(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】ネガ型感光性組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20221216BHJP
G03F 7/075 20060101ALI20221216BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20221216BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20221216BHJP
C08F 289/00 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
G03F7/027 501
G03F7/075 521
G03F7/004 501
C08F290/14
C08F289/00
(21)【出願番号】P 2021572458
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2020071327
(87)【国際公開番号】W WO2021018926
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2019141190
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】横山 大志
(72)【発明者】
【氏名】芝山 聖史
(72)【発明者】
【氏名】能谷 敦子
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-215851(JP,A)
【文献】特開2014-222367(JP,A)
【文献】特開2017-016116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
C08F 290/14
C08F 289/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)カルボキシル基を含んでなる、アルカリ可溶性樹脂、
(II)重合開始剤、
(III)(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物
、
(IV)溶媒
、および
(V)糖
を含んでなり、
前記(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物の含有量が、前記アルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、40~300質量%であり、かつ
前記アルカリ可溶性樹脂が、シルセスキオキサン骨格を含んでなるポリシロキサンである、ネガ型感光性組成物。
【請求項2】
前記ポリシロキサンが、
式(Ia)で示される繰り返し単位:
【化1】
(式中、
R
a1は、水素またはメチルであり、
maは、それぞれ独立に、1~6の整数である)、および
式(a)で示されるアクリル重合単位:
【化2】
(式中、
R
a2は、それぞれ独立に、水素またはメチルであり、
R
a3は、水素、1~6価の、C
1~50の炭化水素基であり、前記炭化水素基は、1以上のメチレンが、オキシ、イミノ、および/またはカルボニルに置きかえられていてもよく、R
a3が2価以上の場合、R
a3は、式(a)中のカルボニルオキシと、式(a)で表される、他の繰り返し単位に含まれるカルボニルオキシとを連結しており、
naは、0以上の整数である)
を含んでなり、
少なくとも1つの式(Ia)中の繰り返し単位の*が、式(Ia)で表される、他の繰り返し単位の*と直接的に、または前記式(a)で示されるアクリル重合単位を介して結合されているものであり、かつ
R
a3が水素である式(a)で示されるアクリル重合単位が少なくとも1つ存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリシロキサンが、式(Ic)で示される繰り返し単位:
【化3】
を含んでなる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記(V)糖が、炭素数1~6のアルキレンオキシドが付加されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記(V)糖が、オリゴ糖である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物を基板に塗布して塗膜を形成させ、塗膜を露光し、現像することを含んでなる、硬化膜の製造方法。
【請求項7】
前記現像が、0.05~1.5質量%TMAH水溶液、0.1~2.5質量%炭酸ナトリウム水溶液、または0.01~1.5質量%水酸化カリウム水溶液を現像液として用いて行われる、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
請求項
6または7に記載の
方法を含んでなる、表示デバイス
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型感光性組成物に関するものである。また、本発明はそれを用いた硬化膜の製造方法、それから形成された硬化膜、およびその硬化膜を具備してなる表示デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ、発光ダイオード、太陽電池などの光学素子において、光利用効率の向上や省エネルギーを目的としたさまざまな提案がなされている。例えば、液晶ディスプレイにおいて、透明な平坦化膜を薄膜トランジスタ(TFT)素子上に被覆形成し、この平坦化膜上に画素電極を形成させることにより、表示装置の開口率を上げる方法が知られている。
【0003】
また、有機ELや液晶モジュールの上にタッチパネルを作成する構造が提案されている。さらには、ガラス基板の代わりにプラスチック基板を使ったフレキシブルディスプレイが注目されている。いずれの場合も素子の構成材料が熱劣化しないよう、素子上の被膜形成はより低温で行われることが望ましい。その他有機半導体、有機太陽電池などに被覆形成する場合も、より低温で硬化できることが求められている。さらに、環境負荷に配慮して、通常用いられる2.38%の有機現像液よりも低濃度のアルカリ現像液にて現像可能な組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、低濃度の現像液を用いた場合でも現像可能な、ネガ型感光性組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるネガ型感光性組成物は、
(I)カルボキシル基を含んでなる、アルカリ可溶性樹脂、
(II)重合開始剤、
(III)(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物、および
(IV)溶媒
を含んでなり、
(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物の含有量が、アルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、40~300質量%であるものである。
【0007】
本発明による硬化膜の製造方法は、上記のネガ型感光性組成物を基板に塗布して塗膜を形成させ、塗膜を露光し、現像することを含んでなるものである。
【0008】
本発明による硬化膜は、上記に記載の方法により製造されたものである。
【0009】
本発明による表示デバイスは、上記の硬化膜を具備してなるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるネガ型感光性組成物は、低濃度アルカリ現像液を用いても現像可能であり、耐環境性にも優れる。また、本発明によるネガ型感光性組成物は、厚膜化が可能であり、高解像も達成できる。また、低温硬化により硬化膜を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本明細書において、特に限定されない限り、記号、単位、略号、用語は以下の意味を有するものとする。
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、単数形は複数形を含み、「1つの」や「その」は「少なくとも1つ」を意味する。本明細書において、特に言及されない限り、ある概念の要素は複数種によって発現されることが可能であり、その量(例えば質量%やモル%)が記載された場合、その量はそれら複数種の和を意味する。「および/または」は、要素の全ての組み合わせを含み、また単体での使用も含む。
【0012】
本明細書において、~または-を用いて数値範囲を示した場合、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
【0013】
本明細書において、炭化水素は、炭素および水素を含み、必要に応じて、酸素または窒素を含むものを意味する。炭化水素基は、1価または2価以上の、炭化水素を意味する。 本明細書において、脂肪族炭化水素は、直鎖状、分岐鎖状または環状の脂肪族炭化水素を意味し、脂肪族炭化水素基は、1価または2価以上の、脂肪族炭化水素を意味する。芳香族炭化水素は、必要に応じて脂肪族炭化水素基を置換基として有することも、脂環と縮合していていることもできる、芳香環を含む炭化水素を意味する。芳香族炭化水素基は、1価または2価以上の、芳香族炭化水素を意味する。また、芳香環とは、共役不飽和環構造を有する炭化水素を意味し、脂環とは、環構造を有するが共役不飽和環構造を含まない炭化水素を意味する。
【0014】
本明細書において、アルキルとは直鎖状または分岐鎖状飽和炭化水素から任意の水素をひとつ除去した基を意味し、直鎖状アルキルおよび分岐鎖状アルキルを包含し、シクロアルキルとは環状構造を含む飽和炭化水素から水素をひとつ除外した基を意味し、必要に応じて環状構造に直鎖状または分岐鎖状アルキルを側鎖として含む。
【0015】
本明細書においてアリールとは、芳香族炭化水素から任意の水素をひとつ除去した基を意味する。アルキレンとは、直鎖状または分岐鎖状飽和炭化水素から任意の水素を二つ除去した基を意味する。アリーレンとは、芳香族炭化水素から任意の水素を二つ除去した炭化水素基を意味する。
【0016】
本明細書において、「Cx~y」、「Cx~Cy」および「Cx」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1~6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。また、本明細書でいうフルオロアルキルとは、アルキル中の1つ以上の水素がフッ素に置き換えられたものをいい、フルオロアリールとは、アリール中の1つ以上の水素がフッ素に置き換えられたものをいう。
【0017】
本明細書において、ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれかである。
本明細書において、%は質量%、比は質量比を表す。
【0018】
本明細書において、温度の単位は摂氏(Celsius)を使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
【0019】
<ネガ型感光性組成物>
本発明によるネガ型感光性組成物(以下、簡単に「組成物」ということがある)は、(I)アルカリ可溶性樹脂、(II)重合開始剤、(III)(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物、および(IV)溶媒を含んでなる。以下、本発明による組成物に含まれる各成分について、詳細に説明する。
本発明による組成物は、100μm以下の膜厚であれば本発明の効果を発揮する。厚膜用ネガ型感光性組成物として用いられていてもよい。ここで、本発明において、厚膜とは、平均膜厚が5~100μm(好ましくは5~25μm、より好ましくは8~20μm)の膜を意味する。本発明において平均膜厚は、ULBAC社触針式表面形状測定器により3~5箇所の膜厚を測定し、その平均値とする。
本発明による組成物の粘度は、好ましくは0.1~10,000cPであり、より好ましくは1.0~8,000cPである。ここで粘度は、回転粘度計により25℃で測定したものである。
【0020】
(I)アルカリ可溶性樹脂
本発明による組成物は、カルボキシル基を含んでなるアルカリ可溶性樹脂(以下、簡単に「アルカリ可溶性樹脂」ということがある)を含んでなる。カルボキシル基を含むことで、低濃度の現像液に対するアルカリ可溶性樹脂の溶解性を向上させることができる。
本発明に用いられるアルカリ可溶性樹脂は、好ましくはアクリロイル基をさらに含んでなる。また、本発明に用いられるアルカリ可溶樹脂は、特に限定されないが、好ましくは、シロキサン結合を主骨格に含むポリシロキサンおよびアクリル樹脂から選択される。これらのうち、耐熱性の観点からポリシロキサンを用いることがより好ましい。
【0021】
(ポリシロキサン)
アルカリ可溶性樹脂は、好ましくはシロキサン(Si-O-Si)結合を主骨格として含む。本発明において、シロキサン結合を主骨格として含むポリマーをポリシロキサンという。ポリシロキサンの骨格構造は、ケイ素原子に結合している酸素数に応じて、シリコーン骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が2)、シルセスキオキサン骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が3)、およびシリカ骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が4)に分類できる。本発明においては、これらのいずれであってもよい。ポリシロキサン分子が、これらの骨格構造の複数の組み合わせを含んだものであってもよい。好ましくは、本発明に用いられるポリシロキサンは、シルセスキオキサン骨格を含む。
ポリシロキサンは一般にシラノール基またはアルコキシシリル基を有するものである。このようなシラノール基およびアルコキシシリル基とはシロキサン骨格を形成するケイ素に直接結合した水酸基およびアルコキシ基を意味する。ここで、シラノール基およびアルコキシシリル基は、組成物を用いて硬化膜を形成させるときに硬化反応を促進する作用があるほか、後述するケイ素含有化合物との反応にも寄与するものと考えられている。このため、ポリシロキサンはこれらの基を有することが好ましい。
【0022】
好ましくは、本発明に用いられるポリシロキサンは、式(Ia)で示される繰り返し単位:
【化1】
(式中、
R
a1は、水素またはメチルであり、
maは、それぞれ独立に、1~6の整数、好ましくは1~3の整数、最も好ましくは3である)、および
式(a)で示されるアクリル重合単位:
【化2】
(式中、
R
a2は、それぞれ独立に、水素またはメチルであり、
R
a3は、水素、1~6価の、C
1~50の炭化水素基であり、前記炭化水素基は、1以上のメチレンが、オキシ、イミノ、および/またはカルボニルに置きかえられていてもよく、R
a3が2価以上の場合、R
a3は、式(a)中のカルボニルオキシと、式(a)で表される、他の繰り返し単位に含まれるカルボニルオキシとを連結しており、
naは、0以上の整数である)
を含んでなり、
少なくとも1つの式(Ia)中の繰り返し単位の*が、式(Ia)で表される、他の繰り返し単位の*と直接的に、または前記式(a)で示されるアクリル重合単位を介して結合されており、かつ
R
a3が水素である、式(a)で示されるアクリル重合単位が、少なくとも1つ存在する。
【0023】
式(a)で示されるアクリル重合単位において、式(a)が他の式(a)と結合し、ブロックを形成していてもよいが、アクリル重合単位が多いと耐熱性が下がる傾向にあるため、ポリシロキサンの1分子中において、
naの総和/((Ia)で示される繰り返し単位の数+naの総和)=0.15以下であることが好ましく、より好ましくは0.05以下である。
naは上記をみたすものであれば、特に限定されないが、好ましくは0~6であり、より好ましくは1~4であり、さらに好ましくは1~2である。なお、(a)が複数含まれる場合に、それぞれのnaはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
Ra3は、炭素数が多いと耐熱性が下がる傾向にあるため、水素またはC1~30の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは水素またはC1~20の炭化水素基である。
【0024】
R
a3としては、例えば、以下が挙げられる。
【化3】
【化4】
【化5】
【0025】
上記のうち、好ましくは、水素、トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートであり、より好ましくは水素である。
なお、式(a)で示される繰り返し単位が、二重結合を複数含むアクリル化合物に由来する基である場合、その一部の二重結合が開裂せず残っていることが好ましい。
【0026】
式(a)で示される重合単位のうち、Ra3が、アミノ基、イミノ基、および/またはカルボニル基で置換された炭化水素基を含む、窒素および/または酸素含有環状脂肪族炭化水素化合物から複数、好ましくは2つまたは3つ、の水素を除去した基(好ましくは、イミノ基および/またはカルボニル基を含む、窒素含有脂肪族炭化水素環、より好ましくは構成員に窒素を含む5員環または6員環、から2つまたは3つの水素を除去した基、最も好ましくは、ピペリジン誘導体、ピロリジン誘導体、またはイソシアヌレート誘導体から2つまたは3つの水素を除去した基)であるアクリル重合単位であってもよい。
【0027】
本発明に用いられるポリシロキサンは、式(Ia’)で示される繰り返し単位:
【化6】
(式中、
R
a1’は、水素またはメチルであり、
ma’は、それぞれ独立に、1~6の整数、好ましくは1~3の整数、最も好ましくは3である)
を含んでいてもよい。
【0028】
後述するように、式(Ia)で示される繰り返し単位を含むポリシロキサンは、(1)アクリロイル基含有のシランモノマーを反応させ、アクリロイル基含有ポリシロキサンを得ること、および(2)得られたアクリロイル基含有ポリシロキサン中の炭素環二重結合を開裂し、重合させることによって、得られる。この工程(2)において、未反応のアクリロイル基が残ると、式(Ia’)で示される繰り返し単位を有するポリシロキサンとなる。工程(2)を行わないで、工程(1)のみで得られるポリシロキサンを含むことも本発明の一態様である。
【0029】
式(Ia)および(Ia’)で示される繰り返し単位は、配合比が高いと、耐熱性が下がるため、ポリシロキサンの繰り返し単位の総数に対して10~100モル%であることが好ましい。
本明細書において、「ポリシロキサンの繰り返し単位の総数に対して」とは、ポリシロキサンのシロキサンの繰り返し単位の総数のことを意味するものであり、例えば、式(a)で示されるアクリル重合単位は、この総数に含めないものとする。
【0030】
本発明によるポリシロキサンは、式(Ib)で示される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【化7】
(式中、
R
b1は、水素、C
1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基は、それぞれ、フッ素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルデヒド(-CHO)、カルボキシル、または-COOR’(ここで、R’は、炭素数1~8のアルキルである)で置換されていてもよく、かつ
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1以上のメチレンがオキシ、もしくはイミノで置きかえられていてもよく、ただし、R
b1はヒドロキシ、アルコキシではない)
なお、ここで、上記したメチレンは、末端のメチルも含むものとする。
また、上記の「フッ素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルデヒド、カルボキシルまたは-COOR’で置換されていてもよい」とは、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基中の炭素原子に直結する水素原子が、フッ素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルデヒド、カルボキシルまたは-COOR’で置き換えられていてもよいことを意味する。本明細書において、他の同様の記載においても同じである。
【0031】
式(Ib)で示される繰り返し単位において、Rb1としては、例えば、(i)メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、およびデシルなどのアルキル、(ii)フェニル、トリル、およびベンジルなどのアリール、(iii)トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピルなどのフルオロアルキル、(iv)フルオロアリール、(v)シクロヘキシルなどのシクロアルキル、(vi)イソシアネート、およびアミノ等のアミノまたはイミド構造を有する窒素含有基、(vii)グリシジルなどのエポキシ構造を有する、酸素含有基、(viii)カルボキシメチル、ジカルボキシルなどのカルボキシル含有基が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、トリル、グリシジル、イソシアネート、カルボキシルである。フルオロアルキルとしては、ペルフルオロアルキル、特にトリフルオロメチルやペンタフルオロエチルが好ましい。Rb1がメチルである場合は、原料が入手し易く、硬化後の膜硬度が高く、高い薬品耐性を有するため好ましい。また、Rb1がフェニルである場合は、当該ポリシロキサンの溶媒への溶解度を高め、硬化膜がひび割れにくくなるため、好ましい。また、Rb1がヒドロキシ、グリシジル、イソシアネート、またはアミノを有していると、基板との密着性が向上するため、好ましい。
【0032】
本発明に用いられるポリシロキサンとしては、例えば、以下の構造を含んでなるものが挙げられる。
【化8】
【0033】
式(Ib)で示される繰り返し単位は、配合比が高いと、形成される硬化膜の強度、耐熱性が上がるが密着性が下がるため、ポリシロキサンの繰り返し単位の総数に対して0~90モル%であることが好ましい。
【0034】
本発明に用いられるポリシロキサンは、式(Ic)で示される繰り返し単位を含んでなることが好ましい。
【化9】
【0035】
本発明に用いられるポリシロキサンは、式(Id)で示される繰り返し単位を含んでいてもよい。
【化10】
式中、
R
d1は、アミノ基、イミノ基、および/またはカルボニル基を含む、窒素および/または酸素含有環状脂肪族炭化水素化合物から複数の水素を除去した基である。ここで、環状脂肪族炭化水素化合物は、環状構造を有するが、必要に応じて、直鎖状または分岐鎖状構造を含んでいていてもよい。
【0036】
式(Id)における、Rd1としては、好ましくは、イミノ基および/またはカルボニル基を含む、窒素含有脂肪族炭化水素環、より好ましくは構成員に窒素を含む5員環または6員環、から複数、より好ましくは2つまたは3つ、の水素を除去した基である。例えばピペリジン、ピロリジン、およびイソシアヌレートから2つまたは3つの水素を除去した基であることが挙げられる。式(Id)中の酸素と結合していない基は、複数の繰り返し単位に含まれるSi同士を連結する。
【0037】
式(Id)および式(Ic)で示される繰り返し単位は、配合比が高いと、組成物の感度低下や、溶媒や添加剤との相溶性の低下、膜応力が上昇するためクラックが発生しやすくなることがあるため、ポリシロキサンの繰り返し単位の総数に対して40モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。
【0038】
本発明用いられるポリシロキサンは、式(Ie)で示される繰り返し単位を含んでいてもよい。
【化11】
式中、
R
e1は、それぞれ独立に、水素、C
1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基は、フッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されていてもよく、かつ
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、メチレンが、オキシもしくはイミノで置きかえられていてもよく、ただしR
e1はヒドロキシ、アルコキシではない。
なお、ここで、上記したメチレンは、末端のメチルも含むものとする。
【0039】
式(Ie)で示される繰り返し単位において、
Re1としては、例えば、(i)メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、およびデシルなどのアルキル、(ii)フェニル、トリル、およびベンジルなどのアリール、(iii)トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピルなどのフルオロアルキル、(iv)フルオロアリール、(v)シクロヘキシルなどのシクロアルキル、(vi)イソシアネート、およびアミノ等のアミノまたはイミド構造を有する窒素含有基、(vii)グリシジルなどのエポキシ構造を有する、酸素含有基が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、トリル、グリシジル、イソシアネートである。フルオロアルキルとしては、ペルフルオロアルキル、特にトリフルオロメチルやペンタフルオロエチルが好ましい。Re1がメチルである場合は、原料が入手し易く、硬化後の膜硬度が高く、高い薬品耐性を有するため好ましい。また、Re1がフェニルである場合は、当該ポリシロキサンの溶媒への溶解度を高め、硬化膜がひび割れにくくなるため、好ましい。また、Re1がヒドロキシ、グリシジル、イソシアネート、またはアミノを有していると、基板との密着性が向上するため、好ましい。
【0040】
上記式(Ie)で示される繰り返し単位を有することによって、本発明に用いられるポリシロキサンは、部分的に直鎖構造とすることができる。ただし、耐熱性が下がるため、直鎖構造部分は少ないことが好ましい。具体的には、式(Ie)で示される繰り返し単位は、ポリシロキサンの繰り返し単位の総数に対して30モル%以下であることが好ましい。
【0041】
本発明に用いられるポリシロキサンは、上記したような繰り返し単位やブロックが結合した構造を有するが、末端にシラノールを有することが好ましい。このようなシラノール基は、前記した繰り返し単位またはブロックの結合手に、-O0.5Hが結合したものである。
【0042】
本発明に用いられるポリシロキサンの質量平均分子量は、特に限定されない。ただし、分子量が高い方が塗布性が改良される傾向がある。一方で、分子量が低い方が合成条件の限定が少なく、合成が容易であり、分子量が非常に高いポリシロキサンは合成が困難である。このような理由から、ポリシロキサンの質量平均分子量は、通常1,500~20,000であり、有機溶媒への溶解性、アルカリ現像液への溶解性の点から2,000~15,000であることが好ましい。ここで質量平均分子量とは、ポリスチレン換算質量平均分子量であり、ポリスチレンを基準としてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0043】
本発明用いられるポリシロキサンは、(Ia)で示される繰り返し単位を含むポリシロキサンと、(Ia’)、(Ib)~(Ie)で示される繰り返し単位の何れかを含み(Ia)で示される繰り返し単位を含まないポリシロキサンとを組合された混合物であってもよい。
【0044】
(Ia)を含むポリシロキサンは、例えば、
以下の工程:
(1)式(ia):
【化12】
(式中、
R
a1’’は、水素またはメチルであり、
ma’’は、1~6の整数であり、好ましくは1~3の整数、最も好ましくは3であり、かつ
R
iaは、直鎖または分岐の、C
1~6アルキルである)
で示されるシランモノマー、またはその混合物
を必要に応じて、酸性触媒または塩基性触媒の存在下、加水分解し、重合させ、アクリロイル基含有ポリシロキサンを得ること、および
(2)得られたアクリロイル基含有ポリシロキサン中の炭素間2重結合を開裂し、重合させること
によって得ることができる。
ここで、上記した混合物は、式(ia)で示されるシランモノマーと、別の式(ia)で示されるシランモノマーとの混合物であってもよいし、以下(ib)~(ie)で示されるシランモノマーとの混合物であってもよいし、シランモノマー以外の化合物との混合物であってもよい。
【0045】
上記の工程によって得られるポリシロキサンは、すぐれた特性を示す組成物を与えるものであり、得られる構造は、例えば上記に例示したものが包含されるが、モノマーの種類や配合比などに応じて種々の構造を取り得るため、上記の例示以外の構造も取り得ることが考えられる。
【0046】
[工程(1)]
式(ia)において、好ましいRiaは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどが挙げられる。式(ia)において、Riaは複数含まれるが、それぞれのRiaは、同じでも異なっていてもよい。
【0047】
式(ia)で示されるシランモノマーに、式(ib):
Rb1’-Si-(ORib)3 (ib)
(式中、
Rb1’は、水素、C1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基がフッ素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルデヒド(-CHO)、カルボキシル、または-COOR’(ここで、R’は、炭素数1~8のアルキルである)で置換されていてもよく、かつ
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、メチレンが、オキシもしくはイミノで置きかえられていてもよく、ただし、Rb1’はヒドロキシ、アルコキシではなく、
Ribは、直鎖または分岐の、C1~6アルキルである)
で示されるシランモノマーをさらに組み合わせることが好ましい。
式(ib)において、好ましいRb1’は、上記好ましいRb1と同じである。好ましいRibは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどが挙げられる。
【0048】
式(ib)で表されるシランモノマーの具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn-ブトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシランが挙げられる。その中でもメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシランが好ましい。式(ib)で表されるシランモノマーは、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0049】
上記式(ia)および/または(ib)で表されるシランモノマーに、下記式(ic)および/または(id)で表わされるシランモノマーをさらに組み合わせて、アクリル重合化ポリシロキサンを得ることもできる。このように式(ic)および/または式(id)で表されるシランモノマーを用いると、繰り返し単位(Ic)および/または(Id)を含むポリシロキサンを得ることができる。
Si(ORic)4 (ic)
Rd1’-Si-(ORid)3 (id)式中、
RicおよびRidは、それぞれ独立に、直鎖または分岐の、C1~6アルキルであり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどが挙げられる。RicおよびRidは、1つのモノマーに複数含まれるが、それぞれのRicおよびRidは、同じでも異なっていてもよく、
Rd1’は、アミノ基、イミノ基、および/またはカルボニル基を含む、窒素および/または酸素含有環状脂肪族炭化水素化合物から複数の水素を除去した基である。好ましいRd1’は、上記好ましいRd1と同じである。
【0050】
式(ic)で示されるシランモノマーの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn-ブトキシシラン等が挙げられる。
【0051】
式(id)で示されるシランモノマーの具体例としては、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0052】
さらに、以下の式(ie)で示されるシランモノマーを組み合わせてもよい。式(ie)で表されるシランモノマーを用いると、繰り返し単位(Ie)を含むポリシロキサンを得ることができる。
(Re1’)2-Si-(ORie)2 (ie)
式中、
Rieは、それぞれ独立に、直鎖または分岐の、C1~6アルキルであり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどが挙げられる。Rieは、1つのモノマーに複数含まれるが、それぞれのRieは、同じでも異なっていてもよく、
Re1’は、それぞれ独立に、水素、C1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基がフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されていてもよく、かつ
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、メチレンが、オキシもしくはイミノで置きかえられていてもよく、ただし、Re1’はヒドロキシ、アルコキシではない。好ましいRe1’は、上記好ましいRe1と同じである。
【0053】
式(ie)で示されるシランモノマーの具体例としては、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0054】
[工程(2)]
工程(2)では、得られたアクリロイル基含有ポリシロキサン中のアクリロイル基の炭素間2重結合を開裂し、重合させる。この反応には、重合開始剤として、例えば、2,2’-アザビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチルなどのアゾ系開始剤、過酸化ジベンゾイル、tert-ブチルヒドロペルオキシド (70%水溶液)、α,α-ジメチルベンジルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシド、ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)ペルオキシドなどの過酸化物系開始剤を用いることが好ましい。アクリロイル基の炭素間二重結合が開裂し重合させるが、その一部が開裂・重合せずに残っていてもよい。
重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、アクリル官能基の数に対して、0.1~500モル%とすることが好ましい。
【0055】
工程(2)において、
式(a’):
【化13】
(式中、
R
a2’は、水素またはメチルであり、
R
a3’は、水素、C
1~50の炭化水素基であり、前記炭化水素基は、1以上のメチレンが、オキシ、イミノ、および/またはカルボニルに置きかえられていてもよく、好ましいR
a3’は、上記好ましいR
a3と同じであり、かつ
xは、1~6の整数、好ましくは3~6の整数である)
で示されるアクリル酸エステルモノマーを共存させて、重合反応させることが好ましい。上記したメチレンは、末端のメチルも含むものとする。
【0056】
また、式(a’)で示されるアクリル酸モノマーは、分子中に、複数のアクリル酸エステルを有していてもよい、アミノ基、イミノ基、および/またはカルボニル基を含む、窒素および/または酸素含有環状脂肪族炭化水素化合物(好ましくは、イミノ基および/またはカルボニル基を含む、窒素含有脂肪族炭化水素環、より好ましくは構成員に窒素を含む5員環または6員環、最も好ましくは、ピペリジン誘導体、ピロリジン誘導体、またはイソシアヌレート誘導体)であってもよい。
【0057】
式(a’)で示されるアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、イソステアリルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられ、好ましくは、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレートである。
【0058】
また、ラジカル重合反応に際しては、適宜、公知の連鎖移動剤、重合禁止剤、分子量調整剤などを用いて分子量制御することができる。さらに、重合反応は、1段階で行ってもよいし、2段階以上で行ってもよい。重合反応の温度は特に限定されないが、典型的には50℃~200℃、好ましくは80℃~150℃の範囲内である。
【0059】
工程(2)でアクリル重合化されたポリシロキサンは、アクリル重合化による複雑な三次元構造を有するため、耐熱性および基板との密着性の向上に寄与すると考えられる。
【0060】
工程(1)で得られたアクリロイル基含有ポリシロキサンの質量平均分子量に対する、工程(2)で得られたアクリル重合化ポリシロキサンの質量平均分子量が、1.4~5倍であることが好ましく、より好ましくは1.4~3倍である。
【0061】
(Ia)で示される繰り返し単位を含まないポリシロキサンは、上記の工程(1)のみで同様に得られる。
【0062】
(アクリル樹脂)
本発明に用いられるアルカリ可溶性樹脂は、カルボキシル基を含んでなるアクリル樹脂(以下、簡単に「アクリル樹脂」または「アクリルポリマー」ということがある)であってもよい。一般的に用いられるアクリル樹脂、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸アルキル、ポリメタクリル酸アルキルなどから選択することができる。本発明に用いられるアクリル樹脂は、さらに、アクリロイル基を含む繰り返し単位を含むことが好ましい。また、アルコキシシリル基を含む繰り返し単位をさらに含んでなることも好ましい。
【0063】
本発明に用いられるアクリル樹脂は、側鎖にカルボキシル基を含む繰り返し単位を含んでなるものであれば特に限定されないが、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物またはこれらの混合物から誘導される繰り返し単位が好ましい。
【0064】
アルコキシシリル基は、側鎖にアルコキシシリル基を含む繰り返し単位として含まれていればよいが、以下の式(B)で表される単量体から誘導される繰り返し単位が好ましい。
XB-(CH2)a-Si(ORB)b(CH3)3-b (B)
式中、XBはビニル基、スチリル基または(メタ)アクリロイルオキシ基であり、RBはメチル基またはエチル基であり、aは0~3の整数、bは1~3の整数である。
【0065】
また、本発明に用いられるアクリル樹脂は、水酸基含有不飽和単量体から誘導される、水酸基を含む繰り返し単位を含有することが好ましい。
【0066】
本発明によるアルカリ可溶性樹脂の質量平均分子量は、特に限定されないが、1,000~40,000であることが好ましく、2,000~30,000であることがより好ましい。ここで、質量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算質量平均分子量である。また、酸基の数は、低濃度アルカリ現像液で現像可能にし、かつ反応性と保存性を両立するという観点から、固形分酸価は通常40~190mgKOH/gであり、60~150mgKOH/gであることがより好ましい。
【0067】
(Ia)で示される繰り返し単位を含むポリシロキサンは、単独で用いても、厚膜を形成することができるので、アルカリ可溶性樹脂としては、(Ia)で示される繰り返し単位を含むポリシロキサンを用いることが好ましい。
(Ia)で示される繰り返し単位を含まないポリシロキサンを用いる場合、そのポリシロキサンとアクリル樹脂の混合物をアルカリ可溶性樹脂として用いることができる。この場合、アクリル樹脂とポリシロキサンとの配合比は特に限定されないが、塗膜を厚膜にする場合はアクリル樹脂の配合比が多いことが好ましく、一方で高温プロセスへ適用する場合や、透明性、硬化後の耐薬品性の観点からポリシロキサンの配合比が多いことが好ましい。このような理由からポリシロキサンとアクリル可溶性樹脂の配合比は90:10~10:90であることが好ましく、85:15~25:75であることがより好ましい。
【0068】
また、本発明による組成物は、基材上に塗布、像様露光、および現像を経て、硬化膜が形成される。このとき、露光された部分と未露光の部分とで溶解性に差異が発生することが必要であり、未露光部における塗膜は、現像液に対して一定以上の溶解性を有するべきである。例えば、プリベーク後の塗膜の使用する現像液への溶解速度(以下、アルカリ溶解速度またはADRということがある。詳細後述)が50Å/秒以上であれば露光-現像によるパターンの形成が可能であると考えられる。しかし、形成される硬化膜の平均膜厚や現像条件によって要求される溶解性が異なるので、現像条件に応じたアルカリ可溶性樹脂を適切に選択すべきである。組成物に含まれる感光剤やシラノール縮合触媒の種類や添加量により異なるが、例えば、平均膜厚が0.1~100μm(1,000~1,000,000Å)であれば、使用する現像液に対する溶解速度は50~20,000Å/秒が好ましく、さらに100~10,000Å/秒であることがより好ましい。
【0069】
[アルカリ溶解速度(ADR)の測定、算出法]
アルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解速度は、使用する現像液であるアルカリ溶液を用いて、次のようにして測定し、算出する。
【0070】
アルカリ可溶性樹脂をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAという)に35質量%になるように希釈し、室温でスターラーで1時間撹拌させながら溶解する。温度23.0±0.5℃、湿度50±5.0%雰囲気下のクリーンルーム内で、調製したアルカリ可溶性樹脂溶液を4インチ、厚さ525μmのシリコンウェハー上にピペットを用い1ccシリコンウェハーの中央部に滴下し、2±0.1μmの厚さになるようにスピンコーティングし、その後100℃のホットプレート上で90秒間加熱することにより溶媒を除去する。分光エリプソメーター(J.A.Woollam社)で、塗膜の膜厚測定を行う。
【0071】
次に、この膜を有するシリコンウェハーを、23.0±0.1℃に調整された、所定濃度の現像液100mlを入れた直径6インチのガラスシャーレ中に静かに浸漬後、静置して、塗膜が消失するまでの時間を測定した。溶解速度は、ウェハー端部から10mm内側の部分の膜が消失するまでの時間で除して求める。溶解速度が著しく遅い場合は、ウェハーを現像液に一定時間浸漬した後、200℃のホットプレート上で5分間加熱することにより溶解速度測定中に膜中に取り込まれた水分を除去した後、膜厚測定を行い、浸漬前後の膜厚変化量を浸漬時間で除することにより溶解速度を算出する。上記測定法を5回行い、得られた値の平均をアルカリ可溶性樹脂の溶解速度とする。
【0072】
(II)重合開始剤
本発明による組成物は重合開始剤を含んでなる。この重合開始剤は、放射線により酸、塩基またはラジカルを発生する重合開始剤と、熱により酸、塩基またはラジカルを発生する重合開始剤とがある。本発明においては、放射線照射直後から反応が開始され、放射線照射後、現像工程前に行われる再加熱の工程を省くことができるため、プロセスの短縮、コスト面において前者が好ましく、より好ましくは光ラジカル発生剤が好ましい。
【0073】
光ラジカル発生剤は、パターンの形状を強固にしたり、現像のコントラストをあげることにより解像度を改良することができる。本発明に用いられる光ラジカル発生剤は、放射線を照射するとラジカルを放出する光ラジカル発生剤である。ここで、放射線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、電子線、α線、またはγ線等を挙げることができる。
【0074】
光ラジカル発生剤の添加量は、光ラジカル発生剤が分解して発生する活性物質の種類、発生量、要求される感度・露光部と未露光部との溶解コントラストにより最適量は異なるが、アルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、好ましくは0.001~50質量%であり、さらに好ましくは0.01~30質量%である。添加量が0.001質量%より少ないと、露光部と未露光部との溶解コントラストが低すぎて、添加効果を有さないことがある。一方、光ラジカル発生剤の添加量が50質量%より多い場合、形成される被膜にクラックが発生したり、光ラジカル発生剤の分解による着色が顕著になることがあるため、被膜の無色透明性が低下することがある。また、添加量が多くなると光ラジカル発生剤の熱分解により硬化物の電気絶縁性の劣化やガス放出の原因となって、後工程の問題になることがある。さらに、被膜の、モノエタノールアミン等を主剤とするようなフォトレジスト剥離液に対する耐性が低下することがある。
【0075】
光ラジカル発生剤の例として、アゾ系、過酸化物系、アシルホスフィンオキサイド系、アルキルフェノン系、オキシムエステル系、チタノセン系開始剤が挙げられる。その中でもアルキルフェノン系、アシルホスフィンオキサイド系、オキシムエステル系開始剤が好ましく、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0076】
(V)(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物
本発明による組成物は(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物(以下、簡単のために(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物ということがある)を含んでなる。ここで、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基の総称である。この化合物は、前記ポリシロキサンおよび前記アルカリ可溶性樹脂などと反応して架橋構造を形成することができる化合物である。ここで架橋構造を形成するために、反応性基であるアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物が必要であり、より高次の架橋構造を形成するために3つ以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を含むことが好ましい。
【0077】
このような(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物としては、(α)2つ以上の水酸基を有するポリオール化合物と、(β)2つ以上の(メタ)アクリル酸と、が反応したエステル類が好ましく用いられる。このポリオール化合物(α)としては、飽和または不飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ヘテロ環炭化水素、1級、2級、または3級アミン、エーテルなどを基本骨格とし、置換基として2つ以上の水酸基を有する化合物が挙げられる。このポリオール化合物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の置換基、例えばカルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、エーテル結合、チオール基、チオエーテル結合などを含んでいてもよい。
【0078】
好ましいポリオール化合物としては、アルキルポリオール、アリールポリオール、ポリアルカノールアミン、シアヌル酸、またはジペンタエリスリトールなどが挙げられる。ここで、ポリオール化合物(α)が3個以上の水酸基を有する場合、すべての水酸基がメタ(アクリル酸)と反応している必要は無く、部分的にエステル化されていてもよい。すなわち、このエステル類は未反応の水酸基を有していてもよい。このようなエステル類としては、トリス(2-アクリルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレートなどが挙げられる。これらのうち、反応性および架橋可能基の数の観点から、トリス(2-アクリルオキシエチル)イソシアヌレート、およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。また、形成されるパターンの形状を調整するために、これらの化合物を2種類以上組み合わせることもできる。具体的には、(メタ)アクリロイルオキシ基を3つ含む化合物と(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ含む化合物を組み合わせることが好ましい。
【0079】
このような化合物は、反応性の観点から相対的にアルカリ可溶性樹脂よりも小さい分子であることが好ましい。このために、分子量が2,000以下であることが好ましく、1,500以下であることが好ましい。
【0080】
この(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物の含有量は、アルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、40~300質量%であり、好ましくは50~100質量%である。また、これらの(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物は、単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
(IV)溶媒
本発明による組成物は溶媒を含んでなる。この溶媒は、前記したアルカリ可溶性樹脂、黒色着色剤、重合開始剤、および必要に応じて添加される添加剤を均一に溶解または分散させるものであれば特に限定されない。本発明に用いることができる溶媒の例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、PGMEA、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、乳酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類、γ-ブチロラクトンなどの環状エステル類などが挙げられる。これらのうち、入手容易性、取扱容易性、およびポリマーの溶解性などの観点から、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類またはエステル類と、アルキル基の炭素数4または5の直鎖または分岐鎖を有するアルコール類とを用いることが好ましい。塗布性、貯蔵安定性の観点から、アルコールの溶剤比が5~80%であることが好ましい。
【0082】
本発明による組成物の溶媒含有率は、組成物を塗布する方法などに応じて任意に調整できる。例えば、スプレーコートによって組成物を塗布する場合は、組成物のうちの溶媒の割合が90質量%以上とすることもできる。また、大型基板の塗布で使用されるスリット塗布では通常60質量%以上、好ましくは70質量%以上である。本発明の組成物の特性は、溶媒の量により大きく変わるものではない。
【0083】
本発明による組成物は、前記した(I)~(IV)を必須とするものであるが、必要に応じて更なる化合物を組み合わせることができる。これらの組み合わせることができる材料について説明すると以下の通りである。
【0084】
(V)糖
本発明による組成物は、糖をさらに含むことができる。糖は、単糖、オリゴ糖、多糖のいずれであってもよいが、好ましくはオリゴ糖である。ここで、本明細書においてオリゴ糖は、単糖が2~10分子脱水縮合して形成された糖をいうものであり、環状オリゴ糖(例えば、シクロデキストリン)も含むものである。これらの糖のうち、シクロデキストリンまたは単糖が2分子縮合した二糖が好ましく、より好ましくは単糖が2分子縮合した二糖である。また、糖は、好ましくは炭素数1~6のアルキレンオキシド、より好ましくは炭素数2~5のアルキレンオキシド、さらに好ましくはエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドが、付加されている。つまり、糖に含まれるヒドロキシ基(-OH)が、-(CxH2x-O-)y-Hに置き換えられていることが好ましい。ここで、xは2~6の整数、好ましくは2~5の整数、より好ましくは2または3であり、yは1~8の整数、より好ましくは2~5の整数である。
本発明者らの検討によれば、このような糖は、現像液中における溶解促進効果を有することがわかった。糖は、親水性および疎水性を有するので、組成物中の溶媒に溶解し、かつ、現像液にも溶解し、溶解促進効果を有するものと考えられる。このような効果は、本発明による組成物の現像が低濃度現像液で行われる場合に、特に有益である。
【0085】
本発明に用いられる糖の含有量は、アルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、1~80質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましく、30~50質量%であることがさらに好ましい。
【0086】
組成物全体にしめる(I)~(V)以外の成分の含有量は、組成物の総質量を基準として、30%以下が好ましく、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。
【0087】
(VI)その他の添加物
本発明による組成物は、必要に応じて、その他の添加剤を含んでもよい。
このような添加剤としては、現像液溶解促進剤、スカム除去剤、密着増強剤、重合阻害剤、消泡剤、界面活性剤、増感剤、架橋剤、硬化剤などが挙げられる。
【0088】
現像液溶解促進剤、またはスカム除去剤は、形成される被膜の現像液に対する溶解性を調整し、また現像後に基板上にスカムが残留するのを防止する作用を有するものである。このような添加剤として、クラウンエーテルを用いることができる。クラウンエーテルとして、最も単純な構造を有するものは、一般式(-CH2-CH2-O-)nで表されるものである。本発明において好ましいものは、これらのうち、nが4~7のものである。クラウンエーテルは、環を構成する原子総数をx、そのうちに含まれる酸素原子数をyとして、x-クラウン-y-エーテルと呼ばれることがある。本発明においては、x=12、15、18、または21、y=x/3であるクラウンエーテル、ならびにこれらのベンゾ縮合物およびシクロヘキシル縮合物からなる群から選択されるものが好ましい。より好ましいクラウンエーテルの具体例は、21-クラウン-7エーテル、18-クラウン-6-エーテル、15-クラウン-5-エーテル、12-クラウン-4-エーテル、ジベンゾ-21-クラウン-7-エーテル、ジベンゾ-18-クラウン-6-エーテル、ジベンゾ-15-クラウン-5-エーテル、ジベンゾ-12-クラウン-4-エーテル、ジシクロヘキシル-21-クラウン-7-エーテル、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6-エーテル、ジシクロヘキシル-15-クラウン-5-エーテル、およびジシクロヘキシル-12-クラウン-4-エーテルである。本発明においては、これらのうち、18-クラウン-6-エーテル、15-クラウン-5-エーテルから選択されるものが最も好ましい。その含有量はアルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、0.05~15質量%が好ましく、さらに0.1~10質量%が好ましい。
【0089】
密着増強剤は、本発明による組成物を用いて硬化膜を形成させたときに、焼成後にかかる応力によりパターンが剥がれることを防ぐ効果を有する。密着増強剤としては、イミダゾール類やシランカップリング剤などが好ましく、イミダゾール類では、2-ヒドロキシベンゾイミダゾール、2-ヒドロキシエチルベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2-ヒドロキシイミダゾール、イミダゾール、2-メルカプトイミダゾール、2-アミノイミダゾールが好ましく、2-ヒドロキシベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2-ヒドロキシイミダゾール、イミダゾールが特に好ましく用いられる。
【0090】
シランカップリング剤は、公知のものが好適に使用され、エポキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤等が例示され、具体的には、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が好ましい。これらは単独または複数を組み合わせて使用することができ、その添加量はアルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、0.05~15質量%とすることが好ましい。
【0091】
また、シランカップリング剤として、酸基を有するシラン化合物、シロキサン化合物などを用いることもできる。酸基としては、カルボキシル基、酸無水物基、フェノール性水酸基などが挙げられる。カルボキシル基やフェノール性水酸基のような一塩基酸基を含む場合には、単一のケイ素含有化合物が複数の酸基を有することが好ましい。
【0092】
このようなシランカップリング剤の具体例としては、式(C):
XnSi(OR3)4-n (C)
で表わされる化合物、もしくはそれを繰り返し単位とした重合体が挙げられる。このとき、XまたはR3が異なる繰り返し単位を複数組み合わせて用いることができる。
【0093】
式中、R3としては、炭化水素基、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基などのアルキル基が挙げられる。一般式(C)において、R3は複数含まれるが、それぞれのR3は、同じでも異なっていてもよい。
【0094】
Xとしては、ホスホニウム、ボレート、カルボキシル、フェノール、ペルオキシド、ニトロ、シアノ、スルホ、およびアルコール基等の酸基を持つもの、ならびに、これら酸基をアセチル、アリール、アミル、ベンジル、メトキシメチル、メシル、トリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、トリイソプロピルシリル、またはトリチル基等で保護されたもの、酸無水物基が挙げられる。
【0095】
これらのうち、R
3としてメチル基、Xとしてカルボン酸無水物基をもつもの、例えば酸無水物基含有シリコーンが好ましい。より具体的には下記式で表される化合物(X-12-967C(商品名、信越化学工業株式会社))や、それに相当する構造をシリコーン等のケイ素含有重合体の末端又は側鎖に含む重合体が好ましい。
【化14】
また、ジメチルシリコーンの末端部にチオール、ホスホニウム、ボレート、カルボキシル、フェノール、ペルオキシド、ニトロ、シアノ、およびスルホ基等の酸基を付与した化合物も好ましい。このような化合物としては下記式で表される化合物(X-22-2290ASおよびX-22-1821(いずれも商品名、信越化学工業株式会社))が挙げられる。
【化15】
【0096】
シランカップリング剤がシリコーン構造を含む場合、分子量が大きすぎると、組成物中に含まれるポリシロキサンとの相溶性が乏しくなり、現像液に対する溶解性が向上しない、膜内に反応性基が残り、後工程に耐えうる薬液耐性が保てない等の悪影響がある可能性がある。このため、シランカップリング剤の質量平均分子量は、5000以下であることが好ましく、4000以下であることがより好ましい。シランカップリング剤の含有量はアルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、0.01~15質量%とすることが好ましい。
【0097】
重合阻害剤としては、ニトロン、ニトロキシドラジカル、ヒドロキノン、カテコール、フェノチアジン、フェノキサジン、ヒンダードアミン及びこれらの誘導体の他、紫外線吸収剤を添加することが出来る。その中でもメチルヒドロキノン、カテコール、4-t-ブチルカテコール、3-メトキシカテコール、フェノチアジン、クロルプロマジン、フェノキサジン、ヒンダードアミンとして、TINUVIN 144、292、5100(BASF社)、紫外線吸収剤として、TINUVIN 326、328、384-2、400、477(BASF社)が好ましい。これらは単独または複数を組み合わせて使用することができ、その含有量はアルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、0.01~20質量%とすることが好ましい。
【0098】
消泡剤としては、アルコール(C1~18)、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、グリセリンモノラウリレート等の高級脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(PEG)(Mn200~10000)、ポリプロピレングリコール(PPG)(Mn200~10000)等のポリエーテル、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル等のシリコーン化合物、および下記に詳細を示す有機シロキサン系界面活性剤が挙げられる。これらは単独または複数を組み合わせて使用することができ、その含有量はアルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、0.1~3質量%とすることが好ましい。
【0099】
また、本発明による組成物には、必要に応じ界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、塗布特性、現像性等の向上を目的として添加される。本発明で使用することのできる界面活性剤としては、例えば非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0100】
非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類やポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンポリオキシピロピレンブロックポリマー、アセチレンアルコール、アセチレングリコール、アセチレンアルコールのポリエトキシレート、アセチレングリコールのポリエトキシレートなどのアセチレングリコール誘導体、フッ素含有界面活性剤、例えばフロラード(商品名、住友スリーエム株式会社)、メガファック(商品名、DIC株式会社)、スルフロン(商品名、旭硝子株式会社)、または有機シロキサン界面活性剤、例えばKP341(商品名、信越化学工業株式会社)などが挙げられる。前記アセチレングリコールとしては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0101】
またアニオン系界面活性剤としては、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキル硫酸のアンモニウム塩または有機アミン塩などが挙げられる。
【0102】
さらに両性界面活性剤としては、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリル酸アミドプロピルヒドロキシスルホンベタインなどが挙げられる。
【0103】
これら界面活性剤は、単独でまたは2種以上混合して使用することができ、その含有量は、組成物の総質量を基準として、好ましくは0.005~1質量%、より好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0104】
また、本発明による組成物には、必要に応じ増感剤を添加することができる。
本発明による組成物で好ましく用いられる増感剤としては、クマリン、ケトクマリンおよびそれらの誘導体、チオピリリウム塩、アセトフェノン類等、具体的には、p-ビス(o-メチルスチリル)ベンゼン、7-ジメチルアミノ-4-メチルキノロン-2、7-アミノ-4-メチルクマリン、4,6-ジメチル-7-エチルアミノクマリン、2-(p-ジメチルアミノスチリル)-ピリジルメチルヨージド、7-ジエチルアミノクマリン、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン、2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-8-メチルキノリジノ-<9,9a,1-gh>クマリン、7-ジエチルアミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、7-ジメチルアミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロキノリジノ-<9,9a,1-gh>クマリン、7-エチルアミノ-6-メチル-4-トリフルオロメチルクマリン、7-エチルアミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-9-カルボエトキシキノリジノ-<9,9a,1-gh>クマリン、3-(2’-N-メチルベンズイミダゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン、N-メチル-4-トリフルオロメチルピペリジノ-<3,2-g>クマリン、2-(p-ジメチルアミノスチリル)-ベンゾチアゾリルエチルヨージド、3-(2’-ベンズイミダゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン、3-(2’-ベンゾチアゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン、並びに下記化学式で表されるピリリウム塩およびチオピリリウム塩などの増感色素が挙げられる。増感色素の添加により、高圧水銀灯(360~430nm)などの安価な光源を用いたパターニングが可能となる。その含有量はアルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、好ましくは0.05~15質量%であり、より好ましくは0.1~10質量%である。
【化16】
【0105】
また、増感剤として、アントラセン骨格含有化合物を用いることもできる。具体的には、下記式で表される化合物が挙げられる。
【化17】
式中、R
31はそれぞれ独立にアルキル基、アラルキル基、アリル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、およびハロゲン化アルキル基からなる群から選択される置換基を示し、
R
32はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、およびカルボアルコキシ基からなる群から選択される置換基を示し、
kはそれぞれ独立に0、1~4から選ばれる整数である。
【0106】
このようなアントラセン骨格を有する増感剤を使用する場合、その含有量はアルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、好ましくは0.01~5質量%である。
【0107】
<硬化膜の形成方法>
本発明による硬化膜の形成方法は、前記した組成物を基板に塗布して塗膜を形成させ、塗膜を露光し、現像することを含んでなるものである。硬化膜の形成方法を工程順に説明すると以下の通りである。
【0108】
(1)塗布工程
まず、前記した組成物を基板に塗布する。本発明における組成物の塗膜の形成は、感光性組成物の塗布方法として従来知られた任意の方法により行うことができる。具体的には、浸漬塗布、ロールコート、バーコート、刷毛塗り、スプレーコート、ドクターコート、フローコート、スピンコート、およびスリット塗布等から任意に選択することができる。また組成物を塗布する基材としては、シリコン基板、ガラス基板、樹脂フィルム等の適当な基材を用いることができる。これらの基材には、必要に応じて各種の半導体素子などが形成されていてもよい。基材がフィルムである場合には、グラビア塗布も利用可能である。所望により塗膜後に乾燥工程を別に設けることもできる。また、必要に応じて塗布工程を1回または2回以上繰り返して、形成される塗膜の膜厚を所望のものとすることができる。
【0109】
(2)プリベーク工程
組成物を塗布することにより、塗膜を形成させた後、その塗膜を乾燥させ、且つ塗膜中の溶媒残存量を減少させるため、その塗膜をプリベーク(前加熱処理)することが好ましい。プリベーク工程は、一般に50~150℃、好ましくは90~120℃の温度で、ホットプレートによる場合には10~300秒間、好ましくは30~120秒間、クリーンオーブンによる場合には1~30分間実施することができる。
【0110】
(3)露光工程
塗膜を形成させた後、その塗膜表面に光照射を行う。光照射に用いる光源は、パターン形成方法に従来使用されている任意のものを用いることができる。このような光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライド、キセノン等のランプやレーザーダイオード、LED等を挙げることができる。照射光としてはg線、h線、i線などの紫外線が通常用いられる。半導体のような超微細加工を除き、数μmから数十μmのパターニングでは360~430nmの光(高圧水銀灯)を使用することが一般的である。照射光のエネルギーは、光源や塗膜の膜厚にもよるが、一般に5~2000mJ/cm2、好ましくは10~1000mJ/cm2とする。照射光エネルギーが10mJ/cm2よりも低いと十分な解像度が得られないことがあり、反対に2000mJ/cm2よりも高いと、露光過多となり、ハレーションの発生を招く場合がある。
【0111】
光をパターン状に照射するためには一般的なフォトマスクを使用することができる。そのようなフォトマスクは周知のものから任意に選択することができる。照射の際の環境は、特に限定されないが、一般に周囲雰囲気(大気中)や窒素雰囲気とすればよい。また、基板表面全面に膜を形成する場合には、基板表面全面に光照射すればよい。本発明においては、パターン膜とは、このような基板表面全面に膜が形成された場合をも含むものである。
【0112】
(4)露光後加熱工程
露光後、重合開始剤により膜内のポリマー間反応を促進させるため、必要に応じて露光後加熱(Post Exposure Baking)を行うことができる。この加熱処理は、後述する加熱工程(6)とは異なり、塗膜を完全に硬化させるために行うものではなく、現像後に所望のパターンだけが基板上に残し、それ以外の部分が現像により除去することが可能となるように行うものである。したがって、本願発明において必須ではない。
【0113】
露光後加熱を行う場合、ホットプレート、オーブン、またはファーネス等を使用することができる。加熱温度は光照射によって発生した露光領域の酸、塩基またはラジカルが未露光領域まで拡散することは好ましくないため、過度に高くするべきではない。このような観点から露光後の加熱温度の範囲としては、40℃~150℃が好ましく、60℃~120℃が更に好ましい。組成物の硬化速度を制御するため、必要に応じて、段階的加熱を適用することもできる。また、加熱の際の雰囲気は特に限定されないが、組成物の硬化速度を制御することを目的として、窒素などの不活性ガス中、真空下、減圧下、酸素ガス中などから選択することができる。また、加熱時間は、ウエハ面内の温度履歴の均一性がより高く維持するために一定以上であることが好ましく、また発生した酸、塩基またはラジカルの拡散を抑制するためには過度に長くないことが好ましい。このような観点から、加熱時間は20秒~500秒が好ましく、40秒~300秒がさらに好ましい。
【0114】
(5)現像工程
露光後、必要に応じて露光後加熱を行ったあと、塗膜を現像処理する。現像の際に用いられる現像液としては、従来、感光性組成物の現像に用いられている任意の現像液を用いることができる。好ましい現像液としては、水酸化テトラアルキルアンモニウム、コリン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属メタ珪酸塩(水和物)、アルカリ金属燐酸塩(水和物)、炭酸ナトリウム水溶液、アンモニア、アルキルアミン、アルカノールアミン、複素環式アミンなどのアルカリ性化合物の水溶液であるアルカリ現像液が挙げられ、特に好ましいアルカリ現像液は、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、または水酸化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液である。これらアルカリ現像液には、必要に応じ更にメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶剤、あるいは界面活性剤が含まれていてもよい。本発明においては、通常現像液として用いられる2.38質量%TMAH現像液よりも低濃度の現像液を用いて現像することができる。そのような現像液としては、例えば、0.05~1.5質量%TMAH水溶液、0.1~2.5質量%炭酸ナトリウム水溶液、0.01~1.5質量%水酸化カリウム水溶液などが挙げられる。現像時間は、通常10~300秒であり、好ましくは30~180秒である。
現像方法も従来知られている方法から任意に選択することができる。具体的には、現像液への浸漬(ディップ)、パドル、シャワー、スリット、キャップコート、スプレーなどの方法挙げられる。この現像によって、パターンを得ることができる、現像液により現像が行われた後には、水洗がなされることが好ましい。
【0115】
(6)加熱工程
現像後、得られたパターン膜を加熱することにより硬化させる。加熱工程に使う加熱装置には、前記した露光後加熱に用いたものと同じものを用いることができる。この加熱工程における加熱温度としては、塗膜の硬化が行える温度であれば特に限定されず、任意に定めることができる。ただし、ポリシロキサンのシラノール基が残存すると、硬化膜の薬品耐性が不十分となったり、硬化膜の誘電率が高くなることがある。このような観点から加熱温度は一般的には相対的に高い温度が選択される。しかしながら、本発明による組成物は相対的に低温での硬化が可能である。具体的には350℃以下で加熱することで硬化させることが好ましく、硬化後の残膜率を高く保つために、硬化温度は300℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることが特に好ましい。一方で、硬化反応を促進し、十分な硬化膜を得るために、硬化温度は70℃以上であることが好ましく、100℃以上がより好ましい。また、加熱時間は特に限定されず、一般に10分~24時間、好ましくは30分~3時間とされる。なお、この加熱時間は、パターン膜の温度が所望の加熱温度に達してからの時間である。通常、加熱前の温度からパターン膜が所望の温度に達するまでには数分から数時間程度要する。
【0116】
こうして得られた硬化膜は、優れた透明性を達成することができる。例えば100℃で硬化させた膜の光透過率は95%以上であり比誘電率も4以下を達成することができる。また、低濃度の現像液で現像可能なため、環境性に優れる。フラットパネルディスプレー(FPD)など、前記したような各種素子の平坦化膜、低温ポリシリコン用層間絶縁膜あるいはICチップ用バッファーコート膜、透明保護膜などとして多方面で好適に利用することができる。
【0117】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例、比較例により何ら限定されるものではない。
【0118】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、HLC-8220GPC型高速GPCシステム(商品名、東ソー株式会社)およびSuper Multipore HZ-N型GPCカラム(商品名、東ソー株式会社)2本を用いて測定した。測定は、単分散ポリスチレンを標準試料とし、テトラヒドロフランを展開溶媒として、流量0.6ミリリットル/分、カラム温度40℃の分析条件で行った。
【0119】
<合成例1:ポリシロキサンAの合成>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、25質量%TMAH水溶液36.7g、IPA600ml、水3.0gを仕込み、次いで滴下ロートにメチルトリメトキシシラン17g、フェニルトリメトキシシラン29.7g、テトラメトキシシラン7.6gおよび3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン43.4gの混合溶液を調製した。その混合溶液を40℃にて滴下し、同温で2時間撹拌した後、10%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン400ml、水600mlを添加し、2層に分離させ、水層を除去した。さらに300mlの水にて3回洗浄し、得られた有機層を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度30質量%なるようにPGMEAを添加調整し、ポリシロキサン溶液を得た。この段階で得られたポリシロキサンのMw=3722であった。
撹拌機、温度計、冷却管を備えた100mLのフラスコに、ポリシロキサン溶液を14.7g、メタクリル酸を0.35g、アザビスイソブチロニトリルを0.63g仕込み、80℃にて4時間撹拌し、ポリシロキサンA溶液を得た。得られたポリシロキサンAのMw=5,966であった。
【0120】
<合成例2:アクリルポリマーAの合成>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた2Lセパラブルフラスコに、500gのPGMEAを加え、95℃に昇温後、160gのメタクリル酸、100gのメチルメタクリレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーブチルO;日油株式会社)16.6gを3時間かけて滴下した。滴下後4時間室温にて攪拌させ、ポリマー溶液を合成した。このポリマー溶液に、160gの3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート160g、トリフェニルホスフィンを1.5g、1.0gのメチルハイドロキノンを加えて、窒素雰囲気下110℃で6時間反応させた。反応後、固形分が35重量%になるように、PGMEAを用いて希釈し、Mw11,000のアクリルポリマーAを得た。
【0121】
<合成例3:アクリルポリマーBの合成>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社、「YDF2001(商品名)」、500g、アクリル酸80g、メチルヒドロキノン0.5g、カルビトールアセテート150gを混合し、90℃に加熱、撹拌した。次いで、60℃に冷却した後、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド2gを混合し、110℃に加熱して反応させた。次いで、テトラヒドロ無水フタル酸230gとカルビトールアセテート85gとを混合し、80℃に加熱し、6時間撹拌して反応混合物を得た。得られたアクリルポリマーBのMw=12,300であった。
【0122】
<実施例1>
合成例1で得られたポリシロキサンAを100質量部含む溶液に、重合開始剤としてBASF社「Irgacure OXE-02」を3.0質量部、(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社「A-DPH」)を50質量部、界面活性剤として「AKS-10」(信越化学工業株式会社)を0.01質量部加え、PGMEAを加えて35%の溶液に調製し、実施例1の組成物を得た。
【0123】
<実施例2~8、比較例1~5>
実施例1に対して、表1および2に示す通りに組成を変更した組成物を調製した。
【表1】
【表2】
表中、
アクリルポリマーA:「RN-081F」(ナトコ株式会社)
化合物A:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社「A-DPH」)。
化合物B:ポリエチレングリコール#600ジアクリレート(新中村化学工業株式会社「A-600」)。
化合物C:エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(新中村化学工業株式会社「A-9300」)。
糖A:スクロースのエチレンオキサイド付加物
界面活性剤A:「AKS-10」(信越化学工業株式会社)。
【0124】
(2μmまたは10μmでのパターン形成)
得られた各組成物を、スピンコートにてシリコンウエハ上に塗布し、塗布後ホットプレート上100℃で90秒間プリベークし、2μmまたは10μmの平均膜厚になるように調整した。i線露光機を用いて露光し、0.025質量%KOHを用いて、現像し、30秒間純水によるリンスを行った。その結果、10μmのコンタクトホール(C/H)パターンが形成されいるか否かを確認した。得られた結果は、表1および表2に記載のとおりである。全ての実施例でパターンが形成されている(OK)ことが確認されたが、全ての比較例で、パターンが抜けなかった(NG)。
【0125】
(透過率)
平均膜厚2μmとなるよう調製した硬化膜の波長400nmにおける透過率%を株式会社島津製作所製MultiSpec-1500により測定した。得られた結果は表1および2に記載のとおりである。
【0126】
(パターン形状)
得られた各組成物を、スピンコートにてシリコンウエハ上に塗布し、塗布後ホットプレート上100℃で90秒間プリベークし、10μmの平均膜厚となるように調整した。i線露光機を用いて露光し、現像液として、0.1質量%KOHまたは0.01%KOHを用いて、10μmのコンタクトホールのパターンサイズを形成したときのパターンをSEMにより断面観察して比較し、以下のように評価した。得られた結果は表1および2に記載のとおりである。
A:ホール部分とパターン部分ともに、残渣が確認されなかった
B:ホール部分に残渣は確認されなかったが、パターン部分の壁部に残渣がわずかに確認された、
C:ホール部分は半分以上は溶解したが、残渣が確認され、パターンが形成されていなかった
D:ホール部分が半分以上溶け残っていた
【0127】
(解像度)
上記の平均膜厚10μmとなるように調製し、現像液として0.1質量%KOHまたは0.01質量%KOHを用いたときの、光学顕微鏡(MX61A-F、OLYMPUS社)でコンタクトホールが形成されている最小のマスクサイズを解像度とした。得られた結果は表1のとおりである。