(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】チョコレート菓子
(51)【国際特許分類】
A23G 1/50 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
A23G1/50
(21)【出願番号】P 2018093922
(22)【出願日】2018-05-15
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】金田 泰佳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 邦彦
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-245594(JP,A)
【文献】特開2014-087308(JP,A)
【文献】特開2011-152056(JP,A)
【文献】食品と容器,2014年,vol.55, no.11,pp.702-707
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00-1/56
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の形状を有するチョコレートを湿度20~300g/m
3
の雰囲気下に焼成する工程を有するチョコレート菓子の製造方法であって、前記チョコレート菓子は、所定の形状を有するチョコレートからなり、前記形状が品温40℃のとき保たれ、その表層の少なくとも一領域には、40℃でのヤング率が1.0×10
6Pa以下である該領域を有する
、該チョコレート菓子の製造方法。
【請求項2】
前記ヤング率は、前記所定形状を有するチョコレートの表面にプローブを押し当てて測定したときの該ヤング率である、請求項1記載のチョコレート菓子
の製造方法。
【請求項3】
前記40℃でのヤング率が1.0×10
6Pa以下である該領域は、手指で持ってもべとつかない程度に耐熱性を有している、請求項1又は2記載のチョコレート菓子
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョコレート菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にチョコレート菓子の特徴の1つには、常温固形状のものを口にしたときすみやかに口どけして、そのチョコレートの風味や食感を味わうことができる、という点が挙げられる。このようなチョコレート菓子には、食べるとき手指に付着して汚れてしまったり、夏場や気温の高い地域などでは、室温で表面がべとついたり、形が崩れたり、菓子どうしが付着してしまったりする側面もあった。
【0003】
従来、チョコレート菓子の耐熱性を向上させるには、例えば、高融点の油脂組成で構成したり、焼成したりする技術が知られている。しかしながら、前者では、油脂組成の融点が高いと口どけが悪くなり、また、油脂組成の高融点化だけでは一定温度以上における耐熱化には限界があるという側面があった。また、後者では、焼成によりチョコレート表層が硬化して、チョコレート本来の軟らかくソフトな食感が損なわれてしまうという側面があった。
【0004】
このような問題に関して、例えば、特許文献1では、チョコレートの表面に水を噴霧して吸湿させた後、これを焼成することによりチョコレート菓子を得ている。そして、手指に付着しない程度に耐熱性が向上し、なお且つ、チョコレート本来の食感を損なうことがないものとされている。
【0005】
また、例えば、特許文献2では、含水菓子生地上にチョコレートを載せて、これを焼成することにより複合菓子を得ている。そして、そのチョコレート部分は手指に付着しない程度に耐熱性が向上し、なお且つ、チョコレート本来の食感を損なうことがないものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-245594号公報
【文献】特開2001-333697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術は、チョコレート表面に吸湿させたうえ焼成する方法であるが、本発明者らの研究によると、焼成前にチョコレート表面に吸湿させると相分離を起しやすく、ぼそぼそとした食感となったり、外観として菓子表面の色調が不均一になったりする傾向があった。
【0008】
一方、特許文献2に開示されている技術では、複合菓子ではないチョコレート単独の菓子製品を得ようとする場合に都合が悪いという問題があった。更に、チョコレートに付与される水分の調整が、含水菓子生地からの水分移行に依拠しているため、耐熱性が良好なチョコレート菓子を安定的に得ることが難しく、また、一定温度以上における耐熱化には限界があった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、所定の耐熱性を備えたうえに、口にしたときに、硬すぎずに、軟らかくソフトな食感を呈する、チョコレート菓子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究したところ、焼成を、任意に調整された湿度条件下に行うことで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のチョコレート菓子は、所定の形状を有するチョコレートからなり、前記形状が品温40℃のとき保たれ、その表層の少なくとも一領域には、40℃でのヤング率が1.0×106Pa以下である該領域を有することを特徴とする。
【0012】
本発明においては、前記ヤング率は、前記所定形状を有するチョコレートの表面にプローブを押し当てて測定したときの該ヤング率であることが好ましい。
【0013】
本発明においては、前記表層は、手指で持ってもべとつかない程度に耐熱性を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、所定の耐熱性を備えたうえに、口にしたときに、硬すぎずに、軟らかくソフトな食感を呈する、チョコレート菓子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において「チョコレート」は、規約や法規上の規定によって限定されるものではなく、カカオマス、ココア、ココアバター、ココアバター代用脂等を使用した油脂加工食品全般を意味するものとする。例えば、純チョコレート、チョコレート、準チョコレート、純ミルクチョコレート、ミルクチョコレート、準ミルクチョコレートなどが挙げられ、カカオマスやココアパウダーを含まないホワイトチョコレートも包含するものである。
【0016】
チョコレートは、通常のチョコレートの製造方法に従って、カカオマス及び/又はココア、糖類、粉乳、乳化剤、ココアバター及び/又は油脂類、香料、着色料等を原料として、製造することができる。すなわち、常法に従って原料をミキシングし、リファイニングを行った後、コンチングを行うことで製造することができる。また、必要に応じて、コンチング工程後、加熱、冷却、加圧、減圧しながら激しく撹拌する、いわゆるホイップ処理を施して、気泡を含有させてもよい。撹拌は、例えば、ミキサー、含気ミキサー装置等を用いて行うことができる。
【0017】
チョコレートの原料として、例えば糖類としては、砂糖が好ましく用いられる。必要に応じてトレハロース、マルトースなどの他の糖類や糖アルコールなどを配合してもよい。ここで、チョコレート本来の軟らかく滑らかな食感を得るためには、乳糖などの還元糖を含有しないことが好ましい。
【0018】
チョコレートの原料として、例えば粉乳としては、全脂粉乳、脱脂粉乳等を用いることができる。ここで、チョコレート本来の軟らかく滑らかな食感を得るためには、乳蛋白の含有量をできるだけ少なくすることが好ましい。
【0019】
チョコレートの原料として、例えばココアバター及び/又はココアバター代用脂としては、ヤシ油、パーム油、パーム核油を原料としたハードバター、エライジン酸を構成脂肪酸とするトランス型ハードバター等のノンテンパリング型の油脂、ココアバター等のテンパリング型の油脂を用いることができる。複数の油脂を併用してもよい。
【0020】
なお、チョコレートには、本発明が奏する作用効果を損なわない範囲で、例えばナッツ類の粉砕物、果汁パウダー、果物凍結乾燥チップ、コーヒーチップ、キャラメル、抹茶、カカオニブ、膨化型スナック食品、ビスケットチップ、キャンディーチップ、チョコレートチップ、ドライフルーツ、マシュマロなどの具材を含有させてもよい。
【0021】
本発明のチョコレート菓子は、上記チョコレートを生地として用いて、それを所定形状に成形し、任意に調整された湿度条件下に加熱処理することにより得られる。以下、この処理を「湿潤加熱」という場合がある。
【0022】
成形の手段や態様に特に制限はなく、例えばモールド(型)に入れて成形するモールド成形、押出機のダイから所定形状に押出して切断する押出成形、スチールベルト上等にチョコレート生地を直接落として固化させるスチールベルト成形等の方法が挙げられる。他の菓子との複合物を形成してもよい。
【0023】
また、形状も任意でよいが、例えば成形後の生地の最小径あるいは短辺の長さが0.5~5.0cmとなるようにすることが好ましく、1.0~2.5cmとなるようにすることがより好ましい。大きさが上記範囲未満であると成形し難くなる傾向あり、望ましくない場合がある。また、大きさが上記範囲を超えると自重による保形性の低下を免れない傾向があり、望ましくない場合がある。また、湿潤加熱の処理後の内部を軟らかく滑らかな食感に維持するためには、成形後の生地の最小径あるいは短辺の長さを0.5cm以上とすることが好ましく、1.0cm以上となるようにすることがより好ましい。
【0024】
上記所定形状への成形は、所定のセンター菓子の全部又は一部を被覆するよう、当該センター菓子の形状に沿って、その一部又は全部に所定の厚さを有する外層を形成するようにしてもよい。この場合、厚さが0.1mm以上となるようにすることが好ましく、0.5~6mmとなるようにすることがより好ましい。被覆には、エンローバー等の当業者に周知の手段を採用し得る。
【0025】
(湿潤加熱)
湿潤加熱の手段に特に制限はなく、例えばオーブン、ガスバーナー、電子レンジ又は電気ヒーター(トースター)等を用いて、上記所定形状に成形したチョコレートを加熱下におき、その庫内に水または蒸気を導入する等により、チョコレートが晒される雰囲気の湿度を所定の湿度に調整すればよい。この場合、加熱はいわゆる焼成の処理であってもよい。特にスチームコンベクションオーブン等が好ましく用いられる。また、処理後には、放冷又は送風等によって、強制的な冷却を行なってもよい。
【0026】
ただし、上記湿潤加熱の際のチョコレートが晒される雰囲気の湿度(庫内湿度)は、20~300g/m3に調整することが好ましく、30~200g/m3に調整することがより好ましい。湿度が上記範囲未満であると、加熱処理(焼成)によりチョコレートに耐熱性を付与しようとすると、その一方でチョコレートの表層が硬い組織となってしまう場合がある。また、湿度が上記範囲を超えると、特殊な装置が必要となる場合がある。
【0027】
また、上記湿潤加熱の際のチョコレートが晒される雰囲気の温度(庫内温度)は、40~400℃に調整することが好ましく、60~350℃に調整することがより好ましい。温度が上記範囲未満であると、チョコレートに有効に耐熱性を付与し難くなる場合がある。また、温度が上記範囲を超えると、チョコレートの表層が硬い組織となってしまう場合がある。
【0028】
また、上記湿潤加熱の処理時間は、1秒~5分間であることが好ましく、10秒~3分間であることがより好ましい。処理時間が上記範囲未満であると、チョコレートに有効に耐熱性を付与し難くなる場合がある。また、処理時間が上記範囲を超えると、チョコレートの表層が硬い組織となってしまう場合がある。
【0029】
以上に説明した湿式焼成の処理により、所定の耐熱性を備えたうえに、口にしたときに、全体として硬すぎずに、軟らかくソフトな食感を呈する、チョコレート菓子を得ることができる。より具体的には、表層の少なくとも一領域に、40℃でのヤング率が1.0×106Pa以下である領域を有するチョコレート菓子を得ることができる。40℃でのヤング率は1.0×102~1.0×106Paであることが好ましく、1.0×103~5.0×105Paであることがより好ましい。ここで、通常チョコレートは、品温40℃では、構成油脂の融解により、その形状が維持できないのに対して、本発明により提供されるチョコレート菓子においては、耐熱性が向上しており、40℃での形状を維持できる。なお、ヤング率とは、物体の弾性範囲における応力とひずみの比例関係を表す比例係数であるが、食品製品の場合、その表層の軟らかさの指標とすることができる。
【0030】
(ヤング率の測定)
ヤング率の測定には、ヘルツの弾性接触理論に基づく、当業者に周知の方法を採用することができる。より具体的には、前記所定形状を有するチョコレートの表面に、設定した最大荷重になるまで弾力センサー(例えば、球圧子等のプローブ)を押し込み、その際の荷重と押し込み量との関係から、ヘルツの弾性接触理論に基づいてヤング率を求めることができる。ヤング率の測定には、自動化された装置も市販されているので、そのような測定装置を用いてもよい。
【0031】
本発明により提供されるチョコレート菓子においては、上述したとおり、耐熱性が向上しており、40℃でのヤング率を測定できる。この耐熱性は、より好ましくは、手指で持ってもべとつかない程度の耐熱性である。ここで、「手指で持ってもべとつかない程度に耐熱性を有している」とは、手指でつまんで口にしようとしたとき、実質的に手指が汚れないことをいう。本発明においては、より具体的に、手指でつまんで口にしようとしたとき、1秒間保持後に、その手指に、つまんだことによりチョコレートが付着しないことをいうものとする。
【0032】
また、本発明により提供されるチョコレート菓子は、外観として菓子表面に色ムラがあると評価されるおそれが少ない。より具体的には、上記耐熱性の向上のための処理にもかかわらず、菓子表面の色調に色ムラを起していない。チョコレート菓子表面の色調に色ムラを起していないことの判定は、菓子表面の複数個所、例えば5~10カ所をランダムに選択し、好ましくは測定対象として1~5mm径範囲で、CIE(国際照明委員会)L*a*b*色空間表示系におけるL*値を測定したとき、得られる複数個所での測定値の標準偏差が、おおむね1.0以下であることを指標にでき、より典型的には0.8以下であることを指標にできる。なお、このとき、L*値の測定値の標準偏差を得るための菓子表面の複数個所が属する領域としては、菓子全体の外観の評価に影響を与える、菓子表面全体中の1又は2以上の部分領域であってもよい。また、マーブルチョコレートなど異種チョコレートが所定の境界あるいは境界領域を挟んで互いに異種の色彩を呈しているような場合でも、同じ、あるいは、同種の色彩を呈する領域を適宜選択して、その領域範囲にて複数個所で上記L*値を測定して標準偏差を求めることができるので、得られた標準偏差が所定範囲以下に収まっているかどうかで、色調に色ムラを起しているかどうかを判定することができる。測定には、分光測色計や色彩色差計等の当業者に周知の測定器を使用することができる。
【実施例】
【0033】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0034】
(実施例1~4、比較例1~5)
表1に示す各材料を配合し、常法に従って混合して、リファイニングを行った後、コンチングを行って、実施例1~4、比較例1~5のチョコレート生地を調製した。
【0035】
【0036】
得られたチョコレート生地を、融解品温下にモールド(内径20mm四方、深さ10mm)に充填し、冷却、固化させた後、モールドから取り出して、スチームコンベクションオーブンにより200℃で焼成した。その際には、焼成前の処理、焼成の際の湿度、焼成時間を、それぞれ下記に示すとおりに変えて、実施例1~4、比較例1~5のチョコレート菓子を得た。
【0037】
・実施例1(ブラック):
焼成前処理なし、焼成の際の庫内湿度100g/m3、焼成時間1分間
・実施例2(ブラック):
焼成前処理なし、焼成の際の庫内湿度100g/m3、焼成時間2分間
・実施例3(ブラック):
焼成前処理なし、焼成の際の庫内湿度100g/m3、焼成時間3分間
・実施例4(ホワイト):
焼成前処理なし、焼成の際の庫内湿度100g/m3、焼成時間2分間
・比較例1(ブラック):焼成なし
・比較例2(高融点):焼成なし
・比較例3(ブラック、水添加):焼成なし
・比較例4(ブラック):
焼成前処理なし、焼成の際の庫内湿度10g/m3、焼成時間3分間
・比較例5(ブラック):
焼成前処理なし、焼成の際の庫内湿度10g/m3、焼成時間4分間
【0038】
得られたチョコレート菓子について、食感の官能評価、40℃でのヤング率の測定、40℃での耐熱性の評価、及び外観の評価を行った。
【0039】
(食感の官能評価)
パネラー3名に試食してもらい、チョコレート菓子が軟らかく口どけがよいかどうかの側面から、良好「○」、やや不良「△」、不良「×」の判断基準で、その評価を集約した。
【0040】
(ヤング率の測定)
柔さ計測システムSoftMeasure(HG1003, 株式会社堀内電機製作所)を用いて、ヘルツの弾性接触理論に基づくヤング率を計測し、3回の測定平均値を算出した。測定条件は下記のとおりとした。
・最大荷重:0.15N
・押込み速度:2mm/s
・球圧子直径:10mm
【0041】
(耐熱性の評価)
40℃のチョコレート菓子が手指につくかどうかの側面から、良好「○」、不良「×」の判断基準で、その評価を集約した。
【0042】
(色調(L*値)の測定)
チョコレート菓子表面の色調について、菓子表面の5ヶ所をランダムに選択して、以下に示す測定条件で、CIE(国際照明委員会)L*a*b*色空間表示系におけるL*値を測定した。また、5ヶ所で得られた測定値の標準偏差を求めた。なお、測定には、分光測色計CM-5(コニカミノルタ株式会社)を使用した。
・反射測定
・観察光源:D65
・10°視野
・測定径:3mm
・正反射光除去
【0043】
(外観の官能評価)
パネラー3名に、チョコレート菓子表面の色調が一様かどうかの側面から、良好「○」、不良「×」の判断基準で、その評価を集約した。
【0044】
結果を表2に示す。
【0045】
【0046】
その結果、以下のことが明らかとなった。
【0047】
(1)実施例1と比較例1とを比較すると、実施例1において、焼成により40℃での耐熱性が得られたことが分かる。なお、実施例1、比較例1において、いずれも外観としては、色ムラがなく菓子表面が一様な色調を呈した。
【0048】
(2)実施例1と実施例2と比較例1とを比較すると、実施例1、2において、焼成により40℃での耐熱性が得られたとともに、2分間焼成した実施例2のほうが、1分間焼成した実施例1よりも、表層の軟らかさの指標であるヤング率が高くなった(より硬くなった)。なお、実施例2においても、外観としては、色ムラがなく菓子表面が一様な色調を呈した。
【0049】
(3)実施例1と実施例2と実施例3と比較例1とを比較すると、実施例1、2、3において、焼成により40℃での耐熱性が得られたとともに、3分間焼成した実施例3のほうが、1分間焼成した実施例1や2分間焼成した実施例2よりも、表層の軟らかさの指標であるヤング率が高くなった(より硬くなった)。なお、実施例3においても、外観としては、色ムラがなく菓子表面が一様な色調を呈した。
【0050】
(4)実施例2と実施例4と比較例1とを比較すると、ココアパウダーやココアバターの配合のない白系チョコレートからなる実施例4において、ココアパウダーやココアバターを配合した黒系チョコレートからなる実施例2同様、焼成により40℃での耐熱性が得られ、また、2分間焼成した白系チョコレートからなる実施例4のヤング率は、2分間焼成した黒系チョコレートからなる実施例2と同程度であった。なお、実施例4においても、外観としては、色ムラがなく菓子表面が一様な色調を呈した。
【0051】
(5)比較例2の結果にみられるように、チョコレートの種類として高融点のものを使用しても、焼成しないと40℃での耐熱性は得られず、口どけも悪かった。
【0052】
(6)比較例3の結果にみられるように、チョコレートの種類として水添加のものを使用しても、焼成しないと40℃での耐熱性は得られず、口どけも悪かった。
【0053】
(7)実施例3と比較例4とを比較すると、庫内湿度10g/m3の雰囲気下に3分間焼成した比較例4において、庫内湿度100g/m3の雰囲気下に3分間焼成した実施例3で得られたような40℃での耐熱性が、同じ焼成時間にも関わらずに、得られなかった。
【0054】
(8)実施例3と比較例4と比較例5とを比較すると、庫内湿度10g/m3の雰囲気下に焼成した比較例5において、焼成時間が4分間であると、庫内湿度100g/m3の雰囲気下に焼成した実施例3で得られたような40℃での耐熱性が得られたが、一方で、庫内湿度10g/m3の雰囲気下に3分間焼成した比較例4に比べて、表層の軟らかさの指標であるヤング率が高くなり(より硬くなり)、食感評価も不良となった。