IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特許-SAWデバイスの製造方法 図1
  • 特許-SAWデバイスの製造方法 図2
  • 特許-SAWデバイスの製造方法 図3
  • 特許-SAWデバイスの製造方法 図4
  • 特許-SAWデバイスの製造方法 図5
  • 特許-SAWデバイスの製造方法 図6
  • 特許-SAWデバイスの製造方法 図7
  • 特許-SAWデバイスの製造方法 図8
  • 特許-SAWデバイスの製造方法 図9
  • 特許-SAWデバイスの製造方法 図10
  • 特許-SAWデバイスの製造方法 図11
  • 特許-SAWデバイスの製造方法 図12
  • 特許-SAWデバイスの製造方法 図13
  • 特許-SAWデバイスの製造方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】SAWデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 3/08 20060101AFI20221219BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H03H3/08
H03H9/25 C
H03H9/25 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018080909
(22)【出願日】2018-04-19
(65)【公開番号】P2019192988
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 賢哉
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-126831(JP,A)
【文献】特開2015-159499(JP,A)
【文献】特開2018-001276(JP,A)
【文献】特開2008-219720(JP,A)
【文献】特開2015-216525(JP,A)
【文献】特開2004-336503(JP,A)
【文献】特開平09-027645(JP,A)
【文献】特開2008-211277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SAWデバイスの製造方法であって、
圧電体セラミックス基板の一方の面を研磨して平坦化する圧電体セラミックス研磨ステップと、
該圧電体セラミックス基板より熱膨張係数の低い支持基板の一方の面を研磨して平坦化する支持基板研磨ステップと、
該圧電体セラミックス基板の研磨した該一方の面と該支持基板の研磨した該一方の面とを接合させ積層基板を形成する接合ステップと、
該接合ステップを実施した後に、該圧電体セラミックス基板の他方の面を研削して所定厚みまで薄化する研削ステップと、
該研削ステップを実施した後に、該圧電体セラミックス基板または該支持基板に対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を該支持基板の内部に位置付けて該レーザー光線を照射し、該支持基板の内部に改質層からなる、SAWにより発生される振動を拡散する振動拡散層を形成するステップと、
該改質層を形成するステップの後に、該圧電体セラミックス基板の他方の面に電極パターンを形成する電極形成ステップと、を備えるSAWデバイスの製造方法。
【請求項2】
該改質層を形成するステップは、該レーザー光線を該積層基板の圧電体セラミックス基板側から照射する請求項1に記載のSAWデバイスの製造方法。
【請求項3】
該圧電体セラミックス基板は、タンタル酸リチウム基板又はニオブ酸リチウム基板であり、該支持基板は、シリコン又はサファイアである請求項1又は請求項2に記載のSAWデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SAWデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の通信端末は。800MHz~2500MHz帯で動作する高周波(RF:Radio Frepuency)フィルタを用いている。このRFフィルタとして、圧電体基板の表面を伝搬する表面波を利用したSAW(Surface Acoustic Wave)フィルタが用いられている(例えば、特許文献1参照)。SAWフィルタは、圧電体として用いられるタンタル酸リチウム(LiTaO)からなるタンタル酸リチウム基板、又は圧電体として用いられるニオブ酸リチウム(LiNbO)からなるニオブ酸リチウム基板に櫛形電極を形成している。
【0003】
通信端末は、世界中で爆発的に広がっており、利用される周波数帯域も広がりながら、それぞれ区分される周波数帯が狭くなっている。このために、RFフィルタは、高精度なフィルタリングが必要不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-299967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されたSAWフィルタは、圧電体として用いられるタンタル酸リチウム基板又はニオブ酸リチウム基板の温度変化による膨張収縮の影響で、高精度なフィルタリングが出来なくなるという課題がある。そこで、圧電体自体を薄くして小さくし、圧電体より熱膨張係数が小さい支持基板に圧電体を積層して製造されるSAWフィルタが開発された。この種のSAWフィルタは、温度による膨張収縮の影響を抑制できる。しかしながら、前述したSAWフィルタは、表面弾性波だけでなく、圧電体内部に伝搬し例えば底面で反射した振動がノイズとなり、高精度なフィルタリングのさまたげになるという課題が発生していた。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルタリングの精度の低下を抑制することができるSAWデバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のSAWデバイスの製造方法は、SAWデバイスの製造方法であって、圧電体セラミックス基板の一方の面を研磨して平坦化する圧電体セラミックス研磨ステップと、該圧電体セラミックス基板より熱膨張係数の低い支持基板の一方の面を研磨して平坦化する支持基板研磨ステップと、該圧電体セラミックス基板の研磨した該一方の面と該支持基板の研磨した該一方の面とを接合させ積層基板を形成する接合ステップと、該接合ステップを実施した後に、該圧電体セラミックス基板の他方の面を研削して所定厚みまで薄化する研削ステップと、該研削ステップを実施した後に、該圧電体セラミックス基板または該支持基板に対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を該支持基板の内部に位置付けて該レーザー光線を照射し、該支持基板の内部に改質層からなる、SAWにより発生される振動を拡散する振動拡散層を形成するステップと、該改質層を形成するステップの後に、該圧電体セラミックス基板の他方の面に電極パターンを形成する電極形成ステップと、を備えることを特徴とする。
【0008】
前記SAWデバイスの製造方法において、該改質層を形成するステップは、該レーザー光線を該積層基板の圧電体セラミックス基板側から照射しても良い。
【0009】
前記SAWデバイスの製造方法において、該圧電体セラミックス基板は、タンタル酸リチウム基板又はニオブ酸リチウム基板であり、該支持基板は、シリコン又はサファイアでも良い。
【発明の効果】
【0010】
本願発明は、フィルタリングの精度の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係るSAWデバイスの製造方法により得られる積層基板の斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係るSAWデバイスの製造方法の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の圧電体セラミックス研磨ステップにおいて、圧電体セラミックス基板の他方の面に保護部材を貼着する状態を示す斜視図である。
図4図4は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の圧電体セラミックス研磨ステップにおいて、圧電体セラミックス基板の他方の面に保護部材を貼着した状態を示す斜視図である。
図5図5は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の圧電体セラミックス研磨ステップを示す側面図である。
図6図6は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の支持基板研磨ステップを示す側面図である。
図7図7は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の接合ステップにおいて、圧電体セラミックス基板の一方の面と支持基板の一方の面とを対向した状態を示す側面図である。
図8図8は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の接合ステップにおいて形成された積層基板の側面図である。
図9図9は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の研削ステップを示す側面図である。
図10図10は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の振動拡散層形成ステップを示す側面図である。
図11図11は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の振動拡散層形成ステップ中の圧電体セラミックス基板などの要部を示す断面図である。
図12図12は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の電極形成ステップ後の圧電体セラミックス基板などの要部を示す断面図である。
図13図13は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の分割ステップを示す側面図である。
図14図14は、実施形態1の変形例に係るSAWデバイスの製造方法の振動拡散層形成ステップ中の圧電体セラミックス基板などの要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るSAWデバイスの製造方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係るSAWデバイスの製造方法により得られる積層基板の斜視図である。図2は、実施形態1に係るSAWデバイスの製造方法の流れを示すフローチャートである。
【0014】
実施形態1に係るSAWデバイスの製造方法は、図1に示す積層基板1を製造した後、積層基板1を所定の大きさのSAWフィルタ2に分割する方法である。積層基板1は、図1に示すように、圧電体セラミックス基板3の一方の面3-1と、支持基板4の一方の面4-1とが接合され、圧電体セラミックス基板3と支持基板4とが所定厚み3-2,4-2まで薄化されたものである。
【0015】
支持基板4は、圧電体セラミックス基板3より熱膨張係数が低く、半導体または絶縁体である。実施形態1において、支持基板4は、圧電体セラミックス基板3よりも熱膨張率の低いシリコン、ガラス又はサファイアであるが、本発明では、シリコン又はサファイアに限定されない。実施形態1において、支持基板4の所定厚み4-2は、100μm以上でかつ300μm以下である。
【0016】
圧電体セラミックス基板3は、タンタル酸リチウム(LiTaO)からなるタンタル酸リチウム基板又はニオブ酸リチウム(LiNbO)からなるニオブ酸リチウム基板である。タンタル酸リチウム及びニオブ酸リチウムは、圧電体セラミックスである。実施形態1において、圧電体セラミックス基板3の所定厚み3-2は、1μm以上でかつ15μm以下である。なお、図1は、省略しているが、圧電体セラミックス基板3の他方の面3-3に櫛形の電極パターンが形成されている。
【0017】
また、積層基板1は、圧電体セラミックス基板3の一方の面3-1と、支持基板4の一方の面4-1とが常温接合により接合されている。また、実施形態1において、圧電体セラミックス基板3と、支持基板4とは、互いに外径の等しい円板状に形成されている。
【0018】
実施形態1に係るSAWデバイスの製造方法は、図1に示す積層基板1を製造した後、積層基板1を分割して、SAWフィルタ2を製造する方法である。なお、実施形態1では、SAWフィルタ2は、所定の周波数帯域の電気信号のみを取り出すSAWデバイスである。
【0019】
実施形態1に係るSAWデバイスの製造方法は、図2に示すように、圧電体セラミックス研磨ステップST1と、支持基板研磨ステップST2と、接合ステップST3と、研削ステップST4と、振動拡散層形成ステップST5と、電極形成ステップST6と、分割ステップST7とを備える。
【0020】
(圧電体セラミックス研磨ステップ)
図3は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の圧電体セラミックス研磨ステップにおいて、圧電体セラミックス基板の他方の面に保護部材を貼着する状態を示す斜視図である。図4は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の圧電体セラミックス研磨ステップにおいて、圧電体セラミックス基板の他方の面に保護部材を貼着した状態を示す斜視図である。図5は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の圧電体セラミックス研磨ステップを示す側面図である。
【0021】
圧電体セラミックス研磨ステップST1は、圧電体セラミックス基板3の一方の面3-1を研磨して平坦化するステップである。実施形態1では、圧電体セラミックス研磨ステップST1は、図3に示すように、圧電体セラミックス基板3の他方の面3-3と保護部材13とを間隔をあけて対向させた後、図4に示すように、圧電体セラミックス基板3の他方の面3-3に保護部材13を貼着する。
【0022】
圧電体セラミックス研磨ステップST1では、図5に示すように、研磨装置20がチャックテーブル21に保護部材13を介して圧電体セラミックス基板3の他方の面3-3を吸引保持し、チャックテーブル21を軸心回りに回転させつつ研磨ユニット22の研磨パッド23を軸心回りに回転させて圧電体セラミックス基板3の一方の面3-1に接触させて、一方の面3-1を研磨して、平坦化する。実施形態1において、圧電体セラミックス研磨ステップST1は、研磨液供給源24からアルカリ性の研磨液を供給しながら化学的機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)で圧電体セラミックス基板3の一方の面3-1を研磨するが、本発明では、研磨液を供給することなく研磨するドライポリッシュで圧電体セラミックス基板3の一方の面3-1を研磨しても良い。SAWデバイスの製造方法は、圧電体セラミックス研磨ステップST1後、支持基板研磨ステップST2に進む。
【0023】
(支持基板研磨ステップ)
図6は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の支持基板研磨ステップを示す側面図である。支持基板研磨ステップST2は、圧電体セラミックス基板3より熱膨張係数の低い支持基板4の一方の面4-1を研磨して平坦化するステップである。
【0024】
実施形態1では、支持基板研磨ステップST2は、支持基板4の他方の面4-3に保護部材14を貼着する。支持基板研磨ステップST2では、図6に示すように、研磨装置20がチャックテーブル21に保護部材14を介して支持基板4の他方の面4-3を吸引保持し、チャックテーブル21を軸心回りに回転させつつ研磨ユニット22の研磨パッド23を軸心回りに回転させて支持基板4の一方の面4-1に接触させて、一方の面4-1を研磨して、平坦化する。実施形態1において、支持基板研磨ステップST2は、研磨液供給源24からアルカリ性の研磨液を供給しながら化学的機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)で支持基板4の一方の面4-1を研磨する、又は、研磨液供給源24から純水などの研磨液を供給しながら支持基板4の一方の面4-1を研磨する。また、本発明は、支持基板研磨ステップST2において、研磨液を供給することなく研磨するドライポリッシュで支持基板4の一方の面4-1を研磨しても良い。SAWデバイスの製造方法は、支持基板研磨ステップST2後、接合ステップST3に進む。
【0025】
(接合ステップ)
図7は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の接合ステップにおいて、圧電体セラミックス基板の一方の面と支持基板の一方の面とを対向した状態を示す側面図である。図8は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の接合ステップにおいて形成された積層基板の側面図である。接合ステップST3は、圧電体セラミックス基板3の研磨した一方の面3-1と、支持基板4の研磨した一方の面4-1とを接合させ、積層基板1を形成するステップである。
【0026】
実施形態1では、接合ステップST3は、圧電体セラミックス基板3と支持基板4とを図示しない真空チャンバ内に挿入し、図7に示すように、圧電体セラミックス基板3の一方の面3-1と支持基板4の一方の面4-1とを間隔をあけて対向させる。接合ステップST3は、真空チャンバ内を減圧し、イオンビーム又は原子ビームを一方の面3-1,4-1に照射して、一方の面3-1,4-1を活性化した後、図8に示すように、圧電体セラミックス基板3の一方の面3-1と支持基板4の一方の面4-1とを接合する。即ち、実施形態1では、圧電体セラミックス基板3の一方の面3-1と支持基板4の一方の面4-1とを常温接合で接合して、積層基板1を形成する。SAWデバイスの製造方法は、接合ステップST3後、研削ステップST4に進む。
【0027】
(研削ステップ)
図9は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の研削ステップを示す側面図である。研削ステップST4は、接合ステップST3を実施した後に、圧電体セラミックス基板3の他方の面3-3を研削して、圧電体セラミックス基板3を所定厚み3-2まで薄化するステップである。
【0028】
実施形態1では、研削ステップST4は、圧電体セラミックス基板3の他方の面3-3に貼着した保護部材13を他方の面3-3から剥離する。研削ステップST4では、図9に示すように、研削装置30がチャックテーブル31に保護部材14を介して支持基板4の他方の面4-3を吸引保持し、チャックテーブル31を軸心回りに回転させつつ研削ユニット32の研削ホイール33を軸心回りに回転させて圧電体セラミックス基板3の他方の面3-3に研削砥石34を接触させて、他方の面3-3を研削して、圧電体セラミックス基板3を所定厚み3-2まで薄化する。また、実施形態1では、研削ステップST4では、所定厚み3-2まで薄化した後、保護部材14を介して支持基板4の他方の面4-3を研磨装置20のチャックテーブル21に吸引保持した後、圧電体セラミックス基板3の他方の面3-3を圧電体セラミックス研磨ステップST1と同様に研磨し、平坦化する。SAWデバイスの製造方法は、研削ステップST4後、振動拡散層形成ステップST5に進む。
【0029】
(振動拡散層形成ステップ)
図10は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の振動拡散層形成ステップを示す側面図である。図11は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の振動拡散層形成ステップ中の圧電体セラミックス基板などの要部を示す断面図である。
【0030】
振動拡散層形成ステップST5は、研削ステップST4を実施した後に、圧電体セラミックス基板3に対して透過性を有する波長のレーザー光線15の集光点16を圧電体セラミックス基板3の内部に位置付けてレーザー光線15を照射し、圧電体セラミックス基板3の内部に改質層17からなる振動拡散層18を形成するステップである。実施形態1において、振動拡散層形成ステップST5では、図10及び図11に示すように、レーザー加工装置40がチャックテーブル41に保護部材14を介して支持基板4の他方の面4-3を吸引保持し、レーザー光線15を積層基板1の圧電体セラミックス基板3側から照射する。
【0031】
振動拡散層形成ステップST5では、レーザー光線15の集光点16を圧電体セラミックス基板3の内部に設定して、チャックテーブル41とレーザー光線照射ユニット42とを相対的に移動させながらレーザー光線15を圧電体セラミックス基板3に照射する。振動拡散層形成ステップST5では、圧電体セラミックス基板3の内部に改質層17を等間隔に形成する。
【0032】
なお、実施形態1において、レーザー光線15の条件は、以下のように設定される。
波長:1064nm(YVOパルスレーザー)
繰り返し周波数:50kHz~120kHz
出力:0.1W~0.3W
【0033】
また、改質層17とは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。このために、改質層17は、圧電体セラミックス基板3の内部を伝搬する振動が衝突すると、この振動を拡散する。SAWデバイスの製造方法は、振動拡散層形成ステップST5後、電極形成ステップST6に進む。
【0034】
(電極形成ステップ)
図12は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の電極形成ステップ後の圧電体セラミックス基板などの要部を示す断面図である。電極形成ステップST6は、振動拡散層形成ステップST5の後に、圧電体セラミックス基板3の他方の面3-3に電極パターン5を形成するステップである。実施形態1において、電極形成ステップST6では、圧電体セラミックス基板3の他方の面3-3にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる薄膜で所定の周波数の電気信号を取り出すことができる電極パターン5を形成する。電極パターン5は、櫛形に形成されている。SAWデバイスの製造方法は、電極形成ステップST6後、分割ステップST7に進む。
【0035】
(分割ステップ)
図13は、図2に示されたSAWデバイスの製造方法の分割ステップを示す側面図である。分割ステップST7は、電極形成ステップST6の後に、積層基板1を切削して、個々のSAWフィルタ2に分割するステップである。なお、図13は、電極パターン5を省略している。
【0036】
実施形態1において、分割ステップST7では、図13に示すように、切削装置50がチャックテーブル51に保護部材14を介して支持基板4の他方の面4-3を吸引保持し、アライメントを遂行した後、切削ユニット52の回転される切削ブレード53を積層基板1に保護部材14に到達するまで切り込ませて、積層基板1を個々のSAWフィルタ2に分割する。SAWデバイスの製造方法は、分割ステップST7後、終了する。なお、分割ステップST7により分割されたSAWフィルタ2は、図示しないピックアップにより保護部材14からピックアップされる。
【0037】
以上説明したように、実施形態1に係るSAWデバイスの製造方法は、振動拡散層形成ステップST5において、圧電体セラミックス基板3の内部にレーザー光線15の照射により改質層17からなる振動拡散層18を形成する。このために、実施形態1に係るSAWデバイスの製造方法は、圧電体セラミックス基板3の内部に形成した改質層17によって、圧電体セラミックス基板3の内部に伝搬する振動を拡散する。その結果、実施形態1に係るSAWデバイスの製造方法は、SAWフィルタ2が、圧電体セラミックス基板3の内部に伝搬する振動を表面弾性波の所定の周波数の電気信号とともに取り出すことを抑制でき、即ち、圧電体セラミックス基板3の内部に伝搬する振動が表面弾性波の所定の周波数の電気信号のノイズとなってしまうことを抑制することができる。したがって、実施形態1に係るSAWデバイスの製造方法は、SAWフィルタ2が取り出す電気信号の周波数の誤差を抑制でき、即ち、SAWフィルタ2のフィルタリングの精度の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0038】
また、実施形態1に係るSAWデバイスの製造方法は、レーザー光線15を圧電体セラミックス基板3側から照射するので、レーザー光線15から受ける支持基板4のダメージを抑制することができる。
【0039】
〔変形例〕
本発明の実施形態1の変形例に係るSAWデバイスの製造方法を図面に基づいて説明する。図14は、実施形態1の変形例に係るSAWデバイスの製造方法の振動拡散層形成ステップ中の圧電体セラミックス基板などの要部を示す断面図である。なお、図14は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
変形例に係るSAWデバイスの製造方法は、振動拡散層形成ステップST5において、改質層17からなる振動拡散層18を支持基板4に形成すること以外、実施形態1と同じである。
【0041】
変形例に係るSAWデバイスの製造方法の振動拡散層形成ステップST5は、研削ステップST4を実施した後に、圧電体セラミックス基板3及び支持基板4に対して透過性を有する波長のレーザー光線15の集光点16を支持基板4の内部に位置付けてレーザー光線15を照射し、支持基板4の内部に改質層17からなる振動拡散層18を形成するステップである。変形例において、振動拡散層形成ステップST5では、図14に示すように、レーザー加工装置40がチャックテーブル41に保護部材14を介して支持基板4の他方の面4-3を吸引保持し、レーザー光線15を積層基板1の圧電体セラミックス基板3側から照射する。
【0042】
振動拡散層形成ステップST5では、レーザー光線15の集光点16を支持基板4の内部に設定して、チャックテーブル41とレーザー光線照射ユニット42とを相対的に移動させながらレーザー光線15を圧電体セラミックス基板3に照射する。振動拡散層形成ステップST5では、支持基板4の内部に改質層17を等間隔に形成する。実施形態1では、振動拡散層形成ステップST5は、支持基板4の内部のうちの支持基板4の厚みを2等分にする位置よりも一方の面4-1寄りの位置に改質層17を形成するが、本発明では、改質層17を形成する位置は図14に示す位置に限定されない。
【0043】
なお、変形例において、レーザー光線15の条件は、例えば、以下のように設定される。
波長:1064nm(YVO4パルスレーザー)
繰り返し周波数:50kHz~120kHz
出力:0.1W~0.3W
【0044】
また、変形例において、支持基板4の内部に形成される改質層17は、圧電体セラミックス基板3の内部を伝搬して支持基板4の内部に伝搬した振動が衝突すると、この振動を拡散する。
【0045】
実施形態1の変形例に係るSAWデバイスの製造方法は、振動拡散層形成ステップST5において、支持基板4の内部にレーザー光線15の照射により改質層17からなる振動拡散層18を形成するために、改質層17によって、圧電体セラミックス基板3及び支持基板4の内部に伝搬する振動を拡散する。その結果、実施形態1の変形例に係るSAWデバイスの製造方法は、実施形態1と同様に、SAWフィルタ2のフィルタリングの精度の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本発明は、振動拡散層形成ステップST5において、支持基板4側からレーザー光線15を積層基板1に入射させて、改質層17を積層基板1の圧電体セラミックス基板3または支持基板4に形成しても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 積層基板
2 SAWフィルタ(SAWデバイス)
3 圧電体セラミックス基板
3-1 一方の面
3-2 所定厚み
3-3 他方の面
4 支持基板
4-1 一方の面
4-2 所定厚み
4-3 他方の面
5 電極パターン
15 レーザー光線
16 集光点
17 改質層
18 振動拡散層
ST1 圧電体セラミックス研磨ステップ
ST2 支持基板研磨ステップ
ST3 接合ステップ
ST4 研削ステップ
ST5 振動拡散層形成ステップ
ST6 電極形成ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14