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特許7195704パルス生成装置、およびその出力調整方法
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  • 特許-パルス生成装置、およびその出力調整方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】パルス生成装置、およびその出力調整方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/282 20060101AFI20221219BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20221219BHJP
【FI】
G01S7/282 200
G01S13/931
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018558033
(86)(22)【出願日】2017-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2017045737
(87)【国際公開番号】W WO2018117155
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2016249247
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶
(72)【発明者】
【氏名】鍵本 太志
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 禎央
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特許第5697066(JP,B1)
【文献】特開2005-117107(JP,A)
【文献】特開2006-197242(JP,A)
【文献】特開2016-156732(JP,A)
【文献】特開2014-209110(JP,A)
【文献】特開2012-109930(JP,A)
【文献】特開2009-085922(JP,A)
【文献】特表平05-505466(JP,A)
【文献】特開2008-102161(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0259000(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42,
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数の搬送波を生成する高周波発振器と、
前記高周波発振器の出力を調整する出力可変器と、
前記高周波発振器の出力を計測する電力計測部と、
周囲温度を計測する温度計測部と、
時間軸上で所定のパルス幅のパルスを生成するパルス生成器と、前記パルス生成器から出力される時間軸上の前記パルスの形状を周波数軸上において調整するローパスフィルタとを備え、ベースバンドパルスを生成するベースバンドパルス生成部と、
前記高周波発振器の出力を前記ベースバンドパルス生成部から出力されるベースバンドパルスで変調する変調器と、を有し、
前記変調器の出力を高周波パルスとして出力するパルス生成装置であって、
前記周囲温度が第1の閾値を超える場合には、前記電力計測部の計測結果に応じて、前記出力可変器が前記高周波発振器の出力を調整し、
前記周囲温度が前記第1の閾値以下の場合には、前記温度計測部の計測結果に応じて、
前記出力可変器が前記高周波発振器の出力を調整するか、または前記ベースバンドパルス生成部において、時間軸上におけるパルス幅または、周波数軸上におけるパルスの形状の少なくとも一方で調整するかの少なくとも一方でベースバンドパルスを調整するかの少なくとも一方を行うことにより、
前記高周波パルスの出力を周波数軸において所定の範囲内に調整する
ことを特徴とするパルス生成装置。
【請求項2】
前記周囲温度が第1の閾値を超える場合には、前記電力計測部の計測結果に応じて、前記出力可変器が前記高周波発振器の出力を調整し、
前記周囲温度が前記第1の閾値以下の場合には、前記温度計測部の計測結果に応じて、前記出力可変器が前記高周波発振器の出力を調整する時、
前記温度計測部の計測結果に応じて調整される前記高周波発振器の出力の変動量は、前記電力計測部の計測結果に応じて調整される前記高周波発振器の出力の変動量より大きい
ことを特徴とする請求項1に記載のパルス生成装置。
【請求項3】
前記周囲温度が第1の閾値を超える場合には、前記電力計測部の計測結果に応じて、前記出力可変器が前記高周波発振器の出力を調整し、
前記周囲温度が前記第1の閾値以下の場合には、前記温度計測部の計測結果に応じて、前記高周波発振器の出力を調整する時、
前記温度計測部の計測結果に応じた前記高周波発振器の出力の調整は、前記電力計測部の計測結果に応じて調整される前記高周波発振器の出力の変動量より小さい変動量で前記高周波発振器の出力を複数回変動させることを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のパルス生成装置。
【請求項4】
前記周囲温度が前記第1の閾値より低い第2の閾値以下の場合には、前記温度計測部の計測結果に応じて、前記出力可変器が前記高周波発振器の出力を調整すると共に、前記ベースバンドパルス生成部が前記ベースバンドパルスの形状を変形調整する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のパルス生成装置。
【請求項5】
前記ベースバンドパルス生成部は、時間軸上で所定のパルス幅のパルスを生成するパルス生成器、及び前記パルス生成器に制御信号を出力するタイミング生成器をさらに備え、前記パルス生成器はパルス列を生成する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のパルス生成装置。
【請求項6】
前記ベースバンドパルス生成部は、時間軸上で所定のパルス幅のパルスを生成するパルス生成器、及び前記パルス生成器から所定のパルスパターンが出力されるときの制御パターンを記憶するパターンメモリをさらに備える
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のパルス生成装置。
【請求項7】
所定周波数の搬送波をベースバンドパルスで変調して、高周波パルスとして出力するパルス生成装置に用いられ、前記ベースバンドパルスは、所定のパルス幅のモノパルスを二つ以上含むパルス列を基に生成されており、
前記搬送波の電力測定値を取得するステップと、
周囲温度の温度測定値を取得するステップと、
前記電力測定値に応じて、前記搬送波の出力を調整するステップと、
前記温度測定値に応じて、前記搬送波の出力を調整するステップと、
前記温度測定値に応じて、ローパスフィルタによって周波数軸上において前記パルス列の形状を調整するか、前記パルス幅、前記モノパルスの数、前記モノパルスの間隔のうち、少なくとも一つを調整するかの少なくとも一方を行う、変形調整するステップと、を有し、
前記温度測定値が第1の閾値を超える場合には、前記電力測定値に応じて、前記搬送波の出力を調整するステップを行い、
前記温度測定値が前記第1の閾値以下の場合には、前記温度測定値に応じて、前記搬送波の出力を調整するステップか、または周波数軸上において前記パルス列の形状を変形調整するステップかの少なくとも一方を行うことにより、
前記高周波パルスの出力を所定の範囲内に調整する
ことを特徴とするパルス生成装置の出力調整方法。
【請求項8】
前記温度測定値が第1の閾値を超える場合には、前記電力測定値に応じて、前記搬送波の出力を調整するステップを行い、
前記温度測定値が前記第1の閾値以下の場合には、前記温度測定値に応じて、前記搬送波の出力を調整するステップを行う時、
前記温度測定値に応じて調整される前記搬送波の出力の変動量は、前記電力測定値に応じて調整される搬送波の出力の変動量より大きい
ことを特徴とする請求項7に記載のパルス生成装置の出力調整方法。
【請求項9】
前記温度測定値が第1の閾値を超える場合には、前記電力測定値に応じて、前記搬送波の出力を調整するステップを行い、
前記温度測定値が前記第1の閾値以下の場合には、前記温度測定値に応じて、前記搬送波の出力を調整するステップを行う時、
前記温度測定値に応じた前記搬送波の出力調整は、前記電力測定値に応じて調整される前記搬送波の出力の変動量より小さい変動量で、前記搬送波の出力を複数回変動させることを含む
ことを特徴とする請求項7に記載のパルス生成装置の出力調整方法。
【請求項10】
前記温度測定値が前記第1の閾値より低い第2の閾値以下の場合には、前記温度測定値に応じて、前記搬送波の出力を調整するステップと、前記パルス列の形状を変形調整するステップをいずれも行う
ことを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載のパルス生成装置の出力調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インパルスを電波で放射して物体までの距離を測定するレーダ等に用いられるパルス生成装置、およびそのパルス生成装置に用いられる出力調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置等に用いられる一般的な高周波パルス生成装置は、パルス生成器で所定のパルス幅のパルスを生成し、これを所定の周波数特性を持ったローパスフィルタに入力して形状等が調整されたパルスを生成し、該パルスを変調器に入力して、所定周波数の高周波発振器から変調器に入力された搬送波と掛け合わせることで高周波パルスを生成、出力する。生成された高周波パルスは、送信アンテナから放射されて物体までの距離の測定等に用いられる。
【0003】
アンテナから外部に放射される高周波パルスに対しては、他の無線装置等との干渉を回避するために、法的な規制により許可される周波数帯等が規定されている。このため、高周波パルスが法的な規制に準拠するように、高周波パルスのパルスパターンを調整するための技術が開発されており、本出願人らは、特許文献1において、より簡単な構成でパルスパターンを好適に調整して出力するパルス生成装置を提案している。
【0004】
特許文献1では、従来のパルス生成装置のように、ローパスフィルタによってパルスの形状等を調整する代わりに、ローパスフィルタに入力するパルスを2以上のパルスからなるパルス列とし、このパルス列を調整することによって、高周波パルスのパルスパターンを好適に調整する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5697066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明によって、より簡単な構成で、法的な規制に準拠する好適なパルスパターンが実現可能となるが、パルス生成装置が使用される環境(周囲温度等)の変化、経年劣化等によっては、内蔵する高周波発振器や変調器の温度特性、経年劣化による出力減少等により、パルスパターンが変化してしまう恐れがある。海外では、地域によって-40℃から90℃程度の温度変化にさらされるため、高周波パルスのパルスパターンが好適に調整された状態(例えば常温、常湿の出荷時)から大きく変化してしまうと、レーダ装置に搭載された場合に、物体の未検出や誤検出、法的な規制の逸脱、他の無線装置との干渉等を引き起こす恐れがある。
【0007】
例えば、パルス生成装置の出力が増加すると、遠方の物体(反射物)による反射波も比較的大きな強度で検出されるため、反射物が送信繰り返し周期に相当する距離以遠に存在する場合、その反射波はいわゆる多次エコーとして受信信号に混入してしまう。その結果、当該物体までの距離が、多次エコーに基づき算出されることにより、実際より短く検出される問題(誤検出)が生じる。
【0008】
また、パルス生成装置から出力した高周波パルス信号は送受信アンテナ間で結合しレーダ装置の受信信号のノイズ(バックグラウンド信号)となるが、出力が増加すると、ノイズも増大し、その増大がレーダ装置内のA/D変換部を飽和する程度に達すると、特に近傍の物体による反射波がノイズに埋もれてしまい、当該物体が検出されない問題(未検出)を引き起こしてしまう。
【0009】
さらには、パルス生成装置の出力が増加すると、法的な規制を逸脱し、他の無線装置等との干渉を引き起こす恐れもある。
【0010】
一方、パルス生成装置の出力が減少する場合には、レーダ装置の受信信号が過小となるため、物体による反射波が検出されず、未検出が生じる恐れがある。
【0011】
このように、パルス生成装置の出力である高周波パルスが、出荷時の調整された状態から大きく変化すると種々の問題を引き起こす要因となり、例えば自動車のレーダ装置に搭載された場合には、物体の誤検出、未検出による不測の事故を誘発したり、妨害電波となって他の無線装置の誤動作を招いたりする恐れがある。
【0012】
本発明は、上記した課題に着目してなされたものであり、使用温度の変化や経年劣化が生じた場合でも、出力を所定の範囲内に調整可能なパルス生成装置、および当該出力調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係るパルス生成装置は、メインローブとサイドローブとを有する高周波パルスを出力する車載レーダのパルス生成装置であって、所定周波数の搬送波を生成する高周波発振器と、前記高周波発振器の出力を調整する出力可変器と、前記高周波発振器の出力を計測する電力計測部と、周囲温度を計測する温度計測部と、パルス形状の信号を生成するベースバンドパルス生成部と、前記高周波発振器の出力を前記パルス形状の信号で変調する変調器と、を有し、前記周囲温度が第1の閾値以下の場合に、前記サイドローブが所定の出力以下となる様出力または前記パルス形状の少なくとも一方を調整する ことを特徴とする。
【0014】
また上記課題を解決するため、本発明に係るパルス生成装置の他の態様は、所定周波数の搬送波を生成する高周波発振器と、前記高周波発振器の出力を調整する出力可変器と、前記高周波発振器の出力を計測する電力計測部と、周囲温度を計測する温度計測部と、所定のパルス幅のパルスを生成するパルス生成器と、前記パルス生成器から出力されるパルスの形状を調整するローパスフィルタとを備え、パルス形状の信号を生成するベースバンドパルス生成部と、前記高周波発振器の出力を前記ベースバンドパルス生成部から出力されるパルス形状の信号で変調する変調器と、を有し、前記変調器の出力を高周波パルスとして出力するパルス生成装置であって、前記周囲温度が第1の閾値を超える場合には、前記電力計測部の計測結果に応じて、前記出力可変器が前記高周波発振器の出力を調整し、前記周囲温度が前記第1の閾値以下の場合には、前記温度計測部の計測結果に応じて、前記出力可変器が前記高周波発振器の出力を調整するか、または前記ベースバンドパルス生成部が前記パルス形状の信号の形状を変形調整するかの少なくとも一方を行うことにより、前記高周波パルスの出力を所定の範囲内に調整することを特徴とする。
【0015】
また上記課題を解決するため、本発明に係るパルス生成装置は、前記周囲温度が第1の閾値を超える場合には、前記電力計測部の計測結果に応じて、前記出力可変器が前記高周波発振器の出力を調整し、前記周囲温度が前記第1の閾値以下の場合には、前記温度計測部の計測結果に応じて、前記出力可変器が前記高周波発振器の出力を調整する時、前記温度計測部の計測結果に応じて調整される前記高周波発振器の出力の変動量は、前記電力計測部の計測結果に応じて調整される前記高周波発振器の出力の変動量より大きいことを特徴とする。
【0016】
また上記課題を解決するため、本発明に係るパルス生成装置は、前記周囲温度が第1の閾値を超える場合には、前記電力計測部の計測結果に応じて、前記出力可変器が前記高周波発振器の出力を調整し、前記周囲温度が前記第1の閾値以下の場合には、前記温度計測部の計測結果に応じて前記高周波発振器の出力を調整する時、前記温度計測部の計測結果に応じた前記高周波発振器の出力の調整は、前記電力計測部の計測結果に応じて調整される前記高周波発振器の出力の変動量より小さい変動量で前記高周波発振器の出力を複数回変動させることを含むことを特徴とする。
【0017】
また上記課題を解決するため、本発明に係るパルス生成装置は、前記周囲温度が前記第1の閾値より低い第2の閾値以下の場合には、前記温度計側部の計測結果に応じて、前記出力可変器が前記高周波発振器の出力を調整すると共に、前記ベースバンドパルス生成部が前記パルス形状の信号の形状を変形調整することが好ましい。
【0018】
また上記課題を解決するため、本発明に係るパルス生成装置は、前記ベースバンドパルス生成部は、所定のパルス幅のパルスを生成するパルス生成器、及び前記パルス生成器に前記制御信号を出力するタイミング生成器をさらに備え、前記パルス生成器はパルス列を生成することが好ましい。
【0019】
また上記課題を解決するため、本発明に係るパルス生成装置は、所定のパルス幅のパルスを生成するパルス生成器、及び前記パルス生成器から所定のパルスパターンが出力されるときの制御パターンを記憶するパターンメモリをさらに備えることが好ましい。
【0020】
上記課題を解決するため、本発明に係るパルス生成装置の出力調整方法は、所定周波数の搬送波をパルス形状の信号で変調して、メインローブとサイドローブとを有する高周波パルスとして出力する車載レーダのパルス生成装置の出力調整方法であって、前記搬送波の電力測定値を取得するステップと、周囲温度の温度測定値を取得するステップと、前記搬送波の出力を調整するステップと、前記パルス形状の信号の形状を変形調整するステップと、を有し、前記温度測定値が第1の閾値以下の場合に、前記サイドローブが所定の出力以下となる様前記搬送波の出力を調整するステップ、または前記パルス形状の信号の形状を変形調整するステップの少なくとも一方を行うことを特徴とする。
【0021】
また上記課題を解決するため、本発明に係るパルス生成装置の出力調整方法の他の態様は、所定周波数の搬送波をパルス形状の信号で変調して、高周波パルスとして出力するパルス生成装置に用いられ、前記搬送波の電力測定値を取得するステップと、周囲温度の温度測定値を取得するステップと、前記電力測定値に応じて、前記搬送波の出力を調整するステップと、前記温度測定値に応じて、前記搬送波の出力を調整するステップと、前記温度測定値に応じて、前記パルス形状の信号の形状を変形調整するステップと、を有し、前記温度測定値が第1の閾値を超える場合には、前記電力測定値に応じて、前記搬送波の出力を調整するステップを行い、前記温度測定値が前記第1の閾値以下の場合には、前記温度測定値に応じて、前記搬送波の出力を調整するステップか、または前記パルス形状の信号の形状を変形調整するステップかの少なくとも一方を行うことにより、前記高周波パルスの出力を所定の範囲内に調整することを特徴とする。
【0022】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るパルス生成装置の出力調整方法は、前記温度測定値が第1の閾値を超える場合には、前記電力測定値に応じて、前記搬送波の出力を調整するステップを行い、前記温度測定値が前記第1の閾値以下の場合には、前記温度測定値に応じて、前記搬送波の出力を調整するステップを行う時、前記温度測定値に応じて調整される前記搬送波の電力の変動量は、前記電力測定値に応じて調整される搬送波の出力の変動量より大きいことを特徴とする。
【0023】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るパルス生成装置の出力調整方法は、前記温度測定値が第1の閾値を超える場合には、前記電力測定値に応じて、前記搬送波の出力を調整するステップを行い、前記温度測定値が前記第1の閾値以下の場合には、前記温度測定値に応じて、前記搬送波の出力を調整するステップを行う時、前記温度測定値に応じた前記搬送波の出力調整は、前記電力測定値に応じて調整される搬送波の電力の変動量より小さい変動量で、前記搬送波の出力を複数回変動させることを特徴とする。
【0024】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るパルス生成装置の出力調整方法は、前記温度測定値が前記第1の閾値より低い第2の閾値以下の場合には、前記温度測定値に応じて、前記搬送波の出力を調整するステップと、前記パルス形状の信号の形状を変形調整するステップをいずれも行うことが好ましい。
【0025】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るパルス生成装置の出力調整方法は、前記パルス形状の信号は、所定のパルス幅のモノパルスを二つ以上含むパルス列を基に生成されており、前記パルス形状の信号の形状を所定の範囲に変形調整するステップにおいて、前記パルス幅、前記モノパルスの数、前記モノパルスの間隔のうち、少なくとも一つを調整することが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明のパルス生成装置、およびその出力調整方法によれば、周囲温度の変化や経年劣化が生じた場合でも、生成する高周波パルスの出力を所定の範囲内に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係るパルス生成装置の構成を示すブロック図である。
図2】パルス生成装置の出力である高周波パルスの周波数波形図であり、(A)は出力波形の温度変化による変動を示す図、(B)は出力波形の変動に対して高周波発振器の出力による調整を示す図、(C)は出力波形の変動に対してペースバンドパルス生成部による調整を示す図である。
図3】パルス生成装置の出力である高周波パルスの周波数波形図であり、出力波形の経年劣化による出力低下を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るパルス生成装置の出力調整方法を示すフローチャートである。
図5図4のフローチャートに基づき、第1の実施例として調整されたパルス生成装置の出力について、温度特性を示す図である。
図6図4のフローチャートに基づき、第2の実施例として調整されたパルス生成装置の出力について、温度特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明に係るパルス生成装置100の一実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態のパルス生成装置100は、高周波パルスを出力として生成する装置であって、例えば自動車のレーダ装置に用いることができる。当該レーダ装置に搭載された場合、出力される高周波パルスは、レーダ装置の送信アンテナから放射されて、物体によって反射され、その反射波をレーダ装置が受信信号として検出することにより、自動車から物体までの距離を測定することができる。
【0029】
図1に示すように、パルス生成装置100は、所定周波数の搬送波を生成する高周波発振器110と、前記高周波発振器110の出力を調整する出力可変器150と、前記高周波発振器110の出力を計測する電力計測部160と、パルス生成装置100が使用される周囲温度を計測する温度計側部170と、パルス形状の信号を生成するベースバンドパルス生成部120と、前記高周波発振器110から出力される搬送波をベースバンドパルス生成部120から出力されるパルス形状の信号で変調する変調器140と、を有している。パルス生成装置100は、前記変調器140の出力を高周波パルスとして出力する。
【0030】
高周波発振器110で生成する搬送波の所定周波数は、例えば24GHzとすることができ、その場合、高周波パルスは24GHz帯の電波となる。
【0031】
電力計測部160は、高周波発振器110の出力である電力を計測する。その測定結果(測定値)が所定の電力範囲を逸脱した場合、出力可変器150が作動し、高周波発振器110の出力(変調器140の入力)を変化させる。これによって、パルス生成装置100の出力(変調器140の出力)である高周波パルスの振幅を調整することができる。なお、電力計測部160として例えば電力計を用いることができるが、これに限られない。
【0032】
高周波発振器110の出力は通常、使用される周囲温度が低下すると増大し、逆に上昇すると減少する。また、高周波発振器110の出力は通常、経年劣化により減少する。このような高周波発振器110の出力の変化を電力計測部160により計測することができる。
【0033】
温度計側部170は、パルス生成装置100が使用される周囲温度を計測する。周囲温度としては例えば、パルス生成装置100の周囲の温度を計測してもよいし、パルス生成器121、高周波発信器110、変調器140等の温度を計測するようにしてもよい。高周波発信器110、変調器140の温度を計測する場合は、これら高周波が伝搬する部分は温度に対し敏感に特性が変化する観点で好ましい。また、熱による故障防止の観点からパルス生成装置100のうち高温となりやすい部分(例えばパルス生成器121、パルスパターンメモリ123等が密集する箇所等)の温度を計測してもよいし、各素子の発熱の影響を低減した周囲温度を計測するため、高周波発信器110や当該密集する箇所等から離隔して周囲温度を計測するようにしてもよい。さらに、温度計測部170での測定結果自体を周囲温度の測定値とするだけでなく、該測定結果から周囲温度を推定するようにしてもよい。
このような周囲温度が所定の温度範囲1を逸脱した場合、出力可変器150が作動し、高周波発振器110の出力を変化させる。これによって、パルス生成装置110の出力である高周波パルスの振幅を調整することができる。
【0034】
周囲温度が変化すると、上述した高周波発振器110の出力だけでなく、パルス生成装置100に含まれるその他の構成物の出力も変化する。特に、低温側では、変調器140の温度特性の影響が大きくなる。変調器140の温度特性の影響により、高周波パルスの振幅は通常、使用される周囲温度が低下すると増大し、逆に上昇すると減少する。
【0035】
このため、高周波発振器110の出力の変化を計測する電力計測部160だけでなく、温度計側部170で周囲温度を計測することによって、変調器140等の温度特性に応じた、高周波発振器110の出力調整が可能となる。その結果、高周波発振器110の温度特性だけでなく、変調器140等、他の構成物の温度特性を考慮した、高周波パルスの振幅調整が実現できる。
【0036】
さらに、本発明に係るパルス生成装置100は、温度計側部170の測定値が所定の温度範囲2を逸脱した場合、後述するように、ベースバンドパルス生成部120によって、出力となる高周波パルスの形状を変形調整する。
【0037】
温度計側部170の測定値に基づき、上記した高周波発振器110の出力調整を行う所定の温度範囲1と、ベースバンドパルス生成部120による調整(以下、パルス調整と称する)を行う所定の温度範囲2は、同一範囲でも、異なる範囲でも、一部のみが同一範囲でも良い。すなわち、二つの所定の温度範囲の設定によって、高周波発振器110の出力調整、パルス調整のどちらか一方、あるいは両方を併用して、高周波パルスを調整することができる。なお、温度計側部170として例えば温度センサを用いることができるが、これに限られない。
【0038】
本実施形態に係るベースバンドパルス生成部120は、所定のパルス幅のパルスを生成するパルス生成器121と、パルス生成器121から出力されるパルスの形状を調整するローパスフィルタ122と、パルス生成器121に所定の制御信号を出力するタイミング生成器130と、パルス生成器121から出力されるパルスの制御パターンを記憶しておくパルスパターンメモリ123、とを備えている。タイミング生成器130と、パルスパターンメモリ123は、本発明に係るベースバンドパルス生成部120としては、必ずしも必要とされない。
【0039】
パルス生成器121は、モノパルス(単一パルス)、または2以上のモノパルスからなるパルス列を出力させ、この出力がローパスフィルタ122に入力される。ローパスフィルタ122は、所定の遮断周波数より高い周波数成分を遮断または減衰することによって、パルス生成器121から入力されたパルスの形状を調整することができる。ローパスフィルタ122によって形状調整されたパルスが、ベースバンドパルス生成部120の出力であるパルス形状の信号となる。
【0040】
タイミング生成器130は、その出力となる制御信号によって、パルス生成器121の出力をパルス列にすることができる。タイミング生成器130の制御信号により、パルス列を構成するモノパルスの数、各モノパルスのパルス幅(ビット幅)や間隔は、任意に調整可能である。パルス列を構成するモノパルスの数、各モノパルスのビット幅、間隔のいずれか、またはこれらの組合せにより、パルス生成器121から出力されるパルス列を調整すると、ベースバンドパルス生成部120の出力であるパルス形状の信号の形状を調整できる。
【0041】
パルスパターンメモリ123は、タイミング生成器130から出力される制御信号のパターン(制御パターン)を記憶しておくことができる。これにより、パルス生成器121がタイミング生成器130から制御信号を入力して所定のパルス列を生成する代わりに、パルスパターンメモリ123に記憶されている制御パターンをパルス生成器121に入力して、所定のパルスを生成することができる。
【0042】
このようにして、ローパスフィルタ122、タイミング生成器130(タイミング生成器130の代わりにパルスパターンメモリ123の出力をパルス生成器121に入力する場合には、パルスパターンメモリ123)のいずれか、または両者を併用することによって、ベースバンドパルス生成部120の出力となるパルス形状の信号の形状を調整することができる。すなわち、パルス生成器121がモノパルスを出力する場合にはローパスフィルタ122によって、パルス生成器121がパルス列を出力する場合には、ローパスフィルタ122、タイミング生成器130(またはパルスパターンメモリ123)のいずれか、または両者を併用して、ベースバンドパルス生成部120の出力となるパルスの形状を調整できる。両者を併用すると、よりきめ細かい調整が可能となる。
【0043】
形状調整されたベースバンドパルス生成部120の出力を変調器140に入力すると、変調器140の出力(パルス生成装置100の出力)である高周波パルスの形状を調整することができる。このようにしてパルス調整によって、高周波パルスの形状を変形調整することができる。
【0044】
次に、図2を参照して、温度計側部170の測定値に基づく、上記高周波発振器110の出力調整、パルス調整による出力調整の例を説明する。図2は、縦軸をパルス生成装置100の出力(電力)、横軸を周波数とし、パルス生成装置の出力である高周波パルスの周波数波形図を示している。(A)は波形の温度変化による変動を示す図、(B)は波形の変動に対して高周波発振器の出力による調整を示す図、(C)は波形の変動に対してパルス調整を示す図である。
【0045】
図2(A)で示すように、温度計側部170の温度測定値Tが変化する場合、T3、T2、T1(T3>T2>T1)の順に温度が低くなると、パルス生成装置100の出力は、高周波発振器110や変調器140の温度特性等に起因して、使用周波数帯において全体的に増加し、出力波形は上側にシフトしてしまう。
【0046】
温度T3ではパルス生成装置100の出力は法規制範囲内にあるが、温度がT2に下がると、出力波形のうちサイドローブが法規制範囲を逸脱し、サイドローブが最大値となる周波数fsにおいて、出力は法規制範囲を超える問題が生じる。さらに、温度がT1に下がると、サイドローブ、メインローブが共に法規制範囲を逸脱し、サイドローブ、メインローブがそれぞれ最大値となる周波数fs、fmのいずれにおいても、出力が法規制範囲を超えてしまう。
【0047】
図2(B)は、このような温度変化による変動に対して、高周波発振器110の出力調整による高周波パルスの出力調整の例を示す。調整前の高周波パルスの出力波形は、図2(A)同様に、使用温度T2においてサイドローブが法規制範囲を逸脱し、サイドローブが最大値となる周波数fsにおいて、高周波パルスの出力は法規制範囲を超えている。これに対して、高周波発振器110の出力を低下させると、高周波パルスの出力は使用周波数帯において全体的に減少し、高周波パルスの出力波形(図における調整後の出力波形)は下側にシフトする。この結果、高周波パルスの出力は、周波数fsにおいても法規制範囲内に調整される。
【0048】
図2(C)は、パルス調整による高周波パルスの出力調整の例を示す。調整前の高周波パルスの出力波形は、図2(A)同様に、温度T2においてサイドローブが法規制範囲を逸脱し、サイドローブが最大値となる周波数fsにおいて、高周波パルスの出力は法規制範囲を超えている。これに対して、パルス調整を行うと、高周波パルスの出力波形の形状を変化させることができる。図2(C)では、高周波パルスの出力波形(図における調整後の出力波形)はメインローブ、サイドローブが共に緩やかな山型となり、周波数域を広げるように変形している。その結果、サイドローブ、メインローブがそれぞれ最大値となる周波数fm、fsにおける高周波パルスの出力は下がり、周波数fsにおいても法規制範囲内に調整されている。
【0049】
このような高周波パルスの出力波形の変形は、パルス列を構成するモノパルスの数を減少させたり、ローパスフィルタ122を用いたりして、ベースバンドパルス生成部120の出力であるパルス形状の信号の形状を調整することにより実現される。
本実施例においては、タイミング生成器130の制御信号によって、パルス列を構成するモノパルスの数を減少することにより、ベースバンドパルス生成部120の出力であるパルス形状の信号の形状の時間軸上のパルス幅を狭める調整を行っている。これによって、図2(C)のようにパルス生成装置100の出力である高周波パルスの周波数軸上のメインローブ、サイドローブの幅を広げる調整が実現される。
【0050】
図2(B)と(C)ではそれぞれ、高周波発振器110の出力調整、パルス調整による高周波パルスの出力調整例を示したが、両者を併用しても良い。例えば、図2(A)における使用温度T1で示したように、温度が大きく低下した結果、出力波形のサイドローブ、メインローブが共に法規制範囲を逸脱し、高周波パルスの出力が法規制範囲を大きく超えてしまう場合、いずれか一方のみでは、法規制範囲内にうまく調整できない場合がある。その場合には、両者を併用することが効果的である。
【0051】
具体的には、図2(A)の温度T1における出力波形を、高周波発振器110の出力調整によって、図2(A)の温度T2における出力波形と略一致する程度に出力を低下させ、パルス調整によって、図2(C)の温度T2における調整後の出力波形のように変形させると、温度T1においても法規制範囲に調整することができる。
【0052】
このように高周波発振器110の出力調整とパルス調整を併用する場合は、高周波発振器110の出力調整、パルス調整をそれぞれ実施する所定の温度範囲1、2が同一範囲を含むように設定する。同一範囲内においては、両者が共に実施されるため、両者を併用して高周波パルスの出力を調整可能となる。
【0053】
なお、図2では、周囲温度の低下により高周波パルスの出力が増大した場合の調整例を説明したが、逆に、周囲温度の上昇により高周波パルスの出力が低下した場合も、同様の調整方法を用いることができる。
【0054】
次に、図3を参照し、電力計側部160の測定値に基づく、上記高周波発振器110の出力調整による高周波パルスの出力調整の例を説明する。図3は、縦軸を高周波パルスの出力(電力)、横軸を周波数とし、パルス生成装置の出力である高周波パルスの周波数波形図を示しており、出力が調整された状態(例えば出荷時)の出力波形と、経年劣化によって出力が低下した例を示す。
【0055】
図3のように出力が低下する場合には、図2のように上限を規定する法規制範囲を逸脱する問題は通常生じないが、出力低下は、レーダ装置に搭載した場合に物体未検出等の不具合を引き起こしてしまう問題を生じる。このため、出力を増大させる調整を行う。
【0056】
電力計測部160は、高周波発振器110で生成する搬送波の周波数、すなわちメインローブが最大となる周波数fmにおける電力Pmを計測する。その測定値Pmが所定の閾値より低下した場合、出力可変器150を動作させて、高周波発振器110の出力を増大させる。これによって、高周波パルスの出力は使用周波数帯において全体的に増大され、出力波形は上側にシフトする。このようにしてパルス生成装置100の出力である高周波パルスを調整された状態(例えば出荷時)に戻すことができる。
【0057】
なお、図3では経年劣化により高周波パルスの出力が低下した場合に、高周波発振器110の出力を増大させて、高周波パルスの出力を増大させる例を示したが、法規制範囲を超える程度に高周波パルスの出力が増大した場合には、高周波発振器110の出力を低下させて、高周波パルスの出力を低下させる調整を行う。
【0058】
図4は、本発明に係るパルス生成装置100の出力調整方法の一実施形態を示すフローチャートである。図4で示すフローチャートに従って、電力計側部160および温度計測部170の計測結果(測定値)に基づき、図1のパルス生成装置の出力を調整する。
【0059】
図4のフローチャートでは、パルス調整が実施される所定の温度範囲2は低温側閾値T1以下、高周波発振器110の出力調整が実施される所定の温度範囲1は高温側閾値T2以下に設定されており、所定の温度範囲1、2は低温側閾値T1以下で同一範囲である。
【0060】
パルス生成装置100はまず、温度計側部170により温度測定値T、電力計側部160により電力測定値Pを取得する(ステップS1)。温度測定値Tが低温側閾値T1以下の場合(ステップS3、Y)には、周囲温度が低温であって、図2(A)のように高周波パルス出力が法規制範囲を超えて増大している状態にある。このため、図2(B)および(C)で説明したパルス調整および高周波発振器110の出力調整を併用して、高周波パルスの出力調整を行う(ステップS5)。
【0061】
温度測定値Tが低温側閾値T1を超え(ステップS3、N)、低温側閾値T1より高温である高温側閾値T2以下の場合(ステップS7、Y)には、図2(B)で示したように、高周波発振器110による出力調整を行う(ステップS9)。
【0062】
ステップS5、S9の出力調整においては、高周波パルスの出力の変動量Xは、温度測定値Tに応じて決定される。ここで出力の変動量は、調整前と調整後の出力の変動量(差分)である。ステップS5、S9の出力調整をする際には、温度測定値Tに応じた出力の変動量Xだけ、高周波パルスの出力が変動(増加または減少)する。
【0063】
温度測定値Tが高温側閾値T2を超え(ステップS7、N)、電力測定値Pが所定の電力範囲を逸脱する場合(ステップS11、Y)には、図3で示したように、高周波発振器110による出力調整を行う(ステップS13)。ステップS11において、電力測定値が所定の電力範囲を上回り増大した場合には、ステップS13では出力低下調整を行い、ステップS11において、電力測定値が所定の電力範囲を下回り低下した場合には、ステップS13では出力増加調整を行う。
【0064】
ステップS11の出力調整においては、高周波パルスの出力の変動量Yは、電力測定値Pに応じて決定される。ステップS11の出力調整をする際には、電力測定値Pに応じた出力の変動量Yだけ、高周波パルスの出力が変動(増加または減少)する。
【0065】
上記ステップS5、S9、S13を実施後、または電力測定値Pが所定の電力範囲を逸脱しない場合(ステップS11、N)には、所定の次のタイミングでステップS1に戻って、同様の手順を繰り返す。ここで、所定の次のタイミングは適宜設定可能であるが、例えば、高周波パルスを所定回数出力した後としたり、またレーダ装置に搭載される場合には、レーダ装置の測距が終了した後と設定したりすることができる。
【0066】
尚、図4で示すフローチャートの変形例として、温度測定値Tが低温側閾値T1を超え、低温側閾値T1より高温である高温側閾値T2以下の場合に図2(C)で示したパルス調整のみを行なうようにしてもよいし、低温側閾値T1以下の場合に図2(B)で示した高周波発振器110の出力調整を行なう様にしてもよい。もちろん、温度測定値Tが1つの閾値以下となった場合に、パルス調整および高周波発振器110の出力調整を併用するようにしてもよい。
【0067】
図5に、図4のフローチャートに基づき、第1の実施例として調整されたパルス生成装置100の出力について、温度特性を示す。図5は、縦軸が所定の測定周波数におけるパルス生成装置100の出力(電力)、横軸が温度計側部170により取得した温度測定値Tである。温度測定値Tの変化に対して、高周波パルスの出力は直線的に変動し、低温になると出力は増大する。このため、出力調整を行わない場合には、図の一点鎖線で示すように、法規制値を逸脱して増加したり、最低出力設定値を逸脱して減少したりしてしまう。なお、最低出力設定値は、レーダ装置の受信部の検出限界などから適宜設定される。
【0068】
図5の実線は、出力調整を実施した場合の高周波パルスの温度特性である。図4のフローチャート上は閾値1以下の温度範囲でステップS5が実施されるところ、図5では、温度測定値Tが低温側閾値T1と等しい場合に、T1に応じた出力の変動量X1だけ変動する例が示されている。また、図4では低温側閾値T1を超えて高温側閾値T2以下の温度範囲ではステップS9が実施されるところ、図5では、温度測定値Tが高温側閾値T2と等しい場合に、T2に応じた出力の変動量2だけ変動する例が示されている。さらに、図4では高温側閾値T2を超える温度範囲ではステップS13が実施されるところ、図5では、電力計測部160により取得した電力測定値Pに応じた出力の変動量Y1だけ変動する例が示されている。
【0069】
このように、図5では出力の変動量がX1、X2、Y1の出力調整が計3回示されているが、出力調整の回数をより多く実施し、1回あたりの出力の変動量を小さくしてもよく、その場合はより細かい調整が実現できる。また、温度測定値TがT1においてステップS5が、T2においてステップS9が実施されているが、必ずしもT1、T2に等しい場合に出力調整を行う必要はなく、図4のフローチャートに従う温度範囲で適宜実施される。
【0070】
ここで、高温側閾値T2を超える場合(ステップS11)における高周波パルスの出力の変動量Yは、高周波発振器110の出力調整により実現されるが、高周波発振器110の出力の変動量は、電力測定値Pに応じて、調整される。例えば、所定の電力範囲として定められた電力閾値(上限または下限)と電力測定値Pとを比較し、その差が大きければ、高周波発振器110の出力の変動量を大きくし、その差が小さければ、高周波発振器110の出力の変動量を小さく調整する。または、1回に行う高周波発振器110の出力の変動量は固定値とし、出力の変動の回数を調整することで、高周波発振器110の出力の変動量を調整することもできる。すなわち、1回または複数回の出力調整回数と、1回あたりの出力の変動量は、適宜組み合わせて設定可能である。
【0071】
また、高温側閾値T2以下(ステップS5、S9)における高周波パルスの出力の変動量Xは、高周波発振器110の出力調整、パルス調整により実現されるが、ここでの高周波発振器110の出力の変動量は、温度測定値Tに応じて決定される。高周波発振器110や変調器140等の構成物の温度特性を事前に評価することによって、温度測定値Tに応じた高周波発振器110の出力の変動量を設定することができる。
【0072】
第1の実施例においては、温度測定値Tに応じて調整される高周波発振器110の出力の変動量は、電力測定値Pに応じて調整される高周波発振器110の出力の変動量より、大きく設定されている。これにより、高温側閾値T2以下の比較的低温な温度領域において、1回に行う高周波発振器110の出力の変動量を大きくして、出力の変動の回数を減らすことができる。出力の変動の回数が少なくて済むため、より簡易な制御で、パルス生成装置100の出力を所定の範囲内に調整可能となる。
【0073】
図6は、図4のフローチャートに基づき、第2の実施例として調整されたパルス生成装置100の出力について、温度特性を示す。第2の実施例においては、低温側閾値T1を超えて高温側閾値T2以下の温度範囲において、温度測定値Tに応じて高周波発振器110の出力を調整する際、その出力の変動を複数回とし、1回あたりの出力の変動量を電力測定値Pに応じて調整される高周波発振器110の出力の変動量より小さくしている。
【0074】
これによって、図6に示されるように、低温側閾値T1を超えて高温側閾値T2以下の温度範囲において、図5に比べてパルス生成装置100の出力調整の回数は多く、1回あたりの出力の変動量は小さくなっている。具体的には、出力の変動量がX2、X3、X4の出力調整が計3回実施され、X2、X3、X4における縦軸の出力が変動する範囲がY1より狭まっている。このようにしてパルス生成装置100の出力が変動する範囲を狭めることにより、例えば、出力を比較的大きいレベルの範囲内に調整可能となるため、レーダ装置に搭載した場合に、レーダ装置の検出能力を高い水準に維持できる利点がある。
【0075】
なお、図6においては、図5との比較を単純にするため、低温側閾値T1を超えて高温側閾値T2以下の温度範囲においてのみ、出力調整の回数を増やしたが、これ以外の温度範囲においても、出力調整の回数は適宜設定できる。すなわち、1回または複数回の出力調整回数と、1回あたりの出力の変動量は、適宜組み合わせて設定し、パルス生成装置100の出力を所定の範囲内に調整可能である。
【0076】
以上のように、本発明に係るパルス生成装置100、パルス生成装置100の出力調整方法によれば、周囲温度の変化や経年劣化が生じた場合、電力計測部160、温度計側部170の測定結果に応じて、高周波パルスの出力を所定の範囲内に調整することができる。図5および図6において高温側閾値T2を超える温度範囲では、電力計側部160の測定結果に応じて、高周波発振器110の出力調整により高周波パルスの出力を調整することができる。また高温側閾値T2以下の温度範囲では、温度計側部170の測定結果に応じて、高周波発振器110の出力調整により高周波パルスの出力を調整することができる。さらに、低温側閾値T1以下の温度範囲では、温度計側部170の測定結果に応じ、高周波発振器110の出力調整およびパルス調整により高周波パルスの出力を調整することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上記した実施形態および実施例に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、パルス生成装置100には、事前に取得した高周波発振器110や変調器140の温度特性を記憶し、温度測定値T、電力測定値Pに応じて決定される高周波発振器110の出力の変動量等を随時算出する計算処理部を含んでいても良い。
また、以上の実施形態および実施例では、パルス生成装置100の出力の調整範囲の上限を法規制値とした例を示したが、他の上限を設けて、当該上限値を越えない様パルス生成装置100の出力を調整する様にしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
100 パルス生成装置
110 高周波発振器
120 ベースバンドパルス生成部
121 パルス生成器
122 ローパスフィルタ
123 パルスパターンメモリ
130 タイミング生成器
140 変調器
150 出力可変器
160 電力計測部
170 温度計側部
図1
図2
図3
図4
図5
図6