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特許7195083劣化アスファルト再生用添加剤及び再生アスファルト合材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】劣化アスファルト再生用添加剤及び再生アスファルト合材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 91/00 20060101AFI20221216BHJP
   C08L 95/00 20060101ALI20221216BHJP
   E01C 7/18 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
C08L91/00
C08L95/00
E01C7/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018156555
(22)【出願日】2018-08-23
(65)【公開番号】P2020029520
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100153866
【弁理士】
【氏名又は名称】滝沢 喜夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100195888
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 裕一
(72)【発明者】
【氏名】高村 馨
(72)【発明者】
【氏名】大野 高志
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-333515(JP,A)
【文献】特開2000-109700(JP,A)
【文献】特公昭46-000337(JP,B1)
【文献】特開2006-335833(JP,A)
【文献】特開2009-144046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
E01C 7/18-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(1)~(4)を満たナフテン系原油を原料とし、アニリン点が-20℃~-5℃であり、且つ、環分析(n-d-M法)による%C が50~68である低アニリン点アロマ油(A)を含むH型改質アスファルトに由来する劣化改質アスファルト用の劣化アスファルト再生用添加剤。
・要件(1):100℃動粘度が10mm/s~120mm/sである。
・要件(2):アニリン点が-20℃~-5℃である。
・要件(3):環分析(n-d-M法)による%Cが50~68である。
・要件(4):流動点が-10℃~25℃である。
【請求項2】
さらに、下記要件(5)を満たす、請求項1に記載の劣化アスファルト再生用添加剤。
・要件(5):環分析(n-d-M法)による%Cが5~20である。
【請求項3】
さらに、下記要件(6)を満たす、請求項1又は2に記載の劣化アスファルト再生用添加剤。
・要件(6):引火点が180℃~250℃である。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の劣化アスファルト再生用添加剤と、アスファルト廃材とを混合する工程を含む、再生アスファルト合材の製造方法。
【請求項5】
前記アスファルト廃材が、H型改質アスファルトの劣化物を含有する、請求項に記載の再生アスファルト合材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劣化アスファルト再生用添加剤、及び当該劣化アスファルト再生用添加剤を利用した再生アスファルト合材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装は、施工後数年を経ると、バインダーとして機能しているアスファルトが劣化し、ひび割れ等が生じる。そのため、アスファルト舗装は、施工して一定期間を経た後にアスファルト廃材として回収され、その後、新たなアスファルト舗装が施工される。
【0003】
アスファルト舗装には、アスファルト合材が用いられる。アスファルト合材とは、骨材及びアスファルト等を所定の割合で混合した材料である。
ところで、従来より、施工して一定期間を経た後に回収されたアスファルト廃材は、産業廃棄物の処理負担の軽減、環境負荷の低減、及び省資源化等の観点から、再生利用されている。
ここで、アスファルト廃材には、ストレートアスファルトの劣化物が含まれている。そのため、アスファルト廃材を再生利用する際には、ストレートアスファルトの劣化物を再生処理する必要がある。なぜなら、ストレートアスファルトの劣化物が劣化したままの状態でアスファルト合材に含まれていると、アスファルト舗装にひび割れ等の不具合が早期に生じる恐れがあり、また、ストレートアスファルトの劣化物を骨材から安価に分離して除去する技術も確立されていないからである。
【0004】
ところで、近年、アスファルト合材には、耐久性や排水性といった機能性が求められつつある。そのため、アスファルト合材に用いられるアスファルトとして、ストレートアスファルトに改質材を混合したポリマー改質アスファルトの使用が増加しつつある。当該改質材としては、例えば、スチレン・ブタジエン系ゴム等のゴム系材料、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体等の熱可塑性エラストマー、及びエチレン・酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
なお、以降の説明では、ポリマー改質アスファルトを、単に「改質アスファルト」ともいう。
アスファルト廃材には、当該改質アスファルトの劣化物が含まれていることもある。そのため、当該改質アスファルトの劣化物を再生処理する必要もある。
なお、本明細書では、ストレートアスファルトの劣化物と改質アスファルトの劣化物とを総称して、「劣化アスファルト」ともいう。
【0005】
劣化アスファルトの再生処理は、一般的には、アスファルト廃材を粉砕処理等により細かく砕いた後、加熱軟化処理する前後において、劣化アスファルト再生用添加剤を添加することにより行われる。劣化アスファルト再生用添加剤は、アスファルト廃材に含まれる劣化アスファルトの針入度及び伸度を回復するために添加される。
再生処理が施されたアスファルト廃材は、新骨材及び新アスファルト等と混合されて再生アスファルト合材とされた後、再びアスファルト舗装等として施工される。
なお、劣化アスファルト再生用添加剤は、再生アスファルト用添加剤又は再生アスファルト用軟化剤と呼ばれることもある。
【0006】
近年、アスファルト廃材が将来的に大量に発生する可能性を見据え、劣化アスファルト再生用添加剤が各種提案されつつある。
例えば、特許文献1には、PCA(多環芳香族炭化水素)含有量、40℃動粘度、アニリン点、及び芳香族分(%C)を所定の範囲に調整した劣化アスファルト再生用添加剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-207061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、改質アスファルトの使用が増加しつつあることから、今後回収されるアスファルト廃材は、劣化した改質アスファルト(以下、「劣化改質アスファルト」ともいう)の混入割合が増加し、劣化アスファルト中の改質材含有量が多くなるため、再生が困難になることが予想される。特にポリマー改質アスファルトのうち、H型のポリマー改質アスファルトは、改質材含有量が多い。そのため、H型のポリマー改質アスファルトの劣化物の混入割合が増加すると、劣化アスファルト中の改質材含有量が更に多くなるため、再生が更に困難になることが予想される。かかる状況を想定すると、H型のポリマー改質アスファルトのように改質材を多く含む改質アスファルトに由来する劣化改質アスファルトを含むアスファルト廃材を再生処理可能な劣化アスファルト再生用添加剤を提供することが喫緊の課題であると考えられる。
しかしながら、特許文献1では、劣化改質アスファルトの再生に関する具体的な検討は行われていない。
【0009】
本発明は、H型のポリマー改質アスファルトのように改質材を多く含む改質アスファルトに由来する劣化改質アスファルトの再生効果に優れ、且つ取扱時の安全性を確保しやすい劣化アスファルト再生用添加剤、及び当該劣化アスファルト再生用添加剤を利用した再生アスファルト合材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、100℃動粘度、アニリン点、環分析(n-d-M法)による%C、及び流動点を所定の範囲に調整した劣化アスファルト再生用添加剤が、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0011】
すなわち本発明は、下記[1]及び[2]に関する。
[1]下記要件(1)~(4)を満たす、劣化アスファルト再生用添加剤。
・要件(1):100℃動粘度が10mm/s~120mm/sである。
・要件(2):アニリン点が-20℃~3℃である。
・要件(3):環分析(n-d-M法)による%Cが50~68である。
・要件(4):流動点が-10℃~25℃である。
[2]上記[1]に記載の劣化アスファルト再生用添加剤と、アスファルト廃材とを混合する工程を含む、再生アスファルト合材の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の劣化アスファルト再生用添加剤は、H型のポリマー改質アスファルトのように改質材を多く含む改質アスファルトに由来する劣化改質アスファルトの再生効果に優れ、且つ取扱時の安全性を確保しやすい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[劣化アスファルト再生用添加剤の構成]
本発明の劣化アスファルト再生用添加剤は、下記要件(1)~(4)を満たす。
・要件(1):100℃動粘度が10mm/s~120mm/sである。
・要件(2):アニリン点が-20℃~3℃である。
・要件(3):環分析(n-d-M法)による%Cが50~68である。
・要件(4):流動点が-10℃~25℃である。
【0014】
本発明の劣化アスファルト再生用添加剤は、上記要件(1)~(4)を満たすことによって、H型のポリマー改質アスファルトのように改質材を多く含む改質アスファルトに由来する劣化改質アスファルトに対して優れた再生効果を発揮する。勿論、改質材の含有量がH型のポリマー改質アスファルトよりも少ない改質アスファルトの劣化物、さらにはストレートアスファルトの劣化物に対しても優れた再生効果を発揮する。また、取扱時の安全性を確保しやすい。
【0015】
以下、本発明の劣化アスファルト再生用添加剤について詳細に説明すると共に、当該劣化アスファルト再生用添加剤の調製方法、当該劣化アスファルト再生用添加剤を利用した再生アスファルト合材の製造方法について、詳細に説明する。
なお、以降の説明では、H型のポリマー改質アスファルトのように改質材を多く含む改質アスファルトに由来する劣化改質アスファルトを、「改質材高含有劣化改質アスファルト」ともいう。
【0016】
<要件(1)>
要件(1)では、劣化アスファルト再生用添加剤の100℃動粘度を規定している。
100℃動粘度が10mm/s~120mm/sである劣化アスファルト再生用添加剤とすることによって、改質材高含有劣化改質アスファルトに対して優れた再生効果を発揮する。勿論、改質材の含有量が少ない改質アスファルトの劣化物、さらにはストレートアスファルトの劣化物に対しても優れた再生効果を発揮する。また、取扱時の安全性を確保しやすい。
本発明の一態様において、改質材高含有劣化改質アスファルトに対する再生効果をより向上させる観点から、劣化アスファルト再生用添加剤の100℃動粘度は、好ましくは12mm/s~90mm/s、より好ましくは13mm/s~70mm/s、更に好ましくは14mm/s~50mm/s、より更に好ましくは15mm/s~30mm/sである。
【0017】
なお、本発明において、劣化アスファルト再生用添加剤の100℃動粘度は、ASTM D445に準拠して測定した値を意味する。
【0018】
<要件(2)>
要件(2)では、再生アスファルトのアニリン点を規定している。
アニリン点が-20℃~3℃である劣化アスファルト再生用添加剤とすることによって、改質材高含有劣化改質アスファルトに対して優れた再生効果を発揮する。勿論、改質材の含有量が少ない改質アスファルトの劣化物、さらにはストレートアスファルトの劣化物に対しても優れた再生効果を発揮する。また、取扱時の安全性を確保しやすい。
本発明の一態様において、改質材高含有劣化改質アスファルトに対する再生効果をより向上させる観点から、劣化アスファルト再生用添加剤のアニリン点は、好ましくは-20℃~2℃、より好ましくは-19℃~1℃、更に好ましくは-18℃~-5℃、より更に好ましくは-17℃~-10℃である。
【0019】
なお、本発明において、劣化アスファルト再生用添加剤のアニリン点は、JIS K 2256に準拠して測定した値を意味する。
【0020】
<要件(3)>
要件(3)では、劣化アスファルト再生用添加剤の環分析(n-d-M法)による%Cを規定している。%Cは、芳香族炭素量の全炭素量に対する質量割合(百分率)を示す値である。
環分析(n-d-M法)による%Cが50~68である劣化アスファルト再生用添加剤とすることによって、改質材高含有劣化改質アスファルトに対して優れた再生効果を発揮する。勿論、改質材の含有量が少ない改質アスファルトの劣化物、さらにはストレートアスファルトの劣化物に対しても優れた再生効果を発揮する。また、取扱時の安全性を確保しやすい。
本発明の一態様において、改質材高含有劣化改質アスファルトに対する再生効果をより向上させる観点から、劣化アスファルト再生用添加剤の環分析(n-d-M法)による%Cは、好ましくは52~68、より好ましくは54~68、更に好ましくは56~67、より更に好ましくは58~67、更になお好ましくは60~67である。
【0021】
なお、本発明において、%Cは、ASTM D3238-95に準拠し、環分析(n-d-M法)にて求めた値を意味する。
【0022】
<要件(4)>
要件(4)では、流動点を規定している。
流動点が-10℃~25℃である劣化アスファルト再生用添加剤とすることによって、改質材高含有劣化改質アスファルトに対して優れた再生効果を発揮する。勿論、改質材の含有量が少ない改質アスファルトの劣化物、さらにはストレートアスファルトの劣化物に対しても優れた再生効果を発揮する。また、取扱時の安全性を確保しやすい。
本発明の一態様において、改質材高含有劣化改質アスファルトに対する再生効果をより向上させる観点から、劣化アスファルト再生用添加剤の流動点は、好ましくは-5℃~20℃、より好ましくは0℃~15℃、更に好ましくは2℃~13℃である。
【0023】
なお、本発明において、流動点は、JIS K 2269:1987(原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法)に準拠して測定される値を意味する。
【0024】
<上記要件(1)~(4)以外の好適要件>
(要件(5):環分析(n-d-M法)による%C
本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、改質材高含有劣化改質アスファルトに対する再生効果をさらに向上させる観点から、環分析(n-d-M法)による%Cが、好ましくは5~20、より好ましくは6~18、更に好ましくは7~15である。%Cは、ナフテン炭素量の全炭素量に対する質量割合(百分率)を示す値である。
なお、本発明において、%Cは、ASTM D3238-95に準拠し、環分析(n-d-M法)にて求めた値を意味する。
【0025】
(要件(6):引火点)
本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、改質材高含有劣化改質アスファルトに対する再生効果をさらに向上させると共に、安全性をより向上させる観点、具体的には、引火の危険性を低下させて貯蔵時や輸送時における安全性を向上させる観点、引火の危険性の低下及び発煙の抑制による劣化アスファルト再生用添加剤を取り扱う作業者の安全性を確保する観点から、引火点が、好ましくは180℃~250℃、より好ましくは190℃~245℃、更に好ましくは200℃~245℃、より更に好ましくは210℃~240℃である。
本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、要件(1)~(4)を満たすことによって、特に上記要件(1)を満たすことによって、引火点を上記範囲に調整しやすい。
なお、本発明において、引火点は、JIS K 2265に準拠し、クリーブランド開放式(COC)法により測定した値を意味する。
【0026】
(40℃動粘度)
本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、改質材高含有劣化改質アスファルトに対する再生効果をさらに向上させる観点から、40℃動粘度が、好ましくは500mm/s以上、より好ましくは800mm/s以上、更に好ましくは1,000mm/s以上、より更に好ましくは1,200mm/s以上、更になお好ましくは1,400mm/s以上、一層好ましくは1,600mm/s以上である。
また、同様の観点から、本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤の40℃動粘度は、通常5,000mm/s以下、好ましくは3,000mm/s以下、より好ましくは2,500mm/s以下、更に好ましくは2200mm/s以下である。
なお、本発明において、劣化アスファルト再生用添加剤の40℃動粘度は、ASTM D445に準拠して測定した値を意味する。
【0027】
(15℃における密度)
本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、改質材高含有劣化改質アスファルトに対する再生効果をさらに向上させる観点から、15℃における密度が、好ましくは1.000g/cm以上、より好ましくは1.010g/cm以上、更に好ましくは1.020g/cm以上、より更に好ましくは1.030g/cm以上である。
また、同様の観点から、本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、通常1.060g/cm以下、好ましくは1.050g/cm以下、より好ましくは1.040g/cm以下である。
なお、本発明において、15℃における密度は、JIS K 2249-1:2011(原油及び石油製品-密度の求め方- 第1部:振動法)に準拠して測定される値を意味する。
【0028】
(20℃における屈折率)
本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、改質材高含有劣化改質アスファルトに対する再生効果をより向上させる観点から、20℃における屈折率が、好ましくは1.565以上、より好ましくは1.570以上、更に好ましくは1.575以上、より更に好ましくは1.580以上である。
また、本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、20℃における屈折率が、通常1.600以下である。
なお、本発明において、20℃における屈折率は、JIS K0062に準拠して測定した値を意味する。
【0029】
<上記要件を満たす劣化アスファルト再生用添加剤の調製方法>
本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、ナフテン系原油を減圧蒸留し、留分として、蒸留塔の塔頂から塔底に向かい順に、第1留分から第4留分と残渣油とに分留した際の第3留分を、フルフラール溶剤抽出して得られる抽出物である、低アニリン点アロマ油(A)を含むことが好ましい。
劣化アスファルト再生用添加剤が、低アニリン点アロマ油(A)を含むことにより、上記要件(1)~(4)、さらには上記要件(1)~(4)以外の上記要件を満たし得る。
ここで、低アニリン点アロマ油(A)における「低アニリン点」とは、アニリン点が-20℃~3℃であることを意味しており、好ましくは-20℃~2℃、より好ましくは-19℃~1℃、更に好ましくは-18℃~-5℃、より更に好ましくは-17℃~-10℃である。
また、低アニリン点アロマ油(A)における「アロマ油」とは、環分析(n-d-M法)による%Cが50~68であることを意味しており、好ましくは52~68、より好ましくは54~67、更に好ましくは56~67、より更に好ましくは58~67、更になお好ましくは60~67である。
低アニリン点アロマ油(A)が、上記の「低アニリン点」と上記の「アロマ油」の条件を満たすことによって、上記要件(2)及び(3)が満たされると共に、上記要件(1)及び(4)が満たされ易くなる。また、上記要件(1)~(4)以外の上記要件も満たされ易くなる。
つまり、本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、ナフテン系原油を原料とし、アニリン点が-20℃~3℃であり、且つ、環分析(n-d-M法)による%Cが50~68である低アニリン点アロマ油(A)を含むことが好ましい。
ここで、本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤は、使用環境等に応じて物性を調整するために、上記要件(1)~(4)、さらには上記要件(1)~(4)以外の上記要件を満たす範囲で、低アニリン点アロマ油(A)以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば鉱油及び合成油から選択される1種以上が挙げられ、好ましくは鉱油から選択される1種以上であり、より好ましくはナフテン系鉱油から選択される1種以上である。当該ナフテン系鉱油としては、例えば、ナフテン系原油を減圧蒸留し、留分として、蒸留塔の塔頂から塔底に向かい順に、第1留分から第4留分と残渣油とに分留した際の第3留分以外の他の留分から選択される1種以上、例えば第2留分と第4留分から選択される1種以上が挙げられる。
本発明の一態様の劣化アスファルト再生用添加剤において、低アニリン点アロマ油(A)は、劣化アスファルト再生用添加剤の全量(100質量%)基準で、好ましくは20~100質量%、より好ましくは30~100質量%、更に好ましくは40~100質量%、より更に好ましくは50~100質量%、更になお好ましくは60~100質量%、一層好ましくは70~100質量%、より一層好ましくは80~100質量%、更に一層好ましくは85~100質量%、より更に一層好ましくは90~100質量%、更になお一層好ましくは95~100質量%である。
【0030】
[再生アスファルト合材の製造方法]
本発明の再生アスファルト合材の製造方法は、本発明の劣化アスファルト再生用添加剤と、アスファルト廃材とを混合する工程を含む。
本発明の劣化アスファルト再生用添加剤は、H型改質アスファルトの劣化物のような高含有劣化改質アスファルトに対して優れた再生効果を発揮する。勿論、改質材含有量が少ない劣化改質アスファルト、さらには、劣化ストレートアスファルトに対しても優れた再生効果を発揮する。したがって、本発明の劣化アスファルト再生用添加剤をアスファルト廃材に添加することで、アスファルト廃材に含まれる、改質材高含有劣化改質アスファルト、劣化改質アスファルト、及び劣化ストレートアスファルトから選択される1種以上の劣化アスファルトの針入度及び伸度を回復させて再生することができる。勿論、アスファルト廃材に含まれる劣化ストレートアスファルトや劣化改質アスファルトの針入度及び伸度を回復させて再生することもできる。したがって、アスファルト廃材に改質材高含有劣化改質アスファルトが含まれているか否かによらず、アスファルト廃材を原料として、再生アスファルト合材を製造することができる。
【0031】
なお、再生アスファルト合材を製造する際、上記劣化アスファルトを溶解するためにアスファルト廃材が加熱される。アスファルト廃材は、好ましくは120~200℃、より好ましくは130~180℃、更に好ましくは140~170℃に加熱される。
劣化アスファルト再生用添加剤は、アスファルト廃材を加熱する前、加熱中、及び加熱後であってアスファルトが溶解状態を維持している間の少なくともいずれかのタイミングで添加されて、アスファルトと混合される。
その後、更に新骨材及び新アスファルト等を混合して、再生アスファルト合材が得られる。
【0032】
本発明の一態様の再生アスファルト合材の製造方法において、劣化アスファルト再生用添加剤は、下記の量で添加される。
(1)劣化アスファルトの全量(100質量%)基準の場合、劣化アスファルト再生用添加剤は、好ましくは1~15質量%、より好ましくは3~12質量%、更に好ましくは5~10質量%添加される。
(2)アスファルト廃材の全量(100質量%)基準の場合、劣化アスファルト再生用添加剤は、好ましくは0.02~0.75質量%、より好ましくは0.06~0.6質量%、更に好ましくは0.1~0.5質量%添加される。
(3)再生アスファルト合材の全量(100質量%)基準の場合、劣化アスファルト再生用添加剤は、好ましくは0.01~0.6質量%、より好ましくは0.03~0.48質量%、更に好ましくは0.05~0.4質量%添加される。
但し、上記(1)に基づいて上記(2)及び(3)における劣化アスファルト再生用添加剤の添加量を決定する場合、上記(2)に基づいて上記(1)及び(3)における劣化アスファルト再生用添加剤の添加量を決定する場合、上記(3)に基づいて上記(1)及び(2)における劣化アスファルト再生用添加剤の添加量を決定する場合には、以下の関係を満足する必要がある。
・(1)の添加量>(2)の添加量>(3)の添加量
なお、ここで規定する劣化アスファルト再生用添加剤の添加量は、劣化アスファルトの目標針入度を68~72に設定したときの値である。目標針入度をこの範囲よりも小さくする場合には、劣化アスファルト再生用添加剤の添加量を上記範囲よりも減らしてもよい。逆に、目標針入度をこの範囲よりも大きくする場合には、劣化アスファルト再生用添加剤の添加量を上記範囲よりも増やしてもよい。
【実施例
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
[各種物性の測定方法]
本実施例において、各種物性は、以下の測定方法により測定した。
<40℃動粘度、100℃動粘度>
ASTM D445に準拠して40℃動粘度及び100℃動粘度を測定した。
<アニリン点>
JIS K 2256に準拠して測定した。
<%C、%C、及び%C
%C、%C、及び%Cは、ASTM D3238-95に準拠し、環分析(n-d-M法)にて求めた。
<流動点>
JIS K 2269:1987(原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法)に準拠して測定した。
<15℃における密度>
JIS K 2249-1:2011(原油及び石油製品-密度の求め方- 第1部:振動法)に準拠して測定した。
<20℃における屈折率>
JIS K 0062に準拠して測定した。
<引火点>
JIS K 2265に準拠し、クリーブランド開放式(COC)法により測定した。
【0035】
[劣化アスファルト再生用添加剤]
実施例及び比較例で使用した劣化アスファルト再生用添加剤A~Cの詳細を以下に示す。
<劣化アスファルト再生用添加剤A>
ナフテン系原油を減圧蒸留し、留分として、蒸留塔の塔頂から塔底に向かい順に、第1留分から第4留分と残渣油とに分留した際の第3留分を、フルフラール溶剤抽出して得られる抽出物を劣化アスファルト再生用添加剤Aとして用いた。
劣化アスファルト再生用添加剤Aは、低アニリン点アロマ油である。
<劣化アスファルト再生用添加剤B>
ナフテン系原油を減圧蒸留し、留分として、蒸留塔の塔頂から塔底に向かい順に、第1留分から第4留分と残渣油とに分留した際の第2留分を、フルフラール溶剤抽出して得られる抽出物の重質成分を劣化アスファルト再生用添加剤Bとして用いた。
<劣化アスファルト再生用添加剤C>
ナフテン系原油を減圧蒸留し、留分として、蒸留塔の塔頂から塔底に向かい順に、第1留分から第4留分と残渣油とに分留した際の第4留分を、フルフラール溶剤抽出して得られる抽出物を劣化アスファルト再生用添加剤Cとして用いた。
【0036】
[実施例1、比較例1、比較例2]
劣化アスファルト再生用添加剤A~Cについて、40℃動粘度、100℃動粘度、アニリン点、%C、%C、%C、15℃における密度、20℃における屈折率、及び引火点を測定又は算出した。結果を表1に示す。
【0037】
また、以下に示す「劣化改質アスファルトの再生試験」を行った。結果を表1に示す。
【0038】
なお、「劣化改質アスファルトの再生試験」において、アスファルトの針入度及び伸度は、以下の方法に基づき測定した。
<針入度>
JIS K 2207に準拠し、25℃におけるアスファルトの針入度(単位:1/10mm)を測定した。
<伸度>
JIS K 2207に準拠し、15℃におけるアスファルトの伸度(単位:cm)を測定した。
【0039】
[劣化改質アスファルトの再生試験]
(1)劣化改質アスファルトの調製
針入度50のポリマー改質アスファルト(H型)を180℃に保ったギヤ式恒温槽で10日間静置し、針入度を25まで低下させ、改質材高含有強制劣化改質アスファルトを得た。
そして、針入度25の改質材高含有強制劣化改質アスファルトと、針入度50のポリマー改質アスファルト(H型)とを混合し、針入度37のプレ改質材高含有劣化改質アスファルト(1-1)を調製した。このプレ劣化改質アスファルトの伸度は41であった。
次いで、この針入度37のプレ改質材高含有劣化改質アスファルト(1-1)30質量部と、針入度37の劣化ストレートアスファルト(1-2)70質量部とを混合し、針入度37の改質材高含有劣化改質アスファルト(1)を得た。改質材高含有劣化改質アスファルト(1)の伸度は18であった。
なお、劣化ストレートアスファルト(1-2)は、以下の方法により調製した。
針入度が70のJIS K 2207規格の60-80ストレートアスファルトを180℃に保ったギヤ式恒温槽で10日間静置し、針入度を19まで低下させ、強制劣化ストレートアスファルトを得た。
そして、この針入度19の強制劣化ストレートアスファルトと、針入度70のJIS K 2207規格の60-80ストレートアスファルトを混合し、針入度37の劣化ストレートアスファルト(1-2)を調製した。劣化ストレートアスファルトの伸度は4であった。
【0040】
(2)改質材高含有劣化改質アスファルトの再生試験
針入度37の改質材高含有劣化改質アスファルト(1)に劣化アスファルト再生用添加剤A-Cをそれぞれ添加し、なるべく泡が出ない様に、160℃で加熱しながらゆっくり混ぜ、添加した劣化アスファルト再生用添加剤が、改質材高含有劣化改質アスファルト(1)中に十分に分散するように混合し、再生改質アスファルト(1)を得た。なお、前記劣化アスファルト再生用添加剤の配合量は、再生改質アスファルトの針入度が68~72になるよう調整した。
再生改質アスファルト(1)を以下の基準で評価した。
・A:伸度が100以上であり、再生効果が認められる。
・F:伸度が100未満であり、再生効果が認められない。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示す劣化改質アスファルトの結果から、上記要件(1)~(4)を満たす、実施例1で用いた劣化アスファルト再生用添加剤Aは、改質材高含有劣化改質アスファルトを再生可能であることがわかる。
比較例1で用いた劣化アスファルト再生用添加剤Bもまた、改質材高含有劣化改質アスファルトを再生可能であった。しかし、引火点が低く、安全性を確保しにくいことがわかる。比較例1で用いた劣化アスファルト再生用添加剤Bは、上記要件(1)~(4)を満たしておらず、その結果として引火点が低くなり、安全性が確保しにくくなると考えられる。
また、上記要件(1)~(4)を満たさない、比較例2で用いた劣化アスファルト再生用添加剤Cは、改質材高含有劣化改質アスファルトを再生できないことがわかる。