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特許7194006基板載置方法、成膜方法、成膜装置、および有機ELパネルの製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】基板載置方法、成膜方法、成膜装置、および有機ELパネルの製造システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/68 20060101AFI20221214BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20221214BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20221214BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20221214BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H01L21/68 F
H01L21/68 N
C23C14/50 F
H05B33/10
H05B33/14 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018236809
(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公開番号】P2020098871
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100158388
【弁理士】
【氏名又は名称】鱸 英俊
(72)【発明者】
【氏名】須志原 友和
(72)【発明者】
【氏名】戸江 由也
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-172930(JP,A)
【文献】特開2012-09239(JP,A)
【文献】特開2018-197363(JP,A)
【文献】国際公開第2008/082049(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/68
H01L 21/683
C23C 14/50
H05B 33/10
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の第1辺に沿って基板を支持する、上下動可能な第1基板支持部と、
前記第1辺と対向する第2辺に沿って前記基板を支持する、前記第1基板支持部とは独立して上下動可能な第2基板支持部と、
前記基板を前記第1基板支持部に向けて押圧可能な第1押圧部と、
前記基板を前記第2基板支持部に向けて押圧可能な第2押圧部と、
用いて前記基板を移動させ、前記基板をマスクの上に載置する基板載置方法であって、
前記第1基板支持部と前記第2基板支持部とで支持された前記基板を前記第1押圧部と前記第2押圧部でそれぞれ押圧した状態で、前記基板を前記マスクの上方において、前記基板の姿勢を、前記第1基板支持部と前記第2基板支持部とを同じ高さに位置させた第1の姿勢から、前記第1基板支持部よりも前記第2基板支持部が高い第2の姿勢に移行させる基板傾斜工程と、
記基板の前記第1基板支持部の側に設けられた基板のアライメントマークと、前記マスクの前記第1基板支持部の側に設けられたマスクのアライメントマークとが共に撮像装置の被写界深度に含まれる状態を形成するように、前記第2の姿勢を保った状態で前記第1基板支持部と前記第2基板支持部とを下降させる基板下降工程と、
前記基板のアライメントマークと前記マスクのアライメントマークとを前記撮像装置により撮像して前記基板と前記マスクの相対位置情報を取得し、前記基板と前記マスクの位置ずれ量を計測する計測工程と、
前記計測工程で計測した前記位置ずれ量が所定のしきい値を超える場合、前記計測工程で取得した相対位置情報に基づき、前記基板と前記マスクの位置ずれ量が減少するように前記基板を移動させるアライメント工程と、
前記計測工程で計測した前記位置ずれ量が所定のしきい値以下の場合、前記第2押圧部の押圧力を前記第1押圧部の押圧力よりも小さい押圧力に変更し、前記第2の姿勢を保った状態で前記第1基板支持部と前記第2基板支持部とを下降させ、前記第1基板支持部の側で前記基板と前記マスクとが接触した後、前記第2基板支持部を下降させ、前記基板を前記マスクに載置する載置工程と、
を備えた基板載置方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板載置方法において、前記基板傾斜工程では、前記第1基板支持部と前記第2基板支持部とにより前記第1の姿勢で前記基板を支持した状態で前記基板が撓んで前記基板の中央部が周辺部より下降する高さ以上に、前記第2の姿勢における前記第1基板支持部と前記第2基板支持部との高低差が取られる基板載置方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板載置方法において、前記撮像装置が、前記第1基板支持部の上方に配置されている基板載置方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の基板載置方法において、前記載置工程の後、前記撮像装置、あるいはさらに前記基板の周辺部の上部に配置された他の撮像装置を用いて、前記基板と前記マスクとを撮像して取得した前記基板と前記マスクの相対位置情報に基づき、前記基板と前記マスクの位置ずれ量を取得し、計測した前記位置ずれ量が所定のしきい値を超える場合、前記第1押圧部および前記第2押圧部で前記基板を押圧し、前記第2基板支持部を上昇させて前記基板の姿勢を前記第2の姿勢に変更し、前記計測工程、前記アライメント工程、および前記載置工程を実行する基板載置方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の基板載置方法において、前記第1基板支持部および/または前記第2基板支持部の、前記基板を支持する支持面が、前記第2の姿勢における前記基板の傾斜に沿う勾配を有する基板載置方法。
【請求項6】
請求項5に記載の基板載置方法において、前記第1基板支持部および/または前記第2基板支持部の、前記基板を支持する支持面の勾配が1/100以上1/10以下の範囲に取られている基板載置方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の基板載置方法において、前記第1基板支持部および/または前記第2基板支持部に対向する前記第1押圧部および/または前記第押圧部の前記基板を押圧する押圧面が、前記第1基板支持部および/または前記第2基板支持部に沿う勾配を有する基板載置方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の基板載置方法により前記基板を前記マスクに載置した後、前記基板に成膜材料を付着させる成膜工程を含む成膜方法。
【請求項9】
基板の第1辺に沿って基板を支持する、上下動可能な第1基板支持部と、前記第1辺と対向する第2辺に沿って前記基板を支持する、前記第1基板支持部とは独立して上下動可能な第2基板支持部と、前記基板を前記第1基板支持部に向けて押圧可能な第1押圧部と、前記基板を前記第2基板支持部に向けて押圧可能な第2押圧部と、マスクと、撮像装置と、成膜源と、制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1基板支持部と前記第2基板支持部とで支持された前記基板を前記第1押圧部と前記第2押圧部でそれぞれ押圧した状態で、前記基板を前記マスクの上方において、前記基板の姿勢を、前記第1基板支持部と前記第2基板支持部とを同じ高さに位置させた第1の姿勢から、前記第1基板支持部よりも前記第2基板支持部が高い第2の姿勢に移行させる基板傾斜工程と、
記基板の前記第1基板支持部の側に設けられた基板のアライメントマークと、前記マスクの前記第1基板支持部の側に設けられたマスクのアライメントマークとが共に撮像装置の被写界深度に含まれる状態を形成するように、前記第2の姿勢を保った状態で前記第1基板支持部と前記第2基板支持部とを下降させる基板下降工程と、
前記基板のアライメントマークと前記マスクアライメントマークを前記撮像装置により撮像して前記基板と前記マスクの相対位置情報を取得し、前記基板と前記マスクの位置ずれ量を計測する計測工程と、
前記計測工程で計測した前記位置ずれ量が所定のしきい値を超える場合、前記計測工程で取得した相対位置情報に基づき、前記基板と前記マスクの位置ずれ量が減少するように前記基板を移動させるアライメント工程と、
前記計測工程で計測した前記位置ずれ量が所定のしきい値以下の場合、前記第2押圧部の押圧力を前記第1押圧部の押圧力よりも小さい押圧力に変更し、前記第2の姿勢を保った状態で前記第1基板支持部と前記第2基板支持部とを下降させ、前記第1基板支持部の側で前記基板と前記マスクとが接触した後、前記第2基板支持部を下降させ、前記基板を前記マスクに載置する載置工程と、
前記載置工程の後、前記成膜源から前記基板に成膜材料を付着させて成膜する成膜処理と、を実行する成膜装置。
【請求項10】
請求項9に記載の成膜装置において、前記基板傾斜工程では、前記第1基板支持部と前記第2基板支持部とにより前記第1の姿勢で前記基板を支持した状態で前記基板が撓んで前記基板の中央部が周辺部より下降する高さ以上に、前記第2の姿勢における前記第1基板支持部と前記第2基板支持部との高低差が取られる成膜装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の成膜装置において、前記撮像装置が、前記第1基板支持部の上方に配置されている成膜装置。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか1項に記載の成膜装置において、前記載置工程の後、前記制御部は、前記撮像装置、あるいはさらに前記基板の周辺部の上部に配置された他の撮像装置を用いて、前記基板と前記マスクとを撮像して取得した前記基板と前記マスクの相対位置情報に基づき、前記基板と前記マスクの位置ずれ量を取得し、計測した前記位置ずれ量が所定のしきい値を超える場合、前記第1押圧部および前記第2押圧部で前記基板を押圧し、前記第2基板支持部を上昇させて前記基板の姿勢を前記第2の姿勢に変更し、前記計測工程、前記アライメント工程、および前記載置工程を実行する成膜装置。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか1項に記載の成膜装置において、前記第1基板支持部および/または前記第2基板支持部の、前記基板を支持する支持面が、前記第2の姿勢における前記基板の傾斜に沿う勾配を有する成膜装置。
【請求項14】
請求項13に記載の成膜装置において、前記第1基板支持部および/または前記第2基板支持部の、前記基板を支持する支持面の勾配が1/100以上1/10以下の範囲に取られている成膜装置。
【請求項15】
請求項13または14に記載の成膜装置において、前記第1基板支持部および/または前記第2基板支持部に対向する前記第1押圧部および/または前記第押圧部の前記基板を押圧する押圧面が、前記第1基板支持部および/または前記第2基板支持部に沿う勾配を有する成膜装置。
【請求項16】
請求項9から15のいずれか1項に記載の成膜装置を複数、備え、少なくとも1つの前記成膜装置が前記成膜処理において前記成膜源から前記基板に有機材料を蒸着する有機ELパネルの製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の載置位置をアライメントするアライメント処理を含む基板載置方法、その基板を用いる成膜方法、成膜装置、および有機ELパネルの製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
基板に対する成膜工程を含む物品の製造、例えば有機ELディスプレイの製造において、TFT(薄膜トランジスタ)を形成した基板上に赤・緑・青の発光をする有機材料を配置する必要がある。この有機材料を配置する手法としては、メタルマスクを用いた真空蒸着が主に用いられている。この種の真空蒸着では、TFTが形成された基板を下向きの姿勢で支持し、下方から蒸着材料を上向きに成膜する構成が多い。このように基板の成膜面を下向きにして成膜を行う場合、なるべく成膜を妨げないよう基板をその端部で挟持して支持するため、基板の中央部が自重で下方に凸形状に撓んだ状態となり易い。
【0003】
また、TFTの所望の場所に赤・緑・青の発光する有機膜を形成するために、基板とメタルマスクのアライメント(位置合わせ)を精密に行う必要がある。例えば、まず基板とマスクとが接触しない位置関係に配置して、撮像用カメラを用いて基板のアライメントマークとマスクのアライメントマークを用いて両者の位置合わせを行う。その後、基板とマスクとを接近させ、マスク上に基板を載置する。この状態で基板のアライメントマークとマスクのアライメントマークとのずれ量が所定の範囲内に収まっていれば、アライメントは正常終了となる。下記の特許文献1には、基板保持部によって基板の被成膜面を下向きにして把持し、基板とマスクとのアライメントを行う手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-3151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機ELディスプレイのような製品の高精細化に伴ない、近年では、基板の蒸着工程でも高精度なアライメントが求められるようになってきている。アライメントの際、基板とマスクのアライメントマーク位置情報は、撮像用カメラの撮影画像に対する画像処理を用いて取得される。この撮像用カメラには、必要なアライメント精度に応じた解像度を得られるレンズが装着される。そして、近年では、高精度にアライメントマークを撮像するために、アライメント用のカメラのレンズの被写界深度が浅くなる傾向がある。
【0006】
このため、特許文献1に記載されるようなアライメント方法では、基板の撓みによって基板とマスクのアライメントマークをレンズの被写界深度の範囲内に収まるよう接近させるのが困難になる場合がある。また、基板の撓みが下向きに凸となっているため、基板とマスクを接触させた際に、両者のズレが予期せぬ方向へ生じてしまう可能性があった。
【0007】
本発明の課題は、以上に鑑み、成膜工程で用いられる基板とマスクのアライメントを高精度に行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するため、本発明においては、基板の第1辺に沿って基板を支持する、上下動可能な第1基板支持部と、前記第1辺と対向する第2辺に沿って前記基板を支持する、前記第1基板支持部とは独立して上下動可能な第2基板支持部と、前記基板を前記第1基板支持部に向けて押圧可能な第1押圧部と、前記基板を前記第2基板支持部に向けて押圧可能な第2押圧部と、を用いて前記基板を移動させ、前記基板をマスクの上に載置する基板載置方法であって、前記第1基板支持部と前記第2基板支持部とで支持された前記基板を前記第1押圧部と前記第2押圧部でそれぞれ押圧した状態で、前記基板を前記マスクの上方において、前記基板の姿勢を、前記第1基板支持部と前記第2基板支持部とを同じ高さに位置させた第1の姿勢から、前記第1基板支持部よりも前記第2基板支持部が高い第2の姿勢に移行させる基板傾斜工程と、前記基板の前記第1基板支持部の側に設けられた基板のアライメントマークと、前記マスクの前記第1基板支持部の側に設けられたマスクのアライメントマークとが共に撮像装置の被写界深度に含まれる状態を形成するように、前記第2の姿勢を保った状態で、前記第1基板支持部と前記第2基板支持部とを下降させる基板下降工程と、前記基板のアライメントマークと前記マスクのアライメントマークとを前記撮像装置により撮像して前記基板と前記マスクの相対位置情報を取得し、前記基板と前記マスクの位置ずれ量を計測する計測工程と、前記計測工程で計測した前記位置ずれ量が所定のしきい値を超える場合、前記計測工程で取得した相対位置情報に基づき、前記基板と前記マスクの位置ずれ量が減少するように前記基板を移動させるアライメント工程と、前記計測工程で計測した前記位置ずれ量が所定のしきい値以下の場合、前記第2押圧部の押圧力を前記第1押圧部の押圧力よりも小さい押圧力に変更し、前記第2の姿勢を保った状態で前記第1基板支持部と前記第2基板支持部とを下降させ、前記第1基板支持部の側で前記基板と前記マスクとが接触した後、前記第2基板支持部を下降させ、前記基板を前記マスクに載置する載置工程と、を備えた構成を採用した。
【発明の効果】
【0009】
上記構成により、基板の第1辺を基準としてこの第1辺付近を撮像装置の被写界深度に収まるよう配置して、基板とマスクのアライメントのための撮像を行うことができる。そのため、成膜工程で用いられる基板とマスクのアライメントを高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る成膜装置の概略構成を示す説明図である。
図2】アライメント装置の斜視図である。
図3】回転並進機構の斜視図である。
図4】基板保持部の斜視図である。
図5】(a)、(b)は、基板保持部の模式図である。
図6】(a)は基板保持部に保持されている基板を上から見た図、(b)はマスクを上から見た図、(c)は撮像装置の視野のイメージ図である。
図7】成膜室に配置されたアライメント機構の要部構成の一例を示す説明図である。
図8】(a)~(f)はアライメント機構のアライメント動作の一例を示す説明図である。
図9】本発明の実施形態に係る成膜装置が配置された生産ラインの一例を示す説明図である。
図10】アライメント機構の要部の構成の一例を示す説明図である。
図11】基板およびマスクのアライメント制御の流れを示すフローチャート図である。
図12】アライメント制御を行う制御装置の具体的な構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態につき説明する。なお、以下に示す構成はあくまでも一例であり、例えば細部の構成については本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当業者が適宜変更することができる。また、本実施形態で取り上げる数値は、参考数値であって、本発明を限定するものではない。
【0012】
以下、本発明の実施形態である基板載置方法、成膜方法、成膜装置、有機ELパネルの製造システム等について、図面を参照して説明する。以下で参照する複数の図面では、特に但し書きがない限り、同一の機能の構成要素については同一の参照符号を付して示すものとする。また、同一図面内に同一もしくは対応する部材を複数有する場合には、図中にa、bなどの添え字を付与して示すが、以下の説明では区別する必要がない場合には、a、bなどの添え字を省略して記述する場合がある。
【0013】
図1は、第1実施形態に係る成膜装置100の概略構成を示している。成膜装置100は、基板1の表面(被成膜面)に成膜する装置である。成膜装置100は、基板1の表面に真空蒸着により所望のパターンの薄膜を形成する。基板1は、例えば平板状のガラス基板である。蒸着材料としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択できる。成膜装置100は、例えば、有機ELディスプレイのような表示装置のディスプレイパネル、薄膜太陽電池などの電子デバイスを製造する製造システムに適用可能である。特に、成膜装置100は、基板1としてガラス基板が用いられ、この基板1が大型化する傾向がある有機ELパネルを製造する製造システムに好適に適用することができる。
【0014】
成膜装置100は、基板1に成膜材料を形成するための成膜チャンバ4の成膜空間を有する成膜チャンバ4と、基板1を成膜チャンバ4内に搬入/搬出するためのゲートバルブ15とを備える。さらに、成膜装置100は、基板1およびマスク2を保持して両者の相対的な位置合わせを行うアライメント装置101を備える。成膜チャンバ4には、成膜材料を収納した蒸着源(成膜源)7を設置するための機構が設けられている。図1は蒸着装置の構成であるが、アライメント装置101は、スパッタリング法やCVD法など、蒸着法以外の成膜方法を用いる成膜装置にも適用することができる。
【0015】
また、図1では、上下方向をZ軸の方向(Z方向)、上下方向に直交する水平方向をX軸の方向(X方向)およびY軸の方向(Y方向)で示している。なお、成膜チャンバ4には、真空ポンプ(図1では不図示)が接続されており、成膜チャンバ4内を、成膜できる所望の圧力まで減圧することができる。
【0016】
アライメント装置101は、成膜チャンバ4の天板3上に搭載される駆動部を有する位置決め機構90と、基板1を保持する保持部である基板保持部8と、マスク2を保持するマスク保持部9とを備える。
【0017】
位置決め機構90は、回転並進機構111と、第1駆動部であるZ昇降機構80とを有し、成膜チャンバ4の外側に設けられている。可動部を多く含む位置決め機構90を成膜チャンバ4の成膜空間の外に配置することで、成膜チャンバ4内の発塵を抑制することができる。
【0018】
回転並進機構111は、後述するように基板1とマスク2とをアライメントする際に、基板保持部8、即ち基板1を、天板3に対してXY方向、およびZ軸まわりの回転方向であるθz方向に基板保持部8を移動させるものである。Z昇降機構80は、基板1とマスク2とを互いに近接または離間させるように、基板保持部8またはマスク保持部9、本実施形態では基板保持部8をZ方向に移動させるものである。
【0019】
Z昇降機構80は、Z昇降スライダ10を有する。Z昇降スライダ10には、基板保持シャフト12a、12bが固定されている。この基板保持シャフト12a、12bは、成膜チャンバ4の天板3に設けられた貫通穴16を通って、成膜チャンバ4の外部と内部に渡って設けられている。そして、成膜チャンバ4内において、基板保持シャフト12a、12bの下部に基板保持部8が設けられ、被成膜物である基板1を保持することが可能となっている。
【0020】
基板保持シャフト12a、12bと天板3とが干渉することのないよう、貫通穴16は基板保持シャフト12a、12bの外径に対して十分に大きく設計される。また、各基板保持シャフト12a、12bにおける成膜チャンバ4の外側の部分は、Z昇降スライダ10と天板3とに固定されたベローズ40によって覆われる。つまり、各基板保持シャフト12a、12bは、成膜チャンバ4の外側の部分がベローズ40で覆われることで、各基板保持シャフト12a、12b全体を成膜チャンバ4の成膜空間と同じ状態(例えば、真空状態)に保つことができる。
【0021】
ベローズ40には、好ましくはZ方向およびXY方向にも柔軟性を持つものを用いる。これにより、アライメント装置101の稼働によってベローズ40が変位した際に発生する抵抗力を十分に小さくすることができ、位置調整時の負荷を低減することができる。マスク保持部9は、成膜チャンバ4の内部の、天板3の成膜空間側の面に設置されており、マスク2を保持することができる。有機ELパネルの製造に広く用いられるマスク2は、例えば成膜パターンに応じた開口を有するマスク箔と、剛性の高いマスク枠とを備え、マスク箔はマスク枠に架張された状態で固定される。これにより、マスク枠は撓みを低減した状態でマスク2を保持することができる。
【0022】
位置決め機構90、基板保持部8、蒸着源7の一連の動作は、処理部の一例である制御装置50(制御部)によって制御される。制御装置50の機能は、メモリまたはストレージに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピュータとしては、汎用のパーソナルコンピュータを用いてもよいし、組込型のコンピュータや、PLC(programmable logic controller)を用いてもよい。あるいは、制御装置50の機能の一部または全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。なお、成膜装置ごとに制御装置50が設けられていてもよいし、1つの制御装置50が複数の成膜装置を制御してもよい。
【0023】
図12は、図1の制御装置50を構成する制御系の一例を示している。図12の制御系は、主制御手段としてのCPU1601、記憶装置としてのROM1602、およびRAM1603を備えた、例えば上記のPCハードウェア、PLCなどによって構成することができる。ROM1602には、後述する製造手順を実現するためのCPU1601の制御プログラムや定数情報などを格納しておくことができる。また、RAM1603は、その制御手順を実行する時にCPU1601のワークエリアなどとして使用される。また、図12の制御系には、外部記憶装置1606が接続されている。外部記憶装置1606は、本発明の実施には必ずしも必要ではないが、HDDやSSD、ネットワークマウントされた他のシステムの外部記憶装置などから構成することができる。
【0024】
本実施形態のアライメント制御を実現するためのCPU1601の制御プログラムは、上記の外部記憶装置1606や、ROM1602の(例えばEEPROM領域)のような記憶部に格納しておくことができる。その場合、本実施形態の制御手順を実現するためのCPU1601の制御プログラムは、ネットワークインターフェース1607を介して、上記の各記憶部に供給し、また新しい(別の)プログラムに更新することができる。あるいは、後述の制御手順を実現するためのCPU1601の制御プログラムは、各種の磁気ディスクや光ディスク、フラッシュメモリなどの記憶手段と、そのためのドライブ装置を経由して、上記の各記憶部に供給し、またその内容を更新することができる。本実施形態の制御手順を実現するためのCPU1601の制御プログラムを格納した状態における各種の記憶手段、記憶部、ないし記憶デバイスは、本発明の制御手順を格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を構成することになる。
【0025】
CPU1601には、アライメント画像処理に用いる画像を撮像するための後述する撮像装置14が接続されている。図12では、簡略化のため、撮像装置14、ないし、同図右側のアライメント装置101の駆動系1605はCPU1601に直接接続されているように図示されている。しかしながら、これらのブロックは周知の適当なインターフェース(カメラIFや駆動回路)を介して接続されていてよい。
【0026】
ネットワークインターフェース1607は、例えばIEEE 802.3のような有線通信、IEEE 802.11、802.15のような無線通信による通信規格を用いて構成することができる。CPU1601は、ネットワークインターフェース1607を介して、他の装置1104、1121と通信することができる。装置1104、1121は、例えば、成膜装置100が含まれる生産ラインの統轄制御装置や、管理サーバなどであってよく、成膜装置100の成膜処理に係る制御やロギングを行う。
【0027】
また、図12の制御装置は、UI装置1604(ユーザーインターフェース装置)を備える。このUI装置1604は、操作部や表示装置から構成される。操作部は、ハンディターミナルのような端末、あるいはキーボード、ジョグダイアル、ポインティングデバイスなどのデバイス(あるいはそれらを備えた何らかの制御端末)によって構成される。また、表示装置には、例えば液晶方式の他、表示出力できるものであれば任意の方式のディスプレイ装置を用いることができる。
【0028】
UI装置1604の表示装置では、任意のモニタ表示を行うことができる。例えば、UI装置1604の表示装置によって、上記のアライメント装置101の駆動条件に係るデータなどを表示してもよい。あるいは、UI装置1604の表示装置によって、基板~マスクのアライメントのため撮像装置14が撮像した画像を表示させてもよい。
【0029】
次にアライメント装置101の位置決め機構90について、図2を用いて詳細に説明する。
【0030】
図2は、上記のアライメント装置101を斜視図の形式で示している。Z昇降機構80は、上述のZ昇降スライダ10、Z昇降ベース13、複数のZガイド18、モータ19、およびボールネジ20を備える。
【0031】
Zガイド18は、Z昇降ベース13の側面に、Z昇降ベース13に対してZ方向にスライド自在に支持され、Z昇降スライダ10に固定されている。Z昇降スライダ10の中央には、駆動力を伝達するためのボールネジ20が配設され、Z昇降ベース13に固定されたモータ19から伝達される動力がボールネジ20を介してZ昇降スライダ10に伝達される。
【0032】
モータ19は、不図示の回転エンコーダを内蔵しており、エンコーダの回転数を介してZ昇降スライダ10のZ方向の位置を計測することができる。モータ19の駆動を、制御装置50(図1)ないしCPU1601(図12)で制御することにより、Z昇降スライダ10、即ち基板保持部8のZ方向の精密な位置決めが可能である。なお、ここではモータ19が回転モータである場合について説明したが、モータ19は他の形式のモータ、例えばリニアモータなどであってもよい。この場合、回転エンコーダの代わりにリニアエンコーダを配置すればよく、ボールネジ20は省略することができる。
【0033】
図3は、回転並進機構111の構成を斜視図の形式で示している。図1図2のアライメント装置101では、Z昇降スライダ10およびZ昇降ベース13が回転並進機構111の上に配設されている。この構成では、Z昇降ベース13とZ昇降スライダ10の全体を、回転並進機構111によってX、Y、θz方向に駆動させることができる。
【0034】
図3に示すように、回転並進機構111は、複数の駆動ユニット21a~21dを備える。図3の構成では、駆動ユニット21a~21dは、それぞれベースの四隅に配置されており、隣接する隅に配置された駆動ユニットをZ軸周りに90度回転させた向きに配置されている。
【0035】
各駆動ユニット21a~21dは、駆動力を発生させるモータ41を備えている。さらに、モータ41の駆動力がボールネジ42を介して伝達されることにより、第1の方向にスライドする第1のガイド22と、XY平面において第1の方向と直交する第2の方向にスライドする第2のガイド23とを備えている。さらに、Z軸周りに回転可能な回転ベアリング24を備えている。例えば、駆動ユニット21cの場合は、X方向にスライドする第1のガイド22、X方向と直交するY方向にスライドする第2のガイド23、回転ベアリング24を有しており、Xモータ41の力がボールネジ42を介して第1のガイド22に伝達される。
【0036】
モータ41は不図示の回転エンコーダを内蔵しており、この回転エンコーダを介して、第1のガイド22の変位量を計測することができる。各駆動ユニット21a~21dにおいて、モータ41の駆動を、制御装置50(図1)ないしCPU1601(図12)で制御することにより、Z昇降ベース13、即ち基板保持部8のX、Y、θz方向における位置を精密に制御することができる。
【0037】
例えば、Z昇降ベース13をX方向へ移動させる場合は、駆動ユニット21bと駆動ユニット21cのそれぞれにおいてX方向にスライドさせる駆動力をモータ41で発生させ、Z昇降ベース13にその駆動力を伝達する。また、Y方向へ移動させる場合には、駆動ユニット21aと駆動ユニット21dのそれぞれにおいてY方向にスライドさせる駆動力をモータ41で発生させ、Z昇降ベース13にその駆動力を伝達する。
【0038】
Z昇降ベース13をZ軸まわりのθz方向に回転させる場合は、対角に配置された駆動ユニット21cと駆動ユニット21bとを用いて、Z軸まわりにθz回転させるために必要な力を発生させ、Z昇降ベース13にその力を伝えるとよい。あるいは、駆動ユニット21aと駆動ユニット21dとを用いて、Z昇降ベース13に回転に必要な力を伝えてもよい。
【0039】
次に、基板保持部8の構成について、図4を用いて説明する。図4は、基板1を保持した状態でマスク保持部9の上部に位置する基板保持部8全体を斜視図の形式で示している。基板保持部8は、矩形状の基板1の、互いに対向する2辺(ここでは長辺)側の端部を保持する。また、基板保持部8は、基板1の被成膜面を下にして、即ち基板1の被成膜面がマスク2に対向するように保持する。
【0040】
図4に示すように、基板保持部8は、基板1の端部を支持する複数の複数の基板受け爪26a(第1基板支持部)、および複数の基板受け爪26b(第2基板支持部)を備える。複数の基板受け爪26aは、基板1の2つの長辺のうち一方の長辺側の端部に沿って配置され、複数の基板受け爪26bは、基板1の2つの長辺のうち他方の長辺側の端部に沿って配置される。
【0041】
さらに、基板保持部8は、複数の基板受け爪26aと対向して配置され、駆動シャフト34aを介してZ方向に駆動され、基板受け爪26a方向に基板1を押圧可能な複数のクランプ27a(第1押圧部)を有している。また、基板保持部8は、複数の基板受け爪26bと対向して配置され、駆動シャフト34bを介してZ方向に駆動され、基板受け爪26a方向に基板1を押圧可能な複数のクランプ27b(第2押圧部)を有している。複数の基板受け爪26a、26bに対して複数のクランプ27a、27bを近接させ、基板1の端部を挟み込んで挟持することで、基板1を固定し、かつ、基板1の撓みを低減した状態で保持することができる。なお、基板1の長辺側の端部ではなく短辺側の端部を保持してもよいが、長辺側の端部を保持する方が基板1の撓み量が少ないため好ましい。
【0042】
さらに、基板保持部8は、基板保持シャフト12aの下部に固定された、複数の基板受け爪26aを支持する保持部ベース25aを有する。また、基板保持部8は、基板保持シャフト12bの下部に固定された、複数の基板受け爪26bを支持する保持部ベース25bを有する。保持部ベース25a、25bは、それぞれ基板保持シャフト12a、12bにより独立して上下動可能であり、任意の制御位置で位置決めすることができる。この保持部ベース25a、25bは、基板1の長辺側の端部と同等の長さを有する板状部材である。
【0043】
なお、マスク2のマスク枠には、基板1をマスク2に載置する際に基板受け爪26a、26bとの干渉を回避するための複数の溝を設けておく。この溝と基板受け爪26a、26bとのクリアランスを数mm程度に設定しておけば、基板1をマスク2に載置した後に基板受け爪26a、26bがさらに下降しても、マスク枠6bと基板受け爪26a、26bとが互いに干渉するのを回避できる。
【0044】
本実施形態では、後述するアライメント動作を行うため、保持部ベース25a、25bを移動させるための基板保持シャフト12a、12bは、互いに独立して昇降させることができるよう構成する。
【0045】
本実施形態では、複数のクランプ27aがクランプユニット28aに含まれ、複数のクランプ27bがクランプユニット28bに含まれているものとする。また、クランプユニット28a、28bの押圧動作は互いに独立して制御できるものとする。
【0046】
クランプユニット28a、28b、ないしクランプ27a、27bの押圧解放(アンクランプ)状態と、押圧(クランプ)状態をそれぞれ図5(a)、(b)に示す。以下、クランプユニット28a、28bの動作の概略を説明するが、ここではクランプユニット28aを例に説明し、クランプユニット28bはクランプユニット28aと同様の構成であるため、説明を省略するものとする。
【0047】
クランプユニット28aの複数のクランプ27aは、クランプスライダ32a(図4)に固定されている。クランプスライダ32aは、基板保持部8の保持部ベース25aと保持部上板35aとの間に配設されたリニアブッシュ39aによって、Z方向にガイドされる。クランプスライダ32aは、天板3を貫通する駆動シャフト34a(図4)を介してZ昇降スライダ10に固定される。クランプスライダ32aは駆動シャフト34aを介して電動シリンダ36aから発生する力によってZ方向に駆動することができる。
【0048】
クランプ27aが図5(a)に示す位置から下降して図5(b)に示す位置に達すると、クランプ27aは基板受け爪26a上に載置された基板1の上面に当接し、基板1を基板受け爪26aに向かって押圧する。これにより、基板受け爪26aの挟持面とクランプ27aの挟持面との間で基板1を保持した状態となる。
【0049】
クランプ27aの上部には、クランプ27aによって一定の荷重を付加して基板1を保持するために、保持力(荷重)を発生させるバネ29aが配設される。クランプ27aとバネ29aとの間にはロッド31aが存在し、クランプ27aがZ方向に案内される。バネ29aは荷重調整ネジ30aによってギャップgの大きさを変えることで全長を調整することができる。したがって、バネ29aの押し込み量によって、ロッド31aを介してクランプ27aに発生する押し込み力も自在に調整可能である。なお、この押し込み力が数N~数10N程度であれば、基板1の自重よりも大きい荷重で基板1を押さえることができ、アライメント中に基板1がずれるのを抑制することができる。
【0050】
以上の構成によれば、クランプユニット28a、28b、ないしクランプ27a、27bの押圧力により基板1を保持した状態で、アライメント装置101によってX、Y、θz方向、および、Z方向に移動し、位置決めすることができる。なお、クランプユニット28aの複数のクランプ27aは、それぞれが個別に設けられた駆動機構によって上下に駆動されてもよく、また、クランプユニット28bの複数のクランプ27bも、それぞれが個別に設けられた駆動機構によって上下に駆動されてもよい。また、保持部ベース25aと基板受け爪26aとの間には、スペーサ41aが設けられ、保持部ベース25bと基板受け爪26bとの間には、スペーサ41bが設けられている。
【0051】
次に、基板1とマスク2との位置、すなわち、それぞれのアライメントマークの位置を同時に計測するための撮像装置について説明する。図1において天板3の外側の面には、マスク2上のアライメントマーク(マスクマーク)および基板1上のアライメントマーク(基板マーク)の位置を取得するための位置取得手段である、複数(本実施形態では4つ)の撮像装置14が配設される。なお、以下では、クランプユニット28aないしクランプ27a側の例えば2つの撮像装置を撮像装置14a、クランプユニット28bないしクランプ27b側の例えば2つの撮像装置を撮像装置14bということがある(後述の図7参照)。撮像装置14は、高解像度の撮像が可能なカメラ141、撮像光学系142、照明部143から構成される(図7)。
【0052】
天板3(図1図2)には、撮像装置14により成膜チャンバ4の内部に配置されたアライメントマークの位置を計測できるよう、カメラ光軸上に貫通穴および窓ガラス17が設けられている。さらに、撮像装置14の内部または近傍には、不図示の照明(後述の照明部143)が設けられ、基板1およびマスク2のアライメントマーク近傍に照明光を照射し、正確なマーク像の計測を行うことができる。
【0053】
図6(a)~図6(c)を参照し、撮像装置14を用いて基板マーク37とマスクマーク38の位置を計測する方法を説明する。図6(a)は、基板保持部8に保持されている状態の基板1を上から見た図である。基板1上には、図1の撮像装置14で計測可能な基板マーク37が基板1の4隅に形成されている。例えば、マスク2に対して基板1がフラットに載置された状態であれば、4つの基板マーク37を4つの撮像装置14によって同時に撮像する。そして、図1の制御装置50が、撮像画像から各基板マークの中心位置である4点を求め、4点の位置関係から基板1の並進量、回転量を算出する。これにより、制御装置50は、基板1の位置情報を取得することができる。
【0054】
また、後述のアライメント制御では、基板1のクランプユニット28aないしクランプ27a側の撮像装置14aによって、例えば2つの基板マーク37を撮像し、2点の位置関係から基板1の並進量、回転量を算出する。このような計測処理によっても、クランプユニット28aないしクランプ27a側を基準とした基板1のアライメント情報を取得することができる。
【0055】
また、図6(b)はマスク2を上から見た図である。マスク2の四隅には撮像装置14で計測可能なマスクマーク38が形成されている。例えば4つのマスクマーク38を4つの撮像装置14によって同時に撮像し、図1の制御装置50が、撮像画像から各マスクマークの中心位置である4点を求め、4点の位置関係からマスク2の並進量、回転量などを算出する。このようにして、制御装置50はマスク2の位置情報を取得することができる。
【0056】
実際には、基板1とマスク2とがZ方向に重なっているので、基板マーク37とマスクマーク38とは撮像装置14によって同時に撮像される。図6(c)は、1つの撮像装置14によって、1組のマスクマーク38および基板マーク37を撮像した際の視野43のイメージを示している。このように撮像装置14の視野43内において、基板マーク37とマスクマーク38とを同時に撮像することができ、マーク中心同士の相対的な位置を測定することができる。なお、制御装置50とは別の画像処理装置を用意して、その画像処理装置に画像処理を行わせて、マークの位置を計測してもよい。マスクマーク38および基板マーク37の形状は、それぞれの中心位置を算出しやすい形状であればいかなる形状であってもよいが、互いを区別できるように、互いに異なる形状であるのが好ましい。
【0057】
精度の高いアライメントが求められる場合、撮像装置14として数μmのオーダーの高解像度を有する高倍率カメラが用いられる。この高倍率カメラは、視野が数mmと狭いため、基板1を受け爪に載置した状態のずれが大きいと、基板マーク37が視野から外れてしまう場合がある。そこで、高倍率カメラによる撮像装置14とは別に、高倍率カメラと併せて広い視野をもつ低倍率カメラを併設してもよい。その場合、低倍率カメラを用いてマスクマーク38と基板マーク37が同時に高倍率カメラの視野に収まるよう、大まかなアライメントを行った後、高倍率カメラを用いて高い精度で位置計測を行うことができる。
【0058】
制御装置50は、撮像装置14によって取得したマスク2の位置情報および基板1の位置情報から、マスク2と基板1との相対位置情報を求めることができる。制御装置50は、この相対位置情報を用いて昇降スライダ10、回転並進機構111、および基板保持部8のそれぞれの駆動量を制御する。撮像装置14として高倍率カメラを用いた場合、例えばマスク2と基板1の相対位置を数μmの精度で調整することができる。
【0059】
マスク2と基板1とのアライメントが完了した後は、成膜チャンバ4の成膜空間に配置された蒸着源7から成膜材料の蒸気を放出させ、基板1の表面にマスク2を介して成膜する成膜工程を開始する。
【0060】
続いて、図7図11を参照して、本実施形態の成膜装置の構成と、基板およびマスクのアライメント動作につきさらに詳細に説明する。
【0061】
図7は、本実施形態の成膜装置のアライメント機構の要部の構成を、図8(a)~(f)はアライメント機構のアライメント動作を、図9は本実施形態の成膜装置が配置された生産ラインの構成を示している。また、図10はアライメント機構の要部の構成の一例を、図11図12の制御系によるアライメント制御の流れを示している。
【0062】
図9に示した生産ラインは、複数の成膜室31が搬送室33に接続された構成であり、一般にクラスタ型ラインと呼ばれることがある。図9に示した生産ラインでは、生産ラインの先頭には投入室32が設けられている。大気圧の下で基板1を投入室32に投入してから投入室32を真空排気することで、成膜室31や搬送室33は真空状態で基板1を搬送することができる。この生産ラインの搬送方式は、投入室32へは基板を1枚1枚投入する枚葉式でも良いし、ある程度の数量を一括して入れるカセット式の処理でもよく、当業者は前工程との接続に合わせた方式を選択することができる。
【0063】
マスク2を投入するマスク室(不図示)は、搬送室33に面して、あるいは成膜室31に面して配置することができる。特に、搬送室33に設置される搬送機構34がマスク2を搬送できる可搬重量があれば、搬送室33にマスク室を取り付けても良い。
【0064】
例えば、有機ELディスプレイの製造ラインにおいては、複数の膜を積層して成膜することが必要になる。そこで、有機ELディスプレイを製造するのであれば、図9の生産ラインには、少なくとも必要な膜の数だけ成膜室31が必要となる。また、膜厚や成膜レートにより同一膜でも複数の成膜室31が必要となる場合もある。生産ラインの成膜室31の数は、任意であって、本発明を限定するものではない。
【0065】
また、搬送室33の間には、受渡室35が配置される。受渡室35は、例えば搬送室33の接続を行う機能と、基板1の向きを一定にする機能を有する。例えば、不図示の回転機構で基板1を180°回転することにより、各クラスタでの基板向きを一定とすることができる。
【0066】
図9の成膜室31は、図1図6に示した成膜装置100に相当し、アライメント装置101を備える。アライメント装置101の要部の構成を図7に示す。上述のように、アライメント装置101は、成膜室31の成膜チャンバ4内に配置されている。図7では、アライメント装置101のアライメント動作に必要な部位を簡略に示しており、その参照符号は上述と同様であり、以下では各部位に関する重複する記述は省略するものとする。
【0067】
図7のアライメント装置101は、上述のクランプユニット28a、28bを備える。クランプユニット28a、28bは、独立して昇降動作できるよう駆動系が構成されており、基板受け爪26a、26bと、クランプ27a、27bを備えている。マスク箔およびマスク枠から成るマスク2はマスク保持部9によって、蒸着源7の上方に支持されている。また、クランプユニット28a、28bによって保持される基板1と、マスク2のアライメント状態を撮像するため、アライメント装置101の上部に撮像装置14a、14bが配置されている。撮像装置14a、14bは、例えばそれぞれ2台ずつ、クランプユニット28a、28bの上部近傍に配置され、図6のように基板1およびマスク2の4隅に配置された基板マーク37およびマスクマーク38を撮像する。
【0068】
成膜処理に際しては、上述のように、ドライポンプ123にて荒引き排気の圧力領域まで排気を行う。例えば、成膜チャンバ4の圧力が50Pa以下となるまでドライポンプ123により排気を行う。そして、成膜チャンバ4内の圧力が50Pa以下となったら、不図示のバルブを切り替え、クライオポンプ124により、本引き排気を行う。本実施形態では、クライオポンプ124により10-5Pa~10-4Pa台の圧力領域まで排気を行い、この圧力環境下で成膜を行う。
【0069】
クライオポンプ124にて本引き排気を行い、上記の圧力が達成されると、蒸着源7の加熱を行う。本実施形態においては、1×10-4Pa以下の圧力になってから蒸着源7内に設置された不図示のヒータに通電することで蒸着源7の温度を上昇させる。蒸着源7内部にはルツボと呼ばれる蒸着材料の容器が収容されられており(詳細不図示)、蒸着源7内部のヒータによりルツボを加熱し、最終的にルツボ内部に収納された蒸着材料の温度を上昇させる。
【0070】
蒸着源7の温度は、例えば蒸着源7内に設けられた熱電対(不図示)により温度を測定しながら、加熱開始初期状態においては所望の温度勾配によって加熱を行うよう制御する。有機材料であれば300~400°C程度が成膜温度で、ある程度の温度となったところで、不図示のレートセンサによる制御へと切り替える。レートセンサは蒸着材料の成膜レートをモニタするもので、所望の成膜レートで安定したレートとなったら基板1への成膜を行うことができる。
【0071】
基板1へ成膜を行う先立ち、基板1とマスク2のアライメント(位置合わせ)を行う。このアライメント制御は、上記の蒸着処理、例えば圧力制御や蒸着源7の加熱などの処理は、制御装置50(CPU1601)により非同期的に制御することができる。基板1には成膜しない非成膜エリアがあり、その部分に蒸着材料を付着させないためにマスク2を用いる。マスク2には成膜エリアに開口部があり、非成膜エリアにマスク部が設けられている。ディスプレイ向けの塗り分けだと、赤・緑・青の材料を塗り分ける必要があり、近年、高精細化のためにアライメントの高精度化の需要が高まっている。
【0072】
例えば、赤色の発光材料を塗り分ける際には、基板1に形成された赤色用の電極部分に対して開口部が設けられたマスク2と基板1を位置合わせしてから赤色の蒸着材料を成膜する。これにより、赤色電極部分だけに赤色材料が形成されることになる。位置合わせを高精度にすることで、他の色が混ざることが防止され、また電極間隔を狭くすることが可能となるため、有機ELディスプレイの性能を向上させることができる。アライメント装置101は、上述のように、成膜チャンバ4の天板3から吊り下げられるように配置されている。
【0073】
図11は本実施形態におけるアライメント動作の流れを示している。基板1は搬送室33内に配置された搬送機構34により、成膜室31内のアライメント装置101に搬送される。この基板受け渡しの際、アライメント装置101は基板1を水平状態で基板受け爪26a、26b上に受け取る(S101)。この基板1の水平状態が、基板の第1の姿勢である。
【0074】
次に、水平状態に把持された基板1の4辺のうち、少なくとも第1辺、第2辺の2辺をクランプする(S102)。例えば、第1押圧部、第2押圧部として機能するクランプ27a、27bを作動させ、第1基板支持部、第2基板支持部としての基板受け爪26a、26bに対して基板1を押圧する。
【0075】
本実施形態のアライメント装置101による基板1とマスク2のアライメント動作では、水平状態に把持された基板1の4辺のうち2辺は把持しない状態とする。そして、クランプユニット28a、28bにより残るクランプした2辺のうち少なくとも1辺を上方に持ち上げる(S103:基板傾斜工程)。例えば、図8の例では、右側のクランプユニット28bをクランプユニット28aとは独立して図8(a)のように上昇させ、図中右側の把持している1辺を上昇させる。これにより、基板1は、クランプユニット28a、28bが同じ高さに位置する第1の姿勢から、クランプユニット28bをクランプユニット28aよりも高い位置に位置させた第2の姿勢に移行する。この基板1を傾斜させた状態が、基板の第2の姿勢で、本実施形態では、この第2の姿勢において左側の上昇させずにクランプユニット28aで把持している基板1の1辺を基準辺とする。
【0076】
次に、図8(b)に示すように全体的に基板1をマスク2に接近させる(S104:基板下降工程)。この時、左側のクランプユニット28aで把持している基板1の基準辺は、マスク2と接触せず、かつ、撮像装置14a(図8(c))の撮像光学系142の被写界深度内に、基板1およびマスク2が進入するような高さに制御する。これにより、撮像装置14aにより、高精度で基板マーク37およびマスクマーク38を撮像することができる。また、基板1とマスク2と接触させないため、互いに擦り合うことなくアライメント(後述のS106、S107)を行うことができる。
【0077】
次に、図8(c)に示すように基板1とマスク2が最も近接した基準辺(第1辺)に配置された、基板マーク37およびマスクマーク38を撮像する。2か所のマークを撮像装置14aにより撮影する。そして、撮像装置14aにより撮像された画像を画像処理し、数値演算を行って、撮像した基準辺付近における基板1とマスク2の、例えばXY平面に沿ったズレ量を算出する(S105:計測工程)。
【0078】
そして、計測されたズレ量が減少するようにクランプユニット28a、28bにより把持した基板1を移動させる(S106、S107:アライメント工程)。ここでは、基板1をアライメント移動させ(S106)、アライメント後のズレ量を算出(S107)する。このズレ量の算出(S107)は、例えば再度、撮像装置14aによる撮影と画像処理を行うことで行える。S107で、アライメント後のズレ量がしきい値以下であればS108に進み、しきい値より大きい場合はS106へ戻り再度アライメント動作を行う。
【0079】
次に、図8(d)に示すように、上方(図中右側)のクランプユニット28bのクランプ力(押圧力)を解除、または少なくともクランプユニット28aのクランプ力(押圧力)より小さい値に制御する(S108)。続いて、クランプユニット28a、28bの高低差を保ったまま、即ち、基板1の第2の姿勢(傾斜姿勢)を保ったまま、基板1を下降させ、基板1とマスク2を接近させる(S109)。
【0080】
図8(e)に示すように基板1とマスク2の一辺が接触したら、クランプユニット28aの下降は停止させ、上方(図中右側)のクランプユニット28bの下降動作を続行させ、基板1の右側の第2辺をマスク2に接近させる(S110)。この動作を続けると、図8(f)に示すように基板1とマスク2の密着する状態となる(S111)。
【0081】
図8(f)に示すように基板1とマスク2が密着した状態において、さらに基板マーク37およびマスクマーク38を撮像して、基板1とマスク2の密着後のズレ量を算出のズレ量を算出する(S112)。この場合、例えば、撮像装置14a、14bを用いて基板1およびマスク2の4隅に配置された基板マーク37およびマスクマーク38を撮像した結果に基づき、ズレ量を計測する。算出したズレ量をしきい値以下であればアライメント動作を終了し、しきい値より大きい場合は、S114を経由してS104へ復帰する(S113)。なお、S114では、クランプユニット28a、28bにより基板1をクランプし、微小量上昇させ、さらに、一辺、例えばこの例では右側の基板1の第2辺を上方に移動させる。このS114は、S103が終了した後と同じ状態(基板1の第2の姿勢)を形成するためのものである。
【0082】
以上のようにしてアライメントが完了したら成膜動作を行う。レートセンサ(不図示)によって蒸着源7が所望の成膜レートになったことを確認して、蒸着源7によって所望の材料を所望の膜厚で基板1に堆積させる。その際、成膜を必要としない部位はマスク2によりマスキングされ、その部位には蒸着材料が付着しないよう制御される。
【0083】
なお、蒸着源7には直線状に蒸着材料が放出される穴が設けられている(詳細不図示)。また、蒸着源7は、例えば基板下面の蒸着が必要な範囲をカバーできるよう移動可能に構成しておくことができる。例えば、図9に示したような有機ELディスプレイの有機ELパネルを生産する生産ラインにおいては、各々の成膜室31で上記のような工程を繰り返して、基板1に対して必要な場所に必要な膜を成膜することができる。以下では、成膜装置における具体的な実施態様を示すいくつかの実施例を説明する。
【0084】
<実施例1>
本実施例は、主に図7図8を参照して説明する。本実施例における基板1は、いわゆる第四世代と呼ばれる基板サイズで、具体的には930×720×0.5t(mm)の無アルカリガラス基板を使用した。通常の生産においては基板1には有機ELディスプレイ用のTFTが形成されているが、本実施例においてはアライメント動作を検証すべく、アライメントマークと各電極パターンのみが無アルカリガラス状に形成された基板を用いた。
【0085】
基板1は、不図示の基板搬送機構によりアライメント装置101に真空雰囲気にて水平姿勢で搬送される。アライメント装置101は、基板1を水平状態(第1の姿勢)で把持し、本実施例においては、長辺930の2辺の例えばそれぞれ4か所をクランプユニット28a、28bによりクランプする。
【0086】
アライメント動作では、まず、図8(a)に示すように基板1の長辺(930mm)の2辺をクランプした状態で,クランプした2辺(第1辺、第2辺)のうちの1辺、例えば右側の1辺(第2辺)を上昇させ、傾斜姿勢(第2の姿勢)を形成する。本実施例では、この傾斜姿勢(第2の姿勢)における右側の1辺(第2辺)の上昇量は5mmとなるよう、クランプユニット28a、28bの高低差をこの値に制御する。上記サイズ、厚みの基板1では、例えば基板受け爪26a、26bに水平姿勢(第1の姿勢)で載置した状態の、基板1の撓みが、中央部の下降量で3mm程度、生じる。
【0087】
そこで、クランプユニット28a、28bの高低差(5mm)は、この基板1の中央部の下降量(3mm)以上取るものとして選択されている。即ち、基板1が撓んで基板1の中央部がその周辺部より下降する高さ(3mm)以上に、基板1の第2の姿勢におけるクランプユニット28a、28bの高低差(5mm)を選択する。これにより、撮像のために基板1を傾斜姿勢(第2の姿勢)のまま下降させ、基板1とマスク2を接近させた場合でも、左側の第1辺がマスク2と接触していなければ、他の基板1の下面部分はいずれもマスク2と接触しないことになる。
【0088】
撮像のために基板1を傾斜姿勢(第2の姿勢)のまま下降させた時、基板1とマスク2が接触しない状態を作ることが理想的であるが、上記の制御により、もし接触したとしても従来例よりは接触部位が少ない状態を作り出せる。次に図8(b)に示すように全体的に基板1を下降させ、マスク2に接近させる。本実施例の場合、基板1の左側の第1辺付近における基板1とマスク2の最近接距離を0.5mmとなるように制御する。
【0089】
これにより、図8(c)に示すように、基板1とマスク2が近接し、両者が撮像装置14aの被写界深度内に進入した状態が形成される。この状態で、撮像装置14aによって、基準辺である基板1の第1辺の側の付近の2か所の基板マーク37およびマスクマーク38を撮像する。
【0090】
本実施例においては、撮像装置14a(ないし14b)の撮像光学系142には、被写界深度0.8mmの撮像レンズを使用して、撮像用の照明部143としては疑似同軸照明を使用した。上記の基板1とマスク2の最近接距離の0.5mmは、この被写界深度0.8mmの範囲内である。このように撮像装置14a(ないし14b)の被写界深度を浅い条件を用いることで、絞りF値を小さく(開放値近くに)することができ、良好なレンズ分解能を得られる状態で撮像を行える。従って、基板1とマスク2の近接距離はできるだけ近くすることが好ましいが、上記の最近接距離の0.5mmは、この被写界深度0.8mmの範囲内に充分、入っている。
【0091】
撮像装置14aで撮像した画像を画像処理し、数値演算をすることで基板1とマスク2のズレ量を算出することができる。この算出されたズレ量を打ち消すようにクランプユニット28a、28bにより把持した基板1を水平面内で移動させることにより、基板1とマスク2のアライメントを行う。本実施例の場合、ズレ量が3μm以内になるまで撮像とズレ量の移動の動作を繰り返した(図11のS106、S107)。
【0092】
このようにして、ズレ量が所望の範囲内になったら、基板1とマスク2の接触動作に入る。図8(d)に示すように、上方(図中右側)のクランプユニット28bのクランプ力(押圧力)を解除、または少なくともクランプユニット28aのクランプ力(押圧力)より小さい値に制御する(図11のS108)。
【0093】
本実施例の場合、まず、基板1の左側の第1辺付近のクリアランスである0.5mmだけ、基板1を傾斜姿勢(第2の姿勢)のまま下降させる。これにより、左側の近接部から基板1とマスク2の接触が開始される。全体を0.5mm下降させ、基板1とマスク2の接触が始まった後は、基板1の左側の第1辺の側のクランプユニット28aの下降動作を停止させ、接触してない右側の第2辺の側のクランプユニット28bの下降動作は継続させる。この時、クランプユニット28bのクランプ力(押圧力)を解除、または少なくともクランプユニット28aよりも小さくしているため、基板1に水平方向に無理な力を加えることがない。このため、基板1の下面は、左側の第1辺から第2辺に向かって、除々にマスク2の上面に接触していく。基板1の右側の第2辺の側のクランプユニット28bの下降は、例えばクランプユニット28a、28bの高低差が0となった時に停止させる。
【0094】
以上のようにして、図8(e)~図8(f)に示す順序で基板1とマスク2をアライメントし、しかも基板1をマスク2に載置させる過程では、基板1のズレを極力生じさせないように接触させることができる。
【0095】
また、本実施例の実施条件によれば、撮像装置14aで基板1とマスク2を近接させた位置でマークを撮像することができ、撮像光学系142に分解能が高いレンズを使用することができる。このため、結果的に撮像装置14aの解像度が向上し、高精度なアライメントが行える。また、傾斜姿勢(第2の姿勢)で、上辺(第2辺)のクランプを解除ないし押圧力を弱めた状態で基板1の全体を除々に下降させてマスク2上に載置する。このような制御によって、接触時のズレ量を減らすことができ、密着動作での位置ズレ量を含めてもアライメント精度を5μm以内に抑えることができた。
【0096】
<実施例2>
以下では、実施例1におけるアライメント動作を行った後の成膜動作を詳細に説明する。
【0097】
本実施例の成膜装置においても、アライメント装置101は、真空排気可能な成膜チャンバ4内に配置されている。成膜チャンバ4内には、大気圧環境に対して減圧環境とするための真空排気機構として、ドライポンプ123およびクライオポンプ124が設けられ、成膜圧力までの排気を行うことができる。本実施例においては5×10-5Pa以下になるまで排気した後、蒸着源7の加熱を開始する。
【0098】
蒸着源7には、上述のように材料収納容器としてルツボ(不図示)が設けられ、本実施例では蒸着材料としてAlq3を用いた。蒸着源7内に設置された不図示のヒータにより蒸着源7の温度が室温から320℃になるまで3時間程度かけて昇温を行った。蒸着源温度が320℃になったら、レート制御に切り替えてレートセンサ、例えば水晶膜厚計にて成膜レートを測定しながら所定の成膜レートとなるまで制御した後、成膜を開始した。本実施例では、5Å/secの成膜レートとなるように蒸着源7を制御した。
【0099】
蒸着源7の成膜レートが安定したところで基板1を搬送機構(詳細不図示)によって成膜チャンバ4内に搬送する。基板1としては実施例1と同様に第四世代と呼ばれる基板サイズを用い、具体的には930×720×0.5t(mm)の無アルカリガラス基板を使用した。基板1とマスク2のアライメントは実施例1で説明したのと同様に行い、上述のようにして基板1とマスク2のアライメントが取れ、基板1とマスク2が密着状態となった後、成膜動作を行った。
【0100】
上述のように蒸着源7には直線状に蒸着材料が放出される穴が設けられ(詳細不図示)、蒸着源7が移動することにより基板1に蒸着材料Alq3を成膜する。本実施例において、5Å/secの成膜レートとなるように制御した場合の蒸着源7の温度は330~340℃程度であった。蒸着源7内部の蒸着材料の残量により温度が変化するが、本実施例では、蒸着源7の温度が330℃程度で5Å/secの成膜レートの時に成膜動作を行った。1000Å成膜する際の時間は200secであり、その場合、蒸着源7を2往復させて基板1に堆積させた。
【0101】
成膜後、基板1に堆積させた蒸着材料が基板1に形成されたパターンとのズレ量を確認したところ、本実施例の成膜処理では、目標位置に対して10μm以内の誤差を達成することができた。
【0102】
<実施例3>
本実施例では、アライメント装置101のクランプユニット28a、28b、特にその基板受け爪26a、26bの詳細な構成例を示す。図10は本実施例のアライメント装置101の要部、特に基板受け爪26a、26bの構成を示しており、特に基板1の左側、第1辺の(左)側の基板受け爪26aの構成は図中に拡大して示してある。
【0103】
本実施例の基板受け爪26a、26bは、図10のように、少なくともの基板受け爪26aの基板1を支持する支持面は、先端上りの傾斜形状に形成してある。また、第2辺の(右)側の基板受け爪26bは先端下がりの傾斜形状で、基板受け爪26a、26bはほぼ平行な傾斜角度に取られている。基板受け爪26aは、その長さL=20mmの時に、先端との高低差H=0.5mmとした。この支持面の傾斜(勾配)は、基板受け爪26aが、支持する基板1を上述の第2の(傾斜)姿勢に制御した時に、その第2の(傾斜)姿勢に沿うような角度として設計されたものである。
【0104】
基板1の大きさ、厚み、材質などに応じて、上述の第2の(傾斜)姿勢に制御した時の第1辺(第2辺)の角度は異なるため、基板受け爪26a、26bは着脱可能な構成とし、傾斜角度の異なるものに容易に交換できるようなシステムとしてもよい。また、基板受け爪26aは、その全長L=20mmの半分程度の長さの部分に基板が接触するように設計され、基板1の搬送精度により数ミリ程度の誤差が許容できるようにしてある。
【0105】
基板受け爪26aの傾斜は、勾配(傾斜)の表現では、本実施例の場合、H/L=(0.5mm/20mm)は1/40の勾配に相当する。一般的なサイズ、厚みの基板1、あるいはその撓み量に応じて決定すべき第2の(傾斜)姿勢の角度を考慮すると、基板受け爪26a、26bの勾配は、凡そ1/100以上1/10以下の範囲であることが好ましい、と考えられる。なお、本実施形態において、第2辺の側の基板受け爪26bは、従動的に動作するものであるから、上記のように先端下がりに傾斜していても良いし、また、通常の水平形状であってもよい。
【0106】
本実施例の傾斜させた基板受け爪26a、26bを用いて、実施例1と同様の制御によってアライメント動作を行った場合、実施例1と同様に基板1とマスク2を近接させた位置でマークを撮像することができた。また、上記のように、基板受け爪26a、26bの勾配が基板の傾斜にほぼ沿うように構成されているため、第2の(傾斜)姿勢に基板1を制御しても基板1の辺部に無理な力がかかることがなく、アライメント誤差を生じる可能性を低減できる。また、本実施例においても実施例1と同様に撮像光学系142に分解能が高いレンズを使用することができ、結果的に撮像装置14aでの解像度が向上し、アライメント精度を向上することができる。さらに傾斜させた基板受け爪26a、26bを用いて、基板~マスクの接触時の接触状態を管理し、接触時のズレ量を減らすことができるため、密着動作での位置ズレ量を含めてもアライメント精度を5μm以内に抑えることができた。
【0107】
なお、基板受け爪26a、26bに対向するクランプ27a、27bの押圧面を、それぞれ基板受け爪26a、26bと平行な勾配を有する傾斜面で構成してもよい。
【0108】
なお、クランプユニット28a、28bの各部の形状を最適化することで更に基板1とマスク2の距離を近接することができ、撮像装置14aの解像度を高めることができるとともに、基板~マスクの接触時の移動量が少なくできる。具体的には、把持部の形状を基板の傾き形状と合わせることで基板の姿勢を理想的な状態に近づけることが可能となり、撮像系の解像度を高めることができるとともに接触時の移動量が小さくなり、結果的にズレ量を抑えることができる。
【0109】
以上、本発明の実施形態、および実施例1~3につき説明したが、これらはあくまでも一例に過ぎず、本発明は実施形態や実施例の構成に限定されるものではなく、当業者において種々の設計変更が可能なのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0110】
1…基板、2…マスク、4…成膜チャンバ、7…蒸着源、14…撮像装置、26…基板受け爪、27…クランプ、28…クランプユニット、31…成膜室、32…投入室、33…搬送室、34…搬送機構、35…受渡室、101…アライメント装置、123…ドライポンプ、124…クライオポンプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12