(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】排ガス処理設備
(51)【国際特許分類】
B01D 53/64 20060101AFI20221215BHJP
B01D 53/76 20060101ALI20221215BHJP
F23G 7/06 20060101ALI20221215BHJP
B08B 17/02 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B01D53/64 ZAB
B01D53/76
F23G7/06 D
B08B17/02
(21)【出願番号】P 2019173798
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】川端 宏文
(72)【発明者】
【氏名】関田 誠
(72)【発明者】
【氏名】新岡 正継
(72)【発明者】
【氏名】大石 祐輔
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-017678(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047678(WO,A1)
【文献】特開2003-129965(JP,A)
【文献】特開2011-106861(JP,A)
【文献】特開平07-309495(JP,A)
【文献】実開昭48-081163(JP,U)
【文献】実開昭63-196890(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/85、
53/92、53/96
F23J 13/00-99/00
F23G 5/14- 5/18、
7/06- 7/08
B08B 15/00-17/06
H01L 21/00-21/16、
21/205、21/31、
21/365、21/469、
21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中にWを含む成分を使用する設備から排出されたガスを無害化処理する除害装置と、該除害装置から排出される排ガス中に含まれる酸化タングステンの粉塵を分離、捕集する粉塵分離装置とを備えた排ガス処理設備において、前記除害装置から前記粉塵分離装置に至る排ガス配管として、前記酸化タングステンの粉塵が付着することを防止するためのニッケル含有フッ素樹脂コーティング処理を内周面に施した金属製配管を用いたことを特徴とする排ガス処理設備。
【請求項2】
前記金属製配管は、前記ニッケル含有フッ素樹脂コーティング処理を施す金属母材の表面に10μm以下の金属粉を衝突させた凹凸形成処理が前処理として施されていることを特徴とする請求項1記載の排ガス処理設備。
【請求項3】
前記排ガス配管は、接地線が接続されてアースされていることを特徴とする請求項1又は2記載の排ガス処理設備。
【請求項4】
分子中にWを含む成分を使用する設備から排出されたガスを無害化処理する除害装置と、該除害装置から排出される排ガス中に含まれる酸化タングステンの粉塵を分離、捕集する粉塵分離装置とを備えた排ガス処理設備において、前記除害装置から前記粉塵分離装置に至る排ガス配管として、前記酸化タングステンの粉塵が付着することを防止するためのエポキシ樹脂の焼付け塗装を内周面に施した金属製配管を用いたことを特徴とする排ガス処理設備。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂は、導電性材を含んでいることを特徴とする請求項4記載の排ガス処理設備。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂を焼付塗装した塗装面上に帯電防止塗装を施したことを特徴とする請求項4記載の排ガス処理設備。
【請求項7】
前記排ガス配管内の排ガスの流速が7~12m/sであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の排ガス処理設備。
【請求項8】
前記分子中にWを含む成分を使用する設備が、原料としてWF
6を使用する半導体製造装置であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の排ガス処理設備。
【請求項9】
前記除害装置は、燃焼式、ヒーター式又はプラズマ式の熱分解式除害装置であって、除害処理された粉塵を含む高温の排ガスを水との気液接触により冷却する冷却部を備えていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の排ガス処理設備。
【請求項10】
前記排ガス配管内を流れる排ガスの相対湿度を90%以下に下げるためのガスを外部から導入するガス導入経路を備えていることを特徴とする請求項9記載の排ガス処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理設備に関し、詳しくは、排ガス中に粉塵として含まれている酸化タングステンが排ガス配管の内周面に付着して堆積することを抑制できる排ガス処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程で、六フッ化タングステン(WF6)などの分子中にタングステンを含む成分を原料ガスとして使用する半導体製造装置からは、未反応のWF6を含む排ガスが排出される。排ガスは、除害装置でWF6などの有害成分の分解処理を行った後、二次生成物である酸化タングステンなどの粉塵を粉塵除去装置で分離、除去してから外気に排出するようにしている。このとき、除害装置から粉塵除去装置に至る排ガス配管の内周面に酸化タングステンの粉塵が堆積するため、定期的に排ガス配管内を清掃する必要が生じる。排ガス配管内の清掃は、高所作業であり、粉塵の比重が大きいため、粉塵総重量が大きくなることから、清掃作業、粉塵回収作業にかかる労力が非常に大きくなっていた。
【0003】
さらに、前記半導体製造装置のクリーニング工程で三フッ化窒素を使用する場合、除害装置での除害処理で三フッ化窒素から強酸性のフッ化水素が生成するため、除害装置から粉塵除去装置に至る配管には、フッ化水素に腐食されにくい非金属製の配管、通常は、塩化ビニル製の配管が多く用いられている。ところが、このような塩化ビニル製の配管内に酸化タングステンの粉塵が流れると、塩化ビニルと粉塵との摩擦によって両者が帯電し、塩化ビニル製配管の内周面に酸化タングステンの粉塵が静電気の作用で強く付着することになる。
【0004】
このため、粉塵が付着して閉塞するおそれのある配管内に清掃治具を設置し、設備運転中に清掃作業を実施可能とした閉塞防止装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、モノシランを原料として使用する半導体製造装置から排出され、除害装置で除害処理された排ガス中に含まれる二酸化ケイ素が配管内に付着することを防止するため、排ガス配管の内周面にエポキシ樹脂を焼付塗装することが行われている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-230693号公報
【文献】特開2016-17678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、清掃治具の設置にかかるコスト、操作スペースの確保などが問題となり、排ガス配管中の特定エリアにおける対策案としては有効であるが、半導体製造工場の排ガス配管の全域に清掃治具を設置することは、イニシャルコストや維持管理といった面の問題が多く、一般的な半導体製造工場での実施が極めて困難である。また、特許文献2に記載された技術は、モノシランを除害処理する際に発生する二次生成物の二酸化ケイ素を対象としたものであった。
【0007】
そこで本発明は、分子中にWを含む成分を使用する設備から排出される排ガスを除害処理する際に二次生成物として発生する酸化タングステンの粉塵が内周面に付着して堆積することを抑制できる排ガス配管を備えた排ガス処理設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の排ガス処理設備は、分子中にWを含む成分を使用する設備から排出されたガスを無害化処理する除害装置と、該除害装置から排出される排ガス中に含まれる酸化タングステンの粉塵を分離、捕集する粉塵分離装置とを備えた排ガス処理設備において、前記除害装置から前記粉塵分離装置に至る排ガス配管として、前記酸化タングステンの粉塵が付着することを防止するためのニッケル含有フッ素樹脂コーティング処理を内周面に施した金属製配管を用いたことを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明の排ガス処理設備は、前記金属製配管が前記ニッケル含有フッ素樹脂コーティング処理を施す金属母材の表面に10μm以下の金属粉を衝突させた凹凸形成処理が前処理として施されていること、前記排ガス配管は接地線が接続されてアースされていることを特徴としている。
【0010】
また、排ガス処理設備の他の構成は、分子中にWを含む成分を使用する設備から排出されたガスを無害化処理する除害装置と、該除害装置から排出される排ガス中に含まれる酸化タングステンの粉塵を分離、捕集する粉塵分離装置とを備えた排ガス処理設備において、前記除害装置から前記粉塵分離装置に至る排ガス配管として、前記酸化タングステンの粉塵が付着することを防止するためのエポキシ樹脂の焼付け塗装を内周面に施した金属製配管を用いたことを特徴とし、特に、前記エポキシ樹脂が、導電性材を含んでいること、あるいは、前記エポキシ樹脂を焼付塗装した塗装面上に帯電防止塗装を施したことを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明の排ガス処理設備は、前記各構成における前記排ガス配管内の排ガスの流速が7~12m/sであることを特徴としている。また、前記分子中にWを含む成分を使用する設備が原料としてWF6を使用する半導体製造装置であることを特徴とし、前記除害装置が、燃焼式、ヒーター式又はプラズマ式の熱分解式除害装置であって、除害処理された粉塵を含む高温の排ガスを水との気液接触により冷却する冷却部を備えていること、加えて、前記排ガス配管内を流れる排ガスの相対湿度を90%以下に下げるためのガスを外部から導入するガス導入経路を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の排ガス処理設備によれば、酸化タングステンの粉塵が排ガス配管の内周面に付着、堆積することを、低コストで効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の排ガス処理設備の一形態例を示す説明図である。
【
図3】実験結果を示すガスの平均流速と粉塵の搬送率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の排ガス処理設備は、分子中にW(タングステン)原子を含む成分を使用する設備、例えば、WF6(六フッ化タングステン)を原料として使用する半導体製造装置11から真空ポンプ12を介して排出されたガスの無害化処理を行う除害装置13と、該除害装置13から排出される排ガス中に含まれるWO3(酸化タングステン)をはじめとする各種化合物の粉塵を分離する粉塵分離装置14と、前記除害装置13から粉塵分離装置14に至る排ガス配管15と、該排ガス配管15内に湿度調節用ガスを導入するためのガス導入弁16を備えたガス導入経路17とを備えており、排ガス配管15には接地線18が接続されてアースされた状態になっている。
【0015】
半導体製造装置11は、例えば、原料ガスとして、WF6を水素、シラン、ゲルマン、ジボラン、ホスフィンなどの水素含有ガスと混合した状態でケイ素基板上に供給し、ケイ素基板上に金属タングステンを堆積させるものであって、半導体製造装置11からは、未反応のWF6を含むガスが排出され、排出されるガスは、真空ポンプ12に吸引されて除害装置13に送られる。
【0016】
除害装置13は、前記ガス中に含まれる有害成分であるWF6や水素含有ガス、フッ化水素などの除害処理を行える方式、例えば、熱酸化分解方式、プラズマ式又は燃焼式といった周知の除害処理方式で、スプレーノズルから水を噴射して水とガスとの気液接触によって高温の処理ガスを冷却する冷却部13aを備えたものが用いられている。この除害装置13での除害処理により、WF6は、フッ素化合物と酸化タングステンとに分解され、酸化タングステンは、粒径が0.001mm~1mmの微細な粒子、特に、50%粒子径が10μm程度の粉塵が大量に発生する。また、粉塵分離装置14は、前記酸化タングステンの粉塵を含む各種粉塵を排ガス中から分離、除去が可能な周知の粉塵分離方式が採用されている。
【0017】
排ガスを除害装置13から粉塵分離装置14に至る排ガス配管15には、主として酸化タングステンの粉塵が付着することを防止するためのニッケル含有フッ素樹脂コーティング処理を内周面に施した金属製配管、例えばステンレス鋼製をはじめとする各種鋼製配管、アルミウム製配管が用いられている。このように、導電性材としてのニッケルを含むニッケル含有フッ素樹脂コーティング処理を施すことにより、排ガス配管15内を流れる酸化タングステンの粉塵との摩擦による静電気の発生を抑制して配管内周面と酸化タングステンの粉塵との間の帯電量の差を小さくすることができるので、配管内周面への粉塵の付着、堆積を効果的に防止することができる。さらに、排ガス配管15に接地線18を接続しておくことにより、排ガス配管15の静電気を効果的に取り除くことができるため、酸化タングステンの粉塵が配管内周面に付着することを著しく低減することができるとともに、付着した粉塵を簡単に除去できるようになる。また、フッ化水素などの強酸性物質が排ガス配管15内を流れても、ニッケル含有フッ素樹脂コーティングによって母材の金属を保護することができる。
【0018】
さらに、ニッケル含有フッ素樹脂コーティングを施す際に、金属製配管内周面の母材表面を10μm以下の金属粉を衝突させた凹凸形成処理を前処理として施しておくことにより、金属製配管の母材とニッケル含有フッ素樹脂コーティングとの密着性を向上させることができる。
【0019】
また、排ガス配管15内における排ガスの流速は、配管の径にもよるが、通常は、7~12m/sの範囲が最適である。排ガスの流速が7m/s未満では、酸化ケイ素に比べて嵩密度の大きな酸化タングステンの粉塵が排ガス配管15内に残留するおそれがある。一方、12m/sを超える流速に設定すると、排ガス配管15内での圧力損失が大きくなり、排気設備に求められる用力が大きくなるため、一般的には10~12m/sあたりが上限と考えられている。
【0020】
さらに、排ガス配管15内を流れる排ガスの湿度が高い場合、あるいは、粉塵の水分含有率が高い場合には、帯電とは別に、水分の作用によって粉塵が排ガス配管15の内周面に付着することがある。通常、前記冷却部13aでは、排ガスに散水することで排気温度を下げることが行われており、冷却部13aから導出される排ガスは、排気温度が給水温度と同等以上であり、相対湿度は略100%となっている。したがって、排ガス配管15内を流れる排ガスの湿度を下げる必要があり、ガス導入経路17からのガスの導入によって排ガス配管15内を流れる排ガスの相対湿度を90%以下に下げることが好ましく、さらに、粉塵の水分含有率を5%以下にしておくことが好ましい。特に、相対湿度及び水分含有率は、排ガス量などに応じてできるだけ低くすることにより、水分によって配管内周面に粉塵が付着することを抑えることができる。
【0021】
ガス導入経路17から導入するガスは、排ガスより相対湿度が低い大気をそのまま使用してもよく、大気を乾燥処理などで湿度調節してから導入することにより、天候や季節による相対湿度の変動を抑えることができ、排ガスの湿度や粉塵の水分含有率を確実に制御して配管内周面への粉塵の付着をより確実に抑制できる。また、ガス導入弁16の開度を調節することにより、排ガス配管15内の排ガスの流速を最適化することができる。
【0022】
また、ニッケル含有フッ素樹脂コーティングに代えて、金属製配管の内周面にエポキシ樹脂の焼付け塗装を施した排ガス配管を用いても、特に、導電性材を含んだエポキシ樹脂の焼付け塗装を施したり、エポキシ樹脂の焼付け塗装面に帯電防止塗装を施したりすることによっても、排ガス配管内への酸化タングステンの付着、堆積を抑制することが可能である。
【0023】
次に、本発明の作用効果を確認する実験を行った結果を説明する。まず、
図2に示すように、内径20mmで長さ1mの透明塩ビ管を試験用の配管21として使用し、該配管21の入口部から200mmの位置に、試験用の粉塵22を配管21内に投入するための分岐管23を接続したものを使用した。試験用の粉塵22には、運転中の加熱分解式排ガス処理設備から採取した平均粒径が21μmの二酸化ケイ素の粉塵及び平均粒径が2μmの酸化タングステンの粉塵と、加熱分解式排ガス処理設備内で4時間滞留した平均粒径が17μmの酸化タングステンの粉塵と、同じく48時間滞留して大径化した平均粒径が23μmの酸化タングステンの粉塵との4種類の粉塵を用意した。
【0024】
そして、各粉塵を2.5ccずつ配管21内にそれぞれ投入した状態で配管入口部から窒素ガスをあらかじめ設定した条件で導入し、配管21内におけるガスの平均流速と粉塵の搬送率との関係を調べた。その結果を
図3に示す。この結果から、図中に黒丸印で示す二酸化ケイ素の粉塵は、配管内の平均流速が4m/sを超えれば概ね100%の粉塵搬送率を得ることができたのに対し、二酸化ケイ素に比べて2~5倍の嵩密度を有する酸化タングステンの粉塵の場合は、図中に三角印で示すように、粒径が最も小さい4時間滞留の酸化タングステンの粉塵であっても、配管内の平均流速が4m/sでは十分に搬送することができず、粉塵の搬送率を100%にするためには、約1.5倍の5.6m/sを超える流速が必要であった。
【0025】
さらに、図中にバツ印で示す加熱分解式排ガス処理設備から採取した酸化タングステンの粉塵の場合は、粒径が前記酸化タングステンの粉塵より大きいことから、搬送率を100%にするためには、10m/sを僅かに超える流速が必要であり、図中に四角印で示す粒径が最も大きな48時間滞留の酸化タングステンの粉塵の場合は、15m/sを超える流速でも、粉塵の搬送率が100%には至らなかった。しかし、48時間滞留で生じる粒径が大きく、密度が十分に大きな粉塵は、排ガス処理設備の冷却部におけるスプレー水によって排ガス中から除去されるので、排ガス配管に流入することはほとんどなく、問題になることはない。
【0026】
この実験結果から、従来の二酸化ケイ素を含む排ガスの場合に比べて、配管21内のガス流速を1.5倍以上にする必要があり、配管21内の排ガスの流速を7m/s以上に設定することで、排ガス配管内の粉塵堆積率を大きく低減できることがわかる。
【0027】
さらに、長時間の運用において、塩ビ管の内周面には、静電気の作用で酸化タングステンの粉塵が徐々に堆積し、配管1mに対して100gを超える堆積が発生したが、内周面にNi含有フッ素樹脂コーティングを施した金属製配管における酸化タングステンの粉塵の堆積量は、配管1mに対して1g以下になった。また、エポキシ樹脂の焼付け塗装を内周面に施した金属製配管を用いた場合の堆積量は、配管1mに対して10g程度であった。
【0028】
この実験結果から、内周面にエポキシ樹脂の焼付け塗装を施したり、内周面にNi含有フッ素樹脂コーティングを施したりした金属製配管を排ガス配管として使用することにより、塩ビ管を用いたときに比べて酸化タングステンの粉塵が付着、堆積することをより効果的に抑制できることがわかった。
【0029】
したがって、Ni含有フッ素樹脂コーティングを施した金属製配管を排ガス配管として使用することにより、静電気による配管内周面への粉塵の付着、堆積を効果的に抑制できるので、配管清掃作業を大幅に軽減することができ、さらに、排ガス配管内の排ガスの流速を7m/s以上に設定することにより、排ガス配管の詰まりを防止でき、排ガス処理設備を含む半導体製造装置の稼働率の向上が図れ、製品生産性の大幅な向上、製造コストの低減が期待できる。
【0030】
なお、フッ素樹脂は、一般的なポリテトラフルオロエチレン樹脂(四フッ素化樹脂、PTFE)を使用すればよく、通常のフッ素樹脂含有無電解ニッケルめっきなどの手法を用いて配管内周面にコーティングすればよい。このようなNi含有フッ素樹脂コーティングを施した金属製配管は、特に、嵩密度の大きな酸化タングステンの粉塵の付着を効果的に抑えることができるが、嵩密度が異なる各種物質の粉塵を移送する配管に適用することにより、配管内への粉塵の付着、堆積を効果的に抑制することができる。また、エポキシ樹脂とは、高分子内に残存させたエポキシ基で架橋ネットワーク化させることで硬化させることが可能な熱硬化性樹脂であって、一般に流通しているエポキシ樹脂塗料を使用することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
11…半導体製造装置、12…真空ポンプ、13…除害装置、13a…冷却部、14…粉塵分離装置、15…排ガス配管、16…ガス導入弁、17…ガス導入経路、18…接地線、21…試験用の配管、22…試験用の粉塵、23…分岐管