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特許7194930水分検知センサおよび車輌の座席シート用表皮材
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  • 特許-水分検知センサおよび車輌の座席シート用表皮材 図1
  • 特許-水分検知センサおよび車輌の座席シート用表皮材 図2
  • 特許-水分検知センサおよび車輌の座席シート用表皮材 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】水分検知センサおよび車輌の座席シート用表皮材
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/02 20060101AFI20221216BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20221216BHJP
   D02G 3/12 20060101ALI20221216BHJP
   D02G 3/44 20060101ALI20221216BHJP
   G06K 19/04 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
G06K19/02 070
D02G3/04
D02G3/12
D02G3/44
G06K19/04 010
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018152862
(22)【出願日】2018-08-15
(65)【公開番号】P2020026593
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-07-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)刊行物名:第71回年次大会 研究発表論文集 発行日:平成30年5月24日 発行所:一般社団法人 日本繊維機械学会 公開者:須賀広介、吉本佳世、高橋秀也、宮村佳成 (2)集会名:日本繊維機械学会第71回年次大会 開催日:平成30年6月1日 開催場所:大阪科学技術センター(大阪市西区靱本町1-8-4) 公開者:須賀広介、吉本佳世、高橋秀也、宮村佳成
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(73)【特許権者】
【識別番号】390014487
【氏名又は名称】住江織物株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 秀也
(72)【発明者】
【氏名】宮村 佳成
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特許第5982052(JP,B1)
【文献】特開2018-016914(JP,A)
【文献】特開2013-171428(JP,A)
【文献】国際公開第2019/151475(WO,A1)
【文献】特開2017-125274(JP,A)
【文献】特許第6417461(JP,B1)
【文献】国際公開第2008/122693(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/094794(WO,A1)
【文献】Shuaib Dawood et.al.,The possibilities of embroidered passive UHF RFID textile tags as wearable moisture sensors,IEEE Conference Proceedings ,米国,2017年,Vol.2017 No.SeGAH Page.1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G1/00-3/48、
D02J1/00-13/00、
G06K19/02、G06K19/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグを備えた複合糸を用いる水分検知センサであって、
繊維材で形成された繊維筒状体と、
前記繊維筒状体の内部に配置されたRFIDタグと、を備えてなり、
前記RFIDタグは、RFID用ICチップと、該RFID用ICチップに接続されたアンテナと、を含むことを特徴とする水分検知センサ
【請求項2】
前記繊維筒状体は、組紐及び筒状布帛からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維筒状体である請求項1に記載の水分検知センサ
【請求項3】
前記RFIDタグの少なくとも一部が、前記繊維筒状体に保持されている請求項1または2に記載の水分検知センサ
【請求項4】
前記RFIDタグの少なくとも一部が、接着剤により前記繊維筒状体に固定されている請求項1または2に記載の水分検知センサ
【請求項5】
前記繊維筒状体を構成する繊維の、前記RFIDタグの少なくとも一部への融着により、前記RFIDタグの少なくとも一部が、前記繊維筒状体に固定されている請求項1または2に記載の水分検知センサ
【請求項6】
前記アンテナは、導電糸である請求項1~5のいずれか1項に記載の水分検知センサ
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の水分検知センサを備えた車輌の座席シート用表皮材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐久性に優れたRFID複合糸を用いる水分センサおよび車輌の座席シート用表皮材に関する。

【背景技術】
【0002】
RFID(Radio Frequency Identification)タグは、RFID用ICチップと、該RFID用ICチップに接続されたアンテナとを内蔵しており、このようなRFIDタグを用いて電波等による情報交信で物を認識したりすること等が行われている。また、糸表面において1対の導電パターンで触媒層ついで無電解または電解メッキ層を積層し、さらにICチップを1対の導電パターン間に接着して製造したRFID糸が公知である(特許文献1)。
【0003】
なお、本明細書において、「RFIDタグを備えた複合糸」を略して単に「RFID複合糸」という場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-142950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のRFID糸では、他の物と接触したりすると、ICチップに傷が付きやすいし、ICチップが破損する可能性があり、耐久性が十分でないという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、耐久性に優れたRFID複合糸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1]繊維材で形成された繊維筒状体と、
前記繊維筒状体の内部に配置されたRFIDタグと、を備えてなり、
前記RFIDタグは、RFID用ICチップと、該RFID用ICチップに接続されたアンテナと、を含むことを特徴とするRFIDタグを備えた複合糸。
【0009】
[2]前記繊維筒状体は、組紐及び筒状布帛からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維筒状体である前項1に記載のRFIDタグを備えた複合糸。
【0010】
[3]前記RFIDタグの少なくとも一部が、前記繊維筒状体に保持されている前項1または2に記載のRFIDタグを備えた複合糸。
【0011】
[4]前記RFIDタグの少なくとも一部が、接着剤により前記繊維筒状体に固定されている前項1または2に記載のRFIDタグを備えた複合糸。
【0012】
[5]前記繊維筒状体を構成する繊維の、前記RFIDタグの少なくとも一部への融着により、前記RFIDタグの少なくとも一部が、前記繊維筒状体に固定されている前項1または2に記載のRFIDタグを備えた複合糸。
【0013】
[6]前記アンテナは、導電糸である前項1~5のいずれか1項に記載のRFIDタグを備えた複合糸。
【発明の効果】
【0014】
[1]の発明は、繊維筒状体の内部にRFIDタグを備えた複合糸であるので、このような複合糸を用いて、例えば、織布、編物、不織布等の布帛製品等を構成することにより、RFIDタグを備えた布帛製品等を提供できる。RFIDタグが繊維筒状体の内部に配置されているので、このRFID複合糸は、耐久性に優れている。繊維筒状体の内部に配置されたRFIDタグを利用して、例えば、電波等による情報交信で物を認識したりすることができるし、さらに高度なデータ管理を行うことができる。
【0015】
[2]の発明では、各種の様々な用途向けの布帛製品等を提供できる。
【0016】
[3]の発明では、RFIDタグの少なくとも一部が、繊維筒状体に保持されているから、RFIDを備えた複合糸の耐久性をより向上させることができる。
【0017】
[4]の発明では、RFIDタグの少なくとも一部が、接着剤で繊維筒状体に固定されているから、RFIDを備えた複合糸の耐久性をより一層向上させることができる。
【0018】
[5]の発明では、RFIDタグの少なくとも一部が、繊維の融着により繊維筒状体に固定されているから、RFIDを備えた複合糸の耐久性をより一層向上させることができる。
【0019】
[6]の発明では、アンテナは導電糸により構成されているから、RFIDを備えた複合糸の柔軟性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係るRFIDタグを備えた複合糸の一実施形態を示す模式的斜視図である。
図2】RFIDタグを備えた複合糸の一部を切り欠いて内部に配置されているRFIDタグを示す模式的斜視図である。
図3】RFIDタグの一例を示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る、RFIDタグを備えた複合糸1は、繊維材で形成された繊維筒状体2と、該繊維筒状体2の内部に配置されたRFIDタグ3と、を備えてなる(図1、2参照)。前記RFIDタグ3は、RFID用ICチップ5と、該RFID用ICチップ5に接続されたアンテナ6と、を含む(図3参照)。
【0022】
上記RFID複合糸1は、繊維筒状体2の内部にRFIDタグ3を備えた複合糸であるので、このような複合糸を用いて、例えば、織布、編物、不織布等の布帛製品等を構成することにより、RFIDタグを備えた布帛製品等を提供できる。RFIDタグ3が繊維筒状体2の内部に配置されているので、このRFID複合糸1は、耐久性に優れている。
【0023】
前記繊維筒状体2は、組紐及び筒状布帛からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維筒状体であるのが好ましい。中でも、組紐を用いるのが好ましい。前記筒状布帛としては、例えば、筒編体、筒状織物、筒状不織布等が挙げられる。
【0024】
前記組紐としては、特に限定されるものではないが、例えば、丸打紐、角打紐、平打紐等が挙げられる。前記組紐を構成する糸の太さは、50デシテックス~5000デシテックスであるのが好ましい。前記組紐を構成する糸の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル糸、ナイロン糸、綿糸、レーヨン糸等が挙げられる。中でも、前記組紐を構成する糸としては、ポリエステル糸を用いるのが好ましい。
【0025】
前記繊維筒状体2の外径は、2mm~10mmであるのが好ましい。また、前記繊維筒状体2の筒の厚さは、0.1mm~2.0mmであるのが好ましい。
【0026】
前記繊維筒状体2を構成する繊維の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、綿、レーヨン繊維等が挙げられる。中でも、前記繊維筒状体2を構成する繊維としては、ポリエステル繊維を用いるのが好ましい。
【0027】
前記RFID用ICチップ5としては、例えば、公知のものを使用できる。前記アンテナ6は、前記RFID用ICチップ5に接続されており、該アンテナ6としては、特に限定されるものではないが、例えば、導電糸、金属線、炭素繊維等を使用できる。中でも、前記アンテナ6としては、導電糸を用いるのが好ましく、この場合には複合糸の柔軟性を向上できる。前記導電糸としては、特に限定されるものではないが、例えば、金属メッキ糸、金属カバーリング糸等が挙げられる。前記導電糸の太さは、10デシテックス~200デシテックスであるのが好ましい。
【0028】
本発明では、RFIDタグ3の少なくとも一部が前記繊維筒状体2に保持されているのが好ましい。前記保持の態様としては、特に限定されるものではないが、例えば、接着剤による接着固定、繊維筒状体を構成する繊維の融着(RFIDタグへの融着)、糸による取り付け等が挙げられる。中でも、接着剤による接着固定および/または繊維筒状体を構成する繊維の融着により、RFIDタグ3の少なくとも一部が、前記繊維筒状体2の内部に固定されているのが好ましく、この場合にはRFID糸1の耐久性をさらに向上させることができる。
【0029】
前記接着剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられる。
【実施例
【0030】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0031】
<実施例1>
100デシテックスのポリエステル糸を用いて構成された組紐(繊維筒状体)2を準備すると共に、RFID用ICチップ5に導電糸からなるアンテナ6が接続されてなるRFIDタグ3を準備した(図3参照)。次に、上記RFIDタグ3を上記組紐の内部空間内に挿入配置し、ICチップ5を覆っている透明樹脂フィルムの一部と組紐2の内面の一部とをウレタン接着剤で接着し、RFIDタグ3を組紐2に固定して、図1、2に示すRFIDタグを備えた複合糸(RFID複合糸)1を得た。
【0032】
次に、上記のRFID複合糸1を用いて水分検知の実証実験を行った。即ち、上記RFID複合糸1を一部に用いて織物を製作して、車輌の座席シート用表皮材を得た。RFID複合糸1の配置間隔は、経糸、緯糸ともに5cm間隔とした。
【0033】
前記車輌の座席シート用表皮材(RFID複合糸1を備えている)では、通信装置とRFIDタグとの間で良好に通信を行うことができた。良好に通信できているので、車輌の座席シートの座面が濡れているようなことはないと判断できる。
【0034】
一方、前記車輌の座席シート用表皮材(RFID複合糸1を備えている)の座面に100mLの水を霧状に噴霧して5分経過後に、前記同様に通信装置とRFIDタグとの間で通信を試みたところ、通信を全く行うことができなかった。RFIDタグが濡れると、波長短縮効果によってアンテナの共振周波数が変化する結果、通信を全く行うことができなくなる。このような通信不可という結果により、車輌の座席シート用表皮材の座面が濡れていることを検知することができた。
【0035】
従って、本発明に係るRFID複合糸1は、水分検知センサとして利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る複合糸(RFIDを備えた複合糸)は、特に限定されるものではないが、例えば、無線通信ができるので容易に瞬時に物を認識することができるし、また水分検知も可能であるので水分検知センサとしても利用できる。
【符号の説明】
【0037】
1…RFIDタグを備えた複合糸
2…繊維筒状体
3…RFIDタグ
5…ICチップ
6…アンテナ
図1
図2
図3