(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】スケールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/347 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
G01D5/347 110A
(21)【出願番号】P 2019139604
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100134511
【氏名又は名称】八田 俊之
(72)【発明者】
【氏名】三宅 耕作
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-161524(JP,A)
【文献】特開2011-021909(JP,A)
【文献】特開2002-039799(JP,A)
【文献】特開2013-007676(JP,A)
【文献】特開2007-052153(JP,A)
【文献】特開昭57-146283(JP,A)
【文献】実開平05-094866(JP,U)
【文献】米国特許第5172250(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0012094(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0039463(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26-5/38,
G11B 7/12-7/22,
G02B 6/00-6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射面を有する第1基板と、
前記第1基板上においてスペーサを介して設けられ、前記第1基板と離間して対向する透明な第2基板と、
前記第2基板の前記第1基板と対向する面に設けられ、所定の周期で形成された反射膜によって構成され、前記スペーサよりも薄く形成され、前記光反射面と対向する目盛格子と、を備えることを特徴とするスケール。
【請求項2】
前記第1基板、前記第2基板および前記スペーサは、前記目盛格子が空隙に対して露出するように前記目盛格子を封止し、
前記空隙内の雰囲気は、減圧雰囲気または不活性ガスであることを特徴とする請求項1記載のスケール。
【請求項3】
前記第2基板は、ガラス基板であることを特徴とする請求項1または2に記載のスケール。
【請求項4】
前記目盛格子は、金属薄膜であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のスケール。
【請求項5】
前記第1基板は、前記第2基板側の面に金属薄膜を備えることで、光を反射することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のスケール。
【請求項6】
光を反射する光反射面を有する第1基板と、所定の周期で設けられる反射膜によって構成される目盛格子が前記第1基板の前記光反射面に対向する面に設けられた透明な第2基板とを、前記目盛格子よりも厚く形成されたスペーサを介して接合することを特徴とするスケールの製造方法。
【請求項7】
前記第1基板の前記第2基板側の面に前記スペーサを配置し、前記第1基板の前記第2基板側の面から前記スペーサの前記第2基板側の面にかけて金属薄膜を形成することで、前記第1基板に前記光反射面を形成し、
前記金属薄膜を介して前記スペーサと前記第2基板とを接合することを特徴とする請求項6記載のスケールの製造方法。
【請求項8】
前記第1基板の前記第2基板側の面に金属薄膜を形成することで、前記第1基板に前記光反射面を形成し、
前記スペーサを前記金属薄膜上に配置し、前記金属薄膜を介して前記第1基板と前記スペーサとを接合することを特徴とする請求項6記載のスケールの製造方法。
【請求項9】
前記第1基板、前記第2基板および前記スペーサを用いて前記目盛格子が空隙に対して露出するように前記目盛格子を封止し、
前記空隙内の雰囲気を、減圧雰囲気または不活性ガスとすることを特徴とする請求項6~8のいずれか一項に記載のスケールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、スケールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンコーダなどに用いるためのスケールが開示されている。これらのスケールには、例えば、金属基板に所定の周期で段差を形成することで、目盛格子が構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、段差を設けるための加工時に、加工ムラが生じる場合がある。例えば、段差をエッチングで形成する場合、加工深さが大きくなると段差部分が直角にならず、不均質な傾斜面が形成される場合がある。この場合、境界線の位置精度が悪化してしまう。また、使用中に目盛格子の表面に汚染物が付着することがある。以上のことから、スケールの目盛精度が劣化するおそれがある。
【0005】
1つの側面では、本発明は、目盛精度の劣化を抑制することができるスケールおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、本発明に係るスケールは、光反射面を有する第1基板と、前記第1基板上においてスペーサを介して設けられ、前記第1基板と離間して対向する透明な第2基板と、前記第2基板の前記第1基板と対向する面に設けられ、所定の周期で形成された反射膜によって構成され、前記スペーサよりも薄く形成され、前記光反射面と対向する目盛格子と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記スケールにおいて、前記第1基板、前記第2基板および前記スペーサは、前記目盛格子が空隙に対して露出するように前記目盛格子を封止し、前記空隙内の雰囲気は、減圧雰囲気または不活性ガスとしてもよい。
【0008】
上記スケールにおいて、前記第2基板は、ガラス基板としてもよい。
【0009】
上記スケールにおいて、前記目盛格子は、金属薄膜としてもよい。
【0010】
上記スケールにおいて、前記第1基板は、前記第2基板側の面に金属薄膜を備えることで、光を反射してもよい。
【0011】
本発明に係るスケールの製造方法は、光を反射する光反射面を有する第1基板と、所定の周期で設けられる反射膜によって構成される目盛格子が前記第1基板の前記光反射面に対向する面に設けられた透明な第2基板とを、前記目盛格子よりも厚く形成されたスペーサを介して接合することを特徴とする。
【0012】
上記スケールの製造方法において、前記第1基板の前記第2基板側の面に前記スペーサを配置し、前記第1基板の前記第2基板側の面から前記スペーサの前記第2基板側の面にかけて金属薄膜を形成することで、前記第1基板に前記光反射面を形成し、前記金属薄膜を介して前記スペーサと前記第2基板とを接合してもよい。
【0013】
上記スケールの製造方法において、前記第1基板の前記第2基板側の面に金属薄膜を形成することで、前記第1基板に前記光反射面を形成し、前記スペーサを前記金属薄膜上に配置し、前記金属薄膜を介して前記第1基板と前記スペーサとを接合してもよい。
【0014】
上記スケールの製造方法において、前記第1基板、前記第2基板および前記スペーサを用いて前記目盛格子が空隙に対して露出するように前記目盛格子を封止し、前記空隙内の雰囲気を、減圧雰囲気または不活性ガスとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
目盛精度の劣化を抑制することができるスケールおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)はスケールの平面図であり、(b)はスケールのA-A線断面図である。
【
図2】(a)~(c)は第1実施形態に係るスケールの製造方法を例示する図であり、(d)はスケールの使用例を例示する図である。
【
図3】(a)および(b)は第2実施形態に係るスケールの製造方法を例示する図である。
【
図4】(a)~(c)は第3実施形態に係る製造方法を例示する図であり、(d)はスケールの使用例を例示する図である。
【
図5】(a)および(b)は第4実施形態に係るスケールの製造方法を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態の説明に先立って、スケールの概要について説明する。
【0018】
図1(a)は、スケール200の平面図である。
図1(b)は、スケール200のA-A線断面図である。
図1(a)および
図1(b)で例示するように、スケール200は、例えば、基板210上に、所定の間隔で複数の格子220が配置された凹凸構造の目盛格子を備えた構造を有している。この構成により、スケール200は、凹凸構造の凹部における反射光と凸部における反射光との干渉を利用し、所定の光反射特性を実現する。それにより、スケール200をエンコーダなどに用いることができる。しかしながら、凹凸構造の凹部における反射光と凸部における反射光との干渉を利用するためには、格子220に所定の厚さ(凹凸の深さ)が必要となる。
【0019】
例えば、格子220を構成する段差をエッチングで形成することが考えられる。しかしながら、格子220を形成するための加工深さが大きくなると、加工ムラが生じて段差部分が直角にならず、不均質な傾斜面が形成される場合がある。この場合、各格子220の境界線の位置精度が悪化してしまう。その結果、スケール200の目盛精度が劣化するおそれがある。
【0020】
また、目盛格子の表面に汚染物が付着することがある。この場合、当該汚染物質に起因して、目盛格子の目盛精度が劣化するおそれがある。汚染物質を拭き取ろうとしても、拭き残り残留物が残ることがある。また、拭き取りの際に目盛格子が破損するおそれがある。その結果、スケール200の目盛精度が劣化するおそれがある。
【0021】
そこで、以下の実施形態では、目盛精度の悪化を抑制することができるスケールおよびその製造方法について説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図2(a)~
図2(c)は、第1実施形態に係るスケール100の製造方法を例示する図である。スケール100は、第1基板10、第2基板20などを備える。まず、
図2(a)で例示するように、透明な第2基板20を用意する。第2基板20は、例えばガラス基板である。第2基板20は、板状であるため、主面を2面備えるとともに側面を4面備える。第2基板20は、例えば、0.1mm~10mmの厚さを有する。第2基板20の各主面は、平坦に加工されている。例えば、第2基板20の各主面の表面粗さRzは、1nm以下となっている。例えば、表面加工手法として、精密研磨、気相反応、プラズマ処理などを用いることができる。
【0023】
第2基板20において目盛格子用の主面である目盛面21に、所定の周期で複数の反射膜22を形成する。これらの複数の反射膜22は、複数の格子からなる目盛格子を構成する。複数の反射膜22が並ぶ方向が測定軸である。反射膜22は、金属薄膜などの増反射膜によって構成されている。各反射膜22の厚さは、例えば、100nm以内であり、5nm以上50nm以内とすることもできる。
【0024】
次に、
図2(b)で例示するように、第1基板10を用意する。第1基板10は、特に限定されるものではなく、光反射性を有していてもよく、光透過性を有していてもよい。例えば、第1基板10は、ガラス基板である。第1基板10は、板状であるため、主面を2面備えるとともに側面を4面備える。第1基板10は、例えば、0.1mm~10mmの厚さを有する。例えば、第1基板10は、第2基板20と同じ厚さを有している。第1基板10の各主面は、平坦に加工されている。例えば、第1基板10の各主面の表面粗さRzは、1nm以下となっている。例えば、表面加工手法として、精密研磨、気相反応、プラズマ処理などを用いることができる。第1基板10の主面は、第2基板20の主面と同じ大きさを有している。例えば、第1基板10は、第2基板20と同一の組成を有している。
【0025】
第1基板10の第2基板20に対向する主面である対向面11上の周縁部の一部に、反射膜22よりも厚くなるようにスペーサ30を形成する。スペーサ30は、絶縁膜、金属膜、またはこれらの多層膜である。スペーサ30の厚さは、例えば、スケール100に用いる光の波長λの2分の1(λ/2)である。例えば、スケール100が用いられる光の波長λは、0.6μm~0.9μmであるため、スペーサの厚さは、0.3μm~0.45μmである。次に、スペーサ30の第2基板20側の面から、スペーサ30の側面、対向面11にかけて、増反射膜12を成膜する。増反射膜12は、金属薄膜などの増反射膜によって構成されている。増反射膜12の材料は、例えば、金、銀、銅、アルミニウムなどである。また、増反射膜12の厚さは、例えば、20nm~100nmである。
【0026】
次に、第2基板20の目盛面21が対向面11に対向するように、スペーサ30上に第2基板20を配置する。
図2(b)では、
図2(a)の第2基板20を上下反転させてある。その後、スペーサ30と第2基板20との間の増反射膜12に対してレーザ溶接、加温加圧による拡散溶接などを行うことで、スペーサ30と第2基板20とを接合する。
【0027】
図2(c)は、接合後のスケール100を例示する断面図である。
図2(c)で例示するように、第1基板10上において、第2基板20が、スペーサ30を介して設けられ、第1基板10と離間して対向している。複数の反射膜22によって構成される目盛格子が、第2基板20の第1基板10側の面に設けられ、スペーサ30よりも薄く形成されている。第1基板10の第2基板20側の面は、増反射膜12が設けられることによって光反射面として機能する。
【0028】
図2(d)は、スケール100の使用例を例示する図である。
図2(d)で例示するように、第2基板20の目盛面21と反対側の主面から光を入射させる。反射膜22に入射する光は反射膜22によって反射される。反射膜22と反射膜22との間を透過する光は、増反射膜12によって反射する。それぞれの反射光は、干渉する。このような反射光の干渉を用いることで、スケール100を、例えばエンコーダなどに用いることができる。
【0029】
本実施形態によれば、反射光を得るための増反射膜12と、反射光を得るための反射膜22とが離間している。この場合、目盛格子を構成する反射膜22を厚く形成しなくてもよい。したがって、目盛格子を形成するための加工アスペクト比を小さくでき、目盛境界線の加工ムラを抑制することができる。また、目盛格子を構成する反射膜22が第1基板10側に対向している。それにより、反射膜22に対する汚染物の付着を抑制することができる。以上のことから、スケール100の目盛精度の劣化を抑制することができる。
【0030】
さらに、反射膜22を埋める保護膜を形成しないことで、相対屈折率や透過率などの光特性の悪化が抑制される。また、保護膜を設けることに起因する熱膨張率差が生じないため、スケール100の反りが抑制される。また、保護膜表面の凹凸などの影響がなくなる。それにより、目盛格子の目盛精度の劣化が抑制される。
【0031】
また、金属薄膜を用いた接合技術を用いるため、樹脂の接着剤が不要となり、接着剤の凹凸などの影響がなくなる。また、接着剤の乾燥後の残留応力などの影響がなくなる。それにより、目盛格子の目盛精度の劣化が抑制される。
【0032】
なお、スケール100の表面に目盛格子が露出していないため、メンテナンス時にスケール100の汚れを拭き取るか洗浄することができる。それにより、特別な技術を要することなく、反射膜22に影響なく容易に汚れを除去することができる。この場合、反射膜22に機械的強度や耐腐食性が要求されなくなることから、反射膜22の材料に対する制約が抑制される。
【0033】
また、反射膜22の破損が抑制されるため、アスペクト比が大きく破損しやすい目盛構造を採用することができる。また、アスペクト比が大きく汚染物質が反射膜22間の境界線に溜まりやすい構造を採用することができる。例えば、各反射膜22において、測定軸方向の幅と、第1基板10の主面方向において測定軸と直交する方向の長さとの比が、0.4~20のようにアスペクト比が大きい目盛構造を採用することができる。
【0034】
なお、第1基板10および第2基板20に対して異種材料となるスペーサ30は、第1基板10の対向面11の周縁部に設けられるため、第1基板10に対する応力発生を抑制することができる。
【0035】
第2基板20に対する入射光の反射を抑制するために、第2基板20の第1基板10と反対側の面に、フッ化マグネシウムなどの反射防止膜を形成してもよい。
【0036】
本実施形態において、第1基板10が、光反射面を有する第1基板の一例である。第2基板20が前記第1基板上においてスペーサを介して設けられ、前記第1基板と離間して対向する透明な第2基板の一例である。複数の反射膜22によって構成される目盛格子が、前記第2基板の前記第1基板と対向する面に設けられ、所定の周期で形成された反射膜によって構成され、前記スペーサよりも薄く形成され、前記光反射面と対向する目盛格子の一例である。
【0037】
(第2実施形態)
第1実施形態では、目盛格子を構成する反射膜22が大気に対して露出していたが、目盛格子を封止してもよい。
図3(a)は、第1基板10、第2基板20およびスペーサ30によって目盛格子を封止する態様を例示する図である。第1実施形態と異なる点は、スペーサ30の形状である。
図3(a)で例示するように、第1基板10の第2基板20側の面の周縁部に沿ってスペーサ30を形成する。スペーサ30は、平面視で目盛格子を囲んでいる。本実施形態においてもスペーサ30の第2基板20側の面から、スペーサ30の側面、第1基板10の第2基板側の面にかけて増反射膜12を成膜する。
【0038】
次に、スペーサ30と第2基板20との間の増反射膜12に対してレーザ溶接、加温加圧による拡散溶接などを行うことで、スペーサ30と第2基板20とを接合する。それにより、第1基板10、第2基板20およびスペーサ30によって、目盛格子を封止することができる。封止の際に、第1基板10、第2基板20およびスペーサ30によって囲まれる空隙内の雰囲気を、減圧雰囲気または不活性ガスとする。
【0039】
本実施形態によれば、
図3(b)で例示するように、目盛格子を構成する各反射膜22が露出する雰囲気が減圧雰囲気か不活性ガスとなる。この構成によれば、目盛格子の経時劣化を抑制することができる。
【0040】
(第3実施形態)
図4(a)~
図4(c)は、第3実施形態に係る製造方法を例示する図である。まず、
図4(a)で例示するように、第1実施形態と同様の第2基板20を用意する。第2基板20において目盛格子用の主面である目盛面21に、所定の周期で複数の反射膜22を形成する。
【0041】
図4(b)で例示するように、目盛面21上の周縁部に、反射膜22よりも厚くなるようにスペーサ30を形成する。
図4(b)では、
図4(a)の第2基板20を上下反転させてある。反射膜22とスペーサ30とは離間している。次に、第1実施形態と同様の第1基板10を用意する。第1基板10の第2基板側の面上に、増反射膜12を形成する。次に、第2基板20の目盛面21が増反射膜12に対向するように、スペーサ30下に第1基板10を配置する。その後、スペーサ30と第1基板10との間の増反射膜12に対してレーザ溶接、加温加圧による拡散溶接などを行うことで、スペーサ30と第1基板10とを接合する。
【0042】
図4(c)は、接合後のスケール100を例示する断面図である。
図4(c)で例示するように、第1基板10上において、第2基板20が、スペーサ30を介して設けられ、第1基板10と離間して対向している。複数の反射膜22によって構成される目盛格子が、第2基板20の第1基板10側の面に設けられ、スペーサ30よりも薄く形成されている。第1基板10の第2基板20側の面は、増反射膜12が設けられることによって光反射面として機能する。
【0043】
図4(d)は、スケール100の使用例を例示する図である。
図4(d)で例示するように、第2基板20の目盛面21と反対側の主面から光を入射させる。反射膜22に入射する光は反射膜22によって反射される。反射膜22と反射膜22との間を透過する光は、増反射膜12によって反射する。それぞれの反射光は、干渉する。このような反射光の干渉を用いることで、スケール100を、例えばエンコーダなどに用いることができる。
【0044】
本実施形態においても、反射光を得るための増反射膜12と、反射光を得るための反射膜22とが離間している。この場合、目盛格子を構成する反射膜22を厚く形成しなくてもよい。したがって、目盛格子を形成するための加工アスペクト比を小さくでき、目盛境界線の加工ムラを抑制することができる。加工ムラを抑えることで、目盛ピッチが200nm以下の高精度スケールの加工が容易になる 。また、目盛格子を構成する反射膜22が第1基板10側に対向している。それにより、反射膜22に対する汚染物の付着を抑制することができる。以上のことから、スケール100の目盛精度の劣化を抑制することができる。
【0045】
さらに、反射膜22を埋める保護膜を形成しないことで、相対屈折率や透過率などの光特性の悪化が抑制される。また、保護膜を設けることに起因する熱膨張率差が生じないため、スケール100の反りが抑制される。また、保護膜表面の凹凸などの影響がなくなる。それにより、目盛格子の目盛精度の劣化が抑制される。
【0046】
また、金属薄膜を用いた接合技術を用いるため、樹脂の接着剤が不要となり、接着剤の凹凸などの影響がなくなる。また、接着剤の乾燥後の残留応力などの影響がなくなる。それにより、目盛格子の目盛精度の劣化が抑制される。
【0047】
なお、スケール100の表面に目盛格子が露出していないため、メンテナンス時にスケール100の汚れを拭き取るか洗浄することができる。それにより、特別な技術を要することなく、反射膜22に影響なく容易に汚れを除去することができる。この場合、反射膜22に機械的強度や耐腐食性が要求されなくなることから、反射膜22の材料に対する制約が抑制される。
【0048】
また、反射膜22の破損が抑制されるため、アスペクト比が大きく破損しやすい目盛構造を採用することができる。また、アスペクト比が大きく汚染物質が反射膜22間の境界線に溜まりやすい構造を採用することができる。例えば、各反射膜22において、測定軸方向の幅と、第1基板10の主面方向において測定軸と直交する方向の長さとの比が、0.4~20のようにアスペクト比が大きい目盛構造を採用することができる。
【0049】
なお、第1基板10および第2基板20に対して異種材料となるスペーサ30は、第2基板20の目盛面21の周縁部に設けられるため、第2基板20に対する応力発生を抑制することができる。
【0050】
なお、本実施形態において、第1基板10が、光反射面を有する第1基板の一例である。第2基板20が、前記第1基板上においてスペーサを介して設けられ、前記第1基板と離間して対向する透明な第2基板の一例である。複数の反射膜22によって構成される目盛格子が、前記第2基板の前記第1基板と対向する面に設けられ、所定の周期で形成された反射膜によって構成され、前記スペーサよりも薄く形成され、前記光反射面と対向する目盛格子の一例である。
【0051】
(第4実施形態)
第3実施形態では、目盛格子を構成する反射膜22が大気に対して露出していたが、目盛格子を封止してもよい。
図5(a)は、第1基板10、第2基板20およびスペーサ30によって目盛格子を封止する態様を例示する図である。第3実施形態と異なる点は、スペーサ30の形状である。
図5(a)で例示するように、第2基板20の第1基板10側の面の周縁部に沿ってスペーサ30を形成する。スペーサ30は、平面視で目盛格子を囲んでいる。なお、説明の容易化のために、
図5(a)では第2基板20とスペーサ30とが離間しているが、第2基板20の第1基板10側の面に成膜法によってスペーサ30を形成してもよい。
【0052】
次に、スペーサ30と第1基板10との間の増反射膜12に対してレーザ溶接、加温加圧などを行うことで、スペーサ30と第1基板10とを接合する。それにより、第1基板10、第2基板20およびスペーサ30によって、目盛格子を封止することができる。封止の際に、第1基板10、第2基板20およびスペーサ30によって囲まれる空隙内の雰囲気を、減圧雰囲気または不活性ガスとする。
【0053】
本実施形態によれば、
図5(b)で例示するように、目盛格子を構成する各反射膜22が露出する雰囲気が減圧雰囲気か不活性ガスとなる。この構成によれば、目盛格子の経時劣化を抑制することができる。
【0054】
なお、第2基板20に対する入射光の反射を抑制するために、第2基板20の第1基板10と反対側の面に、フッ化マグネシウムなどの反射防止膜を形成してもよい。
【0055】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 第1基板
11 対向面
12 増反射膜
20 第2基板
21 目盛面
22 反射膜
30 スペーサ
100 スケール