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  • 特許-光電変換素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】光電変換素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/46 20060101AFI20221215BHJP
   H01L 51/44 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H01L31/04 154B
H01L31/04 154D
H01L31/04 154E
H01L31/04 112A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019016728
(22)【出願日】2019-02-01
(65)【公開番号】P2020126871
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】新居 遼太
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-139437(JP,A)
【文献】特開2018-107352(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103788111(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103570743(CN,A)
【文献】国際公開第2014/026244(WO,A1)
【文献】Suling Shen et al.,"Solution-Processable Organic Molecule Photovoltaic Materials with Bithienyl-benzodithiophene Central Unit and Indenedione End Groups",Chemistry of Materials,2013年,Vol.25,pp.2274-2281
【文献】Muhammad Abdullah Adil et al.,"Modulation of the Molecular Orientation at the Bulk Heterojunction Interface via Tuning the Small Molecular Donor-Nonfullerene Acceptor Interactions",ACS Applied Materials & Interfaces,2018年,Vol.10,pp.31526-31534
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/42-51/48
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基板上に第一の電極、電子輸送層、光電変換層、正孔輸送層、第2の電極が積層されてなることを特徴とする光電変換素子であって、光電変換層に下記一般式(1)で表される有機材料とN型半導体材料とを含有することを特徴とする光電変換素子。
【化1】
(但し、上記一般式(1)中、R、R2は炭素数6以上22以下のアルキル基を表し、nは1~3の整数を表し、Xはハロゲン原子を表す。mは1又は2である。)
【請求項2】
前記一般式(1)中のXが臭素原子又はヨウ素原子である、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【化3】
(但し、一般式(2)中、Rは炭素数2以上6以下のアルキル基を表し、nは1~3の整数を表し、Xは臭素原子、ヨウ素原子を表す。mは1又は2である。)
【請求項4】
前記N型半導体材料がフラーレン誘導体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記光電変換層の平均厚みが、50nm~600nmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光電変換素子によって発生された電力で動作する機器。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光電変換素子によって構成される電源モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子回路における駆動電力が非常に少なくなり、来たるIoT社会に向けて、微弱な電力(μWオーダー)でもセンサ等の様々な電子部品を駆動することができるようになった。さらに、センサの活用に際し、その場で発電し消費できる自立電源として、環境発電素子への応用が期待されており、その中でも光電変換素子は光があればどこでも発電できる素子として注目を集めている。環境発電素子においては蛍光灯やLEDランプなどの室内光で効率よく発電する素子がより求められている。
【0003】
光電変換素子の特性における短絡電流密度は同じ光源の場合は光量に比例することが知られており、いわゆる有機薄膜太陽電池においても例外ではない。従来の有機薄膜太陽電池は光源として太陽光を対象として開発が進められており、その中でも特にP型有機半導体の開発が精力的に行われている。
【0004】
室内光を光源対象とした光電変換素子においては、光源対象が太陽光ではなく蛍光灯やLEDランプであるため、蛍光灯やLEDランプにおいて高い光電変換特性を示すことが求められている。蛍光灯やLEDランプは太陽光と違い、可視域にしかスペクトルを持たないため、従来の太陽光を対象とした光電変換素子に用いられる共役高分子型のP型有機半導体では、(1)HOMOが浅いため、Vocが低くなる、(2)スペクトルのマッチングが低いため、蛍光灯やLEDランプにおいて電流値が低い、等の欠点があり、総じて室内光における光電変換効率が低いという欠点があった。
従って、蛍光灯やLEDランプのスペクトルに適した材料開発が必要であり、低分子系P型有機材料の開発が精力的に進められている(例えば特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
公知の低分子系P型有機材料ではデバイス化したときに所望の光電変換効率を得られない場合があった。
本発明は、低分子系P型有機材料を用いながら優れた光電変換項効率を可能とする光電変換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明は、下記(1)に記載するとおりの光電変換素子に係るものである。
(1)少なくとも、基板上に第一の電極、電子輸送層、光電変換層、正孔輸送層、第2の電極が積層されてなることを特徴とする光電変換素子であって、光電変換層に下記一般式(1)で表される有機材料とN型半導体材料とを含有することを特徴とする光電変換素子。
【化1】
(但し、上記一般式(1)中、R、Rは炭素数6以上22以下のアルキル基を表し、nは1~3の整数を表し、Xはハロゲン原子を表す。mは1又は2を表す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明の光電変換素子は、低分子P型有機材料を用いながら優れた光電変換効率を示す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る光電変換素子の一つの実施の形態における構成を示す概略断面図である。
図2】本発明に係る光電変換素子の他の実施の形態における構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る有機材料および光電変換素子について図面を参照しながら説明する。
なお本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り本発明の範囲に含まれるものである。
本発明において光電変換素子とは、光エネルギーを電気エネルギーに変換する素子あるいは電気エネルギーを光エネルギーに変換する素子を表し、具体的には太陽電池あるいはフォトダイオード等が挙げられる。
【0010】
なお、本発明は下記(1)に記載の光電変換素子に係るものであるが、下記(2)~(7)を発明の実施形態として含むのでこれらの実施形態についても合わせて説明する。
(1)少なくとも、基板上に第一の電極、電子輸送層、光電変換層、正孔輸送層、第2の電極が積層されてなることを特徴とする光電変換素子であって、光電変換層に下記一般式(1)で表される有機材料とN型半導体材料とを含有することを特徴とする光電変換素子。
【化1】
(但し、上記一般式(1)中、R、Rは炭素数6以上22以下のアルキル基を表し、nは1~3の整数を表し、Xはハロゲン原子を表す。mは1又は2である。)
(2)前記一般式(1)中のXが臭素原子又はヨウ素原子である、上記(1)に記載の光電変換素子。
(3)前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする上記(1)に記載の光電変換素子。
【化2】
(但し、一般式(2)中、Rは炭素数2以上6以下のアルキル基を表し、nは1~3の整数を表し、Xは臭素原子、ヨウ素原子を表す。mは1又は2である。)
(4)前記N型半導体材料がフラーレン誘導体であることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の光電変換素子。
(5)前記光電変換層の平均厚みが、50nm~600nmであることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の光電変換素子。
(6)上記(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の光電変換素子によって発生された電力で動作する機器。
(7)上記(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の光電変換素子によって構成される電源モジュール。
【0011】
《有機材料》
本発明の光電変換素子の光電変換層において用いる有機材料は、下記一般式(1)で表される。
【化1】
(但し、上記一般式(1)中、R、Rは炭素数6以上22以下のアルキル基を表し、nは1~3の整数を表し、Xはハロゲン原子を表す。mは1又は2である。)
【0012】
、Rは炭素数6以上22以下のアルキル基を表すが、そのアルキル基としては、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基、n-ヘキサデシル基、2-エチルヘキシル基、2-ブチルオクチル基、2-オクチルドデシル等が挙げられ、Rについて好ましくはn-ヘキシル基が挙げられ、Rについて好ましくは2-ブチルオクチル基が挙げられる。
nは1~3の整数を表すが、1または2が好ましい。
Xはハロゲン原子を表すが、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。mは1又は2であるが、1が好ましい。
また、置換位置に関しては、合成の制約上、式中の2位と3位の置換位置を制御することは困難であるため、2位置換体と3位置換体の混合物となる。Xが置換されていない位置の置換基は必然的に水素原子である。
【0013】
前記一般式(1)で表される有機材料としては、具体的には、下記表1-1~表1-3に示した構造を有する例示化合物1~48が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0014】
【表1-1】
【0015】
【表1-2】
【表1-3】
【0016】
(N型半導体材料)
N型半導体材料としては、例えば、フラーレン、フラーレン誘導体などが挙げられる。
これらの中でも、電荷分離、電荷輸送の点から、フラーレン誘導体が好ましい。
前記フラーレン誘導体としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、PC71BM(フェニルC71酪酸メチルエステル)、PC61BM、フラーレンインデン2付加体などが挙げられる。
なお、前記N型有機材料だけではなく、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機化合物を用いてもよい。前記N型有機材料の含有量は、光電変換層用溶液全量に対して、0.5質量%~10質量%が好ましい。
【0017】
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、トルエン、キシレン、o-クロロフェノール、アセトン、酢酸エチル、エチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、クロロベンゼン、クロロホルム、オルトジクロロベンゼンが好ましい。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,8-ジヨードオクタン、1,8-オクタンジチオール、1-クロロナフタレン等の各種添加剤などが挙げられる。
【0018】
<光電変換層>
光電変換層としては、少なくとも前記有機材料と前記N型半導体材料の薄膜を含み、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記光電変換層の平均厚みは、50nm以上600nm以下が好ましく、150nm以上500nm以下がより好ましい。前記平均厚みが、50nm以上であると、光電変換層による光吸収が多くなりキャリア発生が不充分となることがなく、600nm以下であることにより、光吸収により発生したキャリアの輸送効率が低下することがない。
【0019】
従来知られている低分子系P型有機半導体材料は分子内の共役系が短いため、共役高分子と比較して移動度が低く、光電変換素子において、厚膜化ができない場合がある。光電変換素子として有機薄膜太陽電池に適用する場合には、機薄膜太陽電池は非常に薄膜であるが故、デバイスのリークなどの不具合が発生しやすく、なるべく厚膜化したほうが歩留まりの高いデバイスを得ることができる。
本発明において用いる前記一般式(1)で表される有機材料は低分子P型有機材料でありながら、移動度が高く、光電変換層を厚膜化しても、高い光電変換効率を得ることができる。
【0020】
本発明においては、前記有機材料及び前記N型半導体を、順次、形成して平面的な接合界面を形成させてもよいが、接合界面面積を大きくするため、これらを三次元的に混合させたバルクへテロ接合を形成させることが好ましい。
前記バルクヘテロ接合を形成するためには、溶解性の高い材料の場合には溶剤に溶かし、P型有機材料及びN型有機材料が分子状で混合された溶液を作製し、塗布後に乾燥させて溶剤を除去して形成することが可能である。更に加熱処理をして、各々の半導体の凝集状態を最適化することもできる。
【0021】
なお、溶解性が乏しい材料を用いる場合にも、本発明の前記有機材料が溶解した溶媒に分散させた溶液を作製し、塗布により混合層を形成することができる。この場合、更に加熱処理をして、各々の半導体の凝集状態を最適化することもできる。
【0022】
本発明で用いる前記有機材料は、HOMO準位が深く、空気安定性に優れると共に、材料起因である開放電圧の向上が見込まれる。加えて、このような剛直な分子骨格に対して、アルキル基に代表されるような溶解性基を導入することで、一般的な有機溶媒に対する溶解性を確保しつつ、結晶性、液晶性、及び配向性といった規則的な集合状態を有する有機半導体膜をより有利に形成できる。このような規則性の高い状態では、高い電荷輸送が期待できる。特に前記一般式(1)で表される化合物の中の一般式(2)で表される化合物において、窒素原子に置換されるアルキル基は分岐であることが望まれる。アルキル鎖が分岐であることにより、溶解性が大幅に増大する。それにより、有機薄膜を厚膜化することができる。厚膜化により、多くの光を吸収することができ、発電力向上につながる。
【0023】
前記一般式(1)で表される有機材料及びN型半導体材料を混合して光電変換層を形成する場合は、前記一般式(1)で表される有機材料とN型半導体材料とを所望の質量比率で溶媒に添加し、加熱、撹拌、超音波照射などの方法を用いて溶解させて溶液を作り、電極上に塗布する。この場合、2種以上の溶媒を混合して用いることで光起電力素子の光電変換効率を向上させることもできる。
【0024】
前記有機材料薄膜の形成方法としては、例えば、スピンコート塗布、ブレードコート塗布、スリットダイコート塗布、スクリーン印刷塗布、バーコーター塗布、鋳型塗布、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法、スプレー法、真空蒸着法などが挙げられる。これらの中から、厚み制御や配向制御など、作製しようとする有機材料薄膜の特性に応じて適宜選択することができる。
【0025】
例えば、スピンコート塗布を行う場合には、前記一般式(1)で表される構造を有する有機材料、及びN半導体材料が10mg/mL~100mg/mLの濃度(前記一般式(1)で表される構造を有する有機材料とN型半導体材料と溶媒を含む溶液の体積に対する、前記一般式(1)で表される構造を有する有機材料とN型半導体材料の質量)であることが好ましく、この濃度にすることで均質な光電変換層を容易に作製することができる。
【0026】
作製した光電変換層に対して、有機溶媒を除去するために、減圧下又は不活性雰囲気下(窒素、アルゴン雰囲気下)でアニーリング処理を行ってもよい。前記アニーリング処理の温度は、40℃~300℃が好ましく、50℃~150℃がより好ましい。また、前記アニーリング処理を行うことで、積層した層が界面で互いに浸透して接触する実行面積が増加し、短絡電流を増大させることができる場合がある。なお、前記アニーリング処理は、電極の形成後に行ってもよい。
【0027】
(光電変換素子)
本発明の光電変換素子は、基板上に第一の電極、電子輸送層、光電変換層、正孔輸送層、第二の電極が順次積層されてなる光電変換素子、又は基板上に第一の電極、正孔輸送層、光電変換層、電子輸送層、第二の電極が順次積層されてなる光電変換素子であることが好ましく、前記光電変換層が本発明の有機材料薄膜を有する。ここで、本発明の光電変換素子について図面を参照して説明する。図1は、基板1上に、第一の電極2、電子輸送層3、光電変換層4、正孔輸送層5、第二の電極6が順次設けられた光電変換素子の積層構造を示す図である。図2は、基板1上に、第一の電極2、正孔輸送層5、光電変換層4、電子輸送層3、第二の電極6が順次設けられた光電変換素子の積層構造を示す図である。
【0028】
<基板>
本発明に用いられる基板としては、特に制限されるものではなく、公知のものを用いることができる。基板1は透明な材質のものが好ましく、例えばガラス、透明プラスチック板、透明プラスチック膜、無機物透明結晶体等が挙げられる。
【0029】
<電極>
電極は、少なくともいずれか一方は可視光に対して透明なものを使用し、他方は透明であっても不透明であっても構わない。
前記可視光に対して透明な電極としては、特に制限はなく、通常の光電変換素子又は液晶パネル等に用いられる公知のものを使用でき、例えば、スズドープ酸化インジウム(以下、「ITO」と称する)、フッ素ドープ酸化スズ(以下、「FTO」と称する)、アンチモンドープ酸化スズ(以下、「ATO」と称する)、アルミニウムやガリウムがドープされた酸化亜鉛(以下、それぞれを「AZO」、「GZO」と称する)等の導電性金属酸化物が挙げられる。
前記可視光に対して透明な電極の平均厚みは、5nm~10μmが好ましく、50nm~1μmがより好ましい。
【0030】
前記可視光に対して透明な電極は、一定の硬性を維持するため、可視光に透明な材質からなる基板上に設けることが好ましく、電極と基板が一体となっているものを用いることもでき、例えば、FTOコートガラス、ITOコートガラス、酸化亜鉛:アルミニウムコートガラス、FTOコート透明プラスチック膜、ITOコート透明プラスチック膜などが挙げられる。
【0031】
前記可視光に対して透明な電極は、メッシュ状、ストライプ状など光が透過できる構造にした金属電極をガラス基板等の基板上に設けたものや、カーボンナノチューブ、グラフェン等を透明性を有する程度に積層したものでもよい。これらは1種単独あるいは2種以上の混合、又は積層したものでも構わない。
【0032】
更に、基板抵抗を下げる目的で、金属リード線等を用いてもよい。前記金属リード線の材質としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル等の金属が挙げられる。前記金属リード線は、基板に蒸着、スパッタリング、圧着等で設置し、その上にITOやFTOを設ける方法が挙げられる。
【0033】
電子集電電極及び正孔集電電極のいずれか一方に不透明な電極を用いる場合としては、例えば、白金、金、銀、銅、Al等の金属やグラファイトが挙げられる。前記不透明な電極の場合、厚みとしては、特に制限はなく、また、1種単独あるいは2種以上の積層構成で用いても構わない。
【0034】
<電子輸送層(第一の層)>
電子輸送層を形成する材料としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子受容性有機材料(例えば、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、フラーレン化合物、CNT、CN-PPV等)、酸化亜鉛、酸化チタン、フッ化リチウム、カルシウム金属等の無機材料をゾルゲル法やスパッタリングで形成して用いることができる。これらの中でも、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ等の金属酸化物が好ましい。前記電子輸送層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、できるだけ全面を薄く覆うことが好ましく、10nm~100nmがより好ましい。電子輸送層上に塩基性カルボン酸を製膜しても良い。塩基性カルボン酸の具体例としては、4-(N,N-ジメチルアミノ)-安息香酸、4-(N,N-ジエチルアミノ)-安息香酸、4-(N,N-ジベンジルアミノ)-安息香酸等が挙げられる。
【0035】
<正孔輸送層>
正孔輸送層を設けて、正孔の収集効率を向上させることができる。具体的には、PEDOT:PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホン酸)のような導電性高分子、芳香族アミン誘導体のようなホール輸送性有機化合物、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化ニッケル等の正孔輸送性を有する無機化合物をスピンコート、ゾルゲル法やスパッタリングで形成する。本発明においては酸化モリブデンを設けることが好ましい。
前記正孔輸送層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、できるだけ全面を薄く覆うことが好ましく、1nm~50nmがより好ましい。
【0036】
<その他の部材>
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガスバリア層、保護層、バッファ層などが挙げられる。
前記ガスバリア層の材料としては、例えば、窒化珪素、酸化珪素等の無機物などが挙げられる。
【0037】
本発明の光電変換素子は、1つ以上の中間電極を介して2層以上の光電変換層を積層(タンデム化)して直列接合を形成してもよい。
例えば、基板1/下部電極2/正孔輸送層3/第1の光電変換層4/中間電極/第2の光電変換層/電子輸送層5/上部電極6という積層構成などが挙げられる。このように積層することにより、開放電圧を向上させることができる。
このような積層構成の場合には、光電変換層の少なくとも1層が前記一般式(1)で表される有機材料からなる有機材料薄膜を含み、他の層には、短絡電流を低下させないために、前記一般式(1)で表される有機材料とは吸収波長の異なる他の有機材料を含むことが好ましい。
【0038】
前記他の有機材料としては、例えば、ポリチオフェン化合物、ポリフェニレンビニレン化合物、ポリフルオレン化合物、ポリフェニレン化合物等の高分子材料、各種ポルフィリンやフタロシアニン等の低分子材料などが挙げられる。
【0039】
<用途>
近年、特に環境発電素子としては、微弱な光でも効率よく発電する光電変換素子が必要とされている。微弱光の代表として、LEDライトや蛍光灯などが挙げられる。それらは主に室内で用いられ、特に室内光と呼ぶ。それらの光の照度は20Luxから1000Lux程度であり、太陽の直射光(およそ100000Lux)と比較し、非常に微弱な光である。本発明の光電変換素子は、上記室内光のような微弱光の場合であっても高い変換効率を示し、発生した電流を制御する回路基盤等と組み合わせることにより電源装置に応用できる。このような電源装置を利用している機器類として、例えば、電子卓上計算機や腕時計が挙げられる。この他、携帯電話、電子手帳、電子ペーパー等に本発明の光電変換素子を有する電源装置を適用することができる。また、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を長くするための補助電源として本発明の光電変換素子を有する電源装置を用いることもできる。さらには、イメージセンサーとして応用も可能である。
【0040】
<例示化合物の合成例>
本発明の光電変換素子の光電変換層に用いる前記一般式(1)で表される有機材料の合成方法を、前記した例示化合物17及び例示化合物19について以下に示す。
【0041】
(例示化合物17の合成)
(1-1)5-bromo-1H-indene-1,3(2H)-dione (化合物1)の合成
下記の合成方法を用いて5-bromo-1H-indene-1,3(2H)-dione(化合物1)を合成した。
(合成方法)
無水酢酸(16.8mL)、triethylamine(9.1mL)に5-bromophthalic anhydride (6.81g,30.0mmol)をいれ撹拌し、そこにethyl acetoacetate(4.29.01g,33.0mmol)を添加し、混合物を室温で終夜撹拌した。続いて、氷 (20g)と 濃HCl(48.4mL)を加えた。
混合物を大気下80℃20分撹拌し、室温に冷やしたのち、クロロホルムで抽出した。
有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過後、溶媒を留去した。生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)により精製し、クロロホルム/ヘキサンで再結晶し、乾燥させ、化合物1の薄黄色結晶を得た。(yield=5.06g、75%)。
上記反応の反応式、及び得られた化合物1のNMRスペクトル値及び質量分析結果を以下に示す。
【化3】
(NMRスペクトル値)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.12 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.96 (dd, J = 8.0, 1.8 Hz, 1H), 7.85 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 3.26 (s, 2H).
(質量分析結果)
MS (MALDI-TOF) m/z: [M-H]-, 222.94; Found,.222.62.
【0042】
(1-2)5',5'''-(4,8-bis(5-(2-butyloctyl)thiophen-2-yl)benzo[1,2-b:4,5-b']dithiophene-2,6-diyl)bis(3,4'-dihexyl-[2,2'-bithiophene]-5-carbaldehyde) (化合物2)の合成
下記の合成方法を用いて、5',5'''-(4,8-bis(5-(2-butyloctyl)thiophen-2-yl)benzo[1,2-b:4,5-b']dithiophene-2,6-diyl)bis(3,4'-dihexyl-[2,2'-bithiophene]-5-carbaldehyde) (化合物2)を合成した。
(合成方法)
(4,8-bis(5-(2-butyloctyl)thiophen-2-yl)benzo[1,2-b:4,5-b']dithiophene-2,6-diyl)bis(trimethylstannane)(1.83g,1.80mmol)と 5'-bromo-3,4'-dihexyl-[2,2'-bithiophene]-5-carbaldehyde(1.67g,3.78mmol)とを乾燥DMF(20ml)に溶解させ、Pd(PPh(83mg,0.072mmol)を加えた。窒素バブリングを5分行い、80℃で終夜撹拌した。室温に冷やしたのち、メタノールを加え、沈殿を析出させ、ろ過した。生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)により精製し、クロロホルム/メタノールで再結晶し、化合物2の赤色固体を得た。(yield=2.20g,87%).
【0043】
上記反応の反応式及び得られた化合物2のNMRスペクトル値及び質量分析結果を以下に示す。
【化4】
(NMRスペクトル値)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.83 (s, 2H), 7.70 (s, 2H), 7.59 (s, 2H), 7.35 (d, J = 3.5 Hz, 2H), 7.14 (s, 2H), 6.91 (d, J = 3.5 Hz, 2H), 2.88-2.80 (m, 12H), 1.72-1.65 (m, 10H), 1.38-1.28 (m, 56H), 0.92-0.84 (m, 24H).
(質量分析結果)
MS (MALDI-TOF) m/z: [M+H]+, 1411.67; Found, 1411.14.
【0044】
(1-3)2,2'-(((4,8-bis(5-(2-butyloctyl)thiophen-2-yl)benzo[1,2-b:4,5-b']dithiophene-2,6-diyl)bis(3,4'-dihexyl-[2,2'-bithiophene]-5',5-diyl))bis(methaneylylidene))bis(5-bromo-1H-indene-1,3(2H)-dione) (化合物3:例示化合物7)の合成
下記の合成方法を用いて、化合物3(例示化合物7)を合成した。
(合成方法)
前記化合物2(706mg,0.500mmol)と前記化合物1(236mg,1.05mmol)とをクロロホルム(3mL)に溶解させ、1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene (1drop)を添加した。混合物を60℃で終夜撹拌した。室温に冷却後、生成物を直接シリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)により精製し、クロロホルム/メタノールで再結晶化させ、化合物3(例示化合物7)の黒色結晶を得た。さらにリサイクルGPC(溶媒クロロホルム)により精製した。(yield=490mg,54%).
【0045】
上記反応の反応式及び化合物3(例示化合物7)のNMRスペクトル値及び質量分析結果を以下に示す。
【化5】
(NMRスペクトル値)
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.04 (dd, J = 6.9, 1.6 Hz, 2H), 7.86-7.83 (m, 4H), 7.80-7.76 (m, 4H), 7.70 (d, J = 1.3 Hz, 2H), 7.39 (d, J= 3.5 Hz, 2H), 7.30 (s, 2H), 6.94 (d, J= 3.2 Hz, 2H), 2.91-2.82 (m, 12H), 1.78-1.67 (m, 10H), 1.44-1.26 (m, 56H), 0.93-0.85 (m, 24H). 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 189.43, 189.07, 188.80, 188.29, 146.22, 146.06, 145.97, 145.90, 145.84, 143.41, 142.09, 141.93, 141.26, 141.23, 140.56, 139.26, 139.05, 137.96, 137.78, 137.16, 136.91, 136.67, 136.56, 134.70, 134.67, 134.31, 134.13, 131.32, 130.28, 130.08, 128.10, 126.26, 126.14, 125.72, 124.45, 124.30, 123.68, 123.21, 122.21, 40.21, 34.93, 33.64, 33.21, 32.12, 31.85, 31.82, 30.71, 30.12, 29.92, 29.88, 29.56, 29.37, 29.08, 26.86, 23.26, 22.89, 22.87, 22.82, 14.39, 14.34, 14.32.
(質量分析結果)
MS (MALDI-TOF) m/z: [M+H]+, 1823.54; Found, 1822.94. Anal. calcd (%) for C102H120Br2O4S8: C 67.08, H 6.62; found: C 67.13, H 6.62.
【0046】
(例示化合物19の合成)
(2-1)4-iodophthalic acid(化合物4)の合成
下記の合成方法を用いて4-iodophthalic acid(化合物4)を合成した。
(合成方法)
4-iodo-1,2-dimethylbenzene(3.48g,15.0mmol)を pyridine (31.5mL)と蒸留水(66mL)に溶解させ、KMnO(23.7g,150mmol)を添加した。混合物を24時間還流させた。その温度のまま、混合物をろ過し、残渣をKOH水溶液(1M,100mL)で洗浄した。続いて、pHが1になるまで濃塩酸を添加し、有機層を酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、溶媒を留去させ、白い固体の化合物4を得た。(yield=3.58g,82%).
【0047】
上記反応の反応式及び得られた化合物4のNMRスペクトル値及び質量分析結果を以下に示す。
【化6】
(NMRスペクトル値)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.22 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.99 (dd, J = 8.3, 1.8 Hz, 1H), 7.64 (d, J = 8.0 Hz, 1H).
(質量分析結果)
MS (MALDI-TOF) m/z: [M-H]-, 290.92; Found, 290.81.
【0048】
(2-2)5-iodoisobenzofuran-1,3-dione(化合物5)の合成
前記化合物4(3.42g,11.7mmol)をacetic anhydride(50mL)に溶解させ、100℃で終夜撹拌した。溶媒を除去後、黄色い固体の化合物5を得た。(yield=2.94g,92%)
【0049】
上記反応の反応式及び得られた化合物5のNMRスペクトル値及び質量分析結果を以下に示す。
【化7】
(NMRスペクトル値)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.38 (d, J = 1.0 Hz, 1H), 8.26 (dd, J = 8.0, 1.5 Hz, 1H), 7.73 (d, J = 8.3 Hz, 1H).
(質量分析結果)
MS (MALDI-TOF) m/z: [M-H]-, 272.91; Found, 272.50.
【0050】
(2―3)5-iodo-1H-indene-1,3(2H)-dione (化合物6)の合成
前記化合物1の合成において述べたと同様の手順で、前記化合物5(1.51g,5.50mmol)、ethyl acetoacetate(0.787g,6.05mmol)を用い、合成、精製し、化合物6の薄黄色結晶を得た。(yield=1.06g,71%).
【0051】
上記反応の反応式及び得られた化合物6のNMRスペクトル値及び質量分析結果を以下に示す。
【化8】
(NMRスペクトル値)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.36 (t, J = 0.8 Hz, 1H), 8.18 (dd, J = 8.0, 1.5 Hz, 1H), 7.70 (dd, J = 8.0, 0.5 Hz, 1H), 3.23 (s, 2H).
(質量分析結果)
MS (MALDI-TOF) m/z: [M-H]-, 270.93; Found, 269.84.
【0052】
(2―4)2,2'-(((4,8-bis(5-(2-butyloctyl)thiophen-2-yl)benzo[1,2-b:4,5-b']dithiophene-2,6-diyl)bis(3,4'-dihexyl-[2,2'-bithiophene]-5',5-diyl))bis(methaneylylidene))bis(5-iodo-1H-indene-1,3(2H)-dione)(化合物7:例示化合物8)の合成
前記化合物2と化合物1とを反応にさせて化合物3を合成する反応と同様の方法で、化合物2(636mg,0.450mmol)と化合物6(269mg,0.990mmol)を用い、合成、精製をおこない、化合物7(例示化合物8)の黒色固体を得た。(yield=806mg,93%)
【0053】
上記反応の反応式及び得られた化合物6(例示化合物8)のNMRスペクトル値及び質量分析結果を以下に示す。
【化9】
(NMRスペクトル値)
1H NMR(500MHz,CDCl3) δ 8.27 (dd, J = 8.5, 1.3 Hz, 2H), 8.08-8.05 (m, 2H), 7.85 (d, J = 4.4 Hz, 2H), 7.78 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.70 (d, J = 1.6 Hz, 2H), 7.63 (dd, J = 10.4, 7.9 Hz, 2H), 7.39 (d, J = 3.2 Hz, 2H), 7.30 (s, 2H), 6.94 (d, J = 3.5 Hz, 2H), 2.91-2.82 (m, 12H), 1.78-1.70 (m, 10H), 1.44-1.29 (m, 56H), 0.93-0.85 (m, 24H). 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 189.76, 189.11, 189.04, 188.26, 146.22, 146.06, 145.96, 145.88, 145.84, 143.88, 143.69, 143.07, 142.09, 141.59, 141.27, 141.11, 139.58, 139.26, 137.16, 136.92, 136.68, 136.59, 136.54, 134.75, 134.33, 134.14, 132.27, 132.20, 131.34, 128.10, 125.73, 124.31, 124.16, 123.68, 122.97, 122.21, 102.88, 102.62, 40.21, 34.92, 33.63, 33.20, 32.12, 31.85, 31.82, 30.71, 30.12, 29.92, 29.88, 29.55, 29.36, 29.07, 26.85, 23.26, 22.89, 22.87, 22.81, 22.70, 14.39, 14.32, 14.30.
(質量分析結果)
MS (MALDI-TOF) m/z: [M+H]+, 1920.51; Found, 1920.97. Anal. calcd (%) for C102H120I2O4S8: C 63.80, H 6.30; found: C 63.80, H 6.24.
【実施例
【0054】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
また、実施例において一般式(1)で表される化合物として用いた各例示化合物は前記した例示化合物17、19の合成方法に基づいて、使用する試薬を適宜変更することにより合成した。
【0055】
[実施例1]
(電子輸送層の作製)
酢酸亜鉛(aldrich社製)1g,エタノールアミン(aldrich社製)0.28g,メトキシエタノール(和光社製)10mlを終夜室温で撹拌し、酸化亜鉛前駆体溶液を調整した。ITO基板上に酸化亜鉛前駆体溶液を膜厚20nmになるようにスピンコートで塗布し、200℃で10分乾燥後、電子輸送層を形成した。
【0056】
(光電変換層の作製)
下記表2に示すように例示化合物3を18mg、PC71BM(frontier carbon社製)12mgをクロロホルム1mlに溶解させ、光電変換溶液を作製した。上記記載の電子輸送層上に光電変換溶液をスピンコートを用いて塗布し、光電変換層を形成した。膜厚は401nmであった。
【0057】
(ホール輸送層、金属電極の作製)
光電変換層上に酸化モリブデン(高純度化学社製)を10nm、銀を100nm順次真空蒸着にて形成して太陽電池素子を作製した。
【0058】
(評価)
得られた光電変換素子の白色LED照射下(34μW/cm)における短絡電流密度を測定した。
白色LEDはコスモテクノ社製デスクランプCDS-90α、評価機器はNF回路設計ブロック社製太陽電池評価システムAs-510-PV03にて測定した。LED光源の出力の測定はセコニック社製分光色彩照度計C-7000を用いた。評価結果を表2に示す。
【0059】
[実施例2~実施例11]
実施例1において用いた例示化合物3を表2に示す例示化合物に代えた以外は実施例1と同様にして、実施例2~実施例11の太陽電池素子を作成し、評価した。膜厚及び評価結果を表2に示す。
【0060】
[比較例1]
実施例1における光電変換層の作製方法を下記のように変更した以外は、実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。膜厚及び評価結果を表2に示す。
下記比較化合物1を18mg、PC71BM(frontier carbon社製)12mgをクロロホルム1mlに溶解させ、光電変換溶液を作製した。上記記載の電子輸送層上に光電変換溶液をスピンコートを用いて塗布し、光電変換層を形成した。
【0061】
[比較例2]
実施例1における光電変換層の作製方法を下記のように変更した以外は、実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。膜厚及び評価結果を表2に示す。
下記比較化合物2を18mg、PC71BM(frontier carbon社製)12mgをクロロホルム1mlに溶解させ、光電変換溶液を作製した。上記記載の電子輸送層上に光電変換溶液をスピンコートを用いて塗布し、光電変換層を形成した。
【0062】
[比較例3]
実施例1における光電変換層の作製方法を下記のように変更した以外は、実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。膜厚及び評価結果を表2に示す。
下記比較化合物3を18mg、PC71BM(frontier carbon社製)12mgをクロロホルム1mlに溶解させ、光電変換溶液を作製した。上記記載の電子輸送層上に光電変換溶液をスピンコートを用いて塗布し、光電変換層を形成した。
【0063】
[比較例4]
実施例1における光電変換層の作製方法を下記のように変更した以外は、実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、評価した。膜厚及び評価結果を表2に示す。
下記比較化合物4を18mg、PC71BM(frontier carbon社製)12mgをクロロホルム1mlに溶解させ、光電変換溶液を作製した。上記記載の電子輸送層上に光電変換溶液をスピンコートを用いて塗布し、光電変換層を形成した。
【化10】
【0064】
【表2】
【0065】
このように本発明で得られた有機材料を用いて作製した光電変換素子は比較光電変換素子と比較して、34μW/cmの微弱光において短絡電流密度が高く、非常に優れた光電変換材料であることが言える。
【符号の説明】
【0066】
1 基板
2 第一の電極
3 電子輸送層
4 光電変換層
5 正孔輸送層
6 第二の電極
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【文献】特開2017-139437号公報
【文献】Chem. Sci.,2015,6,4860
図1
図2