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特許7195694製パン用油脂組成物、製パン用生地、及びパン類
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】製パン用油脂組成物、製パン用生地、及びパン類
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20221219BHJP
   A21D 2/10 20060101ALI20221219BHJP
   A21D 2/26 20060101ALI20221219BHJP
   A21D 2/16 20060101ALI20221219BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20221219BHJP
【FI】
A23D7/00 506
A21D2/10
A21D2/26
A21D2/16
A21D13/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018031779
(22)【出願日】2018-02-26
(65)【公開番号】P2019146495
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野口 修
(72)【発明者】
【氏名】▲羽▼染 芳宗
(72)【発明者】
【氏名】小澤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 一郎
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-108690(JP,A)
【文献】特開2000-157169(JP,A)
【文献】特開2012-120489(JP,A)
【文献】特開平07-322810(JP,A)
【文献】特開2002-153208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00-9/06
A21D 2/00-17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラフィノースを5.5~7.5質量%(無水基準)、及びヘミセルラーゼを含有することを特徴とする製パン用油脂組成物であり、該ラフィノースを水相に含有し、油中水型乳化物である製パン用油脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の製パン用油脂組成物、穀粉、及び水を含有することを特徴とする製パン用生地であって、穀粉100gに対するヘミセルラーゼの酵素活性が、6.0~24.0Uである製パン用生地。
【請求項3】
請求項2に記載の製パン用生地が焼成された状態にあるパン類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製パン用途に適した油脂組成物、該油脂組成物を含有する製パン用生地、及び該製パン用生地が焼成された状態にあるパン類に関する。
【背景技術】
【0002】
パン類は、通常、小麦粉に水、イースト、食塩、油脂、糖類、乳製品等を加えて捏ね上げて調製したパン生地を焼成することによって製造される。近年、消費者の嗜好の多様化に合わせて、さまざまなパン(パン類)が発売されているが、なかでも、ソフトな食感や、ボリューム感のあるパンに人気がある。
従来からパン類のボリューム感を出すために、生地中にアミラーゼやヘミセルラーゼ等の酵素を添加することが行われてきたが、腰折れ(ケービング)が生じる、均一に膨らまず外観が悪くなる、内相のキメが不均一になる、等の問題があった。
【0003】
パン類のボリューム感を出す方法としては、例えば、乳化剤としてプロピレングリコール脂肪酸エステル、及びオレイン酸エステルを含有する乳化剤を特定量含む油脂組成物(特許文献1)や、活性グルテン、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、及びα-アミラーゼを含む油脂組成物(特許文献2)、ヘミセルラーゼ、ジグリセリンモノ脂肪酸エステル、及びプロピレングリコールモノ脂肪酸エステルを特定量含む油脂組成物(特許文献3)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-112039号公報
【文献】特開2006-006161号公報
【文献】特開2015-181434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、いずれの従来の技術も、パン類の、大きなボリューム、均一なキメの内相、及び整った外観を同時に解決するには検討の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、意外にもヘミセルラーゼと特定の糖類とを製パン用油脂組成物に含有させることで上記課題を解決できる点を見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は下記のものを提供する。
【0007】
(1)トレハロース及びラフィノースから選ばれる1種又は2種を4.5~7.5質量%(無水基準)、ならびにヘミセルラーゼを含有することを特徴とする製パン用油脂組成物。
(2)前記油脂組成物は、乳化油脂組成物である(1)に記載の製パン用油脂組成物。
(3)(1)又は(2)に記載の製パン用油脂組成物、穀粉、及び水を含有することを特徴とする製パン用生地であって、穀粉100gに対するヘミセルラーゼの酵素活性が、1.6~32.6Uである製パン用生地。
(4)(3)に記載の製パン用生地が焼成された状態にあるパン類。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パン類に、大きなボリューム、均一なキメの内相、及び整った外観、を与える製パン用油脂組成物、該油脂組成物を含有する製パン用生地、並びに該製パン用生地が焼成された状態にあるパン類が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[製パン用油脂組成物]
本発明の製パン用油脂組成物は、製パン用生地(パン生地)の原料として使用され、トレハロース及びラフィノースから選ばれる1種又は2種を4.5~7.5質量%(無水基準)、ならびにヘミセルラーゼを含有する。
【0010】
[トレハロース]
本発明に使用するトレハロースは、2分子のD-グルコースが1,1-グリコシド結合してできた二糖類であり、食用として使用されるトレハロースであれば特に限定されない。また、トレハロースには、二水和物と無水物があるが、いずれも使用できる。
【0011】
[ラフィノース]
本発明に使用するラフィノースは、フルクトース、ガラクトース、グルコース分子が1つずつグリコシド結合してできた三糖類であり、食用として使用されるラフィノースであれば特に限定されない。また、ラフィノースには、五水和物と無水物があるが、いずれも使用できる。
【0012】
本発明の製パン用油脂組成物中のトレハロース及びラフィノースから選ばれる1種又は2種の含有量は、4.5~7.5質量%(無水基準)であり、好ましくは5.5~7.5質量%(無水基準)、より好ましくは6~7.4質量%(無水基準)、最も好ましくは6.5~7.3質量%(無水基準)である。トレハロース及び/又はラフィノースの水和物を用いる場合は、上記の各数値に{トレハロース又はラフィノースの水和物の分子量/トレハロース又はラフィノースの分子量}を掛け算した値の数値範囲内となる量を秤量して配合することで、製パン用油脂組成物中のトレハロース及びラフィノースから選ばれる1種又は2種の含有量を上記の範囲に調整できる。
トレハロース及びラフィノースから選ばれる1種又は2種の含有量が上記の範囲にあると、本発明のパン類は、ボリュームのより大きなものになる。
また、本発明の製パン用油脂組成物中のトレハロース及びラフィノースから選ばれる1種又は2種の含有量が、4.5質量%(無水基準)未満となると、ボリュームを大きくする効果が得られず、また、7.5質量%(無水基準)より多くなると、製パン用油脂組成物中のトレハロース及び/又はラフィノースの結晶が析出し易くなり、該油脂組成物の物性に悪影響をおよぼす。
【0013】
[ヘミセルラーゼ]
本発明に使用するヘミセルラーゼは、へミセルロース(キシラン、アラビノキシラン、アラビナン、マンナン、ガラクタン、キシログルカン、グルコマンナン等)を基質として加水分解する酵素の総称である。食品に適用できる限り、これら酵素の由来は特に限定されず、動植物、カビ、細菌などから得られた市販の酵素を用いることができる。
本発明に使用するヘミセルラーゼとしては、酵素製剤を使用することもできる。ヘミセルラーゼ酵素製剤1g中のヘミセルラーゼの酵素活性(U)は、好ましくは1000~2500U、より好ましくは1300~2200U、さらにより好ましくは1500~2000Uである。市販のヘミセルラーゼ酵素製剤としては、例えば、天野エンザイム社製のヘミセルラーゼ「アマノ」90、ノボザイムズジャパン社製のペントパン、等を使用することができる。
【0014】
ヘミセルラーゼの酵素活性(U)は、1分間に1μmolのキシロースに相当する還元糖を生成する酵素量を1Uと定義される。ヘミセルラーゼの酵素活性(U)は、Megazyme社製のXylazyme AX Tabletsを用いて測定することができる。具体的には、MES緩衝液(pH6.0)中で染色キシラン基質と酵素反応させ、反応停止後に、酵素分解によって生じた染色断片を吸光度測定する。また、乳化物中のヘミセルラーゼの酵素活性(U)は、油相を60℃以下の品温で完全に溶解後、遠心分離により得られた水相に対して、上記の方法で測定する。
【0015】
本発明の油脂組成物100g中に含有されるヘミセルラーゼは、酵素活性として15~2500Uであることが好ましく、25~2200Uであることがより好ましく、250~2000Uであることがさらにより好ましく、1000~1800Uであることが最も好ましい。ヘミセルラーゼの添加量が上記範囲にあると、本発明の製パン用生地中の穀粉に対してヘミセルラーゼが作用した際にも、パン生地の物性変化が極めて少なく、パン製造時に生地の取り扱いに変化をもたらさないため、通常のパン生地を同じ感覚で取り扱いできる。
【0016】
[油脂]
本発明の製パン用油脂組成物は、油脂を含有する。本発明に使用する油脂としては、食用として使用される油脂であれば特に限定されない。例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、ハイエルシン酸菜種油、キャノーラ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、落花生油、ゴマ油、オリーブ油、カカオ脂、サル脂、牛脂、豚脂、乳脂、魚油等の各種動植物性油脂が挙げられる。また、上記の各種動植物性油脂から選択された1種又は2種以上の動植物性油脂を必要に応じて加工(水素添加、エステル交換、分別等)をして得られる各種加工油脂を本発明における油脂として使用してもよい。上記の任意の油脂は、単独で使用してもよく、2種以上の油脂を適宜配合して混合油として使用してもよい。
【0017】
[他の原料]
本発明の製パン用油脂組成物は、必要に応じて、トレハロース、ラフィノース、ヘミセルラーゼ、及び油脂以外の成分(水、食塩、乳化剤(レシチン、飽和脂肪酸モノグリセリド等)、香料、酵素、糖類、呈味成分、増粘剤、抗酸化剤、色素等)が含まれていてもよい。これらの成分の種類及び配合量等は本発明の効果を阻害しない範囲で適宜調整できる。
【0018】
[製パン用油脂組成物の製造方法]
本発明の製パン用油脂組成物の製造方法は、特に制限されず、公知の油脂組成物の製造条件及び製造方法に基づいて製造できるが、ヘミセルラーゼが失活しない(酵素活性を下げない)品温で製造することが好ましい。例えば、公知の方法に従い、本発明におけるトレハロース及びラフィノース、ヘミセルラーゼ、並びに油脂を混合し、適宜撹拌することで本発明の油脂組成物を製造できる。
なお、本発明の製パン用油脂組成物が、可塑性を有する乳化油脂組成物である場合は、ヘミセルラーゼを添加する工程から急冷可塑化の工程までは、40~60℃の品温で製造することが好ましい。
【0019】
本発明の製パン用油脂組成物は、油相と水相とを油中水型に乳化させた油脂組成物(つまり、乳化油脂組成物)であってもよく、油相からなるものであってもよい。前記乳化油脂組成物としては、マーガリン、ファットスプレッド等が挙げられる。前記油相からなる油脂組成物としては、ショートニング等が挙げられる。本発明の製パン用油脂組成物は、乳化油脂組成物であることが好ましく、マーガリン及びファットスプレッドであることが特に好ましい。
【0020】
本発明の製パン用油脂組成物が乳化油脂組成物である場合、トレハロース及び/又はラフィノース、並びにヘミセルラーゼを含有する水相と、油脂を含有する油相とを別々に調製した後、混合乳化して製造することが好ましい。
【0021】
本発明の製パン用油脂組成物が可塑性を有する場合、油相の調製後又は油相と水相との混合乳化後に、冷却を行い、該油脂組成物を可塑化させることが好ましい。冷却条件は、好ましくは-0.5℃/分以上、さらに好ましくは-5℃/分以上である。前記油脂組成物の冷却は、徐冷却より急冷却の方が好ましい。冷却のために使用する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、マーガリン製造機(ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等)、プレート型熱交換機等が挙げられる。また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組み合わせを、冷却のために使用する機器として使用してもよい。
【0022】
[製パン用生地]
本発明の製パン用生地は、本発明の製パン用油脂組成物、穀粉、及び水を含有し、必要に応じて、イースト、食塩、糖類、乳製品、卵類、添加物等を加えて捏ね上げた生地である。
本発明において、穀粉とは、穀物を挽いて粉状にしたものであり、具体的には、小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉等)、大麦粉、米粉、とうもろこし粉、ライ麦粉、そば粉、大豆粉等が挙げられるが、好ましくは小麦粉を使用する。また、本発明の製パン用生地は、本発明の効果を損なわない限り、本発明の製パン用油脂組成物以外の油脂を含有してもよい。例えば、マーガリン、ショートニング等が挙げられる。
【0023】
本発明の製パン用生地中の穀粉100gに対するヘミセルラーゼの酵素活性は、1.6~32.6Uであることが好ましく、3.0~30.0Uであることがより好ましく、6.0~24.0Uであることがさらにより好ましく、12.0~21.0Uであることが最も好ましい。ヘミセルラーゼの添加量が上記範囲にあると、本発明のパン類は、大きなボリューム、均一なキメの内相、及び整った外観がより優れたものになる。
また、本発明の製パン用生地中の穀粉100gに対するヘミセルラーゼの酵素活性が、32.6Uより多くなると、パンの内相が不均一なキメになる。
【0024】
本発明の製パン用生地中の穀粉100gに対する本発明の製パン用油脂組成物の配合量は、穀粉100gに対するヘミセルラーゼの酵素活性が、所望の活性となるように配合されれば特に限定されないが、0.5~20gが好ましく、1~10gがより好ましく、1~6gが最も好ましい。前記油脂組成物の配合量が上記の範囲にあると、本発明のパン類は、大きなボリューム、均一なキメの内相、及び整った外観がより優れたものになる。
【0025】
本発明の製パン用生地は、製パン用生地を調製するのに一般的に用いられる方法によって製造できる。例えば、直捏法(ストレート法)、中種法、オールインミックス法、老麺法、加糖中種法、液種法などの製造法が挙げられる。
【0026】
[パン類]
本発明のパン類とは、本発明の製パン用生地を用いて、公知の製造条件及び製造方法により製造される食品(パン類)である。本発明のパン類の具体例としては、食パン、菓子パン等が挙げられる。食パンとしては、白食パン(角食パン、山形パン、コッペパン等)、バラエティーブレッド(ホールウィート・ブレッド、スペシャルティ・ブレッド、ベジタブル・ブレッド、フルーツブレッド、ナッツ・ブレッド等)等が挙げられる。菓子パンとしては、日本式菓子パン(あんパン、ジャムパン、クリームパン等)、欧米式菓子パン(デニッシュペストリー、クロワッサン等)、揚げパン、蒸しパン等が挙げられる。
【実施例
【0027】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
〔製パン用油脂組成物の調製-1〕
表1の配合に基づき、油脂(パーム油、大豆白絞油及び大豆硬化油)及び乳化剤(飽和脂肪酸モノグリセリド及びレシチン)を融解混合して油相を調製した。次に表2及び3の配合に基づき、水にヘミセルラーゼ製剤を分散させた後、食塩とトレハロース又はラフィノースを溶解して水相を調製した。得られた油相と水相とを混合・予備乳化して予備乳化物を得た。得られた予備乳化物を、常法に従いコンビネーターを使用して急冷可塑化し、製パン用油脂組成物を得た。なお、前記調製において、ヘミセルラーゼ製剤を添加する工程から急冷可塑化の工程までは、40~50℃の品温で製パン用油脂組成物を調製した。また、対照として、ヘミセルラーゼ製剤、トレハロース、及びラフィノースを配合せずに、上記と同様の手順で製パン用油脂組成物を調整した。
なお、前記製パン用油脂組成物100g中のヘミセルラーゼ酵素活性(U)の計算値は、対照1が0U、実施例1が27U、実施例2、実施例4及び5、並びに比較例1及び2が272U、実施例3が544Uであった。
【0029】
なお、表1~3中の各材料の詳細は下記のとおりである。
パーム油:日清オイリオグループ(株)製造品
大豆白絞油:日清オイリオグループ(株)製、商品名「日清大豆白絞油(S)」
大豆硬化油:日清オイリオグループ(株)製、商品名「大豆硬化油34」
飽和脂肪酸モノグリセリド:理研ビタミン(株)製、商品名「エマルジーP-100」
レシチン:日清オイリオグループ(株)製、商品名「レシチンDX」
トレハロース:(株)林原製、商品名「トレハ」
ラフィノース:(株)明治フードマテリア製、商品名「明治ビートオリゴFP」
マルトース:(株)林原製、商品名「サンマルト-S」
ヘミセルラーゼ:天野エンザイム(株)製、商品名「ヘミセルラーゼ「アマノ」90(力価:1700U/g)」
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
[食パンの製造(70%中種法)-1]
上記調製した製パン用油脂組成物(対照1、実施例1~5、比較例1及び2)を使用し、表4の生地配合及び表5の工程に基づき、ワンローフ型食パン(対照、実施例6~10、比較例3及び4)を製造した。以下、表中の「穀粉%」とは、穀粉の質量(本例では強力粉の総量)を100とした場合の、穀粉に対する、穀粉以外の材料の割合を示す。
なお、穀粉100gに対するヘミセルラーゼの酵素活性(U)の計算値は、実施例6が1.6U、実施例7、実施例9及び10、並びに比較例3及び4が16.3U、実施例3が32.6Uであった。
【0034】
なお、表4中の各材料の詳細は下記のとおりである。
強力粉:日清製粉(株)製、商品名「カメリヤ」
イースト:オリエンタル酵母工業(株)製、商品名「レギュラーイースト」
生地改良剤:オリエンタル酵母工業(株)製、商品名「Cオリエンタルフード」
脱脂粉乳:森永乳業(株)製、商品名「脱脂粉乳」
油脂組成物:上記で調製した製パン用油脂組成物
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
[食パンの評価-1]
下記の方法で、上記で製造した食パンのそれぞれについて、ボリューム、外観、及び内相を評価した。
【0038】
(ボリュームの評価)
上記で製造したワンローフ型食パンについて、焼成から1日後の食パンの比容積を超高速レーザー体積計測機・非接触CCDスリットレーザースキャニング方式(商品名:Selnac-WinVM2000、株式会社アステック製)を用いて測定した。各食パンにつき8個ずつ測定して比容積の平均値を求め、次に対照の食パンの比容積の平均値に対する、実施例又は比較例の食パンの比容積の平均値の比(=実施例又は比較例の食パンの比容積の平均値÷対照の食パンの比容積の平均値)を求め、下記の評価基準に従って評価した。評価結果を表6に示す。なお、対照の食パンの比容積の平均値は、5.95であった。
(採点基準)
1.05以上 :◎
1.01以上1.05未満:○
1.01未満 :×
【0039】
(外観の評価)
上記で製造したワンローフ型食パン(各8検体)について、焼成から1日後に5人の専門パネルが目視により外観の状態について、下記の採点基準に従って総合的に採点をし、5人の合計点から下記の評価基準に従って評価した。評価結果を表6に示す。
(採点基準)
2点:対照の食パンと比べて同等の整った外観
1点:対照の食パンと比べて若干崩れた外観
0点:対照の食パンと比べて崩れた外観
(評価基準)
9以上10以下:◎(非常に良好)
7以上8以下 :○(良好)
0以上6以下 :×(不良)
【0040】
(内相の評価)
上記で製造したワンローフ型食パン(各8検体)について、焼成から1日後に2cm厚でスライスし、切断面の状態について、5人の専門パネルが目視により内相の状態について、下記の採点基準に従って総合的に採点をし、5人の合計点から下記の評価基準に従って評価した。評価結果を表6に示す。
(採点基準)
2点:対照の食パンと比べて同等のキメが細かく、均一な内相
1点:対照の食パンと比べて若干キメが粗く、気泡がやや不均一な内相
0点:対照の食パンと比べてキメが荒く、不均一な内相
(評価基準)
9以上10以下:◎(非常に良好)
7以上8以下 :○(良好)
0以上6以下 :×(不良)
【0041】
【表6】
【0042】
上記の結果より、ヘミセルラーゼを含有し、トレハロース又はラフィノースを含有しない製パン用油脂組成物(比較例1)を用いて製造した食パン(比較例3)は、対照1と比べてボリュームの改善効果は認められなかった。また、ヘミセルラーゼを含有し、マルトースを含有する製パン用油脂組成物(比較例2)を用いて製造した食パン(比較例4)も、対照と比べてボリュームの改善効果は認められなかった。他方、ヘミセルラーゼを含有し、トレハロース又はラフィノースを含有する製パン用油脂組成物(実施例1~5)を用いて製造した食パン(実施例6~10)は、対照1と比べてボリュームの改善効果が認められた。
【0043】
〔製パン用油脂組成物の調製-2〕
表1及び表7の配合に基づき、上記「製パン用油脂組成物の調製-1」と同様に製パン用油脂組成物を調製した。また、対照として、ヘミセルラーゼ製剤、及びトレハロースを配合せずに、上記と同様の手順で製パン用油脂組成物を調整した。なお、表7中の各材料は上記「製パン用油脂組成物の調製-1」で記載のものと同等品を使用した。
なお、前記製パン用油脂組成物100g中のヘミセルラーゼ酵素活性(U)の計算値は、対照2が0U、実施例11が1632Uであった。
【0044】
【表7】
【0045】
[食パンの製造(70%中種法)-2]
上記調製した製パン用油脂組成物(対照2、実施例11)を使用し、表8の生地配合及び表5の工程に基づき、ワンローフ型食パン(対照、及び実施例12)を製造した。以下、表中の「穀粉%」とは、穀粉の質量(本例では強力粉の総量)を100とした場合の、穀粉に対する、穀粉以外の材料の割合を示す。なお、表8中の「油脂組成物」は上記で調製した製パン用油脂組成物(対照2、実施例11)を使用し、「マーガリン」は、日清オイリオグループ(株)製のロイヤルシャープ180を使用した。
【0046】
【表8】
【0047】
[食パンの評価-2]
上記[食パンの評価-1]の記載の方法で、上記で製造した食パンのそれぞれについて、ボリューム、外観、及び内相を評価した。なお、対照2の食パンの比容積の平均値は、5.97であった。評価結果を表9に示す。
なお、穀粉100gに対するヘミセルラーゼの酵素活性(U)の計算値は、実施例12が16.3Uであった。
【0048】
【表9】