(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】符号化装置、復号装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 19/11 20140101AFI20221215BHJP
H04N 19/176 20140101ALI20221215BHJP
H04N 19/129 20140101ALI20221215BHJP
H04N 19/593 20140101ALI20221215BHJP
【FI】
H04N19/11
H04N19/176
H04N19/129
H04N19/593
(21)【出願番号】P 2018171407
(22)【出願日】2018-09-13
【審査請求日】2021-08-13
(31)【優先権主張番号】P 2017177136
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】岩村 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】根本 慎平
(72)【発明者】
【氏名】市ヶ谷 敦郎
【審査官】岩井 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-253826(JP,A)
【文献】国際公開第2017/131233(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/084817(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/012918(WO,A1)
【文献】Han Huang et al.,EE2.1: Quadtree plus binary tree structure integration with JEM tools,Joint Video Exploration Team (JVET) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11,JVET-C0024_r1,3rd Meeting: Geneva, CH,2016年05月,pp.1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00 - 19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画像を構成するフレーム単位の原画像をブロックに分割して符号化するように構成されている符号化装置であって、
前記符号化の対象である符号化対象ブロックの符号化処理順を決定するように構成されている符号化処理順決定部と、
前記符号化処理順に基づいて、前記符号化対象ブロックのイントラ予測モード候補を生成するように構成されている生成部と、
前記イントラ予測モード候補の中から前記符号化対象ブロックに適用するイントラ予測モードを決定するように構成されているイントラ予測モード決定部と、
決定された前記符号化処理順及び前記イントラ予測モードに基づいて、前記符号化対象ブロックに対するイントラ予測処理を施すように構成されているイントラ予測部と、
前記符号化処理順及び前記イントラ予測モードに対して、エントロピー符号化処理を施すように構成されているエントロピー符号化部とを具備
し、
前記生成部は、前記符号化処理順が逆Zスキャンである場合、下側及び左側に隣接する参照画素を用いるイントラ予測モード群を前記イントラ予測モード候補として生成し、
前記生成部は、前記符号化処理順がNスキャンである場合、右側及び上側に隣接する参照画素を用いるイントラ予測モード群を前記イントラ予測モード候補として生成することを特徴とする符号化装置。
【請求項2】
前記符号化対象ブロックは、前記原画像に対して四分木分割及び二分木分割の少なくとも一方を階層的に適用することによって得られるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の符号化装置。
【請求項3】
動画像を構成するフレーム単位の
原画像を
符号化対象ブロックに分割して復号するように構成されている復号装置であって、
符号化装置から出力されたストリームに対してエントロピー復号処理を施すことによって、
前記符号化対象ブロックの符号化処理順を取得するように構成されている符号化処理順復号部と、
前記符号化処理順に基づいて、前記符号化対象ブロックのイントラ予測モード候補を生成するように構成されている生成部と、
前記イントラ予測モード候補に基づいて、前記ストリームに対してエントロピー復号処理を施すことによって、前記符号化対象ブロックに適用するイントラ予測モードを取得するように構成されているイントラ予測モード復号部と、
前記符号化処理順及び前記イントラ予測モードに基づいて、前記符号化対象ブロックに対するイントラ予測処理を施すように構成されているイントラ予測部とを具備
し、
前記生成部は、前記符号化処理順が逆Zスキャンである場合、下側及び左側に隣接する参照画素を用いるイントラ予測モード群を前記イントラ予測モード候補として生成し、
前記生成部は、前記符号化処理順がNスキャンである場合、右側及び上側に隣接する参照画素を用いるイントラ予測モード群を前記イントラ予測モード候補として生成することを特徴とする復号装置。
【請求項4】
前記符号化対象ブロックは、前記原画像に対して四分木分割及び二分木分割の少なくとも一方を階層的に適用することによって得られるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の復号装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1又は2に記載の符号化装置として機能させるためのプログラム。
【請求項6】
コンピュータを、請求項3又は4に記載の復号装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、符号化装置、復号装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
次世代映像圧縮技術に代表されるH.265/HEVC(High Efficiency Video Coding)動画像(映像)符号化方式においては、フレーム間の時間的相関を利用したインター予測及びフレーム内の空間的相関を利用したイントラ予測の2種類の予測を切り替えながら予測を行って残差信号を生成した後、直交変換処理、ループフィルタ処理、及びエントロピー符号化処理を行う。そして、このエントロピー符号化処理により得られたストリームを出力するように構成されている。
【0003】
HEVCにおけるイントラ予測には、Planar予測やDC予測や方向予測等を含む計35種類のイントラ予測モードが用意されている。復号装置では、符号化装置(エンコーダ)で決定されたイントラ予測モードに従って、隣接する復号済み参照画素を用いてイントラ予測を行い、予測画像を生成するように構成されている。以下、特に記載が無い場合には、「参照画素」とは、復号済み参照画素をいうものとする。
【0004】
従来のHEVCは、動画像を構成するフレーム単位の原画像を固定の大きさの複数のブロック(以下、CTU:Coding Tree Unitと呼ぶ)に分割した後、各CTUに対して階層的な四分木分割を適用することにより符号化するように構成されている。
【0005】
符号化装置は、分割された符号化対象ブロック(以下、CU:Coding Unitと呼ぶ)に対してイントラ予測とインター予測とを切り替えながら符号化処理を施す。そして、この符号化処理は、左上から右下に向かって予め規定された符号化処理順(左上のCU→右上のCU→左下のCU→右下のCUというような符号化処理順、以下、Zスキャンと呼ぶ)で行われる。
【0006】
上述のように、イントラ予測モードは、参照画素を利用して予測画像を生成する。しかしながら、このイントラ予測モードは、符号化処理の順序を後述するZスキャンで進めるため、CUの右上や左下の参照画素が復号済みでない場合がある。
【0007】
このような場合には、参照画素として最も近い復号済み参照画素を0次外挿した値を用いて予測画像を生成するように構成されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
また、HEVCでは、フレーム内の最も左上に位置するブロック等、隣接する復号済み参照画素が存在しないブロックでは、規定した値(例えば、10ビットの動画像であれば「512」等)を埋める処理により、予測画像を生成する際に用いる参照画素を作り出すように構成されている。
【0009】
上述のように、復号済みでない参照画素が存在する場合、復号済みでない参照画素の位置する方向からの方向予測を行うと予測精度が低下するため、符号化効率が低減してしまう。
【0010】
そこで、イントラ予測において、Zスキャンの他、逆Nスキャン(右上のCU→右下のCU→左上のCU→左下のCUというような符号化処理順)や逆Zスキャン(左下のCU→右下のCU→左上のCU→右上のCUというような符号化処理順)のように符号化処理順に自由度を持たせることによって予測精度の向上を図る技術が知られている(非特許文献2参照)。
【0011】
非特許文献2に規定されている技術では、CU単位でどのような符号化処理順を用いるのかについてのフラグを伝送した上で、各CUに適用可能なイントラ予測モードを示すフラグを伝送するように構成されている。
【0012】
また、非特許文献2に規定されている技術では、各CUのイントラ予測モードは、HEVCと同様に、固定の35個のイントラ予測モードの中から選択するように構成されており、伝送するイントラ予測モードのエントロピー符号化処理もHEVCと同様になっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【文献】大久保榮監修、「インプレス標準教科書シリーズ H.265/HEVC教科書」
【文献】Xiulian Peng等、「Improved intra frame coding by PU/TU reordering」、JVTVC-C275、2010年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、非特許文献2のように、符号化処理順(スキャン順)を選択可能とした場合であって、逆ZスキャンやNスキャンを選択したときであってもイントラ予測の精度が低下してしまう場合があるという問題点があった。
【0015】
例えば、
図9に示すように、分割されたCUに対する符号化処理順に逆Zスキャンを選択した場合には、CU#3(左下のCU)→CU#4(右下のCU)→CU#1(左上のCU)→CU#2(右上のCU)という順でイントラ予測処理が行われる。
【0016】
ここで、
図9の例のように、各CUのイントラ予測モードが、左側や上側に隣接する参照画素を利用するようなイントラ予測モードである場合には、符号化処理が、逆Zスキャンで行われる。このため、CU#4(右下のCU)やCU#3(左下のCU)では、Zスキャンであれば参照可能な上側の参照画素が利用不可能となる。
【0017】
つまり、
図9の例のように、逆Zスキャンが選択された場合には、左側や上側に位置する参照画素を利用するイントラ予測モードが選択される可能性は低くなる。
【0018】
上述したように、非特許文献2では、符号化処理順によって選択されるイントラ予測モードの確率に偏りがあるにもかかわらずイントラ予測モードを示すフラグのエントロピー符号化をHEVCと同様としており、上述したイントラ予測モードの確率の偏りについて考慮されていない。
【0019】
また、非特許文献2では、全ての選択可能な符号化処理順において、各CUに対しどのようなイントラ予測モードを選択するかについて、符号化装置側で全ての組み合わせを試す必要があり、符号化装置側の計算時間が増大してしまうという問題点があった。
【0020】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、符号化装置によって伝送する情報量を低減し、符号化装置側の計算時間を低減しつつ、符号化効率を向上させることができる符号化装置、復号装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の特徴は、動画像を構成するフレーム単位の原画像をブロックに分割して符号化するように構成されている符号化装置であって、符号化対象ブロックの符号化処理順を決定するように構成されている符号化処理順決定部と、前記符号化処理順に基づいて、前記符号化対象ブロックのイントラ予測モード候補を生成するように構成されている生成部と、前記イントラ予測モード候補の中から前記符号化対象ブロックに適用するイントラ予測モードを決定するように構成されているイントラ予測モード決定部と、決定された前記符号化処理順及び前記イントラ予測モードに基づいて、前記符号化対象ブロックに対するイントラ予測処理を施すように構成されているイントラ予測部と、前記符号化処理順及び前記イントラ予測モードに対して、エントロピー符号化処理を施すように構成されているエントロピー符号化部とを具備することを要旨とする。
【0022】
本発明の第2の特徴は、動画像を構成するフレーム単位の画像を分割したブロックごとに復号するように構成されている復号装置であって、符号化装置から出力されたストリームに対してエントロピー復号処理を施すことによって、符号化対象ブロックの符号化処理順を取得するように構成されている符号化処理順復号部と、前記符号化処理順に基づいて、前記符号化対象ブロックのイントラ予測モード候補を生成するように構成されている生成部と、前記イントラ予測モード候補に基づいて、前記ストリームに対してエントロピー復号処理を施すことによって、前記符号化対象ブロックに適用するイントラ予測モードを取得するように構成されているイントラ予測モード復号部と、前記符号化処理順及び前記イントラ予測モードに基づいて、前記符号化対象ブロックに対するイントラ予測処理を施すように構成されているイントラ予測部とを具備することを要旨とする。
【0023】
本発明の第3の特徴は、コンピュータを、上述の第1の特徴に記載の符号化装置として機能させるためのプログラムであることを要旨とする。
【0024】
本発明の第4の特徴は、コンピュータを、上述の第2の特徴に記載の復号装置として機能させるためのプログラムであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、符号化装置によって伝送する情報量を低減し、符号化装置側の計算時間を低減しつつ、符号化効率を向上させることができる符号化装置、復号装置及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る符号化装置1の機能ブロックの一例を示す図である。
【0027】
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3で用いられる符号化処理順(スキャン順)の一例を示す図である。
【0028】
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3で用いられる符号化処理順(スキャン順)の一例を示す図である。
【0029】
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3で用いられるイントラ予測モードの全範囲の一例を示す図である。
【0030】
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3におけるイントラ予測処理の一例を示す図である。
【0031】
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る復号装置3の機能ブロックの一例を示す図である。
【0032】
【
図7】
図7は、変更例1について説明するための図である。
【0033】
【
図8】
図8は、従来技術について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第1の実施形態)
以下、
図1~
図6を参照して、本発明の第1の実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3について説明する。
【0035】
ここで、本実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3は、HEVC等の動画像符号化方式におけるイントラ予測に対応するように構成されている。なお、本実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3は、イントラ予測を行う動画像符号化方式であれば、任意の動画像符号化方式に対応することができるように構成されている。
【0036】
本実施形態に係る符号化装置1は、動画像を構成するフレーム単位の原画像を符号化対象CUに分割して符号化するように構成されている。以下、本実施形態では、動画像を構成するフレーム単位の原画像を階層的に四分木分割して符号化するケースを例に挙げて説明する。
【0037】
図1に示すように、本実施形態に係る符号化装置1は、符号化処理順決定部11と、イントラ予測モード候補生成部12と、イントラ予測モード決定部13と、イントラ予測部14と、エントロピー符号化部15とを具備している。
【0038】
符号化処理順決定部11は、符号化対象CU(符号化対象ブロック)の符号化処理順(以下、スキャン順)を決定(選択)するように構成されている。
【0039】
具体的には、符号化処理順決定部11は、分割された各CUをどのような順序で符号化処理してくかについて決定するように構成されている。
【0040】
図2に、符号化処理順決定部11によって選択可能なスキャン順の例を示す。
図2(a)に示すスキャン順は、Zスキャン(左上のCU→右上のCU→左下のCU→右下のCU)と呼ばれ、
図2(b)に示す符号化処理順は、逆Zスキャン(左下のCU→右下のCU→左上のCU→右上のCU)と呼ばれ、
図2(b)に示すスキャン順は、Nスキャン(右上のCU→右下のCU→左上のCU→左下のCU)と呼ばれるものとする。
【0041】
本明細書では、以後、符号化処理順決定部11によってZスキャンや逆ZスキャンやNスキャンが選択可能である場合を例に挙げて説明するが、本発明は、
図2に示すスキャン順の他、
図3に示すスキャン順にも適用可能である。
【0042】
ここで、
図3(a)に示すスキャン順が適用される場合には、Nスキャンと同様の処理が適用可能であり、
図3(b)に示すスキャン順が適用される場合には、逆Zスキャンと同様の処理が適用可能である。
【0043】
イントラ予測モード候補生成部12は、符号化処理順決定部11によって決定(選択)されたスキャン順に基づいて、符号化対象CUのイントラ予測モード候補を生成するように構成されている。
【0044】
以下、HEVCで適用可能なイントラ予測モードを例に挙げて説明する。
【0045】
図4に示すように、35個のイントラ予測モードについて、参照する方向別に、A、B、Cにカテゴリ分けを行う。
【0046】
本実施形態では、HEVCのイントラ予測モードを例に説明するが、隣接する復号済み参照画素を用いてイントラ予測を行うどのような符号化処理に対しても適用可能である。
【0047】
HEVCにおいて、モード2からモード10の計9個のイントラ予測モードについては、カテゴリAとし、モード11からモード25までの計15個のイントラ予測モードをカテゴリBとし、モード26からモード34の計9個のイントラ予測モードをカテゴリCとする。
【0048】
なお、HEVC以外の方式等において、適用可能なイントラ予測モードのうち方向予測を行うモードについて、上側に位置する参照画素を利用しないイントラ予測モード群をカテゴリAとし、左側に位置する参照画素を利用しないイントラ予測モード群をカテゴリCとし、上側及び左側に位置する参照画素のどちらも利用するイントラ予測モード群をカテゴリBとなるように設定する。
【0049】
イントラ予測モード候補生成部12は、符号化処理順決定部11によって決定されたスキャン順に基づいて、符号化対象CUのイントラ予測モード候補を生成するように構成されている。
【0050】
例えば、イントラ予測モード候補生成部12は、符号化処理順決定部11で決定されたスキャン順がZスキャンである場合には、HEVCのケースと同様に、A、B、Cの3個のカテゴリ、DCモード及びPlanarモードを、各CUに対して選択可能なイントラ予測モード候補とするように構成されている。
【0051】
一方、イントラ予測モード候補生成部12は、符号化処理順決定部11で決定された符号化処理の順序が逆Zスキャンである場合には、カテゴリAに属するイントラ予測モード、DCモード及びPlanarモードを、各CUに対して選択可能なイントラ予測モード候補とするように構成されている。
【0052】
さらに、イントラ予測モード候補生成部12は、符号化処理順決定部11で決定されたスキャン順がNスキャンである場合には、カテゴリCに属するイントラ予測モード、DCモード及びPlanarモードを、各CUに対して選択可能なイントラ予測モード候補とするように構成されている。
【0053】
イントラ予測モード決定部13は、イントラ予測モード候補生成部12によって生成されたイントラ予測モード候補の中から符号化対象CUに適用するイントラ予測モードを決定するように構成されている。
【0054】
例えば、イントラ予測モード決定部13は、イントラ予測モード候補生成部12によって定められたカテゴリに所属するイントラ予測モードのうち、符号化装置1側での最適化等により各CUに適用するイントラ予測モードを決定するよう構成されている。
【0055】
イントラ予測部14は、符号化処理順決定部11によって決定されたスキャン順及びイントラ予測モード決定部13によって決定されたイントラ予測モードに基づいて、符号化対象CUに対するイントラ予測処理を施すように構成されている。
【0056】
具体的には、イントラ予測部14は、各CUに適用するイントラ予測モード及び各CUに隣接する復号済み参照画素の存在する位置に応じて、符号化対象CUに対するイントラ予測処理を施すよう構成されている。
【0057】
以下、
図5を参照して、本実施形態に係るイントラ予測処理の一例について説明する。
【0058】
上述のように、イントラ予測モード候補生成部12は、符号化処理順決定部11で決定されスキャン順が逆Zスキャンである場合には、カテゴリAに属するイントラ予測モード、DCモード及びPlanarモードを、各CUに対して選択可能なイントラ予測モード候補とする。
【0059】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、イントラ予測部14は、CU#3(左下のCU)及びCU#4(右下のCU)については、従来のHEVCと同様にイントラ予測処理を行うように構成されている。HEVCでは、イントラ予測処理が行われる場合、復号画像を逐次生成することで、後続に符号化処理を行うCUにおけるイントラ予測処理において、かかる復号画像を再利用可能となるように構成されている。
【0060】
そのため、
図5(c)及び
図5(d)に示すように、イントラ予測部14は、CU#1(左上のCU)及びCU#2(右上のCU)に対するイントラ予測を行う際には、下側に位置するCU(CU#3及びCU#4)が復号済みであるため、これらのCUの復号画像を参照画素として再利用可能である。
【0061】
そこで、イントラ予測部14は、各CUのスキャン順が逆Zスキャンである場合には、下側のCUが既に復号済みのCUに対しては、通常のHEVCで行われるイントラ予測処理の代わりに、少なくとも下側及び左側に隣接する参照画素を用いてイントラ予測処理を行うように構成されている。
【0062】
同様に、イントラ予測部14は、各CUのスキャン順がNスキャンである場合には、右側のCUが既に復号済みのCUに対しては、通常のHEVCで行われるイントラ予測処理の代わりに、少なくとも右側及び上側に隣接する参照画素を用いてイントラ予測処理を行うように構成されている。
【0063】
エントロピー符号化部15は、符号化処理順決定部11によって決定されたスキャン順及びイントラ予測モード決定部13によって決定されたイントラ予測モードに対して、エントロピー符号化処理を施すように構成されている。
【0064】
具体的には、
図1に示すように、エントロピー符号化部15は、符号化処理順符号化部151と、イントラ予測モード符号化部152とを具備している。
【0065】
符号化処理順符号化部151は、符号化処理順決定部11により決定されたスキャン順に対してエントロピー符号化処理を施すように構成されている。
【0066】
イントラ予測モード符号化部152は、イントラ予測モード候補生成部12により生成されたイントラ予測モード候補及びイントラ予測モード決定部13により決定されたイントラ予測モードに基づいて、イントラ予測モードに対してエントロピー符号化処理を施すように構成されている。
【0067】
従来のHEVCでは、35個のイントラ予測モードのうち、より選択される確率の高いMPM(Most Probable Mode)に登録されている3個のイントラ予測モードを除いた32個のイントラ予測モードに対して、5ビットのフラグ情報をストリーム出力するよう構成されている。
【0068】
一方、本実施形態では、イントラ予測モード符号化部152は、イントラ予測モード候補生成部12によってカテゴリAに属するイントラ予測モード、DCモード及びPlanarモードのみが選択可能であると判定された場合(すなわち、符号化対象CUに逆Zスキャンが適用されると判定された場合)、或いは、イントラ予測モード候補生成部12によってカテゴリCに属するイントラ予測モード、DCモード及びPlanarモードのみが選択可能であると判定された場合(すなわち、符号化対象CUにNスキャンが適用されると判定された場合)には、選択される可能性のあるイントラ予測モードは、計10個となることから、MPMに登録されている3個のイントラ予測モードを除いた7個のモードに対して、3ビットのフラグ情報をストリーム出力するように構成することができる。かかる構成によれば、イントラ予測モードの符号化に必要な情報量を削減することができ、符号化効率が向上する。
【0069】
上述の例では、固定長符号化した場合を例に3ビットと説明したが、可変長符号化やコンテキスト適応算術符号化(CABAC)等を用いてエントピー符号化を行う場合には、ストリーム出力されるビット数は3ビットとは限らない。
【0070】
また、本実施形態に係る復号装置3は、動画像を構成するフレーム単位の画像を分割したCUごとに復号するように構成されている。ここで、本実施形態に係る復号装置3は、本実施形態に係る符号化装置1と同様に、動画像を構成するフレーム単位の画像を階層的に四分木分割することができるように構成されている。
【0071】
図6に示すように、本実施形態に係る復号装置3は、エントロピー復号部31と、イントラ予測モード候補生成部32と、イントラ予測部33とを具備している。
【0072】
エントロピー復号部31は、符号化装置1から出力されたストリームに対してエントロピー復号処理を施すことによって、符号化対象CUの符号化処理順を取得するように構成されている。
【0073】
具体的には、エントロピー復号部31は、符号化処理順復号部311と、イントラ予測モード復号部312とを具備している。
【0074】
符号化処理順復号部311は、符号化装置1から出力されたストリームに対してエントロピー復号処理を施すことによって、各CUに対するスキャン順を示すフラグ情報を取得するように構成されている。
【0075】
イントラ予測モード候補生成部32は、符号化処理順復号部311によって復号されたフラグ情報によって示されているスキャン順に基づいて、符号化対象CUのイントラ予測モード候補を生成するように構成されている。
【0076】
具体的には、イントラ予測モード候補生成部32は、符号化装置1を構成するイントラ予測モード候補生成部12と同様に、各CUに適用するスキャン順に基づいて、
図4に示すカテゴリA、B、C、DCモード、Planarモードのうち、各CUに適用可能なイントラ予測モード候補を生成するよう構成されている。
【0077】
イントラ予測モード復号部312は、イントラ予測モード候補生成部32によって生成されたイントラ予測モード候補に基づいて、符号化装置1から出力されたストリームに対してエントロピー復号処理を施すことによって、各CUに適用するイントラ予測モードを取得するよう構成されている。
【0078】
イントラ予測部33は、符号化処理順復号部311によって取得されたスキャン順及びイントラ予測モード復号部312によって取得されたイントラ予測モードに基づいて、符号化対象CUに対するイントラ予測処理を施すように構成されている。
【0079】
具体的には、イントラ予測部33は、符号化装置1を構成するイントラ予測部14と同様に、各CUに適用するイントラ予測モード及び各CUに隣接する復号済み参照画素の存在する位置に応じて、イントラ予測処理を施すよう構成されている。
【0080】
本実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3によれば、符号化装置1によってスキャン順を制御することにより、イントラ予測効率を向上させることができ、また、適用するスキャン順に基づいて伝送するイントラ予測モードの情報量を低減することができ、符号化効率を向上させることができる。
【0081】
(第2の実施形態)
以下、
図7を参照して、本発明の第2の実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3について、上述の第1の実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3との相違点に着目して説明する。
【0082】
本実施形態に係る符号化装置1は、動画像を構成するフレーム単位の原画像を階層的な二分木分割によりCUに分割して符号化するように構成されている。
【0083】
上述の第1の実施形態では、四分木分割によって分割されているCUに対するスキャン順の決定、イントラ予測モード候補の生成、イントラ予測モード及びスキャン順に対するエントロピー符号化処理について記載したが、本実施形態では、CUに対して二分木分割を適用した場合について記載する。
【0084】
CUに対して二分木分割を適用する場合には、縦長の2つのCUに分割する場合と、横長の2つのCUに分割する場合の2種類の分割方法からさらに選択可能である。
【0085】
さらに、縦長の2つのCUに分割する場合には、
図7(a)に示すCU#1(左側のCU)→CU#2(右側のCU)の左右順スキャンと、
図7(b)に示すCU#2(右側のCU)→CU#1(左側のCU)の左右逆スキャンの2種類のスキャン順が選択可能である。
【0086】
一方、横長の2つのCUに分割する場合には、
図7(c)に示すCU#1(上側のCU)→CU#2(下側のCU)の上下順スキャンと、
図7(d)に示すCU#2(下側のCU)→CU#1(上側のCU)の上下逆スキャンの2種類のスキャン順が選択可能である。
【0087】
符号化処理順決定部11は、CUを縦長の2つのCUに分割する場合には、左右順スキャン及び左右逆スキャンのうちのどちらの符号化処理を適用するかについて決定するように構成されている。
【0088】
一方、符号化処理順決定部11は、CUを横長の2つのCUに分割する場合には、上下順スキャン及び上下逆スキャンのうちのどちらのスキャン順を適用するかについて決定するように構成されている。
【0089】
イントラ予測モード候補生成部12は、符号化処理順決定部11によって決定されたスキャン順に基づいて、各CUに適用可能なイントラ予測モード候補を生成するように構成されている。
【0090】
以下、本実施形態に係るイントラ予測処理について説明する。
【0091】
イントラ予測モード候補生成部12は、符号化処理順決定部11によって決定されたスキャン順が左右順スキャン及び上下順スキャンである場合には、A、B、Cの3つのカテゴリ、DCモード及びPlanarモードを、各CUの選択可能なイントラ予測モード候補とするように構成されている(すなわち、HEVCでのイントラ予測モードの候補と同様)。
【0092】
一方、イントラ予測モード候補生成部12は、符号化処理順決定部11によって決定されたスキャン順が左右逆スキャンである場合には、カテゴリCに属するイントラ予測モード、DCモード及びPlanarモードを、各CUの選択可能なイントラ予測モード候補とするように構成されている。
【0093】
さらに、イントラ予測モード候補生成部12は、符号化処理順決定部11によって決定されたスキャン順が上下逆スキャン順である場合には、カテゴリAに属するイントラ予測モード、DCモード及びPlanarモードを、各CUの選択可能なイントラ予測モード候補とするように構成されている。
【0094】
なお、上述の第1の実施形態では、階層的な四分木分割の場合について説明し、本実施形態では、階層的な二分木分割の場合について説明したが、これらのどちらも選択可能な階層分割可能な符号化方式に対しても各CUが四分木分割及び二分木分割のどちらの分割を選択したかに応じて切り替えることで適用可能である。
【0095】
すなわち、符号化対象CUは、原画像に対して四分木分割及び二分木分割の少なくとも一方を階層的に適用することによって得られるように構成されていてもよい。
【0096】
(その他の実施形態)
上述のように、本発明について、上述した実施形態によって説明したが、かかる実施形態における開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。かかる開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0097】
また、上述の実施形態では特に触れていないが、上述の符号化装置1及び復号装置3によって行われる各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。また、かかるプログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、かかるプログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、かかるプログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。
【0098】
或いは、上述の符号化装置1及び復号装置3内の少なくとも一部の機能を実現するためのプログラムを記憶するメモリ及びメモリに記憶されたプログラムを実行するプロセッサによって構成されるチップが提供されてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1…符号化装置
11…符号化処理順決定部
12…イントラ予測モード候補生成部
13…イントラ予測モード決定部
14…イントラ予測部
15…エントロピー符号化部
151…符号化処理順符号化部
152…イントラ予測モード符号化部
3…復号装置
31…エントロピー復号部
311…符号化処理順復号部
312…イントラ予測モード復号部
32…イントラ予測モード候補生成部
33…イントラ予測部