータと、スピンドル610の先端に装着された切削ブレード613とを備えており、モータがスピンドル610を回転駆動することに伴い切削ブレード613が回転する。
切削ブレード613は、ダイシングを行う通常の切削ブレードよりも刃厚の厚い(例えば、刃厚1mm)エッジトリミング用の切削ブレードである。
【0028】
トリミングステップにおいては、例えば、図示しないアライメント手段によって、保持テーブル65上におけるウェーハWの中心の座標位置や外周縁の座標位置の情報が認識される(エッジアライメントされる)。そして、該情報に基づいて切削手段61がY軸方向に移動され、外周余剰領域Wa2中の外周縁から所定距離だけ径方向内側の位置Y2に切削ブレード613を位置付ける。即ち、例えば、切削ブレード613の下端面の約2/3が、ウェーハWの面取り部Wdを含むウェーハWの外周余剰領域Wa2に接触するように切削ブレード613が位置付けられる。
【0029】
次いで、図示しないモータがスピンドル610を+Y方向側から見て反時計回り方向に高速回転させることで、スピンドル610に固定された切削ブレード613を同方向に高速回転させる。さらに、切削ブレード613の最下端がウェーハWの表面Waから仕上げ厚みL1に至る深さとなる高さ位置Z3(高さ位置Z2よりも僅かに下方の高さ位置)に位置付くように、切削手段61が-Z方向に送られる。なお、切削ブレード613の最下端が、高さ位置Z2に至るまで切削手段61を下降させてもよい。
【0030】
そして、回転する切削ブレード613をウェーハWの表面Waから面取り部Wdに仕上げ厚みL1に至る深さまで切り込ませた後、切削ブレード613を高速回転させ続けた状態で、保持テーブル65を+Z方向側から見て反時計回り方向に360度回転させることで、ウェーハWの外周縁に沿って切削(ダウンカットトリミング)が行われ、ウェーハWの全周の面取り部Wdが除去される。
【0031】
切削ブレード613による面取り部WdのトリミングでウェーハWの外周縁に発生したクラックは、表面Waの外周余剰領域Wa2から切削ブレード613の切り込み深さに至る円環状の改質領域Mによってせき止められるため、デバイスDが損傷してしまうことが防がれる。
【0032】
(3)研削ステップ
次いで、ウェーハWは、図示しないテープマウンタにおいて転動するローラ等により、ウェーハWと略同径の図9に示す表面保護テープTが表面Waに貼着され、表面Waが保護された状態になる。
【0033】
表面保護テープTが貼着されたウェーハWは、図9に示す研削装置7のチャックテーブル75に搬送され、裏面Wbを上側に向けてチャックテーブル75の保持面75a上で吸引保持される。
図9に示す研削装置7のウェーハWを研削する研削手段71は、軸方向がZ軸方向である回転軸710と、回転軸710の下端に接続された円板状のマウント713と、マウント713の下面に着脱可能に接続された研削ホイール714とを備える。研削ホイール714は、ホイール基台714bと、ホイール基台714bの底面に環状に配設された略直方体形状の複数の研削砥石714aとを備える。
【0034】
まず、チャックテーブル75が+Y方向へ移動して、研削砥石714aの回転中心がウェーハWの回転中心に対して所定距離だけ水平方向にずれ、研削砥石714aの回転軌跡がウェーハWの回転中心を通るように、チャックテーブル75が位置付けられる。次いで、回転軸710が回転するのに伴って、研削ホイール714がZ軸方向の軸心周りに回転する。また、研削手段71が-Z方向へと送られ、研削砥石714aがウェーハWの裏面Wbに当接することで研削加工が行われる。研削中は、チャックテーブル75が回転するのに伴ってウェーハWも回転するので、研削砥石714aがウェーハWの裏面Wbの全面の研削加工を行う。また、研削砥石714aとウェーハWの裏面Wbとの接触箇所に対して研削水が供給され、研削水による接触箇所の冷却及び研削屑の洗浄除去が行われる。
そして、ウェーハWを仕上げ厚みL1になるまで研削した後、研削手段71を+Z方向へと移動させてウェーハWから離間させる。なお、改質領域Mが研削後のウェーハWに残っていても、改質領域Mが形成されている位置は外周余剰領域Wa2であるため問題は生じない。
【0035】
(実施形態2)
以下に、本発明に係るウェーハの加工方法(以下、実施形態2のウェーハの加工方法とする。)の各ステップについて説明する。
【0036】
(1)レーザ加工ステップ
図10、11に示すウェーハWは、実施形態1において説明したウェーハと同様のものである。図10、11に示すように、ウェーハWは実施形態2のウェーハの加工方法の各ステップにおいて搬送・保持しやすいようにキャリアプレートWP上に樹脂等の接着部材J(図10には不図示)で固定された状態、即ち、貼り合わせウェーハWTとなっている。ウェーハWとキャリアプレートWPとの中心は略合致した状態になっている。
【0037】
図10、11に示すキャリアプレートWPは、例えば、シリコンを母材とし高剛性で平坦な円形状の外形を備えている。図示の例においては、円形のキャリアプレートWPは、ウェーハWと略同径の直径を備えているが、ウェーハWよりも大径となっていてもよいし、また、サファイアやガラス等を母材とするものであってもよい。
図10において下方を向いているウェーハWの表面WaとキャリアプレートWPの上方を向いている表面WPaとを接着している接着部材Jの構成材料は、例えば、紫外線が照射されると硬化するUV硬化型の樹脂又は加熱されると硬化する加熱硬化型の樹脂が用いられている。
【0038】
貼り合わせウェーハWTは、例えば、実施形態1において説明した図12に示すレーザ加工装置1に搬送される。そして、ウェーハWの裏面Wbを上側に向けて保持テーブル10の保持面10a上に貼り合わせウェーハWTが載置され、保持テーブル10によって吸引保持される。保持テーブル10の回転中心と貼り合わせウェーハWTの中心とは略合致した状態になっている。
【0039】
アライメント手段14によるエッジアライメントが行われ、保持テーブル10上におけるウェーハWの正確な中心座標等が求められる。そして、ウェーハWの該中心座標の情報及び予め認識されているウェーハWのサイズの情報を基にして、保持テーブル10が水平方向に移動されて、外周余剰領域Wa2で且つ後述するトリミングステップで図13に示す切削ブレード613を切り込ませる位置Y5よりもウェーハWの内側の所定位置Y4が集光器111の直下に位置するように、保持テーブル10が所定位置に位置付けられる。
【0040】
次いで、集光レンズ111aによって集光されるレーザビームの集光点位置を、例えば、図12に示すウェーハWの仕上げ厚みL4に至る深さとなる高さ位置Z4よりも少しだけ下方の高さ位置に位置付ける。仕上げ厚みL4は、デバイスDの上面の高さ位置Z5から高さ位置Z4までの厚みである。そして、レーザビーム発振器119からウェーハW内部に対して透過性を有する波長のレーザビームを所定の繰り返し周波数でパルス発振させ、レーザビームをウェーハWの内部に集光し照射する。
なお、集光点位置の設定は上記例に限定されるものではない。
【0041】
図13に示すように、集光点位置から上下方向(主に上方)に向かって改質層Maが伸びるように形成される。また、改質層Maから上下方向に微細なクラックCが同時に形成されていく。レーザビームをウェーハWの外周縁に沿って照射しつつ、保持テーブル10を所定の回転速度でZ軸方向の軸心周りに360度回転させることで、ウェーハWの内部に複数の改質層Maと改質層Maから上下方向に延びるクラックCとがウェーハWの外周縁に沿って環状に形成される。該改質層Maと該クラックCとからなる環状の改質領域Mを一段目の改質領域Mとする。
【0042】
さらに、保持テーブル10を所定の回転速度でZ軸方向の軸心周りに360度回転させる毎に、ウェーハWの厚み方向(Z軸方向)で集光点位置を上側に所定間隔ずらしつつ、レーザビームを複数パスウェーハWに照射することで、図13に示す2段目の改質層MaとクラックCとからなる環状の改質領域M、3段目の改質層MaとクラックCとからなる環状の改質領域M、及び、4段目の改質層MaとクラックCとからなる環状の改質領域Mとを形成する。その結果、4段の改質層MaとクラックCとからなる環状の改質領域Mによって、ウェーハWの外周縁に沿って裏面Wbから表面Waに至る環状の改質領域Mが形成される。なお、裏面Wbから表面Waに至る環状の改質領域Mは、クラックCではなく各段の改質層Maが繋がっていてもよいし、改質層MaがウェーハWの表面Wa又は裏面Wbに露出していてもよい。また、ウェーハWの裏面Wb側から下方に向かって一段ずつ改質層Ma及びクラックCを形成していって、裏面Wbから表面Waに至る環状の改質領域Mを形成してもよい。
【0043】
レーザ加工ステップは、上記の例に限定されるものではない。例えば、図12に示すレーザビーム発振器119から発振されたレーザビームを分岐させて複数の光路のレーザビームとし、各光路のレーザビームの集光点をウェーハWの厚み方向の異なる位置に位置付ける。そして、保持テーブル10を所定の回転速度でZ軸方向の軸心周りに360度1回転させることで、複数の集光点においてウェーハWの内部を同時に改質して、ウェーハWの内部に裏面Wbから表面Waに至る環状の改質領域Mを形成してもよい。
または、実施形態1における(1-2)レーザ加工ステップの別例において説明した細孔Mc又はクラックと変質領域Mdとからなるシールドトンネルと呼ばれる環状の改質領域Mgを、ウェーハWの内部に裏面Wbから表面Waに至るように形成してもよい。
【0044】
(2)トリミングステップ
ウェーハWに改質領域Mが形成された貼り合わせウェーハWTは、図15に示す切削装置6の保持テーブル65に搬送され、ウェーハWの裏面Wbを上側に向けて保持テーブル65の保持面65a上で吸引保持される。トリミングステップにおいては、例えば、図示しないアライメント手段によって、保持テーブル65上におけるウェーハWの中心の座標位置及び外周縁の座標位置の情報が認識される。そして、該情報に基づいて切削手段61がY軸方向に移動され、外周余剰領域Wa2中のウェーハWの外周縁から所定距離だけ径方向内側の位置Y5に切削ブレード613が位置付けられる。即ち、例えば、切削ブレード613の端面の約2/3が、ウェーハWの面取り部Wdを含むウェーハWの裏面Wbに接触するように切削ブレード613が位置付けられる。
【0045】
次いで、切削ブレード613が例えば+Y方向側から見て時計回り方向に回転される。さらに、切削ブレード613の最下端がウェーハWの裏面Wbから仕上げ厚みL4に至る深さとなる高さ位置(外周余剰領域Wa2の高さ位置よりも僅かに下方の位置)に位置付くように、切削手段61が-Z方向に送られる。そして、回転する切削ブレード613をウェーハWの裏面Wbから面取り部Wdに仕上げ厚みL4に至る深さまで切り込ませた後、切削ブレード613を高速回転させ続けた状態で、保持テーブル65を+Z方向側から見て反時計回り方向に360度回転させることで、ウェーハWの外周縁に沿って切削(アップカットトリミング)が行われ、ウェーハWの全周の面取り部Wdが除去される。アップカットによるトリミングとする理由は、ダウンカットによるトリミングでは、発生した切削屑がキャリアプレートWPに飛び散り、キャリアプレートWPを傷付けるおそれがあるためである。
【0046】
切削ブレード613による面取り部WdのトリミングでウェーハWの外周縁に発生したクラックは、ウェーハWの裏面WbからウェーハWの表面Waに至る環状の改質領域Mによってせき止められるため、デバイスDが損傷してしまうことが防がれる。
【0047】
(3)研削ステップ
エッジトリミングが施された貼り合わせウェーハWTは、図16に示す研削装置7のチャックテーブル75に搬送され、裏面Wbを上側に向けてチャックテーブル75の保持面75a上で吸引保持される。
【0048】
チャックテーブル75が+Y方向へ移動して、研削砥石714aの回転軌跡がウェーハWの回転中心を通るように、チャックテーブル75が位置付けられる。次いで、研削ホイール714がZ軸方向の軸心周りに回転する。また、研削手段71が-Z方向へと送られ、研削砥石714aがウェーハWの裏面Wbに当接することで研削加工が行われる。研削中は、チャックテーブル75が回転して貼り合わせウェーハWTも回転するので、研削砥石714aがウェーハWの裏面Wbの全面の研削加工を行う。また、研削砥石714aとウェーハWの裏面Wbとの接触箇所に対して研削水が供給され、冷却及び研削屑の洗浄除去が行われる。
そして、ウェーハWを仕上げ厚みL4になるまで研削した後、研削手段71を+Z方向へと移動させてウェーハWから離間させる。なお、改質領域Mが研削後のウェーハWに残っていても、改質領域Mが形成されている位置は外周余剰領域Wa2であるため問題は生じない。
【0049】
本発明に係るウェーハの加工方法は上述の実施形態1、2に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。また、添付図面に図示されているレーザ加工装置1、切削装置6、及び研削装置7の各構成についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0050】
W:ウェーハ Wa:ウェーハの表面 Wa1:デバイス領域 Wa2:外周余剰領域
Wb:ウェーハの裏面 Wd:面取り部
1:レーザ加工装置 10:保持テーブル 10a:保持面
11:レーザビーム照射手段 111:集光器 111a:集光レンズ 119:レーザビーム発振器 14:アライメント手段 140:カメラ
M:改質領域 Ma:改質層 C:クラック
Mg:改質領域 Mc:細孔 Md:変質領域
6:切削装置 65:保持テーブル 65a:保持面
61:切削手段 610:スピンドル 613:切削ブレード
T:表面保護テープ
7:研削装置 75:チャックテーブル 75a:保持面
71:研削手段 710:回転軸 713:マウント 714:研削ホイール
WP:キャリアプレート J:接着部材 WT:貼り合わせウェーハ
図1
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