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特許7194216半導体装置の製造方法、基板処理方法、プログラム及び基板処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理方法、プログラム及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20221214BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20221214BHJP
   C23C 16/56 20060101ALI20221214BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/31 B
C23C16/56
C23C16/42
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021043042
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022142822
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】新田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】石橋 清久
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 司
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/037927(WO,A1)
【文献】特表2018-523917(JP,A)
【文献】特開2019-220575(JP,A)
【文献】特開2017-216335(JP,A)
【文献】特開2013-084911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/312-21/32
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/469-21/475
H01L 21/86
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(a-1)基板に対して所定元素を含む第1原料ガスを供給する工程と、
(a-2)前記基板に対して、前記所定元素を含み、前記第1原料ガスよりも熱分解温度が低い第2原料ガスを供給する工程と、
(a-3)前記基板に対して窒化ガスを供給する工程と、
をこの順に非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、前記所定元素を含む窒化膜を形成する工程と、
(b)前記基板に対して酸化ガスを供給することで、(a)において形成した前記窒化膜を酸化させ、前記所定元素を含む酸化膜に改質する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
(a)及び(b)を非同時に行うサイクルを所定回数行うことにより、前記基板上に、所定の厚さの前記酸化膜を形成する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
(a)において形成する前記窒化膜の厚さを、(b)における酸化の効果が前記窒化膜の厚さ方向の全体に亘って及ぶ厚さとする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
(a)及び(b)を同一の処理室内にて行う請求項1~3のいずれかの請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1原料ガスとして、その解離エネルギーが、前記第2原料ガスの解離エネルギーよりも大きいガスを用いる請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1原料ガスは、1分子中に前記所定元素の原子同士の結合を有しておらず、
前記第2原料ガスは、1分子中に前記所定元素の原子同士の結合を有している請求項1~5のいずれかの請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1原料ガスは、1分子中に前記所定元素の原子を1個のみ有しており、
前記第2原料ガスは、1分子中に前記所定元素の原子を2個以上有している請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1原料ガスは、SiCl4ガス、SiH2Cl2ガス、SiH3Clガス、SiH3Clガスにより構成される群から選択される少なくとも1つのガスであり、
前記第2原料ガスは、Si2Cl6ガス、Si2H5Clガス、Si2H4Cl2ガス、Si2H3Cl3ガス、Si2H2Cl4ガス、Si3H5Clガス、Si3H4Cl2ガスにより構成される群から選択される少なくとも1つのガスである請求項1~7のいずれかの請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
(a-1)では前記基板の温度を前記第1原料ガスが熱分解しない温度とし、
(a-2)では前記基板の温度を前記第2原料ガスが熱分解する温度とする請求項1~8のいずれかの請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
(c)(a)を行う前に、前記基板に対して窒化水素系ガスを供給する工程、をさらに有する請求項1~9のいずれかの請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
(a)及び(b)を行うサイクルを所定回数行い、各サイクルを行うたびに(c)を行う請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記窒化ガスは前記窒化水素系ガスである請求項10又は11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記窒化水素系ガスは、NH3ガス、N2H2ガス、N2H4ガス、N3H8ガスにより構成される群から選択される少なくとも一つのガスである請求項10~12のいずれかの請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記酸化ガスは、O2ガス、O3ガス、O2ガス及びH2ガス、H2Oガス、Oラジカルを含むガス、OHラジカルを含むガス、プラズマ励起されたO2を含むガスにより構成される群から選択される少なくとも一つのガスである請求項1~13のいずれかの請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
(b)では、減圧雰囲気下の加熱された前記基板に対してO2ガス及びH2ガスを供給する請求項1~13のいずれかの請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
(a)では、前記窒化膜中における前記所定元素の比率が、前記窒化膜が化学量論組成を有する場合における前記窒化膜中における前記所定元素の比率よりも大きくなるように、
(a-1)における前記第1原料ガスの供給時間と、(a-2)における前記第2原料ガスの供給時間と、の比率、
(a-1)における前記第1原料ガスの供給流量と、(a-2)における前記第2原料ガスの供給流量と、の比率、
(a-1)における処理圧力と、(a-2)における処理圧力と、の比率、
のうち少なくともいずれかの比率が調整される請求項1~15のいずれかの請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
(a-2)における前記第2原料ガスの供給時間を、(a-1)における前記第1原料ガスの供給時間よりも長くする請求項16に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
(a-2)における前記第2原料ガスの供給流量を、(a-1)における前記第1原料ガスの供給流量よりも大きくする請求項16に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
(a-2)における処理圧力を、(a-1)における処理圧力よりも高くする請求項16に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
(a)(a-1)基板に対して所定元素を含む第1原料ガスを供給する工程と、
(a-2)前記基板に対して、前記所定元素を含み、前記第1原料ガスよりも熱分解温度が低い第2原料ガスを供給する工程と、
(a-3)前記基板に対して窒化ガスを供給する工程と、
をこの順に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、前記所定元素を含む窒化膜を形成する工程と、
(b)前記基板に対して酸化ガスを供給することで、(a)において形成した前記窒化膜を酸化させ、前記所定元素を含む酸化膜に改質する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項21】
基板処理装置の処理室内において、
(a)(a-1)基板に対して所定元素を含む第1原料ガスを供給する手順と、
(a-2)前記基板に対して前記所定元素を含み前記第1原料ガスよりも熱分解温度が低い第2原料ガスを供給する手順と、
(a-3)前記基板に対して窒化ガスを供給する工程と、をこの順に非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、前記所定元素を含む窒化膜を形成する手順と、
(b)前記基板に対して酸化ガスを供給することで、(a)において形成した前記窒化膜を酸化させ、前記所定元素を含む酸化膜に改質する手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項22】
基板が処理される処理室と、
前記処理室内の基板に対して所定元素を含む第1原料ガスを供給する第1原料ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して前記所定元素を含み前記第1原料ガスよりも熱分解温度が低い第2原料ガスを供給する第2原料ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して窒化ガスを供給する窒化ガス供給系と
前記処理室内の基板に対して酸化ガスを供給する酸化ガス供給系と
前記処理室内において、(a)(a-1)基板に対して前記第1原料ガスを供給する処理と、(a-2)前記基板に対して前記第2原料ガスを供給する処理と、(a-3)前記基板に対して前記窒化ガスを供給する処理と、をこの順に非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、前記所定元素を含む窒化膜を形成する処理と、(b)前記基板に対して酸化ガスを供給することで、(a)において形成した前記窒化膜を酸化させ、前記所定元素を含む酸化膜に改質する処理と、を行わせるように、前記第1原料ガス供給系、前記第2原料ガス供給系、前記窒化ガス供給系、および前記酸化ガス供給系を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、基板処理方法、プログラム及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板上に膜を形成する処理が行われることがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-50425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板上に形成される膜の特性を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
(a)(a-1)基板に対して所定元素を含む第1原料ガスを供給する工程と、
(a-2)前記基板に対して、前記所定元素を含み、前記第1原料ガスよりも熱分解温度が低い第2原料ガスを供給する工程と、
(a-3)前記基板に対して窒化ガスを供給する工程と、
をこの順に非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、前記所定元素を含む窒化膜を形成する工程と、
(b)前記基板に対して酸化ガスを供給することで、(a)において形成した前記窒化膜を酸化させ、前記所定元素を含む酸化膜に改質する工程と、
を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板上に形成される膜の特性を向上させることが可能な技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示す図である。
図2図2は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を図1のA-A線断面図で示す図である。
図3図3は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラ121の概略構成図であり、コントローラ121の制御系をブロック図で示す図である。
図4】本開示の一態様の基板処理工程におけるフローを示す図である。
図5】(a)は、ステップa1を行うことで第1原料ガスが供給された後のウエハ200の表面の状態を示す模式図であり、(b)は、ステップa1を行った後、ステップa2を行うことで第2原料ガスが供給された後のウエハ200の表面の状態を示す模式図であり、(c)は、ステップa2を行った後、ステップa3を行うことで窒化ガスが供給された後のウエハ200の表面の状態を示す模式図である。
図6】基板上に形成された膜の評価結果を示す図である。
図7】基板上に形成された膜の評価結果を示す図である。
図8】基板上に形成された膜の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、主に、図1図5を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面上の各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は温度調整器(加熱部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0011】
処理室201内には、第1~第3供給部としてのノズル249a~249cが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a~249cを、それぞれ第1~第3ノズルとも称する。ノズル249a~249cは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料により構成されている。ノズル249a~249cには、ガス供給管232a~232cがそれぞれ接続されている。ノズル249a~249cはそれぞれ異なるノズルであり、ノズル249b,249cのそれぞれは、ノズル249aに隣接して設けられている。
【0012】
ガス供給管232a~232cには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a~241cおよび開閉弁であるバルブ243a~243cがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232d,232fが接続されている。ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、ガス供給管232e,232gが接続されている。ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側には、ガス供給管232hが接続されている。ガス供給管232d~232hには、ガス流の上流側から順に、MFC241d~241hおよびバルブ243d~243hがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a~232hは、例えばSUS等の金属材料により構成されている。
【0013】
図2に示すように、ノズル249a~249cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a~249cは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。平面視において、ノズル249aは、処理室201内に搬入されるウエハ200の中心を挟んで後述する排気口231aと一直線上に対向するように配置されている。ノズル249b,249cは、ノズル249aと排気口231aの中心とを通る直線Lを、反応管203の内壁(ウエハ200の外周部)に沿って両側から挟み込むように配置されている。直線Lは、ノズル249aとウエハ200の中心とを通る直線でもある。すなわち、ノズル249cは、直線Lを挟んでノズル249bと反対側に設けられているということもできる。ノズル249b,249cは、直線Lを対称軸として線対称に配置されている。ノズル249a~249cの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a~250cがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a~250cは、それぞれが、平面視において排気口231aと対向(対面)するように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a~250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0014】
ガス供給管232aからは、所定元素を含む第1原料ガス(第1原料)が、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。第1原料ガスとしては、1分子中に上述の所定元素の原子同士の結合を有していないガスを用いることができる。また、第1原料ガスとしては、1分子中に上述の所定元素の原子を1個のみ有するガスを用いることができる。第1原料ガスとしては、その解離エネルギー、すなわち、その1分子が複数の分子に分解等するのに必要なエネルギーが、後述する第2原料ガスの解離エネルギーよりも大きいガスを用いることができる。例えば、熱エネルギーによる解離について着目すると、第1原料ガスは、第2原料ガスよりも熱分解温度が高いガスを用いることができる。本明細書では、処理室201内に第1原料ガスが単独で存在した場合に第1原料ガスが解離する温度(熱分解する温度)を、第1温度と称する場合がある。
【0015】
ガス供給管232bからは、窒化ガス(窒化剤)として、窒素(N)および水素(H)含有ガスである窒化水素系ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0016】
ガス供給管232cからは、酸化ガス(酸化剤)として、酸素(O)含有ガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給される。
【0017】
ガス供給管232dからは、上述の所定元素を含み、第1原料ガスよりも熱分解温度が低い第2原料ガス(第2原料)が、MFC241d、バルブ243d、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。第2原料ガスとしては、1分子中に所定元素の原子同士の結合を有しているガスを用いることができる。また、第2原料ガスとしては、1分子中に所定元素の原子を2個以上有しているガスを用いることができる。また、第2原料ガスとしては、その解離エネルギーが、上述の第1原料ガスの解離エネルギーよりも小さいガスを用いることができる。例えば、熱エネルギーによる解離について着目すると、第2原料ガスは、第1原料ガスよりも熱分解温度が低いガスを用いることができる。本明細書では、処理室201内に第2原料ガスが単独で存在した場合に第2原料ガスが解離する温度(熱分解する温度)を、第2温度と称する場合がある。
【0018】
ガス供給管232eからは、還元ガス(還元剤)として、水素(H)含有ガスが、MFC241e、バルブ243e、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。H含有ガスは、それ単体では酸化作用は得られないが、後述する基板処理工程において、特定の条件下でO含有ガスと反応することで原子状酸素(atomic oxygen、O)等の酸化種を生成し、酸化処理の効率を向上させるように作用する。そのため、H含有ガスは、酸化ガスに含めて考えることができる。
【0019】
ガス供給管232f,232g,232hからは、不活性ガスが、それぞれMFC241f,241g,241h、バルブ243f,243g,243h、ガス供給管232a,232b,232c、ノズル249a,249b,249cを介して処理室201内へ供給される。不活性ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0020】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、第1原料ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、窒化ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、酸化ガス供給系が構成される。ガス供給管232e、MFC241e、バルブ243eを酸化ガス供給系に含めて考えてもよい。主に、ガス供給管232d、MFC241d、バルブ243dにより、第2原料ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232f~232h、MFC241f~241h、バルブ243f~243hにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0021】
なお、第1原料ガス、第2原料ガス、窒化ガス、酸化ガスのうち少なくともいずれかを、成膜ガスとも称し、第1原料ガス供給系、第2原料ガス供給系、窒化ガス供給系、酸化ガス供給系のうち少なくともいずれかを、成膜ガス供給系とも称する。
【0022】
上述の各種ガス供給系のうち、いずれか、或いは、全てのガス供給系は、バルブ243a~243hやMFC241a~241h等が集積されてなる集積型ガス供給システム248として構成されていてもよい。集積型ガス供給システム248は、ガス供給管232a~232hのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232h内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a~243hの開閉動作やMFC241a~241hによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型ガス供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232h等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型ガス供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0023】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。図2に示すように、排気口231aは、平面視において、ウエハ200を挟んでノズル249a~249c(ガス供給孔250a~250c)と対向(対面)する位置に設けられている。排気口231aは、反応管203の側壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ配列領域に沿って設けられていてもよい。排気口231aには排気管231が接続されている。排気管231は、例えばSUS等の金属材料により構成されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0024】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、例えばSUS等の金属材料により構成され、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0025】
マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0026】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で鉛直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
【0027】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0028】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0029】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0030】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241h、バルブ243a~243h、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0031】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241hによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243hの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0032】
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやSSD等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0033】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200に対し処理を行うシーケンス例、すなわち、ウエハ200上に膜を形成する成膜シーケンス例について、主に、図4図5(a)~図5(c)を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0034】
本態様における成膜シーケンスでは、
ウエハ200に対して所定元素を含む第1原料ガスを供給するステップa1と、
ウエハ200に対して、所定元素を含み、第1原料ガスよりも熱分解温度が低い第2原料ガスを供給するステップa2と、
ウエハ200に対して窒化ガスを供給するステップa3と、
をこの順に非同時に行うサイクルを所定回数(m回、mは1以上の整数)行うことで、ウエハ200上に、所定元素を含む窒化膜を形成するステップ(窒化膜形成)と、
ウエハ200に対して酸化ガスを供給することで、窒化膜形成において形成した窒化膜を酸化させ、所定元素を含む酸化膜に改質するステップ(酸化)と、
を行う。
【0035】
なお、本態様における成膜シーケンスでは、
窒化膜形成および酸化を非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200上に、所定の厚さの酸化膜を形成する。
【0036】
また、本態様における成膜シーケンスでは、
、窒化膜形成を行う前に、ウエハ200に対して窒化水素系ガスを供給するステップ(プリフロー)をさらに行う。具体的には、窒化膜形成および酸化を非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行い、各サイクルを行うたびにプリフローを行う。
【0037】
以下、所定元素がシリコン(Si)を含む場合について説明する。この場合、第1原料ガス、第2原料ガスとして、後述するシラン系ガスを用いることができる。また、窒化ガスとして窒素(N)及び水素(H)を含むガスである窒化水素系ガスを用いることができる。また、酸化ガスとして酸素(O)含有ガスおよび水素(H)含有ガスを用いることができる。この場合、窒化膜形成では、ウエハ200上に、窒化膜としてのシリコン窒化膜(SiN膜)が形成されることとなる。酸化では、ウエハ200上に形成されたSiN膜が酸化膜としてのシリコン酸化膜(SiO膜)へと改質されることとなる。
【0038】
本明細書では、上述の成膜シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例や他の態様の説明においても、同様の表記を用いる。
【0039】
〔窒化水素系ガス→(第1原料ガス→第2原料ガス→窒化ガス)×m→酸化ガス〕×n
【0040】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0041】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)された後、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0042】
(圧力調整および温度調整)
ボートロードが終了した後、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0043】
(成膜処理)
その後、次のプリフロー、窒化膜形成、酸化をこの順に行う。
【0044】
[プリフロー]
このステップでは、処理室201内のウエハ200に対して窒化水素系ガスを供給する。
【0045】
具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へ窒化水素系ガスを流す。窒化水素系ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231より排気される。このとき、ウエハ200に対して窒化水素系ガスが供給される(窒化水素系ガス供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。なお、以下に示すいくつかの方法においては、処理室201内への不活性ガスの供給を不実施とするようにしてもよい。
【0046】
本ステップにおける処理条件としては、
窒化水素系ガス供給流量:100~10000sccm
不活性ガス供給流量(各ガス供給管):0~20000sccm
各ガス供給時間:1~30分
処理温度:300~1000℃、好ましくは700~900℃、より好ましくは750~800℃
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは20~1333Pa
が例示される。
【0047】
なお、本明細書における「1~4000Pa」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「1~4000Pa」とは「1Pa以上4000Pa以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本明細書における処理温度とは、ウエハ200の温度のことを意味し、処理圧力とは、ウエハ200が存在する空間である処理室201内の圧力のことを意味する。また、ガス供給流量:0sccmとは、そのガスを供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0048】
成膜処理を実施する前のウエハ200の表面には、自然酸化膜などが形成されている場合がある。上述の条件下でウエハ200に対して窒化水素系ガスを供給することにより、自然酸化膜等が形成されたウエハ200の表面に、NH終端を形成することが可能となる。これにより、後述する窒化膜形成において、ウエハ200上で所望の成膜反応を効率的に進行させることが可能となる。ウエハ200の表面に形成されたNH終端を、H終端と同義にとらえることもできる。また、後述する窒化膜を酸化させて酸化膜に改質するステップを行うことにより、ウエハ200の表面のNH終端が減少することがあるため、プリフローは窒化膜形成および酸化を非同時に行うサイクルを行うたびに行うことが好ましい。ただし、プリフローをサイクルごとに行うことによるスループットの低下を考慮して、プリフローは、窒化膜形成および酸化を非同時に行うサイクルを1度行った後は行わないようにしてもよい。また、プリフローは、窒化膜形成および酸化を非同時に行うサイクルを所定回数(p回、pは2以上の整数且つp<n)行うごとに行うようにしてもよい。
【0049】
プリフローすることでウエハ200の表面にNH終端を形成した後、バルブ243bを閉じ、処理室201内への窒化水素系ガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。このとき、バルブ243f~243hを開き、処理室201内へ不活性ガスを供給する。
【0050】
窒化水素系ガスとしては、例えば、アンモニア(NH)ガス、ジアゼン(N)ガス、ヒドラジン(N)ガス、Nガス等を用いることができる。窒化水素系ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0051】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0052】
[窒化膜形成]
プリフローが終了後したら、窒化膜形成を行う。このステップでは、次のステップa1~a3をこの順に行う。
【0053】
〔ステップa1〕
このステップでは、処理室201内のウエハ200に対して第1原料ガスを供給する。
【0054】
具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ第1原料ガスを流す。第1原料ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231より排気される。このとき、ウエハ200に対して第1原料ガスが供給される(第1原料ガス供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。なお、以下に示すいくつかの方法においては、処理室201内への不活性ガスの供給を不実施とするようにしてもよい。
【0055】
本ステップにおける処理条件としては、
第1原料ガス供給流量:1~2000sccm、好ましくは100~1000sccm
不活性ガス供給流量(各ガス供給管):100~20000sccm
各ガス供給時間:10~300秒、好ましくは30~120秒
処理温度:400~900℃、好ましくは500~800℃、より好ましくは600~750℃(第1温度よりも低い温度、好ましくは、第1温度よりも低く第2温度よりも高い温度)
処理圧力:1~2666Pa、好ましくは10~1333Pa
が例示される。他の処理条件は、上述のプリフローにおける処理条件と同様とすることができる。
【0056】
第1原料ガスとして、例えば、テトラクロロシラン(SiCl)ガスを用い、上述の条件下で本ステップを行うことにより、SiClにおけるSi-Cl結合の一部を切断し、未結合手を有することとなったSiをウエハ200の表面の吸着サイトに吸着させることができる。また、上述の条件下では、SiClにおける切断されなかったSi-Cl結合をそのまま保持することができる。例えば、SiClを構成するSiが有する4つの結合手のうち、3つの結合手にそれぞれClを結合させた状態で、未結合手を有することとなったSiをウエハ200の表面の吸着サイトに吸着させることができる。また、ウエハ200の表面に吸着したSiから切断されず保持されたClが、このSiに未結合手を有することとなった他のSiが結合することを阻害するので、ウエハ200上にSiが多重に堆積することを回避することができる。Siから切り離されたClは、HClやCl等のガス状物質を構成して排気管231より排気される。Siの吸着反応が進行し、ウエハ200の表面に残存する吸着サイトがなくなると、その吸着反応は飽和することになるが、本ステップでは、吸着反応が飽和する前に第1原料ガスの供給を停止し、吸着サイトが残存した状態で本ステップを終了することが望ましい。
【0057】
これらの結果、ウエハ200上には、第1層として、1原子層未満の厚さの略均一な厚さのSiおよびClを含む層、すなわち、Clを含むSi含有層が形成される。図5(a)に、第1層が形成されたウエハ200の表面の状態を示す模式図を示す。ここで、1原子層未満の厚さの層とは、不連続に形成される原子層のことを意味しており、1原子層の厚さの層とは、連続的に形成される原子層のことを意味している。また、1原子層未満の厚さの層が略均一であるということは、ウエハ200の表面上に略均一な密度で原子が吸着していることを意味している。第1層は、ウエハ200上に略均一な厚さに形成されるため、ステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性に優れている。
【0058】
なお、第1原料ガスとしてSiClガスを用いる場合、処理温度が400℃未満となると、ウエハ200上にSiが吸着しにくくなり、第1層の形成が困難となる場合がある。処理温度を400℃以上にすることにより、ウエハ200上に第1層を形成することが可能となる。処理温度を500℃以上にすることで、上述の効果が確実に得られるようになる。処理温度を600℃以上にすることで、上述の効果がより確実に得られるようになる。
【0059】
第1原料ガスとしてSiClガスを用いる場合、処理温度が900℃を超えると、分子構造における切断されなかったSi-Cl結合をそのまま保持することが困難となるとともに、第1原料ガスの熱分解速度が増大するその結果、ウエハ200上にSiが多重に堆積し、第1層として、1原子層未満の厚さの略均一な厚さのSi含有層を形成することが難しくなる場合がある。なお、この場合、第1原料ガスに係る上述した第1温度は、900℃を超える範囲内の所定の温度と考えることができる。処理温度を900℃以下とすることにより、第1層として、1原子層未満の厚さの略均一な厚さのSi含有層を形成することが可能となる。処理温度を750℃以下とすることで、上述の効果が確実に得られるようになる。
【0060】
ウエハ200上に第1層を形成した後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への第1原料ガスの供給を停止する。そして、上述のプリフローにおけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0061】
第1原料ガスとしては、所定元素としてのシリコン(Si)を1つのみ含み、Si-Si結合を有さず、Siに結合したハロゲン元素を含む分子構造を有するハロシラン系ガスを用いることができる。ハロゲン元素には、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等が含まれる。第1原料ガスとしては、例えば、SiおよびClを含むクロロシラン系ガスを用いることができる。
【0062】
第1原料ガスとしては、SiClガスの他、例えば、モノクロロシラン(SiHCl)ガス、ジクロロシラン(SiHCl)ガス、トリクロロシラン(SiHCl)ガス等のクロロシラン系ガスを用いることができる。第1原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。第1原料ガスとしては、クロロシラン系ガスの他、例えば、テトラフルオロシラン(SiF)ガス、ジフルオロシラン(SiH)ガス等のフルオロシラン系ガスや、テトラブロモシラン(SiBr)ガス、ジブロモシラン(SiHBr)ガス等のブロモシラン系ガスや、テトラヨードシラン(SiI)ガス、ジヨードシラン(SiH)ガス等のヨードシラン系ガスを用いることもできる。
【0063】
〔ステップa2〕
このステップでは、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成された第1層に対して第2原料ガスを供給する。
【0064】
具体的には、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へ第2原料ガスを流す。第2原料ガスは、MFC241dにより流量制御され、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231より排気される。このとき、ウエハ200に対して第2原料ガスが供給される(第2原料ガス供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。なお、以下に示すいくつかの方法においては、処理室201内への不活性ガスの供給を不実施とするようにしてもよい。
【0065】
本ステップにおける処理条件としては、
第2原料ガス供給流量:1~2000sccm、好ましくは100~1000sccm
不活性ガス供給流量(各ガス供給管):0~20000sccm
各ガス供給時間:0.5~60秒、好ましくは1~30秒
処理温度:500~1000℃、好ましくは600~800℃、より好ましくは650~750℃(第2温度よりも高い温度、好ましくは、第2温度よりも高く第1温度よりも低い温度)
が例示される。他の処理条件は、上述のプリフローにおける処理条件と同様とすることができる。
【0066】
第2原料ガスとして、例えば、ヘキサクロロジシラン(SiCl)ガスを用い、上述の条件下で本ステップを行うことにより、SiClを熱分解させ、これにより未結合手を有することとなったSiを、ステップa1において第1層が形成されずに残存したウエハ200表面上の吸着サイトと反応させて、ウエハ200の表面に吸着させることができる。この際、分子構造に含まれるSi-Si結合が熱分解で切断されることにより、未結合手を有するSiを含む分子が生成される。一方、第1層が形成された部分には吸着サイトが存在しないため、第1層上に対するSiの吸着は抑制される。その結果、本ステップでは、ウエハ200の表面にわたり略均一な厚さに形成された第1層を基礎として、第2層としてのSi含有層が、ウエハ200の表面にわたり略均一な厚さで形成される。また、第2原料ガスの熱分解により未結合手を有することとなったSi同士は結合して、Si-Si結合を形成する。これらのSi-Si結合をウエハ200の表面上に残存した吸着サイト等と反応させることにより、第2層にSi-Si結合を含ませ、Siが多重に堆積した層とすることが可能となる。すなわち、本ステップにより、第2層に含ませるSi-Si結合の量(含有比率)を、第1層に含ませるSi-Si結合の量(含有比率)よりも大きくすることが可能となる。Siから切り離されたClは、HClやCl等のガス状物質を構成して排気管231より排気される。
【0067】
なお、本ステップにより第2層に含ませるSi-Si結合の量を第1層に含ませるSi-Si結合の量よりも大きくするためには、上述の通り、第2原料ガスが解離する温度(熱分解する温度)が、第1原料ガスが解離する温度(熱分解する温度)よりも低いことが好適である。換言すると、第2原料ガスは、第1原料ガスよりも、同一条件下において所定元素の原子同士の結合を形成しやすいガスであることが望ましい。例えば、第2原料ガスの分子中に所定元素の原子同士の結合が含まれていることが好適である。また例えば、第2原料ガスの分子中における、Cl等のハロゲン元素の含有量に対するSi等の所定元素の含有量の比率である組成比が、第1原料ガスのそれよりも大きいことが好適である。このように、本ステップでは、ステップa1よりも、ウエハ表面上に残存した吸着サイト等に反応する所定元素の原子同士の結合が形成されやすいように、各ステップの処理温度等の処理条件の選択や、第1原料ガス及び第2原料ガスの選択が行われる。
【0068】
この結果、本ステップでは、第2層として、第1層の厚さを超える略均一な厚さのSi含有層が形成される。成膜レートの向上等の観点から、本実施形態では特に、第2層として、1原子層を超える略均一な厚さのSi含有層を形成する。図5(b)に、第2層が形成されたウエハ200の表面の状態を示す模式図を示す。なお、本明細書において、第2層とは、ステップa1及びステップa2が1回ずつ実施されることにより形成されたウエハ200上のSi含有層を意味している。
【0069】
なお、第2原料ガスとしてSiClガスを用いる場合、処理温度が500℃未満となると、ガスが熱分解しにくくなり、第2層の形成が困難となる場合がある。処理温度を500℃以上にすることにより、第1層上に第2層を形成することが可能となる。処理温度を600℃以上にすることで、上述の効果が確実に得られるようになる。処理温度を650℃以上にすることで、上述の効果がより確実に得られるようになる。
【0070】
第2原料ガスとしてSiClガスを用いる場合、処理温度が1000℃を超えると、第2原料ガスの熱分解が過剰となり、自己飽和しないSiの堆積が急速に進みやすくなるため、第2層を略均一に形成することが困難となる場合がある。処理温度を1000℃以下とすることにより、第2原料ガスの過剰な熱分解を抑制し、自己飽和しないSiの堆積を制御することで、第2層を略均一に形成することが可能となる。なお、この場合、第2原料ガスに係る上述した第2温度は、1000℃を超える範囲内の所定の温度と考えることができる。処理温度を800℃以下とすることで、上述の効果が確実に得られるようになる。処理温度を750℃以下とすることで、上述の効果がより確実に得られるようになる。
【0071】
また、ステップa1,a2における温度条件は、実質的に同一の条件とすることが望ましい。これにより、ステップa1,a2の間で、ウエハ200の温度変更、すなわち、処理室201内の温度変更(ヒータ207の設定温度の変更)を行うことが不要となるので、ステップ間でウエハ200の温度を安定させるまでの待機時間が不要となり、基板処理のスループットを向上させることができる。従って、ステップa1,a2においては共に、ウエハ200の温度を、例えば500~900℃、好ましくは600~800℃、より好ましくは650~750℃の範囲内の所定の温度とするのがよい。本実施形態では、ステップa1,a2における温度条件が実質的に同一である場合、ステップa1においては第1原料ガスの熱分解が実質的に起こらず(すなわち抑制され)、ステップa2においては第2原料ガスの熱分解が起こる(すなわち促進される)ように、当該温度条件と、第1原料ガス及び第2原料ガスが選択される。
【0072】
ウエハ200上に第2層を形成した後、バルブ243dを閉じ、処理室201内への第2原料ガスの供給を停止する。そして、上述のプリフローにおけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0073】
第2原料ガスとしては、所定元素としてのシリコン(Si)を2つ以上含み、Si-Si結合を有し、Siに結合したハロゲン元素を含む分子構造を有するハロシラン系ガスを用いることができる。ハロゲン元素には、Cl、F、Br、I等が含まれる。第2原料ガスとしては、例えば、SiおよびClを含むクロロシラン系ガスを用いることができる。第2原料ガスとしては、SiClガスの他、例えば、モノクロロジシラン(SiCl)ガス、ジクロロジシラン(SiCl)ガス、トリクロロジシラン(SiCl)ガス、テトラクロロジシラン(SiCl)ガス、モノクロロトリシラン(SiCl)ガス、ジクロロトリシラン(SiCl)ガス等のクロロシラン系ガスを用いることができる。第2原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0074】
第2原料ガスとしては、所定元素としてのシリコン(Si)を2つ以上含み、Si-Si結合を有し、Siに結合したアミノ基を含む分子構造を有するアミノシラン系ガスを用いることができる。第2原料ガスとしては、例えば、トリスジメチルアミノシラン(Si[N(CHH)ガス、ビスジエチルアミノシラン(SiH[N(C)ガス等のアミノシラン系ガスを用いることができる。第2原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。第2原料ガスとして、ノンハロゲンガスを用いることにより、ウエハ200上に最終的に形成される膜中へのハロゲンの混入を回避することが可能となる。
【0075】
[ステップa3]
このステップでは、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成された第1層と第2層とが積層してなる層に対して窒化ガスを供給する。
【0076】
具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へ窒化ガスを流す。窒化ガスは、MFC241bにより流量制御され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231より排気される。このとき、ウエハ200に対して窒化ガスが供給される(窒化ガス供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。なお、以下に示すいくつかの方法においては、処理室201内への不活性ガスの供給を不実施とするようにしてもよい。
【0077】
本ステップにおける処理条件としては、
窒化ガス供給流量:100~10000sccm、好ましくは1000~5000sccm
不活性ガス供給流量(各ガス供給管):0~20000sccm
各ガス供給時間:1~120秒、好ましくは10~60秒
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは10~1000Pa
が例示される。他の処理条件は、上述のプリフローにおける処理条件と同様とする。
【0078】
窒化ガスとして、例えば、窒化水素系ガスを用い、上述の条件下で本ステップを行うことにより、第2層の少なくとも一部を窒化させることができる。第2層に含まれていたClは、HCl、Cl等のガス状物質を構成して排気管231より排気される。この結果、ウエハ200上には、第3層として、SiとNとを含む窒化層であるシリコン窒化層(SiN層)が形成される。図5(c)に、第3層が形成されたウエハ200の表面の部分拡大図を示す。
【0079】
ウエハ200上に第3層を形成した後、バルブ243bを閉じ、処理室201内への窒化ガスの供給を停止する。そして、上述のプリフローにおけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0080】
窒化ガスとしては、例えば、アンモニア(NH)ガス、ジアゼン(N)ガス、ヒドラジン(N)ガス、Nガス等の窒化水素系ガスを用いることができる。窒化ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。また、窒化ガスは、プリフローにおいて用いられる窒化水素系ガスと同じガスを用いることができる。
【0081】
[所定回数実施]
上述のステップa1~a3をこの順に非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(m回、mは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200上に、所定組成比および所定膜厚の窒化膜を成膜することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成する窒化層の厚さを所望の膜厚よりも小さくして、上述のサイクルを所望の膜厚になるまで複数回繰り返すのが好ましい。ただし、サイクルを所定回数行うことでウエハ200上に形成される窒化膜の厚さは、本ステップの後に行う酸化の効果が窒化膜の全体に亘って及ぶ厚さとすることが好ましい。
【0082】
窒化膜形成では、ウエハ200上に形成される窒化膜中における所定元素(Si)の比率が、窒化膜が化学量論組成を有する場合における窒化膜中における所定元素の比率(例えばSiN膜の場合はSi:N=3:4)よりも大きくなるように(すなわち、この膜が所定元素リッチな膜となるように)、ステップa1における第1原料ガスの供給時間Tと、ステップa2における第2原料ガスの供給時間Tと、の比率、ステップa1における第1原料ガスの供給流量Fと、ステップa2における第2原料ガスの供給流量Fと、の比率、ステップa1における処理圧力Pと、ステップa2における処理圧力Pと、の比率、のうち、少なくともいずれかの比率を調整することが好ましい。
【0083】
例えば、ステップa2における第2原料ガスの供給時間Tを、ステップa1における第1原料ガスの供給時間Tよりも長くすることにより(T/T>1とすることにより)、ウエハ200上に形成される窒化膜中における所定元素の比率を増やす方向に(所定元素リッチな組成とする方向に)制御することが可能となる。
【0084】
また例えば、ステップa2における第2原料ガスの供給流量Fを、ステップa1における第1原料ガスの供給流量Fよりも大きくすることにより(F/F>1とすることにより)、ウエハ200上に形成される窒化膜中における所定元素の比率を増やす方向に(所定元素リッチな組成とする方向に)制御することが可能となる。
【0085】
また例えば、ステップa2における処理圧力Pを、ステップa1における処理圧力Pよりも高くすることにより(P/P>1とすることにより)、ウエハ200上に形成される窒化膜中における所定元素の比率を増やす方向に(所定元素リッチな組成とする方向に)制御することが可能となる。
【0086】
[酸化]
窒化膜形成が終了後したら、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成されたSiN膜に対して酸化ガスを供給する。
【0087】
具体的には、バルブ243c,243eを開き、ガス供給管232c,232e内へO含有ガス、H含有ガスをそれぞれ流す。ガス供給管232c,232e内を流れたO含有ガス、H含有ガスは、それぞれ、MFC241c,241eにより流量調整され、ガス供給管232b、ノズル249c,249bを介して処理室201内へ供給される。O含有ガスとH含有ガスとは、処理室201内で混合して反応し、その後、排気口231aより排気される。このとき、減圧雰囲気下の加熱されたウエハ200に対して、O含有ガスとH含有ガスとの反応により生じた原子状酸素等の酸素を含む水分(HO)非含有の酸化種が供給される(O含有ガス+H含有ガス供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。なお、以下に示すいくつかの方法においては、処理室201内への不活性ガスの供給を不実施とするようにしてもよい。
【0088】
本ステップにおける処理条件としては、
O含有ガス供給流量:100~10000sccm、好ましくは1000~5000sccm
H含有ガス供給流量:100~10000sccm、好ましくは1000~5000sccm
不活性ガス供給流量(各ガス供給管):0~20000sccm
各ガス供給時間:1~120秒、好ましくは10~60秒
処理圧力:1~2000Pa、好ましくは10~1333Pa
が例示される。他の処理条件は、上述のプリフローにおける処理条件と同様とすることができる。
【0089】
酸化ガスとして、例えば、O含有ガス+H含有ガスを用い、上述の条件下で本ステップを行うことにより、ウエハ200上に形成された窒化膜であるSiN膜を酸化させ、SiおよびOを含む膜、すなわち、酸化膜としてのシリコン酸化膜(SiO膜)へと改質させることができる。なお、上述の窒化膜形成においてウエハ200上に形成される窒化膜の厚さを適正に調整することにより、本ステップでの酸化の効果を、窒化膜の全体に亘って及ばせることが可能となる。すなわち、窒化膜の全体を、酸化膜へと改質させることが可能となる。
【0090】
ウエハ200上に形成された窒化膜を酸化膜へと改質させた後、バルブ243c,243eを閉じ、処理室201内へのO含有ガス、H含有ガスの供給をそれぞれ停止する。そして、上述のプリフローにおけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0091】
酸化ガスとしては、酸素(O)ガス+水素(Hガス)、オゾン(O)ガス、水蒸気(HOガス)、Oラジカルを含むガス、OHラジカルを含むガス、プラズマ励起されたOを含むガス等を用いることができる。酸化ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0092】
(所定回数実施)
上述したプリフロー、窒化膜形成、酸化をこの順に非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200上に、所定組成比および所定膜厚のSiO膜を成膜することができる。なお、上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成する酸化膜の厚さを所望の膜厚よりも小さくして、上述のサイクルを所望の膜厚になるまで複数回繰り返すのが好ましい。
【0093】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ウエハ200上への所望の厚さの酸化膜の形成が完了した後、ノズル249a~249cのそれぞれから、パージガスとしての不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0094】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0095】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0096】
(a)本態様では、1サイクルにおいて、第1原料ガスを供給するステップa1と、第2原料ガスを供給するステップa2と、の両方のステップを行うことから、ウエハ200上に形成される窒化膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を向上させる効果と、この膜の成膜レートを高める効果と、を両立することが可能となる。したがって、ウエハ200上に最終的に形成される酸化膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を向上させる効果と、この膜の成膜レートを高める効果と、を両立することが可能となる。
【0097】
というのも、上述の処理条件でウエハ200に対して、第2原料ガスよりも熱分解温度が高く、熱分解しにくい第1原料ガスを供給すると、ウエハ200上には1原子層未満の厚さの略均一な厚さの第1層が形成されることとなる。仮に、ステップa2を行わずに、第1原料ガスを供給するステップa1と、窒化ガスを供給するステップa3と、をこの順に行うサイクルを所定回数行うこととした場合、1サイクルあたりに形成される窒化層の厚さがウエハ面内にわたり均一であることから、ウエハ200上に最終的に形成される窒化膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を良好にすることが可能となる。一方で、1サイクルあたりに形成される窒化層の厚さが薄いことから、ウエハ200上に形成される窒化膜の成膜レートを高めることが困難となる場合がある。すなわち、ウエハ200上に最終的に形成される酸化膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を向上させる効果と、この膜の成膜レートを高める効果と、を両立させることが困難となる。
【0098】
一方、上述の処理条件でウエハ200に対して、第1原料ガスよりも熱分解温度が低く、熱分解しやすい第2原料ガスを供給すると、ウエハ200上には所定元素同士の結合を有する、1原子層を超える厚さの第2層が形成されることとなる。仮に、ステップa1を行わずに、第2原料ガスを供給するステップa2と、窒化ガスを供給するステップa3と、をこの順に行うサイクルを所定回数行うこととした場合、1サイクルあたりに形成される窒化層の厚さが厚いことから、ウエハ200上に最終的に形成される窒化膜の成膜レートを良好とすることが可能となる。一方で、1サイクルあたりに形成される窒化層の厚さがウエハ面内で不均一になり易いことから、ウエハ200上に形成される窒化膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を向上させることが困難となる場合がある。すなわち、ウエハ200上に最終的に形成される酸化膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を向上させる効果と、この膜の成膜レートを高める効果と、を両立させることが困難となる。
【0099】
本態様では、ステップa1およびステップa2の両ステップを行うことから、各ステップから得られるそれぞれの効果を両立させることが可能となる。例えば、ウエハ200上への所定元素の吸着反応が飽和する前にステップa1を終了し、成膜レートの比較的大きいステップa2に移行することで、ステップa1のみを同じ時間実行する場合に比べて、成膜レートを向上させることができる。また、ステップa1において比較的厚さの均一性に優れた第1層を形成した後、ステップa2において第1層をベースとして第2層を形成することで、ステップa2のみを実行する場合に比べて、ウエハ200上に形成される窒化膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を向上させることができる。すなわち、ウエハ200上に最終的に形成される酸化膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を向上させる効果と、この膜の成膜レートを高める効果と、を両立させることが可能となる。
【0100】
(b)本態様では、各サイクルにおいて、ステップa2よりも先にステップa1を行い、その後にステップa2を行うことにより、ウエハ200上に最終的に形成される窒化膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を充分に発揮しつつ、その成膜レートを高めることが可能となる。これにより、ウエハ200上に最終的に形成される酸化膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を充分に発揮しつつ、その成膜レートを高めることが可能となる。
【0101】
仮に、各サイクルにおいて、ステップa1よりも先にステップa2を行い、その後にステップa1を行うこととした場合、ステップa2では、熱分解によって生じた所定元素同士の結合を含む原子がウエハ200の表面に不規則に吸着しやすくなるため、ステップa1で形成しようとする層の下地として、ウエハ面内で厚さが不均一な層が形成されてしまう場合がある。そのため、成膜処理の途中で略均一な厚さの層を形成するというステップa1の技術的意義が失われやすくなる。
【0102】
これに対し、本態様では、各サイクルにおいて、ステップa2よりも先にステップa1を行い、その後にステップa2を行うことから、ステップa2で形成しようとする層の下地として、略均一な厚さの層を形成することが可能となる。そのため、成膜処理の途中で略均一な厚さの層を形成するというステップa1の技術的意義を充分に発揮することが可能となる。
【0103】
(c)本態様では、ウエハ200上に形成される窒化膜における所定元素とNとの組成比を広く制御することが可能となる。これにより、ウエハ200上に最終的に形成される酸化膜の組成を所望の組成とするよう調整すること等が可能となる。
【0104】
というのも、1サイクルあたりの第1原料ガスの基板に対する供給量Aに対する1サイクルあたりの第2原料ガスの基板に対する供給量Bの比率B/Aを小さくすることにより、第2層に含まれる所定元素同士の結合の割合を小さくして、第2層の厚さを薄くする方向に制御することができる。第2層、すなわち、ステップa3において窒化対象となる層を薄くすることにより、ウエハ200上に形成される窒化膜の組成比を、所定元素の組成比が小さくなる方向に(すなわち所定元素プアとするように)制御することができる。例えば、比率B/Aを小さくすることで、第2層の厚さが1原子層を超える厚さの範囲で薄くする。これにより、窒化膜の化学量論組成における組成比に対して、所定元素の組成比を小さくなる方向に近づけるように制御することができる。これにより、ウエハ200上に最終的に形成される酸化膜の組成を所望の組成とするよう調整することが可能となる。
【0105】
また、B/Aを大きくすることにより、第2層に含まれる所定元素同士の結合の割合を大きくして、第2層の厚さを厚くする方向に制御することができる。第2層、すなわち、ステップa3において窒化対象となる層を厚くすることにより、ウエハ200上に形成される窒化膜の組成比を、所定元素の組成比が大きくなる方向に(すなわち所定元素リッチとするように)制御することができる。例えば、比率B/Aを大きくすることで、第2層の厚さが1原子層を超える厚さの範囲で厚くする。これにより、窒化膜の化学量論組成における組成比に対して、所定元素の組成比をより大きくなる方向に制御することができる。これにより、ウエハ200上に最終的に形成される酸化膜の組成を所望の組成とするよう調整することが可能となる。
【0106】
また、ウエハ200上に形成される窒化膜がSiN膜等である場合、窒化膜におけるNの組成比が大きいほど(すなわち所定元素の組成比が小さいほど)、その後に行う酸化処理における酸化レートが小さくなる。したがって、ウエハ200上に形成される窒化膜の組成を所定元素リッチな組成とすることにより、その後に行う酸化処理の効率を向上させ、酸化膜の形成レートを高めることが可能となる。また、これにより、1サイクルごとに形成する窒化膜の厚さをより大きくしても、酸化の効果を窒化膜の全体に亘って及ぼしやすくなるため、スループットを向上させることが可能となる。
【0107】
なお、上述のB/Aは、例えば、1サイクルあたりの第1原料ガスの供給時間Tに対する1サイクルあたりの第2原料ガスの供給時間Tの比率T/Tの大きさを調整すること、すなわち、1サイクルあたりの第1原料ガスと第2原料ガスとの供給時間を調整することにより制御することができる。また、上述のB/Aは、第1原料ガスの供給流量Fに対する第2原料ガスの供給流量Fの比率F/Fの大きさを調整することによっても制御することができる。
【0108】
また、ステップa2における処理圧力Pの大きさを調整し、第2原料ガスの熱分解速度を制御することによっても、ウエハ200上に形成される窒化膜における所定元素の含有量とNの含有量との比率である組成比を制御することができる。これにより、ウエハ200上に最終的に形成される酸化膜の組成を所望の組成とするよう調整することが可能となる。
【0109】
例えば、処理圧力Pを小さくすることにより、第2層の厚さを薄くする方向に制御することができる。第2層、すなわち、ステップa3において窒化対象となる層を薄くすることにより、ウエハ200上に形成される窒化膜の組成比を、所定元素の組成比が小さくなる方向に制御することができる。これにより、ウエハ200上に最終的に形成される酸化膜の組成を所望の組成とするよう調整することが可能となる。
【0110】
また、処理圧力Pを、ステップa1における処理圧力Pより大きくすることにより、第2層の厚さを厚くする方向に制御することができる。第2層、すなわち、ステップa3において窒化対象となる層を厚くすることにより、ウエハ200上に形成される窒化膜の組成比を、所定元素の組成比が大きくなる方向に(すなわち所定元素リッチとするように)制御することができる。これにより、ウエハ200上に最終的に形成される酸化膜の組成を所望の組成とするよう調整することが可能となる。また、ウエハ200上に形成される窒化膜の組成を所定元素リッチな組成とすることにより、その後に行う酸化処理の効率を向上させ、酸化膜の形成レートを高めることが可能となる。
【0111】
(d)本態様では、ステップa1の処理温度を第1原料ガスの熱分解温度(第1温度)よりも低くし、ステップa2の処理温度を第2原料ガスの熱分解温度(第2温度)よりも高くしているので、上述の効果を確実に得ることができる。
【0112】
というのも、ステップa1では、処理温度を第1温度よりも低い温度としているので、第1原料ガスの熱分解を抑制することができ、ウエハ200上に形成される窒化膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を向上させることが可能となる。また、窒化膜の組成比を化学量論組成における組成比に近づける方向に制御することが可能となる。これにより、ウエハ200上に最終的に形成される酸化膜ステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を向上させ、また、この膜の組成を所望の組成とするよう調整することが可能となる。
【0113】
また、ステップa2では、処理温度を第2温度より高い温度としているので、第2原料ガスの適切な熱分解を維持することができ、ウエハ200上に形成される窒化膜の成膜レートを向上させることが可能となる。また、窒化膜の組成比を所定元素リッチの方向に制御することが可能となる。これにより、ウエハ200上に最終的に形成される酸化膜の組成を所望の組成とするよう調整することが可能となる。また、ウエハ200上に形成される窒化膜の組成を所定元素リッチな組成とすることにより、その後に行う酸化処理の効率を向上させ、酸化膜の形成レートを高めることが可能となる。
【0114】
(e)上述の効果は、上述の各種窒化水素系ガス、上述の各種第1原料ガス、上述の各種第2原料ガス、各種窒化ガス、上述の各種酸化ガス、上述の各種不活性ガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。
【0115】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0116】
上述の態様では、窒化膜形成から酸化に至る一連のステップを、同一の処理室201内で(in-situで)行う例について説明した。しかしながら、本開示はこのような態様に限定されない。例えば、窒化膜形成と酸化とを別々の処理室内で(ex-situで)行うようにしてもよい。この場合においても上述の態様における効果と同様の効果が得られる。一連のステップをin-situで行えば、途中、ウエハ200が大気曝露されることはなく、ウエハ200を真空下に置いたまま一貫して処理を行うことができ、安定した基板処理を行うことができる。また、一部のステップをex-situで行えば、それぞれの処理室内の温度を例えば各ステップでの処理温度又はそれに近い温度に予め設定しておくことができ、温度調整に要する時間を短縮させ、生産効率を高めることができる。
【0117】
上述の態様では、ステップa1の実施期間とステップa2の実施期間とを重複させない例を説明した。本開示はこれに限定されず、例えば、ステップa1の実施期間とステップa2の実施期間の少なくとも一部とを重複させてもよい。このようにすることで、上述の効果に加えて、サイクルタイムを短縮させて基板処理のスループットを向上させることができる。
【0118】
各処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各処理を迅速に開始できるようになる。
【0119】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更してもよい。
【0120】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。
【0121】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様や変形例における処理手順、処理条件と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0122】
また、上述の態様では、形成する酸化膜として、SiO膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、所定元素として、金属元素及び第14族元素の中から選択される少なくとも1つ以上の元素を含む酸化膜を形成する場合にも、好適に適用できる。ここで、金属元素とは、例えば、アルミニウム(Al)、チタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、等がある。第14族元素とは、例えば、ゲルマニウム(Ge)がある。
【0123】
上述の態様や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様や変形例における処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【実施例
【0124】
サンプル1,2として、図1に示す基板処理装置を用い、ウエハ上に窒化膜(SiN膜)を形成した。
【0125】
サンプル1は、ステップa2を行わずに、ステップa1とステップa3とを交互に行うサイクルを所定回数行うことにより作製した。各ステップにおける処理条件は、上述の態様に記載の処理条件範囲内の所定の条件とした。サンプル2は、ステップa1を行わずに、ステップa2とステップa3とを交互に行うサイクルを所定回数行うことにより作製した。ステップa2における処理条件は、上述の態様に記載の処理条件範囲内の所定の条件とした。他の処理条件は、サンプル1を作製する際におけるそれらと同様とした。
【0126】
そして、各サンプルの窒化膜におけるサイクル数あたりの膜厚を測定した。その結果を図6に示す。図6の横軸はサイクルの実施回数を、縦軸は窒化膜の厚さ[Å]を示している。図6によれば、第1原料ガスを用いて作製したサンプル1の窒化膜に比べ、第2原料ガスを用いて作製したサンプル2の窒化膜の方が、インキュベーションタイムが短く、また、高いサイクルレートが得られることが分かる。
【0127】
また、サンプル3,4として、図1に示す基板処理装置を用い、ウエハ上にSiN膜を形成した。ウエハとしては、表面に、溝幅約50nm、溝深さ約10μm、アスペクト比約200のトレンチ構造体を表面に有するウエハを用いた。
【0128】
サンプル3は、ステップa1を行わずに、ステップa2とステップa3とを交互に行うサイクルを所定回数行うことにより作製した。サンプル4は、ステップa1~a3をこの順に行うサイクルを所定回数行うことにより作製した。具体的には、サンプル4では、ステップa1における第1原料ガスの供給時間を60秒とした。サンプル3,4では、ステップa2における第2原料ガスの供給時間をそれぞれ9秒間とした。その他の処理条件は、サイクルの実施回数やガスの供給量を含め、それぞれ、上述の態様における処理条件範囲内の共通の条件とした。
【0129】
そして、サンプル3,4の窒化膜におけるTop/Bottom比(%)をそれぞれ測定した。図7にその結果を示す。「Top/Bottom比(%)」は、トレンチ構造体の溝の下部に形成された膜厚に対する、トレンチ構造体の溝の上部に形成された膜厚の割合を百分率で表したものである。Top/Bottom比(%)は、トレンチ構造体の溝の上部と下部に形成された膜厚をそれぞれC,Dとした場合に、C/D×100の式で算出される。
【0130】
図7によれば、サンプル4におけるTop/Bottom比は、サンプル3におけるTop/Bottom比よりも大きい(100に近い)ことがわかる。すなわち、第1原料ガスと第2原料ガスの両方のガスを供給することで作製したサンプル4の窒化膜の方が、第1原料ガスを供給せず第2原料ガスのみを供給することで作製したサンプル3の窒化膜よりも、ステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性に優れていることがわかる。
【0131】
また、サンプル5,6として、図1に示す基板処理装置を用い、ウエハ上に形成された窒化膜を酸化させることにより、ウエハ上に酸化膜(SiO膜)を形成した。
【0132】
サンプル5は、窒化膜を形成する際に、ステップa2を行わずに、ステップa1とステップa3とを交互に行うサイクルを所定回数行うことで作製した。サンプル6は、窒化膜を形成する際に、ステップa1~a3をこの順に行うサイクルを所定回数行うことで作製した。各ステップにおける処理条件は、上述の態様における処理条件範囲内の共通の条件とした。窒化膜形成と酸化とを含むサイクルの繰り返し回数(n回)は、いずれのサンプルにおいても、3回とした。
【0133】
そして、サンプル5,6において、酸化膜が所定の膜厚となるのに必要な処理時間(a.u.)をそれぞれ測定した。図8にその結果を示す。図8の横軸は各サンプルを、縦軸は酸化膜が所定の膜厚となるの必要な処理時間(a.u.)を示す。図8によれば、窒化膜を形成する際にステップa2を不実施としたサンプル5よりも、ステップa1~a3をこの順に行うサイクルを所定回数行うことにより窒化膜を形成したサンプル6の方が、必要な処理時間が短いこと、すなわち、高い成膜レートが得られることがわかる。
【0134】
<本開示の好ましい態様>
以下、好ましい態様について付記する。
【0135】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
(a)(a-1)基板に対して所定元素を含む第1原料ガスを供給する工程と、
(a-2)前記基板に対して、前記所定元素を含み、前記第1原料ガスよりも熱分解温度が低い第2原料ガスを供給する工程と、
(a-3)前記基板に対して窒化ガスを供給する工程と、
をこの順に非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、前記所定元素を含む窒化膜を形成する工程と、
(b)前記基板に対して酸化ガスを供給することで、(a)において形成した前記窒化膜を酸化させ、前記所定元素を含む酸化膜に改質する工程と、
を有する半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
【0136】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、
(a)及び(b)を非同時に行うサイクルを所定回数行うことにより、前記基板上に、所定の厚さの前記酸化膜を形成する。
【0137】
(付記3)
付記2に記載の方法であって、
(a)において形成する前記窒化膜の厚さを、(b)における酸化の効果が前記窒化膜の厚さ方向の全体に亘って及ぶ厚さとする。
【0138】
(付記4)
付記1~3に記載の方法であって、
(a)及び(b)を同一の処理室内にて行う。
【0139】
(付記5)
付記1~4に記載の方法であって、
前記第1原料ガスとして、その解離エネルギー(その1分子が複数の分子に分解するのに必要なエネルギー)が、前記第2原料ガスの解離エネルギーよりも大きいガスを用いる。
【0140】
(付記6)
付記1~5に記載の方法であって、
前記第1原料ガスは、1分子中に前記所定元素の原子同士の結合を有しておらず、
前記第2原料ガスは、1分子中に前記所定元素の原子同士の結合を有している。
【0141】
(付記7)
付記6に記載の方法であって、
前記第1原料ガスは、1分子中に前記所定元素の原子を1個のみ有しており、
前記第2原料ガスは、1分子中に前記所定元素の原子を2個以上有している。
【0142】
(付記8)
付記1~7に記載の方法であって、
前記第1原料ガスは、SiClガス、SiHClガス、SiHClガス、SiHClガスにより構成される群から選択される少なくとも1つのガスであり、
前記第2原料ガスは、SiClガス、SiClガス、SiClガス、SiClガス、SiClガス、SiClガス、SiClガスにより構成される群から選択される少なくとも1つのガスである。
【0143】
(付記9)
付記1~8に記載の方法であって、
(a-1)では前記基板の温度を前記第1原料ガスが熱分解しない温度とし、
(a-2)では前記基板の温度を前記第2原料ガスが熱分解する温度とする。
【0144】
(付記10)
付記1~9に記載の方法であって、
(c)(a)を行う前に、前記基板に対して窒化水素系ガスを供給する工程、をさらに有する。
【0145】
(付記11)
付記10に記載の方法であって、
(a)及び(b)を非同時に行うサイクルを所定回数行い、各サイクルを行うたびに(c)を行う。
【0146】
(付記12)
付記10又は11に記載の方法であって、
前記窒化ガスは前記窒化水素系ガスである。
【0147】
(付記13)
付記10~12に記載の方法であって、
前記窒化水素系ガスは、NHガス、Nガス、Nガス、Nガスにより構成される群から選択される少なくとも一つのガスである。
【0148】
(付記14)
付記1~13に記載の方法であって、
前記酸化ガスは、Oガス、Oガス、Oガス及びHガス、HOガス、Oラジカルを含むガス、OHラジカルを含むガス、プラズマ励起されたOを含むガスにより構成される群から選択される少なくとも一つのガスである。
【0149】
(付記15)
付記1~13に記載の方法であって、
(b)では、減圧雰囲気下の加熱された前記基板に対してOガス及びHガスを供給する。
【0150】
(付記16)
付記1~15に記載の方法であって、
(a)では、前記窒化膜中における前記所定元素の比率が、前記窒化膜が化学量論組成を有する場合における前記窒化膜中における前記所定元素の比率よりも大きくなるように、
(a-1)における前記第1原料ガスの供給時間と、(a-2)における前記第2原料ガスの供給時間と、の比率、
(a-1)における前記第1原料ガスの供給流量と、(a-2)における前記第2原料ガスの供給流量と、の比率、
(a-1)における処理圧力と、(a-2)における処理圧力と、の比率、
のうち少なくともいずれかの比率が調整される。
【0151】
(付記17)
付記16に記載の方法であって、
(a-2)における前記第2原料ガスの供給時間を、(a-1)における前記第1原料ガスの供給時間よりも長くする。
【0152】
(付記18)
付記16に記載の方法であって、
(a-2)における前記第2原料ガスの供給流量を、(a-1)における前記第1原料ガスの供給流量よりも大きくする。
【0153】
(付記19)
付記16に記載の方法であって、
(a-2)における処理圧力を、(a-1)における処理圧力よりも高くする。
【0154】
(付記20)
本開示の他の態様によれば、
基板が処理される処理室と、
前記処理室内の基板に対して所定元素を含む第1原料ガスを供給する第1原料ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して前記所定元素を含み前記第1原料ガスよりも熱分解温度が低い第2原料ガスを供給する第2原料ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して窒化ガスを供給する窒化ガス供給系と
前記処理室内の基板に対して酸化ガスを供給する酸化ガス供給系と
前記処理室内において、付記1の各処理(各工程)を行わせるように、前記第1原料ガス供給系、前記第2原料ガス供給系、前記窒化ガス供給系、および前記酸化ガス供給系を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【0155】
(付記21)
本開示のさらに他の態様によれば、
基板処理装置の処理室内において、付記1の各手順(各工程)をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【符号の説明】
【0156】
200 ウエハ(基板)
201 処理室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8