(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】アクリル系グラフト共重合体、その製造方法及びそれを含む熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 285/00 20060101AFI20221216BHJP
C08L 51/00 20060101ALI20221216BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20221216BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20221216BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
C08F285/00
C08L51/00
B29C45/17
B29C45/26
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2021538679
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(86)【国際出願番号】 KR2020012285
(87)【国際公開番号】W WO2021066345
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2019-0120583
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0113904
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ボン・クン・アン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヨン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ウォン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジユン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウンジ・イ
(72)【発明者】
【氏名】セヨン・キム
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2008-0044141(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0026532(KR,A)
【文献】特開2012-236871(JP,A)
【文献】特表2009-540045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系グラフト共重合体の製造に使用された総単量体100重量部に対して、
(A)芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物及びアルキルアクリレート化合物からなる群から選択された1種以上の化合物4~25重量%を含んで重合されたシードと、
(B)前記シードを囲み、アルキルアクリレート化合物25~55重量%を含んで重合されたゴムコアと、
(C)前記ゴムコアを囲み、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物からなる群から選択された1種以上の化合物40~70重量%を含んで重合されたグラフトシェルとを含むアクリル系グラフト共重合体であって、
前記グラフトシェルは、前記アクリル系グラフト共重合体100重量部を基準として反応型紫外線安定剤0.05~2重量部を含
んで重合された重合体であり、
前記グラフトシェルは、平均粒径が80~140nm(コアの平均粒径よりも大きい)であ
り、
前記反応型紫外線安定剤は、ベンゾトリアゾール系反応型紫外線安定剤、ベンゾフェノン系反応型紫外線安定剤、またはこれらの混合物であり、
前記ベンゾトリアゾール系反応型紫外線安定剤は、下記化学式1で表される化合物であり、前記ベンゾフェノン系反応型紫外線安定剤は、下記化学式2で表される化合物、下記化学式3で表される化合物、またはこれらの混合物であり、
【化1】
【化2】
【化3】
前記アクリル系グラフト共重合体は、グラフト率が26~32%であることを特徴とする、アクリル系グラフト共重合体。
【請求項2】
前記グラフトシェルは、前記アクリル系グラフト共重合体100重量部を基準として反応型乳化剤0.1~3重量部を含んで重合された重合体であることを特徴とする、請求項
1に記載のアクリル系グラフト共重合体。
【請求項3】
前記反応型乳化剤は、カーボネート、スルホネート及びスルフェートからなる群から1種以上選択された作用基を含む乳化剤であることを特徴とする、請求項
2に記載のアクリル系グラフト共重合体。
【請求項4】
前記シードは、平均粒径が42~82nmであることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載のアクリル系グラフト共重合体。
【請求項5】
前記シードを含むコアは、平均粒径が62~110nm(シードの平均粒径よりも大きい)であることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載のアクリル系グラフト共重合体。
【請求項6】
アクリル系グラフト共重合体の製造に使用された総単量体100重量部に対して、
(A)芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物及びアルキルアクリレート化合物からなる群から選択された1種以上の化合物4~25重量%を重合させてシードを製造するシード製造ステップと、
(B)製造されたシードの存在下でアルキルアクリレート化合物25~55重量%を投入し、重合させてコアを製造するコア製造ステップと、
(C)製造されたコアの存在下で、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物からなる群から選択された1種以上の化合物40~70重量%、及び反応型紫外線安定剤0.05~2重量部を投入し、グラフト重合させてシェルを製造するグラフトシェル製造ステップとを含み、
前記グラフトシェルは、平均粒径が80~140nm(コアの平均粒径よりも大きい)であ
り、
前記反応型紫外線安定剤は、ベンゾトリアゾール系反応型紫外線安定剤、ベンゾフェノン系反応型紫外線安定剤、またはこれらの混合物であり、
前記ベンゾトリアゾール系反応型紫外線安定剤は、下記化学式1で表される化合物であり、前記ベンゾフェノン系反応型紫外線安定剤は、下記化学式2で表される化合物、下記化学式3で表される化合物、またはこれらの混合物であり、
【化4】
【化5】
【化6】
前記アクリル系グラフト共重合体は、グラフト率が26~32%であることを特徴とする、アクリル系グラフト共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記グラフトシェル製造ステップは、反応型乳化剤0.1~3重量部を含むことを特徴とする、請求項
6に記載のアクリル系グラフト共重合体の製造方法。
【請求項8】
(A)請求項1~
5のいずれか一項に記載のアクリル系グラフト共重合体20~50重量部と、(B)平均粒径0.2~0.6μmのアクリレートゴムをコアとするアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体1~15重量部と、(C)硬質マトリックス樹脂45~70重量部とを含むことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
促進耐候性試験装置(weather-o-meter、ATLAS社製のCi4000、キセノンアークランプ、Quartz(内側(inner))/S.Boro(外側(outer))フィルター、照射(irradiance) 0.55W/m
2 at 340nm)を用いて、SAE J1960方法で6000時間測定した後、下記数式2により計算される△Eが1.9以下であることを特徴とする、請求項
8に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【数1】
(ここで、L*a*b*表色系において、
L’は試験後の明度、及びLは試験前の明度であり、
a’及びb’は試験後の色相、並びにa及びbは試験前の色相である)
【請求項10】
着脱可能な金型コアに射出機(LS社、型締力:220トン)を用いて、射出成形条件200~260℃、圧力30~100bar下で100ショット(shot)を連続射出した後、ガスがデポジット(deposit)された金型コアの重量を測定して、下記数式3で計算したモールドデポジット(mold deposit)が6.2mg以下であることを特徴とする、請求項
8又は
9に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[数式3]
モールドデポジット(mg)=100ショット(shot)後の金型コアの重量-初期の金型コアの重量
【請求項11】
パージトラップ(Purge&Trap)-気体クロマトグラフィー/質量分析法を用いて230℃で10分間維持した後、測定した揮発性有機化合物(TVOC)の量が2700ppm以下であることを特徴とする、請求項
8~1
0のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2019年09月30日付の韓国特許出願第10-2019-0120583号及びこれに基づいて2020年09月07日付で再出願された韓国特許出願第10-2020-0113904号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、アクリル系グラフト共重合体、その製造方法及びそれを含む熱可塑性樹脂組成物に関し、より詳細には、シード、コア及びグラフトシェルを含むアクリル系グラフト共重合体のグラフトシェルに反応型紫外線安定剤を導入することで、機械的物性に優れながらも、耐候性及び表面光沢性に優れ、モールドデポジット(mold deposit)が減少したアクリル系グラフト共重合体、その製造方法及びそれを含む熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
共役ジエン系ゴムをベースとするアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」という)は、加工性、機械的物性及び外観特性に優れるため、電気・電子製品の部品、自動車、小型玩具、家具、建築資材などで広範囲に用いられている。しかし、ABS樹脂は、化学的に不安定な不飽和結合を含有したブタジエンゴムをベースとするため、紫外線によってゴム重合体が容易に老化してしまい、耐候性が非常に脆弱であるため、室外用材料として不適であるという問題がある。
【0004】
前記のABS樹脂の問題点を克服するために、エチレン系不飽和結合が存在しないアクリレート-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体(以下、「ASA樹脂」という)に代表されるアクリル系共重合体を使用しており、このようなASA樹脂は、優れた耐候性及び耐老化性を有し、自動車、船舶、レジャー用品、建築資材、園芸用など多方面に用いられている。
【0005】
最近になって市場で求められるASA樹脂に対する耐候性のレベルが日増しに高くなり、これを満たすために、粒径の小さいゴムを使用するか、またはメチルメタクリレート(以下、「MMA」という)を含むアクリレートモノマーを、シェルの重合時にスチレン及びアクリロニトリルと共重合させるか、またはコンパウンディング時に、MMAを含むマトリックス樹脂を投入する方法を用いる。
【0006】
しかし、ASA樹脂に粒径の小さいゴムを使用する場合、耐衝撃性などの機械的物性の低下が発生し、MMAを含むアクリレートモノマーをシェルの重合時に投入するか、またはマトリックス樹脂にMMAを含ませる場合、耐候性は向上するが、耐熱度が低下する問題が発生する。
【0007】
また、ASA樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物をコンパウンディングする際に紫外線安定剤を投入して耐候性を改善させる場合、長期間射出成形する際に紫外線安定剤の揮発による分解物が金型に付着するモールドデポジット(Mold Deposit)により、成形不良、光沢不良などの問題が生じるだけでなく、容易に除去されない場合がしばしばある。これを解決するために、分子量が大きい紫外線安定剤を導入して射出加工する場合、紫外線安定剤の揮発を抑制できるが、分子量が大きくなるに伴い、耐候性を維持するためには投入量を増加させなければならないため、これにより物性が低下し、生産費が上昇するという問題がある。
【0008】
したがって、ASA樹脂の耐候性を向上させながらも、紫外線安定剤の揮発を抑制してモールドデポジットを減少させることができる樹脂の開発が必要な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国公開特許第2001-0066310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の従来技術の問題点を解決するために、本発明は、機械的物性に優れながらも、耐候性及び表面光沢性に優れ、モールドデポジットが減少したアクリル系グラフト共重合体を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、上記のアクリル系グラフト共重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、上記のアクリル系グラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0013】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明は、アクリル系グラフト共重合体の製造に使用された総単量体100重量部に対して、(A)芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物及びアルキルアクリレート化合物からなる群から選択された1種以上の化合物4~25重量%を含んで重合されたシードと;(B)前記シードを囲み、アルキルアクリレート化合物25~55重量%を含んで重合されたゴムコアと;(C)前記ゴムコアを囲み、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物からなる群から選択された1種以上の化合物40~70重量%を含んで重合されたグラフトシェルと;を含むアクリル系グラフト共重合体であって、前記グラフトシェルは、前記アクリル系グラフト共重合体100重量部を基準として反応型紫外線安定剤0.05~2重量部を含み、前記グラフトシェルは、平均粒径が80~140nm(コアの平均粒径よりも大きい)であることを特徴とするアクリル系グラフト共重合体を提供する。
【0015】
また、本発明は、アクリル系グラフト共重合体の製造に使用された総単量体100重量部に対して、(A)芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物及びアルキルアクリレート化合物からなる群から選択された1種以上の化合物4~25重量%、及び乳化剤1.4~2.4重量部を重合させてシードを製造するシード製造ステップと;(B)製造されたシードの存在下でアルキルアクリレート化合物25~55重量%を投入し、重合させてコアを製造するコア製造ステップと;(C)製造されたコアの存在下で、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物からなる群から選択された1種以上の化合物40~70重量%、及び反応型紫外線安定剤0.05~2重量部を投入し、グラフト重合させてシェルを製造するグラフトシェル製造ステップと;を含み、シェルは、平均粒径が80~140nm(コアの平均粒径よりも大きい)であることを特徴とするアクリル系グラフト共重合体の製造方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記アクリル系グラフト共重合体20~50重量部と、ゴム質重合体の平均粒径0.2~0.7μmであるアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体1~15重量部と、硬質マトリックス樹脂45~70重量部とを含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アクリル系グラフト共重合体のグラフトシェルに反応型紫外線安定剤を含むことで、機械的物性に優れながらも、耐候性及び表面光沢性に優れ、モールドデポジットが減少して成形品の外観及び生産性が向上したアクリル系グラフト共重合体、その製造方法及びそれを含む熱可塑性樹脂組成物を提供する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のアクリル系グラフト共重合体を詳細に説明する。
【0019】
本発明者らは、シード、コア及びシェルを含むアクリル系グラフト共重合体において、反応型紫外線安定剤をシェルを構成する重合体の骨格(バックボーン(backbone))に結合させる場合に、射出成形時に紫外線安定剤の揮発が抑制されてモールドデポジットが減少し、耐候性が大きく改善される効果を確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して、本発明を完成するようになった。
【0020】
本発明によるアクリル系グラフト共重合体を詳細に説明すると、次の通りである。
【0021】
本発明のアクリル系グラフト共重合体は、アクリル系グラフト共重合体の製造に使用された総単量体100重量部に対して、(A)芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物及びアルキルアクリレート化合物からなる群から選択された1種以上の化合物4~25重量%を含んで重合されたシードと;(B)前記シードを囲み、アルキルアクリレート化合物25~55重量%を含んで重合されたゴムコアと;(C)前記ゴムコアを囲み、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物からなる群から選択された1種以上の化合物40~70重量%を含んで重合されたグラフトシェルと;を含むアクリル系グラフト共重合体であって、前記グラフトシェルは、前記アクリル系グラフト共重合体100重量部を基準として反応型紫外線安定剤0.05~2重量部を含み、前記グラフトシェルは、平均粒径が80~140nm(コアの平均粒径よりも大きい)であることを特徴とし、この場合に、機械的物性に優れながらも、耐候性及び表面光沢性に優れ、モールドデポジットが減少するという効果がある。
【0022】
本発明において、単量体は、アクリル系グラフト共重合体の重合に含まれる芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物及びアルキルアクリレート化合物を指す。
【0023】
本発明において、モールドデポジット(mold deposit)は、樹脂を同じ射出条件下で100回以上の長期間射出成形する際に、揮発物質による分解物が金型に付着して生成された沈積物を指す。金型にモールドデポジットが付着すると、未成形、光沢不良、重量不足、外観不良、離型不良などの現象が発生することがあり、付着されたモールドデポジットは容易に除去されない場合がしばしばある。
【0024】
本発明のアクリル系グラフト共重合体を構成する各成分を詳細に説明すると、次の通りである。
【0025】
(A)シード
前記シードは、一例として、芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物及びアルキルアクリレート化合物からなる群から選択された1種以上の化合物4~25重量%、好ましくは10~20重量%、より好ましくは13~17重量%を含んで重合されてもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0026】
前記シードは、一例として、平均粒径が42~82nm、好ましくは45~80nm、より好ましくは50~75nmであってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0027】
本発明において、平均粒径は、動的光散乱法(dynamic light scattering)を用いて測定することができ、詳しくは、Nicomp380装置(製品名、製造社:PSS)を用いてガウスモードでインテンシティ値で測定することができる。
【0028】
また、本発明の平均粒径は、動的光散乱法によって測定される粒度分布における算術平均粒径、すなわち、散乱強度(Intensity Distribution)の平均粒径を意味することができる。
【0029】
前記シードは、一例として、前記アクリル系グラフト共重合体の製造に使用された総単量体100重量部に対して、乳化剤を1.4~2.4重量部、好ましくは1.7~2.2重量部含んで重合されたゴム重合体であってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0030】
(B)コア
前記コアは、一例として、前記シードを囲み、アルキルアクリレート化合物25~55重量%、好ましくは30~45重量%、より好ましくは33~40重量%を含んで重合されたゴムコアであってもよく、この場合に、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0031】
前記コアは、一例として、シードを含む平均粒径が62~110nm、好ましくは70~105nm(シードの平均粒子の大きさよりも大きい)であってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0032】
前記コアは、一例として、架橋剤、開始剤及び乳化剤からなる群から選択された1種以上を含んで重合されたゴム重合体であってもよく、この場合に、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0033】
(C)グラフトシェル
前記グラフトシェルは、一例として、前記ゴムコアを囲み、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物からなる群から選択された1種以上の化合物40~70重量%、好ましくは45~60重量%、より好ましくは45~54重量%を含んで重合された重合体であってもよく、この場合に、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0034】
前記グラフトシェルは、一例として、シード及びコアを含む平均粒径が80~140nm、好ましくは88~135nmであってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0035】
前記グラフトシェルは、一例として、アクリル系グラフト共重合体100重量部を基準として、反応型紫外線安定剤0.05~2重量部、好ましくは0.1~1.5重量部、より好ましくは0.2~1.3重量部、さらに好ましくは0.3~1重量部を含むことができ、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れ、モールドデポジットが減少するという効果がある。
【0036】
前記反応型紫外線安定剤は、一例として、グラフトシェルに含まれる芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物からなる群から選択された1種以上の化合物のバックボーン(backbone)に結合されることで、射出加工時に紫外線安定剤の揮発が抑制されて、長期間射出成形する際に金型内にモールドデポジットを防止し、紫外線安定剤を添加剤としてコンパウンディングすることに比べて、耐候性が改善され、モールドデポジットの減少効果が顕著である。
【0037】
前記反応型紫外線安定剤は、一例として、ベンゾトリアゾール系反応型紫外線安定剤、ベンゾフェノン系反応型紫外線安定剤、またはこれらの混合物であってもよく、この場合に、長期間射出成形する際に紫外線安定剤の揮発が抑制されてモールドデポジットが減少し、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0038】
前記ベンゾトリアゾール系反応型紫外線安定剤は、具体的には、下記化学式1で表される化合物であってもよく、前記ベンゾフェノン系反応型紫外線安定剤は、具体的には、下記化学式2で表される化合物、下記化学式3で表される化合物、またはこれらの混合物であってもよく、この場合に、長期間射出成形する際に紫外線安定剤の揮発が抑制されてモールドデポジットが減少し、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0039】
【0040】
前記グラフトシェルは、一例として、反応型乳化剤を含んで重合された重合体であってもよく、前記反応型乳化剤は、アクリル系グラフト共重合体の製造に使用された総単量体100重量部に対して、0.1~3重量部、好ましくは0.5~2.5重量部、より好ましくは1~2.5重量部を含むことができ、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0041】
前記反応型乳化剤は、一例として、カーボネート、スルホネート及びスルフェートからなる群から1種以上選択された作用基を含む乳化剤であってもよく、この場合に、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0042】
具体例として、前記反応型乳化剤は、スルホエチルメタクリレート(sulfoethyl methacrylate)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(2-acrylamido-2-methylpropane sulfonic acid)、スチレンスルホン酸ナトリウム(sodium styrene sulfonate)、ドデシルアリルスルホコハク酸ナトリウム(sodium dodecyl allyl sulfosuccinate)、スチレンとドデシルアリルスルホコハク酸ナトリウムとの共重合体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルアンモニウムスルフェート(polyoxyethylene alkylphenyl ether ammonium sulfate)、アルケニルC16-18コハク酸ジ-カリウム塩(alkenyl C16-18 succinic acid、di-potassium salt)及びメタリルスルホン酸ナトリウム(sodium methallyl sulfonate)からなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合に、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0043】
前記アルキルアクリレート化合物は、一例として、炭素数が2~8であるアルキルアクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、アルキル基の炭素数が4~8であるアルキルアクリレートであり、より好ましくは、ブチルアクリレート又はエチルヘキシルアクリレートであってもよい。
【0044】
前記芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン及びp-tert-ブチルスチレンからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはスチレンである。
【0045】
前記ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、またはこれらの混合物であってもよく、好ましくはアクリロニトリルである。
【0046】
前記アクリル系グラフト共重合体は、一例として、グラフト率が20~33%、好ましくは21~32%、より好ましくは26~32%であってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れ、かつモールドデポジットが減少するという効果がある。
【0047】
本発明において、グラフト率は、グラフト重合体ラテックスを凝固、洗浄及び乾燥して粉末の形態を得、前記グラフト重合体の乾燥粉末1gにアセトン30mlを加えた後、24時間撹拌した後、これを遠心分離して、アセトンに溶解しない不溶分のみを採取した後、乾燥させた後、重量を測定して、下記数式1によって計算する。
【0048】
[数式1]
グラフト率(%)=(グラフトされた単量体の重量(g)/ゴム質の重量(g))×100
【0049】
また、本発明のアクリル系グラフト共重合体の製造方法は、一例として、アクリル系グラフト共重合体の製造に使用された総単量体100重量部に対して、(A)芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物及びアルキルアクリレート化合物からなる群から選択された1種以上の化合物4~25重量%を重合させてシードを製造するシード製造ステップと;(B)製造されたシードの存在下でアルキルアクリレート化合物25~55重量%を投入し、重合させてコアを製造するコア製造ステップと;(C)製造されたコアの存在下で、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物からなる群から選択された1種以上の化合物40~70重量%、及び反応型紫外線安定剤0.05~2重量部を投入し、グラフト重合させてシェルを製造するグラフトシェル製造ステップと;を含み、シェルは、平均粒径が80~140nm(コアの平均粒径よりも大きい)であることを特徴とし、この場合に、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れ、かつモールドデポジットが減少するという効果がある。
【0050】
前記反応型紫外線安定剤は、一例として、ベンゾトリアゾール系反応型紫外線安定剤、ベンゾフェノン系反応型紫外線安定剤、またはこれらの混合物であってもよく、この場合に、長期間射出成形する際に紫外線安定剤の揮発が抑制されてモールドデポジットが減少し、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0051】
具体例として、前記ベンゾトリアゾール系反応型紫外線安定剤は、下記化学式1で表される化合物であってもよく、前記ベンゾフェノン系反応型紫外線安定剤は、下記化学式2で表される化合物、下記化学式3で表される化合物、またはこれらの混合物であってもよく、この場合に、長期間射出成形する際に紫外線安定剤の揮発が抑制されてモールドデポジットが減少し、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0052】
【0053】
前記グラフトシェル製造ステップは、一例として反応型乳化剤を含むことができ、アクリル系グラフト共重合体の製造に使用された総単量体100重量部に対して、0.1~3重量部、好ましくは0.5~2.5重量部、より好ましくは1~2.5重量部を含むことができ、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0054】
前記反応型乳化剤は、一例として、カーボネート、スルホネート及びスルフェートからなる群から1種以上選択された作用基を含む乳化剤であってもよく、この場合に、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0055】
前記シード製造ステップは、一例として乳化剤を含むことができ、好ましくは、アクリル系グラフト共重合体の製造に使用された総単量体100重量部に対して、1.4~2.4重量部、より好ましくは1.7~2.2重量部含むことができ、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0056】
前記シード製造ステップは、一例として、電解質、架橋剤、グラフティング剤、開始剤及び乳化剤からなる群から選択された1種以上を含んで製造することができ、この場合に、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0057】
具体的には、シード製造ステップは、アクリル系グラフト共重合体の製造に使用された総単量体100重量部に対して、電解質0.001~1重量部、架橋剤0.01~1重量部、グラフティング剤0.01~3重量部及び開始剤0.01~3重量部を含んで製造することができ、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0058】
前記コア製造ステップは、一例として、架橋剤、開始剤及び乳化剤からなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0059】
具体的には、コア製造ステップは、アクリル系グラフト共重合体の製造に使用された総単量体100重量部に対して、架橋剤0.01~1重量部、開始剤0.01~3重量部及び乳化剤0.01~5重量部を含むことができる。
【0060】
前記グラフトシェル製造ステップは、一例として、架橋剤、開始剤、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0061】
具体的には、前記グラフトシェル製造ステップは、アクリル系グラフト共重合体の製造に使用された総単量体100重量部に対して、架橋剤0.01~3重量部及び開始剤0.01~3重量部を含むことができる。
【0062】
前記シード製造ステップに含まれる電解質は、一例として、KCl、NaCl、KHCO3、NaHCO3、K2CO3、Na2CO3、KHSO3、NaHSO4、Na2S2O7、K4P2O7、K3PO4、Na3PO4、Na2HPO4、KOH及びNaOHからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0063】
前記シード、コア及びシェル製造ステップに含まれる架橋剤は、一例として、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールエトキシレートジアクリレート、ヘキサンジオールプロポキシレートジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールエトキシレートジアクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールメタントリアクリレート、トリメチルプロパンエトキシレートトリアクリレート、トリメチルプロパンプロポキシレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールプロポキシレートトリアクリレート及びビニルトリメトキシシランからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0064】
前記シード製造ステップに含まれるグラフティング剤は、一例として、アリルメタクリレート(AMA)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルアミン(TAA)及びジアリルアミン(DAA)からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0065】
前記シード及びコア製造ステップに含まれる開始剤としては、特に限定されないが、ラジカル開始剤を好ましく使用することができる。
【0066】
前記ラジカル開始剤は、一例として、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素などの無機過酸化物;t-ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、アセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノールペルオキシド、t-ブチルペルオキシイソブチレートなどの有機過酸化物;及びアゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸(酪酸)メチルなどのアゾ化合物;からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0067】
前記開始剤と共に、過酸化物の開始反応を促進させるために活性化剤を使用することができ、前記活性化剤としては、一例として、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、硫酸第一鉄、デキストロース、ピロリン酸ナトリウム及び亜硫酸ナトリウムからなる群から選択された1種以上を使用することができる。
【0068】
前記シード及びコア製造ステップに含まれる乳化剤は、一例として、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸カリウム、ドデシルベンゼン硫酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、オクタデシル硫酸カリウム及びオレイン酸カリウムからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0069】
前記シード及びコア製造ステップに含まれる乳化剤と、前記グラフトシェル製造ステップに含まれる反応型乳化剤とは同一ではない。
【0070】
前記グラフトシェル製造ステップの後に生成されたアクリル系グラフト共重合体ラテックスは、一例として、凝集、熟成、脱水、洗浄及び乾燥した後、粉末として製造され得る。
【0071】
前記凝集は、一例として、硫酸、MgSO4、CaCl2及びAl2(SO4)3からなる群から選択された1種以上で行うことができ、好ましくはCaCl2であってもよい。
【0072】
前記アクリル系グラフト共重合体ラテックスは、具体的に、塩化カルシウム水溶液を用いて65~80℃で常圧凝集を行った後、90~95℃で熟成し、脱水及び洗浄して、85~95℃の熱風で20~40分間乾燥させて共重合体の粉末粒子を収得することができる。
【0073】
本発明において、常圧は大気圧であって、具体的には1気圧を意味する。
【0074】
前記アクリル系グラフト共重合体は、一例として、乳化重合で製造されてもよく、この場合に、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0075】
前記乳化重合は、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化グラフト重合方法による場合、特に制限されない。
【0076】
前記アクリル系グラフト共重合体の製造方法に含まれるアルキルアクリレート化合物、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物は、前記アクリル系グラフト共重合体に使用されたものであってもよい。
【0077】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、一例として、(A)前記アクリル系グラフト共重合体20~50重量部と;(B)平均粒径0.2~0.6μmのアクリレートゴムをコアとするアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体1~15重量部と;(C)硬質マトリックス樹脂45~70重量部と;を含むことができ、好ましくは、(A)前記アクリル系グラフト共重合体35~45重量部と;(B)平均粒径0.25~0.45μmのアクリレートゴムをコアとするアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体5~10重量部と;(C)硬質マトリックス樹脂50~60重量部と;を含むことができ、この場合に、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0078】
前記(B)グラフト共重合体は、一例として、アクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物1~20重量%を含んで重合された共重合体であってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0079】
好ましい例として、前記(B)グラフト共重合体は、アクリレートゴム45~55重量%、芳香族ビニル化合物30~40重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んで重合された共重合体であってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0080】
前記(B)グラフト共重合体は、一例として乳化重合で製造されてもよく、この場合に、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0081】
前記乳化重合は、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化グラフト重合方法による場合、特に制限されない。
【0082】
前記(B)グラフト共重合体内のアクリレートゴムは、好ましくは、平均粒径が0.2~0.5μm、より好ましくは0.25~0.45μmであってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、耐候性及び表面光沢性に優れるという効果がある。
【0083】
前記硬質マトリックス樹脂は、一例として、ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体であってもよく、好ましくは、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN樹脂)、α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体(耐熱SAN樹脂)、またはこれらの混合物であってもよく、より好ましくは、α-メチルスチレン系化合物-アクリロニトリル共重合体であってもよく、この場合に、適切な加工性を付与し、耐熱性に優れるという効果がある。
【0084】
前記α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体は、好ましくは、α-メチルスチレン70~85重量%及びアクリロニトリル15~30重量%を含んで重合された共重合体であってもよく、この範囲内で、耐熱性に優れるという効果がある。
【0085】
前記α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体は、一例として、重量平均分子量が80,000~120,000g/mol、好ましくは90,000~110,000g/molであってもよく、この範囲内で、加工性及び耐熱性に優れるという効果がある。
【0086】
本発明において、重量平均分子量は、特に定義しない限り、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)、waters breeze)を用いて測定することができ、具体例として、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて、GPC(Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を介して、標準PS(標準ポリスチレン(standard polystyrene))試料に対する相対値で測定することができる。
【0087】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、一例として、懸濁重合、乳化重合、溶液重合または塊状重合で製造されてもよく、好ましくは塊状重合であってもよく、この場合に、耐熱性及び流動性などに優れるという効果がある。
【0088】
前記懸濁重合、乳化重合、溶液重合及び塊状重合は、それぞれ、本発明の属する技術分野で通常行われる溶液重合及び塊状重合方法による場合、特に制限されない。
【0089】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、促進耐候性試験装置(weather-o-meter、ATLAS社製のCi4000、キセノンアークランプ、Quartz(inner)/S.Boro(outer)フィルター、irradiance 0.55W/m2 at 340nm)を用いて、SAE J1960方法で6000時間測定した後、下記数式2により計算した△Eが1.9以下、好ましくは1~1.8、より好ましくは1.2~1.6であってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れ、自動車や建築用外装材に適する耐候性を有するという効果がある。
【0090】
【0091】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、着脱可能な金型コアに射出機(LS社、型締力:220トン)を用いて、200~260℃、圧力30~100barの条件下で100ショット(shot)を連続射出した後、揮発性ガスがデポシット(deposit)された金型コアの重量を測定して、下記数式3で計算したモールドデポジット(mold deposit)が6.2mg以下、好ましくは3.5~6.2mg、より好ましくは4~5.5mg、さらに好ましくは4.5~5.3mgであってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れながら外観品質が向上し、生産性が増加するという効果がある。
【0092】
[数式3]
モールドデポジット(Mold Deposit;mg)=100ショット(shot)後の金型コアの重量-初期の金型コアの重量
【0093】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、パージトラップ(Purge&Trap)-ガスクロマトグラフィー/質量分析法を用いて230℃で10分間維持した後、測定した揮発性有機化合物(TVOC)の量が2700ppm以下、好ましくは1500~2700ppm、より好ましくは2000~2600ppm、さらに好ましくは2100~2500ppmであってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れながらモールドデポジットが減少し、耐候性に優れるという効果がある。
【0094】
本発明において、揮発性有機化合物(Total Volatiile Organic Compounds;TVOC)は、沸点が低いため大気中に容易に蒸発する液体又は気体状の有機化合物の総称であって、産業体で多く用いる溶媒から、化学及び製薬工場やプラスチックの乾燥工程で排出される有機ガスに至るまで非常に多様であり、沸点が低い液体燃料、パラフィン、オレフィン、芳香族化合物などがある。
【0095】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、試片の厚さ1/4"を用いてASTM D256に準拠して測定したアイゾット衝撃強度が10kgf・cm/cm以上、好ましくは10~15kgf・cm/cm、より好ましくは11~14.5kgf・cm/cmであってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れるという効果がある。
【0096】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D638に準拠して測定した引張強度が470kg/cm2以上、好ましくは470~550kg/cm2、より好ましくは480~520kg/cm2、さらに好ましくは500~515kg/cm2であってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れるという効果がある。
【0097】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、220℃、10kgの条件下で、ASTM D1238に準拠して測定した流動性が7.5g/10分以上、好ましくは7.5~10g/10分、より好ましくは8~9.5g/10分であってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れ、流動性に優れるため様々な形状への成形が容易であるという利点がある。
【0098】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D648に準拠して測定した熱変形温度が89.5℃以上、好ましくは89.5~95℃、より好ましくは90~92℃であってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れるという効果がある。
【0099】
前記熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて選択的に滑剤、酸化防止剤、染料、顔料、着色剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌剤、加工助剤、金属不活性化剤、難燃剤、煙抑制剤、滴下防止剤、耐摩擦剤及び耐摩耗剤からなる群から選択された1種以上を、0.01~5重量部、好ましくは0.05~3重量部、より好ましくは0.1~2重量部、より一層好ましくは0.5~1重量部さらに含むことができ、この範囲内で、本発明の熱可塑性樹脂組成物本来の物性を低下させないながらも、必要な物性がよく具現されるという効果がある。
【0100】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、一例として、(A)前記アクリル系グラフト共重合体20~50重量部と;(B)平均粒径0.2~0.6μmのアクリレートゴムをコアとするアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体1~15重量部と;(C)硬質マトリックス樹脂45~70重量部と;を含んで混合した後、200~250℃の条件下で押出混練機を用いてペレットを製造するステップを含むことを特徴とし、このような場合に、従来のASA系樹脂と比較して、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されながら耐候性及び表面光沢性に優れ、長期間射出成形する際にモールドデポジットが減少する効果がある熱可塑性樹脂組成物を提供するという利点がある。
【0101】
前記熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、前述した熱可塑性樹脂組成物の全ての技術的特徴を共有する。したがって、重複部分についての説明は省略する。
【0102】
前記押出混練機を用いてペレットを製造するステップは、好ましくは200~250℃下で、より好ましくは210~230℃下で行うことができ、このとき、温度は、シリンダーに設定された温度を意味する。
【0103】
前記押出混練機は、本発明の属する技術分野で通常用いられる押出混練機であれば、特に制限されず、好ましくは二軸押出混練機であってもよい。
【0104】
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とし、この場合に、従来の成形品と比較して、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されながらも耐候性及び表面光沢性に優れ、モールドデポジットが減少するという効果がある。
【0105】
前記成形品は、一例として、押出成形品又は射出成形品であってもよく、好ましくは射出成形品であってもよく、より好ましくは自動車成形品としてラジエーターグリル又はサイドミラーであってもよい。
【0106】
本発明の熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及び成形品を説明するにおいて、明示的に記載していない他の条件や装備などは、当業界で通常行われる範囲内で適宜選択することができ、特に制限されないことを明示する。
【0107】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0108】
[実施例]
下記の実施例及び比較例で用いられた物質は、次の通りである。
【0109】
*平均粒径0.2~0.6μmのアクリレートゴムをコアとするアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体:SA927(LG化学社製、コア:平均粒径0.3μmのアクリレート重合体50重量%、シェル:スチレン38重量%及びアクリロニトリル12重量%)
*硬質マトリックス樹脂:100UH(LG化学社製、α-メチルスチレン69重量%及びアクリロニトリル31重量%)
*ベンゾトリアゾール系反応型紫外線安定剤:RUV-1(2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]エチルメタクリレート(2-[3-(2H-Benzotriazol-2-yl)-4-hydroxyphenyl]ethyl methacrylate))
*ベンゾフェノン系反応型紫外線安定剤:RUV-2(2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート(2-(4-Benzoyl-3-hydroxyphenoxy)ethyl acrylate))
*ベンゾフェノン系反応型紫外線安定剤:RUV-3(2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)アミドエチル メタクリレート(2-(4-benzoyl-3-hydroxyphenoxy)amidoethyl methacrylate);2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)カルボニル]アミノ}エチル2-メチルプロぺ-2-ノエート(2-(4-benzoyl-3-hydroxyphenoxy)carbonyl]amino}ethyl2-methylprop-2-enoate))
*紫外線安定剤:Tinuvin P(BASF社製)
*滑剤:EBS10(LG生活健康社製)
*酸化防止剤:Songnox1076(SONGWON社製)
【0110】
実施例1
<シード製造ステップ>
窒素置換された反応器にブチルアクリレート15重量部、ドデシル硫酸ナトリウム2.0重量部、エチレングリコールジメタクリレート0.1重量部、アリルメタクリレート0.03重量部、水酸化カリウム0.1重量部及び蒸留水80重量部を一括投入し、70℃まで昇温させた後、過硫酸カリウム0.04重量部を入れて反応を開始させた。以降、1時間重合を行った。
【0111】
反応終了後に収得したゴム重合体の平均粒径は50nmと確認された。
【0112】
<コア製造ステップ>
前記高分子シードに、ブチルアクリレート35重量部、ドデシル硫酸ナトリウム0.3重量部、エチレングリコールジメタクリレート0.25重量部、アリルメタクリレート0.1重量部、蒸留水35重量部及び過硫酸カリウム0.03重量部を混合した混合物を、70℃で1時間の間連続投入し、投入終了後、0.5時間さらに重合を行った。
【0113】
前記反応終了後に収得したゴム重合体の平均粒径は70nmと確認された。
【0114】
<グラフトシェル製造ステップ>
前記高分子コアの存在下で、蒸留水23重量部、スチレン38重量部、アクリロニトリル12重量部、及び反応型紫外線安定剤としてRUV-1 1.0重量部、ロジン酸カリウム1.8重量部、TDDM(Tert-ドデシル-メルカプタン)0.1重量部及びクメンヒドロペルオキシド0.05重量部の乳化液、ピロリン酸ナトリウム0.09重量部、デキストロース0.12重量部、硫化第一鉄0.002重量部の混合液のそれぞれを、75℃で2.5時間の間連続投入しながら重合反応を行った。また、重合転化率を高めるために、前記混合物の投入が完了した後、75℃で0.5時間さらに反応させ、60℃まで冷却させて重合反応を終了して、アクリル系グラフト共重合体ラテックスを製造した。
【0115】
製造されたアクリル系グラフト共重合体ラテックスの重合転化率は99.0%、最終平均粒径は90nmと確認された。
【0116】
<アクリル系グラフト共重合体粉末の製造>
前記製造されたアクリル系グラフト共重合体ラテックスを、塩化カルシウム水溶液0.8重量部を適用して70℃で常圧凝集を行った後、93℃で熟成し、脱水及び洗浄して、90℃の熱風で30分間乾燥した後、アクリル系グラフト共重合体粉末を製造した。
【0117】
<熱可塑性樹脂組成物の製造>
前記アクリル系グラフト共重合体粉末36重量部、平均粒径0.2~0.6μmのアクリレートゴムをコアとするアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体8重量部、硬質マトリックス樹脂56重量部、滑剤0.5重量部及び酸化防止剤0.5重量部を添加して混合した。これを、220℃のシリンダー温度で36φ押出混練機を使用してペレット状に製造し、このペレットを射出して物性試片を製造した。
【0118】
実施例2
<グラフトシェル製造ステップ>
実施例1において、反応型UV安定剤をRUV-2 1重量部に変更した以外は、前記実施例1と同様に行った。
【0119】
製造されたアクリル系グラフト共重合体ラテックスの重合転化率は99.2%であり、最終平均粒径は88nmと確認された。
【0120】
実施例3
<シード製造ステップ>
実施例1において、窒素置換された反応器にブチルアクリレート15重量部、ドデシル硫酸ナトリウム1.5重量部を投入した以外は、前記実施例1のシード製造ステップと同様に行った。
【0121】
反応終了後に収得したゴム重合体の平均粒径は75nmと確認された。
【0122】
<コア製造ステップ>
実施例1のコア製造ステップと同様に行った。
【0123】
反応終了後に収得したゴム重合体の平均粒径は105nmと確認された。
【0124】
<グラフトシェル製造ステップ>
実施例1のグラフトシェル製造ステップと同様に行った。
【0125】
前記反応終了後に収得したアクリル系グラフト共重合体の重合転化率は99.0%であり、最終平均粒径は135nmと確認された。
【0126】
実施例4
<グラフトシェル製造ステップ>
実施例3において、反応型紫外線安定剤をRUV-2 1重量部に変更した以外は、前記実施例3と同様に行った。
【0127】
前記反応終了後に収得したアクリル系グラフト共重合体ラテックスの重合転化率は99.0%であり、最終平均粒径は130nmと確認された。
【0128】
実施例5
実施例1において、グラフトシェルの製造時に投入される反応型紫外線安定剤RUV-1を0.3重量部投入した以外は、前記実施例1と同様に行った。
【0129】
前記反応終了後に収得したアクリル系グラフト共重合体ラテックスの重合転化率は99.2%であり、最終平均粒径は92nmと確認された。
【0130】
実施例6
実施例1において、グラフトシェルの製造時に投入される反応型紫外線安定剤RUV-1を2.0重量部投入した以外は、前記実施例1と同様に行った。
【0131】
前記反応終了後に収得したアクリル系グラフト共重合体ラテックスの重合転化率は99.4%であり、最終平均粒径は91nmと確認された。
【0132】
実施例7
実施例1において、グラフトシェルの製造時に投入される反応型紫外線安定剤としてRUV-3を1.0重量部投入した以外は、前記実施例1と同様に行った。
【0133】
前記反応終了後に収得したアクリル系グラフト共重合体ラテックスの重合転化率は99.3%であり、最終平均粒径は91nmと確認された。
【0134】
実施例8
実施例3において、グラフトシェルの製造時に投入される反応型紫外線安定剤としてRUV-3を1.0重量部投入した以外は、前記実施例1と同様に行った。
【0135】
前記反応終了後に収得したアクリル系グラフト共重合体ラテックスの重合転化率は99.0%であり、最終平均粒径は136nmと確認された。
【0136】
実施例9
実施例5において、グラフトシェルの製造時に投入される反応型紫外線安定剤RUV-3を1.0重量部投入した以外は、前記実施例1と同様に行った。
【0137】
前記反応終了後に収得したアクリル系グラフト共重合体ラテックスの重合転化率は99.4%であり、最終平均粒径は90nmと確認された。
【0138】
比較例1
<グラフトシェル製造ステップ>
実施例1において、反応型紫外線安定剤を投入しなかった以外は、前記実施例1と同様に行った。
【0139】
反応終了後に収得したアクリル系グラフト共重合体の重合転化率は99.3%であり、最終平均粒径は86nmと確認された。
【0140】
<熱可塑性樹脂組成物の製造>
前記アクリル系グラフト共重合体粉末38重量部、平均粒径0.2~0.6μmのアクリレートゴムをコアとするアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体8重量部、硬質マトリックス樹脂56重量部、滑剤0.5重量部、酸化防止剤0.5重量部及び紫外線安定剤としてTinuvin P 0.4重量部を添加して混合した。これを、220℃のシリンダー温度で36φ押出混練機を使用してペレット状に製造し、このペレットを射出して物性試片を製造した。
【0141】
比較例2
<シード製造ステップ>
実施例1において、窒素置換された反応器にブチルアクリレート15重量部、ドデシル硫酸ナトリウム3.0重量部を投入した以外は、前記実施例1のシード製造ステップと同様に行った。
【0142】
反応終了後に収得したゴム重合体の平均粒径は33nmと確認された。
【0143】
<コア製造ステップ>
実施例1のコア製造ステップと同様に行った。
【0144】
反応終了後に収得したゴム重合体の平均粒径は53nmと確認された。
【0145】
比較例3
<シード製造ステップ>
実施例1において、窒素置換された反応器にブチルアクリレート15重量部、ドデシル硫酸ナトリウム1.2重量部を投入した以外は、前記実施例1のシード製造ステップと同様に行った。
【0146】
反応終了後に収得したゴム重合体の平均粒径は90nmと確認された。
【0147】
<コア製造ステップ>
実施例1のコア製造ステップと同様に行った。
【0148】
反応終了後に収得したゴム重合体の平均粒径は125nmと確認された。
【0149】
<グラフトシェル製造ステップ>
実施例1のグラフトシェル製造ステップと同様に行った。
【0150】
反応終了後に収得したアクリル系グラフト共重合体の重合転化率は98.5%であり、最終平均粒径は155nmと確認された。
【0151】
比較例4
<グラフトシェル製造ステップ>
実施例1において、グラフトシェルの製造時に反応型紫外線安定剤としてRUV-1を2.5重量部投入した以外は、前記実施例1と同様に行った。
【0152】
実施例10
<グラフトシェル製造ステップ>において、ロジン酸カリウム2.0重量部を使用した以外は、前記実施例1と同様に行った。
【0153】
比較例5
<グラフトシェル製造ステップ>において、乳化剤(ロジン酸カリウム)を4重量部に変更した以外は、前記実施例1と同様に行った。
【0154】
[試験例]
前記実施例1~9、比較例1~4実施例10及び比較例5で製造された試片の特性を、下記の方法で測定し、その結果を下記の表1~表3に示した。
【0155】
測定方法
*グラフト率(%):グラフト重合体ラテックスを凝固、洗浄及び乾燥して粉末の形態を得、前記グラフト重合体の乾燥粉末1gにアセトン30mlを加えた後、24時間撹拌した後、これを遠心分離して、アセトンに溶解しない不溶分のみを採取した後、乾燥させた後、重量を測定して、下記数式1によって計算した。
【0156】
[数式1]
グラフト率(%)=(グラフトされた単量体の重量(g)/ゴム質の重量(g))×100
【0157】
*アイゾット衝撃強度(kgf・cm/cm):試片の厚さ1/4"を用いてASTM D256に準拠して測定した。
【0158】
*重合転化率:製造されたラテックス1.5gを150℃の熱風乾燥機内で15分間乾燥させた後、重量を測定して、下記数式4により総固形分含量(Total Solid Content;TSC)を求め、これを持って下記数式5を用いて算出した。
【0159】
このような数式4は、投入された単量体の総重量が100重量部であることを基準とした。
【0160】
【0161】
[数式5]
重合転化率(%)=[総固形分含量(TSC)×(投入された単量体、イオン交換水及び副原料を合わせた総重量)/100]-(単量体及びイオン交換水以外の投入された副原料の重量)
【0162】
前記数式4において、副原料は、開始剤、乳化剤、電解質及び分子量調節剤を指す。
【0163】
前記投入された単量体は、アクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を指す。
【0164】
*平均粒径(nm):Nicomp380装置(製品名、製造社:PSS)を用いて測定した。
【0165】
*重量平均分子量(g/mol):カラム充填物質として多孔性シリカが充填されたゲルクロマトグラフィー(GPC)を介して、温度40℃で、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を使用して、標準PS(Standard polystyrene)試料に対する相対値を測定した。
【0166】
*流動指数(MI:melt flow index):製造されたペレットを、220℃、10kgの条件下で、ASTM D1238に準拠して測定した。ここで、流動指数の単位はg/10分である。
【0167】
*引張強度(kg/cm2):ASTM D638に準拠して測定した。
【0168】
*熱変形温度(℃):ASTM D648に準拠して測定した。
【0169】
*耐候性(△E):促進耐候性試験装置(weather-o-meter、ATLAS社製のCi4000、キセノンアークランプ、Quartz(inner)/S.Boro(outer)フィルター、irradiance 0.55W/m2 at 340nm)を用いて、SAE J1960方法で6000時間測定した後、下記数式2により計算される△Eで評価した。△Eの値が0に近いほど耐候性に優れる。
【0170】
【0171】
*TVOC分析(JTD-GC/MS-02):パージトラップ(Purge&Trap)-気体クロマトグラフィー/質量分析法を用いて230℃で10分間パージトラップ(Purge and Trap)を行った後、GC-MSを用いて総揮発量を測定した。測定された揮発量は、トルエンを標準試薬として定量した。
【0172】
*モールドデポジット(Mold deposit;mg):射出機(LS社、型締力:220トン)に着脱可能な金型コアを適用し、射出機の温度260℃-260℃-255℃-245℃、射出圧70bar/射出背圧100barの同じ射出条件で100ショット(shot)を連続射出した後、揮発した物質が沈着した金型コアの重量を測定して、下記数式3でモールドデポジットを計算した。
【0173】
[数式3]
モールドデポジット(100ショット後、mg)=100ショット後の金型コアの重量-初期の金型コアの重量
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
前記表1~表3に示したように、本発明によって製造された実施例1~9は、アクリル系グラフト共重合体のシェルに反応型紫外線安定剤を含まない比較例1、グラフトシェルの平均粒径が80~140nmの範囲を外れる比較例2、3、及びアクリル系グラフト共重合体のシェルに反応型紫外線安定剤を過量含む比較例4と比較して、衝撃強度、流動性、引張強度及び熱変形温度に優れながらも耐候性に優れ、TVOCの発生が抑制されてモールドデポジットが減少する効果が確認できた。
【0178】
特に、熱可塑性樹脂組成物の製造時に添加剤として紫外線安定剤を投入した比較例1は、衝撃強度及び流動性が低下し、耐候性が劣り、TVOCの発生量及びモールドデポジットが急激に増加したことが確認できた。
【0179】
また、グラフトシェル製造ステップでロジン酸カリウムを実施例1~9より少量多く使用した実施例10は、実施例1~6と比較して、耐候性が低下し、TVOCの発生量が大きく増加し、モールドデポジットはほぼ同一のレベルであった。
【0180】
また、グラフトシェル製造ステップで乳化剤(ロジン酸カリウム)を過量含む比較例5は、実施例1~9と比較して、耐候性及びモールドデポジットが劣り、TVOCの発生量は大きく増加した。