(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20221215BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20221215BHJP
B32B 5/00 20060101ALI20221215BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20221215BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H01L23/36 D
C08L83/04
B32B5/00 A
B32B7/027
B32B27/00 101
(21)【出願番号】P 2019217713
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】石原 靖久
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 晃洋
(72)【発明者】
【氏名】依田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 克幸
【審査官】平林 雅行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-071380(JP,A)
【文献】特開2016-154264(JP,A)
【文献】特開2016-204600(JP,A)
【文献】特開2018-044090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
H01L 23/29
H01L 23/34-23/36
H01L 23/373-23/427
H01L 23/44
H01L 23/467-23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの製造方法であって、
(1)基材上に第1の熱伝導性シリコーン組成物を塗工しタック力が150gf以上である未硬化の第1の熱伝導性シリコーン層を形成し、該第1の熱伝導シリコーン層にクロスを圧着させて補強層含有熱伝導性シリコーン層を成型する工程と、
(2)前記補強層含有熱伝導性シリコーン層上に、第2の熱伝導性シリコーン組成物を積層して未硬化の第2の熱伝導性シリコーン層を成型し、前記補強層含有熱伝導性シリコーン層と前記第2の熱伝導性シリコーン層を同時に硬化する工程と、
を含むことを特徴とする補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの製造方法。
【請求項2】
前記補強層含有熱伝導性シリコーン層の厚みを0.05mm以上0.5mm以下とし、前記第2の熱伝導性シリコーン層の硬化後の硬度をアスカーCで50以下とし、前記補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの厚みを0.2mm以上20mm以下とすることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性シリコーン複合シートの製造方法。
【請求項3】
前記補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの硬化後の前記第1の熱伝導性シリコーン層の硬度をショアAで50以上97以下とし、厚みを0.05mm以上0.5mm以下とすることを特徴する請求項1又は請求項2に記載の補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバーターや電源などの電子機器に使用されるトランジスタやダイオード、照明やディスプレイの光源となるLED素子などの半導体は、高性能化・高速化・小型化・高集積化に伴い、それ自身が大量の熱を発生するようになり、その熱による機器の温度上昇は動作不良、破壊を引き起こす。そのため、動作中の半導体の温度上昇を抑制するための多くの熱放散方法及びそれに使用する熱放散部材が提案されている。
【0003】
従来、電子機器等においては、動作中の発熱体の温度上昇を抑えるために、アルミニウムや銅等、熱伝導率の高い金属板を用いたヒートシンクや筐体などの冷却部材に熱伝導性材料を介して半導体から発生する熱を伝え、雰囲気との温度差により外部に放熱させていた。熱伝導性材料としては熱伝導性シートが多く用いられている。
【0004】
熱伝導性シートは、ポリマーに熱伝導性充填材を充填させてなる熱伝導性組成物を硬化成型することで得られる。熱伝導性シートに用いられる樹脂は、アクリル、シリコーン、ポリオレフィンなどが挙げられるが、中でも耐熱性、耐寒性、長期信頼性の観点からシリコーンが用いられている熱伝導性シリコーンシートが多い。
【0005】
補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートは、補強層含有高硬度熱伝導性シリコーン層と低硬度熱伝導性シリコーン層からなり、この2つの層をよく密着させるため、補強層含有高硬度熱伝導性シリコーン層の表面をプライマーなどで処理を施した後に、低硬度熱伝導性シリコーン層を積層させるのが一般的に知られている製造方法である(特許文献1)。
【0006】
また、補強層含有高硬度熱伝導性シリコーン層は、クロスのような補強層の両面に高硬度熱伝導性シリコーン層を積層させて製造される。補強層が樹脂フィルムや金属箔のような場合はこれでよいが、ガラスクロスのようなクロスの場合、クロス目を埋めるために目止め工程がさらに必要となる。
【0007】
このことから分かるように、補強層含有高硬度熱伝導性シリコーン層を準備するには3工程必要で、さらに密着性を向上させるためのプライマー処理工程、低硬度熱伝導性シリコーン層積層工程も含めると5工程必要となり非常に煩雑である。
【0008】
なお、本明細書で示す工程とは成型工程を指し、実製造時に掛かる細かい作業工程は含んでいない。
【0009】
そこで、高硬度熱伝導性シリコーン層の片面を未硬化状態にし、低硬度熱伝導性シリコーン層を積層させる時に同時に硬化させることで、密着性が確保でき、プライマー処理工程を省く製造方法が知られている(特許文献2)。
【0010】
しかし、なお補強層含有熱伝導性シリコーン層の製造には少なくとも2工程かかっており、さらに工程を短縮する課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平06-155517号公報
【文献】特願2017-197557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の通り、補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートを製造するには、工程数が多く非常に煩雑である問題があった。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、補強層含有熱伝導性シリコーン層の製造工程数を低減しつつ、簡便に、かつ安定的に補強層含有熱伝導シリコーン層と熱伝導シリコーン層を良好な密着状態で積層させる補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を達成するために、本発明では、補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの製造方法であって、(1)基材上に第1の熱伝導性シリコーン組成物を塗工しタック力が150gf以上である未硬化の第1の熱伝導性シリコーン層を形成し、該第1の熱伝導シリコーン層にクロスを圧着させて補強層含有熱伝導性シリコーン層を成型する工程と、(2)前記補強層含有熱伝導性シリコーン層上に、第2の熱伝導性シリコーン組成物を積層して未硬化の第2の熱伝導性シリコーン層を成型し、前記補強層含有熱伝導性シリコーン層と前記第2の熱伝導性シリコーン層を同時に硬化する工程と、を含む補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの製造方法を提供する。
【0015】
このような製造方法であれば、補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの製造工程数を低減することができる。
【0016】
このとき、前記補強層含有熱伝導性シリコーン層の厚みを0.05mm以上0.5mm以下とし、前記第2の熱伝導性シリコーン層の硬化後の硬度をアスカーCで50以下とし、前記補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの厚みを0.2mm以上20mm以下とすることができる。
【0017】
このとき、前記補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの硬化後の前記第1の熱伝導性シリコーン層の硬度をショアAで50以上97以下とし、厚みを0.05mm以上0.5mm以下とすることができる。
【0018】
本発明では、例えば、このような補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートを簡便かつ安定的に製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明に係る補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの製造方法であれば、プライマー処理工程や目止め工程を省略することで、成型にかかる工程数を従来よりも短縮することができるとともに、補強層含有熱伝導シリコーン層と熱伝導シリコーン層を良好な密着状態で積層させることができる補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの製造方法を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上述のように、工程数の少ない補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの製造が求められていた。
【0021】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、フィルム基材上に第1の熱伝導性シリコーン層を成型し、未硬化の状態で補強層であるクロスを圧着し積層させ、補強層含有高硬度熱伝導性シリコーン層とし、この補強層上に低硬度の第2の熱伝導性シリコーン層積層させ、同時に硬化させることで、クロスの目止め工程と片面の塗工工程の2工程を省いた補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの製造方法を見出し、本発明を完成させた。
【0022】
即ち、本発明は、補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの製造方法であって、(1)基材上に第1の熱伝導性シリコーン組成物を塗工しタック力が150gf以上である未硬化の第1の熱伝導性シリコーン層を形成し、該第1の熱伝導シリコーン層にクロスを圧着させて補強層含有熱伝導性シリコーン層を成型する工程と、(2)補強層含有熱伝導性シリコーン層上に、第2の熱伝導性シリコーン組成物を積層して未硬化の第2の熱伝導性シリコーン層を成型し、補強層含有熱伝導性シリコーン層と第2の熱伝導性シリコーン層を同時に硬化する工程と、を含む補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの製造方法である。
【0023】
以下、本発明の補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの製造方法について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
<工程(1)>
工程(1)は、基材上に第1の熱伝導性シリコーン組成物を塗工しタック力が150gf以上である未硬化の第1の熱伝導性シリコーン層を形成し、該第1の熱伝導シリコーン層にクロスを圧着させて補強層含有熱伝導性シリコーン層を成型する工程である。以下に詳細を説明する。
【0025】
[基材]
未硬化の第1の熱伝導性シリコーン層を形成する基材について説明する。基材は、特に指定はないが、工程上熱がかかるため、100℃以上の耐熱性があることが望ましく、PETフィルムのような剛直な樹脂フィルムが好ましい。また、基材の厚みは、成形性を考慮すると、10μm以上100μm以下であることが好ましい。この範囲内であれば、取り扱いが容易になる。
【0026】
また、基材は実装時には取り除かれるものであるので、硬化後に第1の熱伝導性シリコーン層から剥離しなければならず、基材自体に離型処理を施す、または、第1の熱伝導性シリコーン層に離型剤を添加しておくことが好ましい。さらに、できるだけ安価な基材が望ましい。
【0027】
[第1の熱伝導性シリコーン層]
第1の熱伝導性シリコーン層の形成に用いる第1の熱伝導性シリコーン組成物について説明する。第1の熱伝導性シリコーン組成物は、主成分である一分子中にアルケニル基を2つ以上含有するオルガノポリシロキサンおよび硬化反応に必要な成分を、例えば熱伝導性充填剤と混合し、攪拌することで得られる。攪拌方法に特に指定はなく、例えば、ニーダーやプラネタリーミキサーが挙げられる。
【0028】
硬化反応に必要な成分は、付加反応の場合、ケイ素に直接結合した水素原子を一分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒である。また、有機過酸化物による硬化反応の場合は有機過酸化物である。硬化反応に必要な成分は必要に応じて使い分けてよいし、併用してもよい。
【0029】
また、熱伝導性充填材を添加する際にシリコーン成分との馴染みをよくするシランカップリング剤のような添加剤を添加してもよい。
【0030】
第1の熱伝導性シリコーン組成物を基材に塗工する方法としては、特に限定されない。例えば、ラミネート機能付きコンマコーターを用いることで、1工程で連続的に未硬化の第1の熱伝導性シリコーン層の塗工とクロスのラミネート(圧着)が可能になる。また、必要に応じて溶剤で第1の熱伝導性シリコーン組成物を希釈し、塗工したのちに溶剤を揮発させてもよい。
【0031】
未硬化状態の第1の熱伝導性シリコーン層を、連続的にラミネーターを用いてクロスと密着させる必要があるため、未硬化状態の第1の熱伝導性シリコーン層にはタック力が必要となる。タック力が150gf未満ではクロスとの密着性が十分得られず、従って、150gf以上のタック力が必要であり、好ましくは300gf以上である。未硬化の第1の熱伝導性シリコーン層とクロスをラミネートする際に熱がかけられると、よりよく密着させることができる。
【0032】
[クロス]
未硬化の第1の熱伝導性シリコーン層に圧着させる補強材であるクロスについて説明する。クロスは、特に限定はされず、例えば、ナイロン製やガラス製などが挙げられるが、耐熱性などを考慮した場合、ガラスクロスが好ましい。クロス目の開きや織り方にも特に指定はないが、5Tex以上の糸を用い、50本/25mm以上の密度が好ましい。このようなクロスを用いると、十分な補強効果が得られる。
【0033】
[補強層含有熱伝導性シリコーン層]
補強層含有熱伝導性シリコーン層は、第1の熱伝導性シリコーン層にクロスを圧着させることで成型される。補強層含有熱伝導性シリコーン層の態様は、クロスが第1の熱伝導性シリコーン層に密着していれば特に限定されない。
【0034】
上記態様としては、例えば、(1)クロスが第1の熱伝導性シリコーン層に全く埋まっておらず、第1の熱伝導性シリコーン層の表面に積層された状態、(2)クロスが第1の熱伝導性シリコーン層に部分的に埋まっており、クロスの一部が第1の熱伝導性シリコーン層の表面より上に露出した状態、(3)クロスが第1の熱伝導性シリコーン層に完全に埋まっており、クロスの一部が第1の熱伝導性シリコーン層の表面より上に露出していない状態、のいずれであってもよい。
【0035】
補強層含有熱伝導性シリコーン層が上記いずれの態様であっても、クロスの目止め工程は不要である。上記態様(1)の場合には、後述する第2の熱伝導性シリコーン組成物によりクロス目が埋められる。上記態様(3)の場合には、第1の熱伝導性シリコーン層によってクロス目が埋められる。上記態様(2)では、態様(1)、(3)の両方の作用によりクロス目が埋められる。
【0036】
なお、本発明において、上記(1)、(2)の態様の場合には、補強層含有熱伝導性シリコーン層の厚みは、第1の熱伝導性シリコーン層の厚みと積層したクロス又はクロスの露出した部分の厚みの和であり、上記(3)の態様の場合には、補強層含有熱伝導性シリコーン層の厚みは、第1の熱伝導性シリコーン層の厚みと同じになる。
【0037】
<工程(2)>
工程(2)は、前記補強層含有熱伝導性シリコーン層上に、第2の熱伝導性シリコーン組成物を積層して未硬化の第2の熱伝導性シリコーン層を成型し、前記補強層含有熱伝導性シリコーン層と前記第2の熱伝導性シリコーン層を同時に硬化する工程である。以下に詳細を説明する。
【0038】
[第2の熱伝導性シリコーン層]
第2の熱伝導性シリコーン層の形成に用いる第2の熱伝導性シリコーン組成物について説明する。第2の熱伝導性シリコーン組成物は、主成分である一分子中にアルケニル基を2つ以上含有するオルガノポリシロキサンおよび硬化反応に必要な成分を、例えば、熱伝導性充填剤と混合し、攪拌することで得られる。攪拌方法に特に指定はなく、例えば、ニーダーやプラネタリーミキサーが挙げられる。
【0039】
硬化反応に必要な成分は、付加反応の場合、ケイ素に直接結合した水素原子を一分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒である。また、有機過酸化物による硬化反応の場合は有機過酸化物である。硬化反応に必要な成分は必要に応じて使い分けてよいし、併用してもよい。
【0040】
また、熱伝導性充填材を添加する際にシリコーン成分との馴染みをよくするシランカップリング剤のような添加剤を添加してもよい。
【0041】
補強層含有熱伝導性シリコーン層に第2の熱伝導性シリコーン層を積層させる方法としては、特に指定はないが塗工またはプレス成型が挙げられる。第1の熱伝導性シリコーン層が未硬化であるから、第2の熱伝導性シリコーン層はプライマー処理を用いなくても良好な密着性を確保できる。
【0042】
補強層含有熱伝導性シリコーン層と第2の熱伝導性シリコーン層を同時に硬化する方法としては特に限定はされないが、例えば、プレス成型によって補強層含有熱伝導性シリコーン層に第2の熱伝導性シリコーン層を積層させる場合、積層と同時に、補強層含有熱伝導性シリコーン層と第2の熱伝導性シリコーン層を硬化することができる。また、塗工により積層する場合には、別途加熱することで硬化することができる。
【0043】
<補強層含有熱伝導性シリコーン複合シート>
また、本発明では、補強層含有熱伝導性シリコーン層の厚みを0.05mm以上0.5mm以下とし、前記第2の熱伝導性シリコーン層の硬化後の硬度をアスカーCで50以下とし、前記補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの厚みを0.2mm以上20mm以下とすることができる。
【0044】
また、本発明では、補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの硬化後の前記第1の熱伝導性シリコーン層の硬度をショアAで50以上97以下とし、厚みを0.05mm以上0.5mm以下とすることができる。
【0045】
本発明では、例えば、このような補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートを簡便かつ安定的に製造することができる。
【0046】
以上のように、本発明の補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの製造方法であれば、製造工程数を低減しつつ、補強層含有熱伝導シリコーン層と熱伝導シリコーン層を良好な密着状態で積層させることが可能となる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
実施例及び比較例を行なうに当り、補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの製造方法を以下に記載する。
【0049】
<組成物1-A~1-E、2-A~2-Cの調製>
第1の熱伝導性シリコーン組成物及び第2の熱伝導性シリコーン組成物は下記に示されるa~f成分及びア成分を用いて、それぞれ表1、表2に示す配合で調製した。更に、表1,2中には得られた熱伝導性シリコーン組成物の物性も併せて示している。
【0050】
[a成分]
(a-1)成分:式(1)に示す、平均重合度8000のジメチルビニル基で両末端封鎖したジメチルポリシロキサン。
(a-2)成分:式(1)に示す、平均重合度1000のジメチルビニル基で両末端封鎖したジメチルポリシロキサン。
【化1】
【0051】
[b成分]
式(2)に示すオルガノハイドロジェンポリシロキサン。
【化2】
【0052】
[c成分]
式(3)に示す平均重合度30である、片末端がトリメチルシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン。
【化3】
【0053】
[d成分]
5%塩化白金酸2-エチルヘキサノール溶液。
【0054】
[e成分]
付加反応制御剤として、エチニルメチリデンカルビノール。
【0055】
[f成分]
過酸化物として、2-メチルジベンゾイルパーオキサイド。
【0056】
[ア成分]:熱伝導性充填剤
(ア-1)成分:平均粒形1μmの水酸化アルミニウム。
(ア-2)成分:平均粒形10μmの水酸化アルミニウム。
(ア-3)成分:平均粒形1μmのアルミナ。
(ア-4)成分:平均粒形10μmのアルミナ。
(ア-5)成分:平均粒形40μmのアルミナ。
【0057】
【0058】
【0059】
[タック力]
タッキネステスターを用いて測定した。
【0060】
[熱伝導率]
得られた組成物を60mm×60mm×6mmtに成型し、京都電子製TPAを用いて測定した。
【0061】
なお、組成物1-A、1-B、1-D、1-E、2-Cはニーダーを用いて混錬した。また、組成物1-C、2-A、2-Bはプラネタリーミキサーを用いて混錬した。
【0062】
<実施例1~5、比較例1~3>
以下に説明するように、補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートを製造した。
【0063】
[クロス]
補強層含有熱伝導性シリコーン層を成型するためのクロスは、厚みが40μmで、5.6Texの糸を用い、たて、よこ50本/25mmのガラスクロスを用いた。
【0064】
また、ガラスクロスと第1の熱伝導性シリコーン層を圧着することで得られる補強層含有熱伝導性シリコーン層は、ラミネート機能付きコンマメーターを用いて成型した。ラミネート機能付きコンマコーターは、テクノスマート製で、有効塗工幅が500mmで、オーブン長が2m×4ゾーンで、オーブンの後段にラミネーターが付属したコンマコーターを用いた。
【0065】
[工程数]
なお、本実施例、比較例で評価した工程数とは成型工程であり、実製造時に掛かる細かな工程は含まない。
【0066】
(実施例1)
組成物1-Aに30%キシレンを加えさらに混錬し塗工液を得た。50μm厚のフッ素処理PETフィルムFL1-01(タカラインコーポレーション製)を基材とし、ラミネート機能付きコンマコーターを用いて塗工液を連続的に塗工し、オーブン中を通しキシレンを揮発させることで得られる未硬化の第1の熱伝導性シリコーン層に対して、ガラスクロスを、ラミネーターを用い0.1MPaの圧力で密着させ、補強層含有熱伝導性シリコーン層を1工程で得た。塗工条件は塗工速度が1m/min、オーブン温度は80℃、ラミネート圧力は0.1MPaである。得られた補強層含有熱伝導性シリコーン層に対して、組成物2-Aを120℃/10minのプレス成型を用いて積層させ、補強層含有熱伝導性シリコーン層および第2の熱伝導性シリコーン層を同時に硬化させることで補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートを得た。本補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートを得るために掛かった成型工程は2工程であった。
【0067】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で補強層含有熱伝導性シリコーン層を1工程で得、得られた補強層含有熱伝導性シリコーン層に対して、組成物2-Cを120℃/10minのプレス成型を用いて、補強層含有熱伝導性シリコーン層および第2の熱伝導性シリコーン層を同時に硬化させ、補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートを得た。本補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートを得るために掛かった成型工程は2工程である。
【0068】
(実施例3)
組成物1-Bに対して40%のキシレンを加えてさらに混錬し塗工液を得た。50μmのフッ素処理PETフィルムFL1-01(タカラインコーポレーション製)を基材とし、ラミネート機能付きコンマコーターを用いて塗工液を連続的に塗工し、オーブン中を通しキシレンを揮発させることで得られる未硬化の第1の熱伝導性シリコーン層に対して、ガラスクロスを、ラミネーターを用い0.1MPaの圧力で密着させ、補強層含有熱伝導性シリコーン層を1工程で得た。塗工条件は塗工速度が1m/minで、オーブン温度は80℃、ラミネート圧力は0.1MPaである。得られた補強層含有熱伝導性シリコーン層に対して、組成物2-Bを120℃/10minのプレス成型を用いて積層させ、補強層含有熱伝導性シリコーン層および第2の熱伝導性シリコーン層を同時に硬化させることで補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートを得た。本補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートを得るために掛かった成型工程は2工程であった。
【0069】
(実施例4)
組成物1-Cに5%キシレンを加えさらに混錬し塗工液を得た。50μm厚のフッ素処理PETフィルムFL1-01(タカラインコーポレーション製)を基材とし、ラミネート機能付きコンマコーターを用いて塗工液を連続的に塗工し、オーブン中を通しキシレンを揮発させることで未硬化の第1の熱伝導性シリコーン層に対して、ガラスクロスを、ラミネーターを用い密着させ、補強層含有熱伝導性シリコーン層を1工程で得た。塗工条件は塗工速度が1m/minで、オーブン温度は80℃、ラミネート圧力は0.05MPaである。得られた補強層含有熱伝導性シリコーン層に対して、組成物2-Aを、プレス成型を用いて積層させ、補強層含有熱伝導性シリコーン層および第2の熱伝導性シリコーン層を同時に硬化させることで補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートを得た。本補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートを得るために掛かった成型工程は2工程であった。
【0070】
(実施例5)
組成物1-Dに30%キシレンを加えさらに混錬し塗工液を得た。50μm厚のフッ素処理PETフィルムFL1-01(タカラインコーポレーション製)を基材とし、ラミネート機能付きコンマコーターを用いて塗工液を連続的に塗工し、オーブン中を通しキシレンを揮発させることで未硬化の第1の熱伝導性シリコーン層に対して、ガラスクロスを、ラミネーターを用い、0.1MPaの圧力で密着させ、補強層含有熱伝導性シリコーン層を1工程で得た。塗工条件は塗工速度が1m/minで、オーブン温度は80℃、ラミネート圧力は0.1MPaである。得られた補強層含有熱伝導性シリコーン層に対して、組成物2-Aを、プレス成型を用いて積層させ、補強層含有熱伝導性シリコーン層および第2の熱伝導性シリコーン層2を同時に硬化させることで補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートを得た。本補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートを得るために掛かった成型工程は2工程であった。
【0071】
実施例1~5の結果をまとめたものを表3に示す。
【0072】
【0073】
(比較例1)
組成物1-Aに80%のキシレンを添加してガラスクロス目止め液を得た。目止め液を容器に移し、そこにガラスクロスを浸し、目止め液をガラスクロスに含侵させる。十分含侵させたところで、ガラスクロスを連続的に引き上げて、クロスに付着した余分な目止め液を除去した後にオーブンに投入し、乾燥、硬化させ0.09mmの目止めガラスクロスを得た。目止めガラスクロスを基材とし、組成物1-Aの30%のキシレン添加した塗工液を用いて、ラミネート機能付きコンマコーターを用いて連続的に塗工した。オーブン温度は80℃/80℃/150℃/150℃で塗工速度は0.5m/minであった。さらに目止めガラスクロスの反対面にも同様の条件で塗工、乾燥、硬化し、総厚を0.2mmとし、実施例2に相当する補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートを得た。本補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートを得るために掛かった成型工程は3工程であった。
【0074】
(比較例2)
組成物1-Eに30%のキシレンを加えさらに混錬し塗工液を得た。50μm厚のフッ素処理PETフィルムFL1-01(タカラインコーポレーション製)を基材とし、ラミネート機能付きコンマコーターを用いて塗工液を連続的に塗工し、オーブン中を通しキシレンを揮発させることで得られる未硬化の第1の熱伝導性シリコーン層に対して、ガラスクロスを、ラミネーターを用い、0.1MPaの圧力で密着させようとしたが、未硬化の第1の熱伝導性シリコーン層のタック力が不足しているため、ガラスクロスが密着せず、成型が出来なかった。
【0075】
(比較例3)
比較例1で得た補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの片面に、(b)成分であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(o=0、p=38)の1%トルエン溶液を、グラビアコーターを用いて塗布し、乾燥させて、オルガノハイドロジェンポリシロキサン処理された補強層含有熱伝導性シリコーン層を得、処理面に対して、組成物2-Aを0.8mm厚積層し、プレス成型し、総厚を2.0mmとし実施例1に相当する補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートを得た。本補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートを得るのに掛かった成型工程は5工程である。
【0076】
比較例1~3の結果である、総厚みと工程数をまとめたものを表4に示す。
【0077】
【0078】
表3及び表4から判るように、本発明に係る補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの製造方法を用いた実施例1~5は、2工程で密着性が良好な補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートが得られ、目止め工程、プライマー処理工程が不要なため、従来の製造方法である比較例1~3と比べて工程数が大幅に低減している。
【0079】
一方、比較例1では目止め工程が必要なため工程数は3工程を要した。比較例2では第1の熱伝導性シリコーン組成物のタック力が不足しガラスクロスと密着させることができず、補強層含有熱伝導性シリコーン層を成型することができなかった。比較例3では、比較例1に加えてオルガノハイドロジェンポリシロキサン処理する工程とプレス成型する工程が加わり、工程数は5工程であった。
【0080】
以上の様に、本願発明の補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートの製造方法であれば、工程数を大幅に低減しつつ、簡便に、かつ安定的に補強層含有熱伝導性シリコーン複合シートを製造することができる。
【0081】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。