(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】矩形基板の研削方法
(51)【国際特許分類】
B24B 7/04 20060101AFI20221214BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20221214BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B24B7/04 A
B24B41/06 L
H01L21/304 622G
H01L21/304 631
(21)【出願番号】P 2018188112
(22)【出願日】2018-10-03
【審査請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】山下 真司
(72)【発明者】
【氏名】宮本 弘樹
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-060470(JP,A)
【文献】特開2007-290078(JP,A)
【文献】特開2016-150421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 7/04
B24B 41/06
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形基板の裏面を所望の仕上げ厚さまで研削する矩形基板の研削方法であって、
研削ユニットのモータにより回転駆動するスピンドルに装着された研削砥石によって、チャックテーブルの該矩形基板と同形状の矩形の保持面を研削し、該研削砥石の研削面積の変化によって該チャックテーブルの保持面を湾曲面に形成する保持面研削ステップと、
該保持面研削ステップにて研削された該チャックテーブルの保持面に該矩形基板の表面を保持する保持ステップと、
該研削ユニットに装着された研削砥石によって該チャックテーブルの保持面に保持された該矩形基板の裏面を湾曲面の状態で研削する矩形基板研削ステップと、を備え、
該矩形基板を研削する際に発生する研削面積差異に起因する該裏面の湾曲を、該保持面研削ステップにおいて該矩形基板と同形状の矩形の該保持面を備えたチャックテーブルの該保持面に予め同様に形成することにより、研削後の該矩形基板の厚さ精度を向上させることを特徴とする矩形基板の研削方法。
【請求項2】
前記チャックテーブルの保持面は前記矩形基板と同材質であることを特徴とする請求項1記載の矩形基板の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矩形基板の研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、LSI等の回路が形成された複数の半導体チップがプリント基板等にマウントされて、半導体チップの電極が基板の電極にボンディング接続された後、樹脂によって表面又は裏面が封止されることでCSP(Chip Size Package)基板等のパッケージ基板が形成される。
【0003】
近年の電子機器の小型化・薄型化に伴って、半導体デバイスも小型化・薄型化が切望されており、半導体デバイスの製造プロセスにおいて、半導体チップが樹脂封止されたパッケージ基板の樹脂封止面を研削して薄化し製造される。このようなパッケージ基板は矩形(正方形及び長方形)に形成されることもあり、矩形基板の研削では、チャックテーブルに吸引保持された矩形基板の上面に対し、回転する研削砥石を接触させる。そして、矩形基板が所望の厚さになるまで研削砥石による研削が継続される。
【0004】
研削対象となる矩形基板においては、研削中に接触する研削砥石の研削面積(研削砥石が矩形基板に当たっている面積)が矩形基板内で広くなったり狭くなったり大きく相違することとなる。かかる相違によって、矩形基板に対する研削負荷も変化し、矩形基板に対する研削砥石の研削面積が広くなっている状態においては研削負荷が大きくなり研削力が低下し研削後の矩形基板の厚さが他所よりも厚くなり、矩形基板に対する研削砥石の研削面積が狭くなっている状態においては研削負荷が小さくなり研削力が上昇し研削後の矩形基板の厚さが他所よりも薄くなる。
このように矩形基板内で研削力に変化が生じるため、研削後の矩形基板の厚さばらつきが大きく発生するという問題がある。特に、長方形の基板は、短辺、長辺、対角線の長さの差がより大きくなるため、長方形基板内で研削力に変化がより大きく生じるため、研削後の長方形基板の厚さばらつきがより大きく発生するという問題がある。
【0005】
この問題に対処すべく、研削砥石に対して研削面積の大きくなる矩形基板の対角線方向に研削砥石が近づくとともにチャックテーブルの回転速度を高速化し、研削砥石が矩形基板の対角線方向から離れるとともに保持テーブルの回転速度を低速化させ、単位時間当たりの研削面積を同一化させることで、厚さばらつきを抑制する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の技術では、研削装置がチャックテーブルの回転や研削砥石の回転等について複雑な制御を行う必要があるため問題となる。
よって、矩形基板を研削する場合においては、研削装置がチャックテーブルの回転等についての複雑な制御を行わずとも、研削後の矩形基板の厚さばらつきを小さく抑えるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、矩形基板の裏面を所望の仕上げ厚さまで研削する矩形基板の研削方法であって、研削ユニットのモータにより回転駆動するスピンドルに装着された研削砥石によって、チャックテーブルの該矩形基板と同形状の矩形の保持面を研削し、該研削砥石の研削面積の変化によって該チャックテーブルの保持面を湾曲面に形成する保持面研削ステップと、該保持面研削ステップにて研削された該チャックテーブルの保持面に該矩形基板の表面を保持する保持ステップと、該研削ユニットに装着された研削砥石によって該チャックテーブルの保持面に保持された該矩形基板の裏面を湾曲面の状態で研削する矩形基板研削ステップと、を備え、該矩形基板を研削する際に発生する研削面積差異に起因する該裏面の湾曲を、該保持面研削ステップにおいて該矩形基板と同形状の矩形の該保持面を備えたチャックテーブルの該保持面に予め同様に形成することにより、研削後の該矩形基板の厚さ精度を向上させることを特徴とする矩形基板の研削方法である。
【0009】
前記チャックテーブルの保持面は前記矩形基板と同材質であると好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る矩形基板の研削方法は、研削ユニットのモータにより回転駆動するスピンドルに装着された研削砥石によって、チャックテーブルの矩形基板と同形状の矩形の保持面を研削し(セルフグラインドし)、矩形の辺または対角線の長さが異なることに起因する研削砥石の研削面積の変化によってチャックテーブルの保持面を湾曲面に形成する保持面研削ステップと、保持面研削ステップにて研削されたチャックテーブルの保持面に矩形基板の表面を保持する保持ステップと、研削ユニットに装着された研削砥石によってチャックテーブルの保持面に保持された矩形基板の裏面を湾曲面の状態で研削する矩形基板研削ステップと、を備えているため、矩形基板を研削する際に発生する研削面積差異に起因する矩形基板の裏面の湾曲を、保持面研削ステップにおいて矩形基板と同形状の矩形の保持面を備えたチャックテーブルの保持面に予め同様に形成することにより、研削後の矩形基板の厚さ精度を向上させることが可能となる。
【0011】
チャックテーブルの保持面を矩形基板と同材質とすることで、矩形基板研削ステップにおいて、矩形基板を研削する際の研削加工条件を保持面研削ステップにおける研削加工条件と同様に設定できるため、より矩形基板研削ステップをスムーズかつ容易に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1(A)は、チャックテーブルの一例を示す平面図である。
図1(B)は、チャックテーブルの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2(A)は、保持面研削ステップを説明するための凸部の短手方向からチャックテーブル及び研削ユニットを見た側面図である。
図2(B)は、保持面研削ステップを説明するための凸部の長手方向からチャックテーブル及び研削ユニットを見た側面図である。
【
図3】
図3(A)は、保持面研削ステップ実施後のチャックテーブルの凸部を短手方向から見た側面図である。
図3(B)は、保持面研削ステップ実施後のチャックテーブルの凸部を長手方向から見た側面図である。
【
図4】
図4(A)は、矩形基板研削ステップを説明するための凸部の短手方向から矩形基板を保持したチャックテーブル及び研削ユニットを見た側面図である。
図4(B)は、矩形基板研削ステップを説明するための凸部の長手方向から矩形基板を保持したチャックテーブル及び研削ユニットを見た側面図である。
【
図5】従来の矩形基板の研削方法における問題点を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る矩形基板の研削方法の各ステップについて説明する。
(1)保持面研削ステップ
図1(A)、(B)に示すチャックテーブル3は、例えば、その外形が円形板状であり樹脂又は合金等からなる基部30を備えており、基部30の上面に平面視矩形状の凸部31及び凸部32が突設されている。なお、矩形状とは、正方形状及び長方形状を含む。本実施形態においては、凸部31と凸部32とが基部30の上面に凸部31及び凸部32の短手方向(X軸方向)に所定間隔を空けて2つ配設されているが、例えば、矩形状の凸部が基部30の上面に4つ若しくは6つ水平面(X軸Y軸平面)方向に等間隔空けて、又は1つ配設されていてもよい。
例えば、凸部31(32)の短手方向長さは69mmであり、長手方向長さは232mmとなっている。
【0014】
例えば、凸部31(32)は樹脂又は合金等の材料からなり、厚さ方向に複数の吸引溝や複数の吸引孔が貫通形成され、該吸引溝や吸引孔は基部30内に形成された流路を介して図示しない吸引源に連通している。そして、吸引源が吸引することで生み出された吸引力が、吸引溝や吸引孔を介しての凸部31(32)の上面である保持面31a(32a)に伝達されることで、チャックテーブル3は保持面31a(32a)上で矩形基板Wを吸引保持する。
図1(A)、(B)においては、チャックテーブル3の保持面31a及び保持面32aは研削される前の状態であり、略平坦面となっている。
【0015】
凸部31(32)の構成は上記例に限定されるものではない。凸部31(32)は、例えば、ポーラス部材等からなり矩形基板Wを吸着保持する矩形板状の吸着部と、吸着部がはめ込まれた状態で吸着部を囲繞して支持する枠体とを備えていてもよい。吸着部は基部30内に形成された流路を介して図示しない吸引源に連通し、吸引源が吸引することで生み出された吸引力が、吸着部の露出面(凸部31(32)の上面)である矩形状の保持面31a(32a)に伝達されることで、チャックテーブル3は2つの保持面31a及び保持面32a上でそれぞれ矩形基板Wを吸引保持する。
【0016】
図1(A)、(B)に示す矩形基板Wは、本実施形態においては、凸部31(32)の保持面31a(32a)と同材質の樹脂又は合金からなる基板である。矩形基板Wは、例えば、IC、LSI等の集積回路が形成されたチップが樹脂によってパッケージングされたCSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat NON-Leaded Package)等の矩形基板や、ガラスやサファイアなどの硬質脆性材の基板であってもよい。
【0017】
図2(A)、(B)に示すように、本発明に係る矩形基板の研削方法においては、まず、チャックテーブル3の平坦な保持面31a及び保持面32aを研削ユニット2の研削砥石24aで研削する。
研削ユニット2は、軸方向がZ軸方向であるスピンドル21と、スピンドル21を回転駆動するモータ22と、スピンドル21の下端側に連結されたマウント23と、マウント23の下面に着脱可能に装着された研削ホイール24とを備える。研削ユニット2は、図示しない研削送り手段によってZ軸方向に往復移動可能となっている。
【0018】
研削ホイール24は、円環状のホイール基台24bと、ホイール基台24bの下面に環状に複数配設された略直方体形状の研削砥石24aとを備えている。研削砥石24aは、例えば、適宜のバインダーでダイヤモンド砥粒等が固着されて成形されている。
研削ホイール24の直径は、例えば、チャックテーブル3の基部30の半径よりも大きく、基部30の直径よりも小さく設定されている。
【0019】
例えば、スピンドル21の内部には、研削水供給源に連通し研削水の通り道となる図示しない流路が、スピンドル21の軸方向に貫通して形成されており、流路は研削ホイール24の底面において研削砥石24aに向かって研削水を噴出できるように開口している。
図2(A)、(B)において、チャックテーブル3は研削ユニット2に対して相対的にY軸方向に往復移動可能であると共に、チャックテーブル3の中心を通るZ軸方向の軸心周りに回転可能となっている。
【0020】
保持面研削ステップでは、チャックテーブル3が、研削ユニット2の下までY軸方向へ移動して、研削ユニット2に備える研削ホイール24と凸部31の保持面31a及び凸部32の保持面32aとの位置合わせがなされる。位置合わせは、例えば、
図2(A)、(B)に示すように、研削ホイール24の回転中心がチャックテーブル3の回転中心に対して所定の距離だけ水平方向にずれ、研削砥石24aの回転軌道がチャックテーブル3の回転中心を通るように行われる。
【0021】
ここで、
図1(A)、(B)においては、上記のように研削ユニット2に備える研削ホイール24と凸部31の保持面31a及び凸部32の保持面32aとの位置合わせがなされた場合に、保持面31a及び保持面32aの4辺または2つの対角線の長さが異なることに起因する回転する研削砥石24aの研削面積(研削砥石24aが保持面31a(32a)に当たっている面積)の変化によって、チャックテーブル3の研削される前の略平坦な保持面31a及び保持面32aが研削砥石24aによってどの程度研削されやすいかを、色の濃淡で示している。
【0022】
図1(A)、(B)において、凸部31(32)の保持面31a(32a)中で色が相対的に濃い箇所は、研削中に保持面31a(32a)に対する研削砥石24aの研削面積が広くなり研削負荷が増加することで研削砥石24aの研削力が低下するため、研削されにくい箇所を示している。
図1(A)、(B)において、凸部31(32)の保持面31a(32a)中で色が相対的に薄い箇所は、研削中に保持面31a(32a)に対する研削砥石24aの研削面積が狭くなり研削負荷が減少することで研削砥石24aの研削力が高まるため、研削されやすい箇所を示している。
【0023】
図2(A)、(B)に示すように、モータ22によりスピンドル21が回転駆動されるのに伴って、研削ホイール24がZ軸方向の軸心周りに回転する。また、研削ユニット2が-Z方向へと降下していき、研削砥石24aが凸部31(32)の保持面31a(32a)に当接することで研削加工が行われる。研削中は、チャックテーブル3もZ軸方向の軸心周りに回転するため、研削砥石24aが凸部31(32)の保持面31a(32a)の全面の研削加工を行う。
例えば、研削加工中は、研削水をスピンドル21中の流路を通して研削砥石24aと凸部31(32)の保持面31a(32a)との接触部位に対して供給して、接触部位を冷却・洗浄する。
【0024】
所定時間上記研削加工を実施することで、
図3(A)、(B)に示すように、チャックテーブル3の保持面31a及び保持面32aの4辺または2つの対角線の長さが異なることに起因する回転する研削砥石24aの研削面積の変化によって、保持面31a及び保持面32aが湾曲面に研削される。以後、湾曲面となった保持面31aを保持面311aとし、湾曲面となった保持面32aを保持面322aとする。
そして、研削ユニット2が上昇し、研削砥石24aが保持面311a及び保持面322aから離間して、保持面研削ステップが終了する。
【0025】
図3(A)、(B)に示す湾曲面である保持面311a及び保持面322aの湾曲の仕方は、
図1(A)、(B)に示す保持面31a及び保持面32aの研削砥石24aによる研削のされやすさ(されにくさ)によって定まっている。
【0026】
(2)保持ステップ
次に、保持面研削ステップにて研削されたチャックテーブル3の保持面311a及び保持面322aに2枚の矩形基板Wの表面Waをそれぞれ保持する。即ち、
図4(A)、(B)に示すように、短手方向及び長手方向を合わせて、かつ、矩形基板Wの中心と凸部31(32)の保持面311a(322a)の中心とが略合致するようにして、矩形基板Wが保持面311a(322a)に載置される。そして、図示しない吸引源により生み出される吸引力が、保持面311a(322a)に伝達されることにより、チャックテーブル3が保持面311a(322a)で矩形基板Wを吸引保持する。
吸引保持された矩形基板Wは、全体的に湾曲面となっている保持面311a(322a)にならってその裏面Wbが湾曲面となる。
【0027】
(3)矩形基板研削ステップ
次に、研削ユニット2に装着された研削砥石24aによってチャックテーブル3の保持面311a(322a)に保持された2枚の矩形基板Wの裏面Wbを湾曲面の状態で研削する。
矩形基板研削ステップでは、チャックテーブル3が、研削ユニット2の下までY軸方向へ移動して、研削ユニット2に備える研削ホイール24と2枚の矩形基板Wとの位置合わせがなされる。位置合わせは、例えば、
図4(A)、(B)に示すように、研削ホイール24の回転中心がチャックテーブル3の回転中心に対して所定の距離だけ水平方向にずれ、研削砥石24aの回転軌道がチャックテーブル3の回転中心を通るように行われる。
【0028】
そして、
図4(A)、(B)に示すように、モータ22によりスピンドル21が回転駆動されるのに伴って、研削ホイール24がZ軸方向の軸心周りに回転する。また、研削ユニット2が-Z方向へと降下していき、研削砥石24aが各矩形基板Wの裏面Wbに当接することで研削加工が行われる。研削中は、チャックテーブル3もZ軸方向の軸心周りに回転するため、研削砥石24aが各矩形基板Wの湾曲した状態の裏面Wbの全面の研削加工を行う。
例えば、研削加工中は、研削水をスピンドル21中の流路を通して研削砥石24aと各矩形基板Wの湾曲した状態の裏面Wbとの接触部位に対して供給して、接触部位を冷却・洗浄する。
【0029】
本実施形態においては矩形基板Wが、凸部31(32)の保持面311a(322a)と同材質の樹脂又は合金からなる基板であるため、矩形基板研削ステップでは、先に実施した保持面研削ステップにおける研削加工条件(研削ユニット2の-Z方向への研削送り速度、研削ホイール24の回転速度、及びチャックテーブル3の回転速度等)をそのまま適用できる。
一方、矩形基板Wが、凸部31(32)の保持面311a(322a)と異なる材質からなる基板である場合には、矩形基板研削ステップでは、先に実施した保持面研削ステップにおける研削加工条件(研削ユニット2の-Z方向への研削送り速度、研削ホイール24の回転速度、及びチャックテーブル3の回転速度等)を適宜変更する。
【0030】
ここで、例えば、従来の矩形基板の研削方法のように、
図5に示す研削されていないチャックテーブル3の保持面31a(32a)で矩形基板Wを吸引保持して矩形基板Wの裏面Wbの研削を行う場合の問題点について説明する。
図5においては、研削ホイール24の回転中心が2枚の矩形基板Wを保持したチャックテーブル3の回転中心に対して所定の距離だけ水平方向にずれ、研削砥石24aの回転軌道がチャックテーブル3の回転中心を通るように位置付けがされている。この状態で、研削ユニット2が-Z方向へと降下していき、回転する研削砥石24aが各矩形基板Wの裏面Wbに当接することで研削加工が行われる。研削中は、チャックテーブル3もZ軸方向の軸心周りに回転するため、研削砥石24aが各矩形基板Wの湾曲した状態の裏面Wbの全面の研削加工を行う。
【0031】
図5においては、矩形基板Wの4辺または2つの対角線の長さが異なることに起因する回転する研削砥石24aの研削面積(研削砥石24aが矩形基板Wに当たっている面積)の変化によって、矩形基板が研削砥石24aによってどの程度研削されやすいかを色の濃淡で示している。
【0032】
図5において、平坦な保持面31a(32a)で保持された矩形基板Wの裏面Wbで色が相対的に濃い箇所は、研削砥石24aの研削面積が広くなり研削負荷が増加することで研削砥石24aの研削力が低下するため、研削されにくい箇所を示している。
図5において、平坦な保持面31a(32a)中で色が相対的に薄い箇所は、保持面31a(32a)に対する研削砥石24aの研削面積が狭くなり研削負荷が減少することで研削砥石24aの研削力が高まるため、研削されやすい箇所を示している。
したがって、従来の矩形基板の研削方法では、研削後の矩形基板Wは、裏面Wbの色の濃い箇所は厚くなり、裏面Wbの色の薄い箇所は薄くなり研削厚さの均一性が落ちる、即ち、研削後の矩形基板Wに研削砥石24aの研削面積差異に起因した裏面Wbの湾曲が存在するという問題が生じ得る。
【0033】
一方、本発明に係る矩形基板の研削方法においては、研削ユニット2のモータ22により回転駆動するスピンドル21に装着された研削砥石24aによって、チャックテーブル3の矩形基板Wと同形状の矩形の保持面31a(32a)を研削し、矩形の保持面31a(32a)の辺または対角線の長さが異なることに起因する研削砥石24aの研削面積の変化によってチャックテーブル3の保持面31a(32a)を湾曲面311a(322a)に形成する保持面研削ステップと、保持面研削ステップにて研削されたチャックテーブル3の保持面311a(322a)に矩形基板Wの表面Waを保持する保持ステップと、研削ユニット2に装着された研削砥石24aによってチャックテーブル3の保持面311a(322a)に保持された矩形基板Wの裏面Wbを湾曲面の状態で研削する矩形基板研削ステップと、を備え、矩形基板Wを研削する際に発生する研削面積差異に起因する裏面Wbの湾曲を、保持面研削ステップにおいて矩形基板Wと同形状の矩形の保持面31a(32a)を備えたチャックテーブル3の保持面31a(32a)に予め同様に形成することにより、研削後の矩形基板Wの厚さ精度を向上させることが可能となる。
【0034】
即ち、矩形基板研削ステップにおいて、従来はより研削されにくかった矩形基板Wの裏面Wb中のある領域が、研削砥石24aの研削面に対して他の領域よりも相対的に上方に上げられた状態で、かつ、従来はより研削されやすかった矩形基板Wの裏面Wb中のある領域が、研削砥石24aの研削面に対して他の領域よりも相対的に下方に下げられた状態で、研削を行っていくことができる。したがって、矩形基板Wの裏面Wb中のより研削されにくかった領域は、従来のようにチャックテーブル3の平坦な保持面31a(32a)で矩形基板Wを吸引保持して研削する場合よりも、本発明に係る研削方法における場合の方が研削砥石24aで局所的に研削されやすくなる。また、矩形基板Wの裏面Wb中のより研削されやすかった領域は、従来のようにチャックテーブル3の平坦な保持面31a(32a)で矩形基板Wを吸引保持して研削する場合よりも、本発明に係る研削方法における場合の方が研削砥石24aで局所的に研削されにくくなる。その結果、
図4(A)、(B)に示す矩形基板Wの裏面Wb全面に均一な研削加工が施されていく。
【0035】
矩形基板Wの裏面Wbが矩形基板Wが所望の仕上げ厚さになるまで研削された後、研削ユニット2が上昇し、研削砥石24aが2枚の矩形基板Wから離間して、矩形基板研削ステップが終了する。さらに、チャックテーブル3による矩形基板Wの吸引保持が解除されることで、湾曲した保持面311a(322a)にならうように保持されていた矩形基板Wが、保持面311a(322a)上で裏面Wbが略平坦な状態になる。
【0036】
なお、本発明に係る矩形基板の研削方法は上記実施形態に限定されるものではなく、また、添付図面に図示されている研削ユニット2及びチャックテーブル3の構成等についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0037】
W:矩形基板 Wa:矩形基板の表面 Wb:矩形基板の裏面
3:チャックテーブル 30:基部 31、32:凸部 31a、32a:保持面
311a、322a:湾曲した保持面
2:研削ユニット 21:スピンドル 22:モータ 23:マウント 24:研削ホイール 24a:研削砥石 24b:ホイール基台