IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

特許7195413赤外線吸収画像形成用インクジェットインク、赤外線吸収画像形成方法、及び画像形成方法
<>
  • 特許-赤外線吸収画像形成用インクジェットインク、赤外線吸収画像形成方法、及び画像形成方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】赤外線吸収画像形成用インクジェットインク、赤外線吸収画像形成方法、及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/38 20140101AFI20221216BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20221216BHJP
   C09B 23/08 20060101ALI20221216BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20221216BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
C09D11/38
C09B67/20 F
C09B23/08
B41M5/00 120
B41M5/00 132
B41M5/00 100
B41J2/01 501
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021511164
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2020004097
(87)【国際公開番号】W WO2020202773
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2019068257
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々田 美里
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】原 未奈子
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-255323(JP,A)
【文献】国際公開第2018/034347(WO,A1)
【文献】特開2014-047302(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181992(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/38
C09B 67/20
C09B 23/08
B41M 5/00
B41J 2/01
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1A)で表される赤外線吸収材料と、水溶性有機溶剤と、水と、を含有し、
赤外線吸収画像形成用インクジェットインクの全量に対する前記水溶性有機溶剤の含有量が5質量%~30質量%であり、
前記水溶性有機溶剤中に占める、SP値27.5MPa1/2以上の溶剤種Xの割合が50質量%以上である赤外線吸収画像形成用インクジェットインク。
【化1】

式(1A)中、R 1A 及びR 2A は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、
1A は、奇数個のメチンからなるメチン鎖を表し、
及びB は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香族炭化水素環を形成するために必要な原子群又は置換基を有してもよい芳香族ヘテロ環を形成するのに必要な原子群を表す。
及びY は、それぞれ独立に、-S-、-O-、-NR X1 -又はCR X2 X3 -を表し、R X1 、R X2 及びR X3 は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。
1A 及びV 2A は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、-OR 10 、-COR 11 、-COOR 12 、-OCOR 13 、-NR 14 15 、-NHCOR 16 、-CONR 17 18 、-NHCONR 19 20 、-NHCOOR 21 、-SR 22 、-SO 23 、-SO OR 24 、-NHSO 25 又はSO NR 26 27 を表し、R 10 ~R 27 は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。-COOR 12 のR 12 が水素原子である場合及びSO OR 24 のR 24 が水素原子である場合、それぞれ、水素原子が解離していてもよいし、塩の状態であってもよい。
m1及びm2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。
m1が2~4の整数である場合、複数のV 1A が、互いに結合して環を形成してもよく、m2が2~4の整数である場合、複数のV 2A が、互いに結合して環を形成してもよい。
式(1A)中のCyで表される部位がカチオン部である場合、X はアニオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、
式(1A)中のCyで表される部位がアニオン部である場合、X はカチオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、
式(1A)中のCyで表される部位の電荷が分子内で中和されている場合、X は存在しない。
【請求項2】
前記式(1A)で表される赤外線吸収材料の少なくとも1種が、下記式(1B)で表される赤外線吸収材料である請求項に記載の赤外線吸収画像形成用インクジェットインク。
【化2】


式(1B)中、R1B及びR2Bは、それぞれ独立に、置換基としてスルホネート基を有するアルキル基を表し、
1Bは、7個のメチンからなるメチン鎖を表し、
はカチオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表す。
【請求項3】
更に、樹脂粒子を含有する請求項1又は請求項2に記載の赤外線吸収画像形成用インクジェットインク。
【請求項4】
更に、着色剤を含有する請求項1~請求項のいずれか1項に記載の赤外線吸収画像形成用インクジェットインク。
【請求項5】
更に、水溶性高分子化合物を含有する請求項1~請求項のいずれか1項に記載の赤外線吸収画像形成用インクジェットインク。
【請求項6】
更に、ゼラチンを含有する請求項1~請求項のいずれか1項に記載の赤外線吸収画像形成用インクジェットインク。
【請求項7】
基材上に、請求項1~請求項に記載のいずれか1項に記載の赤外線吸収画像形成用インクジェットインクを、インクジェット法によって付与して赤外線吸収画像を形成する工程を含む赤外線吸収画像形成方法。
【請求項8】
前記赤外線吸収画像を形成する工程の前に、前記基材上に、凝集剤を含有する処理液を付与する工程を含み、
前記赤外線吸収画像を形成する工程は、基材上の前記処理液が付与された領域上の少なくとも一部に前記赤外線吸収画像形成用インクジェットインクを、インクジェット法によって付与して前記赤外線吸収画像を形成する請求項に記載の赤外線吸収画像形成方法。
【請求項9】
請求項又は請求項に記載の赤外線吸収画像形成方法によって赤外線吸収画像を形成する工程と、
前記赤外線吸収画像に対し、赤外線を照射して画像を得る工程と、
を含む画像形成方法。
【請求項10】
前記赤外線が、700nm~1500nmの波長領域に極大発光波長を有する請求項に記載の画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、赤外線吸収画像形成用インクジェットインク、赤外線吸収画像形成方法、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、赤外線を吸収する画像に関する検討がなされている。
例えば、特許文献1には、分光特性に優れた近赤外吸収画像形成用組成物として、7個のメチン基からなるメチン鎖を含む特定の色素を含有する近赤外吸収画像形成用組成物、及び、この近赤外吸収画像形成用組成物からなるインクが開示されている。
また、特許文献2には、画像形成要素上の印刷インクとして使用できる安定な赤外色素組成物として、水を連続相として、そしてフェニレンジアミン部分が共有結合されている赤外ポリメチン色素が組み合わされている疎水性ポリマー粒子を分散相として含んで成るラテックス組成物が開示されている。
【0003】
特許文献1:特開2008-255323号公報
特許文献2:特開2004-169035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、赤外領域に吸収を有する赤外線吸収画像の赤外線吸収性を向上させるためには、この赤外線吸収画像に含有される赤外線吸収材料の全分子のうち、会合を形成しているものの割合が大きいことが望ましい場合がある。
本開示では、赤外線吸収画像に含有される赤外線吸収材料の全分子のうち、会合を形成しているものの割合が大きいことを、赤外線吸収画像に含有される赤外線吸収材料の会合形成性に優れると表現する。
【0005】
本開示の課題は、赤外線吸収材料の会合形成性に優れる赤外線吸収画像を形成できる、赤外線吸収画像形成用インクジェットインク及び赤外線吸収画像形成方法、並びに、上記赤外線吸収画像に赤外線を照射することにより、耐擦性に優れた画像を形成できる画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 下記式(A)で表される赤外線吸収材料と、水溶性有機溶剤と、水と、を含有し、
赤外線吸収画像形成用インクジェットインクの全量に対する水溶性有機溶剤の含有量が5質量%~45質量%であり、
水溶性有機溶剤中に占める、SP値27.5MPa1/2以上の溶剤種Xの割合が50質量%以上である赤外線吸収画像形成用インクジェットインク。
【0007】
【化1】
【0008】
式(A)中、Z及びZは、それぞれ独立に、縮環してもよい5員又は6員の含窒素複素環を形成する非金属原子群を表し、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい脂肪族基又は置換基を有してもよい芳香族基を表し、Lは、奇数個のメチンからなるメチン鎖を表し、a及びbは、それぞれ独立に、0又は1である。
式(A)中のCyで表される部位がカチオン部である場合、Xはアニオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、
式(A)中のCyで表される部位がアニオン部である場合、Xはカチオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、
式(A)中のCyで表される部位の電荷が分子内で中和されている場合、Xは存在しない。
【0009】
<2> 式(A)で表される赤外線吸収材料が、下記式(1A)で表される赤外線吸収材料である<1>に記載の赤外線吸収画像形成用インクジェットインク。
【0010】
【化2】
【0011】
式(1A)中、R1A及びR2Aは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、
1Aは、奇数個のメチンからなるメチン鎖を表し、
及びBは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香族炭化水素環を形成するために必要な原子群又は置換基を有してもよい芳香族ヘテロ環を形成するのに必要な原子群を表す。
及びYは、それぞれ独立に、-S-、-O-、-NRX1-又はCRX2X3-を表し、RX1、RX2及びRX3は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。
1A及びV2Aは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、-OR10、-COR11、-COOR12、-OCOR13、-NR1415、-NHCOR16、-CONR1718、-NHCONR1920、-NHCOOR21、-SR22、-SO23、-SOOR24、-NHSO25又はSONR2627を表し、R10~R27は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。-COOR12のR12が水素原子である場合及びSOOR24のR24が水素原子である場合、それぞれ、水素原子が解離していてもよいし、塩の状態であってもよい。
m1及びm2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。
m1が2~4の整数である場合、複数のV1Aが、互いに結合して環を形成してもよく、m2が2~4の整数である場合、複数のV2Aが、互いに結合して環を形成してもよい。
式(1A)中のCyで表される部位がカチオン部である場合、Xはアニオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、
式(1A)中のCyで表される部位がアニオン部である場合、Xはカチオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、
式(1A)中のCyで表される部位の電荷が分子内で中和されている場合、Xは存在しない。
【0012】
<3> 式(1A)で表される赤外線吸収材料の少なくとも1種が、下記式(1B)で表される赤外線吸収材料である<2>に記載の赤外線吸収画像形成用インクジェットインク。
【0013】
【化3】
【0014】
式(1B)中、R1B及びR2Bは、それぞれ独立に、置換基としてスルホネート基を有するアルキル基を表し、
1Bは、7個のメチンからなるメチン鎖を表し、
はカチオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表す。
【0015】
<4> 赤外線吸収画像形成用インクジェットインクの全量に対する水溶性有機溶剤の含有量が、5質量%~30質量%である<1>~<3>のいずれか1つに記載の赤外線吸収画像形成用インクジェットインク。
<5> 更に、樹脂粒子を含有する<1>~<4>のいずれか1つに記載の赤外線吸収画像形成用インクジェットインク。
<6> 更に、着色剤を含有する<1>~<5>のいずれか1つに記載の赤外線吸収画像形成用インクジェットインク。
<7> 更に、水溶性高分子化合物を含有する<1>~<6>のいずれか1つに記載の赤外線吸収画像形成用インクジェットインク。
<8> 更に、ゼラチンを含有する<1>~<7>のいずれか1つに記載の赤外線吸収画像形成用インクジェットインク。
【0016】
<9> 基材上に、<1>~<8>に記載のいずれか1つに記載の赤外線吸収画像形成用インクジェットインクを、インクジェット法によって付与して赤外線吸収画像を形成する工程を含む赤外線吸収画像形成方法。
<10> 赤外線吸収画像を形成する工程の前に、基材上に、凝集剤を含有する処理液を付与する工程を含み、
赤外線吸収画像を形成する工程は、基材上の処理液が付与された領域上の少なくとも一部に赤外線吸収画像形成用インクジェットインクを、インクジェット法によって付与して赤外線吸収画像を形成する<9>に記載の画像形成方法。
【0017】
<11> <9>又は<10>に記載の赤外線吸収画像形成方法によって基材上に赤外線吸収画像を形成する工程と、
赤外線吸収画像に対し、赤外線を照射して画像を得る工程と、
を含む画像形成方法。
<12> 赤外線が、700nm~1500nmの波長領域に極大発光波長を有する<11>に記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、赤外線吸収材料の会合形成性に優れる赤外線吸収画像を形成できる、赤外線吸収画像形成用インクジェットインク及び赤外線吸収画像形成方法、並びに、上記赤外線吸収画像に赤外線を照射することにより、耐擦性に優れた画像を形成できる画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例12の画像形成において、インクジェットヘッドからインクを付与して赤外線吸収画像を形成してから、形成された赤外線吸収画像に対し、赤外線照射及び温風吹きつけを施すまでの様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
また、本開示において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0021】
本開示における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本開示における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
本開示において、“(メタ)アクリレート”はアクリレート及びメタクリレートを表し、“(メタ)アクリル”はアクリル及びメタクリルを表し、“(メタ)アクリロイル”はアクリロイル及びメタクリロイルを表す。
【0022】
〔赤外線吸収画像形成用インクジェットインク〕
本開示の赤外線吸収画像形成用インクジェットインク(以下、単に「インク」ともいう)は、
下記式(A)で表される赤外線吸収材料(以下、「特定赤外線吸収材料」ともいう)と、水溶性有機溶剤と、水と、を含有し、
赤外線吸収画像形成用インクジェットインクの全量に対する上記水溶性有機溶剤の含有量が5質量%~45質量%であり、
上記水溶性有機溶剤中に占める、SP値27.5MPa1/2以上の溶剤種Xの割合が50質量%以上である。
【0023】
【化4】
【0024】
式(A)中の各符号の意味は、後述する。
【0025】
本開示のインクによれば、含有される赤外線吸収材料の会合形成性に優れる赤外線吸収画像を形成できる。
本開示において、「含有される赤外線吸収材料の会合形成性に優れる赤外線吸収画像」とは、赤外線吸収画像に含有される赤外線吸収材料の全分子のうち、会合を形成しているものの割合が大きい赤外線吸収画像を意味する。
【0026】
ここでいう会合は、好ましくはJ会合である。
J会合及びJ会合体については後述する。
【0027】
本開示では、赤外線吸収画像について600nm以上850nm以下の波長領域における最も低い反射率βに対する900nm以上の波長領域における最も低い反射率αの比(以下、α/β比ともいう)を求め、α/β比が小さい程、赤外線吸収画像に含有される赤外線吸収材料の会合形成性に優れると判断するものとする。
【0028】
α/β比は、以下のようにして確認する。
基材上にインクを付与し、乾燥させて厚さ2μmの膜を形成する。
形成された膜について、900nm以上の波長領域における最も低い反射率αと600nm以上850nm以下の波長領域における最も低い反射率βとをそれぞれ測定する。測定された結果に基づき、反射率βに対する反射率αの比率(α/β比)を求める。
α/β比は、好ましくは1.2未満であり、より好ましくは1.0未満であり、更に好ましくは0.8未満である。
【0029】
本開示のインクによって上記効果が奏される理由は、以下のように推測される。
本開示のインクでは、水溶性有機溶剤の含有量が5質量%~45質量%であること、及び、水溶性有機溶剤中に占めるSP値27.5MPa1/2以上の溶剤種Xの割合が50質量%以上であることにより、基材に付与される前のインクの段階において、特定赤外線吸収材料の会合がある程度進行していると考えられる。その結果、基材上に形成された赤外線吸収画像中における、特定赤外線吸収材料の会合形成性が高まると考えられる。
【0030】
より詳細には、水溶性有機溶剤の含有量が45質量%以下に制限されていることにより、特定赤外線吸収材料同士の分子間相互作用が阻害されにくいので、インク中における特定赤外線吸収材料の会合が進行すると考えられる。
更に、水溶性有機溶剤中に占める、SP値27.5MPa1/2以上の溶剤種Xの割合が50質量%以上であることにより、インク中の液体の極性を高く保てるので、インク中における特定赤外線吸収材料の会合が進行すると考えられる。
【0031】
本開示において、「赤外線吸収画像」とは、赤外線吸収性を有する画像を意味する。
「赤外線吸収画像」の好ましい分光特性(極大吸収波長、最大吸収波長等)については、後述する「赤外線吸収画像形成方法」の項で説明する。
【0032】
本開示における赤外線吸収画像は、赤外線吸収性を有する不可視画像(即ち、視認されにくい画像)であってもよいし、赤外線吸収性を有する可視画像(例えば、着色画像)であってもよい。
【0033】
不可視画像である態様の赤外線吸収画像は、例えば、商品の偽造防止等を目的とした不可視画像(例えば、不可視コードパターン)として有用である。不可視画像の詳細については、例えば、前述の特許文献1(特開2008-255323号公報)を参照できる。
本開示のインクによれば、特定赤外線吸収材料の会合形成性に優れる(言い換えれば赤外線吸収性に優れる)赤外線吸収画像が得られる。このため、本開示のインクを、不可視画像である態様の赤外線吸収画像の形成に適用した場合には、赤外線による読み取り性に優れた不可視画像(例えば、コードパターン)を形成できる。
【0034】
また、着色画像(可視画像)である態様の赤外線吸収画像は、赤外線照射によって着色画像を得るための前駆体として有用である。
前述したとおり、本開示のインクによれば、特定赤外線吸収材料の会合形成性に優れる(言い換えれば赤外線吸収性に優れる)赤外線吸収画像が得られる。このため、本開示のインクによって形成された、着色画像である態様の赤外線吸収画像(前駆体)に対し、赤外線を照射した場合には、上記赤外線吸収画像(前駆体)が赤外線を吸収して熱が発生する。この熱により、上記赤外線吸収画像(前駆体)自身が効率よく加熱され、その結果、耐擦性に優れた着色画像が得られる。
かかる着色画像の形成の詳細については、例えば、後述の「画像形成方法」の項を参照できる。
【0035】
以下、本開示のインクに含有され得る各成分について説明する。
【0036】
<特定赤外線吸収材料>
本開示のインクは、特定赤外線吸収材料、即ち、式(A)で表される赤外線吸収材料を少なくとも1種含有する。
【0037】
【化5】
【0038】
式(A)中、Z及びZは、それぞれ独立に、縮環してもよい5員又は6員の含窒素複素環を形成する非金属原子群を表し、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい脂肪族基又は置換基を有してもよい芳香族基を表し、Lは、奇数個のメチンからなるメチン鎖を表し、a及びbは、それぞれ独立に、0又は1である。
式(A)中のCyで表される部位がカチオン部である場合、Xはアニオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、
式(A)中のCyで表される部位がアニオン部である場合、Xはカチオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、
式(A)中のCyで表される部位の電荷が分子内で中和されている場合、Xは存在しない。
【0039】
式(A)において、Z及びZは、それぞれ独立に、縮環してもよい5員又は6員の含窒素複素環を形成する非金属原子群を表す。
含窒素複素環には、他の複素環、芳香族環又は脂肪族環が縮合してもよい。
含窒素複素環は、5員環が好ましい。5員の含窒素複素環にベンゼン環又はナフタレン環が縮合しているのがさらに好ましい。
含窒素複素環の具体例としては、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ナフトオキサゾール環、オキサゾロカルバゾール環、オキサゾロジベンゾフラン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ナフトチアゾール環、インドレニン環、ベンゾインドレニン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ナフトイミダゾール環、キノリン環、ピリジン環、ピロロピリジン環、フロピロール環、インドリジン環、イミダゾキノキサリン環、キノキサリン環等が挙げられ、キノリン環、インドレニン環、ベンゾインドレニン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環が好ましく、インドレニン環、ベンゾインドレニン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環が特に好ましい。
【0040】
含窒素複素環及びそれに縮合している環は、置換基を有していてもよい。
置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、-OR10、-COR11、-COOR12、-OCOR13、-NR1415、-NHCOR16、-CONR1718、-NHCONR1920、-NHCOOR21、-SR22、-SO23、-SOOR24、-NHSO25又はSONR2627が挙げられる。R10~R27は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、又はヘテロ環基を表す。なお、-COOR12のR12が水素の場合(すなわち、カルボキシ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボキシレート基)、塩の状態であってもよい。また、-SOOR24のR24が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。
【0041】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0042】
脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアラルキル基が挙げられる。これらの基は置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられ、カルボキシ基及びスルホ基が好ましく、スルホ基が特に好ましい。カルボキシ基及びスルホ基は、水素原子が解離していてもよく、塩の状態であってもよい。
【0043】
アルキル基は、環状であっても鎖状であってもよい。鎖状アルキル基は、分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~12がさらに好ましく、1~8が最も好ましい。アルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基及び2-エチルヘキシル基が挙げられる。置換を有するアルキル基の例には、2-ヒドロキシエチル基、2-カルボキシエチル基、2-メトキシエチル基、2-ジエチルアミノエチル基、2-スルホエチル基、3-スルホプロピル基、3-スルホブチル基及び4-スルホブチル基などが挙げられる。
アルケニル基は、環状であっても鎖状であってもよい。鎖状アルケニル基は、分基を有していてもよい。アルケニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がさらに好ましく、2~8が最も好ましい。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、2-ブテニル基、2-ペンテニル基及び2-ヘキセニル基などが挙げられる。
アルキニル基は、環状であっても鎖状であってもよい。鎖状アルキニル基は、分基を有していてもよい。アルキニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がさらに好ましく、2~8が最も好ましい。アルキニル基の例には、エチニル基及び2-プロピニル基が挙げられる。
アラルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アラルキル基のアリール部分は、後述するアリール基と同様である。アラルキル基の例には、ベンジル及びフェネチルが挙げられる。
【0044】
本開示において、芳香族基は、アリール基が挙げられる。アリール基は置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した脂肪族基が有してもよい置換基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
アリール基の炭素数は、6~25が好ましく、6~15がさらに好ましく、6~10が最も好ましい。アリール基の例として、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。置換基を有するアリール基としては、4-カルボキシフェニル基、4-アセトアミドフェニル基、3-メタンスルホンアミドフェニル基、4-メトキシフェニル基、3-カルボキシフェニル基、3,5-ジカルボキシフェニル基、4-メタンスルホンアミドフェニル基及び4-ブタンスルホンアミドフェニル基が挙げられる。
【0045】
本開示において、ヘテロ環基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した脂肪族基が有してもよい置換基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
ヘテロ環基のヘテロ環は、5又は6員環であることが好ましい。ヘテロ環は、単環であってもよく縮合環であってもよい。ヘテロ環の例には、ピリジン環、ピペリジン環、フラン環基、フルフラン環、チオフェン環、ピロール環、キノリン環、モルホリン環、インドール環、イミダゾール環、ピラゾール環、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、インドリン環、チアゾール環、ピラジン環、チアジアジン環、ベンゾキノリン環及びチアジアゾール環が挙げられる。
【0046】
式(A)において、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい脂肪族基又は置換基を有してもよい芳香族基を表す。
脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基が挙げられる。
芳香族基としては、アリール基が挙げられる。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基及びアリール基としては、それぞれ、上記の置換基で説明したものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられ、カルボキシ基及びスルホ基が好ましく、スルホ基が特に好ましい。カルボキシ基及びスルホ基は、水素原子が解離していてもよく、塩の状態であってもよい。
【0047】
式(A)において、Lは、奇数個のメチンからなるメチン鎖を表す。Lは、3、5又は7のメチン基からなるメチン鎖が好ましい。
メチン基は置換基を有していてもよい。置換基を有するメチン基は、中央の(メソ位の)メチン基であることが好ましい。置換基の具体例としては、Z及びZの含窒素複素環が有してもよい置換基と同様である。また、メチン鎖の二つの置換基が結合して5又は6員環を形成しても良い。
【0048】
式(A)において、a及びbは、それぞれ独立に、0又は1である。a及びbはともに0であることが好ましい。なお、a及びbがともに0の場合は、式(A)は以下のように表される。
【0049】
【化6】
【0050】
式(A)において、式中のCyで表される部位がカチオン部である場合、Xはアニオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表す。アニオンの例としては、ハライドイオン(Cl、Br、I)、p-トルエンスルホン酸イオン、エチル硫酸イオン、PF 、BF 又はClO 、トリス(ハロゲノアルキルスルホニル)メチドアニオン(例えば、(CFSO)、ジ(ハロゲノアルキルスルホニル)イミドアニオン(例えば(CFSO)、テトラシアノボレートアニオンなどが挙げられる。
式(A)において、式中のCyで表される部位がアニオン部である場合、Xはカチオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表す。カチオンとしては、アルカリ金属イオン(Li、Na、Kなど)、アルカリ土類金属イオン(Mg2+、Ca2+、Ba2+、Sr2+など)、遷移金属イオン(Ag、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+など)、その他の金属イオン(Al3+など)、アンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、グアニジニウムイオン、テトラメチルグアニジニウムイオン、ジアザビシクロウンデセニウムなどが挙げられる。カチオンとしては、Na、K、Mg2+、Ca2+、Zn2+、ジアザビシクロウンデセニウムが好ましい。
式(A)において、式中のCyで表される部位の電荷が分子内で中和されている場合、Xは存在しない。
【0051】
式(A)で表される化合物は、下記式(1A)で表される化合物であることがより好ましい。
【0052】
【化7】
【0053】
式(1A)中、R1A及びR2Aは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、
1Aは、奇数個のメチンからなるメチン鎖を表し、
及びBは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香族炭化水素環を形成するために必要な原子群又は置換基を有してもよい芳香族ヘテロ環を形成するのに必要な原子群を表す。
及びYは、それぞれ独立に、-S-、-O-、-NRX1-又はCRX2X3-を表し、RX1、RX2及びRX3は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。
1A及びV2Aは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、-OR10、-COR11、-COOR12、-OCOR13、-NR1415、-NHCOR16、-CONR1718、-NHCONR1920、-NHCOOR21、-SR22、-SO23、-SOOR24、-NHSO25又はSONR2627を表し、R10~R27は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。-COOR12のR12が水素原子である場合及びSOOR24のR24が水素原子である場合、それぞれ、水素原子が解離していてもよいし、塩の状態であってもよい。
m1及びm2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。
m1が2~4の整数である場合、複数のV1Aが、互いに結合して環を形成してもよく、m2が2~4の整数である場合、複数のV2Aが、互いに結合して環を形成してもよい。
式(1A)中のCyで表される部位がカチオン部である場合、Xはアニオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、
式(1A)中のCyで表される部位がアニオン部である場合、Xはカチオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、
式(1A)中のCyで表される部位の電荷が分子内で中和されている場合、Xは存在しない。
【0054】
式(1A)中、R1A及びR2Aの各々で表される、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、及び置換基を有してもよいヘテロ環基の各々における置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられ、カルボキシ基又はスルホ基が好ましく、スルホ基が特に好ましい。カルボキシ基(-COOH基)及びスルホ基(-SOH基)は、水素原子が解離していてもよく(即ち、それそれ、カルボキシレート基(-COO基)及びスルホネート基(-SO 基)の形態であってもよく)、塩の形態(例えば、-COOK基、-SOK基の形態)であってもよい。
【0055】
本開示において、特定赤外線吸収材料中のカルボキシ基が塩の形態である場合、塩の形態のカルボキシ基は、カルボキシレート基(-COO基)と、Xで表されるカチオンと、から形成されているものであってもよい。
本開示において、特定赤外線吸収材料中のスルホ基が塩の形態である場合、塩の形態のスルホ基は、スルホネート基(-SO 基)と、Xで表されるカチオンと、から形成されているものであってもよい。
【0056】
1A及びR2Aの各々で表される、置換基を有してもよいアルキル基は、環状であっても鎖状であってもよい。鎖状アルキル基は、分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素数(置換基を有する場合には、置換基を除いた部分の炭素数)は、1~20が好ましく、1~12が更に好ましく、1~8が更に好ましい。アルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基及び2-エチルヘキシル基が挙げられる。置換を有するアルキル基の例には、2-ヒドロキシエチル基、2-カルボキシエチル基、2-メトキシエチル基、2-ジエチルアミノエチル基、2-スルホエチル基、3-スルホプロピル基、3-スルホブチル基及び4-スルホブチル基などが挙げられる。
【0057】
1A及びR2Aの各々で表される、置換基を有してもよいアルケニル基は、環状であっても鎖状であってもよい。鎖状アルケニル基は、分基を有していてもよい。アルケニル基の炭素数(置換基を有する場合には、置換基を除いた部分の炭素数)は、2~20が好ましく、2~12が更に好ましく、2~8が更に好ましい。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、2-ブテニル基、2-ペンテニル基及び2-ヘキセニル基などが挙げられる。
【0058】
1A及びR2Aの各々で表される、置換基を有してもよいアルキニル基は、環状であっても鎖状であってもよい。鎖状アルキニル基は、分基を有していてもよい。アルキニル基の炭素数(置換基を有する場合には、置換基を除いた部分の炭素数)は、2~20が好ましく、2~12が更に好ましく、2~8が更に好ましい。アルキニル基の例には、エチニル基及び2-プロピニル基が挙げられる。
【0059】
1A及びR2Aの各々で表される、置換基を有してもよいアラルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アラルキル基のアリール部分は、後述するアリール基と同様である。アラルキル基の例としては、ベンジル基及びフェネチル基が挙げられる。
【0060】
1A及びR2Aの各々で表される、置換基を有してもよいアリール基の炭素数(置換基を有する場合には、置換基を除いた部分の炭素数)は、6~25が好ましく、6~15が更に好ましく、6~10が更に好ましい。アリール基の例として、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
置換基を有するアリール基としては、4-カルボキシフェニル基、4-アセトアミドフェニル基、3-メタンスルホンアミドフェニル基、4-メトキシフェニル基、3-カルボキシフェニル基、3,5-ジカルボキシフェニル基、4-メタンスルホンアミドフェニル基及び4-ブタンスルホンアミドフェニル基が挙げられる。
【0061】
1Aは、奇数個のメチン基からなるメチン鎖を表す。
1Aは、3個、5個又は7個のメチン基からなるメチン鎖が好ましく、5個又は7個のメチン基からなるメチン鎖がより好ましく、7個のメチン基からなるメチン鎖が更に好ましい。
【0062】
メチン基は置換基を有していてもよい。置換基を有するメチン基は、中央の(メソ位の)メチン基であることが好ましい。また、メチン鎖の二つの置換基が結合して5又は6員環を形成してもよい。
【0063】
メチン基が有してもよい置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、シアノ基、ニトロ基、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、-OR10、-COR11、-COOR12、-OCOR13、-NR1415、-NHCOR16、-CONR1718、-NHCONR1920、-NHCOOR21、-SR22、-SO23、-SOOR24、-NHSO25又はSONR2627が挙げられる。R10~R27は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。なお、-COOR12のR12が水素原子である場合(すなわち、カルボキシ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボキシレート基(-COO基)であってもよく)、塩(例えば、-COOK基)の状態であってもよい。また、-SOOR24のR24が水素原子である場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。
【0064】
メチン基が有してもよい置換基のうち、脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアラルキル基が挙げられる。
メチン基が有してもよい置換基のうち、脂肪族基の好ましい態様は、R1A及びR2Aの各々で表される、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、及び置換基を有してもよいアラルキル基の各々の好ましい態様と同様である。
10~R27の各々で表される、脂肪族基の好ましい態様も同様である。
【0065】
メチン基が有してもよい置換基のうち、アリール基の好ましい態様は、R1A及びR2Aの各々で表される、置換基を有してもよいアリール基の好ましい態様と同様である。
10~R27の各々で表される、アリール基の好ましい態様も同様である。
【0066】
メチン基が有してもよい置換基のうち、ヘテロ環基におけるヘテロ環は、5員環又は6員環であることが好ましい。ヘテロ環は、単環であってもよく縮合環であってもよい。ヘテロ環の例としては、ピリジン環、ピペリジン環、フラン環基、フルフラン環、チオフェン環、ピロール環、キノリン環、モルホリン環、インドール環、イミダゾール環、ピラゾール環、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、インドリン環、チアゾール環、ピラジン環、チアジアジン環、ベンゾキノリン環及びチアジアゾール環が挙げられる。
10~R27の各々で表される、ヘテロ環基の例も同様である。
【0067】
以下、L1Aで表されるメチン鎖の具体例を示すが、L1Aで表されるメチン鎖は、以下の具体例に限定されるものではない。
以下の具体例において、*は、結合位置を意味する。
【0068】
【化8】
【0069】
これらの具体例中、
本開示のインクによる効果をより効果的に発揮させる観点からみて、
基L1-6~基L1-28が好ましく、
基L1-12~基L1-28がより好ましく、
基L1-12、基L1-15、基L1-16、基L1-21、又は基L1-27が更に好ましい。
【0070】
式(1A)中、B及びBは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香族炭化水素環を形成するために必要な原子群又は置換基を有してもよい芳香族ヘテロ環を形成するのに必要な原子群を表す。B及びBの各々により形成された環は置換基を有してもよい。
【0071】
及びBの各々によって形成される、置換基を有してもよい芳香族炭化水素環における置換基の例は、R1A又はR2Aの各々で表される、置換基を有してもよいアルキル基等における置換基の例と同様である。
【0072】
及びBの各々によって形成される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環を挙げることができる。
及びBの各々により形成される芳香族ヘテロ環としては、環構成原子に少なくとも1つの窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を有する芳香族ヘテロ環が好ましい。B及びBの各々により形成される芳香族ヘテロ環は、他の環(脂環、芳香環又はヘテロ環)で縮合していても構わない。
及びBの各々により形成される芳香族ヘテロ環としては、5~10員環が好ましい。
及びBの各々により形成される芳香族ヘテロ環としては、上記芳香族ヘテロ環としては、ピリジン環、ジベンゾフラン環、カルバゾール環などを挙げることができる。
【0073】
式(1A)中、B及びBは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香族炭化水素環(好ましくはベンゼン環)を形成するために必要な原子群を表すこと(例えば、後述の式(1B)の態様)が好ましい。
【0074】
式(1A)中、Y及びYは、各々独立に-S-、-O-、-NRX1-又はCRX2X3-を表し、RX1及びRX2は、各々独立に水素原子又はアルキル基を表す。
及びYとしては、-NRX1-又は-CRX2X3-が好ましい。
X1、RX2及びRX3は、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表し、アルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖又は分岐が好ましく、直鎖が特に好ましい。アルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0075】
1A及びV2Aは、それぞれ独立に、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、-OR10、-COR11、-COOR12、-OCOR13、-NR1415、-NHCOR16、-CONR1718、-NHCONR1920、-NHCOOR21、-SR22、-SO23、-SOOR24、-NHSO25又はSONR2627を表し、R10~R27は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。-COOR12のR12が水素原子である場合及びSOOR24のR24が水素原子である場合、それぞれ、水素原子が解離していてもよいし(即ち、それぞれ、-COO基及び-SO 基であってもよいし)、塩の状態であってもよい(例えば、それぞれ、-COOK及び-SOK基の状態であってもよい)。
m1及びm2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。
m1が2~4の整数である場合、複数のV1Aが、互いに結合して環を形成してもよく、m2が2~4の整数である場合、複数のV2Aが、互いに結合して環を形成してもよい。
【0076】
1A及びV2Aの各々の好ましい態様は、メチン基が有していてもよい置換基の好ましい態様と同様である。
【0077】
また、式(1A)の好ましい態様として、m1及びm2が、それぞれ2であり、2個のV1Aが、互いに結合し、置換基を有してもよいベンゼン環を形成し、2個のV1Bが、互いに結合し、置換基を有してもよいベンゼン環(例えば、後述する式(1B)の態様)を形成している態様も挙げられる。
式(1A)の更に好ましい態様は、m1及びm2が、それぞれ2であり、2個のV1Aが、互いに結合し、置換基(好ましくは、カルボキシレート基、カルボキシ基の塩、スルホネート基、又はスルホ基の塩、特に好ましくは、スルホネート基、又はスルホ基の塩)を有するベンゼン環を結合している態様(後述する式(1B)の態様)である。
【0078】
式(1A)中のCyで表される部位がカチオン部である場合、Xはアニオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、
式(1A)中のCyで表される部位がアニオン部である場合、Xはカチオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、
式(1A)中のCyで表される部位の電荷が分子内で中和されている場合、Xは存在しない。
【0079】
で表されるアニオンとしては、ハライドイオン(Cl、Br、I)、p-トルエンスルホン酸イオン、エチル硫酸イオン、PF 、BF 又はClO 、トリス(ハロゲノアルキルスルホニル)メチドアニオン(例えば、(CFSO)、ジ(ハロゲノアルキルスルホニル)イミドアニオン(例えば(CFSO)、テトラシアノボレートアニオンなどが挙げられる。
【0080】
で表されるアニオンとしては、ハライドイオン(Cl、Br、I)、p-トルエンスルホン酸イオン、エチル硫酸イオン、PF 、BF 又はClO 、トリス(ハロゲノアルキルスルホニル)メチドアニオン(例えば、(CFSO)、ジ(ハロゲノアルキルスルホニル)イミドアニオン(例えば(CFSO)、テトラシアノボレートアニオンなどが挙げられる。
で表されるカチオンとしては、アルカリ金属イオン(Li、Na、Kなど)、アルカリ土類金属イオン(Mg2+、Ca2+、Ba2+、Sr2+など)、遷移金属イオン(Ag、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+など)、その他の金属イオン(Al3+など)、アンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、グアニジニウムイオン、テトラメチルグアニジニウムイオン、ジアザビシクロウンデセニウムなどが挙げられる。Xで表されるカチオンとしては、Na、K、Mg2+、Ca2+、Zn2+、ジアザビシクロウンデセニウムが好ましい。
【0081】
cは、電荷のバランスを取るために必要な数であれば特に限定はない。式(1A)中のCyで表される部位の電荷が分子内で中和されている場合、Xは存在しない。
【0082】
本開示において、「電荷のバランスを取るために必要な数」とは、化合物全体の電荷を中和するために必要な数を意味する。
cとしては、例えば、0、1/2、3/2、3、等が挙げられる。
【0083】
本開示のインクによる効果をより効果的に得る観点から、特定赤外線吸収材料(即ち、式(1A)で表される赤外線吸収材料)の少なくとも1種は、下記式(1B)で表される赤外線吸収材料であることが好ましい。
この場合、特定赤外線吸収材料中に占める式(1B)で表される赤外線吸収材料の割合は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは60質量%~100質量%であり、更に好ましくは80質量%~100質量%である。
【0084】
【化9】
【0085】
式(1B)中、R1B及びR2Bは、それぞれ独立に、置換基としてスルホネート基を有するアルキル基を表し、
1Bは、7個のメチンからなるメチン鎖を表し、
はカチオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表す。
【0086】
式(1B)中、R1B及びR2Bの各々としての、置換基としてスルホネート基を有するアルキル基の好ましい態様は、置換基がスルホネート基に限定されていることを除けば、
式(1A)中のR1A及びR2Aの各々で表される、置換基を有してもよいアルキル基の好ましい態様と同様である。
【0087】
1B及びR2Bの各々としての、置換基としてスルホネート基を有するアルキル基は、Xで表されるカチオンともに、スルホ基の塩を形成していてもよい。
また、式(1B)中のベンゼン環に置換している2つのスルホネート基(-SO 基)は、それぞれ、Xで表されるカチオンともに、スルホ基の塩を形成していてもよい。
【0088】
式(1B)中、L1Bで表される、7個のメチンからなるメチン鎖の好ましい態様は、メチンの数が7個に限定されていることを除き、式(1A)中のL1Aで表されるメチン鎖と同様である。
1Bとしては、
前述した具体例における基L1-12~基L1-28がより好ましく、
基L1-12、基L1-15、基L1-16、基L1-21、又は基L1-27が更に好ましい。
【0089】
式(1B)中、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表す。
cとして、好ましくは、3/2、又は、3である。
【0090】
式(1B)中、Xで表されるカチオンの例及び好ましい態様は、式(1A)中のXで表されるカチオンの例及び好ましい態様と同様である。
で表されるカチオンとして、更に好ましくは、Na、K、Mg2+、Ca2+、Zn2+であり、更に好ましくは、K又はMg2+である。
【0091】
以下、特定赤外線吸収材料(即ち、式(A)で表される赤外線吸収材料)の具体例(化合物C-1~C-69)を以下に示すが、特定赤外線吸収材料は、以下の具体例には限定されない。
下記具体例中、Me、Et、Ph、PRS、BUSは、それぞれ、メチル基、エチル基、フェニル基、CSO3-基、CSO3-基を表す。
【0092】
【化10】
【0093】
【化11】
【0094】
【化12】
【0095】
【化13】
【0096】
【化14】
【0097】
【化15】
【0098】
【化16】
【0099】
【化17】
【0100】
上記特定赤外線吸収材料の具体例中、本開示のインクによる効果をより効果的に発揮させる観点からみた特に好ましい化合物は、
化合物C-36、化合物C-43、化合物C-46、化合物C-49、化合物C-50~C-69である。
その中でも特に好ましい化合物は、
化合物C-51~C-69であり、
その中でも特に好ましい化合物は、
化合物C-55~C-59及びC-66~C-69である。
【0101】
上述した特定赤外線吸収材料の含有量は、インクの全量に対し、好ましくは0.01質量%~5質量%であり、より好ましくは0.05質量%~2質量%であり、更に好ましくは0.1質量%~1質量%である。
【0102】
<水溶性有機溶剤>
本開示のインクは、水溶性有機溶剤を少なくとも1種含有する。
水溶性有機溶剤としては、特に制限なく、インクジェットインクの分野において公知の水溶性有機溶剤を使用することが可能である。
【0103】
本開示において、「水溶性」とは、25℃の水100gに対して1g以上溶解する性質を意味する。
本開示における「水溶性」としては、25℃の水100gに対して5g以上(より好ましくは10g以上)溶解する性質が好ましい。
【0104】
本開示のインクの全量に対する水溶性有機溶剤の含有量は、5質量%~45質量%である。
水溶性有機溶剤の含有量が5質量%以上であることは、インクの吐出性向上に寄与する。水溶性有機溶剤の含有量は、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上である。
水溶性有機溶剤の含有量が45質量%以下であることは、インク中における特定赤外線吸収材料の会合形成性の向上に寄与し、その結果、赤外線吸収画像中における特定赤外線吸収材料の会合形成性の向上に寄与する。
インク中及び赤外線吸収画像中における特定赤外線吸収材料の会合形成性をより向上させる観点からみて、水溶性有機溶剤の含有量は、より好ましくは5質量%~30質量%である。
【0105】
(溶剤種X)
上記水溶性有機溶剤中に占める(即ち、本開示のインクに含有される全ての水溶性有機溶剤中に占める)、SP値27.5MPa1/2以上の溶剤種Xの割合は、50質量%以上である。
これにより、インク中における特定赤外線吸収材料の会合形成性が向上し、その結果、赤外線吸収画像中における特定赤外線吸収材料の会合形成性が向上する。この理由は明らかではないが、インク中の溶媒の極性が高い方が分子間相互作用を妨げないためと考えられる。
【0106】
上記水溶性有機溶剤中に占める溶剤種Xの割合は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。
上記水溶性有機溶剤中に占める溶剤種Xの割合は、100質量%であってもよい。
【0107】
溶剤種Xは、SP値が27.5MPa1/2以上である水溶性有機溶剤である。
本開示において、SP値(溶解度パラメーター/単位:MPa1/2)とは、分子凝集エネルギーの平方根で表される値で、R.F.Fedors,Polymer Engineering Science,14,p147~154(1974)に記載の方法で計算した値を意味する。
【0108】
以下、溶剤種Xの具体例を示すが、溶剤種Xは以下の具体例に限定されるものではない。下記具体例の後ろのカッコ内の数値はSP値(単位:MPa1/2)である。
【0109】
溶剤種Xとしては、プロピレングリコール(27.5)、エチレングリコール(30.34)、ジエチレングリコール(30.62)、トリエチレングリコール(27.79)、2-メチル-1,3-ブタンジオール(28.27)、1,2-ペンタンジオール(28.64)、1,5-ペンタンジオール(28.96)、1,6-ヘキサンジオール(27.66)、グリセリン(33.52)、ジメチルホルムアミド(30.62)、メタノール(28.17)、イソプロピルアルコール(28.69)、トリエタノールアミン(32.27)、等が挙げられる。
【0110】
(その他の溶剤種)
本開示のインクは、溶剤種X以外の水溶性有機溶剤(以下、溶剤種Yともいう)を含有してもよい。
溶剤種Yは、SP値が27.5MPa1/2未満である水溶性有機溶剤である。
【0111】
以下、溶剤種Yの具体例を示すが、溶剤種Yは以下の具体例に限定されるものではない。下記具体例の後ろのカッコ内の数値はSP値(単位:MPa1/2)である。
【0112】
溶剤種Yとしては、ジプロピレングリコール(27.1)、エチレングリコールモノエチルエーテル(23.47)、エチレングリコールモノブチルエーテル(22.12)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(22.98)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(22.4)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル(21.9)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(21.5)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(22.1)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(21.7)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(21.1)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(23.05)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(22.34)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(21.79)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(21.35)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(21.3)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(20.69)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(20.45)、ジプロピレングリコールt-ブチルエーテル(19.98)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(20.4)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(20.91)、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル(20.46)、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル(20.26)、nC(OR)-OH(R=エチレン基又はプロピレン基;比率はエチレン基:プロピレン基=1:1)(20.1)、等が挙げられる。
【0113】
<水>
本開示のインクは、水を含有する。
水の含有量としては、インクの全量に対し、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。
上記水の含有量の上限は特に限定されず、他の成分の含有量により決定すればよいが、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、95質量%以下であることが更に好ましい。
【0114】
<樹脂粒子>
本開示のインクは、樹脂粒子を少なくとも1種含有することが好ましい。
これにより、画像の耐擦性がより向上する。更に、画像中における、特定赤外線吸収材料の会合体の安定性が向上すると推定され、特定赤外線吸収材料の会合形成性がより高まると考えられる。
樹脂粒子としては、樹脂を含む粒子であれば特に限定されないが、樹脂からなる粒子であることが好ましい。
樹脂粒子の形状は、特に限定されず、不定形状、多面体状や中空形状の粒子であってもよいが、インクジェット法における吐出性の観点から、球形状の粒子であることが好ましい。
【0115】
樹脂粒子としては、例えば、熱可塑性、熱硬化性あるいは変性のアクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリアミド系、不飽和ポリエステル系、フェノール系、シリコーン系、又はフッ素系の樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、又はポリビニルブチラール等のポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、フタル酸樹脂等のポリエステル系樹脂、メラミン樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アミノアルキド共縮合樹脂、ユリア樹脂、尿素樹脂等のアミノ系材料、あるいはそれらの共重合体又は混合物などのアニオン性基を有する樹脂の粒子が挙げられる。
これらの樹脂のうち、アニオン性のアクリル系樹脂は、例えば、アニオン性基を有するアクリルモノマー(アニオン性基含有アクリルモノマー)及び必要に応じてアニオン性基含有アクリルモノマーと共重合可能な他のモノマーを溶剤中で重合して得られる。
アニオン性基含有アクリルモノマーとしては、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる1以上を有するアクリルモノマーが挙げられ、中でもカルボキシ基を有するアクリルモノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸等)が好ましく、特にはアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。
【0116】
樹脂粒子としては、耐擦性及びドット形状の観点から、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル-スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋されたアクリル樹脂、架橋されたスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等の粒子が好ましく、アクリル系樹脂粒子、ウレタン系樹脂粒子、ポリエチレン系樹脂粒子、及びスチレン-アクリル樹脂粒子よりなる群から選ばれた少なくとも1種がより好ましく、アクリル系樹脂粒子が更に好ましい。
【0117】
樹脂粒子は、インクの安定性(特に分散安定性)の観点から、自己分散性樹脂の粒子(自己分散性樹脂粒子)であることが好ましい。
ここで、自己分散性樹脂とは、界面活性剤の不存在下、転相乳化法により分散状態としたとき、ポリマー自身が有する官能基(特に酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となり得る水不溶性ポリマーをいう。
ここで、分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルジョン)、及び、水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンジョン)の両方の状態を含むものである。
【0118】
本開示において、水不溶性ポリマーにおける「水不溶性」とは、25℃の水に樹脂を混合したときに、水に溶解する樹脂の量が、混合した樹脂の全量に対する質量比で10質量%以下であることをいう。
【0119】
自己分散性樹脂の粒子としては、例えば、特開2016-188345号公報の段落0062~0076、国際公開第2013/180074号の段落0109~0140等に記載の自己分散性ポリマー粒子が挙げられる。
【0120】
樹脂粒子における樹脂として、
より好ましくは、ベンジル(メタ)アクリレート単位、フェノキシエチル(メタ)アクリレート単位、及び環状脂肪族基含有(メタ)アクリレート単位からなる群から選択される少なくとも1種と、(メタ)アクリル酸単位と、を含むアクリル樹脂であり、
更に好ましくは、ベンジル(メタ)アクリレート単位、フェノキシエチル(メタ)アクリレート単位、及び環状脂肪族基含有(メタ)アクリレート単位からなる群から選択される少なくとも1種と、(メタ)アクリル酸単位と、炭素数1~4のアルキル基を含むアルキル(メタ)アクリレート単位と、を含むアクリル樹脂である。
【0121】
ここで、ベンジル(メタ)アクリレート単位とは、ベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、即ち、ベンジル(メタ)アクリレートの重合によって形成される構造単位を意味する。その他の「単位」についても同様である。
【0122】
環状脂肪族基含有(メタ)アクリレートとしては、炭素数3~10のシクロアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート)、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、
イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0123】
樹脂粒子における樹脂において、
ベンジル(メタ)アクリレート単位、フェノキシエチル(メタ)アクリレート単位、及び環状脂肪族基含有(メタ)アクリレート単位の総含有量は、樹脂分散剤の全量に対して、好ましくは20質量%~80質量%であり、好ましくは30質量%~75質量%である。
樹脂粒子における樹脂において、ベンジル(メタ)アクリレート単位、フェノキシエチル(メタ)アクリレート単位、環状脂肪族基含有(メタ)アクリレート単位、及び炭素数1~4のアルキル基を含むアルキル(メタ)アクリレート単位の総含有量は、樹脂分散剤の全量に対して、好ましくは80質量%~98質量%であり、好ましくは85質量%~97質量%であり、更に好ましくは90質量%~95質量%である。
樹脂粒子における樹脂において、(メタ)アクリル酸単位の含有量は、樹脂分散剤の全量に対して、好ましくは2質量%~20質量%であり、好ましくは3質量%~15質量%であり、更に好ましくは5質量%~10質量%である。
【0124】
樹脂粒子における樹脂は、中和された酸基を含むことが好ましい。
中和された酸基を含む樹脂からなる樹脂粒子は、例えば、酸基を有する共重合体を合成し、得られた共重合体における酸基の少なくとも一部を中和することによって得られる。
中和前の酸基としては、カルボキシ基が挙げられ、中和された酸基としては、カルボキシ基の塩が挙げられる。
中和は、例えば、樹脂粒子の水分散物の製造過程において、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを用いて行うことができる。
【0125】
樹脂粒子における樹脂の具体例としては、フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(50/45/5)、フェノキシエチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(30/35/29/6)、フェノキシエチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(50/44/6)、フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸共重合体(30/55/10/5)、ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(35/59/6)、スチレン/フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(10/50/35/5)、ベンジルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(55/40/5)、フェノキシエチルメタクリレート/ベンジルアクリレート/メタクリル酸共重合体(45/47/8)、スチレン/フェノキシエチルアクリレート/ブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(5/48/40/7)、ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(35/30/30/5)、フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メタクリル酸共重合体(12/50/30/8)、ベンジルアクリレート/イソブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(93/2/5)、メチルメタクリレート/メトキシエチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/アクリル酸共重合体(44/15/35/6)、スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体(62/35/3)、メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/51/4)、メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(20/72/8)、メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(40/52/8)、メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(48/42/10)、メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(20/62/10/8)、メチルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(20/72/8)等が挙げられる。
なお、括弧内は、共重合成分の質量比を表す。
また、樹脂粒子における樹脂の具体例としては、上記各共重合体において、カルボキシ基の少なくとも一部が中和されたものも挙げられる。
【0126】
(酸価)
樹脂粒子における樹脂の酸価としては、分散安定性、画像記録時の凝集性等の観点から、好ましくは25mgKOH/g~100mgKOH/gであり、より好ましくは30mgKOH/g~90mgKOH/gであり、更に好ましくは35mgKOH/g~80mgKOH/gである。
酸価はJIS規格(JISK0070:1992)に記載の方法により測定することができる。
【0127】
(体積平均粒子径)
樹脂粒子の体積平均粒子径としては、インクの吐出性を向上する観点から、1μm以下であることが好ましく、125nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることが更に好ましい。
また、樹脂粒子の体積平均粒子径としては、インクの安定性の観点から5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。
【0128】
樹脂粒子の体積平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置を用いて、動的光散乱法により測定することができる。
ナノトラック粒度分布測定装置としては、例えば、日機装(株)のUPA-EX150を用いることができる。
また、樹脂粒子の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布を持つもの又は単分散の粒径分布を持つもののいずれでもよい。また、樹脂粒子を2種以上混合して使用してもよい。
【0129】
(重量平均分子量)
樹脂粒子における樹脂の重量平均分子量としては、5000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましい。
また、樹脂粒子における樹脂の重量平均分子量は、300000以下であることが好ましく、100000以下であることがより好ましい。
【0130】
本開示において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC:Gel Permeation Chromatography)により測定される値である。
具体的には、GPCは、測定装置として、HLC-8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel、Super Multipore HZ-H(4.6mmID×15cm、東ソー(株))を3本用い、溶離液として、THF(テトラヒドロフラン)を用いて行う。また、測定条件としては、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、及び測定温度を40℃として、示唆屈折計(RI)検出器を用いる。また、検量線は、東ソー(株)の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F-40」、「F-20」、「F-4」、「F-1」、「A-5000」、「A-2500」、「A-1000」、及び「n-プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
【0131】
(ガラス転移温度)
樹脂粒子における樹脂のガラス転移温度(Tg)は、耐擦性及びインクの安定性の観点から、30℃~230℃であることが好ましく、70℃~230℃がより好ましい。
【0132】
Tgは、示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6220(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製)を用いて通常の測定条件で測定された値である。
但し、樹脂の分解等により測定が困難な場合には、下記の計算式で算出される計算Tgを適用する。計算Tgは、下記の数式(a)で計算される。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi) … 数式(a)
ここで、計算対象となるポリマーはi=1からnまでのn種のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの質量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。但し、Σはi=1からnまでの和をとる。なお、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)は、Polymer Handbook(3rd Edition)(J. Brandrup, E. H. Immergut著(Wiley-Interscience、1989))の値を採用する。
【0133】
(含有量)
本開示のインクは、樹脂粒子を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
本開示のインクの全量に対する樹脂粒子の含有量は、耐擦性、インクの安定性及びインクの吐出性を向上する観点から、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、2質量%以上12質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
また、耐光性の向上の観点から、特定赤外線吸収材料と樹脂粒子との合計含有量に対する樹脂粒子の含有量は、60質量%以上96質量%以下であることが好ましい。
【0134】
<着色剤>
本開示のインクは、着色剤(例えば、顔料、染料等)を少なくとも1種含有してもよい。着色剤としては、特に制限なく、インクジェットインクの分野で公知の着色剤が使用可能である。
本開示のインクが着色剤を含有する場合には、本開示のインクにより、可視性を有する(即ち、目視で視認できる)着色画像を形成することができる。
かかる態様のインクは、基材上に付与されたインクを加熱して上記着色画像を形成する際、赤外線照射によって効率よく加熱できるので、耐擦性に優れるという利点を有する。
【0135】
着色剤としては、顔料及び染料が挙げられるが、耐候性、色再現性等の観点から、顔料が好ましく、有機顔料又は無機顔料がより好ましい。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。
着色剤としては、特開2009-241586号公報の段落0096~0100に記載の着色剤が好ましく挙げられる。
【0136】
本開示のインクが着色画像形成用のインクである場合、着色剤の含有量は、インクの全量に対し、好ましくは1質量%~20質量%であり、より好ましくは1質量%~15質量%であり、更に好ましくは1質量%~10質量%である。
【0137】
一方、本開示のインクが、不可視性(即ち、目視で視認されにくい性質)を有する赤外線吸収画像を形成するためのインクである場合、本開示のインクは、赤外線吸収画像の不可視性の観点から、着色剤を実質的に含有しないことが好ましい。
この場合、具体的には、本開示のインクは、着色剤を含有しないか、又は、含有する場合には、着色剤の含有量が、インクの全量に対し、0.1質量%未満(より好ましくは0.05質量%以下)であることが好ましい。
【0138】
(分散剤)
本開示のインクが着色剤を含有する場合、本開示のインクは、更に、上記着色剤を分散するための分散剤を含有してもよい。
分散剤としては、ポリマー分散剤、又は低分子の界面活性剤型分散剤のいずれでもよい。また、ポリマー分散剤は、水溶性の分散剤、又は非水溶性の分散剤のいずれでもよい。
分散剤としては、例えば、特開2016-145312号公報の段落0080~0096に記載の分散剤が好ましく挙げられる。
【0139】
着色剤(p)と分散剤(s)との混合質量比(p:s)としては、1:0.06~1:3の範囲が好ましく、1:0.125~1:2の範囲がより好ましく、更に好ましくは1:0.125~1:1.5である。
【0140】
<水溶性高分子化合物>
本開示のインクは、インク中及び赤外線吸収画像中における特定赤外線吸収材料の会合形成性をより向上させる観点から、水溶性高分子化合物を少なくとも1種含有してもよい。
水溶性高分子化合物としては特に限定はなく、特開2010-188661号公報の段落0021~0022に記載の天然の親水性高分子化合物や、合成系の親水性高分子化合物が挙げられる。
水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物;後述する両性化合物である水溶性高分子化合物(特に好ましくはゼラチン);等を用いることができる。
中でも、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の公知の水溶性高分子化合物等が好ましい。
また、後述する両性化合物である水溶性高分子化合物(特に好ましくはゼラチン)も好ましい。
【0141】
水溶性高分子化合物の重量平均分子量には特に限定はないが、例えば5000~100000とすることができ、好ましくは10000~80000であり、より好ましくは10000~50000である。
【0142】
本開示のインクが水溶性高分子化合物を含有する場合、水溶性高分子化合物の含有量は、インクの全量に対し、0.1質量%~10質量%が好ましく、0.1質量%~4質量%がより好ましく、0.1質量%~2質量%が更に好ましく、0.1質量%~1質量%が更に好ましい。
【0143】
<界面活性剤>
本開示のインクは、インク中及び赤外線吸収画像中における特定赤外線吸収材料の会合形成性をより向上させる観点から、界面活性剤を少なくとも1種含有してもよい。
界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部とを合わせ持つ構造を有する化合物を有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及びベタイン系界面活性剤のいずれも使用することができる。
【0144】
界面活性剤としては、インクの打滴干渉抑制の観点から、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤が好ましく、ノニオン性界面活性剤がより好ましく、中でもアセチレングリコール誘導体(アセチレングリコール系界面活性剤)がより好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール及び2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのアルキレンオキシド付加物等を挙げることができ、これから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、日信化学工業社製のサーフィノール104PGなどのサーフィノールシリーズ、日信化学工業社製のオルフィンE1010などのEシリーズを挙げることができる。
【0145】
アセチレングリコール系界面活性剤以外の界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤が好ましい。フッ素系界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、及び、ベタイン系界面活性剤が挙げられ、この中でアニオン系界面活性剤がより好ましい。アニオン系界面活性剤の例としては、Capstone FS-63、Capstone FS-61(Dupont社製)、フタージェント100、フタージェント110、フタージェント150(ネオス社製)、CHEMGUARD S-760P(Chemguard Inc.社製)等が挙げられる。
【0146】
<水溶性有機化合物X1>
本開示のインクは、インク中及び赤外線吸収画像中における特定赤外線吸収材料の会合形成性をより向上させる観点から、融点が50℃以上であり分子量が3000未満である水溶性有機化合物X1を少なくとも1種含有してもよい。
【0147】
水溶性有機化合物X1は、融点が50℃以上である。
水溶性有機化合物X1は、この点で、前述の水溶性有機溶剤と区別される。
水溶性有機化合物X1は、水溶性を有することから、インク中では溶解されている。これにより、インクの粘度をヘッドに適する範囲に調整したり、ノズル近傍での乾燥固化の抑制に寄与し、吐出性を良好にできる。
【0148】
水溶性有機化合物X1は、分子量が3000未満である。
水溶性有機化合物X1が分子量分布を有する場合、上記分子量は、数平均分子量を意味する。数平均分子量は、GPCによって測定された値を意味する。GPCの詳細な条件は前述のとおりである。
【0149】
水溶性有機化合物X1の分子量が3000未満であることは、インクの吐出性向上に寄与する。また、水溶性有機化合物X1の分子量が3000未満であることにより、インク中でのJ会合体形成や分散性が阻害されにくい。このため、水溶性有機化合物X1の分子量が3000未満であることは、画像の赤外線吸収性の向上にも寄与する。
【0150】
水溶性有機化合物X1の分子量は、好ましくは400以下であり、より好ましくは200以下であり、更に好ましくは100以下である。
水溶性有機化合物X1の分子量の下限は、例えば50である。
【0151】
水溶性有機化合物X1としては、水溶性を有すること、融点が50℃以上であること、及び分子量が3000未満であることを満足する化合物であればよく、その他には特に制限はない。
水溶性有機化合物X1としては、例えば、融点50℃以上の多価アルコール、尿素、尿素誘導体、糖類、糖類の誘導体、ヒアルロン酸類、等が挙げられる。
【0152】
融点50℃以上の多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0153】
尿素誘導体としては、尿素の構造中の窒素原子に直接結合している水素原子を置換基によって置換した化合物、チオ尿素、尿素の構造中の窒素原子に直接結合している水素原子を置換基によって置換した化合物、等が挙げられる。
尿素誘導体の具体例としては、N,N-ジメチル尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ヒドロキシエチル尿素、ヒドロキシブチル尿素、エチレンチオ尿素、ジエチルチオ尿素、フェニル尿素、ベンジル尿素、N-エチル-N’-フェニル尿素、エトキシフェニル尿素、N,N’-ジフェニル尿素、N,N-ジフェニル尿素、テトラフェニル尿素、N-ベンゾイル尿素、等が挙げられる。
【0154】
糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類及び四糖類を含む)及び多糖類が挙げられる。
糖類として、具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、等が挙げられる。
ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、アルギン酸、α-シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む。
【0155】
糖類の誘導体としては、糖類の還元糖(例えば、糖アルコール)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸、アミノ酸、チオ糖など)があげられる。
糖アルコールとしては、マルチトール、ソルビトール、キシリトールなどが挙げられる。
【0156】
ヒアルロン酸類としては、ヒアルロン酸塩が挙げられる。
インクにヒアルロン酸塩を含有させる場合には、素材として、ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液(分子量350000)として市販されているものを使用してもよい。
【0157】
水溶性有機化合物X1は、尿素及びトリメチロールプロパンの少なくとも一方を含むことが好ましい。これにより、赤外線吸収材料の耐擦性及び赤外線吸収性がより向上する。
水溶性有機化合物X1が、尿素及びトリメチロールプロパンの少なくとも一方を含む場合、尿素及びトリメチロールプロパンの総含有量は、インクに含有される全ての水溶性有機化合物X1の総含有量に対し、好ましくは30質量%~100質量%であり、より好ましくは50質量%~100質量%であり、更に好ましくは60質量%~100質量%であり、更に好ましくは80質量%~100質量%である。
【0158】
インクの全量に対する水溶性有機化合物X1の含有量(2種以上含有される場合には総含有量)は、インクの全量に対し、好ましくは1質量%以上8質量%以下である。
水溶性有機化合物X1の含有量が1質量%以上である場合には、水溶性有機化合物X1による効果(即ち、インクの吐出性向上)が発揮される。水溶性有機化合物X1の含有量は、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上である。
水溶性有機化合物X1の含有量が8質量%以下である場合には、インクの溶媒の極性を高く保つことができるので、インク中でのJ会合体形成に有利である。このため、水溶性有機化合物X1の含有量が8質量%以下であることは、画像の赤外線吸収性の向上に寄与する。水溶性有機化合物X1の含有量は、好ましくは6質量%以下である。
【0159】
<その他の成分>
インクは、その他の成分として、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の添加剤が挙げられる。上記各成分については、特開2008-144004号公報の段落0044~0050に記載の化合物を使用することが可能である。
【0160】
<インクの表面張力>
本開示のインクは、インクの25℃における表面張力としては、60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m~50mN/mであることがより好ましく、25mN/m~45mN/mであることが更に好ましい。インクの表面張力が範囲内であると、基材におけるカールの発生が抑えられ有利である。表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学社製)を用い、プレート法によって測定されるものである。
【0161】
本開示のインクの25℃における表面張力は、表面張力測定装置(例えば、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学社製))を用い、25℃の条件で、プレート法によって測定された値を意味する。
【0162】
<粘度>
本開示のインクの粘度としては、0.5mPa・s~30mPa・sが好ましく、2mPa・s~20mPa・sがより好ましく、2mPa・s~15mPa・sであることが好ましく、2mPa・s~10mPa・sであることが更に好ましい。
上記粘度は、粘度計(例えば、「VISCOMETER TV-22(TOKI SANGYO CO.LTD製))を用い、30℃の条件で測定されるものである。
【0163】
<極大吸収波長>
本開示のインクは、乾燥物とした場合の極大吸収波長が700nm~1200nmの範囲に存在することが好ましい。
上記極大吸収波長は、得られる記録物の不可視性の観点から、710nm~1200nmの範囲に存在することがより好ましく、760nm~1200nmの範囲に存在することが更に好ましく、800nm~1200nmの範囲に存在することが特に好ましい。
乾燥物とした場合の極大吸収波長が700nm~1200nmの範囲に存在することにより、得られる赤外線吸収画像の不可視性、及び、赤外光を用いた検出器による読み取り性により優れる。
【0164】
本開示において、インクの乾燥物は、インクをOKトップコート紙(王子製紙社製)上に7~10pL、600dpiで網点率1~100%で印画し、100℃、の温風にて1分加熱乾燥させることにより得られるものである。
乾燥物とした場合の極大吸収波長は、150mmφ大形積分球付属装置LISR-3100(島津製作所社製)を備えた分光光度計UV-3100PC(島津製作所社製)を用いて反射スペクトルを測定することにより求められる。
【0165】
本開示のインクは、得られる赤外線吸収画像の不可視性及び読み取り性の観点から、乾燥物とした場合の400nm~1200nmの範囲における最大吸収波長が700nm~1200nmの範囲に存在することが好ましい。
上述の乾燥物とした場合の極大吸収波長の測定と同様の方法によって、光学濃度を400nm~1200nmの範囲において測定することにより、上記最大吸収波長の値を測定することが可能である。
光学濃度の測定は、150mmφ大形積分球付属装置LISR-3100(島津製作所社製)を備えた分光光度計UV-3100PC(島津製作所社製)を使用して行われる。
【0166】
<J会合体>
得られる赤外線吸収画像の不可視性の観点から、本開示のインクは、乾燥物において、式(1)で表される赤外線吸収材料の少なくとも一部が、J会合体を形成していることが好ましい。
一般的に、化合物同士が、特定の空間配置に、共有結合、配位結合、分子間力(例えば、水素結合、ファン・デル・ワールス力、クーロン力等)等の結合力によって固定されている状態を、会合(又は凝集)状態と称している。会合体の吸収波長の観点では、モノマー吸収に対して、吸収が短波長にシフトする会合体をH会合体(2量体は特別にダイマーと呼ぶ)、長波長にシフトする会合体をJ会合体と呼ぶ。
J会合状態である特定赤外線吸収材料は、いわゆるJバンドを形成するため、シャープな吸収スペクトルピークを示す。特定赤外線吸収材料の会合とJバンドについては、文献(例えば、Photographic Science and Engineering Vol 18,No 323-335(1974))に詳細がある。
J会合状態の特定赤外線吸収材料の極大吸収波長は、溶液状態の特定赤外線吸収材料の極大吸収波長よりも長波側に移動する。従って、特定赤外線吸収材料がJ会合状態であるか、非会合状態であるかは、400nm~1200nmにおける極大吸収波長を測定することにより判断できる。
【0167】
本開示においては、上述の乾燥物とした場合の700nm~1200nmの範囲における極大吸収波長と、インクに含まれる特定赤外線吸収材料をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した溶解液の極大吸収波長と、の差が30nm以上である場合に、乾燥物における特定赤外線吸収材料がJ会合体を形成していると判断する。
得られる赤外線吸収画像の不可視性向上の観点から、上記差は、50nm以上であることが好ましく、70nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることが更に好ましい。
【0168】
また、特定赤外線吸収材料は、インク中においてJ会合体を形成してもよいし、インク中ではJ会合体を形成せず、液滴となって基材上に到達する過程で、又は、基材上に到達した後に、赤外線吸収画像中においてJ会合体を形成してもよい。
更に、基材上で全ての特定赤外線吸収材料がJ会合体を形成している必要はなく、J会合体を形成している特定赤外線吸収材料と、分子分散状態の特定赤外線吸収材料と、が混在していてもよい。
【0169】
前述のとおり、本開示のインク中における特定赤外線吸収材料の少なくとも一部は、J会合体を形成していることが好ましい。これにより、赤外線吸収画像中における特定赤外線吸収材料の会合形成性がより向上する。
【0170】
特定赤外線吸収材料は、水に溶解しただけで会合体を形成することが好ましいが、インク中、又は、赤外線吸収画像中における会合体の形成を促進するために;
両性化合物(上述の水溶性高分子化合物の範囲にも含まれる、ゼラチン、低分子コラーゲン、オリゴペプチド、ポリアクリル酸(東亞合成製ジュリマーET410等)等の高分子化合物、又は、アミノ酸等);
塩(例、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、塩化カリウム、塩化ナトリウムなどのアルカリ金属塩、塩化アルミニウムなどの13族金属塩、酢酸アンモニウムなどの有機塩、ベタインなどの有機分子内塩、有機ポリカチオン又はポリアニオンを含む塩);
酸(塩酸、硫酸などの無機酸、酢酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸などの有機酸);
炭酸カリウム、水酸化ナトリウムなどの無機塩基;
トリアルキルアミン、ピリジンなどの有機塩基;
等を、インクに含有させてもよい。
これらの成分は、1種のみ含有させてもよいし、2種以上含有させてもよい。
上記成分の中でも、両性化合物が好ましく、ゼラチンがより好ましい。
【0171】
上記両性化合物の含有量は、インクの全量に対し、10ppm~50000ppm(5質量%)が好ましく、30ppm~20000ppm(2質量%)がより好ましい。
上記塩の含有量は、インクの全量に対し、10ppm~50000ppm(5質量%)が好ましく、30ppm~20000ppm(2質量%)がより好ましい。
上記酸及び塩基の各々の含有量は、インクの全量に対し、10ppm~50000ppm(5質量%)が好ましく、30ppm~20000ppm(2質量%)がより好ましい。
【0172】
本開示において、ppmは、質量基準でのppm(即ち、質量ppm)を意味する。
【0173】
<2価のアルカリ金属元素及び3価の13族金属元素>
本開示のインクは、2価のアルカリ土類金属元素及び3価の13族金属元素の少なくとも一方を、インクの全量に対し、10ppm~50000ppmの含有量で含有することが好ましい。
2価のアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムが挙げられる。
3価の13族金属元素としては、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムが挙げられる。
上記2価のアルカリ土類金属元素又は上記3価の13族金属元素は、それぞれ、上述のアルカリ土類金属塩又は上述の13族金属塩に由来する元素であることが好ましい。
【0174】
上記2価のアルカリ金属元素及び上記3価の13族金属元素の含有量は、インクの分散安定性及び吐出性の観点から、インクの全量に対し、10ppm~50000ppm(5質量%)が好ましく、10ppm~10000ppm(1質量%)がより好ましく、10ppm~1000ppm(0.1質量%)が更に好ましく、10ppm~100ppm(0.01質量%)が特に好ましい。
また、上記2価のアルカリ金属元素又は上記3価の13族金属元素の含有量は、特定赤外線吸収材料に対するモル比として、0.01当量以上1当量以下であることが好ましく、0.1当量以上0.8当量以下であることがより好ましく、0.15当量以上0.6当量以下であることがより更に好ましい。
上記2価のアルカリ金属元素又は上記3価の13族金属元素の含有量は、特定赤外線吸収材料に対するモル比が0.01当量であるとは、2価のアルカリ金属元素又は上記3価の13族金属元素のモル量/特定赤外線吸収材料のモル量が0.01であることをいう。
上記2価のアルカリ金属元素及び上記3価の13族金属元素は1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
2価のアルカリ金属元素及び上記3価の13族金属元素を2種以上で含有する場合、上記含有量は、2種以上の合計含有量である。
上記含有量は、インクをN-メチルピロリドンにより希釈し、特定赤外線吸収材料を完全に溶解させた溶液を、プラズマ発光分光発生装置(オプティマ7300DV パーキンエルマー社製)を用いて分析することにより定量される。
2価のアルカリ金属元素及び上記3価の13族金属元素の含有量が上記範囲内であれば、2価又は3価の金属イオンがマイナスに帯電した複数の特定赤外線吸収材料と結合し、特定赤外線吸収材料間に部分的に橋渡し構造を形成することにより、インクの分散安定性がより向上すると推測している。
また、2価のアルカリ金属元素及び上記3価の13族金属元素の含有量が上記範囲内であれば、上記橋渡し構造の形成量が適切となり、特定赤外線吸収材料同士が過剰に凝集することが抑制されるため、インクの吐出性が維持されると推測している。
【0175】
<インクの製造方法>
本開示のインクの製造方法としては、特に限定されず、公知のインクの製造方法(調製方法)により製造(調製)することが可能である。
例えば、特開平5-148436号、同5-295312号、同7-97541号、同7-82515号、同7-118584号、特開平11-286637号、又は、同11-286637号の各公報に記載のインクの製造方法により製造することが可能である。
【0176】
また、本開示のインクの製造方法の好ましい態様は、
特定赤外線吸収材料を水に分散または溶解し、特定赤外線吸収材料と水とを含む組成物を得る工程と、
得られた組成物とインクの他の成分とを混合する工程と、
を含む態様である。
【0177】
-組成物を得る工程-
組成物を得る工程は、特定赤外線吸収材料を水に分散または溶解し、特定赤外線吸収材料と水とを含む組成物を得る工程である。
上記組成物における特定赤外線吸収材料の含有量は、組成物の全質量に対し、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.1質量%~5質量%であることがより好ましい。
また、上記組成物を調製する際に、分散性や会合形成の向上のため、更に界面活性剤や、分散剤となる水溶性高分子化合物、上述の両性化合物をはじめとする、イオン性の化合物を含有してもよい。
界面活性剤としては、上述のインクに含有される界面活性剤が挙げられる。
上記水分散物における界面活性剤、分散剤、イオン性化合物の含有量は、水分散物の全質量に対し、0.1質量%~5質量%であることが好ましい。
分散または溶解方法としては、公知の分散、混合方法が特に制限なく使用可能であり、一例としては、スリワンモーターやディゾルバーによる撹拌や、ビーズなどのメディアを使用したメディア分散、超音波を利用した分散方法等が挙げられる。
【0178】
-混合する工程-
混合する工程は、上記組成物を得る工程で得られた組成物と、インクの他の成分(たとえば、水、分散剤、樹脂粒子、界面活性剤、分散剤等)と、を混合する工程である。
混合する工程により、本開示のインクが得られる。
混合する工程後、得られた混合後の液をフィルターろ過することにより、本開示のインクとしてもよい。
混合する工程においては、上記特定赤外線吸収材料の含有量を、インクの全量に対し、0.1質量%~5質量%とすることが好ましく、0.2質量%~3質量%とすることが更に好ましい。
混合する工程における混合方法としては、公知の混合方法が特に制限なく使用することができ、一例としては、各成分を容器中で撹拌する方法が挙げられる。
【0179】
〔赤外線吸収画像形成方法〕
本開示の赤外線吸収画像形成方法は、基材上に、前述した本開示のインクを、インクジェット法によって付与して赤外線吸収画像を形成する工程(以下、「赤外線吸収画像形成工程」ともいう)を含む。
本開示の赤外線吸収画像形成方法は、必要に応じ、その他の工程を含んでもよい。
【0180】
<基材>
赤外線吸収画像が形成される基材としては、赤外線吸収画像を形成し得るものであれば特に制限はなく、紙、布、木材、金属板、プラスチックフィルム、等が挙げられる。
紙としては、特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙やインクジェット記録用紙、等を特に制限なく用いることができる。
【0181】
また、基材としては、非浸透性基材を用いることも可能である。基材として非浸透性基材を用いる場合、画像形成性の観点からは、後述する処理液を基材に付与する工程を含むことが好ましい。
本開示において用いられる非浸透性基材の「非浸透性」とは、インクに含まれる水の吸収が少ない又は吸収しないことをいい、具体的には、水の吸収量が10.0g/m以下である性質をいう。
【0182】
本開示において用いられる非浸透性基材としては、特に限定されないが、シート状の基材、フィルム状の基材等が挙げられる。
本開示において用いられる非浸透性基材は、印刷物の生産性の観点からは、シート状又はフィルム状の非浸透性基材を巻き取ることによりロールが形成可能な非浸透性基材であることが好ましい。
【0183】
非浸透性基材としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム箔等)、プラスチックフィルム(例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、プラスチック、ガラス等が挙げられる。
中でも、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を含む基材が好ましい。
【0184】
非浸透性基材は、表面処理がなされていてもよい。
表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、熱処理、摩耗処理、光照射処理(UV処理)、火炎処理等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、インクを付与して画像を記録する前に、予め非浸透性基材の表面にコロナ処理を施すと、非浸透性基材の表面エネルギーが増大し、非浸透性基材の表面の湿潤及び非浸透性基材へのインクの接着が促進される。コロナ処理は、例えば、コロナマスター(信光電気計社製、PS-10S)等を用いて行なうことができる。コロナ処理の条件は、非浸透性基材の種類、インクの組成等、場合に応じて適宜選択すればよい。例えば、下記の処理条件としてもよい。
・処理電圧:10~15.6kV
・処理速度:30~100mm/s
【0185】
また、上記基材には、インクジェット法、又は、その他の公知の方法により、可視画像が形成されていてもよい。
上記可視画像は、後述する可視画像を形成する工程において形成された可視画像であってもよいし、本開示の赤外線吸収画像形成方法において、可視画像が形成された基材を用いてもよい。
【0186】
<赤外線吸収画像形成工程>
赤外線吸収画像形成工程は、基材上に、前述した本開示のインクを、インクジェット法によって付与して赤外線吸収画像を形成する工程である。
本工程によれば、基材上に選択的にインクを付与でき、所望の赤外線吸収画像を形成できる。
【0187】
(赤外線吸収画像)
本工程で形成される赤外線吸収画像としては特に制限はなく、単一のパターン(例えば、ドットパターン、ラインパターン、ベタパターン等)からなる赤外線吸収画像であってもよいし、複数の要素パターン(例えば、ドットパターン、ラインパターン等)からなる赤外線吸収画像、言い換えれば複数の要素パターンの集合である赤外線吸収画像が好ましい。
ドットパターンの直径は、25μm~70μmが好ましく、30μm~60μmがより好ましい。
【0188】
赤外線吸収画像の極大吸収波長は、700nm~1200nmの範囲に存在することが好ましく、710nm~1200nmの範囲に存在することがより好ましく、760nm~1200nmの範囲に存在することが更に好ましく、800nm~1200nmの範囲に存在することが特に好ましい。
上記極大吸収波長は、本開示のインクの、乾燥物とした場合の極大吸収波長を測定する方法と同様の方法により測定される。
【0189】
また、赤外線吸収画像の不可視性及び赤外線による読み取り性の観点から、赤外線吸収画像において、400nm~1200nmの範囲における最大吸収波長は、700nm~1200nmの範囲に存在することが好ましい。
上記最大吸収波長は、本開示のインクを乾燥物とした場合の最大吸収波長を測定する方法と同様の方法により測定される。
【0190】
赤外線吸収画像の不可視性の観点から、本開示の記録物における赤外線吸収画像において、450nmにおける光学濃度(OD)が極大吸収波長における光学濃度の1/7以下であることが好ましい。上記光学濃度は、極大吸収波長における光学濃度の1/8以下であることがより好ましく、極大吸収波長における光学濃度の1/9以下であることがより好ましい。
また、上記赤外線吸収画像の極大吸収波長における光学濃度は、読み取り性の観点から、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.5以上であることが更に好ましい。
上記光学濃度は、本開示のインクを乾燥物とした場合の光学濃度を測定する方法と同様の方法により測定される。
【0191】
赤外線吸収画像において、特定赤外線吸収材料の単位面積当たりの含有量は、0.0001g/m~1.0g/mであることが好ましく、0.0001g/m~0.5g/mであることがより好ましい。
【0192】
赤外線吸収画像形成工程におけるインクジェット法の方式には特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。
インクジェット法としては、特に、特開昭54-59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット法を有効に利用することができる。
また、インクジェット法については、特開2003-306623号公報の段落0093~0105に記載の方法も参照できる。
【0193】
インクジェット法に用いるインクジェットヘッドとしては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを基材の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、基材の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とが挙げられる。
ライン方式では、記録素子の配列方向と交差する方向に基材を走査させることで基材の全面にパターン形成を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。
また、キャリッジの移動と基材との複雑な走査制御が不要になり、基材だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
本実施形態の画像形成方法は、これらのいずれにも適用可能であるが、ライン方式が好ましい。
【0194】
インクジェットヘッドから吐出されるインクの液滴量としては、高精細なパターンを得る観点で、1pL(ピコリットル、以下同様。)~20pLが好ましく、1.5pL~10pLがより好ましい。
【0195】
本工程において形成される赤外線吸収画像における、特定赤外線吸収材料の単位面積当たりの付与量は、0.0001g/m~1.0g/mであることが好ましく、0.0001g/m~0.5g/mであることがより好ましい。
【0196】
本工程(赤外線吸収画像形成工程)は、基材上に付与されたインクを加熱する工程を含んでもよい。
即ち、赤外線吸収画像形成工程は、基材上に、本開示のインクを、インクジェット法によって付与し、付与されたインクを加熱することにより、赤外線吸収画像を形成する工程であってもよい。
【0197】
赤外線吸収画像形成工程が、上記加熱する工程を含む場合には、赤外線吸収画像において、樹脂粒子による被膜がより効果的に形成されると考えられる。これにより、赤外線吸収画像の耐擦性がより向上する。
【0198】
基材上のインクの加熱を行うための手段としては、ヒータ等の公知の加熱手段、ドライヤ等の公知の送風手段、及び、これらを組み合わせた手段が挙げられる。
インクの加熱を行うための方法としては、例えば、
基材の画像形成面とは反対側からヒータ等で熱を与える方法、
基材の画像形成面に温風又は熱風をあてる方法、
基材の画像形成面又は画像形成面とは反対側から、赤外線ヒータで熱を与える方法、
これらの複数を組み合わせた方法、
等が挙げられる。
【0199】
基材上のインクを加熱する際の加熱温度は、60℃以上が好ましく、65℃以上がより好ましく、70℃以上が特に好ましい。
加熱温度の上限には特に制限はないが、上限としては、例えば150℃以下が好ましい。
基材上のインクを加熱する際の加熱時間には特に制限はないが、1秒~300秒が好ましく、1秒~30秒がより好ましい。
【0200】
<処理液を基材に付与する工程(処理液付与工程)>
本開示の赤外線吸収画像形成方法は、赤外線吸収画像形成工程の前に、基材上に、凝集剤を含有する処理液を付与する工程(以下、「処理液付与工程」ともいう)を含んでもよい。
処理液の好ましい態様については後述する。
【0201】
本開示の赤外線吸収画像形成方法が処理液付与工程を含む場合、前述した赤外線吸収画像形成工程では、基材上の処理液が付与された領域上の少なくとも一部にインクを付与して赤外線吸収画像を形成する。
本開示の赤外線吸収画像形成方法が処理液付与工程を含む場合には、赤外線吸収画像形成工程において、インク中の成分を凝集させることができるので、より画質に優れた赤外線吸収画像を形成できる。
基材として非浸透性基材を用いる場合の本開示の赤外線吸収画像形成方法が、処理液付与工程を含む場合には、赤外線吸収画像の滲みをより抑制できる。
【0202】
また、本開示の赤外線吸収画像形成方法が処理液付与工程を含むことは、赤外線吸収画像中における特定赤外線吸収材料の会合形成性向上の面でも有利である。
【0203】
基材への処理液の付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行うことができる。
塗布法としては、バーコーター(例えばワイヤーバーコーター)、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター等を用いた公知の塗布法が挙げられる。
インクジェット法の詳細については、上述した赤外線吸収画像形成工程に適用され得るインクジェット法と同様である。
【0204】
処理液付与工程では、基材上に処理液を、インクジェット法により、パターン画像状に付与することが好ましい。
【0205】
また、処理液付与工程において、処理液の付与前に基材を加熱してもよい。
加熱温度としては、基材の温度を20℃~50℃とすることが好ましく、25℃~40℃とすることがより好ましい。
【0206】
処理液付与工程では、処理液の付与後であって、上述の赤外線吸収画像形成工程の前に、処理液を加熱乾燥させてもよい。
処理液の加熱乾燥を行うための手段としては、ヒータ等の公知の加熱手段、ドライヤ等の公知の送風手段、及び、これらを組み合わせた手段が挙げられる。
処理液の加熱乾燥を行うための方法としては、例えば、
基材の処理液が付与された面とは反対側からヒータ等で熱を与える方法、
基材の処理液が付与された面に温風又は熱風をあてる方法、
基材の処理液が付与された面又は処理液が付与された面とは反対側から、赤外線ヒータで熱を与える方法、
これらの複数を組み合わせた方法、
等が挙げられる。
【0207】
処理液の加熱乾燥時の加熱温度は、35℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。
加熱温度の上限には特に制限はないが、上限としては、100℃が好ましく、90℃がより好ましく、70℃が更に好ましい。
加熱乾燥の時間には特に制限はないが、0.5秒~60秒が好ましく、0.5秒~20秒がより好ましく、0.5秒~10秒が特に好ましい。
【0208】
(処理液)
-凝集剤-
処理液は、凝集剤を含有する。
凝集剤は、多価金属塩、有機酸、無機酸、カチオン性化合物、及び金属錯体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0209】
各成分の詳細については後述する。
処理液が凝集剤を含むことにより、インクが凝集し、画質に優れた画像が得られやすい。
【0210】
-有機酸-
有機酸としては、酸性基を有する有機化合物が挙げられる。
酸性基としては、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、及びカルボキシ基等を挙げることができる。上記酸性基は、インクの凝集速度の観点から、リン酸基又はカルボキシ基であることが好ましく、カルボキシ基であることがより好ましい。
なお、上記酸性基は、処理液中において、少なくとも一部が解離していることが好ましい。
【0211】
カルボキシ基を有する有機化合物は、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸(好ましくは、DL-リンゴ酸)、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、フタル酸、4-メチルフタル酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好ましい。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
【0212】
カルボキシ基を有する有機化合物としては、インクの凝集速度の観点から、2価以上のカルボン酸(以下、多価カルボン酸ともいう。)が好ましい。
多価カルボン酸としては、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、4-メチルフタル酸、又はクエン酸がより好ましく、マロン酸、リンゴ酸、グルタル酸、酒石酸、又はクエン酸が好ましい。
【0213】
有機酸は、pKaが低い(例えば、1.0~5.0)ことが好ましい。
これにより、カルボキシ基等の弱酸性の官能基で分散安定化しているインク中の顔料やポリマー粒子などの粒子の表面電荷を、よりpKaの低い有機酸性化合物と接触させることにより減じ、分散安定性を低下させることができる。
【0214】
処理液に含まれる有機酸は、pKaが低く、水に対する溶解度が高く、価数が2価以上であることが好ましく、インク中の粒子を分散安定化させている官能基(例えば、カルボキシ基等)のpKaよりも低いpH領域に高い緩衝能を有する2価又は3価の酸性物質であることがより好ましい。
【0215】
凝集剤として有機酸を用いる場合、有機酸の含有量は、処理液の全量に対し、1質量%~20質量%であることが好ましく、2質量%~15質量%であることがより好ましく、5質量%~10質量%であることが更に好ましい。
【0216】
-無機酸-
無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の化合物を含むことができる。
凝集剤として無機酸を用いる場合、無機酸の含有量は、処理液の全量に対し、1質量%~40質量%であることが好ましく、2質量%~30質量%であることがより好ましく、5質量%~20質量%であることが更に好ましい。
【0217】
-多価金属塩-
多価金属塩は、二価以上の多価金属イオンと多価金属イオンに結合する陰イオンとから構成される。また、多価金属塩は水溶性であることが好ましい。
多価金属イオンの具体例としては、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Ba2+などの二価金属イオン、Al3+、Fe3+、Cr3+などの三価金属イオンがあげられる。陰イオンとしては、Cl、NO 、I、Br、ClO 、SO 2-、カルボン酸イオン等が挙げられる。
【0218】
多価金属塩としては、得られる赤外線吸収画像の画質の観点から、Ca2+又はMg2+を含んで構成される塩が好ましい。
【0219】
また、多価金属塩としては、硫酸イオン(SO 2-)、硝酸イオン(NO )又はカルボン酸イオン(RCOO、Rは炭素数1以上のアルキル基)の塩が好ましい。
【0220】
ここで、カルボン酸イオンは、好ましくは炭素数1~6の飽和脂肪族モノカルボン酸又は炭素数7~11の炭素環式モノカルボン酸から誘導されるものである。炭素数1~6の飽和脂肪族モノカルボン酸の好ましい例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ヘキサン酸などが挙げられる。特に蟻酸、酢酸が好ましい。
【0221】
凝集剤として多価金属塩を用いる場合、多価金属塩の含有量は、本開示の処理液の全量に対し、1質量%~40質量%であることが好ましく、2質量%~25質量%であることがより好ましく、5質量%~20質量%であることが更に好ましい。
【0222】
-カチオン性化合物-
カチオン性化合物としては、例えば、第1級、第2級、又は第3級アミン塩型の化合物が好ましい。このアミン塩型の化合物の例として、塩酸塩もしくは酢酸塩等の化合物(例えば、ラウリルアミン、ヤシアミン、ステアリルアミン、ロジンアミンなど)、第4級アンモニウム塩型化合物(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウムなど)、ピリジニウム塩型化合物(例えば、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイドなど)、イミダゾリン型カチオン性化合物(例えば、2-ヘプタデセニル-ヒドロキシエチルイミダゾリンなど)、高級アルキルアミンのエチレンオキシド付加物(例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミンなど)を挙げることができる。また、ポリアリルアミン類を用いてもよい。
【0223】
ポリアリルアミン又はポリアリルアミン誘導体としては、特に限定はなく、公知のものを適宜選択して用いることができ、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアリルアミンアミド硫酸塩、アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン塩酸塩・ジメチルアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン・ジメチルアリルアミンコポリマー、ポリジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミンアミド硫酸塩、ポリメチルジアリルアミン酢酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイト・二酸化硫黄コポリマー、メチルジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミドコポリマー等を挙げることができる。
カチオン性化合物がポリマーである場合、水溶性ポリマーであることが好ましい。
【0224】
このようなポリアリルアミン、又はポリアリルアミン誘導体としては、市販品を用いることができ、例えば、「PAA-HCL-01」、「PAA-HCL-03」、「PAA-HCL-05」、「PAA-HCL-3L」、「PAA-HCL-10L」、「PAA-H-HCL」、「PAA-SA」、「PAA-01」、「PAA-03」、「PAA-05」、「PAA-08」、「PAA-15」、「PAA-15C」、「PAA-25」、「PAA-H-10C」、「PAA-D11-HCL」、「PAA-D41-HCL」、「PAA-D19-HCL」、「PAS-21CL」、「PAS-M-1L」、「PAS-M-1」、「PAS-22SA」、「PAS-M-1A」、「PAS-H-1L」、「PAS-H-5L」、「PAS-H-10L」、「PAS-92」、「PAS-92A」、「PAS-J-81L」、「PAS-J-81」(商品名、ニットーボーメディカル社)、「ハイモNeo-600」、「ハイモロックQ-101」、「ハイモロックQ-311」、「ハイモロックQ-501」、「ハイマックスSC-505」、「ハイマックスSC-505」(商品名、ハイモ社)等を用いることができる。
【0225】
凝集剤としてカチオン性化合物を用いる場合、カチオン性化合物の含有量は、処理液の全量に対し、1質量%~40質量%であることが好ましく、2質量%~25質量%であることがより好ましく、5質量%~20質量%であることが更に好ましい。
【0226】
-金属錯体-
金属錯体は、ジルコニウムイオン、チタンイオン、アルミニウムイオン等の金属イオンに配位子が配位した化合物をいう。
金属錯体としては、市販されている種々の金属錯体を使用してもよい。
また、様々な有機配位子、特に金属キレート触媒を形成し得る様々な多座配位子も市販されている。そのため、金属錯体として、市販の有機配位子と金属とを組み合わせて調製した金属錯体を使用してもよい。
【0227】
金属錯体としては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)「オルガチックスZC-150」)、ジルコニウムモノアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)「オルガチックスZC-540」)、ジルコニウムビスアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)「オルガチックスZC-550」)、ジルコニウムモノエチルアセトアセテート(例えば、マツモトファインケミカル(株)「オルガチックスZC-560」)、ジルコニウムアセテート(例えば、マツモトファインケミカル(株)「オルガチックスZC-115」)、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)(例えば、マツモトファインケミカル(株)「オルガチックス TC-100」)、チタンテトラアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)「オルガチックス TC-401」)、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)(例えば、マツモトファインケミカル(株)「オルガチックス TC-200」)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート(例えば、マツモトファインケミカル(株)「オルガチックス TC-750」)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)「オルガチックス ZC-700」)、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)「オルガチックス ZC-540」)、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネート ビス(エチルアセトアセテート)(例えば、マツモトファインケミカル(株)「オルガチックス ZC-570」))、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)(例えば、マツモトファインケミカル(株)「オルガチックス ZC-580」)、アルミニウムトリスアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)「オルガチックス AL-80」)、チタンラクテートアンモニウム塩(マツモトファインケミカル(株)「オルガチックス TC-300」)、チタンラクテート(マツモトファインケミカル(株)「オルガチックス TC-310、315」)、チタントリエタノールアミネート(マツモトファインケミカル(株)「オルガチックス TC-400」)、マツモトファインケミカル(株)「オルガチックス ZC-126が挙げられる。
これらの中でも、チタンラクテートアンモニウム塩(マツモトファインケミカル(株)「オルガチックス TC-300」)、チタンラクテート(マツモトファインケミカル(株)「オルガチックス TC-310、315」)、チタントリエタノールアミネート(マツモトファインケミカル(株)「オルガチックス TC-400」)、塩化ジルコニル化合物(マツモトファインケミカル(株)「オルガチックス ZC-126」)が好ましい。
【0228】
-水-
処理液は、水を含有することが好ましい。
水の含有量は、処理液の全量に対し、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
処理液の全量に対する水の含有量の上限は、凝集剤等の他の成分の量に応じて適宜定まる。処理液の全量に対する水の含有量の上限は、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。
【0229】
-水溶性有機溶剤-
処理液は、水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。
水溶性有機溶剤としては、公知のものを特に制限なく用いることができる。
水溶性有機溶剤としては、例えば、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類;2-ブテン-1,4-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール、4-メチル-1,2-ペンタンジオール等のアルカンジオールなどの多価アルコール類;特開2011-42150号公報の段落0116に記載の、糖類や糖アルコール類、ヒアルロン酸類、炭素原子数1~4のアルキルアルコール類、グリコールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン;等が挙げられる。
中でも、画像の剥離を抑制する観点から、ポリアルキレングリコール又はその誘導体であることが好ましく、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0230】
処理液が水溶性有機溶剤を含む場合、水溶性有機溶剤の含有量は、塗布性などの観点から、処理液の全量に対して3質量%~20質量%であることが好ましく、5質量%~15質量%であることがより好ましい。
【0231】
-界面活性剤-
処理液は、界面活性剤の少なくとも1種を含んでもよい。
界面活性剤は、表面張力調整剤又は消泡剤として用いることができる。
表面張力調整剤又は消泡剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ベタイン界面活性剤等が挙げられる。中でも、インクの凝集速度の観点から、アニオン性界面活性剤が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、公知のものから適宜選択することができ、例えば、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸塩、脂肪酸塩、ホルマリン縮合物などが挙げられる。塩を形成するカチオンとしては、例えば、アンモニウムイオン、トリエタノールアミンイオン、金属カチオンなどが挙げられる。これらのカチオンの中でも、1価の金属カチオンがより好ましく、ナトリウムイオン又はカリウムイオンが特に好ましい。
【0232】
界面活性剤としては、特開昭59-157636号公報の第37~38頁及びリサーチディスクロージャーNo.308119(1989年)に界面活性剤として挙げた化合物も挙げられる。また、特開2003-322926号、特開2004-325707号、特開2004-309806号の各公報に記載のフッ素(フッ化アルキル系)系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤等も挙げられる。
【0233】
界面活性剤の含有量は、処理液の表面張力が後述の範囲内となるように適宜調整すればよい。
【0234】
-その他の添加剤-
処理液は、必要に応じ、上記以外のその他の成分を含んでいてもよい。
処理液に含有され得るその他の成分としては、固体湿潤剤、コロイダルシリカ、無機塩、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0235】
-処理液の物性-
処理液は、インクの凝集速度の観点から、25℃におけるpHが0.1~3.5であることが好ましい。
処理液のpHが0.1以上であると、基材のザラツキがより低減され、画像部の密着性がより向上する。
処理液のpHが3.5以下であると、凝集速度がより向上し、基材上におけるインクによるドット(インクドット)の合一がより抑制され、画像のザラツキがより低減される。
処理液のpH(25℃)は、0.2~2.0がより好ましい。
【0236】
処理液の粘度としては、インクの凝集速度の観点から、0.5mPa・s~30mPa・sの範囲が好ましく、1mPa・s~20mPa・sの範囲が好ましく、2mPa・s~15mPa・sの範囲が更に好ましく、2mPa・s~10mPa・sの範囲がより好ましい。
処理液の粘度は、VISCOMETER TV-22(東機産業(株))を用いて25℃の条件下で測定されるものである。
【0237】
処理液の25℃における表面張力としては、60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m~50mN/mであることがより好ましく、30mN/m~45mN/mであることが更に好ましい。
処理液の表面張力が範囲内であると、基材と処理液との密着性が向上する。
処理液の表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学社)を用い、プレート法によって測定されるものである。
【0238】
<可視画像を形成する工程>
本開示の赤外線吸収画像形成方法は、可視画像を形成する工程を更に有していてもよい。
本開示において、可視画像とは、肉眼で目視可能な画像をいい、本開示のインク以外のインク(例えば、着色剤を含有する着色インク)を用いて形成された画像であることが好ましい。
可視画像を形成する工程は、特に限定されず、インクジェット方式による印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等の公知の印刷方法により画像を形成する工程が挙げられる。
本開示の赤外線吸収画像形成方法においては、可視画像を形成する工程を、赤外線吸収画像を形成する工程の前に含んでもよいし、赤外線吸収画像を形成する工程の後に含んでもよい。
【0239】
<オーバーコート層を形成する工程>
本開示の赤外線吸収画像形成方法は、赤外線吸収画像を形成する工程後に、オーバーコート層を形成する工程を更に含んでもよい。
オーバーコート層を形成する方法としては、例えば、本開示のインクに含まれる樹脂粒子と同様の樹脂粒子を含むオーバーコート用組成物を、赤外線吸収画像を形成する工程において形成された画像上に付与し、加熱する方法が挙げられる。
【0240】
(オーバーコート用組成物)
オーバーコート用組成物は、本開示のインクに含まれる樹脂粒子と同様の樹脂粒子、及び/又は、本開示のインクに含まれる樹脂粒子以外の高分子化合物を含むことが好ましい。
また、オーバーコート用組成物は、本開示のインクに含まれる樹脂粒子と同様の水溶性有機溶剤、界面活性剤、及び、水を含むことが好ましい。更に、オーバーコート用組成物は、その他の成分として、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の添加剤を含むことが好ましい。
オーバーコート用組成物に含まれるこれらの成分は、本開示のインクに含まれるこれらの成分と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0241】
(オーバーコート用組成物の付与方法)
オーバーコート用組成物の付与方法としては、特に制限されず、スプレー塗布、塗布ローラ等の塗布、インクジェット法による付与、浸漬などの方法が挙げられるが、インクジェット法が好ましい。
インクジェット法によるオーバーコート用組成物の付与は、上述の赤外線吸収画像を形成する工程におけるインクジェット法と同様の方法により行うことができる。
【0242】
(加熱方法)
赤外線吸収画像上に形成されたオーバーコート用組成物を加熱することにより、例えば、オーバーコート用組成物中の樹脂粒子による被膜が形成され、オーバーコート層が形成される。この加熱の際に、乾燥が行われてもよい。
その他、オーバーコート層を形成する工程における加熱方法は、上述のインクに対する加熱方法と同様の方法により行うことができる。
【0243】
<保護膜を形成する工程>
本開示の赤外線吸収画像形成方法は、赤外線吸収画像を形成する工程後に、保護膜を形成する方法を更に含んでもよい。
保護膜としては、特に限定されないが、波長700nm~波長1200nmにおける赤外線吸収画像の極大吸収波長での透過率が50%以上である保護膜が好ましい。
保護膜の材料としては、樹脂、ガラス等が挙げられる。
保護膜の形成方法としては、特に限定されず、保護膜を赤外線吸収画像上に配置する方法、保護膜を公知の接着方法により接着する方法等が挙げられる。上記公知の接着方法としては、例えば、接着剤を用いる方法、ラミネート法等が挙げられる。
【0244】
〔画像形成方法〕
本開示の画像形成方法は、上述した本開示の赤外線吸収画像形成方法によって基材上に赤外線吸収画像を形成する工程(以下、「赤外線吸収画像形成工程」ともいう)と、
赤外線吸収画像に対し、赤外線を照射して画像を得る工程(以下、「赤外線照射工程」ともいう)と、
を含む。
本開示の画像形成方法は、必要に応じ、その他の工程を含んでもよい。
【0245】
本開示の画像形成方法において、赤外線吸収画像形成工程で形成される赤外線吸収画像は、特定赤外線吸収材料の会合形成性に優れる(言い換えれば、赤外線吸収性に優れる)。
本開示の画像形成方法では、上記赤外線吸収性に優れる赤外線吸収画像を前駆体とし、この前駆体に対し、赤外線照射工程において、赤外線を照射して画像を得る。この赤外線の照射により、赤外線吸収画像(前駆体)が赤外線を吸収して熱を生じ、この熱により、前駆体自身が効果的に加熱されるので、耐擦性に優れた画像が得られる。
【0246】
本開示の画像形成方法は、可視画像(例えば着色画像)の形成に好適である。
本開示の画像形成方法によって着色画像を得る場合には、好ましくは、本開示のインクとして、着色剤を含有する態様のインクを用い、赤外線吸収画像形成工程において、着色画像である態様の赤外線吸収画像を形成する。
着色画像である態様の赤外線吸収画像に対し、赤外線照射工程において、赤外線を照射することにより、着色画像である態様の赤外線吸収画像が効率よく加熱される。このため、耐擦性に優れた着色画像が得られる。
得られる着色画像では、赤外線吸収性が(即ち、特定赤外線吸収材料の会合が)残存していてもよいし、赤外線吸収性(即ち、特定赤外線吸収材料の会合が)が残存していなくてもよい。
【0247】
<赤外線吸収画像形成工程>
赤外線吸収画像形成工程は、上述した本開示の赤外線吸収画像形成方法によって基材上に赤外線吸収画像(前駆体)を形成する工程である。
赤外線吸収画像形成工程については、前述した本開示の赤外線吸収画像形成方法の項を参照できる。
但し、赤外線吸収画像形成工程では、基材上にインクを付与した後のインクの加熱を省略してもよい。
【0248】
<赤外線照射工程>
赤外線照射工程は、赤外線吸収画像(前駆体)に対し、赤外線を照射して画像を得る工程である。
本工程では、赤外線吸収画像(前駆体)に対して赤外線を照射することにより、赤外線吸収画像(前駆体)が赤外線を吸収し、熱が生じる。生じた熱により、赤外線吸収画像(前駆体)自身が効率よく加熱される。
赤外線を吸収した後の前駆体においては、赤外線吸収性が残存していてもよいし、赤外線吸収性が残存していなくてもよい。
【0249】
赤外線としては、700nm~1500nmの波長領域に極大発光波長を有する赤外線が好ましく、780nm~1500nmの波長領域に極大発光波長を有する赤外線がより好ましく、800nm~1500nmの波長領域に極大発光波長を有する赤外線が更に好ましい。
【0250】
赤外線照射工程は、赤外線吸収画像(前駆体)に対し赤外線を照射するだけでなく、赤外線吸収画像(前駆体)を加熱手段によって積極的に加熱して、画像を得てもよい。
この場合の加熱の条件としては、上記本開示の赤外線吸収画像形成方法の項における加熱の好ましい条件を適用できる。
【0251】
<その他の工程>
本開示の画像形成方法は、その他の工程を含んでいてもよい。
その他の工程については、本開示の赤外線吸収画像形成方法におけるその他の工程(可視画像を形成する工程、オーバーコート層を形成する工程、保護膜を形成する工程、等)を、本開示の画像形成方法においても適用できる。
【実施例
【0252】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例には限定されない。
以下において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、それぞれ、「質量部」及び「質量%」を意味する。
以下、水としては、超純水を用いた。
【0253】
〔実施例1-1〕
<インクの調製>
特定赤外線吸収材料としての化合物C-36を水に添加して3時間ビーズミルで分散した後、ここに、水溶性有機溶剤(溶剤種X)としてのプロピレングリコール及び下記の界面活性剤を添加して60分撹拌した。得られた組成物を、目びらき5μmのフィルターでろ過することにより、下記組成を有するインクを得た。
【0254】
-インクの組成-
・化合物C-36〔特定赤外線吸収材料〕
… 0.5質量%
・プロピレングリコール(富士フイルム和光純薬(株)製)〔水溶性有機溶剤;溶剤種X〕
… 20質量%
・オルフィンE1010(日信化学社製)〔アセチレン系界面活性剤〕
… 0.5質量%
・水
… 全体で100質量%となる残量
【0255】
<評価>
上記インクを用い、以下の評価を行った。
結果を表1に示す。
【0256】
(赤外線吸収画像における特定赤外線吸収材料の会合形成性)
上記インクを、インクジェット記録装置(FUJIFILM DMP-2831)に付属のインクカートリッジに充填し、600dpi×600dpi(dots per inch)、滴量10pLの条件で、コート紙(OKトップコート)上に網点率100%でベタ画像状に付与した後、100℃の温風で1分乾燥させた。これにより、コート紙上に赤外線吸収画像(ベタ画像)を形成した。
得られた膜について、日本分光社製の紫外可視近赤外分光光度計「V-570」の積分球ユニットを用い、900nm以上の波長領域における最も低い反射率αと600nm以上850nm未満の波長領域における最も低い反射率βとをそれぞれ測定した。
反射率βに対する反射率αの比率(以下、α/β比ともいう)を求め、得られたα/β比に基づき、下記評価基準に従い、赤外線吸収画像における特定赤外線吸収材料の会合形成性を評価した。
下記評価基準において、赤外線吸収画像における特定赤外線吸収材料の会合形成性に最も優れるランクは「A」である。
【0257】
-赤外線吸収画像における特定赤外線吸収材料の会合形成性の評価基準-
A:α/β比が0.8未満である。
B:α/β比が0.8以上1.1未満である。
C:α/β比が1.1以上1.5未満である。
D:α/β比が1.5以上2.0未満である。
E:α/β比が2.0以上である。
【0258】
〔実施例1-2~8-7、比較例1-1~7-3〕
インクの組成を、表1~表3に示すように変更したこと以外は実施例1-1と同様の操作を行った。
結果を表1~表3に示す。
【0259】
-表1~表3の説明-
各成分の欄に示す数値は、インクの全量に対する含有量(質量%)を意味する。
空欄は、該当する成分を含有しないことを意味する。
SP値の単位は、MPa1/2である。
水の量である「残量」は、インク全体で100質量%となるための残量を意味する。
【0260】
表1~表3中の略語及び成分の詳細は以下のとおりである。
・PG … プロピレングリコール(富士フイルム和光純薬(株)製)〔溶剤種X〕
・DPG … ジプロピレングリコール(富士フイルム和光純薬(株)製)
・DEGmBE … ジエチレングリコールモノブチルエーテル(富士フイルム和光純薬(株)製)
・E1010 … オルフィンE1010(日信化学社製)〔アセチレン系界面活性剤〕
・ゼラチン … 新田ゼラチン株式会社製のゼラチン
【0261】
【表1】
【0262】
【表2】
【0263】
【表3】
【0264】
表1~表3に示すように、特定赤外線吸収材料と、水溶性有機溶剤と、水と、を含有し、水溶性有機溶剤の含有量が5質量%~45質量%であり、水溶性有機溶剤中に占める、SP値27.5MPa1/2以上の溶剤種Xの割合が50質量%以上であるインクを用いた各実施例(例えば実施例1-1)では、赤外線吸収画像における特定赤外線吸収材料の会合形成性に優れていた。
【0265】
これに対し、水溶性有機溶剤中に占める溶剤種Xの割合が50質量%未満である各比較例(例えば比較例1-1)、及び、水溶性有機溶剤の含有量が45質量%超である各比較例(例えば比較例1-3)では、赤外線吸収画像における特定赤外線吸収材料の会合形成性が低下した。
【0266】
例えば、実施例1-1及び1-2の対比より、水溶性有機溶剤の含有量が5質量%~30質量%である場合(実施例1-1)、赤外線吸収画像における特定赤外線吸収材料の会合形成性がより向上することがわかる。
【0267】
〔実施例9-1〕
<インクの準備>
実施例7-1のインクを準備した。
【0268】
<処理液の調製>
下記組成中の各成分を混合し、下記組成を有する処理液を得た。
【0269】
-処理液の組成-
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル
… 4質量%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル
… 4質量%
・1,2,3-プロパントリカルボン酸
… 2.6質量%
・マロン酸
… 7.3質量%
・リンゴ酸
… 7.3質量%
・リン酸
… 4.3質量%
・下記水溶性ポリマー1
… 2.5質量%
・ベンゾトリアゾール
… 1質量%
・アニオン性界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)
… 0.5質量%
・シリコーンエマルション(固形分15質量%)
… 0.1質量%
・水
… 全体で100質量%となる残量
【0270】
【化18】
【0271】
水溶性ポリマー1における上記各構造単位の比率(各構造単位の右下の数字)は、質量比である。
水溶性ポリマー1は、以下のようにして合成した。
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた200ミリリットル三口フラスコに、イソプロピルアルコール30.0gを仕込んで、窒素雰囲気下に、65℃まで昇温した。
次に、メチルメタクリレート30.0g、エチルアクリレート6.5g、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸13.5g、イソプロピルアルコール30g、水15g、及び「V-601」(富士フイルム和光純薬社製の重合開始剤)2.97g((0.0129モル);モノマーの総モル数(0.430モル)に対して3モル%)を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。
滴下終了後2時間攪拌し、その後、「V-601」1.48g(モノマーの総モル数に対して1.5モル%)及びイソプロピルアルコール3.0gを加え、2時間攪拌を行った。
得られたポリマー溶液を、前述の2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸と等モル数の水酸化ナトリウムの水溶液で中和し、減圧濃縮によってイソプロピルアルコールを留去し、ポリマー溶液の総量が310gになるまで水を加え、水溶性ポリマー1を16質量%含むポリマー水溶液を得た。
得られた水溶性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は45000であった。
【0272】
<評価>
上記インク及び上記処理液を用い、以下の評価を行った。
【0273】
(画像の不可視性の評価)
基材としてのコート紙(王子製紙社製OKトップコート)上に、上記処理液を♯0のバー(松尾産業株式会社製)を用いて塗布した。
上記インクを、インクジェット記録装置(FUJIFILM DMP-2831)に付属のインクカートリッジに充填し、上記処理液が塗布されたコート紙の上記処理液が塗布された面上に、600dpi×600dpi(dots per inch)、滴量10pLの条件で、網点率5%にて付与した。付与されたインクを、100℃の温風で1分乾燥させることにより、赤外線吸収画像を得た。
得られた赤外線吸収画像を目視で観察し、下記評価基準に従って赤外線吸収画像の不可視性を評価した。
その結果、不可視性の評価結果は「A」であった(即ち、画像の不可視性に優れていた)。
【0274】
-画像の不可視性の評価基準-
A:赤外線吸収画像のドットがほとんど視認できないレベルであり、画像の不可視性に優れていた。
B:赤外線吸収画像のドットを、注視すれば目視で検知できるレベルであり、画像の不可視性は、実用上の許容範囲内であった。
C:赤外線吸収画像のドットが容易に検知できるレベルであり、画像の不可視性に劣っていた。
【0275】
〔実施例9-2〕
実施例7-1のインクを、実施例7-2のインクに変更したこと以外は実施例9-1と同様の操作を行った。
その結果、不可視性の評価結果は「A」であった(即ち、画像の不可視性に優れていた)。
【0276】
〔実施例9-3〕
処理液を塗布せず、基材上に実施例7-1のインクを用いて直接ドット画像を形成したこと以外は実施例9-1と同様の評価を行った。
その結果、不可視性の評価結果は「B」であった。
【0277】
〔実施例9-4〕
処理液を塗布せず、基材上に実施例7-2のインクを用いて直接ドット画像を形成したこと以外は実施例9-2と同様の評価を行った。
その結果、不可視性の評価結果は「B」であった。
【0278】
〔実施例10-1~10-7〕
下記の樹脂粒子A-1(アクリル系樹脂粒子)の水性分散物を、実施例1-1、2-1、3-1、4-1、5-1、6-1、及び7-1のそれぞれのインクに対し、インク全量に対する樹脂粒子A-1(固形分)の含有量が3質量%となるように添加し、10-1~10-7のインクをそれぞれ作製した。この際、各インクにおいて、樹脂粒子A-1及び水の含有量以外の成分の含有量が変化しないように調整した。
【0279】
(樹脂粒子A-1の調製)
機械式攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2L三口フラスコに、メチルエチルケトン(540.0g)を仕込んで75℃まで昇温した。反応容器内の温度を75℃に保ちながら、メチルメタクリレート(108g)と、イソボルニルメタクリレート(388.8g)と、メタクリル酸(43.2g)と、メチルエチルケトン(108g)と、「V-601」(富士フイルム和光純薬(株)製)(2.1g)とからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、「V-601」(1.15g)と、メチルエチルケトン(15.0g)とからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した。更に、「V-601」(0.54g)と、メチルエチルケトン(15.0g)とからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した。その後、85℃に昇温して、更に2時間攪拌を続け、メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸(=20/72/8[質量比])共重合体の樹脂溶液を得た。
得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は、60000であり、酸価は、54.2mgKOH/gであり、ガラス転移温度は124℃であった。
【0280】
次に、上記樹脂溶液(588.2g)を秤量し、イソプロパノール(165g)と、1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液(120.8ml)とを加え、反応容器内の温度を80℃に昇温した。次に、蒸留水(718g)を20ml/minの速度で滴下し、水分散化した。その後、大気圧下にて反応容器内の温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保ち、溶媒を留去した。更に、反応容器内を減圧して、イソプロパノール、メチルエチルケトン、及び蒸留水を留去し、樹脂粒子A-1の水性分散物(固形分25.0質量%)を得た。
【0281】
(画像の耐擦性)
上記各インクを用い、以下のようにして、画像の耐擦性をそれぞれ評価した。
インクを、インクジェット記録装置(FUJIFILM DMP-2831)に付属のインクカートリッジに充填し、600dpi(dots per inch)、1ドット10pLの条件で、コート紙(OKトップコート)上に網点率100%の画像を付与した後、100℃の温風で1分乾燥させた。
【0282】
コート紙上に形成された画像に対し、コート紙を巻き付けた文鎮によって加重55g/cmにてゆっくり2回往復こするこすり操作を施し、こすり操作後の画像を目視及びIR顕微鏡(携帯デジタル色計測機能付き顕微鏡、HandyScope、株式会社スペクトラ・コープ製、IR光源の波長 783nm)で観察した。観察結果に基づき、下記評価基準に従い、赤外線吸収画像の耐擦性を評価した。
【0283】
-画像の耐擦性の評価基準-
A:こすり操作後、画像の表面に傷が殆どない。
B:こすり操作後、画像の表面にわずかに傷があり、画像が削れて下地が見えている箇所が全体の30%未満の領域である。
C:こすり操作後、画像が削れて下地が見えている領域があり、この領域が、画像全体に対して30%以上である。
【0284】
実施例10-1~10-7のインク(樹脂粒子含有)を用いた画像の耐擦性の評価結果は、いずれも「B」であった。
【0285】
実施例10-1~10-7のインク(樹脂粒子含有)に代えて実施例1-1、2-1、3-1、4-1、5-1、6-1、及び7-1のそれぞれのインク(樹脂粒子非含有)を用いたこと以外は上記と同様の画像の耐擦性の評価を行った。
その結果、画像の耐擦性の評価は、いずれも「C」であった。
【0286】
以上により、インクに樹脂粒子を含有させることにより、画像の耐擦性が向上することが確認された。
【0287】
〔実施例11〕
マゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド122;以下、「PR122」ともいう)の水分散物(下記マゼンタ顔料分散液M1)を用い、実施例6-1のインクに対し、インク全量に対するPR122の含有量が3質量%となるように添加し、実施例11のインクを調製した。この際、インクにおいて、PR122、樹脂分散剤、及び水の含有量以外の成分の含有量が変化しないように調整した。
【0288】
(マゼンタ顔料分散液M1の準備)
-水溶性ポリマー分散剤Q-1の合成-
メタクリル酸(172.0質量部)と、メタクリル酸ベンジル(828.0質量部)と、イソプロパノール(375.0質量部)とを混合することにより、モノマー供給組成物を調製した。また、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(22.1質量部)と、イソプロパノール(187.5質量部)とを混合することにより、開始剤供給組成物を調製した。次に、イソプロパノール(187.5質量部)を窒素雰囲気下、80℃に加温した中に、上記モノマー供給組成物及び上記開始剤供給組成物の混合物を、2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に4時間、80℃に保った後、25℃まで冷却した。冷却後、溶媒を減圧除去することにより、重量平均分子量約30,000、酸価112mgKOH/gの水溶性ポリマー分散剤Q-1(水溶性ポリマー)を得た。
【0289】
-マゼンタ顔料分散液M1の調製-
上記で得られた水溶性ポリマー分散剤Q-1(150.0質量部)中のメタクリル酸量の0.8当量を、水酸化カリウム水溶液を用いて中和した後、更にイオン交換水を加えて、水溶性ポリマー分散剤濃度が25.0質量%となるように調整し、水溶性ポリマー分散剤水溶液を得た。
この水溶性ポリマー分散剤水溶液(216.0質量部)と、PR122(120.0質量部)と、純水(464.0質量部)とを混合し、ビーズミル(ビーズ径:0.1mmφ、ジルコニアビーズ)で所望の体積平均粒子径が得られるまで分散し、顔料濃度15.0質量%のポリマー被覆マゼンタ顔料粒子の分散液(未架橋分散液DM1)を得た。
上記未架橋分散液DM1(136.0質量部)に、Denacol EX-521(ナガセケムテックス(株)製、架橋剤)(0.3質量部)及びホウ酸水溶液(ホウ酸濃度:4.0質量%)(13.7質量部)を添加し、70℃にて6時間半反応させた後、25℃に冷却し、架橋分散液を得た。
次に、得られた架橋分散液を、限外ろ過装置(クロスフロー型UF、ザルトリウス社製)に取り付けたポリエーテルスルホン(PESU)膜(微細孔のサイズ:0.1μm)に、25℃の雰囲気温度下で、1分間、600mlの流量で流し、限外ろ過を行なった。この限外ろ過は、仕込んだ液の体積倍率の1倍を1回として10回を行なった。その後、限外ろ過後の架橋分散液に、顔料濃度が12.0質量%となるように純水を加えることにより、マゼンタ顔料分散液M1を得た。
マゼンタ顔料分散液M1は、架橋剤によって架橋された水溶性ポリマー分散剤Q-1(架橋ポリマー)によってマゼンタ顔料(PR122)の表面が被覆されている構造を有するポリマー被覆顔料(カプセル化顔料)を含有している。
【0290】
(画像の濃度)
上記実施例11のインクを用い、以下のようにして、画像の濃度を評価した。
インクを、インクジェット記録装置(FUJIFILM DMP-2831)に付属のインクカートリッジに充填し、600dpi×600dpi(dots per inch)、滴量10pLの条件で、コート紙(OKトップコート)上に5%網点率でドットを印刷した後、100℃の温風で1分乾燥させた。
得られた画像(ドット)を、携帯デジタル色計測機能付き顕微鏡Handy Scope(株式会社スペクトラ・コープ製)で観察したところ、マゼンタの色味に影響せず、近赤外域において判読可能な十分な濃度が得られていた。
【0291】
〔実施例12〕
処理液付与工程と、赤外線吸収画像形成工程と、赤外線照射工程と、を含む画像形成方法を実施した。
この画像形成方法は、特開2016-190900号の段落0216~0219に記載の方法と同様の方法によって実施した。
処理液としては、実施例9-1における処理液を用い、インクとしては、実施例10-1~10-7の各々のインクを用いた。
以下、詳細を示す。
【0292】
<処理液付与工程及び赤外線吸収画像形成工程>
150mm四方にカットした紙片(記録用紙)を、500mm/秒で所定の直線方向に移動可能なステージ上に固定し、ステージ温度を30℃に保持した。この保持した記録用紙に、上記実施例9-1において調製した処理液をバーコーターで約1.2μmの厚み(1.5g/m)となるように塗布し、塗布直後に50℃で2秒間乾燥させた(処理液付与工程)。
次に、処理液が塗布された記録用紙を定速移動させながら、この記録用紙の処理液が塗布された領域上に、実施例10-1~10-7のいずれかのインクを、インクジェットヘッドのノズルから吐出して付与し、ベタ状の赤外線吸収画像(画像前駆体)を形成した(赤外線吸収画像形成工程)。
インク吐出条件は、インク液滴量5.0pL、吐出周波数25.5kHz、及び解像度1200dpi×1200dpiとした。
【0293】
<赤外線照射工程>
上記赤外線吸収画像が形成された記録用紙を定速移動させながら、上記赤外線吸収画像に対し、インクジェットヘッドの下流側に配置された赤外線ヒータ及び温風ブロアにより、赤外線照射及び温風吹きつけを施した(赤外線照射工程)。
【0294】
図1は、本実施例12の画像形成において、インクジェットヘッドからインクを付与して赤外線吸収画像を形成してから、形成された赤外線吸収画像に対し、赤外線照射及び温風吹きつけを施すまでの様子を示す模式図である。この図1では、記録用紙に処理液を付与するまでの部分については、図示は省略している。
図1に示すように、インクジェットヘッド(head1)の下流側には、赤外線ヒータIR1、温風ブロアHA1、赤外線ヒータIR2、温風ブロアHA2、赤外線ヒータIR3、及び温風ブロアHA3が、この順に配置されている。
本実施例では、赤外線ヒータIR1、温風ブロアHA1、赤外線ヒータIR2、温風ブロアHA2、赤外線ヒータIR3、及び温風ブロアHA3により、赤外線吸収画像に対し、赤外線照射及び温風吹きつけをこの順に3回ずつ施した。
赤外線ヒータIR1、赤外線ヒータIR2、及び赤外線ヒータIR3としては、それぞれ、ヘレウス社製の短波長赤外線ヒータZKG2400/340G(最大エネルギー波長1.3μm、出力2400W、発光長340mmのハロゲンランプを使用)を用いた。
温風ブロアHA1、温風ブロアHA2、及び温風ブロアHA3としては、風温60℃、風速5m/sにて温風を送風するブロアを用いた。
【0295】
(画像の耐擦性)
赤外線照射及び温風吹き付け後のベタ画像について、実施例10-1における耐擦性と同様の評価方法及び評価基準に従い、耐擦性を評価した。
その結果、実施例10-1~10-7のいずれのインクを用いた場合も、画像の耐擦性は、「A」であった。
【0296】
次に、赤外線吸収画像に対し、赤外線照射を施さず、温風吹きつけのみを施した画像について、上記と同様に耐擦性を評価した。
その結果、実施例10-1~10-7のいずれのインクを用いた場合も、画像の耐擦性は、「B」であった。
【0297】
2019年3月29日に出願された日本国特許出願2019-068257号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
図1