(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】変性剤、およびそれを用いて製造された変性共役ジエン系重合体
(51)【国際特許分類】
C08C 19/25 20060101AFI20221216BHJP
C08F 36/04 20060101ALI20221216BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20221216BHJP
C08C 19/22 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
C08C19/25
C08F36/04
C07F7/18 M
C08C19/22
(21)【出願番号】P 2021565938
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(86)【国際出願番号】 KR2020015276
(87)【国際公開番号】W WO2021107434
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】10-2019-0157389
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ソ、キョン-チャン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ロ-ミ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ノ-マ
(72)【発明者】
【氏名】キム、チン-ヨン
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-208376(JP,A)
【文献】特開2021-085029(JP,A)
【文献】特開2021-085025(JP,A)
【文献】特開2021-085026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00-19/44
C08F 6/00-246/00
C07F 7/00-7/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物を含む変性剤。
【化18】
(前記化学式1中、
R
1~R
8は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基であり;
L
1およびL
2は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり;
nは2~4の整数である。)
【請求項2】
前記R
1~R
8は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基である、請求項1に記載の変性剤。
【請求項3】
前記R
1~R
8は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基である、請求項2に記載の変性剤。
【請求項4】
前記R
1~R
4は、メチル基またはエチル基であり、R
5~R
8は、炭素数1~10のアルキル基である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の変性剤。
【請求項5】
前記化合物は、下記化学式1a~1eからなる群から選択される何れか一つで表されるものである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の変性剤。
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【請求項6】
下記化学式1で表される化合物由来の官能基を含む、変性共役ジエン系重合体。
【化24】
(前記化学式1中、
R
1~R
8は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基であり;
L
1およびL
2は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり;
nは2~4の整数である。)
【請求項7】
共役ジエン系単量体の単独重合体、または共役ジエン系単量体と芳香族ビニル系単量体の共重合体である、請求項6に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項8】
数平均分子量が50,000g/mol~2,000,000g/molであり、重量平均分子量が100,000g/mol~4,000,000g/molであり、分子量分布が1.1~3.0である、
請求項6または7に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項9】
100℃でのムーニー粘度が40~140である、
請求項6~8のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項10】
1)炭化水素溶媒中で、有機アルカリ金属化合物の存在下で、共役ジエン系単量体、または芳香族ビニル系単量体および共役ジエン系単量体を重合することで、少なくとも一末端にアルカリ金属が結合された活性重合体を製造するステップと、
2)前記活性重合体を下記化学式1で表される化合物を含む変性剤と反応させるステップと、を含む、変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化25】
(前記化学式1中、
R
1~R
8は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基であり;
L
1およびL
2は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり;
nは2~4の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2018年7月27日に出願された韓国特許出願第10-2018-0088010号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、変性剤、およびそれを用いて製造された変性共役ジエン系重合体に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、自動車に対する低燃費化の要求に伴い、タイヤ用ゴム材料として、転がり抵抗が少なく、耐磨耗性、引張特性に優れるとともに、ウェットスキッド抵抗性で代表される調整安定性も兼備した共役ジエン系重合体が求められている。
【0004】
タイヤの転がり抵抗を減少させるための方法としては、加硫ゴムのヒステリシス損を小さくする方法が挙げられ、かかる加硫ゴムの評価指標としては、50℃~80℃の反発弾性、tanδ、グッドリッチ発熱などが用いられている。すなわち、前記温度での反発弾性が大きいか、tanδ、またはグッドリッチ発熱が小さいゴム材料が好ましい。
【0005】
ヒステリシス損の小さいゴム材料としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、またはポリブタジエンゴムなどが知られているが、これらは、ウェットスキッド抵抗性が小さいという問題がある。そこで、近年、スチレン-ブタジエンゴム(以下、SBRという)またはブタジエンゴム(以下、BRという)などの共役ジエン系(共)重合体が乳化重合や溶液重合により製造され、タイヤ用ゴムとして用いられている。中でも、乳化重合に比べて溶液重合が有する最も大きい利点は、ゴムの物性を規定するビニル構造の含量およびスチレンの含量を任意に調節することができ、カップリング(coupling)や変性(modification)などによって分子量および物性などが調節可能であるという点である。したがって、溶液重合により最終的に製造されたSBRやBRの構造の変化が容易であるとともに、鎖末端の結合や変性によって鎖末端の動きを減少させ、シリカまたはカーボンブラックなどの充填剤との結合力を増加させることができるため、タイヤ用ゴム材料として多く用いられている。
【0006】
かかる溶液重合によるSBRがタイヤ用ゴム材料として用いられる場合、前記SBR中のビニルの含量を増加させることで、ゴムのガラス転移温度を上昇させることにより、走行抵抗および制動力などのようなタイヤに要求される物性を調節することができるだけでなく、ガラス転移温度を適宜調節することで、燃料消費を低減することができる。
【0007】
前記溶液重合によるSBRは、アニオン重合開始剤を用いて製造し、形成された重合体の鎖末端を種々の変性剤を用いて結合させたり、変性させたりして用いられている。例えば、米国特許第4,397,994号には、一官能性開始剤であるアルキルリチウムを用いて、非極性溶媒下でスチレン-ブタジエンを重合することで得られた重合体の鎖末端の活性アニオンを、スズ化合物などの結合剤を用いて結合させた技術が提示されている。
【0008】
一方、地面と接するタイヤトレッドの材料として、転がり抵抗が小さく、且つウェットグリップに優れるとともに、実用上において十分な耐磨耗性を有する材料が求められている。
【0009】
一般に、タイヤトレッドの補強性充填剤としてカーボンブラックおよびシリカなどが用いられているが、補強性充填剤としてシリカを用いる場合、ヒステリシス損(hysteresis loss)が小さく、ウェットスキッド抵抗性が向上するという利点がある。しかし、疎水性表面のカーボンブラックに比べて親水性表面のシリカは、共役ジエン系ゴムとの親和性が低いため、分散性が悪いという欠点を有する。したがって、分散性を改善させるか、シリカとゴムとを結合させるために別のシランカップリング剤を用いる必要がある。
【0010】
そこで、ゴム分子の末端部に、シリカとの親和性や反応性を有する官能基を導入することで、ゴム組成物中におけるシリカの分散性を向上させ、また、シリカ粒子との結合によってゴム分子の末端の運動性を減少させることにより、ヒステリシス損を減少させようとする試みが行われているが、その効果が十分ではない状況である。
【0011】
したがって、シリカを始めとする充填剤との親和性が高いゴムの開発が必要な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の従来技術の問題を解決するためになされたものであって、共役ジエン系重合体に対して充填剤親和性官能基であるオリゴシロキサンと3級アミノ基を容易に導入して変性させることができる変性剤を提供することを目的とする。
【0014】
本発明の他の目的は、前記変性剤により変性され、重合体中に前記化合物由来の官能基を含むことで、ゴム組成物中の充填剤に対して優れた親和性を示す変性共役ジエン系重合体を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、前記変性剤を用いた前記変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供することにある。
【0016】
尚、本発明のさらに他の目的は、前記変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明は、下記化学式1で表される化合物を含む変性剤を提供する。
【0018】
【0019】
式中、
R1~R8は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基であり;
L1およびL2は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり;
nは、2~4の整数である。
【0020】
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物由来の官能基を含む変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0021】
また、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【0022】
また、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の変性剤は、オリゴシロキサンと3級アミノ基を含み、共役ジエン系重合体の変性に用いられ、ゴム組成物に適用された時に燃費特性および加工性をバランス良く改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。
【0025】
本明細書および請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0026】
本明細書において用いられる「組成物」と言う用語は、該当組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物だけでなく、該当組成物を含む材料の混合物を含む。
【0027】
本明細書で用いられる「重合体」という用語は、同一であるか異種類であるかを問わず、単量体らを重合することで製造された重合体化合物を指す。これにより、一般用語の重合体は、単に1種の単量体から製造された重合体を指す際に通常用いられる単独重合体という用語、および以下で規定されるような共重合体(copolymer)という用語を網羅する。
【0028】
本明細書で用いられる「共重合体」という用語は、少なくとも2種の異なる単量体の重合により製造された重合体を指す。一般用語の共重合体は、2種の異なる単量体から製造された重合体を指し、使用された単量体の種類によって、三元共重合体、または四元共重合体などと指すことができ、2種以上の異なる単量体から製造された重合体を含む。
【0029】
「含む」(comprising)、「含む」(including)、「有する」(having)という用語、およびそれらの派生語は、それらが具体的に開示されているかいないかを問わず、任意の追加の成分、ステップもしくは手順の存在を排除することを意図しない。如何なる不確実性も避けるために、「含む」という用語の使用により請求された全ての組成物は、反対に述べられない限り、重合体であるかもしくはその他のものであるかを問わず、任意の追加の添加剤、補助剤、もしくは化合物を含み得る。これと対照的に、「から本質的に構成される」という用語は、操作性において必須ではないものを除き、任意のその他の成分、ステップもしくは手順を任意の連続する説明の範囲から排除する。「から構成される」という用語は、具体的に述べられるか挙げられない任意の成分、ステップもしくは手順を排除する。
【0030】
本発明は、ゴム、特に、共役ジエン系重合体に対して充填剤親和性官能基である3級アミノ基を容易に導入して変性させることができる、下記化学式1で表される化合物を含む変性剤を提供する。
【0031】
【0032】
式中、
R1~R8は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基であり;
L1およびL2は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり;
nは2~4の整数である。
【0033】
具体的に、前記化学式1中、R1~R4は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基であってもよく、前記R1~R4が置換される場合、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数4~10のシクロアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数2~12のアルカノイルオキシ基(alkanoyl、RaCOO-、この際、Raは炭素数1~9のアルキル基)、炭素数7~13のアラルキルオキシ基、炭素数7~13のアリールアルキル基、および炭素数7~13のアルキルアリール基からなる群から選択される一つ以上の置換基で置換されてもよい。より具体的に、前記R1~R4は、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基であってもよく、より具体的には、前記R1~R4は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~6のアルキル基であってもよい。
【0034】
また、前記化学式1中、R5~R8は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基であり、具体的には、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、より具体的には、置換または非置換の炭素数1~6のアルキル基であってもよく、置換される場合、R1~R4で上述したような置換基で置換されてもよい。前記R5~R8が、アルキル基ではない、加水分解可能な基である場合、N-R5R6およびN-R7R8の結合が水分の存在下でN-Hに加水分解され、重合体の加工性に悪影響を与える恐れがある。
【0035】
より具体的に、前記化学式1で表される化合物は、前記化学式1中、R1~R4がメチル基またはエチル基であり、R5~R8が炭素数1~10のアルキル基であるものであってもよい。
【0036】
本発明において、前記化学式1に含まれるアミノ基、すなわち、-NR5R6および-NR7R8は、3級アミノ基であることが好ましい。前記3級アミノ基は、本発明の化合物が変性剤として使用された時に、より優れた加工性を有するようにする。
【0037】
前記R5~R8に、アミノ基を保護するための保護基が結合されるか、水素が結合される場合には、本発明による効果を実現することが困難になり得る。水素が結合される場合、変性過程でアニオンが水素と反応して反応性を失うことになり、変性反応自体が不可能になる恐れがある。また、保護基が結合される場合、変性反応が行われるものの、重合体の末端に結合された状態で後加工時に加水分解により脱保護され、1級または2級アミノ基になる可能性があり、脱保護された1級または2級アミノ基は、後で配合時に配合物が砕ける現象を引き起こし、加工性低下の原因になり得る。
【0038】
また、前記化学式1中、L1およびL2は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基であってもよい。より具体的には、L1およびL2は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であってもよく、より具体的には、メチレン基、エチレン基、またはプロピレン基のような、炭素数1~6のアルキレン基であってもよい。
【0039】
分子内のSi原子とN原子との間の距離が近いほど、より優れた効果を奏するが、SiがNと直接結合する場合には、結合が切れる可能性がある。その結果、後処理工程中にSiとNの結合が切れることになり、この時に発生した2級アミノ基は、後処理中に水によって流失される可能性が高い。また、最終的に製造される変性共役ジエン系重合体では、シリカ充填剤との結合を促進するアミノ基の不在により、シリカ充填剤との結合が困難であって、その結果、分散剤の分散効果が低下し得る。このように、SiとNの結合長さによる改善効果の優秀性を考慮すると、前記L1およびL2は、それぞれ独立して、メチレン基、エチレン基、またはプロピレン基のような、炭素数1~3のアルキレン基がより好ましく、より具体的には、プロピレン基であってもよい。また、L1およびL2は、R1~R4で上述したような置換基で置換されてもよい。
【0040】
さらに具体的に、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1a~1eのうち何れか一つで表される化合物であってもよい。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
本発明の変性剤において、前記化学式1で表される化合物は、アルコキシシラン構造が共役ジエン系重合体の活性化末端と結合する一方、Si-O-Si構造および末端に結合された3個以上のアミノ基がシリカなどの充填剤に対して親和力を示すことで、従来のような、分子中に1個のアミノ基を含む変性剤と比べて充填剤と変性共役ジエン系重合体との結合を促進させることができる。また、共役ジエン系重合体の活性化末端の結合の程度が均一であって、カップリング前後に分子量分布の変化を観察した時に、カップリング後にもカップリング前に比べて分子量分布が大きくならずに一定である。その結果、変性共役ジエン系重合体自体の物性が低下することなく、ゴム組成物中の充填剤の凝集を防止し、充填剤の分散性を高めることでゴム組成物の加工性を向上させることができ、特に、タイヤにおける燃費特性、摩耗特性、および制動特性をバランス良く改善させることができる。
【0047】
本発明の変性剤は、ゴムの構造、性質、および物性などを変性させるための変性剤であり、特に、ブタジエン系重合体またはスチレン-ブタジエン共重合体などのような共役ジエン系重合体の変性剤であることができる。
【0048】
本発明の変性剤は、下記反応式1で表される縮合反応により製造されることができる。
【0049】
【0050】
前記反応式1中、R1~R8、L1~L2、およびnは、前記化学式1で定義したとおりであり、R’およびR’’は、前記縮合反応に影響を与えない任意の置換基である。例えば、前記R’およびR’’は、それぞれ独立して、R1~R4のうち何れか一つと同一のものであってもよい。
【0051】
前記反応は、酸の条件下で進行される。酸としては、縮合反応で一般に用いられるものであれば制限されずに使用できる。通常の技術者であれば、前記反応が進行される反応器の種類、出発物質、反応温度などの多様な工程変数に応じて最適の酸を選択することができる。
【0052】
本発明は、前記化学式1で表される化合物を含む変性剤により変性された、変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0053】
具体的に、前記変性共役ジエン系重合体は、前記化学式1で表される化合物由来の官能基を含むものであることができる。
【0054】
また、前記共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体の単独重合体、または共役ジエン系単量体と芳香族ビニル系単量体の共重合体であってもよい。
【0055】
前記変性共役ジエン系重合体が共重合体である場合、共役ジエン系単量体由来の構造単位および芳香族ビニル系単量体由来の構造単位を始めとし、共重合体を成す構造単位が無秩序に配列、結合されたランダム共重合体であってもよい。
【0056】
具体的に、前記変性共役ジエン系重合体は、1.1~3.0の狭い分子量分布(Mw/Mn)(または、多分散指数(PDI)ともいう)を有してもよい。変性共役ジエン系重合体の分子量分布が3.0を超えるか、1.1未満である場合、ゴム組成物に適用した時に、引張特性および粘弾性が低下する恐れがある。分子量分布の制御による、重合体の引張特性および粘弾性の改善効果の顕著性を考慮すると、前記変性共役ジエン系重合体の分子量分布は、具体的には1.3~2.0であってもよい。また、前記変性共役ジエン系重合体は、上記の変性剤を用いることで、変性前の共役ジエン系重合体である時の分子量分布と類似である。
【0057】
本発明において、変性共役ジエン系重合体の分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)から計算されることができる。この際、前記数平均分子量(Mn)は、n個の重合体分子の分子量を測定し、これらの分子量の総和を求め、nで除して計算した個別重合体分子量の共通平均(common average)であり、前記重量平均分子量(Mw)は高分子組成物の分子量分布を示す。全ての分子量平均は、モル当たりグラム(g/mol)で表現されることができる。
【0058】
また、本発明において、前記重量平均分子量および数平均分子量はそれぞれ、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析されるポリスチレン換算の分子量である。
【0059】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、上記の分子量分布条件を満たすとともに、数平均分子量(Mn)が50,000g/mol~2,000,000g/molであってもよく、より具体的には、200,000g/mol~800,000g/molであってもよい。また、前記変性共役ジエン系重合体は、重量平均分子量(Mw)が100,000g/mol~4,000,000g/molであってもよく、より具体的には、300,000g/mol~1,500,000g/molであってもよい。
【0060】
前記変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)が100,000g/molg/mol未満であるか、または数平均分子量(Mn)が50,000g/mol未満である場合、ゴム組成物に適用した時に、引張特性が低下する恐れがある。また、重量平均分子量(Mw)が4,000,000g/molを超えるか、数平均分子量(Mn)が2,000,000g/molを超える場合、変性共役ジエン系重合体の加工性低下によりゴム組成物の作業性が悪化し、混捏が困難となり、ゴム組成物の物性を十分に向上させることが困難になり得る。
【0061】
より具体的に、本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、上記の分子量分布とともに、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量の条件を同時に満たす場合、ゴム組成物に適用した時に、ゴム組成物の粘弾性および加工性をバランス良く改善させることができる。
【0062】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、ビニル基の含量が重合体の総重量に対して5重量%以上、具体的には10重量%以上、より具体的には10重量%~60重量%であってもよい。ビニルの含量が上記の範囲である場合、ガラス転移温度が適切な範囲に調節されるため、タイヤに適用した時に、走行抵抗および制動力のようなタイヤに要求される物性を向上させることができる。
【0063】
この際、前記ビニルの含量は、ビニル基を有する単量体または共役ジエン系単量体からなる共役ジエン系重合体の総重量に対して、1,4-添加ではなく1,2-添加された共役ジエン系単量体由来構造の繰り返し単位の含量を百分率で示したものである。
【0064】
また、本発明の変性共役ジエン系重合体は、100℃でのムーニー粘度(mooney viscosity、MV)が40~140、具体的には60~100であってもよい。上記の範囲のムーニー粘度を有する場合、より優れた加工性を示すことができる。
【0065】
本発明において、ムーニー粘度は、ムーニー粘度計、例えば、Monsanto社のMV2000Eにより、100℃で、Rotor Speed 2±0.02rpm、Large Rotorを用いて測定することができる。この際、用いられる試料は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させて測定することができる。
【0066】
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物を含む変性剤を用いた前記変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【0067】
前記製造方法は、具体的に、1)炭化水素溶媒中で、有機アルカリ金属化合物の存在下で、共役ジエン系単量体、または芳香族ビニル系単量体および共役ジエン系単量体を重合することで、少なくとも一末端にアルカリ金属が結合された活性重合体を製造するステップと、2)前記活性重合体を前記化学式1で表される化合物を含む変性剤と反応させるステップと、を含む。
【0068】
前記1)ステップは、少なくとも一末端にアルカリ金属が結合された活性重合体を製造するためのステップであって、炭化水素溶媒中で、有機アルカリ金属化合物の存在下で、共役ジエン系単量体、または芳香族ビニル系単量体および共役ジエン系単量体を重合することで行うことができる。
【0069】
前記1)ステップにおける重合では、単量体として、共役ジエン系単量体を単独で、または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体をともに用いてもよい。すなわち、本発明の一実施形態に係る前記製造方法により製造された重合体は、共役ジエン系単量体の単独重合体、または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体由来の共重合体であってもよい。
【0070】
前記共役ジエン系単量体は、特に制限されるものではないが、例えば、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン、および2-フェニル-1,3-ブタジエンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0071】
前記単量体として共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体をともに用いる場合、前記共役ジエン系単量体は、最終的に製造された変性共役ジエン系重合体中に前記共役ジエン系単量体由来の単位が60重量%以上、具体的には60重量%~90重量%、より具体的には60重量%~85重量%で含まれる量で用いられてもよい。
【0072】
前記芳香族ビニル系単量体は、特に制限されるものではないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、および1-ビニル-5-ヘキシルナフタレンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0073】
前記単量体として共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体をともに用いる場合、前記芳香族ビニル系単量体は、最終的に製造された変性共役ジエン系重合体中に前記芳香族ビニル系単量体由来の単位が40重量%以下、具体的には10重量%~40重量%、より具体的には15重量%~40重量%で含まれる量で用いられてもよい。
【0074】
前記炭化水素溶媒は、特に制限されるものではないが、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、およびキシレンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0075】
前記有機アルカリ金属化合物は、単量体の総100gを基準として、0.1mmol~1.0mmolで用いられてもよい。
【0076】
前記有機アルカリ金属化合物は、特に制限されるものではないが、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、n-デシルリチウム、t-オクチルリチウム、フェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、n-エイコシルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、4-トリルリチウム、シクロヘキシルリチウム、3,5-ジ-n-ヘプチルシクロヘキシルリチウム、4-シクロペンチルリチウム、ナフチルナトリウム、ナフチルカリウム、リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、リチウムスルホネート、ナトリウムスルホネート、カリウムスルホネート、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、およびリチウムイソプロピルアミドからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0077】
前記1)ステップにおける重合は、必要に応じて、極性添加剤をさらに添加して行ってもよい。前記極性添加剤は、単量体の総100重量部に対して、0.001重量部~1.0重量部で添加してもよい。具体的には、単量体の総100重量部に対して、0.005重量部~0.5重量部、より具体的には、0.01重量部~0.3重量部で添加してもよい。
【0078】
前記極性添加剤は、テトラヒドロフラン、ジテトラヒドロフリルプロパン、ジエチルエーテル、シクロアミルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレンジメチルエーテル、エチレンジメチルエーテル、ジエチルグリコール、ジメチルエーテル、3級ブトキシエトキシエタン、ビス(3-ジメチルアミノエチル)エーテル、(ジメチルアミノエチル)エチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびテトラメチルエチレンジアミンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0079】
本発明の一実施形態に係る製造方法は、上記の極性添加剤を用いることで、共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体を共重合させる際に、それらの反応速度の差を補完することにより、ランダム共重合体が容易に形成されるように誘導することができる。
【0080】
前記1)ステップにおける重合は、断熱重合により行うか、等温重合により行うことができる。
【0081】
ここで、断熱重合は、有機アルカリ金属化合物を投入した後に任意に熱を加えず、その自体の反応熱で重合させるステップを含む重合方法を指し、前記等温重合は、前記有機アルカリ金属化合物を投入した後に任意に熱を加えたり、熱を奪うことで、重合物の温度を一定に維持する重合方法を指す。
【0082】
前記重合は、-20℃~200℃の温度範囲で行ってもよく、具体的には、0℃~150℃、より具体的には、10℃~120℃の温度範囲で行ってもよい。
【0083】
前記2)ステップは、変性共役ジエン系重合体を製造するために、前記活性重合体と、化学式1で表される化合物を含む変性剤とを反応させる変性反応ステップである。
【0084】
この際、前記化学式1で表される化合物を含む変性剤は、上述のとおりである。前記化学式1で表される化合物は、有機アルカリ金属化合物1モルに対して0.1~2.0モルになる割合で用いてもよい。
【0085】
前記2)ステップの反応は、重合体に官能基を導入させるための変性反応であって、前記各反応は、0℃~90℃の温度範囲で1分~5時間行ってもよい。
【0086】
本発明の一実施形態に係る製造方法は、前記2)ステップの後に、必要に応じて、溶媒および未反応単量体の回収および乾燥のうち1つ以上のステップをさらに含んでもよい。
【0087】
また、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物を提供する。
【0088】
前記ゴム組成物は、上記の変性共役ジエン系重合体を含むことで、成形品の物性を向上させることができ、特に、タイヤにおける燃費特性、摩耗特性、および制動特性をバランス良く改善させることができる。
【0089】
具体的に、前記ゴム組成物は、変性共役ジエン系重合体を0.1重量%以上100重量%以下、具体的には10重量%~100重量%、より具体的には20重量%~90重量%で含んでもよい。前記変性共役ジエン系重合体の含量が0.1重量%未満である場合には、前記ゴム組成物を用いて最終的に製造される成形品、例えば、タイヤにおける燃費特性、摩耗特性、および制動特性の改善効果が微小であり得る。
【0090】
また、前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体の他に、必要に応じて、他のゴム成分をさらに含んでもよい。この際、前記ゴム成分は、ゴム組成物の総重量に対して90重量%以下の含量で含まれてもよい。具体的には、前記変性共役ジエン系共重合体100重量部に対して1重量部~900重量部で含まれてもよい。
【0091】
前記ゴム成分は、天然ゴムまたは合成ゴムであってもよく、例えば、前記ゴム成分は、シス-1,4-ポリイソプレンを含む天然ゴム(NR);前記一般的な天然ゴムを変性または精製した、エポキシ化天然ゴム(ENR)、脱蛋白天然ゴム(DPNR)、水素化天然ゴムなどの変性天然ゴム;スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン-コ-イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン-コ-プロピレン)、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(エチレン-コ-プロピレン-コ-ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴムなどのような合成ゴムであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が使用可能である。
【0092】
また、前記ゴム組成物は、変性共役ジエン系重合体100重量部に対して、0.1重量部~150重量部の充填剤を含んでもよい。
【0093】
前記充填剤は、具体的に、シリカ系充填剤またはカーボンブラック系充填剤などであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つの混合物が使用可能である。
【0094】
より具体的に、前記充填剤は、シリカであってもよく、さらに具体的に、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、またはコロイドシリカなどであってもよい。より具体的には、前記充填剤は、破壊特性の改良効果およびウェットグリップ性(wet grip)の両立効果が最も顕著な湿式シリカであってもよい。
【0095】
一方、前記充填剤としてシリカ系充填剤が用いられる場合、補強性および低発熱性を改善するためにシランカップリング剤がともに用いられてもよい。
【0096】
前記シランカップリング剤としては、具体的に、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、またはジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどが挙げられ、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が使用可能である。より具体的には、補強性の改善効果を考慮すると、前記シランカップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドまたは3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドであってもよい。
【0097】
また、本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物においては、ゴム成分として、活性部位にシリカ系充填剤との親和性が高い官能基が導入された変性共役ジエン系重合体が用いられているため、シランカップリング剤の配合量が通常の場合よりも低減されることができる。具体的に、前記シランカップリング剤は、シリカ系充填剤100重量部に対して1重量部~20重量部で用いられてもよい。上記の範囲で用いられる場合、カップリング剤としての効果が十分に発揮され、且つゴム成分のゲル化を防止することができる。より具体的には、前記シランカップリング剤は、シリカ100重量部に対して5重量部~15重量部で用いられてもよい。
【0098】
また、本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、硫黄架橋性であってもよく、そのために加硫剤をさらに含んでもよい。
【0099】
前記加硫剤は、具体的に、硫黄粉末であってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~10重量部で含まれてもよい。前記含量範囲で含まれる場合、加硫ゴム組成物が必要とする弾性率および強度を確保するとともに、低燃費性を得ることができる。
【0100】
また、本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、上記の成分の他に、ゴム工業界で通常用いられる各種添加剤、具体的には、加硫促進剤、プロセス油、可塑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華(zinc white)、ステアリン酸、熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂などをさらに含んでもよい。
【0101】
前記加硫促進剤としては、特に限定されるものではないが、具体的には、M(2-メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)などのチアゾール系化合物、もしくはDPG(ジフェニルグアニジン)などのグアニジン系化合物が使用可能である。前記加硫促進剤は、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~5重量部で含まれてもよい。
【0102】
また、前記プロセス油は、ゴム組成物中で軟化剤として作用するものであって、具体的には、パラフィン系、ナフテン系、または芳香族系化合物であってもよく、より具体的には、引張強度および耐磨耗性を考慮すると芳香族系プロセス油が、ヒステリシス損および低温特性を考慮するとナフテン系またはパラフィン系プロセス油が使用可能である。前記プロセス油は、ゴム成分100重量部に対して100重量部以下の含量で含まれてもよく、前記含量で含まれる場合、加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)の低下を防止することができる。
【0103】
また、前記老化防止剤としては、具体的に、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、またはジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物などが挙げられる。前記老化防止剤は、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~6重量部で用いられてもよい。
【0104】
本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、前記配合処方に従って、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練機を用いて混練することで得られ、また、成形加工後、加硫工程により、低発熱性および耐磨耗性に優れたゴム組成物が得られることができる。
【0105】
これにより、前記ゴム組成物は、タイヤトレッド、アンダトレッド、サイドウォール、カーカスコーティングゴム、ベルトコーティングゴム、ビードフィラー、またはビードコーティングゴムなどのタイヤの各部材や、防塵ゴム、ベルトコンベア、ホースなどの各種工業用ゴム製品の製造において有用である。
【0106】
尚、本発明のさらに他の実施形態によると、前記ゴム組成物を用いて製造された成形品およびタイヤが提供される。
【0107】
以下、実施例および実験例により、本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例および実験例は本発明を例示するためのものにすぎず、これらのみによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0108】
[実施例1]
3器の反応器が直列に連結された連続反応器のうち第1反応器に、n-ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解されたスチレン溶液を1.80kg/h、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解された1,3-ブタジエン溶液を14.2kg/h、n-ヘキサンを49.11kg/h、n-ヘキサンに1,2-ブタジエンが2.0重量%で溶解された1,2-ブタジエン溶液を40g/h、極性添加剤として、n-ヘキサンに2,2-(ジ-2(テトラヒドロフリル)プロパンが10重量%で溶解された溶液を51.0g/h、n-ヘキサンにn-ブチルリチウムが10重量%で溶解されたn-ブチルリチウム溶液を59.0g/hの速度で注入した。この際、第1反応器の温度は50℃になるように維持した。
【0109】
次に、第2反応器に、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解された1,3-ブタジエン溶液を0.74kg/hの速度で注入した。この際、第2反応器の温度は65℃になるように維持した。
【0110】
前記第2反応器から第3反応器へ重合物を移送し、変性剤として、化合物1aが10重量%で溶解された溶液を61.4g/hの速度で第3反応器に投入した。第3反応器の温度は65℃になるように維持した。
【0111】
その後、第3反応器から排出された重合溶液に、酸化防止剤として、30重量%で溶解されたIR1520(BASF社)溶液を167g/hの速度で注入して撹拌した。その結果として得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れて撹拌し、溶媒を除去することで、両末端変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0112】
【0113】
[実施例2]
実施例1において、変性剤として、下記化学式1aの化合物の代わりに、下記化学式1bの化合物を10.0重量%のノルマルヘキサン溶液とし、78.1g/hの速度で注入したことを除き、前記実施例1と同様に行って変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0114】
【0115】
[実施例3]
実施例1において、変性剤として、下記化学式1aの化合物の代わりに、下記化学式1cの化合物を10.0重量%のノルマルヘキサン溶液とし、80.3g/hの速度で注入したことを除き、前記実施例1と同様に行って変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0116】
【0117】
[実施例4]
実施例1において、変性剤として、下記化学式1aの化合物の代わりに、下記化学式1dの化合物を10.0重量%のノルマルヘキサン溶液とし、99.3g/hの速度で注入したことを除き、前記実施例1と同様に行って変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0118】
【0119】
[実施例5]
実施例1において、変性剤として、下記化学式1aの化合物の代わりに、下記化学式1eの化合物を10.0重量%のノルマルヘキサン溶液とし、68.4g/hの速度で注入したことを除き、前記実施例1と同様に行って変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0120】
【0121】
[比較例1]
実施例1において、変性剤を用いた変性反応を行わなかったことを除き、前記実施例1と同様に行って未変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0122】
[比較例2]
実施例1において、変性剤として、下記化学式1aの化合物の代わりに、下記化学式2aの化合物を10.0重量%のノルマルヘキサン溶液とし、23.5g/hの速度で注入したことを除き、前記実施例1と同様に行って変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0123】
【0124】
[比較例3]
実施例1において、変性剤として、下記化学式1aの化合物の代わりに、下記化学式2bの化合物を10.0重量%のノルマルヘキサン溶液とし、42.5g/hの速度で注入したことを除き、前記実施例1と同様に行って変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0125】
【0126】
[比較例4]
実施例1において、変性剤として、下記化学式1aの化合物の代わりに、下記化学式2cの化合物を10.0重量%のノルマルヘキサン溶液とし、74.6g/hの速度で注入したことを除き、前記実施例1と同様に行って変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0127】
【0128】
[比較例5]
実施例1において、変性剤として、下記化学式1aの化合物の代わりに、下記化学式2dの化合物を10.0重量%のノルマルヘキサン溶液とし、88.0g/hの速度で注入したことを除き、前記実施例1と同様に行って変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0129】
【0130】
<実験例1>
上記実施例1および2、並びに比較例1~5で製造した変性スチレン-ブタジエン共重合体に対して、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(または、多分散指数(PDI))、成分分析、およびムーニー粘度(MV)をそれぞれ測定した。その結果を下記表1に示した。
【0131】
1)成分分析
各共重合体中のスチレン由来単位(SM)およびビニルの含量は、NMRを利用して測定した。
【0132】
2)分子量分析
各共重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、40℃の条件下でGPC(gel permeation chromatograph)分析により測定した。この際、カラム(column)としては、Polymer Laboratories社のPLgel Olexis2本とPLgel mixed-Cカラム1本を組み合わせて使用し、新たに交替したカラムは、何れもmixed bedタイプのカラムを使用した。また、分子量の計算時に、GPC基準物質(Standard material)としてPS(polystyrene)を使用した。多分散指数(PDI)は、上記の方法により測定された重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)で計算した。
【0133】
3)ムーニー粘度分析
各共重合体のムーニー粘度は、MV-2000(Alpha Technologies社製)を用いて、各試料重量15g以上の2個を1分間予熱した後、100℃で4分間測定した。
【0134】
【0135】
<実験例2>
前記実施例1および2、並びに比較例1~5の変性スチレン-ブタジエン共重合体をそれぞれ含むゴム組成物、およびそれから製造された成形品の物性を比較分析するために、引張特性および粘弾性特性を測定した。
【0136】
1)ゴム組成物の製造
各ゴム組成物は、第1段混練、第2段混練、および第3段混練過程を経て製造した。この際、変性スチレン-ブタジエン共重合体を除いた物質の使用量は、変性スチレン-ブタジエン共重合体100重量部を基準として示した。第1段混練では、温度制御装置付きのバンバリーミキサーを用いて、80rpmの条件で前記各共重合体100重量部、シリカ70重量部、シランカップリング剤としてビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド11.02重量部、プロセス油(process oil、TDAE)33.75重量部、老化防止剤(TMDQ)2.0重量部、酸化防止剤2.0重量部、酸化亜鉛(ZnO)3.0重量部、ステアリン酸(stearic acid)2.0重量部、およびワックス1.0重量部を配合して混練した。この際、混練機の温度を制御し、140℃~150℃の排出温度で1次配合物を得た。第2段混練では、前記1次配合物を室温まで冷却した後、混練機にゴム促進剤(CZ)1.75重量部、硫黄粉末1.5重量部、加硫促進剤2.0重量部を添加し、60℃以下の温度でミキシングして2次配合物を得た。その後、第3段混練では、2次配合物を成形し、180℃でt90+10分間加硫プレスで加硫することで、各加硫ゴムを製造した。
【0137】
2)引張特性
引張特性は、ASTM 412の引張試験法に準じて各試験片(厚さ25mm、長さ80mm)を製造し、前記試験片の切断時における引張強度および300%伸びた時の引張応力(300%モジュラス)を測定した。具体的に、引張特性は、Universal Test Machin 4204(Instron社製)引張試験機を用いて、室温で50cm/minの速度で測定することで、引張強度および300%伸びた時の引張応力値(300%モジュラス)を得た。それぞれの物性値は、比較例3の数値を100と基準として表2に記載しており、その数値が高いほど、優れることを意味する。
【0138】
3)粘弾性特性
粘弾性特性は、動的機械分析機(TA社)を用い、歪みモードで、周波数10Hz、各測定温度(0℃~60℃)で変形を変化させながらtanδを測定した。また、高温60℃でのtanδが低いほど、ヒステリシス損が少なく、優れた低転がり抵抗性(燃費性)を有することを意味する。それぞれの物性値は、比較例3の数値を100と基準として表2に記載しており、その数値が高いほど、優れることを意味する。
【0139】
4)加工性特性
前記1)ゴム試験片の製造時に得られた2次配合物のムーニー粘度(MV、(ML1+4、@100℃)MU)を測定し、各重合体の加工性特性を比較分析した。この際、ムーニー粘度測定値が低いほど、加工性特性に優れることを意味する。
【0140】
具体的に、MV-2000(ALPHA Technologies社)により、100℃で、Rotor Speed 2±0.02rpm、Large Rotorを使用し、各2次配合物は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させて4分間測定した。
【0141】
【0142】
実験結果、本発明に係る変性剤を用いて変性された実施例1~5の変性スチレン-ブタジエン共重合体を含むゴム組成物は、比較例1~3に比べて粘弾性に優れていた。これは、実施例1~5に適用された変性剤がオリゴマーであるため現れる効果であると解釈される。また、1級または2級アミノ基が導入された比較例4および5に比べて粘弾性は類似であり、加工性は改善された。