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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】封止フィルム
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20221219BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221219BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20221219BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20221219BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H05B33/04
H05B33/14 A
H05B33/10
B32B7/027
B32B15/04 Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021512265
(86)(22)【出願日】2019-09-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 KR2019011320
(87)【国際公開番号】W WO2020050586
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-03-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0104550
(32)【優先日】2018-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スン・ナム・ムン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ボン・モク
(72)【発明者】
【氏名】セ・ウ・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ウォン・チェ
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-506441(JP,A)
【文献】国際公開第2011/136262(WO,A1)
【文献】特開2014-167895(JP,A)
【文献】特表2016-521909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
H01L 51/50
H05B 33/10
B32B 7/027
B32B 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機電子素子を封止する封止層及び前記封止層上に形成される少なくとも2層以上のメタル層を含み、
ISO 22007-2によって測定した水平方向熱抵抗が800K/W以下であり、
前記メタル層は、前記封止層上に形成される第1層、及び前記第1層上に形成され、前記第1層と異なる成分を有する第2層を含み、前記第1層の厚さは18μm以上であり、前記第2層の線膨脹係数が3ppm/℃以下であることを特徴とする、有機電子素子の封止フィルム。
【請求項2】
前記メタル層は、50~800W/m・Kの熱伝導度を有することを特徴とする、請求項1に記載の有機電子素子の封止フィルム。
【請求項3】
前記メタル層は、線膨脹係数が20ppm/℃以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の有機電子素子の封止フィルム。
【請求項4】
前記第2層に対する前記第1層の厚さ割合が0.85~4.3の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の有機電子素子の封止フィルム。
【請求項5】
前記第1層の厚さは、25μm~3,500μmの範囲内であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の有機電子素子の封止フィルム。
【請求項6】
前記第2層の厚さは、10μm~2,500μmの範囲内であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の有機電子素子の封止フィルム。
【請求項7】
前記2層以上のメタル層は、粘着剤又は接着剤により付着されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の有機電子素子の封止フィルム。
【請求項8】
前記2層以上のメタル層は、互いに直接付着されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の有機電子素子の封止フィルム。
【請求項9】
前記封止層は、2以上の多層に形成されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の有機電子素子の封止フィルム。
【請求項10】
前記封止層が2以上の層に形成されており、前記メタル層のうち少なくとも一つの層が前記2以上の封止層の間に存在することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の有機電子素子の封止フィルム。
【請求項11】
前記メタル層は、金属、酸化金属、窒化金属、炭化金属、オキシ窒化金属、オキシホウ化金属及びその配合物のうちいずれか一つを含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の有機電子素子の封止フィルム。
【請求項12】
ISO 22007-2によって測定した水平方向熱抵抗が3~750K/Wであることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の有機電子素子の封止フィルム。
【請求項13】
前記封止層は、封止樹脂及び水分吸着剤を含むことを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の有機電子素子の封止フィルム。
【請求項14】
前記封止樹脂は、硬化性樹脂又は架橋可能な樹脂を含むことを特徴とする、請求項13に記載の有機電子素子の封止フィルム。
【請求項15】
前記水分吸着剤は、化学反応性吸着剤を含むことを特徴とする、請求項13または14に記載の有機電子素子の封止フィルム。
【請求項16】
前記封止層が基板上に形成された有機電子素子の全面を密封することを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の有機電子素子の封止フィルム。
【請求項17】
前記メタル層上に形成される保護層をさらに含むことを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の有機電子素子の封止フィルム。
【請求項18】
基板;前記基板上に形成された有機電子素子;及び前記有機電子素子の全面を封止する請求項1から17のいずれか一項に記載の封止フィルムを含むことを特徴とする、有機電子装置。
【請求項19】
上部に有機電子素子が形成された基板に請求項1から17のいずれか一項に記載の封止フィルムが前記有機電子素子をカバーするように適用するステップを含むことを特徴とする、有機電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
【0002】
本出願は、2018年9月3日に出願された大韓民国特許出願第10-2018-0104550号に基づく優先権の利益を主張し、当該大韓民国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0003】
技術分野
【0004】
本発明は、封止フィルム、それを含む有機電子装置及びこれを用いた有機電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0005】
有機電子装置(OED;organic electronic device)は、正孔及び電子を用いて電荷の交流を発生する有機材料層を含む装置を意味し、その例としては、光電池装置(photovoltaic device)、整流器(rectifier)、トランスミッター(transmitter)及び有機発光ダイオード(OLED;organic light emitting diode)などが挙げられる。
【0006】
前記有機電子装置のうち有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)は、既存の光源に比べて電力消費量が少なく、応答速度が速く、表示装置又は照明の薄型化に有利である。また、OLEDは、空間活用性に優れ、各種携帯用機器、モニター、ノートパソコン及びTVにわたる多様な分野において適用されるものと期待されている。
【0007】
OLEDの商用化及び用途の拡大において、最も主要な問題点は耐久性の問題である。OLEDに含まれる有機材料及び金属電極などは水分などの外部的要因によって非常に容易に酸化され得、また、OLEDパネルの駆動時に発生する熱を円滑に放出しない場合、温度上昇による素子の劣化が問題になり、高温作用時にパネル曲がりが問題になる。これによって、OLEDなどの有機電子装置に対する外部からの酸素又は水分などの浸透を効果的に遮断すると共にOLEDから発生する熱を効果的に放出でき、パネル曲がりを防止する多様な方法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、外部から有機電子装置に流入する水分又は酸素を遮断できる構造の形成が可能であり、有機電子装置の内部に蓄積される熱を効果的に放出させ、高温、高湿など苛酷条件での耐熱耐久性を維持することができる封止フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、封止フィルムに関する。前記封止フィルムは、例えば、OLEDなどの有機電子装置を封止又はカプセル化することに適用され得る。
【0010】
本明細書で用語「有機電子装置」は、互いに対向する一対の電極の間に正孔及び電子を用いて電荷の交流を発生する有機材料層を含む構造を有する物品又は装置を意味し、その例としては、光電池装置、整流器、トランスミッター及び有機発光ダイオード(OLED)などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。本発明の一つの例示で、前記有機電子装置はOLEDであってもよい。
【0011】
例示的な有機電子素子の封止フィルム10は、図1に示したように、有機電子素子を封止する封止層11及び少なくとも2層以上のメタル層12、13を含む。前記メタル層は、前記封止層上に存在することができるが、これに限定されるものではない。本発明の封止フィルムは、ISO 22007-2によって測定した水平方向熱抵抗が800K/W以下であってもよい。前記水平方向熱抵抗の下限値は、特別に制限されないが、例えば、3K/W、5K/W、8K/W、10K/W又は15K/W以上であってもよい。また、前記水平方向熱抵抗の上限値は、750K/W以下、700K/W以下、600K/W以下、500K/W以下、450K/W以下、400K/W以下、350K/W以下、300K/W以下、250K/W以下、200K/W以下、180K/W以下、130K/W以下、100K/W以下、80K/W以下又は50K/W以下であってもよい。前記水平方向熱抵抗は、多層構造の封止フィルムでメタル層が存在する方向から測定でき、単位水平面積(1m × 1m)に対して測定したものであってもよい。前記水平方向熱抵抗は、ISO 22007-2によって熱伝導度を測定した後、フィルムの形状情報(例えば、厚さ)を用いて熱抵抗を計算することができ、これは当業界の公知の方法で計算できる。本発明は、封止フィルムの水平方向熱抵抗を前記範囲に調節することで、放熱効果を極大化すると共に水分遮断性及び高温高湿など苛酷環境でパネル曲がりの不良を防止して信頼性を具現することができる。
【0012】
本明細書で用語「メタル層」は、多層構造の全体メタル層を意味することができ、前記メタル層を構成する多層は、後述する第1層及び第2層と指称され得る。
【0013】
本明細書で規定する水平方向熱抵抗(Thermal Resistance)は、熱コンダクタンス(Thermal Conductance)の逆数であり、単位は、K(ケルビン)/W(ワット)又は℃/Wである。前記熱コンダクタンスは、物体に流れる単位面積当たり、単位時間当りの熱量とその物体の両表面の温度差との割合、すなわち、熱伝導度を熱伝達方向の長さで割った値を意味する。
【0014】
本発明の具体例で、前記メタル層は、第1層及び第2層を含むことができる。例えば、前記メタル層は、第1層及び第2層で構成される2層構造のメタル層であってもよく、第1層が2以上含まれるか第2層が2以上含まれて3層以上の構造であってもよい。一つの例示で、前記メタル層は、封止層上に形成される第1層、及び前記第1層上に形成され、前記第1層と異なる成分を有する第2層を含むことができる。多層構造のメタル層のうち前記第1層は、封止層と接するように配置され得(必ず接しなくても封止層に向くように)、前記第1層上に第2層(例えば、第1層/第2層又は第1層/第2層/第1層などで例示され得る)又は第1層(例えば、第1層/第1層/第2層などで例示され得る)が追加で配置され得る。本発明は、前記構造及び積層手順を調節することで、放熱性能と高温高湿の耐久信頼性をともに具現できるようにする。
【0015】
前記メタル層は、50~800W/m・Kの熱伝導度を有することができる。上記で封止層は、基板上に形成された有機電子素子の全面を密封することができる。本発明は、前記構造の封止フィルムを提供することで、水分遮断特性と共に有機電子装置の内部に蓄積される熱を効果的に放出することができ、有機電子装置から発生する劣化による残像(burn-in)を防止することができる。
【0016】
一つの例示で、本発明の封止フィルムは、メタル層及び封止層を一体に提供する。従来には、有機電子素子上に封止層を先に適用し、その後にメタル層を別に適用する場合があるが、本発明は、前記メタル層及び封止層が一体に含まれた封止フィルムを有機電子素子上に適用することができる。前記一体型封止フィルムは、工程の便宜をはかり、多層構造でのアライメント誤差を最小化することで、信頼性が高い封止構造を具現することができる。
【0017】
一つの例示で、前記メタル層は、例えば、50~800W/m・Kの熱伝導度を有することができる。前記熱伝導度は、例えば、50W/m・K以上、80W/m・K以上、90W/m・K以上、100W/m・K以上、110W/m・K以上、120W/m・K以上、130W/m・K以上、140W/m・K以上、150W/m・K以上、200W/m・K以上又は210W/m・K以上であってもよい。前記熱伝導度の上限は特に限定されず、800W/m・K以下又は700W/m・K以下であってもよい。また、前記メタル層は、線膨脹係数が20ppm/℃以下、18ppm/℃以下、15ppm/℃以下、13ppm/℃以下、9ppm/℃以下、5ppm/℃以下又は3ppm/℃以下の範囲内であってもよい。前記線膨脹係数の下限は特に限定されないが、0ppm/℃以上又は0.1ppm/℃以上であってもよい。本発明は、封止フィルムが少なくとも2層以上のメタル層を含むことで、放熱効果とともに高温での耐久信頼性をともに具現することができる。
【0018】
本発明の具体例で、上述したようにメタル層は、第1層及び第2層を含むことができ、前記第2層を構成する成分は、第1層を構成する成分と互いに異なっていてもよい。前記第2層を構成する成分は、第1層を構成する成分より熱伝導度が一層低くてもよく、前記第1層を構成する成分は、第2層を構成する成分より線膨脹係数が一層高くてもよいが、これに限定されるものではない。
【0019】
メタル層の第1層を構成する成分は、その熱伝導度が50W/m・K以上、80W/m・K以上、90W/m・K以上、100W/m・K以上、110W/m・K以上、120W/m・K以上、130W/m・K以上、140W/m・K以上、150W/m・K以上、200W/m・K以上又は210W/m・K以上であってもよい。前記熱伝導度の上限は特に限定されず、800W/m・K以下又は700W/m・K以下であってもよい。上記のように、メタル層が高い熱伝導度を有することで、メタル層の接合工程時に接合界面から発生した熱をよりはやく放出させ得る。また、高い熱伝導度は、有機電子装置の動作中に蓄積される熱を迅速に外部に放出させ、これによって、有機電子装置自体の温度は一層低く維持させ得、クラック及び欠陥発生は減少する。前記熱伝導度は、0~30℃の温度範囲のうちいずれか一つの温度で測定したものであってもよい。
【0020】
本明細書で用語「熱伝導度」とは、物質が伝導により熱を伝達することができる能力を示す程度であり、単位は、W/m・Kで示すことができる。前記単位は、同じ温度と距離で物質が熱伝逹する程度を示したものであって、距離の単位(メートル)と温度の単位(ケルビン)に対する熱の単位(ワット)を意味する。本明細書で前記熱伝導度は、ASTM E1461又はISO 22007-2によって測定したときの熱伝導度を意味することができる。前記熱伝導度は、ASTM E1461によって測定された熱拡散率(Thermal diffusivity)と既に知られている比熱値を用いて計算することができる。
【0021】
一つの例示で、本発明の封止フィルムは、上述した熱伝導度範囲を有する第1層成分だけではなく、第1層成分に比べて熱伝導度が低いが、線膨脹係数は一層高い第2層成分を含むことができる。本発明は、上記のように少なくとも2層以上のメタル層を含むことで、熱伝導度だけではなく有機電子素子の封止用に適用されるにおいて要求される物性の具現が可能である。例えば、前記第2層成分は、線膨脹係数が20ppm/℃以下、18ppm/℃以下、15ppm/℃以下、13ppm/℃以下、9ppm/℃以下、5ppm/℃以下又は3ppm/℃以下の範囲内であってもよい。前記線膨脹係数の下限は特に限定されないが、0ppm/℃以上又は0.1ppm/℃以上であってもよい。本発明は、前記第2層成分の線膨脹係数を含むことで、高温で駆動されるパネル内で前記フィルムの寸法安定性及び耐久信頼性を具現することができる。前記線膨脹係数は、ASTM E831による規格によって測定することができる。
【0022】
本発明の具体例で、前記封止フィルム内で前記第2層に対する第1層の厚さ割合(第1層厚さ/第2層厚さ)は、0.85~40の範囲内であってもよい。前記厚さ割合の下限は特に制限されないが、0.9、1.0、1.1、1.3、1.5、1.8、2.3、2.8、3.3又は3.8であってもよい。また、前記厚さ割合の上限は特に制限されないが、4.3、4.2、4.1又は4.0であってもよい。また、本発明の具体例で、第1層の厚さは、2μm~3,500μmの範囲内であってもよい。前記第1層の厚さの下限は、4μm、6μm、10μm、25μm、35μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、100μm、110μm、200μm、500μm、1,000μm、1,500μm、2,000μm、2,500μm又は2,800μmであってもよく、前記第1層の厚さの上限は、3,300μm、3,100μm、2,900μm、2,600μm、2,100μm、1,800μm、1,200μm、800μm、400μm又は90μmであってもよい。また、第2層の厚さは、10μm~2,500μmの範囲内であってもよい。前記第2層の厚さの下限は、18μm、25μm、33μm、43μm、50μm、55μm、60μm、70μm、100μm、500μm、1,000μm、1,500μm又は2,000μmであってもよく、前記第2層の厚さの上限は、2,300μm、1,800μm、1,300μm、800μm、400μm又は90μmであってもよい。本発明は、前記二つの層の厚さを調節することで、有機電子素子の封止に適用されるフィルムで有機電子装置に蓄積される熱を効率的に放出すると共にフィルムの寸法安定性などの耐久信頼性をともに向上させ得る。
【0023】
本発明の具体例で、前記封止フィルムのメタル層は、透明であってもよく、不透明であってもよい。前記多層構造のメタル層の総厚さは、3μm~6,000μm、10μm~5,000μm、20μm~4,000μm、30μm~2,000μm又は40μm~1,000μmの範囲内であってもよい。本発明は、前記メタル層の厚さを制御することで、放熱効果が十分に具現される薄膜の封止フィルムを提供することができる。前記メタル層は、薄膜のメタルホイル(Metal foil)又は高分子基材層にメタルが蒸着されていてもよい。前記メタル層は、上述した熱伝導度あるいは線膨脹係数を満足し、金属を含む素材であれば、特に制限されない。メタル層は、金属、酸化金属、窒化金属、炭化金属、オキシ窒化金属、オキシホウ化金属及びその配合物のうちいずれか一つを含むことができる。例えば、メタル層は、一つの金属に1以上の金属元素又は非金属元素が添加された合金を含むことができ、例えば、インバー(Invar)、ステンレススチール(SUS)、鉄と炭素の合金(炭素鋼、mild steel)を含むことができる。前記鉄と炭素の合金は、炭素含有量が普通0.02~2wt%範囲の鋼、また少量のケイ素、マンガン、リン、硫黄などを含むことができる。また、一つの例示で、メタル層は、鉄、クロム、銅、アルミニウムニッケル、酸化鉄、酸化クロム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ及びこれらの配合物を含むことができる。メタル層は、電解、圧延、加熱蒸発、電子ビーム蒸発、スパッタリング、反応性スパッタリング、化学気相蒸着、プラズマ化学気相蒸着又は電子サイクロトロン共鳴ソースプラズマ化学気相蒸着手段により蒸着され得る。本発明の一実施例で、メタル層は、反応性スパッタリングにより蒸着され得る。
【0024】
本発明の具体例で、封止フィルムを構成する2層以上のメタル層は、粘着剤又は接着剤により付着されていてもよい。前記2層以上のメタル層は、粘着剤又は接着剤を媒介に積層されていてもよく、前記粘着剤又は接着剤の素材は、特に制限されず、公知の材料を用いることができる。一つの例示で、前記粘着剤又は接着剤は、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、シリコーン系又はゴム系粘着剤又は接着剤であってもよい。また、一具体例で、前記粘着剤又は接着剤の素材は、後述する封止層の素材と同一であるか、異なっていてもよい。
【0025】
また、封止フィルムを構成する2層以上のメタル層は、互いに直接付着されていてもよい。本明細書で「直接付着される」という意味は、二つの層の間に他の層が存在せず、二つの層が互いに接触して付着されていることを意味することができる。前記2層以上のメタル層を直接付着させる方法は、当業界の公知の方法を用いることができる。一つの例示で、本発明は、メタル層の一層に他の一層を直接溶接、圧延、鋳造、圧出などの方法によって二つのメタル層を貼り合わせることができる。また、本発明は、上記に限定されるものではなく、前記メタル層一層に他のメタル層素材を蒸着させる方法も可能である。
【0026】
本発明の具体例で、前記封止層は、単一層又は2以上の層に形成されていてもよく、前記封止層が2以上の層である場合、前記メタル層のうち少なくとも一層が前記2以上の封止層の間に存在する場合がある。例えば、上述した第1層が2以上の封止層の間に存在することができ、この場合、封止フィルムは、第2層、封止層、第1層及び封止層の積層順を有することができる。
【0027】
一つの例示で、前記メタル層のうち少なくとも一層は、磁性を有することができる。メタル層のうち少なくとも一層が磁性を有することで、磁力による工程が可能であり、これによって、工程効率を一層高めることができる。本発明で、前記メタル層のうち第2層が磁性を有することができるが、これに限定されるものではない。
【0028】
本発明の具体例で、上述したように、封止層は、単一層あるいは2以上の多層構造であってもよい。2以上の層が封止層を構成する場合、前記封止層の各層の組成は、同一であるか、異なっていてもよい。一つの例示で、前記封止層は、粘着剤組成物又は接着剤組成物を含む粘着剤層又は接着剤層であってもよい。
【0029】
本発明の具体例で、封止層は、封止樹脂を含むことができる。前記封止樹脂は、架橋可能な樹脂又は硬化性樹脂を含むことができる。
【0030】
一つの例示で、前記封止樹脂は、ガラス転移温度が0℃未満、-10℃未満又は-30℃未満、-50℃未満又は-60℃未満であってもよく、下限は、例えば、200℃であってもよい。上記で「ガラス転移温度」とは、硬化後のガラス転移温度であってもよく、一具体例で、照射量約1J/cm以上の紫外線を照射した後のガラス転移温度;又は紫外線の照射後に熱硬化を追加で進行した後のガラス転移温度を意味することができる。
【0031】
一つの例示で、前記封止樹脂は、スチレン系樹脂又はエラストマー、ポリオレフィン系樹脂又はエラストマー、その他エラストマー、ポリオキシアルキレン系樹脂又はエラストマー、ポリエステル系樹脂又はエラストマー、ポリ塩化ビニル系樹脂又はエラストマー、ポリカーボネート系樹脂又はエラストマー、ポリフェニレンスルフィド系樹脂又はエラストマー、炭化水素の混合物、ポリアミド系樹脂又はエラストマー、アクリレート系樹脂又はエラストマー、エポキシ系樹脂又はエラストマー、シリコーン系樹脂又はエラストマー、フッ素系樹脂又はエラストマー又はこれらの混合物などを含むことができる。
【0032】
上記でスチレン系樹脂又はエラストマーとしては、例えば、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリレートブロック共重合体(ASA)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン系単独重合体又はこれらの混合物が例示され得る。前記オレフィン系樹脂又はエラストマーとしては、例えば、高密度ポリエチレン系樹脂又はエラストマー、低密度ポリエチレン系樹脂又はエラストマー、ポリプロピレン系樹脂又はエラストマー又はこれらの混合物が例示され得る。前記エラストマーとしては、例えば、エステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系エラストマー、シリコーン系エラストマー、アクリル系エラストマー又はこれらの混合物などを用いることができる。そのうちオレフィン系熱可塑性エラストマーとして、ポリブタジエン樹脂又はエラストマー、又はポリイソブチレン樹脂又はエラストマーなどが用いられ得る。前記ポリオキシアルキレン系樹脂又はエラストマーとしては、例えば、ポリオキシメチレン系樹脂又はエラストマー、ポリオキシエチレン系樹脂又はエラストマー又はこれらの混合物などが例示され得る。前記ポリエステル系樹脂又はエラストマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂又はエラストマー、ポリブチレンテレフタレート系樹脂又はエラストマー又はこれらの混合物などが例示され得る。前記ポリ塩化ビニル系樹脂又はエラストマーとしては、例えば、ポリビニリデンクロライドなどが例示され得る。前記炭化水素の混合物としては、例えば、ヘキサトリアコタン(hexatriacotane)又はパラフィンなどが例示され得る。前記ポリアミド系樹脂又はエラストマーとしては、例えば、ナイロンなどが例示され得る。前記アクリレート系樹脂又はエラストマーとしては、例えば、ポリブチル(メタ)アクリレートなどが例示され得る。前記エポキシ系樹脂又はエラストマーとしては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型及びこれらの水添加物などのビスフェノール型;フェノールノボラック型やクレゾールノボラック型などのノボラック型;トリグリシジルイソシアヌレート型やヒダントイン型などの含窒素環型;脂環式型;脂肪族型;ナフタレン型、ビフェニル型などの芳香族型;グリシジルエーテル型、グリシジルアミン型、グリシジルエステル型などのグリシジル型;ジシクロペンタジエン型などのジシクロ型;エステル型;エーテルエステル型又はこれらの混合物などが例示され得る。前記シリコーン系樹脂又はエラストマーとしては、例えば、ポリジメチルシロキサンなどが例示され得る。また、前記フッ素系樹脂またはエラストマーとしては、ポリトリフルオロエチレン樹脂又はエラストマー、ポリテトラフルオロエチレン樹脂又はエラストマー、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂又はエラストマー、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂又はエラストマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化エチレンプロピレン又はこれらの混合物などが例示され得る。
【0033】
前記羅列した樹脂又はエラストマーは、例えば、マレイン酸無水物などとグラフトされて用いられてもよく、羅列された他の樹脂又はエラストマー乃至は樹脂又はエラストマーを製造するための単量体と共重合されて用いられてもよく、その外、他の化合物によって変性させて用いられてもよい。前記他の化合物の例としては、カルボキシル-末端ブタジエン-アクリロニトリル共重合体などが挙げられる。
【0034】
一つの例示で、前記封止層は、封止樹脂として前記言及した種類のうちオレフィン系エラストマー、シリコーン系エラストマー又はアクリル系エラストマーなどを含むことができるが、これらに制限されるものではない。
【0035】
本発明の一具体例で、前記封止樹脂は、オレフィン系樹脂であってもよい。一つの例示で、オレフィン系樹脂は、ブチレン単量体の単独重合体;ブチレン単量体と重合可能な他の単量体を共重合した共重合体;ブチレン単量体を用いた反応性オリゴマー;又はこれらの混合物であってもよい。前記ブチレン単量体は、例えば、1-ブテン、2-ブテン又はイソブチレンを含むことができる。
【0036】
前記ブチレン単量体あるいは誘導体と重合可能な他の単量体は、例えば、イソプレン、スチレン又はブタジエンなどを含むことができる。前記共重合体を用いることで、工程性及び架橋度などの物性を維持することができるので、有機電子装置に適用するときに粘着剤自体の耐熱性を確保することができる。
【0037】
また、ブチレン単量体を用いた反応性オリゴマーは、反応性官能基を有するブチレン重合体を含むことができる。前記オリゴマーは、重量平均分子量500~5000の範囲を有することができる。また、前記ブチレン重合体は、反応性官能基を有する他の重合体と結合されていてもよい。上記他の重合体は、アルキル(メタ)アクリレートであってもよいが、これに限定されるものではない。前記反応性官能基は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基又は窒素含有基であってもよい。また、前記反応性オリゴマーと前記他の重合体は、多官能性架橋剤により架橋されていてもよく、前記多官能性架橋剤は、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤及び金属キレート架橋剤からなるグループのうち選択された一つ以上であってもよい。
【0038】
一つの例示で、本発明の封止樹脂は、ジエンと一つの炭素-炭素二重結合を含むオレフィン系化合物の共重合体であってもよい。ここで、オレフィン系化合物は、ブチレンなどを含むことができ、ジエンは、前記オレフィン系化合物と重合可能な単量体であってもよく、例えば、イソプレン又はブタジエンなどを含むことができる。例えば、一つの炭素-炭素二重結合を含むオレフィン系化合物及びジエンの共重合体は、ブチルゴムであってもよい。
【0039】
封止層において前記樹脂又はエラストマー成分は、粘着剤組成物がフィルム形状に成形が可能な程度の重量平均分子量(Mw:Weight Average Molecular Weight)を有することができる。すなわち、前記封止層は、常温で未硬化状態であっても固相又は半固相であってもよい。本明細書で常温は、例えば、15℃~35℃又は約25℃を意味することができる。一つの例示で、前記樹脂又はエラストマーは、約10万~200万、12万~150万又は15万~100万程度の重量平均分子量を有することができる。本明細書で用語「重量平均分子量」は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定した標準ポリスチレンに対する換算数値を意味する。ただし、上記言及された重量平均分子量を前記樹脂又はエラストマー成分が必ず有しなければならないものではない。例えば、樹脂又はエラストマー成分の分子量がフィルムを形成する程度のレベルにならない場合には、別途のバインダー樹脂が粘着剤組成物に配合され得る。
【0040】
また他の具体例で、本発明による封止樹脂は、硬化性樹脂であって、例えば、硬化後のガラス転移温度が85℃以上、200℃以下である樹脂であってもよい。前記ガラス転移温度は、前記封止樹脂を光硬化又は熱硬化させた後のガラス転移温度であってもよい。本発明で使用できる硬化性樹脂の具体的な種類は、特に制限されず、例えば、この分野で公知にされている多様な熱硬化性又は光硬化性樹脂を用いることができる。用語「熱硬化性樹脂」は、適切な熱の印加又は熟成(aging)工程を通じて硬化され得る樹脂を意味し、用語「光硬化性樹脂」は、電磁気波の照射によって硬化され得る樹脂を意味する。また、前記硬化性樹脂は、熱硬化と光硬化の特性を共に含むデュアル硬化型樹脂であってもよい。
【0041】
本発明で硬化性樹脂の具体的な種類は、上述した特性を有するものであれば、特に制限されない。例えば、硬化されて接着特性を示すことができるものであって、グリシジル基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、カルボキシル基又はアミド基などの熱硬化が可能な官能基を一つ以上含むか、あるいはエポキシド(epoxide)基、環状エーテル(cyclic ether)基、スルフィド(sulfide)基、アセタール(acetal)基又はラクトン(lactone)基などの電磁気波の照射によって硬化可能な官能基を一つ以上含む樹脂が挙げられる。また、前記のような樹脂の具体的な種類には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂又はエポキシ樹脂などが含まれ得るが、これらに制限されるものではない。
【0042】
本発明では、前記硬化性樹脂として、芳香族又は脂肪族;又は直鎖形又は分岐鎖形のエポキシ樹脂を用いることができる。本発明の一具現例では、2個以上の官能基を含有するものであって、エポキシ当量が180g/eq~1,000g/eqであるエポキシ樹脂を用いることができる。前記範囲のエポキシ当量を有するエポキシ樹脂を使用して、硬化物の接着性能及びガラス転移温度などの特性を効果的に維持できる。このようなエポキシ樹脂の例には、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、4官能性エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタンエポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂又はジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂の一種又は二種以上の混合物が挙げられる。
【0043】
本発明では、硬化性樹脂として分子構造内に環形構造を含むエポキシ樹脂を用いることができ、芳香族基(例えば、フェニル基)を含むエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂が芳香族基を含む場合、硬化物が優れた熱的及び化学的安定性を有し、且つ低い吸湿量を示し、有機電子装置の封止構造の信頼性を向上させ得る。本発明で使用できる芳香族基含有エポキシ樹脂の具体的な例としては、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、クレゾール系エポキシ樹脂、ビスフェノール系エポキシ樹脂、キシロール系エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂及びアルキル変性トリフェノールメタンエポキシ樹脂などの一種又は二種以上の混合物であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0044】
また、本発明の封止層は、封止樹脂と相溶性が高く、前記封止樹脂と共に特定の架橋構造を形成可能な活性エネルギー線重合性化合物を含むことができる。
【0045】
例えば、本発明の封止層は、封止樹脂と共に活性エネルギー線の照射によって重合され得る多官能性の活性エネルギー線重合性化合物を含むことができる。前記活性エネルギー線重合性化合物は、例えば、活性エネルギー線の照射による重合反応に参与できる官能基、例えば、アクリロイル基又はメタクリロイル基などのエチレン性不飽和二重結合を含む官能基、エポキシ基又はオキセタン基などの官能基を2個以上含む化合物を意味することができる。
【0046】
多官能性の活性エネルギー線重合性化合物としては、例えば、多官能性アクリレート(MFA;Multifunctional acrylate)を用いることができる。
【0047】
また、前記活性エネルギー線重合性化合物は、封止樹脂100重量部に対して、3重量部~30重量部、5重量部~30重量部、5重量部~25重量部、8重量部~20重量部、10重量部~18重量部又は12重量部~18重量部で含まれ得る。本発明は、前記範囲内で、高温高湿など苛酷条件でも耐久信頼性に優れた封止フィルムを提供する。
【0048】
前記活性エネルギー線の照射によって重合され得る多官能性の活性エネルギー線重合性化合物は、制限なしに用いられ得る。例えば、前記化合物は、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオール(dodecanediol)ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(dicyclopentanyl)ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)ジアクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタン(adamantane)ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート又はこれらの混合物を含むことができる。
【0049】
多官能性の活性エネルギー線重合性化合物としては、例えば、分子量が1,000未満80以上であり、官能基を2個以上含む化合物を用いることができる。この場合、分子量は、重量平均分子量又は通常的な分子量を意味することができる。前記多官能性の活性エネルギー線重合性化合物に含まれる環構造は、炭素環式構造又は複素環式構造;又は単環式又は多環式構造のいずれでもよい。
【0050】
本発明の具体例で、封止層は、ラジカル開始剤をさらに含むことができる。ラジカル開始剤は、光開始剤又は熱開始剤であってもよい。光開始剤の具体的な種類は、硬化速度及び黄変可能性などを考慮して適切に選択され得る。例えば、ベンゾイン系、ヒドロキシケトン系、アミノケトン系又はホスフィンオキシド系光開始剤などを用いることができ、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン(thioxanthone)、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]及び2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシドなどを用いることができる。
【0051】
ラジカル開始剤は、活性エネルギー線重合性化合物100重量部に対して、0.2重量部~20重量部、0.5~18重量部、1~15重量部又は2重量部~13重量部の割合で含まれ得る。これを通じて、活性エネルギー線重合性化合物の反応を効果的に誘導し、また、硬化後に残存成分により封止層組成物の物性が悪くなることを防止することができる。
【0052】
本発明の具体例で、封止フィルムの封止層に含まれる樹脂成分の種類によって硬化剤をさらに含むことができる。例えば、上述した封止樹脂と反応して架橋構造などを形成することができる硬化剤をさらに含むことができる。本明細書で用語「封止樹脂」は、樹脂成分と同一の意味で用いられ得る。
【0053】
硬化剤は、樹脂成分又はその樹脂に含まれる官能基の種類によって適切な種類が選択及び用いられ得る。
【0054】
一つの例示で、樹脂成分がエポキシ樹脂である場合、硬化剤としては、この分野で公知にされているエポキシ樹脂の硬化剤として、例えば、アミン硬化剤、イミダゾール硬化剤、フェノール硬化剤、リン硬化剤又は酸無水物硬化剤などの一種又は二種以上を用いることができるが、これらに制限されるものではない。
【0055】
一つの例示で、前記硬化剤としては、常温で固相であり、融点又は分解温度が80℃以上200℃以下であるイミダゾール化合物を用いることができる。このような化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール又は1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾールなどが例示され得るが、これらに制限されるものではない。
【0056】
硬化剤の含量は、組成物の組成、例えば、封止樹脂の種類や割合によって選択され得る。例えば、硬化剤は、樹脂成分100重量部に対して、1重量部~20重量部、1重量部~10重量部又は1重量部~5重量部で含むことができる。しかし、前記重量割合は、封止樹脂又はその樹脂の官能基の種類及び割合、又は具現しようとする架橋密度などによって変更され得る。
【0057】
樹脂成分が活性エネルギー線の照射によって硬化され得る樹脂である場合、開始剤としては、例えば、陽イオン光重合開始剤を用いることができる。
【0058】
陽イオン光重合開始剤としては、オニウム塩(onium salt)又は有機金属塩(organometallic salt)系列のイオン化陽イオン開始剤又は有機シラン又は潜在性硫酸(latent sulfonic acid)系列や非イオン化陽イオン光重合開始剤を用いることができる。オニウム塩系列の開始剤としては、ジアリールヨードニウム塩(diaryliodonium salt)、トリアリールスルホニウム塩(triarylsulfonium salt)又はアリールジアゾニウム塩(aryldiazonium salt)などが例示され得、有機金属塩系列の開始剤としては、鉄アレン(iron arene)などが例示され得、有機シラン系列の開始剤としては、o-ニトリルベンジルトリアリールシリルエーテル(o-nitrobenzyl triaryl silyl ether)、トリアリールシリルペルオキシド(triaryl silyl peroxide)又はアシルシラン(acyl silane)などが例示され得、潜在性硫酸系列の開始剤としては、α-スルホニルオキシケトン又はα-ヒドロキシメチルベンゾインスルホネートなどが例示され得るが、これらに制限されるものではない。
【0059】
一つの例示で、陽イオン開始剤としては、イオン化陽イオン光重合開始剤を用いることができる。
【0060】
一つの例示で、封止層は、粘着付与剤をさらに含むことができ、前記粘着付与剤は、好ましくは、水素化された環状オレフィン系重合体であってもよい。粘着付与剤としては、例えば、石油樹脂を水素化して得られる水素化された石油樹脂を用いることができる。水素化された石油樹脂は、部分的に又は完全に水素化され得、そのような樹脂の混合物であってもよい。このような粘着付与剤は、粘着剤組成物と相溶性が良いながらも水分遮断性に優れ、有機揮発成分が低いものを選択することができる。水素化された石油樹脂の具体的な例としては、水素化されたテルペン系樹脂、水素化されたエステル系樹脂又は水素化されたジシクロペンタジエン系樹脂などが挙げられる。前記粘着付与剤の重量平均分子量は、約200~5,000であってもよい。前記粘着付与剤の含量は、必要に応じて適切に調節できる。例えば、粘着付与剤の含量は、後述するゲル含量などを考慮して選択され得、一つの例示によると、樹脂成分100重量部に対して、5重量部~100重量部、8~95重量部、10重量部~93重量部又は15重量部~90重量部の割合で含まれ得る。
【0061】
上述したように、封止層は、水分吸着剤を含むことができる。本明細書で用語「水分吸着剤(moisture absorbent)」は、例えば、後述する封止フィルムに浸透した水分乃至は湿気との化学的反応を通じて上記を除去できる化学反応性吸着剤を意味することができる。
【0062】
例えば、水分吸着剤は、封止層又は封止フィルム内に均一に分散した状態で存在することができる。ここで、均一に分散した状態は、封止層又は封止フィルムのいずれの部分でも同一又は実質的に同一の密度で水分吸着剤が存在する状態を意味することができる。上記で用いられる水分吸着剤としては、例えば、金属酸化物、硫酸塩又は有機金属酸化物などが挙げられる。具体的に、前記硫酸塩の例としては、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム又は硫酸ニッケルなどが挙げられ、前記有機金属酸化物の例としては、アルミニウムオキシドオクチレートなどが挙げられる。上記で金属酸化物の具体的な例としては、五酸化リン(P)、酸化リチウム(LiO)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化カルシウム(CaO)又は酸化マグネシウム(MgO)などが挙げられ、金属塩の例としては、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸カルシウム(CaSO)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硫酸コバルト(CoSO)、硫酸ガリウム(Ga(SO)、硫酸チタン(Ti(SO)又は硫酸ニッケル(NiSO)などの硫酸塩、塩化カルシウム(CaCl)、塩化マグネシウム(MgCl)、塩化ストロンチウム(SrCl)、塩化イットリウム(YCl)、塩化銅(CuCl)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化タンタル(TaF)、フッ化ニオブ(NbF)、臭化リチウム(LiBr)、臭化カルシウム(CaBr)、臭化セシウム(CeBr)、臭化セレン(SeBr)、臭化バナジウム(VBr)、臭化マグネシウム(MgBr)、ヨウ化バリウム(BaI)又はヨウ化マグネシウム(MgI)などの金属ハロゲン化物;又は過塩素酸バリウム(Ba(ClO)又は過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO)などの金属塩素酸塩などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。封止層に含まれ得る水分吸着剤としては、上述した構成のうち一種を用いてもよく、二種以上を用いてもよい。一つの例示で、水分吸着剤として二種以上を用いる場合、焼成ドロマイト(calcined dolomite)などが用いられ得る。
【0063】
このような水分吸着剤は、用途に応じて適切なサイズに制御され得る。一つの例示で、水分吸着剤の平均粒径が10~15000nm程度に制御され得る。前記範囲のサイズを有する水分吸着剤は、水分との反応速度があまり速くないため、保管が容易であり、封止しようとする素子に損傷を与えず、効果的に水分を除去することができる。
【0064】
水分吸着剤の含量は、特に制限されず、目的とする遮断特性を考慮して適切に選択され得る。
【0065】
封止層は、必要な場合、水分遮断剤をさらに含むことができる。本明細書で用語「水分遮断剤(moisture blocker)」は、水分との反応性がないか低いが、物理的に水分乃至は湿気のフィルム内での移動を遮断するか妨害することができる物質を意味することができる。水分遮断剤としては、例えば、アルミナ、クレイ、タルク、針状シリカ、板状シリカ、多孔性シリカ、ゼオライト、チタニア又はジルコニアのうち一種又は二種以上を用いることができる。また、水分遮断剤は、有機物の浸透が容易になるよう有機改質剤などによって表面処理が施され得る。このような有機改質剤としては、例えば、ジメチルベンジル水素化タロウ4級アンモニウム(dimethyl benzyl hydrogenatedtallow quaternaty ammonium)、ジメチル水素化タロウ4級アンモニウム(dimethyl dihydrogenatedtallow quaternary ammonium)、メチルタロウビス-2-ヒドロキシエチル4級アンモニウム(methyl tallow bis-2-hydroxyethyl quaternary ammonium)、ジメチル水素化タロウ2-エチルヘキシル4級アンモニウム(dimethyl hydrogenatedtallow 2-ethylhexyl quaternary ammonium)、ジメチル脱水素化タロウ4級アンモニウム(dimethyl dehydrogenated tallow quaternary ammonium)又はこれらの混合物である有機改質剤などが用いられ得る。
【0066】
水分遮断剤の含量は、特に制限されず、目的とする遮断特性を考慮して適切に選択され得る。
【0067】
また、封止層は、密度汎関数理論近似法(Density Functional Theory)によって計算されたアウトガスに対する吸着エネルギーが0eV以下である輝点防止剤を含むことができる。前記吸着エネルギーの下限値は特に限定されないが、-20eVであってもよい。前記アウトガスの種類は特に制限されないが、H原子、H分子及び/又はNHを含むことができる。本発明は、封止フィルムが前記輝点防止剤を含むことで、有機電子素子に流入する水分を遮断すると同時に、有機電子装置から発生するアウトガスによる輝点を防止することができる。また、本発明の封止フィルムは、封止層が第1層及び第2層を含むことができ、前記封止層のうち有機電子素子と接しない第2層に輝点防止剤を含むことで、前記輝点防止剤による応力集中による有機電子素子へのダメージを防止することができる。上記のような観点から、封止層第1層は、封止フィルム内の全体輝点防止剤の質量を基準として15%以下で輝点防止剤を含むか、含まなくてもよい。また、前記封止層第1層を除いた有機電子素子と接しない層に封止フィルム内の全体輝点防止剤の質量を基準として85%以上の輝点防止剤を含むことができる。すなわち、本発明で、有機電子素子と接する封止層第1層に比べて有機電子素子と接しない他の封止層が輝点防止剤をさらに多量に含むことができ、これを通じて、フィルムの水分遮断性と輝点防止特性を具現すると共に、素子に加えられる物理的な損傷を防止することができる。
【0068】
本発明の具体例で、輝点防止剤と輝点原因原子又は分子間の吸着エネルギーを密度汎関数論(density functional theory)基盤の電子構造計算を通じて計算することができる。前記計算は、当業界の公知の方法で行うことができる。例えば、本発明は、結晶形構造を有する輝点防止剤の最密充填面が表面で現われる2次元slab構造を作った後に構造最適化を進行し、この真空状態の表面上に輝点原因分子が吸着された構造に対する構造最適化を進行した後、この二つのシステムの総エネルギー(total energy)差から輝点原因分子の総エネルギーを引いた値を吸着エネルギーとして定義した。それぞれのシステムに対する総エネルギーの計算のために電子-電子間の相互作用を写す交換相関(exchange-correlation)でGGA(generalized gradient approximation)系列の関数であるrevised-PBE関数を用い、電子運動エネルギー(kinetic energy)のカットオフ(cutoff)は、500eVを用い、逆格子空間(reciprocal space)の原点に該当するガンマ点(gamma point)のみを含ませて計算した。各システムの原子構造を最適化するために共役勾配(conjugate gradient)法を用い、原子間の力が0.01eV/Å以下になるまで繰り返し計算を行った。一連の計算は、常用コードであるVASPを通じて行われた。
【0069】
輝点防止剤の素材は、前記封止フィルムが有機電子装置に適用されて有機電子装置のパネルで輝点を防止する効果を有する物質であれば、その素材は制限されない。例えば、輝点防止剤は、有機電子素子の電極上に蒸着される酸化ケイ素、窒化ケイ素又は酸窒化ケイ素の無機蒸着層から発生するアウトガスであって、例えば、Hガス、アンモニア(NH)ガス、H、NH2+、NHR又はNHRで例示される物質を吸着できる物質であってもよい。上記で、Rは有機基であってもよく、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などが例示され得るが、これらに制限されない。
【0070】
一つの例示で、輝点防止剤の素材は、前記吸着エネルギー値を満足する限り、制限されず、金属又は非金属であってもよい。前記輝点防止剤は、例えば、Li、Ni、Ti、Rb、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Zn、In、Pt、Pd、Fe、Cr、Si又はその配合物を含むことができ、前記素材の酸化物又は窒化物を含むことができ、前記素材の合金を含むことができる。一つの例示で、輝点防止剤は、ニッケル粒子、酸化ニッケル粒子、窒化チタン、鉄-チタンのチタン系合金粒子、鉄-マンガンのマンガン系合金粒子、マグネシウム-ニッケルのマグネシウム系合金粒子、希土類系合金粒子、ゼオライト粒子、シリカ粒子、カーボンナノチューブ、グラファイト、アルミノホスフェート分子体粒子又はメゾシリカ粒子を含むことができる。前記輝点防止剤は、封止層内の樹脂成分100重量部に対して、3~150重量部、6~143重量部、8~131重量部、9~123重量部、10~116重量部、10重量部~95重量部、10重量部~50重量部又は10重量部~35重量部で含まれ得る。本発明は、前記含量範囲で、フィルムの接着力及び耐久性を向上させると共に有機電子装置の輝点防止を具現することができる。また、前記輝点防止剤の粒径は、10nm~30μm、50nm~21μm、105nm~18μm、110nm~12μm、120nm~9μm、140nm~4μm、150nm~2μm、180nm~900nm、230nm~700nm又は270nm~400nmの範囲内であってもよい。本発明で粒径の測定は、D50粒度分析によって行うことができる。本発明は、上記の輝点防止剤を含むことで、有機電子装置内で発生する水素を効率的に吸着すると共に、封止フィルムの水分遮断性及び耐久信頼性をともに具現することができる。本明細書で用語「樹脂成分」は、後述する封止樹脂及び/又は粘着付与樹脂であってもよい。
【0071】
封止層には、上述した構成以外にも用途及び後述する封止フィルムの製造工程によって多様な添加剤が含まれ得る。例えば、封止層は、硬化性物質、架橋剤又はフィラーなどを目的とする物性によって適正範囲の含量で含むことができる。
【0072】
本発明の具体例で、前記封止層は、上述したように単層構造に形成されてもよく、また、2以上の層に形成されてもよい。2層以上の層に形成される場合、前記封止層のうち最外殻層は、水分吸着剤を含まないか、他の封止層より水分吸着剤を低い含量で含むことができる。
【0073】
一つの例示で、前記水分吸着剤の含量は、前記封止フィルムが有機電子素子の封止に適用される点を考慮するとき、素子の損傷などを考慮して制御できる。例えば、前記有機電子素子と接触する層に少量の水分吸着剤を構成してもよく、水分吸着剤を含まなくてもよい。一つの例示で、素子と接触する封止層(第1層)は、封止フィルムが含有する水分吸着剤の全体質量に対して0~20%の水分吸着剤を含むことができる。また、素子と接触しない封止層(第2層)は、封止フィルムが含有する水分吸着剤の全体質量に対して80~100%の水分吸着剤を含むことができる。
【0074】
一つの例示で、本発明の封止フィルムは、前記メタル層上に形成される保護層をさらに含むことができる。前記保護層は、樹脂成分を含むことができる。前記保護層を構成する素材は特に制限されない。一つの例示で、前記保護層は、水分透過を遮断できる防湿層であってもよい。一つの例示で、前記保護層を構成する樹脂成分として、ポリオルガノシロキサン、ポリイミド、スチレン系樹脂又はエラストマー、ポリオレフィン系樹脂又はエラストマー、ポリオキシアルキレン系樹脂又はエラストマー、ポリエステル系樹脂又はエラストマー、ポリ塩化ビニル系樹脂又はエラストマー、ポリカーボネート系樹脂又はエラストマー、ポリフェニレンスルフィド系樹脂又はエラストマー、ポリアミド系樹脂又はエラストマー、アクリレート系樹脂又はエラストマー、エポキシ系樹脂又はエラストマー、シリコーン系樹脂又はエラストマー、及びフッ素系樹脂又はエラストマーからなる群より選択された1以上を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
本発明の具体例で、前記保護層とメタル層の間に粘着剤又は接着剤をさらに含むことができる。前記粘着剤又は接着剤の素材は特に制限されず、公知の材料を用いることができる。一つの例示で、前記粘着剤又は接着剤は、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、シリコーン系又はゴム系粘着剤又は接着剤であってもよい。また、一具体例で、前記粘着剤又は接着剤の素材は、上述した封止層の素材と同一であるか、異なっていてもよい。
【0076】
封止フィルムは、基材フィルム又は離型フィルム(以下、「第1フィルム」と称する場合がある)をさらに含み、前記封止層が前記基材又は離型フィルム上に形成されている構造を有することができる。前記構造は、また、前記メタル層上に形成された基材又は離型フィルム(以下、「第2フィルム」と称する場合がある)をさらに含むことができる。
【0077】
本発明で用いられる前記第1フィルムの具体的な種類は、特に限定されない。本発明では、前記第1フィルムとして、例えば、この分野における一般的な高分子フィルムを用いることができる。本発明では、例えば、前記基材又は離型フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリテトラフルオルエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニルフィルム、エチレン-プロピレン共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸エチル共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸メチル共重合体フィルム又はポリイミドフィルムなどを用いることができる。また、本発明の前記基材フィルム又は離型フィルムの一面又は両面には、適切な離型処理が行われていてもよい。基材フィルムの離型処理に用いられる離型剤の例としては、アルキド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和エステル系、ポリオレフィン系又はワックス系などを用いることができ、このうち、耐熱性の側面から、アルキド系、シリコーン系又はフッ素系離型剤を用いることが好ましいが、これに制限されるものではない。
【0078】
本発明で上記のような基材フィルム又は離型フィルム(第1フィルム)の厚さは、特に限定されず、適用される用途によって適切に選択され得る。例えば、本出願で前記第1フィルムの厚さは、10μm~500μm、好ましくは、20μm~200μm程度であってもよい。前記厚さが10μm未満であると、製造過程で基材フィルムの変形が容易に発生する恐れがあり、500μmを超過すると、経済性に劣る。
【0079】
本発明の封止フィルムに含まれる封止層の厚さは、特に制限されず、前記フィルムが適用される用途を考慮して下記の条件によって適切に選択できる。封止層の厚さは、5μm~200μm、好ましくは、5μm~100μm程度であってもよい。前記厚さは、封止層が多層である場合、多層の厚さを意味することができる。封止層の厚さが5μm未満である場合、十分な水分遮断能力を発揮することができず、200μmを超過する場合、工程性を確保しにくく、水分反応性に起因して厚さ膨張が大きいため、有機発光素子の蒸着膜に損傷を与えることがあり、経済性に劣る。
【0080】
また、本発明は、有機電子装置に関する。前記有機電子装置は、図2に示したように、基板21;前記基板21上に形成された有機電子素子22;及び前記有機電子素子22の全面を封止する上述した封止フィルム10を含むことができる。前記封止フィルムは、前記基板上に形成された有機電子素子の全面、例えば、上部及び側面を全て封止していてもよい。前記封止フィルムは、粘着剤組成物又は接着剤組成物を架橋又は硬化された状態で含有する封止層を含むことができる。また、前記封止層が有機電子素子の全面に接触するように有機電子装置が形成されていてもよい。
【0081】
上記で有機電子素子は、例えば、有機発光素子であってもよい。
【0082】
前記封止層は、有機電子装置で優れた水分遮断特性を示すと共に前記基板とメタル層を効率的に固定及び支持する構造用接着剤として形成され得る。
【0083】
また、前記封止層は、前面発光(top emission)又は背面発光(bottom emission)などの有機電子装置の形態に関係なく安定的な封止層として形成され得る。
【0084】
また、本発明の有機電子素子は、保護膜を含むことができる。前記保護膜は、素子の電極の損傷を防止することができるものであって、本技術分野の通常の素材で構成され得、例えば、無機物としてSiNx又はAlなどを含むことができる。前記保護膜は、有機膜及び無機膜が相互に蒸着されているパッシベーション膜であってもよい。
【0085】
また、本発明は、有機電子装置の製造方法を提供する。前記製造方法は、上部に有機電子素子が形成された基板に上述した封止フィルムが前記有機電子素子をカバーするように適用するステップを含むことができる。また、前記製造方法は、前記封止フィルムを硬化するステップを含むことができる。前記封止フィルムの硬化ステップは、封止層の硬化を意味し、前記硬化は、前記封止フィルムが有機電子素子をカバーする前又は後に進行され得る。
【0086】
本明細書で用語「硬化」とは、加熱又はUVの照射工程などを経て本発明の粘着剤組成物が架橋構造を形成して粘着剤の形態で製造することを意味することができる。または、接着剤組成物が接着剤として硬化及び付着されることを意味することができる。
【0087】
一つの例示で、前記製造方法は、基板として用いられるガラス又は高分子フィルム上に真空蒸着又はスパッタリングなどの方法で透明電極を形成し、前記透明電極上に、例えば、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層などにより構成される発光性有機材料の層を形成した後、その上部に電極層を追加で形成して有機電子素子を形成することができる。続いて、前記工程を経た基板の有機電子素子の全面を前記封止フィルムの封止層が覆うように位置させ得る。
【発明の効果】
【0088】
本発明の封止フィルムは、OLEDなどの有機電子装置の封止又はカプセル化に適用され得る。前記フィルムは、外部から有機電子装置に流入する水分又は酸素を遮断することができる構造の形成が可能であり、有機電子装置の内部に蓄積される熱を効果的に放出させ得、高温高湿の苛酷条件で耐久信頼性を具現し、有機電子装置の劣化発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1図1は、本発明の一つの例示による封止フィルムを示す断面図である。
図2図2は、本発明の一つの例示による有機電子装置を示す断面図である。
図3図3は、実験例2による水平方向熱抵抗測定方法に関する図である。
【発明を実施するための形態】
【0090】
以下、本発明による実施例及び本発明によらない比較例を通じて本発明をより詳しく説明するが、本発明の範囲は、下記提示された実施例によって制限されるものではない。
【0091】
<実施例1>
【0092】
封止層の製造
【0093】
水分吸着剤としてCaO(平均粒径5μm未満)溶液(固形分50%)を製造した。また、これとは別に、ブチルゴム樹脂(BT-20、SUNWOO CHEMTECH)200g及びDCPD系石油樹脂(SU5270、SUNWOO CHEMTECH)60gをトルエンで希釈した溶液(固形分50%)を製造した後、溶液を均質化した。前記均質化された溶液に多官能性アクリレート(トリメチロールプロパントリアクリレート、MIWON)10g及び光開始剤(Irgacure819、Ciba)3gを投入して均質化した後に前記CaO溶液100gを投入した後、1時間の間高速撹拌して封止層溶液を製造した。
【0094】
上記で製造された封止層溶液を離型PETの離型面にコンマコーターを用いて塗布し、乾燥機で130℃で3分間乾燥して、厚さが50μmである封止層を形成した。
【0095】
封止フィルムの製造
【0096】
上記製造された封止層の外側に付着された離型処理されたPETを剥離させ、70℃温度及びギャップ1mmの条件でロールラミネーションして70μmのアルミニウムホイル(foil)(メタル層第1層、熱伝導度:240W/m・K)を付着した。その後、前記第1層上に80μmのInvar(メタル層第2層、線膨脹係数:1.2ppm/℃、熱伝導度:約15W/m・K)をウレタン系列の粘着剤を用いてロールラミネーションして、メタル層(第2層及び第1層)及び封止層の順に(第2層、第1層及び封止層の順序)積層された封止フィルムを製造した。
【0097】
前記製造された封止フィルムを木型切断機を通じてナイフカッターで四角シート状にカッティングして有機電子素子の封止用フィルムを製造した。
【0098】
<実施例2>
【0099】
アルミニウムホイル(foil)(メタル層第1層)の厚さを30μmに変更したこと以外は、実施例1と同一の方法で封止フィルムを製造した。
【0100】
<実施例3>
【0101】
アルミニウムホイル(foil)(メタル層第1層)の厚さを20μmに変更したこと以外は、実施例1と同一の方法で封止フィルムを製造した。
【0102】
<実施例4>
【0103】
アルミニウムホイル(foil)(メタル層第1層)の厚さを12μmに変更したこと以外は、実施例1と同一の方法で封止フィルムを製造した。
【0104】
<実施例5>
【0105】
メタル層第1層を銅フィルム(熱伝導度:390W/m・K)にし、厚さを18μmに変更したこと以外は、実施例1と同一の方法で封止フィルムを製造した。
【0106】
<実施例6>
【0107】
メタル層第1層を銅フィルムにし、厚さを9μmに変更したこと以外は、実施例1と同一の方法で封止フィルムを製造した。
【0108】
<実施例7>
【0109】
メタル層第1層を銅フィルムにし、厚さを5μmに変更したこと以外は、実施例1と同一の方法で封止フィルムを製造した。
【0110】
<実施例8>
【0111】
メタル層第1層を銅フィルムにし、厚さを3μmに変更したこと以外は、実施例1と同一の方法で封止フィルムを製造した。
【0112】
<実施例9>
【0113】
メタル層第1層としてアルミニウム120μm、第2層として炭素鋼(mild steel)60μm及び第1層としてアルミニウム120μm(第1層、第2層及び第1層の3個層の積層構造)を適用したこと以外は、実施例1と同一の方法で封止フィルムを製造した。
【0114】
<実施例10>
【0115】
メタル層第1層をアルミニウムシート(熱伝導度:240W/m・K)にし、厚さを350μmに変更したこと以外は、実施例1と同一の方法で封止フィルムを製造した。
【0116】
<比較例1>
【0117】
メタル層第1層を適用しないこと以外は、実施例1と同一の方法で封止フィルムを製造した。
【0118】
<比較例2>
【0119】
メタル層第1層の代わりにポリエチレンテレフタレートフィルム(熱伝導度:0.24W/m・K)を適用したこと以外は、実施例1と同一の方法で封止フィルムを製造した。
【0120】
<比較例3>
【0121】
封止層に、ブチルゴム樹脂100重量部に対して20重量部のカーボンブラックを追加したこと以外は、比較例1と同一の方法で封止フィルムを製造した。
【0122】
<比較例4>
【0123】
メタル層第1層としてチタン(熱伝導度:21.9W/m・K)を20μm厚さで適用し、メタル層第2層として40μmのInvar(熱伝導度:15W/m・K)を適用したこと以外は、実施例1と同一の方法で封止フィルムを製造した。
【0124】
<実験例1-放熱性能の測定>
【0125】
厚さ0.7μmのガラス(30cm × 50cm)上の中央に一定発熱量を有する発熱フィルム(VOLUN WM-90-P30、大きさ:15cm × 25cm、厚さ:0.25mm)を備え、前記実施例及び比較例で製造した封止フィルムの封止層に付いているPETを剥離させ、ガラスと発熱フィルムの上端に前記封止層が合うように前記封止フィルムを70℃温度及び1mmギャップ条件でラミネーションした。このとき、前記発熱フィルム中央部の温度を測定した。
【0126】
<実験例2-水平方向熱抵抗の測定>
【0127】
前記実施例及び比較例で製造した封止フィルムを構成するメタル層第1層と第2層及び封止層の熱伝導度(k)をISO 22007-2に明示する手順にしたがってHot disk方式(TPS2200)を用いて測定する。最終積層封止フィルムの断面をSEMを用いて各層の厚さを測定(L)し、図3の式を通じて全体積層封止フィルムの熱抵抗(Rtot)値を計算する。
【0128】
図3は、メタル層第2層と第1層及び封止層が上から順に積層された封止フィルムの構造を3次元で示した図であり、前記封止フィルムで水平面積(W=1m、D=1m)を基準として熱抵抗を計算した。上記で、Lは各層の厚さ、Wは長辺、Dは短辺、kは熱伝導度、Tは温度、Rは熱抵抗、Qは熱伝逹量(単位:W)を意味する。本発明の例示的な封止層の熱伝導度は、0.1~0.45W/m・K又は0.2~0.31W/m・K程度であり、実施例1~実施例10で製造した封止層の熱伝導度は、約0.184~0.3041W/m・K程度であった。比較例3の封止層の熱伝導度は、0.32~0.4W/m・K程度であった。
【0129】
【表1】
【0130】
実施例10で製造された封止フィルムは、85℃温度及び85%RHの高温高湿条件でメタル層の一部曲がり問題を発見することができた。
【符号の説明】
【0131】
10:封止フィルム
11:封止層
12:メタル層(第1層)
13:メタル層(第2層)
21:基板
22:有機電子素子
図1
図2
図3