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  • 特許-反応器洗浄装置および反応器の洗浄方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】反応器洗浄装置および反応器の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B08B 9/093 20060101AFI20221219BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20221219BHJP
   B08B 9/087 20060101ALI20221219BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20221219BHJP
   C08F 10/02 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B08B9/093
B01J19/00 H
B08B9/087
B08B3/02 A
C08F10/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021530208
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 KR2020010462
(87)【国際公開番号】W WO2021118007
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2019-0162689
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ムン・スブ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ソク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・フン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ナ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ホン・ミン・イ
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04500492(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0269730(US,A1)
【文献】米国特許第1772984(US,A)
【文献】米国特許第3550177(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 9/093
B01J 19/00
B08B 9/087
B08B 3/02
C08F 10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器の上部の孔に一部領域を挿入して前記反応器と結合し、パイプを固定する固定部と、
前記固定部に形成された孔に挿入され、前記固定部の下側方向に突出しており、上下方向に長さが調節されるパイプと、
前記パイプの下端に備えられた噴射ノズルと、
前記パイプの下部側面に備えられ、かつ前記パイプの下端よりも上側に備えられたスクリーナーと、を含む、反応器洗浄装置。
【請求項2】
前記スクリーナーは、前記パイプから前記反応器の内壁に向かって突出している、請求項1に記載の反応器洗浄装置。
【請求項3】
前記スクリーナーの一部領域が、前記反応器の内壁と対応する屈曲を有する、請求項2に記載の反応器洗浄装置。
【請求項4】
前記スクリーナーは金属材質である、請求項1から3のいずれか一項に記載の反応器洗浄装置。
【請求項5】
前記パイプの上下移動のための制御部を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の反応器洗浄装置。
【請求項6】
前記噴射ノズルは、前記反応器の内壁に向かって溶媒を噴射するように備えられる、請求項1からのいずれか一項に記載の反応器洗浄装置。
【請求項7】
溶媒が、前記噴射ノズルから、90°以下の広がり角度で噴射される、請求項1からのいずれか一項に記載の反応器洗浄装置。
【請求項8】
前記反応器は、エチレンをオリゴマー化反応させるためのものである、請求項1からのいずれか一項に記載の反応器洗浄装置。
【請求項9】
反応器の上部の縁に沿って形成された複数の孔に、複数の反応器洗浄装置の固定部の一部領域を挿入し、前記反応器と反応器洗浄装置を結合するステップと、
前記反応器洗浄装置の固定部に形成されている孔に挿入されたパイプの下端に備えられた噴射ノズルを用いて、前記反応器の内壁に蓄積された汚染物質に向かって溶媒を噴射するステップと、
前記反応器洗浄装置の前記パイプの長さを調節して前記反応器の上部から下部へ垂直移動させながら、前記パイプの下部側面に備えられ、かつ前記パイプの下端よりも上側に備えられたスクリーナーを用いて前記反応器の内壁の汚染物質を追い出すステップと、
前記反応器から追い出された汚染物質を除去するステップと、を含む、反応器の洗浄方法。
【請求項10】
前記噴射ノズルを介して噴射される溶媒の圧力が10bar.g~100bar.gである、請求項に記載の反応器の洗浄方法。
【請求項11】
前記溶媒は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、シクロオクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、および卜リクロロベンゼンからなる群から選択される1種以上を含む、請求項または10に記載の反応器の洗浄方法。
【請求項12】
反応器を閉鎖した状態で行う、請求項から11のいずれか一項に記載の反応器の洗浄方法。
【請求項13】
前記反応器洗浄装置の固定部に形成されている孔に挿入されたパイプの下端に備えられた噴射ノズルを用いて、前記反応器の内壁に蓄積された汚染物質に向かって溶媒を噴射するステップと、前記反応器洗浄装置の前記パイプの長さを調節して前記反応器の上部から下部へ垂直移動させながら、前記パイプの下部側面に備えられたスクリーナーを用いて前記反応器の内壁の汚染物質を追い出すステップと、を同時に行う、請求項から12のいずれか一項に記載の反応器の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年12月9日付けの韓国特許出願第10-2019-0162689号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、反応器洗浄装置に関し、より詳細には、エチレンオリゴマーの製造時に、反応器の内壁などで発生するファウリングを除去するための反応器洗浄装置、および反応器の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アルファオレフィン(alpha-olefin)は、共単量体、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに用いられる重要な物質として商業的に広く用いられており、特に、1-ヘキセンと1-オクテンは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造時に、ポリエチレンの密度を調節するための共単量体として多く用いられている。
【0004】
前記1-ヘキセンおよび1-オクテンのようなアルファオレフィンは、代表的に、エチレンのオリゴマー化反応により製造されている。前記エチレンのオリゴマー化反応は、エチレンを反応物として使用し、触媒の存在下でエチレンのオリゴマー化反応(三量体化反応または四量体化反応)により行われる。上記の反応を経て生成された生成物は、目的とする1-ヘキセンおよび1-オクテンを含む多成分の炭化水素混合物だけでなく、触媒反応中に少量のワックス(wax)および高分子物質が生成されて含まれることになるが、かかる物質が反応器の内壁に付着し、一定の厚さで蓄積される。この場合、反応器の運転を中断(shut down)し、化学的高温洗浄しなければならないため、運転時間が減少することにより生産量が減少するだけでなく、洗浄過程にかかる時間およびコストが増加するという問題がある。
【0005】
そこで、従来は、反応器に蓄積された汚染物質(ワックスおよび高分子など)を除去するために、反応器を高温の溶媒で化学的高温洗浄する方法により反応器を洗浄していた。しかし、この場合、反応器の内壁にファウリング(fouling)された汚染物質(ワックスおよび高分子など)を完全に除去するには長時間がかかるため、正常な工程モードに迅速に転換することが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上述の発明の背景技術で言及した問題を解決するために、反応器を閉鎖した状態で、反応器内に形成された汚染物質に対して、溶媒噴射およびスクリーナーを用いた追い出しを同時に行うことで、反応器を物理的に洗浄するための反応器洗浄装置および反応器の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、反応器の上部の孔に一部領域を挿入して反応器と結合し、パイプを固定する固定部と、前記固定部に形成された孔に挿入され、前記固定部の下側方向に突出しており、上下方向に長さが調節されるパイプと、前記パイプの下端に備えられた噴射ノズルと、前記パイプの下部側面に備えられたスクリーナーと、を含む、反応器洗浄装置を提供する。
【0008】
また、本発明は、反応器の上部の縁に沿って形成された複数の孔に、複数の反応器洗浄装置の固定部の一部領域を挿入し、反応器と反応器洗浄装置を結合するステップと、前記反応器洗浄装置の固定部に形成されている孔に挿入されたパイプの下端に備えられた噴射ノズルを用いて、反応器の内壁に蓄積された汚染物質に向かって溶媒を噴射するステップと、前記反応器洗浄装置のパイプの長さを調節して反応器の上部から下部へ垂直移動させながら、前記パイプの下部側面に備えられたスクリーナーを用いて反応器の内壁の汚染物質を追い出すステップと、前記反応器から追い出された汚染物質を除去するステップと、を含む反応器の洗浄方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の反応器洗浄装置および方法によると、反応器内に形成された汚染物質に対して、溶媒噴射およびスクリーナーを用いた追い出しを同時に行い、反応器を短時間で物理的に洗浄することにより、反応器を開放して高温の溶媒を用いて化学的高温洗浄する時間を効果的に減少させることができる。
【0010】
また、本発明は、反応器を別に分離したり、開放した状態で洗浄したりするのではなく、反応器を閉鎖した状態で洗浄するため、洗浄後における反応正常化時間が短縮され、反応安定性が向上することができる。
【0011】
また、本発明は、反応器の洗浄時間を減少させることで、洗浄のために運転を停止する際に発生する生産量の減少問題および洗浄コストの増加問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る反応器洗浄装置を用いた反応器の洗浄方法を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の説明および特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0014】
本発明において、用語「ストリーム(stream)」は、工程内における流体(fluid)の流れを意味し、また、移動ライン(配管)内で流れる流体自体を意味し得る。具体的に、前記「ストリーム」は、各装置を連結する配管内で流れる流体自体、および流体の流れの両方を意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)または液体(liquid)を意味し得る。
【0015】
本発明において、「#」が正の整数である「C#」という用語は、#個の炭素原子を有する全ての炭化水素を表すものである。したがって、「C10」という用語は、10個の炭素原子を有する炭化水素化合物を表すものである。また、「C#+」という用語は、#個以上の炭素原子を有する全ての炭化水素分子を表すものである。したがって、「C10+」という用語は、10個以上の炭素原子を有する炭化水素の混合物を表すものである。
【0016】
以下、本発明の理解のために、添付の図1を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0017】
本発明によると、反応器200の上部の孔に一部領域を挿入して反応器200と結合し、パイプ20を固定する固定部10と、前記固定部10に形成された孔に挿入され、前記固定部10の下側方向に突出しており、上下方向に長さが調節されるパイプ20と、前記パイプ20の下端に備えられた噴射ノズル30と、前記パイプ20の下部側面に備えられたスクリーナー40と、を含む、反応器洗浄装置100を提供する。
【0018】
本発明の一実施形態によると、前記反応器200は、連続工程に好適な反応器であることができる。例えば、前記反応器200は、連続撹拌槽型反応器(continuous stirred-tank reactor)、プラグフロー反応器(plug flow reactor)、および気泡塔反応器(bubble column reactor)からなる群から選択される1種以上の反応器を含むことができる。
【0019】
本発明の一実施形態によると、前記反応器200は、エチレンをオリゴマー化反応させるためのものであることができる。具体的に、エチレン単量体を含む単量体ストリームが反応器200に供給され、オリゴマー化反応を経ることで、目的とするアルファオレフィン生成物が製造されることができる。この際、前記オリゴマー化反応は、反応器200の下部乃至中部領域で行われ、触媒および助触媒の存在下で、溶媒に溶解された液体状態でエチレン単量体のオリゴマー化反応が行われることができる。前記オリゴマー化反応は、エチレン単量体がオリゴマー化される反応を意味し得る。前記重合されるエチレン単量体の個数によって、三量体化(trimerization)、四量体化(tetramerization)と呼ばれ、これを総称して多量体化(multimerization)と言う。
【0020】
前記アルファオレフィンは、共単量体、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに用いられる重要な物質として商業的に広く使用されており、特に、1-ヘキセンと1-オクテンは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造時に、ポリエチレンの密度を調節するための共単量体として多く用いられている。前記1-ヘキセンおよび1-オクテンのようなアルファオレフィンは、例えば、エチレン単量体の三量体化反応または四量体化反応により製造することができる。
【0021】
本発明の一実施形態によると、前記エチレン単量体のオリゴマー化反応は、前記反応系と通常の接触技術を応用して、溶媒の存在または不在下で、均質液相反応、触媒の一部が溶解されないか、全部が溶解されない形態であるスラリー反応、二相液体/液体反応、または生成物が主媒質として作用するバルク相反応または気相反応により行われることができる。
【0022】
前記触媒は、遷移金属供給源を含むことができる。前記遷移金属供給源は、例えば、クロム(III)アセチルアセトネート、クロム(III)クロリドテトラヒドロフラン、クロム(III)2-エチルヘキサノエート、クロム(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、クロム(III)ベンゾイルアセトネート、クロム(III)ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオネート、クロム(III)アセテートヒドロキシド、クロム(III)アセテート、クロム(III)ブチレート、クロム(III)ペンタノエート、クロム(III)ラウレート、およびクロム(III)ステアレートからなる群から選択される1種以上を含む化合物であることができる。
【0023】
前記助触媒は、例えば、トリメチルアルミニウム(trimethyl aluminum)、トリエチルアルミニウム(triethyl aluminum)、トリイソプロピルアルミニウム(triisopropyl aluminum)、トリイソブチルアルミニウム(triisobutyl aluminum)、エチルアルミニウムセスキクロリド(ethylaluminum sesquichloride)、ジエチルアルミニウムクロリド(diethylaluminum chloride)、エチルアルミニウムジクロリド(ethyl aluminum dichloride)、メチルアルミノキサン(methylaluminoxane)、改質されたメチルアルミノキサン(modified methylaluminoxane)、およびボレート(Borate)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0024】
このように、触媒および溶媒の存在下でエチレン単量体をオリゴマー化させる過程では、オリゴマー生成物の他に、ワックスおよびC20+の高分子などの副産物が生成される。かかる副産物がオリゴマー生成物とともに配管を介して排出される場合、前記高分子の粘着性により、反応器200の内壁および反応器200内に含まれた部材に汚染物質300が一定の厚さで蓄積され、結果として、反応器200の運転を中止して反応器200の内部を洗浄しなければならないという問題がある。前記反応器200の洗浄方法として、従来は、反応器200に蓄積された汚染物質300を除去するために、反応器200を高温の溶媒で化学的高温洗浄する方法により反応器200を洗浄していた。しかし、この場合、洗浄効果は高いものの、反応器200内に熱応力が発生するという問題、および長い洗浄時間により、反応器200を長時間開放しなければならないという問題がある。
【0025】
これに対し、本発明では、反応器200を開放(open)せず、閉鎖(close)した状態で、反応器200内に形成された汚染物質300に対して、噴射ノズル30を用いた溶媒噴射およびスクリーナー40を用いた追い出しを同時に行うことで、反応器200を短時間で物理的に洗浄するための反応器洗浄装置100、および反応器の洗浄方法を提供しようとする。これにより、反応器200を開放し、高温の溶媒を用いて化学的高温洗浄する時間を効果的に減少させ、洗浄のために運転を停止する際に発生する生産量の減少問題および洗浄コストの増加問題を解決することができる。また、洗浄後における反応正常化時間が短縮され、反応安定性が向上することができる。
【0026】
本発明の一実施形態によると、前記反応器洗浄装置100は、反応器200の上部に形成された孔に一部領域が挿入されて反応器200と結合され、パイプ20を固定する固定部10を含むことができる。
【0027】
前記固定部10は、一部領域が前記反応器200の上部に形成された孔に挿入され、残りの領域が前記反応器200の上部に突出している構造を有することができる。前記反応器200の上部に突出した固定部10の外周面の縁は、前記反応器200の上部に形成された孔の縁より大きく形成されることができる。これにより、前記突出した固定部10の外周面の底面が、前記反応器200の上部に形成された孔の周りに載置され、反応器洗浄装置100が反応器200の上部に安定して固定されることができる。
【0028】
前記固定部10には孔が形成されており、前記孔に、後述のパイプ20を挿入して固定することができる。この際、前記固定部10に形成された孔は、前記固定部10の中央に形成されることができる。
【0029】
本発明の一実施形態によると、前記反応器洗浄装置100は、前記固定部10に形成された孔に挿入され、前記固定部10の下側方向に突出しており、上下方向に長さが調節されるパイプ20を含むことができる。
【0030】
前記パイプ20はゼンマイ式(winding-up type)のものであることができる。例えば、前記パイプ20は、約10cm~50cm間隔の多段パイプがレイヤ(Layer)の形態で重なったものであり、前記固定部10に備えられた制御部11を用いて延長または縮小させることにより、上下方向に長さを調節することができる。このように多段のパイプがレイヤの形態で重なっているゼンマイ式パイプ20は、長いパイプを巻き取りまたは巻き解くことで長さを調節する巻き取り式パイプに比べて、強固に固定された形態で使用可能であるため、高温および高圧の溶媒を噴射して洗浄する際に発生する振動から、スクリーナー40などが安定して運転されることができるという利点がある。
【0031】
前記パイプ20は、固定部10に形成された孔に上下に貫通して挿入される。前記パイプ20は、固定部10に形成された孔の外周面にしっかり差し込まれて動きが防止されるように、その外径が形成されることができる。
【0032】
前記パイプ20の内径の構造は、流体の流れを妨げない限り特に限定されない。前記パイプ20は、上部から下部へ流体が移動しながら、後述の前記パイプ20の下端に備えられた噴射ノズル30に溶媒を移動させることができる。この際、前記パイプ20の材質は、溶媒により腐食されない材質であれば、当業界で用いるパイプ20で形成されることができる。
【0033】
また、前記パイプ20は、後述のスクリーナー40を上下移動させるための手段として用いられることができる。
【0034】
本発明の一実施形態によると、前記反応器洗浄装置100は、パイプ20の上下移動のための制御部11を含むことができる。この際、前記制御部11は固定部10に結合されていることができる。前記制御部11は、パイプ20を上下に垂直移動させるものであれば、構造および作動形態が特に限定されない。
【0035】
例えば、前記制御部11は、パイプ20を上下方向に垂直移動させるための把手を含むことができる。具体的に、前記多段形態で重なっているパイプを反応器200の下側に延長させるためには、前記把手を用いて、縁の大きい段のパイプから1段ずつ延長させることができる。逆に、前記反応器の下側に延長されたパイプを、縁の小さい段のパイプから1段ずつ縮小させて反応器200の上部に移動させることができる。
【0036】
本発明の一実施形態によると、前記反応器洗浄装置100は、前記パイプ20の下端に備えられた噴射ノズル30を含むことができる。前記パイプ20から供給される溶媒は、噴射ノズル30を介して噴射されることができる。この際、前記噴射ノズル30は、高圧の溶媒を噴射し、反応器200の内壁に蓄積された汚染物質300を膨潤(swelling)させるとともに、一部を追い出すためのものであることができる。そのため、前記噴射ノズル30は、反応器200の内壁に向かって溶媒を噴射するように備えられることができる。
【0037】
前記噴射ノズル30とパイプ20を連結させるためのノズル配管をさらに含むことができる。具体的に、前記パイプ20を介して移動した溶媒はノズル配管を介して噴射ノズル30に供給され、前記噴射ノズル30を介して噴射されることができる。
【0038】
前記噴射ノズル30から噴射される溶媒が成す噴射角度は90°以下であることができる。例えば、前記噴射ノズル30から噴射される溶媒が成す噴射角度は、0°~90°、10°~90°、または20°~80°であることができる。上記の範囲内の噴射角度で溶媒を噴射させることで、目的とする領域に溶媒を高圧で噴射し、該当領域に蓄積された汚染物質300を効果的に除去する効果を奏することができる。
【0039】
また、本発明が実現される多様な環境に応じて、噴射ノズル30の個数、それぞれのノズルが向く角度、およびノズル配管の長さなどを多様に調節して実現することができる。
【0040】
本発明の一実施形態によると、前記反応器洗浄装置100は、前記パイプ20の下部側面に備えられたスクリーナー(screener)40を含むことができる。
【0041】
前記スクリーナー40は、パイプ20から反応器200の内壁に向かって突出していることができる。具体的に、前記スクリーナー40は、パイプ20から反応器200の内壁に向かって突出しており、反応器200の内壁に蓄積された汚染物質300を掻き取って除去することができる。
【0042】
前記スクリーナー40の一部領域は、反応器200の内壁と対応する屈曲を有することができる。具体的に、前記スクリーナー40は、パイプ20の下部側面に備えられており、この際、パイプ20と結合する部位を除いた一部領域は、反応器200の内壁と対応する屈曲を有することができる。このように、前記スクリーナー40は、反応器200の内壁と対応する屈曲を有することで、屈曲を有する反応器200の内壁に蓄積された汚染物質300を効果的に掻き取ることができる。
【0043】
前記スクリーナー40は、高い強度の材質を用いて、薄いワイヤの形態で形成されることができる。例えば、前記スクリーナー40は、金属材質で形成されることができる。具体的に、前記スクリーナー40は、高温および高圧の洗浄環境に耐えることができ、かつ腐食の懸念が少ないステンレス鋼(SUS)材質で形成されることができる。
【0044】
前記スクリーナー40は、パイプ20の下部側面に備えられ、かつ前記噴射ノズル30が形成されているパイプ20の下端よりも高い位置に備えられることができる。これにより、前記パイプ20を下側に移動させながら、噴射ノズル30を介して噴射される溶媒により反応器200の内壁に蓄積された汚染物質300を膨潤させ、膨潤された汚染物質300をスクリーナー40を用いて容易に掻き取ることができる。
【0045】
前記スクリーナー40が突出した方向と、噴射ノズル30が向く方向は、同一であることができる。具体的に、前記スクリーナー40が突出した方向と、噴射ノズル30が向く方向は、何れも反応器200の内壁に向かう方向であることができる。これにより、パイプ20が上部から下部に移動しながら、噴射ノズル30から噴射された溶媒により反応器200の内壁の汚染物質300が膨潤および一部追い出され、前記噴射ノズル30より高い位置に備えられたスクリーナー40により、膨潤された汚染物質300が容易に掻き取られることで、反応器200の内壁の汚染物質300が洗浄されることができる。
【0046】
本発明の一実施形態によると、反応器洗浄装置100は、必要に応じて、弁(不図示)、凝縮器(不図示)、再沸器(不図示)、ポンプ(不図示)、分離装置(不図示)、圧縮器(不図示)、および混合器(不図示)などの、必要な装置をさらに設けることができる。
【0047】
本発明によると、反応器の洗浄方法が提供される。前記反応器の洗浄方法は、反応器200の上部の縁に沿って形成された複数の孔(不図示)に、複数の反応器洗浄装置100の固定部10の一部領域を挿入し、反応器200と反応器洗浄装置100を結合するステップと、前記反応器洗浄装置100の固定部10に形成されている孔に挿入されたパイプ20の下端に備えられた噴射ノズル30を用いて、反応器200の内壁に蓄積された汚染物質300に向かって溶媒を噴射するステップと、前記反応器洗浄装置100のパイプ20の長さを調節して反応器200の上部から下部へ垂直移動させながら、前記パイプ20の下部側面に備えられたスクリーナー40を用いて反応器200の内壁の汚染物質300を追い出すステップと、前記反応器200から追い出された汚染物質300を除去するステップと、を含むことができる。
【0048】
本発明の一実施形態によると、反応器の洗浄方法で用いられる反応器洗浄装置100は、上述の反応器洗浄装置100であることができる。
【0049】
本発明の一実施形態によると、反応器200の上部の縁に沿って形成された複数の孔に、複数の反応器洗浄装置100の固定部10の一部領域を挿入し、反応器200と反応器洗浄装置100を結合するステップは、反応器200を洗浄するために準備するステップであることができる。
【0050】
前記反応器200の上部の縁に沿って形成された複数の孔は、前記反応器洗浄装置100の固定部10の一部領域を挿入して固定し、かつ前記固定部10と連結されたパイプ20が上下方向に移動できる程度の直径を有することができる。
【0051】
また、前記反応器200の上部の縁に沿って形成された複数の孔は、反応器200の大きさに応じて、その個数を容易に変更して設計することができる。添付の図1では、反応器200の上部に形成された孔に、単一の反応器洗浄装置100を挿入して反応器200の内壁を洗浄することを示したが、これは単に説明のためのものであり、前記反応器200の上部の縁に沿って形成された孔、および前記孔に結合される反応器洗浄装置100は、それぞれ3個以上であることができる。例えば、前記反応器200の上部の縁に沿って形成された孔、および前記孔に結合される反応器洗浄装置100は、それぞれ3個~20個、3個~15個、または4個~10個であることができる。
【0052】
このように、反応器200の上部の縁に沿って形成された複数の孔に対応する複数の反応器洗浄装置100を用いて反応器200の内部を洗浄する場合、一般に、反応器200の側面を貫通して設けられる温度計および圧力計の位置との干渉を避けるように、反応器洗浄装置100を選択的に設置可能である。そのため、反応器200の洗浄のために、反応器に設けられた温度計および圧力計などの付加設備を解体することが不要であるという利点がある。
【0053】
また、前記反応器200の上部の縁に沿って形成された複数の孔は、反応器200を運転する中には、別の開閉部により閉鎖されることができる。
【0054】
本発明の一実施形態によると、前記反応器洗浄装置100の固定部10に形成されている孔に挿入されたパイプ20の下端に備えられた噴射ノズル30を用いて、反応器200の内壁に蓄積された汚染物質300に向かって溶媒を噴射するステップは、前記反応器200の内壁に蓄積された汚染物質300を膨潤乃至一部追い出すためのステップであることができる。
【0055】
この際、前記噴射ノズル30は、上述のように、反応器洗浄装置100の固定部10に形成されている孔に挿入されたパイプ20の下端に備えられることができ、反応器200の内壁に向かうように形成されることができる。
【0056】
このように、汚染物質300が蓄積された反応器200の内壁に向かうように形成された噴射ノズル30から溶媒を噴射することで、汚染物質300を膨潤させ、汚染物質300の一部を追い出すことができる。
【0057】
また、上述のように、前記噴射ノズル30から噴射される溶媒は90°以下の噴射角度を有することで、目的とする領域の汚染物質300を効果的に膨潤させることができる。
【0058】
前記噴射ノズル30を介して噴射される溶媒の圧力は10bar.g~100bar.gであることができる。例えば、前記噴射ノズル30を介して噴射される溶媒の圧力は、30bar.g~100bar.g、50bar.g~100bar.g、または50bar.g~80bar.gであることができる。上記の範囲内の噴射圧力で溶媒を噴射することで、反応器200の内壁に蓄積された汚染物質300を効果的に膨潤させ、汚染物質300の一部を追い出すことができる。また、前記高圧の溶媒を噴射ノズル30を介して噴射して汚染物質300を膨潤させる場合、後述のスクリーナー40を用いてより容易に追い出すことができる。
【0059】
前記噴射ノズル30を介して噴射される溶媒は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、シクロオクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、および卜リクロロベンゼンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。具体的な例として、前記溶媒は、n-ヘキサン、シクロヘキサン、およびトルエンを含むことができる。前記溶媒は、汚染物質に対する溶解度が高い物質であり、反応器200の内壁に蓄積された汚染物質を膨潤(swelling)させ、後述のスクリーナーを用いて容易に追い出すことができる。
【0060】
例えば、前記反応器200をエチレンのオリゴマー化反応に用いる場合、反応器200の内壁に蓄積される汚染物質300はエチレンの高分子物質であり得る。この際、前記溶媒を汚染物質300に噴射する場合、反応器200の内壁に蓄積された高分子物質をより効果的に膨潤させることができる。
【0061】
前記噴射ノズル30を介して噴射される溶媒の温度は10℃~100℃であることができる。例えば、前記溶媒の温度は、10℃~80℃、20℃~60℃、または20℃~40℃であることができる。上記の範囲内の温度の溶媒を汚染物質300に噴射させる場合、汚染物質300を効果的に膨潤させ、スクリーナー40を用いて掻き取って追い出すことが容易である。
【0062】
本発明の一実施形態によると、前記反応器洗浄装置100のパイプ20の長さを調節して反応器200の上部から下部へ垂直移動させながら、前記パイプ20の下部側面に備えられたスクリーナー40を用いて反応器200の内壁の汚染物質300を追い出すステップは、溶媒噴射により十分に膨潤された汚染物質300を、スクリーナー40を用いて掻き取って物理的に追い出すステップであることができる。
【0063】
本発明の一実施形態によると、前記反応器洗浄装置100の固定部10に形成されている孔に挿入されたパイプ20の下端に備えられた噴射ノズル30を用いて、反応器200の内壁に蓄積された汚染物質300に向かって溶媒を噴射するステップと、前記反応器洗浄装置100のパイプ20の長さを調節して反応器200の上部から下部へ垂直移動させながら、前記パイプ20の下部側面に備えられたスクリーナー40を用いて反応器200の内壁の汚染物質300を追い出すステップは、同時に行われることができる。
【0064】
このように、本発明による反応器の洗浄方法は、反応器200の内壁に蓄積された汚染物質300に対して、噴射ノズル30を用いた溶媒噴射と、スクリーナー40を用いた物理的な追い出しとを同時に行うことで、洗浄時間を減少させ、かつ汚染物質300を効果的に除去することができる。
【0065】
本発明の一実施形態によると、前記反応器の洗浄方法は、反応器を閉鎖した状態で行うことができる。これにより、反応器200を開放して高温の溶媒を用いて化学的高温洗浄する時間を効果的に減少させ、洗浄のために運転を停止する際に発生する生産量の減少問題および洗浄コストの増加問題を解決することができ、洗浄後における反応正常化時間が短縮され、反応安定性が向上することができる。
【0066】
以上、本発明に係る反応器洗浄装置および反応器の洗浄方法を記載および図示したが、上記の記載および図示は、本発明の理解のための核心的な構成のみを記載および図示したものであり、前記記載および図示した工程および装置の他に、別に記載および図示していない工程および装置が、本発明に係る反応器洗浄装置および反応器の洗浄方法を実施するために適宜応用されて用いられることができる。
図1