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特許7195039樹脂組成物およびこれを用いた光学フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびこれを用いた光学フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/04 20060101AFI20221216BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20221216BHJP
   C08K 5/353 20060101ALI20221216BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
C08L29/04 D
C08J5/18 CEX
C08K5/353
C08L67/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2016032329
(22)【出願日】2016-02-23
(65)【公開番号】P2017075292
(43)【公開日】2017-04-20
【審査請求日】2019-01-30
【審判番号】
【審判請求日】2020-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2015205033
(32)【優先日】2015-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(72)【発明者】
【氏名】原 憲司
(72)【発明者】
【氏名】入沢 正福
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】富澤 哲生
【審判官】杉江 渉
(56)【参考文献】
【文献】特公昭46-955(JP,B1)
【文献】特開昭53-134830(JP,A)
【文献】特開平11-124469(JP,A)
【文献】特開平11-61035(JP,A)
【文献】特開昭53-136040(JP,A)
【文献】特開平11-301104(JP,A)
【文献】特開2013-252716(JP,A)
【文献】特開2012-92169(JP,A)
【文献】特開2014-48348(JP,A)
【文献】特開2014-210907(JP,A)
【文献】特開2015-124273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L, C08K5, G02B5/30
CAPlus/Registry(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコールおよびポリエステルを含有する樹脂組成物において、
前記ポリエステルが、カルボキシル基および/またはカルボキシル基の塩を有し、前記ポリビニルアルコールが、アセト酢酸エステル基を有し、
前記ポリエステルの含有量が、固形分中10~50質量%であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルが、3官能以上の多価カルボン酸と水酸基を1個または2個有する化合物との重縮合により得られる請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコールが、ビニルアルコールを必須の単量体とするホモポリマーまたはコポリマーである請求項1または2記載の樹脂組成物
【請求項4】
前記ポリビニルアルコールのけん化度が、85以上である請求項1~3のうちいずれか一項記載の樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、架橋剤を含有する請求項1~4のうちいずれか一項記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記架橋剤が、オキサゾリン化合物またはカルボジイミド化合物である請求項5記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のうちいずれか一項記載の樹脂組成物からなることを特徴とする光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物およびこれを用いた光学フィルムに関し、詳しくは、透明性および塗布性に優れ、液晶汚染性が低い樹脂組成物およびこれを用いた光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアルコールのような水溶性高分子は、塗料、インキ、接着剤、光学フィルム等、種々の用途に広く用いられている。例えば、特許文献1および2ではポリビニルアルコールとスルホニロキシ残基を有する水分散性コポリエステルとを含有する層を有する複合フィルムが提案されており、特許文献3では、ポリビニルアルコールおよび水分散性ポリエステルを含む水性結合層を有する被覆フィルム製品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2001-510110号公報
【文献】特許4204188号公報
【文献】特表2004-529750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリビニルアルコールを含む樹脂組成物を、フラットパネルディスプレイ向けの光学フィルムや、光学フィルムのコーティング材料、液晶滴下工法用シール剤等に用いるには、高い透明性や塗布性に加えて低い液晶汚染性が求められる。しかしながら、ポリビニルアルコールを含有する樹脂組成物においては、このような物性については、必ずしも十分ではなく、さらなる改良が求められているのが現状である。
【0005】
そこで、本発明の目的は、透明性および塗布性に優れ、液晶汚染性が低い樹脂組成物およびこれを用いた光学フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリビニルアルコールと所定の構造を有するポリエステルを含む樹脂組成物は、透明性および塗布性に優れ、液晶汚染性が低く、フラットパネルディスプレイ向けの光学フィルムや、光学フィルムのコーティング材料、液晶滴下工法用シール剤等に好適に用いることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の樹脂組成物は、ポリビニルアルコールおよびポリエステルを含有する樹脂組成物において、
前記ポリエステルが、カルボキシル基および/またはカルボキシル基の塩を有し、前記ポリビニルアルコールが、アセト酢酸エステル基を有し、
前記ポリエステルの含有量が、固形分中10~50質量%であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の樹脂組成物においては、前記ポリエステルが、3官能以上の多価カルボン酸と水酸基を1個または2個有する化合物との重縮合により得られることが好ましい。また、本発明の樹脂組成物においては、前記ポリビニルアルコールは、ビニルアルコールを必須の単量体とするホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。さらに、本発明の樹脂組成物においては、前記ポリビニルアルコールのけん化度は、85以上であることが好ましい。
【0009】
本発明の樹脂組成物においては、さらに、架橋剤を含有することが好ましい。また、本発明の樹脂組成物においては、前記架橋剤は、オキサゾリン化合物またはカルボジイミド化合物であることが好ましい。
【0010】
本発明の光学フィルムは、本発明の樹脂組成物からなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、透明性および塗布性に優れ、液晶汚染性が低い樹脂組成物およびこれを用いた光学フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の樹脂組成物および光学フィルムについて詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、ポリビニルアルコールおよびポリエステルを含有する樹脂組成物であり、ポリエステルは、カルボキシル基および/またはカルボキシル基の塩を置換基として有する。以下、本発明の樹脂組成物に係るポリビニルアルコールおよびポリエステルについて、詳細に説明する。
【0013】
<ポリビニルアルコール>
本発明の樹脂組成物においては、ポリビニルアルコールは、ビニルアルコールを必須の単量体とするホモポリマーであってもよく、コポリマーであってもよい。一般的にポバールと呼ばれるビニルアルコールを重合させたポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、完全けん化ポリビニルアルコールの他、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセト酢酸エステル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコール、エステル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アミド基変性ポリビニルアルコール、スチリルピリジニウム基変性ポリビニルアルコール、四級アンモニウム塩基変性ポリビニルアルコール、アリル基変性ポリビニルアルコール、オキシプロピレン基変性ポリビニルアルコール、ウレタン基変性ポリビニルアルコール、エーテル基変性ポリビニルアルコール、リン酸エステル基変性ポリビニルアルコール、アセタール基変性ポリビニルアルコール、ブチラール基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、側鎖に1,2-ジオール構造を有するポリビニルアルコールのような、変性されたポリビニルアルコール;酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のけん化物等が挙げられる。これらの中でも、アセト酢酸エステル基変性ポリビニルアルコールは熱処理によって架橋するため、好適に用いることができる。
【0014】
共重合性を有する単量体としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸およびそのエステル類、エチレン、プロピレン等のα-オレフィン、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸ソーダ、メタリルスルホン酸ソーダ、スルホン酸ソーダ、スルホン酸ソーダモノアルキルマレート、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N-メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。
【0015】
本発明の樹脂組成物においては、ポリビニルアルコールは、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。ポリビニルアルコールのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は10,000~200,000、けん化度(加水分解率)は85以上のもの、特に85~100のものが、耐水性が向上し、フィルムの耐久性が向上するので好ましい。
【0016】
ポリビニルアルコールとしては、市販品を用いることもでき、例えば、ゴーセノールNL-05、NH-18、NH-20、NH-26、NM-14、AH-17、A-300、GM-14L、GL-05、KL-05、GH-23、KH-17(日本合成化学工業社製);ゴーセネックスZ-100、Z-200、Z-300、Z-410、T-330H(日本合成化学工業社製);Nichigo G-polymer OKS-1081、OKS-1083(日本合成化学工業社製);VF-17、V-S20(日本酢ビ・ポバール社製);クラレポバールPVA-103、PVA-105、PVA-117、PVA-205、PVA-217、PVA-405、PVA-420(クラレ社製);デンカポバールK-05、K-17C、K-24E、H-12、H-17、B-05、B-17(電気化学工業社製)等が挙げられる。
【0017】
<ポリエステル>
本発明の樹脂組成物に係るポリエステルは、カルボキシル基およびカルボキシル基の塩の少なくともいずれか一方を置換基として有する。このようなポリエステルは、水に溶解、水分散して乳化、あるいはアルカリ水に溶解する。本発明の樹脂組成物に係るポリエステルにおいては、カルボキシル基の塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩が、本発明の効果を良好に得られるので好ましい。
【0018】
ポリエステル中のカルボキシル基は、生成したポリエステルの酸価が15~250KOHmg/gのものが好ましい。酸価が15KOHmg/g未満だとポリエステルの水分散が困難になるとともに均一性が低下し、製膜性が低下してしまう場合がある。また、酸価が250KOHmg/gを超えると耐水性が不良となる場合がある。酸価が高いほど、可視領域での散乱が少なく分散粒子が細かくなって水への親和性が向上するためポリビニルアルコールとの相溶性が良好になり、好ましい。
【0019】
本発明の樹脂組成物に係るポリエステルのうち、カルボキシル基の塩を置換基に有するものは、例えば、3官能以上の多価カルボン酸と水酸基を1個または2個有する化合物との重縮合により得られるものが好ましい。
【0020】
上記3官能以上の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4-メチルシクロヘキセン-1,2,3トリカルボン酸無水物、トリメシン酸等が挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。
【0021】
上記水酸基を1個または2個有する化合物としては、脂肪族ポリオール、ポリヒドロキシ芳香族化合物、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリエステルポリカーボネートジオール、ポリカーボネートジオール、ポリオレフィンジオールおよびこれらの化合物の片末端水酸基が炭素原数1~25のアルキル基でアルコキシ化されたもの等が挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。
【0022】
上記脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の脂環式ジオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の三価以上のポリオール等が挙げられる。
【0023】
上記ポリエーテルジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエチレンオキサイド付加物;ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のプロピレンオキサイド付加物;低分子ポリオールのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0024】
上記ポリエステルジオールとしては、低分子ジオール類と、その化学量論量より少ない量のジカルボン酸またはそのエステル、無水物、ハライド等のエステル形成性誘導体、および/または、ラクトン類もしくはその加水分解開環して得られるヒドロキシカルボン酸との直接エステル化反応および/またはエステル交換反応により得られるものが挙げられる。
【0025】
上記ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、ドデカン二酸、2-メチルコハク酸、2-メチルアジピン酸、3-メチルアジピン酸、3-メチルペンタン二酸、2-メチルオクタン二酸、3,8-ジメチルデカン二酸、3,7-ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルマロン酸、グルタール酸、トリメチルアジピン酸、2,2-ジメチルグルタール酸、イタコン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルポン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,5-ノルボルナンジカルボン酸、1,4-ナフタール酸、ジフェニン酸、4,4’-オキシ安息香酸、ジグリコール酸、チオジプロピオン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ナフタレン2,5-ジカルボン酸、ナフタレン2,6-ジカルボン酸、ピロメリット酸モノ無水物等の芳香族ジカルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸類等が挙げられる。
【0026】
上記ポリカーボネートジオールとしてはポリ(1,6-ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)カーボネート等、ポリオレフィンジオール類としてはポリブタジエングリコール、水素添加型ポリブタジエングリコール、水素添加型ポリイソプレングリコール等が挙げられる。同一分子内に水酸基を1個または2個有する化合物のうち、特にポリエーテルジオールおよび/またはポリエステルジオールが好ましい。同一分子内に水酸基を1個または2個有する化合物の分子量は300~3,000、好ましくは500~2,000である。
【0027】
上記ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、例えば、4,4-ビフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’-(1-α―メチルベンジリデン)ビスフェノール、4,4’-(1-α―エチルベンジリデン)ビスフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、α、α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、水添ビスフェノール化合物、レソルシノール、ヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、2-[ビス(4-ヒドロキシフェニル)メチル]ベンジルアルコール、サリチル酸、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等が挙げられる。
【0028】
上記ポリエステルポリカーボネートジオールとしては、例えば、ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応生成物、エチレンカーボネートとグリコールとの反応生成物に有機ジカルボン酸と反応させて得られた反応生成物等が挙げられる。
【0029】
上記ポリオレフィンジオール類としては、ポリブタジエングリコール、水素添加型ポリブタジエングリコール、水素添加型ポリイソプレングリコール等が挙げられる。
【0030】
また、本発明の樹脂組成物に係るポリエステルは、ポリエステルに重合性の不飽和カルボン酸をグラフト重合する方法、あるいは特開昭62-240318に見られるようにグリコールまたは末端が水酸基のポリエステルグリコールとテトラカルボン酸二無水物とを選択的なモノエステル化反応によって鎖延長させる方法により得ることもできる。
【0031】
本発明の樹脂組成物においては、ポリエステルとしては、市販品を用いることもでき、例えば、ニチゴーポリエスターWR-961、WR-1031(日本合成化学工業社製);ペスレジンA-680、A-690、A-210、A-230、A-695GE(高松油脂社製);プラスコートZ-730、Z-760(互応化学工業社製);バイロナールMD-1100、MD-1200、MD-1245、MD-1335、MD-1480、MD-1500、MD-1930、MD-1985、MD-2000(東洋紡社製)等が挙げられる。
【0032】
本発明の樹脂組成物においては、ポリエステルのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、500~30,000であるのが、耐水性の観点から好ましく、1,000~10,000であるのがより好ましい。
【0033】
本発明の樹脂組成物においては、ポリビニルアルコールとポリエステルの配合比は、相溶性の観点から、固形分換算で99.5:0.5~50:50が好ましく、塗膜の透明性と耐水性の観点から、95:5~60:40がより好ましい。
【0034】
本発明の樹脂組成物においては、さらに架橋剤を加え、カルボン酸塩と反応させることにより、耐水性および耐熱性を向上させることもできる。架橋剤としては、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物、ポリアミン類、ポリオール類、ポリフェノール類、多官能チオール、ジシアンジアミド誘導体、ヒドラジン化合物、ポリヒドラジド化合物(ジヒドラジド、トリヒドラジド)、アルデヒド類、メチロール化合物、活性化ビニル化合物、ポリイソシアネート系化合物、フェノール系化合物のアルキレンカーボネート化合物、多価金属塩、シランカップリング剤、有機チタン、有機ジルコニウム等が挙げられ、中でもオキサゾリン化合物およびカルボジイミド化合物が、100~120℃の熱乾燥温度で反応するので好ましい。
【0035】
本発明の樹脂組成物においては、架橋剤としては、市販品を用いることもでき、例えば、エポクロスWS-300、WS-500、WS-700(日本触媒社製);カルボジライトV-02、V-02-L2、SV-02、V-04、V-10、SW-12G、E-02、E-03A、E-05(日清紡ケミカル社製);SR-4GL、SR-6GL(阪本薬品工業社製);オルガチックスZC-126、TC-315(マツモトファインケミカル社製)等が挙げられる。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、ポリビニルアルコールの水溶液または水分散液、およびポリエステルの水溶液、水分散液または水分散性エマルジョンを混合することにより得られ、必要に応じて、カップリング剤、界面活性剤等を加えることもできる。
【0037】
上記カップリング剤としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル官能性アルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン等のアルケニル官能性アルコキシシラン、3-メタクリロキシブロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシブロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシラン、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド等のチタンアルコキシド類、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等のチタンキレート類、ジルコウニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート等のジルコニウムキレート類、ジルコニウムトリブトキシモノステアレート等のジルコニウムアシレート類、メチルトリイソシアネートシラン等のイソシアネートシラン類等を用いることができる。
【0038】
上記界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等のフッ素界面活性剤、高級脂肪酸アルカリ塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等のアニオン系界面活性剤、高級アミンハロゲン酸塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド等の非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤を用いることができ、これらは組み合わせて用いてもよい。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、さらに、ラジカル重合性化合物および重合開始剤、必要に応じて増感剤を加えることにより、光/熱硬化性樹脂組成物として用いることができる。得られた光/熱硬化性樹脂組成物は、耐水性および耐熱性が高いことが期待される。
【0040】
上記ラジカル重合性化合物としては、特に限定されず、従来用いられているものを用いることができる。例えば、不飽和脂肪族炭化水素、不飽和多塩基酸、不飽和一塩基酸および多価アルコールまたは多価フェノールのエステル、不飽和多塩基酸の酸無水物、不飽和一塩基酸および多価アミンのアミド、不飽和アルデヒド、不飽和芳香族化合物、不飽和ケトン、ビニルエーテル、不飽和イミド、インデン類、脂肪族共役ジエン類、重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー類、ビニルクロリド、ビニリデンクロリド、ジビニルスクシナート、ジアリルフタラート、トリアリルホスファート、トリアリルイソシアヌラート、ビニルチオエーテル、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾリン、ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、水酸基含有ビニルモノマーおよびポリイソシアネート化合物のビニルウレタン化合物、水酸基含有ビニルモノマーおよびエポキシ化合物のビニルエポキシ化合物、水酸基含有多官能アクリレートと他官能イソシアネートの反応物、水酸基含有多官能アクリレートと二塩基酸無水物の反応物である酸価を有する多官能アクリレート等が挙げられる。これらの重合性化合物は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。また、2種以上を混合して使用する場合には、それらを予め共重合して共重合体として用いてもよい。
【0041】
上記重合開始剤としては、光/熱照射を受けることによってラジカル重合を開始させることが可能な化合物であればよく、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンジル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物などのケトン系化合物、オキシム系化合物等の光ラジカル重合開始剤;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(メチルイソブチレート)、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の過酸化物系開始剤、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩等の熱ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0042】
上記増感剤としては、光照射により硬化する場合の、光の適応可能な波長範囲を拡大することができる化合物であり、例えば、ベンゾフェノン、3-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、4,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,5-ジメチルベンゾフェノン、3,4-ジメチルベンゾフェノン、4-メトキシベンゾフェノン、4,4-ジメトキシベンゾフェノン、3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、アセトフェノン、4-メトキシアセトフェノン、2,4-ジメトキシアセトフェノン、2,5-ジメトキシアセトフェノン、2,6-ジメトキシアセトフェノン、4,4-ジメトキシアセトフェノン、4-エトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-エトキシ-2-フェニルアセトフェノン、4-フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン類、アントラキノン、ヒドロキシアントラキノン、1-ニトロアントラキノン、アミノアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、アントラキノンスルホン酸、1,2-ベンズアントラキノン、1,4-ヒドロキシアントラキノン(キニザリン)等のアントラキノン類、アントラセン、1,2-ベンゾアントラセン、9-シアノアントラセン、9,10-ジシアノアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ビス(フェニルエチル)アントラセン等のアントラセン類、2,3-ジクロロ-6-ジシアノ-p-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、メトキシベンゾキノン、2,5-ジクロロ-p-ベンゾキノン、2,6-ジメチル-1,4-ベンゾキノン、9,10-フェナンスレキノン、カンファーキノン、2,3-ジクロロ-1,4-ナフトキノン、キサントン等のキノン類、チオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-イソプロピルチオキサンソン等のチオキサン類、ジベンゾスベロン、ジベンゾスベレン、ジベンゾスベレノール、ジベンゾスベラン等のシクロヘプタン類、2-メトキシナフタレン、ベンゾインイソプロピルエーテル、4-ベンゾイルジフェニル、o-ベンゾイル安息香酸、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4-メチル-ジフェニルスルフィド、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル等の芳香族化合物、および色素系増感性物質であるクマリン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、キサンテン系化合物等を用いることができる。
【0043】
本発明の樹脂組成物は、スピンコーター、バーコーター、ロールコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の手段で、ガラス、金属、紙、プラスチック等の支持基体上に塗布することができる。また、一旦フィルム等の支持基体上に塗布した後、他の支持基体上に転写することもでき、その適用方法に制限はない。
【0044】
また、本発明の効果を損なわない限り、本発明の樹脂組成物に、必要に応じて酸発生剤、塩基開始剤、無機フィラー、有機フィラー、顔料、染料等の着色剤、消泡剤、増粘剤、レベリング剤、チクソ剤、炭素化合物、金属微粒子、金属酸化物、難燃剤、可塑剤、光安定剤、熱安定剤、老化防止剤、エラストマー粒子、連鎖移動剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、静電防止剤、離型剤、流動調整剤、密着促進剤、不飽和モノマー等の各種樹脂添加物等を添加することもできる。
【0045】
本発明の樹脂組成物の具体的な用途としては、メガネ、撮像用レンズに代表される光学材料、塗料、コーティング剤、ライニング剤、インキ、レジスト、液状レジスト、接着剤、液晶滴下工法用シール剤、印刷版、絶縁ワニス、絶縁シート、積層板、プリント基盤、半導体装置用・LEDパッケージ用・液晶注入口用・有機EL用・光素子用・電気絶縁用・電子部品用・分離膜用等の封止剤、成形材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め剤、半導体用・太陽電池用等のパッシベーション膜、層間絶縁膜、保護膜、液晶表示装置のバックライトに使用されるプリズムレンズシート、プロジェクションテレビ等のスクリーンに使用されるフレネルレンズシート、レンチキュラーレンズシート等のレンズシートのレンズ部、またはこのようなシートを用いたバックライト等、液晶カラーフィルタの保護膜や酢ペーサー、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、ハードディスク用記録材料、固体撮像素子、太陽電池パネル、発光ダイオード、有機発光デバイス、ルミネセントフィルム、蛍光フィルム、MEMS素子、アクチュエーター、ホログラム、プラズモンデバイス、偏光板、偏光フィルム、マイクロレンズ等の光学レンズ、光学素子、光コネクター、光導波路、光学的造形用注型剤等を挙げることができ、例えばコーティング剤として適用できる基材としては金属、木材、ゴム、プラスチック、ガラス、セラミック製品等を挙げることができる。
【0046】
次に、本発明の光学フィルムについて説明する。本発明の光学フィルムは、本発明の樹脂組成物からなるものである。本発明の光学フィルムは、慣用の方法でフィルムまたはシート成形し、得られたフィルムまたはシートを延伸(または配向処理)することなく製造してもよく、延伸(または配向処理)することにより製造してもよい。フィルム成形には、押し出し成形、ブロー成形等の溶融成形法(溶融製膜法)を利用してもよく、流延成形法(流延製膜法、溶液流延法)を利用してもよい。
【0047】
本発明の光学フィルムを、透明支持体上に本発明の樹脂組成物を塗布して製造する場合、透明支持体の材料としては、例えば、ガラス等の無機材料;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-1,2-ジフェノキシエタン-4,4’-ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン、ノルボルネン樹脂等の高分子材料が挙げられる。透明支持体の透過率は80%以上であることが好ましく、86%以上であることがより好ましい。ヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。屈折率は、1.45~1.70であることが好ましい。
【0048】
本発明の樹脂組成物を塗布してなる塗布膜に光照射する際、照射される光の波長、強度および照射時間等の照射条件は、光開始剤の活性、使用される光重合性樹脂の活性等により適宜調整すればよいが、光波長としては、通常は内部にまで充分に光を進入させるために波長ピーク350~400nmのものが好ましく、より好ましくは波長ピーク360~380nmのものである。また、光強度としては10~300mW/cmが好ましく、より好ましくは25~100mW/cmであり、照射時間は5~500秒が好ましく、より好ましくは10~300秒である。
【0049】
本発明の樹脂組成物を塗布してなる塗布膜を熱硬化させる場合、加熱温度および加熱時間等の加熱条件はラジカル重合性化合物や重合開始剤の活性等により適宜調整すればよいが、加熱温度は80~200℃、加熱時間は30秒~60分が好ましい。
【0050】
本発明の光学フィルムは、形状に関しては特に制限されるものではないが、通常、透明支持体上に光学膜を有し光学用途に利用されるフィルムで、液晶表示装置等に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルム、低反射率フィルム等の各種機能フィルム、また、有機ELディスプレイ等で使用される各種機能フィルム等を挙げることができる。
【0051】
本発明の光学フィルムは、光学フィルムを支持体に適用した追記型光ディスク(CD±R、DVD±R、次世代型高密度ディスク等)の光学記録層;各種レンズ;画像表示装置用光学フィルタ;カラーフィルタ、色変換フィルタに代表される各種フィルタ;あるいは、有機EL発光素子、無機EL発光素子または電子ペーパー表示体等の保護封止フィルムとして用いることができる。
【実施例
【0052】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例では部は質量部を意味する。
【0053】
[実施例1~30、比較例1~14および参考例1~6]
<ポリビニルアルコール水溶液の調製>
まず、イオン交換水900.0gを室温で撹拌しているところに、下記のA-1~A-7のポリビニルアルコール100.0gを徐々に添加した。この溶液を室温で10分撹拌した後に、内温が85から90℃になるまで加熱し、その温度で1時間撹拌を継続した。ポリビニルアルコールの溶解を確認した後、ポリビニルアルコール水溶液を室温まで冷却した。その後、調製したポリビニルアルコール水溶液を1μmフィルターでろ過した。ただし、下記表1~表8中のPV-1~PV-7、B-1~B-6およびB’-1、B’-3の配合量は、固形分換算の比率(質量%)であり、B’-2は液状であるため全量である。
【0054】
A-1 日本合成化学工業製 ゴーセノールNL-05(けん化度99)
A-2 日本合成化学工業製 ゴーセノールGL-05(けん化度87)
A-3 日本合成化学工業製 Nichigo G-polymer OKS-1083(けん化度99)
A-4 日本合成化学工業製 ゴーセネックス Z-300(けん化度98)
A-5 日本合成化学工業製 ゴーセネックス Z-200(けん化度98)
A-6 日本合成化学工業製 ゴーセノール KL-05(けん化度80)
A-7 日本合成化学工業製 ゴーセネックス T-330H(けん化度99、分子内にカルボキシル基を有するアニオン性変性品)
【0055】
<樹脂組成物の調製>
先に調整したポリビニルアルコール水溶液と、下記表1~表8に示すB-1~B-6およびB’-1~B’-3のポリエステル水溶液と、下記表6~表8に示すC-1~C-6の架橋剤とを、同表の配合に従って混合して、室温で1時間撹拌後、1μmフィルターでろ過し、各実施例および比較例の樹脂組成物を得た。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
※1:測定不能
【0061】
PV-1 A-1の水溶液
PV-2 A-2の水溶液
PV-3 A-3の水溶液
PV-4 A-4の水溶液
PV-5 A-5の水溶液
PV-6 A-6の水溶液
B-1 高松油脂製、ペスレジンA-690(置換基:COOH、固形分20%、酸価50mgKOH/g)
B-2 日本合成化学工業製、ポリエスターWR-961(置換基:COOH、固形分30%、酸価60mgKOH/g)
B-3 日本合成化学工業製、ポリエスターW-1031(置換基:COOH、固形分30%、酸価80mgKOH/g)
B-4 互応化学工業製、プラスコートZ-730(置換基:COOH、固形分25%、酸価50mgKOH/g)
B-5 高松油脂製、ペスレジンA-210(置換基:COOH、固形分30%、酸価70mgKOH/g)
B’-1 高松油脂製、ペスレジンA-640(置換基:SONa、固形分25%)
B’-2 ADEKA製、アデカサイザーPN-77(フタル酸エステル系)
B’-3 互応化学製、プラスコートZ-446(置換基:SONa、固形分25%)
【0062】
【表6】
【0063】
【表7】
【0064】
【表8】
【0065】
PV-7 A-7の水溶液
B-6 高松油脂製、ペスレジンA-230(置換基:COOH、固形分30%、酸価80mgKOH/g)
C-1 日本触媒製、エポクロスWS-700(オキサゾリン化合物;架橋剤、固形分25%)
C-2 日清紡ケミカル製、カルボジライトV-02-L2(カルボジイミド化合物;架橋剤、固形分40%)
C-3 阪本薬品工業製、SR-4GL(エポキシ化合物;架橋剤、有効成分100%)
C-4 阪本薬品工業製、SR-6GL(エポキシ化合物;架橋剤、有効成分100%)
C-5 マツモトファインケミカル製、オルガチックスZC-126(塩化ジルコニル化合物;架橋剤、固形分30%)
C-6 マツモトファインケミカル製、オルガチックスTC-315(チタンラクテート;架橋剤、固形分44%)
【0066】
得られた各樹脂組成物につき、溶液相溶性、塗布性として塗布乾燥後の状態および耐湿熱試験後の状態、電圧保持率(VHR)、について評価した。結果を上記表1~8に併記する。なお、各評価の手順は以下のとおりである。
【0067】
(溶液相溶性)
各樹脂組成物の状態を目視で確認した。判定基準は下記の通りである。
○:透明均一
△:白濁
×:相溶せず(相分離)
【0068】
(塗布性)
各樹脂組成物を、ガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布した後、70℃のホットプレートで5分間、90℃のホットプレートで5分間の順にプリベークを行なった後、140℃で15分加熱を行なうことで評価用基板を作製した。膜厚は触針法で5.0~5.5μmとなるようスピンコートの条件を調整した。
【0069】
a)塗膜の塗布乾燥後の状態
得られた評価用基板について、目視で表面の状態を確認すると同時に、ヘイズ測定によって評価を行なった。測定には日本電色製ヘイズメーターNDH5000を使用し、判定基準は下記の通りとした。
○:膜が均一、ヘイズ1未満
△:膜が均一、ヘイズ1以上3未満、
×:膜は全面に残存、ヘイズ3以上
××:膜の一部が剥離あるいは溶出
【0070】
b)塗膜の耐湿熱性試験
得られた評価用基板を85℃,85%RHの条件で100時間放置した後の基板の表面状態を、a)と同様にして評価した。判定基準は上記と同様である。
【0071】
(VHR)
塗布性試験において得られた塗膜上に、下記液晶化合物No.1~No.11よりなる液晶組成物を接し、60℃で60時間後、液晶組成物を取り出すことにより樹脂溶出性試験を行った。取り出した液晶組成物について樹脂溶出性試験前後でのVHRを比較し、VHRの低下率を求め、下記基準により評価を行った。
【0072】
液晶組成物を液晶評価用TNセル(セル厚5μm、電極面積8mm×8mm配向膜JALS2096)に注入し、VHRをVHR-1A(東陽テクニカ製)を用い測定した。測定条件は、パルス電圧幅:60μs、フレーム周期:16.7ms、波高:±5V、測定温度:25℃とした。
○:VHRが99%超
△:VHRが97~99%
×:VHRが97%未満
【0073】
【化1】
【0074】
表1~8より、本発明の樹脂組成物は、透明性および塗布性に優れ、液晶汚染性が低いことがわかる。したがって、本発明の樹脂組成物は、光学フィルムあるいは液晶滴下工法用シール剤に好適に用いることができる。