(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】劣化アスファルト再生用添加剤及び再生アスファルト合材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 91/06 20060101AFI20221216BHJP
C08L 95/00 20060101ALI20221216BHJP
E01C 7/18 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
C08L91/06
C08L95/00
E01C7/18
(21)【出願番号】P 2018133705
(22)【出願日】2018-07-13
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100153866
【氏名又は名称】滝沢 喜夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100195888
【氏名又は名称】竹原 裕一
(72)【発明者】
【氏名】高村 馨
(72)【発明者】
【氏名】大野 高志
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-221381(JP,A)
【文献】特開2013-155345(JP,A)
【文献】特開2000-309786(JP,A)
【文献】特開2009-144046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
E01C 7/18-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(1)~(4)を満た
し、ナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR)及びその精製物から選択される1種以上を含む、劣化アスファルト再生用添加剤であって、
多環芳香族炭化水素(PCA)含有量が3質量%以上であり、重量平均分子量が600以上である、劣化アスファルト再生用添加剤。
・要件(1):100℃動粘度が60mm
2/s以上である。
・要件(2):アニリン点が75℃~95℃である。
・要件(3):環分析(n-d-M法)による%C
Aが25~55である。
・要件(4):15℃における密度が0.950g/cm
3以上である。
【請求項2】
さらに、下記要件(5)を満たす、請求項1に記載の劣化アスファルト再生用添加剤。
・要件(5):環分析(n-d-M法)による%C
Nが15以下である。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の劣化アスファルト再生用添加剤と、アスファルト廃材とを混合する工程を含む、再生アスファルト合材の製造方法。
【請求項4】
前記アスファルト廃材が、アスファルトと改質材とを含むポリマー改質アスファルトの劣化物を含有する、請求項
3に記載の再生アスファルト合材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劣化アスファルト再生用添加剤、及び当該劣化アスファルト再生用添加剤を利用した再生アスファルト合材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装は、施工後数年を経ると、バインダーとして機能しているアスファルトが劣化し、ひび割れ等が生じる。そのため、アスファルト舗装は、施工して一定期間を経た後にアスファルト廃材として回収され、その後、新たなアスファルト舗装が施工される。
【0003】
アスファルト舗装には、アスファルト合材が用いられる。アスファルト合材とは、骨材及びアスファルト等を所定の割合で混合した材料である。
ところで、従来より、施工して一定期間を経た後に回収されたアスファルト廃材は、産業廃棄物の処理負担の軽減、環境負荷の低減、及び省資源化等の観点から、再生利用されている。
ここで、アスファルト廃材には、ストレートアスファルトの劣化物が含まれている。そのため、アスファルト廃材を再生利用する際には、ストレートアスファルトの劣化物を再生処理する必要がある。なぜなら、ストレートアスファルトの劣化物が劣化したままの状態でアスファルト合材に含まれていると、アスファルト舗装にひび割れ等の不具合が早期に生じる恐れがあり、また、ストレートアスファルトの劣化物を骨材から安価に分離して除去する技術も確立されていないからである。
【0004】
ところで、近年、アスファルト合材には、耐久性や排水性といった機能性が求められつつある。そのため、アスファルト合材に用いられるアスファルトとして、ストレートアスファルトに改質材を混合したポリマー改質アスファルトの使用が増加しつつある。当該改質材としては、例えば、スチレン・ブタジエン系ゴム等のゴム系材料、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体等の熱可塑性エラストマー、及びエチレン・酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
なお、以降の説明では、ポリマー改質アスファルトを、単に「改質アスファルト」ともいう。
アスファルト廃材には、当該改質アスファルトの劣化物が含まれていることもある。そのため、当該改質アスファルトの劣化物を再生処理する必要もある。
なお、本明細書では、ストレートアスファルトの劣化物と改質アスファルトの劣化物とを総称して、「劣化アスファルト」ともいう。
【0005】
劣化アスファルトの再生処理は、一般的には、アスファルト廃材を粉砕処理等により細かく砕いた後、加熱軟化処理する前後において、劣化アスファルト再生用添加剤を添加することにより行われる。劣化アスファルト再生用添加剤は、アスファルト廃材に含まれる劣化アスファルトの針入度及び伸度を回復するために添加される。
なお、劣化アスファルト再生用添加剤は、再生アスファルト用添加剤又は再生アスファルト用軟化剤と呼ばれることもある。
再生処理が施されたアスファルト廃材は、新骨材及び新アスファルト等と混合されて再生アスファルト合材とされた後、再びアスファルト舗装等として施工される。
【0006】
近年、アスファルト廃材が将来的に大量に発生する可能性を見据え、劣化アスファルト再生用添加剤が各種提案されつつある。
例えば、特許文献1には、PCA(多環芳香族炭化水素)含有量が3質量%未満であり、40℃動粘度、アニリン点、及び芳香族分(%CA)を所定の範囲に調整した劣化アスファルト再生用添加剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、改質アスファルトの使用が増加しつつあることから、今後回収されるアスファルト廃材は、改質アスファルトの劣化物(以下、「劣化改質アスファルト」ともいう)の混入割合が増加し、劣化アスファルト中の改質材含有量が多くなるため、再生が困難になることが予想される。かかる状況を想定すると、劣化改質アスファルトを含むアスファルト廃材を再生処理可能な劣化アスファルト再生用添加剤を提供することが喫緊の課題であると考えられる。
しかしながら、特許文献1では、劣化改質アスファルトの再生に関する具体的な検討は行われていない。
【0009】
本発明は、劣化改質アスファルトの再生効果に優れる劣化アスファルト再生用添加剤、及び当該劣化アスファルト再生用添加剤を利用した再生アスファルト合材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、100℃動粘度、アニリン点、環分析(n-d-M法)による%CA、及び15℃における密度を所定の範囲に調整した劣化アスファルト再生用添加剤が、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0011】
すなわち本発明は、下記[1]及び[2]に関する。
[1]下記要件(1)~(4)を満たす、劣化アスファルト再生用添加剤。
・要件(1):100℃動粘度が60mm2/s以上である。
・要件(2):アニリン点が75℃~95℃である。
・要件(3):環分析(n-d-M法)による%CAが25~55である。
・要件(4):15℃における密度が0.950g/cm3以上である。
[2]上記[1]に記載の劣化アスファルト再生用添加剤と、アスファルト廃材とを混合する工程を含む、再生アスファルト合材の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の劣化アスファルト再生用添加剤は、劣化改質アスファルトの再生効果に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[劣化アスファルト再生用添加剤の構成]
本発明の劣化アスファルト再生用添加剤は、下記要件(1)~(4)を満たす。
・要件(1):100℃動粘度が60mm2/s以上である。
・要件(2):アニリン点が75℃~95℃である。
・要件(3):環分析(n-d-M法)による%CAが25~55である。
・要件(4):15℃における密度が0.950g/cm3以上である。
【0014】
本発明の劣化アスファルト再生用添加剤は、上記要件(1)~(4)を満たすことによって、劣化改質アスファルトに対して優れた再生効果を発揮する。
また、本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、上記要件(1)~(4)を後述する好適範囲に調整することによって、劣化改質アスファルトに対してより優れた再生効果を発揮させて、再生処理が施された後に劣化した改質アスファルト(以下、「再生処理後劣化改質アスファルト」ともいう)に対する再生効果も発揮し得る。
今後、改質アスファルトの利用が拡大すると共に、アスファルト廃材のリサイクルが拡大するにつれて、再生処理後劣化改質アスファルトを含むアスファルト廃材が大量に発生することが想定される。本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、再生処理後劣化改質アスファルトを含むアスファルト廃材の再生利用の実現にも資する。
【0015】
以下、本発明の劣化アスファルト再生用添加剤について詳細に説明すると共に、当該劣化アスファルト再生用添加剤の調製方法、当該劣化アスファルト再生用添加剤を利用した再生アスファルト合材の製造方法について、詳細に説明する。
【0016】
<要件(1)>
要件(1)では、劣化アスファルト再生用添加剤の100℃動粘度を規定している。
100℃動粘度が60mm2/s以上である高粘度の劣化アスファルト再生用添加剤とすることによって、劣化改質アスファルトに対して優れた再生効果を発揮する。また、再生処理時における発煙を抑えて、再生処理操作への悪影響を抑えることもできる。さらには、このように高粘度の劣化アスファルト再生用添加剤とすることによって、当該劣化アスファルト再生用添加剤を添加することによる再生アスファルトの粘性変動を抑え易くできる。
本発明の一態様において、劣化改質アスファルトに対する再生効果をより向上させる観点から、劣化アスファルト再生用添加剤の100℃動粘度は、好ましくは70mm2/s以上、より好ましくは100mm2/s以上、更に好ましくは120mm2/s以上、より更に好ましくは140mm2/s以上、更になお好ましくは150mm2/s以上である。
また、本発明の一態様において、再生処理時に劣化アスファルト再生用添加剤と劣化アスファルトとを混合し易くする観点から、劣化アスファルト再生用添加剤の100℃動粘度は、通常400mm2/s以下、好ましくは350mm2/s以下、より好ましくは300mm2/s以下である。
【0017】
ここで、本発明の一態様において、劣化改質アスファルトに対する再生効果をさらに向上させて、再生処理後劣化改質アスファルトに対する再生効果を発揮させる観点から、劣化アスファルト再生用添加剤の100℃動粘度は、好ましくは160mm2/s以上、より好ましくは180mm2/s以上、更に好ましくは200mm2/s以上、より更に好ましくは210mm2/s以上、更になお好ましくは220mm2/s以上、一層好ましくは230mm2/s以上、より一層好ましくは240mm2/s以上である。
【0018】
なお、本発明において、劣化アスファルト再生用添加剤の100℃動粘度は、ASTM D445に準拠して測定した値を意味する。
【0019】
<要件(2)>
要件(2)では、劣化アスファルト再生用添加剤のアニリン点を規定している。
アニリン点が75℃以上95℃以下である劣化アスファルト再生用添加剤とすることによって、劣化改質アスファルトに対して優れた再生効果を発揮する。
本発明の一態様において、劣化改質アスファルトに対する再生効果をより向上させる観点から、劣化アスファルト再生用添加剤のアニリン点は、好ましくは75℃以上94℃以下、より好ましくは75℃以上93℃以下、更に好ましくは75℃以上92℃以下である。
【0020】
ここで、本発明の一態様において、劣化改質アスファルトに対する再生効果をさらに向上させて、再生処理後劣化改質アスファルトに対する再生効果を発揮させる観点から、劣化アスファルト再生用添加剤のアニリン点は、好ましくは75℃以上91℃以下、より好ましくは75℃以上88℃以下、更に好ましくは75℃以上86℃以下、より更に好ましくは75℃以上84℃以下、更になお好ましくは76℃以上82℃以下、一層好ましくは78℃以上82℃以下である。
【0021】
なお、本発明において、劣化アスファルト再生用添加剤のアニリン点は、JIS K 2256に準拠して測定した値を意味する。
【0022】
<要件(3)>
要件(3)では、劣化アスファルト再生用添加剤の環分析(n-d-M法)による%CAを規定している。%CAは、芳香族炭素量の全炭素量に対する質量割合(百分率)を示す値である。
環分析(n-d-M法)による%CAが25以上55以下である劣化アスファルト再生用添加剤とすることによって、劣化改質アスファルトに対して優れた再生効果を発揮する。
本発明の一態様において、劣化改質アスファルトに対する再生効果をより向上させる観点から、劣化アスファルト再生用添加剤の環分析(n-d-M法)による%CAは、好ましくは27以上55以下、より好ましくは29以上55以下、更に好ましくは30以上55以下である。
【0023】
ここで、本発明の一態様において、劣化改質アスファルトに対する再生効果をさらに向上させて、再生処理後劣化改質アスファルトに対する再生効果を発揮させる観点から、劣化アスファルト再生用添加剤の環分析(n-d-M法)による%CAは、好ましくは31以上50以下であり、より好ましくは35以上50以下であり、更に好ましくは40以上50以下であり、より更に好ましくは40以上45以下である。
【0024】
なお、本発明において、%CAは、ASTM D3238-95に準拠し、環分析(n-d-M法)にて求めた値を意味する。
【0025】
<要件(4)>
要件(4)では、15℃における密度を規定している。
15℃における密度が0.950g/cm3以上である劣化アスファルト再生用添加剤とすることによって、劣化改質アスファルトに対して優れた再生効果を発揮する。
本発明の一態様において、劣化改質アスファルトに対する再生効果をより向上させる観点から、劣化アスファルト再生用添加剤の15℃における密度は、好ましくは0.955g/cm3以上、より好ましくは0.960g/cm3以上、更に好ましくは0.965g/cm3以上である。
【0026】
ここで、本発明の一態様において、劣化改質アスファルトに対する再生効果をさらに向上させて、再生処理後劣化改質アスファルトに対する再生効果を発揮させる観点から、劣化アスファルト再生用添加剤の15℃における密度は、好ましくは0.968g/cm3以上、より好ましくは0.972g/cm3以上、更に好ましくは0.975g/cm3以上、より更に好ましくは0.978g/cm3以上、更になお好ましくは0.980g/cm3以上、一層好ましくは0.982g/cm3以上、より一層好ましくは0.984g/cm3以上さらに一層好ましくは0.986g/cm3以上である。
また、本発明の一態様において、劣化アスファルト再生用添加剤の15℃における密度は、通常1.00g/cm3以下であり、好ましくは0.995g/cm3以下であり、より好ましくは0.990g/cm3以下である。
【0027】
なお、本発明において、15℃における密度は、JIS K 2249-1:2011(原油及び石油製品-密度の求め方- 第1部:振動法)に準拠して測定される値を意味する。
【0028】
<上記要件(1)~(4)以外の好適要件>
(要件(5):環分析(n-d-M法)による%CN)
本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、劣化改質アスファルトに対する再生効果をより向上させる観点から、環分析(n-d-M法)による%CNが、好ましくは15以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは13以下である。%CNは、ナフテン炭素量の全炭素量に対する質量割合(百分率)を示す値である。
また、本発明の一態様において、劣化改質アスファルトに対する再生効果をさらに向上させて、再生処理後劣化改質アスファルトに対する再生効果を発揮させる観点から、劣化アスファルト再生用添加剤の環分析(n-d-M法)による%CNは、好ましくは10以下であり、より好ましくは5.0以下であり、更に好ましくは3.0以下であり、より更に好ましくは2.0以下であり、更になお好ましくは1.0以下であり、一層好ましくは0.8以下であり、より一層好ましくは0.6以下である。
なお、本発明において、%CNは、ASTM D3238-95に準拠し、環分析(n-d-M法)にて求めた値を意味する。
【0029】
(60℃動粘度)
本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、劣化改質アスファルトに対する再生効果をより向上させる観点から、60℃動粘度が、好ましくは500mm2/s以上、より好ましくは800mm2/s以上、更に好ましくは1,000mm2/s以上、より更に好ましくは1,500mm2/s以上、更になお好ましくは1,800mm2/s以上である。
また、本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、60℃動粘度が、通常5,000mm2/s以下である。
ここで、本発明の一態様において、劣化改質アスファルトに対する再生効果をさらに向上させて、再生処理後劣化改質アスファルトに対する再生効果を発揮させる観点から、劣化アスファルト再生用添加剤の60℃動粘度は、好ましくは2,000mm2/s以上、より好ましくは2,500mm2/s以上、更に好ましくは3,000mm2/s以上、より更に好ましくは3,500mm2/s以上、更になお好ましくは4,000mm2/s以上、一層好ましくは4,500mm2/s以上である。
なお、本発明において、劣化アスファルト再生用添加剤の60℃動粘度は、ASTM D445に準拠して測定した値を意味する。
【0030】
(粘度指数)
本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、劣化改質アスファルトに対する再生効果をより向上させる観点から、粘度指数が、好ましくは58以下、より好ましくは56以下、更に好ましくは53以下である。
また、本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、粘度指数が、通常15以上である。
ここで、本発明の一態様において、劣化改質アスファルトに対する再生効果をさらに向上させて、再生処理後劣化改質アスファルトに対する再生効果を発揮させる観点から、劣化アスファルト再生用添加剤の粘度指数は、好ましくは52以下、より好ましくは45以下、更に好ましくは40以下、より更に好ましくは35以下、更になお好ましくは30以下、一層好ましくは25以下である。
なお、本発明において、粘度指数は、ASTM D445に準拠して測定した60℃動粘度及び100℃動粘度の値から、ASTM D2270に準拠して算出した値を意味する。
【0031】
(20℃における屈折率)
本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、劣化改質アスファルトに対する再生効果をより向上させる観点から、20℃における屈折率が、好ましくは1.540以上、より好ましくは1.543以上、更に好ましくは1.545以上である。
また、本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、20℃における屈折率が、通常1.58以下である。
ここで、本発明の一態様において、劣化改質アスファルトに対する再生効果をさらに向上させて、再生処理後劣化改質アスファルトに対する再生効果を発揮させる観点から、劣化アスファルト再生用添加剤の20℃における屈折率は、好ましくは1.545以上、より好ましくは1.550以上、更に好ましくは1.555以上、より更に好ましくは1.558以上、更になお好ましくは1.560以上である。
なお、本発明において、20℃における屈折率は、JIS K0062に準拠して測定した値を意味する。
【0032】
(硫黄分)
本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、劣化改質アスファルトに対する再生効果をより向上させる観点から、硫黄分が、好ましくは0.15質量%以上0.40質量%以下、より好ましくは0.18質量%以上0.36質量%以下、更に好ましくは0.20質量%以上0.32質量%以下、より更に好ましくは0.22質量%以上0.30質量%以下である。
なお、本発明において、硫黄分は、JIS K 2541(原油及び石油製品-硫黄分試験方法-)に準じて測定した値を意味する。
【0033】
(重量平均分子量)
本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、劣化改質アスファルトに対する再生効果をより向上させる観点から、重量平均分子量が、好ましくは600以上、より好ましくは620以上、更に好ましくは640以上である。
また、本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、重量平均分子量が、通常750以下である。
なお、本発明において、重量平均分子量は、ASTM D2502に準拠して測定した値を意味する。
【0034】
(引火点)
本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、劣化改質アスファルトに対する再生効果をより向上させると共に、貯蔵時や輸送時の安全性や取扱性を向上させる観点から、引火点が、好ましくは280℃以上330℃以下、より好ましくは290℃以上325℃以下である。
ここで、本発明の一態様において、劣化改質アスファルトに対する再生効果をさらに向上させて、再生処理後劣化改質アスファルトに対する再生効果を発揮させると共に、貯蔵時や輸送時の安全性や取扱性を向上させる観点から、劣化アスファルト再生用添加剤の引火点は、好ましくは300℃以上320℃未満、より好ましくは300℃以上315℃以下、更に好ましくは300℃以上310℃以下である。
なお、この要件を満たす劣化アスファルト再生用添加剤は、日本の消防法では「可燃性液体類」に分類され、消防法上の貯蔵や運搬、取り扱い等の制限の面での利点もある。
なお、本発明において、引火点は、JIS K 2265に準拠し、クリーブランド開放式(COC)法により測定した値を意味する。
【0035】
<上記要件を満たす劣化アスファルト再生用添加剤の調製方法>
本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、ナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR)及びナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR)の精製物から選択される一種以上の高粘度ナフテン系油(A)を含むことが好ましい。劣化アスファルト再生用添加剤が、高粘度ナフテン系油(A)を含むことにより、上記要件(1)~(4)、さらには上記要件(1)~(4)以外の上記要件を満たし得る。しかも、高粘度ナフテン系油(A)は、アスファルトとのなじみが良く、劣化アスファルト再生用添加剤として添加したときに、再生アスファルトの粘性変動等を抑え易くできる。
【0036】
ここで、本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、PCA(多環芳香族炭化水素)含有量が3質量%未満であることが好ましい。但し、本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、上記のように高粘度ナフテン系油(A)を含む場合には、PCA含有量が3質量%以上であってもよい。高粘度ナフテン系油(A)は、ナフテン系原油の減圧蒸留後の残渣である。そのため、PCAとして、重合度が高く分子量の大きな分子が多くを占め、REACH(Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals)規則等において発がん性物質として規制対象となっている4環および5環の8種の芳香族化合物(8PAHs(Polycyclic Aromatic Hydrocarbons))は低粘度油及び中粘度油などの他留分に比べて相対的に少ない。
また、PCA含有量が少ない場合や、PCAとして重合度が高く分子量の大きな分子が多くを占める場合には、劣化改質アスファルトに含まれる改質材等を溶解する能力が大きく低下するため、劣化改質アスファルトを軟化させる能力も低下しやすい。そのため、PCA含有量が少ない劣化アスファルト再生用添加剤やPCAとして重合度が高く分子量の大きな分子が多くを占める劣化アスファルト再生用添加剤は、再生効果が発現され難い。
しかしながら、本発明の劣化アスファルト再生用添加剤は、上記要件(1)~(4)を満たすことによって、PCA含有量が少なく、また、PCAとして重合度が高く分子量の大きな分子が多くを占める場合であっても、劣化改質アスファルトに対して優れた再生効果を発揮する。勿論、改質材を含まない劣化ストレートアスファルトに対しても優れた再生効果を発揮する。
なお、本発明において、PCA含有量は、IP 346/92に準拠して測定した値を意味する。
【0037】
本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤において、高粘度ナフテン系油(A)は、劣化アスファルト再生用添加剤の全量(100質量%)基準で、好ましくは80~100質量%、より好ましくは85~100質量%、更に好ましくは90~100質量%、より更に好ましくは95~100質量%である。
なお、本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、高粘度ナフテン系油(A)以外の鉱油及び合成油から選択される一種以上を含有してもよい。また、添加剤を含有してもよい。
【0038】
ナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR)は、ナフテン系原油を減圧蒸留することにより得られる残渣油である。なお、ナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR)は、ナフテン系原油の常圧蒸留残渣油(AR)を減圧蒸留して得るようにしてもよい。
【0039】
ナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR)の精製物は、ナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR)に対して精製処理として例えば溶剤抽出を施すことで得られる。溶剤抽出としては、例えば、N-メチルピロリドンを用いた溶剤抽出、フルフラールを用いた溶剤抽出が挙げられ、好ましくはフルフラールを用いた溶剤抽出である。なお、精製処理は、溶剤抽出には限定されず、脱れき処理、脱蝋処理、及び水素化分解処理等から選択される1種以上であってもよいが、溶剤抽出が好ましい。
【0040】
ここで、ナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR)は、ナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR)の精製物と比較して、劣化改質アスファルトに対する再生効果が高く、再生処理後劣化改質アスファルトに対する再生効果を発揮し得る。
一方、ナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR)の精製物は、ナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR)と比較して、再生アスファルトの粘性を大きく変動させることのない範囲で粘性が低く、再生処理時にアスファルトと混合させ易い。
本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、上記利点を考慮して、ナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR)またはナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR)の精製物を単独で用いてもよいし、ナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR)とナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR)の精製物とを組み合わせて用いてもよい。
【0041】
ナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR)とナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR)の精製物とを組み合わせて用いる場合、これらの混合比[(ナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR))/(ナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR)の精製物)]は、質量比で、1/99~99/1である。
そして、本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、劣化改質アスファルトに対する再生効果をより向上させて、再生処理後劣化改質アスファルトに対する再生効果を発揮させる観点から、当該混合比は、質量比で、60/40~99/1であることが好ましく、70/30~99/1であることがより好ましく、80/20~99/1であることが更に好ましい。
また、本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、再生処理時にアスファルトとより混合させ易くする観点から、当該混合比は、質量比で、1/99~40/60であることが好ましく、1/99~30/70であることがより好ましく、1/99~20/80であることが更に好ましい。
【0042】
[再生アスファルト合材の製造方法]
本発明の再生アスファルト合材の製造方法は、本発明の劣化アスファルト再生用添加剤と、アスファルト廃材とを混合する工程を含む。
本発明の劣化アスファルト再生用添加剤は、アスファルトと改質材とを含むポリマー改質アスファルトの劣化物である劣化改質アスファルトに対して優れた再生効果を発揮する。勿論、改質材を含まない劣化ストレートアスファルトに対しても優れた再生効果を発揮する。したがって、本発明の劣化アスファルト再生用添加剤をアスファルト廃材に添加することで、アスファルト廃材に含まれる劣化ストレートアスファルトや劣化改質アスファルトの針入度及び伸度を回復させて再生することができる。したがって、アスファルト廃材に劣化改質アスファルトが含まれているか否かによらず、アスファルト廃材を原料として、再生アスファルト合材を製造することができる。
【0043】
本発明の一態様の再生アスファルト合材の製造方法において、上記要件(1)~(4)を上述した好適範囲に調整した、本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤と、アスファルト廃材とを混合することによって、劣化改質アスファルトに対してより優れた再生効果を劣化アスファルト再生用添加剤に発揮させて、再生処理後劣化改質アスファルトに対する再生効果を発揮させ、再生処理後劣化改質アスファルトを含むアスファルト廃材の再生を行うこともできる。
【0044】
なお、再生アスファルト合材を製造する際、劣化改質アスファルトを溶解するためにアスファルト廃材が加熱される。アスファルト廃材は、好ましくは120~200℃、より好ましくは130~180℃、更に好ましくは140~170℃に加熱される。
劣化アスファルト再生用添加剤は、アスファルト廃材を加熱する前、加熱中、及び加熱後であってアスファルトが溶解状態を維持している間の少なくともいずれかのタイミングで添加されて、アスファルトと混合される。
その後、更に新骨材及び新アスファルト等を混合して、再生アスファルト合材が得られる。
【0045】
本発明の一態様の再生アスファルト合材の製造方法において、劣化アスファルト再生用添加剤は、下記の量で添加される。
(1)劣化アスファルトの全量(100質量%)基準の場合、劣化アスファルト再生用添加剤は、好ましくは1~30質量%、より好ましくは1.5~25質量%、更に好ましくは2~22質量%添加される。
(2)アスファルト廃材の全量(100質量%)基準の場合、劣化アスファルト再生用添加剤は、好ましくは0.02~1.5質量%、より好ましくは0.03~1.3質量%、更に好ましくは0.04~1.1質量%添加される。
(3)再生アスファルト合材の全量(100質量%)基準の場合、劣化アスファルト再生用添加剤は、好ましくは0.01~1.2質量%、より好ましくは0.015~1.0質量%、更に好ましくは0.02~0.9質量%添加される。
但し、上記(1)に基づいて上記(2)及び(3)における劣化アスファルト再生用添加剤の添加量を決定する場合、上記(2)に基づいて上記(1)及び(3)における劣化アスファルト再生用添加剤の添加量を決定する場合、上記(3)に基づいて上記(1)及び(2)における劣化アスファルト再生用添加剤の添加量を決定する場合には、以下の関係を満足する必要がある。
・(1)の添加量>(2)の添加量>(3)の添加量
なお、ここで規定する劣化アスファルト再生用添加剤の添加量は、劣化アスファルトの目標針入度を68~72に設定したときの値である。目標針入度をこの範囲よりも小さくする場合には、劣化アスファルト再生用添加剤の添加量を上記範囲よりも減らしてもよい。逆に、目標針入度をこの範囲よりも大きくする場合には、劣化アスファルト再生用添加剤の添加量を上記範囲よりも増やしてもよい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
[各種物性の測定方法]
本実施例において、各種物性は、以下の測定方法により測定した。
<60℃動粘度、100℃動粘度、及び粘度指数>
ASTM D445に準拠して60℃動粘度及び100℃動粘度を測定した。そして、60℃動粘度及び100℃動粘度の測定値から、ASTM D2270に準拠して粘度指数を算出した。
<アニリン点>
JIS K 2256に準拠して測定した。
<%CA、%CN、及び%CP>
%CA、%CN、及び%CPは、ASTM D3238-95に準拠し、環分析(n-d-M法)にて求めた。
<15℃における密度>
JIS K 2249-1:2011(原油及び石油製品-密度の求め方- 第1部:振動法)に準拠して測定した。
<20℃における屈折率>
JIS K 0062に準拠して測定した。
<PCA含有量>
IP 346/92に準拠して測定した。
<硫黄分>
JIS K 2541(原油及び石油製品-硫黄分試験方法-)に準じて測定した
<重量平均分子量>
ASTM D2502に準拠して測定した。
<引火点>
JIS K 2265に準拠し、クリーブランド開放式(COC)法により測定した。
【0048】
[劣化アスファルト再生用添加剤]
実施例及び比較例で使用した劣化アスファルト再生用添加剤A~Cを以下に示す。
<劣化アスファルト再生用添加剤A>
ナフテン系原油を減圧蒸留して得られる減圧蒸留残渣油(VR)を劣化アスファルト再生用添加剤Aとして用いた。
劣化アスファルト再生用添加剤Aは、ナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR)に相当する高粘度ナフテン系油である。
<劣化アスファルト再生用添加剤B>
ナフテン系原油を減圧蒸留して得られる減圧蒸留残渣油(VR)をフルフラール溶剤抽出した後、減圧蒸留した留分を劣化アスファルト再生用添加剤Bとして用いた。
劣化アスファルト再生用添加剤Bは、ナフテン系原油の減圧蒸留残渣油(VR)の精製物に相当する高粘度ナフテン系油である。
<劣化アスファルト再生用添加剤C>
ナフテン系原油を減圧蒸留し、留分として、蒸留塔の塔頂から塔底に向かい、順に第1留分から第4留分に分留した際の第三留分をフルフラール溶剤抽出した後、ヘックマン式蒸留装置にて減圧蒸留して得られた重質留分を劣化アスファルト再生用添加剤Cとして用いた。
【0049】
[実施例1-2、比較例1]
劣化アスファルト再生用添加剤A~Cについて、60℃動粘度、100℃動粘度、粘度指数、アニリン点、%CA、%CN、%CP、15℃における密度、20℃における屈折率、PCA含有量、硫黄分、重量平均分子量、及び引火点を測定又は算出した。結果を表1に示す。
【0050】
また、以下に示す「劣化改質アスファルトの再生試験」を行った。結果を表1に示す。
【0051】
なお、「劣化改質アスファルトの再生試験」において、アスファルトの針入度及び伸度は、以下の方法に基づき測定した。
<針入度>
JIS K 2207に準拠し、25℃におけるアスファルトの針入度(単位:1/10mm)を測定した。
<伸度>
JIS K 2207に準拠し、15℃におけるアスファルトの伸度(単位:cm)を測定した。
【0052】
[劣化改質アスファルトの再生試験]
(1)劣化改質アスファルトの調製
針入度50であるポリマー改質アスファルト(II型)を180℃に保ったギヤ式恒温槽で10日間静置し、針入度を25まで低下させ、強制劣化改質アスファルトを得た。
そして、針入度25の強制劣化改質アスファルトと、針入度50のポリマー改質アスファルトとを混合し、針入度37のプレ劣化改質アスファルト(1-1)を調製した。このプレ劣化改質アスファルトの伸度は41であった。
次いで、この針入度37のプレ劣化改質アスファルト(1-1)30質量部と、針入度37の劣化ストレートアスファルト(1-2)70質量部とを混合し、針入度37の劣化改質アスファルト(1)を得た。劣化改質アスファルト(1)の伸度は18であった。
なお、劣化ストレートアスファルト(1-2)は、以下の方法により調製した。
針入度が70のJIS K 2207規格の60-80ストレートアスファルトを180℃に保ったギヤ式恒温槽で10日間静置し、針入度を19まで低下させ、強制劣化ストレートアスファルトを得た。
そして、この針入度19の強制劣化ストレートアスファルトと、針入度70のJIS K 2207規格の60-80ストレートアスファルトを混合し、針入度37の劣化ストレートアスファルト(1-2)を調製した。劣化ストレートアスファルトの伸度は4であった。
【0053】
(2)1回目の劣化改質アスファルトの再生試験
針入度37の劣化改質アスファルト(1)に劣化アスファルト再生用添加剤A-Cをそれぞれ添加し、なるべく泡が出ない様に、160℃で加熱しながらゆっくり混ぜて、添加した劣化アスファルト再生用添加剤が劣化改質アスファルト(1)中に十分に分散するように混合し、再生改質アスファルト(1)を得た。劣化アスファルト再生用添加剤A-Cの配合量は、劣化改質アスファルト(1)の針入度が68~72となるように調整した。
再生改質アスファルト(1)を以下の基準で評価し、F評価であった場合には試験を終了した。
・A:針入度が68~72、且つ、伸度が100以上であり、再生効果が認められる。
・F:針入度が68未満、及び/又は、伸度が100未満であり、再生効果が認められない。
【0054】
(3)2回目の劣化改質アスファルトの再生試験
(3-1)2回目の劣化処理
1回目の再生試験でA評価と判断された再生改質アスファルト(1)を室温(25℃)まで冷却した後、再び180℃に保ったギヤ式恒温槽で15時間静置し、2回目の劣化処理を行い、針入度を48に低下させた劣化改質アスファルト(2)を得た。
(3-2)2回目の再生試験
針入度48の劣化改質アスファルト(2)に劣化アスファルト再生用添加剤A~Bをそれぞれ添加し、なるべく泡が出ない様に、140℃で加熱しながらゆっくり混ぜて、添加した劣化アスファルト再生用添加剤が劣化改質アスファルト(2)中に十分に分散するように混合し、再生改質アスファルト(2)を得た。
劣化アスファルト再生用添加剤A~Bの配合量は、劣化改質アスファルト(1)の針入度が68~72となるように調整した。
再生アスファルト(2)を以下の基準で評価し、F評価であった場合には試験を終了した。
・A:針入度が68~72、且つ、伸度が100以上であり、再生効果が認められる。
・F:針入度が68未満、及び/又は、伸度が100未満であり、再生効果が認められない。
【0055】
【0056】
表1に示す劣化改質アスファルトの再生試験の結果から、上記要件(1)~(4)を満たす、実施例1及び2で用いた劣化アスファルト再生用添加剤A及びBは、劣化改質アスファルトを再生可能であることがわかる。
これに対し、上記要件(1)~(4)を満たさない、比較例1で用いた劣化アスファルト再生用添加剤Cは、劣化改質アスファルトを再生できないことがわかる。
また、実施例1で用いた劣化アスファルト再生用添加剤Aは、再生処理後劣化改質アスファルトを再生可能であり、劣化改質アスファルトの再生処理能力が極めて高いことがわかる。
なお、実施例1で用いた劣化アスファルト再生用添加剤Aは、PCA含有量が9.6質量%であった。しかし、劣化アスファルト再生用添加剤Aは、ナフテン系原油を減圧蒸留して得られる減圧蒸留残渣油(VR)であることから、PCAとして重合度が高く分子量の大きな分子が多くを占め、重合度が低く、分子量の小さな分子は実質的には含まれない。そのため、REACH規則等において発がん性物質として規制対象となっている4環および5環の8種の芳香族化合物(8PAHs)は低粘度油及び中粘度油などの他留分に比べて相対的に少ない。また、かかる事情から、実施例1で用いた劣化アスファルト再生用添加剤Aは、劣化改質アスファルトに含まれる改質材等を溶解し難く、再生処理能が低いことが懸念されたが、本実施例において、最も優れた劣化改質アスファルトの再生能力を示した。