IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京応化工業株式会社の特許一覧

特許7195331レジスト組成物及びレジストパターン形成方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】レジスト組成物及びレジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20221216BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20221216BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20221216BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20221216BHJP
   C07D 333/46 20060101ALI20221216BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/038 601
G03F7/039 601
G03F7/004 501
C09K3/00 K
C07D333/46
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020546850
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2019033946
(87)【国際公開番号】W WO2020054449
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2020-11-13
(31)【優先権主張番号】10-2018-0110032
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】中村 剛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽介
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュンヨプ
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-141455(JP,A)
【文献】特開2013-011870(JP,A)
【文献】国際公開第2010/123066(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/092760(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
C09K 3/00
C07D 333/46
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光により酸を発生し、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)、
露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)、及び
2-ヒドロキシイソ酪酸メチルを混合した混合溶剤(S)
を含有し、
前記基材成分(A)は、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含有する構成単位(a1)と、ラクトン含有環式基を有する構成単位(a2)とからなる共重合体を含有し、
前記酸発生剤成分(B)は、下記式(b1)で表される化合物(B1)を含有し、
前記混合溶剤(S)が、2-ヒドロキシイソ酪酸メチルを5重量%以上40重量%以下含有する、レジスト組成物。
【化1】
[式中、Rb1は、置換基を有していてもよいアリール基である。Rb2及びRb3は、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基である。Rb2とRb3とは互いに結合して環構造を形成していてもよい。Lb1、Lb2及びLb3は、それぞれ独立に、2価の連結基又は単結合である。Xは、対アニオンである。]
【請求項2】
前記混合溶剤(S)が、2-ヒドロキシイソ酪酸メチルを10重量%以上35重量%以下含有する、請求項1に記載のレジスト組成物。
【請求項3】
支持体上に、請求項1又は2に記載のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を含む、レジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト組成物及びレジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法に関する。
本願は、2018年9月14日に大韓民国に出願された、韓国特許出願第10-2018-0110032号に基づき優先権主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
基板上に微細なパターンを形成し、これをマスクとしてエッチングを行うことにより該パターンの下層を加工する技術(パターン形成技術)は、半導体素子や液晶表示素子の製造において広く採用されている。微細なパターンは、通常、有機材料からなるレジスト組成物を用いて、リソグラフィー法やナノインプリント法等の技術によって形成される。例えば、リソグラフィー法においては、基板等の支持体上に、樹脂等の基材成分を含むレジスト材料を用いてレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対して、ArF露光装置、電子線描画装置、EUV露光装置等の露光装置を用いて選択的露光を行い、現像処理を行うことにより、前記レジスト膜に所定形状のレジストパターンを形成する工程が行われる。そして、該レジストパターンをマスクとして、基板をエッチングによって加工する工程を経て、半導体素子等が製造される。
前記レジスト材料は、ポジ型とネガ型とに分けられ、露光された部分の現像液に対する溶解性が増大するレジスト材料をポジ型、露光部分の現像液に対する溶解性が減少するレジスト材料をネガ型という。
【0003】
前記現像液としては、通常、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液等のアルカリ水溶液(アルカリ現像液)が用いられている。また、芳香族系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤等の有機溶剤を現像液として用いることも行われている。
【0004】
近年、リソグラフィー技術の進歩によってパターンの微細化が進んでいる。
微細化の手法としては、一般的に、露光光源の短波長化(高エネルギー化)が行われている。具体的には、従来は、g線、i線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、KrFエキシマレーザーやArFエキシマレーザーを用いた半導体素子の量産が開始されている。また、これらのエキシマレーザーよりも短波長(高エネルギー)のEB(電子線)、EUV(極紫外線)、X線等についても検討が行われている。
【0005】
露光光源の短波長化に伴い、レジスト材料には、露光光源に対する感度、微細なパターンを再現できる解像性等のリソグラフィー特性の向上が求められる。かかる要求を満たすレジスト材料として、化学増幅型レジスト組成物が知られている。
化学増幅型レジスト組成物としては、一般的に、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分と、露光により酸を発生する酸発生剤成分と、を含有するものが用いられている。例えば、現像液がアルカリ現像液(アルカリ現像プロセス)の場合、基材成分として、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大するものが用いられている。
【0006】
従来、化学増幅型レジスト組成物の基材成分としては、主に樹脂(ベース樹脂)が用いられている。現在、ArFエキシマレーザーリソグラフィー等において用いられる化学増幅型レジスト組成物のベース樹脂としては、193nm付近における透明性に優れることから、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を主鎖に有する樹脂(アクリル系樹脂)が主流である。
化学増幅型レジスト組成物のベース樹脂は、一般的に、リソグラフィー特性等の向上のために、複数種類の構成単位を有している。ここで、ベース樹脂がアクリル系樹脂の場合、より優れた溶解性を有するようにするために、特定の溶媒を用いることが研究されてきた。
【0007】
例えば、樹脂の溶解性を改善するために、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル及び3-メトキシ-1-ブタノールからなる群より選択された少なくとも1種を含有する溶剤、特定の重合単位を有する樹脂、及び酸発生剤を含有するレジスト組成物を用いることが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0008】
また、塗布性、レジスト溶剤に対する溶解性に優れたレジスト組成物を提供するために、アミド構造を有する特定の有機溶剤成分(S)を含有するレジスト組成物を用いることが知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0009】
また、超薄膜のレジスト膜において、リソグラフィー特性を向上させるために、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで構成された有機溶剤成分;プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、乳酸エチル又はアニソールのいずれか1種以上で構成された有機溶剤成分;及び特定のアセテート化合物、特定のプロピレングリコールアルキルエーテル化合物、特定のジエチレングリコールアルキル化合物、及び特定のケトン化合物のいずれか1種以上で構成された有機溶剤成分を含有する、溶剤成分(S)を含有するレジスト組成物を用いることが知られている(例えば、特許文献3を参照)。
【0010】
しかし、従来のレジスト組成物を用いる場合、臨界寸法(Critical Dimension、CD)の変動やレジストパターンの形状は十分に良好であると見られなかった。前記CDは、半導体デバイスの製造中に形成され得る最も小さい幾何学的フィーチャー(feature)の寸法(相互接続(interconnect)ライン、コンタクト(contact)、トレンチ(trench)等の幅)を意味するものである。
したがって、溶解性に優れていながらも、CDの変動が少なく、形状が良好なレジストパターンを形成することができるレジスト組成物が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】日本国特許第3890989号公報
【文献】日本国特開2015-68855号公報
【文献】日本国特開2010-152068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記事情を勘案してなされたものであり、溶解性に優れていながらも、CDの変動が少なく、形状が良好なレジストパターンを形成することができるレジスト組成物及び該レジスト組成物を用いるレジストパターン形成方法を提供することを課題とする。
【課題の解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、検討を重ねた結果、レジスト組成物が、特定の酸発生剤及び混合溶剤を含む場合、前記課題を解決することができる点を見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明の第1の様態は、露光により酸を発生し、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)、及び下記式(s1)で表される有機溶剤(S1)を混合した混合溶剤(S)を含有し、前記酸発生剤成分(B)は、下記式(b1)で表される化合物(B1)を含有することを特徴とする、レジスト組成物である。
【0015】
【化1】
[式中、Rb1は、置換基を有していてもよいアリール基である。Rb2及びRb3は、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基である。Rb2とRb3とは互いに結合して環構造を形成していてもよい。Lb1、Lb2及びLb3は、それぞれ独立に、2価の連結基又は単結合である。Xは、対アニオンである。]
【0016】
【化2】
[式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基である。]
本発明の第2の様態は、支持体上に、前記本発明の第1の様態のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を含む、レジストパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、溶解性に優れていながらも、CDの変動が少なく、形状が良好なレジストパターンを形成することができるレジスト組成物及び該レジスト組成物を用いるレジストパターン形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」又は「フッ素化アルキレン基」は、アルキル基又はアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「2価の連結基」は、置換基を有していてもよい2価の飽和又は不飽和炭化水素基、ヘテロ原子を包含する2価の連結基等をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステル」は、アクリル酸(CH=CH-COOH)のカルボキシ基末端の水素原子が有機基で置換された化合物である。
アクリル酸エステルは、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該α位の炭素原子に結合した水素原子を置換する置換基(Rα)は、水素原子以外の原子又は基であり、例えば、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。また、アクリル酸エステルのα位の炭素原子とは、特に断りがない限り、カルボニル基が結合している炭素原子のことをいう。
以下、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されたアクリル酸エステルをα置換アクリル酸エステルということがある。また、アクリル酸エステルとα置換アクリル酸エステルを包括して「(α置換)アクリル酸エステル」ということがある。
「ヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構成単位」とは、ヒドロキシスチレン若しくはヒドロキシスチレン誘導体のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「ヒドロキシスチレン誘導体」とは、ヒドロキシスチレンのα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基で置換されたもの、並びにそれらの誘導体を包含する概念とする。それらの誘導体としては、α位の水素原子が置換基で置換されていてもよいヒドロキシスチレンの水酸基の水素原子を有機基で置換したもの、α位の水素原子が置換基で置換されていてもよいヒドロキシスチレンのベンゼン環に水酸基以外の置換基が結合したもの等が挙げられる。なお、α位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことをいう。
ヒドロキシスチレンのα位の水素原子を置換する置換基としては、前記α置換アクリル酸エステルにおいて、α位の置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
「ビニル安息香酸若しくはビニル安息香酸誘導体から誘導される構成単位」とは、ビニル安息香酸若しくはビニル安息香酸誘導体のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「ビニル安息香酸誘導体」とは、ビニル安息香酸のα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基で置換されたもの、並びにそれらの誘導体を包含する概念とする。それらの誘導体としては、α位の水素原子が置換基で置換されていてもよいビニル安息香酸のカルボキシ基の水素原子を有機基で置換したもの、α位の水素原子が置換基で置換されていてもよいビニル安息香酸のベンゼン環に水酸基及びカルボキシ基以外の置換基が結合したもの等が挙げられる。なお、α位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことをいう。
「スチレン誘導体」とは、スチレンのα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基で置換されたものを意味する。
「スチレンから誘導される構成単位」、「スチレン誘導体から誘導される構成単位」とは、スチレン又はスチレン誘導体のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
前記α位の置換基としてのアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、炭素数1~5のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基)等が挙げられる。
また、α位の置換基としてのハロゲン化アルキル基は、具体的には、前記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換した基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
また、α位の置換基としてのヒドロキシアルキル基は、具体的には、前記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部又は全部を水酸基で置換した基が挙げられる。該ヒドロキシアルキル基における水酸基の数は、1~5が好ましく、1が最も好ましい。
「置換基を有していてもよい」と記載する場合、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH-)を2価の基で置換する場合との両方を包含する。
「露光」は、放射線の照射全般を包含する概念とする。
【0019】
<レジスト組成物>
本発明の第1の様態は、露光により酸を発生し、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)、及び下記式(s1)で表される有機溶剤(S1)を混合した混合溶剤(S)を含有し、前記酸発生剤成分(B)は、下記式(b1)で表される化合物(B1)を含有することを特徴とする、レジスト組成物である。
【0020】
【化3】
[式中、Rb1は、置換基を有していてもよいアリール基である。Rb2及びRb3は、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基である。Rb2とRb3とは互いに結合して環構造を形成していてもよい。Lb1、Lb2及びLb3は、それぞれ独立に、2価の連結基又は単結合である。Xは、対アニオンである。]
【0021】
【化4】
[式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基である。]
【0022】
本発明において、レジスト組成物は、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)(以下、「(A)成分」ともいう。)を含有する。
かかるレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対して選択的露光を行うと、露光部では、酸が発生し、該酸の作用により(A)成分の現像液に対する溶解性が変化する一方で、未露光部では、(A)成分の現像液に対する溶解性が変化しないため、露光部と未露光部との間で現像液に対する溶解性の差が生じる。そのため、該レジスト膜を現像すると、当該レジスト組成物がポジ型の場合は、露光部が溶解除去されてポジ型レジストパターンが形成され、当該レジスト組成物がネガ型の場合は、未露光部が溶解除去されてネガ型レジストパターンが形成される。
本明細書においては、露光部が溶解除去されてポジ型レジストパターンを形成するレジスト組成物をポジ型レジスト組成物といい、未露光部が溶解除去されてネガ型レジストパターンを形成するレジスト組成物をネガ型レジスト組成物という。
本発明において、レジスト組成物は、ポジ型レジスト組成物であってもよく、ネガ型レジスト組成物であってもよい。なお、本発明のレジスト組成物は、デュアルトーン現像(DTD)工程に用いられ得る。
また、本発明において、レジスト組成物は、レジストパターン形成時の現像処理にアルカリ現像液を用いるアルカリ現像プロセス用であってもよく、該現像処理に有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)を用いる溶剤現像プロセス用であってもよいが、溶剤現像プロセス用であることが好ましい。
【0023】
レジストパターンを形成するために用いるレジスト組成物は、露光により酸を発生する酸発生能を有するものであって、酸発生剤成分(B)を含有するものであり、(A)成分は露光により酸を発生するものであってもよい。
(A)成分が露光により酸を発生するものである場合、(A)成分は、「露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分」となる。(A)成分が露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分である場合、後述の(A1)成分が、露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する高分子化合物であることが好ましい。かかる高分子化合物としては、露光により酸を発生する構成単位を有する樹脂を用いることができる。露光により酸を発生する構成単位としては、公知のものを用いることができる。
本発明において、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)について、次のように叙述する。
【0024】
[基材成分:(A)成分]
本発明において、「基材成分」とは、膜形成能を有する有機化合物であり、好ましくは分子量が500以上の有機化合物が用いられる。該有機化合物の分子量が500以上であることにより、膜形成能が向上し、これに加えて、ナノレベルの感光性樹脂パターンを形成しやすい。
基材成分として用いられる有機化合物は、非重合体と重合体とに大別される。
非重合体としては、通常、分子量が500以上4000未満のものが用いられる。以下、「低分子化合物」という場合は、分子量が500以上4000未満の非重合体を示す。
重合体としては、通常、分子量が1000以上のものが用いられる。以下、「樹脂」という場合は、分子量が1000以上の重合体を示す。
重合体の分子量としては、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の質量平均分子量を用いるものとする。
(A)成分としては、樹脂を用いてもよく、低分子化合物を用いてもよく、これらを併用してもよい。
【0025】
(A)成分は、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するものである。
また、本発明において、(A)成分は、露光により酸を発生するものであってもよい。
本発明において、(A)成分は、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含有する構成単位(以下、「構成単位(a1)」ということがある。)及び-SO-含有環式基、ラクトン含有環式基、カーボネート含有環式基又はこれら以外の複素環式基を有する構成単位(以下、「構成単位(a2)」ということがある。)、極性基含有脂肪族炭化水素基を含有する構成単位(以下、「構成単位(a3)」ということがある。)を有する高分子化合物(A1)を含有していることが好ましい。
【0026】
(構成単位(a1))
構成単位(a1)は、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含有する構成単位である。
「酸分解性基」は、酸の作用により、当該酸分解性基の構造中の少なくとも一部の結合が開裂し得る酸分解性を有する基である。
酸の作用により極性が増大する酸分解性基としては、例えば、酸の作用により分解して極性基を生成する基が挙げられる。
極性基としては、例えば、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基(-SOH)等が挙げられる。これらの中でも、スルホン酸基又は構造中に-OHを含有する極性基(以下、「OH含有極性基」ということがある。)が好ましく、スルホン酸基、カルボキシ基、又は水酸基が好ましく、カルボキシ基又は水酸基が特に好ましい。
【0027】
酸分解性基としてより具体的には、前記極性基が酸解離性基で保護された基(例えば、OH含有極性基の水素原子を酸解離性基で保護した基)が挙げられる。
ここで、「酸解離性基」とは、
(i)酸の作用により、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る酸解離性を有する基、又は、
(ii)酸の作用により一部の結合が開裂した後、さらに脱炭酸反応が生じることにより、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る基、
の双方のことをいう。
酸分解性基を構成する酸解離性基は、当該酸解離性基の解離によって生成する極性基よりも極性が低い基である必要があり、これにより、酸の作用により該酸解離性基が解離した際に、該酸解離性基よりも極性の高い極性基が生成し、極性が増大する。その結果、(A1)成分全体の極性が増大する。極性が増大することにより、相対的に現像液に対する溶解性が変化し、現像液が有機系現像液の場合には溶解性が減少する。
【0028】
酸解離性基としては、特に限定されず、これまで化学増幅型レジスト用のベース樹脂の酸解離性基として提案されているものを用いることができる。
前記極性基のうち、カルボキシ基又は水酸基を保護する酸解離性基としては、例えば、下記式(a1-r-1)で表される酸解離性基(以下、便宜上「アセタール型酸解離性基」ということがある。)が挙げられる。
【0029】
【化5】
[式中、Ra’、Ra’は、水素原子又はアルキル基、Ra’は、炭化水素基を示し、Ra’は、Ra’、Ra’のいずれかと結合して環を形成してもよい。*は、結合位置を意味する。]
【0030】
式(a1-r-1)中、Ra’、Ra’のアルキル基としては、前記α置換アクリル酸エステルについての説明で、α位の炭素原子に結合してもよい置換基として例示したアルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0031】
Ra’の炭化水素基としては、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジメチルエチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられる。
【0032】
Ra’が環状の炭化水素基となる場合、脂肪族であってもよく、芳香族であってもよく、また、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3~8のものが好ましく、具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7~12のものが好ましく、具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0033】
芳香族炭化水素基となる場合、含まれる芳香環として具体的には、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環;等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
該芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環から水素原子を1個除いた基(アリール基);前記アリール基の水素原子の1個がアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基);等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0034】
Ra’がRa’、Ra’のいずれかと結合して環を形成する場合、該環式基としては、4~7員環が好ましく、4~6員環がより好ましい。該環式基の具体例としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。
【0035】
前記極性基のうち、カルボキシ基を保護する酸解離性基としては、例えば、下記式(a1-r-2)で表される酸解離性基が挙げられる(下記式(a1-r-2)で表される酸解離性基のうち、アルキル基により構成されるものを、以下、便宜上「第3級アルキルエステル型酸解離性基」ということがある。)。
【0036】
【化6】
[式中、Ra’~Ra’は、炭化水素基であり、Ra’、Ra’は、互いに結合して環を形成してもよい。*は、結合位置を意味する。]
【0037】
式(a1-r-2)中、Ra’~Ra’の炭化水素基としては、前記Ra’と同様のものが挙げられる。Ra’は、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましい。Ra’、Ra’が互いに結合して環を形成する場合、下記式(a1-r2-1)で表される基が挙げられる。
Ra’~Ra’が互いに結合せず、独立した炭化水素基である場合、下記式(a1-r2-2)で表される基が挙げられる。
【0038】
【化7】
[式中、Ra’10は、炭素数1~10のアルキル基、Ra’11は、Ra’10が結合した炭素原子と共に脂肪族環式基を形成する基、Ra’12~Ra’14は、それぞれ独立に、炭化水素基を示す。*は、結合位置を意味する。]
【0039】
式(a1-r2-1)中、Ra’10の炭素数1~10のアルキル基は、式(a1-r-1)におけるRa’の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基として例示した基が好ましい。Ra’11が構成する脂肪族環式基は、式(a1-r-1)におけるRa’の環状のアルキル基として例示した基が好ましい。
【0040】
式(a1-r2-2)中、Ra’12及びRa’14は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、該アルキル基は、式(a1-r-1)におけるRa’の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基として例示した基がより好ましく、炭素数1~5の直鎖状アルキル基であることがさらに好ましく、メチル基又はエチル基であることが特に好ましい。
【0041】
Ra’13は、式(a1-r-1)におけるRa’の炭化水素基として例示した直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であることが好ましい。これらの中でも、Ra’の環状のアルキル基として例示した基であることがより好ましい。
前記式(a1-r2-1)の具体例を以下に挙げる。
【0042】
【化8】
[式中、*は、結合位置を意味する。]
【0043】
前記式(a1-r2-2)の具体例を以下に挙げる。
【0044】
【化9】
[式中、*は、結合位置を意味する。]
【0045】
また、前記極性基のうち水酸基を保護する酸解離性基としては、例えば、下記式(a1-r-3)で表される酸解離性基(以下、便宜上「第3級アルキルオキシカルボニル酸解離性基」ということがある。)が挙げられる。
【0046】
【化10】
[式中、Ra’~Ra’は、アルキル基を示す。*は、結合位置を意味する。]
【0047】
式(a1-r-3)中、Ra’~Ra’は、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、1~3がより好ましい。
また、各アルキル基の合計の炭素数は、3~7であることが好ましく、3~5であることがより好ましく、3~4であることが最も好ましい。
【0048】
酸分解性基を有する構成単位としては、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含有する構成単位;ヒドロキシスチレン若しくはヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構成単位の水酸基における水素原子の少なくとも一部が前記酸分解性基を含有する置換基により保護された構成単位;ビニル安息香酸若しくはビニル安息香酸誘導体から誘導される構成単位の-C(=O)-OHにおける水素原子の少なくとも一部が前記酸分解性基を含有する置換基により保護された構成単位等が挙げられる。
【0049】
構成単位(a1)としては、前記の中でも、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位が好ましい。
構成単位(a1)として、下記式(a1-1)又は(a1-2)で表される構成単位が好ましい。
【0050】
【化11】
[式中、Rは水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基であり、Vaはエーテル結合、ウレタン結合、又はアミド結合を有していてもよい2価の炭化水素基であり、na1は0~2であり、Raは前記式(a1-r-1)~(a1-r-2)で表される酸解離性基である。Waはna2+1価の炭化水素基であり、na2は1~3であり、Raは前記式(a1-r-1)又は(a1-r-3)で表される酸解離性基である。]
【0051】
前記式(a1-1)及び(a1-2)中、Rの炭素数1~5のアルキル基は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
炭素数1~5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素数1~5のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
Rとしては、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子又はメチル基が最も好ましい。
【0052】
前記式(a1-1)中、Vaの炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。Vaにおける2価の炭化水素基としての脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
【0053】
該脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含有する脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
また、Vaとしては、前記2価の炭化水素基がエーテル結合、ウレタン結合、又はアミド結合を介して結合したものが挙げられる。
【0054】
前記直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1~10であることが好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基等のアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0055】
前記構造中に環を含有する脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基等が挙げられる。前記直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては前記と同様のものが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素数が3~20であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては炭素数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては炭素数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0056】
芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。
前記Vaにおける2価の炭化水素基としての芳香族炭化水素基は、炭素数が3~30であることが好ましく、5~30であることがより好ましく、5~20がさらに好ましく、6~15が特に好ましく、6~10が最も好ましい。ただし、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環;等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
該芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環から水素原子を2個除いた基(アリーレン基);前記芳香族炭化水素環から水素原子を1個除いた基(アリール基)の水素原子の1個がアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1個除いた基);等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0057】
前記式(a1-2)中、Waにおけるna2+1価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。該脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味し、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。前記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含有する脂肪族炭化水素基、或いは直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基と構造中に環を含有する脂肪族炭化水素基とを組み合わせた基が挙げられ、具体的には、上述の式(a1-1)のVaと同様の基が挙げられる。
前記na2+1価は、2~4価が好ましく、2又は3価がより好ましい。
前記式(a1-2)としては、特に、下記式(a1-2-01)で表される構成単位が好ましい。
【0058】
【化12】
[式(a1-2-01)中、Raは前記式(a1-r-1)又は(a1-r-3)で表される酸解離性基である。na2は1~3の整数であり、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。cは0~3の整数であり、0又は1であることが好ましく、1であることがより好ましい。Rは前記と同様である。]
【0059】
以下に前記式(a1-1)、(a1-2)の具体例を示す。以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
【0060】
【化13】
【0061】
【化14】
【0062】
【化15】
【0063】
【化16】
【0064】
【化17】
【0065】
(A)成分中の構成単位(a1)の割合は、(A)成分を構成する全構成単位に対し、20~80モル%が好ましく、20~75モル%がより好ましく、25~70モル%がさらに好ましい。下限値以上とすることにより、感度、解像性、LWR等のリソグラフィー特性も向上する。また、上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0066】
(構成単位(a2))
本発明において、(A)成分に含有される高分子化合物(A1)は、-SO-含有環式基、ラクトン含有環式基、カーボネート含有環式基又はこれら以外の複素環式基を有する構成単位(a2)を含有することができる。
構成単位(a2)の-SO-含有環式基、ラクトン含有環式基、カーボネート含有環式基又はこれら以外の複素環式基は、(A)成分をレジスト膜の形成に用いた場合に、レジスト膜の基板への密着性を高めるか、水を含有する現像液との親和性を高めるうえで有効である。
なお、構成単位(a1)がその構造中に-SO-含有環式基、ラクトン含有環式基、カーボネート含有環式基又はこれら以外の複素環式基を有するものである場合、該構成単位は構成単位(a2)にも該当するが、このような構成単位は構成単位(a1)に該当し、構成単位(a2)には該当しないものとする。
構成単位(a2)は、下記式(a2-1)で表される構成単位であることが好ましい。
【0067】
【化18】
[式中、Rは水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基であり、Ya21は単結合又は2価の連結基であり、La21は-O-、-COO-、-CON(R’)-、-OCO-、-CONHCO-又は-CONHCS-であり、R’は水素原子又はメチル基を示す。ただし、La21が-O-の場合、Ya21は-CO-にはならない。Ra21は-SO-含有環式基、ラクトン含有環式基、カーボネート含有環式基又はこれら以外の複素環式基である。]
【0068】
前記式(a2-1)中、Ra21は-SO-含有環式基、ラクトン含有環式基、複素環式基又はカーボネート含有環式基であることが好ましい。
「-SO-含有環式基」とは、その環骨格中に-SO-を含む環を含有する環式基を示し、具体的には、-SO-における硫黄原子(S)が環式基の環骨格の一部を形成する環式基である。その環骨格中に-SO-を含有する環をひとつ目の環として数え、該環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。-SO-含有環式基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。
-SO-含有環式基は、特に、その環骨格中に-O-SO-を含有する環式基、すなわち-O-SO-中の-O-S-が環骨格の一部を形成するスルトン(sultone)環を含有する環式基であることが好ましい。-SO-含有環式基として、より具体的には、下記式(a5-r-1)~(a5-r-4)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0069】
【化19】
[式中、Ra’51は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基又はシアノ基であり;R”は、水素原子又はアルキル基であり;A”は、酸素原子若しくは硫黄原子を含有していてもよい炭素数1~5のアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子であり、n’は、0~2の整数であり;*は、結合位置を意味する。]
【0070】
前記式(a5-r-1)~(a5-r-4)中、A”は、後述の式(a2-r-1)~(a2-r-7)中のA”と同様である。Ra’51におけるアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基としては、後述の式(a2-r-1)~(a2-r-7)中のRa’21と同様である。
下記に式(a5-r-1)~(a5-r-4)でそれぞれ表される基の具体例を挙げる。式中の「Ac」は、アセチル基を示す。
【0071】
【化20】
【0072】
【化21】
【0073】
【化22】
[式中、*は、結合位置を意味する。]
【0074】
本発明において、構成単位(a2)が-SO-含有環式基を含有する場合、-SO-含有環式基を含有するアクリル酸エステルモノマーのlogP値が1.2未満であれば特に限定されないが、前記の中でも、前記式(a5-r-1)で表される基が好ましく、前記式(r-sl-1-1)、(r-sl-1-18)、(r-sl-3-1)及び(r-sl-4-1)のいずれかで表される基からなる群より選択される少なくとも1種を用いることがより好ましく、前記式(r-sl-1-1)で表される基が最も好ましい。
【0075】
「ラクトン含有環式基」とは、その環骨格中に-O-C(=O)-を含む環(ラクトン環)を含有する環式基を示す。ラクトン環をひとつ目の環として数え、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。ラクトン含有環式基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。
ラクトン含有環式基としては、特に限定されず、任意のものが使用可能である。具体的には、下記式(a2-r-1)~(a2-r-7)で表される基が挙げられる。
【0076】
【化23】
[式中、Ra’21は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基又はシアノ基であり;R”は、水素原子又はアルキル基であり;A”は、酸素原子若しくは硫黄原子を含有していてもよい炭素数1~5のアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子であり、n’は、0~2の整数であり、m’は、0又は1であり;*は、結合位置を意味する。]
【0077】
前記式(a2-r-1)~(a2-r-7)中、A”は、酸素原子(-O-)若しくは硫黄原子(-S-)を含有していてもよい炭素数1~5のアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子である。A”における炭素数1~5のアルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。該アルキレン基が酸素原子又は硫黄原子を含有する場合、その具体例としては、前記アルキレン基の末端又は炭素原子間に-O-又は-S-が介在する基が挙げられ、例えば、-O-CH-、-CH-O-CH-、-S-CH-、-CH-S-CH-等が挙げられる。A”としては、炭素数1~5のアルキレン基又は-O-が好ましく、炭素数1~5のアルキレン基がより好ましく、メチレン基が最も好ましい。Ra’21は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基又はシアノ基である。
【0078】
Ra’21におけるアルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
Ra’21におけるアルコキシ基としては、炭素数1~6のアルコキシ基が好ましい。該アルコキシ基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、前記Ra’21におけるアルキル基として例示したアルキル基と酸素原子(-O-)とが連結した基が挙げられる。
Ra’21におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
Ra’21におけるハロゲン化アルキル基としては、前記Ra’21におけるアルキル基の水素原子の一部又は全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン化アルキル基としては、フッ素化アルキル基が好ましく、特にパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0079】
下記に式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表される基の具体例を挙げる。
【0080】
【化24】
【0081】
【化25】
[式中、*は、結合位置を意味する。]
【0082】
本発明において、構成単位(a2)は、前記式(a2-r-1)又は(a2-r-2)でそれぞれ表される基が好ましく、前記式(r-lc-1-1)又は(r-lc-2-7)でそれぞれ表される基がより好ましい。
【0083】
「カーボネート含有環式基」とは、その環骨格中に-O-C(=O)-O-を含む環(カーボネート環)を含有する環式基を示す。カーボネート環をひとつ目の環として数え、カーボネート環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。カーボネート含有環式基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。
具体的には、下記式(ax3-r-1)~(ax3-r-3)で表される基が挙げられる。
【0084】
【化26】
[式中、Ra’x31は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基又はシアノ基であり;R”は、水素原子又はアルキル基であり;A”は、酸素原子若しくは硫黄原子を含有していてもよい炭素数1~5のアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子であり、q’は、0又は1であり;*は、結合位置を意味する。]
【0085】
前記式(ax3-r-1)~(ax3-r-3)中、A”の具体例は、前記式(a2-r-1)~(a2-r-7)中のA”と同様である。Ra’x31におけるアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基としては、それぞれ前記式(a2-r-1)~(a2-r-7)中のRa’21に関する説明で例示したものと同様のものが挙げられる。
下記に式(ax3-r-1)~(ax3-r-3)で表される基の具体例を挙げる。
【0086】
【化27】
[式中、*は、結合位置を意味する。]
【0087】
「複素環式基」とは、炭素に加えて1個以上の炭素以外の原子を含む環式基をいい、下記(r-hr-1)~(r-hr-16)にそれぞれ例示する複素環式基や、窒素含有複素環等が挙げられる。窒素含有複素環式基としては、1個又は2個のオキソ基で置換されていてもよい炭素数3~8のシクロアルキル基が挙げられる。該シクロアルキル基としては、例えば、2,5-ジオキソピロリジンや、2,6-ジオキソピペリジンを好適なものとして例示することができる。
【0088】
【化28】
[式中、*は、結合位置を意味する。]
【0089】
前記構成単位(a2)は、ラクトン含有環式基を有することが好ましく、前記式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基を有することがより好ましい。
ラクトン含有環式基を有する構成単位(a2)の具体例を以下に挙げる。以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0090】
【化29】
【0091】
高分子化合物(A1)成分が構成単位(a2)を有する場合、高分子化合物(A1)成分が有する構成単位(a2)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
構成単位(a2)の割合は、当該(A)成分を構成する全構成単位の合計に対し、1~60モル%であることが好ましく、5~50モル%であることがより好ましい。
構成単位(a2)の割合を下限値以上とすることにより、構成単位(a2)を含有させることによる効果が十分に得られ、上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとることができ、各種のリソグラフィー特性及びパターン形状が良好となる。
【0092】
(構成単位(a3))
構成単位(a3)は、極性基含有脂肪族炭化水素基を含有する構成単位(ただし、上述の構成単位(a1)、(a2)に該当するものを除く)である。
高分子化合物(A1)成分が構成単位(a3)を有することにより、基材成分(A)の親水性が高まり、解像性の向上に寄与すると考えられる。
極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基等が挙げられ、特に水酸基が好ましい。
【0093】
脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基(好ましくはアルキレン基)や、環状の脂肪族炭化水素基(環式基)が挙げられる。該環式基としては、単環式基であってもよく、多環式基であってもよく、例えば、ArFエキシマレーザー用レジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。該環式基としては、多環式基であることが好ましく、炭素数は7~30であることがより好ましい。
その中でも、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、又はアルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基を含有する脂肪族多環式基を含有するアクリル酸エステルから誘導される構成単位がより好ましい。該多環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等から2個以上の水素原子を除いた基等を例示することができる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基等を例示することができる。これらの多環式基の中でも、アダマンタンから2個以上の水素原子を除いた基、ノルボルナンから2個以上の水素原子を除いた基、テトラシクロドデカンから2個以上の水素原子を除いた基が工業上好ましい。
【0094】
構成単位(a3)としては、極性基含有脂肪族炭化水素基を含有するものであれば特に限定されず、任意のものが使用可能である。
構成単位(a3)としては、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって、極性基含有脂肪族炭化水素基を含有する構成単位が好ましい。
【0095】
構成単位(a3)としては、極性基含有脂肪族炭化水素基における炭化水素基が炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基のときは、アクリル酸のヒドロキシエチルエステルから誘導される構成単位が好ましく、該炭化水素基が多環式基のときは、下記式(a3-1)乃至式(a3-5)で表される構成単位が好ましく、下記式(a3-1)で表される構成単位がより好ましい。
【0096】
【化30】
[式中、Rは前記と同様であり、jは1~3の整数であり、kは1~3の整数であり、t’は1~3の整数であり、lは1~5の整数であり、sは1~3の整数である。]
【0097】
式(a3-1)中、jは1又は2であることが好ましく、1であることがさらに好ましい。jが2の場合、水酸基が、アダマンチル基の3位と5位に結合していることが好ましい。jが1の場合、水酸基が、アダマンチル基の3位に結合していることが好ましい。
jは1であることが好ましく、特に、水酸基が、アダマンチル基の3位に結合していることが好ましい。
式(a3-2)中、kは1であることが好ましい。シアノ基は、ノルボルニル基の5位又は6位に結合していることが好ましい。
式(a3-3)中、t’は1であることが好ましい。lは1であることが好ましい。sは1であることが好ましい。これらは、アクリル酸のカルボキシ基の末端に、2-ノルボルニル基又は3-ノルボルニル基が結合していることが好ましい。フッ素化アルキルアルコールは、ノルボルニル基の5又は6位に結合していることが好ましい。
【0098】
高分子化合物(A1)成分が含有する構成単位(a3)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
高分子化合物(A1)成分中、構成単位(a3)の割合は、当該樹脂成分(A1)を構成する全構成単位の合計に対し、5~50モル%であることが好ましく、5~40モル%がより好ましく、5~25モル%がさらに好ましい。
構成単位(a3)の割合を下限値以上とすることにより、構成単位(a3)を含有させることによる効果が十分に得られ、上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとりやすくなる。
【0099】
(A1)成分は、前記構成単位(a1)、(a2)、(a3)の他に、以下の構成単位(a4)を有していてもよい。
【0100】
(構成単位(a4))
構成単位(a4)は、酸非解離性環式基を含有する構成単位である。高分子化合物(A1)成分が構成単位(a4)を有することにより、形成されるレジストパターンのドライエッチング耐性が向上する。また、高分子化合物(A1)成分の疎水性が高まる。疎水性の向上は、特に有機溶剤現像の場合に、解像性、レジストパターン形状等の向上に寄与すると考えられる。
【0101】
構成単位(a4)における「酸非解離性環式基」は、露光により後述の(B)成分から酸が発生した際に、該酸が作用しても解離することなくそのまま当該構成単位中に残る環式基である。
構成単位(a4)としては、例えば、酸非解離性の脂肪族環式基を含有するアクリル酸エステルから誘導される構成単位等が好ましい。該環式基は、例えば、前記の構成単位(a1)の場合に例示したものと同様のものを例示することができ、ArFエキシマレーザー用、KrFエキシマレーザー用(好ましくはArFエキシマレーザー用)等のレジスト組成物の樹脂成分に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
特に、トリシクロデシル基、アダマンチル基、テトラシクロドデシル基、イソボルニル基、ノルボルニル基より選択される少なくとも1種であると、工業上入手しやすい等の点で好ましい。これらの多環式基は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を置換基として有していてもよい。
【0102】
構成単位(a4)として具体的には、下記式(a4-1)~(a4-7)の構造のものを例示することができる。
【0103】
【化31】
[式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。]
【0104】
高分子化合物(A1)成分が含有する構成単位(a4)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
構成単位(a4)を高分子化合物(A1)成分に含有させる際、構成単位(a4)の割合は、(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対し、1~30モル%であることが好ましく、10~20モル%であることがより好ましい。
【0105】
高分子化合物(A1)成分は、構成単位(a1)及び(a2)を有するか、構成単位(a1)、(a2)及び(a3)を有する共重合体であることが好ましい。
高分子化合物(A1)成分は、各構成単位を誘導するモノマーを、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソ酪酸ジメチルのようなラジカル重合開始剤を用いた公知のラジカル重合等により重合させることによって得ることができる。
【0106】
また、高分子化合物(A1)成分には、前記重合の際に、例えば、HS-CH-CH-CH-C(CF-OHのような連鎖移動剤を併用して用いることにより、末端に-C(CF-OH基を導入してもよい。このように、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基が導入された共重合体は、現像欠陥の低減やLER(ラインエッジラフネス:ライン側壁の不均一な凹凸)の低減に有効である。
【0107】
本発明において、高分子化合物(A1)成分の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、特に限定されるものではなく、1000~50000が好ましく、1500~30000がより好ましく、2000~20000がさらに好ましく、5000~16000が最も好ましい。この範囲の上限値以下であると、レジストとして用いるのに十分なレジスト溶剤への溶解性があり、この範囲の下限値以上であると、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が良好である。
【0108】
高分子化合物(A1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
基材成分(A)中の高分子化合物(A1)成分の割合は、基材成分(A)の総質量に対し、25質量%以上が好ましく、50質量%がより好ましく、75質量%がさらに好ましく、100質量%であってもよい。該割合が25質量%以上であると、リソグラフィー特性がより向上する。
【0109】
本発明において、(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明において、(A)成分の含有量は、形成しようとするレジスト膜厚等に応じて調整すればよい。
【0110】
[酸発生剤成分:(B)成分]
本発明のレジスト組成物は、レジスト組成物の特性を向上させるために、少なくとも1種の化合物(B)(以下、「(B)成分」という。)を含有する。特に本発明の酸発生剤成分(B)は、溶解性に優れていながらも、CDの変動が少なく、形状が良好なレジストパターンを形成することができるレジスト組成物を提供するために、下記式(b1)で表される化合物(B1)を含む。
【0111】
【化32】
[式中、Rb1は、置換基を有していてもよいアリール基である。Rb2及びRb3は、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基である。Rb2とRb3とは互いに結合して環構造を形成していてもよい。Lb1、Lb2及びLb3は、それぞれ独立に、2価の連結基又は単結合である。Xは、対アニオンである。]
【0112】
前記式(b1)中、Rb1は、置換基を有していてもよいアリール基である。ここで、アリール基は、炭素数6~20のアリール基が挙げられ、フェニル基又はナフチル基が好ましい。Rb1に置換される置換基は、1個以上置換され得、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数1~10のアルコキシ基又はこれらの組み合わせが挙げられる。また、前記置換基とRb1との間には、2価の連結基があってもよく、前記2価の連結基は、-COO-、-CON(R’)-、-OCO-、-CONHCO-又は-CONHCS-となり得る。
【0113】
b2及びRb3は、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基である。ここで、脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味し、より具体的には、炭素数1~10の直鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数が3~10の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は炭素数3~10の環状の脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0114】
b2とRb3とは互いに結合して環構造を形成していてもよく、この場合、形成された環構造には、硫黄原子、窒素原子又は酸素原子より選択されたヘテロ原子が含まれ得る。また、形成された環構造は、追加の環が接した形態であり得、具体的に、炭素数5乃至10のシクロアルカン又はアリール基が接した形態であり得る。例えば、Rb2及びRb3が互いに結合されて形成された環構造に、シクロヘキサン又はベンゼン環が接した形態であり得る。
【0115】
b1、Lb2及びLb3は、それぞれ独立に、2価の連結基又は単結合である。ここで、2価の連結基は、直鎖状又は分岐鎖状の、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルケニレン基、炭素数2~5のアルキニレン基;又は、-O-、-COO-、-CON(R’)-、-OCO-、-CONHCO-、-CONHCS-;又はこれらの結合となり得、このうち、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。
【0116】
は、対アニオンである。これは、酸発生剤成分において通常用いられるアニオンを用いることができ、具体的に、式(b-1)中のアニオン、式(b-2)中のアニオン、又は式(b-3)中のアニオンが挙げられる。これらについては後述する。
【0117】
前記式(b1)中、カチオンの具体例を以下に挙げる。
【化33】
【0118】
また、前記式(b1)中、アニオンの具体例を以下に挙げる。
【0119】
【化34】
【0120】
また、式(b1)で表される化合物(B1)の具体例を以下に挙げる。
【0121】
【化35】
【0122】
一方、(B)成分は、(B1)以外の追加の酸発生剤成分を含有することができる。これは特に限定されず、これまで化学増幅型レジスト用の酸発生剤として提案されているものを用いることができる。
かかる酸発生剤としては、ヨードニウム塩やスルホニウム塩等のオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤;ビスアルキル又はビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類等のジアゾメタン系酸発生剤;ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤等、多種のものが挙げられる。その中でも、オニウム塩系酸発生剤を用いることが好ましい。
オニウム塩系酸発生剤としては、例えば、下記式(b-1)で表される化合物(以下、「(b-1)成分」ともいう。)、式(b-2)で表される化合物(以下、「(b-2)成分」ともいう。)又は式(b-3)で表される化合物(以下、「(b-3)成分」ともいう。)が挙げられる。
【0123】
【化36】
[式中、R101、R104~R108は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。R104、R105は、相互結合して環を形成していてもよい。R102は、フッ素原子又は炭素数1~5のフッ素化アルキル基である。Y101は、単結合又は酸素原子を含む2価の連結基である。V101~V103は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。L101~L102は、それぞれ独立に、単結合又は酸素原子である。L103~L105は、それぞれ独立に、単結合、-CO-又は-SO-である。mは、1以上の整数であって、M’m+は、m価のオニウムカチオンである。]
【0124】
{アニオン部}
・(b-1)成分のアニオン部
式(b-1)中、R101は、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。
【0125】
置換基を有していてもよい環式基:
該環式基は、環状の炭化水素基であることが好ましく、該環状の炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。また、脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
【0126】
101における芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香族炭化水素基の炭素数は3~30であることが好ましく、5~30であることがより好ましく、5~20がさらに好ましく、6~15が特に好ましく、6~10が最も好ましい。ただし、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
101における芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、又はこれらの芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
101における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香環から水素原子を1個除いた基(アリール基:例えば、フェニル基、ナフチル基等)、前記芳香環の水素原子の1個がアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基等)等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0127】
101における環状の脂肪族炭化水素基は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基が挙げられる。
この構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を1個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基等が挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素数が3~20であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3~6のものが好ましく、具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7~30のものが好ましい。その中でも、該ポリシクロアルカンとしては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等の架橋環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカン;ステロイド骨格を有する環式基等の縮合環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカンがより好ましい。
その中でも、R101における環状の脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカン又はポリシクロアルカンから水素原子を1個以上除いた基が好ましく、ポリシクロアルカンから水素原子を1個除いた基がより好ましく、アダマンチル基、ノルボルニル基が特に好ましく、アダマンチル基が最も好ましい。
【0128】
脂環式炭化水素基に結合してもよい、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1~10であることが好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基等のアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0129】
また、R101における環状の炭化水素基は、複素環等のようにヘテロ原子を含んでもよい。具体的には、前記式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、前記式(a5-r-1)~(a5-r-2)でそれぞれ表される-SO-含有多環式基、その他の下記式(r-hr-1)~(r-hr-16)でそれぞれ表される複素環式基が挙げられる。
【0130】
【化37】
[式中、*は、結合位置を意味する。]
【0131】
101の環式基における置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基等が挙げられる。
置換基としてのアルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基が最も好ましい。
置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等の水素原子の一部又は全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
置換基としてのカルボニル基は、環状の炭化水素基を構成するメチレン基(-CH-)を置換する基である。
【0132】
置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基:
101の鎖状のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素数が1~20であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10が最も好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数が3~20であることが好ましく、3~15であることがより好ましく、3~10が最も好ましい。具体的には、例えば、1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基等が挙げられる。
【0133】
置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基:
101の鎖状のアルケニル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよく、炭素数が2~10であることが好ましく、2~5がより好ましく、2~4がさらに好ましく、3が特に好ましい。直鎖状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基等が挙げられる。分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、1-メチルビニル基、2-メチルビニル基、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基等が挙げられる。
鎖状のアルケニル基としては、前記の中でも、直鎖状のアルケニル基が好ましく、ビニル基、プロペニル基がより好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0134】
101の鎖状のアルキル基又はアルケニル基における置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、前記R101における環式基等が挙げられる。
その中でも、R101は、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基が好ましく、置換基を有していてもよい環式基がより好ましく、置換基を有していてもよい環状の炭化水素基であることがさらに好ましい。
その中でも、フェニル基、ナフチル基、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基、前記式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、前記式(a5-r-1)~(a5-r-2)でそれぞれ表される-SO-含有多環式基が好ましく、これらの中でも、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基、前記式(a5-r-1)~(a5-r-2)でそれぞれ表される-SO-含有多環式基がより好ましい。
【0135】
式(b-1)中、Y101は、単結合又は酸素原子を含む2価の連結基である。
101が酸素原子を含む2価の連結基である場合、該Y101は、酸素原子以外の原子を含有してもよい。酸素原子以外の原子としては、例えば、炭素原子、水素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
酸素原子を含む2価の連結基としては、例えば、酸素原子(エーテル結合:-O-)、エステル結合(-C(=O)-O-)、オキシカルボニル基(-O-C(=O)-)、アミド結合(-C(=O)-NH-)、カルボニル基(-C(=O)-)、カーボネート結合(-O-C(=O)-O-)等の非炭化水素系の酸素原子含有連結基;該非炭化水素系の酸素原子含有連結基とアルキレン基との組み合わせ等が挙げられる。この組み合わせに、さらにスルホニル基(-SO-)が連結されていてもよい。かかる酸素原子を含む2価の連結基としては、例えば、下記式(y-al-1)~(y-al-7)でそれぞれ表される連結基が挙げられる。
【0136】
【化38】
[式中、V’101は、単結合又は炭素数1~5のアルキレン基であり、V’102は、炭素数1~30の2価の飽和炭化水素基である。]
【0137】
V’102における2価の飽和炭化水素基は、炭素数1~30のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1~5のアルキレン基であることがさらに好ましい。
V’101及びV’102におけるアルキレン基としては、直鎖状のアルキレン基であってもよく、分岐鎖状のアルキレン基であってもよく、直鎖状のアルキレン基が好ましい。
【0138】
V’101及びV’102におけるアルキレン基として具体的には、メチレン基[-CH-];-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;エチレン基[-CHCH-];-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-等のアルキルエチレン基;トリメチレン基(n-プロピレン基)[-CHCHCH-];-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;テトラメチレン基[-CHCHCHCH-];-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基;ペンタメチレン基[-CHCHCHCHCH-]等が挙げられる。
また、V’101又はV’102における前記アルキレン基における一部のメチレン基が、炭素数5~10の2価の脂肪族環式基で置換されていてもよい。
【0139】
101としては、エステル結合を含む2価の連結基、又はエーテル結合を含む2価の連結基が好ましく、前記式(y-al-1)~(y-al-5)でそれぞれ表される連結基がより好ましく、前記式(y-al-1)~(y-al-3)でそれぞれ表される連結基がさらに好ましい。
【0140】
式(b-1)中、V101は、単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。V101におけるアルキレン基、フッ素化アルキレン基は、炭素数1~4であることが好ましい。V101におけるフッ素化アルキレン基としては、V101におけるアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。その中でも、V101は、単結合、又は炭素数1~4のフッ素化アルキレン基であることが好ましい。
【0141】
式(b-1)中、R102は、フッ素原子又は炭素数1~5のフッ素化アルキル基である。R102は、フッ素原子又は炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。
【0142】
(b-1)成分のアニオン部の具体例としては、例えば、Y101が単結合となる場合、トリフルオロメタンスルホネートアニオンやパーフルオロブタンスルホネートアニオン等のフッ素化アルキルスルホネートアニオンが挙げられ;Y101が酸素原子を含む2価の連結基である場合、下記式(an-1)~(an-3)のいずれかで表されるアニオンが挙げられる。
【0143】
【化39】
[式中、R”101は、置換基を有していてもよい脂肪族環式基、前記式(r-hr-1)~(r-hr-6)でそれぞれ表される基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基であり;R”102は、置換基を有していてもよい脂肪族環式基、前記式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、又は前記式(a5-r-1)~(a5-r-2)でそれぞれ表される-SO-含有多環式基であり;R”103は、置換基を有していてもよい芳香族環式基、置換基を有していてもよい脂肪族環式基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり;v”は、それぞれ独立に、0~3の整数であり、q”は、それぞれ独立に、1~20の整数であり、t”は、1~3の整数であり、n”は、0又は1である。]
【0144】
R”101、R”102及びR”103の置換基を有していてもよい脂肪族環式基は、前記R101における環状の脂肪族炭化水素基として例示した基であることが好ましい。前記置換基としては、R101における環状の脂肪族炭化水素基を置換してもよい置換基と同様のものが挙げられる。
R”103における置換基を有していてもよい芳香族環式基は、前記R101における環状の炭化水素基における芳香族炭化水素基として例示した基であることが好ましい。前記置換基としては、R101における該芳香族炭化水素基を置換してもよい置換基と同様のものが挙げられる。
R”101における置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基は、前記R101における鎖状のアルキル基として例示した基であることが好ましい。R”103における置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基は、前記R101における鎖状のアルケニル基として例示した基であることが好ましい。
【0145】
・(b-2)成分のアニオン部
式(b-2)中、R104、R105は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ、前記式(b-1)中のR101と同様のものが挙げられる。ただし、R104、R105は、相互結合して環を形成していてもよい。
【0146】
104、R105は、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基が好ましく、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のフッ素化アルキル基であることがより好ましい。
該鎖状のアルキル基の炭素数は、1~10であることが好ましく、より好ましくは炭素数1~7、さらに好ましくは炭素数1~3である。R104、R105の鎖状のアルキル基の炭素数は、前記炭素数の範囲内において、レジスト用溶剤への溶解性も良好である等の理由により、小さいほど好ましい。また、R104、R105の鎖状のアルキル基においては、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなり、また、200nm以下の高エネルギー光や電子線に対する透明性が向上するため好ましい。
前記鎖状のアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70~100%、さらに好ましくは90~100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基である。
式(b-2)中、V102、V103は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基、又はフッ素化アルキレン基であり、それぞれ、前記式(b-1)中のV101と同様のものが挙げられる。
【0147】
式(b-2)中、L101、L102は、それぞれ独立に、単結合又は酸素原子である。
【0148】
・(b-3)成分のアニオン部
式(b-3)中、R106~R108は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ、前記式(b-1)中のR101と同様のものが挙げられる。
103~L105は、それぞれ独立に、単結合、-CO-又は-SO-である。
【0149】
{カチオン部}
式(b-1)、(b-2)及び(b-3)中、mは1以上の整数であって、M’m+は、m価のオニウムカチオンであり、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンが好適に挙げられ、下記式(ca-1)~(ca-4)でそれぞれ表される有機カチオンが特に好ましい。
【0150】
【化40】
[式中、R201~R207及びR211~R212は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基、アルキル基又はアルケニル基を示し、R201~R203、R206~R207、R211~R212は、相互結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。R208~R209は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示し、R210は、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は置換基を有していてもよい-SO-含有環式基であり、L201は、-C(=O)-又は-C(=O)-O-を示し、Y201は、それぞれ独立に、アリーレン基、アルキレン基又はアルケニレン基を示し、xは、1又は2であり、W201は、(x+1)価の連結基を示す。]
【0151】
201~R207及びR211~R212におけるアリール基としては、炭素数6~20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
201~R207及びR211~R212におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素数1~30のものが好ましい。
201~R207及びR211~R212におけるアルケニル基としては、炭素数が2~10であることが好ましい。
201~R207及びR210~R212が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、シアノ基、アミノ基、アリール基、下記式(ca-r-1)~(ca-r-7)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0152】
【化41】
[式中、R’201は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。]
【0153】
R’201の置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基は、前述の式(b-1)中のR101と同様のものが挙げられる。加えて、R’201の置換基を有していてもよい環式基又は置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基としては、上述の構成単位(a02-1)又は構成単位(a02-2)における酸解離性基と同様のものも挙げられる。
【0154】
201~R203、R206~R207、R211~R212は、相互結合して式中の硫黄原子と共に環を形成する場合、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子や、カルボニル基、-SO-、-SO-、-SO-、-COO-、-CONH-又は-N(R)-(該Rは、炭素数1~5のアルキル基である。)等の官能基を介して結合してもよい。形成される環としては、式中の硫黄原子をその環骨格に含む1個の環が、硫黄原子を含めて、3~10員環であることが好ましく、5~7員環であることが特に好ましい。形成される環の具体例としては、例えば、チオフェン環、チアゾール環、ベンゾチオフェン環、チアントレン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、9H-チオキサンテン環、チオキサントン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、テトラヒドロチオフェニウム環、テトラヒドロチオピラニウム環等が挙げられる。
【0155】
208~R209は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示し、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基が好ましく、アルキル基となる場合、相互結合して環を形成してもよい。
210は、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は置換基を有していてもよい-SO-含有環式基である。
210におけるアリール基としては、炭素数6~20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
210におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素数1~30のものが好ましい。
210におけるアルケニル基としては、炭素数が2~10であることが好ましい。
210における、置換基を有していてもよい-SO-含有環式基としては、前述の「-SO-含有多環式基」が好ましく、式(a5-r-1)で表される基がより好ましい。
【0156】
201は、それぞれ独立に、アリーレン基、アルキレン基又はアルケニレン基を示す。
201におけるアリーレン基は、前述の式(b-1)中のR101における芳香族炭化水素基として例示したアリール基から水素原子を1個除いた基が挙げられる。
201におけるアルキレン基、アルケニレン基は、前述の式(b-1)中のR101における鎖状のアルキル基、鎖状のアルケニル基として例示した基から水素原子を1個除いた基が挙げられる。
【0157】
前記式(ca-4)中、xは、1又は2である。
201は、(x+1)価、すなわち2価又は3価の連結基である。
201における2価の連結基としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基が好ましく、上述の式(a01-1)中のLa011におけるVa01と同様の、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を例示することができる。W201における2価の連結基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、環状であることが好ましい。その中でも、アリーレン基の両端に2個のカルボニル基が組み合わされた基が好ましい。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、フェニレン基が特に好ましい。
201における3価の連結基としては、前記W201における2価の連結基から水素原子を1個除いた基、前記2価の連結基にさらに前記2価の連結基が結合した基等が挙げられる。W201における3価の連結基としては、アリーレン基に2個のカルボニル基が結合した基が好ましい。
【0158】
前記式(ca-1)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca-1-1)~(ca-1-67)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0159】
【化42】
【0160】
【化43】
【0161】
【化44】
[式中、g1、g2、g3は、繰り返し数を示し、g1は、1~5の整数であり、g2は、0~20の整数であり、g3は、0~20の整数である。]
【0162】
【化45】
[式中、R”201は、水素原子又は置換基であって、該置換基としては、前記R201~R207及びR210~R212が有していてもよい置換基として例示したものと同様である。]
【0163】
前記式(ca-2)で表される好適なカチオンとして具体的には、ジフェニルヨードニウムカチオン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカチオン等が挙げられる。
前記式(ca-3)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca-3-1)~(ca-3-6)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0164】
【化46】
【0165】
前記式(ca-4)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca-4-1)~(ca-4-2)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0166】
【化47】
【0167】
前記の中でも、カチオン部[(M’m+1/m]は、式(ca-1)で表されるカチオンが好ましく、式(ca-1-1)~(ca-1-67)でそれぞれ表されるカチオンがより好ましい。
【0168】
前記酸発生剤成分(B)は、式(b1)で表される化合物(B1)以外の酸発生剤を、1種又は2種以上含むことができる。
レジスト組成物が(B)成分を含有する場合、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.5~60質量部が好ましく、1~50質量部がより好ましく、1~40質量部がさらに好ましい。
(B)成分の含有量を前記範囲とすることにより、パターン形成が十分に行われる。また、レジスト組成物の各成分を有機溶剤に溶解した際、均一な溶液が得られやすく、レジスト組成物としての保存安定性が良好となるため好ましい。
【0169】
[混合溶剤成分:(S)成分]
本発明のレジスト組成物は、レジスト材料を混合溶剤成分(以下、「(S)成分」という。)に溶解させて製造することができる。
前記(S)成分は、下記式(s1)で表される有機溶剤(S1)を含む。
【0170】
【化48】
[式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基である。]
【0171】
前記式(s1)中、R及びRは、好ましくは、炭素数1~4のアルキル基であり、より好ましくは、炭素数1~2のアルキル基である。前記式(s1)で表される有機溶剤(S1)は、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(HBM)であることが最も好ましい。
【0172】
前記混合溶剤(S)は、前記式(s1)で表される有機溶剤(S1)を5重量%以上40重量%以下含有することが好ましく、10重量%以上35重量%以下含有することがより好ましい。
【0173】
一方、(S)成分は、(S1)以外の追加の溶剤を1種又は2種以上含有することができる。これは特に限定されず、用いる各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジスト組成物の溶剤として公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
例えば、γ-ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環状エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤;ジメチルスルホキシド(DMSO);プロピレンカーボネート等が挙げられる。
その中でも、PGMEA、PGME、γ-ブチロラクトン、EL(乳酸エチル)、シクロヘキサノン、プロピレンカーボネートが好ましい。
【0174】
(S)成分の使用量は、特に限定されず、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。一般的には、レジスト組成物の固形分濃度が1~20質量%、好ましくは2~15質量%の範囲内となるように、(S)成分は用いられる。
【0175】
本発明のレジスト組成物は、上述の(A)成分、(B)成分及び(S)成分に加えて、前記成分以外の他の成分をさらに含有してもよい。他の成分としては、例えば、以下に示す(D)成分、(E)成分、(F)成分等が挙げられる。
【0176】
[酸拡散制御剤成分:(D)成分]
本発明のレジスト組成物は、(A)、(B)及び(S)成分に加えて、酸拡散制御剤成分(以下、「(D)成分」という。)を含有してもよい。(D)成分は、レジスト組成物において露光により発生する酸をトラップするクエンチャー(酸拡散制御剤)として作用するものである。
(D)成分は、露光により分解して酸拡散制御性を失う光崩壊性塩基(D1)(以下、「(D1)成分」という。)であってもよく、該(D1)成分に該当しない含窒素有機化合物(D2)(以下、「(D2)成分」という。)であってもよい。
【0177】
・(D1)成分について
(D1)成分を含有するレジスト組成物とすることにより、レジストパターンを形成する際に、露光部と未露光部とのコントラストを向上させることができる。
(D1)成分としては、露光により分解して酸拡散制御性を失うものであれば特に限定されず、下記式(d1-1)で表される化合物(以下、「(d1-1)成分」という。)、下記式(d1-2)で表される化合物(以下、「(d1-2)成分」という。)及び下記式(d1-3)で表される化合物(以下、「(d1-3)成分」という。)からなる群より選択される1種以上の化合物が好ましい。
(d1-1)~(d1-3)成分は、レジスト膜の露光部においては分解して酸拡散制御性(塩基性)を失うためクエンチャーとして作用せず、未露光部においてクエンチャーとして作用する。
【0178】
【化49】
[式中、Rd~Rdは、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。ただし、式(d1-2)中のRdにおける、S原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子は結合していないこととする。Ydは、単結合又は2価の連結基である。mは、1以上の整数であって、Mm+は、それぞれ独立に、m価の有機カチオンである。]
【0179】
{(d1-1)成分}
・・アニオン部
式(d1-1)中、Rdは、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ前記式(b-1)中のR101と同様のものが挙げられる。
これらの中でも、Rdとしては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい脂肪族環式基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基が好ましい。これらの基が有していてもよい置換基としては、水酸基、オキソ基、アルキル基、アリール基、フッ素原子、フッ素化アルキル基、前記式(a2-r-1)~(a2-r-6)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、エーテル結合、エステル結合、又はこれらの組み合わせが挙げられる。エーテル結合やエステル結合を置換基として含む場合、アルキレン基を介在していてもよい。
前記芳香族炭化水素基としては、フェニル基若しくはナフチル基がより好ましい。
前記脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
【0180】
前記鎖状のアルキル基としては、炭素数が1~10であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状のアルキル基;1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基等の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
前記鎖状のアルキル基が置換基としてフッ素原子又はフッ素化アルキル基を有することができ、このうち、フッ素化アルキル基の炭素数は、1~11が好ましく、1~8がより好ましく、1~4がさらに好ましい。該フッ素化アルキル基は、フッ素原子以外の原子を含有してもよい。フッ素原子以外の原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
【0181】
Rdとしては、直鎖状のアルキル基を構成する一部又は全部の水素原子がフッ素原子により置換されたフッ素化アルキル基であることが好ましく、直鎖状のアルキル基を構成する水素原子の全てがフッ素原子で置換されたフッ素化アルキル基(直鎖状のパーフルオロアルキル基)であることが特に好ましい。
以下に、(d1-1)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0182】
【化50】
【0183】
・・カチオン部
式(d1-1)中、Mm+は、m価の有機カチオンである。
m+の有機カチオンとしては、前記式(ca-1)~(ca-4)でそれぞれ表されるカチオンと同様のものが好適に挙げられ、前記式(ca-1)で表されるカチオンがより好ましく、前記式(ca-1-1)~(ca-1-67)でそれぞれ表されるカチオンがさらに好ましい。
【0184】
(d1-1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0185】
{(d1-2)成分}
・・アニオン部
式(d1-2)中、Rdは、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ、前記式(b-1)中のR101と同様のものが挙げられる。
ただし、Rdにおける、S原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子は結合していない(フッ素置換されていない)こととする。これにより、(d1-2)成分のアニオンが適度な弱酸アニオンとなり、(D)成分としてのクエンチング能が向上する。
【0186】
Rdとしては、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい脂肪族環式基であることが好ましい。鎖状のアルキル基としては、炭素数1~10であることが好ましく、3~10であることがより好ましい。脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等から1個以上の水素原子を除いた基(置換基を有していてもよい);カンファー等から1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
【0187】
Rdの炭化水素基は置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記式(d1-1)のRdにおける炭化水素基(芳香族炭化水素基、脂肪族環式基、鎖状のアルキル基)が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
以下に、(d1-2)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0188】
【化51】
【0189】
・・カチオン部
式(d1-2)中、Mm+は、m価の有機カチオンであり、前記式(d1-1)中のMm+と同様である。
【0190】
(d1-2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0191】
{(d1-3)成分}
・・アニオン部
式(d1-3)中、Rdは、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ、前記式(b-1)中のR101と同様のものが挙げられ、フッ素原子を含む環式基、鎖状のアルキル基、又は鎖状のアルケニル基であることが好ましい。その中でも、フッ素化アルキル基が好ましく、前記Rdのフッ素化アルキル基と同様のものがより好ましい。
【0192】
Rdは、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ、前記式(b-1)中のR101と同様のものが挙げられる。
その中でも、置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、環式基であることが好ましい。
【0193】
Rdにおけるアルキル基は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。Rdのアルキル基の水素原子の一部が水酸基、シアノ基等で置換されていてもよい。
【0194】
Rdにおけるアルコキシ基は、炭素数1~5のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~5のアルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基が挙げられる。その中でも、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0195】
Rdにおけるアルケニル基は、前記式(b-1)中のR101と同様のものが挙げられ、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基が好ましい。これらの基は、さらに置換基として、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基を有していてもよい。
【0196】
Rdにおける環式基は、前記式(b-1)中のR101と同様のものが挙げられ、シクロペンタン、シクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた脂環式基、又は、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基が好ましい。Rdが脂環式基である場合、レジスト組成物が有機溶剤に良好に溶解することにより、リソグラフィー特性が良好となる。また、Rdが芳香族基である場合、EUV等を露光光源とするリソグラフィーにおいて、該レジスト組成物が光吸収効率に優れ、感度やリソグラフィー特性が良好となる。
【0197】
式(d1-3)中、Ydは、単結合又は2価の連結基である。
Ydにおける2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基(脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基)、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が挙げられる。
Ydとしては、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、アルキレン基又はこれらの組み合わせであることが好ましい。アルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であることがより好ましく、メチレン基又はエチレン基であることがさらに好ましい。
【0198】
以下に、(d1-3)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0199】
【化52】
【0200】
【化53】
【0201】
・・カチオン部
式(d1-3)中、Mm+は、m価の有機カチオンであり、前記式(d1-1)中のMm+と同様である。
(d1-3)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0202】
(D1)成分は、前記(d1-1)~(d1-3)成分のいずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記の中でも、(D1)成分としては、少なくとも(d1-1)成分を用いることが好ましい。
レジスト組成物が(D1)成分を含有する場合、(D1)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.5~10質量部であることが好ましく、0.5~8質量部であることがより好ましく、1~8質量部であることがさらに好ましい。
(D1)成分の含有量が好ましい下限値以上であると、特に良好なリソグラフィー特性及びレジストパターン形状が得られやすい。一方、上限値以下であると、感度を良好に維持でき、スループット(throughput)にも優れる。
【0203】
(D1)成分の製造方法:
前記の(d1-1)成分、(d1-2)成分の製造方法は、特に限定されず、公知の方法により製造することができる。
また、(d1-3)成分の製造方法は、特に限定されず、例えば、US2012-0149916号公報に記載の方法と同様にして製造される。
【0204】
・(D2)成分について
酸拡散制御剤成分としては、前記の(D1)成分に該当しない含窒素有機化合物成分(以下、「(D2)成分」という。)を含有してもよい。
(D2)成分としては、酸拡散制御剤として作用するものであり、かつ、(D1)成分に該当しないものであれば特に限定されず、公知のものから任意に用いればよい。その中でも、脂肪族アミンが好ましく、この中でも、特に第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミンがより好ましい。
【0205】
脂肪族アミンとは、1個以上の脂肪族基を有するアミンであり、該脂肪族基は、炭素数が1~12であることが好ましい。
脂肪族アミンとしては、アンモニアNHの水素原子の少なくとも1個を、炭素数12以下のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基で置換したアミン(アルキルアミン若しくはアルキルアルコールアミン)又は環状アミンが挙げられる。
アルキルアミン及びアルキルアルコールアミンの具体例としては、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、n-デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-n-ヘプチルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-ヘプチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリ-n-ノニルアミン、トリ-n-デシルアミン、トリ-n-ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ-n-オクタノールアミン、トリ-n-オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミンが挙げられる。これらの中でも、炭素数5~10のトリアルキルアミンがさらに好ましく、トリ-n-ペンチルアミン又はトリ-n-オクチルアミンが特に好ましい。
【0206】
環状アミンとしては、例えば、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環化合物が挙げられる。該複素環化合物としては、単環式のもの(脂肪族単環式アミン)であってもよく、多環式のもの(脂肪族多環式アミン)であってもよい。
脂肪族単環式アミンとして具体的には、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。
脂肪族多環式アミンとしては、炭素数が6~10であることが好ましく、具体的には、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
その他の脂肪族アミンとしては、トリス(2-メトキシメトキシエチル)アミン、トリス{2-(2-メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(2-メトキシエトキシメトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(1-メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(1-エトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(1-エトキシプロポキシ)エチル}アミン、トリス[2-{2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、トリエタノールアミントリアセテート等が挙げられ、トリエタノールアミントリアセテートが好ましい。
【0207】
また、(D2)成分としては、芳香族アミンを用いてもよい。
芳香族アミンとしては、4-ジメチルアミノピリジン、ピロール、インドール、ピラゾール、イミダゾール又はこれらの誘導体、トリベンジルアミン、2,6-ジイソプロピルアニリン、N-tert-ブトキシカルボニルピロリジン等が挙げられる。
【0208】
(D2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
レジスト組成物が(D2)成分を含有する場合、(D2)成分は、(A)成分100質量部に対し、通常、0.01~5質量部の範囲で用いられる。前記範囲とすることにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等が向上する。
【0209】
[有機カルボン酸、並びにリンのオキソ酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物:(E)成分]
本発明のレジスト組成物には、感度劣化の防止や、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等の向上の目的で、任意の成分として、有機カルボン酸、並びにリンのオキソ酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(E)(以下、「(E)成分」という。)を含有させることができる。
有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等が好適である。
リンのオキソ酸としては、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられ、これらの中でも、特にホスホン酸が好ましい。
リンのオキソ酸の誘導体としては、例えば、前記オキソ酸の水素原子を炭化水素基で置換したエステル等が挙げられ、前記炭化水素基としては、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~15のアリール基等が挙げられる。
リン酸の誘導体としては、リン酸ジ-n-ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸エステル等が挙げられる。
ホスホン酸の誘導体としては、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸-ジ-n-ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸エステル等が挙げられる。
ホスフィン酸の誘導体としては、ホスフィン酸エステルやフェニルホスフィン酸等が挙げられる。
【0210】
(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物が(E)成分を含有する場合、(E)成分は、(A)成分100質量部に対し、通常、0.01~5質量部の範囲で用いられる。
【0211】
[フッ素添加剤成分:(F)成分]
本発明のレジスト組成物は、レジスト膜に撥水性を付与するために、フッ素添加剤成分(以下、「(F)成分」という。)を含有してもよい。
(F)成分としては、例えば、日本国特開2010-002870号公報、日本国特開2010-032994号公報、日本国特開2010-277043号公報、日本国特開2011-13569号公報、日本国特開2011-128226号公報に記載の含フッ素高分子化合物を用いることができる。(F)成分として、より具体的には、下記式(f1-1)で表される構成単位(f1)を有する重合体が挙げられる。ただし、上述の(A)成分に該当する高分子化合物を除く。
【0212】
前記の構成単位(f1)を有する重合体としては、構成単位(f1)のみからなる重合体(ホモポリマー);該構成単位(f1)と下記式(m-1)で表される構成単位との共重合体;該構成単位(f1)と、アクリル酸又はメタクリル酸から誘導される構成単位と、下記式(m-1)で表される構成単位との共重合体が好ましい。
ここで、該式(m-1)で表される構成単位としては、1-エチル-1-シクロオクチル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位、1-メチル-1-アダマンチル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位が好ましい。
【0213】
【化54】
[式中、複数のRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。式(f1-1)中、Rf102及びRf103は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基を示し、Rf102及びRf103は、同じであってもよく、異なっていてもよい。nfは、0~5の整数であり、Rf101は、フッ素原子を含む有機基である。式(m-1)中、R21は、アルキル基であり、R22は、当該R22が結合した炭素原子と共に脂肪族環式基を形成する基である。]
【0214】
前記式(f1-1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。前記式(f1-1)中のRは、上述の前記式(a1-1)中のRと同様である。
Rとしては、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子、炭素数1~5のアルキル基がより好ましく、炭素数1~5のアルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0215】
式(f1-1)中、Rf102及びRf103のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。Rf102及びRf103の炭素数1~5のアルキル基としては、前記Rの炭素数1~5のアルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基又はエチル基が好ましい。Rf102及びRf103の炭素数1~5のハロゲン化アルキル基として具体的には、炭素数1~5のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。その中でも、Rf102及びRf103としては、水素原子、フッ素原子、又は炭素数1~5のアルキル基が好ましく、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はエチル基が好ましい。
【0216】
式(f1-1)中、nfは、0~5の整数であり、0~3の整数が好ましく、0又は1であることがより好ましい。
式(f1-1)中、Rf101は、フッ素原子を含む有機基であり、フッ素原子を含む炭化水素基であることが好ましい。
フッ素原子を含む炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよく、炭素数は1~20であることが好ましく、炭素数1~15であることがより好ましく、炭素数1~10が特に好ましい。
また、フッ素原子を含む炭化水素基は、当該炭化水素基における水素原子の25%以上がフッ素化されていることが好ましく、50%以上がフッ素化されていることがより好ましく、60%以上がフッ素化されていることが、液浸露光時のレジスト膜の疎水性が高まることから特に好ましい。
その中でも、Rf101としては、炭素数1~5のフッ素化炭化水素基がより好ましく、-CF、-CH-CF、-CH-CF-CF、-CH(CF、-CH-CH-CF、-CH-CH-CF-CF-CF-CFが特に好ましい。
【0217】
式(m-1)中、R21におけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。該直鎖状のアルキル基は、炭素数が1~5であることが好ましく、1~4がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられ、これらの中でもメチル基、エチル基又はn-ブチル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。該分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が3~10であることが好ましく、3~5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、イソプロピル基が特に好ましい。
【0218】
式(m-1)中、R22は、当該R22が結合した炭素原子と共に脂肪族環式基を形成する基である。R22が形成する脂肪族環式基は、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂肪族環式基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3~10のものが好ましく、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン等が挙げられる。多環式の脂肪族環式基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7~12のものが好ましく、例えば、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0219】
(F)成分の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、1000~50000が好ましく、5000~40000がより好ましく、10000~30000が最も好ましい。この範囲の上限値以下であると、レジストとして用いるのにレジスト用溶剤への十分な溶解性があり、この範囲の下限値以上であると、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が良好である。
(F)成分の分散度(Mw/Mn)は、1.0~5.0が好ましく、1.0~3.0がより好ましく、1.2~2.5が最も好ましい。
【0220】
(F)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物が(F)成分を含有する場合、(F)成分は、(A)成分100質量部に対し、通常、0.5~10質量部の割合で用いられる。
【0221】
本発明のレジスト組成物には、さらに、所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料等を適宜、添加含有させることができる。
【0222】
以上説明した実施形態のレジスト組成物が用いられたレジストパターン形成方法によれば、溶解性に優れていながらも、CDの変動が少なく、形状が良好なレジストパターンを形成することができる効果が得られる。
【0223】
<レジストパターン形成方法>
本発明の第2の様態であるレジストパターン形成方法は、第1の様態に記載のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を含む。
さらに具体的には、レジストパターン形成方法は、露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物を用いて、支持体上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び、前記露光後のレジスト膜を、現像液を用いた現像によりパターニングしてレジストパターンを形成する工程を含む。
かかるレジストパターン形成方法は、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0224】
まず、支持体上に、露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物を、スピンナー等で塗布し、ベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理を、例えば、80~150℃の温度条件にて20~120秒間、好ましくは40~90秒間施してレジスト膜を形成する。
ここでのレジスト組成物には、上述のレジスト組成物が用いられる。
次に、該レジスト膜に対して、例えば、ArF露光装置、電子線描画装置、EUV露光装置等の露光装置を用いて、所定のパターンが形成されたフォトマスク(マスクパターン)を介在した露光、又はフォトマスクを介在していない電子線の直接照射による描画等により選択的露光を行う。
その後、ベーク(ポストエクスポージャーベーク(PEB))処理を、例えば、80~150℃の温度条件にて20~120秒間、好ましくは40~90秒間施す。
次に、前記の露光、ベーク(PEB)処理後のレジスト膜を現像する。アルカリ現像プロセスの場合は、アルカリ現像液を用い、溶剤現像プロセスの場合は、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)を用いて行う。
【0225】
現像後、好ましくはリンス処理を施す。リンス処理は、アルカリ現像プロセスの場合は、純水を用いた水リンスが好ましく、溶剤現像プロセスの場合は、有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
溶剤現像プロセスの場合、前記現像処理又はリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を、超臨界流体により除去する処理を施してもよい。
現像処理後又はリンス処理後、乾燥を行う。また、場合によっては、前記現像処理後にベーク処理(ポストベーク)を施してもよい。このようにして、レジストパターンを得ることができる。
前記のような操作を行うことにより、微細なレジストパターンを形成することができる。
【0226】
前記支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例示することができる。より具体的には、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
また、支持体としては、上述のような基板上に、無機系及び/又は有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)や多層レジスト法における下層有機膜等の有機膜が挙げられる。
ここで、多層レジスト法とは、基板上に、少なくとも1層の有機膜(下層有機膜)と、少なくとも1層のレジスト膜(上層レジスト膜)とを設け、上層レジスト膜に形成したレジストパターンをマスクとして下層有機膜のパターニングを行う方法であり、高アスペクト比のパターンを形成できるとされている。すなわち、多層レジスト法によれば、下層有機膜により所要の厚みを確保できるため、レジスト膜を薄膜化でき、高アスペクト比の微細なパターン形成が可能となる。
多層レジスト法は、基本的に、上層レジスト膜と下層有機膜との2層構造とする方法(2層レジスト法)と、上層レジスト膜と下層有機膜との間に1層以上の中間層(金属薄膜等)を設けた3層以上の多層構造とする方法(3層レジスト法)と、に分けられる。
【0227】
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。本発明のレジストパターン形成方法は、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EB又はEUV用としての有用性が高く、ArFエキシマレーザー、EB又はEUV用として特に有用である。
【0228】
レジスト膜の露光方法は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)であってもよい。
液浸露光は、予め、レジスト膜と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たし、その状態で露光(浸漬露光)を行う露光方法である。
液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、かつ、露光されるレジスト膜の有する屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒が好ましい。かかる溶媒の屈折率としては、前記範囲内であれば特に制限されない。
空気の屈折率よりも大きく、かつ、前記レジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒としては、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系有機溶剤、炭化水素系有機溶剤等が挙げられる。
フッ素系不活性液体の具体例としては、CHCl、COCH、COC、C等のフッ素系化合物を主成分とする液体等が挙げられ、沸点が70~180℃のものが好ましく、80~160℃のものがより好ましい。フッ素系不活性液体が前記範囲の沸点を有するものであると、露光終了後に、液浸に用いた媒体の除去を簡便な方法で行えることから好ましい。
フッ素系不活性液体としては、特に、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル化合物が好ましい。パーフルオロアルキル化合物としては、具体的には、パーフルオロアルキルエーテル化合物やパーフルオロアルキルアミン化合物が挙げられる。
さらに、具体的には、前記パーフルオロアルキルエーテル化合物としては、パーフルオロ(2-ブチル-テトラヒドロフラン)(沸点102℃)が挙げられ、前記パーフルオロアルキルアミン化合物としては、パーフルオロトリブチルアミン(沸点174℃)が挙げられる。
液浸媒体としては、コスト、安全性、環境問題、汎用性等の観点から、水が好ましく用いられる。
【0229】
アルカリ現像プロセスにおいて、現像処理に用いるアルカリ現像液としては、上述の成分(A)(露光前の成分(A))を溶解できるものであればよく、公知のアルカリ現像液の中から適宜選択することができる。例えば、0.1~10質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液が挙げられる。
溶剤現像プロセスにおいて、現像処理に用いる有機系現像液が含有する有機溶剤としては、上述の成分(A)(露光前の成分(A))を溶解できるものであればよく、公知の有機溶剤の中から適宜選択することができる。具体的には、ケトン系有機溶剤、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、ニトリル系有機溶剤、アミド系有機溶剤、エーテル系有機溶剤等の極性溶剤、炭化水素系有機溶剤等が挙げられる。また、現像液には、有機溶剤が80質量%以上含有され得る。
【0230】
ケトン系有機溶剤は、構造中にC-C(=O)-Cを含む有機溶剤である。エステル系有機溶剤は、構造中にC-C(=O)-O-Cを含む有機溶剤である。アルコール系有機溶剤は、構造中にアルコール性水酸基を含む有機溶剤であり、「アルコール性水酸基」は、脂肪族炭化水素基の炭素原子に結合した水酸基を意味する。ニトリル系有機溶剤は、構造中にニトリル基を含む有機溶剤である。アミド系有機溶剤は、構造中にアミド基を含む有機溶剤である。エーテル系有機溶剤は、構造中にC-O-Cを含む有機溶剤である。
【0231】
有機溶剤の中には、構造中に前記各溶剤を特徴づける官能基を複数種含む有機溶剤も存在するが、その場合は、当該有機溶剤が有する官能基を含むいずれの溶剤種にも該当するものとする。例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、前記分類中の、アルコール系有機溶剤又はエーテル系有機溶剤のいずれにも該当するものとする。
炭化水素系有機溶剤は、ハロゲン化されていてもよい炭化水素からなり、ハロゲン原子以外の置換基を有さない炭化水素溶剤である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0232】
前記の中でも、溶剤現像プロセスの現像に用いられる現像液は、高解像性のレジストパターンが得られやすいことから、エステル系有機溶剤及びケトン系有機溶剤からなる群より選択される1種以上を含有することが好ましく、エステル系有機溶剤を含有することがより好ましい。
【0233】
エステル系有機溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2-メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-エチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2-エトキシブチルアセテート、4-エトキシブチルアセテート、4-プロポキシブチルアセテート、2-メトキシペンチルアセテート、3-メトキシペンチルアセテート、4-メトキシペンチルアセテート、2-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、4-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピル-3-メトキシプロピオネート等が挙げられる。
前記の中でも、エステル系有機溶剤としては、酢酸ブチルが好ましい。
【0234】
ケトン系有機溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、メチルアミルケトン(2-ヘプタノン)等が挙げられる。
前記の中でも、ケトン系有機溶剤としては、メチルアミルケトン(2-ヘプタノン)が好ましい。
【0235】
有機系現像液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。該添加剤としては、例えば、界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
【0236】
界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤がより好ましい。
有機系現像液に界面活性剤を配合する場合、その配合量は、有機系現像液の全量に対し、通常、0.001~5質量%であり、0.005~2質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
【0237】
現像処理は、公知の現像方法により施すことが可能であり、例えば、現像液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、支持体表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している支持体上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出し続ける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
溶剤現像プロセスの現像後のリンス処理に用いるリンス液が含有する有機溶剤としては、例えば、前記有機系現像液に用いる有機溶剤として例示した有機溶剤のうち、レジストパターンを溶解させ難いものを適宜選択して用いることができる。通常、炭化水素系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、アミド系有機溶剤及びエーテル系有機溶剤より選択される少なくとも1種類の溶剤を用いる。これらの中でも、炭化水素系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤及びアミド系有機溶剤より選択される少なくとも1種類が好ましく、エステル系有機溶剤及びケトン系有機溶剤より選択される少なくとも1種類がより好ましく、エステル系有機溶剤が特に好ましい。
【0238】
これらの有機溶剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、前記以外の有機溶剤や水と混合して用いてもよい。ただし、現像特性を考慮すると、リンス液中の水の含有量は、リンス液の全量に対し、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
【0239】
リンス液には、必要に応じて、公知の添加剤を添加することができる。該添加剤としては、例えば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、前記と同様のものが挙げられ、非イオン性の界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤を添加する場合、その添加量は、リンス液の全量に対し、通常、0.001~5質量%であり、0.005~2質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
リンス液を用いたリンス処理(洗浄処理)は、公知のリンス方法により施すことができる。該方法としては、例えば、一定速度で回転している支持体上にリンス液を塗出し続ける方法(回転塗布法)、リンス液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【実施例
【0240】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0241】
<レジスト組成物の調製>
下記表1に示すような各成分を混合、溶解して、各例のレジスト組成物を調製した。
【0242】
【表1】
【0243】
前記表1において、各略号は、それぞれ以下の意味を有し、[ ]内の数値は、配合量(質量部)である。
【0244】
(A)成分
(R)-1:下記の構成単位から共重合された高分子化合物(構成単位の割合:50/50、質量平均分子量(Mw):10000、PDI:1.5)
【0245】
【化55】
【0246】
(B)成分
下記式で表される酸発生剤
【0247】
【化56】
【0248】
【化57】
【0249】
(S)成分
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
HBM:下記式で表される有機溶剤(2-ヒドロキシイソ酪酸メチル)
【0250】
【化58】
【0251】
(D)成分
下記の化学式で表される酸拡散制御剤
【0252】
【化59】
【0253】
(F)成分
下記の化学式で表される含フッ素高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は15000、分子量分散度(Mw/Mn)は1.61。13C-NMRにより求められた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m=50/50。
【0254】
【化60】
【0255】
<ネガ型レジストパターンの形成>
12インチのHMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理を施したシリコンウェーハ上に、有機系反射防止膜組成物「ARC95」(商品名、ブリューワーサイエンス社製)をスピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、205℃、60秒間焼成し、乾燥させることにより、膜厚98nmの有機系反射防止膜を形成した。
次いで、この膜上に、前記[表1]の組成物のそれぞれを、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、温度100℃で50秒間の条件にてポストアプライベーク(PAB)処理を行い、乾燥させることにより、膜厚85nmのレジスト膜を形成した。
次いで、液浸用ArF露光装置NSR-S610C[Nikon社製;NA(開口数)=1.30、Crosspole(0.98/0.78)w/A-pol.]により、フォトマスク[att-PSM6%透明度]を介して、ArFエキシマレーザー(193nm)を選択的にそれぞれ照射した。
その後、90℃で50秒間のベーク(PEB)処理を行った。次いで、30秒間パドル(puddle)現像を行い、リンスなしに乾燥を行い、110℃で50秒間ポストベーク処理を行った。現像液は、n-酢酸ブチルを用いた。
その結果、ネガ型レジストパターンが形成された(ターゲット:57nmマスク/90nmピッチ/45nmCH)。
【0256】
<ネガ型レジストパターンの評価>
(実施例1、2及び比較例1~4)
[CD変動の測定]
<一か月CD変動>
実施例および比較例において、以下のようにして評価及び測定した。
室温で1月保存した前後のレジスト組成物のそれぞれについて、最適露光量Eopにて、前記のレジストパターン形成方法によってコンタクトホールパターンを形成し、ホール直径(CD)を測定した。
各例のレジスト組成物について、室温で1月保存した、保存前後の差(CD変動)を算出した。
【0257】
[形状の測定]
実施例及び比較例において、ライン(現像工程後に溶解せずに残る部分)とスペース(現像工程にてレジスト膜が溶解し、空隙となった部分)からなるパターンについて、レジスト膜下面(即ち、基板側)における線幅(ボトム線幅)と、レジスト膜上面における線幅(トップ線幅)とを走査型電子顕微鏡(SEM、加速電圧300V、商品名:S-8040、日立ハイテクノロジー社製)観察下でそれぞれ測定した。得られたボトム線幅をトップ線幅で除して、レジストパターンのテーパー角度を測定した。具体的に、ボトム線幅/トップ線幅の値が大きいほど、レジストパターンのテーパー角度が大きいことを意味する。
不良:テーパー角度が75度未満
良好:テーパー角度が75度以上
【0258】
[PAG溶解性の評価]
各混合溶剤(S)における酸発生剤成分(B)の溶解性評価を目視により行った。(B)成分の(S)成分に対する固形分は、10質量%とし、水中超音波により10分間攪拌した。
不良:溶け残りが発生している。
良好:完溶である。
【0259】
[樹脂溶解性の評価]
各混合溶剤(S)における(A)成分の溶解性評価を行った。(S)成分に対する(A)の固形分は、10質量%とし、水中超音波により10分間攪拌した。
実施例1、実施例2、および比較例1乃至4について、前記方法により、CD変動、形状、PAG溶解性、及び樹脂溶解性を測定した。その結果は、下記の表2のとおりである。
【0260】
【表2】
【0261】
前記結果に示したように、本発明によるレジスト組成物を用いると、溶解性に優れていながらも、CDの変動が少なく、形状が良好なパターンを形成することができるということが分かる。
【0262】
以上、本発明の好適な実施例を説明したが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は、前述の説明によって限定されず、添付の請求の範囲によってのみ限定される。