(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】基準電圧生成回路
(51)【国際特許分類】
G05F 3/24 20060101AFI20221215BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20221215BHJP
H01L 29/788 20060101ALI20221215BHJP
H01L 29/792 20060101ALI20221215BHJP
H01L 27/11526 20170101ALI20221215BHJP
H01L 27/11558 20170101ALI20221215BHJP
G11C 16/04 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G05F3/24 B
H01L29/78 371
H01L27/11526
H01L27/11558
G11C16/04 143
(21)【出願番号】P 2021159954
(22)【出願日】2021-09-29
(62)【分割の表示】P 2018030944の分割
【原出願日】2018-02-23
【審査請求日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2017071027
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】坂本 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】竹原 聡
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-011454(JP,A)
【文献】特開2011-176163(JP,A)
【文献】特開2002-368107(JP,A)
【文献】特開2013-246627(JP,A)
【文献】特開平03-214779(JP,A)
【文献】特公平04-065546(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2006/0114054(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/12-1/44
G05F 1/45-7/00
H01L 21/336
H01L 21/8229
H01L 21/8239-21/8246
H01L 27/10-27/11597
H01L 29/788-29/792
G11C 11/56
G11C 16/00-17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ソース端子、第1ドレイン端子及びフローティング状態の第1ゲート端子を有する第1MOSトランジスタと、
前記第1ゲート端子に接続された第2ゲート端子、並びに前記第1ソース端子に接続された第2バルク端子を有する第1MOSキャパシタと、
第3ソース端子、第3ドレイン端子及びフローティング状態の第3ゲート端子を有する第3MOSトランジスタと、
前記第3ゲート端子に接続された第4ゲート端子、並びに前記第3ドレイン端子に接続された第4バルク端子を有する第2MOSキャパシタと、
第1電源端子と、
前記第1MOSトランジスタ及び前記第3MOSトランジスタがNチャネルMOSトランジスタである場合に前記第1電源端子の電圧よりも低い電圧を有し、前記第1MOSトランジスタ及び前記第3MOSトランジスタがPチャネルMOSトランジスタである場合に前記第1電源端子の電圧よりも高い電圧を有する第2電源端子と、
を備え、
前記第1ドレイン端子が前記第1電源端子に接続され、前記第3ソース端子が前記第2電源端子に接続され、前記第1ソース端子が前記第3ドレイン端子に接続される、
または、前記第3ドレイン端子が前記第1電源端子に接続され、前記第1ソース端子が前記第2電源端子に接続され、前記第1ドレイン端子が前記第3ソース端子に接続される
基準電圧生成回路。
【請求項2】
前記第1MOSトランジスタ及び前記第1MOSキャパシタが1つのディプレッション型MOSトランジスタとして機能し、前記第3MOSトランジスタ及び前記第2MOSキャパシタが1つのエンハンスメント型MOSトランジスタとして機能する
請求項1に記載の基準電圧生成回路。
【請求項3】
前記第1MOSトランジスタ及び前記第3MOSトランジスタは、同じ導電型である
請求項1又は2に記載の基準電圧生成回路。
【請求項4】
前記第1MOSキャパシタ及び前記第2MOSキャパシタの各面積は、1000μm
2以上1mm
2以下である
請求項1から3までのいずれか一項に記載の基準電圧生成回路。
【請求項5】
前記第1MOSトランジスタ、前記第3MOSトランジスタ、前記第1MOSキャパシタ、及び、前記第2MOSキャパシタは、アレイ構造を有していない
請求項1から4までのいずれか一項に記載の基準電圧生成回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準電圧生成回路に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、基準電圧生成回路を内蔵する半導体装置は、基準電圧生成回路を構成する各々のトランジスタの閾値電圧Vthや抵抗素子の抵抗値などの製造バラツキにより、設計時に想定した基準電圧Vrefが所望の値にならずに大きくばらついてしまうことがある。このため、安定した基準電圧Vrefを必要とする半導体装置には高精度な基準電圧生成回路が求められる。半導体装置では、製造バラツキに起因する基準電圧生成回路の基準電圧バラツキを補正するために、配線層を修正して基準電圧を調整するための予備トランジスタを多数内蔵したり、製造後にレーザートリマで調整可能に構成したりしている。しかし、このような構成によって基準電圧生成回路の基準電圧バラツキを補正すると、基準電圧生成回路のレイアウト面積の増大や、電圧調整のための工数増加が問題となる。そこで、この種の問題を解決するために、種々の基準電圧生成回路が提案されている。
【0003】
特許文献1には、一般的な基準電圧生成回路が記載されている。特許文献1には、基準電圧生成回路として、ゲートGとソース領域Sとを接続したディプレッション型のMOSFET(金属-酸化膜-半導体 電界効果トランジスタ)の定電流性を利用して、ゲートとドレイン領域とが接続されてその定電流で動作するエンハンスメント型のMOSFETに発生する電圧を基準電圧Vrefとして用いる構成が提案されている。
【0004】
図58は、一般的な基準電圧生成回路100を示している。基準電圧生成回路100は、直列に接続されたディプレッション型MOSFET(以下、「ディプレッション型トランジスタ」と称する)Mdおよびエンハンスメント型MOSFET(以下、「エンハンスメント型トランジスタ」と称する)Meを備えている。ディプレッション型トランジスタMdのゲートGとソース領域Sとは接続されている。エンハンスメント型トランジスタMeのゲートGとドレイン領域Dとは接続されている。さらに、ディプレッション型トランジスタMdのゲートGおよびソース領域Sと、エンハンスメント型トランジスタMeのゲートGおよびドレイン領域Dとは接続されている。また、高電圧供給端子Vddがディプレッション型トランジスタMdのドレイン領域Dに設けられ、低電圧供給端子Vssがエンハンスメント型トランジスタMeのソース領域Sに設けられている。また、ディプレッション型トランジスタMdとエンハンスメント型トランジスタMeとの接続点に電圧出力端子OUTが設けられている。基準電圧生成回路100では、ディプレッション型トランジスタMdおよびエンハンスメント型トランジスタMeはいずれもNチャネル型である。なお、ディプレッション型とエンハンスメント型は、ゲート電圧とドレイン電流の関係により分類される。ディプレッション型(depletiontype)は、ゲートにゲート電圧を印加しないときにチャネルが存在してドレイン電流が流れる。一方、エンハンスメント型(enhancementtype)は、ゲートにゲート電圧を印加しないときはチャネルが存在せずにドレイン電流が流れない。
【0005】
図59は、基準電圧生成回路100に備えられたディプレッション型トランジスタMdおよびエンハンスメント型トランジスタMeの電流/電圧特性の一例である。横軸は、ゲートGとソース領域Sとの間のゲートソース間電圧Vgsを示し、縦軸は、ドレイン電流Idsを示している。ディプレッション型トランジスタMdは、ゲートソース間電圧Vgsが0Vで固定されているため、ドレイン領域Dとソース領域Sとの間のドレインソース間電圧が飽和領域である限り、定電流Iconstのドレイン電流を流す。ディプレッション型トランジスタMdに直列に接続されたエンハンスメント型トランジスタMeにも定電流Iconstのドレイン電流が流れる。したがって、Ids=Iconstとなるエンハンスメント型トランジスタMeのゲートソース間電圧Vgsが基準電圧Vrefとして電圧出力端子OUTから取り出せる。
【0006】
ディプレッション型トランジスタMdの閾値電圧をVth_d、エンハンスメント型トランジスタMeの閾値電圧をVth_eと表すと、基準電圧Vrefは、閾値電圧Vth_dの絶対値および閾値電圧Vth_eの絶対値の和、すなわち「Vref=|Vth_d|+|Vth_e|」と表すことができる。
【0007】
しかしながら、基準電圧生成回路100は、ディプレッション型トランジスタMdの電流/電圧特性とエンハンスメント型トランジスタMeの電流/電圧特性の製造バラツキの影響を受ける。そこで、製造バラツキの影響を受けず、高精度な基準電圧を取り出せる回路として、特許文献2および特許文献3には、FET型の不揮発性記憶素子を用いた基準電圧生成回路が開示されている。特許文献2および特許文献3に開示されたような基準電圧生成回路は、
図58に示す基準電圧生成回路100と略同様の構成を有しており、ディプレッション型トランジスタMdとエンハンスメント型トランジスタMeに不揮発性記憶素子を用いている。特許文献2及び3に開示された基準電圧生成回路は、同一種類の不揮発性記憶素子を用い、不揮発性記憶素子が備えるフローティングゲートへの電荷注入量を調整することで、ディプレッション型MOSFETとエンハンスメント型MOSFETを形成している。不揮発性記憶素子は、コントロールゲートおよびフローティングゲートを持ち、フローティングゲートに電子を注入放出することで閾値電圧Vthの制御が可能となっている。このため、この基準電圧生成回路は、製造バラツキが発生したとしても、後から閾値電圧Vthのトリミングが可能である。したがって、この基準電圧生成回路は、取り出す基準電圧Vrefは、製造バラツキの影響をほぼ受けない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特公平4-65546号公報
【文献】特開2002-368107号公報
【文献】特開2013-246627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2および特許文献3に開示された基準電圧生成回路は、EEPROMなどのいわゆる不揮発性メモリに使用される、ポリシリコンを2層用いた不揮発性記憶素子で構成されている。このような、ポリシリコンを2層用いた不揮発性記憶素子は、形成するのに複雑な専用プロセスが必要であり、製造コストが高くなるとともに汎用的に使えるものではない。
【0010】
本発明の目的は、汎用性が高く高精度な基準電圧生成回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一態様による基準電圧生成回路は、第1ソース端子、第1ドレイン端子及びフローティング状態の第1ゲート端子を有する第1MOSトランジスタと、前記第1ゲート端子に接続された第2ゲート端子、並びに前記第1ソース端子に接続された第2バルク端子を有する第1MOSキャパシタと、第3ソース端子、第3ドレイン端子及びフローティング状態の第3ゲート端子を有する第3MOSトランジスタと、前記第3ゲート端子に接続された第4ゲート端子、並びに前記第3ドレイン端子に接続された第4バルク端子を有する第2MOSキャパシタと、第1電源端子と、前記第1MOSトランジスタ及び前記第3MOSトランジスタがNチャネルMOSトランジスタである場合に前記第1電源端子の電圧よりも低い電圧を有し、前記第1MOSトランジスタ及び前記第3MOSトランジスタがPチャネルMOSトランジスタである場合に前記第1電源端子の電圧よりも高い電圧を有する第2電源端子と、を備え、前記第1ドレイン端子が前記第1電源端子に接続され、前記第3ソース端子が前記第2電源端子に接続され、前記第1ソース端子が前記第3ドレイン端子に接続される、または、前記第3ドレイン端子が前記第1電源端子に接続され、前記第1ソース端子が前記第2電源端子に接続され、前記第1ドレイン端子が前記第3ソース端子に接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、汎用性が高く高精度な基準電圧生成回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子Maの概略構成を示す断面図および回路構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子Maの電荷注入および電荷放出の様子を説明するための図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子Maの電荷注入および電荷放出の様子を説明するための図である。
【
図4】本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路1を説明するための回路構成を簡易的に表した図である。
【
図5】本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路1を説明するための回路構成を具体的に表した図である。
【
図6】本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路1を説明するための図であって、基準電圧生成回路1の不揮発性記憶素子Ma1、Ma2をエンハンスメント状態とディプレッション状態とになるように調整する第1の調整方法を説明するための図である。
【
図7】本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路1を説明するための図であって、基準電圧生成回路1の不揮発性記憶素子Ma1、Ma2をエンハンスメント状態とディプレッション状態とになるように調整する第2の調整方法を説明するための図である。
【
図8】本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路1を説明するための図であって、
図1に示す不揮発性記憶素子Maの基板電位(ウェル電位)を省略して表した不揮発性記憶素子Maの回路構成図である。
図8(a)は、不揮発性記憶素子Maの回路構成を具体的に表した図であり、
図8(b)は、不揮発性記憶素子Maの回路構成を簡易的に表した図である。
【
図9】本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路1の実際の回路例を示す構成図である。
【
図10】
図9に示す本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路1の実際の回路例において、不揮発性記憶素子Ma2をエンハンスメント状態に遷移させる状態を示す図である。
【
図11】
図9に示す本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路1の実際の回路例における基準電圧VREFを確認する状態を示す図である。
【
図12】
図10に示す基準電圧生成回路1の状態における消去時間に対する不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧の関係を示す図である。
【
図13】
図9に示す本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路1の実際の回路例において、不揮発性記憶素子Ma2を所望のエンハンスメント状態に遷移させる状態(不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧をマイナスの方向に調整する状態)を示す図である。
【
図14】
図13に示す基準電圧生成回路1の状態における書き込み時間に対する不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧の関係を示す図である。
【
図15】不揮発性記憶素子Ma2の状態を調整する調整時間に対する基準電圧VREFの遷移状態を示す図である。
【
図16】
図9に示す本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路1の実際の回路例において、不揮発性記憶素子Ma1をエンハンスメント状態に遷移させる状態を示す図である。
【
図17】
図16に示す基準電圧生成回路1の状態における消去時間に対する不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧の関係を示す図である。
【
図18】
図9に示す本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路1の実際の回路例において、不揮発性記憶素子Ma1を所望のディプレッション状態に遷移させる状態を示す図である。
【
図19】
図9に示す本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路1の実際の回路例における基準電圧VREFを確認する状態を示す図である。
【
図20】
図18に示す基準電圧生成回路1の状態における書き込み時間に対する不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧の関係を示す図である。
【
図21】不揮発性記憶素子Ma1の状態を調整する調整時間に対する基準電圧VREFの遷移状態を示す図である。
【
図22】
図9に示す本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路1の実際の回路例において、不揮発性記憶素子Ma1をエンハンスメント状態に遷移させる状態を示す図である。
【
図23】
図22に示す基準電圧生成回路1の状態における消去時間に対する不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧の関係を示す図である。
【
図24】
図9に示す本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路1の実際の回路例において、不揮発性記憶素子Ma1を所望のディプレッション状態に遷移させる状態を示す図である。
【
図25】
図9に示す本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路1の実際の回路例における基準電流IREFを確認する状態を示す図である。
【
図26】
図24に示す基準電圧生成回路1の状態における書き込み時間に対する不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧の関係を示す図である。
【
図27】不揮発性記憶素子Ma1の状態を調整する調整時間に対する基準電流IREFの遷移状態を示す図である。
【
図28】
図9に示す本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路1の実際の回路例において、不揮発性記憶素子Ma2をエンハンスメント状態に遷移させる状態を示す図である。
【
図29】
図9に示す本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路1の実際の回路例における基準電圧VREFを確認する状態を示す図である。
【
図30】
図28に示す基準電圧生成回路1の状態における消去時間に対する不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧の関係を示す図である。
【
図31】
図9に示す本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路1の実際の回路例において、不揮発性記憶素子Ma2を所望のエンハンスメント状態に遷移させる状態(不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧をマイナスの方向に調整する状態)を示す図である。
【
図32】
図31に示す基準電圧生成回路1の状態における書き込み時間に対する不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧の関係を示す図である。
【
図33】不揮発性記憶素子Ma1の状態を調整する調整時間に対する基準電圧VREFの遷移状態を示す図である。
【
図34】本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路1の基準電圧発生方法を説明するためのフローチャートを示す図である。
【
図35】本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路1の他の基準電圧発生方法を説明するためのフローチャートを示す図である。
【
図36】PMOSを用いた基準電圧生成回路の回路構成図である。
【
図37】本発明の第2実施形態による不揮発性記憶素子Mbの概略構成を示す断面図および回路構成図である。
【
図38】本発明の第2実施形態による基準電圧生成回路2を説明するための回路構成を簡易的に表した図である。
【
図39】本発明の第2実施形態による基準電圧生成回路2を説明するための回路構成を具体的に表した図である。
【
図40】本発明の第2実施形態による基準電圧生成回路2の実際の回路例を示す構成図である。
【
図41】NMOSを用いた負の基準電圧生成回路の回路構成図である。
【
図42】本発明の第3実施形態による基準電圧生成回路3を説明するための図であって、負の基準電圧を生成する基準電圧生成回路3の回路構成を簡易的に表した図である。
【
図43】本発明の第3実施形態による基準電圧生成回路3の回路構成を具体的に表した図である。
【
図44】本発明の第3実施形態による基準電圧生成回路3の実際の回路例を示す構成図である。
【
図45】PMOSが用いられ負の基準電圧を生成する基準電圧生成回路の回路構成図である。
【
図46】本発明の第4実施形態による基準電圧生成回路4を説明するための図であって、負の基準電圧を生成する基準電圧生成回路4の回路構成を簡易的に表した図である。
【
図47】本発明の第4実施形態による基準電圧生成回路4の回路構成を具体的に表した図である。
【
図48】本発明の第4実施形態による基準電圧生成回路4の実際の回路例を示す構成図である。
【
図49】本発明の第5実施形態による基準電圧生成回路5に備えられる不揮発性記憶素子Ma1,Ma2のMOSFETエリアのフローティングゲート極性を説明するための図である。
【
図50】本発明の第5実施形態による不揮発性記憶素子Ma1,Ma2のを説明する図であって、コントロールゲートエリアおよび電荷注入エリアのゲート絶縁膜にかかる電界を説明するための図である。
【
図51】本発明の第5実施形態による基準電圧生成回路5に備えられる不揮発性記憶素子Ma1,Ma2のコントロールゲートエリアのフローティングゲート極性を説明するための図である。
【
図52】本発明の第5実施形態による基準電圧生成回路5に備えられる不揮発性記憶素子Ma1,Ma2の電荷注入エリアのフローティングゲート極性を説明するための図である。
【
図53】本発明の第5実施形態による不揮発性記憶素子Ma1,Ma2を説明する図であって、電荷注入エリアのゲート絶縁膜にかかる電界を説明するための図である。
【
図54】本発明の第5実施形態による不揮発性記憶素子Ma1,Ma2を説明する図であって、電荷保持特性がフローティングゲートの極性に依存することを説明するための図である。
【
図55】本発明の第5実施形態による不揮発性記憶素子Maを説明する図であって、エンハンスメント型トランジスタ側の最良のフローティングゲート極性の組み合わせを示す図である。
【
図56】本発明の第5実施形態による不揮発性記憶素子Maを説明する図であって、ディプレッション型トランジスタ側の最良のフローティングゲート極性の組み合わせを示す図である。
【
図57】本発明の第5実施形態による不揮発性記憶素子Maを説明する図であって、エンハンスメント型トランジスタ側の最良のフローティングゲート極性の他の組み合わせを示す図である。
【
図58】従来の基準電圧生成回路100の回路構成図である。
【
図59】従来の基準電圧生成回路100に備えられたディプレッション型トランジスタMdおよびエンハンスメント型トランジスタMeの電流/電圧特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態による基準電圧生成回路について
図1から
図35を用いて説明する。
本実施形態による基準電圧生成回路は、ポリシリコン1層(以下、「単層ポリシリコン」と称する)で形成された不揮発性記憶素子を2つ以上備える。
図1に示すように、本実施形態による基準電圧生成回路に備えられる不揮発性記憶素子Maは、例えばP型の半導体基板14に形成されたディープNウェル領域111,121,131、Pウェル領域112,122,132,141a,141b、Nウェル領域142a,142b,142c,142d,142e、素子分離領域143a,143b,143c,143d,143e,143f,143g,143h、フローティングゲートG1,G2,G3とを備えている。フローティングゲートG1,G2,G3は、単層ポリシリコンで形成されている。不揮発性記憶素子Maは3つ以上の領域で形成されている。
【0017】
第1エリアは、MOSFETエリアMFAである。MOSFETエリアMFAには、MOSFETで構成されたMOSトランジスタ11が設けられている。MOSトランジスタ11は、ポリシリコンで形成されたフローティングゲートG1を有している。フローティングゲートG1は、半導体基板14上に形成されたゲート絶縁膜113を介してPウェル領域112上に形成されている。MOSトランジスタ11は、ゲート絶縁膜113を介したフローティングゲートG1の下方の両側の一方に形成されたドレイン領域D1と、フローティングゲートG1の下方の両側の他方に形成されたソース領域S1とを備えている。ドレイン領域D1は、Pウェル領域112の内部に形成されたN+領域であり、端子Tdに接続されている。ソース領域S1は、Pウェル領域112の内部に形成されたN+領域であり、端子Tcに接続されている。Pウェル領域112は、Pウェル領域112の一部に形成されたP+領域114を介して端子Tbに接続されている。また、Pウェル領域112に隣接して半導体基板14に形成されたNウェル領域142aは、Nウェル領域142aの一部に形成されたN+領域を介して端子Taに接続されている。不揮発性記憶素子Maは、素子分離領域143a~143hによって、不揮発性記憶素子Maの他のパートや他の素子と素子分離されている。フローティングゲートG1,G2,G3はその名の通り、電気的なコンタクトを取る電極は直接接続されておらず、フローティング状態となっている。
【0018】
第2エリアは、コントロールゲートエリアCGAである。コントロールゲートエリアCGAには、MOSFETで構成されたMOSトランジスタ12が設けられている。MOSトランジスタ12は、ポリシリコンで形成されたフローティングゲートG2を有している。フローティングゲートG2は、ゲート絶縁膜123を介してMOSFETエリアMFAのPウェル領域112とは別のPウェル領域122上に形成されている。ゲート絶縁膜123は、MOSFETエリアMFAのゲート絶縁膜113と同種類、同膜厚であってもよいし、異なっていてもよい。コントロールゲートエリアCGAにおけるMOSトランジスタ12は、ゲート絶縁膜123を介したフローティングゲートG2の下方の両側の一方に形成されたドレイン領域D2と、フローティングゲートG2の下方の両側の他方に形成されたソース領域S2とを備えている。ドレイン領域D2は、Pウェル領域122の内部に形成されたN+領域である。ソース領域S2は、Pウェル領域122の内部に形成されたN+領域である。ドレイン領域D2は、Pウェル領域122の内部に形成されてPウェル領域122のコンタクト部であるP+領域124aと接続されている。ソース領域S2は、Pウェル領域122の内部に形成されてPウェル領域122のコンタクト部であるP+領域124bと接続されている。ドレイン領域D2、ソース領域S2およびP+領域124a,124bは、端子Teを介して互いに接続されている。また、Pウェル領域122に隣接して半導体基板14に形成されたNウェル領域142dは、Nウェル領域142dの一部に形成されたN+領域を介して端子Tfに接続されている。
【0019】
第3エリアは電荷注入エリアCIAである。電荷注入エリアCIAには、MOSFETで構成されたMOSトランジスタ13が設けられている。MOSトランジスタ13は、ポリシリコンで形成されたフローティングゲートG3を有している。フローティングゲートG3は、ゲート絶縁膜133を介してMOSFETエリアMFA、コントロールゲートエリアCGAとは別のPウェル領域132上に形成されている。ゲート絶縁膜133は、MOSFETエリアMFAのゲート絶縁膜113およびコントロールゲートエリアCGAのゲート絶縁膜123の少なくとも一方と、同種類、同膜厚であってもよいし、異なっていてもよい。電荷注入エリアCIAにおけるMOSトランジスタ13は、ゲート絶縁膜133を介したフローティングゲートG3の下方の両側の一方に形成されたドレイン領域D3と、フローティングゲートG3の下方の両側の他方に形成されたソース領域S3とを備えている。ドレイン領域D3は、Pウェル領域132の内部に形成されたN+領域である。ソース領域S3は、Pウェル領域132の内部に形成されたN+領域である。電荷注入エリアCIAでは、コントロールゲートエリアCGAと同様に、ドレイン領域D3は、Pウェル領域132の内部に形成されてPウェル領域132のコンタクト部であるP+領域134aと接続されている。ソース領域S3は、Pウェル領域132の内部に形成されてPウェル領域132のコンタクト部であるP+領域134bと接続されている。ドレイン領域D3、ソース領域S3およびP+領域134a,134bは、端子Tgを介して互いに接続されている。また、Pウェル領域132に隣接して半導体基板14に形成されたNウェル領域142fは、Nウェル領域142fの一部に形成されたN+領域を介して端子Thに接続されている。
【0020】
MOSFETエリアMFAで用いられるフローティングゲートG1、コントロールゲートエリアCGAで用いられるフローティングゲートG2および電荷注入エリアCIAで用いられるフローティングゲートG3は、同一のポリシリコンで接続されている。MOSFETエリアMFAおよびコントロールゲートエリアCGAをまたいでフローティングゲートG1とフローティングゲートG2とを接続する接続部15aは、素子分離領域143d上に設けられている。コントロールゲートエリアCGAおよび電荷注入エリアCIAをまたいでフローティングゲートG2とフローティングゲートG3とを接続する接続部15bは、素子分離領域143f上に設けられている。フローティングゲートG1,G2,G3および接続部15a,15bは、同一のポリシリコンで形成されている。
【0021】
MOSFETエリアMFAには、Pウェル領域112とディープNウェル領域111との間にPN接合部144aが形成され、ディープNウェル領域111と半導体基板14との間に形成されるPN接合部144bが形成される。コントロールゲートエリアCGAには、Pウェル領域122とディープNウェル領域121との間にPN接合部144cが形成され、ディープNウェル領域121と半導体基板14との間に形成されるPN接合部144dが形成される。電荷注入エリアCIAには、Pウェル領域132とディープNウェル領域131との間にPN接合部144eが形成され、ディープNウェル領域131と半導体基板14との間に形成されるPN接合部144fが形成される。
【0022】
それぞれのエリアMFA,CGA,CIAの役目は以下のとおりである。MOSFETエリアMFAは、基準電圧生成回路の動作時にMOSFETとして働くエリアである。コントロールゲートエリアCGAは、MOSFETエリアMFAのフローティングゲートG1や電荷注入エリアCIAのフローティングゲートG3の電位を制御するエリアである。電荷注入エリアCIAは、フローティングゲートG3内への電荷の出し入れをするエリアである。それぞれのエリアMFA,CGA,CIAにおいて、フローティングゲートG1,G2,G3と半導体基板14との間にはゲート絶縁膜113,123,133が存在し、フローティングゲートG1,G2,G3に注入された電荷は閉じ込められる。このため、フローティングゲートG1,G2,G3に閉じ込められた電荷量に応じてMOSFETエリアMFAでのMOSトランジスタ11の電流/電圧特性は可変となる。すなわち、
図1に示すような構成で形成されたデバイスは、不揮発性記憶素子となる。なお、コントロールゲートエリアCGAは、MOSFETエリアMFAと電荷注入エリアCIAのフローティングゲート制御端子として機能する。このため、コントロールゲートエリアCGAの絶縁膜容量C2は、MOSFETエリアMFAの絶縁膜容量C1や電荷注入エリアCIAの絶縁膜容量C3に比べて十分大きくしておく必要がある。
【0023】
不揮発性記憶素子Maは、特別なプロセスを用いることなく、いわゆる一般的なCMOSプロセスで形成可能である。なお、不揮発性記憶素子Maの各端子Ta~Thには、所定レベルの電圧が印加されるようになっている。
【0024】
不揮発性記憶素子MaのMOSFETエリアMFAに設けられたMOSトランジスタ11の閾値電圧VthはフローティングゲートG1に注入した電荷量で制御される。
図2に示すように、不揮発性記憶素子MaのフローティングゲートG1,G2,G3には、電荷注入エリアCIAのゲート絶縁膜133を介して電子e-の注入/放出が行われる。
【0025】
図3(a)に示すように、フローティングゲートG1,G2,G3に電子を注入する場合には、例えば端子Tg,Thから0Vを印加して、電荷注入エリアCIAのPウェル領域132、Nウェル領域142e,142fおよびディープNウェル領域131を0Vに固定する。この時、例えば端子Te,TfからコントロールゲートエリアCGAのPウェル領域122、Nウェル領域142c,142dおよびディープNウェル領域121に+10V以上のパルス電圧Vppを印加する。これにより、
図3(a)中の上向き直線矢印で示すように、電荷注入エリアCIAのゲート絶縁膜133(
図2参照)を通ってゲート絶縁膜133直下にできた反転層からフローティングゲートG3に電子e-が注入され、接続部15bを介してフローティングゲートG2に電子e-が注入され、接続部15aを介してフローティングゲートG1に電子e-が注入される。
【0026】
一方、
図3(b)に示すように、フローティングゲートG1,G2,G3から電子を放出する場合には、例えば端子Te,Tfから0Vを印加して、コントロールゲートエリアCGAのPウェル領域122、Nウェル領域142c,142dおよびディープNウェル領域121を0Vに固定する。この時、例えば端子Tg,Thから電荷注入エリアCIAのPウェル領域132、Nウェル領域142e,142fおよびディープNウェル領域131に+10V以上のパルス電圧Vppを印加する。これにより、
図3(b)中の下向き直線矢印で示すように、フローティングゲートG3からゲート絶縁膜133を通って電荷注入エリアCIAのPウェル領域132側に電子e-が放出される。この時、フローティングゲートG1の存在している電子e-は、接続部15a,15b、フローティングゲートG3およびゲート絶縁膜133を通ってPウェル領域132側に放出される。またこの時、フローティングゲートG2の存在している電子e-は、接続部15b、フローティングゲートG3およびゲート絶縁膜133を通ってPウェル領域132側に放出される。
【0027】
このように、不揮発性記憶素子Maは、コントロールゲートエリアCGAに設けられた端子Te,Tfおよび電荷注入エリアCIAに設けられた各端子Tg,Thに印加する電圧を制御することにより、電荷注入エリアCIAに存在するゲート絶縁膜133を介して電荷の出し入れを行うことができる。なお、本例では正のパルス電圧を用いて電荷の出し入れを行う例を説明したが、フローティングゲートG1,G2,G3での電荷の注入/放出の制御において、正負両方のパルス電圧を用いてもよい。不揮発性記憶素子Maは、電荷の出し入れにはMOSFETエリアMFAは使用しない。
【0028】
次に、本実施形態による不揮発性記憶素子を用いた基準電圧生成回路について説明する。本実施形態による基準電圧生成回路は、単層ポリシリコン型の不揮発性記憶素子を複数個用いて基準電圧を生成する回路である。本実施形態における基準電圧生成回路は、この不揮発性記憶素子をエンハンスメント型トランジスタとディプレッション型トランジスタの2つの状態にして利用する。エンハンスメント型トランジスタとして使う不揮発性記憶素子とディプレッション型トランジスタとして使う不揮発性記憶素子は、素子として同一の寸法および構造を有している。
【0029】
本実施形態による基準電圧生成回路は、回路を構成する各々の回路素子の特性の相違に基づいて発生する基準電圧の製造バラツキを無くすようにした回路である。本実施形態における基準電圧生成回路は、少なくとも1個以上のディプレッション型トランジスタと、このディプレッション型トランジスタに流れる電流と同じ電流または関連する電流が流れる少なくとも1個以上のエンハンスメント型トランジスタとを備えている。本実施形態における基準電圧生成回路を構成するディプレッション型トランジスタおよびエンハンスメント型トランジスタは、単層ポリシリコン型の不揮発性記憶素子である。ここで、「関連する電流」とは、ディプレッション型トランジスタに流れる電流と相関がある電流を意味する。例えば、「関連する電流」は、ディプレッション型トランジスタに流れる電流のX倍の電流であったり、ディプレッション型トランジスタに流れる電流に電流値Yを加算した電流であったり、この2つの例よりも複雑な関係を有していたりする。つまり、「関連する電流」は、ディプレッション型トランジスタに流れる電流値を1つのパラメータとした関数で表される電流である。
【0030】
図4に示すように、本実施形態における基準電圧生成回路1は、複数(本例では2つ)の不揮発性記憶素子Ma1,Ma2を備えている。不揮発性記憶素子Ma1,Ma2は,
図4では簡易的に表現しているが、実際の構造は
図1に示す構造を有している。
図4に示す基準電圧生成回路1を
図1に示す不揮発性記憶素子Maを用いて表すと、
図5に示す構造のように表すことができる。不揮発性記憶素子Ma1および不揮発性記憶素子Ma2がそれぞれ
図1に示す不揮発性記憶素子Maに対応している。複数の不揮発性記憶素子Ma1,Ma2の少なくとも一部(本例では全部)は、直列に接続され、直列に接続された複数の不揮発性記憶素子Ma1,Ma2の接続部には、基準電圧Vrefが出力される電圧出力端子OUTが接続されている。不揮発性記憶素子Ma1および不揮発性記憶素子Ma2は、回路動作中ではMOSFETエリアMFAのMOSトランジスタ11にて駆動するため、いずれもトランジスタとして動作する。
【0031】
不揮発性記憶素子Ma1および不揮発性記憶素子Ma2は、高電圧が供給される高電圧供給端子Vddと低電圧が供給される低電圧供給端子Vssとの間で直列接続されている。以下、符号「Vdd」は、高電圧供給端子Vddから出力される高電圧の符号としても使用し、符号「Vss」は、低電圧供給端子Vssから出力される低電圧の符号としても使用する。不揮発性記憶素子Ma1のドレイン領域D1は、端子Tdを介して高電圧供給端子Vddに接続され、不揮発性記憶素子Ma2のソース領域S1は、端子Tcを介して低電圧供給端子Vssに接続されている。不揮発性記憶素子Ma1のソース領域S1と、不揮発性記憶素子Ma1のソース領域S2、ドレイン領域D2およびP+領域124a,124b(
図1参照)とは、端子Tcおよび端子Teを介して互いに接続されている。また、不揮発性記憶素子Ma2のドレイン領域D1と、不揮発性記憶素子Ma2のソース領域S2、ドレイン領域D2およびP+領域124a,124b(
図1参照)とは、端子Tdおよび端子Teを介して互いに接続されている。
【0032】
さらに、不揮発性記憶素子Ma1のソース領域S1、ソース領域S2、ドレイン領域D2およびP+領域124a,124bと、不揮発性記憶素子Ma2のドレイン領域D1、ソース領域S2、ドレイン領域D2およびP+領域124a,124bとは、不揮発性記憶素子Ma1の端子Tc,Teおよび不揮発性記憶素子Ma2の端子Td,Teを介して互いに接続されている。
【0033】
さらにまた、不揮発性記憶素子Ma1のソース領域S1と、不揮発性記憶素子Ma2のドレイン領域D1との接続部に電圧出力端子OUTが接続されている。
図5には、
図1との対比が明確となるように、端子Ta~Tfが図示されているが、基準電圧生成回路1では、不揮発性記憶素子Ma1および不揮発性記憶素子Ma2のそれぞれに設けられたソース領域、ドレイン領域およびフローティングゲートなどの各領域は、端子を介さずに所定の電極プラグや配線によって直接接続されていてももちろんよい。
【0034】
基準電圧生成回路1では、下段側(低電圧供給端子Vss側)の不揮発性記憶素子Ma2がエンハンスメント状態になるように調整され、上段側(高電圧供給端子Vdd側)の不揮発性記憶素子Ma1がディプレッション状態になるように調整される。不揮発性記憶素子Ma1,Ma2はいずれも、コントロールゲート(例えばコントロールゲートエリアCGAのPウェル領域122)およびフローティングゲート(例えば各エリアのフローティングゲートG1,G2,G3)を有している。これにより、不揮発性記憶素子Ma1,Ma2は、書き込みと消去ができ、書き換えられた状態を長期間にわたって保持できる。ディプレッション型トランジスタの閾値電圧は負となり、エンハンスメント型トランジスタの閾値電圧は正となる。このため、本実施形態の基準電圧生成回路1に設けられた複数の不揮発性記憶素子は、少なくとも負の閾値電圧を有する不揮発性記憶素子Ma1と正の閾値電圧を有する不揮発性記憶素子Ma2を含んでいる。
【0035】
基準電圧生成回路1に設けられた不揮発性記憶素子Ma1,Ma2のそれぞれの素子の面積は1000μm
2以上1mm
2以下であってもよい。不揮発性記憶素子Ma1,Ma2は、このようないずれの素子面積を有する場合でも、アレイ構造を有していない。なお、本例ではコントロールゲートエリアと電荷注入エリアを示す記号として、
図1、
図2、
図3、
図5ではMOSトランジスタの記号を用いているが、コントロールゲートエリアと電荷注入エリアはMOSトランジスタとしての電流(ソース/ドレイン間の電流)を流すためのものではないため、必ずしもトランジスタの構造である必要はない。例えば、MOSキャパシタでもよい。
【0036】
基準電圧生成回路1の構成要素は以下のように対応付けることができる。
不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ11は、第1MOSトランジスタの一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ11のソース領域S1は、第1ソース端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ11のドレイン領域D1は、第1ドレイン端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ11のフローティングゲートG1は、第1ゲート端子の一例に相当する。
不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ12は、第2MOSトランジスタの一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ12のソース領域S2は、第2ソース端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ12のドレイン領域D2は、第2ドレイン端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ12のフローティングゲートG2は、第2ゲート端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma1のPウェル領域122は、第2バルク端子の一例に相当する。
不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ11は、第3MOSトランジスタの一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ11のソース領域S1は第1ソース端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ11のドレイン領域D1は第3ドレイン端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ11のフローティングゲートG1は、第3ゲート端子の一例に相当する。
不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ12は、第4MOSトランジスタの一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ12のソース領域S2は、第4ソース端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ12のドレイン領域D2は、第4ドレイン端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ12のフローティングゲートG2は、第4ゲート端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma2のPウェル領域122は、第4バルク端子の一例に相当する。
【0037】
基準電圧生成回路1では、不揮発性記憶素子Ma1,Ma2のMOSトランジスタ11がNチャネルMOSトランジスタであり、低電圧供給端子Vssは高電圧供給端子Vddの電圧よりも低い電圧を有する。このため、基準電圧生成回路1において、高電圧供給端子Vddが第1電源端子の一例に相当し、低電圧供給端子Vssが第2電源端子の一例に相当する。さらに、基準電圧生成回路1では、不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ11のドレイン領域D1が端子Tdを介して高電圧供給端子Vddに接続され、不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ11のソース領域S1が端子Tcを介して低電圧供給端子Vssに接続されている。不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ11のソース領域S1が端子Tc,Tdを介して不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ11のドレイン領域D1に接続される。
【0038】
図5に示した基準電圧生成回路1の不揮発性記憶素子Ma1,Ma2を、エンハンスメント状態とディプレッション状態とになるように調整する調整方法は、以下に説明するような2通りがある。
【0039】
図6は、基準電圧生成回路1の不揮発性記憶素子Ma1,Ma2をエンハンスメント状態とディプレッション状態とになるように調整する第1の調整方法を説明するための図である。
図6に示すように、不揮発性記憶素子Ma1および不揮発性記憶素子Ma2の間に直列接続されたスイッチSW1,SW2と、スイッチSW1およびスイッチSW2の接続部(つまり電圧出力端子OUT)と外部電流源との間にスイッチSW3を設けておく。
【0040】
まず、
図6(a)に示すように、スイッチSW1をオフ状態(開状態)、スイッチSW2およびスイッチSW3をオン状態(閉状態)とする。この状態でスイッチSW3を介して外部から調整用電流Irefを下側の不揮発性記憶素子Ma2に入力し、不揮発性記憶素子Ma2をエンハンスメント状態になるようにして、電圧出力端子OUTから所望の基準電圧VREFが出力されるように調整する。その後、
図6(b)に示すように、スイッチSW3をオフ状態にして外部からの調整用電流Irefを止めるとともに、スイッチSW1をオン状態、スイッチSW2をオン状態とし、上側の不揮発性記憶素子Ma1をディプレッション状態になるようにして、不揮発性記憶素子Ma1に流れる電流が外部からの調整用電流Irefと同じになるように調整する。この調整は、電圧出力端子OUTから出力される電圧をモニタしながら所望の基準電圧VREFが出力されるように行われる。
【0041】
図7は、基準電圧生成回路1の不揮発性記憶素子Ma1,Ma2をエンハンスメント状態とディプレッション状態とになるように調整する第2の調整方法を説明するための図である。
図7に示すように、不揮発性記憶素子Ma1および不揮発性記憶素子Ma2の間に直列接続されたスイッチSW1,SW2を設けておく。
【0042】
まず、
図7(a)に示すように、スイッチSW1をオン状態(閉状態)とし、スイッチSW2をオフ状態(開状態)とする。この状態で、上側の不揮発性記憶素子Ma1がディプレッション状態になるようにして、不揮発性記憶素子Ma1に流れる調整用電流Irefが所望の値になるように調整する。その後、
図7(b)に示すように、スイッチSW1,SW2を共にオン状態(閉状態)とし、下側の不揮発性記憶素子Ma2がエンハンスメント状態になるようにして、電圧出力端子OUTから所望の基準電圧VREFが出力されるように調整する。この調整は、電圧出力端子OUTから出力される電圧をモニタしながら所望の基準電圧VREFが出力されるように行われる。
【0043】
(実施例1)
図8は、
図1に示す不揮発性記憶素子Maの基板電位(ウェル電位)を省略して表された不揮発性記憶素子Maを説明する図である。
図1中のウェル電位、すなわち端子Ta,Tf,Thは、それぞれNウェル領域142a,142d,142fの電位である。このウェル電位は、
図8(a)中にダイオードで表すPN接合部144a~144fが順方向に電流が流れないような電位にすればよいため、以下の説明では省略する。
図8(b)には、PN接合部144a~144fを省略して表した不揮発性記憶素子Maが図示されている。
【0044】
図9は、本実施形態による基準電圧生成回路1の実際の回路例を示す構成図である。
【0045】
図9に示す基準電圧生成回路1が電圧出力端子OUTから基準電圧VREFを出力している状態でのスイッチSW1~SW9の状態は、以下のようになる。
SW1:VDD
SW2:VSS
SW3:オン状態(スイッチSW5の一方の端子と端子Tcとの接続ノードN1に接続)
SW4:オフ状態(開放)
SW5:オン状態(接続)
SW6:オン状態(接続)
SW7:オン状態(スイッチSW6の一方の端子と端子Tdとの接続ノードN2に接続)
SW8:オフ状態(開放)
SW9:VSS
【0046】
図9に示す状態で、不揮発性記憶素子Ma1がディプレッション状態であり、かつ不揮発性記憶素子Ma2がエンハンスメント状態であるとき、基準電圧VREFが生成される。つまり、本実施形態による基準電圧生成回路1は、不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ11,12,13および不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ11,12,13の各端子を所望の電位に設定するスイッチ部を備えている。
【0047】
上述の
図6に示した第1の調整方法による調整シーケンスは、以下に説明する
図10から
図21に示す<調整シーケンス(1)>から<調整シーケンス(4)>のとおりである。なお、本例では不揮発性記憶素子の閾値電圧をマイナスの方向に遷移させる書き換えを「書き込み」と呼び、プラスの方向に遷移させる書き換えを「消去」と呼ぶ。
【0048】
<調整シーケンス(1)>
図10は、
図9に示した本実施形態に係る基準電圧生成回路1の実際の回路例において、不揮発性記憶素子Ma2をエンハンスメント状態に遷移させる状態を示す図である。
【0049】
不揮発性記憶素子Ma2をエンハンスメント状態(閾値を所望の基準電圧VREFよりも大きく)にする。このエンハンスメント方向に遷移させる状態(すなわち、閾値をプラスの方向に調整する状態)でのスイッチSW1~SW9の状態は、以下のようになる。
SW1:VSS
SW2:VSS
SW3:VSS
SW4:任意(
図10ではオフ状態(開放))
SW5:オフ状態(開放)
SW6:オフ状態(開放)
SW7:VPP
SW8:オン状態(接続)
SW9:VSS
【0050】
図11は、
図9に示した本実施形態に係る基準電圧生成回路1の実際の回路例における基準電圧VREFを確認する状態を示す図である。この確認状態でのスイッチSW1~SW9の状態は、以下のようになる。
SW1:VSS
SW2:VSS
SW3:VSS
SW4:任意(
図11ではオフ状態(開放))
SW5:オフ状態(開放)
SW6:オン状態(接続)
SW7:オン状態(N2に接続)
SW8:オフ状態(開放)
SW9:VSS
【0051】
図12は、
図9における消去時間に対する不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧の関係を示す図である。横軸は調整時間を示し、縦軸は不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧を示している。
図12のように、上述の
図10の状態では、不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧が経時的に変化して徐々に増加する。消去時間を任意に調整することで不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧Vthを所望の基準電圧VREFより大きな値にする。
図11に示すように、閾値電圧Vthの確認は、外部から調整用電流Irefを入力して、電圧出力端子OUTから出力される基準電圧VREFをモニタする。
【0052】
<調整シーケンス(2)>
図13は、
図9に示した本実施形態に係る基準電圧生成回路1の実際の回路例において、不揮発性記憶素子Ma2を所望のエンハンスメント状態に遷移させる状態(不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧をマイナスの方向に調整する状態となっている)を示す図である。
【0053】
不揮発性記憶素子Ma2をディプレッション方向に遷移させる状態(すなわち、閾値電圧をマイナスの方向に調整する状態)にすることで閾値電圧を徐々に下げ、不揮発性記憶素子Ma2を所望のエンハンスメント状態(閾値電圧を所望の基準電圧VREFと同じ)にすることで所望の基準電圧VREFが出力されるように調整する。
図11のように、外部から調整用電流Irefを入力して、電圧出力端子OUTから出力される基準電圧VREFをモニタして確認しながら実施する。基準電圧VREFが所望の電圧より下がりすぎた場合は、<調整シーケンス(1)>に戻る。このディプレッション方向に遷移させる状態(閾値電圧をマイナスの方向に調整する状態)でのスイッチSW1~SW9の状態は、以下のようになる。
SW1:VSS
SW2:VSS
SW3:VSS
SW4:任意(
図13では開状態(開放))
SW5:開状態(開放)
SW6:開状態(開放)
SW7:VSS
SW8:閉状態(接続)
SW9:VPP
【0054】
図14は、
図13における書き込み時間に対する不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧の関係を示す図である。横軸は調整時間を示し、縦軸は閾値電圧を示している。
図14中に期間P2で示すように、
図13の状態では、不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧Vthが経時的に変化して徐々に減少する。書き込み時間を任意に調整することで不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧Vthを所望の基準電圧VREFの値にする。なお、
図14に示す期間P1は、
図11の状態での不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧をプラスの方向に遷移させる書き換えの期間を表している。
【0055】
図15は、調整時間に対する基準電圧VREFの遷移状態を示す図である。横軸は調整時間を示し、縦軸は閾値電圧を示している。
図15には、上述の<調整シーケンス(1)>および<調整シーケンス(2)>の基準電圧VREFの遷移状態が図示されている。
図15に示すように、期間P1において、不揮発性記憶素子Ma2をエンハンスメント方向に遷移させ、閾値電圧Vthを所望の基準電圧VREFよりも大きくする。次に、期間P2から期間P8において、不揮発性記憶素子Ma2をディプレッション方向に遷移させる状態(すなわち、閾値電圧Vthをマイナスの方向に調整する状態)と、電圧出力端子OUTから出力される基準電圧VREFの値をモニタする状態(すなわち外部から調整用電流Irefを入力する状態)とを繰り返す。
図15では、期間P2,P4,P6,P8が基準電圧VREFの値をモニタする状態の期間である。期間P3,P5,P7が不揮発性記憶素子Ma2をディプレッション方向に遷移させる状態の期間である。期間P8において、電圧出力端子OUTから出力される基準電圧VREFが所望の値になると、外部から調整用電流Irefを使ったときの基準電圧VREFの調整は終了する。
【0056】
<調整シーケンス(3)>
図16は、
図9に示した本実施形態に係る基準電圧生成回路1の実際の回路例において、不揮発性記憶素子Ma1をエンハンスメント状態に遷移させる状態を示す図である。
【0057】
不揮発性記憶素子Ma1を一旦エンハンスメント状態にする。このとき所望のエンハンスメント状態にある不揮発性記憶素子Ma2は、不揮発性記憶素子Ma1に接続されない。不揮発性記憶素子Ma1をエンハンスメント方向に遷移させる状態(すなわち、閾値電圧をプラスの方向に調整する状態)でのスイッチSW1~SW9の状態は、以下のようになる。
SW1:VSS
SW2:VSS
SW3:VPP
SW4:オン状態(接続)
SW5:オフ状態(開放)
SW6:オフ状態(開放)
SW7:VSS
SW8:任意(
図16ではオフ状態(開放))
SW9:VSS
【0058】
図17は、
図16における消去時間に対する不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧の関係を示す図である。横軸は調整時間を示し、縦軸は不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧を示している。
図17に示すように、
図16の状態では、不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧Vthが経時的に変化して徐々に増加する。消去時間を任意に調整することで不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧Vthを一旦エンハンスメント状態にする。
【0059】
<調整シーケンス(4)>
図18は、
図9に示した本実施形態に係る基準電圧生成回路1の実際の回路例において、不揮発性記憶素子Ma1を所望のディプレッション状態に遷移させる状態を示す図である。
【0060】
不揮発性記憶素子Ma1を所望のディプレッション状態にすることで所望の基準電圧VREFが出力されるように調整する。このディプレッション方向に遷移させる状態(すなわち、不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧をマイナスの方向に調整する状態)でのスイッチSW1~SW9の状態は、以下のようになる。
SW1:VSS
SW2:VPP
SW3:VSS
SW4:オン状態(接続)
SW5:オフ状態(開放)
SW6:オフ状態(開放)
SW7:VSS
SW8:任意(
図18ではオフ状態(開放))
SW9:VSS
【0061】
図19は、
図9に示した本実施形態に係る基準電圧生成回路1の実際の回路例における基準電圧VREFを確認する状態を示す図である(すなわち、
図19は
図9と同じ状態)。この確認状態でのスイッチSW1~SW9の状態は、以下のようになる。
SW1:VDD
SW2:VSS
SW3:オン状態(スイッチSW5の一方の端子と端子Tcとの接続ノードN1に接続)
SW4:オフ状態(開放)
SW5:オン状態(接続)
SW6:オン状態(接続)
SW7:オン状態(スイッチSW6の一方の端子と端子Tdとの接続ノードN2に接続)
SW8:オフ状態(開放)
SW9:VSS
【0062】
図19に示すように、所望のエンハンスメント状態にある不揮発性記憶素子Ma2も接続し、基準電圧VREFをモニタして確認しながら実施する。基準電圧VREFが所望の電圧より上がりすぎた場合は、上述の<調整シーケンス(3)>に戻る。
【0063】
図20は、
図18における書き込み時間に対する不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧の関係を示す図である。横軸は調整時間を示し、縦軸は閾値電圧を示している。
図20中に期間P2で示すように、
図18に示す状態では、不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧が経時的に変化して徐々に減少する。書き込み時間を調整することで、電圧出力端子OUTから所望の値の基準電圧VREFが出力されるように、不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧Vthを調整する。これは、不揮発性記憶素子Ma1に流れる電流が外部から入力した調整用電流Irefと同じ電流になるように調整していること同じである。なお、
図20に示す期間P1は、
図16に示す状態での不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧をプラスの方向に遷移させる書き換えの期間を表している。
【0064】
図21は、調整時間に対する基準電圧VREFの遷移状態を示す図である。横軸は調整時間を示し、縦軸は閾値電圧を示している。
図21には、上述の<調整シーケンス(3)>および<調整シーケンス(4)>の基準電圧VREFの遷移状態が図示されている。
図21に示すように、期間P1において、不揮発性記憶素子Ma1をエンハンスメント方向に遷移させ、閾値電圧Vthを所望の基準電圧VREFよりも小さくする。次に、期間P2から期間P8において、不揮発性記憶素子Ma1をディプレッション方向に遷移させる状態(すなわち、閾値電圧Vthをプラスの方向に調整する状態)と、電圧出力端子OUTから出力される基準電圧VREFの値をモニタする状態とを繰り返す。
図21では、期間P2,P4,P6,P8が基準電圧VREFの値をモニタする状態の期間である。期間P3,P5,P7が不揮発性記憶素子Ma1をディプレッション方向に遷移させる状態の期間である。期間P8において、電圧出力端子OUTから出力される基準電圧VREFが所望の値になると、基準電圧VREFの調整は終了する。
【0065】
また、上述の
図7(a)および
図7(b)に示した第2の調整方法による調整シーケンスは、以下に説明する<調整シーケンス(1)>から<調整シーケンス(4)>のとおりである。
【0066】
<調整シーケンス(1)>
図22は、
図9に示した本実施形態に係る基準電圧生成回路1の実際の回路例において、不揮発性記憶素子Ma1をエンハンスメント状態に遷移させる状態を示す図である。不揮発性記憶素子Ma1を一旦エンハンスメント状態にする。このエンハンスメント方向に遷移させる状態(すなわち、不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧をプラスの方向に調整する状態)でのSWの状態は、以下のようになる。
SW1:VSS
SW2:VSS
SW3:VPP
SW4:オン状態(接続)
SW5:オフ状態(開放)
SW6:オフ状態(開放)
SW7:VSS
SW8:任意(
図22ではオフ状態(開放))
SW9:VSS
【0067】
図23は、
図22における消去時間に対する不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧の関係を示す図である。横軸は調整時間を示し、縦軸は不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧を示している。
図22に示すように、
図22の状態では、不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧Vthが
図23のように経時的に変化して徐々に増加する。消去時間を調整することで不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧Vthを一旦エンハンスメント状態にする。
【0068】
<調整シーケンス(2)>
図24は、
図9に示した本実施形態に係る基準電圧生成回路1の実際の回路例において、不揮発性記憶素子Ma1を所望のディプレッション状態に遷移させる状態を示す図である。
【0069】
不揮発性記憶素子Ma1を所望のディプレッション状態にすることで所望の基準電流IREFが流れるように調整する。不揮発性記憶素子Ma1の所望のディプレッション状態への遷移は、基準電流IREFをモニタして確認しながら実施する。基準電流IREFが所望の電流値より大きくなった場合は、上述の<調整シーケンス(1)>に戻る。このディプレッション方向に遷移させる状態(すなわち、不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧をマイナスの方向に調整する状態)でのスイッチSW1~SW9の状態は、以下のようになる。
SW1:VSS
SW2:VPP
SW3:VSS
SW4:オン状態(接続)
SW5:オフ状態(開放)
SW6:OPENオフ状態(開放)
SW7:VSS
SW8:任意(
図24ではオフ状態(開放))
SW9:VSS
【0070】
図25は、
図9に示した本実施形態に係る基準電圧生成回路1の実際の回路例における基準電流IREFを確認する状態を示す図である。この確認状態でのスイッチSW1~SW9の状態は、以下のようになる。
SW1:VDD
SW2:VSS
SW3:オン状態(スイッチSW5の一方の端子と端子Tcとの接続ノードN1に接続)
SW4:オフ状態(開放)
SW5:オン状態(接続)
SW6:オフ状態(開放)
SW7:VSS
SW8:任意(
図25ではオフ状態(開放))
SW9:VSS
【0071】
図26は、
図24における書き込み時間に対する不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧の関係を示す図である。横軸は調整時間を示し、縦軸は不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧を示している。
図26中に期間P2で示すように、
図24に示す状態では、不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧が経時的に変化して徐々に減少する。書き込み時間を調整することで不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧Vthを、所望の調整用電流Irefが出力されるように調整する。なお、
図26に示す期間P1は、
図23に示す状態での不揮発性記憶素子Ma1の閾値電圧をプラスの方向に遷移させる消去期間を表している。
【0072】
図27は、調整時間に対する基準電流IREFの遷移状態を示す図である。横軸は調整時間を示し、縦軸は不揮発性記憶素子Ma1に流れる基準電流IREFを示している。
図27には、上述の<調整シーケンス(1)>および<調整シーケンス(2)>の基準電流IREFの遷移状態が図示されている。
図27に示すように、期間P1において、不揮発性記憶素子Ma1をエンハンスメント方向に遷移させ、基準電流IREFを所望の電流値よりも小さくする。次に、期間P2から期間P8において、不揮発性記憶素子Ma1をディプレッション方向に遷移させる状態(すなわち、閾値電圧Vthをマイナスの方向に調整する状態)と、基準電流IREFの値をモニタする状態とを繰り返す。
図27では、期間P2,P4,P6,P8が基準電流IREFの値をモニタする状態の期間である。期間P3,P5,P7が不揮発性記憶素子Ma1をディプレッション方向に遷移させる状態の期間である。期間P8において、基準電流IREFが所望の値(
図27では、「IREF」と表記されている)になると、基準電流IREFの調整は終了する。
【0073】
<調整シーケンス(3)>
図28は、
図9に示した本実施形態に係る基準電圧生成回路1の実際の回路例において、不揮発性記憶素子Ma2をエンハンスメント状態に遷移させる状態を示す図である。
【0074】
不揮発性記憶素子Ma2をエンハンスメント状態(不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧を基準電圧VREFよりも大きく)にする。このエンハンスメント方向に遷移させる状態(すなわち、不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧をプラスの方向に調整する状態)でのスイッチSW1~SW9の状態は、以下のようになる。
SW1:VSS
SW2:VSS
SW3:VSS
SW4:任意(
図28ではオフ状態(開放))
SW5:オフ状態(開放)
SW6:オフ状態(開放)
SW7:VPP
SW8:オン状態(接続)
SW9:VSS
【0075】
図29は、
図9に示した本実施形態に係る基準電圧生成回路1の実際の回路例における基準電圧VREFを確認する状態を示す図である。この確認状態でのスイッチSW1~SW9の状態は、以下のようになる。
SW1:VSS
SW2:VSS
SW3:VSS
SW4:任意(
図29ではオフ状態(開放))
SW5:オフ状態(開放)
SW6:オン状態(接続)
SW7:オン状態(スイッチSW6の一方の端子と端子Tdとの接続ノードN2に接続)
SW8:オフ状態(開放)
SW9:VSS
【0076】
図30は、
図28における消去時間に対する不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧の関係を示す図である。横軸は調整時間を示し、縦軸は不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧を示している。
図30に示すように、
図28の状態では、不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧Vthが経時的に変化して徐々に増加する。消去時間を調整することで不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧Vthを所望の基準電圧VREFより大きな値にする。不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧Vthの確認は
図29に示す状態で実施する。
【0077】
<調整シーケンス(4)>
図31は、
図9に示した本実施形態に係る基準電圧生成回路1の実際の回路例において、不揮発性記憶素子Ma2を所望のエンハンスメント状態に遷移させる状態(不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧をマイナスの方向に調整する状態、すなわちディプレッション方向に遷移させる状態となっている)を示す図である。
【0078】
不揮発性記憶素子Ma2を所望のエンハンスメント状態にすることで所望の基準電圧VREFが出力されるように調整する。
図19に示すように、所望のディプレッション状態にある不揮発性記憶素子Ma1も接続し、基準電圧VREFをモニタして確認しながら実施する。基準電圧VREFが所望の電圧より下がりすぎた場合は、上述の<調整シーケンス(3)>に戻る。このディプレッション方向に遷移させる状態(不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧をマイナスの方向に調整する状態)でのスイッチSW1~SW9の状態は、以下のようになる。
SW1:VSS
SW2:VSS
SW3:VSS
SW4:任意(
図31ではオフ状態(開放))
SW5:オフ状態(開放)
SW6:オフ状態(開放)
SW7:VSS
SW8:オン状態(接続)
SW9:VPP
【0079】
図32は、
図31における書き込み時間に対する不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧の関係を示す図である。横軸は調整時間を示し、縦軸は不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧を示している。
図32中に期間P2で示すように、
図31に示す状態では、不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧が経時的に変化して徐々に減少する。書き込み時間を調整することで不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧Vthを所望の基準電圧VREFの値にする。
【0080】
図33は、調整時間に対する基準電圧VREFの遷移状態を示す図である。横軸は調整時間を示し、縦軸は不揮発性記憶素子Ma2の閾値電圧を示している。
図33には、上述の<調整シーケンス(3)>および<調整シーケンス(4)>の基準電圧VREFの遷移状態が図示されている。
図33に示すように、期間P1において、不揮発性記憶素子Ma2をエンハンスメント方向に遷移させ、基準電圧VREFを所望の電圧値(
図33では「VREF」と表記されている)よりも大きくする。次に、期間P2から期間P8において、不揮発性記憶素子Ma2をディプレッション方向に遷移させる状態(すなわち、閾値電圧Vthをマイナスの方向に調整する状態)と、基準電圧VREFの値をモニタする状態とを繰り返す。
図33では、期間P2,P4,P6,P8が基準電圧VREFの値をモニタする状態の期間である。期間P3,P5,P7が不揮発性記憶素子Ma2をディプレッション方向に遷移させる状態の期間である。期間P8において、基準電圧VREFが所望の電圧値(VREF)になると、基準電圧VREFの調整は終了する。
【0081】
図34は、本実施形態に係る基準電圧生成回路1における基準電圧発生方法を説明するためのフローチャートを示す図である。本実施形態における基準電圧発生方法は、各々の回路素子の特性の相違に基づいて発生する基準電圧の製造バラツキを無くすようにする方法である。
【0082】
少なくとも1個以上のディプレッション型MOSトランジスタと、流れる電流がディプレッション型MOSトランジスタに流れる電流と同じ電流または関連する電流である少なくとも1個以上のエンハンスメント型MOSトランジスタとを備え、各MOSトランジスタが不揮発性記憶素子である。
【0083】
図34に示すように、まず、ステップS101において消去動作を行い、ステップS102に処理を移行する。具体的にステップS101では、複数の不揮発性記憶素子の各々に流れる電流が、互いに同じまたは関連する電流である複数の不揮発性記憶素子のうち少なくとも1個に対して消去動作を行う。
【0084】
次に、ステップS102において、書込み動作を行い、ステップS103に処理を移行する。具体的に、ステップS102では、複数の不揮発性記憶素子のうち少なくとも1個に対して書き込み動作を行う。
【0085】
次に、ステップS103において、基準電圧を発生して処理を終了する。
【0086】
図35は、本実施形態に係る基準電圧生成回路1における他の基準電圧発生方法を説明するためのフローチャートを示す図である。本実施形態における他の基準電圧発生方法は、各々の回路素子の特性の相違に基づいて発生する基準電圧の製造バラツキを無くすようにする方法である。
【0087】
少なくとも1個以上のディプレッション型MOSトランジスタと、流れる電流がディプレッション型MOSトランジスタに流れる電流と同じ電流または関連する電流である少なくとも1個以上のエンハンスメント型MOSトランジスタとを備え、各MOSトランジスタが不揮発性記憶素子である。
【0088】
図35に示すように、まず、ステップS111において書込み動作を行い、ステップS112に処理を移行する。具体的に、ステップS111では、複数の不揮発性記憶素子の各々に流れる電流が互いに同じまたは関連する電流である複数の不揮発性記憶素子のうち少なくとも1個に対して書き込み動作を行う。
【0089】
次に、ステップS112において、消去動作を行い、ステップS113に処理を移行する。具体的に、ステップS112では、複数の不揮発性記憶素子のうち少なくとも1個に対して消去動作を行う。
【0090】
次に、ステップS113において、基準電圧を発生し、処理を終了する。
【0091】
生成される基準電圧VREFは、ディプレッションMOS及びエンハンスメントMOSを使用した回路と同じである。しかしながら、生成される基準電圧の調整は、不揮発性記憶素子により任意に調整することができる。また、同じ不揮発性記憶素子を使うため、プロセス的なばらつきも抑制できる。
【0092】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態による基準電圧生成回路について
図36から
図40を用いて説明する。
図1に示した基準電圧生成回路はNMOSを用いて構成されているが、
図36に示すように、PMOSを用いた基準電圧生成回路でも、基準電圧を生成することができる。
【0093】
本実施形態による基準電圧生成回路には単層ポリシリコンで形成されたPMOSとして駆動できる不揮発性記憶素子を2つ以上用いる。上記第1実施形態による不揮発性記憶素子Maは、MOSFETエリアMFAに設けられたMOSトランジスタがNMOSで構成されている(
図1参照)。これに対し、本実施形態による不揮発性記憶素子Mbは、
図37に示すように、MOSFETエリアMFAに設けられたMOSトランジスタがPMOSで構成されている点に特徴を有している。
【0094】
本実施形態でのMOSFETエリアMFAには、MOSFETで構成されたMOSトランジスタ21が設けられている。MOSトランジスタ21は、ポリシリコンで形成されたフローティングゲートG21を有している。フローティングゲートG21は単層ポリシリコンで形成されている。フローティングゲートG21は、ゲート絶縁膜213を介してNウェル領域212上に形成されている。MOSトランジスタ21は、ゲート絶縁膜213を介したフローティングゲートG21の下方の両側の一方に形成されたドレイン領域D21と、フローティングゲートG21の下方の両側の他方に形成されたソース領域S21とを備えている。ドレイン領域D21は、Nウェル領域212の内部に形成されたP+領域であり、端子Tdに接続されている。ソース領域S21は、Nウェル領域212の内部に形成されたP+領域であり、端子Tcに接続されている。不揮発性記憶素子Mbは、素子分離領域143a,143c~143hによって、不揮発性記憶素子Mbの他のパートや他の素子と素子分離されている。フローティングゲートG21はその名の通り、電気的なコンタクトを取る電極は直接接続されておらず、フローティング状態となっている。MOSFETエリアMFA以外のコントロールゲートエリアCGAおよび電荷注入エリアCIAは、第1実施形態による不揮発性記憶素子MaのコントロールゲートエリアCGAおよび電荷注入エリアCIAと同様の構成を有している。このため、本実施形態におけるコントロールゲートエリアCGAおよび電荷注入エリアCIAのそれぞれの構成については、第1実施形態と同様の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0095】
次に、本実施形態による不揮発性記憶素子を用いた基準電圧生成回路について説明する。本実施形態による基準電圧生成回路は、単層ポリシリコン型のPMOSトランジスタとして動作する不揮発性記憶素子を複数個用いて基準電圧を生成する回路である。本実施形態による基準電圧生成回路は、この不揮発性記憶素子をエンハンスメント型トランジスタとディプレッション型トランジスタの2つの状態にして利用する。エンハンスメント型トランジスタとして使う不揮発性記憶素子とディプレッション型トランジスタとして使う不揮発性記憶素子は、素子として同一の寸法および構造を有している。
【0096】
本実施形態による基準電圧生成回路は、回路を構成する各々の回路素子の特性の相違に基づいて発生する基準電圧の製造バラツキを無くすようにした回路である。本実施形態における基準電圧生成回路は、少なくとも1個以上のディプレッション型トランジスタと、このディプレッション型トランジスタに流れる電流と同じ電流または関連する電流が流れる少なくとも1個以上のエンハンスメント型トランジスタとを備えている。本実施形態における基準電圧生成回路を構成するディプレッション型トランジスタおよびエンハンスメント型トランジスタは、単層ポリシリコン型のPMOSトランジスタとして動作する不揮発性記憶素子である。
【0097】
図38に示すように、本実施形態における基準電圧生成回路2は、複数(本例では2つ)の不揮発性記憶素子Mb1,Mb2を備えている。
図38では、不揮発性記憶素子Mb1,Mb2は、簡易的に表現されているが、実際には
図37に示す構造を有している。
図38に示す基準電圧生成回路2を
図37に示す不揮発性記憶素子Mbを用いて表すと、
図39に示す構造のように表すことができる。不揮発性記憶素子Mb1および不揮発性記憶素子Mb2がそれぞれ
図37に示す不揮発性記憶素子Mbに対応している。複数の不揮発性記憶素子Mb1,Mb2の少なくとも一部(本例では全部)は、直列に接続され、直列に接続された複数の不揮発性記憶素子Mb1,Mb2の接続部には、基準電圧Vrefが出力される電圧出力端子OUTが接続されている。不揮発性記憶素子Mb1および不揮発性記憶素子Mb2は、回路動作中ではMOSFETエリアMFAのMOSトランジスタ21にて駆動するため、いずれもトランジスタとして動作する。
【0098】
不揮発性記憶素子Mb1および不揮発性記憶素子Mb2は、高電圧が供給される高電圧供給端子Vddと低電圧が供給される低電圧供給端子Vssとの間で直列接続されている。不揮発性記憶素子Mb1のソース領域S21は、端子Tcを介して高電圧供給端子Vddに接続され、不揮発性記憶素子Mb2のドレイン領域D21は端子Tdを介して低電圧供給端子Vssに接続されている。不揮発性記憶素子Mb1のソース領域S21、不揮発性記憶素子Mb1のソース領域S2、ドレイン領域D2およびP+領域124a,124b(
図37参照)とは、端子Tcおよび端子Teを介して互いに接続されている。不揮発性記憶素子Mb2のドレイン領域D21と、不揮発性記憶素子Mb2のソース領域S2、ドレイン領域D2およびP+領域124a,124b(
図1参照)とは、端子Tdおよび端子Teを介して互いに接続されている。
【0099】
さらに、不揮発性記憶素子Mb1のドレイン領域D21と、不揮発性記憶素子Mb2のソース領域S21とは、端子Tdおよび端子Tcを介して互いに接続されている。この接続部には、電圧出力端子OUTが接続されている。
図39には、
図37との対比が明確となるように、端子Ta,Tb~Tfが図示されているが、基準電圧生成回路2では、不揮発性記憶素子Mb1および不揮発性記憶素子Mb2のそれぞれに設けられたソース領域、ドレイン領域およびフローティングゲートなどの各領域は、端子を介さずに所定の電極プラグや配線によって直接接続されていてももちろんよい。
【0100】
基準電圧生成回路2では、下段側(低電圧供給端子Vss側)の不揮発性記憶素子Mb2がエンハンスメント状態になるように調整され、上段側(高電圧供給端子Vdd側)の不揮発性記憶素子Mb1がディプレッション状態になるように調整される。不揮発性記憶素子Mb1,Mb2はいずれも、コントロールゲート(例えばコントロールゲートエリアCGAのPウェル領域122)およびフローティングゲート(例えば各エリアのフローティングゲートG21,G2,G3)を有している。これにより、不揮発性記憶素子Mb1,Mb2は、書き込みと消去ができ、書き換えられた状態を長期間にわたって保持できる。MOSトランジスタ21はPMOSで構成されているため、ディプレッション型トランジスタの閾値電圧は正となり、エンハンスメント型トランジスタの閾値電圧は負となる。このため、本実施形態の基準電圧生成回路2に設けられた複数の不揮発性記憶素子Mb1,Mb2は、少なくとも正の閾値電圧を有する不揮発性記憶素子Mb1と負の閾値電圧を有する不揮発性記憶素子Mb2を含んでいる。
【0101】
基準電圧生成回路2に設けられた不揮発性記憶素子Mb1,Mb2のそれぞれの素子の面積は1000μm2以上1mm2以下であってもよい。不揮発性記憶素子Mb1,Mb2は、このようないずれの素子面積を有する場合でも、アレイ構造を有していない。
【0102】
基準電圧生成回路2の構成要素は以下のように対応付けることができる。
不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ21は、第1MOSトランジスタの一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ21のソース領域S21は、第1ソース端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ21のドレイン領域D21は、第1ドレイン端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ21のフローティングゲートG21は、第1ゲート端子の一例に相当する。
不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ12は、第2MOSトランジスタの一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ12のソース領域S2は、第2ソース端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ12のドレイン領域D2は、第2ドレイン端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ12のフローティングゲートG2は、第2ゲート端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb1のPウェル領域122は、第2バルク端子の一例に相当する。
不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ21は、第3MOSトランジスタの一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ21のソース領域S21は第1ソース端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ21のドレイン領域D21は第3ドレイン端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ21のフローティングゲートG21は、第3ゲート端子の一例に相当する。
不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ12は、第4MOSトランジスタの一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ12のソース領域S2は、第4ソース端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ12のドレイン領域D2は、第4ドレイン端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ12のフローティングゲートG2は、第4ゲート端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb2のPウェル領域122は、第4バルク端子の一例に相当する。
【0103】
基準電圧生成回路2では、不揮発性記憶素子Mb1,Mb2のMOSトランジスタ21がPチャネルMOSトランジスタであり、低電圧供給端子Vssは高電圧供給端子Vddの電圧よりも低い電圧を有する。このため、基準電圧生成回路2において、高電圧供給端子Vddが第2電源端子の一例に相当し、低電圧供給端子Vssが第1電源端子の一例に相当する。さらに、基準電圧生成回路2では、不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ11のドレイン領域D21が端子Tdを介して低電圧供給端子Vssに接続され、不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ21のソース領域S21が端子Tcを介して高電圧供給端子Vddに接続される。不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ21のドレイン領域D21が端子Td,Tcを介して不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ21のソース領域S21に接続される。
【0104】
図40は、不揮発性記憶素子Mb1,Mb2を用いた基準電圧生成回路2の実際の回路例を示す構成図(第1実施形態の
図9に相当する図)である。
【0105】
図40に示す基準電圧生成回路2が電圧出力端子OUTから基準電圧VREFを出力している状態でのスイッチSW1~SW9の状態は、以下のようになる。
SW1:VDD
SW2:VSS
SW3:オン状態(スイッチSW1の一方の端子と端子Tcとの接続ノードN1に接続)
SW4:オフ状態(開放)
SW5:オン状態(接続)
SW6:オン状態(接続)
SW7:オン状態(スイッチSW7の3つの端子のうちの一端子と端子Tdとの接続ノードN2に接続)
SW8:オフ状態(開放)
SW9:VSS
【0106】
図40に示す状態で、不揮発性記憶素子Mb1がディプレッション状態であり、かつ不揮発性記憶素子Mb2がエンハンスメント状態であるとき、基準電圧VREFが生成される。つまり、本実施形態による基準電圧生成回路2は、不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ21,12,13および不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ21,12,13の各端子を所望の電位に設定するスイッチ部を備えている。
【0107】
基準電圧生成回路2は、
図40に示す構成で、第1実施形態の実施例1と同様の調整シーケンスを実施することにより、フローティングゲートに電荷を注入して不揮発性記憶素子Mb1,Mb2の閾値電圧を書き換えることができる。これにより、基準電圧生成回路2は、精度の良い基準電圧を任意に電圧出力端子OUTから出力させることが出来る。なお、調整シーケンスは、第1実施形態の実施例1と同様であるため説明は省略する。
【0108】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態による基準電圧生成回路について
図1および
図41から
図44を用いて説明する。第1実施形態および第2実施形態による基準電圧生成回路1,2は、正の基準電圧を生成するように構成されているが、第3実施形態による基準電圧生成回路は、負の基準電圧を生成するように構成されている。
図41に示すように、基準電圧生成回路は、負の基準電圧を生成する場合には、負の電圧を供給する負電圧供給端子-Vddと低電圧供給端子Vssとの間に複数のNMOSが直列に接続される構成を有する。なお、以下、符号「-Vdd」は、負電圧供給端子-Vddから出力される負の電圧の符号としても使用する。
【0109】
本実施形態による基準電圧生成回路は、単層ポリシリコン型のNMOSトランジスタとして動作する不揮発性記憶素子Ma(
図1参照)を複数個用いて基準電圧を生成する回路である。本実施形態における基準電圧生成回路は、不揮発性記憶素子Maをエンハンスメント型トランジスタとディプレッション型トランジスタの2つの状態にして利用する。エンハンスメント型トランジスタとして使う不揮発性記憶素子Maとディプレッション型トランジスタとして使う不揮発性記憶素子Maは、素子として同一の寸法および構造を有している。
【0110】
本実施形態による基準電圧生成回路は、回路を構成する各々の回路素子の特性の相違に基づいて発生する基準電圧の製造バラツキを無くすようにした回路である。本実施形態における基準電圧生成回路は、少なくとも1個以上のディプレッション型トランジスタと、このディプレッション型トランジスタに流れる電流と同じ電流または関連する電流が流れる少なくとも1個以上のエンハンスメント型トランジスタとを備えている。本実施形態における基準電圧生成回路を構成するディプレッション型トランジスタおよびエンハンスメント型トランジスタは、単層ポリシリコン型のNMOSトランジスタとして動作する不揮発性記憶素子である。
【0111】
図42に示すように、本実施形態における基準電圧生成回路3は、複数(本例では2つ)の不揮発性記憶素子Ma1,Ma2を備えている。
図42では、不揮発性記憶素子Ma1,Ma2は、簡易的に表現されているが、実際には
図1に示す構造を有している。
図42に示す基準電圧生成回路3を
図1に示す不揮発性記憶素子Maを用いて表すと、
図43に示す構造のように表すことができる。不揮発性記憶素子Ma1および不揮発性記憶素子Ma2がそれぞれ
図1に示す不揮発性記憶素子Maに対応している。複数の不揮発性記憶素子Ma1,Ma2の少なくとも一部(本例では全部)は、直列に接続され、直列に接続された複数の不揮発性記憶素子Ma1,Ma2の接続部には、基準電圧Vrefが出力される電圧出力端子OUTが接続されている。不揮発性記憶素子Ma1および不揮発性記憶素子Ma2は、回路動作中ではMOSFETエリアMFAのMOSトランジスタ11にて駆動するため、いずれもトランジスタとして動作する。
【0112】
不揮発性記憶素子Ma1および不揮発性記憶素子Ma2は、負の高電圧が供給される負の高電圧供給端子-Vddと低電圧が供給される低電圧供給端子Vssとの間で直列接続されている。不揮発性記憶素子Ma1のソース領域S1は、端子Tcを介して負の高電圧供給端子-Vddに接続され、不揮発性記憶素子Ma2のドレイン領域D1(は、端子Tdを介して低電圧供給端子Vssに接続されている。不揮発性記憶素子Ma1のソース領域S1と、不揮発性記憶素子Ma1のソース領域S2、ドレイン領域D2およびP+領域124a,124b(
図1参照)とは、端子Tcおよび端子Teを介して互いに接続されている。不揮発性記憶素子Ma2のドレイン領域D1と、不揮発性記憶素子Ma2のソース領域S2、ドレイン領域D2およびP+領域124a,124b(
図1参照)とは、端子Tdおよび端子Teを介して互いに接続されている。
【0113】
さらに、不揮発性記憶素子Ma1のドレイン領域D1と、不揮発性記憶素子Ma2のソース領域S1とは、端子Tdおよび端子Tcを介して互いに接続されている。この接続部には、電圧出力端子OUTが接続されている。
図43には、
図1との対比が明確となるように、端子Ta~Tfが図示されているが、基準電圧生成回路3では、不揮発性記憶素子Ma1および不揮発性記憶素子Ma2のそれぞれに設けられたソース領域、ドレイン領域およびフローティングゲートなどの各領域は、端子を介さずに所定の電極プラグや配線によって直接接続されていてももちろんよい。
【0114】
基準電圧生成回路3では、下段側(低電圧供給端子Vss側)の不揮発性記憶素子Ma2がエンハンスメント状態になるように調整され、上段側(負の高電圧供給端子-Vdd側)の不揮発性記憶素子Ma1がディプレッション状態になるように調整される。不揮発性記憶素子Ma1,Ma2はいずれも、コントロールゲート(例えばコントロールゲートエリアCGAのPウェル領域122)およびフローティングゲート(例えば各エリアのフローティングゲートG1,G2,G3)を有している。これにより、不揮発性記憶素子Ma1,Ma2は、書き込みと消去ができ、書き換えられた状態を長期間にわたって保持できる。ディプレッション型トランジスタの閾値電圧は負となり、エンハンスメント型トランジスタの閾値電圧は正となる。このため、本実施形態の基準電圧生成回路3に設けられた複数の不揮発性記憶素子Ma1,Ma2は、少なくとも負の閾値電圧を有する不揮発性記憶素子Ma1と正の閾値電圧を有する不揮発性記憶素子Ma2を含んでいる。
【0115】
基準電圧生成回路3に設けられた不揮発性記憶素子Ma1,Ma2のそれぞれの素子の面積は1000μm2以上1mm2以下であってもよい。不揮発性記憶素子Ma1,Ma2は、このようないずれの素子面積を有する場合でも、アレイ構造を有していない。
【0116】
基準電圧生成回路3の構成要素は以下のように対応付けることができる。
不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ11は、第1MOSトランジスタの一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ11のソース領域S1は、第1ソース端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ11のドレイン領域D1は、第1ドレイン端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ11のフローティングゲートG1は、第1ゲート端子の一例に相当する。
不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ12は、第2MOSトランジスタの一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ12のソース領域S2は、第2ソース端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ12のドレイン領域D2は、第2ドレイン端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ12のフローティングゲートG2は、第2ゲート端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma2のPウェル領域122は、第2バルク端子の一例に相当する。
不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ11は、第3MOSトランジスタの一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ11のソース領域S1は第3ソース端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ11のドレイン領域D1は第3ドレイン端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ11のフローティングゲートG1は、第3ゲート端子の一例に相当する。
不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ12は、第4MOSトランジスタの一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ12のソース領域S2は、第4ソース端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ12のドレイン領域D2は、第4ドレイン端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ12のフローティングゲートG2は、第4ゲート端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Ma1のPウェル領域122は、第4バルク端子の一例に相当する。
【0117】
基準電圧生成回路3では、不揮発性記憶素子Ma1,Ma2のMOSトランジスタ11がNチャネルMOSトランジスタであり、低電圧供給端子Vssは負電圧供給端子-Vddの電圧よりも高い電圧を有する。このため、基準電圧生成回路3において、低電圧供給端子Vssが第1電源端子の一例に相当し、負電圧供給端子-Vddが第2電源端子の一例に相当する。さらに、基準電圧生成回路3では、不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ11のドレイン領域D1が端子Tdを介して低電圧供給端子Vssに接続され、不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ11のソース領域S1が端子Tcを介して負電圧供給端子-Vddに接続されている。不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ11のソース領域S1が端子Tc,Tdを介して不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ11のドレイン領域D1に接続される。
【0118】
図44は、不揮発性記憶素子Ma1,Ma2が用いられ負の基準電圧を出力する基準電圧生成回路3の実際の回路例を示す構成図(第1実施形態の
図9に相当する図)である。
【0119】
図44に示す基準電圧生成回路3が電圧出力端子OUTから負の基準電圧VREFを出力している状態でのスイッチSW1~SW9の状態は、以下のようになる。
SW1:-VDD
SW2:VSS
SW3:オン状態(スイッチSW1の一方の端子と端子Tcとの接続ノードN1に接続)
SW4:オフ状態(開放)
SW5:オン状態(接続)
SW6:オン状態(接続)
SW7:オン状態(スイッチSW7の3つの端子のうちの一端子と端子Tdとの接続ノードN2に接続)
SW8:オフ状態(開放)
SW9:VSS
【0120】
図44に示す状態で、不揮発性記憶素子Ma1がディプレッション状態であり、不揮発性記憶素子Ma2がエンハンスメント状態であるとき、負の基準電圧VREFが生成される。つまり、本実施形態による基準電圧生成回路3は、不揮発性記憶素子Ma1のMOSトランジスタ11,12,13および不揮発性記憶素子Ma2のMOSトランジスタ11,12,13の各端子を所望の電位に設定するスイッチ部を備えている。
【0121】
基準電圧生成回路3は、
図44に示す構成で、第1実施形態の実施例1と同様の調整シーケンスを実施することにより、フローティングゲートに電荷を注入して不揮発性記憶素子Ma1,Ma2の閾値電圧を書き換えることができる。これにより、基準電圧生成回路3は、精度の良い基準電圧を任意に電圧出力端子OUTから出力することが出来る。なお、調整シーケンスは、第1実施形態の実施例1と同様であるため、説明は省略する。
【0122】
〔第4実施形態〕
本発明の第4実施形態による基準電圧生成回路について
図37および
図45から
図48を用いて説明する。第4実施形態による基準電圧生成回路は、第3実施形態による基準電圧生成回路3とは別の回路構成を有し、負の基準電圧を生成できる点に特徴を有している。
図45に示すように、本実施形態による負の基準電圧を生成する基準電圧生成回路は、負電圧供給端子-Vddと低電圧供給端子Vssとの間に複数のPMOSが直列に接続される構成を有する。
【0123】
本実施形態による基準電圧生成回路は、単層ポリシリコン型のPMOSトランジスタとして動作する不揮発性記憶素子Mb(
図37参照)を複数個用いて基準電圧を生成する回路である。本実施形態における基準電圧生成回路は、不揮発性記憶素子Mbをエンハンスメント型トランジスタとディプレッション型トランジスタの2つの状態にして利用する。エンハンスメント型トランジスタとして使う不揮発性記憶素子Mbとディプレッション型トランジスタとして使う不揮発性記憶素子Mbは、素子として同一の寸法および構造を有している。
【0124】
本実施形態による基準電圧生成回路は、回路を構成する各々の回路素子の特性の相違に基づいて発生する基準電圧の製造バラツキを無くすようにした回路である。本実施形態における基準電圧生成回路は、少なくとも1個以上のディプレッション型トランジスタと、このディプレッション型トランジスタに流れる電流と同じ電流または関連する電流が流れる少なくとも1個以上のエンハンスメント型トランジスタとを備えている。本実施形態における基準電圧生成回路を構成するディプレッション型トランジスタおよびエンハンスメント型トランジスタは、単層ポリシリコン型のPMOSトランジスタとして動作する不揮発性記憶素子である。
【0125】
図46に示すように、本実施形態における基準電圧生成回路4は、複数(本例では2つ)の不揮発性記憶素子Mb1,Mb2を備えている。
図46では、不揮発性記憶素子Mb1,Mb2は、簡易的に表現されているが、実際には
図37に示す構造を有している。
図46に示す基準電圧生成回路4を
図37に示す不揮発性記憶素子Mbを用いて表すと、
図47に示す構造のように表すことができる。不揮発性記憶素子Mb1および不揮発性記憶素子Mb2がそれぞれ
図37に示す不揮発性記憶素子Mbに対応している。複数の不揮発性記憶素子Mb1,Mb2の少なくとも一部(本例では全部)は、直列に接続され、直列に接続された複数の不揮発性記憶素子Mb1,Mb2の接続部には、基準電圧Vrefが出力される電圧出力端子OUTが接続されている。不揮発性記憶素子Mb1および不揮発性記憶素子Mb2は、回路動作中ではMOSFETエリアMFAのMOSトランジスタ21にて駆動するため、いずれもトランジスタとして動作する。
【0126】
不揮発性記憶素子Mb1および不揮発性記憶素子Mb2は、負の高電圧が供給される負の高電圧供給端子-Vddと低電圧が供給される低電圧供給端子Vssとの間で直列接続されている。不揮発性記憶素子Mb1のドレイン領域D21は、端子Tdを介して負の高電圧供給端子-Vddに接続され、不揮発性記憶素子Mb2のソース領域S21は、端子Tcを介して低電圧供給端子Vssに接続されている。不揮発性記憶素子Mb1のソース領域S21と、不揮発性記憶素子Mb1のソース領域S2、ドレイン領域D2およびP+領域124a,124b(
図37参照)とは、端子Tcおよび端子Teを介して互いに接続されている。不揮発性記憶素子Mb2のドレイン領域D21と、不揮発性記憶素子Mb2のソース領域S2、ドレイン領域D2およびP+領域124a,124b(
図37参照)とは、端子Tdおよび端子Teを介して互いに接続されている。
【0127】
さらに、不揮発性記憶素子Mb1のソース領域S21と、不揮発性記憶素子Mb2のドレイン領域D21とは、端子Tcおよび端子Tdを介して互いに接続されている。不揮発性記憶素子Mb1のソース領域S21と不揮発性記憶素子Mb2のドレイン領域D21との接続部には、電圧出力端子OUTが接続されている。
【0128】
基準電圧生成回路4では、下段側(低電圧供給端子Vss側)の不揮発性記憶素子Mb2がエンハンスメント状態になるように調整され、上段側(負の高電圧供給端子-Vdd側)の不揮発性記憶素子Mb1がディプレッション状態になるように調整される。不揮発性記憶素子Mb1,Mb2はいずれも、コントロールゲート(例えばコントロールゲートエリアCGAのPウェル領域122)およびフローティングゲート(例えば各エリアのフローティングゲートG21,G2,G3)を有している。これにより、不揮発性記憶素子Mb1,Mb2は、書き込みと消去ができ、書き換えられた状態を長期間にわたって保持できる。MOSトランジスタ21はPMOSで構成されているため、ディプレッション型トランジスタの閾値電圧は正となり、エンハンスメント型トランジスタの閾値電圧は負となる。このため、本実施形態の基準電圧生成回路4に設けられた複数の不揮発性記憶素子Mb1,Mb2は、少なくとも正の閾値電圧を有する不揮発性記憶素子Mb1と負の閾値電圧を有する不揮発性記憶素子Mb2を含んでいる。
【0129】
基準電圧生成回路4に設けられた不揮発性記憶素子Mb1,Mb2のそれぞれの素子の面積は1000μm2以上1mm2以下であってもよい。不揮発性記憶素子Mb1,Mb2は、このようないずれの素子面積を有する場合でも、アレイ構造を有していない。
【0130】
基準電圧生成回路4の構成要素は以下のように対応付けることができる。
不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ21は、第1MOSトランジスタの一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ21のソース領域S1は、第1ソース端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ21のドレイン領域D1は、第1ドレイン端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ21のフローティングゲートG1は、第1ゲート端子の一例に相当する。
不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ12は、第2MOSトランジスタの一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ12のソース領域S2は、第2ソース端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ12のドレイン領域D2は、第2ドレイン端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ12のフローティングゲートG2は、第2ゲート端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb2のPウェル領域122は、第2バルク端子の一例に相当する。
不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ21は、第3MOSトランジスタの一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ21のソース領域S21は第3ソース端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ21のドレイン領域D21は第3ドレイン端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ21のフローティングゲートG21は、第3ゲート端子の一例に相当する。
不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ12は、第4MOSトランジスタの一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ12のソース領域S2は、第4ソース端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ12のドレイン領域D2は、第4ドレイン端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ12のフローティングゲートG2は、第4ゲート端子の一例に相当する。不揮発性記憶素子Mb1のPウェル領域122は、第4バルク端子の一例に相当する。
【0131】
基準電圧生成回路4では、不揮発性記憶素子Mb1,Mb2のMOSトランジスタ21がPチャネルMOSトランジスタであり、低電圧供給端子Vssは負電圧供給端子-Vddの電圧よりも高い電圧を有する。このため、基準電圧生成回路4において、低電圧供給端子Vssが第2電源端子の一例に相当し、負電圧供給端子-Vddが第1電源端子の一例に相当する。さらに、基準電圧生成回路4では、不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ21のドレイン領域D21が端子Tdを介して負電圧供給端子-Vddに接続され、不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ21のソース領域S1が端子Tcを介して低電圧供給端子Vssに接続されている。不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ21のドレイン領域D21が端子Td,Tcを介して不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ21のソース領域S21に接続される。
【0132】
図48は、不揮発性記憶素子Mb1,Mb2が用いられ負の基準電圧を出力する基準電圧生成回路4の実際の回路例を示す構成図(第1実施形態の
図9に相当する図)である。
【0133】
図48に示す基準電圧生成回路4が電圧出力端子OUTから負の基準電圧VREFを出力している状態でのスイッチSW1~SW9の状態は、以下のようになる。
SW1:-VDD
SW2:VSS
SW3:オン状態(スイッチSW5の一方の端子と端子Tcとの接続ノードN1に接続)
SW4:オフ状態(開放)
SW5:オン状態(接続)
SW6:オン状態(接続)
SW7:オン状態(スイッチSW6の一方の端子と端子Tdとの接続ノードN2に接続)
SW8:オフ状態(開放)
SW9:VSS
【0134】
図48に示す状態で、不揮発性記憶素子Mb1がディプレッション状態であり、不揮発性記憶素子Mb2がエンハンスメント状態であるとき、負の基準電圧VREFが生成される。つまり、本実施形態による基準電圧生成回路4は、不揮発性記憶素子Mb1のMOSトランジスタ21,12,13および不揮発性記憶素子Mb2のMOSトランジスタ21,12,13の各端子を所望の電位に設定するスイッチ部を備えている。
【0135】
基準電圧生成回路4は、
図48に示す構成で、第1実施形態の実施例1と同様の調整シーケンスを実施することにより、フローティングゲートに電荷を注入して不揮発性記憶素子Mb1,Mb2の閾値電圧を書き換えることができる。これにより、基準電圧生成回路4は、精度の良い基準電圧を任意に電圧出力端子OUTから出力することが出来る。なお、調整シーケンスは、第1実施形態の実施例1と同様であるため、説明は省略する。
【0136】
〔第5実施形態〕
次に、より優れた電荷保持特性を有する単層ポリシリコン型不揮発性記憶素子を用いた基準電圧生成回路について説明する。基準電圧生成回路のようなアナログ的に使用される不揮発性記憶素子は、不揮発性メモリなどの1/0の情報として扱われる不揮発性記憶素子と比べて、高い電荷保持特性が求められる。第5実施形態では、第1から第4実施形態で説明した不揮発性記憶素子のフローティングゲートの極性(P型/N型)を最適化することで、優れた電荷保持特性を有する基準電圧生成回路を実現するものである。以下、第1実施形態による基準電圧生成回路の構造を例にとって説明するが、本実施形態を第2から第4実施形態による基準電圧生成回路の構造に適用しても、同様の効果が得られる。
【0137】
第5実施形態では、ディプレッション型トランジスタとして用いる不揮発性記憶素子のフローティングゲート極性と、エンハンスメント型トランジスタとして用いる不揮発性記憶素子のフローティングゲート極性を、それぞれの電荷保持特性の観点から最適化する。
【0138】
図1に示した各エリアMFA,CGA,CIAにおいて、フローティングゲートと電荷保持特性の関係は次のようになる。MOSFETエリアMFAのフローティングゲート極性は、フローティングゲート内に電荷が注入されていない状態でのMOSトランジスタ11の閾値電圧に関係する。具体的には、フローティングゲートG1に電荷が注入されていない状態では、MOSトランジスタ11がNMOSFETで構成されている場合、Pウェル領域112内の不純物濃度が同じであれば、P型フローティングゲートは、N型フローティングゲートに比べて、仕事関数差分(約1V)高い閾値電圧となる。一方、一般的に電荷保持特性というのは、フローティングゲートに注入する電荷が少ないほど良好である。したがって、MOSFETのフローティングゲートに電荷が注入されていない状態における閾値電圧が、目標とする値に出来るだけ近い値になるようにしておくことで、フローティングゲートに注入する電荷量を減らすことができ、優れた電荷保持特性を実現できる。
【0139】
ここで、例えばフローティングゲートに電荷が注入されていない状態時の閾値電圧が、N型フローティングゲートを用いた場合に1Vであり、P型フローティングゲートを用いた場合に2Vである場合を例に取る。このようなデバイスを用いて基準電圧Vrefとして3Vを出力する、
図49に示すような基準電圧生成回路5を構成する場合、ディプレッション型トランジスタとして用いる方の不揮発性記憶素子Ma1(第一不揮発性記憶素子の一例)のフローティングゲートG1はN型に、エンハンスメント型トランジスタとして用いる不揮発性記憶素子Ma2(第二不揮発性記憶素子の一例)のフローティングゲートG1はP型にしておく。これにより、基準電圧生成回路5は、優れた電荷保持特性を実現できる。その理由は、次のとおりである。
【0140】
基準電圧Vrefとして3VをnA(ナノアンペア)オーダーの微小電流を流しながら出力している時(すなわち、不揮発性記憶素子Ma1,Ma2のそれぞれのMOSトランジスタ11が閾値電圧程度で動作している時)は、ゲートソース間電圧Vgsを0Vで動作させる不揮発性記憶素子Ma1は、閾値電圧がややマイナスになるようにフローティングゲートG1にプラス電荷が注入されている必要がある。一方、ゲートソース間電圧Vgsを3Vで動作させる不揮発性記憶素子Ma2は、閾値電圧が基準電圧Vrefの値を3Vよりやや小さい値になるようにフローティングゲートG1にマイナス電荷が注入されている必要がある。このとき、不揮発性記憶素子Ma1のフローティングゲートG1はN型にし、エンハンスメント型トランジスタとして用いる不揮発性記憶素子Ma2のフローティングゲートG1はP型にしておく。これにより、それぞれの不揮発性記憶素子Ma1,Ma2に注入する電荷量を小さくすることができ、フローティングゲートG1,G2内から漏れ出る電荷が少なくなり、基準電圧生成回路5の電荷保持特性を良くすることができる。
【0141】
次に、コントロールゲートエリアCGAのフローティングゲートの極性(以下、「フローティングゲート極性」と称する)について説明する。コントロールゲートエリアCGAのフローティングゲート極性は、フローティングゲートG2内に電荷が注入された状態時に、コントロールゲートエリアCGAのゲート絶縁膜123にかかる電界が小さくなるようにする。その理由は、次のとおりである。
【0142】
コントロールゲートエリアCGAは、MOSFETエリアMFAや電荷注入エリアCIAと比べてゲート絶縁膜123の絶縁膜容量C2の値を十分に大きく取る必要がある。すなわち、ゲート絶縁膜123は、面積的に他2つのエリアMFA,CIAのゲート絶縁膜113,133よりも大きくする必要がある。このため、コントロールゲートエリアCGAのゲート絶縁膜123は、電荷漏れの主経路になるので、ゲート絶縁膜123にかかる電界が小さくなるようにする。電荷が注入された状態時にコントロールゲートエリアCGAのゲート絶縁膜123にかかる電界を抑えることで、基準電圧生成回路5の電荷保持特性を大きく改善できる。
【0143】
図50は、コントロールゲートエリアCGAのゲート絶縁膜123、電荷注入エリアCIAのゲート絶縁膜133の付近のエネルギーバンド構造を示している。具体的には、コントロールゲートエリアCGAのフローティングゲートG2の直下の基板極性がP型(つまりPウェル)の場合、フローティングゲートG2にプラス電荷を注入して使用する不揮発性記憶素子には、P型のフローティングゲートとし、フローティングゲートにマイナス電荷を注入して使用する不揮発性記憶素子には、N型のフローティングゲートとする。そうすることで、
図50の例に示すように、電荷が注入されてその電荷を保持している状態時にゲート絶縁膜123にかかる電界が抑えられる。
【0144】
より具体的には、例えば
図51に示す、基準電圧Vrefを出力する基準電圧生成回路5で、ディプレッション型トランジスタのフローティングゲートG2にはプラスの電荷を注入し、エンハンスメント型トランジスタのフローティングゲートG2にはマイナスの電荷を注入した状態を想定する。このとき、ディプレッション型トランジスタとして用いる方の不揮発性記憶素子Ma1のコントロールゲートエリアCGAのフローティングゲートG2はP型に、エンハンスメント型トランジスタとして用いる不揮発性記憶素子Ma2のコントロールゲートエリアCGAのフローティングゲートG2はN型にしておく。これにより、電荷が注入されてその電荷を保持している状態時にゲート絶縁膜123にかかる電界が抑えられ、基準電圧生成回路5は、優れた電荷保持特性を実現できる。
【0145】
最後に電荷注入エリアのフローティングゲート極性について説明する。電荷注入エリアCIAのゲート絶縁膜133は、電荷注入時にトンネル電流を流すため、他のエリアMFA,CGAのゲート絶縁膜113,123に比べて欠陥が多くなる傾向がある。したがって、電荷注入エリアCIAのゲート絶縁膜133は、コントロールゲートエリアCGAのゲート絶縁膜123に比べて面積は小さいものの、電荷漏れの経路になり得る。電荷注入エリアCIAも、
図50に示したコントロールゲートエリアCGAと全く同じ考え方で、電荷が注入されてその電荷を保持している状態時にゲート絶縁膜133にかかる電界を抑えることで電荷保持特性を良くすることができる。
【0146】
ここで、
図52に示す、基準電圧Vrefを出力する基準電圧生成回路5で、ディプレッション型トランジスタのフローティングゲートにはプラスの電荷を、エンハンスメント型トランジスタのフローティングゲートにはマイナスの電荷を注入した状態を想定する。ディプレッション型トランジスタとして用いる方の不揮発性記憶素子Ma1のコントロールゲートエリアCGAのフローティングゲートG2はP型に、エンハンスメント型トランジスタとして用いる不揮発性記憶素子Ma2のコントロールゲートエリアCGAのフローティングゲートG2はN型にしておく。これにより、電荷が注入されてその電荷を保持している状態時にゲート絶縁膜123にかかる電界が抑えられ、基準電圧生成回路5は、優れた電荷保持特性を実現できる。
【0147】
図53は、電荷注入エリアCIAのゲート絶縁膜133の付近のエネルギーバンド構造を示している。電荷が注入されてその電荷を保持している状態時にゲート絶縁膜にかかる電界が抑えられるという構造は、
図53に示すように、電荷を注入している瞬間には、逆に電荷注入エリアCIAのゲート絶縁膜133には高電界が印加されるようになる。このため、電荷注入に用いる外部電源電圧Vppを下げられるというメリットもある。
【0148】
図54は、様々なフローティングゲート極性の組み合わせで、フローティングゲートにマイナス電荷を注入して電荷保持特性を評価したグラフを示している。横軸がマイナス電荷を注入した直後の不揮発性記憶素子の閾値電圧を示し、縦軸が250℃12時間のベークを実施した後の各不揮発性記憶素子の閾値電圧の変動量ΔVthを示している。
図54中に示す「N/N/N」、「P/P/P」、「N/P/P」および「P/N/N」はそれぞれ、左からMOSFETエリア/コントロールゲートエリア/電荷入入エリアのフローティングゲート極性を示している。「N」はN型を表し、「P」はP型を表している。例えば、「N/P/P」は、「MOSFETエリアのフローティングゲート極性がN型/コントロールゲートエリアのフローティングゲート極性がP型/電荷注入エリアのフローティングゲート極性がP型」であることを示している。
【0149】
電荷保持特性はフローティングゲート極性の影響を大きく受けていることが分かる。本例における電荷保持特性について、不揮発性記憶素子のフローティングゲート極性は、エンハンスメント型トランジスタ側では、MOSFETエリアMFAがP型となり、コントロールゲートエリアCGAがN型となり、電荷注入エリアCIAがN型となる組合せが最良である。また、不揮発性記憶素子のフローティングゲート極性は、ディプレッション型トランジスタ側では、エンハンスメント型トランジスタ側における極性を反転させた組み合わせが最良となる。具体的に、不揮発性記憶素子のフローティングゲート極性は、ディプレッション型トランジスタ側では、MOSFETエリアMFAがN型となり、コントロールゲートエリアCGAがP型となり、電荷注入エリアCIAがP型となる組合せが最良である。
【0150】
フローティングゲート極性の組み合わせが最良となる状態を
図55および
図56に示す。
図55は、エンハンスメント型トランジスタ側での状態を示し、
図56は、ディプレッション型トランジスタ側での状態を示している。
図55および
図56に示す不揮発性記憶素子Maは、MOSFETエリアMFA、コントロールゲートエリアCGA及び電荷注入エリアCIAの全てがNMOS系の構造(ソース領域/ドレイン領域がN型)で構成された例である。なお、フローティングゲートの極性が一部のエリアのみエンハンスメント側とディプレッション側で反転している構造でも、電荷保持特性を改善する効果はある。
【0151】
図55のMOSFETエリアMFA並びに
図56のコントロールゲートエリアCGA及び電荷注入エリアCIAのフローティングゲートの極性(P型)は、それぞれの領域のソース領域/ドレイン領域の極性(N型)と異なっている。すなわち、本実施形態による不揮発性記憶素子Maの製造プロセスにおいて、ソース領域/ドレイン領域の形成とは独立してフローティングゲートの極性を制御する必要がある。例えば、フローティングゲートのパターンを形成する前に、後にフローティングゲートとなる単層ポリシリコンに高濃度のイオン注入を実施しておく。このあと、フローティングゲートのパターンを形成してから、半導体基板にイオン注入を行いソース領域/ドレイン領域を形成する。これにより、フローティングゲートの極性とそれぞれの領域のソース領域/ドレイン領域の極性とが異なるエリアを有する不揮発性記憶素子Maを形成することができる。
【0152】
図55及び
図56に示すように、本実施形態による不揮発性記憶素子Maは、ソース領域S1(第1ソース領域の一例)、ドレイン領域D1(第1ドレイン領域の一例)及びP型及びN型のうち一方の導電型であってフローティング状態のフローティングゲートG1(第1ゲートの一例)を有するMOSトランジスタ11(第1MOSトランジスタの一例)を備えている。また、本実施形態による不揮発性記憶素子Maは、P型及びN型のうち他方の導電型のフローティングゲートG2(第2ゲートの一例)、並びに互いに接続されたソース領域S2(第2ソース領域の一例)、ドレイン領域D2(第2ドレイン領域の一例)及びPウェル領域122(第2バルク領域の一例)を有するMOSトランジスタ12(第2MOSトランジスタの一例)を備えている。さらに、本実施形態による不揮発性記憶素子Maは、MOSトランジスタ11のフローティングゲートG1とMOSトランジスタ12のフローティングゲートG2とをPN接合するPN接合部17と、PN接合部17上に形成されるシリサイド16とを備えている。
【0153】
図55に示すように、本実施形態による不揮発性記憶素子Maでは、MOSトランジスタ11において、フローティングゲートG1の導電型(P型)はソース領域S1及びドレイン領域D1の導電型(N型)と異なる。一方、MOSトランジスタ12では、フローティングゲートG2の導電型(N型)はソース領域S1及びドレイン領域D1の導電型(N型)と同じである。
また、
図56に示すように、本実施形態による不揮発性記憶素子Maでは、MOSトランジスタ12において、フローティングゲートG2の導電型(P型)は、ソース領域S1及びドレイン領域D1の導電型(N型)と異なる。一方、MOSトランジスタ11では、フローティングゲートG1の導電型(N型)は、ソース領域S1及びドレイン領域D1の導電型(N型)と同じである。
【0154】
以上から、本実施形態による不揮発性記憶素子Maは、MOSトランジスタ11においてフローティングゲートG1の導電型がソース領域S1の導電型と異なる構成、及びMOSトランジスタ12においてフローティングゲートG2の導電型がソース領域S2の導電型と異なる構成のうちの少なくとも一方の構成を備えることが好ましい。
【0155】
さらに、本実施形態による不揮発性記憶素子Maは、MOSトランジスタ12のフローティングゲートG2に接続されてP型及びN型のうち他方の導電型のフローティングゲートG3(第3ゲートの一例)、並びに互いに接続されたソース領域S3(第3ソース領域の一例)、ドレイン領域D3(第3ドレイン領域の一例)及びPウェル領域132(第3バルク領域の一例)を有するMOSトランジスタ13(第3MOSトランジスタの一例)を備えている。
【0156】
図55に示すように、本実施形態による不揮発性記憶素子Maは、MOSトランジスタ11において、フローティングゲートG1の導電型(P型)が、ソース領域S1及びドレイン領域D1の導電型(N型)と異なる構成を備えている。一方、
図55に示すように、不揮発性記憶素子Maは、MOSトランジスタ12において、フローティングゲートG2,G3の導電型(N型)が、ソース領域S2及びドレイン領域D2並びにソース領域S3及びドレイン領域D3の導電型(N型)と同じ構成を備えている。
また、
図56に示すように、本実施形態による不揮発性記憶素子Maは、MOSトランジスタ12,13において、フローティングゲートG2,G3の導電型(P型)が、ソース領域S2及びドレイン領域D2並びにソース領域S3及びドレイン領域D3の導電型(N型)と異なる構成を備えている。一方、
図56に示すように、不揮発性記憶素子Maは、MOSトランジスタ11において、フローティングゲートG1の導電型(N型)が、ソース領域S1及びドレイン領域D1の導電型(N型)と同じ構成を備えている。
【0157】
以上から、本実施形態による不揮発性記憶素子Maは、MOSトランジスタ11においてフローティングゲートG1の導電型がソース領域S1の導電型と異なる構成、MOSトランジスタ12においてフローティングゲートG2の導電型がソース領域S2の導電型と異なる構成、及びMOSトランジスタ13においてフローティングゲートG3の導電型がソース領域S3の導電型と異なる構成のうちの少なくとも1つの構成を備えることが好ましい。
【0158】
さらに、不揮発性記憶素子Maは、MOSFETエリアMFA、コントロールゲートエリアCGA、電荷注入エリアCIAの一部もしくは全てのエリアがPMOS系の構造(ソース領域/ドレイン領域がP型)で構成されていても良い。
例えば、
図57は、MOSFETエリアMFAがNMOS系で構成され、コントロールゲートエリアCGAと電荷注入エリアCIAがPMOS系で構成された不揮発性記憶素子Maのエンハンスメント型トランジスタ側での状態を示す。なお、
図57中、
図55と共通する部分については同じ参照符号を付している。
【0159】
図57に示す不揮発性記憶素子Maでは、
図55に示す不揮発性記憶素子MaのディープNウェル領域121及びPウェル領域122に変えてNウェル領域125が設けられている。さらに、
図57に示す不揮発性記憶素子Maでは、
図55に示す不揮発性記憶素子MaのディープNウェル領域131及びPウェル領域132に変えてNウェル領域135が設けられている。また、
図57に示す不揮発性記憶素子Maでは、ドレイン領域D12及びソース領域S12は、Nウェル領域125の内部に形成されている。ドレイン領域D12はNウェル領域125のコンタクト部であるN+領域126aと接続されている。ソース領域S12は、Nウェル領域125のコンタクト部であるN+領域126bと接続されている。同様に、
図57に示す不揮発性記憶素子Maでは、ドレイン領域D13及びソース領域S13は、Nウェル領域135の内部に形成されている。ドレイン領域D13は、Nウェル領域135のコンタクト部であるN+領域136aと接続されている。ソース領域S13は、Nウェル領域135のコンタクト部であるN+領域136bと接続されている。
ドレイン領域D12及びソース領域S12は、Nウェル領域125の内部に形成されたP+領域である。ドレイン領域D13及びソース領域S13は、Nウェル領域135の内部に形成されたP+領域である。
【0160】
図57に示す不揮発性記憶素子Maでは、MOSトランジスタ31において、フローティングゲートG1の導電型(P型)は、ソース領域S1及びドレイン領域D1の導電型(N型)と異なる。また、MOSトランジスタ32において、フローティングゲートG2の導電型(N型)は、ソース領域S12及びドレイン領域D12の導電型(P型)と異なる。さらに、MOSトランジスタ33において、フローティングゲートG3の導電型(N型)は、ソース領域S13及びドレイン領域D13の導電型(P型)と異なる。
【0161】
以上のように、本実施形態による不揮発性記憶素子Maは、複数のMOSトランジスタの少なくとも一つにおいて、フローティングゲートの導電型が、ソース領域の導電型と異なる構成を備えていても良い。
【0162】
このように、各エリアMFA,CGA,CIAのフローティングゲート極性を適宜最適化することによって、優れた電荷保持特性を実現することができる。なお、エリアMFA,CGA,CIAごとにフローティングゲート極性を変える場合には、
図55および
図56に示すように、フローティングゲートG1,G2,G3を形成するポリシリコンの表面をシリサイド化しておく必要がある。シリサイド16は、P型のフローティングゲートとN型のフローティングゲートとが接触部であるPN接合部17間をショートさせることが目的である。シリサイド16は、ポリシリコンで形成されたフローティングゲートG1,G2,G3および接続部15a,15bの表面全体をシリサイド化して形成されていてもよいし、PN接合部17を部分的にシリサイド化して形成されていてもよい。
【0163】
以上説明したように、このような不揮発性記憶素子を用いて第1実施形態と同様の基準電圧生成回路を組むことにより、優れた電荷保持特性を有する、単層ポリシリコンで形成可能な汎用性の高い高精度基準電圧生成回路を実現できる。
【符号の説明】
【0164】
1,2,3,4,5,100 基準電圧生成回路
11,12,13,21,32,33 MOSトランジスタ
14 半導体基板
15a,15b 接続部
16 シリサイド
17,144a,144b,144c,144d,144e,144f PN接合部
111,121,131 ディープNウェル領域
112,122,132,141a,141b Pウェル領域
113,123,133,213 ゲート絶縁膜
114,124a,124b,134a,134b P+領域
126a,126b,136a,136b N+領域
142a,142b,142c,142d,142e,142f,125,135,212 Nウェル領域
143a,143b,143c,143d,143e,143f,143g,143h 素子分離領域
CGA コントロールゲートエリア
CIA 電荷注入エリア
D,D1,D2,D2,D12,D13,D21 ドレイン領域
G ゲート
G1,G2,G3,G21 フローティングゲート
Ma,MA1,Ma2,Mb,Mb1,Mb2 不揮発性記憶素子
MFA MOSFETエリア
S,S1,S2,S3,S12,S13,S21 ソース領域
SW1~SW9 スイッチ
Ta,Tb,Tc,Td,Te,Tf,Tg,Th 端子