(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物およびこれを用いた接着剤
(51)【国際特許分類】
C08G 59/66 20060101AFI20221216BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20221216BHJP
C08L 81/06 20060101ALI20221216BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20221216BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20221216BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20221216BHJP
C09J 181/06 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
C08G59/66
C08L63/00 C
C08L81/06
C08K5/05
C08K5/3445
C09J163/00
C09J181/06
(21)【出願番号】P 2018047548
(22)【出願日】2018-03-15
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】知場 亮太
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 達哉
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/025505(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/070991(WO,A1)
【文献】特表2008-530270(JP,A)
【文献】特表2020-526612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00- 59/72
C08L 63/00- 63/10
C08L 81/00- 81/10
C08K 3/00- 13/08
C09J 163/00
C09J 181/00-181/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、(B)ポリチオール化合物と、(C)下記一般式(1)で表される化合物
、下記一般式(2-1)で表されるチタン化合物、下記一般式(2-2)で表されるチタン化合物、およびチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、
(ただし、一般式(1)において、X
1、X
2、X
3、X
4は、それぞれ独立して、単結合、O、S、C(CH
3)
2、CO、CO
2、またはSO
2を表し、Y
1、Y
2は、それぞれ独立して、H、Cl、またはOHを表し、aは、1~10000の整数を表し、一般式(2-1)、(2-2)において、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、炭素原子数1~10の非置換、若しくは水酸基で置換されたアルキル基、または下記一般式(2-3)、
(ただし、一般式(2-3)において、R
5は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)で表される基であり、b、cは、それぞれ独立して、1~3の整数であり、b+c=4である。)から選ばれる少なくとも1種の接着付与化合物と、(D)硬化促進剤と、を含み、
一般式(1)で表される化合物が、ポリエーテルスルホンであり、
(B)成分が、分子内にメルカプト基を2つ有するチオール化合物と、分子内にメルカプト基を3つ以上有するチオール化合物をからなり、分子内にメルカプト基を2つ有するチオール化合物が、(B)ポリチオール化合物の総量に対して、20~80質量%であり、
(A)成分が、80℃において液状のエポキシ樹脂であって、(C)成分が、80℃において、(A)成分に溶解可能であり、
(A)成分100質量
部に対して、(B)成分30~200質量部、(C)成分1~20質量部、(D)成分1~20質量部であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)エポキシ樹脂が、多核多価フェノール化合物のアルキレンオキサイド変性型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンジメタノールのジグリシジルエーテル、およびグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂である請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(C)接着付与化合物が、一般式(1)で表される化合物と、一般式(2-1)で表されるチタン化合物および一般式(2-2)で表されるチタン化合物のうち少なくとも一方と、を含有する請求項1または2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項記載の硬化性樹脂組成物が熱硬化されてなることを特徴とする硬化物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項記載の硬化性樹脂組成物を用いてなることを特徴とする接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」とも称す)およびこれを用いた接着剤に関し、詳しくは、接着性および応力緩和性に優れた硬化物が得られる、速硬化性に優れた硬化性樹脂組成物およびこれを用いた接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、アミン類、カルボン酸類、フェノール類、ポリチオール類等と反応するため、硬化剤として使用され、それらのエポキシ樹脂組成物は、塗料、注型材、接着剤、土木建築等、幅広い分野に適用されている。これらの硬化剤は、それぞれ好適な使用温度領域を有しており、中でもポリチオール類は、使用する硬化促進剤を適切に選択することにより、低温硬化性、貯蔵安定性に優れた樹脂組成物を得ることができる(例えば、特許文献1および特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2009/093467号
【文献】国際公開第2015/025505号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エポキシ樹脂組成物は、半導体封止剤、導電性接着剤、液晶シール材、ダイアタッチ剤等、様々な電子材料用途に使用されている。近年、電子材料分野においては、小型化、高機能化、軽量化を達成するために種々の金属、プラスチックが使用されており、それらの部材に使用されるエポキシ樹脂組成物においても、作業性、接着性、長期信頼性等の要求性能が高まっている。このような状況の中、特許文献1、2で提案されているエポキシ樹脂組成物は、優れた硬化性と貯蔵安定性を達成しており、作業性においても良好なものであるが、材料の靱性や接着性等については、さらなる改良の余地が残されているのが現状である。
【0005】
そこで、本発明の目的は、低温で硬化させることができ、金属やプラスチックに対する接着性および靱性が良好で、かつ、応力緩和能が良いことによる長期信頼性を有する硬化物が得られる硬化性樹脂組成物およびこれを用いた接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、エポキシ樹脂およびポリチオール化合物に、特定のエンジニアリングプラスチックおよびチタン化合物のうち少なくとも一種を使用することで、上記課題を解消できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)ポリチオール化合物と、(C)下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2-1)で表されるチタン化合物、下記一般式(2-2)で表されるチタン化合物、およびチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、
(ただし、一般式(1)において、X
1、X
2、X
3、X
4は、それぞれ独立して、単結合、O、S、C(CH
3)
2、CO、CO
2、またはSO
2を表し、Y
1、Y
2は、それぞれ独立して、H、Cl、またはOHを表し、aは、1~10000の整数を表し、一般式(2-1)、(2-2)において、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、炭素原子数1~10の非置換、若しくは水酸基で置換されたアルキル基、または下記一般式(2-3)、
(ただし、一般式(2-3)において、R
5は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)で表される基であり、b、cは、それぞれ独立して、1~3の整数であり、b+c=4である。)から選ばれる少なくとも1種の接着付与化合物と、(D)硬化促進剤と、を含み、
一般式(1)で表される化合物が、ポリエーテルスルホンであり、
(B)成分が、分子内にメルカプト基を2つ有するチオール化合物と、分子内にメルカプト基を3つ以上有するチオール化合物をからなり、分子内にメルカプト基を2つ有するチオール化合物が、(B)ポリチオール化合物の総量に対して、20~80質量%であり、
(A)成分が、80℃において液状のエポキシ樹脂であって、(C)成分が、80℃において、(A)成分に溶解可能であり、
(A)成分100質量部に対して、(B)成分30~200質量部、(C)成分1~20質量部、(D)成分1~20質量部であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の樹脂組成物においては、(A)エポキシ樹脂が、多核多価フェノール化合物のアルキレンオキサイド変性型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンジメタノールのジグリシジルエーテル、およびグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂であることが好ましい。また、本発明の樹脂組成物においては、(C)接着付与化合物が、一般式(1)で表される化合物と、一般式(2-1)で表されるチタン化合物および一般式(2-2)で表されるチタン化合物のうち少なくとも一方と、を含有することが好ましい。
【0009】
本発明の硬化物は、本発明の硬化性樹脂組成物が熱硬化されてなることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の接着剤は、本発明の硬化性樹脂組成物を用いてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エポキシ樹脂およびポリチオール化合物に、特定のエンジニアリングプラスチックおよびチタン化合物のうち少なくとも一種を使用することにより、金属やプラスチックに対する接着性および応力緩和性に優れた硬化物が得られる、速硬化性に優れた硬化性樹脂組成物およびこれを用いた接着剤を提供することができる。本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば、接着剤、注型剤、封止材料、シーリング剤、繊維強化用樹脂、コーティング剤、塗料等に使用でき、特に、信頼性が良好な異種材料の接着剤として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)ポリチオール化合物と、(C)下記一般式(1)、下記一般式(2-1)、および下記一般式(2-2)、
で表されるチタン化合物から選ばれる少なくとも1種の接着付与化合物と、(D)硬化促進剤と、を含む。
【0013】
本発明の硬化性樹脂組成物に使用される(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2-テトラ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、ジシクロペンタジエンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA-エチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;単核多価フェノール化合物、多核多価フェノール化合物、または多価アルコール類に、ポリアルキレンオキサイドを付加させたポリオールのポリグリシジルエーテル化合物;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族または脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類およびグリシジルメタクリレートの単独重合体または共重合体;N,N-ジグリシジルアニリン、ビス(4-(N-メチル-N-グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)-2-メチルアニリン、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリン、N,N,N’,N’-テトラ(2,3-エポキシプロピル)-4,4’-ジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン-ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物が挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂は末端イソシアネートのプレポリマーによって内部架橋されたもの、あるいは多価の活性水素化合物(多価フェノール、ポリアミン、カルボニル基含有化合物、ポリリン酸エステル等)で高分子量化したものでもよい。
【0014】
これらの中でも、樹脂組成物の作業性、接着性、靱性、ガラス転移点温度、耐溶剤性等の硬化物の性能を向上させるという点から、多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル、多価アルコールのポリグリシジルエーテル、多核多価フェノール化合物のアルキレンオキサイド変性型エポキシ樹脂、グリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物が好ましく、ビスフェノールAのポリプロピレンオキサイド変性型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンジメタノールのジグリシジルエーテル、ジグリシジルオルトトルイジン、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)-2-メチルアニリン、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリンを使用することがより好ましい。これらのエポキシ樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
本発明の樹脂組成物においては、所望の粘度に調整して使用するために、反応性希釈剤を併用することができる。このような反応性希釈剤としては、本発明の樹脂組成物を硬化させた時のブリード抑制の観点から、エポキシ基を少なくとも1つ有する希釈剤を使用することが好ましい。なお、好ましい反応性希釈剤に含まれるエポキシ基の数は、1個でもよく、2個以上でもよく、特に限定されるものではない。
【0016】
エポキシ基の数が1個の反応性希釈剤としては、例えば、n-ブチルグリシジルエーテル、C12~C14のアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、および3級カルボン酸グリシジルエステル等が挙げられる。
【0017】
エポキシ基の数が2個の反応性希釈剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、およびネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0018】
エポキシ基の数が3個の反応性希釈剤としては、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、およびグリセリントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0019】
反応性希釈剤においては、エポキシ基を少なくとも2つ有するものが好ましく、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルがより好ましい。
【0020】
反応性希釈剤を使用する場合の使用量は、硬化物の物性低下抑制と、樹脂組成物の作業性のバランスの観点から、エポキシ基を有する化合物の総量に対して、1~50質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。
【0021】
本発明の樹脂組成物で使用される(B)ポリチオール化合物は、分子内にメルカプト基を少なくとも2つ有する化合物であれば特に構造上の制限はなく、例えば、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、エチレングリコールジチオグリコレート、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトチオプロピオネート)、ジペンタエリスリトールポリ(3-メルカプトプロピオネート)等のポリオールとメルカプト有機酸のエステル化反応によって得られるチオール化合物;1,4-ブタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,10-デカンジチオール等のアルキルポリチオール化合物;末端チオール基含有ポリエーテル;末端チオール基含有ポリチオエーテル;エポキシ化合物と硫化水素との反応によって得られるチオール化合物;ポリチオール化合物とエポキシ化合物との反応によって得られる末端チオール基を有するチオール化合物;特許3974404号に記載の、分子内にエステル骨格を有しないチオール化合物等が挙げられる。
【0022】
これらの中では、入手の容易性と硬化物の強靭性の点から、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトチオプロピオネート)、ジペンタエリスリトールポリ(3-メルカプトプロピオネート)を使用することが好ましく、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)を使用することがより好ましい。
【0023】
本発明の樹脂組成物においては、硬化物の架橋密度が上がりすぎないようにする点から、分子内にメルカプト基を2つ有するチオール化合物と、分子内にメルカプト基を3つ以上有するチオール化合物を併用することが好ましい。その際の使用量としては、分子内にメルカプト基を2つ有するチオール化合物が、(B)ポリチオール化合物の総量に対して、5~95質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましく、30~70質量%であることが更に好ましい。
【0024】
本発明の樹脂組成物において、(B)ポリチオール化合物の使用量としては、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、反応性希釈剤を使用する場合は、(A)エポキシ樹脂と反応性希釈剤の総量100質量部に対して、30~200質量部であることが好ましく、50~150質量部であることがより好ましい。30質量部よりも少ない場合、若しくは200質量部よりの多い場合は、樹脂組成物の硬化不良が生じる可能性がある。
【0025】
本発明の樹脂組成物に係る(C)接着付与化合物は、部材に対する接着性を高めるためのものである。一般的なエポキシ樹脂硬化物はある程度の接着性を有しているものであるが、(C)接着付与化合物を併用することにより、大幅に部材に対する接着性を向上させることができる。(C)接着付与化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2-1)で表されるチタン化合物、および下記一般式(2-2)で表されるチタン化合物が挙げられる。
【0026】
一般式(1)において、X
1、X
2、X
3、X
4は、それぞれ独立して、単結合、O、S、C(CH
3)
2、CO、CO
2、またはSO
2を表し、Y
1、Y
2は、それぞれ独立して、H、Cl、またはOHを表し、aは、1~10000の整数を表す。
【0027】
一般式(2-1)、(2-2)において、R
1~R
4は、それぞれ独立して、炭素原子数1~10の非置換、若しくは水酸基で置換されたアルキル基、または下記一般式(2-3)で表される基であり、b、cは、それぞれ独立して、1~3の整数であり、b+c=4である。
【0028】
一般式(2-3)において、R
5は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0029】
一般式(1)において、X1、X2、X3、X4としては、例えば、X1、X2、X3、X4がともに酸素原子の場合はポリフェニレンエーテルとなり、X1、X3がともに酸素原子であり、X2、X4がともにCO2の場合は、ポリカーボネートとなる。
【0030】
このように、一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー等が挙げられる。これらのポリマーは、いわゆる耐熱性の高いプラスチックであり、エンジニアリングプラスチックと呼称されるポリマーの一部である。本発明の樹脂組成物においては、特に異種材料間における接着性が向上するという観点から、ポリエーテルスルホン(X1、X3が酸素であり、X2、X4がSO2である)、ポリスルホン(X1がSO2、X2、X4が酸素、X3がC(CH3)2である)、ポリフェニレンスルホン(X1がSO2、X2、X4が酸素、X3が単結合)、ポリフェニレンサルファイド(X1、X2、X3、X4が全て硫黄)であることが好ましく、ポリエーテルスルホンが特に好ましい。
【0031】
本発明の樹脂組成物における(C)接着付与化合物の一般式(1)において、Y1、Y2はH、Cl、またはOHであるが、これらの基は一般式(1)で表される化合物の製造方法に由来するものである。すなわち、例えば、本発明の樹脂組成物に好適に使用されるポリエーテルスルホンの製造方法としては、ジクロロジフェニルスルホンとビスフェノールSを、ジフェニルエーテルやジフェニルスルホン等の高沸点溶剤に溶解させた後、炭酸カリウムのようなアルカリ金属塩を用いて、140~340℃で、1~20時間反応させて得ることができる。この際、ジクロロジフェニルスルホンをビスフェノールSよりも過剰に使用した場合は、得られた化合物の末端(すなわち一般式(1)におけるY1、Y2)が塩素となり、ビスフェノールSがジクロロジフェニルスルホンよりも過剰に使用された場合は、得られた化合物の末端は水酸基となる。
【0032】
市販されているポリエーテルスルホンとしては、スミカエクセルPESシリーズ(住友化学(株)製)、PESシリーズ(三井化学(株)製)、ウルトラゾーンEシリーズ(BASFジャパン(株)製)、レーデルAシリーズ(ソルベイアドバンスとポリマーズ(株)製)等が挙げられる。
【0033】
本発明の樹脂組成物における(C)接着付与化合物の一般式(2-1)、(2-2)中の、R1、R2、R3、R4で表される炭素原子数が1~10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、アミル、イソアミル、t-アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、t-オクチル、ノニル、イソノニル、デシル等が挙げられる。本発明の樹脂組成物においては、これらのアルキル基は、水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい。
【0034】
一般式(2-3)中の、R5で表される炭素原子数が1~6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、アミル、イソアミル、t-アミル、ヘキシル等が挙げられる。
【0035】
本発明の樹脂組成物においては、基材に対する接着性がより向上するという観点から、R1、R2、R3、R4の少なくとも1つが、上記一般式(2-3)で表される基であることが好ましい。その際のR5はメチル、エチル、プロピルであることが、入手が容易であるという点で好ましい。
【0036】
本発明の樹脂組成物に使用することができるチタン化合物としては、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンブトキシドダイマー、チタンテトラ-2-エチルヘキソキシド、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンジ-2-エチルヘキソキシビス(2-エチル-3-ヒドロキシヘキソキシド)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。これらの中では、特に基材に対する接着性がより向上するという点で、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)が好ましい。これらチタン化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
本発明の樹脂組成物においては、一般式(1)で表される化合物と、一般式(2-1)で表されるチタン化合物および一般式(2-2)で表されるチタン化合物のうち少なくとも一方と、を併用した方が、硬化物の接着性が特に優れるという点で好ましい。その際の一般式(1)で表される化合物の使用量としては、(C)接着付与化合物の総量に対して、25~80質量%であることが好ましく、40~70質量%であることがより好ましい。
【0038】
本発明の樹脂組成物における(C)接着付与化合物の使用量としては、硬化物の接着性と靱性のバランスの観点から、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、反応性希釈剤を使用する場合は、(A)エポキシ樹脂と反応性希釈剤の総量100質量部に対して1~20質量部であることが好ましく、3~15質量部がより好ましく、5~10質量部がさらに好ましい。
【0039】
本発明の樹脂組成物における(D)硬化促進剤としては、アミン系の硬化促進剤が好ましく、そのような化合物としては、例えば、1,2-ジメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール等のイミダゾール類;ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類が挙げられる。これらの中では、イミダゾール類を使用することが、反応速度のコントロールが容易である点で好ましい。
【0040】
本発明の樹脂組成物における(D)硬化促進剤の使用量としては、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、反応性希釈剤を使用する場合は、(A)エポキシ樹脂と反応性希釈剤の総量100質量部に対して1~20質量部であることが好ましく、5~15質量部であることがより好ましい。1質量部より少ない場合は、樹脂組成物の硬化速度が著しく低下する場合があり、20質量部より多い場合は、樹脂組成物の貯蔵安定性が著しく低下する場合がある。
【0041】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、粘度調整剤として有機溶剤を用いることができる。この場合の有機溶剤としては、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。本発明の樹脂組成物においては、これらの溶剤の内の一つまたは複数種を混合して、本発明の樹脂組成物の総質量に対して、1~50質量%の範囲となるように配合することができる。
【0042】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、無機充填剤を添加してもよい。このような無機充填剤としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、炭酸カルシウム、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、アルミナ、窒化アルミ、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、またはこれらを球形化したビーズ、およびガラス繊維等が挙げられる。これらの中では、これらの無機充填剤は、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
無機充填剤の配合量は、硬化性樹脂組成物の全固形分(有機溶剤等の揮発成分を除いた全成分の合計質量)に対して、5~90質量%となるようにすることが好ましく、10~50質量%となるようにすることがより好ましい。無機充填剤の配合量が5質量%未満では、硬化物の熱膨張係数の低減効果が低くなる傾向があり、90質量%を超えるとエポキシ樹脂組成物の粘度が上昇し、作業性が著しく低下する傾向となる。
【0044】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、粉末状ゴムを用いてもよい。このような粉末状ゴムとしては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、カルボン酸変性NBR、水素添加NBR、コアシェル型ゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリルゴム等が挙げられる。これらの粉末状ゴムは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
コアシェル型ゴムとは、粒子がコア層とシェル層を有するゴムのことであり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマー、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、または外層のシェル層がガラス状ポリマー、中間層がゴム状ポリマー、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のもの等が挙げられる。ガラス状ポリマーは例えば、メタクリル酸メチルの重合物、アクリル酸メチルの重合物、スチレンの重合物等で構成され、ゴム状ポリマー層は例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)、シリコーンゴム、ポリブタジエン等で構成される。
【0046】
粉末状ゴムを使用する場合の粉末状ゴムの使用量としては、一液型複合樹脂組成物の全固形分(有機溶剤等の揮発成分を除いた全成分の合計質量)に対して、0.1~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。
【0047】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、無機充填剤、粉末状ゴム以外の添加剤を併用してもよい。添加剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ベンジルアルコール、コールタール等の非反応性の希釈剤(可塑剤);ガラス繊維、パルプ繊維、合成繊維、セラミック繊維等の繊維質充填材;ガラスクロス・アラミドクロス、カーボンファイバー等の補強材;顔料;γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-N’-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;キャンデリラワックス、カルナウバワックス、木ろう、イボタロウ、みつろう、ラノリン、鯨ろう、モンタンワックス、石油ワックス、脂肪族ワックス、脂肪族エステル、脂肪族エーテル、芳香族エステル、芳香族エーテル等の潤滑剤;増粘剤;チキソトロピック剤;酸化防止剤;光安定剤;紫外線吸収剤;難燃剤;消泡剤;防錆剤;カーボンブラック、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等の常用の添加物を挙げる事ができる。本発明の樹脂組成物においては、更に、キシレン樹脂、石油樹脂等の粘着性の樹脂類を併用することもできる。
【0048】
本発明の樹脂組成物においては、無機充填剤、粉末状ゴム以外の添加剤の使用する場合の使用量は、樹脂組成物の全固形分(有機溶剤等の揮発成分を除いた全成分の合計質量)に対して、0.1~50質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、(A)~(D)成分、および必要に応じて加える任意の成分を、必要により加熱処理しながら、撹拌、溶融、混合、分散させることにより製造することができる。この場合の、撹拌、溶融、混合、分散に使用する装置は特に限定されるものではなく、本発明においては、撹拌器、加熱装置を備えたライカイ機、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル、遊星攪拌機等を使用することができる。また、これらの装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0050】
本発明の硬化物は、硬化性樹脂組成物が熱硬化されてなるものである。本発明の硬化物は、接着性および応力緩和性に優れているという利点を有している。そして、本発明の樹脂組成物は、様々な用途に使用することができ、例えば、接着剤、注型剤、封止材料、シーリング剤、繊維強化用樹脂、コーティング剤、塗料等に使用でき、接着性が良好であるという点で、特に同種若しくは異種材料の接着剤として使用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の樹脂組成物を実施例により、具体的に説明する。なお、以下の実施例等において%は特に記載が無い限り質量基準である。
【0052】
実施例において使用した表1、2に記載の原料は以下の通りである。
EP-4088L:ジシクロペンタジエンジメタノールのジグリシジルエーテル、(株)ADEKA製、エポキシ当量:165g/eq.
EP-4010S:ビスフェノールAのプロピレンオキサイド変性型エポキシ樹脂、(株)ADEKA製、エポキシ当量:350g/eq.
ED-503G:1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、(株)ADEKA製、エポキシ当量:135g/eq.
EP-3980S:オルトトルイジンのグリシジルエーテル、(株)ADEKA製、エポキシ当量:115g/eq.
EP-4100E:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、(株)ADEKA製、エポキシ当量:190g/eq.
TMMP:トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学(株)製)
EGMP-4:テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学(株)製)
PES:スミカエクセルPES-5003PS、ポリエーテルスルホン、住友化学(株)製
TC-750:チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、マツモトファインケミカル(株)製
TA-10:チタンテトライソプロポキシド、一般式(2-1)において、R1、R2が共にイソプロピルであり、bとcが共に2である化合物、マツモトファインケミカル(株)製
1B2PZ:1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、四国化成(株)製
KBM-603:N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業(株)製
KBM-403:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製
KBM-803:γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製
KBM-503:γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製
【0053】
[実施例1]
500mLビーカーにEP-4088Lを80g、EP-4100Eを20g、PESを4g加え、80℃にて48時間加熱した。その後、スパチュラで撹拌を行い、目視にて、PESが均一に溶解していることを確認した。その後、TMMPを47g、EGMP-4を47g、TC-750を3g、1B2PZを7g、KBM-603を10g加え、25℃にて5分間、スパチュラで撹拌を行った。内容物を500mLディスポカップに移した後、遊星式攪拌機を使用して、撹拌を行い、実施例1の樹脂組成物を得た。得られたX-1について、下記の方法に従い、硬化性、貯蔵弾性率、接着性の評価を行った。評価結果を表1、2に示す。
【0054】
[実施例2~実施例12、比較例1~比較例4]
表1のように配合を変えたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~12および比較例1~4の樹脂組成物を得た。得られた各樹脂組成物について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0055】
[硬化性]
各樹脂組成物をSUS板の上に載せ、60℃に設定した恒温槽に4時間保存した。その後、樹脂組成物が硬化しているかを、指による触感で確認を行った。指に未硬化の樹脂組成物が付着しないものを合格、付着するものを不合格とした。
【0056】
[貯蔵弾性率]
各樹脂組成物を縦:40mm、横:10mm、厚み:0.5mmに設計した型に流し込み、80℃の恒温槽にて、4時間で硬化させた後、動的粘弾性測定装置(RSA-G2、TAインスツルメント(株)製)を用いて、-60℃~200℃、10℃/分の昇温速度、歪0.1%、周波数1Hzの測定条件で測定を行い、25℃の貯蔵弾性率の数値について、以下の通りに評価を行った。
A:貯蔵弾性率が5MPa以上100MPa未満
B:貯蔵弾性率が100MPa以上300MPa未満
C:貯蔵弾性率が5MPa未満、または300MPa以上
【0057】
樹脂硬化物の特性としては、ある程度の貯蔵弾性率が接着強度等の影響もあり必要である一方、高すぎる貯蔵弾性率は部材を接着させた後の、応力緩和能が悪くなり、結果、長期信頼性に乏しいものとなってしまうという観点から、本発明においては、AまたはBを評価良好とし、Cを評価不良と判断した。
【0058】
[接着性]
SUS板に、各樹脂組成物を厚み10μmで塗布した後、幅10mmのNi箔の半分を樹脂組成物に付着させ、80℃、4時間で樹脂組成物を硬化させた。その後、万能型ボンドテスター4000plus(ノードソン・アドバンスト・テクノロジー(株)製)を用いて、剥離速度0.2mm/sの条件で、90度ピール試験を行った。接着強度の値について、以下の指標に従い評価を行った。
A:接着強度が0.2N/cm以上
B:接着強度が0.1N/cm以上0.2N/cm未満
C:接着強度が0.1N/cm未満
本発明においては、実用レベルを考慮し、AまたはBを評価良好とし、Cを評価不良と判断した。
【0059】
【0060】
【0061】
本発明の硬化性樹脂組成物は、低温での硬化性、貯蔵弾性率、接着性の何れも評価良好であり、特に接着剤としての性能に優れていることが分かり、特に実施例12においては全ての評価項目が良好であった。これに対し、本発明の硬化性樹脂組成物でない比較例1~4では、特に接着性において満足のいく結果が得られなかった。