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特許7195992容器及びそれを用いた即席食品並びに即席食品の調理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】容器及びそれを用いた即席食品並びに即席食品の調理方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20221219BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20221219BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20221219BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20221219BHJP
   A23L 7/10 20160101ALN20221219BHJP
【FI】
B65D81/34 A
A23L35/00
A23L5/00 G
A23L5/10 F
A23L7/10 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019059606
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020158162
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】小松 雅史
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-172171(JP,A)
【文献】特開2011-128087(JP,A)
【文献】特開平11-100075(JP,A)
【文献】特開2014-158423(JP,A)
【文献】特開2005-231665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
A23L 35/00
A23L 5/00
A23L 5/10
A23L 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注湯によって復元される即席食品であり、注湯時に水面よりも上に浮遊してしまう食品のための容器であって、
前記容器の内壁面に目安線が設けられており、
目安線の直下に3~10mm幅の色帯が設けられている容器。
【請求項2】
注湯によって復元される即席食品であり、注湯時に水面よりも上に浮遊してしまう食品のための容器であって、
前記容器の内壁面に目安線が設けられており、
目安線を境に壁面の色が異なっている容器。
【請求項3】
注湯によって復元する即席食品であって、
注湯時に水面よりも上に浮遊する食品が請求項1に記載の容器に充填されている即席食品。
【請求項4】
注湯によって復元する即席食品であって、
注湯時に水面よりも上に浮遊する食品が請求項2に記載の容器に充填されている即席食品。
【請求項5】
注湯によって復元される即席食品の調理方法であって、
注湯時に水面よりも上に浮遊してしまう食品が入った請求項1記載の容器に対して、
浮遊する食品によって目安線が隠れるまで容器内に注湯する即席食品の調理方法。
【請求項6】
注湯によって復元される即席食品の調理方法であって、
注湯時に水面よりも上に浮遊してしまう食品が入った請求項2記載の容器に対して、
浮遊する食品によって視認できる内壁の色が変わるまで容器内に注湯する即席食品の調理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫水線の視認しやすい容器に関する。また、当該容器を用いた即席食品並びにその即席食品の調理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活や生活スタイルなどの変化に伴い、様々な即席食品が販売されている。即席食品の種類としては、例えば、缶詰・レトルト食品、乾燥食品、チルド食品、冷凍食品、粉末食品などが存在する。このうち、乾燥食品としての麺類、米飯、スープなど(以下、単に「麺類など」という場合がある。)は馴染みが深く、よく知られている。
【0003】
一般的に、麺類などは湯戻しを行うで喫食可能となる。麺類などを湯戻しする際には、十分量のお湯を注湯し数分間待って湯戻しを行う。これは、湯戻しをするのに熱量が必要なためである。湯戻しに必要なお湯の量は、喫水線という形で容器内に設けられている。消費者はその喫水線を目標に注湯し、麺類などを復元させる。
【0004】
また、麺類にしても米飯にしても、復元させるために用いた湯は、喫食時において残った状態となることが多い。この残ったお湯は、麺類のスープや、米飯のルーを再現するのに利用されている。
【0005】
一方、麺類の中には焼きそばなどのように、喫食時にお湯が残った状態を必要としないものも存在する。このような場合、不要な湯は蓋材に設けられた湯切り穴を使って排湯されている(特許文献1参照)。もしくは、電子レンジを用いて外部からエネルギーを付加して加熱するような場合には、水量を極力減らし、水をすべて麺類などに吸い切らせる方法も知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-164078号公報
【文献】国際公開2013/146592号
【0007】
ところで、喫食時にお湯が残らないように調理しようとした場合、引用文献1のような排湯型の調理方法は、排湯できる場所や設備が必須となる。そのため、屋外での調理できない場合がある。また、引用文献2のような吸い切り型の調理方法は、外部からエネルギーを付与するための設備や環境が必須となる。つまり、注湯のみで湯戻しを行い、且つ、吸い切り型を目指す場合には、注湯量は極めて重要な因子となる。
【0008】
また、食材によっては注湯によって浮かび上がるものも存在する。食材が水面より上に浮かび上がって来ると、水量が確認しづらくなり、より厳密な注湯が困難になるという問題が生じる。さらに、注湯によって浮かび上がる食材の中には、注湯時に気泡が発生するものも存在する。気泡の発生によっても水量が確認しづらくなり、厳密な注湯が困難になるという問題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、注湯によって浮遊してしまう食材を用いた即席食品であっても、正確な量の注湯によって吸い切り型の調理が可能な容器を提供することを目的とする。また、当該容器を用いた吸い切り型の即席食品並びにその即席食品の調理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは水よりも比重の軽い食材を湯戻しする際に、食材が浮遊して喫水線が見えにくい場合でも正確な注湯量を確認できる方法について検討を行った。そして、容器の内壁に内壁とは異なる色からなる目印を設け、浮遊した食材によって異なる色の目印が隠れるまで注湯することで、簡便かつ高精度で注湯できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
上記課題解決のため、本発明は、容器の内壁面に目安線が設けられており、目安線の直下に3~10mm幅の色帯が設けられている、もしくは、目安線を境に壁面の色が異なっている構成となっている。
【0012】
かかる構成によれば、目安線の直下に所定幅の色帯または目安線を境に壁面の色を変えることで、色の変化による視認性を向上させることができる。これにより、規定量に対して、より正確な注湯を行うことができる。
【0013】
上記課題解決のため、本発明は、注湯して復元する即席食品であって、内壁に目安線を備え、かつ、目安線の直下に3~10mm幅の色帯が設けられた容器内に充填されている、もしくは、内壁に目安線を備え、かつ、目安線を境に壁面の色が異なっている容器内に充填されている構成となっている。
【0014】
かかる構成によれば、目安線の直下に所定幅の色帯または目安線を境に壁面の色を変えることで、色の変化による視認性を向上させることができる。また、規定量に対して、より正確な注湯を行うことができるため、メーカーの意図した復元を容易に再現することが可能な即席食品を提供することができる。
【0015】
上記課題解決のため、本発明は、注湯による即席食品の調理方法であって、内壁に目安線を備え、かつ、目安線の直下に3~10mm幅の色帯が設けられた容器内に充填された注湯によって浮遊する食品に対して、浮遊する食品によって目安線が隠れるまで容器内に注湯する、もしくは、内壁に目安線を備え、かつ、目安線を境に壁面の色が異なっている容器内に充填された注湯によって浮遊する食品に対して、浮遊する食品によって視認できる内壁の色が変わるまで容器内に注湯する構成となっている
【発明の効果】
【0016】
本発明により、視覚による目安線の位置把握が容易となる。具体的には、目安線を境に上下の領域で内壁の色調が異なるため、壁面の色調変化を目印に注湯することができる。これにより、浮遊する食材や、食材から発生した泡が存在しても、正確な注湯を行うことができる
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下では容器の内壁面に目安線を設け、かつ、目安線の直下に所定幅の色帯を設けた紙製容器を例に説明する。また、紙製容器として、断熱性発泡紙製容器を例に説明する。
【0018】
本実施形態の断熱性発泡紙製容器は、胴部材と底部材とから構成されている。断熱性発泡紙製容器は上部が開口した逆円錐台状であり、下部に向かって縮径するテーパーが設けられている。また、胴部材の内壁面には、目安線と目安線の直下に設けられた所定幅の色帯が地面と平行に設けられている。
【0019】
本実施形態にかかる胴部材と底部材は積層体で構成されている。より詳しくは、胴部材の積層体は、紙基材の片面にポリエチレンAの層が、もう片面にポリエチレンAよりも融点の高いポリエチレンBの層で構成されている。また、底部材の積層体は紙基材の少なくとも片面にポリエチレン層を備えている。なお、底部材の積層体に用いるポリエチレンは、ポリエチレンBであることが好ましい。
【0020】
胴部材および底部材に用いられる紙基材は適宜選択し得る。しかし、カップ重量の観点から、坪量が80g/m~400g/mであることが好ましい。また、後述する製造工程において胴部材のポリエチレンA層を発泡させるために、紙基材に水分が含まれていることが好ましい。紙基材の含水率としては、約5~10重量%の範囲内であることが好ましい。
【0021】
次に、ポリエチレンについて説明する。本発明においては種々のポリエチレンを用いることができるが、ポリエチレンAとしては低~中密度ポリエチレンを、ポリエチレンBとしては中~高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。大まかな定義としては、低密度ポリエチレンは、融点が95~130℃、密度が0.91~0.929g/cmのポリエチレンをさす。中密度ポリエチレンは、融点が110~135、密度が0.93~0.941g/cmのポリエチレンをさす。高密度ポリエチレンとは、融点が120~140℃、密度が0.942~0.97g/cmのポリエチレンをさす。
【0022】
なお、ポリエチレンAとポリエチレンBとは、融点の差が5℃以上あることが好ましく、10℃以上あることがより好ましい。ポリエチレンAとポリエチレンBとの融点の差が小さいと、発泡させる際の温度制御が困難となる。
【0023】
胴部材についてより詳しく説明する。成型前の胴部材は扇形の形状をしている。また、胴部材のポリエチレン層Bの面には、目安線と色帯が設けられている。色帯は目安線の直下に設けられており、同一幅となっている。そして、目安線と色帯は胴部材の上縁と下縁との間に設けられている。ここで、目安線と色帯を形成する円弧の中心点は、上縁及び下縁を形成す円弧の中心点と同じである。
【0024】
本実施形態に係る目安線の幅は3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、10mm以上であることがさらにより好ましい。目安線の幅が3mm未満だと視認性が悪く、正確な注湯に向かない。また、目安線の幅の上限は特に制限されないが、目安線を境に下方であれば底面まで、上面であれば開口部までの幅とすることができる。なお、目安線を色帯として設ける場合、色帯は連続した環状に設けてもよいし、破線で環状に設けてもよい。
【0025】
続いて、胴部材の積層体の製造方法について説明する。ここでは、ポリエチレンの塗工方法として既知のTダイを用いた方法を例に説明するが、これに限られるものではない。積層体はロール状に巻かれた紙基材(原紙)を巻き出しながら、ガイドローラーに従って紙基材を最初のTダイまで送る。Tダイから押出ラミネートを行い、溶融した高密度ポリエチレンを紙基材の片面に塗工する。高密度ポリエチレン層を塗工した面をチルドローラーで冷却し、高密度ポリエチレン層を成型する。高密度ポリエチレンの厚みとしては、塗工速度、チルドローラーによる冷却効率などを考慮すると、40~200μmが好ましい。
【0026】
紙基材の片面に高密度ポリエチレン層を成型した後、今度は高密度ポリエチレン層とは反対側の面に低密度ポリエチレン層を成型する。具体的には、Tダイから押出ラミネートを行い、溶融した低密度ポリエチレンを高密度ポリエチレン層とは反対側の紙基材に塗工する。低密度ポリエチレン層を塗工した面をチルドローラーで冷却し、低密度ポリエチレン層を成型する。これにより、紙基材Pの両面にポリエチレン層が設けられた積層体が得られる。なお、低密度ポリエチレン層の厚みとしては、25~80μmであることが好ましい。この範囲であれば、発泡後に十分な断熱性を実現できる。また、高密度ポリエチレン層と低密度ポリエチレン層とを設ける(時間)間隔は短い方が好ましい。間隔が長すぎると紙基材から水分が抜けて、ポリエチレンが発泡し難くなるためである。さらに、本実施形態では高密度ポリエチレンを先に塗工したが、低密度ポリエチレンを先に塗工してもよい。
【0027】
次に、得られた積層体の高密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレン層表面に対して印刷を行う。本実施形態では高密度ポリエチレン側に目安線を印刷する。印刷後、所定の形状に打ち抜くことで、扇形の胴部材を得ることができる。
【0028】
底部材の積層体も、同様にして製造することができる。なお、紙基材の片面のみにポリエチレン層を設ける場合には、上述のTダイいずれかからポリエチレンを塗工すればよい。その後、円形状に打ち抜くことで、底部材を得ることができる。
【0029】
続いて、断熱性発泡紙製容器の製造方法について説明する。まず、上述の打抜きした胴部材および底部材を常用のカップ成形機にかけて紙カップを成型する。このとき、胴部材は高密度ポリエチレン層が容器の内側にくるように成型する。また、底部材は、紙基材の片面のみにポリエチレン層が設けられている場合には、ポリエチレン層が容器の内側にくるようにする。一方、紙基材の両面にポリエチレン層が設けられている場合には、融点の高いポリエチレン層が容器内側にくるようにする。
【0030】
次に、成型された紙カップをオーブンに入れ、胴部材の外壁面を加熱発泡させて、断熱性発泡紙製容器を得る。加熱温度や加熱時間は、用途や目的に応じて適宜調整できる。なお、加熱温度については、低密度ポリエチレンの融点以上、高密度ポリエチレンの融点以下で加熱することが重要である。低密度ポリエチレンの融点未満であると、発泡層を設けることができない。一方、高密度ポリエチレンの融点を超えると、紙カップの内外面全てが発泡してしまったり、十分な発泡が得られなくなってしまったりするため好ましくない。
【0031】
なお、上段では断熱性発泡紙製容器を例に説明したが、容器の材質は紙に限られない。例えば、熱可塑性樹脂、ガラス容器、陶磁器を用いてもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ乳酸(PLA)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジぺート(PBSA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、容器の製造方法としては既知の方法を用いることができる。一例としては、真空成形、プレス成形、射出成形(ダイレクトブロー、インジェクションブロー)が挙げられる。
【実施例
【0032】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。また、本発明の各特性は、以下の方法により評価した。なお、本実施例では、水に浮く食材として膨化乾燥米を用いた。
【0033】
(断熱性発泡紙製容器)
上述の製造方法により逆円錐台状の断熱性発泡紙製容器を製造した。製造した紙製容器の寸法は、開口部の口径が100mm、底面の口径が80mm、容器の高さ91mm、胴部 材と垂線とがなす角度は6.3°とした。また、目安線は、容器の内面であって、底面から鉛直方向に56mmの位置に連続した環状線として設けた。
【0034】
(膨化乾燥米)
膨化乾燥米の製造方法について説明する。うるち精白米700gを洗米し水切りした後、乳化油脂を14g/kg、蔗糖脂肪酸エステルを3g/kg、重合リン酸塩0.3g/kg均一に混合した。これを対米質量135%の加水量で炊飯器(パロマ ガス炊飯器 PR-200EF)を用いて20分間炊飯し、20分間蒸らすことで、炊き上げ後水分50%の炊飯米を得た。これを特許5436711号公報に記載の装置を用いてほぐした。
【0035】
ほぐした炊飯米を、乾燥庫の庫内温度70℃、風速2~3m/s、乾燥時間30分程度の条件で、水分含量26%になるまで一次乾燥した。乾燥後30分間ほど放置した後、篩にかけて結着の酷いものを取り除いた。さらに、1回目ロール間隔0.25mm、2回目ロール間隔0.30mmのロール間を2回通過させて圧扁した。圧扁した押圧米を庫内温度80℃、風速3~4m/s、乾燥時間20分程度の条件で、水分含量16%まで二次乾燥した。
【0036】
二次乾燥後30分ほど放置した後、高温の気流を高速で噴射することのできる高温気流乾燥機で膨化乾燥し、水分含量約8%の膨化乾燥米を得た。ここで、膨化乾燥気流温度はは146℃に設定し、風速50m/s、乾燥時間60秒間の条件で膨化乾燥した。これにより、嵩比重0.47g/mlの膨化乾燥米を得た。
【0037】
嵩比重は、100mlのメスシリンダーに膨化乾燥米を投入し、10回程度シリンダーの底をたたいてならし、100mlの目盛りの位置までの重量を測定することで算出した。例えば、100mlの容量において膨化乾燥米の重量が55gの場合、嵩比重を55/100=0.55とした。
【0038】
(実施例1)
断熱性発泡紙製容器の目安線の直下に、幅5mmの薄黄色帯を連続した環状線として設けた。
当該容器内に膨化乾燥米を120g充填したものを実施例1とした。
【0039】
(実施例2)
実施例1において、底面から目安線までの内面全面を薄黄色にしたこと以外は実施例1と同じである。
【0040】
(比較例1)
実施例1において、目安線の直下に色帯を設けなかったこと以外は実施例1と同じである。
【0041】
(比較例2)
実施例1において、目安線直下の薄黄色帯の幅を1mmとしたこと以外は実施例1と同じである。
【0042】
(試験方法)
各実施例・比較例のサンプルを12個ずつ用意した。6名の被験者に、各サンプルに対して2回ずつ容器内に注湯を行ってもらい、浮遊した食材が目安線に到達したと判断した段階で注湯を止めてもらった。そして、注湯後の容器の平均重量及び標準偏差を求めた。なお、被験者に対しては、次のように説明をしてから試験を行った。各実施例・比較例2については、浮遊した食材及び注湯によって発生した気泡によって色帯が隠れたと判断した時点で注湯を止める。比較例1については、浮遊した食材及び注湯によって発生した気泡が目安線に到達したと判断した時点で注湯を止める。
【0043】
結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
注湯量のバラつきについて検討する。表1から明らかなように、実施例1,2は標準偏差が8以下であり、実施例2の値が最も小さかった。一方、比較例1,2は標準偏差が11以上であり、比較例1の値が最も大きかった。ここで、標準偏差とは、平均からどれぐらいのバラつきがあるかを示す数値である。すなわち、本実施例ではどの程度注湯量にバラつきが出るかを示すものである。表1の結果から、実施例においてはバラつきが少ないが、比較例はバラつきが多いことが示唆された。
【0046】
次に3σをについて検討する。3σとは、正規分布曲線の領域100%に対して、3σ区域(±3σ)には、99.7%の確率で測定データが存在することを示すものである。そのため、モノづくりなどの現場においては、3σで検討するのが一般的である。本実施例においては、3σは平均注湯量からの最大ブレ幅ととらえることができる。表1を見ると、実施例の最大ブレ幅は±23g(実施例1)である。一方、比較例の最大ブレ幅は42g(比較例1)である。すなわち、注湯量の差が19gも生じていることがわかる。また、色帯を設けた場合あっても、色帯の幅が狭いと約8gもの差が生じることがわかる。
【0047】
これらのことから、次のことが示唆された。(1)目安線の直下に色帯を設ける、または、目安線を境に壁面の色を変えると、標準偏差が減少する、(2)壁面の色が変わっている範囲(色帯)が広いほど、標準偏差が減少する。
【0048】
なお、注湯後5分間経過したいずれのサンプルにおいても、注いだ湯は全て食材に吸水されていた。
【0049】
吸い切り型の製品においては、僅かな注湯量の差がテクスチャーに大きな影響(復元しない~べちゃべちゃ)を与える。そのため、いかに精度よく注湯するかが重要となる。本実施形態にかかる容器は、従来の容器(比較例1)よりも格段に精度よく注湯できるという、極めて優れた効果を奏するものである。