(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】養魚用給餌装置
(51)【国際特許分類】
A01K 61/80 20170101AFI20221216BHJP
【FI】
A01K61/80
(21)【出願番号】P 2020513095
(86)(22)【出願日】2019-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2019005384
(87)【国際公開番号】W WO2019198332
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2018077391
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018085590
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004189
【氏名又は名称】株式会社ニッスイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】稲田 康正
(72)【発明者】
【氏名】陳 衛民
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】実公平6-27099(JP,Y2)
【文献】特開2004-208627(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0068462(US,A1)
【文献】登録実用新案第3190942(JP,U)
【文献】米国特許第4967697(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/80
B05B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面の上方に設置される飼料タンクと、
前記飼料タンクからペレット飼料を搬送する搬送路と、
前記搬送路の終点に位置するとともに、中心に設けられた回転軸に対して回転する、周縁の少なくとも一部に円弧部分を有する平板状のインペラと、
前記インペラの上面に装着されるとともに、回転方向の反対側へ傾斜した部分を有する飛散部材と、
を備え
、
前記飛散部材は、平面状の部材にて構成され、
前記飛散部材は、前記回転軸に対し複数が等配され、
前記飛散部材は、前記回転軸に対し2枚が対向して設けられているとともに、
前記インペラの周縁において前記飛散部材の間の2箇所に中心方向へ陥凹した切欠部が形成されていることを特徴とする、養魚用給餌装置。
【請求項2】
前記飛散部材は、その装着方向の延長線が前記回転軸を避けるように、前記インペラの上面に装着されることを特徴とする、請求項
1記載の養魚用給餌装置。
【請求項3】
前記搬送路は、
筒状の搬送筒と、
前記搬送筒の内部へ前記ペレット飼料が搬入される搬入口と、
前記インペラの上へ前記ペレット飼料が搬出される搬出口と、
前記搬送筒の内部に設置されるとともに、前記搬入口から前記搬出口まで前記ペレット飼料を搬送する、螺旋状の金属線材にて構成される搬送コイルと、を備えるとともに、
前記搬送コイルは、前記搬出口に相当する部分において前記金属線材の幅を軸心方向に拡げて前記搬出口を覆う飼料落下防止羽根と、前記搬入口に相当する部分において前記金属線材の幅を軸心方向に拡げて前記搬入口を覆う目詰まり防止羽根と、のうちの一方又は両方を備えることを特徴とする、請求項1
又は2記載の養魚用給餌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生簀等で飼育される養殖魚にペレット飼料を与える給餌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
養殖魚への給餌において、遠心力を利用してペレット飼料を飛散させる給餌技術が多く開発された。たとえば、特開昭56-28129号公報には、回転盤上において回転軸を通る線上に放射状に長さの異なる羽根を等配して、ペレット飼料をより広い範囲でかつ長い距離で飛散させることを図る技術が開示されている。
【0003】
また、特許第2004-208627号公報には、同様に羽根が設置された回転盤を用いてペレット飼料を飛散させているが、回転軸を通らない線上の角度で回転盤上に羽根が等配されている技術が開示されている。
【0004】
さらに、CN 102257979 Aには、同様に羽根が設置された回転盤を備えた給餌装置をフロートでエビ養殖地の水面上に浮かせて、これを滑車及びロープを用いて水面上を移動させて給餌する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の各技術は、遠心力を利用して、ペレット飼料を扇形又は円形の範囲でできるだけ遠く、均等に飛散させることを目的としている。本発明は、一定の領域内でペレット飼料を全方向かつ均等に飛散させることの可能な養魚用給餌装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下(1)~(6)に掲げる養魚用給餌装置を要旨とする。
【0007】
(1)水面の上方に設置される飼料タンクと、前記飼料タンクからペレット飼料を搬送する搬送路と、前記搬送路の終点に位置するとともに、中心に設けられた回転軸に対して回転する、周縁の少なくとも一部に円弧部分を有する平板状のインペラと、前記インペラの上面に装着されるとともに、回転方向の反対側へ傾斜した部分を有する飛散部材と、を備えることを特徴とする、養魚用給餌装置。
【0008】
(2)前記飛散部材は、平面状の部材にて構成されていることを特徴とする、(1)の養魚用給餌装置。
【0009】
(3)前記飛散部材は、その装着方向の延長線が前記回転軸を避けるように、前記インペラの上面に装着されることを特徴とする、(2)の養魚用給餌装置。
【0010】
(4)前記飛散部材は、前記回転軸に対し複数が等配されていることを特徴とする、(2)又は(3)の養魚用給餌装置。
【0011】
(5)前記飛散部材は、前記回転軸に対し2枚が対向して設けられているとともに、前記インペラの周縁において前記飛散部材の間の2箇所に中心方向へ陥凹した切欠部が形成されていることを特徴とする、(4)の養魚用給餌装置。
【0012】
(6)前記搬送路は、筒状の搬送筒と、前記搬送筒の内部へ前記ペレット飼料が搬入される搬入口と、前記インペラの上へ前記ペレット飼料が搬出される搬出口と、前記搬送筒の内部に設置されるとともに、前記搬入口から前記搬出口まで前記ペレット飼料を搬送する、螺旋状の金属線材にて構成される搬送コイルと、を備えるとともに、前記搬送コイルは、前記搬出口に相当する部分において前記金属線材の幅を軸心方向に拡げて前記搬出口を覆う飼料落下防止羽根と、前記搬入口に相当する部分において前記金属線材の幅を軸心方向に拡げて前記搬入口を覆う目詰まり防止羽根と、のうちの一方又は両方を備えることを特徴とする、(1)~(5)のいずれかの養魚用給餌装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上記構成により、養魚用給餌装置において、一定の領域内でペレット飼料を全方向かつ均等に飛散させることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明の養魚用給餌装置の飼料タンクの内部構造を示す側面図である。
【
図4】
図3においてIV方向からの背面図にて示す。ただし、ホッパーは省略し、底板は断面にて示している。
【
図5A】インペラを構成する回転盤の平面図である。
【
図5B】傾斜角105°の飛散部材の平面図である。
【
図5D】傾斜角135°の飛散部材の平面図である。
【
図6A】インペラの平面図であって、傾斜角105°の飛散部材を取り付けた場合を示す。
【
図6B】インペラの平面図であって、傾斜角135°の飛散部材を取り付けた場合を示す。
【
図8】実施例における飛散領域の平面視による模式図である。
【
図9A】飛散部材の変形例であって、羽根板Aの平面図である。
【
図9B】飛散部材の変形例であって、羽根板Bの平面図である。
【
図9C】飛散部材の変形例であって、羽根板Cの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明で言及されるサイズや角度に係る数値及び材質はあくまで例であり、本発明はこれらの例に限定されないことはいうまでもない。
【0016】
<外観>
図1は、本発明の実施の形態に係る養魚用給餌装置10を側面図で示したものである。養魚用給餌装置10は、平面視で外周の1辺が5mで内周の1辺が4mの略正方形状を呈するメッキ鋼管のフレーム11の上に繊維強化プラスチック(FRP)製の飼料タンク20が設置されている。また、フレーム11の下縁には、1辺につき3個のプラスチック製のフロート12が設置されており、これにより養魚用給餌装置10は、水面上に浮遊させた状態で生簀内に設置される。さらに、飼料タンク20から下方の水中へ達するまで、3箇所(
図3参照)の食欲センサ25が突設されている。なお、
図3中の3箇所の食欲センサ25を、左側から反時計回りに第1センサ25A、第2センサ25B及び第3センサ25Cと称する。これらの食欲センサ25は、養魚施設内の養殖魚の食欲を検知するもので、接触センサを利用している。なお、この他にも、赤外線センサ、超音波センサ、光センサ、圧力センサ等公知のセンサを食欲センサ25として利用可能である。
【0017】
飼料タンク20は、直径約2mの円筒形状を呈し、その上面には内部にペレット飼料を補給するためのハッチ22が設けられている。また、正面及び背面の2箇所には、内部のメンテナンス用に開閉可能な扉23も設けられている。
【0018】
<内部構造>
飼料タンク20の内部には、
図2に示すような、下方に向かって擂鉢状に縮径するホッパー21が収納されている。また、飼料タンク20の底板24の一部は、上方へ隆起した隆起部24Aとなっている。この隆起部24Aの下面側、すなわち、下から見て上方へ陥凹している部分には、円盤状のインペラ40が設置されている。このインペラ40の構造の詳細は後述する。底板24の隆起部24Aにおけるインペラ40の上方には開口部24Bが設けられ、前記ホッパー21の底部とこの開口部24Bとの間には搬送路30が介在している。なお、飼料タンク20の内部には、養魚用給餌装置10の作動に必要な電源設備や制御装置(コントローラー)が設置されているが、図示及び説明は省略する。
【0019】
<搬送路>
搬送路30は、底板24と平行に設置される筒状の搬送筒31を有する。
図3に示すように、前記ホッパー21の底部には搬送筒31の一端近傍(
図3中では左端側)において搬送筒31の内部へ連絡する搬入口32が設けられている。一方、搬送筒31の他端近傍(
図3中では右端側)には、搬送筒31の内部と前記開口部24Bとを連絡する搬出口33が設けられている(
図2、
図4も参照)。
【0020】
なお、
図3には、搬送筒31の内部に収容され、ペレット飼料を搬送するための搬送コイル34が視認される。この搬送コイル34は、搬送筒31の一端に設けられた搬送モーター35によって回転し、これによって搬入口32から搬入されたペレット飼料が、搬出口33まで搬送され、ここから搬送路30の終点に位置するインペラ40の上へ搬出される。
【0021】
また、底板24には、前記インペラ40を回転させる飛散モーター43も設置されており、その回転軸43Aは底板24を貫通してインペラ40の回転盤41(後述)に接続されている。
【0022】
<インペラ>
インペラ40は、
図5Aに示す円形の回転盤41に、
図5B又は
図5Dに示す飛散部材45が取り付けられることで、
図6A又は
図6Bに示す平面形状を呈する。インペラ40は、搬送路30の終点に当たる搬出口33の位置に設けられる。
【0023】
回転盤41は直径250mmの円形平板状のステンレス鋼板で形成されており、周縁の全部が円弧部分41Dとなっている。回転盤41の中心には前記回転軸43Aが取り付けられる軸穴42が形成されている。また、この軸穴42から69mmを隔てた2箇所に、この軸穴42を挟んで対向する近位取付穴41Aが形成されている。これらの近位取付穴41Aから48mm隔たった辺縁側に、それぞれ5個の遠位取付穴41Bが形成されている。これらの遠位取付穴41Bのうち最も辺縁側に位置するものは、前記軸穴42と前記近位取付穴41Aとを結ぶ延長線上に位置している。2番目に辺縁側に位置する遠位取付穴41Bは、この延長線に対して20°の角度をなす位置に設けられている。以後、3番目、4番目及び5番目の遠位取付穴41Bはさらにそれぞれ20°、20°及び15°の角度をなす位置に設けられている。すなわち、近位取付穴41Aと遠位取付穴41Bとを結ぶ線分は、前記延長線に対し、順にそれぞれ0°、20°、40°、60°及び75°の角度をなす(
図5A参照)。
【0024】
飛散部材45は、
図5B又は
図5Dに示すように、2個の取付穴45Cを有する取付部45Aと、この取付部45Aに対し所定の角度で傾斜する傾斜部45Bとが、1枚の鋼板を折り曲げて形成されている。取付部45Aと傾斜部45Bとのなす角は、
図5Bに示す飛散部材45では、Vc-Vc断面である
図5Cに示すように105°であり、
図5Dに示す飛散部材45では、Ve-Ve断面である
図5Eに示すように135°である。なお、これら取付部45Aと傾斜部45Bとのなす角は鈍角であればよく、これらの角度の例に限定されるものではない。
【0025】
この傾斜部45Bの傾斜については、これに衝突したペレット飼料がその角度によって上方に打ち上げられるようにして飛散される、という意義を有する。なお、飛散部材45は、上記傾斜部45Bのように傾斜している部分を有していれば、上記のような平板状の部分のみで構成されている必要はない。たとえば、一部又は全部が曲面で構成されていてもよい。また、板状の構造のみならず、たとえば、上記した所定の角度で傾斜するピンが一列に回転盤41の上面に植設されているものとして構成することとしてもよい。
【0026】
インペラ40は、
図6A及び
図6Bに示す平面視で時計回りに回転するように形成されている。すなわち、飛散部材45は、その傾斜部45Bが回転方向の反対側へ傾斜するように、回転盤41の上面に、軸穴42に対し互いに対向して、等配されて装着される。このとき、前記した軸穴42と近位取付穴41Aとを結ぶ延長線と、近位取付穴41A及び遠位取付穴41Bを結ぶ線分とがなす角が前記した角度のうち0°以外の場合、飛散部材45は、その装着方向の延長線が前記回転軸を避けるように装着される。なお、飛散部材45は本実施の形態のような2枚に限定されるものではなく、3枚以上の複数が等配されて装着されることとしてもよい。
【0027】
<搬送コイル>
搬送コイル34は、
図7Aに示すような、ステンレス鋼製の螺旋状金属線材にて構成されるコイルスプリングとして形成される。
図7Aの左端側は、前記搬送筒31において前記搬送モーター35が設けられている側に当たり、
図7A中のVIIb方向から見た
図7Bに示す座巻部35Bが、コイル継手35Aを介して、前記搬送モーター35の図示しない回転軸に接続される部分である。これにより、前記搬送モーター35の回転によって、搬送コイル34はその軸心を中心に回転する。
【0028】
搬送コイル34の、
図7Aにおける右端側は、前記搬送筒31において前記搬出口33が設けられている側に当たる。そして、搬送コイル34の、この搬出口33に相当する箇所には、コイルスプリングを構成する線材の幅を軸心方向に拡げたスクリュー様形状の飼料落下防止羽根34Aが設けられている。この飼料落下防止羽根34Aは、前記搬送筒31において搬出口33を塞ぐ位置を占めており、
図7AのVIIc方向から見た
図7Cに示すように、側面視では軸心近傍以外の辺縁領域を占めている。この飼料落下防止羽根34Aは、搬送コイル34が作動していない状態で、搬送筒31の内部に残存しているペレット飼料が、生簀の水面上で養魚用給餌装置10が波や風によって揺れた際に搬出口33へ漏出して水面上に落下するのを防止し、これにより意図しないタイミングでの給餌を避ける目的で設けられている。一方、搬送コイル34の左端付近にも、前記飼料落下防止羽根34Aと同様の構造を有する目詰まり防止羽根34Bが設けられている。この目詰まり防止羽根34Bは、ペレット飼料が搬入される搬入口32付近において線材の幅を軸心方向に拡げることで、搬入されてきたペレット飼料の搬送力を増加させて、ペレット飼料の目詰まりを防止する。
【0029】
なお、飼料落下防止羽根34A及び目詰まり防止羽根34Bは、どちらか一方が搬送コイル34に設けられることとしてもよい。
【0030】
<作用>
以上の構成を有する本実施の形態に係る養魚用給餌装置10は、以下のように作用する。
【0031】
飼料タンク20(
図1参照)内部のホッパー21(
図2参照)は、取付台座21Aを介して搬送路30に接続される。このホッパー21には、ハッチ22(
図1参照)を介して補給されたペレット飼料が収容される。このペレット飼料は、ホッパー21底部の搬入口32(
図3参照)を介して、搬送筒31(
図2及び
図4参照)の内部に落下する。
【0032】
ここで搬送モーター35(
図2及び
図3参照)を作動させることで、その内部の搬送コイル34(
図3及び
図7A~
図7C参照)が、
図7Bの矢印の方向(換言すると、ペレット飼料の搬送方向に向かって時計回り)へ回転し、搬送筒31の内部でペレット飼料を搬出口33(
図2~
図4参照)へ搬送する。搬出口33へ至ったペレット飼料は、底板24の開口部24B(
図2及び
図4参照)を経て、飛散モーター43(
図3及び
図4参照)により回転するインペラ40(
図2及び
図4並びに
図6A及び
図6B参照)の上に落下する。
【0033】
なお、搬送モーター35及び飛散モーター43は、図示しないコントローラーによるプログラムによって制御される。具体的には、このコントローラーによって、飛散モーター43が動作を開始して、たとえば、約1秒の時差をおいて搬送モーター35の動作が開始するように制御される。そのように制御することによって、飛散モーター43が動作していない状態で、インペラ40の上にペレット飼料が落下して、蓄積することを防止することができる。また、ペレット飼料をより均等に飛散できる。
【0034】
回転するインペラ40の上面に落下したペレット飼料は、回転盤41(
図5A参照)の上面に設置されている飛散部材45の傾斜部45B(
図5B及び
図5D参照)によって回転方向に向かって跳ね上げられ、フレーム11及びフロート12(
図1参照)の範囲内で飛散される。
【0035】
搬送モーター35の回転が停止すると搬送コイル34の回転も停止する。このとき、前記コントローラーによって、搬送モーター35が動作を停止して、たとえば、約1秒の時差をおいて飛散モーター43の動作が停止するように制御される。そのように制御することによって、インペラ40の上にペレット飼料が落下して、蓄積することを防止することができる。
【0036】
このとき、搬送筒31の内部には飛散されなかったペレット飼料が残存している。しかし、搬送コイル34には飼料落下防止羽根34A(
図7A及び
図7B参照)が設けられていて、これが搬出口33を覆っている。これにより、搬送筒31の内部に残存しているペレット飼料が、波や風によってフレーム11(
図1参照)が揺れることで搬出口33から漏出して水面上に落下することが防止される。
【0037】
本実施形態に係る養魚用給餌装置10はペレット飼料を摂食する魚類、たとえばサケ及びブリの養殖に特に適しており、カンパチ、マダイ、マサバ及びフウセイの養殖にも適している。
【実施例】
【0038】
<飛散試験概要>
以下に記載する飛散試験により、インペラ40の構成を検証した。
【0039】
図2に示すようなホッパー21、搬送路30及びインペラ40を備えた模擬給餌装置を製作し、これを
図8に平面視で示すような、1辺約4mの正方形の飛散領域50の中心に養魚用給餌装置10の中心、具体的には、搬送路30の搬入口32が位置することを想定した位置に設置した。なお、この飛散領域50は、養魚用給餌装置10のフレーム11(
図1参照)の内側の領域を想定している。
飛散領域50は、搬送路の長手方向に沿った軸をY軸とし、これと搬入口32の位置で直交する軸をX軸として、これらX軸及びY軸で4つの正方形の領域に分割した。X軸及びY軸に表示されている1目盛は0.5mである。これらの4つの領域のうち、インペラ40が位置する領域を領域IVとし、ここから時計回りに領域III、領域II及び領域Iとした。
ここで、搬送モーター35は、領域Iと領域IIとの間に位置することになる。また、食欲センサ25は、領域I、領域III及び領域IVにそれぞれ位置する。なお、領域I、領域III及び領域IVには、それぞれ第1センサ25A、第2センサ25B及び第3センサ25Cが位置する。
【0040】
搬送路30における搬送モーター35(
図2参照)の回転速度は57.3rpmとし、インペラ40の飛散モーター43(
図4参照)の回転速度は573.3rpmとした。インペラ40は
図8の平面視で時計回りに回転させた。
【0041】
飛散試験には、ファームチョイス株式会社のマダイEP5をペレット飼料として用いた。このペレット飼料約1kgを1回の試験ごとにホッパー21に投入したところ、上記条件下で約10秒で全量の飛散が完了した。
【0042】
<実施例1>
実施例1においては、先述の
図5Aに示す回転盤41に、先述の
図5B又は
図5Dに示す飛散部材45を、先述の
図6A又は
図6Bに示すように装着したものをインペラ40として使用した。インペラ40は、下記表1に示す14通りの取付パターンにて調整した。
【0043】
回転盤41(
図5A参照)の直径は、取付パターン1~12では250mm、取付パターン13及び14では280mmとした。
【0044】
飛散部材45(
図5B~
図5D参照)の取付枚数は、取付パターン1~10、13及び14では軸穴42に対し対向した位置に2枚、取付パターン11及び12では1枚とした。
【0045】
飛散部材45の傾斜部45B(
図5C及び
図5E参照)の傾斜角は、取付パターン1~5、11及び13で135°、取付パターン6~10、12及び14で105°とした。
【0046】
飛散部材45の取付角度(
図6A及び
図6B参照)は、取付パターン1及び6で0°、取付パターン2及び7で20°、取付パターン3及び8で40°、取付パターン4、9及び11~14で60°、取付パターン5及び10で75°とした。
【0047】
上記各取付パターンについて、前記条件でペレット飼料を飛散領域50に飛散させ終わった状態で、各領域I~IVに飛散されたペレット飼料の量を基準に目視にて評価した。評価基準は、以下のとおりとした。
A:散布量が多かった
B:評価Aよりは少ないが、給餌には十分な散布量であった
C:散布量は少なく、給餌には不十分であった
D:散布量は極めて少なかった
その結果を下記表1に示す。
【0048】
【0049】
<傾斜角及び取付角度>
回転盤の直径が250mmで2枚の飛散部材45を取り付けた取付パターン1~10について、傾斜角及び取付角度について検証した。
【0050】
まず、傾斜角135°の場合、取付角度が0°の取付パターン1では、ペレット飼料は領域Iに集中し、領域IVの外側にも飛散した。領域IIとIIIでのペレット飼料は極めて少なかった。
【0051】
取付角度20°の取付パターン2では、取付パターン1とほぼ同様の飛散状況であった。
【0052】
取付角度40°の取付パターン3では、ペレット飼料は領域Iに集中した。取付パターン1と比べて、領域IVにおけるペレット飼料が減り、領域II及びIIIにおけるペレット飼料は若干増えた。
【0053】
そして、取付角度60°の取付パターン4では、ペレット飼料は領域I及びIIに集中したが、領域Iにおけるペレット飼料は領域IIにおけるペレット飼料より多かった。取付パターン1と比べて、領域IVにおけるペレット飼料が減り、領域IIIにおけるペレット飼料は若干増えた。
【0054】
取付角度75°の取付パターン5では、ペレット飼料は領域I及びIIに集中したが、取付パターン4と比べて、領域II及びIIIにおけるペレット飼料は増えた。
【0055】
次に、傾斜角105°の場合、取付角度が0°の取付パターン6では、同じ取付角度の前記取付パターン1と同様、ペレット飼料は領域Iに集中した。ペレット飼料は領域IVの外側にも飛散した。領域II及びIIIでのペレット飼料は極めて少なかった。しかし、ペレット飼料の飛散範囲は取付パターン1より広かった。
【0056】
取付角度20°の取付パターン7では、ペレット飼料はまだ領域Iに集中していた。ペレット飼料は領域IVの外側にも飛散した。また、領域IIでのペレット飼料が多くなった。領域IIIでのペレット飼料は少なかった。ペレット飼料の飛散範囲は取付パターン6より若干広かった。
【0057】
取付角度40°の取付パターン8では、ペレット飼料は領域I及びIIにおいて広く、均等に飛散した。領域III及びIVにおけるペレット飼料は少なかった。
【0058】
取付角度60°の取付パターン9では、ペレット飼料はまだ領域I及びIIに集中していた。取付パターン8と比べると、領域IIにおけるペレット飼料が増えた。領域III及びIVにおけるペレット飼料は少なかった。
【0059】
取付角度75°の取付パターン10では、ペレット飼料はまだ領域I及びIIに集中していた。取付パターン9と比べると、領域II及びIIIにおけるペレット飼料がさらに増えた。領域IVにおけるペレット飼料は少なかった。
【0060】
以上の結果、いずれの傾斜角においても、取付角度の小さい場合(すなわち、飛散部材45の装着方向の延長線が回転軸43Aを通る0°の場合、及び、これに次いで小さい20°の場合)は領域Iへペレット飼料の大部分が飛散された。そして、飛散部材45の装着方向の延長線が回転軸43Aを避け、取付角度が大きくなるにつれて、領域IIへの飛散割合が高くなっていった。これは、インペラ40の上でペレット飼料が飛散部材45に衝突する際に、取付角度が小さいほど、ペレット飼料が跳ね返る方向がインペラ40の回転方向と一致しやすいのに対し、取付角度が大きくなるにつれて、ペレット飼料が跳ね返る方向がインペラ40の回転方向に対し外向きになりやすいためであると推察される。
【0061】
よって、養魚用給餌装置10のフレーム11の範囲内、かつ食欲センサ25の位置において生簀の水面にペレット飼料をより均等に飛散させるという観点からは、取付角度は60°又は75°、特に75°が好適である。
【0062】
また、同じ取付角度で飛散部材45を取り付けた場合は、傾斜角105°のときが、傾斜角135°のときより広く、均等にペレット飼料を飛散させることができた。これは、インペラ40の上でペレット飼料が飛散部材45に衝突する際に、傾斜角が大きい方が、ペレット飼料が上向きに跳ね返るため、飛距離が短くなるためと推察される。
【0063】
<飛散部材の枚数>
上記で検証した取付パターン1~10のうち、好適な評価であった取付角度60°の取付パターン4及び9と対比させて、飛散部材45の枚数について検証した。
【0064】
その結果、前記表1に示すように、飛散部材45の枚数が1枚である以外は前記取付パターン4と同じである取付パターン11では、回転バランスには問題はなかったが、ペレット飼料の飛散範囲は飛散部材45の枚数が2枚の取付パターン4と比べると、ペレット飼料は領域I及びIVに多めに集中し、領域II及びIIIにおけるペレット飼料は少なかった。
【0065】
飛散部材45の枚数が1枚である以外は前記取付パターン9と同じである取付パターン12でも、回転バランスには問題はなかったが、ペレット飼料の飛散範囲は飛散部材45の枚数が2枚の取付パターン9と比べると、ペレット飼料は領域I及びIVに多めに集中し、領域II及びIIIにおけるペレット飼料は少なかった。
【0066】
これは、飛散部材45の枚数が1枚であることによって、飛散部材45に衝突せずに、インペラ40の回転により生ずる遠心力のみにより落下してしまうペレット飼料の割合が増加したことで、領域IVで飛散される割合が高まり、結果として飛散部材45の枚数が2枚の場合よりも偏りが生じたものと推察される。
【0067】
<回転盤の直径>
上記で検証した取付パターン1~10のうち、好適な評価であった取付角度60°の取付パターン4及び9と対比させて、回転盤41の直径について検証した。
【0068】
その結果、前記表1に示すように、回転盤41の直径が280mmである以外は前記取付パターン4と同じである取付パターン13では、取付パターン4と比べると、ペレット飼料は領域I、II及びIVに集中したが、飛散範囲は広くなった。領域IIIでのペレット飼料は少なかった。なお、いずれの領域でもインペラ40の直下及びその近傍でのペレット飼料が少なかった。このことは、回転盤41の直径が280mmである以外は前記取付パターン9と同じである取付パターン14でも同様であった。
【0069】
よって、同じ条件下であれば、回転盤41の直径が大きいほど、より広範囲かつ均等にペレット飼料が飛散されることとなった。
【0070】
以上のまとめとして、同じ取付角度の場合、傾斜角105°の飛散部材45は、傾斜角135°の飛散部材45より広く、より均等にペレット飼料を飛散させることができた。また、同じ傾斜角の飛散部材45の場合、取付角度が60°又は75°のとき、他の取付角度よりも広く、均等にペレット飼料を飛散させることができた。なお、領域IIIに設置される食欲センサ25(第2センサ25B)に養殖魚を接近させるためには、取付角度を75°とするのがよいと考えられる。
【0071】
また、回転盤41の直径はペレット飼料の飛散範囲に影響を与えることも分かった。すなわち、直径280mmの回転盤41を有するインペラ40は、直径250mmの回転盤41を有するインペラ40よりも広範囲にペレット飼料を飛散させることができた。
【0072】
以上を総合すると、上記表1に示した結果からは、直径280mmの回転盤41に、傾斜角105°の飛散部材45を60°又は75°の取付角度(とりわけ、75°)で取り付けたインペラ40が、最もペレット飼料の飛散範囲が広く、かつ均等であった。
【0073】
ここで、たとえば、
図1に示す養魚用給餌装置10において、ペレット飼料の飛散距離が大き過ぎると、ペレット飼料がフレーム11やフロート12の上に載ってしまうこともある。そうなると、そのペレット飼料を目がけて海鳥が飛来してくることで養殖魚がそれを避けて水面に近寄ってこなくなり、摂餌量の減少やひいては肥育の遅延に繋がることになることが考えられる。また、フレーム11やフロート12の上に載ってしまったペレット飼料が波しぶきで湿潤することで腐敗しやすくなり、養魚環境の悪化を招くことにもなる。
【0074】
これらのような懸念がある場合には、ペレット飼料の飛散範囲を一定の領域内に制限することを考慮すべきである。そのような場合は、直径250mmの回転盤41に傾斜角135°の飛散部材45を取付角度60°又は75°で取り付けたインペラ40を使用することも推奨される。
【0075】
<実施例2>
次に、飛散部材45の形状について検討する。
【0076】
実施例2で使用された飛散部材45は、
図9A~
図9Dに示すような、羽根板A、羽根板B及び羽根板Cの3種類である。
【0077】
飛散部材45としての羽根板Aは、
図9Aに示すように、傾斜部45Bが取付部45Aよりも長くなっている。具体的には、取付部45Aの両端から、傾斜部45Bがはみ出している。取付穴45Cは、前記実施例1の飛散部材45と同様に設けられている。なお、この羽根板Aにおける傾斜部45Bの傾斜角は、前記実施例1の飛散部材45と同様に、105°(
図5C参照)及び135°(
図5E参照)とした。
【0078】
飛散部材45としての羽根板Bは、
図9Bに示すように、傾斜部45Bが取付部45Aよりも短くなっている。具体的には、傾斜部45Bの軸心寄りの側が切り欠かれたように短くなっている。取付穴45Cは、前記実施例1の飛散部材45と同様に設けられている。なお、この羽根板Bにおける傾斜部45Bの傾斜角は、前記実施例1の飛散部材45と同様に、105°(
図5C参照)及び135°(
図5E参照)とした。
【0079】
飛散部材45としての羽根板Cは、
図9Cに示すように、傾斜部45Bと取付部45Aとは同じ長さであり、この点は前記実施例1の飛散部材45と同様である。取付穴45Cは、前記実施例1の飛散部材45と同様に設けられている。ただし、傾斜部45Bの傾斜角は、
図9Dに示すように、95°である。
【0080】
実施例2においては、先述の
図5Aに示す回転盤41に、以上の各飛散部材45を2枚、先述の
図6A又は
図6Bと同様に、軸穴42に対し対向した位置に装着したものをインペラ40として使用した。インペラ40は、下記表2に示す13通りの取付パターンにて調整した。なお、回転盤41(
図5A参照)の直径はいずれも250mmとした。
【0081】
使用した飛散部材45の種類は、取付パターン15、16、19及び20では羽根板Aとし、取付パターン17、18、21及び22では羽根板Bとし、取付パターン23~27では羽根板Cとした。
【0082】
飛散部材45の傾斜角は、取付パターン15~18では135°とし、取付パターン19~22では105°とした。取付パターン23~27での傾斜角は95°であった。
【0083】
飛散部材45の取付角度は、取付パターン15、17、19、21及び26では60°とし、取付パターン16、18、20、22及び27では75°とし、取付パターン23では0°、取付パターン24では20°、取付パターン25では40°とした。
【0084】
上記各取付パターンについて、前記条件でペレット飼料を飛散領域50に飛散させ終わった状態で、各領域I~IVに飛散されたペレット飼料の量を基準に目視にて前記評価基準に従って評価した。その結果を下記表2に示す。
【0085】
【0086】
傾斜角135°の場合、羽根板Aを用いた取付パターン15では、ペレット飼料は領域I及びIIに集中し、領域III及びIVでは少なかった。前記実施例1の取付パターン4よりペレット飼料の分布は偏り、飛散距離も短くなった。
【0087】
同じく羽根板Aを用いた取付パターン16では、ペレット飼料は領域I及びIIに集中し、領域III及びIVでは少なかった。前記実施例1の取付パターン4よりペレット飼料の分布は偏った。
【0088】
羽根板Bを用いた取付パターン17では、ペレット飼料は領域I及びIIに集中した。羽根板Aを用いた以外は同条件の取付パターン15と比べると、ペレット飼料はより広く、均等に飛散した。領域III及びIVでのペレット飼料は少なかった。
【0089】
同じく羽根板Bを用いた取付パターン18では、ペレット飼料は領域I及びIIに集中した。取付角度以外は同条件の取付パターン17と比べると、領域IIにおけるペレット飼料がさらに増えた。領域III及びIVでのペレット飼料は極めて少なかった。
【0090】
次に傾斜角105°の場合、羽根板Aを用いた取付パターン19では、ペレット飼料は領域I及びIIに集中し、領域III及びIVでは少なかった。
【0091】
同じく羽根板Aを用いた取付パターン20では、ペレット飼料は領域I及びIIに集中した。取付角度以外は同条件の取付パターン19と比べると、領域IIにおけるペレット飼料はより多かった。領域III及びIVでのペレット飼料は少なかった。
【0092】
羽根板Bを用いた取付パターン21では、ペレット飼料は領域I及びIIに集中し、領域IIIでは少なかった。ペレット飼料は領域IVの外側にも飛散していた。羽根板Aを用いた以外は同条件の取付パターン19と比べると、ペレット飼料の飛散距離は長くなった。
【0093】
同じく羽根板Bを用いた取付パターン22では、ペレット飼料は領域I及びIIに集中し、領域III及びIVでは比較的少なかった。羽根板Aを用いた以外は同条件の取付パターン20と比べると、ペレット飼料の飛散距離は長くなった。
【0094】
傾斜角95°の羽根板Cを用いて取付角度0°の取付パターン23では、ペレット飼料は領域Iに集中した。ペレット飼料は領域IVの外側にも多く飛散した。領域II及びIIIでのペレット飼料は極めて少なかった。傾斜角135°及び105°の場合と比べると、同じ回転盤41、同じ取付角度でも飛散距離が増えた。
【0095】
同じく羽根板Cを用いて取付角度20°の取付パターン24では、ペレット飼料は領域Iに集中した。ペレット飼料は領域IVの外側にも多く飛散した。領域II及びIII、とりわけ領域IIIでのペレット飼料は少なかった。傾斜角135°及び105°の場合と比べると、同じ回転盤41、同じ取付角度でも飛散距離が増えた。
【0096】
同じく羽根板Cを用いて取付角度40°の取付パターン25では、ペレット飼料は領域Iに集中した。ペレット飼料は領域IVの外側にも飛散した。領域IIにおけるペレット飼料は増えた。領域IIIでのペレット飼料は少なかった。傾斜角135°及び105°の場合と比べると、同じ回転盤41、同じ取付角度でも飛散距離が増えた。
【0097】
同じく羽根板Cを用いて取付角度60°の取付パターン26では、ペレット飼料は領域I及びIIに集中した。領域IIIにおけるペレット飼料は少なかった。領域IVの外側におけるペレット飼料は大きく減った。傾斜角135°及び105°の場合と比べると、同じ回転盤41、同じ取付角度でも飛散距離が増えた。
【0098】
同じく羽根板Cを用いて取付角度75°の取付パターン27では、ペレット飼料は領域I及びIIに集中した。領域IIにおけるペレット飼料は取付パターン26より多くなった。領域IIIにおけるペレット飼料は増えた。領域IVにおけるペレット飼料は減った。傾斜角135°及び105°の場合と比べると、同じ回転盤41、同じ取付角度でも飛散距離が増えた。
【0099】
以上の実施例2のまとめとして、同じ傾斜角の飛散部材45でも、その傾斜部45Bの長さの変化に伴い、ペレット飼料の飛散範囲及び均等性は変化した。ただし、傾斜部45Bの長さがペレット飼料の飛散範囲及び均等性に与える影響は飛散部材45の傾斜角によって異なる。すなわち、傾斜角135°の飛散部材45の傾斜部45Bを長くしたら、ペレット飼料の飛散範囲が狭くなり、均等性も悪くなった。一方、傾斜角105°の飛散部材45の傾斜部45Bを長くしたら、ペレット飼料の飛散範囲が狭くなり、均等性も悪くなったが、その程度は傾斜角度135°の場合よりは小さかった。
【0100】
また、同じ傾斜角の飛散部材45を同じ回転盤41に同じ取付角度で固定した場合は、傾斜部45Bが短いほどペレット飼料の飛散範囲が広くなり、均等性も良くなった。
【0101】
傾斜角95°の飛散部材45(羽根板C)は、傾斜角105°及び135°の飛散部材45よりペレット飼料を広く、均等に飛散させた。
【0102】
<実施例3>
実施例3においては、先述の
図5Aに示す回転盤41に、以上の各飛散部材45を2枚、先述の
図6A又は
図6Bと同様に、軸穴42に対し対向した位置に装着したものをインペラ40として使用した。インペラ40は、下記表3に示す10通りの取付パターンにて調整した。なお、回転盤41(
図5A参照)の直径はいずれも280mmとした。
【0103】
使用した飛散部材45の種類は、取付パターン28、29、32及び33では羽根板Aとし、取付パターン30、31、34及び35では羽根板Bとし、取付パターン36及び37では羽根板Cとした。
【0104】
飛散部材45の傾斜角は、取付パターン28~31では135°とし、取付パターン32~35では105°とした。取付パターン36及び37での傾斜角は95°であった。
【0105】
飛散部材45の取付角度は、取付パターン28、30、32、34及び36では60°とし、取付パターン29、31、33、35及び37では75°とした。
【0106】
上記各取付パターンについて、前記条件でペレット飼料を飛散領域50に飛散させ終わった状態で、各領域I~IVに飛散されたペレット飼料の量を基準に目視にて前記評価基準に従って評価した。その結果を下記表3に示す。
【0107】
【0108】
傾斜角135°の場合、羽根板Aを用いた取付パターン28では、領域Iにおけるペレット飼料が最も多かった。次に多かったのが領域IIであった。領域III及びIVでのペレット飼料は少なかった。回転盤41の直径以外は同条件の取付パターン15よりもペレット飼料分布が広く、距離が長く、均等であった。
【0109】
同じく羽根板Aを用いた取付パターン29では、領域Iにおけるペレット飼料が最も多かった。次に多かったのが領域IIであった。回転盤41の直径以外は同条件の取付パターン16より領域IIにおけるペレット飼料が増えた。領域III及びIVでのペレット飼料は極めて少なかった。取付パターン16よりもペレット飼料分布が広く、距離が長く、均等であった。
【0110】
羽根板Bを用いた取付パターン30では、領域Iにおけるペレット飼料が最も多かった。次に多かったのが領域II及びIVであった。領域IIIでのペレット飼料は少なかった。回転盤41の直径以外は同条件の取付パターン17よりペレット飼料分布が広く、距離が長く、均等であった。
【0111】
同じく羽根板Bを用いた取付パターン31では、領域Iにおけるペレット飼料が最も多かった。次に多かったのが領域IIであった。その次に多かったのが領域IVであった。同じインペラ40を使用した取付パターン30より領域IIにおけるペレット飼料が増え、領域IVにおけるペレット飼料が減った。領域IIIでのペレット飼料は少なかった。回転盤41の直径以外は同条件の取付パターン18よりペレット飼料分布が広く、距離が長く、均等であった。
【0112】
次に傾斜角105°の場合、羽根板Aを用いた取付パターン32では、領域Iにおけるペレット飼料が最も多かった。次に多かったのが領域II及びIVであった。領域IIIでのペレット飼料は少なかった。回転盤41の直径以外は同条件の取付パターン19よりペレット飼料分布が広く、距離が長く、均等であった。
【0113】
同じく羽根板Aを用いた取付パターン33では、領域Iにおけるペレット飼料が最も多かった。次に多かったのが領域IIであった。その次に多かったのが領域IVであった。同じインペラ40を使用した取付パターン32より領域IIにおけるペレット飼料が若干増え、領域IVにおけるペレット飼料が若干減った。領域IIIでのペレット飼料は少なかった。回転盤41の直径以外は同条件の取付パターン20よりペレット飼料分布が広く、距離が長く、均等であった。
【0114】
羽根板Bを用いた取付パターン34では、領域Iにおけるペレット飼料が最も多かった。次に多かったのが領域IVで、その次に多かったのが領域IIであった。領域IIIでのペレット飼料は少なかった。回転盤41の直径以外は同条件の取付パターン21よりペレット飼料分布が広く、距離が長く、均等であった。
【0115】
同じく羽根板Bを用いた取付パターン35では、領域Iにおけるペレット飼料が最も多かった。次に多かったのが領域IIで、その次に多かったのが領域IVであった。領域IIIでのペレット飼料は少なかった。回転盤41の直径以外は同条件の取付パターン22よりペレット飼料分布が広く、距離が長く、均等であった。
【0116】
傾斜角95°の羽根板Cを用いた取付パターン36では、領域Iにおけるペレット飼料が最も多かった。次に多かったのが領域IVで、その次に多かったのが領域IIであった。領域IIIでのペレット飼料は極めて少なかった。回転盤41の直径以外は同条件の取付パターン26よりペレット飼料が広く、長く飛散された。
【0117】
同じく羽根板Cを用いた取付パターン37では、領域Iにおけるペレット飼料が最も多かった。次に多かったのが領域IIで、その次に多かったのが領域IVであった。領域IIIでのペレット飼料は少なかった。回転盤41の直径以外は同条件の取付パターン27よりペレット飼料が広く、長く飛散された。
【0118】
以上の実施例3のまとめとして、インペラ40の回転盤41の直径を250mmから280mmに大きくすることで、各飛散部材45によるペレット飼料飛散の均等性は改善され、また、飛散距離も長くなった。傾斜角度135°及び150°の飛散部材45では、傾斜部45Bの長さが短いほどペレット飼料の飛散範囲と均等性は良くなった。傾斜角度95°の飛散部材45では、ペレット飼料の飛散の範囲と均等性は良かった。
【0119】
<実施例4>
次に、回転盤41の形状について検討する。
実施例4で使用された回転盤41は、
図10の変形例に示すように、飛散部材45が装着される箇所の間の2箇所に、中心方向へ陥凹した切欠部41Cが形成されている。この切欠部41Cは、中心付近に、近位取付穴41A同士を連結する仮想線分と平行な底辺41C1と、この底辺41C1の両端へ周縁から径方向に切り込む陥入辺41C2とで構成されている。この切欠部41Cの間が、円弧部分41Dとなっている。陥入辺41C2の延長線上には軸穴42があり、その中心角は60°とした。
【0120】
実施例4においては、この
図10に示す回転盤41に、前記
図5B及び前記
図9A~
図9Cに示す飛散部材45が2枚、先述の
図6A又は
図6Bと同様に、軸穴42に対し対向した位置に装着されたものをインペラ40として使用した。インペラ40は、下記表4に示す11通りの取付パターンにて調整した。なお、回転盤41の直径はいずれも280mmとした。
【0121】
使用した飛散部材45の種類は、取付パターン38~42では前記実施例1の飛散部材45(
図5B参照)とし、取付パターン43及び44では羽根板Aとし、取付パターン45及び46では羽根板Bとし、取付パターン47及び48では羽根板Cとした。
【0122】
飛散部材45の傾斜角は、取付パターン38~46では105°とした。取付パターン47及び48での傾斜角は95°であった。
【0123】
飛散部材45の取付角度は、取付パターン38では0°、取付パターン39では20°、取付パターン40では40°とし、取付パターン41、43、45、及び47では60°とし、取付パターン42、44、46及び48では75°とした。
【0124】
上記各取付パターンについて、前記条件でペレット飼料を飛散領域50に飛散させ終わった状態で、各領域I~IVに飛散されたペレット飼料の量を基準に目視にて前記評価基準に従って評価した。その結果を下記表4に示す。
【0125】
【0126】
実施例1の、傾斜角105°の飛散部材45を使用した場合、取付角度0°の取付パターン38では、領域Iにおけるペレット飼料が最も多かった。領域IVでのインペラ直下及び外側でのペレット飼料は次に多かった。領域IIにおけるペレット飼料はその次に多かった。領域IIIでのペレット飼料は少なかった。
【0127】
取付角度20°の取付パターン39では、ペレット飼料の飛散範囲は取付パターン38と同様であったが、領域IIにおけるペレット飼料は取付パターン38より若干多かった。
【0128】
取付角度40°の取付パターン40では、ペレット飼料の飛散範囲は取付パターン39と同様であったが、領域IIにおけるペレット飼料は取付パターン39よりさらに増えた。
【0129】
取付角度60°の取付パターン41では、領域I及びIIにおけるペレット飼料の量はほぼ同じであった。領域IIIでのペレット飼料は増加した。領域IVでのインペラ直下及び外側でのペレット飼料は多かった。
【0130】
取付角度75°の取付パターン42では、取付パターン41に比べると、領域II及び領域IIIにおけるペレット飼料の量はさらに多くなった。
【0131】
傾斜角105°の羽根板Aを使用した場合、取付角度60°の取付パターン43では、領域I及びIIにおけるペレット飼料が最も多く、分布も均等であった。領域IIIのペレット飼料は増えた。領域IVでのインペラ直下及び外側のペレット飼料は多かった。
【0132】
取付角度75°の取付パターン44では、領域I及びIIにおけるペレット飼料は多く、分布も均等であった。取付パターン43と比べると、領域IIにおけるペレット飼料はさらに増えた。領域IIIのペレット飼料はこれよりは少なかった。領域IVでのインペラ直下及び外側のペレット飼料は多かった。
【0133】
傾斜角105°の羽根板Bを使用した場合、取付角度60°の取付パターン45では、領域I及びIIにおけるペレット飼料が最も多く、分布も均等であった。領域IIIのペレット飼料はこれよりは少なかった。領域IVでの外側のペレット飼料は多かった。
【0134】
取付角度75°の取付パターン46では、領域I及びIIにおけるペレット飼料は多く、分布も均等であった。取付パターン45と比べると、領域IIにおけるペレット飼料はさらに増えた。領域IIIのペレット飼料はこれよりは少なかった。領域IVの外側のペレット飼料は多かった。
【0135】
傾斜角95°の羽根板Cを使用した場合、取付角度60°の取付パターン47では、領域I及びIIにおけるペレット飼料は多く、分布も均等であった。領域IIIのペレット飼料はこれよりは少なかった。領域IVのインペラ直下及び外側のペレット飼料は多かった。
【0136】
取付角度75°の取付パターン48では、領域I及びIIにおけるペレット飼料は多く、分布も均等であった。取付パターン47と比べると、領域IIにおけるペレット飼料はさらに増えた。領域IIIのペレット飼料はこれよりは少なかった。領域IVのインペラ直下及び外側のペレット飼料は多かった。
【0137】
以上の結果から、
図10に示すように、2つの切欠部41Cを備えた直径280mmの回転盤41を有するインペラ40を使用した場合でも、傾斜角105°の実施例1の飛散部材45を使用した取付パターン38~42では、取付角度を増すにつれて、領域IIにおけるペレット飼料の量が増えていった。
【0138】
傾斜角105°で取付角度が60°又は75°の場合は、取付パターン41~46の結果を見る限り、傾斜部45Bの長さの違いによる影響はさほど大きくなかった。ただし、傾斜部45Bの長さが短い羽根板Bを使用した取付パターン45及び46の結果を、切欠部41Cが設けられていないインペラ40で同じ羽根板Bを使用した実施例3の取付パターン34及び35の場合(表3参照)と比較すると、インペラ40から最も遠い領域IIまで飛散されるペレット飼料が多くなっていた。これは、インペラ40の切欠部41Cの辺縁にペレット飼料が衝突することによるものとも考えられる。
【0139】
傾斜角95°の場合は、傾斜角105°とは大差はなかった。
【0140】
以上、実施例4における、2つの切欠部41Cを備えた直径280mmの回転盤41を有するインペラ40を使用した場合には、第2センサ25B及び第3センサ25C付近にも多くのペレット飼料を落下させることができた。
【0141】
以上より、養魚用給餌装置10の中央を飛散領域50の中心とした場合、以下の2点を考慮することが重要と考えられる。まず、ペレット飼料の分布範囲はできるだけ広く、均等で、同時にフロート12(
図1参照)の内側の範囲を超えないことである。そして、生簀内の養魚の食欲を適切に把握するために、3つの食欲センサ25のそれぞれの付近に多くのペレット飼料を均等に散布させることである。これらの観点からは、実施例4のように、中心角60°の切欠部41Cが2箇所設けられた直径280mmの回転盤41に、取付角度60°又は75°で、傾斜角95°又は105°の飛散部材45を装着したインペラ40を用いることが好適である。
【0142】
<実施例5>
なお、実施例4で使用された回転盤41における切欠部41Cは、
図11の変形例に示すような形状とすることとしてもよい。この回転盤41でも同様に、飛散部材45が装着される箇所の間の2箇所に、中心方向へ陥凹した切欠部41Cが形成されている。この切欠部41Cは、中心付近に、近位取付穴41A同士を連結する仮想線分と平行な底辺41C1と、この底辺41C1の両端へ周縁から垂直に切り込む陥入辺41C2とで構成されている。この切欠部41Cの間が、円弧部分41Dとなっている。