(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20221216BHJP
【FI】
G01N35/00 Z
(21)【出願番号】P 2021527360
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2020010629
(87)【国際公開番号】W WO2020261659
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2019118761
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】島瀬 明大
(72)【発明者】
【氏名】草野 和美
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-081909(JP,A)
【文献】特開2010-008105(JP,A)
【文献】特開2013-213771(JP,A)
【文献】特開2009-204445(JP,A)
【文献】登録実用新案第3123748(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動分析装置であって、
脱気水を使用する必要のない第1系統と、
前記脱気水を使用することが望ましく、前記脱気水を生成する脱気装置および前記脱気水を送液するポンプを有する第2系統と、
前記第1系統に供給する水を貯える第1区画および前記第2系統に供給する前記脱気水を貯える第2区画が形成されている共通タンクと、を備え、
前記第2系統は、前記脱気装置と前記ポンプと前記共通タンクの前記第2区画とを接続する配管を有する循環系と、前記脱気装置と前記脱気水を使用する使用部とを接続する配管を有する使用系と、から構成され、
前記共通タンクの内部に、前記第1区画と前記第2区画とを形成する仕切り、および前記第1区画と前記第2区画とを前記水が移動する通水部が設けられている
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記共通タンクを鉛直方向上面側から見たときに、前記第1区画の断面積A
Aと前記第2区画の断面積A
Bとの比率A
A/A
Bが、前記第1区画の単位時間当たりの消費水量V
Aと前記第2区画の単位時間当たりの消費水量V
Bとの比率V
A/V
Bより大きくなるように前記仕切りが設けられている
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記通水部は、前記仕切りに設けられたスリット、円形の穴、多角形状の穴、のうち少なくともいずれか以上の形状となっている
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記仕切りは1枚の板で構成され、
前記通水部は、前記第1区画と前記第2区画との間の前記仕切りに設けられた開口穴により構成され、
前記開口穴に、前記第1区画から前記第2区画への前記水の流れを許容し、前記第2区画から前記第1区画への前記脱気水の流れを阻害する逆止弁を更に備えた
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記仕切りは2枚以上の板で構成され、
前記通水部には、前記2枚以上の板の間に形成された空間が設けられている
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記仕切りは
直方体形状であり、鉛直方向に対して斜めに設けられている
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記共通タンクは、前記第1系統および前記第2系統を構成する配管を固定するタンクキャップを有する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項7に記載の自動分析装置において、
前記タンクキャップには、固定位置を示す固定位置通知部が設けられている
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記自動分析装置内の機器の動作を制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、前記自動分析装置の立上げから一定時間前記水を前記脱気装置により脱気させた後に分析開始可能とする
ことを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、尿等の検体に対し定性・定量分析を行う自動分析装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
装置の高速化に伴う不十分な脱気性能を改善することを目的として、特許文献1には、液体を供給する給水ポンプと、給水ポンプで供給された液体を脱気する脱気装置と、脱気液を脱気する前の流路内に戻す循環流路を備え、脱気液を使用する検体サンプリング機構,試薬サンプリング機構の少なくともいずれかを備えており、各サンプリング機構用に供給水制御弁を備えており、循環流路内に圧力切り替え弁を設置し、圧力切り替え弁が閉じている時間は脱気液を検体サンプリング機構及び試薬サンプリング機構に供給するようにし、圧力切り替え弁が開いている時間は脱気液が循環流路を介して脱気装置を循環するように構成する、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動分析装置の分注機構としてシリンジポンプを利用したものが数多くあり、圧力を瞬時に正確に伝播するために内部を水などの非圧縮性流体(以下システム水と称する)で満たすことが望まれている。
【0005】
このシステム水の中に気泡があると圧力の伝播に影響してしまうため、分注精度を向上させるためにシステム水には脱気水を用いることが望ましく、そのような構成の自動分析装置が上述した特許文献1に記載されている。
【0006】
ここで、分注機構における圧力伝播以外の用途のシステム水まで脱気水である必要はない。このため、このような脱気水を用いる必要の無い箇所にまで脱気水を供給する構成とすると、脱気装置等の脱気水を生成、貯留する機構の大型化、ひいては装置自体の大型化を招くことになることから、避けることが望まれる。
【0007】
特許文献1では、脱気液を脱気前の流路に戻し、何度も循環させることで不十分な脱気性能を改善している。また、特許文献1には、多くの水量を必要とする場合は小型のバッファタンクを設ける例が記載されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のように装置へ給水するタンクとは別にこのバッファタンクを設けると、装置が大型化、かつ複雑化してしまうことから、より小型化、簡易化する余地があることが明らかとなった。
【0009】
本発明は、従来に比べてシステム水を供給、利用する系を小型化・簡易化することができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、自動分析装置であって、脱気水を使用する必要のない第1系統と、前記脱気水を使用することが望ましく、前記脱気水を生成する脱気装置および前記脱気水を送液するポンプを有する第2系統と、前記第1系統に供給する水を貯える第1区画および前記第2系統に供給する前記脱気水を貯える第2区画が形成されている共通タンクと、を備え、前記第2系統は、前記脱気装置と前記ポンプと前記共通タンクの前記第2区画とを接続する配管を有する循環系と、前記脱気装置と前記脱気水を使用する使用部とを接続する配管を有する使用系と、から構成され、前記共通タンクの内部に、前記第1区画と前記第2区画とを形成する仕切り、および前記第1区画と前記第2区画とを前記水が移動する通水部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来に比べてシステム水を供給、利用する系を小型化・簡易化することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例の自動分析装置の配置図である。
【
図2】実施例の自動分析装置の洗浄系の概略構成図である。
【
図3】実施例の自動分析装置の洗浄水を貯留するタンクに関わる仕切りの一例を示す図である。
【
図4】実施例の自動分析装置のタンクに関わる仕切りの他の一例を示す図である。
【
図5】実施例の自動分析装置のタンクに関わる仕切りの他の一例を示す図である。
【
図6】実施例の自動分析装置のタンクに関わる仕切りの他の一例を示す図である。
【
図7】実施例の自動分析装置のタンクに関わる仕切りの他の一例を示す図である。
【
図8】実施例の自動分析装置のタンクに関わる仕切りの他の一例を示す図である。
【
図9】実施例の自動分析装置のタンクに関わる仕切りの他の一例を示す図である。
【
図10】実施例の自動分析装置のタンクの他の一例を示す図である。
【
図11】実施例の自動分析装置のタンクに接続する配管の設置の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の自動分析装置の実施例について
図1乃至
図11を用いて説明する。
【0014】
最初に、
図1を用いて本実施例に係る自動分析装置の全体的な構成の概略について説明する。
図1に、本発明の一実施例に係る自動分析装置の全体的な概略構成を示す。
【0015】
図1に示す自動分析装置100は、検体の分析を自動で行う装置であり、検体ディスク101、検体分注機構102、反応セル103、反応槽104、試薬ディスク105、試薬分注機構106、撹拌機構107、光度計108、セル洗浄機構109、洗浄槽110,111,洗浄槽112、制御部150を備えている。
【0016】
検体ディスク101は、検体を保持した検体容器を装置にセットするための機器であり、検体容器を複数保持する。なお、検体ディスク101に加えて、あるいは替えて検体容器を1本保持する検体ホルダや複数本保持する検体ラックを搬送する搬送機構を設けることができる。
【0017】
反応槽104は、その周方向に沿って所定の間隔にて相互に離間した状態で、血液又は尿などの検体と試薬とを反応させるための反応セル103が複数格納されている。反応槽104では、反応セル103やその内部の反応液を一定温度に保つべく槽内に恒温水が流されている。
【0018】
試薬ディスク105は、その中に測定項目に応じた試薬が収容された試薬ボトルが複数個、円周状に格納可能となっている保管庫である。試薬ディスク105は保冷されている。
【0019】
検体分注機構102は、反応槽104と検体ディスク101との間に設置されており、円弧状に回転および上下動可能に構成されている。その先端には、検体プローブがそれぞれ設けられている。
【0020】
検体プローブは検体分注機構102の回転軸を中心に円弧を描きながら移動して、測定用の検体の吸引を検体容器あるいは反応セル103から行い、反応セル103への吐出を行う各種分注動作を実行する。
【0021】
試薬分注機構106は、反応槽104と試薬ディスク105とに隣接して設置されており、円弧状に回転および上下動可能に構成され、その先端に試薬プローブが設けられている。
【0022】
試薬プローブは試薬分注機構106の回転軸を中心に円弧を描きながら移動して、試薬の吸引を試薬ボトルから行い、反応セル103への吐出を行う分注動作を実行する。
【0023】
撹拌機構107は、例えば先端に設けられた撹拌翼或いはへら状の棒(図示省略)を備えており、撹拌翼或いは棒を反応セル103内の検体と試薬との混合液である反応液に浸潤させて回転することにより撹拌する。なお、撹拌機構107は、このような機構に限られるものではなく、超音波によるものとすることができる。
【0024】
光度計108は、反応セル103内の検体と試薬とを反応させた反応液を比色分析するための装置であり、反応槽104の内側に配置される光源(図示省略)に対して反応セル103を挟むように対向して配置される。
【0025】
セル洗浄機構109は、分析が終了した反応液の吸引および反応セル103の洗浄を行う装置である。
【0026】
反応槽104と検体ディスク101との間には、検体分注機構102の検体プローブを洗浄するための洗浄槽110が設置されている。また、反応槽104と試薬ディスク105の間には、試薬分注機構106の試薬プローブを洗浄するための洗浄槽111が設置されている。更に、反応槽104と撹拌機構107の間には、撹拌機構107を洗浄するための洗浄槽112が設置されており、コンタミ防止が図られている。
【0027】
制御部150は、上述された自動分析装置100内の機器に接続されており、自動分析装置100の全体動作を制御する。この制御部150は、CPUやメモリなどを備えたコンピュータであり、光度計108の検出結果から検体中の所定成分の濃度を求める演算処理を行う。
【0028】
制御部150による各機器の動作の制御は、記憶装置に記録された各種プログラムに基づき実行される。記憶装置には、検体の測定に用いる各種プログラムの他に、入力装置を介して入力された各種パラメータや測定対象検体の情報(検体種別情報など)、測定結果などが記憶される。
【0029】
なお、制御部150で実行される動作の制御処理は、1つのプログラムにまとめられていても、それぞれが複数のプログラムに別れていてもよく、それらの組み合わせでもよい。また、プログラムの一部または全ては専用ハードウェアで実現してもよく、モジュール化されていても良い。
【0030】
本実施例の制御部150では、更に、自動分析装置100の立上げから一定時間水を脱気装置21により脱気させた後に分析開始可能とする制御を実行する。その詳細は後述する。
【0031】
このような自動分析装置のうち、洗浄槽110,111,112やセル洗浄機構109では、非脱気水を使用して対象となる機器の洗浄を行う。これに対し、検体分注機構102や試薬分注機構106では、検体や試薬の分注動作、あるいは内洗の際に脱気水を使用する。なお、反応セル103のブランク水や反応槽104の恒温水は脱気水と非脱気水のいずれを使用してもよい。
【0032】
以上が自動分析装置100の全体的な構成である。
【0033】
上述のような自動分析装置100による検体の分析処理は、一般的に以下の順に従い実行される。
【0034】
まず、分析対象の検体が収容された検体容器が検体ディスク101に設置され、検体分取位置まで回転移動される。
【0035】
検体分注機構102は、吸引した検体を反応槽104上にある反応セル103に吐出し、その反応セル103に対して試薬分注機構106により試薬ディスク105上の試薬ボトルから吸引した試薬をさらに添加し、撹拌機構107で反応セル103内の検体と試薬とを混合して撹拌する。
【0036】
その後、光度計108により光源から反応セル103に保持された反応液を通過した光の光学特性が光度計108により測定され、測定結果が制御部150に送信される。
【0037】
制御部150は、送信された測定結果から演算処理によって検体内の特定成分の濃度を求める。分析結果は表示装置を介してユーザに通知されるとともに、記憶装置に記録される。
【0038】
次に、本実施例の自動分析装置100の脱気水、非脱気水を用いる機構の一例である、洗浄系の詳細について
図2を用いて説明する。
図2は本発明の自動分析装置の洗浄系の概略構成図である。
【0039】
図2に示すように、タンク1の内部には水2が湛えられている。このタンク1の内部には仕切り3が設けられており、第1系統11に供給する水を貯える第1区画4と第2系統12に供給する脱気水を貯える第2区画5とに区切られている。
【0040】
また、仕切り3は第1区画4と第2区画5とを完全に仕切っているのではなく、通水部6が設けられている。
【0041】
この通水部6により、第1区画4と第2区画5とを水2が移動するための通路が確保され、互いの空間に貯留されている水2の行き来が可能となっている。しかしながら、行き来のし易さは制限できるようになっている。
【0042】
第1区画4には給水配管7および第1吸引配管8が挿入されており、第2区画5には第2吸引配管9および戻り配管10が挿入されている。
【0043】
装置の水の使用系統は、脱気水を使用する必要のない第1系統11と、脱気水を使用することが望ましい第2系統12に分けられており、第1系統11は第1吸引配管8を通じて第1区画4から、第2系統12は第2吸引配管9を通じて第2区画5から水を吸引、使用する。
【0044】
タンク1への給水は外部の給水源から給水配管7を通じて行われる。水位は水位センサ(図示省略)により制御され、一定の範囲内に保たれるよう給水弁13を制御する。
【0045】
第1系統11では、第1ポンプ14により第1吸引配管8、第1吸引流路15を経て吸引された水が、第1吐出流路16を経て使用される。第1系統11の使用先として例えば洗浄槽17があり、分析に使用したノズルの外表面を洗浄することができる。洗浄水は弁18によって吐出が制御される。
【0046】
なお、洗浄槽17は、上述した洗浄槽110,111,112やセル洗浄機構109を総称したものである。
【0047】
また、図示は省略したが、洗浄槽17以外にも使用先はあり、第1吐出流路16の先は使用先ごとに分岐していて、それぞれに弁を備え、それぞれの弁で吐出が制御される。
【0048】
第2系統12では、第2ポンプ19により第2吸引配管9、第2吸引流路20を経て水が吸引される。第2吸引流路20の途中に脱気装置21があり、ここを通過する際に吸引された水が脱気される。
【0049】
脱気装置21としてよくあるのがシリコンの中空糸膜でできたものがあり、中空糸膜の外側を負圧にすることで、液体が中空糸膜の内側を通過する際に、液体中のガスのみ中空糸の壁面から分離する仕組みとなっている。
【0050】
第2ポンプ19の先は第2吐出流路22に繋がるが、一部は分岐23で分岐され、戻り流路24、戻り配管10を経て第2区画5に戻される。
【0051】
これら、脱気装置21と第2ポンプ19とタンク1の第2区画5とを接続する吸引流路20,戻り流路24により循環系が構成され、脱気装置21と脱気水を使用する使用部とを接続する吐出流路22,接続流路27により使用系が構成される。
【0052】
第2系統12の使用先として例えば検体分注機構102や試薬分注機構106があり、これら検体分注機構102や試薬分注機構106はシリンジポンプ25、ノズル26およびその接続流路27からなる。
【0053】
ノズル26はノズル移動機構(図示省略)により検体容器や反応セル103に移動できる。
【0054】
シリンジポンプ25で発生させた圧力変動を瞬時に正確にノズル26に伝播させる必要があることから、検体分注機構102や試薬分注機構106内部で用いるシステム水は脱気水であることが望ましい。
【0055】
分注終了後、ノズル26の内部を洗浄する必要があり、その時に使用する水は弁28によって吐出が制御される。
【0056】
分注機構は複数持つこともあり、また分注機構以外で脱気水を用いることが望ましい使用先があることもある。
【0057】
第2吐出流路22の先はこれらの使用先ごとに分岐していて、それぞれに弁を備え、それぞれの弁で吐出が制御される。
【0058】
第1吸引配管8や第2吸引配管9の吸引口は、給水の際や、室温変化等で発生した気泡を浮上させ、気泡が存在する可能性を少なくするために、タンク1下方に近い位置に配置する方が望ましい。
【0059】
給水配管7および戻り配管10の吐出口は必ずしもタンク1下方である必要はないが、水面より低い位置に配置することによって、水面落下時に空気を巻き込み、溶存空気を増す方に働いてしまうことをより抑制することができるため、これらの吐出口についても水面より下になるようにすることが望ましい。
【0060】
微量を高精度に分注すべく、ノズル26の径は極めて小さくできている。よってノズル26の内部の洗浄のためには第2ポンプ19は、ギアポンプのように高圧をかけられるようなタイプを使用することが望ましい。
【0061】
脱気装置21では中空糸膜を通過するので、その流路抵抗が大きく第2ポンプ19の吸込圧では不足する場合は、脱気装置の前に別のポンプを更に設けることができる。
【0062】
あるいは、循環して脱気することができるからこそ、1回の通過時の脱気能力を落としてでも流路抵抗を小さくする手も考えられ、あえて別のポンプを備えない構成とすることができる。流路抵抗の小さい小型の脱気装置を使用することができれば、装置の小型化、コストダウンにもつながる。
【0063】
次に仕切り3の詳細やバリエーションについて
図3乃至
図9を用いて説明する。
図3乃至
図9は、本実施例の自動分析装置の洗浄水を貯留するタンクに関わる仕切りの一例を示す図である。
【0064】
仕切り3は
図2の下方に示すように直方体形状の1枚の板で構成されており、脱気装置21の通過後にタンク1に戻された脱気水がタンク1全体に広がって脱気水を必要としない第1系統11にも使用されてしまうことを抑制するために設けられている。これにより、せっかく脱気した水が無駄に使われることを抑制し、効率的に溶存酸素濃度を下げることに寄与する。
【0065】
また、第1区画4と第2区画5とを仕切り3によって完全に仕切ってもよいが、そうすると各区画での水位制御が必要になり、区画ごとに水位センサや給水弁を設け、別々に制御しなければならず、装置が複雑化してしまう、との憾みがある。
【0066】
そこで、本発明では、仕切り3によりタンク1の内部を完全に仕切るのではなく、仕切り3の一部に互いの区画への水2の行き来を許容可能な通水部6を設けておく。
【0067】
この通水部6の断面積は、行き来に支障が出ない限りで小さくしておくことが望ましい。これにより、脱気水が第1区画4側へ拡散することを抑制することが望ましい。
【0068】
また、通水部6を通じて脱気水の第2区画5から非脱気水の第1区画4へ水が流れると、仕切り3が全くないよりはまだよいが、やはり無駄が生じてしまう憾みがある。そこで、通水部6の水の流れが第1区画4から第2区画5への一方向となるようにすることが望ましい。
図3はそのための仕切り3の特徴を説明するためのものである。
図3では、
図2のタンク1と同じだが、分かりやすさのため給水配管7や戻り配管10は記載してない。以後の
図4乃至
図9も同様である。
【0069】
図3に示すような第1区画4から第2区画5への水2の流れを作るには、第2区画5の水面低下を第1区画4の水面低下より早くすればよい。
【0070】
具体的には、第1系統11の単位時間当り消費水量をVA、第2系統12の単位時間当り消費水量をVBとし、タンク1を鉛直方向上面側から見たときの第1区画4の断面積をAA、第2区画5の断面積をABとすると、第1区画4および第2区画5の単位時間当り水面低下hA,hBは、それぞれ
hA=VA/AA … (1)
hB=VB/AB … (2)
となる。
【0071】
装置のオペレーションにおいてVA,VBは既知と考えてよいから、hA<hB(=VA/AA<VB/AB)、すなわち上述した(1),(2)式より、第1区画4の断面積AAと第2区画5の断面積ABとの比率AA/ABが、第1区画4の単位時間当たりの消費水量VAと第2区画5の単位時間当たりの消費水量VBとの比率VA/VBに対して、AA/AB>VA/VBとの関係を満たす位置に仕切り3を設けることが望ましい。
【0072】
このような仕切り3を設けることで脱気水を貯蔵する機能をタンク1に持たせることができ、バッファタンクを別に設けることなく装置構成を簡素化できる。
【0073】
次いで、仕切り3や通水部6のバリエーションについて
図4以降を用いて説明する。
【0074】
通水部6は、必ずしもタンク1内部の上部側に設ける必要はない。例えば、ある検出範囲を持つ水位センサが1つあり、この水位センサにより水位の下限を検出して給水し、上限を検出して給水を止める制御を行うこととする。
【0075】
この1つの水位センサで第1区画4および第2区画5の両方の水位を制御しようとした場合、もし通水部6の境界の下限側が水位センサの検出範囲の下限より上にあると、水面が通水部6の下限を下回った場合、水位センサを設置してない側の区画の水位が分からなくなる。このような場合には水位センサを第1区画4と第2区画5とで別々に設けることが考えられる。
【0076】
通水部6の下限を下げることも考えられるが、前述の通り通水部6を大きくすることは効率よい脱気水量確保のためには懸念がある。そのような不利を解決するために、
図4に示すように通水部6aを下部に設けることが考えられる。
【0077】
図4において、水位センサ29は検出範囲29aを持ち、仕切り3aには下部に通水部6aが設けられている。このような場合の第1区画4の水面低下h
Aおよび第2区画5の水面低下h
Bは通水部6aが上部にある
図3に示す形態と同様に考えられ、h
A<h
Bを満たす第1区画4の断面積A
Aおよび第2区画5の断面積A
Bとなる位置に仕切り3aを設けることで、第1区画4から第2区画5への流れを確保することができる。
【0078】
このような場合においても、第1吸引配管8や第2吸引配管9の吸引口は前述の通りタンク1の下部位置にあった方が望ましい結果が得られる。
【0079】
但し、タンク1の下部に通水部6aを設ける場合、通水部6aと第2吸引配管9の吸引口が近いと、第1区画4から第2区画5に流れた非脱気水が先入れ先出しのような形となることから、これを改善することによって脱気装置21を複数回通過させて十分に脱気させる、という循環脱気の効果をより得る余地がある、といえる。
【0080】
そこで、
図5に示すように、仕切り3b,3cを2枚の板で構成するとともに、2枚以上の板からなる仕切り3b,3cの間に空間を設け、通水部6bの第2区画5側の出口と第2吸引配管9の吸引口との間の距離を大きくすることが望ましい。
【0081】
図5に示すような仕切り3cは、仕切り3bより第2区画5側のタンク1底面より立ち上がっており、その上端の位置は水位センサ29の検出下限より下に位置している。このような仕切り3b,3cにより第2吸引配管9の吸引口から通水部6bを離すことができる。
【0082】
第1区画4から見た通水部6bの開口部と第2区画5から見た通水部6bの開口部との間の狭小な空間は、この空間全体で通水部6bとみなすことができる。
図3のような一平面の仕切り3および通水部6と区別する場合は、これを通水域と呼ぶことができる。通水域があるとタンク1内部での水2の拡散がより起きにくくなるから、効率よい脱気水量確保に有利である。その効果を高めるべく、仕切り3bと仕切り3cとをさらに交互に並べることができる。更に仕切りを設ける場合も、通水域の第2区画5側の出口は第2区画5の上部側とすることが望ましい。
【0083】
また、仕切りが直方体形状の一枚の板で形成され、通水部の高さは水平方向に一様である必要はない。
【0084】
例えば、タンク1を
図3等の図示方向から90度回転させて見たときに、
図6に示すように仕切り3dが鉛直方向のスリットにより構成されているものとすることができる。このスリット状の開口が通水部6dとなる。
【0085】
スリットは水位センサ29の検出下限より下まで切られているものとすることが望ましい。通水部6dの面積は水平方向に広がらない分抑えられ、脱気水の拡散を抑えることができる。
【0086】
なお、通水部は円形、あるいは多角形状の穴のような形でもよいし、1つの仕切りに複数のスリット状あるいは穴状の通水部を設けることができる。このような場合も、仕切りの配置を工夫し、通水域を設けたりするとともに、様々な形状の複数の通水部や通水領域とを組み合わせることができる。
【0087】
更に、
図7に示すように、第1区画4から第2区画5への一方通行の流れをより確実に形成するために、仕切り3eを1枚の板で構成し、また通水部6eを第1区画4と第2区画5との間の仕切り3eに設けられた開口穴により構成し、その開口穴に、第1区画4から第2区画5への水の流れを許容し、第2区画5から第1区画4への脱気水の流れを阻害する逆止弁30を設けることができる。
【0088】
逆止弁30は、第2区画5の水位が第1区画4の水位より低下すると、その圧力差により、第1区画4から第2区画5に非脱気水が流れるが、第2区画5からは弁が閉じることで脱気水が第1区画4側へ流れないように配置される。
【0089】
なお、この場合、1つの水位センサで両区画の水位制御をするためには、水位センサ29は第1区画4に設置することが望ましい。
【0090】
仕切り3は必ずしも鉛直な一枚の板で構成される必要はない。
【0091】
例えば、
図8に示すように、仕切り3fをタンク1内部に斜めに設けることができる。このような場合の第1区画4や第2区画5の水位低下は、仕切り3fを上部から見た各区画の断面積を基に考えるとよい。
【0092】
このような仕切り3fが設けられたことで、第1区画4から第2区画5の流れを維持しつつ、第1区画4と第2区画5との容積比を変えることができる。これにより、タンク1の設計の自由度が増す、との効果が得られる。
【0093】
特に、第2区画5は消費水量と戻り水量の関係で、効率のよい溶存酸素濃度に維持するために一定の容積を必要とする。第1区画4を小さくすればタンク1全体の体積を小さくすることができる。
【0094】
ここで、
図2等で示したすような垂直な一平面の仕切り3の場合、水位低下を実現する断面積比がそのまま容積比となるため、面積比以上に小さくすることはできない。一方、
図8に示すように、仕切り3fが斜めに設けられていることによって、狙った水面低下を発生させるための断面積比を維持しつつ、容積比を変えることができるから、タンク1の大きさを小さくすることができる。これによりタンク1を更に小型化することができる。
【0095】
図9は仕切り3gが複数の平面でできている場合である。このような場合も、各区画の水位低下は仕切り3g上部から見た各区画の断面積で考えることが望ましい。
【0096】
なお、仕切りは必ずしもタンク1底面から立たなければならないわけではなく、
図9に示すように、タンク1の側面から仕切り3gが出てもよい。当然、第1吸引配管8と第2吸引配管9の吸引口の高さが異なるものとすることができる。このような場合においても、それぞれの区間の下部を吸引することが望ましい。このような構造を取れれば、更に設計の自由度が増し、消費水量次第ではタンク1の容量を大きく減らすことが可能となり、更なる装置の小型化へ繋がる。
【0097】
更に、タンクの別形態について
図10および
図11を用いて説明する。
図10は本実施例の自動分析装置のタンクの他の一例を示す図、
図11はタンクに接続する配管の設置の他の一例を示す図である。
【0098】
自動分析装置100では、メンテナンスのためタンク1を清掃する場合があり、タンク1と配管類は互いに取り外せる構造であることが望ましい。また、取り外した後は元に戻すから、容易に戻せるような構造であるとよい。
【0099】
そこで、
図10に示すように、タンク1は、第1系統11を構成する給水配管7、第1吸引配管8、および第2系統12を構成する第2吸引配管9、戻り配管10、更に水位センサ29を固定するタンクキャップ31を有することが望ましい。
【0100】
更に、このタンクキャップ31には、元に戻す際に第1区画4の第1吸引配管8および第2区画5の第2吸引配管9との向きが逆に固定されないように、固定位置を示す固定位置通知部が設けられていることが望ましい。固定位置通知部の一例としては、目印を設ける、あるいはタンクキャップ31の形状を非対称にすることが挙げられる。
【0101】
また、上述のように、配管類はタンク1の上部側から挿入する形とする必要はなく、例えば
図11のように、タンク1aの底部から給水配管7や第1吸引配管8、第2吸引配管9、戻り配管10が突出する形態とすることができる。更には、タンクの側面から突出する形とすることができる。
【0102】
更に、タンクと配管とが一体構造で、配管と流路にそれぞれコネクタを備えて、コネクタ同士を接続するようにしてもよい。コネクタには目印を付けたりするなど、誤配管を防ぐ仕組みがあるとより望ましい。
【0103】
更に、自動分析装置100の立上げ直後は第2区画5の溶存空気濃度が不明であることが多い。そこで、制御部150は、自動分析装置100の立上げから一定時間だけの間はシステム水を脱気装置21を通過する循環系を一定時間循環させて、ある程度の水準まで脱気させた後に分析開始可能とすることが望ましい。例えば、一定時間経たないと装置がオペレーション開始できないようにすることができる。また、装置立上げ時の準備動作に組み込んでもよい。
【0104】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0105】
上述した本実施例の自動分析装置100は、脱気水を使用する必要のない第1系統11と、脱気水を使用することが望ましく、脱気水を生成する脱気装置21および脱気水を送液する第2ポンプ19を有する第2系統12と、第1系統11に供給する水を貯える第1区画4および第2系統12に供給する脱気水を貯える第2区画5が形成されているタンク1と、を備え、第2系統12は、脱気装置21と第2ポンプ19とタンク1の第2区画5とを接続する吸引流路20,戻り流路24を有する循環系と、脱気装置21と脱気水を使用する使用部とを接続する吐出流路22,接続流路27を有する使用系と、から構成され、タンク1の内部に、第1区画4と第2区画5とを形成する仕切り3,3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g、および第1区画4と第2区画5とを水が移動する通水部6,6a,6b,6d,6e,6f,6gが設けられている。
【0106】
このような構造によって、脱気水と非脱気水を収容するタンク1を共通化することができるため、脱気水の供給系を小型化するとともに簡易な構成とすることができ、自動分析装置100自体の小型化を図ることができる。
【0107】
また、タンク1を鉛直方向上面側から見たときに、第1区画4の断面積AAと第2区画5の断面積ABとの比率AA/ABが、第1区画4の単位時間当たりの消費水量VAと第2区画5の単位時間当たりの消費水量VBとの比率VA/VBより大きくなるように仕切り3,3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g、が設けられているため、効果的に第1区画4から第2区画5への水2の流れを形成することができ、脱気水が非脱気水を保持する第1区画4側へ流れであることを効果的に抑制し、脱気水を使用する側で脱気水を効率的に使用することができる。
【0108】
更に、仕切り3dは1枚の板で構成され、通水部6dは、仕切り3dに設けられたスリット、円形の穴、多角形状の穴のうち少なくともいずれか一つ以上により構成されることで、簡易な構成によってタンク1の内部を分離するとともに、通水部を確保することができる。
【0109】
また、仕切り3dは1枚の板で構成され、通水部6dは、第1区画4と第2区画5との間の仕切り3dに設けられた開口穴により構成され、開口穴に、第1区画4から第2区画5への水の流れを許容し、第2区画5から第1区画4への脱気水の流れを阻害する逆止弁30を更に備えたことにより、通水部6dにおける脱気水と非脱気水との混合をより抑制することができ、脱気水をより効率的に生成、使用することができる。
【0110】
更に、仕切り3b,3cは2枚以上の板で構成され、通水部6bには、2枚以上の板の間に形成された空間が設けられていることによっても、通水部6bにおける脱気水と非脱気水との混合をより抑制することができ、脱気水をより効率的に生成、使用することができる。
【0111】
また、仕切り3fは鉛直方向に対して斜めに設けられていることにより、狙った水面低下を発生させるための断面積比を維持しつつ、容積比を変えることができるため、タンク1の大きさを小さくすることができる。これによりタンク1を更に小型することが可能である。
【0112】
更に、タンク1は、第1系統11および第2系統12を構成する配管を固定するタンクキャップ31を有することで、タンクキャップ31を取外すことで一緒に配管類を取り外すことが可能であり、メンテナンスなどの際のユーザの負担を低減することができる。
【0113】
また、タンクキャップ31には、固定位置を示す固定位置通知部が設けられていることで、タンクキャップ31が逆差しされて第1系統11と第2系統12とが反対に固定され、脱気水と非脱気水とが反対に用いられることを確実に防止することができるため、装置の安定稼働に大きく寄与する。
【0114】
更に、自動分析装置100内の機器の動作を制御する制御部150を更に備え、制御部150は、自動分析装置100の立上げから一定時間水を脱気装置21により脱気させた後に分析開始可能とすることにより、自動分析装置100の分析信頼性の向上に寄与する。
【0115】
<その他>
なお、本発明は上記の実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【符号の説明】
【0116】
1,1a…タンク(共通タンク)
2…水
3,3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g…仕切り
4…第1区画
5…第2区画
6,6a,6b,6d,6e,6f,6g…通水部
7…給水配管
8…第1吸引配管
9…第2吸引配管
10…戻り配管
11…第1系統
12…第2系統
13…給水弁
14…第1ポンプ
15…第1吸引流路
16…第1吐出流路
17…洗浄槽
18…弁
19…第2ポンプ
20…第2吸引流路
20…吸引流路
21…脱気装置
22…第2吐出流路
22…吐出流路
23…分岐
24…戻り流路
25…シリンジポンプ
26…ノズル
27…接続流路
28…弁
29…水位センサ
29a…検出範囲
30…逆止弁
31…タンクキャップ
100…自動分析装置
101…検体ディスク
102…検体分注機構
103…反応セル
104…反応槽
105…試薬ディスク
106…試薬分注機構
107…撹拌機構
108…光度計
109…セル洗浄機構
110…洗浄槽
111…洗浄槽
112…洗浄槽
150…制御部