(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/312 20060101AFI20221216BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20221216BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20221216BHJP
C23C 16/04 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
H01L21/312 A
H01L21/316 X
H01L21/31 B
C23C16/04
(21)【出願番号】P 2019173418
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】倪 澤遠
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大輝
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/060413(WO,A1)
【文献】特開2003-234021(JP,A)
【文献】特開平02-090679(JP,A)
【文献】特開2015-067528(JP,A)
【文献】特表2021-520640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/312
H01L 21/316
H01L 21/31
C23C 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属膜又は前記金属膜の酸化被膜が露出する第1領域と、絶縁性膜が露出する第2領域とを有する基板を準備することと、
下記化学式(1)で表される炭素原子同士の三重結合を頭部基に含む有機化合物を、前記基板に対して供給することと、
前記第1領域及び前記第2領域のうちの前記第1領域に、選択的に、前記有機化合物を吸着させることと、
前記第1領域にて、前記三重結合を開裂し、重合反応によって炭素原子のハニカム構造を有する疎水性膜を形成することとを含む、成膜方法。
【化1】
上記化学式(1)において、Rは、1以上16以下の炭素原子を含む疎水性の官能基である。
【請求項2】
前記基板に対する前記有機化合物の供給前に、前記第1領域に露出する前記酸化被膜を除去することを含む、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記基板に対する前記有機化合物の供給前、又は前記基板に対する前記有機化合物の供給中に、前記基板に対して水素(H
2)ガスを供給することを含む、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記基板に対する前記有機化合物の供給前、又は前記基板に対する前記有機化合物の供給中に、前記基板に対してアセチレン(C
2H
2)ガスを供給することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記基板に対する前記有機化合物の供給中に、前記有機化合物の分子同士の重合を促進する光を、前記基板に対して照射することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記金属膜は銅膜である、請求項1~5のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記絶縁性膜は酸化アルミニウム膜である、請求項1~6のいずれか1項に成膜方法。
【請求項8】
前記疎水性膜を用い、前記第1領域及び前記第2領域のうちの前記第2領域に選択的に第2絶縁性膜を形成することを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項9】
処理容器と、
前記処理容器の内部で前記基板を保持する基板保持部と、
前記処理容器の内部に前記有機化合物のガスを供給するガス供給装置と、
前記処理容器の内部からガスを排出するガス排出装置と、
前記処理容器に対して前記基板を搬入出する搬送装置と、
請求項1~8のいずれか1項に記載の成膜方法を実施するように、前記ガス供給装置、前記ガス排出装置及び前記搬送装置を制御する制御装置とを備える、成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリコン表面と誘電体表面のうちの誘電体表面をヒドロキシル基で終結させ、ヒドロキシル基を疎水性官能基で置換し、疎水性官能基を用いて、シリコン表面に選択的に金属含有層を堆積する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、金属膜表面と絶縁性膜表面のうちの金属膜表面に、選択的に、疎水性膜を形成できる、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様の成膜方法は、
金属膜又は前記金属膜の酸化被膜が露出する第1領域と、絶縁性膜が露出する第2領域とを有する基板を準備することと、
下記化学式(1)で表される炭素原子同士の三重結合を頭部基に含む有機化合物を、前記基板に対して供給することと、
前記第1領域及び前記第2領域のうちの前記第1領域に、選択的に、前記有機化合物を吸着させることと、
前記第1領域にて、前記三重結合を開裂し、重合反応によって炭素原子のハニカム構造を有する疎水性膜を形成することとを含む。
【0006】
【化1】
上記化学式(1)において、Rは、1以上16以下の炭素原子を含む疎水性の官能基である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、金属膜表面と絶縁性膜表面のうちの金属膜表面に、選択的に、疎水性膜を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。
【
図2A】
図2Aは、酸化被膜を有する基板の一例を示す側面図である。
【
図2B】
図2Bは、酸化被膜の除去後の基板の一例を示す側面図である。
【
図2C】
図2Cは、疎水性膜の成膜後の基板の一例を示す側面図である。
【
図2D】
図2Dは、第2絶縁性膜の成膜後の基板の一例を示す側面図である。
【
図3A】
図3Aは、疎水性膜の成膜過程の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1の成膜方法を実施する成膜装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0010】
図1に示すように、成膜方法は、例えば、基板10の準備(S1)と、酸化被膜12の除去(S2)と、疎水性膜20の成膜(S3)と、第2絶縁性膜30の成膜(S4)とをこの順番で有する。なお、後述するように、これらの処理の順番は
図1に示す順番には限定されない。また、
図1に示す複数の処理が同時に行われてもよい。また、
図1に示す複数の処理の一部は、実施されなくてもよい。
【0011】
図1のS1では、
図2Aに示すように、基板10を準備する。基板10の準備は、例えば基板10を後述の処理容器120の内部に設置することを含む。基板10は、金属膜11の酸化被膜12が露出する第1領域A1と、絶縁性膜13が露出する第2領域A2とを有する。金属膜11は、通常、大気中で自然に酸化されるので、酸化被膜12で覆われる。第1領域A1と第2領域A2とは、基板10の板厚方向片側に設けられる。
【0012】
第1領域A1の数は、
図2Aでは1つであるが、複数でもよい。例えば2つの第1領域A1が第2領域A2を挟むように配置されてもよい。同様に、第2領域A2の数は、
図2Aでは1つであるが、複数でもよい。例えば2つの第2領域A2が第1領域A1を挟むように配置されてもよい。
【0013】
なお、
図2Aでは第1領域A1及び第2領域A2のみが存在するが、第3領域がさらに存在してもよい。第3領域は、第1領域A1及び第2領域A2とは異なる材質の膜が露出する領域である。第3領域は、第1領域A1と第2領域A2との間に配置されてもよいし、第1領域A1及び第2領域A2の外に配置されてもよい。
【0014】
金属膜11の材質は、例えば遷移金属である。その遷移金属としては、例えばCu、W、Co、Ru又はNiである。
【0015】
一方、絶縁性膜13の材質は、例えば、金属化合物である。金属化合物は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸炭化ケイ素、又は炭化ケイ素などである。絶縁性膜13の材質は、SiO2よりも誘電率の低い低誘電率材料(Low-k材料)であってもよい。
【0016】
基板10は、金属膜11及び絶縁性膜13の他に、下地基板14を有する。下地基板14は、例えばシリコンウェハなどの半導体基板である。なお、下地基板14は、ガラス基板などであってもよい。下地基板14の表面に、金属膜11及び絶縁性膜13が形成される。
【0017】
なお、基板10は、下地基板14と絶縁性膜13との間に、下地基板14及び絶縁性膜13とは異なる材料で形成される下地膜をさらに有してもよい。同様に、基板10は、下地基板14と金属膜11との間に、下地基板14及び金属膜11とは異なる材料で形成される下地膜をさらに有してもよい。
【0018】
図1のS2では、
図2Bに示すように、酸化被膜12を除去する。酸化被膜12の除去によって、第1領域A1にて金属膜11が露出する。金属膜11の露出後に、疎水性膜20の成膜(S3)が行われる。
【0019】
酸化被膜12の除去は、例えば、水素(H2)ガスを基板10に対して供給することを含む。水素ガスは、酸化被膜12を還元し、除去する。水素ガスは、化学反応を促進すべく、高温に加熱されてもよい。また、水素ガスは、化学反応を促進すべく、プラズマ化されてもよい。
【0020】
水素ガスの供給は、例えば200℃以上400℃以下の温度、且つ0.5Torr以上760Torr以下の気圧で、2分以上60分以下の時間実施される。水素ガスはアルゴンガスなどの不活性ガスで希釈されてもよく、水素ガスの濃度は10質量%以上100質量%以下であってよい。
【0021】
酸化被膜12の除去は、本実施形態ではドライ処理であるが、ウェット処理であってもよい。例えば、酸化被膜12の除去は、クエン酸を基板10に対して供給することを含んでもよい。基板10は、クエン酸中に浸漬されてもよいし、クエン酸でスピン洗浄されてもよい。
【0022】
クエン酸による処理は、例えば25℃以上60℃以下の温度で、10秒以上5分以下の時間実施される。クエン酸は水溶液の形態で供給され、クエン酸の濃度は0.5質量%以上10質量%以下であってよい。
【0023】
なお、本実施形態では酸化被膜12を有する基板10が準備されるが、酸化被膜12を有しない基板10が準備されてもよい。この場合、酸化被膜12の除去は、当然に不要である。金属膜11の露出後に、疎水性膜20の成膜(S3)が行われる。
【0024】
図1のS3では、
図2Cに示すように、第1領域A1及び第2領域A2のうちの第1領域A1に選択的に疎水性膜20を形成する。具体的には、下記化学式(1)で表される炭素原子同士の三重結合を頭部基に含む有機化合物を、基板10に対して供給する。
【0025】
【化2】
上記化学式(1)において、Rは、1以上16以下の炭素原子を含む疎水性の官能基である。Rは、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、水素原子の一部をハロゲン原子で置換した官能基であってもよい。ハロゲン原子は、特に限定されないが、例えばフッ素原子である。Rは、好ましくはアルキル基である。アルキル基の直鎖が長いほど、疎水性が高くなる。
【0026】
上記有機化合物は、炭素原子同士の三重結合を頭部基に含む。上記頭部基は、OH基を有する基板表面に吸着し難い性質を有する。第1領域A1では金属膜11が露出するのに対し、第2領域A2では絶縁性膜13が露出する。一般的に、金属膜11は表面にOH基をほとんど有しないのに対し、絶縁性膜13は表面にOH基を有する。従って、上記頭部基は、第1領域A1及び第2領域A2のうちの第1領域A1に選択的に吸着する。吸着しやすさは、吸着エネルギーΔEの絶対値|ΔE|で表される。
【0027】
吸着エネルギーΔEは、例えば、ΔE=Ea-Ebの式から求める。Eaは有機化合物の基板表面に吸着した状態のエネルギーであり、Ebは有機化合物の基板表面から離れた自由状態のエネルギーである。
【0028】
吸着エネルギーΔEは、第一原理計算(first-principles calculation)によって求められ、シュミュレーションによって求められる。吸着エネルギーΔEの絶対値|ΔE|が大きいほど、上記有機化合物が基板表面に吸着しやすい。
【0029】
本明細書では、金属膜11の表面での|ΔE|を|ΔE1|と称し、絶縁性膜13の表面での|ΔE|を|ΔE2|と称する。|ΔE1|は|ΔE2|に比べて十分に大きい。例えば、RがC3H7であり、金属膜11の材質がCuであり、絶縁性膜13の材質が酸化ケイ素及び酸化アルミニウムのいずれかである場合、|ΔE1―ΔE2|は約1.1~1.3eVである。
【0030】
ところで、上記有機化合物と同様に、チオール系化合物も、第1領域A1及び第2領域A2のうちの第1領域A1に選択的に吸着する。チオール系化合物は、水素化された硫黄を末端に有し、化学式「R-SH」で表される。チオール系化合物の場合、|ΔE1―ΔE2|は約1.0eVである。
【0031】
一方、上記有機化合物の場合、上記の通り、|ΔE1―ΔE2|は約1.1eV以上である。従って、上記有機化合物は、チオール系化合物と比べても、選択的に第1領域A1に吸着でき、選択性に優れる。
【0032】
上記有機化合物は、例えば気体として基板10に供給される。なお、上記有機化合物は、液体として基板10に供給されてもよく、その場合、溶媒に溶解した状態で基板10に供給されてもよい。
【0033】
図1のS3では、第1領域A1にて、上記有機化合物が吸着されるので、
図3A、
図3B、
図3C、
図3D及び
図3Eに示すように、頭部基の炭素原子同士の三重結合が開裂し、重合反応によって炭素原子のハニカム構造を有する疎水性膜20が形成される。炭素原子同士の三重結合がπ結合を有するのに対し、炭素原子のハニカム構造はπ結合を有しない。なお、
図3A、
図3B、
図3C、
図3D及び
図3Eにおいて、「Cu/H」とはCu原子とH原子のいずれか一方という意味である。「Cu/H」のCu原子は、金属膜11のCu原子である。ハニカム構造の複数のC原子のうち少なくとも1つのC原子が金属膜11のCu原子と結合していればよく、残りのC原子はH原子と結合していてもよい。ハニカム構造の全てのC原子がH原子と結合していなければよい。
【0034】
先ず、
図3Aに示すように、頭部基の末端の水素原子が脱離し、上記有機化合物の分子同士が重合する。この時、
図3Bに示すように、頭部基の炭素原子同士の三重結合が開裂し、重合反応によって炭素原子のハニカム構造が形成される。
【0035】
次に、
図3Cに示すように、予め形成された炭素原子のハニカム構造を核として、重合反応が進み、核を起点とする成長が始まる。具体的には、
図3Dに示すように、新たな炭素元素のハニカム構造が形成され、ハニカム構造が基板10の面内方向に広がる。
【0036】
図3C及び
図3Dに示す現象が繰り返し生じ、
図3Eに示す疎水性膜20が第1領域A1の全体に形成される。疎水性膜20は、グラファン(graphane)の水素原子の一部を、官能基Rに置き換えたグラファン誘導体である。
【0037】
官能基Rは、環状に並ぶ6つの炭素元素に対して1つおきに結合し、3つの炭素元素に対して結合する。官能基Rの配向性は揃っており、疎水性膜20は自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer:SAM)である。
【0038】
官能基Rは炭素元素のハニカム構造に結合しており、そのハニカム構造は第1領域A1の全体に広がる。ハニカム構造は第1領域A1の全体に広がるので、第1領域A1からの疎水性膜20の意図しない脱離を抑制できる。
【0039】
疎水性膜20の成膜条件は、上記有機化合物の種類、つまり、官能基Rの種類に応じて適宜決められる。疎水性膜20の成膜は、例えば20℃以上200℃以下の温度、且つ0.1Torr以上300Torr以下の気圧で実施される。
【0040】
なお、上記有機化合物の供給中に、有機化合物の分子同士の重合を促進する光を基板10に対して照射してもよい。照射する光は、例えば紫外線又は赤外線である。光の照射によって、ハニカム構造の核形成、及び核を起点とする成長を促進でき、疎水性膜20の成膜時間を短縮できる。或いは、光の照射によって、低温での疎水性膜20の成膜が可能になる。
【0041】
また、上記有機化合物の供給中に、水素(H2)ガスを供給してもよい。水素ガスの供給によって、欠陥のないハニカム構造が広範囲に亘って得られる。その理由は、水素ガスの供給によって、ハニカム構造の核形成の速度に対して、核を起点とする成長の速度が相対的に速くなるためと推定される。また、水素ガスの供給によって、ハニカム構造の多層化も可能である。更に、第1領域A1に酸化被膜12が残存する場合、水素ガスの供給によって、酸化被膜12の除去も可能である。この場合、上記有機化合物の供給前に、酸化被膜12の除去(S2)を実施してもよいが、実施しなくてもよい。
【0042】
また、上記有機化合物の供給中に、アセチレン(C2H2)ガスを供給してもよい。アセチレンは、上記有機化合物と同様に、炭素原子同士の三重結合を有する。仮に、上記有機化合物の代わりに、アセチレンガスのみを基板10に対して供給すると、第1領域A1及び第2領域A2のうちの第1領域A1に選択的にグラフェン(graphene)が形成される。グラフェンは、グラファンと同様に炭素元素のハニカム構造を有するが、グラファンとは異なり炭素元素以外の原子を有しない。
【0043】
上記有機化合物のガスの供給中に、アセチレンガスを供給すれば、疎水性膜20の官能基Rの密度を制御できる。官能基Rの密度は、上記有機化合物のガス流量とアセチレンガスのガス流量との比率によって制御できる。アセチレンガスの割合が高いほど、つまり、上記有機化合物のガスの割合が低いほど、官能基Rの密度が低い。
【0044】
アセチレンガスは、官能基Rの密度を制御する役割だけではなく、炭素原子のハニカム構造の核形成を促進する役割も有する。従って、アセチレンガスを供給すれば、疎水性膜20の成膜時間を短縮できる。また、低温での疎水性膜20の成膜も可能である。
【0045】
アセチレンガスは、上記有機化合物の供給前に、基板10に対して供給されてもよい。この場合も、官能基Rの密度を制御する効果、及びハニカム構造の核形成を促進する効果が得られる。アセチレンガスは、酸化被膜12の除去後に、基板10に対して供給されればよい。
【0046】
図1のS4では、
図2Dに示すように、疎水性膜20を用いて、第1領域A1及び第2領域A2のうちの第2領域A2に選択的に、第2絶縁性膜30を成膜する。疎水性膜20は第2絶縁性膜30の成膜を阻害するので、第2絶縁性膜30は第2領域A2に選択的に形成される。
【0047】
第2絶縁性膜30は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法、又はALD(Atomic Layer Deposition)法で形成される。第2領域A2に元々存在する絶縁性膜13に、第2絶縁性膜30を積層できる。
【0048】
第2絶縁性膜30は、特に限定されないが、例えば酸化アルミニウムで形成される。以下、酸化アルミニウムを、酸素とアルミニウムとの組成比に関係なく「AlO」とも表記する。第2絶縁性膜30としてAlO膜をALD法で形成する場合、処理ガスとして、トリメチルアルミニウム(TMA:(CH3)3Al)ガスなどのAl含有ガスと、水蒸気(H2Oガス)などの酸化ガスとが、基板10に対して交互に供給される。水蒸気は疎水性膜20に吸着しないので、AlOは第2領域A2に選択的に堆積する。Al含有ガス及び酸化ガスの他に、水素(H2)ガスなどの改質ガスが基板10に対して供給されてもよい。これらの処理ガスは、化学反応を促進すべく、プラズマ化されてもよい。また、これらの処理ガスは、化学反応を促進すべく、加熱されてもよい。
【0049】
また、第2絶縁性膜30は、酸化ケイ素で形成されてもよい。以下、酸化ケイ素を、酸素とケイ素との組成比に関係なく「SiO」とも表記する。第2絶縁性膜30としてSiO膜をALD法で形成する場合、処理ガスとして、ジクロロシラン(SiH2Cl2)ガスなどのSi含有ガスと、オゾン(O3)ガスなどの酸化ガスとが、基板10に対して交互に供給される。Si含有ガス及び酸化ガスの他に、水素(H2)ガスなどの改質ガスが基板10に対して供給されてもよい。これらの処理ガスは、化学反応を促進すべく、プラズマ化されてもよい。また、これらの処理ガスは、化学反応を促進すべく、加熱されてもよい。
【0050】
また、第2絶縁性膜30は、窒化ケイ素で形成されてもよい。以下、窒化ケイ素を、窒素とケイ素との組成比に関係なく「SiN」とも表記する。第2絶縁性膜30としてSiN膜をALD法で形成する場合、処理ガスとして、ジクロロシラン(SiH2Cl2)ガスなどのSi含有ガスと、アンモニア(NH3)ガスなどの窒化ガスとが、基板10に対して交互に供給される。Si含有ガス及び窒化ガスの他に、水素(H2)ガスなどの改質ガスが基板10に対して供給されてもよい。これらの処理ガスは、化学反応を促進すべく、プラズマ化されてもよい。また、これらの処理ガスは、化学反応を促進すべく、加熱されてもよい。
【0051】
次に、
図4を参照して、
図1に示す基板処理方法を実施する基板処理装置について説明する。成膜装置100は、処理ユニット110と、搬送装置170と、制御装置180とを備える。処理ユニット110は、処理容器120と、基板保持部130と、温調器140と、光源142と、ガス供給装置150と、ガス排出装置160とを有する。
【0052】
処理ユニット110は、
図4には1つのみ図示するが、複数であってもよい。複数の処理ユニット110は、いわゆるマルチチャンバーシステムを形成する。複数の処理ユニット110は、真空搬送室101を囲むように配置される。真空搬送室101は、真空ポンプによって排気され、予め設定された真空度に保持される。真空搬送室101には、搬送装置170が鉛直方向及び水平方向に移動可能に、且つ鉛直軸周りに回転可能に配置される。搬送装置170は、複数の処理容器120に対して基板10を搬送する。処理容器120の内部の処理室121と、真空搬送室101とは、これらの気圧がいずれも大気圧よりも低い気圧である時に連通し、基板10の搬入出が行われる。基板10の搬入出時に、処理室121に残留するガス成分が真空搬送室101に持ち込まれるのを抑制したい場合、真空搬送室101の気圧が処理室121の気圧よりも若干高くなるように、真空搬送室101に微量の不活性ガスが供給されてもよい。
【0053】
処理容器120は、基板10が通過する搬入出口122を有する。搬入出口122には、搬入出口122を開閉するゲートGが設けられる。ゲートGは、基本的に搬入出口122を閉じており、基板10が搬入出口122を通る時に搬入出口122を開く。搬入出口122の開放時に、処理容器120の内部の処理室121と、真空搬送室101とが連通する。搬入出口122の開放前に、処理室121と真空搬送室101とは、いずれも、真空ポンプによって排気され、予め設定された気圧に維持される。
【0054】
基板保持部130は、処理容器120の内部で基板10を保持する。基板保持部130は、基板10の処理ガスに曝される表面を上に向けて、基板10を下方から水平に保持する。基板保持部130は、枚葉式であって、一枚の基板10を保持する。なお、基板保持部130は、バッチ式でもよく、同時に複数枚の基板10を保持してもよい。バッチ式の基板保持部130は、複数枚の基板10を、鉛直方向に間隔をおいて保持してもよいし、水平方向に間隔をおいて保持してもよい。
【0055】
温調器140は、基板保持部130で保持された状態の基板10の温度を調節する。例えば、温調器140は、基板保持部130を加熱する電気ヒータであり、電力供給によって発熱する。電気ヒータは、例えば、基板保持部130の内部に埋め込まれ、基板保持部130を加熱し、基板10を所望の温度に加熱する。なお、温調器140は、石英窓を介して基板保持部130を加熱するランプを含んでもよい。この場合、石英窓が堆積物で不透明になるのを防止すべく、基板保持部130と石英窓との間にアルゴンガスなどの不活性ガスが供給されてもよい。なお、温調器140は、処理容器120の外部に設置され、処理容器120の外部から基板10の温度を調節してもよい。
【0056】
光源142は、基板10に対する上記有機化合物の供給中に、上記有機化合物の分子同士の重合を促進する光を、基板10に対して照射する。照射する光は、例えば紫外線又は赤外線である。光源142は、基板保持部130と対向して配置される。光源142は、棒状であってよく、その場合、基板10の上面全体に対して均一に光を照射できるように複数配列される。光源142は、例えばシャワーヘッド152の上方に設置され、シャワーヘッド152を介して基板10に対して光を照射する。この場合、シャワーヘッド152は、光を透過する材料で形成され、例えば石英ガラスなどで形成される。なお、成膜装置100は処理ユニット110とは別の処理ユニットに光源142を有してもよく、搬送装置170が光源142を有する処理ユニットと処理ユニット110との間で基板10を搬送してもよい。また、光の照射無しで分子同士の重合反応が十分に進む場合、成膜装置100は光源142を有しなくてもよい。
【0057】
ガス供給装置150は、基板10に対して予め設定された処理ガスを供給する。処理ガスは、
図1に示す処理(例えば上記S2、S3及びS4)毎に用意される。S2、S3及びS4は、それぞれが互いに異なる処理容器120の内部で実施されてもよいし、任意の組合せの2つ以上の処理が同じ処理容器120の内部で連続的に実施されてもよい。後者の場合、ガス供給装置150は、処理の順番に従って、複数種類の処理ガスを、予め設定された順番で基板10に対して供給する。
【0058】
ガス供給装置150は、例えば、ガス供給管151を介して処理容器120と接続される。ガス供給装置150は、処理ガスの供給源と、各供給源から個別にガス供給管151まで延びる個別配管と、個別配管の途中に設けられる開閉バルブと、個別配管の途中に設けられる流量制御器とを有する。開閉バルブが個別配管を開くと、供給源からガス供給管151に処理ガスが供給される。その供給量は流量制御器によって制御される。一方、開閉バルブが個別配管を閉じると、供給源からガス供給管151への処理ガスの供給が停止される。
【0059】
ガス供給管151は、ガス供給装置150から供給される処理ガスを、処理容器120の内部に供給する。ガス供給管151は、ガス供給装置150から供給される処理ガスを、例えばシャワーヘッド152に供給する。
【0060】
シャワーヘッド152は、基板保持部130の上方に設けられる。シャワーヘッド152は、内部に空間153を有し、空間153に溜めた処理ガスを多数のガス吐出孔154から鉛直下方に向けて吐出する。シャワー状の処理ガスが、基板10に対して供給される。
【0061】
ガス排出装置160は、処理容器120の内部からガスを排出する。ガス排出装置160は、排気管163を介して処理容器120と接続される。ガス排出装置160は、真空ポンプなどの排気源161と、圧力制御器162とを有する。排気源161を作動させると、処理容器120の内部からガスが排出される。処理容器120の内部の気圧は、圧力制御器162によって制御される。圧力制御器162は、例えばバルブの開度を制御することにより、処理容器120の内部の気圧を制御する。バルブの開度が大きいほど、処理容器120の内部の気圧が低くなる。
【0062】
制御装置180は、例えばコンピュータで構成され、CPU(Central Processing Unit)181と、メモリなどの記憶媒体182とを備える。記憶媒体182には、成膜装置100において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御装置180は、記憶媒体182に記憶されたプログラムをCPU181に実行させることにより、成膜装置100の動作を制御する。また、制御装置180は、入力インターフェース183と、出力インターフェース184とを備える。制御装置180は、入力インターフェース183で外部からの信号を受信し、出力インターフェース184で外部に信号を送信する。
【0063】
制御装置180は、
図1に示す成膜方法を実施するように、ガス供給装置150、ガス排出装置160、及び搬送装置170を制御する。制御装置180は、温調器140、及び光源142も制御する。
【0064】
なお、
図1に示す処理S2、S3及びS4は、全てが同一の処理容器120の内部で実施されなくてもよく、全てが異なる処理容器120の内部で実施されてもよいし、2つ(例えばS2とS3)のみが同一の処理容器120の内部で実施されてもよい。
【0065】
以上、本開示に係る成膜方法及び成膜装置の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0066】
10 基板
11 金属膜
12 酸化被膜
13 絶縁性膜
14 下地基板
20 疎水性膜
30 第2絶縁性膜
100 成膜装置
120 処理容器
130 基板保持部
150 ガス供給装置
160 ガス排出装置
170 搬送装置
180 制御装置