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特許7195703多孔質体合成用バーナー及び多孔質体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】多孔質体合成用バーナー及び多孔質体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 8/04 20060101AFI20221219BHJP
   C03B 37/018 20060101ALI20221219BHJP
   F23D 14/22 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C03B8/04 G
C03B37/018 A
F23D14/22 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018230367
(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公開番号】P2020090427
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】権田 智洋
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 光広
(72)【発明者】
【氏名】谷口 達也
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-335131(JP,A)
【文献】特開昭56-054240(JP,A)
【文献】特開平09-071430(JP,A)
【文献】特開昭63-139030(JP,A)
【文献】特開昭56-026740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 8/04
C03B 37/018
C03B 37/012
F23D 14/00
F23D 14/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッド用多孔質体を形成するための多孔質体合成用バーナーであって、
円筒状の供給配管が中心軸まわりに多重配置され、少なくとも1つの供給配管の吐出開口が前記中心軸に対して、ターゲットロッドの回転中心軸方向に偏心しているとともに、
前記吐出開口が偏心した偏心供給配管以外の他の供給配管は、前記中心軸に対して同心円状に配置され、
前記偏心供給配管は、原料ガス及びドーピング用ガスを供給し、前記原料ガスには、ゲルマニウムを含まず、前記ドーピング用ガスには、フッ素を含むことを特徴とする多孔質体合成用バーナー。
【請求項2】
前記偏心供給配管は、前記中心軸から、前記ターゲットロッドの回転中心軸方向であって前記ターゲットロッドの引き上げ方向に偏心していることを特徴とする請求項1に記載の多孔質体合成用バーナー。
【請求項3】
前記偏心供給配管は、前記中心軸から径方向にシフトしていることを特徴とする請求項1に記載の多孔質体合成用バーナー。
【請求項4】
前記偏心供給配管は、該供給配管の吐出側が前記中心軸に対して傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の多孔質体合成用バーナー。
【請求項5】
多孔質体を形成するための多孔質体合成用バーナーであって、
円筒状の供給配管が中心軸まわりに多重配置され、少なくとも1つの供給配管の吐出開口が前記中心軸に対して、ターゲットロッドの回転中心軸方向に偏心しているとともに、
前記吐出開口が偏心した偏心供給配管以外の他の供給配管は、前記中心軸に対して同心円状に配置され、
前記偏心供給配管は、該供給配管の吐出側が前記中心軸に対して傾斜していることを特徴とする多孔質体合成用バーナー。
【請求項6】
前記偏心供給配管は、該偏心供給配管の吐出側で複数の分岐供給配管に分岐し、
各分岐供給配管は、前記中心軸に対して偏心していることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の多孔質体合成用バーナー。
【請求項7】
前記偏心供給配管は、原料ガス及びドーピング用ガスを供給することを特徴とする請求項2~6のいずれか一つに記載の多孔質体合成用バーナー。
【請求項8】
円筒状の供給配管が中心軸まわりに多重配置され、少なくとも1つの供給配管の吐出開口が前記中心軸に対して、ターゲットロッドの回転中心軸方向に偏心し、前記吐出開口が偏心した偏心供給配管以外の他の供給配管が、前記中心軸に対して同心円状に配置された多孔質体合成用バーナーを用い、前記偏心供給配管は、原料ガス及びドーピング用ガスを供給し、前記原料ガスには、ゲルマニウムを含まず、フッ素を含む前記ドーピング用ガスの噴出の偏心によって、所望の屈折率分布をもつクラッド部を形成するもとになる多孔質体を合成することを特徴とする多孔質体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッド部が所望の屈折率分布を形成することができる多孔質体合成用バーナー及び多孔質体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバ用ガラス母材は、生産性を向上させるために大型化が進んでいる。光ファイバ用ガラス母材は、例えば、VAD(Vapor Phase Axial Deposition)法やMCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法、OVD(Outside Vapor Deposition)法などの周知の方法によって作製される。
【0003】
例えば、VAD法においては、ガラス微粒子合成用バーナーに可燃性ガス、助燃性ガス、ガラス原料を導入して火炎加水分解反応させて生成されるガラス微粒子を、回転するターゲット(出発材)の回転軸方向に堆積させて、光ファイバ用ガラス母材の元となる多孔質母材を製造する。この多孔質母材を製造する際に用いるガラス微粒子合成用バーナーとしては、ガラスを材料とした3重管以上の多重管バーナーを使用することが一般的に知られている。
【0004】
なお、特許文献1には、OVD法で光ファイバ用ガラス母材を製造する際、外周に対して内側ポートが偏心した多重管バーナーを用い、ターゲットに対して偏心軸を近づけることによって屈折率制御添加物を均一に添加するものが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、可燃性ガス噴出流路内に助燃性ガスを噴出する複数の小口径ノズルを設け、可燃性ガス領域内に配置された各小口径ノズルの位置がバーナー中心に対して非対称にしたガラス微粒子合成用バーナーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭63-139030号公報
【文献】特開2014-122141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年の光ファイバの特性は低損失、低曲げ損失を満たすため、クラッド部にフッ素等をドープする構造が多用されており、クラッド部の屈折率分布の制御が重要である。また、波長分散や遮断波長等の特性制御のためにもクラッド部の屈折率分布の制御は重要である。しかしながら、従来の同心円状のバーナーでは、バーナーの中心軸に対して上下方向に対称な構造を有しているため、バーナーの上部と下部とで火炎直径や火炎長さ、火炎の噴出速度などは同じであり、多孔質体であるスートのテーパ形状、密度分布の制御が難しく、ガラス状態となった時のクラッド部が所望の屈折率分布となる多孔質体を合成することが困難であった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、クラッド部が所望の屈折率分布を形成することができる多孔質体合成用バーナー及び多孔質体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる多孔質体合成用バーナーは、多孔質体を形成するための多孔質体合成用バーナーであって、円筒状の供給配管が中心軸まわりに多重配置され、少なくとも1つの供給配管の吐出開口が前記中心軸に対して、ターゲットロッドの回転中心軸方向に偏心しているとともに、前記吐出開口が偏心した偏心供給配管以外の他の供給配管は、前記中心軸に対して同心円状に配置されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる多孔質体合成用バーナーは、上記の発明において、前記偏心供給配管は、前記中心軸から径方向にシフトしていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる多孔質体合成用バーナーは、上記の発明において、前記偏心供給配管は、該供給配管の吐出側が前記中心軸に対して傾斜していることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる多孔質体合成用バーナーは、上記の発明において、前記偏心供給配管は、該偏心供給配管の吐出側で複数の分岐供給配管に分岐し、各分岐供給配管は、前記中心軸に対して偏心していることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる多孔質体合成用バーナーは、上記の発明において、前記偏心供給配管は、原料ガス及びドーピング用ガスを供給することを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる多孔質体合成用バーナーは、上記の発明において、前記偏心供給配管は、可燃ガス、助燃性ガス及びシールガスを供給することを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる多孔質体の製造方法は、円筒状の供給配管が中心軸まわりに多重配置され、少なくとも1つの供給配管の吐出開口が前記中心軸に対して、ターゲットロッドの回転中心軸方向に偏心し、前記吐出開口が偏心した偏心供給配管以外の他の供給配管が、前記中心軸に対して同心円状に配置された多孔質体合成用バーナーを用い、ドーピング材料の噴出の偏心によって、所望の屈折率分布をもつクラッド部を形成するもとになる多孔質体を合成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、クラッド部が所望の屈折率分布を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態である多孔質体合成用バーナーを用いた多孔質体合成装置1の概要を示す図である。
図2図2は、図1に示した多孔質体合成用バーナーの構成を示す縦断面図である。
図3図3は、図1に示した多孔質体合成用バーナーをZ方向からみた図である。
図4図4は、図1に示した多孔質体合成用バーナーの変形例1の構成を示す縦断面図である。
図5図5は、実施の形態によって形成されたクラッド部の屈折率分布の一例を示す図である。
図6図6は、偏心した複数の分岐供給配管の一例を示す図である。
図7図7は、本多孔質体の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。本発明者らは、多孔質体を形成するための多孔質体合成用バーナーであって、円筒状の供給配管が中心軸まわりに多重配置され、少なくとも原料ガス及びドーピング用ガスを供給する供給配管の吐出開口が前記中心軸に対して、ターゲットロッドの回転中心軸方向に偏心させることによって、ガラス状態となった時のクラッド部が所望の屈折率分布となる多孔質体の合成が可能であることを見い出した。
【0019】
<装置構成>
図1は、本発明の実施の形態である多孔質体合成用バーナー5を用いた多孔質体合成装置1の概要を示す図である。図1に示すように、多孔質体合成装置1はVAD(Vapor Phase Axial Deposition)法を用いた装置であり、多孔質体合成用バーナー4,5を有する。多孔質体合成装置1は、ターゲットロッド2の下端に二酸化珪素(SiO2)を主成分とするガラス微粒子が堆積された多孔質体としての多孔質母材3が合成される。具体的には、ターゲットロッド2を回転させながら引き上げ、かつ多孔質体合成用バーナー4,5から火炎を吹き付けて多孔質母材3を合成する。多孔質体合成用バーナー4は、コア部を形成するための多孔質体を形成する。多孔質体合成用バーナー5は、コア部のまわりのクラッド部を形成するための多孔質体を形成する。
【0020】
多孔質体合成用バーナー4は、出発材としてのターゲットロッド2に石英系ガラス微粒子を堆積させるため、又は焼き締めを行うため、同心円状の多重管構造となっている。一方、多孔質体合成用バーナー5は、多孔質体合成用バーナー4が形成した多孔質体のまわりに、ガラス化後のクラッド部が所望の屈折率分布を得るように、同心円状の多重管構造のうちの内側の供給配管をバーナーの中心軸Cに対して偏心させている。
【0021】
多孔質体合成用バーナー4には、ガス供給部(図示せず)から、例えば四塩化珪素(SiCl4)などの主原料ガス、可燃ガスである水素(H2)ガス、助燃性ガスである酸素(O2)ガス、及びシールガス(緩衝ガス)であるアルゴン(Ar)ガスなどが同時に流される。石英系ガラス微粒子の堆積においては、気化させたSiCl4ガス、H2ガス、及びO2ガスから構成されるガスが多孔質体合成用バーナー4において点火燃焼されつつ供給される。火炎中で加水分解反応されたSiCl4は、ガラス微粒子となってターゲットロッド2の回転軸方向に堆積されて、多孔質母材3のうちのコア部の対応部分が形成される。このコア部の対応部分の多孔質母材3は、後に光ファイバとなった際のコア部となる。なお、コア部であるため、主原料ガス中にゲルマニウム(Ge)等を含ませても良い。
【0022】
一方、多孔質体合成用バーナー5は、ガス供給部(図示せず)から、例えば四塩化珪素(SiCl4)などの主原料ガス、可燃ガスである水素(H2)ガス、助燃性ガスである酸素(O2)ガス、及びシールガス(緩衝ガス)であるアルゴン(Ar)ガスなどが同時に流される。主原料ガスには、屈折率を低下させるフッ素(F)などのドーピングガス(SF、SiF)が混合される。石英系ガラス微粒子の堆積においては、気化させたSiCl4ガス、SFもしくはSiFガス、H2ガス、及びO2ガスから構成されるガスが多孔質体合成用バーナー5において点火燃焼されつつ供給される。火炎中で加水分解反応されたSiCl4、SFもしくはSiFは、ガラス微粒子となってターゲットロッド2の回転軸方向に堆積されて、多孔質母材3のうちのクラッド部の対応部分が形成される。
【0023】
この際、多孔質体合成用バーナー5の火炎全体の方向は、Z方向に向いているにもかかわらず、ドーピングガスの吹き出し方向は、内側の供給配管が+Y方向あるいは-Y方向に偏心して、ガラス化後のクラッド部の径方向に対する屈折率分布を調整する。すなわち、内側の供給配管の偏心によって多孔質体に取り込まれるフッ素の密度分布を調整して、ガラス化後のクラッド部の径方向に対する屈折率分布を調整する。このクラッド部の対応部分の多孔質母材3は、後に光ファイバとなった際のクラッド部となる。
【0024】
<多孔質体合成用バーナー5の詳細構成>
図2は、図1に示した多孔質体合成用バーナー5の構成を示す縦断面図である。また、図3は、図1に示した多孔質体合成用バーナー5をZ方向からみた図である。
【0025】
図2及び図3に示すように、多孔質体合成用バーナー5は、長手方向(Z方向)に対して垂直な断面が略円形状の8本のガラス管である供給配管11~18のうち、外側の供給配管13~18が、多孔質体合成用バーナー5の中心軸Cに対して互いに同心円状に配置され、内側の供給配管11,12がY方向にシフトして多孔質体合成用バーナー5の中心軸Cに対して偏心した多重管構造をなしている。供給配管11~18は、供給配管11,12を中心に、順次、外周側に配置されている。
【0026】
各供給配管11~18には、-Z方向側で、それぞれガス導入管21~28が接続される。各ガス導入管21~28は、例えばゴムチューブが取り付けられ、ガス供給部(いずれも図示せず)からガスが導入される。導入されたガスは、各供給配管11~18を介してZ方向に噴出される。
【0027】
図3に示すように、各ガス導入管21~28から導入されたガスは、各ポートP1~P8を介して噴出される。
【0028】
多孔質体合成用バーナー5によって火炎を形成する場合、ポートP1には原料ガス(SiCl4)及びドーピングガス(SFもしくはSiF)の混合ガスが流される。なお、必要に応じて可燃性ガスとしてさらにH2ガスや支燃性ガスとしてさらにO2や緩衝ガスとしてArを流してもよい。ポートP2には、可燃性ガスのH2ガスが流される。ポートP3には、シールガスとしてArガスなどの不活性ガスが流される。ポートP4には、助燃性ガスとしてO2ガスが流される。ポートP5にはArガス、ポートP6にはH2ガス、ポートP7にはArガス、ポートP8にはO2ガスが流される。
【0029】
ここで、原料ガス(SiCl4)及びドーピングガス(SFもしくはSiF)の混合ガスが流れるポートP1は、多孔質体合成用バーナー5の中心軸Cに対して偏心しており、この混合ガスによって生じる内側の火炎は、外側の火炎に比して偏心する。この偏心によって、フッ素のドープ位置が制御され、ガラス化後に所望の屈折率分布をもったクラッド部に対応する多孔質体を形成することができる。
【0030】
<変形例1>
図4は、図1に示した多孔質体合成用バーナー5の変形例1の構成を示す縦断面図である。この変形例では、図4に示すように、供給配管11,12を多孔質体合成用バーナー5の中心軸Cに対してシフトするのではなく、供給配管11,12の吐出側で多孔質体合成用バーナー5の中心軸Cに対してY方向に傾斜させた供給配管11a,12aとすることによって、ポートP1,P2からのガスの噴出をバーナーの中心軸Cに対して偏心させている。
【0031】
上記の実施の形態及び変形例1では、円筒状の供給配管11~18がバーナーの中心軸Cまわりに多重配置され、少なくとも原料ガス及びドーピング用ガスを供給する内側の供給配管11,12の吐出開口が多孔質体合成用バーナー5の中心軸Cに対して、Y方向、すなわちターゲットロッド2の回転中心軸CT方向に偏心しているとともに、内側の供給配管11,12以外の外側の供給配管13~18が、多孔質体合成用バーナー5の中心軸Cに対して同心円状に配置されているので、フッ素のドープをY方向に対して任意の位置に噴出することができるので、所望の屈折率分布をもったクラッド部に対応する多孔質体を形成することができる。
【0032】
例えば、図2あるいは図4に示した多孔質体合成用バーナー5のように、内側の供給配管11,12あるいは内側の供給配管11a,12aをY方向に偏心した場合、図5に示すように、コア部30の外周に形成されるクラッド部31の屈折率を、外側に向けて屈折率が小さくなる部分もでき、所望の屈折率分布を得ることも可能になる。
【0033】
<変形例2>
上記の実施の形態及び変形例1では、いずれの供給配管11~18も中心軸Cまわりに多重配置されていた。この変形例2では、図6に示すように、内側の供給配管11を、供給配管11の吐出側で複数の分岐供給配管11c,11dに分岐し、各分岐供給配管11c,11dを中心軸Cに対してY方向に偏心している。
【0034】
このような複数の偏心した分岐供給配管11c、11dを設けることによって、分岐供給配管11c,11dによって形成されるポートP1c,P1dから吐出されるドーピングガスの偏心位置に影響された屈折率分布をもった多孔質体を形成することができる。
【0035】
<多孔質体の製造方法>
図7は、多孔質体の製造方法を示すフローチャートである。図7に示すように、まず、クラッド部の所望の屈折率分布に対応したドーピング材料の噴出分布を持たせることができる、内側の供給配管が偏心した上記の多孔質体合成用バーナー5を配置する(ステップS101)。その後、多孔質体合成用バーナー5による、クラッド部に対応する多孔質体の堆積を行う(ステップS102)。これにより、ガラス化後に所望の屈折率分布をもつクラッド部を形成するもとになる多孔質体を合成することができる。
【0036】
なお、多孔質体合成用バーナー5は、少なくとも原料ガス及びドーピング用ガスを供給する内側の供給配管を偏心すればよい。
【0037】
また、ガラス原料としてSiCl4を用いた例を示したが、ガラス原料として例えばSiHCl3、SiHCl2などを用いてもよいし、シロキサン等の有機材料を用いてもよい。また、可燃性ガスとしては、H2以外にも例えば、CH4、C26、C38、C410などの短鎖炭化水素等を用いてもよい。
【0038】
さらに、上記の実施の形態及び変形例1,2では、8つの供給配管11~18を多重管構成としたが、多重数は、これに限らない。
【0039】
なお、上記の実施の形態及び変形例1,2では、同心円状の多重管構造のうちの内側の供給配管を多孔質体合成用バーナー5の中心軸Cに対して偏心させていたが、これに限らず、偏心する供給配管は、任意の位置、例えば多重管構造の外側であってもよい。例えば、ポートP2,P6などの水素ガスを供給する供給配管のみを偏心してもよい。水素ガスを供給する供給配管が偏心していると、多孔質体合成用バーナー5から供給されるガスの流速及び温度分布が変わり、その結果、フッ素などの多孔質体の密度分布が変わることによって、フッ素などのドーパントのドーピング量が変化しガラス化後のクラッド部の屈折率分布を変化させることができる。すなわち、少なくとも1以上の任意の位置の供給配管が偏心していればよい。
【0040】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施の形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1 多孔質体合成装置
2 ターゲットロッド
3 多孔質母材
4,5 多孔質体合成用バーナー
11,11a,12,12a,13 供給配管
11c,11d 分岐供給配管
21 ガス導入管
30 コア部
31 クラッド部
C 中心軸
CT 回転中心軸
P1~P8,P1c,P1d ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7