(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】機械学習モデルの運用装置とその作動方法および作動プログラム、並びに機械学習モデルの学習装置とその作動方法および作動プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20221216BHJP
G06V 20/69 20220101ALI20221216BHJP
【FI】
G06T7/00 630
G06V20/69
(21)【出願番号】P 2019132944
(22)【出願日】2019-07-18
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】涌井 隆史
【審査官】笠田 和宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0147215(US,A1)
【文献】特開2011-002995(JP,A)
【文献】REZA MORADI RAD,外3名,Cell-Net: Embryonic Cell Counting and Centroid Localization via Residual Incremental Atrous Pyramid and Progressive Upsampling Convolution,IEEE Access,Vol. 7,2019年07月08日,pp. 81945-81955
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06V 20/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養中の複数の細胞を撮影した細胞画像に基づいて、前記細胞画像内の前記細胞または前記細胞の一部を含む構造物、もしくは前記構造物の集合を、クラスとして画素単位で判別するセマンティックセグメンテーションを実施するための機械学習モデルの運用装置であって、
前記細胞画像を取得する第1取得部と、
学習用入力画像およびアノテーション画像の組で構成される学習データを与えられて学習された前記機械学習モデルに、前記第1取得部において取得した前記細胞画像を入力して前記セマンティックセグメンテーションを実施させ、出力画像を出力させる処理部と、
を備え、
前記アノテーション画像は、前記学習用入力画像内の前記構造物、もしくは前記構造物の集合に対応する領域が前記クラスとして指定され、かつ、前記構造物毎に、隣り合う前記構造物間で重複しない前記構造物内の位置に人工マーカが付与された画像であり、
前記人工マーカは、前記構造物の輪郭を縮小した縮小輪郭を辿った輪郭線であり、
前記出力画像は、前記人工マーカ付きの画像である
機械学習モデルの運用装置。
【請求項2】
前記処理部によって出力された前記出力画像に基づいて培養の評価を行う培養評価部と、
前記培養の評価結果を出力する制御を行う出力制御部とを備える請求項1に記載の機械学習モデルの運用装置。
【請求項3】
前記培養評価部は、前記出力画像に映る前記人工マーカの数を計数することで、前記構造物の個数を計数する請求項2に記載の機械学習モデルの運用装置。
【請求項4】
前記出力制御部は、前記評価結果と併せて、前記細胞画像および前記出力画像を出力する請求項2または請求項3に記載の機械学習モデルの運用装置。
【請求項5】
前記機械学習モデルは、前記構造物の特徴点の位置に前記人工マーカを付与する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の機械学習モデルの運用装置。
【請求項6】
前記アノテーション画像は、前記構造物毎に、隣り合う前記構造物間で重複しない前記構造物内の位置のみに前記人工マーカが付与された画像である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の機械学習モデルの運用装置。
【請求項7】
前記人工マーカは、前記構造物の属性に応じて形態が異なる請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の機械学習モデルの運用装置。
【請求項8】
前記構造物の属性は、種類、大きさ、密集度、円形度、内包物の個数、および向きのうちの少なくともいずれか1つであり、
前記形態は、大きさ、形状、および色のうちの少なくともいずれか1つである請求項7に記載の機械学習モデルの運用装置。
【請求項9】
前記アノテーション画像が、複数の前記構造物の集合が前記クラスとして指定された画像であった場合、
前記出力画像内の前記人工マーカに基づいて、個々の前記構造物を判別する判別部を備える請求項1ないし8のいずれか1項に記載の機械学習モデルの運用装置。
【請求項10】
前記クラスは複数種あり、
前記人工マーカは前記クラスよりも種類が少なく、
前記機械学習モデルは、前記クラスの存否確率を示すクラス存否確率マップに基づいて、前記出力画像の各画素が属するクラスを認定する第1アクティベーションレイヤと、
前記人工マーカの存否確率を示すマーカ存否確率マップに基づいて、前記出力画像の各画素が属する人工マーカを認定する第2アクティベーションレイヤとを有する請求項1ないし9のいずれか1項に記載の機械学習モデルの運用装置。
【請求項11】
培養中の複数の細胞を撮影した細胞画像に基づいて、前記細胞画像内の前記細胞または前記細胞の一部を含む構造物、もしくは前記構造物の集合を、クラスとして画素単位で判別するセマンティックセグメンテーションを実施するための機械学習モデルの運用装置の作動方法であって、
前記細胞画像を取得する第1取得ステップと、
学習用入力画像およびアノテーション画像の組で構成される学習データを与えられて学習された前記機械学習モデルに、前記第1取得ステップにおいて取得した前記細胞画像を入力して前記セマンティックセグメンテーションを実施させ、出力画像を出力させる処理ステップと、
を備え、
前記アノテーション画像は、前記学習用入力画像内の前記構造物、もしくは前記構造物の集合に対応する領域が前記クラスとして指定され、かつ、前記構造物毎に、隣り合う前記構造物間で重複しない前記構造物内の位置に人工マーカが付与された画像であり、
前記人工マーカは、前記構造物の輪郭を縮小した縮小輪郭を辿った輪郭線であり、
前記出力画像は、前記人工マーカ付きの画像である
機械学習モデルの運用装置の作動方法。
【請求項12】
培養中の複数の細胞を撮影した細胞画像に基づいて、前記細胞画像内の前記細胞または前記細胞の一部を含む構造物、もしくは前記構造物の集合を、クラスとして画素単位で判別するセマンティックセグメンテーションを実施するための機械学習モデルの運用装置の作動プログラムであって、
前記細胞画像を取得する第1取得部と、
学習用入力画像およびアノテーション画像の組で構成される学習データを与えられて学習された前記機械学習モデルに、前記第1取得部において取得した前記細胞画像を入力して前記セマンティックセグメンテーションを実施させ、出力画像を出力させる処理部として、
コンピュータを機能させ、
前記アノテーション画像は、前記学習用入力画像内の前記構造物、もしくは前記構造物の集合に対応する領域が前記クラスとして指定され、かつ、前記構造物毎に、隣り合う前記構造物間で重複しない前記構造物内の位置に人工マーカが付与された画像であり、
前記人工マーカは、前記構造物の輪郭を縮小した縮小輪郭を辿った輪郭線であり、
前記出力画像は、前記人工マーカ付きの画像である
機械学習モデルの運用装置の作動プログラム。
【請求項13】
培養中の複数の細胞を撮影した細胞画像内の前記細胞または前記細胞の一部を含む構造物、もしくは前記構造物の集合を、クラスとして画素単位で判別するセマンティックセグメンテーションを実施するための機械学習モデルの学習装置であって、
学習用入力画像およびアノテーション画像の組で構成される学習データを取得する第2取得部と、
前記第2取得部において取得した前記学習データを、前記機械学習モデルに与えて学習させる学習部と、
を備え、
前記アノテーション画像は、前記学習用入力画像内の前記構造物、もしくは前記構造物の集合に対応する領域が前記クラスとして指定され、かつ、前記構造物毎に、隣り合う前記構造物間で重複しない前記構造物内の位置に人工マーカが付与された画像であ
り、
前記人工マーカは、前記構造物の輪郭を縮小した縮小輪郭を辿った輪郭線である、
機械学習モデルの学習装置。
【請求項14】
培養中の複数の細胞を撮影した細胞画像内の前記細胞または前記細胞の一部を含む構造物、もしくは前記構造物の集合を、クラスとして画素単位で判別するセマンティックセグメンテーションを実施するための機械学習モデルの学習装置の作動方法であって、
学習用入力画像およびアノテーション画像の組で構成される学習データを取得する第2取得ステップと、
前記第2取得ステップにおいて取得した前記学習データを、前記機械学習モデルに与えて学習させる学習ステップと、
を備え、
前記アノテーション画像は、前記学習用入力画像内の前記構造物、もしくは前記構造物の集合に対応する領域が前記クラスとして指定され、かつ、前記構造物毎に、隣り合う前記構造物間で重複しない前記構造物内の位置に人工マーカが付与された画像であ
り、
前記人工マーカは、前記構造物の輪郭を縮小した縮小輪郭を辿った輪郭線である、
機械学習モデルの学習装置の作動方法。
【請求項15】
培養中の複数の細胞を撮影した細胞画像内の前記細胞または前記細胞の一部を含む構造物、もしくは前記構造物の集合を、クラスとして画素単位で判別するセマンティックセグメンテーションを実施するための機械学習モデルの学習装置の作動プログラムであって、
学習用入力画像およびアノテーション画像の組で構成される学習データを取得する第2取得部と、
前記第2取得部において取得した前記学習データを、前記機械学習モデルに与えて学習させる学習部として、
コンピュータを機能させ、
前記アノテーション画像は、前記学習用入力画像内の前記構造物、もしくは前記構造物の集合に対応する領域が前記クラスとして指定され、かつ、前記構造物毎に、隣り合う前記構造物間で重複しない前記構造物内の位置に人工マーカが付与された画像であ
り、
前記人工マーカは、前記構造物の輪郭を縮小した縮小輪郭を辿った輪郭線である、
機械学習モデルの学習装置の作動プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、機械学習モデルの運用装置とその作動方法および作動プログラム、並びに機械学習モデルの学習装置とその作動方法および作動プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、培養中の複数の細胞を位相差顕微鏡等で撮影し、これにより得られた細胞画像を解析して、細胞の個数を計数する等の培養の評価が行われている。特許文献1において、細胞画像の解析には、セマンティックセグメンテーションを実施するための機械学習モデル(以下、単にモデル)が用いられる。モデルは、例えばU字型の畳み込みニューラルネットワーク(U-Net;U-Shaped Neural Network)等である。セマンティックセグメンテーションとは、分化細胞、未分化細胞、死細胞、培地といった、細胞画像内の複数のクラスの判別を画素単位で行うものである。こうしたモデルに細胞画像を入力することで、理想的には、細胞画像内の分化細胞、未分化細胞、死細胞、培地が各々クラスとして判別され、かつ分化細胞、未分化細胞、死細胞、培地の輪郭を忠実に辿った輪郭線がそれぞれに描かれた出力画像が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
培養中の細胞は、非常に密集して成長している。このため、モデルにおいても、隣り合う1個1個の細胞を区別して分離することができず、複数個の細胞を1個の細胞として見なしてしまう場合がある。1個1個の細胞を区別して分離することができないと、培養の評価を適正に行うことができない。
【0005】
本開示の技術は、適正な培養の評価に寄与することが可能な機械学習モデルの運用装置とその作動方法および作動プログラム、並びに機械学習モデルの学習装置とその作動方法および作動プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の機械学習モデルの運用装置は、培養中の複数の細胞を撮影した細胞画像に基づいて、細胞画像内の細胞または細胞の一部を含む構造物、もしくは構造物の集合を、クラスとして画素単位で判別するセマンティックセグメンテーションを実施するための機械学習モデルの運用装置であって、細胞画像を取得する第1取得部と、学習用入力画像およびアノテーション画像の組で構成される学習データを与えられて学習された機械学習モデルに、第1取得部において取得した細胞画像を入力してセマンティックセグメンテーションを実施させ、出力画像を出力させる処理部と、を備え、アノテーション画像は、学習用入力画像内の構造物、もしくは構造物の集合に対応する領域がクラスとして指定され、かつ、構造物毎に、隣り合う構造物間で重複しない構造物内の位置に人工マーカが付与された画像であり、出力画像は、人工マーカ付きの画像である。
【0007】
処理部によって出力された出力画像に基づいて培養の評価を行う培養評価部と、培養の評価結果を出力する制御を行う出力制御部とを備えることが好ましい。
【0008】
培養評価部は、出力画像に映る人工マーカの数を計数することで、構造物の個数を計数することが好ましい。
【0009】
出力制御部は、評価結果と併せて、細胞画像および出力画像を出力することが好ましい。
【0010】
機械学習モデルは、構造物の特徴点の位置に人工マーカを付与することが好ましい。
【0011】
機械学習モデルは、構造物の輪郭を縮小した縮小輪郭を辿った輪郭線を、人工マーカとして付与することが好ましい。
【0012】
人工マーカは、構造物の属性に応じて形態が異なることが好ましい。この場合、構造物の属性は、種類、大きさ、密集度、円形度、内包物の個数、および向きのうちの少なくともいずれか1つであり、形態は、大きさ、形状、および色のうちの少なくともいずれか1つであることが好ましい。
【0013】
アノテーション画像が、複数の構造物の集合がクラスとして指定された画像であった場合、出力画像内の人工マーカに基づいて、個々の構造物を判別する判別部を備えることが好ましい。
【0014】
クラスは複数種あり、人工マーカはクラスよりも種類が少なく、機械学習モデルは、クラスの存否確率を示すクラス存否確率マップに基づいて、出力画像の各画素が属するクラスを認定する第1アクティベーションレイヤと、人工マーカの存否確率を示すマーカ存否確率マップに基づいて、出力画像の各画素が属する人工マーカを認定する第2アクティベーションレイヤとを有することが好ましい。
【0015】
本開示の機械学習モデルの運用装置の作動方法は、培養中の複数の細胞を撮影した細胞画像に基づいて、細胞画像内の細胞または細胞の一部を含む構造物、もしくは構造物の集合を、クラスとして画素単位で判別するセマンティックセグメンテーションを実施するための機械学習モデルの運用装置の作動方法であって、細胞画像を取得する第1取得ステップと、学習用入力画像およびアノテーション画像の組で構成される学習データを与えられて学習された機械学習モデルに、第1取得ステップにおいて取得した細胞画像を入力してセマンティックセグメンテーションを実施させ、出力画像を出力させる処理ステップと、を備え、アノテーション画像は、学習用入力画像内の構造物、もしくは構造物の集合に対応する領域がクラスとして指定され、かつ、構造物毎に、隣り合う構造物間で重複しない構造物内の位置に人工マーカが付与された画像であり、出力画像は、人工マーカ付きの画像である。
【0016】
本開示の機械学習モデルの運用装置の作動プログラムは、培養中の複数の細胞を撮影した細胞画像に基づいて、細胞画像内の細胞または細胞の一部を含む構造物、もしくは構造物の集合を、クラスとして画素単位で判別するセマンティックセグメンテーションを実施するための機械学習モデルの運用装置の作動プログラムであって、細胞画像を取得する第1取得部と、学習用入力画像およびアノテーション画像の組で構成される学習データを与えられて学習された機械学習モデルに、第1取得部において取得した細胞画像を入力してセマンティックセグメンテーションを実施させ、出力画像を出力させる処理部として、コンピュータを機能させ、アノテーション画像は、学習用入力画像内の構造物、もしくは構造物の集合に対応する領域がクラスとして指定され、かつ、構造物毎に、隣り合う構造物間で重複しない構造物内の位置に人工マーカが付与された画像であり、出力画像は、人工マーカ付きの画像である。
【0017】
本開示の機械学習モデルの学習装置は、培養中の複数の細胞を撮影した細胞画像内の細胞または細胞の一部を含む構造物、もしくは構造物の集合を、クラスとして画素単位で判別するセマンティックセグメンテーションを実施するための機械学習モデルの学習装置であって、学習用入力画像およびアノテーション画像の組で構成される学習データを取得する第2取得部と、第2取得部において取得した学習データを、機械学習モデルに与えて学習させる学習部と、を備え、アノテーション画像は、学習用入力画像内の構造物、もしくは構造物の集合に対応する領域がクラスとして指定され、かつ、構造物毎に、隣り合う構造物間で重複しない構造物内の位置に人工マーカが付与された画像である。
【0018】
本開示の機械学習モデルの学習装置の作動方法は、培養中の複数の細胞を撮影した細胞画像内の細胞または細胞の一部を含む構造物、もしくは構造物の集合を、クラスとして画素単位で判別するセマンティックセグメンテーションを実施するための機械学習モデルの学習装置の作動方法であって、学習用入力画像およびアノテーション画像の組で構成される学習データを取得する第2取得ステップと、第2取得ステップにおいて取得した学習データを、機械学習モデルに与えて学習させる学習ステップと、を備え、アノテーション画像は、学習用入力画像内の構造物、もしくは構造物の集合に対応する領域がクラスとして指定され、かつ、構造物毎に、隣り合う構造物間で重複しない構造物内の位置に人工マーカが付与された画像である。
【0019】
本開示の機械学習モデルの学習装置の作動プログラムは、培養中の複数の細胞を撮影した細胞画像内の細胞または細胞の一部を含む構造物、もしくは構造物の集合を、クラスとして画素単位で判別するセマンティックセグメンテーションを実施するための機械学習モデルの学習装置の作動プログラムであって、学習用入力画像およびアノテーション画像の組で構成される学習データを取得する第2取得部と、第2取得部において取得した学習データを、機械学習モデルに与えて学習させる学習部として、コンピュータを機能させ、アノテーション画像は、学習用入力画像内の構造物、もしくは構造物の集合に対応する領域がクラスとして指定され、かつ、構造物毎に、隣り合う構造物間で重複しない構造物内の位置に人工マーカが付与された画像である。
【発明の効果】
【0020】
本開示の技術によれば、適正な培養の評価に寄与することが可能な機械学習モデルの運用装置とその作動方法および作動プログラム、並びに機械学習モデルの学習装置とその作動方法および作動プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】機械学習システムにおける処理の概要を示す図である。
【
図3】培養中の複数の細胞を位相差顕微鏡で撮影した画像を示す図であり、
図3Aは学習用入力画像、
図3Bはアノテーション画像をそれぞれ示す。
【
図4】学習装置および運用装置を構成するコンピュータを示すブロック図である。
【
図5】学習装置のCPUの処理部を示すブロック図である。
【
図6】更新部のモデルの更新による、学習用出力画像の変化の一例を示す図である。
【
図7】運用装置のCPUの処理部を示すブロック図である。
【
図9】分化細胞の中心点に○印が付与される様子を示す図である。
【
図12】学習装置の処理手順を示すフローチャートである。
【
図13】運用装置の処理手順を示すフローチャートである。
【
図14】神経細胞を構造物とした場合を示す図である。
【
図15】分化細胞に輪郭線が付与される様子を示す図である。
【
図16】分化細胞の大きさに応じて、人工マーカの大きさを異ならせる例を示す図である。
【
図17】分化細胞の密集度に応じて、人工マーカの色を異ならせる例を示す図である。
【
図18】分化細胞の円形度に応じて、人工マーカの形状を異ならせる例を示す図である。
【
図19】分化細胞の内包物の個数に応じて、人工マーカの大きさを異ならせる例を示す図である。
【
図20】分化細胞の向きを表した両矢印を、人工マーカとして用いた例を示す図である。
【
図21】複数の分化細胞の集合および複数の未分化細胞の集合をクラスとして指定したアノテーション画像を示す図である。
【
図22】
図21に示すアノテーション画像を学習データとして学習した場合の出力画像を示す図である。
【
図23】判別部により、出力画像内の○印および△印に基づいて、個々の分化細胞および個々の未分化細胞を判別する様子を示す図である。
【
図24】1つのアクティベーションレイヤだけを有する場合を示す図である。
【
図25】クラス用と人工マーカ用の2つのアクティベーションレイヤを有する場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1において、機械学習システム2は、画像内の複数のクラスの判別を画素単位で行うセマンティックセグメンテーションを実施するためのモデルM(
図2参照)を用いるシステムである。機械学習システム2は、学習装置10および運用装置11を備える。学習装置10および運用装置11は、例えばデスクトップ型のパーソナルコンピュータである。学習装置10および運用装置11は、ネットワーク12を介して相互に通信可能に接続されている。ネットワーク12は、例えば、LAN(Local Area Network)、もしくはインターネット、公衆通信網等のWAN(Wide Area Network)である。
【0023】
図2において、学習装置10は、学習用入力画像IILおよびアノテーション画像AIの組で構成される学習データLDを有する。学習用入力画像IILは、文字通り、クラスの判別精度を高める学習のためにモデルMに入力される画像である。モデルMは例えばU-Netであり、学習用入力画像IILにセマンティックセグメンテーションを実施して、学習用出力画像OILを出力する。
【0024】
アノテーション画像AIは、学習用入力画像IIL内のクラスのラベルが指定された画像である。アノテーション画像AIは、学習用出力画像OILとのいわば答え合わせを行うための画像であり、学習用出力画像OILと比較される。モデルMのクラスの判別精度が高いほど、アノテーション画像AIと学習用出力画像OILとの差異は小さくなる。
【0025】
学習装置10は、アノテーション画像AIと学習用出力画像OILとを比較し、モデルMのクラスの判別精度を評価する。そして、このクラスの判別精度の評価結果に応じて、モデルMを更新する。学習装置10は、学習用入力画像IILのモデルMへの入力と学習用出力画像OILのモデルMからの出力、モデルMのクラスの判別精度の評価、およびモデルMの更新を、学習データLDを変更しつつ行い、モデルMのクラスの判別精度が予め設定されたレベルとなるまで繰り返す。学習装置10は、クラスの判別精度が予め設定されたレベルとされたモデルMを、学習済みモデルTMとして運用装置11に出力する。
【0026】
運用装置11は、学習装置10からの学習済みモデルTMを受信する。運用装置11は、映った物体のクラスおよびその輪郭が未だ判別されていない入力画像IIを学習済みモデルTMに与える。学習済みモデルTMは、入力画像IIにセマンティックセグメンテーションを実施して、入力画像IIに映る物体のクラスとその輪郭を判別し、その判別結果として出力画像OIを出力する。なお、運用装置11に学習済みモデルTMを組み込んだ後も、学習済みモデルTMに学習データLDを与えて学習させてもよい。
【0027】
図3Aに示すように、学習用入力画像IILは、本例においては、培養中の複数の細胞を位相差顕微鏡で撮影した細胞画像である。学習用入力画像IILには、分化細胞、未分化細胞、死細胞、培地が映っている。この場合のアノテーション画像AIは、
図3Bに示すように、ラベル1の分化細胞DC、ラベル2の未分化細胞UDC、ラベル3の死細胞DDC、ラベル4の培地PLが、各々クラスとして指定されたものとなる。各クラスの指定は、例えば、ユーザが手動により行う。ラベル4の培地PLは、他のラベル1~ラベル3を指定することで自ずと指定される領域である。なお、学習済みモデルTMに与えられる入力画像IIも、学習用入力画像IILと同じく、培養中の複数の細胞を位相差顕微鏡で撮影した細胞画像である。
【0028】
分化細胞DCに対応する領域には、○印15Aが付与されている。未分化細胞UDCに対応する領域には、△印15Bが付与されている。さらに、死細胞DDCに対応する領域には、×印15Cが付与されている。これら○印15A、△印15B、および×印15Cは、例えば赤色等、全て同じ色である。そして、これら○印15A、△印15B、および×印15Cは、隣り合う細胞間で重複しない細胞内の位置に付与されている。○印15A、△印15B、および×印15Cの付与は、例えば、クラスの指定と同じくユーザが手動により行う。なお、○印15A、△印15B、および×印15Cは、本開示の技術に係る「人工マーカ」の一例である。また、分化細胞DC、未分化細胞UDC、死細胞DDCは、本開示の技術に係る「構造物」の一例である。
【0029】
○印15Aは、分化細胞DCの特徴点である中心点の位置に付与される。同様に、△印15Bも、未分化細胞UDCの中心点の位置に付与され、×印15Cも、死細胞DDCの中心点の位置に付与される。前述のようにユーザが○印15A、△印15B、および×印15Cの付与を行う場合は、ユーザが中心点と思しき位置に○印15A、△印15B、×印15Cを付与する。もちろん、ユーザの手を借りずに、画像解析により抽出した各細胞DC、UDC、DDCの中心点の位置に、○印15A、△印15B、×印15Cを付与してもよい。
【0030】
図4において、学習装置10および運用装置11を構成するコンピュータは、基本的な構成は同じであり、ストレージデバイス30、メモリ31、CPU(Central Processing Unit)32、通信部33、ディスプレイ34、および入力デバイス35を備えている。これらはバスライン36を介して相互接続されている。
【0031】
ストレージデバイス30は、学習装置10等を構成するコンピュータに内蔵、またはケーブル、ネットワークを通じて接続されたハードディスクドライブである。もしくはストレージデバイス30は、ハードディスクドライブを複数台連装したディスクアレイである。ストレージデバイス30には、オペレーティングシステム等の制御プログラム、各種アプリケーションプログラム、およびこれらのプログラムに付随する各種データ等が記憶されている。なお、ハードディスクドライブに代えてソリッドステートドライブを用いてもよい。
【0032】
メモリ31は、CPU32が処理を実行するためのワークメモリである。CPU32は、ストレージデバイス30に記憶されたプログラムをメモリ31へロードして、プログラムにしたがった処理を実行することにより、コンピュータの各部を統括的に制御する。
【0033】
通信部33は、ネットワーク12を介した各種情報の伝送制御を行うネットワークインターフェースである。ディスプレイ34は各種画面を表示する。学習装置10等を構成するコンピュータは、各種画面を通じて、入力デバイス35からの操作指示の入力を受け付ける。入力デバイス35は、キーボード、マウス、タッチパネル等である。なお、以下の説明では、学習装置10の各部に添え字の「A」を、運用装置11の各部に添え字の「B」を、それぞれ付して区別する。
【0034】
図5において、学習装置10のストレージデバイス30Aには、作動プログラム40が記憶されている。作動プログラム40は、コンピュータを学習装置10として機能させるためのアプリケーションプログラムである。すなわち、作動プログラム40は、本開示の技術に係る「学習装置の作動プログラム」の一例である。
【0035】
ストレージデバイス30Aには、学習用入力画像IILおよびアノテーション画像AIの組で構成される学習データLD、およびモデルMも記憶されている。学習用入力画像IILは、位相差顕微鏡から送信されて記憶したものである。アノテーション画像AIは、学習装置10において学習用入力画像IILから事前に作成して記憶したものである。あるいは、アノテーション画像AIは、学習装置10とは別の装置において作成され、別の装置から送信されて記憶したものでもよい。モデルMもアノテーション画像AIと同様に、学習装置10において作成して記憶したものでもよいし、別の装置において作成され、別の装置から送信されて記憶したものでもよい。
【0036】
作動プログラム40が起動されると、学習装置10を構成するコンピュータのCPU32Aは、メモリ31等と協働して、リードライト(以下、RW(Read Write)と略す)制御部45、学習部46、評価部47、更新部48、および送信制御部49として機能する。
【0037】
RW制御部45は、ストレージデバイス30Aへの各種データの記憶、およびストレージデバイス30A内の各種データの読み出しを制御する。RW制御部45は、作動プログラム40、学習データLD、モデルM等をストレージデバイス30Aに記憶する。また、RW制御部45は、ストレージデバイス30Aから作動プログラム40、学習データLD、モデルM等を読み出す。すなわち、RW制御部45は、本開示の技術に係る「学習データを取得する第2取得部」の一例である。
【0038】
RW制御部45は、ストレージデバイス30Aから読み出した学習データLDのうちの学習用入力画像IILを学習部46に出力する。また、RW制御部45は、アノテーション画像AIを評価部47に出力する。さらに、RW制御部45は、ストレージデバイス30Aから読み出したモデルMを、学習部46、更新部48、および送信制御部49のいずれかに出力する。
【0039】
学習部46は、学習用入力画像IILを学習データLDとしてモデルMに与えて学習させる。これによりモデルMから出力された学習用出力画像OILを、学習部46は評価部47に出力する。
【0040】
学習部46は、例えばミニバッチデータを用いたミニバッチ学習をモデルMに行わせる。ミニバッチデータは、学習用入力画像IILとアノテーション画像AIとを分割した複数の分割画像(例えば元の画像の1/100のサイズの枠で分割した1万枚の分割画像)のうちの一部(例えば100枚)で構成される。学習部46は、こうしたミニバッチデータを複数組(例えば100組)作成し、各組を順次モデルMに与えて学習させる。
【0041】
評価部47は、アノテーション画像AIと学習用出力画像OILとを比較し、モデルMのクラスの判別精度を評価する。より詳しくは、評価部47は、損失関数を用いて、モデルMのクラスの判別精度を評価する。損失関数は、アノテーション画像AIと学習用出力画像OILとの差異の程度を表す関数である。損失関数の算出値が0に近いほど、モデルMのクラスの判別精度が高いことを示す。評価部47は、評価結果を更新部48に出力する。
【0042】
更新部48は、評価部47からの評価結果に応じて、モデルMを更新する。具体的には、更新部48は、学習係数を伴う確率的勾配降下法等により、モデルMの各種パラメータの値を変化させる。学習係数は、モデルMの各種パラメータの値の変化幅を示す。すなわち、学習係数が比較的大きい値であるほど、各種パラメータの値の変化幅は大きくなり、モデルMの更新度合いも大きくなる。更新部48で更新されたモデルMは、RW制御部45によりストレージデバイス30Aに記憶される。
【0043】
これら学習部46によるモデルMの学習、評価部47によるクラスの判別精度の評価、および更新部48によるモデルMの更新は、クラスの判別精度が予め設定されたレベルとなるまで、繰り返し続けられる。
【0044】
送信制御部49は、クラスの判別精度が予め設定されたレベルとされたモデルMである学習済みモデルTMを、運用装置11に送信する制御を行う。
【0045】
図6は、更新部48のモデルMの更新による、学習用出力画像OILの変化の一例を示す。上段に示す学習用出力画像OILは、アノテーション画像AIと比較して分かるように、中央の4個の分化細胞DCが1個の分化細胞DCとして誤認されている。しかし、○印15Aは4個付与される。同じく、下部の2個の分化細胞DCが1個の分化細胞DCと誤認されているが、○印15Aは2個付与される。
【0046】
更新部48のモデルMの更新を経た中段の学習用出力画像OILは、1個の分化細胞DCと誤認されていた中央の4個の分化細胞DCが、3個の分化細胞DCと認識されている。この場合も○印15Aは4個付与される。こうしてモデルMの更新が繰り返されることで、モデルMのクラスの判別精度が高められていく。最終的には下段に示すように、学習用出力画像OILは、中央の4個の分化細胞DCが、正しく4個の分化細胞DCと認識されて、かつ○印15Aが4個付与され、また、下部の2個の分化細胞DCが、正しく2個の分化細胞DCと認識されて、○印15Aが2個付与されたものとなる。ただし、いくらモデルMのクラスの判別精度が高められても、複数個の細胞を1個の細胞と誤認することは起こり得る。
【0047】
図7において、運用装置11のストレージデバイス30Bには、作動プログラム60が記憶されている。作動プログラム60は、コンピュータを運用装置11として機能させるためのアプリケーションプログラムである。すなわち、作動プログラム60は、本開示の技術に係る「運用装置の作動プログラム」の一例である。
【0048】
ストレージデバイス30Bには入力画像IIおよび学習済みモデルTMも記憶されている。入力画像IIは、学習用入力画像IILと同じく、位相差顕微鏡から送信されて記憶したものである。入力画像IIは、前述のように、これから学習済みモデルTMに与えて、映った物体のクラスおよびその輪郭を学習済みモデルTMに判別させる画像である。
【0049】
作動プログラム60が起動されると、運用装置11を構成するコンピュータのCPU32Bは、メモリ31等と協働して、RW制御部65、処理部66、培養評価部67、および表示制御部68として機能する。
【0050】
RW制御部65は、学習装置10のRW制御部45と同様、ストレージデバイス30Bへの各種データの記憶、およびストレージデバイス30B内の各種データの読み出しを制御する。RW制御部65は、学習装置10からの学習済みモデルTMをストレージデバイス30Bに記憶する。また、RW制御部65は、ストレージデバイス30Bから入力画像IIおよび学習済みモデルTMを読み出す。RW制御部65は、ストレージデバイス30Bから読み出した入力画像IIおよび学習済みモデルTMを、処理部66に出力する。ここで、入力画像IIは、前述のように細胞画像である。このため、RW制御部65は、本開示の技術に係る「細胞画像を取得する第1取得部」の一例である。
【0051】
処理部66は、学習済みモデルTMに入力画像IIを入力してセマンティックセグメンテーションを実施させ、出力画像OIを出力させる。処理部66は、出力画像OIを培養評価部67および表示制御部68に出力する。
【0052】
培養評価部67は、出力画像OIに基づいて、培養の評価を行う。培養評価部67は、培養の評価結果ERを表示制御部68に出力する。
【0053】
表示制御部68は、ディスプレイ34Bへの各種画面の表示を制御する。各種画面には、培養の評価結果ERを表示する画面である評価結果表示画面75(
図11参照)等が含まれる。すなわち、表示制御部68は、本開示の技術に係る「出力制御部」の一例である。
【0054】
学習済みモデルTMは、
図3Bで示したアノテーション画像AIを学習データLDとして与えられて学習されたモデルである。このため、学習済みモデルTMは、ラベル1の分化細胞DC、ラベル2の未分化細胞UDCといった各ラベルのクラスとその輪郭を判別するだけでなく、各細胞に対応する領域に、人工マーカである○印15A、△印15B、および×印15Cを付与するモデルとなる。したがって、出力画像OIは、
図8に示すように、分化細胞DC、未分化細胞UDC、死細胞DDC、および培地PLのそれぞれの領域が判別され、加えて、分化細胞DCの領域に○印15Aが、未分化細胞UDCの領域に△印15Bが、死細胞DDCの領域に×印15Cがそれぞれ付与された画像となる。つまり、出力画像OIは、人工マーカ付きの画像である。
【0055】
また、
図9に示すように、学習済みモデルTMは、分化細胞DCの特徴点である中心点CPの位置に○印15Aを付与する。図示は省略したが、学習済みモデルTMは、未分化細胞UDCの中心点CPの位置に△印15Bを、死細胞DDCの中心点CPの位置に×印15Cを、それぞれ付与する。前述のように、アノテーション画像AIの○印15A、△印15B、×印15Cは、ユーザが中心点と思しき位置に付与する。このため、アノテーション画像AIを学習データLDとして学習した学習済みモデルTMも、結果として各細胞DC、UDC、DDCの中心点の位置に、○印15A、△印15B、×印15Cを付与することとなる。
【0056】
図10に示すように、培養評価部67は、周知の画像認識技術を用いて、出力画像OIに映る○印15A、△印15B、および×印15Cを認識する。そして、培養評価部67は、○印15Aの数を計数することで、分化細胞DCの個数を計数する。同じく、培養評価部67は、△印15Bの数を計数することで、未分化細胞UDCの個数を計数し、×印15Cの数を計数することで、死細胞DDCの個数を計数する。培養評価部67は、計数した各細胞DC、UDC、DDCの個数を培養の評価結果ERとして出力する。
図9では、○印15Aの数、すなわち分化細胞DCの個数が16個、△印15Bの数、すなわち未分化細胞UDCの個数が9個、×印15Cの数、すなわち死細胞DDCの個数が4個の場合を例示している。
【0057】
図11に示すように、評価結果表示画面75には、入力画像IIおよび出力画像OIが並列表示される。出力画像OIの下部には、ラベル1~ラベル4の凡例76が表示される。さらに、凡例76の下部には、培養の評価結果ERが表示される。なお、OKボタン77は、評価結果表示画面75の表示を消去するためのボタンである。
【0058】
次に、上記構成による作用について、
図12および
図13のフローチャートを参照して説明する。まず、学習装置10において作動プログラム40が起動されると、
図5で示したように、学習装置10のCPU32Aは、RW制御部45、学習部46、評価部47、更新部48、および送信制御部49として機能される。
【0059】
図12において、学習装置10では、RW制御部45により、ストレージデバイス30Aから学習データLDが読み出される(ステップST100)。学習データLDを構成するアノテーション画像AIは、
図3Bで示したように、ラベル1の分化細胞DC、ラベル2の未分化細胞UDC、ラベル3の死細胞DDC、ラベル4の培地PLが、各々クラスとして指定され、かつ、各細胞に対応する領域毎に、○印15A、△印15B、×印15Cが付与された画像である。○印15A、△印15B、×印15Cは、各細胞DC、UDC、DDCの特徴点である中心点CPの位置に付与される。学習データLDのうちの学習用入力画像IILは、RW制御部45から学習部46に出力される。また、アノテーション画像AIは、RW制御部45から評価部47に出力される。なお、ステップST100は、本開示の技術に係る「第2取得ステップ」の一例である。
【0060】
学習部46により、学習用入力画像IILがモデルMに与えられて学習される(ステップST110)。これにより学習用出力画像OILがモデルMから出力される。学習用出力画像OILは、評価部47に出力される。なお、ステップST110は、本開示の技術に係る「学習ステップ」の一例である。
【0061】
評価部47により、アノテーション画像AIと学習用出力画像OILとが比較され、この比較結果に基づいて、モデルMのクラスの判別精度が評価される(ステップST120)。評価結果は更新部48に出力される。
【0062】
モデルMの判別精度が予め設定されたレベル未満であるという評価結果の内容であった場合(ステップST130でNO)、更新部48によりモデルMが更新される(ステップST140)。そして、更新後のモデルMを用いて、ステップST110、ステップST120が繰り返される。対して、モデルMの判別精度が予め設定されたレベルであるという評価結果の内容であった場合(ステップST130でYES)、ステップST110、ステップST120の繰り返し処理が終了される。判別精度が予め設定されたレベルとされたモデルMは、学習済みモデルTMとして送信制御部49により運用装置11に送信される(ステップST150)。
【0063】
運用装置11において作動プログラム60が起動されると、
図7で示したように、運用装置11のCPU32Bは、RW制御部65、処理部66、培養評価部67、および表示制御部68として機能される。
【0064】
図13において、運用装置11では、RW制御部65により、ストレージデバイス30Bから入力画像IIおよび学習済みモデルTMが読み出される(ステップST200)。入力画像IIおよび学習済みモデルTMは、RW制御部65から処理部66に出力される。なお、ステップST200は、本開示の技術に係る「第1取得ステップ」の一例である。
【0065】
図8で示したように、処理部66により、学習済みモデルTMに入力画像IIが入力されてセマンティックセグメンテーションが実施され、出力画像OIが出力される(ステップST210)。出力画像OIは、処理部66から培養評価部67および表示制御部68に出力される。なお、ステップST210は、本開示の技術に係る「処理ステップ」の一例である。
【0066】
図10で示したように、培養評価部67により、出力画像OIに基づいて、培養の評価が行われる(ステップST220)。培養の評価結果ERは、培養評価部67から表示制御部68に出力される。
【0067】
表示制御部68により、
図11で示した評価結果表示画面75がディスプレイ34Bに表示される(ステップST230)。評価結果表示画面75には、入力画像IIおよび出力画像OIが並列表示され、かつ培養の評価結果ERが表示されて、ユーザの閲覧に供される。
【0068】
以上説明したように、本開示の技術では、アノテーション画像AIとして、学習用入力画像IIL内の分化細胞DC、未分化細胞UDC、死細胞DDC、および培地PLの各々に対応する領域がクラスとして指定され、かつ、細胞毎に、隣り合う細胞間で重複しない細胞内の位置に、分化細胞DCに対して○印15A、未分化細胞UDCに対して△印15B、死細胞DDCに対して×印15Cがそれぞれ付与された画像を用いる。このため、学習済みモデルTMによって、隣り合う1個1個の細胞を区別して分離することが困難な場合においても、○印15A、△印15B、×印15Cによって1個1個の細胞を区別することができる。したがって、適正な培養の評価に寄与することが可能となる。
【0069】
運用装置11は、出力画像OIに基づいて培養の評価を行う培養評価部67と、培養の評価結果ERを含む評価結果表示画面75を表示する制御を行う表示制御部68とを備えている。したがって、培養の評価結果ERをユーザに提供することができる。
【0070】
培養評価部67は、出力画像OIに映る○印15A、△印15B、×印15Cの数を計数することで、分化細胞DC、未分化細胞UDC、死細胞DDCの個数を計数する。したがって、分化細胞DC、未分化細胞UDC、死細胞DDCの個数を、容易かつ間違いなく計数することができる。また、培養を評価する場合の指標として端的で分かりやすい各細胞DC、UDC、DDCの個数を、培養の評価結果ERとしてユーザに提供することができる。
【0071】
○印15A、△印15B、×印15Cは、各細胞DC、UDC、DDCの特徴点である中心点CPの位置に付与される。したがって、どの印がどの細胞に付与されているかを区別することができ、ある細胞に付与された印を他の細胞に付与されたものとして取り違えるおそれを低減することができる。
【0072】
なお、○印15A、△印15B、×印15Cを付与する特徴点としては、例示の中心点CPに限らない。各細胞DC、UDC、DDCの重心点でもよい。また、各細胞DC、UDC、DDCの核の中心点でもよい。繊維芽細胞といった細長な形状の細胞を構造物とした場合は、細胞の端点でもよい。
【0073】
図14は、神経細胞80を構造物とした場合の例を示す。神経細胞80は、周知のように、核をもつ細胞体81と、細胞体81から延びる軸索82および樹状突起83とを有する。この場合の特徴点は、図示するように、例えば、細胞体81と軸索82の接続部分(軸索の根元)とする。なお、細胞体81あるいは細胞体81内の核の中心点、重心点、細胞体81と樹状突起83との接続部分、軸索82の先端部分、樹状突起の先端部分等を特徴点としてもよい。
【0074】
また、
図15に示すように、学習済みモデルTMにより、細胞(ここでは分化細胞DC)の輪郭を縮小した縮小輪郭を辿った輪郭線85を、人工マーカとして付与してもよい。この場合、アノテーション画像AIに付与する輪郭線85は、アノテーション画像AIの作成を行う装置において、細胞の指定がなされたアノテーション画像AIに対して画像解析を行うことで導出する。このため、○印15A、△印15B、×印15Cのように、ユーザが手動で付与する必要がなく、ユーザの手間を省くことができる。この場合、分化細胞DCは青色、未分化細胞UDCは黄色、死細胞DDCは赤色等、各細胞DC、UDC、DDCに応じて輪郭線85内を異なる色で塗り分ける。この色の塗り分けによって、各細胞DC、UDC、DDCを区別する。なお、○印15A、△印15B、×印15Cに加えて輪郭線85を人工マーカとして付与してもよい。この場合、輪郭線85内の色の塗り分けは不要である。
【0075】
図3Bでは、構造物の種類に応じて形状が異なる人工マーカとして、分化細胞DCに対する○印15A、未分化細胞UDCに対する△印15B、死細胞DDCに対する×印15Cを例示した。対して、
図16~
図20は、分化細胞DCの属性に応じた人工マーカの形態のバリエーションを示す。
【0076】
図16は、分化細胞DCの大きさに応じて、人工マーカの大きさを異ならせる例を示す。具体的には、分化細胞DCの大きさが第1大きさ閾値よりも大きい場合は大きいサイズの○印15A、分化細胞DCの大きさが第1大きさ閾値以下で第2大きさ閾値よりも大きい場合は中程度のサイズの○印15A、分化細胞DCの大きさが第2大きさ閾値以下の場合は小さいサイズの○印15Aが、それぞれ人工マーカとして用いられる。
【0077】
図17は、分化細胞DCの密集度に応じて、人工マーカの色を異ならせる例を示す。具体的には、分化細胞DCの密集度が第1密集度閾値よりも高い場合は青色の○印15A、分化細胞DCの密集度が第1密集度閾値以下で第2密集度閾値よりも大きい場合は黄色の○印15A、分化細胞DCの密集度が第2密集度閾値以下の場合は赤色の○印15Aが、それぞれ人工マーカとして用いられる。
【0078】
図18は、分化細胞DCの円形度に応じて、人工マーカの形状を異ならせる例を示す。具体的には、分化細胞DCの円形度が第1円形度閾値よりも高い場合は◎(二重丸)印、分化細胞DCの円形度が第1円形度閾値以下で第2円形度閾値よりも大きい場合は○印、分化細胞DCの円形度が第2円形度閾値以下の場合は●(黒丸)印が、それぞれ人工マーカとして用いられる。
【0079】
図19は、分化細胞DCの内包物の個数に応じて、人工マーカの大きさを異ならせる例を示す。具体的には、分化細胞DCの内包物の個数が第1個数閾値よりも多い場合は大きいサイズの○印15A、分化細胞DCの内包物の個数が第1個数閾値以下で第2個数閾値よりも多い場合は中程度のサイズの○印15A、分化細胞DCの内包物の個数が第2個数閾値以下の場合は小さいサイズの○印15Aが、それぞれ人工マーカとして用いられる。なお、内包物は、例えば核小体である。
【0080】
また、
図20は、分化細胞DCの向き(長軸方向)を表した両矢印90を、人工マーカとして用いた例を示す。
【0081】
分化細胞DCの大きさ、密集度、円形度、内包物の個数、および向きは、アノテーション画像AIの作成を行う装置において、分化細胞DCの指定がなされたアノテーション画像AIに対して画像解析を行うことで導出する。分化細胞DCの大きさは、分化細胞DCを構成する画素の個数で表される。このため、第1大きさ閾値および第2大きさ閾値も、画素の個数が設定される。密集度は、アノテーション画像AIの単位領域当たりの分化細胞DCの個数で表される。このため、第1密集度閾値および第2密集度閾値も、アノテーション画像AIの単位領域当たりの分化細胞DCの個数が設定される。円形度は、例えば、分化細胞DCの面積をS、分化細胞DCの領域の周囲長をLとした場合、4πS/L2を計算して求まる値である。この場合、求めた値が1に近い程、円形度が高い。このため、第1円形度閾値には、第2円形度閾値よりも1に近い値が設定される。内包物の個数は、内包物を画像認識等で検出し、検出した内包物の個数を分化細胞DC毎に計数することで導出する。第1個数閾値は例えば3個、第2個数閾値は例えば1個である。
【0082】
このように、
図16~
図20の人工マーカは、分化細胞DCの属性に応じて形態が異なっている。分化細胞DCの属性は、大きさ、密集度、円形度、内包物の数、および向きのうちの少なくともいずれか1つである。人工マーカの形態は、大きさ、形状、および色のうちの少なくともいずれか1つである。したがって、人工マーカによれば、構造物の属性が一目で分かる。なお、分化細胞DCの大きさに応じた○印の色を、分化細胞DCの密集度に応じて変更する等、これらを複合して実施してもよい。また、分化細胞DCだけでなく、未分化細胞UDC、死細胞DDCの属性に応じて人工マーカの形態を異ならせてもよい。
【0083】
培養評価部67による培養の評価結果ERとしては、例示した各細胞DC、UDC、DDCの個数に限らない。各細胞DC、UDC、DDCの個数を合算した全細胞の個数に対する分化細胞DCの個数の割合を、培養の評価結果ERとして出力してもよい。
【0084】
培養の評価結果ERの出力形態として、評価結果表示画面75を例示したが、これに限らない。評価結果表示画面75に代えて、あるいは加えて、培養の評価結果ERを印刷出力してもよいし、ファイル出力してもよい。
【0085】
各細胞DC、UDC、DDCを区別することなく、全て同じ細胞というクラスを指定してもよい。この場合の人工マーカは1種類でよい。あるいは、各細胞DC、UDC、DDCのクラスの指定を全て細胞としたうえで、各細胞DC、UDC、DDCで人工マーカの種類を変え、人工マーカによって各細胞DC、UDC、DDCを区別してもよい。逆に、上記実施形態のように、各細胞DC、UDC、DDCに対して異なるクラスを指定した場合は、人工マーカを変更せずとも各細胞DC、UDC、DDCを区別できるので、人工マーカを1種類としてもよい。
【0086】
また、
図21に示すように、アノテーション画像AIにおいて、例えば分化細胞DCおよび未分化細胞UDCの個々の領域を厳密にクラスとして指定せず、複数の分化細胞DCの集合(以下、分化細胞集合という)DCCおよび複数の未分化細胞UDCの集合(以下、未分化細胞集合という)UDCCをクラスとして指定してもよい。すなわち、この場合は、分化細胞集合DCCおよび未分化細胞集合UDCCが、本開示の技術に係る「構造物の集合」の一例である。このアノテーション画像AIによれば、分化細胞DCおよび未分化細胞UDCの個々の領域を厳密にクラスとして指定しなくてもよいので、アノテーション画像AIの作成の手間を大幅に省くことができる。
【0087】
ただし、
図21に示すアノテーション画像AIを学習データLDとして学習した場合、学習済みモデルTMから出力される出力画像OIは、例えば
図22に示すものとなる。すなわち、人工マーカである○印15Aおよび△印15Bが付与され、また、分化細胞集合DCCおよび未分化細胞集合UDCCは判別されているが、個々の分化細胞DCおよび未分化細胞UDCは判別されていないものとなる。このため、
図21に示すアノテーション画像AIのように、複数の構造物の集合がクラスとして指定されたアノテーション画像AIを用いる場合は、出力画像OIに対して、個々の構造物を判別する処理を行う必要がある。
【0088】
そこで、
図23に示すように、運用装置11のCPU32Bに、判別部95を設けることが好ましい。判別部95は、処理部66からの出力画像OIを受け取る。判別部95は、出力画像OI内の○印15Aおよび△印15Bに基づいて、個々の分化細胞DCおよび個々の未分化細胞UDCを判別する。判別部95は、例えば、○印15Aおよび△印15Bをシードとして、出力画像OIにウォーターシェッド(watershed)アルゴリズムを適用することで、個々の分化細胞DCおよび個々の未分化細胞UDCを判別する。判別部95は、判別結果である判別画像DIを表示制御部68に出力する。表示制御部68は、出力画像OIに代えて判別画像DIを評価結果表示画面75に表示させる。このように、出力画像OI内の人工マーカに基づいて、個々の構造物を判別する判別部95を設けたので、アノテーション画像AIのクラスの指定が比較的アバウトであっても、最終的には個々の構造物が判別された画像を出力することができる。
【0089】
なお、各細胞DC、UDC、DDCに対して異なるクラスを指定し、人工マーカを1種類とした場合等、人工マーカの種類がクラスよりも少ない場合は、学習済みモデルTMの態様によっては以下のような問題が生じる。なお、以下では、各細胞DC、UDC、DDCに対して異なるクラスを指定し、各細胞DC、UDC、DDCに付す人工マーカを○印15Aの一種類とした場合を例に説明する。
【0090】
図24は、学習済みモデルTMが、1つのアクティベーションレイヤ100だけを有する場合を示す。ここで、符号CMP1は、分化細胞DCの存否確率を示すクラス存否確率マップ、符号CMP2は、未分化細胞UDCの存否確率を示すクラス存否確率マップ、符号CMP3は、死細胞DDCの存否確率を示すクラス存否確率マップ、符号CMP4は、培地PLの存否確率を示すクラス存否確率マップである。また、符号MMPは、人工マーカである○印15Aの存否確率を示すマーカ存否確率マップである。各クラス存否確率マップCMP1~CMP4には、分化細胞DCのクラス存否確率マップCMP1に示すように、画素毎にクラスの存否確率を示す数値(画素値)が登録されている。また、マーカ存否確率マップMMPも同様に、画素毎に○印15Aの存否確率を示す数値(画素値)が登録されている。これら各存否確率マップCMP1~CMP4、MMPの画素は、出力画像OIの画素と一対一で対応する。
【0091】
アクティベーションレイヤ100は、各存否確率マップCMP1~CMP4、MMPに基づいて、認定データAVDを出力する。アクティベーションレイヤ100は、出力画像OIの特定画素に対応する、各存否確率マップCMP1~CMP4、MMPの画素の各画素値のうちの例えば最大値(最高確率)をとる画素値のクラス、または人工マーカ(この場合は○印15A)を、特定画素が属するクラス、または人工マーカとして認定する。こうして出力された認定データAVDは、出力画像OIの各画素が属するクラス、または出力画像OIの各画素が属する人工マーカを認定したデータとなる。なお、
図24では、二点鎖線で囲う部分の画素を○印15Aと認定し、それ以外の画素を分化細胞DCと認定した場合を例示している。
【0092】
認定データAVDでは、人工マーカである○印15Aと認定された画素は、クラスは認定されないため不明となる。したがって、培養評価部67において、○印15Aに基づき分化細胞DC、未分化細胞UDC、死細胞DDCの各々の個数を計数するためには、○印15Aと認定された画素のクラスを特定する処理が別に必要となってしまう。
【0093】
そこで、
図25に示すように、クラス存否確率マップCMP1~CMP4用の第1アクティベーションレイヤ105と、マーカ存否確率マップMMP用の第2アクティベーションレイヤ106とを有する学習済みモデルTMとすることが好ましい。こうした構成とすれば、出力画像OIの各画素が属するクラスを認定した第1認定データAVD1と、出力画像OIの各画素が属する人工マーカを認定した第2認定データAVD2とを別々に出力することができる。したがって、人工マーカである○印15Aと認定された画素がどのクラスに属するかを、第1認定データAVD1によって特定することができ、
図24の場合のように、○印15Aと認定された画素のクラスを特定する処理を別に行う必要がなくなる。
【0094】
なお、第1認定データAVD1に基づいてクラスが指定された出力画像OIを出力し、これとは別に第2認定データAVD2に基づいて人工マーカが指定された出力画像OIを出力する場合も考えられる。この場合は、学習装置10の評価部47で用いる損失関数を、クラスが指定された学習用出力画像OIL用と、人工マーカが指定された学習用出力画像OIL用とで2つ用意する必要がある。
【0095】
構造物は細胞自体に限らない。核小体等の細胞の一部を構造物としてもよい。核小体は、1μm~3μmの大きさであるため、位相差顕微鏡で十分に観察することが可能である。
【0096】
機械学習システム2を構成するコンピュータのハードウェア構成は種々の変形が可能である。例えば、学習装置10と運用装置11とを統合して、1台のコンピュータで構成してもよい。また、学習装置10および運用装置11のうちの少なくともいずれかを、処理能力および信頼性の向上を目的として、ハードウェアとして分離された複数台のコンピュータで構成することも可能である。例えば、学習装置10のRW制御部45、学習部46、および評価部47の機能と、更新部48および送信制御部49の機能とを、2台のコンピュータに分散して担わせる。この場合は2台のコンピュータで学習装置10を構成する。
【0097】
このように、機械学習システム2のコンピュータのハードウェア構成は、処理能力、安全性、信頼性等の要求される性能に応じて適宜変更することができる。さらに、ハードウェアに限らず、作動プログラム40、60等のアプリケーションプログラムについても、安全性および信頼性の確保を目的として、二重化したり、あるいは、複数のストレージデバイスに分散して格納することももちろん可能である。
【0098】
モデルMはU-Netに限らず、他の畳み込みニューラルネットワーク、例えばSegNetでもよい。
【0099】
上記実施形態において、例えば、RW制御部45、65、学習部46、評価部47、更新部48、送信制御部49、処理部66、培養評価部67、表示制御部68、判別部95といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(作動プログラム40、60)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU32A、32Bに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0100】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、および/または、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0101】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0102】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0103】
以上の記載から、以下の付記項1、2に記載の発明を把握することができる。
【0104】
[付記項1]
培養中の複数の細胞を撮影した細胞画像に基づいて、前記細胞画像内の前記細胞または前記細胞の一部を含む構造物、もしくは前記構造物の集合を、クラスとして画素単位で判別するセマンティックセグメンテーションを実施するための機械学習モデルの運用装置であって、
前記細胞画像を取得する第1取得プロセッサと、
学習用入力画像およびアノテーション画像の組で構成される学習データを与えられて学習された前記機械学習モデルに、前記第1取得プロセッサにおいて取得した前記細胞画像を入力して前記セマンティックセグメンテーションを実施させ、出力画像を出力させる処理プロセッサと、
を備え、
前記アノテーション画像は、前記学習用入力画像内の前記構造物、もしくは前記構造物の集合に対応する領域が前記クラスとして指定され、かつ、前記構造物毎に、隣り合う前記構造物間で重複しない前記構造物内の位置に人工マーカが付与された画像であり、
前記出力画像は、前記人工マーカ付きの画像である
機械学習モデルの運用装置。
【0105】
[付記項2]
培養中の複数の細胞を撮影した細胞画像内の前記細胞または前記細胞の一部を含む構造物、もしくは前記構造物の集合を、クラスとして画素単位で判別するセマンティックセグメンテーションを実施するための機械学習モデルの学習装置であって、
学習用入力画像およびアノテーション画像の組で構成される学習データを取得する第2取得プロセッサと、
前記第2取得プロセッサにおいて取得した前記学習データを、前記機械学習モデルに与えて学習させる学習プロセッサと、
を備え、
前記アノテーション画像は、前記学習用入力画像内の前記構造物、もしくは前記構造物の集合に対応する領域が前記クラスとして指定され、かつ、前記構造物毎に、隣り合う前記構造物間で重複しない前記構造物内の位置に人工マーカが付与された画像である
機械学習モデルの学習装置。
【0106】
本開示の技術は、上述の種々の実施形態と種々の変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、上記実施形態に限らず、要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。さらに、本開示の技術は、プログラムに加えて、プログラムを非一時的に記憶する記憶媒体にもおよぶ。
【0107】
以上に示した記載内容および図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、および効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、および効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容および図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことはいうまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容および図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0108】
本明細書において、「Aおよび/またはB」は、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「Aおよび/またはB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、AおよびBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「および/または」で結び付けて表現する場合も、「Aおよび/またはB」と同様の考え方が適用される。
【0109】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0110】
2 機械学習システム
10 学習装置
11 運用装置
12 ネットワーク
15A ○印(人工マーカ)
15B △印(人工マーカ)
15C ×印(人工マーカ)
30、30A、30B ストレージデバイス
31 メモリ
32、32A、32B CPU
33 通信部
34、34B ディスプレイ
35 入力デバイス
36 バスライン
40 作動プログラム(学習装置の作動プログラム)
45 リードライト制御部(RW制御部、第2取得部)
46 学習部
47 評価部
48 更新部
49 送信制御部
60 作動プログラム(運用装置の作動プログラム)
65 リードライト制御部(RW制御部、第1取得部)
66 処理部
67 培養評価部
68 表示制御部
75 評価結果表示画面
76 凡例
77 OKボタン
80 神経細胞
81 細胞体
82 軸索
83 樹状突起
85 輪郭線(人工マーカ)
90 両矢印(人工マーカ)
95 判別部
100 アクティベーションレイヤ
105、106 第1、第2アクティベーションレイヤ
AI アノテーション画像
AVD 認定データ
AVD1、AVD2 第1、第2認定データ
CMP1~CMP4 クラス存否確率マップ
CP 中心点(特徴点)
DC 分化細胞
DCC 複数の分化細胞の集合(分化細胞集合)
DDC 死細胞
DI 判別画像
ER 評価結果
II 入力画像
IIL 学習用入力画像
LD 学習データ
M モデル
MMP マーカ存否確率マップ
OI 出力画像
OIL 学習用出力画像
PL 培地
ST100 ステップ(第2取得ステップ)
ST110 ステップ(学習ステップ)
ST120、ST130、ST140、ST150、ST220、ST230 ステップ
ST200 ステップ(第1取得ステップ)
ST210 ステップ(処理ステップ)
TM 学習済みモデル
UDC 未分化細胞
UDCC 複数の未分化細胞の集合(未分化細胞集合)