(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】非水系電解液及びそれを用いたエネルギーデバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20221215BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221215BHJP
H01G 11/64 20130101ALI20221215BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01G11/64
(21)【出願番号】P 2019552384
(86)(22)【出願日】2018-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2018041557
(87)【国際公開番号】W WO2019093443
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2017217771
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018003777
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】320011605
【氏名又は名称】MUアイオニックソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡會 篤
(72)【発明者】
【氏名】徳田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】矢部 晃子
【審査官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第01208934(GB,A)
【文献】特開2011-216406(JP,A)
【文献】特開平01-320780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00
H01M 4/00
H01G 11/64
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される化合物を含有する非水系電解液
であって、
前記一般式(1)で示される化合物の合計の含有量が、前記非水系電解液の全量に対して、0.05質量ppm以上50質量ppm以下である、非水系電解液。
【化1】
(一般式(1)において、R
11、R
12およびR
13はそれぞれ独立に、炭素数1以上3以下の有機基であり、R
11とR
12、R
11とR
13、またはR
12とR
13が互いに結合し、5員環または6員環を形成していてもよい。なお、R
11、R
12およびR
13の炭素数の合計は7以下である。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、前記R
11
、前記R
12
および前記R
13
が炭化水素基である請求項1に記載の非水系電解液。
【請求項3】
さらに、フッ素原子を有する環状カーボネート、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、ジフルオロリン酸塩、フルオロ硫酸塩、イソシアネート基を有する化合物、シアノ基を有する化合物、環状スルホン酸エステル、及びジカルボン酸錯体塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する、請求項1または2に記載の非水系電解
液。
【請求項4】
前記一般式(1)において、前記R
11、前記R
12および前記R
13はそれぞれ独立に、炭素数1以上2以下の有機基であり、該R
11、該R
12および該R
13の炭素数の合計が5以下である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の非水系電解液。
【請求項5】
金属イオンを吸蔵及び放出可能な複数の電極と、非水系電解液とを備えたエネルギーデバイスであって、
該非水系電解液が、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の非水系電解液である、エネルギーデバイス。
【請求項6】
前記金属イオンを吸蔵及び放出可能な複数の電極が、金属イオンを吸蔵及び放出可能な正極と、金属イオンを吸蔵及び放出可能な負極とであり、該負極が、炭素質材料またはケイ素を含む材料を含む、請求項5に記載のエネルギーデバイス。
【請求項7】
前記金属イオンを吸蔵及び放出可能な複数の電極が、金属イオンを吸蔵及び放出可能な正極と、金属イオンを吸蔵及び放出可能な負極とであり、該正極が、遷移金属酸化物を含有する、請求項5または6に記載のエネルギーデバイス。
【請求項8】
下記一般式(a1)及び(a2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する非水系電解液。
【化2】
【化3】
(R
1~R
6はそれぞれ独立して炭素数2~4のアルキレン基であり、直鎖であっても分岐していてもよい。lは1以上6以下の整数であり、mとnは0以上6以下の整数である。但しmとnの何れか一方が0の場合は、もう一方は1以上の整数である。)
【請求項9】
更に、フッ素原子を有する環状カーボネートを含有する、請求項8に記載の非水系電解液。
【請求項10】
更に、炭素―炭素不飽和結合を有する環状カーボネートを含有する、請求項8又は9に記載の非水系電解液。
【請求項11】
更に、2種以上のリチウム塩を含有する、請求項8乃至10のいずれか1項に記載の非水系電解液。
【請求項12】
更に、イソシアネート基を有する化合物を含有する、請求項8乃至11のいずれか1項に記載の非水系電解液。
【請求項13】
更に、シアノ基を有する化合物を含有する、請求項8乃至12のいずれか1項に記載の非水系電解液。
【請求項14】
更に、SO
2基を有する環状化合物を含有する、請求項8乃至13のいずれか1項に記載の非水系電解液。
【請求項15】
金属イオンを吸蔵及び放出可能な複数の電極と、非水系電解液とを備えたエネルギーデバイスであって、該非水系電解液が、請求項8乃至14のいずれか1項に記載の非水系電解液である、エネルギーデバイス。
【請求項16】
前記金属イオンを吸蔵及び放出可能な複数の電極が、正極と負極とであり、該負極が、炭素質材料又はケイ素を含む材料を含む、請求項15に記載のエネルギーデバイス。
【請求項17】
前記金属イオンを吸蔵及び放出可能な複数の電極が、正極と負極とであり、該正極が、遷移金属酸化物を含有する、請求項15又は16に記載のエネルギーデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液及びそれを用いたエネルギーデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン等のいわゆる民生用の電源から自動車用等の駆動用車載電源や定置用大型電源等の広範な用途において、非水系電解液二次電池や電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等の非水系電解液を用いたエネルギーデバイスが実用化されている。しかしながら、近年のエネルギーデバイスに対する高性能化の要求はますます高くなっている。
【0003】
例えば、リチウム非水系電解液二次電池においては、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネートやジエチルカーボネートやエチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類、γ-ブチロラクトンやγ-バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル類、酢酸メチルや酢酸エチルやプロピオン酸メチル等の鎖状カルボン酸エステル類の非水溶媒と、LiPF6やLiBF4等の溶質(電解質)とを含有する非水系電解液が用いられる。
このような非水系電解液二次電池をはじめとする非水系電解液を用いたエネルギーデバイスでは、その非水系電解液の組成によって反応性が異なるため、非水系電解液により特性が大きく変わることになる。エネルギーデバイスの負荷特性、サイクル特性、保存特性等の電池特性を改良したり、過充電時の電池の安全性を高めたりするために、非水系電解液中の非水溶媒や電解質について種々の検討がなされている。
例えば、特許文献1には、モノフルオロ燐酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の添加剤を含む電解液を用いることで、非水系電解液の分解を抑制し保存後の容量維持率(容量残存率)の改善を得る技術が開示されている。
【0004】
また、特に非水系電解液二次電池においては、電池特性、例えばサイクル特性や保存特性等の耐久性、安全性等の諸特性を高い水準で達成することが求められている。
これまで、非水系電解液二次電池のサイクル特性や保存特性等の耐久試験時における容量、電池膨れ、正極金属溶出、及び安全性を改善するための手段として、正極や負極の活物質や、非水系電解液を始めとする様々な電池の構成要素について、数多くの技術が検討されている。
例えば、特許文献2には、クラウンエーテルを電解液に用いることにより、負極表面に緻密な被膜を形成させ、非水系電解液二次電池の保存特性を向上させる技術が開示されている。
また、特許文献3には、NiとMnとCoを含む遷移金属複合酸化物を正極とした電池にて、ビフェニルを用いた電解液にクラウンエーテルを導入することにより、溶出Mnイオンをクラウンエーテルに取り込ませ、Mnイオンが負極の表面にMnとして析出することを抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-67270号公報
【文献】特開2005-63871号公報
【文献】特開2015-37018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年のエネルギーデバイスの特性改善への要求はますます高まっており、各種性能を高いレベルで併せ持つことが求められているが、上記特許文献1に開示の技術を含めて、そのようなエネルギーデバイスは未だ達成されていない。中でも、使用後でも抵抗を低く抑え充電時間を短くする、大電流特性を向上させるなどの特性を同時に満たすことが難しいという問題がある。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。即ち本発明は、抵抗が小さく、また、放電能力に優れるエネルギーデバイスを提供することを第一の目的とする。
また、上記のように近年の非水系電解液二次電池の高性能化への要求が高まる中、更なる非水系電解液二次電池の性能の向上、すなわち、サイクル運転時や保存時といった耐久時の容量維持率の向上、また安全性の向上にも関わる電池膨れの低下が求められており、その根本的な理由の一つである正極金属溶出の抑制が必須である。
しかしながら、特許文献2~3に記載されている化合物、及びそれを用いた電解液を用いた非水系電解液電池では、耐久時の容量維持率の向上、電池膨れ、正極金属溶出量の抑制は未だ十分とは言い難い。
このような理由については現在のところ完全に解明されている訳ではないが、以下のとおり推測される。すなわち、クラウンエーテルは耐酸化性が低く正極表面で酸化反応する。この副反応成分が炭酸ガスとなって高温保存時のガス膨れの要因となり、耐久時の電池劣化が早まったり、電池安全性が低下する可能性がある。
また、この副反応成分は固体物質となることもある。この場合、電極表面上に堆積してリチウムイオンの電極活物質への挿入・脱離反応を阻害することが想定される。すなわち正極のリチウムイオン吸蔵放出の抵抗成分となって充放電特性を低下させ、保存容量及び保存容量維持率が低下したり、レート特性や入出力特性が低下したりする要因となる。
また、クラウンエーテルが正極表面で酸化反応される際に正極を構成する遷移金属酸化物の金属価数が低下して電解液中に溶解しやすい構造となり、金属溶出量が増加する。このような金属溶出は、負極被膜の崩壊を招いて電池容量を低下させたり、微短絡を起こして安全性の低下を引き起こす可能性がある。
特に、高エネルギー密度化を志向して正極動作電位を向上させた最近の電池では、クラウンエーテルの副反応が起こりやすくなり、炭酸ガスの発生や、保存容量及び保存容量維持率の低下、金属溶出量の増加、電池安全性の低下が顕著になる。
本発明は、かかる背景技術に鑑みて、サイクル運転時や高温保存時の容量維持率や電池膨れ、金属溶出を、従来技術に対して大幅に改善する非水系電解液を提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、非水系電解液に後述する特定の化合物を含有させることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明の第一実施形態は、以下に記載の非水系電解液およびエネルギーデバイスを提供する。
<1> 下記一般式(1)で示される化合物を含有する非水系電解液。
【化1】
(一般式(1)において、R
11、R
12およびR
13はそれぞれ独立に、炭素数1以上3以下の有機基であり、R
11とR
12、R
11とR
13、またはR
12とR
13が互いに結合し、5員環または6員環を形成していてもよい。なお、R
11、R
12およびR
13の炭素数の合計は7以下である。)
<2> 前記一般式(1)で示される化合物の合計の含有量が、前記非水系電解液の全量に対して、0.05質量ppm以上50質量ppm以下である<1>に記載の非水系電解液。
<3> さらに、フッ素原子を有する環状カーボネート、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、ジフルオロリン酸塩、フルオロ硫酸塩、イソシアネート基を有する化合物、シアノ基を有する化合物、環状スルホン酸エステル、及びジカルボン酸錯体塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する、<1>または<2>に記載の非水系電解液。
<4> 前記一般式(1)において、前記R
11、前記R
12および前記R
13はそれぞれ独立に、炭素数1以上2以下の有機基であり、該R
11、該R
12および該R
13の炭素数の合計が5以下である、<1>ないし<3>のいずれかに記載の非水系電解液。
<5> 金属イオンを吸蔵及び放出可能な複数の電極と、非水系電解液とを備えたエネルギーデバイスであって、
該非水系電解液が、<1>ないし<4>のいずれかに記載の非水系電解液である、エネルギーデバイス。
<6> 前記金属イオンを吸蔵及び放出可能な複数の電極が、金属イオンを吸蔵及び放出可能な正極と、金属イオンを吸蔵及び放出可能な負極とであり、該負極が、炭素質材料またはケイ素を含む材料を含む、<5>に記載のエネルギーデバイス。
<7> 前記金属イオンを吸蔵及び放出可能な複数の電極が、金属イオンを吸蔵及び放出可能な正極と、金属イオンを吸蔵及び放出可能な負極とであり、該正極が、遷移金属酸化物を含有する、<5>または<6>に記載のエネルギーデバイス。
【0008】
また、本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、電解質とこれを溶解する非水溶媒を含有する非水系電解液に、炭酸エステル構造とエーテル構造を1分子中に含有する環状化合物を含有させることにより、サイクル運転時や高温保存時の容量維持率や電池膨れ、金属溶出を、従来技術に対して大幅に改善することを見出し、本発明を完成させるに至った。
より詳細には、本発明者は、サイクル運転時や保存時の容量や電池膨れ、金属溶出量を、従来技術に対して大幅に改善する新規な非水系電解液を開発するべく、エネルギーデバイスとして非水系電解液二次電池の負極被膜の形成機構や素反応速度に注目し、様々な化合物とその組み合わせの作用効果について種々の検討を実施した。
そして、本発明者は、非水系電解液中に、炭酸エステル構造とエーテル構造を1分子中に含有する環状化合物を1種類以上含有させるという新規な発想により、耐久時の容量や電池膨れ、金属溶出を、従来技術に対して大幅に改善する技術を構築した。その結果、1分子中に炭酸エステル構造とエーテル構造を含有する環状化合物を用いることで、炭酸エステル構造を有する化合物と環状エーテル構造を有する化合物をそれぞれ独立して非水系電解液に導入するよりも、サイクル運転時や高温保存時の容量や電池膨れ、金属溶出を、従来技術に対して大幅に改善する技術を構築した。
すなわち、本発明の第二実施形態は、以下〔A1〕~〔A9〕に示す具体的態様等を提供する。
〔A1〕 下記一般式(A1)及び(A2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する非水系電解液。
【化2】
【化3】
(R
1~R
6はそれぞれ独立して炭素数2~4のアルキレン基であり、直鎖であっても分岐していてもよい。lは1以上6以下の整数であり、mとnは0以上6以下の整数である。但しmとnの何れか一方が0の場合は、もう一方は1以上の整数である。)
〔A2〕 更に、フッ素原子を有する環状カーボネートを含有する、〔A1〕に記載の非水系電解液。
〔A3〕 更に、炭素―炭素不飽和結合を有する環状カーボネートを含有する、〔A1〕又は〔A2〕に記載の非水系電解液。
〔A4〕 更に、2種以上のリチウム塩を含有する、〔A1〕乃至〔A3〕のいずれかに記載の非水系電解液。
〔A5〕 更に、イソシアネート基を有する化合物を含有する、〔A1〕乃至〔A4〕のいずれかに記載の非水系電解液。
〔A6〕 更に、シアノ基を有する化合物を含有する、〔A1〕乃至〔A5〕のいずれかに記載の非水系電解液。
〔A7〕 更に、SO
2基を有する環状化合物を含有する、〔A1〕乃至〔A6〕のいずれかに記載の非水系電解液。
〔A8〕 金属イオンを吸蔵及び放出可能な複数の電極と、非水系電解液とを備えたエネルギーデバイスであって、該非水系電解液が、〔A1〕乃至〔A7〕のいずれかに記載の非水系電解液である、エネルギーデバイス。
〔A9〕 前記金属イオンを吸蔵及び放出可能な複数の電極が、正極と負極とであり、該負極が、炭素質材料又はケイ素を含む材料を含む、〔A8〕に記載のエネルギーデバイス。
〔A10〕 前記金属イオンを吸蔵及び放出可能な複数の電極が、正極と負極とであり、該正極が、遷移金属酸化物を含有する、〔A8〕又は〔A9〕に記載のエネルギーデバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第一実施形態の非水系電解液によれば、抵抗が小さく、また、放電能力に優れるエネルギーデバイスを提供することができる。
また、本発明の第二実施形態によれば、サイクル運転時や高温保存時の容量維持率や電池膨れ、金属溶出が大幅に改善された非水系電解液二次電池などのエネルギーデバイスを実現可能な非水系電解液を提供することができる。さらに、本発明の第二実施形態の好ましい態様によれば、入出力特性のみならず、インピーダンス特性や充放電レート特性等に優れ、さらにはサイクル特性、高温保存特性や連続充電特性、安全性等にも優れるエネルギーデバイスを実現可能な非水系電解液を提供することができる。また、この非水系電解液を用いたエネルギーデバイスを提供することができる。
非水系電解液の電極表面における電気化学反応は、化合物自体の酸化・還元安定性や、電極表面の化合物の濃度や拡散係数、反応後の生成物の安定性等の様々な要因で決まる。1分子中に異なる官能基を導入した場合、それぞれの官能基のみを有する独立した化合物と比較して、上記のような電気化学的な反応性が変化する。1分子中に導入する官能基を適切に設計すると、更なる後続的な副反応を抑制でき、電池耐久性や膨れ、金属溶出を抑制できることになる。本発明においては、環状エーテル化合物に炭酸エステル構造が有する被膜安定化効果を導入することで、環状エーテル構造の長所を活かしつつ、短所を補強することを実現できたと考えられる。このような考えに基づく分子設計の妥当性は、後述するように、炭酸エステル構造とエーテル構造を1分子中に含有する化合物を用いた実施例A8及びA9が、炭酸エステル溶媒とクラウンエーテル添加剤を別々に導入した比較例A3に比べて金属溶出量が格段に低いという結果から明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
【0011】
1.第一実施形態の非水系電解液
[1.非水系電解液]
本発明の第一の目的は第一実施形態により達成される。
本発明の第一実施形態の非水系電解液は、上記一般式(1)で示される化合物を含有する。非水系電解液は電解質を非水溶媒に溶解させたものであるので、以下、電解質、非水溶媒、一般式(1)で示される化合物、の順に説明する。
【0012】
<1-1.電解質>
本実施形態の非水系電解液に用いる電解質は、特に限定されず、目的とするエネルギーデバイスの特性に応じて、任意に採用することができる。
前記電解質の具体例としては、例えば、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiAlF4等の無機リチウム塩;
LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)(C2F5SO2)、LiN(CF3SO2)(C3F7SO2)、リチウム環状1,2-エタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-プロパンジスルホニルイミド、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、リチウム環状1,4-パーフルオロブタンジスルホニルイミド、LiC(CF3SO2)3、LiPF4(CF3)2、LiPF4(C2F5)2、LiPF4(CF3SO2)2、LiPF4(C2F5SO2)2、LiBF3(CF3)、LiBF3(C2F5)、LiBF2(CF3)2、LiBF2(C2F5)2、LiBF2(CF3SO2)2、LiBF2(C2F5SO2)2等の含フッ素有機リチウム塩;
KPF6、NaPF6、NaBF4、CF3SO3Na等のナトリウム塩またはカリウム塩;等が挙げられる。
これらのうち、リチウム塩が好ましいが、なかでもLiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミドが好ましく、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2がより好ましく、特にLiPF6が好ましい。
【0013】
また、本実施形態の非水系電解液は、電解質としてヘキサフルオロリン酸塩を含有していることが好ましい。ヘキサフルオロリン酸塩は、ヘキサフルオロリン酸アニオンが電気化学的に安定であるため好ましく、これにより、本実施形態の非水系電解液を使用して得られるエネルギーデバイスの充放電効率を向上させることができる。また、当該塩は塩の解離度を非常に高くすることができ、電解液中での電荷担体となるイオン濃度を高くすることができる。
【0014】
以上説明した電解質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なかでも、無機リチウム塩の2種の併用、無機リチウム塩と含フッ素有機リチウム塩の併用が、エネルギーデバイスの連続充電時のガス発生または高温保存後の劣化が効果的に抑制されるので好ましい。
【0015】
特に、LiPF6とLiBF4との併用や、LiPF6、LiBF4等の無機リチウム塩とLiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2等の含フッ素有機リチウム塩との併用が好ましい。
LiPF6とLiBF4とを併用する場合、電解質全体に占めるLiBF4の割合が、0.001質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。この範囲内であると、LiBF4の解離度の低さのために、非水系電解液の抵抗が高くなることが抑制されうる。
一方、LiPF6、LiBF4等の無機リチウム塩とLiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2等の含フッ素有機リチウム塩とを併用する場合、電解質全体に占める無機リチウム塩の割合は、70質量%以上、99.9質量%以下であることが好ましい。この範囲内であると、一般にヘキサフルオロリン酸塩と比較して分子量が大きい含フッ素有機リチウム塩の割合が高くなりすぎて、非水系電解液全体に占める非水溶媒の比率が低下し、非水系電解液の抵抗が高くなることが抑制されうる。
【0016】
本実施形態の非水系電解液の最終的なエネルギーデバイスにおける組成中でのリチウム塩等の電解質の濃度は、本実施形態の効果を著しく損なわない限り任意であるが、好ましくは0.5mol/L以上、3mol/L以下である。電解質濃度がこの下限以上であると、十分な非水系電解液のイオン伝導率が得られやすく、上限以下であると、粘度が上昇しすぎることが避けられる。以上により、良好なイオン伝導率と、エネルギーデバイスの性能を確保しやすい。リチウム塩等の電解質の濃度は、より好ましくは0.6mol/L以上、更に好ましくは0.8mol/L以上、また、より好ましくは2mol/L以下、更に好ましくは1.5mol/L以下の範囲である。
【0017】
<1-2.非水溶媒>
本実施形態の非水系電解液が含有する非水溶媒は、エネルギーデバイスとした時に電池特性に対して悪影響を及ぼさない溶媒であれば特に制限されないが、以下に掲げる非水溶媒の内の1種以上であることが好ましい。
非水溶媒の例としては、鎖状カーボネート及び環状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル及び環状カルボン酸エステル、鎖状エーテル及び環状エーテル、含燐有機溶媒、含硫黄有機溶媒、含硼素有機溶媒等が挙げられる。
【0018】
前記鎖状カーボネートの種類は、特に限定されず、例えば、ジアルキルカーボネートが挙げられる。これらのなかでも、ジアルキルカーボネートを構成するアルキル基の炭素数が、それぞれ1~5のものが好ましく、1~4のものがより好ましく、1~3のものが特に好ましい。具体的には、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、等が好ましいジアルキルカーボネートとして挙げられる。
これらの中でも、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートが、工業的な入手性やエネルギーデバイスにおける種々の特性がよい点でより好ましい。
【0019】
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」と略記する場合がある)も好適に用いることができる。フッ素化鎖状カーボネートが有するフッ素原子の数は、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下であり、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数のフッ素原子を有する場合、それらは互いに同一の炭素に結合していてもよく、異なる炭素に結合していてもよい。フッ素化鎖状カーボネートとしては、フッ素化ジメチルカーボネート、フッ素化エチルメチルカーボネート、フッ素化ジエチルカーボネート等が挙げられる。
前記フッ素化ジメチルカーボネートとしては、フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロ)メチルカーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート等が挙げられる。
前記フッ素化エチルメチルカーボネートとしては、2-フルオロエチルメチルカーボネート、エチルフルオロメチルカーボネート、2,2-ジフルオロエチルメチルカーボネート、2-フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、エチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネート、2,2-ジフルオロエチルフルオロメチルカーボネート、2-フルオロエチルジフルオロメチルカーボネート、エチルトリフルオロメチルカーボネート等が挙げられる。
前記フッ素化ジエチルカーボネートとしては、エチル-(2-フルオロエチル)カーボネート、エチル-(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2-フルオロエチル)カーボネート、エチル-(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、2,2-ジフルオロエチル-2'-フルオロエチルカーボネート、ビス(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、2,2,2-トリフルオロエチル-2'-フルオロエチルカーボネート、2,2,2-トリフルオロエチル-2',2'-ジフルオロエチルカーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。
尚、フッ素化鎖状カーボネートは、非水溶媒のみならず下記<1-4.添加剤>に記載の添加剤としても有効な機能を発現する。フッ素化鎖状カーボネートを溶媒兼添加剤として用いる場合の配合量に明確な境界は存在せず、本明細書において、非水溶媒としての配合量及び添加剤の配合量として記載した配合量をそのまま踏襲できる。
【0020】
上記環状カーボネートの種類は、特に限定されず、例えば、アルキレンカーボネートが挙げられ、なかでもアルキレンカーボネートの構成するアルキレン基の炭素数は2~6が好ましく、特に好ましくは2~4である。環状カーボネートとして具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート(2-エチルエチレンカーボネート、シス及びトランス2,3-ジメチルエチレンカーボネート)等が挙げられる。
これらの中でも、誘電率が高いために非水系電解液エネルギーデバイスの抵抗を低減させることができることから、環状カーボネートとしてエチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートが好ましく、特にエチレンカーボネートが好ましい。
【0021】
上記鎖状カルボン酸エステルの種類も特に限定されず、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸-i-プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸-i-ブチル、酢酸-t-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸-n-プロピル、プロピオン酸-i-プロピル、プロピオン酸-n-ブチル、プロピオン酸-i-ブチル、プロピオン酸-t-ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル等が挙げられる。
これらの中でも、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチルが、工業的な入手性やエネルギーデバイスにおける種々の特性がよい点で好ましい。
【0022】
さらに上記環状カルボン酸エステルについても特に限定されず、例えば、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン等が挙げられる。
これらのなかでも、γ-ブチロラクトンが、工業的な入手性やエネルギーデバイスにおける種々の特性がよい点で好ましい。
【0023】
上記鎖状エーテルの種類に関しても特に限定されず、例えば、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、ジエトキシエタン、エトキシメトキシメタン、エトキシメトキシエタン等が挙げられる。
これらのなかでも、ジメトキシエタン、ジエトキシエタンが、工業的な入手性やエネルギーデバイスにおける種々の特性がよい点で好ましい。
【0024】
また、上記環状エーテルも特に限定はされず、例えば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。
また、上記含燐有機溶媒に関しても特に限定されず、例えば、燐酸トリメチル、燐酸トリエチル、燐酸トリフェニル、燐酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)、亜燐酸トリメチル、亜燐酸トリエチル、亜燐酸トリフェニル、トリメチルホスフィンオキシド、トリエチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0025】
上記含硫黄有機溶媒の種類についても、特に限定されず、例えば、エチレンサルファイト、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ブスルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、ジブチルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、N,N-ジメチルメタンスルホンアミド、N,N-ジエチルメタンスルホンアミド等を挙げることができる。
【0026】
上記含硼素有機溶媒も、特に限定されず、例えば、2,4,6-トリメチルボロキシン、2,4,6-トリエチルボロキシン等のボロキシンなどが挙げられる。
以上説明した非水溶媒のなかでも、鎖状カーボネート及び環状カーボネートまたは鎖状カルボン酸エステル及び環状カルボン酸エステルが、エネルギーデバイスにおける種々の特性がよい点で好ましく、それらのなかでも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、γ-ブチロラクトンがより好ましく、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチルがより好ましい。
【0027】
これらの非水溶媒は1種を単独で用いても、2種類以上を併用してもよいが、2種以上の併用が好ましい。例えば、環状カーボネート類の高誘電率溶媒と、鎖状カーボネート類や鎖状エステル類等の低粘度溶媒とを併用するのが好ましい。
非水溶媒の好ましい組合せの1つは、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類を主体とする組合せである。なかでも、非水溶媒全体に占める環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との合計が、好ましくは80体積%(容量%)以上、より好ましくは85体積%以上、特に好ましくは90体積%以上であり、かつ環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との体積比(環状カーボネート類の総体積:鎖状カーボネート類の総体積)が、好ましくは0.5:9.5~7:3、より好ましくは1:9~5:5、更に好ましくは1.5:8.5~4:6、特に好ましくは2:8~3.5:6.5の組合せである。これらの非水溶媒の組み合わせを用いて作製されたエネルギーデバイスでは、サイクル特性と高温保存特性(特に、高温保存後の残存容量及び高負荷放電容量)のバランスがよくなるので好ましい。
環状カーボネート類と鎖状カーボネート類の好ましい組み合わせの例としては、エチレンカーボネートと鎖状カーボネート類の組み合わせが挙げられ、例えば、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート等が挙げられる。
【0028】
これらのエチレンカーボネートと鎖状カーボネート類との組み合わせに、更にプロピレンカーボネートを加えた組み合わせも好ましい。プロピレンカーボネートを含有する場合、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの体積比は、前述の通り99:1~40:60とする必要があり、また、前記体積比は、好ましくは95:5~45:55であり、より好ましくは85:15~50:50である。更に、非水溶媒全体に占めるプロピレンカーボネートの量を、0.1体積%以上、10体積%以下とすると、エチレンカーボネートと鎖状カーボネート類との組み合わせの特性を維持したまま、更に、優れた放電負荷特性が得られるので好ましい。非水溶媒全体に占めるプロピレンカーボネートの量は、より好ましくは1体積%、特に好ましくは2体積%以上であり、また、より好ましくは8体積%以下、特に好ましくは5体積%以下である。
【0029】
これらの中で、鎖状カーボネート類として非対称鎖状カーボネート類を含有するものが更に好ましく、
特に、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを含有するもの、
或いはこれらに加えて更にプロピレンカーボネートを含有するものが、エネルギーデバイスのサイクル特性と放電負荷特性のバランスがよいので好ましい。特に、非対称鎖状カーボネート類がエチルメチルカーボネートであるものが好ましく、また、ジアルキルカーボネートを構成するアルキル基の炭素数が1~2であるものが好ましい。
【0030】
本実施形態において好ましい非水溶媒の他の例は、鎖状カルボン酸エステル類を含有するものである。特に、上記、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類の混合溶媒に、鎖状カルボン酸エステル類を含有するものが、エネルギーデバイスの放電負荷特性向上の観点から好ましく、この場合、鎖状カルボン酸エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチルが、特に好ましい。非水溶媒に占める鎖状カルボン酸エステル類の容量は、好ましくは5体積%以上、より好ましくは8体積%以上、特に好ましくは10体積%以上であり、好ましくは50体積%以下、より好ましくは35体積%以下、特に好ましくは30体積%以下、とりわけ好ましくは25体積%以下である。
【0031】
<1-3.一般式(1)で示される化合物>
本実施形態の非水系電解液は、下記一般式(1)で示される化合物(以下、「特定エーテル」と称する場合がある)を必須成分として含有する。本実施形態の非水系電解液においては、特定エーテルのうち1種を用いても、2種以上を任意の組合せ及び比率で併用してもよい。
【化4】
一般式(1)において、R
11、R
12およびR
13はそれぞれ独立に、炭素数1以上3以下の有機基であり、R
11とR
12、R
11とR
13、またはR
12とR
13が互いに結合し、5員環または6員環を形成していてもよい。なおR
11、R
12およびR
13の炭素数の合計は7以下である。
【0032】
本実施形態では、特定エーテルを含有する非水系電解液を使用することで、エネルギーデバイスの特性劣化を小さく抑えることが可能となる。この作用・原理は明確ではないが、本発明者らは以下のように考える。ただし、本実施形態は、以下に記述する作用・原理に限定されるものではない。
本実施形態の特定エーテルは、構造中に2つのエーテル酸素を持つが、その間には炭素原子が1つしかない構造であり、その炭素原子には置換基が存在することを特徴としている。
エネルギーデバイスの電極によく用いられる材料として遷移金属酸化物があるが、その表面には―O―M―O―(Mは遷移金属原子、Oは酸素原子を表す)のような部分構造、すなわち遷移金属原子が剥き出しになっている部分構造が存在し、電解液との反応性が最も高い場所と推定される。
本実施形態の特定エーテルは、先に記したような特徴ある構造を持ち、剥き出しの遷移金属原子に2つの酸素原子の非共有電子対で挟み込むように作用することができ、効果的に電極表面の活性部位を保護することができると考えられる。
同時に、本実施形態の特定エーテルは2つのエーテル酸素間の炭素原子に置換基を有するため、上記の保護構造が緻密過ぎることなく、適切な程度になるものと推定される。
【0033】
上記一般式(1)で示される特定エーテルにおいて、R11、R12およびR13はそれぞれ独立に、炭素数1以上3以下、好ましくは2以下の有機基であるが、全て炭化水素基であることが好ましい。上記の特徴である構造以外の官能基を持たないことにより、特定エーテルの上記の作用以外の作用が起こりにくく、上記の作用が適切に起こると推定されるためである。
また、R11、R12およびR13はそれぞれメチル基、エチル基またはn‐プロピル基であることが好ましく、中でも、メチル基またはエチル基であることがより好ましい。また、R11とR13が互いに結合し5員環または6員環を形成していることも好ましく、その際R11とR13が互いに結合した有機基は、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基またはエチルエチレン基であることが好ましく、中でも、エチレン基またはメチルエチレン基であることがより好ましい。また環を形成する際は5員環がより好ましい。R11、R12およびR13の炭素数の合計は7以下であるが、6以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。非水系電解液とした時の電解液の粘度を低く保ちやすいためである。
R11、R12およびR13の炭素数の合計は3以上であるが、4以上であることが好ましい。化合物自体の揮発性が抑えられ、引火の危険性が下がり、また取り扱いが容易になるためである。
【0034】
以上説明した本実施形態における特定エーテルの分子量は好ましくは200以下、より好ましくは150以下、さらに好ましくは130以下、特に好ましくは120以下である。上記分子量の範囲内にあると、特定エーテルの非水溶媒に対する溶解性に優れ、より効果的に優れた効果を奏しやすくなる。
【0035】
一般式(1)で示される特定エーテルの好ましい具体例としては、以下のものが挙げられる。特定エーテルの中でも非水系電解液中での溶解性に優れ、非水系電解液の生産性を高めやすいためである。
【化5】
【0036】
さらに好ましい具体例としては、以下のものが挙げられる。特定エーテルの中でも分子サイズが好適であり、所望の作用を効率的に起こすことができると推定できるためである。
【化6】
【0037】
より好ましい具体例としては、以下のものが挙げられる。特定エーテルの中でも電解液中での安定性に優れると推定できるためである。
【化7】
【0038】
さらに好ましい具体例としては、以下のものが挙げられる。特定エーテルの中でも立体障害が好適であり、所望の反応を速やかに起こすことが可能と推定できるためである。
【化8】
【0039】
特に好ましい具体例としては、以下のものが挙げられる。特定エーテルの中でも対称性が低く、電解液中に均一に溶解しやすいためである。
【化9】
【0040】
非水系電解液全体に対する特定エーテルの合計の含有量は、0.01質量ppm以上であることが好ましく、0.02質量ppm以上であることがより好ましく、0.03質量ppm以上であることがさらに好ましく、0.05質量ppm以上であることが特に好ましい。特定エーテルの一部は、非水系電解液中の金属不純物に相互作用することで不活性化されてしまう可能性があるが、上述の範囲であれば、不活性化されずに前述の効果を示す特定エーテルが残存しやすいためである。また、0.1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、50質量ppm以下であることがさらに好ましく、10質量ppm以下であることが特に好ましい。特定エーテルの濃度が過剰であると、効果が飽和してしまい、非水系電解液のコストばかりが増加してしまうためである。
なお、特定エーテルは市販のものを用いてもよく、また、製造する場合にはその製造方法は限定されず、公知の方法により製造したものを用いることができる。
【0041】
<1-4.添加剤>
本実施形態の非水系電解液は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤は、従来公知のものを任意に用いることができる。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
添加剤の例としては、過充電防止剤や、エネルギーデバイスの高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤等が挙げられる。これらの中でも、高温保存後の容量維持特性や抵抗増加を抑制するための助剤として、フッ素原子を有する環状カーボネート、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、ジフルオロリン酸塩、フルオロ硫酸塩、イソシアネート基を有する化合物、シアノ基を有する化合物、環状スルホン酸エステル、及びジカルボン酸錯体塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、「特定添加剤」と略記する場合がある)を含有することが好ましい。以下、特定添加剤とその他添加剤に分けて説明する。
【0042】
<1-4-1.特定添加剤>
特定添加剤はいずれも、エネルギーデバイスの複数の電極のうち、還元性の電極上にて還元された特定エーテルと反応し、電極反応に好適な被膜上構造物を協奏的に形成するものと考えられる。この作用・原理は、以下に記述する作用・原理に限定されるものではないが、本発明者らは以下のように推測する。(i)フッ素原子を有する環状カーボネート、(ii)炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、(iii)ジフルオロリン酸塩、(iv)フルオロ硫酸塩、(v)イソシアネート基を有する化合物、(vi)シアノ基を有する化合物、(vii)環状スルホン酸エステル、及び(viii)ジカルボン酸錯体塩について、特定エーテルの還元により還元性電極表面にて形成された求核種Nu
-との推定反応機構を以下に示す。
【化10】
【0043】
反応式中、Catは塩を構成するカチオンである。Q1はフッ素を含む2価の有機基、Q2は炭素-炭素不飽和結合を含む2価の有機基、Q5およびQ6は1価の有機基、Q7は2価の有機基、Q8は単結合または2価の有機基、Xは錯体中心元素を含む2価の有機基をそれぞれ表す。
反応式に示すように、特定添加剤はいずれも求核攻撃受容部位を内包しており、示した各反応を開始反応として、電極反応を好適にサポートする被膜状の構造物を協奏的に形成するものと推定している。
特定添加剤の分子量は、特に限定されず、本実施形態の効果を著しく損なわない限り任意であるが、50以上、250以下であるものが好ましい。この範囲であると、非水系電解液中での特定添加剤の溶解性が良好で、添加の効果を十分に発現することができる。
また、特定添加剤の製造方法にも特に制限は無く、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。また、市販のものを用いてもよい。
また、特定添加剤は、本実施形態の非水系電解液中に、いずれか1種を単独で含有させてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有させてもよい。
【0044】
<1-4-1-1.フッ素原子を有する環状カーボネート>
特定添加剤のうち、フッ素原子を有する環状カーボネート(以下、「F化カーボネート」と略記する場合がある)としては、フッ素原子を有するものであれば、特に限定されず、任意のF化カーボネートを用いることができる。
F化カーボネートが有するフッ素原子の数も、1個以上であれば特に限定されず、2個以下が特に好ましい。
F化カーボネートの例としては、フルオロエチレンカーボネート及びその誘導体等が挙げられる。
フルオロエチレンカーボネート及びその誘導体の具体例としては、フルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(ジフルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(トリフルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-4-フルオロエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-5-フルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5,5-ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
これらのF化カーボネートの中でも、フルオロエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-エチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネートが好ましく、中でもフルオロエチレンカーボネートは、安定な被膜状の構造物の形成に寄与することができ、特に好適に用いられる。
F化カーボネートの含有量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本実施形態の非水系電解液に対して、好ましくは0.001質量%以上、10.0質量%以下である。
F化カーボネートの含有量がこの下限以上であると、エネルギーデバイスに、十分なサイクル特性向上効果をもたらすことができる。また、この上限以下であると、エネルギーデバイスの製造コストの増加を避けることができる。F化カーボネートの含有量は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上、また、より好ましくは8.0質量%以下、特に好ましくは6.0質量%以下である。
尚、F化カーボネートは、添加剤のみならず、上記1-2に記載の溶媒としても有効な機能を発現する。F化カーボネートを溶媒兼添加剤として用いる場合の配合量に明確な境界は存在せず、記載した配合量をそのまま踏襲できる。
【0045】
<1-4-1-2.炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート>
特定添加剤のうち、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート(以下、「不飽和カーボネート」と略記する場合がある)としては、炭素-炭素二重結合や炭素-炭素三重結合等の炭素-炭素不飽和結合を有するカーボネートであれば、特に限定されず、任意の不飽和カーボネートを用いることができる。
不飽和カーボネートの例としては、ビニレンカーボネート類、炭素-炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類等が挙げられる。
ビニレンカーボネート類の具体例としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5-ジメチルビニレンカーボネート等が挙げられる。
炭素-炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類の具体例としては、ビニルエチレンカーボネート、4,5-ジビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート等が挙げられる。
中でも、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネートが好ましく、特にビニレンカーボネートは、安定な被膜状の構造物の形成に寄与することができ、より好適に用いられる。
不飽和カーボネートの含有量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本実施形態の非水系電解液に対して、好ましくは0.001質量%以上、5.0質量%以下である。
不飽和カーボネートの含有量がこの下限以上であると、エネルギーデバイスに、十分なサイクル特性向上効果をもたらすことができる。また、この上限以下であると、エネルギーデバイスの初期の抵抗増加を避けることができる。不飽和カーボネートの含有量は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上、また、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下、特に好ましくは2.0質量%以下である。
【0046】
<1-4-1-3.ジフルオロリン酸塩>
特定添加剤のうち、ジフルオロリン酸塩としては、ジフルオロリン酸アニオンを構成要素とする塩であれば、特に限定されず、任意のジフルオロリン酸塩を用いることができる。
ジフルオロリン酸塩の例としては、ジフルオロリン酸リチウム塩、ジフルオロリン酸ナトリウム塩、ジフルオロリン酸カリウム塩、ジフルオロリン酸アンモニウム塩等が挙げられる。
中でも、ジフルオロリン酸リチウム塩が好ましく、安定な被膜状の構造物の形成に寄与することができ、より好適に用いられる。
ジフルオロリン酸塩の含有量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本実施形態の非水系電解液に対して、好ましくは0.001質量%以上、2.0質量%以下である。
ジフルオロリン酸塩の含有量がこの下限以上であると、非水系電解液二次電池に、十分なサイクル特性向上効果をもたらすことができる。また、この上限以下であると、非水系電解液二次電池の製造コストの増加を避けることができる。ジフルオロリン酸塩の含有量は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上、また、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1.2質量%以下、特に好ましくは1.1質量%以下である。
【0047】
<1-4-1-4.フルオロ硫酸塩>
特定添加剤のうち、フルオロ硫酸塩としては、フルオロ硫酸アニオンを構成要素とする塩であれば、特に限定されず、任意のフルオロ硫酸塩を用いることができる。
フルオロ硫酸塩の例としては、フルオロ硫酸リチウム塩、フルオロ硫酸ナトリウム塩、フルオロ硫酸カリウム塩、フルオロ硫酸アンモニウム塩等が挙げられる。
中でも、フルオロ硫酸リチウム塩が好ましく、安定な被膜状の構造物の形成に寄与することができ、より好適に用いられる。
フルオロ硫酸塩の含有量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本実施形態の非水系電解液に対して、好ましくは0.001質量%以上、4.0質量%以下である。
フルオロ硫酸塩の含有量がこの下限以上であると、非水系電解液二次電池に、十分なサイクル特性向上効果をもたらすことができる。また、この上限以下であると、非水系電解液二次電池の製造コストの増加を避けることができ、また正極集電体に頻繁に用いられるアルミニウムや外装体に頻繁に用いられる金属缶の腐食による性能低下を避けることができる。フルオロ硫酸塩の含有量は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上、また、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下、特に好ましくは2.0質量%以下である。
【0048】
<1-4-1-5.イソシアネート基を有する化合物>
特定添加剤のうち、イソシアネート基を有する化合物(以下、「イソシアネート」と略記する場合がある)としては、特に限定されず、任意のイソシアネートを用いることができる。
イソシアネートの例としては、モノイソシアネート類、ジイソシアネート類、トリイソシアネート類等が挙げられる。
モノイソシアネート類の具体例としては、イソシアネートメチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、t-ブチルイソシアネート、ペンチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、1-イソシアナトヘプタン、1-イソシアナトオクタン、1-イソシアナトノナン、1-イソシアナトデカン、シクロヘキシルイソシアネート、メトキシカルボニルイソシアネート、エトキシカルボニルイソシアネート、プロポキシカルボニルイソシアネート、ブトキシカルボニルイソシアネート、メトキシスルホニルイソシアネート、エトキシスルホニルイソシアネート、プロポキシスルホニルイソシアネート、ブトキシスルホニルイソシアネート、フルオロスルホニルイソシアネート等が挙げられる。
ジイソシアネート類の具体例としては、1,4-ジイソシアナトブタン、1,5-ジイソシアナトペンタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,7-ジイソシアナトヘプタン、1,8-ジイソシアナトオクタン、1,9-ジイソシアナトノナン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-ジイソシアナトプロペン、1,4-ジイソシアナト-2-ブテン、1,4-ジイソシアナト-2-フルオロブタン、1,4-ジイソシアナト-2,3-ジフルオロブタン、1,5-ジイソシアナト-2-ペンテン、1,5-ジイソシアナト-2-メチルペンタン、1,6-ジイソシアナト-2-ヘキセン、1,6-ジイソシアナト-3-ヘキセン、1,6-ジイソシアナト-3-フルオロヘキサン、1,6-ジイソシアナト-3,4-ジフルオロヘキサン、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,2-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン-1,1’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,2’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-3,3’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,5-ジイルビス(メチル=イソシアネート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,6-ジイルビス(メチル=イソシアネート)、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
トリイソシアネート類の具体例としては、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートメチルベンゼン、1,3,5-トリス(6-イソシアナトヘキサ-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、4-(イソシアナトメチル)オクタメチレン=ジイソシアネート等が挙げられる。
中でも、1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3,5-トリス(6-イソシアナトヘキサ-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが、工業的に入手し易いものであり、電解液の製造コストが低く抑えられる点で好ましく、また技術的な観点からも安定な被膜状の構造物の形成に寄与することができ、より好適に用いられる。
イソシアネートの含有量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本実施形態の非水系電解液に対して、好ましくは0.001質量%以上、1.0質量%以下である。
イソシアネートの含有量がこの下限以上であると、非水系電解液二次電池に、十分なサイクル特性向上効果をもたらすことができる。また、この上限以下であると、非水系電解液二次電池の初期の抵抗増加を避けることができる。イソシアネートの含有量は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上、また、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.7質量%以下、特に好ましくは0.6質量%以下である。
【0049】
<1-4-1-6.シアノ基を有する化合物>
特定添加剤のうち、シアノ基を有する化合物(以下、「ニトリル」と略記する場合がある)としては、特に限定されず、任意のニトリルを用いることができる。
ニトリルの例としては、モノニトリル類、ジニトリル類等が挙げられる。
モノニトリル類の具体例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ラウロニトリル、2-メチルブチロニトリル、トリメチルアセトニトリル、ヘキサンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、3-メチルクロトノニトリル、2-メチル-2-ブテンニトリル、2-ペンテンニトリル、2-メチル-2-ペンテンニトリル、3-メチル-2-ペンテンニトリル、2-ヘキセンニトリル、フルオロアセトニトリル、ジフルオロアセトニトリル、トリフルオロアセトニトリル、2-フルオロプロピオニトリル、3-フルオロプロピオニトリル、2 ,2-ジフルオロプロピオニトリル、2,3-ジフルオロプロピオニトリル、3 ,3-ジフルオロプロピオニトリル、2 ,2 ,3-トリフルオロプロピオニトリル、3 ,3 ,3-トリフルオロプロピオニトリル、3,3’-オキシジプロピオニトリル、3,3’-チオジプロピオニトリル、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,3,5-ペンタントリカルボニトリル、ペンタフルオロプロピオニトリル等が挙げられる。
ジニトリル類の具体例としては、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、イソプロピルマロノニトリル、tert-ブチルマロノニトリル、メチルスクシノニトリル、2,2-ジメチルスクシノニトリル、2,3-ジメチルスクシノニトリル、2,3,3-トリメチルスクシノニトリル、2,2,3,3-テトラメチルスクシノニトリル、2,3-ジエチル-2,3-ジメチルスクシノニトリル、2,2-ジエチル-3,3-ジメチルスクシノニトリル、ビシクロヘキシル-1,1-ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル-2,2-ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル-3,3-ジカルボニトリル、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジカルボニトリル、2,3-ジイソブチル-2,3-ジメチルスクシノニトリル、2,2-ジイソブチル-3,3-ジメチルスクシノニトリル、2-メチルグルタロニトリル、2,3-ジメチルグルタロニトリル、2,4-ジメチルグルタロニトリル、2,2,3,3-テトラメチルグルタロニトリル、2,2,4,4-テトラメチルグルタロニトリル、2,2,3,4-テトラメチルグルタロニトリル、2,3,3,4-テトラメチルグルタロニトリル、マレオニトリル、フマロニトリル、1,4-ジシアノペンタン、2,6-ジシアノヘプタン、2,7-ジシアノオクタン、2,8-ジシアノノナン、1,6-ジシアノデカン、1,2-ジジアノベンゼン、1,3-ジシアノベンゼン、1,4-ジシアノベンゼン、3,3’-(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、3,3’-(エチレンジチオ)ジプロピオニトリル等が挙げられる。
中でも、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル等のジニトリル類が安定な被膜状の構造物の形成に寄与することができ、より好適に用いられる。
ニトリルの含有量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本実施形態の非水系電解液に対して、好ましくは0.001質量%以上、5.0質量%以下である。
ニトリルの含有量がこの下限以上であると、非水系電解液二次電池に、十分なサイクル特性向上効果をもたらすことができる。また、この上限以下であると、非水系電解液二次電池の初期の抵抗増加を避け、レート特性の悪化を抑制することができる。ニトリルの含有量は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上、また、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下、特に好ましくは2.5質量%以下である。
【0050】
<1-4-1-7.環状スルホン酸エステル>
特定添加剤のうち、環状スルホン酸エステルとしては、特に限定されず、任意の環状スルホン酸エステルを用いることができる。
環状スルホン酸エステルの例としては、飽和環状スルホン酸エステル、不飽和環状スルホン酸エステル等が挙げられる。
前記飽和環状スルホン酸エステルの具体例としては、1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1-メチル-1,3-プロパンスルトン、2-メチル-1,3-プロパンスルトン、3-メチル-1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、2-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、3-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、4-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、1-メチル-1,4-ブタンスルトン、2-メチル-1,4-ブタンスルトン、3-メチル-1,4-ブタンスルトン、4-メチル-1,4-ブタンスルトン等が挙げられる。
前記不飽和環状スルホン酸エステルの具体例としては、1-プロペン-1,3-スルトン、2-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、2-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、3-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、2-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、3-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、1-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、2-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、3-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、1-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、2-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、3-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、1-ブテン-1,4-スルトン、2-ブテン-1,4-スルトン、3-ブテン-1,4-スルトン、1-フルオロ-1-ブテン-1,4-スルトン、2-フルオロ-1-ブテン-1,4-スルトン、3-フルオロ-1-ブテン-1,4-スルトン、4-フルオロ-1-ブテン-1,4-スルトン、1-フルオロ-2-ブテン-1,4-スルトン、2-フルオロ-2-ブテン-1,4-スルトン、3-フルオロ-2-ブテン-1,4-スルトン、4-フルオロ-2-ブテン-1,4-スルトン、1-フルオロ-3-ブテン-1,4-スルトン、2-フルオロ-3-ブテン-1,4-スルトン、3-フルオロ-3-ブテン-1,4-スルトン、4-フルオロ-3-ブテン-1,4-スルトン、1-メチル-1-ブテン-1,4-スルトン、2-メチル-1-ブテン-1,4-スルトン、3-メチル-1-ブテン-1,4-スルトン、4-メチル-1-ブテン-1,4-スルトン、1-メチル-2-ブテン-1,4-スルトン、2-メチル-2-ブテン-1,4-スルトン、3-メチル-2-ブテン-1,4-スルトン、4-メチル-2-ブテン-1,4-スルトン、1-メチル-3-ブテン-1,4-スルトン、2-メチル-3-ブテン-1,4-スルトン、3-メチル-3-ブテン-1,4-スルトン、4-メチル-3-ブテン-1,4-スルトン等が挙げられる。
以上挙げた中でも、1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトンが、入手の容易さや安定な被膜状の構造物の形成に寄与することができる点から、より好適に用いられる。
環状スルホン酸エステルの含有量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本実施形態の非水系電解液100質量%中、好ましくは0.001質量%以上、3.0質量%以下である。
環状スルホン酸エステルの含有量がこの下限以上であると、エネルギーデバイスに、十分なサイクル特性向上効果をもたらすことができる。また、この上限以下であると、エネルギーデバイスの製造コストの増加を避けることができる。環状スルホン酸エステルの含有量は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上、また、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下、特に好ましくは1.8質量%以下である。
【0051】
<1-4-1-8.ジカルボン酸錯体塩>
特定添加剤のうち、ジカルボン酸錯体塩としては、特に限定されず、任意のジカルボン酸錯体塩を用いることができる。
ジカルボン酸錯体塩の例としては、錯体中心元素がホウ素であるジカルボン酸錯体塩、錯体中心元素がリンであるジカルボン酸錯体塩等が挙げられる。
錯体中心元素がホウ素であるジカルボン酸錯体塩の具体例としては、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、リチウムビス(マロナト)ボレート、リチウムジフルオロ(マロナト)ボレート、リチウムビス(メチルマロナト)ボレート、リチウムジフルオロ(メチルマロナト)ボレート、リチウムビス(ジメチルマロナト)ボレート、リチウムジフルオロ(ジメチルマロナト)ボレート等が挙げられる。
錯体中心元素がリンであるジカルボン酸錯体塩の具体例としては、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート、リチウムトリス(マロナト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(マロナト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロ(マロナト)ホスフェート、リチウムトリス(メチルマロナト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(メチルマロナト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロ(メチルマロナト)ホスフェート、リチウムトリス(ジメチルマロナト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(ジメチルマロナト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロ(ジメチルマロナト)ホスフェート等が挙げられる。
中でも、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート、入手の容易さや安定な被膜状の構造物の形成に寄与することができる点から、より好適に用いられる。
ジカルボン酸錯体塩の含有量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本実施形態の非水系電解液に対して、好ましくは0.001質量%以上、2.5質量%以下である。
ジカルボン酸錯体塩の含有量がこの下限以上であると、非水系電解液二次電池に、十分なサイクル特性向上効果をもたらすことができる。また、この上限以下であると、非水系電解液二次電池の製造コストの増加を避けることができ、また、ガス発生による非水系電解液二次電池の体積膨張を避けることができる。ジカルボン酸錯体塩の含有量は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上、また、より好ましくは2.0質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1.2質量%以下である。
【0052】
<1-4-1-9.好ましい特定添加剤>
上記特定添加剤としては、フッ素原子を有する環状カーボネート、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、ジフルオロリン酸塩、フルオロ硫酸塩、環状スルホン酸エステル、及びジカルボン酸錯体塩から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することが好ましく、中でも、ジフルオロリン酸塩またはフルオロ硫酸塩を含有することがより好ましく、ジフルオロリン酸塩を含有することが特に好ましい。
【0053】
<1-4-2.その他添加剤>
特定添加剤以外の添加剤としては、過充電防止剤、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤等が挙げられる。
【0054】
<1-4-2-1.過充電防止剤>
過充電防止剤の具体例としては、トルエン、キシレン、2-フルオロトルエン、3-フルオロトルエン、4-フルオロトルエン等のトルエン誘導体;
ビフェニル、2-メチルビフェニル、3-メチルビフェニル、4-メチルビフェニル等の無置換またはアルキル基で置換されたビフェニル誘導体;
o-ターフェニル、m-ターフェニル、p-ターフェニル等の無置換またはアルキル基で置換されたターフェニル誘導体;
無置換またはアルキル基で置換されたターフェニル誘導体の部分水素化物;
シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン等のシクロアルキルベンゼン誘導体;クメン、1,3-ジイソプロピルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼン等のベンゼン環に直接結合する第3級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体;
t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、t-ヘキシルベンゼン、1,1,3-トリメチル-3-フェニルインダン等のベンゼン環に直接結合する第4級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体;
ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の酸素原子を有する芳香族化合物;
等の芳香族化合物が挙げられる。
更に、他の過充電防止剤の具体例としては、フルオロベンゼン、ベンゾトリフルオリド、2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、1,6-ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物;等も挙げられる。
なお、これらの過充電防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、任意の組合せで併用する場合にも上記に例示した同一の分類の化合物で併用してもよく、異なる分類の化合物で併用してもよい。
過充電防止剤を配合する場合、過充電防止剤の配合量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液全体(100質量%)に対して、好ましくは0.001質量%以上、10質量%以下の範囲である。
本実施形態の非水系電解液に過充電防止剤を、本発明の効果を著しく損なわない範囲で含有させることで、万が一、誤った使用法や充電装置の異常等の過充電保護回路が正常に動作しない状況になり過充電されたとしても問題のないように、エネルギーデバイスの安全性を向上させることができるので好ましい。
【0055】
<1-4-2-2.助剤>
一方、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
エリスリタンカーボネート、スピロ-ビス-ジメチレンカーボネート等の不飽和結合を有するカーボネートに該当するもの以外のカーボネート化合物;
エチレンサルファイト等の環状サルファイト;
メタンスルホン酸メチル、ブスルファン等の鎖状スルホン酸エステル;
スルホラン、スルホレン等の環状スルホン;
ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン等の鎖状スルホン;
ジブチルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド類;
N,N-ジメチルメタンスルホンアミド、N,N-ジエチルメタンスルホンアミド等のスルホンアミド類等の含硫黄化合物;
1-メチル-2-ピロリジノン、1-メチル-2-ピペリドン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の含窒素化合物;
ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物;2-(ジエトキシホスホリル)酢酸プロパルギル、2-(ジエトキシホスホリル)酢酸2-ブチニル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸プロパルギル、メタンスルホニルオキシ酢酸プロパルギル、リチウム エチル-プロパルギルオキシカルボニルホスホネート、リチウム エチル-2-ブチニルオキシカルボニルホスホネート、硫酸プロパルギルリチウム、硫酸2-ブチニルリチウム、硫酸プロパルギルトリメチルシリル、2-ブチン-1,4-ジイル ジメシラート、2-ブチン-1,4-ジイル ジエタンスルホネート、2-ブチン-1,4-ジイル ジホルメート、2-ブチン-1,4-ジイル ジアセテート、2-ブチン-1,4-ジイル ジプロピオネート、4-ヘキサジイン-1,6-ジイル ジメタンスルホネート、メタンスルホン酸プロパルギル、メタンスルホン酸2-ブチニル、エタンスルホン酸プロパルギル、ビニルスルホン酸プロパルギル、プロパルギルメチルカーボネート、プロパルギルエチルカーボネート、ジプロパルギルカーボネート、ぎ酸プロパルギル、酢酸プロパルギル、メタクリル酸プロパルギル、シュウ酸メチルプロパルギル、シュウ酸エチルプロパルギル、シュウ酸ジプロパルギル等の三重結合化合物;
フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド等の含フッ素芳香族化合物;
メタンスルホン酸ペンタフルオロフェニル、トリフルオロメタンスルホン酸ペンタフルオロフェニル、酢酸ペンタフルオロフェニル、トリフルオロ酢酸ペンタフルオロフェニル、メチルペンタフルオロフェニルカーボネート等のペンタフルオロフェニル化合物;
メチル硫酸リチウム、エチル硫酸リチウム、メチル硫酸ナトリウム、エチル硫酸ナトリウム等の硫酸ハーフエステル等。
なお、これらの助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、本実施形態の非水系電解液がこれらの助剤を含有する場合、その含有量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液全体(100質量%)に対して、好ましくは0.001質量%以上、10質量%以下の範囲である。
【0056】
<1-5.非水系電解液の製造方法>
本実施形態の非水系電解液は、前述の非水溶媒に、電解質と、特定エーテルと、必要に応じて前述の「特定添加剤」や「その他添加剤」などを溶解することにより調製することができる。
非水系電解液を調製するに際しては、非水系電解液の各原料、すなわち、リチウム塩等の電解質、特定エーテル、非水溶媒、特定添加剤、その他添加剤等は、予め脱水しておくことが好ましい。脱水の程度としては、水分が通常50ppm以下、好ましくは30ppm以下となるまで脱水することが望ましい。
非水系電解液中の水分を除去することで、水の電気分解、水とリチウム金属との反応、リチウム塩の加水分解等が生じ難くなる。脱水の手段としては特に制限はないが、例えば、脱水する対象が非水溶媒等の液体の場合は、モレキュラーシーブ等の乾燥剤を用いればよい。また脱水する対象が電解質等の固体の場合は、分解が起きる温度未満で加熱して乾燥させればよい。本実施形態の非水系電解液を用いたエネルギーデバイスの詳細は後述する。
【0057】
2.第二実施形態の非水系電解液
[2.非水系電解液]
本発明の第二の目的は第二実施形態により達成される。
本発明の第二実施形態である非水系電解液は、一般式(a1)及び(a2)で表される化合物からなる群より選択される一種以上を含有する。
<2-1.一般式(a1)及び(a2)で表される化合物>
以下、一般式(a1)で表される化合物及び一般式(a2)で表される化合物を詳細に説明する。
【化11】
【化12】
【0058】
上記一般式(a1)及び(a2)中、R
1~R
6はそれぞれ独立して炭素数2~4のアルキレン基であり、直鎖であっても分岐していてもよい。
上記R
1~R
6において、好ましいアルキレン基としては、具体的には、-CH
2CH
2-、-CH
2CH
2CH
2-、-CH(CH
3)CH
2-、-CH
2CH
2CH
2CH
2-、-CH(CH
3)CH
2CH
2-、-CH(CH
2CH
3)CH
2-、-CH
2CH(CH
3)CH
2-、-CH
2C(CH
3)
2CH
2-等が挙げられる。
これらの中でも、より好ましいアルキレン基は、-CH
2CH
2-、-CH
2CH
2CH
2-又は-CH(CH
3)CH
2-であり、さらに好ましいアルキレン基は-CH
2CH
2-である。この構造にすることで、金属補足能が向上し、耐久性向上効果や安全性向上効果が発揮しやすくなる。また一般式(a1)及び(a2)で表される化合物を製造する際の生産効率が高くなり、製造負荷を軽減することができる。
上記一般式(a1)中、lは1以上6以下の整数であり、好ましくは1以上5以下であり、より好ましくは1以上4以下である。この範囲にすることで、金属補足能が向上し、耐久性向上効果や安全性向上効果が発揮しやすくなる。また一般式(a1)で表される化合物を製造する際の生産効率が高くなり、製造負荷を軽減することができる。
上記一般式(a2)中、mとnは0以上6以下の整数である。但しmとnの何れか一方が0の場合は、もう一方は1以上の整数である。mとnは、好ましくは0以上3以下であり、より好ましくは0以上2以下である。この範囲にすることで、金属補足能が向上し、耐久性向上効果や安全性向上効果が発揮しやすくなる。また一般式(a2)で表される化合物を製造する際の生産効率が高くなり、製造負荷を軽減することができる。
一般式(a1)及び(a2)で表される化合物として好ましい具体的な例としては、
【化13】
が挙げられる。
【0059】
これらの中でも、より好ましい化合物の具体的な例としては、
【化14】
を挙げることができる。これらの化合物は、一般式(a1)及び(a2)を製造する際の生産効率が高くなり、製造負荷を軽減することができる観点で好ましい。
【0060】
これらの中でも、更に好ましい化合物の具体的な例としては、
【化15】
を挙げることができる。これらの化合物は、金属補足能が向上し、耐久性向上効果や安全性向上効果が発揮しやすくなる観点で好ましい。
【0061】
一般式(a1)及び(a2)で表される化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、一般式(a1)及び(a2)で表される化合物の含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.0001質量%以上であり、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、また、通常5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。上記範囲内であれば、サイクル容量、保存容量や入出力特性といった耐久性を更に向上させたり、電池膨れを更に低下させたりでき、好ましい。
【0062】
一般式(a1)及び(a2)で表される化合物の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を組み合わせて製造できる。
例えば、(a1)及び(a2)で表される化合物は、対応するエーテル構造を有するグリコール類を、ホスゲン又はその代替化合物と希釈条件で反応させ、生成した混合物から分離精製することにより製造される。
【化16】
【0063】
ここで、一般式(a1)及び/又は(a2)で表される化合物を含有する非水系電解液の調製は、公知の手法で行えばよく、特に限定されない。例えば、別途合成した一般式(a1)及び/又は(a2)で表される化合物を非水系電解液に添加する方法や、別途合成した一般式(a1)及び/又は(a2)で表される化合物を溶媒中に添加した後に電解質塩を溶解させて非水系電解液とする方法、後述する活物質や極板等の電池構成要素中に一般式(a1)及び/又は(a2)で表される化合物を混合して電池要素(電池素子)を構築しておき、非水系電解液を注液して非水系電解液二次電池などのエネルギーデバイスを組み立てる際に一般式(a1)及び/又は(a2)で表される化合物を非水系電解液に溶解させる方法、非水系電解液或いは非水系電解液二次電池内で、一般式(a1)及び/又は(a2)で表される化合物を発生し得る化合物を予め非水系電解液或いは非水系電解液二次電池内に混合させておいて一般式(a1)及び/又は(a2)で表される化合物を含む電解液を得る方法等が挙げられる。本実施形態においては、いずれの手法を用いてもよい。
【0064】
<2-2.電解質>
本実施形態における非水系電解液は、電解質を含有する。電解質としてリチウム塩を1種以上含有することができる。リチウム塩としては、電解質として用いることが知られているものであれば特に制限がなく、任意のものを用いることができ、具体的には以下のものが挙げられる。
【0065】
例えば、
LiBF4、LiClO4、LiAlF4、LiPF6、LiSbF6、LiTaF6、LiWF7等の無機リチウム塩;
LiPO3F、LiPO2F2等の、LiPF6以外のフルオロリン酸リチウム塩類;
LiWOF5等のタングステン酸リチウム塩類;
HCO2Li、CH3CO2Li、CH2FCO2Li、CHF2CO2Li、CF3CO2Li、CF3CH2CO2Li、CF3CF2CO2Li、CF3CF2CF2CO2Li、CF3CF2CF2CF2CO2Li等のカルボン酸リチウム塩類;
FSO3Li、CH3SO3Li、CH2FSO3Li、CHF2SO3Li、CF3SO3Li、CF3CF2SO3Li、CF3CF2CF2SO3Li、CF3CF2CF2CF2SO3Li等のスルホン酸リチウム塩類;
メチル硫酸リチウム、エチル硫酸リチウム、2-プロピニル硫酸リチウム、1-メチル-2-プロピニル硫酸リチウム、1,1-ジメチル-2-プロピニル硫酸リチウム、2,2,2-トリフルオロエチル硫酸リチウム、ジリチウムエチレンジスルフェート等の硫酸塩類;
LiN(FCO2)2、LiN(FCO)(FSO2)、LiN(FSO2)2、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)等のリチウムイミド塩類;
LiC(FSO2)3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3等のリチウムメチド塩類;
リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート等のリチウムオキサラート塩類;
その他、LiPF4(CF3)2、LiPF4(C2F5)2、LiPF4(CF3SO2)2、LiPF4(C2F5SO2)2、LiBF3CF3、LiBF3C2F5、LiBF3C3F7、LiBF2(CF3)2、LiBF2(C2F5)2、LiBF2(CF3SO2)2、LiBF2(C2F5SO2)2等の含フッ素有機リチウム塩類;等が挙げられる。
高温保存試験やサイクル試験等の耐久試験後の入出力特性や、充放電レート充放電特性、インピーダンス特性の向上効果を更に高める点から、無機リチウム塩類、フルオロリン酸リチウム塩類、スルホン酸リチウム塩類、リチウムイミド塩類、リチウムオキサラート塩類、の中から選ばれるものが好ましい。
中でも、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiTaF6、LiPO3F、LiPO2F2、FSO3Li、CF3SO3Li、LiN(FSO2)2、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO2)3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート及びリチウムトリス(オキサラト)フォスフェートが、入出力特性やハイレート充放電特性、インピーダンス特性、高温保存特性、サイクル特性等を向上させる効果がある点から特に好ましい。
【0066】
非水系電解液中のこれらの電解質の総濃度は、特に制限はないが、通常8質量%以上、好ましくは8.5質量%以上、より好ましくは9質量%以上である。また、その上限は、通常18質量%以下、好ましくは17質量%以下、より好ましくは16質量%以下である。電解質の総濃度が上記範囲内であると、電気伝導率が電池動作に適正となるために好ましい。
また、これらの電解質は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の好ましい一例は、LiPF6とLiBF4、LiPF6とLiPO2F2、LiPF6とFSO3Li、LiPF6とLiN(FSO2)2、LiPF6とLiN(CF3SO2)2、LiPF6とリチウムビス(オキサラト)ボレート、LiPF6とリチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、LiPF6とリチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、LiPF6とLiBF4とLiPO2F2、LiPF6とLiBF4とFSO3Li、LiPF6とLiPO2F2とFSO3Li、LiPF6とLiPO2F2とリチウムビス(オキサラト)ボレート、LiPF6とLiPO2F2とリチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、LiPF6とLiPO2F2とLiN(FSO2)2、LiPF6とLiPO2F2とLiN(CF3SO2)2、LiPF6とFSO3Liとリチウムビス(オキサラト)ボレート、又はLiPF6とFSO3Liとリチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェートの併用であり、入出力特性や高温保存特性、サイクル特性を向上させる効果がある。この場合、LiPF6の含有量は、非水系電解液中、好ましくは7質量%以上、より好ましくは7.5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、好ましくは16質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは14質量%以下であり、またLiBF4、LiPO2F2、FSO3Li、LiN(FSO2)2LiN(CF3SO2)2、リチウムビス(オキサラト)ボレート、又はリチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェートの含有量は、非水系電解液中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。LiPF6の濃度が上記好ましい範囲内であると、非水系電解液中の総イオン含有量と粘性が適度なバランスとなるため、イオン伝導度を過度に低下することなく電池内部インピーダンスが低くなり、LiPF6の配合による入出力特性やサイクル特性、保存特性の向上効果がさらに発現され易くなる。
また、電解質として特に好ましい組み合わせは、LiPF6とLiPO2F2の組合せである。これらと式(a1)又は(a2)で表される化合物とを組み合わせることで、正極からの遷移金属酸化物の溶出を効果的に抑制できる傾向にある。また、これらの組み合わせにより、放電能力に優れるエネルギーデバイスを実現できる傾向にある。
これらの電解質材料は、従来公知の手法で製造可能である。
ここで、上記電解質材料を含有する非水系電解液の調製は、公知の手法で行えばよく、特に限定されない。例えば、別途合成した上記電解質材料を非水系電解液に添加する方法や、後述する活物質や極板等の電池構成要素中に上記電解質材料を混合して電池要素(電池素子)を構築しておき、非水系電解液を注液して電池を組み立てる際に上記電解質材料を非水系電解液に溶解させる方法、活物質や極板、セパレータ等の電池構成要素中に水を共存させておき、上記電解質材料を含む非水系電解液を用いて非水系電解液二次電池を組み立てる際に系中で他の電解質材料を発生させる方法等が挙げられる。本実施形態においては、いずれの手法を用いてもよい。
また、FSO3Liを電解液中に含有させる場合も上記と同様である。
上記の非水系電解液、及び非水系電解液二次電池中における各電解質の含有量を測定する手法としては、特に制限がなく、公知の手法であれば任意に用いることができる。具体的には、イオンクロマトグラフィーや、19F核磁気共鳴分光法(以下、「NMR」と称する場合がある。)等が挙げられる。
【0067】
<2-3.非水溶媒>
本発明の一実施形態に係る非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様、通常はその主成分として、上述した電解質を溶解する非水溶媒を含有する。ここで用いる非水溶媒について特に制限はなく、公知の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、飽和環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、環状カルボン酸エステル、エーテル系化合物、スルホン系化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本発明の一実施形態においては、非水系電解液が、環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状エステルよりなる群から一種以上を含有することが好ましい。
【0068】
<2-3-1.飽和環状カーボネート>
飽和環状カーボネートとしては、炭素数2~4のアルキレン基を有するものが挙げられる。
具体的には、炭素数2~4の飽和環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。中でも、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から好ましい。飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
飽和環状カーボネートの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、1種を単独で用いる場合の含有量の下限は、非水溶媒100体積%中、通常3体積%以上、好ましくは5体積%以上である。この範囲とすることで、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性、負極に対する安定性、サイクル特性を良好な範囲としやすくなる。また上限は、通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。この範囲とすることで、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液二次電池の入出力特性を更に向上させたり、サイクル特性や保存特性といった耐久性を更に向上させたりでき、好ましい。
また、飽和環状カーボネートを2種類以上の任意の組み合わせで用いることもできる。好ましい組合せの一つは、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートに組み合わせである。この場合のエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの体積比は、99:1~40:60が好ましく、より好ましくは95:5~50:50である。さらに、非水溶媒全体に占めるプロピレンカーボネートの量の下限は、通常1体積%以上、好ましくは2体積%以上、より好ましくは3体積%以上である。また、その上限は、通常30体積%以下、好ましくは25体積%以下、より好ましくは20体積%以下である。この範囲でプロピレンカーボネートを含有すると、さらに低温特性が優れるので好ましい。
【0069】
<2-3-2.鎖状カーボネート>
鎖状カーボネートとしては、炭素数3~7のものが好ましい。
具体的には、炭素数3~7の鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルメチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、t-ブチルメチルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルエチルカーボネート、イソブチルエチルカーボネート、t-ブチルエチルカーボネート等が挙げられる。
中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート又はメチル-n-プロピルカーボネートが好ましく、特に好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート又はエチルメチルカーボネートである。
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」と略記する場合がある。)も好適に用いることができる。「フッ素化鎖状カーボネート」としては、第一実施形態での説明が適用できる。
鎖状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
鎖状カーボネートの含有量は特に限定されないが、非水溶媒100体積%中、通常15体積%以上であり、好ましくは20体積%以上、より好ましくは25体積%以上である。また、通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。鎖状カーボネートの含有量を上記範囲とすることによって、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液二次電池の入出力特性や充放電レート特性を良好な範囲としやすくなる。また、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液二次電池の入出力特性や充放電レート特性を良好な範囲としやすくなる。
さらに、特定の鎖状カーボネートに対して、エチレンカーボネートを特定の含有量で組み合わせることにより、電池性能を著しく向上させることができる。
例えば、特定の鎖状カーボネートとしてジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを選択した場合、エチレンカーボネートの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常15体積%以上、好ましくは20体積%、また通常45体積%以下、好ましくは40体積%以下であり、ジメチルカーボネートの含有量は、通常20体積%以上、好ましくは30体積%以上、また通常50体積%以下、好ましくは45体積%以下であり、エチルメチルカーボネートの含有量は通常20体積%以上、好ましくは30体積%以上、また通常50体積%以下、好ましくは45体積%以下である。含有量を上記範囲内とすることで、電解質の低温析出温度を低下させながら、非水系電解液の粘度も低下させてイオン伝導度を向上させ、低温でも高い入出力を得ることができる。
【0070】
<2-3-3.鎖状カルボン酸エステル>
鎖状カルボン酸エステルとしては、その構造式中の全炭素数が3~7のものが挙げられる。
具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-t-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸-n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸-n-ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸-t-ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸-n-プロピル、酪酸イソプロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸-n-プロピル、イソ酪酸イソプロピル等が挙げられる。
中でも、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸-n-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸-n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル又は酪酸エチルが、粘度低下によるイオン伝導度の向上、及びサイクルや保存といった耐久時の電池膨れの抑制の観点から好ましい。
鎖状カルボン酸エステルの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水溶媒100体積%中、通常5体積%以上、好ましくは8体積%以上であり、また通常80体積%以下、好ましくは70体積%以下である。鎖状カルボン酸エステルの含有量を前記範囲とすると、非水系電解液の電気伝導率を改善し、非水系電解液二次電池の入出力特性や充放電レート特性を向上させやすくなる。また、負極抵抗の増大を抑制し、非水系電解液二次電池の入出力特性や充放電レート特性を良好な範囲としやすくなる。
尚、鎖状カルボン酸エステルを用いる場合は、好ましくは環状カーボネートとの併用であり、更に好ましくは環状カーボネートと鎖状カーボネートの併用である。
例えば、環状カーボネートと鎖状カルボン酸エステルを併用する場合、環状カーボネートの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常15体積%以上、好ましくは20体積%、また通常45体積%以下、好ましくは40体積%以下であり、鎖状カルボン酸エステルの含有量は、通常20体積%以上、好ましくは30体積%以上、また通常55体積%以下、好ましくは50体積%以下である。また、環状カーボネートと鎖状カーボネートと鎖状カルボン酸エステルを併用する場合、環状カーボネートの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常15体積%以上、好ましくは20体積%、また通常45体積%以下、好ましくは40体積%以下であり、鎖状カーボネートの含有量は、通常25体積%以上、好ましくは30体積%以上、また通常84体積%以下、好ましくは80体積%以下である。含有量を上記範囲内とすることで、電解質の低温析出温度を低下させながら、非水系電解液の粘度も低下させてイオン伝導度を向上させ、低温でも更に高い入出力を得ることができ、また電池膨れを更に低下させる観点で好ましい。
【0071】
<2-3-4.環状カルボン酸エステル>
環状カルボン酸エステルとしては、その構造式中の全炭素原子数が3~12のものが挙げられる。
具体的には、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。中でも、γ-ブチロラクトンがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
環状カルボン酸エステルの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水溶媒100体積%中、通常3体積%以上、好ましくは5体積%以上であり、また通常60体積%以下、好ましくは50体積%以下である。環状カルボン酸エステルの含有量を前記範囲とすると、非水系電解液の電気伝導率を改善し、非水系電解液二次電池の入出力特性や充放電レート特性を向上させやすくなる。また非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避し、負極抵抗の増大を抑制し、非水系電解液二次電池の入出力特性や充放電レート特性を良好な範囲としやすくなる。
【0072】
<2-3-5.エーテル系化合物>
エーテル系化合物としては、炭素数3~10の鎖状エーテル、及び炭素数3~6の環状エーテルが好ましい。
炭素数3~10の鎖状エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジ(2-フルオロエチル)エーテル、ジ(2,2-ジフルオロエチル)エーテル、ジ(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、エチル(2-フルオロエチル)エーテル、エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、エチル(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル、(2-フルオロエチル)(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、(2-フルオロエチル)(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル、エチル-n-プロピルエーテル、エチル(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、エチル(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、2-フルオロエチル-n-プロピルエーテル、(2-フルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、2,2,2-トリフルオロエチル-n-プロピルエーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-n-プロピルエーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ-n-プロピルエーテル、(n-プロピル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、メトキシエトキシメタン、メトキシ(2-フルオロエトキシ)メタン、メトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタンメトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジエトキシメタン、エトキシ(2-フルオロエトキシ)メタン、エトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタン、エトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(2-フルオロエトキシ)メタン、(2-フルオロエトキシ)(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタン、(2-フルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタンジ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタン、(2,2,2-トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジメトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メトキシ(2-フルオロエトキシ)エタン、メトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、メトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジエトキシエタン、エトキシ(2-フルオロエトキシ)エタン、エトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、エトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2-フルオロエトキシ)エタン、(2-フルオロエトキシ)(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、(2-フルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、(2,2,2-トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
炭素数3~6の環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、2-メチル-1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン等、及びこれらのフッ素化化合物が挙げられる。
これらの中でも、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル又はジエチレングリコールジメチルエーテルが、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、イオン解離性を向上させる点で好ましい。特に好ましくは、粘性が低く、高いイオン伝導度を与えることから、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン又はエトキシメトキシメタンである。
エーテル系化合物の含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水溶媒100体積%中、通常1体積%以上、好ましくは2体積%以上、より好ましくは3体積%以上、また、通常30体積%以下、好ましくは25体積%以下、より好ましくは20体積%以下である。エーテル系化合物の含有量が前記好ましい範囲内であれば、鎖状エーテルのリチウムイオン解離度の向上と粘度低下に由来するイオン伝導度の向上効果を確保しやすい。また、負極活物質が炭素質材料の場合、鎖状エーテルがリチウムイオンと共に共挿入される現象を抑制できることから、入出力特性や充放電レート特性を適正な範囲とすることができる。
【0073】
<2-3-6.スルホン系化合物>
スルホン系化合物としては、炭素数3~6の環状スルホン、及び炭素数2~6の鎖状スルホンが好ましい。1分子中のスルホニル基の数は、1又は2であることが好ましい。
環状スルホンとしては、モノスルホン化合物であるトリメチレンスルホン類、テトラメチレンスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類;ジスルホン化合物であるトリメチレンジスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類等が挙げられる。中でも誘電率と粘性の観点から、テトラメチレンスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類又はヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく、テトラメチレンスルホン類(スルホラン類)が特に好ましい。
スルホラン類としては、スルホラン及び/又はスルホラン誘導体(以下、スルホランも含めて「スルホラン類」と略記する場合がある。)が好ましい。スルホラン誘導体としては、スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1以上がフッ素原子やアルキル基で置換されたものが好ましい。
中でも、2-メチルスルホラン、3-メチルスルホラン、2-フルオロスルホラン、3-フルオロスルホラン、2,2-ジフルオロスルホラン、2,3-ジフルオロスルホラン、2,4-ジフルオロスルホラン、2,5-ジフルオロスルホラン、3,4-ジフルオロスルホラン、2-フルオロ-3-メチルスルホラン、2-フルオロ-2-メチルスルホラン、3-フルオロ-3-メチルスルホラン、3-フルオロ-2-メチルスルホラン、4-フルオロ-3-メチルスルホラン、4-フルオロ-2-メチルスルホラン、5-フルオロ-3-メチルスルホラン、5-フルオロ-2-メチルスルホラン、2-フルオロメチルスルホラン、3-フルオロメチルスルホラン、2-ジフルオロメチルスルホラン、3-ジフルオロメチルスルホラン、2-トリフルオロメチルスルホラン、3-トリフルオロメチルスルホラン、2-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン、3-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン、4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン、5-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン等がイオン伝導度が高く入出力が高い点で好ましい。
また、鎖状スルホンとしては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n-プロピルメチルスルホン、n-プロピルエチルスルホン、ジ-n-プロピルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、n-ブチルメチルスルホン、n-ブチルエチルスルホン、t-ブチルメチルスルホン、t-ブチルエチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、パーフルオロエチルメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、ジ(トリフルオロエチル)スルホン、パーフルオロジエチルスルホン、フルオロメチル-n-プロピルスルホン、ジフルオロメチル-n-プロピルスルホン、トリフルオロメチル-n-プロピルスルホン、フルオロメチルイソプロピルスルホン、ジフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-プロピルスルホン、トリフルオロエチルイソプロピルスルホン、ペンタフルオロエチル-n-プロピルスルホン、ペンタフルオロエチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-ブチルスルホン、トリフルオロエチル-t-ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル-n-ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル-t-ブチルスルホン等が挙げられる。
中でも、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n-プロピルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、n-ブチルメチルスルホン、t-ブチルメチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、トリフルオロメチル-n-プロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-ブチルスルホン、トリフルオロエチル-t-ブチルスルホン、トリフルオロメチル-n-ブチルスルホン又はトリフルオロメチル-t-ブチルスルホンが、イオン伝導度が高く入出力が高い点で好ましい。
スルホン系化合物の含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水溶媒100体積%中、通常0.3体積%以上、好ましくは0.5体積%以上、より好ましくは1体積%以上であり、また、通常40体積%以下、好ましくは35体積%以下、より好ましくは30体積%以下である。スルホン系化合物の含有量が前記範囲内であれば、サイクル特性や保存特性等の耐久性の向上効果が得られやすく、また、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避することができ、非水系電解液二次電池の入出力特性や充放電レート特性を適正な範囲とすることができる。
【0074】
<2-4.助剤>
本実施形態の非水系電解液は、さらに、以下に詳述する各種の助剤を含んでいてもよい。
【0075】
<2-4-1.炭素-炭素不飽和結合及びフッ素原子の少なくとも一方を有するカーボネート>
本発明の一実施形態に係る非水系電解液は、さらに、炭素-炭素不飽和結合を有するカーボネート、及びフッ素原子を有するカーボネートのうち少なくとも一方を含有していてもよい。
炭素-炭素不飽和結合を有するカーボネートとしては、好ましくは炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート(以下、「不飽和環状カーボネート」と略記する場合がある。)が挙げられ、フッ素原子を有するカーボネートとしては、好ましくはフッ素原子を有する環状カーボネートが挙げられる。
【0076】
炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネートとしては、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネートであれば、特に制限はなく、任意の炭素-炭素不飽和結合を有するカーボネートを用いることができる。なお、芳香環を有する置換基を有する環状カーボネートも、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネートに包含されることとする。不飽和環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート類、芳香環又は炭素-炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類、フェニルカーボネート類、ビニルカーボネート類、アリルカーボネート類等が挙げられる。
ビニレンカーボネート類としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5-ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、4,5-ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート等が挙げられる。
芳香環又は炭素-炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類の具体例としては、ビニルエチレンカーボネート、4,5-ジビニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、4,5-ジフェニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,5-ジエチニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
中でも、ビニレンカーボネート類、芳香環又は炭素-炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネートが好ましく、特に、ビニレンカーボネート、4,5-ジフェニルビニレンカーボネート、4,5-ジメチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート又はエチニルエチレンカーボネートが、安定な界面保護被膜を形成するので、より好適に用いられる。
不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。不飽和環状カーボネートの分子量は、通常50以上、好ましくは80以上であり、また通常250以下、好ましくは150以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する不飽和環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の効果が十分に発現されやすい。
不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、不飽和環状カーボネートの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。不飽和環状カーボネートの含有量は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常10質量%以下であり、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。上記範囲内であれば、非水系電解液二次電池が十分な高温保存特性やサイクル特性向上効果を発現しやすい。
【0077】
フッ素原子を有する環状カーボネート(以下、「フッ素化環状カーボネート」と略記する場合がある。)としては、フッ素原子を有する環状カーボネートであれば、特に制限はない。
フッ素化環状カーボネートとしては、炭素原子数2~6のアルキレン基を有する環状カーボネートの誘導体が挙げられ、例えばエチレンカーボネート誘導体である。エチレンカーボネート誘導体としては、例えば、エチレンカーボネート又はアルキル基(例えば、炭素原子数1~4個のアルキル基)で置換されたエチレンカーボネートのフッ素化物が挙げられ、中でもフッ素原子が1~8個のものが好ましい。
具体的には、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(ジフルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(トリフルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-4-フルオロエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-5-フルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5,5-ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
中でも、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート及び4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種が、高イオン伝導性を与え、かつ好適に界面保護被膜を形成する点でより好ましい。
フッ素化環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。フッ素化環状カーボネートの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常8質量%以下であり、好ましくは6質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下である。この範囲であれば、非水系電解液二次電池が十分なサイクル特性や高温保存特性を発現しやすい。この範囲であれば、非水系電解液二次電池が十分なサイクル特性や高温保存特性を発現しやすい。
尚、フッ素化環状カーボネートは、該非水系電解液の助剤として用いても、非水溶媒として用いてもよい。非水溶媒として用いる場合のフッ素化環状カーボネートの含有量は、非水系電解液100質量%中、通常8質量%以上であり、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上であり、また、通常85質量%以下であり、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは75質量%以下である。この範囲であれば、非水系電解液二次電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、放電容量維持率が低下することを回避しやすい。
本発明の一実施形態に係る非水系電解液において、前記炭素-炭素不飽和結合及びフッ素原子の少なくとも一方を有するカーボネートが、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0078】
<2-4-2.フッ素化不飽和環状カーボネート>
フッ素化環状カーボネートとして、不飽和結合とフッ素原子とを有する環状カーボネート(以下、「フッ素化不飽和環状カーボネート」と略記する場合がある。)を用いることができる。フッ素化不飽和環状カーボネートは、特に制限されない。中でもフッ素原子が1個又は2個のものが好ましい。フッ素化不飽和環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
フッ素化不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート誘導体、芳香環又は炭素-炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート誘導体等が挙げられる。
ビニレンカーボネート誘導体としては、4-フルオロビニレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルビニレンカーボネート、4-フルオロ-5-フェニルビニレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。
芳香環又は炭素-炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート誘導体としては、4-フルオロ-4-ビニルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-ビニルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-4-ビニルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-ビニルエチレンカーボネート、4-フルオロ-4,5-ジビニルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4,5-ジビニルエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-フェニルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-フェニルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5-フェニルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-フェニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
フッ素化不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。フッ素化不飽和環状カーボネートの分子量は、通常50以上、好ましくは80以上であり、また、通常250以下、好ましくは150以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対するフッ素化環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。
フッ素化不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、フッ素化不飽和環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。フッ素化不飽和環状カーボネートの含有量は、非水系電解液100質量%中、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。この範囲であれば、非水系電解液二次電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすい。
【0079】
<2-4-3.SO
2基を有する環状化合物>
本実施形態の非水系電解液において、用いることができるSO
2基を有する環状化合物としては、分子内にSO
2基を有する環状の化合物であれば特にその種類は限定されないが、環状スルホン酸エステル又は環状硫酸エステルを有する化合物(以下、それぞれ環状スルホン酸エステル化合物又は環状硫酸エステル化合物と略記する場合もある。)が好ましく、下記一般式(3)で表される化合物がより好ましい。SO
2基を有する環状化合物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
【化17】
【0080】
一般式(3)中、R7及びR8は各々独立して、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選ばれる原子で構成された有機基を表し、R7とR8は互いに-O-SO2-とともに不飽和結合を含んでいてもよい。
ここで、R7及びR8は、好ましくは炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子からなる原子で構成された有機基であることが好ましく、中でも炭素数1~3の炭化水素基、-O-SO2-を有する有機基であることが好ましい。
【0081】
SO2基を有する環状化合物の分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。SO2基を有する環状化合物の分子量は、通常100以上、好ましくは110以上であり、また、通常250以下、好ましくは220以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対するSO2基を有する環状化合物の溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。
【0082】
一般式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば、
1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1-メチル-1,3-プロパンスルトン、2-メチル-1,3-プロパンスルトン、3-メチル-1,3-プロパンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、2-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、2-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、3-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、2-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、3-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、1-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、2-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、3-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、1-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、2-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、3-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、1,4-ブタンスルトン、1-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、2-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、3-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、4-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、1-メチル-1,4-ブタンスルトン、2-メチル-1,4-ブタンスルトン、3-メチル-1,4-ブタンスルトン、4-メチル-1,4-ブタンスルトン、1-ブテン-1,4-スルトン、2-ブテン-1,4-スルトン、3-ブテン-1,4-スルトン、1-フルオロ-1-ブテン-1,4-スルトン、2-フルオロ-1-ブテン-1,4-スルトン、3-フルオロ-1-ブテン-1,4-スルトン、4-フルオロ-1-ブテン-1,4-スルトン、1-フルオロ-2-ブテン-1,4-スルトン、2-フルオロ-2-ブテン-1,4-スルトン、3-フルオロ-2-ブテン-1,4-スルトン、4-フルオロ-2-ブテン-1,4-スルトン、1-フルオロ-3-ブテン-1,4-スルトン、2-フルオロ-3-ブテン-1,4-スルトン、3-フルオロ-3-ブテン-1,4-スルトン、4-フルオロ-3-ブテン-1,4-スルトン、1-メチル-1-ブテン-1,4-スルトン、2-メチル-1-ブテン-1,4-スルトン、3-メチル-1-ブテン-1,4-スルトン、4-メチル-1-ブテン-1,4-スルトン、1-メチル-2-ブテン-1,4-スルトン、2-メチル-2-ブテン-1,4-スルトン、3-メチル-2-ブテン-1,4-スルトン、4-メチル-2-ブテン-1,4-スルトン、1-メチル-3-ブテン-1,4-スルトン、2-メチル-3-ブテン-1,4-スルトン、3-メチル-3-ブテン-1,4-スルトン、4-メチル-3-ブテン-1,4-スルトン、1,5-ペンタンスルトン、1-フルオロ-1,5-ペンタンスルトン、2-フルオロ-1,5-ペンタンスルトン、3-フルオロ-1,5-ペンタンスルトン、4-フルオロ-1,5-ペンタンスルトン、5-フルオロ-1,5-ペンタンスルトン、1-メチル-1,5-ペンタンスルトン、2-メチル-1,5-ペンタンスルトン、3-メチル-1,5-ペンタンスルトン、4-メチル-1,5-ペンタンスルトン、5-メチル-1,5-ペンタンスルトン、1-ペンテン-1,5-スルトン、2-ペンテン-1,5-スルトン、3-ペンテン-1,5-スルトン、4-ペンテン-1,5-スルトン、1-フルオロ-1-ペンテン-1,5-スルトン、2-フルオロ-1-ペンテン-1,5-スルトン、3-フルオロ-1-ペンテン-1,5-スルトン、4-フルオロ-1-ペンテン-1,5-スルトン、5-フルオロ-1-ペンテン-1,5-スルトン、1-フルオロ-2-ペンテン-1,5-スルトン、2-フルオロ-2-ペンテン-1,5-スルトン、3-フルオロ-2-ペンテン-1,5-スルトン、4-フルオロ-2-ペンテン-1,5-スルトン、5-フルオロ-2-ペンテン-1,5-スルトン、1-フルオロ-3-ペンテン-1,5-スルトン、2-フルオロ-3-ペンテン-1,5-スルトン、3-フルオロ-3-ペンテン-1,5-スルトン、4-フルオロ-3-ペンテン-1,5-スルトン、5-フルオロ-3-ペンテン-1,5-スルトン、1-フルオロ-4-ペンテン-1,5-スルトン、2-フルオロ-4-ペンテン-1,5-スルトン、3-フルオロ-4-ペンテン-1,5-スルトン、4-フルオロ-4-ペンテン-1,5-スルトン、5-フルオロ-4-ペンテン-1,5-スルトン、1-メチル-1-ペンテン-1,5-スルトン、2-メチル-1-ペンテン-1,5-スルトン、3-メチル-1-ペンテン-1,5-スルトン、4-メチル-1-ペンテン-1,5-スルトン、5-メチル-1-ペンテン-1,5-スルトン、1-メチル-2-ペンテン-1,5-スルトン、2-メチル-2-ペンテン-1,5-スルトン、3-メチル-2-ペンテン-1,5-スルトン、4-メチル-2-ペンテン-1,5-スルトン、5-メチル-2-ペンテン-1,5-スルトン、1-メチル-3-ペンテン-1,5-スルトン、2-メチル-3-ペンテン-1,5-スルトン、3-メチル-3-ペンテン-1,5-スルトン、4-メチル-3-ペンテン-1,5-スルトン、5-メチル-3-ペンテン-1,5-スルトン、1-メチル-4-ペンテン-1,5-スルトン、2-メチル-4-ペンテン-1,5-スルトン、3-メチル-4-ペンテン-1,5-スルトン、4-メチル-4-ペンテン-1,5-スルトン、5-メチル-4-ペンテン-1,5-スルトン、1,2-オキサチオラン-2,2-ジオキシド-4-イル-アセテート、1,2-オキサチオラン-2,2-ジオキシド-4-イル-プロピオネート、5-メチル-1,2-オキサチオラン-2,2-ジオキシド-4-オン-2,2-ジオキシド、5,5-ジメチル-1,2-オキサチオラン-2,2-ジオキシド-4-オン-2,2-ジオキシドなどのスルトン化合物;
【0083】
メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネートなどのジスルホネート化合物;
1,2,3-オキサチアゾリジン-2,2-ジオキシド、3-メチル-1,2,3-オキサチアゾリジン-2,2-ジオキシド、3H-1,2,3-オキサチアゾール-2,2-ジオキシド、5H-1,2,3-オキサチアゾール-2,2-ジオキシド、1,2,4-オキサチアゾリジン-2,2-ジオキシド、4-メチル-1,2,4-オキサチアゾリジン-2,2-ジオキシド、3H-1,2,4-オキサチアゾール-2,2-ジオキシド、5H-1,2,4-オキサチアゾール-2,2-ジオキシド、1,2,5-オキサチアゾリジン-2,2-ジオキシド、5-メチル-1,2,5-オキサチアゾリジン-2,2-ジオキシド、3H-1,2,5-オキサチアゾール-2,2-ジオキシド、5H-1,2,5-オキサチアゾール-2,2-ジオキシド、1,2,3-オキサチアジナン-2,2-ジオキシド、3-メチル-1,2,3-オキサチアジナン-2,2-ジオキシド、5,6-ジヒドロ-1,2,3-オキサチアジン-2,2-ジオキシド、1,2,4-オキサチアジナン-2,2-ジオキシド、4-メチル-1,2,4-オキサチアジナン-2,2-ジオキシド、5,6-ジヒドロ-1,2,4-オキサチアジン-2,2-ジオキシド、3,6-ジヒドロ-1,2,4-オキサチアジン-2,2-ジオキシド、3,4-ジヒドロ-1,2,4-オキサチアジン-2,2-ジオキシド、1,2,5-オキサチアジナン-2,2-ジオキシド、5-メチル-1,2,5-オキサチアジナン-2,2-ジオキシド、5,6-ジヒドロ-1,2,5-オキサチアジン-2,2-ジオキシド、3,6-ジヒドロ-1,2,5-オキサチアジン-2,2-ジオキシド、3,4-ジヒドロ-1,2,5-オキサチアジン-2,2-ジオキシド、1,2,6-オキサチアジナン-2,2-ジオキシド、6-メチル-1,2,6-オキサチアジナン-2,2-ジオキシド、5,6-ジヒドロ-1,2,6-オキサチアジン-2,2-ジオキシド、3,4-ジヒドロ-1,2,6-オキサチアジン-2,2-ジオキシド、5,6-ジヒドロ-1,2,6-オキサチアジン-2,2-ジオキシドなどの含窒素化合物;
1,2,3-オキサチアホスラン-2,2-ジオキシド、3-メチル-1,2,3-オキサチアホスラン-2,2-ジオキシド、3-メチル-1,2,3-オキサチアホスラン-2,2,3-トリオキシド、3-メトキシ-1,2,3-オキサチアホスラン-2,2,3-トリオキシド、1,2,4-オキサチアホスラン-2,2-ジオキシド、4-メチル-1,2,4-オキサチアホスラン-2,2-ジオキシド、4-メチル-1,2,4-オキサチアホスラン-2,2,4-トリオキシド、4-メトキシ-1,2,4-オキサチアホスラン-2,2,4-トリオキシド、1,2,5-オキサチアホスラン-2,2-ジオキシド、5-メチル-1,2,5-オキサチアホスラン-2,2-ジオキシド、5-メチル-1,2,5-オキサチアホスラン-2,2,5-トリオキシド、5-メトキシ-1,2,5-オキサチアホスラン-2,2,5-トリオキシド、1,2,3-オキサチアホスフィナン-2,2-ジオキシド、3-メチル-1,2,3-オキサチアホスフィナン-2,2-ジオキシド、3-メチル-1,2,3-オキサチアホスフィナン-2,2,3-トリオキシド、3-メトキシ-1,2,3-オキサチアホスフィナン-2,2,3-トリオキシド、1,2,4-オキサチアホスフィナン-2,2-ジオキシド、4-メチル-1,2,4-オキサチアホスフィナン-2,2-ジオキシド、4-メチル-1,2,4-オキサチアホスフィナン-2,2,3-トリオキシド、4-メチル-1,5,2,4-ジオキサチアホスフィナン-2,4-ジオキシド、4-メトキシ-1,5,2,4-ジオキサチアホスフィナン-2,4-ジオキシド、3-メトキシ-1,2,4-オキサチアホスフィナン-2,2,3-トリオキシド、1,2,5-オキサチアホスフィナン-2,2-ジオキシド、5-メチル-1,2,5-オキサチアホスフィナン-2,2-ジオキシド、5-メチル-1,2,5-オキサチアホスフィナン-2,2,3-トリオキシド、5-メトキシ-1,2,5-オキサチアホスフィナン-2,2,3-トリオキシド、1,2,6-オキサチアホスフィナン-2,2-ジオキシド、6-メチル-1,2,6-オキサチアホスフィナン-2,2-ジオキシド、6-メチル-1,2,6-オキサチアホスフィナン-2,2,3-トリオキシド、6-メトキシ-1,2,6-オキサチアホスフィナン-2,2,3-トリオキシドなどの含リン化合物;
1,2-エチレンスルフェート、1,2-プロピレンスルフェート、1,3-プロピレンスルフェート、1,2-ブチレンスルフェート、1,3-ブチレンスルフェート、1,4-ブチレンスルフェート、1,2-ペンチレンスルフェート、1,3-ペンチレンスルフェート、1,4-ペンチレンスルフェート及び1,5-ペンチレンスルフェート、ビニレンスルフェートなどのアルキレンスルフェート化合物;
等が挙げられる。
【0084】
これらのうち、1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、2-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、3-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、1,4-ブタンスルトン、メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネート、1,2-エチレンスルフェート、1,2-プロピレンスルフェート又は1,3-プロピレンスルフェートが保存特性向上の点から好ましく、1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネート、1,2-エチレンスルフェート又は1,3-プロピレンスルフェートがより好ましい。
SO2基を有する環状化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。本実施形態の非水系電解液全体に対するSO2基を有する環状化合物の配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本実施形態の非水系電解液に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下の濃度で含有させる。上記範囲を満たした場合は、サイクル特性、高温保存特性等が向上し、かつ電池膨れが低下する観点で好ましい。
【0085】
<2-4-4.シアノ基を有する化合物>
本実施形態の非水系電解液において、用いることができるシアノ基を有する化合物としては、分子内にシアノ基を有している化合物であれば特にその種類は限定されないが、下記一般式(4)で表される化合物がより好ましい。シアノ基を有する化合物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
【化18】
【0086】
一般式(4)中、Tは、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選ばれる原子で構成された有機基を表し、Uは置換基を有してもよい炭素数1から10のV価の有機基である。Vは1以上の整数であり、Vが2以上の場合は、Tは互いに同一であっても異なっていてもよい。
シアノ基を有する化合物の分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。シアノ基を有する化合物の分子量は、通常40以上であり、好ましくは45以上、より好ましくは50以上であり、また、通常200以下、好ましくは180以下、より好ましくは170以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対するシアノ基を有する化合物の溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。
【0087】
一般式(4)で表される化合物の具体例としては、例えば、
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ラウロニトリル、2-メチルブチロニトリル、トリメチルアセトニトリル、ヘキサンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、3-メチルクロトノニトリル、2-メチル-2-ブテンニトリル、2-ペンテンニトリル、2-メチル-2-ペンテンニトリル、3-メチル-2-ペンテンニトリル、2-ヘキセンニトリル、フルオロアセトニトリル、ジフルオロアセトニトリル、トリフルオロアセトニトリル、2-フルオロプロピオニトリル、3-フルオロプロピオニトリル、2,2-ジフルオロプロピオニトリル、2,3-ジフルオロプロピオニトリル、3,3-ジフルオロプロピオニトリル、2,2,3-トリフルオロプロピオニトリル、3,3,3-トリフルオロプロピオニトリル、3,3’-オキシジプロピオニトリル、3,3’-チオジプロピオニトリル、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,3,5-ペンタントリカルボニトリル、ペンタフルオロプロピオニトリル等のシアノ基を1つ有する化合物;
マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、イソプロピルマロノニトリル、tert-ブチルマロノニトリル、メチルスクシノニトリル、2,2-ジメチルスクシノニトリル、2,3-ジメチルスクシノニトリル、トリメチルスクシノニトリル、テトラメチルスクシノニトリル、3,3’-(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、3,3’-(エチレンジチオ)ジプロピオニトリル等のシアノ基を2つ有する化合物;
1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン、トリス(2-シアノエチル)アミン等のシアノ基を3つ有する化合物;
メチルシアネート、エチルシアネート、プロピルシアネート、ブチルシアネート、ペンチルシアネート、ヘキシルシアネート、ヘプチルシアネートなどのシアネート化合物;
メチルチオシアネート、エチルチオシアネート、プロピルチオシアネート、ブチルチオシアネート、ペンチルチオシアネート、ヘキシルチオシアネート、ヘプチルチオシアネート、メタンスルホニルシアニド、エタンスルホニルシアニド、プロパンスルホニルシアニド、ブタンスルホニルシアニド、ペンタンスルホニルシアニド、ヘキサンスルホニルシアニド、ヘプタンスルホニルシアニド、メチルスルフロシアニダート、エチルスルフロシアニダート、プロピルスルフロシアニダート、ブチルスルフロシアニダート、ペンチルスルフロシアニダート、ヘキシルスルフロシアニダート、ヘプチルスルフロシアニダートなどの含硫黄化合物;
シアノジメチルホスフィン、シアノジメチルホスフィンオキシド、シアノメチルホスフィン酸メチル、シアノメチル亜ホスフィン酸メチル、ジメチルホスフィン酸シアニド、ジメチル亜ホスフィン酸シアニド、シアノホスホン酸ジメチル、シアノ亜ホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸シアノメチル、メチル亜ホスホン酸シアノメチル、リン酸シアノジメチル亜リン酸シアノジメチルなどの含リン化合物;
等が挙げられる。
【0088】
これらのうち、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ラウロニトリル、クロトノニトリル、3‐メチルクロトノニトリル、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル又はドデカンジニトリルが保存特性向上の点から好ましく、シアノ基を2つ有する、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、又はドデカンジニトリルがより好ましい。
シアノ基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。本実施形態の非水系電解液全体に対するシアノ基を有する化合物の含有量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本実施形態の非水系電解液に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下の濃度で含有させる。上記範囲を満たした場合は、入出力特性や充放電レート特性、サイクル特性、高温保存特性等の効果がより向上する。
【0089】
<2-4-5.イソシアネート化合物>
本実施形態の非水系電解液において、用いることができるイソシアネート基を有する化合物(以下、「イソシアネート化合物」と略記する場合もある。)としては、分子内にイソシアネート基を有している化合物であれば特にその種類は限定されない。イソシアネート化合物としては、分子内にイソシアネート基を2つ有しているジイソシアネート化合物が好ましい。
【0090】
<2-4-5-1.ジイソシアネート化合物>
本実施形態の非水系電解液において、用いることができるジイソシアネート化合物としては、分子内に、窒素原子をイソシアネート基にのみ有し、また、下記一般式(5)で表される化合物が好ましい。
【化19】
【0091】
上記一般式(5)において、Xは環状構造を含んでいてもよく、かつ炭素数1以上15以下の有機基である。Xの炭素数は、通常2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、また通常14以下、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。
上記一般式(5)中、Xは、炭素数4~6のシクロアルキレン基あるいは芳香族炭化水素基を1つ以上有する、炭素数4~15の有機基であることが特に好ましい。このとき、シクロアルキレン基上の水素原子はメチル基又はエチル基で置換されていてもよい。上記環状構造を有するジイソシアネート化合物は、立体的に嵩高いため分子であるため、正極上での副反応が起こりにくく、その結果サイクル特性ならびに高温保存特性が向上する。ここで、シクロアルキレン基あるいは芳香族炭化水素基に結合する基の結合部位は特段限定されず、メタ位、パラ位、オルト位のいずれであってもよいが、メタ位又はパラ位が、被膜間架橋距離が適切となることでリチウムイオン伝導性に有利となり、抵抗を低下させやすいために好ましい。また、シクロアルキレン基はシクロペンチレン基又はシクロへキシレン基であることが、ジイソシアネート化合物自体が副反応を起こしにくい観点で好ましく、シクロへキシレン基であることが、分子運動性の影響により抵抗を低下させやすいことからより好ましい。
また、シクロアルキレン基あるいは芳香族炭化水素基とイソシアネート基との間には炭素数1~3のアルキレン基を有していることが好ましい。アルキレン基を有することで立体的に嵩高くなるため、正極上での副反応が起こりにくくなる。さらにアルキレン基が炭素数1~3であれば全分子量に対するイソシアネート基の占める割合が大きく変化しないため、本発明の効果が顕著に発現しやすくなる。
上記一般式(5)で表されるジイソシアネート化合物の分子量は特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、通常80以上であり、好ましくは115以上、より好ましくは170以上であり、また、通常300以下であり、好ましくは230以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対するジイソシアネート化合物の溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。
【0092】
ジイソシアネート化合物の具体例としては、例えば、
1,2-ジイソシアナトシクロペンタン、1,3-ジイソシアナトシクロペンタン、1,2-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,2-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン-2,2′-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4′-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-3,3′-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4′-ジイソシアネート、等のシクロアルカン環含有ジイソシアネート類;
1,2-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレン-2,3-ジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,5-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、トリレン-3,4-ジイソシアネート、トリレン-3,5-ジイソシアネート、1,2-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、2,4-ジイソシアナトビフェニル、2,6-ジイソシアナトビフェニル、2,2′-ジイソシアナトビフェニル、3,3′-ジイソシアナトビフェニル、4,4′-ジイソシアナト-2-メチルビフェニル、4,4′-ジイソシアナト-3-メチルビフェニル、4,4′-ジイソシアナト-3,3′-ジメチルビフェニル、4,4′-ジイソシアナトジフェニルメタン、4,4′-ジイソシアナト-2-メチルジフェニルメタン、4,4′-ジイソシアナト-3-メチルジフェニルメタン、4,4′-ジイソシアナト-3,3′-ジメチルジフェニルメタン、1,5-ジイソシアナトナフタレン、1,8-ジイソシアナトナフタレン、2,3-ジイソシアナトナフタレン、1,5-ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、1,8-ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、2,3-ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン等の芳香環含有ジイソシアネート類;
などが挙げられる。
【0093】
これらの中でも、1,2-ジイソシアナトシクロペンタン、1,3-ジイソシアナトシクロペンタン、1,2-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,2-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1,2-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、2,4-ジイソシアナトビフェニル又は2,6-ジイソシアナトビフェニルが、負極上により緻密な複合的な被膜が形成され、その結果、電池耐久性が向上するため、好ましい。
これらの中でも、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1,2-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン又は1,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼンが、その分子の対称性から負極上にリチウムイオン伝導性に有利な被膜が形成され、その結果、電池特性がさらに向上するため、より好ましい。
また上述したジイソシアネート化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本実施形態の非水系電解液において、用いることができるジイソシアネート化合物の含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本実施形態の非水系電解液に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、また、通常5質量%以下、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。含有量が上記範囲内であると、サイクル、保存等の耐久性を向上でき、本発明の効果を十分に発揮できる。
尚、ジイソシアネート化合物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。また、市販品を用いてもよい。
【0094】
<2-4-5-2.ジイソシアネート化合物以外のイソシアネート化合物>
本実施形態の非水系電解液は、ジイソシアネート化合物以外のイソシアネート化合物を含んでもよい。以下、本実施形態の非水系電解液において、用いることができるジイソシアネート化合物以外のイソシアネート化合物を具体例を挙げて説明する。
イソシアネート化合物の具体例としては、例えば、
メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、t-ブチルイソシアネート、ペンチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、フロロフェニルイソシアネートなどの炭化水素系モノイソシアネート化合物;
ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、エチニルイソシアネート、プロピニルイソシアネートなどの炭素-炭素不飽和結合を有するモノイソシアネート化合物;
(オルト-、メタ-、パラ-)トルエンスルホニルイソシアネート、ベンゼンスルホニルイソシアネート、フルオロスルホニルイソシアネート、フェノキシスルホニルイソシアネート、ペンタフルオロフェノキシスルホニルイソシアネート、メトキシスルホニルイソシアネートなどのイソシアネート化合物;
等が挙げられる。
以上説明したイソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本実施形態の非水系電解液全体に対するイソシアネート化合物の配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。前記配合量は、本実施形態の非水系電解液に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下である。含有量が上記範囲内であると、サイクル、保存等の耐久性を向上でき、本発明の効果を十分に発揮できる。
尚、イソシアネート化合物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。また、市販品を用いてもよい。
【0095】
<2-4-6.カルボン酸無水物>
本実施形態の非水系電解液において、用いることができるカルボン酸無水物としては、下記一般式(6)で表される化合物が好ましい。カルボン酸無水物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
【化20】
【0096】
(一般式(6)中、R9及びR10はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい、炭素数1以上15以下の炭化水素基を表す。R9及びR10が互いに結合して、環状構造を形成していてもよい。)
R9及びR10は、一価の炭化水素基であれば、その種類は特に制限されない。例えば、脂肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合したものであってもよい。脂肪族炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和結合(炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合)を含んでいてもよい。また、脂肪族炭化水素基は、鎖状であっても環状であってもよく、鎖状の場合は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。さらには、鎖状と環状とが結合したものであってもよい。なお、R9及びR10は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、R9及びR10が互いに結合して環状構造を形成する場合、R9及びR10が互いに結合して構成された炭化水素基は二価である。二価の炭化水素基の種類は特に制限されない。即ち、脂肪族基でも芳香族基でもよく、脂肪族基と芳香族基とが結合したものでもよい。脂肪族基の場合、飽和基でも不飽和基でもよい。また、鎖状基でも環状基でもよく、鎖状基の場合は直鎖状基でも分岐鎖状基でもよい。さらには鎖状基と環状基とが結合したものでもよい。
また、R9及びR10の炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基の種類は、本発明の趣旨に反するものでない限り特に制限されないが、例としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子である。又はロゲン原子以外の置換基として、エステル基、シアノ基、カルボニル基、エーテル基等の官能基を有する置換基なども挙げられ、好ましくはシアノ基、カルボニル基である。R9及びR10の炭化水素基は、これらの置換基を一つのみ有していてもよく、二つ以上有していてもよい。二つ以上の置換基を有する場合、それらの置換基は同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
R9及びR10の各々の炭化水素基の炭素数は、通常1以上であり、また通常15以下、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは9以下である。R9とR10とが互いに結合して二価の炭化水素基を形成している場合は、その二価の炭化水素基の炭素数が、通常1以上であり、また通常15以下、好ましくは13以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。尚、R9及びR10の炭化水素基が炭素原子を含有する置換基を有する場合は、その置換基も含めたR9及びR10全体の炭素数が上記範囲を満たしていることが好ましい。
【0097】
次いで、上記一般式(6)で表わされるカルボン酸無水物(以下、「酸無水物」と略記することもある。)の具体例について説明する。なお、以下の例示において「類縁体」とは、例示される酸無水物の構造の一部を、本発明の趣旨に反しない範囲で、別の構造に置き換えることにより得られる酸無水物を指すもので、例えば複数の酸無水物からなる二量体、三量体及び四量体など、又は、置換基の炭素数が同じではあるが分岐鎖を有するなど構造異性のもの、置換基が酸無水物に結合する部位が異なるものなどが挙げられる。
まず、R9及びR10が同一である酸無水物の具体例を以下に挙げる。
R9及びR10が鎖状アルキル基である酸無水物の具体例としては、無水酢酸、プロピオン酸無水物、ブタン酸無水物、2-メチルプロピオン酸無水物、2,2-ジメチルプロピオン酸無水物、2-メチルブタン酸無水物、3-メチルブタン酸無水物、2,2-ジメチルブタン酸無水物、2,3-ジメチルブタン酸無水物、3,3-ジメチルブタン酸無水物、2,2,3-トリメチルブタン酸無水物、2,3,3-トリメチルブタン酸無水物、2,2,3,3-テトラメチルブタン酸無水物、2-エチルブタン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R9及びR10が環状アルキル基である酸無水物の具体例としては、シクロプロパンカルボン酸無水物、シクロペンタンカルボン酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R9及びR10がアルケニル基である酸無水物の具体例としては、アクリル酸無水物、2-メチルアクリル酸無水物、3-メチルアクリル酸無水物、2,3-ジメチルアクリル酸無水物、3,3-ジメチルアクリル酸無水物、2,3,3-トリメチルアクリル酸無水物、2-フェニルアクリル酸無水物、3-フェニルアクリル酸無水物、2,3-ジフェニルアクリル酸無水物、3,3-ジフェニルアクリル酸無水物、3-ブテン酸無水物、2-メチル-3-ブテン酸無水物、2,2-ジメチル-3-ブテン酸無水物、3-メチル-3-ブテン酸無水物、2-メチル-3-メチル-3-ブテン酸無水物、2,2-ジメチル-3-メチル-3-ブテン酸無水物、3-ペンテン酸無水物、4-ペンテン酸無水物、2-シクロペンテンカルボン酸無水物、3-シクロペンテンカルボン酸無水物、4-シクロペンテンカルボン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R9及びR10がアルキニル基である酸無水物の具体例としては、プロピン酸無水物、3-フェニルプロピン酸無水物、2-ブチン酸無水物、2-ペンチン酸無水物、3-ブチン酸無水物、3-ペンチン酸無水物、4-ペンチン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R9及びR10がアリール基である酸無水物の具体例としては、安息香酸無水物、4-メチル安息香酸無水物、4-エチル安息香酸無水物、4-tert-ブチル安息香酸無水物、2-メチル安息香酸無水物、2,4,6-トリメチル安息香酸無水物、1-ナフタレンカルボン酸無水物、2-ナフタレンカルボン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
また、R9及びR10がハロゲン原子で置換された酸無水物の例として、主にフッ素原子で置換された酸無水物の例を以下に挙げるが、これらのフッ素原子の一部又は全部を塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子に置換して得られる酸無水物も、例示化合物に含まれるものとする。
R9及びR10がハロゲン原子で置換された鎖状アルキル基である酸無水物の例としては、フルオロ酢酸無水物、ジフルオロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、2-フルオロプロピオン酸無水物、2,2-ジフルオロプロピオン酸無水物、2,3-ジフルオロプロピオン酸無水物、2,2,3-トリフルオロプロピオン酸無水物、2,3,3-トリフルオロプロピオン酸無水物、2,2,3,3-テトラプロピオン酸無水物、2,3,3,3-テトラプロピオン酸無水物、3-フルオロプロピオン酸無水物、3,3-ジフルオロプロピオン酸無水物、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸無水物、パーフルオロプロピオン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R9及びR10がハロゲン原子で置換された環状アルキル基である酸無水物の例としては、2-フルオロシクロペンタンカルボン酸無水物、3-フルオロシクロペンタンカルボン酸無水物、4-フルオロシクロペンタンカルボン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる
R9及びR10がハロゲン原子で置換されたアルケニル基である酸無水物の例としては、2-フルオロアクリル酸無水物、3-フルオロアクリル酸無水物、2,3-ジフルオロアクリル酸無水物、3,3-ジフルオロアクリル酸無水物、2,3,3-トリフルオロアクリル酸無水物、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸無水物、3-(トリフルオロメチル)アクリル酸無水物、2,3-ビス(トリフルオロメチル)アクリル酸無水物、2,3,3-トリス(トリフルオロメチル)アクリル酸無水物、2-(4-フルオロフェニル)アクリル酸無水物、3-(4-フルオロフェニル)アクリル酸無水物、2,3-ビス(4-フルオロフェニル)アクリル酸無水物、3,3-ビス(4-フルオロフェニル)アクリル酸無水物、2-フルオロ-3-ブテン酸無水物、2,2-ジフルオロ-3-ブテン酸無水物、3-フルオロ-2-ブテン酸無水物、4-フルオロ-3-ブテン酸無水物、3,4-ジフルオロ-3-ブテン酸無水物、3,3,4-トリフルオロ-3-ブテン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R9及びR10がハロゲン原子で置換されたアルキニル基である酸無水物の例としては、3-フルオロ-2-プロピン酸無水物、3-(4-フルオロフェニル)-2-プロピン酸無水物、3-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)-2-プロピン酸無水物、4-フルオロ-2-ブチン酸無水物、4,4-ジフルオロ-2-ブチン酸無水物、4,4,4-トリフルオロ-2-ブチン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R9及びR10がハロゲン原子で置換されたアリール基である酸無水物の例としては、4-フルオロ安息香酸無水物、2,3,4,5,6-ペンタフルオロ安息香酸無水物、4-トリフルオロメチル安息香酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R9及びR10がエステル、ニトリル、ケトン、エーテルなどの官能基を有する置換基を有している酸無水物の例としては、メトキシギ酸無水物、エトキシギ酸無水物、メチルシュウ酸無水物、エチルシュウ酸無水物、2-シアノ酢酸無水物、2-オキソプロピオン酸無水物、3-オキソブタン酸無水物、4-アセチル安息香酸無水物、メトキシ酢酸無水物、4-メトキシ安息香酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
【0098】
続いて、R9及びR10が互いに異なる酸無水物の具体例を以下に挙げる。
R9及びR10としては上に挙げた例、及びそれらの類縁体の全ての組み合わせが考えられるが、以下に代表的な例を挙げる。
鎖状アルキル基同士の組み合わせの例としては、酢酸プロピオン酸無水物、酢酸ブタン酸無水物、ブタン酸プロピオン酸無水物、酢酸2-メチルプロピオン酸無水物、
などが挙げられる。
鎖状アルキル基と環状アルキル基の組み合わせの例としては、酢酸シクロペンタン酸無水物、酢酸シクロヘキサン酸無水物、シクロペンタン酸プロピオン酸無水物、などが挙げられる。
鎖状アルキル基とアルケニル基の組み合わせの例としては、酢酸アクリル酸無水物、酢酸3-メチルアクリル酸無水物、酢酸3-ブテン酸無水物、アクリル酸プロピオン酸無水物、などが挙げられる。
鎖状アルキル基とアルキニル基の組み合わせの例としては、酢酸プロピン酸無水物、酢酸2-ブチン酸無水物、酢酸3-ブチン酸無水物、酢酸3-フェニルプロピン酸無水物、プロピオン酸プロピン酸無水物、などが挙げられる。
鎖状アルキル基とアリール基の組み合わせの例としては、酢酸安息香酸無水物、酢酸4-メチル安息香酸無水物、酢酸1-ナフタレンカルボン酸無水物、安息香酸プロピオン酸無水物、などが挙げられる。
鎖状アルキル基と官能基を有する炭化水素基の組み合わせの例としては、酢酸フルオロ酢酸無水物、酢酸トリフルオロ酢酸無水物、酢酸4-フルオロ安息香酸無水物、フルオロ酢酸プロピオン酸無水物、酢酸アルキルシュウ酸無水物、酢酸2-シアノ酢酸無水物、酢酸2-オキソプロピオン酸無水物、酢酸メトキシ酢酸無水物、メトキシ酢酸プロピオン酸無水物、などが挙げられる。
【0099】
環状アルキル基同士の組み合わせの例としては、シクロペンタン酸シクロヘキサン酸無水物、などが挙げられる。
環状アルキル基とアルケニル基の組み合わせの例としては、アクリル酸シクロペンタン酸無水物、3-メチルアクリル酸シクロペンタン酸無水物、3-ブテン酸シクロペンタン酸無水物、アクリル酸シクロヘキサン酸無水物、などが挙げられる。
環状アルキル基とアルキニル基の組み合わせの例としては、プロピン酸シクロペンタン酸無水物、2-ブチン酸シクロペンタン酸無水物、プロピン酸シクロヘキサン酸無水物、などが挙げられる。
環状アルキル基とアリール基の組み合わせの例としては、安息香酸シクロペンタン酸無水物、4-メチル安息香酸シクロペンタン酸無水物、安息香酸シクロヘキサン酸無水物、などが挙げられる。
環状アルキル基と官能基を有する炭化水素基の組み合わせの例としては、フルオロ酢酸シクロペンタン酸無水物、シクロペンタン酸トリフルオロ酢酸無水物、シクロペンタン酸2-シアノ酢酸無水物、シクロペンタン酸メトキシ酢酸無水物、シクロヘキサン酸フルオロ酢酸無水物、などが挙げられる。
【0100】
アルケニル基同士の組み合わせの例としては、アクリル酸2-メチルアクリル酸無水物、アクリル酸3-メチルアクリル酸無水物、アクリル酸3-ブテン酸無水物、2-メチルアクリル酸3-メチルアクリル酸無水物、などが挙げられる。
アルケニル基とアルキニル基の組み合わせの例としては、アクリル酸プロピン酸無水物、アクリル酸2-ブチン酸無水物、2-メチルアクリル酸プロピン酸無水物、などが挙げられる。
アルケニル基とアリール基の組み合わせの例としては、アクリル酸安息香酸無水物、アクリル酸4-メチル安息香酸無水物、2-メチルアクリル酸安息香酸無水物、などが挙げられる。
アルケニル基と官能基を有する炭化水素基の組み合わせの例としては、アクリル酸フルオロ酢酸無水物、アクリル酸トリフルオロ酢酸無水物、アクリル酸2-シアノ酢酸無水物、アクリル酸メトキシ酢酸無水物、2-メチルアクリル酸フルオロ酢酸無水物、などが挙げられる。
【0101】
アルキニル基同士の組み合わせの例としては、プロピン酸2-ブチン酸無水物、プロピン酸3-ブチン酸無水物、2-ブチン酸3-ブチン酸無水物、などが挙げられる。
アルキニル基とアリール基の組み合わせの例としては、安息香酸プロピン酸無水物、4-メチル安息香酸プロピン酸無水物、安息香酸2-ブチン酸無水物、などが挙げられる。
アルキニル基と官能基を有する炭化水素基の組み合わせの例としては、プロピン酸フルオロ酢酸無水物、プロピン酸トリフルオロ酢酸無水物、プロピン酸2-シアノ酢酸無水物、プロピン酸メトキシ酢酸無水物、2-ブチン酸フルオロ酢酸無水物、などが挙げられる。
【0102】
アリール基同士の組み合わせの例としては、安息香酸4-メチル安息香酸無水物、安息香酸1-ナフタレンカルボン酸無水物、4-メチル安息香酸1-ナフタレンカルボン酸無水物、などが挙げられる。
アリール基と官能基を有する炭化水素基の組み合わせの例としては、安息香酸フルオロ酢酸無水物、安息香酸トリフルオロ酢酸無水物、安息香酸2-シアノ酢酸無水物、安息香酸メトキシ酢酸無水物、4-メチル安息香酸フルオロ酢酸無水物、などが挙げられる。
【0103】
官能基を有する炭化水素基同士の組み合わせの例としては、フルオロ酢酸トリフルオロ酢酸無水物、フルオロ酢酸2-シアノ酢酸無水物、フルオロ酢酸メトキシ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸2-シアノ酢酸無水物、などが挙げられる。
上記の鎖状構造を形成している酸無水物のうち好ましくは、
無水酢酸、プロピオン酸無水物、2-メチルプロピオン酸無水物、シクロペンタンカルボン酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物等、アクリル酸無水物、2-メチルアクリル酸無水物、3-メチルアクリル酸無水物、2,3-ジメチルアクリル酸無水物、3,3-ジメチルアクリル酸無水物、3-ブテン酸無水物、2-メチル-3-ブテン酸無水物、プロピン酸無水物、2-ブチン酸無水物、安息香酸無水物、2-メチル安息香酸無水物、4-メチル安息香酸無水物、4-tert-ブチル安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸無水物、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸無水物、2-(4-フルオロフェニル)アクリル酸無水物、4-フルオロ安息香酸無水物、2,3,4,5,6-ペンタフルオロ安息香酸無水物、メトキシギ酸無水物、エトキシギ酸無水物、
であり、より好ましくは、
アクリル酸無水物、2-メチルアクリル酸無水物、3-メチルアクリル酸無水物、安息香酸無水物、2-メチル安息香酸無水物、4-メチル安息香酸無水物、4-tert-ブチル安息香酸無水物、4-フルオロ安息香酸無水物、2,3,4,5,6-ペンタフルオロ安息香酸無水物、メトキシギ酸無水物、エトキシギ酸無水物である。
これらの化合物は、適切にリチウムオキサラート塩との結合を形成して耐久性に優れる被膜を形成することで、特に耐久試験後の充放電レート特性、入出力特性、インピーダンス特性を向上させることができる観点で好ましい。
【0104】
続いて、R9とR10とが互いに結合して環状構造を形成している酸無水物の具体例を以下に挙げる。
まず、R9とR10とが互いに結合して5員環構造を形成している酸無水物の具体例としては、無水コハク酸、4-メチルコハク酸無水物、4,4-ジメチルコハク酸無水物、4,5-ジメチルコハク酸無水物、4,4,5-トリメチルコハク酸無水物、4,4,5,5-テトラメチルコハク酸無水物、4-ビニルコハク酸無水物、4,5-ジビニルコハク酸無水物、4-フェニルコハク酸無水物、4,5-ジフェニルコハク酸無水物、4,4-ジフェニルコハク酸無水物、シトラコン酸無水物、無水マレイン酸、4-メチルマレイン酸無水物、4,5-ジメチルマレイン酸無水物、4-フェニルマレイン酸無水物、4,5-ジフェニルマレイン酸無水物、イタコン酸無水物、5-メチルイタコン酸無水物、5,5-ジメチルイタコン酸無水物、無水フタル酸、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R9とR10とが互いに結合して6員環構造を形成している酸無水物の具体例としては、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、グルタル酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R9とR10とが互いに結合してその他の環状構造を形成している酸無水物の具体例としては、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、ジグリコール酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R9とR10とが互いに結合して環状構造を形成するとともに、ハロゲン原子で置換された酸無水物の具体例としては、4-フルオロコハク酸無水物、4,4-ジフルオロコハク酸無水物、4,5-ジフルオロコハク酸無水物、4,4,5-トリフルオロコハク酸無水物、4,4,5,5-テトラフルオロコハク酸無水物、4-フルオロマレイン酸無水物、4,5-ジフルオロマレイン酸無水物、5-フルオロイタコン酸無水物、5,5-ジフルオロイタコン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
上記のR9とR10とが結合している酸無水物のうち好ましくは、
無水コハク酸、4-メチルコハク酸無水物、4-ビニルコハク酸無水物、4-フェニルコハク酸無水物、シトラコン酸無水物、無水マレイン酸、4-メチルマレイン酸無水物、4-フェニルマレイン酸無水物、イタコン酸無水物、5-メチルイタコン酸無水物、グルタル酸無水物、無水フタル酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、4-フルオロコハク酸無水物、4-フルオロマレイン酸無水物、5-フルオロイタコン酸無水物、
であり、より好ましくは、
無水コハク酸、4-メチルコハク酸無水物、4-ビニルコハク酸無水物、シトラコン酸無水物、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、4-フルオロコハク酸無水物である。これらの化合物は、適切にリチウムオキサラート塩との結合を形成して耐久性に優れる被膜を形成することで、特に耐久試験後の容量維持率が向上するために好ましい。
【0105】
なお、カルボン酸無水物の分子量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常90以上、好ましくは95以上であり、一方、通常300以下、好ましくは200以下である。カルボン酸無水物の分子量が上記範囲内であると、電解液の粘度上昇を抑制でき、かつ被膜密度が適正化されるために耐久性を適切に向上することができる。
また、前記カルボン酸無水物の製造方法にも特に制限は無く、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。以上説明したカルボン酸無水物は、本実施形態の非水系電解液中に、何れか1種を単独で含有させてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有させてもよい。
また、本実施形態の非水系電解液に対するカルボン酸無水物の含有量に特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、また、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下の濃度で含有させることが望ましい。カルボン酸無水物の含有量が上記範囲内であると、サイクル特性向上効果が発現しやすくなり、また反応性が好適であるため電池特性が向上しやすくなる。
【0106】
<2-4-7.過充電防止剤>
本実施形態の非水系電解液において、非水系電解液二次電池が過充電等の状態になった際に電池の破裂・発火を効果的に抑制するために、過充電防止剤を用いることができる。
過充電防止剤としては、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン、ジフェニルシクロヘキサン、1,1,3-トリメチル-3-フェニルインダン等の芳香族化合物;2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼン等の上記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソール、3,5-ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等;3-プロピルフェニルアセテート、2-エチルフェニルアセテート、ベンジルフェニルアセテート、メチルフェニルアセテート、ベンジルアセテート、フェネチルフェニルアセテート等の芳香族アセテート類;ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート等の芳香族カーボネート類が挙げられる。中でも、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン、ジフェニルシクロヘキサン、1,1,3-トリメチル-3-フェニルインダン、3-プロピルフェニルアセテート、2-エチルフェニルアセテート、ベンジルフェニルアセテート、メチルフェニルアセテート、ベンジルアセテート、フェネチルフェニルアセテート、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネートが好ましい。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合は、特に、シクロヘキシルベンゼンとt-ブチルベンゼン又はt-アミルベンゼンとの組み合わせ、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン等の酸素を含有しない芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種と、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の含酸素芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種を併用するのが、過充電防止特性と高温保存特性のバランスの点から好ましい。
過充電防止剤の含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。過充電防止剤の含有量は、非水系電解液100質量%中、通常0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは4.8質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下である。この範囲であれば、過充電防止剤の効果を十分に発現させやすく、また、高温保存特性等の電池の特性が向上する。
【0107】
<2-4-8.その他の助剤>
本実施形態の非水系電解液には、公知のその他の助剤を用いることができる。その他の助剤としては、
エリスリタンカーボネート、スピロ-ビス-ジメチレンカーボネート、メトキシエチル-メチルカーボネート等のカーボネート化合物;
メチル-2-プロピニルオギザレート、エチル-2-プロピニルオギザレート、ビス(2-プロピニル)オギザレート、2-プロピニルアセテート、2-プロピニルホルメート、2-プロピニルメタクリレート、ジ(2-プロピニル)グルタレート、メチル-2-プロピニルカーボネート、エチル-2-プロピニルカーボネート、ビス(2-プロピニル)カーボネート、2-ブチン-1,4-ジイル-ジメタンスルホネート、2-ブチン-1,4-ジイル-ジエタンスルホネート、2-ブチン-1,4-ジイル-ジホルメート、2-ブチン-1,4-ジイル-ジアセテート、2-ブチン-1,4-ジイル-ジプロピオネート、4-ヘキサジイン-1,6-ジイル-ジメタンスルホネート、2-プロピニル-メタンスルホネート、1-メチル-2-プロピニル-メタンスルホネート、1,1-ジメチル-2-プロピニル-メタンスルホネート、2-プロピニル-エタンスルホネート、2-プロピニル-ビニルスルホネート、2-プロピニル-2-(ジエトキシホスホリル)アセテート、1-メチル-2-プロピニル-2-(ジエトキシホスホリル)アセテート、1,1-ジメチル-2-プロピニル-2-(ジエトキシホスホリル)アセテート等の三重結合含有化合物;
2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ジビニル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のスピロ化合物;
エチレンサルファイト、フルオロスルホン酸メチル、フルオロスルホン酸エチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ブスルファン、スルホレン、ジフェニルスルホン、N,N-ジメチルメタンスルホンアミド、N,N-ジエチルメタンスルホンアミド、メチル硫酸トリメチルシリル、エチル硫酸トリメチルシリル、2-プロピニル-トリメチルシリルスルフェート等の含硫黄化合物;
2-イソシアナトエチルアクリレート、2-イソシアナトエチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルクロトネート、2-(2-イソシアナトエトキシ)エチルアクリレート、2-(2-イソシアナトエトキシ)エチルメタクリレート、2-(2-イソシアナトエトキシ)エチルクロトネート等のイソシアネート化合物;
1-メチル-2-ピロリジノン、1-メチル-2-ピペリドン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン及びN-メチルスクシンイミド等の含窒素化合物;
ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物;
フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド、ペンタフルオロフェニルメタンスルホネート、ペンタフルオロフェニルトリフルオロメタンスルホネート、酢酸ペンタフルオロフェニル、トリフルオロ酢酸ペンタフルオロフェニル、メチルペンタフルオロフェニルカーボネート等の含フッ素芳香族化合物;
ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、ホウ酸トリス(トリメトキシシリル)、リン酸トリス(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリメトキシシリル)、ジメトキシアルミノキシトリメトキシシラン、ジエトキシアルミノキシトリエトキシシラン、ジプロポキシアルミノキシトリエトキシシラン、ジブトキシアルミノキシトリメトキシシラン、ジブトキシアルミノキシトリエトキシシラン、チタンテトラキス(トリメチルシロキシド)、チタンテトラキス(トリエチルシロキシド)等のシラン化合物;
2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2-プロピニル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2-メチル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2-エチル、メタンスルホニルオキシ酢酸2-プロピニル、メタンスルホニルオキシ酢酸2-メチル、メタンスルホニルオキシ酢酸2-エチル等のエステル化合物;
リチウムエチルメチルオキシカルボニルホスホネート、リチウムエチルエチルオキシカルボニルホスホネート、リチウムエチル-2-プロピニルオキシカルボニルホスホネート、リチウムエチル-1-メチル-2-プロピニルオキシカルボニルホスホネート、リチウムエチル-1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシカルボニルホスホネート等のリチウム塩;
等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの助剤を添加することにより、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。
その他の助剤の含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その他の助剤の含有量は、非水系電解液100質量%中、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。この範囲であれば、その他助剤の効果が十分に発現させやすく、高負荷放電特性等の電池の特性が向上する。
【0108】
以上に記載してきた非水系電解液は、本発明の一実施形態に係る非水系電解液二次電池などのエネルギーデバイスの内部に存在するものも含まれる。具体的には、リチウム塩や溶媒、助剤等の非水系電解液の構成要素を別途合成し、実質的に単離されたものから非水系電解液を調製し、下記に記載する方法にて別途組み立てた電池内に注液して得た非水系電解液二次電池内の非水系電解液である場合や、本実施形態の非水系電解液の構成要素を個別に電池内に入れておき、非水系電解液二次電池内にて混合させることにより本実施形態の非水系電解液と同じ組成を得る場合、さらには、本実施形態の非水系電解液を構成する化合物を該非水系電解液二次電池内で発生させて、本実施形態の非水系電解液と同じ組成を得る場合も含まれるものとする。
【0109】
<2-5.非水系電解液の製造方法>
本実施形態の非水系電解液は、前述の非水溶媒に、電解質と、一般式(a1)及び(a2)で表される化合物と、必要に応じて前述の「助剤」などを溶解することにより調製することができる。
非水系電解液を調製するに際しては、非水系電解液の各原料、すなわち、リチウム塩等の電解質、一般式(a1)及び(a2)で表される化合物、非水溶媒、助剤等は、予め脱水しておくことが好ましい。脱水の程度としては、通常50ppm以下、好ましくは30ppm以下となるまで脱水することが望ましい。
非水系電解液中の水分を除去することで、水の電気分解、水とリチウム金属との反応、リチウム塩の加水分解等が生じ難くなる。脱水の手段としては特に制限はないが、例えば、脱水する対象が非水溶媒等の液体の場合は、モレキュラーシーブ等の乾燥剤を用いればよい。また脱水する対象が電解質等の固体の場合は、分解が起きる温度未満で加熱して乾燥させればよい。
【0110】
3.非水系電解液を用いたエネルギーデバイス
本発明の第一実施形態又は第二実施形態の非水系電解液を用いたエネルギーデバイスは、金属イオンを吸蔵又は放出可能な複数の電極と、以上説明した本発明の非水系電解液とを備えるものである。エネルギーデバイスの種類としては、一次電池、二次電池、リチウムイオンキャパシタをはじめとする金属イオンキャパシタが具体例として挙げられる。中でも、一次電池又は二次電池が好ましく、二次電池が特に好ましい。なお、これらのエネルギーデバイスに用いられる非水系電解液は、高分子やフィラー等で疑似的に固体化された、所謂ゲル電解質であることも好ましい。以下、当該エネルギーデバイスについて説明する。
【0111】
<3-1.非水系電解液二次電池>
<3-1-1.電池構成>
本発明の第一実施形態及び第二実施形態に係る非水系電解液二次電池(以下、本発明の非水系二次電池とも記載する)は、非水系電解液以外の構成については、従来公知の非水系電解液二次電池と同様であり、通常は、本発明の非水系電解液が含浸されている多孔膜(セパレータ)を介して正極と負極とが積層され、これらがケース(外装体)に収納された形態を有する。従って、本発明の非水系電解液二次電池の形状は特に制限されるものではなく、円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等のいずれであってもよい。
【0112】
<3-1-2.非水系電解液>
非水系電解液としては、上述の本発明の非水系電解液を用いる。なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、本発明の非水系電解液に対し、その他の非水系電解液を混合して用いることも可能である。
【0113】
<3-1-3.負極>
負極に使用される負極活物質としては、電気化学的に金属イオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。その具体例としては、炭素質材料、金属化合物系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。これら1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて併用してもよい。
なかでも、炭素質材料及び金属化合物系材料が好ましい。金属化合物系材料の中では、ケイ素を含む材料が好ましく、したがって負極活物質としては、炭素質材料及びケイ素を含む材料が特に好ましい。
【0114】
<3-1-3-1.炭素質材料>
負極活物質として用いられる炭素質材料としては、特に限定されないが、下記(ア)~(エ)から選ばれるものが、初期不可逆容量、高電流密度充放電特性のバランスがよい二次電池を与えるので好ましい。
(ア)天然黒鉛
(イ)人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質を400℃から3200℃の範囲で1回以上熱処理して得られた炭素質材料
(ウ)負極活物質層が少なくとも2種類の異なる結晶性を有する炭素質から成り立ち、かつ/又はその異なる結晶性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料
(エ)負極活物質層が少なくとも2種類の異なる配向性を有する炭素質から成り立ち、かつ/又はその異なる配向性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料
(ア)~(エ)の炭素質材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記(イ)における人造炭素質物質又は人造黒鉛質物質の具体例としては、天然黒鉛、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチ及びこれらピッチを酸化処理したもの;
ニードルコークス、ピッチコークス及びこれらを一部黒鉛化した炭素材;
ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解物;
炭化可能な有機物及びこれらの炭化物;並びに、
炭化可能な有機物をベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n-へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液状の炭化物などが挙げられる。
その他、上記(ア)~(エ)の炭素質材料はいずれも従来公知であり、その製造方法は当業者によく知られており、またこれらの市販品を購入することもできる。
【0115】
<3-1-3-2.金属化合物系材料>
負極活物質として用いられる金属化合物系材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、特に限定されず、リチウムと合金を形成する単体金属若しくは合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硫化物、燐化物等の化合物が使用できる。このような金属化合物としては、Ag、Al、Ba、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、Sr、Zn等の金属を含有する化合物が挙げられる。なかでも、リチウムと合金を形成する単体金属若しくは合金であることが好ましく、周期表13族又は14族の金属・半金属元素(すなわち炭素を除く。また以降では、金属及び半金属をまとめて「金属」と呼ぶ。)を含む材料であることがより好ましく、更には、ケイ素(Si)、スズ(Sn)又は鉛(Pb)(以下、これら3種の元素を「SSP金属元素」という場合がある)の単体金属若しくはこれら原子を含む合金、又は、それらの金属(SSP金属元素)の化合物であることが好ましい。特に好ましいのはケイ素を含む化合物である。これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0116】
<3-1-3-3.リチウム含有金属複合酸化物材料>
負極活物質として用いられるリチウム含有金属複合酸化物材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば特に限定はされないが、チタンを含むリチウム含有複合金属酸化物材料が好ましく、リチウムとチタンの複合酸化物(以下、「リチウムチタン複合酸化物」と略記する場合がある。)が特に好ましい。すなわち、スピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物を、リチウムイオン非水系電解液二次電池用負極活物質に含有させて用いると、二次電池の出力抵抗が大きく低減するので特に好ましい。
また、リチウムチタン複合酸化物のリチウムやチタンが、他の金属元素、例えば、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で置換されているものも好ましい。
負極活物質として好ましいリチウムチタン複合酸化物としては、下記一般式(7)で表されるリチウムチタン複合酸化物が挙げられる。
LixTiyMzO4 (7)
(一般式(7)中、Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。また、一般式(7)中、0.7≦x≦1.5、1.5≦y≦2.3、0≦z≦1.6であることが、リチウムイオンのドープ・脱ドープの際の構造が安定であることから好ましい。)
【0117】
<3-1-3-4.負極の構成、物性、調製方法>
上記活物質材料を含有する負極及び電極化手法、集電体については、公知の技術構成を採用することができるが、次に示す(i)~(vi)のいずれか1項目又は複数の項目を同時に満たしていることが望ましい。
【0118】
(i)負極作製
負極の製造は、本発明の効果を著しく制限しない限り、公知のいずれの方法をも用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリー状の負極形成材料とし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって、負極活物質層を形成することができる。
【0119】
(ii)集電体
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
また、集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも、好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、更に好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔である。
【0120】
(iii)集電体と負極活物質層の厚さの比
集電体と負極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、「(非水系電解液の注液工程の直前の片面の負極活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)」の値が、150以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が特に好ましく、また、0.1以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、1以上が特に好ましい。
集電体と負極活物質層の厚さの比が、上記範囲を上回ると、二次電池の高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、二次電池の容量が減少する場合がある。
【0121】
(iv)電極密度
負極活物質を電極化した際の電極構造は、特には限定されず、集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm-3以上が好ましく、1.2g・cm-3以上がより好ましく、1.3g・cm-3以上が更に好ましく、また、4g・cm-3以下が好ましく、3g・cm-3以下がより好ましく、2.5g・cm-3以下が更に好ましく、1.7g・cm-3以下が特に好ましい。集電体上に存在している負極活物質の密度が、上記範囲内であると、負極活物質粒子が破壊されにくく、二次電池の初期不可逆容量の増加や、集電体/負極活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を防ぎ易くなる。さらに、負極活物質間の導電性を確保することができ、電池抵抗が増大することなく、単位容積当たりの容量を稼ぐことができる。
【0122】
(v)バインダー・溶媒等
負極活物質層を形成するためのスラリーは、通常、負極活物質に対して、溶媒にバインダー(結着剤)、増粘剤等を混合したものを加えて調製される。
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
その具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;
SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;
スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物;
EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;
シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;
ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;
アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物
等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー、並びに必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
前記水系溶媒の例としては水、アルコール等が挙げられ、前記有機系溶媒の例としてはN-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。
特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤等を含有させ、SBR等のラテックスを用いてスラリー化することが好ましい。
なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
負極活物質100質量部に対するバインダーの割合は、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.6質量部以上が更に好ましく、また、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましく、8質量部以下が特に好ましい。負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲内であると、電池容量に寄与しないバインダーの割合が多くならないので、電池容量の低下を招き難くなる。さらに、負極の強度低下も招き難くなる。
特に、負極形成材料であるスラリーがSBRに代表されるゴム状高分子を主要成分として含有する場合には、負極活物質100質量部に対するバインダーの割合は、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.6質量部以上が更に好ましく、また、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下が更に好ましい。
また、スラリーがポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分として含有する場合には、負極活物質100質量部に対するバインダーの割合は、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上が更に好ましく、また、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、8質量部以下が更に好ましい。
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調整するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、燐酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
増粘剤を用いる場合、負極活物質100質量部に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量部以上であり、0.5質量部以上が好ましく、0.6質量部以上がより好ましい。また、前記割合は通常5質量部以下であり、3質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましい。負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲内にあると、スラリーの塗布性が良好となる。さらに、負極活物質層に占める負極活物質の割合も適度なものとなり、電池容量が低下する問題や負極活物質間の抵抗が増大する問題が生じ難くなる。
【0123】
(vi)負極板の面積
負極板の面積は、特に限定されないが、対向する正極板よりもわずかに大きくして、正極板が負極板から外にはみ出すことがないように設計することが好ましい。また、二次電池の充放電を繰り返したときのサイクル寿命や高温保存による劣化を抑制する観点から、できる限り正極に等しい面積に近づけることが、より均一かつ有効に働く電極割合を高めて特性が向上するので好ましい。特に、二次電池が大電流で使用される場合には、この負極板の面積の設計が重要である。
【0124】
<3-1-4.正極>
以下に本発明の非水系電解液二次電池に使用される正極について説明する。
【0125】
<3-1-4-1.正極活物質>
以下に前記正極に使用される正極活物質について説明する。
【0126】
(1)組成
正極活物質としては、電気化学的に金属イオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限はないが、例えば、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものが好ましく、リチウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましい。具体例としては、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属燐酸化合物、リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物、リチウム含有遷移金属ホウ酸化合物が挙げられる。
前記リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属としてはV、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、前記複合酸化物の具体例としては、LiCoO2等のリチウム・コバルト複合酸化物、LiNiO2等のリチウム・ニッケル複合酸化物、LiMnO2、LiMn2O4、Li2MnO4等のリチウム・マンガン複合酸化物、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
置換されたものの具体例としては、例えば、LiNi0.5Mn0.5O2、LiNi0.85Co0.10Al0.05O2、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、LiMn2O4、LiMn1.8Al0.2O4、Li1.1Mn1.9Al0.1O4、LiMn1.5Ni0.5O4等が挙げられる。
中でも、リチウムとニッケルとコバルトを含有する複合酸化物がより好ましい。コバルトとニッケルを含有する複合酸化物は、同じ電位で使用した際の容量を大きくとることが可能となるためである。
一方でコバルトは資源量も少なく高価な金属であり、自動車用途等の高容量が必要とされる大型電池では活物質の使用量が大きくなることから、コストの点では、より安価な遷移金属としてマンガンを主成分に用いることも望ましい。すなわち、リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物がさらに好ましい。中でも、コストと容量のバランスを高度に満たす観点からは、コバルトの使用量を減らし、ニッケルの使用量を増やしたリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物が特に好ましい。例えば、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2やLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2やLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2などが特に好ましい具体例として挙げられる。
また、化合物としての安定性や、製造の容易さによる調達コストも鑑みると、スピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物も好ましい。すなわち、上記の具体例のうちLiMn2O4、LiMn1.8Al0.2O4、Li1.1Mn1.9Al0.1O4、LiMn1.5Ni0.5O4等も好ましい具体例として挙げることができる。
前記リチウム含有遷移金属燐酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、前記燐酸化合物の具体例としては、例えば、LiFePO4、Li3Fe2(PO4)3、LiFeP2O7等の燐酸鉄類、LiCoPO4等の燐酸コバルト類、LiMnPO4等の燐酸マンガン類、これらのリチウム遷移金属燐酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
前記リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、前記ケイ酸化合物の具体例としては、例えば、Li2FeSiO4等のケイ酸鉄類、Li2CoSiO4等のケイ酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属ケイ酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
前記リチウム含有遷移金属ホウ酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、前記ホウ酸化合物の具体例としては、例えば、LiFeBO3等のホウ酸鉄類、LiCoBO3等のホウ酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属ホウ酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
【0127】
(2)正極活物質の製造法
正極活物質の製造法としては、本発明の要旨を超えない範囲で特には制限されないが、いくつかの方法が挙げられ、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。
特に球状ないし楕円球状の活物質を作製するには種々の方法が考えられるが、例えばその一例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作製回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
また、別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにLiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
更に別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源と、必要に応じ他の元素の原料物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0128】
<3-1-4-2.正極構造と作製法>
以下に、本発明に使用される正極の構成及びその作製法について説明する。
(正極の作製法)
正極は、正極活物質粒子とバインダーとを含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製される。正極活物質を用いる正極の製造は、公知のいずれの方法でも作製することができる。例えば、正極活物質とバインダー、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成させることにより正極を得ることができる。
正極活物質の正極活物質層中の含有量は、好ましくは60質量%以上であり、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは99.9質量%以下であり、99質量%以下がより好ましい。正極活物質の含有量が、上記範囲内であると、電気容量を十分確保できる。さらに、正極の強度も十分なものとなる。なお、本発明における正極活物質粉体は、1種を単独で用いてもよく、異なる組成又は異なる粉体物性の2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。2種以上の活物質を組み合わせて用いる際は、前記リチウムとマンガンを含有する複合酸化物を粉体の成分として用いることが好ましい。前記の通り、コバルト又はニッケルは、資源量も少なく高価な金属であり、自動車用途等の高容量が必要とされる大型電池では活物質の使用量が大きくなることから、コストの点で好ましくないため、より安価な遷移金属としてマンガンを主成分に用いることが望ましいためである。
【0129】
(導電材)
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素質材料等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正極活物質層中の導電材の含有量は、好ましくは0.01質量%以上であり、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは50質量%以下であり、30質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。含有量が上記範囲内であると、導電性を十分確保できる。さらに、電池容量の低下も防ぎやすい。
【0130】
(バインダー)
正極活物質層の製造に用いるバインダーは、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に限定されない。
塗布法で正極を作製する場合は、バインダーは電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であれば特に限定されないが、その具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;
SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;
スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;
シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;
ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;
アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物
等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正極活物質層中のバインダーの含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは80質量%以下であり、60質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が特に好ましい。バインダーの割合が、上記範囲内であると、正極活物質を十分保持でき、正極の機械的強度を確保できるため、サイクル特性等の電池性能が良好となる。さらに、電池容量や導電性の低下を回避することにもつながる。
【0131】
(液体媒体)
正極活物質層を形成するためのスラリーの調製に用いる液体媒体としては、正極活物質、導電材、バインダー、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
前記水系媒体の例としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒等が挙げられる。前記有機系媒体の例としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;
キノリン、ピリジン等の複素環化合物;
アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;
酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;
ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;
N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;
ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド等の非プロトン性極性溶媒
等を挙げることができる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0132】
(増粘剤)
スラリーを形成するための液体媒体として水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のラテックスとを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調整するために使用される。
増粘剤としては、本発明の効果を著しく制限しない限り制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、燐酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
増粘剤を使用する場合には、正極活物質と増粘剤の質量の合計に対する増粘剤の割合は、好ましくは0.1質量%以上であり、0.5質量%以上がより好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは5質量%以下であり、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、スラリーの塗布性が良好となり、さらに、正極活物質層に占める活物質の割合が十分なものとなるため、二次電池の容量が低下する問題や正極活物質間の抵抗が増大する問題を回避し易くなる。
【0133】
(圧密化)
集電体への上記スラリーの塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。正極活物質層の密度は、1g・cm-3以上が好ましく、1.5g・cm-3以上が更に好ましく、2g・cm-3以上が特に好ましく、また、4g・cm-3以下が好ましく、3.9g・cm-3以下がより好ましく、3.8g・cm-3以下が更に好ましく、3.5g・cm-3以下が特に好ましく、3g・cm-3以下が最も好ましい。
正極活物質層の密度が、上記範囲内であると、集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性が低下することなく、特に二次電池の高電流密度での充放電特性が良好となる。さらに、活物質間の導電性が低下し難くなり、電池抵抗が増大し難くなる。
【0134】
(集電体)
正極集電体の材質としては特に制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素質材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。
集電体の厚さは任意であるが、好ましくは1μm以上であり、3μm以上がより好ましく、5μm以上が更に好ましく、また、好ましくは1mm以下であり、100μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。集電体の厚さが、上記範囲内であると、集電体として必要な強度を十分確保することができる。さらに、取り扱い性も良好となる。
集電体と正極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(非水系電解液注液直前の片面の活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)が、好ましくは150以下であり、20以下がより好ましく、10以下が特に好ましく、また、好ましくは0.1以上であり、0.4以上がより好ましく、1以上が特に好ましい。 集電体と正極活物質層の厚さの比が、上記範囲内であると、二次電池の高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じ難くなる。さらに、正極活物質に対する集電体の体積比が増加し難くなり、電池容量の低下を防ぐことができる。
【0135】
(電極面積)
高出力かつ高温時の安定性を高める観点から、正極活物質層の面積は、電池外装ケースの外表面積に対して大きくすることが好ましい。具体的には、非水系電解液二次電池の外装の表面積に対する前記正極の電極面積の総和を、面積比で20倍以上とすることが好ましく、40倍以上とすることがより好ましい。外装ケースの外表面積とは、有底角型形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分の縦と横と厚さの寸法から計算で求める総面積をいう。有底円筒形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分を円筒として近似する幾何表面積である。正極の電極面積の総和とは、負極活物質を含む合材層に対向する正極合材層の幾何表面積であり、集電体箔を介して両面に正極合材層を形成してなる構造では、それぞれの面を別々に算出する面積の総和をいう。
【0136】
(放電容量)
本発明の非水系電解液を用いる場合、非水系電解液二次電池の1個の電池外装に収納される電池要素のもつ電気容量(電池を満充電状態から放電状態まで放電したときの電気容量)が、1アンペアーアワー(Ah)以上であると、低温放電特性の向上効果が大きくなるため好ましい。そのため、正極板は、放電容量が満充電で、好ましくは3Ah(アンペアアワー)であり、より好ましくは4Ah以上、また、好ましくは20Ah以下であり、より好ましくは10Ah以下になるように設計する。
上記範囲内であると、大電流の取り出し時に電極反応抵抗による電圧低下が大きくなり過ぎず、電力効率の悪化を防ぐことができる。さらに、パルス充放電時の電池内部発熱による温度分布が大きくなり過ぎず、充放電繰り返しの耐久性が劣り、また、過充電や内部短絡等の異常時の急激な発熱に対して放熱効率も悪くなるといった現象を回避することができる。
【0137】
(正極板の厚さ)
正極板の厚さは、特に限定されないが、高容量かつ高出力、高レート特性の観点から、集電体の厚さを差し引いた正極活物質層の厚さは、集電体の片面に対して、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、また、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。
【0138】
<3-1-5.セパレータ>
本発明の非水系電解液二次電池において、正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、本発明の非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
セパレータの材料や形状については特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、本発明の非水系電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アラミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。中でも好ましくはガラスフィルター、ポリオレフィンであり、更に好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記セパレータの厚さは任意であるが、好ましくは1μm以上であり、5μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましく、また、好ましくは50μm以下であり、40μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。セパレータの厚さが、上記範囲内であると、絶縁性や機械的強度が良好なものとなる。さらに、レート特性等の電池性能の低下を防ぐことができ、非水系電解液二次電池全体としてのエネルギー密度の低下も防ぐことができる。
更に、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、好ましくは20%以上であり、35%以上がより好ましく、45%以上が更に好ましく、また、好ましくは90%以下であり、85%以下がより好ましく、75%以下が更に好ましい。空孔率が、上記範囲内であると、膜抵抗が大きくなり過ぎず、二次電池のレート特性の悪化を抑制できる。さらに、セパレータの機械的強度も適度なものなり、絶縁性の低下も抑制できる。
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、好ましくは0.5μm以下であり、0.2μm以下がより好ましく、また、好ましくは0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲内であると、短絡が生じ難くなる。さらに、膜抵抗も大きくなり過ぎず、二次電池のレート特性の低下を防ぐことができる。
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物類、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類が用いられ、粒子形状若しくは繊維形状のものが用いられる。
セパレータの形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状のセパレータでは、孔径が0.01~1μm、厚さが5~50μmのものが好適に用いられる。前記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製のバインダーを用いて前記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に、90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を使用し、かつフッ素樹脂をバインダーとして使用して多孔層を形成させることが挙げられる。
【0139】
<3-1-6.電池設計>
(電極群)
電極群は、前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもののいずれでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する)は、好ましくは40%以上であり、50%以上がより好ましく、また、好ましくは95%以下であり、90%以下がより好ましい。電極群占有率が、上記範囲内であると、電池容量が小さくなり難くなる。また、適度な空隙スペースを確保できるため、電池が高温になることによって部材が膨張したり非水系電解液の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、二次電池としての充放電繰り返し性能や高温保存特性等の諸特性を低下させたり、更には、内部圧力を外に逃がすガス放出弁が作動する場合を回避することができる。
【0140】
(集電構造)
集電構造は特に限定されるものではないが、本発明の非水系電解液による放電特性の向上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にすることが好ましい。この様に内部抵抗を低減させた場合、本発明の非水系電解液を使用した効果は特に良好に発揮される。
電極群が前述の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。1枚の電極面積が大きくなる場合には、内部抵抗が大きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電極群が前述の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0141】
(保護素子)
保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター、温度ヒューズ、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等が挙げられる。前記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない電池設計にすることがより好ましい。
【0142】
(外装体)
本発明の非水系電解液二次電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体(外装ケース)内に収納して構成される。この外装体に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り公知のものを任意に採用することができる。
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に限定されるものではない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金、ニッケル、チタン等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
上記金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、又は、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
また、外装ケースの形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等のいずれであってもよい。
【0143】
<3-2.非水系電解液一次電池>
本発明の一実施形態である非水系電解液一次電池は、例えば、正極に金属イオンを吸蔵可能な材料を用い、負極に金属イオンを放出可能な材料を用いる。正極材料としてはフッ化黒鉛、二酸化マンガン等の遷移金属酸化物が好ましい。負極材料としては亜鉛やリチウムなどの金属単体が好ましい。非水系電解液には、上述の本発明の非水系電解液を用いる。
【0144】
<3-3.金属イオンキャパシタ>
本発明の一実施形態である金属イオンキャパシタは、例えば、正極に電気二重層を形成できる材料を用い、負極に金属イオンを吸蔵・放出可能な材料を用いる。正極材料としては活性炭が好ましい。また負極材料としては、炭素質材料が好ましい。非水系電解液には、上述の本発明の非水系電解液を用いる。
【0145】
<3-4.電気二重層キャパシタ>
本発明の一実施形態である電気二重層キャパシタは、例えば、電極には電気二重層を形成できる材料を用いる。電極材料としては活性炭が好ましい。非水系電解液には、上述の本発明の非水系電解液を用いる。
【実施例】
【0146】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例にて非水系電解液の構成成分として使用した化合物を以下に示す。化合物(α)、(β)は本発明の特定エーテル、化合物(γ)は本発明の特定添加剤に相当する。
【化21】
【0147】
<<実施例1-1~1-2、比較例1-1>>
[非水系電解液二次電池の作製]
<非水系電解液の調製>
[実施例1-1]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(体積比3:3:4)に、十分に乾燥させたLiPF6を1mol/L(非水系電解液中の濃度として)の濃度で溶解させ、更に化合物(α)を2質量ppm(非水系電解液中の濃度として)の量で溶解させ、非水系電解液を調製した。この非水系電解液を用いて下記の方法で非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[実施例1-2]
化合物(α)を溶解させず、代わりに化合物(β)を2質量ppmの量で溶解させたこと以外は実施例1-1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[比較例1-1]
化合物(α)を溶解させなかったこと以外は実施例1-1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
【0148】
<正極の作製>
正極活物質としてのリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2)90質量部、導電材としてのカーボンブラックを7質量部、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を3質量部とを、N-メチル-2-ピロリドン中で混合・スラリー化し、これを厚さ15μmのアルミニウム箔に均一に塗布、乾燥した後、ロールプレスを行い正極とした。
【0149】
<負極の作製>
グラファイト粉末98質量部に、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)100質量部と、バインダーとしてスチレン-ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン-ブタジエンゴムの濃度50質量%)2質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔に均一に塗布して乾燥し、ロールプレスして負極とした。
【0150】
<非水系電解液二次電池の製造>
上記の正極、負極、及び前述の各実施例及び比較例の非水系電解液を予め含浸させておいたポリオレフィン製セパレータを、正極、セパレータ、負極の順に積層した。こうして得られた電池要素を2032コイン型電池用缶体に収め、カシメ機でかしめることによりコイン型の非水系電解液二次電池を作製した。
【0151】
[非水系電解液二次電池の評価]
・初期充放電
上記の方法で作製した二次電池を25℃の恒温槽中において0.3C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする。以下同様。)で4.2Vまで定電流-定電圧充電(定電圧充電は0.05Cまで電流が絞られるまで実施した。以下同様。)した後、0.3Cで2.5Vまで放電した。続いて0.3Cで4.1Vまで定電流-定電圧充電した後、電池を25℃に2時間保持しエージングを実施した。その後、25℃において0.3Cで2.5Vまで放電した。続いて、0.3Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電した後、0.3Cで2.5Vまで放電した。このようにして非水系電解液二次電池を安定させた。
・25℃繰り返し充放電試験
安定させた非水系電解液二次電池を25℃の恒温槽において、0.3Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電した後、0.3Cで2.5Vまで放電するという充放電を1サイクルとして、100サイクル繰り返し充放電試験を実施した。
・繰り返し充放電試験後充電特性評価
100サイクル繰り返し充放電試験後の非水系電解液二次電池を25℃の恒温槽において、0.3Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電した。その際の4.2Vに到達してからの定電圧充電時間を測定し、充電時CV時間とした。
下記表1に、充電時CV時間を比較例1-1の値で規格化して示す。
【0152】
【0153】
表1から明らかなように、特定エーテルを含有する非水系電解液を用いることで、充電時のCV時間が短くなっており、充電時の過電圧に起因する抵抗が低下していると推定される効果が示されている。
【0154】
<<実施例2-1~2-6、比較例2-1~2-2>>
[非水系電解液二次電池の作製]
<非水系電解液の調製>
[実施例2-1]
実施例1-1と同様の方法で非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[実施例2-2]
化合物(α)を溶解させる量を10質量ppmとしたこと以外は実施例2-1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[実施例2-3]
化合物(α)を溶解させず、代わりに化合物(β)を2質量ppmの量で溶解させたこと以外は実施例2-1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[実施例2-4]
化合物(α)を溶解させず、代わりに化合物(β)を10質量ppmの量で溶解させたこと以外は実施例2-1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[実施例2-5]
さらに化合物(γ)を0.5質量%の量で溶解させたこと以外は実施例2-1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[実施例2-6]
化合物(α)を溶解させず、代わりに化合物(β)を2質量ppmの量で溶解させ、さらに化合物(γ)を0.5質量%の量で溶解させたこと以外は実施例2-1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[比較例2-1]
化合物(α)を溶解させなかった以外は実施例2-1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[比較例2-2]
化合物(α)を溶解させず、化合物(γ)を0.5質量%の量で溶解させたこと以外は比較例2-1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
【0155】
<正極の作製>
実施例1-1と同様の方法で、実施例2-1~2-6、比較例2-1~2-2の正極を作製した。
【0156】
<負極の作製>
実施例1-1と同様の方法で、実施例2-1~2-6、比較例2-1~2-2の負極を作製した。
【0157】
<非水系電解液二次電池の製造>
非水系電解液を変更した以外は、実施例1-1と同様の方法で、実施例2-1~2-6、比較例2-1~2-2の非水系電解液二次電池をそれぞれ作製した。
【0158】
[非水系電解液二次電池の評価]
・初期充放電
上記の方法で作製した二次電池を25℃の恒温槽中において0.3C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする。以下同様。)で4.2Vまで定電流-定電圧充電(定電圧充電は0.05Cまで電流が絞られるまで実施した。以下同様。)した後、0.3Cで2.5Vまで放電した。続いて0.3Cで4.1Vまで定電流-定電圧充電した後、電池を25℃に2時間保持しエージングを実施した。その後、25℃において0.3Cで2.5Vまで放電した。続いて、0.3Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電した後、0.3Cで2.5Vまで放電した。このようにして非水系電解液二次電池を安定させた。
・初期大電流放電試験
安定させた非水系電解液二次電池を25℃の恒温槽において、0.3Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電した後、0.3Cで2.5Vまで放電した。この時の放電容量を初期低率容量とした。続いて、0.3Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電した後、2Cで2.5Vまで放電した。この時の放電容量を初期高率容量とした。
下記式にて初期高率放電能力(%)を算出した。
初期高率放電能力(%)=100×(初期高率容量/初期低率容量)
・25℃繰り返し充放電試験
初期大電流放電試験後の非水系電解液二次電池を25℃の恒温槽において、0.3Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電した後、0.3Cで2.5Vまで放電するという充放電を1サイクルとして、50サイクル繰り返し充放電試験を実施した。
・繰り返し充放電試験後大電流放電試験
50サイクル繰り返し充放電試験後の非水系電解液二次電池を25℃の恒温槽において、0.3Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電した後、0.3Cで2.5Vまで放電した。この時の放電容量を試験後低率容量とした。続いて、0.3Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電した後、2Cで2.5Vまで放電した。この時の放電容量を試験後高率容量とした。
下記式にて試験後高率放電能力(%)を算出した。
試験後高率放電能力(%)=100×(試験後高率容量/試験後低率容量)
下記表2に、
{(試験後高率放電能力)―(初期高率放電能力)}で算出される高率放電能力変化(%)を示す。
【0159】
【0160】
表2から明らかなように、特定エーテルを添加することで、高率放電能力変化の値が向上するとともに、特定エーテルと特定添加剤とを同時使用した場合では、それぞれの単独使用の場合の挙動からは推定できない程度で、高率放電能力変化の値が向上する驚くべき効果が示されている。すなわち、特定エーテルと特定添加剤とを同時使用することで、繰り返し充放電試験を行った後でも高率放電能力が悪化するどころか著しく高率放電能力を向上させることが可能となる。
【0161】
<<実施例3-1~3-2、比較例3-1~3-2>>
[非水系電解液二次電池の作製]
<非水系電解液の調製>
[実施例3-1]
実施例2-6と同様の方法で非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[実施例3-2]
化合物(γ)を溶解させなかったこと以外は実施例3-1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[比較例3-1]
化合物(β)および化合物(γ)を溶解させなかったこと以外は実施例3-1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
[比較例3-2]
化合物(β)を溶解させなかったこと以外は実施例3-1と同様に非水系電解液二次電池を作製し、下記評価を実施した。
【0162】
<正極の作製>
実施例1-1と同様の方法で、実施例3-1~3-2、比較例3-1~3-2の正極を作製した。
【0163】
<負極の作製>
実施例1-1と同様の方法で、実施例3-1~3-2、比較例3-1~3-2の負極を作製した。
【0164】
<非水系電解液二次電池の製造>
非水系電解液を変更した以外は、実施例1-1と同様の方法で、実施例3-1~3-2、比較例3-1~3-2の非水系電解液二次電池をそれぞれ作製した。
【0165】
[非水系電解液二次電池の評価]
・充放電試験
上記の方法で作製した二次電池を25℃の恒温槽中において0.3C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする。以下同様。)で4.2Vまで定電流-定電圧充電(定電圧充電は0.05Cまで電流が絞られるまで実施した。)した後、0.3Cで2.5Vまで放電した。この時の充電容量と放電容量を用いて、下記式にて充放電効率を算出した。
充放電効率(%)=100×(放電容量/充電容量)
下記表3に、充放電効率を比較例3-1の値で規格化して示す。
【0166】
【0167】
表3から明らかなように、単独使用時は充放電効率を悪化させてしまう特定エーテルと特定添加剤であるが、特定エーテルと特定添加剤を併用した場合では充放電効率が向上する驚くべき効果が示されている。
【0168】
合成例A1:1,3,6-トリオキソカン-2-オン(1-A)及び1,3,6,9,11,14-ヘキサオキサシクロヘキサデカン-2,10-ジオン(1-D)の合成
反応器に、ジクロロメタン150ml及びトリホスゲン2.13g(7mmol)、ジエチレングリコール2.25g(21mmol)を仕込み、窒素雰囲気下、均一溶液とした。
別の反応器にジクロロメタン700ml、ピリジン3.33g(42mmol)を仕込み、窒素雰囲気下室温にて、上記のトリホスゲン-ジエチレングリコール溶液を、5時間で滴下した。
反応終了後、水及び飽和炭酸水素ナトリウム溶液にてクエンチし、水洗後、減圧下で溶媒を除去した。得られた粗体に酢酸エチルを添加した後、析出物をろ別し1,3,6,9,11,14-ヘキサオキサシクロヘキサデカン-2,10-ジオン(1-D)を0.5g得た。さらにろ液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、1,3,6-トリオキソカン-2-オン(1-A)を0.6g得た。
【化22】
【化23】
【0169】
合成例A2:(1-B)、(1-E)、(1-C)の合成
上記ジエチレングリコールをトリエチレングリコールに替えて1,3,6,9-テトラオキサシクロウンデカン-2-オン(1-B)及び1,3,6,9,12,14,17,20-オクタオキサシクロドコサン-2,13-ジオン(1-E)を同様に合成し、上記ジエチレングリコールをテトラエチレングリコールに替えて1,3,6,9,12-ペンタオキサシクロテトラデカン-2-オン(1-C)を同様に合成した。
【化24】
【化25】
【化26】
【0170】
(実施例A1)
[負極の作製]
炭素質材料98質量部に、増粘剤及びバインダーとして、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)1質量部及びスチレン-ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン-ブタジエンゴムの濃度50質量%)1質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔に塗布して乾燥し、プレス機で圧延したものを、活物質層のサイズとして幅30mm、長さ40mm、及び幅5mm、長さ9mmの未塗工部を有する形状に切り出して負極とした。
【0171】
[正極の作製]
正極活物質としてLiCoO294質量%と、導電材としてのアセチレンブラック3質量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)3質量%とを、N-メチルピロリドン溶媒中で混合して、スラリー化した。得られたスラリーを、予め導電助剤を塗布した厚さ15μmのアルミ箔の片面に塗布して、乾燥し、プレス機にてロールプレスしたものを、活物質層のサイズとして幅30mm、長さ40mm、及び幅5mm、長さ9mmの未塗工部を有する形状に切り出して正極とした。
【0172】
[電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比30:40:30)に乾燥したLiPF6を1.2mol/Lの割合となるように溶解して電解液を調製した。この電解液に、ビニレンカーボネートを2質量部と、モノフルオロエチレンカーボネートを2質量部混合して、基本電解液1とした。この基本電解液1を99質量部と、1,3,6-トリオキソカン-2-オン(1-A)を1質量部混合して、実施例A1の電解液を調製した。
【0173】
[非水系電解液二次電池の製造]
上記の正極、負極、及びポリエチレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に、電池要素の正極と負極の端子が袋から突設するように挿入した後、上記電解液を袋内に注入し、真空封止を行い、4.3Vで満充電状態となる実施例A1のシート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0174】
[初期放電容量の評価]
非水系電解液二次電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃において、0.2Cに相当する定電流で4.35Vまで充電した後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。これを2サイクル行って電池を安定させ、3サイクル目は、0.2Cの定電流で4.35Vまで充電後、4.35Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電を実施し、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。その後、4サイクル目に0.2Cの定電流で4.35Vまで充電後、4.35Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電を実施し、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電して、初期放電容量を求めた。
【0175】
[高温保存膨れの評価]
初期放電容量の評価が終了した電池を、エタノール浴中に浸して、体積を測定し、これを高温保存前の体積とした。25℃において、0.2Cに相当する定電流で4.35Vまで充電した後、60℃で14日間保存し、電池を室温まで冷却させた後、エタノール浴中に浸して体積を測定し、これを高温保存後の体積とし、高温保存後の体積から、高温保存前の体積を引いた値を高温保存膨れと定義した。比較例A1の高温保存膨れを100としたときの各実施例の高温保存膨れの相対値(%)を表4に示す。
【0176】
[保存容量維持率の評価]
高温保存後に体積を測定した電池を、25℃において0.2Cの定電流で3.0Vまで放電させ、0.2Cの定電流で4.35Vまで充電後、定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電し、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電する試験を実施して、0.2Cでの高温保存後放電容量を求めた。以下の式から、保存容量維持率(%)を求めた。
保存容量維持率(%)=(高温保存後放電容量)÷(初期放電容量)×100
保存容量維持率を表4に示す。
【0177】
(実施例A2)
上述した基本電解液1を99質量部と、1,3,6,9-テトラオキサシクロウンデカン-2-オン(1-B)を1質量部混合した以外は、実施例A1と同様にして、実施例A2のシート状の非水系電解液二次電池を作製し、評価を行った。結果を表4に示す。
【0178】
(実施例A3)
上述した基本電解液1を99質量部と、1,3,6,9,12-ペンタオキサシクロテトラデカン-2-オン(1-C)を1質量部混合した以外は、実施例A1と同様にして、実施例A2のシート状の非水系電解液二次電池を作製し、評価を行った。結果を表4に示す。
【0179】
(実施例A4)
上述した基本電解液1を99質量部と、1,3,6,9,11,14-ヘキサオキサシクロヘキサデカン-2,10-ジオン(1-D)を1質量部混合した以外は、実施例A1と同様にして、実施例A4のシート状の非水系電解液二次電池を作製し、評価を行った。結果を表4に示す。
【0180】
(実施例A5)
上述した基本電解液1を99質量部と、1,3,6,9,12,14,17,20-オクタオキサシクロドコサン-2,13-ジオン(1-E)を1質量部混合した以外は、実施例A1と同様にして、実施例A5のシート状の非水系電解液二次電池を作製し、評価を行った。結果を表4に示す。
【0181】
(実施例A6)
上述した基本電解液1を98.5質量部と、1,3,6,9-テトラオキサシクロウンデカン-2-オン(1-B)を1質量部と、LiPO2F2を0.5質量部混合した以外は、実施例A1と同様にして、実施例A6のシート状の非水系電解液二次電池を作製し、評価を行った。結果を表4に示す。
【0182】
(実施例A7)
上述した基本電解液1を98.5質量部と、1,3,6,9,11,14-ヘキサオキサシクロヘキサデカン-2,10-ジオン(1-D)を1質量部と、LiPO2F2を0.5質量部混合した以外は、実施例A1と同様にして、実施例A6のシート状の非水系電解液二次電池を作製し、評価を行った。結果を表4に示す。
【0183】
(比較例A1)
上述した基本電解液1をそのまま用いること以外は、実施例A1と同様にして、比較例A1のシート状の非水系電解液二次電池を作製し、評価を行った。結果を表4に示す。
【0184】
【0185】
表4から明らかなように、実施例A1~A7は、比較例A1よりも、保存容量維持率と保存膨れ(小さい数値の方が膨れにくいことを表す)の項目において優れることが分かる。
ここで、式(a1)又は式(a2)の化合物を用いた実施例A1~A7の保存容量維持率は、比較例A1に対して少なくとも1.2%以上改善し、良好な効果が発現することが分かる。また、高温保存膨れは比較例A1に対して少なくとも15%以上改善している。更に、電解質塩を2種類用いた実施例A6~A7であっても、上記の保存容量維持率と保存膨れの効果は維持され、更に良好な効果が発現することが分かる。
【0186】
[14日保存後金属量の評価]
(比較例A2)
比較例A1で用いた保存容量維持率の評価が終了した非水系電解液二次電池を3.0Vまで放電した後、非水系電解液二次電池を解体して負極を取り出し、コバルト金属の質量を測定した。
(実施例A8)
実施例A6で用いた保存容量維持率の評価が終了した非水系電解液二次電池を、比較例A2と同様に解体して負極を取り出し、コバルト金属の質量を測定した。比較例A2のコバルト金属の質量を100としたときの相対値を表5に示す。
(実施例A9)
実施例A7で用いた保存容量維持率の評価が終了した非水系電解液二次電池を、実施例A8と同様に解体して負極を取り出し、コバルト金属の質量を測定した。結果を表5に示す。
(比較例A3)
上述した基本電解液1を99質量部と、下記に示す12―クラウン―4を1質量部混合した以外は、実施例A1と同様にして、比較例A3のシート状の非水系電解液二次電池を作製・評価し、実施例A8と同様に解体して負極を取り出し、コバルト金属の質量を測定した。結果を表5に示す。
【化27】
【0187】
【0188】
上記コバルト金属の質量は、正極から溶出した遷移金属が負極に取り込まれた量を表している。従って、この値が小さいほど、負極被膜の劣化による容量の低下や安全性の低下が抑えられることになる。表5から明らかなように、実施例A8~A9は、比較例A2~A3よりも、金属溶出量において優れることが分かる。
【0189】
(実施例A10)
[負極の作製]
炭素質材料98質量部に、増粘剤及びバインダーとして、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)1質量部及びスチレン-ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン-ブタジエンゴムの濃度50質量%)1質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔に塗布して乾燥し、プレス機で圧延したものを負極とした。
【0190】
[正極の作製]
正極活物質としてLiNi0.6Mn0.2Co0.2O290質量部と、導電材としてのアセチレンブラック7質量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)3質量部とを、N-メチルピロリドン溶媒中で混合して、スラリー化した。得られたスラリーを、予め導電助剤を塗布した厚さ15μmのアルミ箔の片面に塗布して、乾燥し、プレス機にてロールプレスしたものを正極とした。
【0191】
[電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比30:30:40)に乾燥したLiPF6を1.0mol/Lの割合となるように溶解して基本電解液2を調製した。この基本電解液2を99.5質量部と、1,3,6-トリオキソカン-2-オン(1-A)を2質量ppmと、LiPO2F2を0.5質量部混合して、実施例A10の電解液を調製した。
【0192】
[非水系電解液二次電池の製造]
上記の正極、負極、及び前記の非水系電解液を予め含浸させておいたポリエチレン製セパレータを、正極、セパレータ、負極の順に積層した。こうして得られた電池素子を2032コイン型電池用缶体に収め、カシメ機でかしめることにより、実施例A10のコイン型の非水系電解液二次電池を作製した。
【0193】
[初期充放電]
上記コイン型の非水系電解液二次電池を、25℃において、0.3Cに相当する定電流で4.2Vまで充電した後、4.2Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電を実施し、0.3Cの定電流で2.5Vまで放電した。続いて定電流で0.3Cで4.1Vまで充電し、4.2Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電を実施した後、電池を25℃で2時間保持しエージングを実施した。その後、25℃において0.3Cの定電流で2.5Vまで放電した。続いて0.3Cに相当する定電流で4.2Vまで充電した後、4.2Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電を実施し、0.3Cの定電流で2.5Vまで放電した。このようにしてコイン型の非水系電解液二次電池を安定させた。
【0194】
[初期大電流放電試験]
安定させたコイン型の非水系電解液二次電池を、25℃において0.3Cに相当する定電流で4.2Vまで充電した後、4.2Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電を実施し、0.3Cの定電流で2.5Vまで放電した。この時の放電容量を初期低率容量とした。続いて0.3Cに相当する定電流で4.2Vまで充電した後、4.2Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電を実施し、2Cの定電流で2.5Vまで放電した。この時の放電容量を初期高率容量とした。
下記式にて初期高率放電能力(%)を算出した。
初期高率放電能力(%)=100×(初期高率容量/初期低率容量)
【0195】
[25℃繰り返し充放電試験]
初期大電流放電試験後の非水系電解液二次電池を、25℃において0.3Cの定電流で4.2Vまで充電後、定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電し、0.3Cの定電流で2.5Vまで放電するという充放電を1サイクルとして、50サイクル繰り返し充放電試験を実施した。
[繰り返し充放電試験後大電流放電試験]
50サイクル繰り返し充放電試験後の非水系電解液二次電池を、25℃において0.3Cに相当する定電流で4.2Vまで充電した後、4.2Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電を実施し、0.3Cの定電流で2.5Vまで放電した。この時の放電容量を試験後低率容量とした。続いて0.3Cに相当する定電流で4.2Vまで充電した後、4.2Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電を実施し、2Cの定電流で2.5Vまで放電した。この時の放電容量を試験後高率容量とした。
下記式にて試験後高率放電能力(%)を算出した。
試験後高率放電能力(%)=100×(試験後高率容量/試験後低率容量)
表6に、{(試験後高率放電能力)-(初期高率放電能力)}で求められる高率放電能力変化(%)を示す。
【0196】
(実施例A11)
上述した基本電解液2を99.5質量部と、1,3,6,9,11,14-ヘキサオキサシクロヘキサデカン-2,10-ジオン(1-D)を2質量ppmと、LiPO2F2を0.5質量部混合したこと以外は、実施例A10と同様にして、実施例A11のコイン型の非水系電解液二次電池を作製し、評価を行った。結果を表6に示す。
(実施例A12)
上述した基本電解液2を99質量部と、1,3,6,9-テトラオキサシクロウンデカン-2-オン(1-B)を0.5質量部と、LiPO2F2を0.5質量部混合したこと以外は、実施例A10と同様にして、実施例A12のコイン型の非水系電解液二次電池を作製し、評価を行った。結果を表6に示す。
(実施例A13)
上述した基本電解液2を99質量部と、1,3,6,9,12-ペンタオキサシクロテトラデカン-2-オン(1-C)を0.5質量部と、LiPO2F2を0.5質量部混合したこと以外は、実施例A10と同様にして、実施例A13のコイン型の非水系電解液二次電池を作製し、評価を行った。結果を表6に示す。
(実施例A14)
上述した基本電解液2を99質量部と、1,3,6,9,12,14,17,20-オクタオキサシクロドコサン-2,13-ジオン(1-E)を0.5質量部と、LiPO2F2を0.5質量部混合したこと以外は、実施例A10と同様にして、実施例A14のコイン型の非水系電解液二次電池を作製し、評価を行った。結果を表6に示す。
(実施例A15)
上述した基本電解液2を100質量部と、1,3,6-トリオキソカン-2-オン(1-A)を2質量ppm混合したこと以外は、実施例A10と同様にして、実施例A15のコイン型の非水系電解液二次電池を作製し、評価を行った。結果を表6に示す。
(実施例A16)
上述した基本電解液2を100質量部と、1,3,6-トリオキソカン-2-オン(1-A)を10質量ppm混合したこと以外は、実施例A10と同様にして、実施例A16のコイン型の非水系電解液二次電池を作製し、評価を行った。結果を表6に示す。
(実施例A17)
上述した基本電解液2を100質量部と、1,3,6,9,11,14-ヘキサオキサシクロヘキサデカン-2,10-ジオン(1-D)を2質量ppm混合したこと以外は、実施例A10と同様にして、実施例A17のコイン型の非水系電解液二次電池を作製し、評価を行った。結果を表6に示す。
(実施例A18)
上述した基本電解液2を100質量部と、1,3,6,9,11,14-ヘキサオキサシクロヘキサデカン-2,10-ジオン(1-D)を10質量ppm混合したこと以外は、実施例A10と同様にして、実施例A18のコイン型の非水系電解液二次電池を作製し、評価を行った。結果を表6に示す。
(実施例A19)
上述した基本電解液2を99.5質量部と、1,3,6,9,11,14-ヘキサオキサシクロヘキサデカン-2,10-ジオン(1-D)を0.5質量部混合したこと以外は、実施例A10と同様にして、実施例A19のコイン型の非水系電解液二次電池を作製し、評価を行った。結果を表6に示す。
(実施例A20)
上述した基本電解液2を99.5質量部と、1,3,6,9-テトラオキサシクロウンデカン-2-オン(1-B)を0.5質量部混合したこと以外は、実施例A10と同様にして、実施例A20のコイン型の非水系電解液二次電池を作製し、評価を行った。結果を表6に示す。
(比較例A4)
上述した基本電解液2を99.5質量部と、LiPO2F2を0.5質量部混合したこと以外は、実施例A10と同様にして、比較例A4のコイン型の非水系電解液二次電池を作製し、評価を行った。結果を表6に示す。
(比較例A5)
上述した基本電解液2のみを用いたこと以外は、実施例A10と同様にして比較例A5のコイン型の非水系電解液二次電池を作製し、評価を行った。結果を表6に示す。
【0197】
【0198】
表6から明らかなように、実施例A10~A20は、比較例A4~A5よりも、サイクル充放電試験後の高率放電能力変化の項目において優れており、本発明によって高率放電能力が向上していることが理解できる。特に、実施例A10~A14と比較例A4との比較により、式(a1)又は式(a2)の化合物とLiPO2F2を併用することにより、繰り返し充放電試験を行った後でも、高率放電能力が悪化するどころか著しく高率放電能力を向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0199】
本発明の非水系電解液によれば、特性劣化の少ないエネルギーデバイスを提供することができるので、前記電解液はエネルギーデバイスが用いられる電子機器等のあらゆる分野において好適に利用できる。
また、本発明の非水系電解液によれば、非水系電解液二次電池のサイクル運転時や高温保存時といった耐久時のサイクル容量維持率や、サイクル後の入出力特性(入出力維持率)、電池膨れを改善でき、有用である。そのため、本発明の非水系電解液及びこれを用いた非非水系電解液二次電池などのエネルギーデバイスは、公知の各種の用途に用いることが可能である。具体例としては、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ、家庭用バックアップ電源、事業所用バックアップ電源、負荷平準化用電源、自然エネルギー貯蔵電源、リチウムイオンキャパシタ等が挙げられる。