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特許7196094共刺激TNF受容体のための二重特異性抗原結合分子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】共刺激TNF受容体のための二重特異性抗原結合分子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20221219BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221219BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20221219BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20221219BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20221219BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221219BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221219BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221219BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221219BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221219BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221219BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20221219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20221219BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20221219BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28
C07K16/46
C12P21/08
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P43/00 107
A61P37/04
A61P31/00
A61P35/00
A61K47/68
A61K47/55
A61K39/395 N
A61K39/395 T
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019553392
(86)(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2018057734
(87)【国際公開番号】W WO2018178055
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-01-27
(31)【優先権主張番号】17163639.2
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グラウ-リチャーズ, ザンドラ
(72)【発明者】
【氏名】クライン, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ウマーニャ, パブロ
(72)【発明者】
【氏名】アマン, マリア
(72)【発明者】
【氏名】プゥッス, ローレン
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/194992(WO,A1)
【文献】特表2015-502373(JP,A)
【文献】国際公開第2014/165818(WO,A2)
【文献】特表2012-529281(JP,A)
【文献】特表2015-506954(JP,A)
【文献】特表2016-514098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含むOX40に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と、
(b)抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含む上皮細胞接着分子(EpCAM)に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と
(c)第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFc領域と
を含み、
(I)
OX40に特異的に結合することができる部分が、
(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、
(ii)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および
(iii)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H3
を含むVHと、
(iv)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L1、
(v)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および
(vi)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含むVLとを含み、且つ
EpCAMに特異的に結合することができる少なくとも1つの部分が、
(i)配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR-H1、
(ii)配列番号52のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および
(iii)配列番号53のアミノ酸配列を含むCDR-H3
を含むVHと、
(iv)配列番号54のアミノ酸配列を含むCDR-L1、
(v)配列番号55のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および
(vi)配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含むVLと
を含む、又は、
(II)
OX40に特異的に結合することができる部分が、
(i)配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR-H1、
(ii)配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および
(iii)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H3
を含むVHと、
(iv)配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-L1、
(v)配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および
(vi)配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含むVLと
を含み、且つ、
EpCAMに特異的に結合することができる少なくとも1つの部分が、
(i)配列番号57のアミノ酸配列を含むCDR-H1、
(ii)配列番号58のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および
(iii)配列番号59のアミノ酸配列を含むCDR-H3
を含むVHと、
(iv)配列番号60のアミノ酸配列を含むCDR-L1、
(v)配列番号61のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および
(vi)配列番号62のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含むVLと
を含み、
OX40に特異的に結合することができる部分のVHが、配列番号35のアミノ酸配列を含み、且つOX40に特異的に結合することができる部分のVLが、配列番号36のアミノ酸配列を含むか、または、
OX40に特異的に結合することができる部分のVHが、配列番号47のアミノ酸配列を含み、且つOX40に特異的に結合することができる部分のVLが、配列番号48のアミノ酸配列を含み、且つ、
EpCAMに特異的に結合することができる部分のVHが、配列番号63のアミノ酸配列を含み、且つEpCAMに特異的に結合することができる部分のVLが、配列番号64のアミノ酸配列を含むか、または、
EpCAMに特異的に結合することができる部分のVHが、配列番号65のアミノ酸配列を含み、且つEpCAMに特異的に結合することができる部分のVLが、配列番号66のアミノ酸配列を含み、
Fc領域の第1のサブユニットが、アミノ酸置換S354CおよびT366W(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含み、且つFc領域の第2のサブユニットが、アミノ酸置換Y349C、T366SおよびY407V(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含むか、または、
Fc領域の第1のサブユニットが、アミノ酸置換K392DおよびK409D(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含み、且つFc領域の第2のサブユニットが、アミノ酸置換E356KおよびD399K(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む
二重特異性抗原結合分子。
【請求項2】
OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号1のアミノ酸配列を含む、またはからなるポリペプチドに結合する、請求項1に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項3】
EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号49のアミノ酸配列を含む、またはからなるポリペプチドに結合する、請求項1または2に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項4】
OX40に特異的に結合することができる部分が、
(i)配列番号35のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号36のアミノ酸配列を含むVL、
を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項5】
EpCAMに特異的に結合することができる部分が、
(i)配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR-H1、
(ii)配列番号52のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および
(iii)配列番号53のアミノ酸配列を含むCDR-H3
を含むVHと、
(iv)配列番号54のアミノ酸配列を含むCDR-L1、
(v)配列番号55のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および
(vi)配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含むVLと
を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項6】
(i)配列番号35のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号36のアミノ酸配列を含むVLを含む、OX40に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と、
(ii)配列番号63のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号64のアミノ酸配列を含むVLを含む、EpCAMに特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と
を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項7】
OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号2のアミノ酸配列を含む、またはからなるポリペプチドに結合する、請求項1に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項8】
EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号50のアミノ酸配列を含む、またはからなるポリペプチドに結合する、請求項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項9】
OX40に特異的に結合することができる部分が、
(i)配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR-H1、
(ii)配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および
(iii)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H3
を含むVHと、
(iv)配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-L1、
(v)配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および
(vi)配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含むVLと
を含む、請求項1、およびのいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項10】
EpCAMに特異的に結合することができる部分が、
(i)配列番号57のアミノ酸配列を含むCDR-H1、
(ii)配列番号58のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および
(iii)配列番号59のアミノ酸配列を含むCDR-H3
を含むVHと、
(iv)配列番号60のアミノ酸配列を含むCDR-L1、
(v)配列番号61のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および
(vi)配列番号62のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含むVLと
を含む、請求項1、およびからのいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項11】
Fc領域が、(i)アミノ酸突然変異L234A、L235AおよびP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を有するヒトIgG1サブクラス、または(ii)アミノ酸突然変異D265AおよびP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を有するマウスIgG1サブクラスのものである、請求項から10のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項12に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項14】
請求項12に記載のポリヌクレオチドまたは請求項13に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項15】
二重特異性抗原結合分子を作製する方法であって、請求項14に記載の宿主細胞を、二重特異性抗原結合分子の発現に適した条件下で培養することと、二重特異性抗原結合分子を単離することとを含む方法。
【請求項16】
請求項1から11のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子と、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物。
【請求項17】
医薬として使用するための、請求項1から11のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子または請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
(i)T細胞応答の刺激、
(ii)活性化T細胞の生存の支持、
(iii)感染症の治療、
(iv)がんの治療、
(v)がんの進行の遅延、または
(vi)がんを患っている患者の生存の延長
における使用のための、請求項1から11のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子または請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
がんの治療における使用のための、請求項1から11のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子または請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
がんを治療するための医薬の製造における、請求項1から11のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子または請求項16に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項21】
有効量の請求項1から11のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子または請求項16に記載の薬学的組成物を含む、がんを有する個体を治療するための医薬。
【請求項22】
有効量の請求項1から11のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子または請求項16に記載の薬学的組成物を含む、がんを有する個体における細胞傷害性T細胞活性を上方制御または延長するための剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)OX40に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と、(b)上皮細胞接着分子(EpCAM)に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分とを含む、新規な二重特異性抗原結合分子に関する。本発明はさらに、これらの分子を作製する方法および同分子を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍壊死因子受容体(TNFR)ファミリーのいくつかのメンバーは、初期T細胞活性化後に、T細胞応答を維持するよう機能するので、免疫系の組織化および機能において中心的役割を有する。CD27、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、HVEM、CD30およびGITRは、T細胞に対する共刺激効果を有することができ、これは、これらが初期T細胞活性化後にT細胞応答を維持することを意味する(Watts T.H.(2005)Annu.Rev.Immunol.23、23~68)。これらの共刺激TNFRファミリーメンバーの効果は、CD28の効果からおよび互いに、機能的に、時間的にまたは空間的に分離され得ることが多い。様々な共刺激因子によるT細胞活性化/生存シグナルの連続的および一過的調節は、T細胞生存の密な制御を維持しながら、応答の長寿命を可能にするよう機能し得る。疾患状態に応じて、共刺激TNFファミリーメンバーを介した刺激は、疾患を憎悪させるまたは改善することができる。これらの複雑性にもかかわらず、TNFRファミリー共刺激因子の刺激または遮断は、がん、感染性疾患、移植および自己免疫を含むいくつかの治療用途への見込みを示す。
【0003】
いくつかの共刺激分子の中でも、腫瘍壊死因子(TNF)受容体ファミリーメンバーOX40(CD134)は、エフェクターおよびメモリーT細胞の生存およびホメオスタシスにおいて重要な役割を果たす(Croft M.ら(2009)、Immunological Reviews 229、173~191)。OX40(CD134)は、いくつかの細胞型で発現され、感染症、腫瘍および自己抗原に対する免疫応答を調節し、その発現がT細胞、NKT細胞およびNK細胞ならびに好中球の表面上で実証されており(Baumann R.ら(2004)、Eur.J.Immunol.34、2268~2275)、種々の刺激性シグナルに応答して厳密に誘導性であるまたは強力に上方制御されることが示されている。分子の機能的活性は、全てのOX40発現細胞型で実証されており、インビボでのOX40媒介活性の複雑な調節を示唆している。T細胞受容体誘因と合わせて、その天然リガンドまたはアゴニスト抗体によるT細胞上のOX40エンゲージメントが、PI3KおよびNFκBシグナル伝達経路の相乗的活性化をもたらす(Song J.ら(2008)J.Immunology 180(11)、7240~7248)。今度は、これが増殖増強、サイトカイン受容体およびサイトカイン産生増加ならびに活性化T細胞のより優れた生存をもたらす。エフェクターCD4またはCD8 T細胞におけるその共刺激活性に加えて、OX40誘因は、T調節性細胞の発達および免疫抑制機能を阻害することが近年示されている。この効果は、少なくとも一部は、抗腫瘍または抗微生物免疫応答に対するOX40の増強活性を担うようである。OX40エンゲージメントがT細胞集団を拡大し、サイトカイン分泌を促進し、T細胞記憶を支持するので、抗体およびリガンドOX40Lの可溶性型を含むアゴニストが種々の前臨床腫瘍モデルに首尾よく使用されてきた(Weinbergら(2000)、J.Immunol.164、2160~2169)。
【0004】
入手可能な前臨床および臨床データは、がんに対する有効な内因性免疫応答を誘導および増強することができるOX40および4-1BBなどの共刺激TNFRファミリーメンバーの有効なアゴニストの高い臨床的必要性が存在することを明確に実証している。しかしながら、これらの効果は単一細胞型に限定されることも単一機構を介して作用することもほとんど全くなく、細胞間および細胞内シグナル伝達機構を解明するよう設計された研究によって明らかになった複雑性のレベルは増加し続けている。よって、単一細胞型に優先的に作用する「標的化」アゴニストの必要性がある。本発明の抗原結合分子は、腫瘍特異的または腫瘍関連標的に優先的に結合することができる部分と、共刺激TNF受容体に作動的に結合することができる部分を組み合わせる。本発明の抗原結合分子は、TNF受容体を有効にだけでなく、所望の部位で極めて選択的に誘因し、それによって望ましくない副作用を減少させることができる。
【0005】
腫瘍関連カルシウムシグナル伝達因子(signal transducer)1(TACSTD1)、17-1AおよびCD326としても知られている上皮細胞接着分子(EpCAM)は、上皮がんで高度に、および正常な単層上皮で低レベルに発現されるI型の約40kDaの膜貫通糖タンパク質である。EpCAMの構造および機能は、例えば、Schnellら、Biochimica et Biophysica Acta-Biomembranes(2013)、1828(8):1989~2001;Trzpisら Am J Pathol.(2007)171(2):386~395ならびにBaeuerleおよびGires、Br.J.Cancer、(2007)96:417~423に概説されている。
【0006】
EpCAMは、側底膜で発現され、カルシウム非依存性同種親和性細胞接着で役割を果たす。成熟EpCAM分子(23個のアミノ酸シグナルペプチドを除去するプロセシング後)は、上皮成長因子様反復領域、ヒトサイログロブリン(TY)反復領域およびシステインに乏しい領域、単回通過23アミノ酸膜貫通ドメインを含むN末端242アミノ酸細胞外ドメインと、α-アクチニンおよびNPXY内部移行モチーフのための2つの結合部位を含むC末端26アミノ酸細胞質ドメインとを含む。
【0007】
EpCAMは、上皮起源のがんで頻繁に過剰発現され、がん幹細胞によって発現されるので、治療および診断のための重要な目的となる分子である。細胞外ドメインEpCAMを切断して、可溶性細胞外ドメイン分子EpEXおよび細胞内分子EpICDを得ることができる。EpICDは、他のタンパク質と会合して、細胞増殖を促進する遺伝子の発現を上方制御する核複合体を形成することが示されている(Maetzelら、Nat Cell Biol(2009)11(2):162~171)。EpCAMはまた、上皮細胞から間葉細胞転換(EMT)に関与し、大きな転移の形成に寄与し得る(Imrichら、Cell Adh Migr.(2012)6(1):30~38)。
【0008】
種々の癌を治療するための抗EpCAM抗体の使用について、いくつかの臨床試験が行われている(例えば、Muenzら、Cancer Cell Int.(2010)10:44ならびにBaeuerleおよびGires、上記に概説されている)。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、
(a)抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含むOX40に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と、
(b)抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含む上皮細胞接着分子(EpCAM)に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と
を含む二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0010】
本発明の新規な二重特異性抗原結合分子は、EpCAMに対するその結合能により、EpCAMが発現される部位で非常に選択的にOX40を誘因することができる。そのため、副作用が劇的に減少し得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子が、
(c)安定に会合することができる第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFc領域
をさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号1のアミノ酸配列を含む、またはからなるポリペプチドに結合する。
【0013】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号49のアミノ酸配列を含む、またはからなるポリペプチドに結合する。
【0014】
いくつかの実施形態では、OX40に特異的に結合することができる部分が、
(i)配列番号4および配列番号5からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-H1、
(ii)配列番号6および配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-H2、ならびに
(iii)配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13および配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-H3
を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、
(iv)配列番号15、配列番号16および配列番号17からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-L1、
(v)配列番号18、配列番号19および配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-L2、ならびに
(vi)配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25および配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と
を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43および配列番号45からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44および配列番号46からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、OX40に特異的に結合することができる部分が、
(i)配列番号33のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号34のアミノ酸配列を含むVL、
(ii)配列番号35のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号36のアミノ酸配列を含むVL、
(iii)配列番号37のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号38のアミノ酸配列を含むVL、
(iv)配列番号39のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号40のアミノ酸配列を含むVL、
(v)配列番号41のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号42のアミノ酸配列を含むVL、
(vi)配列番号43のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号44のアミノ酸配列を含むVL、または
(vii)配列番号45のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号46のアミノ酸配列を含むVL
を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、
(i)アミノ酸配列、配列番号51を含むCDR-H1、
(ii)アミノ酸配列、配列番号52を含むCDR-H2、および
(iii)アミノ酸配列、配列番号53を含むCDR-H3
を含むVHと、
(iv)アミノ酸配列、配列番号54を含むCDR-L1、
(v)アミノ酸配列、配列番号55を含むCDR-L2、および
(vi)アミノ酸配列、配列番号56を含むCDR-L3
を含むVLと
を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号64のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号63のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号64のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子が、
(i)配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43および配列番号45からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVH、ならびに配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44および配列番号46からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVLを含む、OX40に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と、
(ii)配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVH、ならびに配列番号64のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVLを含む、EpCAMに特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と
を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子が、
(i)配列番号35のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号36のアミノ酸配列を含むVLを含む、OX40に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と、
(ii)配列番号63のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号64のアミノ酸配列を含むVLを含む、EpCAMに特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と
を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号2のアミノ酸配列を含む、またはからなるポリペプチドに結合する。
【0023】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号50のアミノ酸配列を含む、またはからなるポリペプチドに結合する。
【0024】
いくつかの実施形態では、OX40に特異的に結合することができる部分が、
(i)アミノ酸配列、配列番号27を含むCDR-H1、
(ii)アミノ酸配列、配列番号28を含むCDR-H2、および
(iii)アミノ酸配列、配列番号29を含むCDR-H3
を含むVHと、
(iv)アミノ酸配列、配列番号30を含むCDR-L1、
(v)アミノ酸配列、配列番号31を含むCDR-L2、および
(vi)アミノ酸配列、配列番号32を含むCDR-L3
を含むVLと
を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号47のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号48のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号47のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号48のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、
(i)アミノ酸配列、配列番号57を含むCDR-H1、
(ii)アミノ酸配列、配列番号58を含むCDR-H2、および
(iii)アミノ酸配列、配列番号59を含むCDR-H3
を含むVHと、
(iv)アミノ酸配列、配列番号60を含むCDR-L1、
(v)アミノ酸配列、配列番号61を含むCDR-L2、および
(vi)アミノ酸配列、配列番号62を含むCDR-L3
を含むVLと
を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号65のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号66のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号65のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号66のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子が、
(i)配列番号47のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号48のアミノ酸配列を含むVLを含む、OX40に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と、
(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号66のアミノ酸配列を含むVLを含む、EpCAMに特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と
を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、Fc領域がIgG、特にIgG1 Fc領域またはIgG4 Fc領域である。
【0032】
いくつかの実施形態では、Fc領域が、Fc受容体に対する抗体の結合親和性および/またはエフェクター機能を減少させる1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、Fc領域が、(i)アミノ酸突然変異L234A、L235AおよびP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含むヒトIgG1サブクラス、または(ii)アミノ酸突然変異D265AおよびP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含むマウスIgG1サブクラスのものである。
【0034】
いくつかの実施形態では、Fc領域が、Fc領域の第1のサブユニットと第2のサブユニットの会合を促進する修飾を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、ノブ・イントゥ・ホール法に従って、Fc領域の第1のサブユニットがノブを含み、Fc領域の第2のサブユニットがホールを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、(i)Fc領域の第1のサブユニットが、アミノ酸置換S354CおよびT366W(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含み、Fc領域の第2のサブユニットが、アミノ酸置換Y349C、T366SおよびY407V(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む、または(ii)Fc領域の第1のサブユニットが、アミノ酸置換K392DおよびK409D(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含み、Fc領域の第2のサブユニットが、アミノ酸置換E356KおよびD399K(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子が、
(a)Fc領域に接続されたOX40に特異的に結合することができる少なくとも2つのFab断片と、
(b)Fc領域のC末端に接続されたEpCAMに特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と
を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子が、
(a)OX40に特異的に結合することができる2つのFab断片およびFc領域を含む抗体の2つの軽鎖および2つの重鎖と、
(b)EpCAMに特異的に結合することができる部分のVHおよびVLであって、VHが(a)の2つの重鎖の一方のC末端に接続されており、VLが(a)の2つの重鎖の他方のC末端に接続されているVHおよびVLと
を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子が、
(a)OX40に特異的に結合することができる2つのFab断片およびFc領域を含む抗体の2つの軽鎖および2つの重鎖と、
(b)EpCAMに特異的に結合することができる2つのFab断片であって、Fab断片の一方が(a)の2つの重鎖の一方のC末端に接続されており、Fab断片の他方が(a)の2つの重鎖の他方のC末端に接続されている2つのFab断片と
を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子が、
(a)各重鎖がOX40に特異的に結合することができるFab断片のVHおよびCH1ドメインならびにFc領域サブユニットを含む、2つの重鎖と、
(b)各軽鎖がOX40に特異的に結合することができるFab断片のVLおよびCLドメインを含む、2つの軽鎖と、
(c)EpCAMに特異的に結合することができる部分のVHおよびVLであって、VHが(a)の2つの重鎖の一方のC末端に接続されており、VLが(a)の2つの重鎖の他方のC末端に接続されている、VHおよびVLと
を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子が、
(a)各重鎖がOX40に特異的に結合することができるFab断片のVHおよびCH1ドメインならびにFc領域サブユニットを含む、2つの重鎖と、
(b)各軽鎖がOX40に特異的に結合することができるFab断片のVLおよびCLドメインを含む、2つの軽鎖と、
(c)EpCAMに特異的に結合することができる2つのFab断片であって、Fab断片の一方が(a)の2つの重鎖の一方のC末端に接続されており、Fab断片の他方が(a)の2つの重鎖の他方のC末端に接続されている2つのFab断片と
を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的に結合することができる2つのFab断片が、各々がVL-CH1鎖およびVH-CL鎖を含み、VL-CH1鎖の一方が(a)の2つの重鎖の一方のC末端に接続されており、VL-CH1鎖の他方が(a)の2つの重鎖の他方のC末端に接続されている、クロスオーバーFab断片である。
【0043】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子が、OX40に特異的に結合することができる4つのFab断片を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、(a)の2つの重鎖の各々が、OX40に特異的に結合することができるFab断片の2つのVHドメインおよび2つのCH1ドメインを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、OX40に特異的に結合することができるFab断片の1つまたは複数が、
123位(EU番号付け)のアミノ酸のアルギニン(R)および124位(EU番号付け)のアミノ酸のリジン(K)を含むCLドメインと、
147位(EU番号付け)のアミノ酸のグルタミン酸(E)および213位(EU番号付け)のアミノ酸のグルタミン酸(E)を含むCH1ドメインと
を含む。
【0046】
本発明はまた、
配列番号183のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、
配列番号184のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、
各々が配列番号182のアミノ酸配列を含む、4つの軽鎖と
を含む二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0047】
本発明はまた、
各々が配列番号186のアミノ酸配列を含む、2つの重鎖と、
各々が配列番号187のアミノ酸配列を含む、2つの軽鎖と、
各々が配列番号185のアミノ酸配列を含む、4つの軽鎖と
を含む二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0048】
本発明はまた、
配列番号192のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、
配列番号193のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、
各々が配列番号191のアミノ酸配列を含む、4つの軽鎖と
を含む二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0049】
本発明はまた、本発明の二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0050】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0051】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明の発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0052】
本発明はまた、二重特異性抗原結合分子を作製する方法であって、本発明の宿主細胞を、二重特異性抗原結合分子の発現に適した条件下で培養することと、二重特異性抗原結合分子を単離することとを含む方法を提供する。
【0053】
本発明はまた、本発明の二重特異性抗原結合分子と、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物を提供する。
【0054】
本発明はまた、医薬として使用するための、本発明の二重特異性抗原結合分子または本発明の薬学的組成物を提供する。
【0055】
本発明はまた、
(i)T細胞応答の刺激、
(ii)活性化T細胞の生存の支持、
(iii)感染症の治療、
(iv)がんの治療、
(v)がんの進行の遅延、または
(vi)がんを患っている患者の生存の延長
に使用するための、本発明の二重特異性抗原結合分子または本発明の薬学的組成物を提供する。
【0056】
本発明はまた、がんの治療に使用するための、本発明の二重特異性抗原結合分子または本発明の薬学的組成物を提供する。
【0057】
本発明はまた、がんを治療するための医薬の製造における、本発明の二重特異性抗原結合分子または本発明の薬学的組成物の使用を提供する。
【0058】
本発明はまた、がんを有する個体を治療する方法であって、有効量の本発明の二重特異性抗原結合分子または本発明の薬学的組成物を個体に投与することを含む方法を提供する。
【0059】
本発明はまた、細胞傷害性T細胞活性を上方制御または延長するのに使用するための、本発明の二重特異性抗原結合分子または本発明の薬学的組成物を提供する。
【0060】
本発明はまた、細胞傷害性T細胞活性を上方制御または延長するための医薬の製造における、本発明の二重特異性抗原結合分子または本発明の薬学的組成物の使用を提供する。
【0061】
本発明はまた、がんを有する個体の細胞傷害性T細胞活性を上方制御または延長する方法であって、有効量の本発明の二重特異性抗原結合分子または本発明の薬学的組成物を個体に投与することを含む方法を提供する。
【0062】
本発明の種々の態様によるいくつかの実施形態では、個体が哺乳動物、特にヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】抗ヒトOX40抗体を調製するために使用したFc結合ヒトOX40抗原ECDのモノマー型を示す図である。
図2A-B】Aは、二重特異性、四価抗OX40、一価抗EpCAM hu/muIgG1 P329GLALA/DAPG kih4+1コンストラクトの概略図である。Bは、二重特異性、四価抗ヒトOX40、二価抗ヒトEpCAM huIgG1 P329GLALA kih4+2コンストラクトの概略図である。荷電残基を星印として示す。
図3A-D】二重特異性、四価抗マウスOX40、一価抗マウスEpCAM(4+1 muEpCAM);単一特異性、四価抗マウスOX40、非標的化(4+1対照);または単一特異性、二価抗マウスEpCAM IgG(muEpCAM IgG)と静止および活性化マウスCD4+ならびにCD8+T細胞の結合を示す図である。図3Aは活性化CD4+T細胞への結合を示し、図3Bは活性化CD8+T細胞への結合を示し、図3Cは静止CD4+T細胞への結合を示し、図3Dは静止CD8+T細胞への結合を示す。結合を、二次検出抗体として使用される、PEコンジュゲートAffiniPure抗マウスIgG Fcγ-断片特異的ヤギIgG F(ab’)2断片の蛍光強度(MFI)の中央値として示す。MFIをフローサイトメトリーによって測定し、ブランク対照のMFIを減じることによって、ベースライン補正した。x軸は抗原結合分子の濃度を示す。OX40結合ドメインを含む抗原結合分子の全てが、活性化OX40発現マウスCD4+およびCD8+T細胞に結合する。OX40は、静止マウスCD4+およびCD8+T細胞上で発現されない(図3Cおよび図3D)。活性化後、OX40は、CD4+およびCD8+T細胞上で上方制御される(図3Aおよび図3B)。
図4A-B】二重特異性、四価抗マウスOX40、一価抗マウスEpCAM(4+1 muEpCAM);二重特異性、四価抗マウスOX40、非標的化(4+1対照);または単一特異性、二価抗マウスEpCAM IgG(muEpCAM IgG)分子とCT26muEpCAMおよびCT26muFAP細胞の結合を示す図である。図4Aは、マウスEpCAMを安定に発現するCT26muEpCAM細胞への結合を示す。図4Bは、マウスFAPを安定に発現し、マウスEpCAMを発現しない、CT26muFAP細胞への結合を示す。結合を、二次検出抗体として使用される、FITC標識抗マウスIgG Fcγ特異的ヤギIgG F(ab’)2断片の蛍光強度(MFI)の中央値として示す。MFIをフローサイトメトリーによって測定し、ブランク対照のMFIを減じることによって、ベースライン補正した。x軸は抗原結合分子の濃度を示す。マウスEpCAM結合ドメインを含む抗原結合分子は、CT26muEpCAM細胞に結合するが、CT26muFAP細胞には結合しない。
図5A-D】細胞サイズおよび細胞数の分析によって決定される、CT26muEpCAM細胞による架橋の存在下での、二重特異性、四価抗マウスOX40、一価抗マウスEpCAM(4+1 muEpCAM);単一特異性、四価抗マウスOX40、非標的化(4+1対照);または単一特異性、二価抗マウスEpCAM IgG(muEpCAM IgG)分子による、事前活性化マウスCD4+およびCD8+T細胞の最適以下TCR再刺激のレスキューを示す図である。図5Aは、順方向散乱(FSC)によって決定されるCD4+T細胞サイズを示し、図5Bは、FSCによって決定されるCD8+T細胞サイズを示し、図5Cは、CD4+T細胞イベント数を示し、図5Dは、CD8+T細胞イベント数を示す。値を、抗マウスCD3のみを含有する(そしてOX40/EpCAM標的化コンストラクトを含有しない)試料についての値にベースライン補正した。
図6A-D】CD25発現の分析によって決定される、CT26muEpCAM細胞による架橋の存在下での、二重特異性、四価抗マウスOX40、一価抗マウスEpCAM(4+1 muEpCAM);単一特異性、四価抗マウスOX40、非標的化(4+1対照);または単一特異性、二価抗マウスEpCAM IgG(muEpCAM IgG)分子による、事前活性化マウスCD4+およびCD8+T細胞の最適以下TCR再刺激のレスキューを示す図である。図6Aは、CD4+T細胞集団内のCD25+細胞の割合を示し、図6Bは、CD8+T細胞集団内のCD25+細胞の割合を示し、図6Cは、CD4+T細胞上で発現されるCD25についての平均蛍光強度(MFI)を示し、図6Dは、CD8+T細胞上で発現されるCD25についてのMFIを示す。値を、抗マウスCD3のみを含有する(そしてOX40/EpCAM標的化コンストラクトを含有しない)試料についての値にベースライン補正した。
図7A-D】二重特異性、四価抗ヒトOX40、二価または一価抗ヒトEpCAM(すなわち、4+2または4+1フォーマット);単一特異性、四価抗ヒトOX40、非標的化(4+1対照);または単一特異性、二価抗ヒトEpCAM IgG(huEpCAM IgG)分子と静止および活性化ヒトCD4+ならびにCD8+T細胞の結合を示す図である。図7Aは、活性化CD4+T細胞への結合を示し、図7Bは、活性化CD8+T細胞への結合を示し、図7Cは、静止CD4+T細胞への結合を示し、図7Dは、静止CD8+T細胞への結合を示す。結合を、二次検出抗体として使用される、FITCコンジュゲート抗ヒトIgG F(ab’)断片特異性ヤギIgGF(ab’)2断片の蛍光強度(MFI)の中央値として示す。MFIをフローサイトメトリーによって測定し、ブランク対照のMFIを減じることによって、ベースライン補正した。x軸は抗原結合分子の濃度を示す。OX40結合ドメインを含む抗原結合分子の全てが、活性化OX40発現ヒトCD4+T細胞に結合し、活性化ヒトCD8+T細胞に低い程度に結合する。OX40は静止ヒトPBMC上で発現されない(図7Cおよび図7D)。活性化後、OX40はCD4+およびCD8+T細胞上で上方制御される(図7Aおよび図7B)。ヒトCD8+T細胞上のOX40発現は、CD4+T細胞上より低い。
図8】フローサイトメトリーによって決定される、KATO-III、NIH/3T3huEpCAMクローン44細胞およびHeLa_huOX40_NFkB_Luc1レポーター細胞上のヒトEpCAMの発現の分析を示す図である。huEpCAMへの結合を、試験する3つの細胞株で、PEコンジュゲート抗huEpCAM抗体クローンEBA-1を使用したフローサイトメトリーによって分析した。HeLa_huOX40_NFkB_Luc1レポーター細胞はヒトEpCAMについて陰性であり、NIH/3T3huEpCAMクローン44細胞はヒトEpCAMを発現し、KATO-III細胞は高レベルのヒトEpCAMを発現する。
図9A-B】二重特異性、四価抗ヒトOX40、一価抗ヒトEpCAM(4+1 huEpCAM);二重特異性、四価抗ヒトOX40、二価抗ヒトEpCAM(4+2 huEpCAM);単一特異性、四価抗マウスOX40、非標的化(4+1対照);および単一特異性、二価抗ヒトEpCAM IgG(huEpCAM IgG)分子とKATO-II細胞およびA549 NLR細胞の結合を示す図である。図9Aは、ヒトEpCAMを発現するKATO-II細胞への結合を示す。図9Bは、ヒトEpCAMを発現しないA549 NLR細胞への結合を示す。結合を、二次検出抗体として使用される、FITCコンジュゲート抗ヒトIgG F(ab’)断片特異性ヤギIgG F(ab’)2断片の蛍光強度(MFI)の中央値として示す。MFIをフローサイトメトリーによって測定し、ブランク対照のMFIを減じることによって、ベースライン補正した。x軸は抗原結合分子の濃度を示す。
図10A-D】二重特異性、四価抗ヒトOX40、一価抗ヒトEpCAM(4+1 huEpCAM);二重特異性、四価抗ヒトOX40、二価抗ヒトEpCAM(4+2 huEpCAM);単一特異性、四価抗マウスOX40、非標的化(4+1対照);および単一特異性、二価抗ヒトEpCAM IgG(huEpCAM IgG)分子によるNFκBの活性化を示す図である。図10Aは、架橋の非存在下での、抗原結合分子によるOX40HeLaレポーター細胞におけるNFκB活性化を示す。図10Bは、抗ヒトFc特異的二次抗体による架橋の存在下での、抗原結合分子によるOX40HeLaレポーター細胞におけるNFκB活性化を示す。図10Cは、3T3huEpCAM細胞による架橋の存在下での、抗原結合分子によるOX40HeLaレポーター細胞におけるNFκB活性化を示す。NFκB媒介ルシフェラーゼ活性を、抗原結合分子の濃度(nM)に対して、500ms間測定した放出相対光単位(RLU)をプロットすることによって、特徴を明らかにした。RLUは、ルシフェリンのオキシルシフェリンへのルシフェラーゼ媒介酸化によって放出される。値を、「ブランク対照」条件についてのRLUを減じることによって、ベースライン補正した。図10Dは、曲線下面積(AUC)として表される、図10A図10Cのデータを示す。
図11A-D】細胞サイズおよび細胞数の分析によって決定される、ヒトEpCAM発現KATO-III細胞による架橋の存在下での、二重特異性、四価抗ヒトOX40、一価抗ヒトEpCAM(4+1 huEpCAM);二重特異性、四価抗ヒトOX40、二価抗ヒトEpCAM(4+2 huEpCAM);単一特異性、四価抗ヒトOX40、非標的化(4+1対照);または単一特異性、二価抗ヒトEpCAM IgG(huEpCAM IgG)による、事前活性化ヒトCD4+およびCD8+T細胞の最適以下TCR再刺激(restihulation)のレスキューを示す図である。図11Aは、順方向散乱(FSC)によって決定されるCD4+T細胞サイズを示し、図11Bは、FSCによって決定されるCD8+T細胞サイズを示し、図11Cは、CD4+T細胞イベント数を示し、図11Dは、CD8+T細胞イベント数を示す。値を、抗ヒトCD3のみを含有する(そしてOX40/EpCAM標的化コンストラクトを含有しない)試料についての値にベースライン補正した。
図12A-D】CD25発現の分析によって決定される、ヒトEpCAM発現KATO-III細胞による架橋の存在下での、二重特異性、四価抗ヒトOX40、一価抗ヒトEpCAM(4+1 huEpCAM);単一特異性、四価抗ヒトOX40、非標的化(4+1対照);または単一特異性、二価抗ヒトEpCAM IgG(huEpCAM IgG)による、事前活性化ヒトCD4+およびCD8+T細胞の最適以下TCR再刺激(restihulation)のレスキューを示す図である。図12Aは、CD4+T細胞集団内のCD25+細胞の割合を示し、図12Bは、CD8+T細胞集団内のCD25+細胞の割合を示し、図12Cは、CD4+T細胞上で発現されるCD25についての平均蛍光強度(MFI)を示し、図12Dは、CD8+T細胞上で発現されるCD25についてのMFIを示す。値を、抗ヒトCD3のみを含有する(そしてOX40/EpCAM標的化コンストラクトを含有しない)試料についての値にベースライン補正した。
図13A-D】細胞サイズおよび細胞数の分析によって決定される、ヒトEpCAM発現3T3huEpCAM細胞による架橋の存在下での、二重特異性、四価抗ヒトOX40、一価抗ヒトEpCAM(4+1 huEpCAM);二重特異性、四価抗ヒトOX40、二価抗ヒトEpCAM(4+2 huEpCAM);単一特異性、四価抗ヒトOX40、非標的化(4+1対照);または単一特異性、二価抗ヒトEpCAM IgG(huEpCAM IgG)による、事前活性化ヒトCD4+およびCD8+T細胞の最適以下TCR再刺激(restihulation)のレスキューを示す図である。図13Aは、順方向散乱(FSC)によって決定されるCD4+T細胞サイズを示し、図13Bは、FSCによって決定されるCD8+T細胞サイズを示し、図13Cは、CD4+T細胞イベント数を示し、図13Dは、CD8+T細胞イベント数を示す。値を、抗ヒトCD3のみを含有する(そしてOX40/EpCAM標的化コンストラクトを含有しない)試料についての値にベースライン補正した。
図14A-D】CD25発現の分析によって決定される、ヒトEpCAM発現3T3huEpCAM細胞による架橋の存在下での、二重特異性、四価抗ヒトOX40、一価抗ヒトEpCAM(4+1 huEpCAM);単一特異性、四価抗ヒトOX40、非標的化(4+1対照);または単一特異性、二価抗ヒトEpCAM IgG(huEpCAM IgG)による、事前活性化ヒトCD4+およびCD8+T細胞の最適以下TCR再刺激(restihulation)のレスキューを示す図である。図14Aは、CD4+T細胞集団内のCD25+細胞の割合を示し、図14Bは、CD8+T細胞集団内のCD25+細胞の割合を示し、図14Cは、CD4+T細胞上で発現されるCD25についての平均蛍光強度(MFI)を示し、図14Dは、CD8+T細胞上で発現されるCD25についてのMFIを示す。値を、抗ヒトCD3のみを含有する(そしてOX40/EpCAM標的化コンストラクトを含有しない)試料についての値にベースライン補正した。
【発明を実施するための形態】
【0064】
定義
別途定義のない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本発明が属する分野で一般的に使用されるのと同じ意味を有する。本明細書を説明する目的で、以下の定義を適用し、適当な場合は、単数形で使用される用語は複数も含み、逆もまた同様である。
【0065】
本明細書で使用される場合、「抗原結合分子」という用語は、広義に、抗原決定基に特異的に結合する分子を指す。抗原結合分子の例は、抗体、抗体断片およびスキャフォールド抗原結合タンパク質である。
【0066】
本明細書で使用される場合、「上皮細胞接着分子(EpCAM)に特異的に結合することができる部分」という用語は、EpCAMに特異的に結合するポリペプチド分子を指す。特定の態様では、抗原結合部分が、結合する実体、標的部位、例えばEpCAMを有する特定の種類の腫瘍細胞または腫瘍間質に向くことができる。EpCAMに特異的に結合することができる部分は、本明細書でさらに定義される抗体およびその断片を含む。さらに、EpCAMに特異的に結合することができる部分は、本明細書でさらに定義されるスキャフォールド抗原結合タンパク質、例えば設計された反復タンパク質または設計された反復ドメインに基づく結合ドメインを含む(例えば、国際公開第2002/020565号参照)。
【0067】
抗体またはその断片に関して、「上皮細胞接着分子(EpCAM)に特異的に結合することができる部分」という用語は、EpCAMの一部または全部に特異的に結合し、これと相補的な領域を含む分子の部分を指す。EpCAMに特異的に結合することができる部分は、例えば、1つまたは複数の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも呼ばれる)によって提供され得る。特に、EpCAMに特異的に結合することができる部分は、抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、「上皮細胞接着分子(EpCAM)に特異的に結合することができる部分」が、scFv、Fab断片またはクロスFab断片であり得る。
【0068】
「OX40に特異的に結合することができる部分」という用語は、OX40に特異的に結合するポリペプチド分子を指す。一態様では、抗原結合部分が、OX40を通してシグナル伝達を活性化することができる。OX40に特異的に結合することができる部分は、本明細書でさらに定義される抗体およびその断片を含む。さらに、OX40に特異的に結合することができる部分は、本明細書でさらに定義されるスキャフォールド抗原結合タンパク質、例えば設計された反復タンパク質または設計された反復ドメインに基づく結合ドメインを含む(例えば、国際公開第2002/020565号参照)。特に、OX40に特異的に結合することができる部分は、抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含む。特定の態様では、「OX40に特異的に結合することができる部分」が、Fab断片、クロスFab断片またはscFvであり得る。
【0069】
本明細書における「抗体」という用語は、広義で使用され、それだけに限らないが、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性および多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ならびに抗体断片を含む種々の抗体構造を包含する。
【0070】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指す、すなわち、例えば、一般的に微量に存在する変異体などの、天然に存在するまたはモノクローナル抗体調製物の作製中に生じる突然変異を含む考えられる変異抗体を除いて、集団を構成する個々の抗体が同一である、および/または同じエピトープに結合する。典型的に様々な決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を含むポリクローナル抗体調製物と対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一決定基に対するものである。
【0071】
「単一特異性」抗体という用語は、本明細書で使用される場合、各々が同じ抗原の同じエピトープに結合する1つまたは複数の結合部位を有する抗体を示す。「二重特異性」という用語は、抗原結合分子が少なくとも2つの別個の抗原決定基に特異的に結合することができることを意味する。二重特異性抗原結合分子は、各々が異なる抗原決定基に特異的な、少なくとも2つの抗原結合部位を含む。一定の実施形態では、二重特異性抗原結合分子が、2つの抗原決定基、特に2つの別個の細胞上で発現される2つの抗原決定基に同時に結合することができる。例えば、本発明の抗原結合分子は二重特異性であり、OX40に特異的に結合することができる部分と、EpCAMに特異的に結合することができる部分とを含む。
【0072】
本出願内で使用される「価」という用語は、抗原結合分子中の指定された数の結合部位の存在を示す。よって、「二価」、「四価」および「六価」という用語は、それぞれ抗原結合分子中の2つの結合部位、4つの結合部位および6つの結合部位の存在を示す。抗原結合分子の結合価はまた、所与の抗原決定基についての結合部位の数に関して表され得る。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合分子が、OX40に関して四価であり、EpCAMに関して二価である(すなわち、4+2)。
【0073】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」および「全抗体」という用語は、本明細書では互換的に、天然抗体構造に実質的に類似する構造を有する抗体を指すために使用される。「天然抗体」は、種々の構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgGクラス抗体は、ジスルフィド結合した2つの軽鎖および2つの重鎖で構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端まで、各重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)、引き続いて重鎖定常領域とも呼ばれる3つの定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3)を有する。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)、引き続いて軽鎖定常領域とも呼ばれる軽鎖定常ドメイン(CL)を有する。抗体の重鎖は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)またはμ(IgM)と呼ばれる5つの型の1つに割り当てられ、そのいくつかはサブタイプ、例えばγ1(IgG1)、γ2(IgG2)、γ3(IgG3)、γ4(IgG4)、α1(IgA1)およびα2(IgA2)にさらに分けられ得る。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの型の1つに割り当てられ得る。
【0074】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、それだけに限らないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’);ダイアボティ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、クロスFab断片;線状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および単一ドメイン抗体が挙げられる。一定の抗体断片の概説については、Hudsonら、Nat Med 9、129~134(2003)を参照されたい。scFv断片の概説については、例えば、Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、第113巻、RosenburgおよびMoore編、Springer-Verlag、ニューヨーク、269~315頁(1994)を参照されたい。また、国際公開第93/16185号ならびに米国特許第5,571,894号および同第5,587,458号も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、インビボ半減期が増加したFabおよびF(ab’)2断片の議論については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。二価または二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有するダイアボティおよび抗体断片は、例えば、欧州特許第404,097号;国際公開第1993/01161号;Hudsonら、Nat Med 9、129~134(2003);およびHollingerら、Proc Natl Acad Sci USA 90、6444~6448(1993)を参照されたい。トリアボディおよびテトラボディはまた、Hudsonら、Nat Med 9、129~134(2003)にも記載されている。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部もしくは一部または抗体の軽鎖可変ドメインの全部もしくは一部を含む抗体断片である。一定の実施形態では、単一ドメイン抗体が、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.、Waltham、MA;例えば、米国特許第6,248,516号参照)。抗体断片は、それだけに限らないが、本明細書に記載される、インタクトな抗体のタンパク質消化ならびに組換え宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli)またはファージ)による産生を含む種々の技術によって作製され得る。
【0075】
インタクトな抗体のパパイン消化は、各々が重鎖および軽鎖可変ドメインならびに軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一な抗原結合断片をもたらす。よって、本明細書で使用される場合、「Fab断片」という用語は、VLおよび軽鎖の定常ドメイン(CL)を含む軽鎖断片ならびにVHおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む抗体断片を指す。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端での数個の残基の付加によってFab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有するFab’断片である。ペプシン処理は、2つの抗原組み合わせ部位(2つのFab断片)およびFc領域の一部を有するF(ab’)断片をもたらす。本発明によると、「Fab断片」という用語はまた、以下で定義される「クロスFab断片」または「クロスオーバーFab断片」を含む。
【0076】
「クロスFab断片」または「xFab断片」または「クロスオーバーFab断片」という用語は、重鎖および軽鎖の可変領域または定常領域のいずれかが交換されているFab断片を指す。クロスFab分子の2つの異なる鎖組成が可能であり、本発明の二重特異性抗体に含まれる。一方では、Fab重鎖および軽鎖の可変領域が交換される、すなわち、クロスオーバーFab分子は、軽鎖可変領域(VL)および重鎖定常領域(CH1)で構成されるペプチド鎖、ならびに重鎖可変領域(VH)および軽鎖定常領域(CL)で構成されるペプチド鎖を含む。このクロスオーバーFab分子はクロスFab(VLVH)とも呼ばれる。他方では、Fab重鎖および軽鎖の定常領域が交換されると、クロスオーバーFab分子は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖定常領域(CL)で構成されるペプチド鎖、ならびに軽鎖可変領域(VL)および重鎖定常領域(CH1)で構成されるペプチド鎖を含む。このクロスオーバーFab分子はクロスFab(CLCH1)とも呼ばれる。
【0077】
「単鎖Fab断片」または「scFab」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)およびリンカーからなるポリペプチドであって、前記抗体ドメインおよび前記リンカーが、N末端からC末端方向に以下の順序のうちの1つを有し:a)VH-CH1-リンカー-VL-CL、b)VL-CL-リンカー-VH-CH1、c)VH-CL-リンカー-VL-CH1またはd)VL-CH1-リンカー-VH-CL;前記リンカーが少なくとも30個のアミノ酸、好ましくは32~50個のアミノ酸のポリペプチドである、ポリペプチドである。前記単鎖Fab断片は、CLドメインとCH1ドメインとの間の天然ジスルフィド結合を介して安定化されている。さらに、これらの単鎖Fab分子は、システイン残基の挿入を介した鎖間ジスルフィド結合の生成によってさらに安定化され得るだろう(例えば、Kabat番号付けによる可変重鎖の44位および可変軽鎖の100位)。
【0078】
「クロスオーバー単鎖Fab断片」または「x-scFab」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)およびリンカーからなるポリペプチドであり、前記抗体ドメインおよび前記リンカーは、N末端からC末端方向に以下の順序のうちの1つを有し:a)VH-CL-リンカー-VL-CH1およびb)VL-CH1-リンカー-VH-CL;VHおよびVLは一緒になって、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、前記リンカーは少なくとも30個のアミノ酸のポリペプチドである。さらに、これらのx-scFab分子は、システイン残基の挿入を介した鎖間ジスルフィド結合の生成によってさらに安定化され得るだろう(例えば、Kabat番号付けによる可変重鎖の44位および可変軽鎖の100位)。
【0079】
「単鎖可変断片(scFv)」は、10個~約25個のアミノ酸の短いリンカーペプチドで接続された、抗体の重鎖の可変領域(V)と軽鎖の可変領域(V)の融合タンパク質である。リンカーは通常、フレキシビリティのためにグリシンに富むと同時に可溶性のためにセリンまたはスレオニンに富み、VのN末端をVのC末端と接続することができる、または逆もまた同様である。このタンパク質は、定常領域を除去し、リンカーを導入したにもかかわらず、元の抗体の特異性を保持している。scFv抗体は、例えばHouston,J.S.、Methods in Enzymol.203(1991)46~96に記載されている。さらに、抗体断片は、VHの特性を有する、すなわちVLと集合して機能的抗原結合部位となることでき、またはVLの特性を有する、すなわちVHと集合して機能的抗原結合部位となることでき、それによって全長抗体の抗原結合特性を提供する単鎖ポリペプチドを含む。
【0080】
「スキャフォールド抗原結合タンパク質」は、当技術分野で公知であり、例えば、フィブロネクチンおよび設計アンキリンリピートタンパク質(DARPins)は、抗原結合ドメインのための代替スキャフォールドとして使用されている。例えば、GebauerおよびSkerra、Engineered Protein scaffolds as next-generation antibody therapeutics.Curr Opin Chem Biol 13:245~255(2009)およびStumppら、Darpins:A new generation of proteiin therapeutics.Drug Discovery Today 13:695~701(2008)を参照されたい。本発明の一態様では、スキャフォールド抗原結合タンパク質が、CTLA-4(エビボディ(Evibody))、リポカリン(アンチカリン(Anticalin))、プロテインA由来分子、例えばプロテインAのZドメイン(アフィボディ(Affibody))、Aドメイン(アビマー(Avimer)/マキシボディ(Maxibody))、血清トランスフェリン(トランスボディ(trans-body));設計アンキリンリピートタンパク質(DARPin)、抗体軽鎖または重鎖の可変ドメイン(単一ドメイン抗体、sdAb)、抗体重鎖の可変ドメイン(ナノボディ(nanobody)、aVH)、VNAR断片、フィブロネクチン(アドネクチン(AdNectin))、C型レクチンドメイン(テトラネクチン(Tetranectin));新抗原受容体βラクタマーゼの可変ドメイン(VNAR断片)、ヒトγクリスタリンまたはユビキチン(アフィリン(Affilin)分子);ヒトプロテアーゼ阻害剤のクニッツ型ドメイン、ミクロボディ、例えばノッチンファミリーのタンパク質、ペプチドアプタマーおよびフィブロネクチン(アドネクチン)からなる群から選択される。CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4)は、主にCD4T細胞上で発現されるCD28ファミリー受容体である。その細胞外ドメインは、可変ドメイン様Igフォールドを有する。抗体のCDRに対応するループは、異なる結合特性を与える異種配列で置換され得る。異なる結合特異性を有するよう操作されたCTLA-4分子は、エビボディとしても知られている(例えば、米国特許第7166697号)。エビボディは、抗体(例えば、ドメイン抗体)の単離可変領域とほぼ同じサイズである。さらなる詳細については、Journal of Immunological Methods 248(1~2)、31~45(2001)を参照されたい。リポカリンは、ステロイド、ビリン、レチノイドおよび脂質などの小型疎水性分子を輸送する細胞外タンパク質のファミリーである。これらは、異なる標的抗原に結合するよう操作され得る円錐構造のオープンエンドのいくつかのループを有する強固なβシート二次構造を有する。アンチカリンはサイズが160~180個のアミノ酸であり、リポカリンに由来する。さらなる詳細については、Biochim Biophys Acta 1482:337~350(2000)、米国特許第7250297号および米国特許出願公開第20070224633号を参照されたい。アフィボディは、抗原に結合するよう操作され得る黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のプロテインAに由来するスキャフォールドである。ドメインは、およそ58個のアミノ酸の三重らせん束からなる。表面残基のランダム化によってライブラリーが作成されている。さらなる詳細については、Protein Eng.Des.Sel.2004、17、455~462および欧州特許第1641818号を参照されたい。アビマーは、Aドメインスキャフォールドファミリーに由来するマルチドメインタンパク質である。およそ35個のアミノ酸の天然ドメインは、定義されたジスルフィド結合構造を採用している。Aドメインのファミリーによって示される天然変異のシャフリングによって多様性が生まれる。さらなる詳細については、Nature Biotechnology 23(12)、1556~1561(2005)およびExpert Opinion on Investigational Drugs 16(6)、909~917(2007年1月)を参照されたい。トランスフェリンはモノマー血清輸送糖タンパク質である。トランスフェリンは、ペプチド配列を許容的な表面ループに挿入することによって、様々な標的抗原に結合するよう操作することができる。操作されたトランスフェリンスキャフォールドの例としてはトランスボディが挙げられる。さらなる詳細については、J.Biol.Chem 274、24066~24073(1999)を参照されたい。設計アンキリンリピートタンパク質(DARPins)は、膜内在性タンパク質の細胞骨格への付着を媒介するタンパク質のファミリーであるアンキリンに由来する。単一アンキリンリピートは2つのαヘリックスおよび1つのβターンからなる33残基モチーフである。これらは、各リピートの第1のαヘリックスおよびβターン中の残基をランダム化することによって様々な標的抗原に結合するよう操作することができる。モジュールの数を増加させることによって、その結合面を増加させることができる(親和性成熟の方法)。さらなる詳細については、J.Mol.Biol.332、489~503(2003)、PNAS 100(4)、1700~1705(2003)およびJ.Mol.Biol.369、1015~1028(2007)および米国特許出願公開第20040132028号を参照されたい。単一ドメイン抗体は、単一モノマー可変抗体ドメインからなる抗体断片である。第1の単一ドメインは、ラクダの抗体重鎖の可変ドメインから誘導された(ナノボディまたはVH断片)。さらに、単一ドメイン抗体という用語は、自律ヒト重鎖可変ドメイン(aVH)またはサメに由来するVNAR断片を含む。フィブロネクチンは、抗原に結合するよう操作され得るスキャフォールドである。アドネクチンは、ヒトフィブロネクチンIII型(FN3)の15反復単位の10番目のドメインの天然アミノ酸配列の骨格からなる。βサンドイッチの一端の3つのループは、アドネクチンが目的の治療標的を特異的に認識することができるようにするように操作することができる。さらなる詳細については、Protein Eng.Des.Sel.18、435~444(2005)、米国特許出願公開第20080139791号、国際公開第2005056764号および米国特許第6818418号を参照されたい。ペプチドアプタマーは、定常スキャフォールドタンパク質、典型的には活性部位で挿入された限定された可変ペプチドループを含むチオレドキシン(TrxA)からなるコンビナトリアル認識分子である。さらなる詳細については、Expert Opin.Biol.Ther.5、783~797(2005)を参照されたい。マイクロボディは、3~4個のシステイン架橋を含む、長さ25~50アミノ酸の天然に存在する微小タンパク質(microprotein)に由来し、微小タンパク質の例としてはKalataBIおよびコノトキシンおよびノッチンが挙げられる。微小タンパク質は、微小タンパク質の全体フォールドに影響を及ぼすことなく、最大25個のアミノ酸を含むよう操作され得るループを有する。操作されたノッチンドメインについてのさらなる詳細については、国際公開第2008098796号を参照されたい。
【0081】
参照分子としての「同じエピトープに結合する抗原結合分子」は、競合アッセイで参照分子とその抗原の結合を50%以上ブロックする抗原結合分子を指し、逆に、参照分子は、競合アッセイで抗原結合分子とその抗原の結合を50%以上ブロックする。
【0082】
「抗原結合ドメイン」または「抗原結合部位」という用語は、抗原の一部または全部に特異的に結合し、これと相補的な領域を含む抗原結合分子の一部を指す。抗原が大きい場合、抗原結合分子は、エピトープと呼ばれる抗原の特定の部分にのみ結合し得る。抗原結合ドメインは、例えば、1つまたは複数の可変ドメイン(可変領域とも呼ばれる)によって提供され得る。好ましくは、抗原結合ドメインが、抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含む。
【0083】
本明細書で使用される場合、「抗原決定基」という用語は、「抗原」および「エピトープ」と同義であり、抗原結合部分が結合して、抗原結合部分-抗原複合体を形成するポリペプチド高分子上の部位(例えば、アミノ酸の近接する伸長または非近接アミノ酸の様々な領域で構成されるコンフォメーション形状)を指す。有用な抗原決定基は、例えば、腫瘍細胞の表面上、ウイルス感染細胞の表面上、他の病気にかかった細胞の表面上、免疫細胞の表面上、血清中に遊離で、および/または細胞外マトリックス(ECM)中に見出され得る。別途指示がない限り、本明細書中で抗原として有用なタンパク質は、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来のタンパク質の任意の天然型であり得る。特定の実施形態では、抗原がヒトタンパク質である。本明細書で特定のタンパク質について言及される場合、この用語は、「全長」非プロセシングタンパク質ならびに細胞中でのプロセシングから得られた任意のタンパク質型を包含する。この用語はまた、タンパク質の天然に存在する変異体、例えばスプライシング変異体または対立遺伝子変異体を包含する。
【0084】
「特異的結合」によって、結合が抗原について選択的であり、不要なまたは非特異的相互作用から識別され得ることが意味される。抗原結合分子が特異的抗原に結合する能力は、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)または当業者によく知られている他の技術、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)技術(BIAcore機器で分析される)(Liljebladら、Glyco J 17、323~329(2000))および伝統的な結合アッセイ(Heeley、Endocr Res 28、217~229(2002))を通して測定することができる。一実施形態では、抗原結合分子が非関連タンパク質に結合する程度が、例えばSPRによって測定すると、抗原結合分子と抗原の結合の約10%未満である。一定の実施形態では、抗原に結合する分子が、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nMまたは≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0085】
「親和性」または「結合親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。別途指示がない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般的に解離速度定数の結合速度定数(それぞれkoffとkon)に対する比である解離定数(Kd)によって表すことができる。よって、等価な親和性は、速度定数の比が同じである限り、異なる速度定数を含み得る。親和性は、本明細書に記載されるものを含む、当技術分野で公知の一般的な方法によって測定することができる。親和性を測定するための具体的な方法は表面プラズモン共鳴(SPR)である。
【0086】
「親和性成熟」抗体は、1つまたは複数の超可変領域(HVR)の1つまたは複数の変化を有さない親抗体と比較した、このような変化を有する抗体を指し、このような変化は抗体の抗原に対する親和性の改善をもたらす。
【0087】
別途指示がない限り、「上皮細胞接着分子(EpCAM)」という用語は、霊長類(例えば、ヒト)非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然EpCAMを指す。この用語は、「全長」非プロセシングEpCAMならびに細胞中でのプロセシングから得られた任意のEpCAM型を包含する。この用語はまた、EpCAMの天然に存在する変異体、例えばスプライシング変異体または対立遺伝子変異体を包含する。一実施形態では、本発明の抗原結合分子が、ヒト、マウスおよび/またはカニクイザルEpCAMに特異的に結合することができる。ヒトEpCAMのアミノ酸配列は、UniProt(www.uniprot.org)寄託番号P16422(バージョン167、配列番号68)またはNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/)RefSeq NP_002345.2に示される。マウスEpCAMのアミノ酸配列は、UniProt(www.uniprot.org)寄託番号Q99JW5(バージョン111、配列番号75)またはNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/)RefSeq NP_032558.2に示される。
【0088】
一定の実施形態では、本発明の抗原結合分子が、EpCAMの細胞外ドメイン(ECD)に特異的に結合することができる部分を含む。いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号49に結合する。いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号50に結合する。
【0089】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗原結合分子と抗原の結合に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VHおよびVL)は一般的に類似の構造を有し、各ドメインが4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つの超可変領域(HVR)を含む。例えば、Kindtら、Kuby Immunology、第6版、W.H.Freeman and Co.、91頁(2007)を参照されたい。単一VHまたはVLが抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。
【0090】
「超可変領域」または「HVR」という用語は、本明細書で使用される場合、配列が超可変である、および/または構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメインの領域の各々を指す。一般的に、天然四本鎖抗体は、6つのHVR;VH3つ(H1、H2、H3)およびVL3つ(L1、L2、L3)を含む。HVRは一般に、超可変ループのアミノ酸残基および/または「相補性決定領域」(CDR)のアミノ酸残基を含み、後者は最高の配列可変性である、および/または抗原認識に関与している。例示的超可変ループは、アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)および96~101(H3)で生じる。(ChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol.196:901~917(1987))。例示的CDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3)は、L1のアミノ酸残基24~34、L2の50~56、L3の89~97、H1の31~35B、H2の50~65およびH3の95~102で生じる。(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版 Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991))。超可変領域(HVR)は相補性決定領域(CDR)とも呼ばれ、これらの用語は、本明細において、抗原結合領域を形成する可変領域の部分に関して互換的に使用される。この特定の領域は、定義が互いと比較した場合、アミノ酸残基の重複またはサブセットを含むKabatら、U.S.Dept.of Health and Human Services、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」(1983)およびChothiaら、J.Mol.Biol.196:901~917(1987)によって記載されている。それにもかかわらず、いずれかの定義の抗体またはその変異体のCDRの言及への適用は、本明細書で定義および使用される用語の範囲内にあることを意図している。上に引用される参考文献の各々によって定義されるCDRを包含する適切なアミノ酸残基を、比較として表Aで以下に示す。特定のCDRを包含する正確な残基数は、CDRの配列およびサイズに応じて変化するだろう。当業者であれば、抗体の可変領域アミノ酸配列が与えられれば、どの残基が特定のCDRを構成するかを日常的に決定することができる。
【0091】
Kabatらはまた、任意の抗体に適用可能な可変領域配列のための番号付けシステムを定義した。当業者であれば、配列自体を超えた実験データに依存することなく、「Kabat番号付け」のこのシステムを任意の可変領域配列に明白に割り当てることができる。本明細書で使用される場合、「Kabat番号付け」は、Kabatら、U.S.Dept.of Health and Human Services、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」(1983)によって示される番号付けシステムを指す。別途断りのない限り、抗体可変領域の特定のアミノ酸残基位置の番号付けへの言及は、Kabat番号付けシステムに従う。
【0092】
VHのCDR1を除いて、CDRは一般に、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。CDRはまた、抗原と接触する残基である「特異性決定残基」または「SDR」を含む。SDRは、短縮CDRまたはa-CDRと呼ばれるCDRの領域内に含まれる。例示的a-CDR(a-CDR-L1、a-CDR-L2、a-CDR-L3、a-CDR-H1、a-CDR-H2およびa-CDR-H3)は、L1のアミノ酸残基31~34、L2のアミノ酸残基50~55、L3のアミノ酸残基89~96、H1のアミノ酸残基31~35B、H2のアミノ酸残基50~58およびH3のアミノ酸残基95~102で生じる。(AlmagroおよびFransson、Front.Biosci.13:1619~1633(2008)参照)。別途指示がない限り、HVR残基および可変ドメインの他の残基(例えば、FR残基)は、本発明書では、Kabatら、上記に従って番号付けされる。
【0093】
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3およびFR4からなる。したがって、HVRおよびFR配列は、一般に、VH(またはVL)中に以下の配列で現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0094】
「キメラ」抗体という用語は、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の源または種に由来し、重鎖および/または軽鎖の残りが異なる源または種に由来する抗体を指す。
【0095】
抗体の「クラス」は、その重鎖によって所有される定常ドメインまたは定常領域の型を指す。抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG、IgG、IgG、IgG、IgAおよびIgAにさらに分けることができる。様々なクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。
【0096】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基およびヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。一定の実施形態では、ヒト化抗体が、少なくとも1つ、および典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、HVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全てが非ヒト抗体のものに相当し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト抗体のものに相当する。ヒト化抗体は、場合によりヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含み得る。抗体、例えば非ヒト抗体の「ヒト化型」は、ヒト化を受けた抗体を指す。本発明によって包含される「ヒト化抗体」の他の型は、定常領域が、特にC1q結合および/またはFc受容体(FcR)結合に関して、元の抗体のものからさらに修正または変化して本発明による特性をもたらすものである。
【0097】
「ヒト」抗体は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生されるまたはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト源に由来する抗体の配列に相当するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、特に非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。
【0098】
本明細書の「Fcドメイン」または「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含む抗体重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域および変異Fc領域を含む。IgG Fc領域は、IgG CH2およびIgG CH3ドメインを含む。ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」は、通常、約231位のアミノ酸残基から約340位のアミノ酸残基まで広がる。一実施形態では、炭水化物鎖が、CH2ドメインに結合している。本明細書におけるCH2ドメインは、天然配列CH2ドメインまたは変異CH2ドメインであり得る。「CH3ドメイン」は、Fc領域のCH2ドメインに対してC末端の残基の伸長を含む(すなわち、IgGの約341位のアミノ酸残基から約447位のアミノ酸残基まで)。本明細書におけるCH3領域は、天然配列CH3ドメインまたは変異CH3ドメイン(例えば、その一方の鎖に「隆起」(「ノブ」)が導入され、その他方の鎖に対応する「空洞」(「ホール」)が導入されたCH3ドメイン;参照により本明細書に明示的に組み込まれる、米国特許第5,821,333号参照)であり得る。このような変異CH3ドメインを使用して、本明細書に記載される2つの非同一抗体重鎖のヘテロ二量体化を促進することができる。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域が、Cys226またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで広がる。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は存在しても存在しなくてもよい。本明細書で別途明示しない限り、Fc領域または定常領域のアミノ酸残基の番号付けは、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版 Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD、1991に記載されるように、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。
【0099】
「ノブ・イントゥ・ホール」技術は、例えば、米国特許第5,731,168号;米国特許第7,695,936号;Ridgwayら、Prot Eng 9、617~621(1996)およびCarter、J Immunol Meth 248、7~15(2001)に記載されている。一般的に、本方法は、第1のポリペプチドの界面の隆起(「ノブ」)および第2のポリペプチドの界面の対応する空洞(「ホール」)を導入して、隆起が、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨げるように空洞内に位置することができるようにすることを含む。隆起は、第1のポリペプチドの界面の小さなアミノ酸側鎖を大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えることによって構築される。隆起と同一または類似のサイズの代償的空洞は、大きなアミノ酸側鎖を小さなもの(例えば、アラニンまたはスレオニン)で置き換えることによって、第2のポリペプチドの界面に作り出される。隆起および空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を変化させることによって、例えば部位特異的突然変異誘発によって、またはペプチド合成によって生成され得る。特定の実施形態では、ノブ修飾が、Fcドメインの2つのサブユニットの一方のアミノ酸置換T366Wを含み、ホール修飾が、Fcドメインの2つのサブユニットの他方のアミノ酸置換T366S、L368AおよびY407Vを含む。さらなる特定の実施形態では、ノブ修正を含むFcドメインのサブユニットが、アミノ酸置換S354Cをさらに含み、ホール修飾を含むFcドメインのサブユニットが、アミノ酸置換Y349Cをさらに含む。これらの2つのシステイン残基の導入によって、Fc領域の2つのサブユニット間のジスルフィド架橋の形成がもたらされ、よって二量体がさらに安定化する(Carter、J Immunol Methods 248、7~15(2001))。
【0100】
「免疫グロブリンのFc領域と同等の領域」は、免疫グロブリンのFc領域の天然に存在する対立遺伝子変異体、ならびに置換、付加または欠失をもたらすが、免疫グロブリンがエフェクター機能(抗体依存性細胞傷害性など)を媒介する能力を実質的に低下させない変化を有する変異体を含むことを意図している。例えば、1つまたは複数のアミノ酸を、生物学的機能を実質的に喪失することなく、免疫グロブリンのFc領域のN末端またはC末端から欠失させることができる。このような変異体は、活性に対する効果が最小となるように当技術分野で公知の一般規則に従って選択することができる(例えば、Bowie,J.U.ら、Science 247:1306~10(1990)参照)。
【0101】
「エフェクター機能」という用語は、抗体アイソタイプによって異なる抗体のFc領域に起因する生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体媒介抗原取り込み、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御およびB細胞活性化が挙げられる。
【0102】
Fc受容体結合依存性エフェクター機能は、抗体のFc領域と、造血細胞上の特殊細胞表面受容体であるFc受容体(FcR)の相互作用によって媒介され得る。Fc受容体は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、免疫複合体の食作用による抗体被覆病原体の除去と、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)を介した、赤血球および対応する抗体で被覆された種々の他の細胞標的(例えば、腫瘍細胞)の溶解の両方を媒介することが示されている(例えば、Van de Winkel,J.G.anderson,C.L.、J.Leukoc.Biol.49(1991)511~524参照)。FcRは、免疫グロブリンアイソタイプについての特異性によって定義される:IgG抗体についてのFc受容体はFcγRと呼ばれる。Fc受容体結合は、例えばRavetch,J.V.およびKinet,J.P.、Annu.Rev.Immunol.9(1991)457~492;Capel,P.J.ら、Immunomethods 4(1994)25~34;de Haas,M.ら、J.Lab.Clin.Med.126(1995)330~341;およびGessner,J.E.ら、Ann.Hematol.76(1998)231~248に記載されている。
【0103】
IgG抗体のFc領域の受容体(FcγR)の架橋は、食作用、抗体依存性細胞傷害性および炎症性メディエーターの放出、ならびに免疫複合体クリアランスおよび抗体産生の調節を含む多種多様なエフェクター機能を誘因する。ヒトでは、3つのクラスのFcγRが特徴を明らかにされており、以下の通りである:
- FcγRI(CD64)は、高い親和性でモノマーIgGに結合し、マクロファージ、単球、好中球および好酸球上で発現される。アミノ酸残基E233~G236、P238、D265、N297、A327およびP329(Kabat EUインデックスによる番号付け)の少なくとも1つのFc領域IgGの修飾は、FcγRIへの結合を減少させる。IgG1およびIgG4に代入された233~236位のIgG2残基は、FcγRIへの結合を10倍減少させ、抗体感作赤血球に対するヒト単球応答を排除した(Armour,K.L.ら、Eur.J.Immunol.29(1999)2613~2624)。
- FcγRII(CD32)は、複合体化IgGと中程度~低い親和性で結合し、広く発現される。この受容体は2つのサブタイプ、FcγRIIAおよびFcγRIIBに分けることができる。FcγRIIAは、殺傷に関与する多くの細胞(例えば、マクロファージ、単球、好中球)上で見られ、殺傷過程を活性化することができるように思われる。FcγRIIBは、阻害過程で役割を果たすように思われ、B細胞、マクロファージおよび肥満細胞および好酸球上で見られる。B細胞上では、これはさらなる免疫グロブリン産生および例えば、IgEクラスへのアイソタイプスイッチを抑制するよう機能するように思われる。マクロファージ上では、FcγRIIBは、FcγRIIAを通して媒介される食作用を阻害するように作用する。好酸球および肥満細胞上では、B型はIgEと別の受容体の結合を通してこれらの細胞の活性化を抑制するのを助け得る。FcγRIIAに対する結合減少は、例えば、アミノ酸残基E233~G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、R292およびK414(Kabat EUインデックスによる番号付け)の少なくとも1つでの突然変異を有するIgG Fc領域を含む抗体について見られる。
- FcγRIII(CD16)は、IgGと中程度~低い親和性で結合し、2つの型として存在する。FcγRIIIAは、NK細胞、マクロファージ、好酸球およびいくつかの単球およびT細胞上で見られ、ADCCを媒介する。FcγRIIIBは、好中球上で高度に発現される。FcγRIIIAへの結合の減少は、例えば、アミノ酸残基E233~G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、S239、E269、E293、Y296、V303、A327、K338およびD376(Kabat EUインデックスによる番号付け)の少なくとも1つでの突然変異を有するIgG Fc領域を含む抗体について見られる。
【0104】
Fc受容体についてのヒトIgG1上の結合部位のマッピング、上述の突然変異部位ならびにFcγRIおよびFcγRIIAへの結合を測定する方法は、Shields,R.L.ら、J.Biol.Chem.276(2001)6591~6604に記載されている。
【0105】
「ADCC」または「抗体依存性細胞傷害」という用語は、Fc受容体結合によって媒介される機能であり、エフェクター細胞の存在下での本明細書で報告される抗体による標的細胞の溶解を指す。抗体がADCCを媒介する初期ステップを誘導する能力は、FcγRIおよび/またはFcγRIIAを組換え発現する細胞、あるいはNK細胞(本質的にFcγRIIIAを発現する)などのFcγ受容体発現細胞への結合を測定することによって調べられる。特に、NK細胞上のFcγRへの結合が測定される。
【0106】
「活性化Fc受容体」は、抗体のFc領域によるエンゲージメント後に、受容体保有細胞がエフェクター機能を行うよう刺激するシグナル伝達イベントを誘発するFc受容体である。活性化Fc受容体は、FcγRIIIa(CD16a)、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)およびFcαRI(CD89)を含む。特定の活性化Fc受容体は、ヒトFcγRIIIaである(UniProt寄託番号P08637、バージョン141参照)。
【0107】
「腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー」または「TNF受容体スーパーファミリー」は現在、27個の受容体からなる。これは、細胞外システインリッチドメイン(CRD)を介して腫瘍壊死因子(TNF)に結合する能力を特徴とするサイトカイン受容体の群である。これらのシュードリピート(pseudorepeat)は、受容体鎖内の高度に保存されたシステイン残基によって生成される鎖内ジスルフィドによって定義される。神経成長因子(NGF)を除いて、全てのTNFは、原型TNFαと相同である。その活性型では、TNF受容体の大部分が、原形質膜で三量体複合体を形成する。したがって、ほとんどのTNF受容体は、膜貫通ドメイン(TMD)を含む。これらの受容体のいくつかはまた、リガンド結合後にカスパーゼ相互作用タンパク質を採用してカスパーゼ活性化の外因性経路を開始する細胞内デスドメイン(DD)を含む。デスドメインを欠く他のTNFスーパーファミリー受容体は、TNF受容体関連因子に結合し、増殖または分化をもたらすことができる細胞内シグナル伝達経路を活性化する。これらの受容体はまた、アポトーシスを開始することができるが、間接的機構を介してそうする。アポトーシスを調節することに加えて、いくつかのTNFスーパーファミリー受容体は、B細胞ホメオスタシスおよび活性化、ナチュラルキラー細胞活性化、ならびにT細胞共刺激などの免疫細胞機能の調節に関与する。いくつかのその他のものは、毛包発達および破骨細胞発達などの細胞型特異的反応を調節する。TNF受容体スーパーファミリーのメンバーには以下が含まれる:腫瘍壊死因子受容体1(1A)(TNFRSF1A、CD120a)、腫瘍壊死因子受容体2(1B)(TNFRSF1B、CD120b)、リンフォトキシンβ受容体(LTBR、CD18)、OX40(TNFRSF4、CD134)、CD40(Bp50)、Fas受容体(Apo-1、CD95、FAS)、デコイ受容体3(TR6、M68、TNFRSF6B)、CD27(S152、Tp55)、CD30(Ki-1、TNFRSF8)、4-1BB(CD137、TNFRSF9)、DR4(TRAILR1、Apo-2、CD261、TNFRSF10A)、DR5(TRAILR2、CD262、TNFRSF10B)、デコイ受容体1(TRAILR3、CD263、TNFRSF10C)、デコイ受容体2(TRAILR4、CD264、TNFRSF10D)、RANK(CD265、TNFRSF11A)、オステオプロテジェリン(OCIF、TR1、TNFRSF11B)、TWEAK受容体(Fn14、CD266、TNFRSF12A)、TACI(CD267、TNFRSF13B)、BAFF受容体(CD268、TNFRSF13C)、ヘルペスウイルスエントリーメディエーター(Herpesvirus entry mediator)(HVEM、TR2、CD270、TNFRSF14)、神経成長因子受容体(p75NTR、CD271、NGFR)、B細胞成熟抗原(CD269、TNFRSF17)、グルココルチコイド誘導性TNFR関連(GITR、AITR、CD357、TNFRSF18)、TROY(TNFRSF19)、DR6(CD358、TNFRSF21)、DR3(Apo-3、TRAMP、WS-1、TNFRSF25)およびエクトジスプラシンA2受容体(XEDAR、EDA2R)。
【0108】
腫瘍壊死因子受容体(TNFR)ファミリーのいくつかのメンバーは、初期T細胞活性化後に、T細胞応答を維持するよう機能する。「共刺激TNF受容体ファミリーメンバー」または「共刺激TNFファミリー受容体」という用語は、T細胞の増殖およびサイトカイン産生を共刺激することができるTNF受容体ファミリーメンバーのサブグループを指す。別途指示がない限り、この用語は、霊長類(例えば、ヒト)、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然TNFファミリー受容体を指す。本発明の特定の実施形態では、共刺激TNF受容体ファミリーメンバーが、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、CD27、HVEM(CD270)、CD30およびGITRからなる群から選択され、その全てがT細胞に対する共刺激効果を有することができる。より具体的には、本発明の抗原結合分子は、少なくとも共刺激TNF受容体ファミリーメンバーOX40に特異的に結合することができる部分を含む。
【0109】
TNF受容体ファミリーメンバーのさらなる情報、特に配列は、Uniprot(www.uniprot.org)などの公的に入手可能なデータベースから得ることができる。例えば、ヒト共刺激TNF受容体は、以下のアミノ酸配列を有する:ヒトOX40(UniProt寄託番号P43489、配列番号67)、ヒト4-1BB(UniProt寄託番号Q07011、配列番号69)、ヒトCD27(UniProt寄託番号P26842、配列番号70)、ヒトHVEM(UniProt寄託番号Q92956、配列番号71)、ヒトCD30(UniProt寄託番号P28908、配列番号72)およびヒトGITR(UniProt寄託番号Q9Y5U5、配列番号73)。
【0110】
別途指示がない限り、「OX40」という用語は、本明細書で使用される場合、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然OX40を指す。この用語は、「全長」非プロセシングOX40ならびに細胞中でのプロセシングから得られた任意のPX40型を包含する。この用語はまた、OX40の天然に存在する変異体、例えばスプライシング変異体または対立遺伝子変異体を包含する。例示的ヒトOX40のアミノ酸配列は配列番号67(UniProtP43489、バージョン112)に示され、例示的マウスOX40のアミノ酸配列は配列番号74(UniProtP47741、バージョン101)に示される。
【0111】
「抗OX40抗体」、「抗OX40」、「OX40抗体」および「OX40に特異的に結合する抗体」という用語は、抗体がOX40の標的化における診断剤および/または治療剤として有用になるように、十分な親和性でOX40に結合することができる抗体を指す。一実施形態では、抗OX40抗体と非関連非OX40タンパク質の結合の程度が、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)またはフローサイトメトリー(FACS)によって測定すると、抗体とOX40の結合の約10%未満である。一定の実施形態では、OX40に結合する抗体が、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nMまたは≦0.001nM(例えば、10-6M以下、例えば10-68M~10-13M、例えば10-8M~10-10M)の解離定数(K)を有する。
【0112】
「抗EpCAM抗体」および「EpCAMに結合する抗体」という用語は、抗体が上皮細胞接着分子(EpCAM)の標的化における診断剤および/または治療剤として有用になるように、十分な親和性でEpCAMに結合することができる抗体を指す。一実施形態では、抗EpCAM抗体と非関連非EpCAMタンパク質の結合の程度が、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定すると、抗体とEpCAMの結合の約10%未満である。一定の実施形態では、EpCAMに結合する抗体が、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦5nM、≦2nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nMまたは≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M、例えば10nM~0.1nM、例えば5nM~0.1nM、例えば2nM~0.1nM)の解離定数(KD)を有する。一定の実施形態では、抗EpCAM抗体が、様々な種のEpCAM間で保存されているEpCAMのエピトープに結合する。一定の実施形態では、EpCAMのエピトープに結合する抗体が、EpCAMの細胞外ドメイン(ECD)に特異的である。一定の実施形態では、配列番号49に特異的な抗体が提供される。一定の実施形態では、配列番号50に特異的な抗体が提供される。
【0113】
「ペプチドリンカー」という用語は、1つまたは複数のアミノ酸、典型的には約2~20個のアミノ酸を含むペプチドを指す。ペプチドリンカーは、当技術分野で公知であるまたは本明細書に記載される。適切な、非免疫原性リンカーペプチドは、例えば、(GS)、(SGまたはG(SGペプチドリンカー(式中、「n」は一般的に1~10、典型的には2~4、特に2の数である)、すなわち、GGGGS(配列番号76)、GGGGSGGGGS(配列番号77)、SGGGGSGGGG(配列番号78)およびGGGGSGGGGSGGGG(配列番号80)からなる群から選択されるペプチドであるが、配列GSPGSSSSGS(配列番号82)、(G4S)(配列番号79)、(G4S)(配列番号81)、GSGSGSGS(配列番号83)、GSGSGNGS(配列番号84)、GGSGSGSG(配列番号85)、GGSGSG(配列番号86)、GGSG(配列番号87)、GGSGNGSG(配列番号88)、GGNGSGSG(配列番号89)およびGGNGSG(配列番号90)も含む。(G4S)(配列番号76)、(GS)またはGGGGSGGGGS(配列番号77)およびGSPGSSSSGS(配列番号82)が特に目的のペプチドリンカーである。
【0114】
「アミノ酸」という用語は、本出願で使用される場合、アラニン(3文字表記:ala、1文字表記:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、スレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)およびバリン(val、V)を含む天然に存在するカルボキシα-アミノ酸の群を示す。
【0115】
「融合した(fused)」または「接続された(connected)」とは、成分(例えば、抗体の重鎖およびFab断片)が、ペプチド結合によって、直接的に、または1つもしくは複数のペプチドリンカーを介して結合していることを意味する。
【0116】
参照ポリペプチド(タンパク質)配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、最大パーセント配列同一性を達成するために必要に応じて配列を整列させ、ギャップを導入した後の、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義され、いかなる保存的置換も配列同一性の一部とみなさない。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的でのアラインメントは、当業者が備えている技能の範囲内にある種々の方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN.SAWIまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較している配列の完全長にわたる最大のアラインメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のために、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して作成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech Inc.によって作成され、ソースコードは、米国著作権局、ワシントンD.C.、20559で利用者文書でファイリングされており、米国著作権登録番号TXU510087で登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.、South San Francisco、カリフォルニアから公的に入手可能である、またはソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムで使用するためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変化しない。ALIGN-2をアミノ酸配列比較に使用する状況では、所与のアミノ酸配列Bに対する(to, with, or against)所与のアミノ酸配列Aの%アミノ酸配列同一性(あるいは、所与のアミノ酸配列Bに対して(to, with, or against)一定の%アミノ酸配列同一性を有するまたは含む所与のアミノ酸配列Aとして表現され得る)は、以下の通り計算される:
100×分数X/Y
(式中、Xは、AおよびBのプログラムのアラインメントにおける配列アラインメントプログラムALIGN-2による同一の一致としてスコアリングされるアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAの%アミノ酸配列同一性は、Aに対するBの%アミノ酸配列同一性と等しくないことが認識されるだろう。別途指定のない限り、本明細書で使用される全ての%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して直前の段落に記載されるように得られる。
【0117】
一定の実施形態では、本明細書で提供される抗原結合分子のアミノ酸配列変異体が企図される。例えば、抗原結合分子の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましいだろう。抗原結合分子のアミノ酸配列変異体は、適切な修飾を、分子をコードするヌクレオチド配列に導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。このような修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/または抗体のアミノ酸配列内の残基への挿入、および/または抗体のアミノ酸配列内の残基の置換が含まれる。最終的なコンストラクトが所望の特性、例えば抗原結合を有する限り、欠失、挿入および置換の任意の組み合わせを行って最終コンストラクトに到達することができる。置換突然変異誘発のための目的の部位には、HVRおよびフレームワーク(FR)が含まれる。保存的置換を「好ましい置換」という見出しで表Bに提供し、アミノ酸側鎖クラス(1)~(6)に関して以下にさらに記載する。アミノ酸置換を目的の分子に導入し、産物を所望の活性、例えば保持された/改善した抗原結合、減少した免疫原性または改善したADCCもしくはCDCについてスクリーニングすることができる。
【0118】
アミノ酸を共通の側鎖特性に従って分類することができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0119】
非保存的置換は、これらのクラスのあるもののメンバーと別のクラスの交換を伴う。
【0120】
「アミノ酸配列変異体」という用語は、親抗原結合分子(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1つまたは複数の超可変領域残基中にアミノ酸置換が存在する実質的な変異体を含む。一般的に、さらなる試験のために選択される得られた変異体(複数可)は、親抗原結合分子に対して一定の生物学的特性の修飾(例えば、改善)(例えば、増加した親和性、減少した免疫原性)を有する、および/または実質的に保持された親抗原結合分子の一定の生物学的特性を有する。例示的置換変異体は親和性成熟抗体であり、これは簡便には、例えば、本明細書に記載されるものなどのファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を使用して作製され得る。手短に述べれば、1つまたは複数のHVR残基を突然変異させ、変異抗原結合分子をファージ上にディスプレイさせ、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。一定の実施形態では、置換、挿入または欠失が、このような変化が、抗原結合分子が抗原に結合する能力を実質的に低下させない限り、1つまたは複数のHVR内で起こり得る。例えば、結合親和性を実質的に減少させない保存的変化(例えば、本明細書で提供される保存的置換)をHVR中で行ってもよい。突然変異誘発のために標的化され得る抗体の残基または領域を同定するのに有用な方法は、CunninghamおよびWells(1989)Science、244:1081~1085によって記載されるように「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法では、標的残基(例えば、Arg、Asp、His、LysおよびGluなどの荷電残基)の残基または群を同定し、中性または負に帯電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えて、抗体と抗原の相互作用が影響を及ぼされるかどうかを決定する。さらなる置換を、初期置換に対する機能的感受性を実証するアミノ酸位置で導入することができる。あるいはまたはさらに、抗原-抗原結合分子複合体の結晶構造により抗体と抗原との間の接点を同定する。このような接触残基および隣接残基を、置換のための候補として標的化または排除することができる。変異体をスクリーニングして、所望の特性を含むかどうかを決定することができる。
【0121】
アミノ酸配列挿入は、長さが1個の残基から100個以上の残基を含むポリペプチドに及ぶアミノ-および/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する本発明の二重特異性抗原結合分子が挙げられる。分子の他の挿入変異体には、二重特異性抗原結合分子の血清半減期を増加させるポリペプチドとのNまたはC末端融合体が含まれる。
【0122】
一定の実施形態では、本明細書で提供される二重特性抗原結合分子を変化させて、抗体がグリコシル化されている程度を増加または減少させる。分子のグリコシル化変異体は、簡便には1つまたは複数のグリコシル化部位が作り出されるまたは除去されるようにアミノ酸配列を変化させることによって得ることができる。二重特異性抗原結合分子がFc領域を含む場合、そこに結合している炭水化物を変化させることができる。哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は典型的には、一般的にN結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に結合している分岐した二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wrightら TIBTECH 15:26~32(1997)を参照されたい。オリゴ糖は、二分岐オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合した種々の炭水化物、例えばマンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトースおよびシアル酸ならびにフコースを含み得る。いくつかの実施形態では、一定の改善された特性を有する変異体を作り出すために、抗原結合分子中のオリゴ糖の修飾を行うことができる。一態様では、Fc領域に(直接的にまたは間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する本発明の二重特異性抗原結合分子または抗体の変異体が提供される。このようなフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta,L.)または米国特許出願公開第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。別の態様では、二分オリゴ糖を含む、例えば、Fc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている、本発明の二重特異性抗原結合分子または抗体の変異体が提供される。このような変異体は、減少したフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。例えば、国際公開第2003/011878号(Jean-Mairetら);米国特許第6602684号(Umanaら);および米国特許出願公開第2005/0123546号(Umanaら)を参照されたい。Fc領域に結合したオリゴ糖中の少なくとも1個のガラクトース残基を有する変異体も提供される。このような抗体変異体は、改善されたCDC機能を有することができ、例えば国際公開第1997/30087号(Patelら);国際公開第1998/58964号(Raju,S.);および国際公開第1999/22764号(Raju,S.)に記載されている。
【0123】
一定の態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子のシステイン操作変異体、例えば分子の1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換されている「チオMAb」を作り出すことが望ましいだろう。特定の態様では、置換残基が分子の接触可能部位で生じる。それによると、これらの残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基を抗体の接触可能部位に位置させ、これを使用して抗体を他の部分、例えば薬物部分またはリンカー-薬物部分にコンジュゲートしてイムノコンジュゲートを作り出すことができる。一定の態様では、以下の残基のいずれか1つまたは複数がシステインで置換され得る:軽鎖のV205(Kabat番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);および重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン操作抗原結合分子は、例えば米国特許第7521541号に記載されるように作製され得る。
【0124】
「ポリヌクレオチド」という用語は、単離核酸分子またはコンストラクト、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)、ウイルス由来RNAまたはプラスミドDNA(pDNA)を指す。ポリヌクレオチドは、慣用的なホスホジエステル結合または非慣用的な結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)に見られるようなアミド結合)を含み得る。「核酸分子」という用語は、ポリヌクレオチド中に存在する、任意の1つまたは複数の核酸セグメント、例えばDNAまたはRNA断片を指す。
【0125】
「単離」核酸分子またはポリヌクレオチドとは、その天然環境から取り出された核酸分子、DNAまたはRNAを意図している。例えば、ベクターに含まれるポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、本発明の目的のために単離されていると考えられる。単離ポリヌクレオチドのさらなる例としては、異種宿主細胞中に維持される組換えポリヌクレオチドまたは溶液中の精製(部分的もしくは実質的)ポリヌクレオチドが挙げられる。単離ポリヌクレオチドには、ポリヌクレオチド分子を通常含む細胞内に含まれるポリヌクレオチド分子が含まれるが、ポリヌクレオチド分子が、染色体外またはその自然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。単離RNA分子には、本発明のインビボまたはインビトロRNA転写産物、ならびにプラス鎖およびマイナス鎖型、ならびに二本鎖型が含まれる。本発明による単離ポリヌクレオチドまたは核酸には、合成的に産生されたこのような分子がさらに含まれる。さらに、ポリヌクレオチドまたは核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位または転写ターミネーターなどの調節エレメントであり得る、またはこれらを含み得る。
【0126】
本発明の参照ヌクレオチド配列と少なくとも、例えば95%「同一である」ヌクレオチド配列を有する核酸またはポリヌクレオチドとは、ポリヌクレオチド配列が参照ヌクレオチド配列の各100個のヌクレオチド当たり最大5個の点突然変異を含んでもよいことを除いて、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同一であることを意図する。換言すれば、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るために、参照配列中のヌクレオチドの最大5%を欠失させるもしくは別のヌクレオチドで置換してもよい、または参照配列中の全ヌクレオチドの最大5%までのいくつかのヌクレオチドを参照配列に挿入してもよい。参照配列のこれらの変化は、参照ヌクレオチド配列の5’もしくは3’末端位置で、またはこれらの末端位置間のどこでも、参照配列中の残基の間に個々に散在して、または参照配列内の1つもしくは複数の近接する群で起こり得る。実際問題として、任意の特定のポリヌクレオチド配列が本発明のヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるかどうかは、慣習的にはポリペプチドについて上に論じられるもの(例えば、ALIGN-2)などの公知のコンピュータプログラムを使用して決定することができる。
【0127】
「発現カセット」という用語は、標的細胞内での特定の核酸の転写を可能にする一連の指定された核酸エレメントを含む、組換え的にまたは合成的に作製されたポリヌクレオチドを指す。組換え発現カセットを、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスミドDNA、ウイルスまたは核酸断片に組み込むことができる。典型的には、発現ベクターの組換え発現カセット部分は、数ある配列の中でも、転写される核酸配列およびプロモーターを含む。一定の実施形態では、本発明の発現カセットが、本発明の二重特異性抗原結合分子またはその断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む。
【0128】
「ベクター」または「発現ベクター」という用語は、「発現コンストラクト」と同義であり、それが標的細胞内で動作可能に会合された特定の遺伝子を導入し、その発現を指示するために使用されるDNA分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、ならびに導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれるベクターを含む。本発明の発現ベクターは、発現カセットを含む。発現ベクターは、多量の安定なmRNAの転写を可能にする。いったん発現ベクターが標的細胞の内側にくると、遺伝子によってコードされるリボ核酸分子またはタンパク質が、細胞転写および/または翻訳機構によって産生される。一実施形態では、本発明の発現ベクターが、本発明の二重特異性抗原結合分子またはその断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む発現カセットを含む。
【0129】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」および「宿主細胞培養物」という用語は互換的に使用され、このような細胞の子孫を含む、外因性核酸が導入された細胞を指す。宿主細胞には、初代形質転換細胞および継代数にかかわらずこれに由来する子孫を含む、「形質転換体」および「形質転換細胞」が含まれる。子孫は、親細胞と核酸含量が完全に同一でなくてもよく、突然変異を含んでもよい。元の形質転換細胞でスクリーニングまたは選択されるのと同じ機能または生物活性を有する突然変異体子孫が本明細書に含まれる。宿主細胞は、本発明の二重特異性抗原結合分子を作製するために使用され得る任意の型の細胞系である。宿主細胞には、培養細胞、例えば哺乳動物培養細胞、例えばCHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞、酵母細胞、昆虫細胞および植物細胞、ほんの少し例を挙げれば、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物または培養植物もしくは動物組織内に含まれる細胞も含まれる。
【0130】
薬剤の「有効量」は、投与された細胞または組織中で生理的変化をもたらすのに必要な量を指す。
【0131】
薬剤、例えば薬学的組成物の「治療的有効量」は、所望の治療的または予防的結果を達成するのに必要な投与量および期間で有効な量を指す。薬剤の治療的有効量は、例えば疾患の有害作用を排除させる、減少させる、遅延させる、最小化するまたは予防する。
【0132】
「個体」または「対象」は哺乳動物である。哺乳動物には、それだけに限らないが、飼育動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌおよびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えばサル)、ウサギ、およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が含まれる。特に、個体または対象はヒトである。
【0133】
「薬学的組成物」という用語は、そこに含有される有効成分の生物活性が有効になるのを可能にするような形態であり、製剤が投与される対象にとって許容できないほど毒性である追加の成分を含有しない調製物を指す。
【0134】
「薬学的に許容される賦形剤」は、対象にとって非毒性の、有効成分以外の薬学的組成物中の成分を指す。薬学的に許容される賦形剤には、それだけに限らないが、バッファー、安定剤または防腐剤が含まれる。
【0135】
「添付文書」という用語は、治療用製品の適応症、使用法、投与量、投与、併用療法、禁忌および/または使用に関する警告についての情報を含む、治療用製品の市販のパッケージに慣習的に含まれる説明書を指すために使用される。
【0136】
本明細書で使用される場合、「治療」(および「治療する」または「治療すること」などのその文法的変形)は、治療している個体の自然経過を変化させようとする臨床的介入を指し、臨床病理学の予防のためまたはその経過中に行うことができる。望ましい治療効果には、それだけに限らないが、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的病理学的帰結の減弱、転移の予防、疾患の進行速度の減少、疾患状態の改善または緩和、および寛解または予後改善が含まれる。いくつかの実施形態では、本発明の分子を使用して、疾患の発症を遅延させるまたは疾患の進行を遅延させる。
【0137】
「がん」という用語は、本明細書で使用される場合、リンパ腫、リンパ性白血病、肺がん、非小細胞肺(NSCL)がん、細気管支肺胞細胞肺がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頚部がん、皮膚もしくは眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門部のがん、胃がん(stomach cancer)、胃がん(gastric cancer)、結腸がん、乳がん、子宮がん、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、膀胱がん、腎臓もしくは尿管がん、腎細胞癌、腎盂癌、中皮腫、肝細胞がん、胆道がん、中枢神経系(CNS)新生物、脊椎軸腫瘍、脳幹神経膠腫、多形神経膠芽腫、星状細胞腫、シュワン腫、上衣腫、髄芽腫、髄膜腫、扁平上皮癌、下垂体腺腫およびユーイング肉腫(上記がんのいずれかの難治性型、または上記がんの1つもしくは複数の組み合わせを含む)などの増殖性疾患を指す。
【0138】
本発明の二重特異性抗原結合分子
本発明は、製造可能性、安定性、結合親和性、生物活性、標的化効率および減少した毒性などの特に有利な特性を有する新規な二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0139】
本発明は、
(a)抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含むOX40に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と、
(b)抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含む、上皮細胞接着分子(EpCAM)に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と
を含む二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0140】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子が、(c)安定に会合することができる第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFc領域をさらに含む。
【0141】
特定の態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子が、OX40とのアゴニスト結合を特徴とする。
【0142】
OX40に結合する二重特異性抗原結合分子
一態様では、本発明は、OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号1のアミノ酸配列を含む、またはからなるポリペプチドに結合する、二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0143】
一態様では、OX40に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分を含む二重特異性抗原結合分子であって、前記部分が
(i)配列番号4および配列番号5からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-H1、
(ii)配列番号6および配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-H2、ならびに
(iii)配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13および配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-H3
を含むVHと、
(iv)配列番号15、配列番号16および配列番号17からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-L1、
(v)配列番号18、配列番号19および配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-L2、ならびに
(vi)配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25および配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-L3と
を含むVL
を含む、二重特異性抗原結合分子が提供される。
【0144】
特に、OX40に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分を含む二重特異性抗原結合分子であって、前記部分が
(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHと配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L2および配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVL、
(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHと配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L2および配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVL、
(c)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHと配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L2および配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVL、
(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHと配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L2および配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVL、
(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHと配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-L2および配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVL、
(f)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHと配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-L2および配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVL、または
(g)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHと配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-L2および配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVL
を含む、二重特異性抗原結合分子が提供される。
【0145】
一態様では、本発明は、OX40に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分を含む二重特異性抗原結合分子であって、前記部分が配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHと、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L2および配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLとを含む、二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0146】
別の態様では、本発明は、OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43および配列番号45からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44および配列番号46からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む、二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0147】
特に、OX40に特異的に結合することができる部分が、
(i)配列番号33のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号34のアミノ酸配列を含むVL、
(ii)配列番号35のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号36のアミノ酸配列を含むVL、
(iii)配列番号37のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号38のアミノ酸配列を含むVL、
(iv)配列番号39のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号40のアミノ酸配列を含むVL、
(v)配列番号41のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号42のアミノ酸配列を含むVL、
(vi)配列番号43のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号44のアミノ酸配列を含むVL、または
(vii)配列番号45のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号46のアミノ酸配列を含むVL
を含む、二重特異性抗原結合分子が提供される。
【0148】
特定の態様では、OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号35のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号36のアミノ酸配列を含むVLとを含む、二重特異性抗原結合分子が提供される。
【0149】
一態様では、本発明は、OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号2のアミノ酸配列を含む、またはからなるポリペプチドに結合する、二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0150】
一態様では、OX40に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分を含む二重特異性抗原結合分子であって、前記部分が、
(i)アミノ酸配列、配列番号27を含むCDR-H1、
(ii)アミノ酸配列、配列番号28を含むCDR-H2、および
(iii)アミノ酸配列、配列番号29を含むCDR-H3
を含むVHと、
(iv)アミノ酸配列、配列番号30を含むCDR-L1、
(v)アミノ酸配列、配列番号31を含むCDR-L2、および
(vi)アミノ酸配列、配列番号32を含むCDR-L3
を含むVLと
を含む、二重特異性抗原結合分子が提供される。
【0151】
別の態様では、本発明は、OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号47のアミノ酸配列と少なくとも約約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号48のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む、二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0152】
特に、OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号47のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号48のアミノ酸配列を含むVLとを含む、二重特異性抗原結合分子が提供される。
【0153】
EpCAMに結合する二重特異性抗原結合分子
一態様では、本発明は、上皮細胞接着分子(EpCAM)に特異的に結合することができる部分が、配列番号49のアミノ酸配列を含む、またはからなるポリペプチドに結合する、二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0154】
一態様では、EpCAMに特異的に結合することができる少なくとも1つの部分を含む二重特異性抗原結合分子であって、前記部分が、
(i)アミノ酸配列、配列番号51を含むCDR-H1、
(ii)アミノ酸配列、配列番号52を含むCDR-H2、および
(iii)アミノ酸配列、配列番号53を含むCDR-H3
を含むVHと、
(iv)アミノ酸配列、配列番号54を含むCDR-L1、
(v)アミノ酸配列、配列番号55を含むCDR-L2、および
(vi)アミノ酸配列、配列番号56を含むCDR-L3
を含むVLと
を含む、二重特異性抗原結合分子が提供される。
【0155】
別の態様では、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号64のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む、二重特異性抗原結合分子が提供される。
【0156】
特に、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号63のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号64のアミノ酸配列を含むVLとを含む、二重特異性抗原結合分子が提供される。
【0157】
一態様では、本発明は、上皮細胞接着分子(EpCAM)に特異的に結合することができる部分が、配列番号50のアミノ酸配列を含む、またはからなるポリペプチドに結合する、二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0158】
一態様では、EpCAMに特異的に結合することができる少なくとも1つの部分を含む二重特異性抗原結合分子であって、前記部分が、
(i)アミノ酸配列、配列番号57を含むCDR-H1、
(ii)アミノ酸配列、配列番号58を含むCDR-H2、および
(iii)アミノ酸配列、配列番号59を含むCDR-H3
を含むVHと、
(iv)アミノ酸配列、配列番号60を含むCDR-L1、
(v)アミノ酸配列、配列番号61を含むCDR-L2、および
(vi)アミノ酸配列、配列番号62を含むCDR-L3
を含むVLと
を含む、二重特異性抗原結合分子が提供される。
【0159】
別の態様では、本発明は、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号65のアミノ酸配列と少なくとも約約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号66のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む、二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0160】
特に、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号65のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号66のアミノ酸配列を含むVLとを含む、二重特異性抗原結合分子が提供される。
【0161】
OX40およびEpCAMに結合する二重特異性抗原結合分子
さらなる態様では、
(i)OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43および配列番号45のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44および配列番号46からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含み、
(ii)EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号64のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む、
二重特異性抗原結合分子が提供される。
【0162】
特定の態様では、
(a)OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号33のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号34のアミノ酸配列を含むVLとを含み、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号63のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号64のアミノ酸配列を含むVLとを含み、
(b)OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号35のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号36のアミノ酸配列を含むVLとを含み、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号63のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号64のアミノ酸配列を含むVLとを含み、
(c)OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号37のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号38のアミノ酸配列を含むVLとを含み、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号63のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号64のアミノ酸配列を含むVLとを含み、
(d)OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号39のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号40のアミノ酸配列を含むVLとを含み、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号63のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号64のアミノ酸配列を含むVLとを含み、
(e)OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号41のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号42のアミノ酸配列を含むVLとを含み、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号63のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号64のアミノ酸配列を含むVLとを含み、
(f)OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号43のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号44のアミノ酸配列を含むVLとを含み、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号63のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号64のアミノ酸配列を含むVLとを含み、
(g)OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号45のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号46のアミノ酸配列を含むVLとを含み、EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号63のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号64のアミノ酸配列を含むVLとを含む、
二重特異性抗原結合分子が提供される。
【0163】
特定の態様では、本発明は、
OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号35のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号36のアミノ酸配列を含むVLとを含み、
EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号63のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号64のアミノ酸配列を含むVLとを含む、
二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0164】
さらなる態様では、
(i)OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号47のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号48のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含み、
(ii)EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号65のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号66のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む、
二重特異性抗原結合分子が提供される。
【0165】
特定の態様では、
OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号47のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号48のアミノ酸配列を含むVLとを含み、
EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号65のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号66のアミノ酸配列を含むVLとを含む、
二重特異性抗原結合分子が提供される。
【0166】
OX40との四価結合およびEpCAMとの一価結合を有する二重特異性抗原結合分子(4+1フォーマット)
一態様では、二重特異性抗原結合分子が、OX40について四価であり、EpCAMについて一価である。
【0167】
一態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子が、
(a)Fc領域に接続されたOX40に特異的に結合することができる4つのFab断片と、
(b)Fc領域のC末端に接続された抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含むEpCAMに特異的に結合することができる部分と
を含む。
【0168】
一態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子が、
(a)OX40に特異的に結合することができる4つのFab断片およびFc領域を含む抗体の2つの軽鎖および2つの重鎖と、
(b)VHが(a)の2つの重鎖の一方のC末端に接続されており、VLが(a)の2つの重鎖の他方のC末端に接続されている、EpCAMに特異的に結合することができる部分のVHおよびVLと
を含む。
【0169】
一態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子が、
(a)各重鎖がOX40に特異的に結合することができるFab断片の2つのVHドメインおよび2つのCH1ドメインならびにFc領域サブユニットとを含む、2つの重鎖と、
(b)各軽鎖がOX40に特異的に結合することができるFab断片のVLおよびCLドメインを含む、4つの軽鎖と、
(c)VHが(a)の2つの重鎖の一方のC末端に接続されており、VLが(a)の2つの重鎖の他方のC末端に接続されている、EpCAMに特異的に結合することができる部分のVHおよびVLと
を含む。
【0170】
本発明の種々の態様によるいくつかの実施形態では、EpCAMに特異的に結合することができる部分のVHが、ペプチドリンカーを介して(a)の2つの重鎖の一方のC末端に接続されている。本発明の種々の態様によるいくつかの実施形態では、EpCAMに特異的に結合することができる部分のVLが、ペプチドリンカーを介して(a)の2つの重鎖の一方のC末端に接続されている。特定の実施形態では、ペプチドリンカーが(G4S)(配列番号81)である。
【0171】
特定の態様では、本発明は、配列番号183のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号184のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号182のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0172】
特定の態様では、本発明は、
配列番号183のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、
配列番号184のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、
各々が配列番号182のアミノ酸配列を含む、4つの軽鎖と
を含む二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0173】
特定の態様では、本発明は、配列番号192のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号193のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号191のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0174】
特定の態様では、本発明は、
配列番号192のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、
配列番号193のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、
各々が配列番号191のアミノ酸配列を含む、4つの軽鎖と
を含む二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0175】
一態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子が、第1、第2、第3、第4および第5の抗原結合部分を形成する第1および第2の重鎖と4つの軽鎖を含み、第1、第2、第3および第4の抗原結合部分それぞれが、OX40に特異的に結合することができ、第5の抗原結合部分が、EpCAMに特異的に結合することができ、
(i)第1のポリペプチド鎖が、アミノ(N)末端からカルボキシル(C)末端方向に、VH(OX40)、CH1、VH(OX40)、CH1、CH2、CH3(Fcノブ)およびVH(EpCAM)を含み、
(ii)第2のポリペプチド鎖が、N末端からC末端方向に、VH(OX40)、CH1、VH(OX40)、CH1、CH2、CH3(Fcホール)およびVL(EpCAM)を含み、
(iii)4つの軽鎖が、N末端からC末端方向に、VL(OX40)およびCLを含む。
【0176】
別の態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子が、第1、第2、第3、第4および第5の抗原結合部分を形成する第1および第2の重鎖と4つの軽鎖を含み、第1、第2、第3および第4の抗原結合部分がそれぞれ、OX40に特異的に結合することができ、第5の抗原結合部分が、EpCAMに特異的に結合することができ、
(i)第1のポリペプチド鎖が、アミノ(N)末端からカルボキシル(C)末端方向に、VH(OX40)、CH1、VH(OX40)、CH1、CH2、CH3(Fcノブ)およびVL(EpCAM)を含み、
(ii)第2のポリペプチド鎖が、N末端からC末端方向に、VH(OX40)、CH1、VH(OX40)、CH1、CH2、CH3(Fcホール)およびVL(EpCAM)を含み、
(iii)4つの軽鎖が、N末端からC末端方向に、VL(Ox40)およびCLを含む。
【0177】
OX40との四価結合およびEpCAMとの二価結合を有する二重特異性抗原結合分子(4+2フォーマット)
一態様では、二重特異性抗原結合分子が、OX40について四価であり、EpCAMについて二価である。
【0178】
一態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子が、
(a)Fc領域に接続されたOX40に特異的に結合することができる4つのFab断片と、
(b)Fc領域のC末端に接続された抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含むEpCAMに特異的に結合することができる部分と
を含む。
【0179】
一態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子が、
(a)OX40に特異的に結合することができる4つのFab断片およびFc領域を含む、抗体の4つの軽鎖および2つの重鎖と、
(b)Fab断片の一方が(a)の2つの重鎖の一方のC末端に接続されており、Fab断片の他方が(a)の2つの重鎖の他方のC末端に接続されている、EpCAMに特異的に結合することができる2つのFab断片と
を含む。
【0180】
一態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子が、
(a)各重鎖がOX40に特異的に結合することができるFab断片の2つのVHドメインおよび2つのCH1ドメインならびにFc領域サブユニットを含む、2つの重鎖と、
(b)各軽鎖がOX40に特異的に結合することができるFab断片のVLおよびCLドメインを含む、4つの軽鎖と、
(c)Fab断片の一方が(a)の2つの重鎖の一方のC末端に接続されており、Fab断片の他方が(a)の2つの重鎖の他方のC末端に接続されている、EpCAMに特異的に結合することができる2つのFab断片と
を含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、EpCAMに特異的に結合することができる2つのFab断片が、各々がVL-CH1鎖およびVH-CL鎖を含むクロスオーバーFab断片であり、VL-CH1鎖の一方が、(a)の2つの重鎖の一方のC末端に接続されており、VL-CH1鎖の他方が、(a)の2つの重鎖の他方のC末端に接続されている。
【0182】
本発明の種々の態様によるいくつかの実施形態では、EpCAMに特異的に結合することができるFab断片が、ペプチドリンカーを介して(a)の重鎖のC末端に接続されている。本発明の種々の態様によるいくつかの実施形態では、EpCAMに特異的に結合することができるクロスオーバーFab断片のVL-CH1鎖が、ペプチドリンカーを介して(a)の2つの重鎖の一方のC末端に接続されている。特定の実施形態では、ペプチドリンカーが(G4S)(配列番号81)である。
【0183】
特定の態様では、本発明は、各々が配列番号186のアミノ酸配列を含む、2つの重鎖と、配列番号185のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号187のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖とを含む二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0184】
特定の態様では、本発明は、
各々が配列番号186のアミノ酸配列を含む、2つの重鎖と、
各々が配列番号187のアミノ酸配列を含む、2つの軽鎖と、
各々が配列番号185のアミノ酸配列を含む、4つの軽鎖と
を含む二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0185】
一態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子が、第1、第2、第3、第4、第5および第6の抗原結合部分を形成する第1および第2の重鎖と、6つの軽鎖とを含み、第1、第2、第3および第4の抗原結合部分がそれぞれ、OX40に特異的に結合することができ、第5および第6の抗原結合部分がそれぞれ、EpCAMに特異的に結合することができ、
(i)第1および第2のポリペプチド鎖が、アミノ(N)末端からカルボキシル(C)末端方向に、VH(OX40)、CH1、VH(OX40)、CH1、CH2、CH3、VL(EpCAM)およびCH1を含み、
(ii)4つの軽鎖が、N末端からC末端方向に、VL(OX40)およびCLを含み、
(iii)2つの軽鎖が、N末端からC末端方向に、VH(EpCAM)およびCLを含み、
CH1およびCLが、より良いペアリングを可能にするアミノ酸突然変異を含む。
【0186】
Fc受容体結合および/またはエフェクター機能を減少させるFc領域修飾
本発明の種々の態様による実施形態では、二重特異性抗原結合分子が、安定に会合することができる第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFc領域をさらに含む。
【0187】
一定の態様では、1つまたは複数のアミノ酸修飾を本明細書で提供される抗体のFc領域に導入して、それによってFc領域変異体を作製することができる。Fc領域変異体は、1つまたは複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0188】
Fc領域は、標的組織中での優れた蓄積に寄与する長い血清半減期および好ましい組織-血液分配比を含む、好ましい薬物動態特性を本発明の二重特異性抗体に付与する。しかしながら、同時に、これは、本発明の二重特異性抗体の、好ましい抗原保有細胞よりもむしろ、Fc受容体を発現している細胞への望ましくない標的化につながり得る。したがって、特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗体のFc領域が、天然IgG Fc領域、特にIgG1 Fc領域またはIgG4 Fc領域と比較して、減少したFc受容体に対する結合親和性および/または減少したエフェクター機能を示す。特に、Fc領域はIgG1 Fc領域である。
【0189】
1つのこのような態様では、Fc領域(または前記Fc領域を含む本発明の二重特異性抗原結合分子)が、天然IgG1 Fc領域(もしくは天然IgG1 Fc領域を含む本発明の二重特異性抗原結合分子)と比較して、50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満のFc受容体に対する結合親和性、および/または天然IgG1 Fc領域(もしくは天然IgG1 Fc領域を含む本発明の二重特異性抗原結合分子)と比較して、50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満のエフェクター機能を示す。一態様では、Fc領域(または前記Fc領域を含む本発明の二重特異性抗原結合分子)が、実質的にFc受容体に結合しない、および/またはエフェクター機能を誘導しない。特定の態様では、Fc受容体がFcγ受容体である。一態様では、Fc受容体がヒトFc受容体である。一態様では、Fc受容体が活性化Fc受容体である。具体的な態様では、Fc受容体が活性化ヒトFcγ受容体、より具体的にはヒトFcγRIIIa、FcγRIまたはFcγRIIa、最も具体的にはヒトFcγRIIIaである。一態様では、Fc受容体が抑制性Fc受容体である。具体的な態様では、Fc受容体が抑制性ヒトFcγ受容体、より具体的にはヒトFcγRIIBである。一態様では、エフェクター機能が、CDC、ADCC、ADCPおよびサイトカイン分泌の1つまたは複数である。特定の態様では、エフェクター機能がADCCである。一態様では、Fc領域ドメインが、天然IgG1 Fc領域と比較して、実質的に類似の新生児Fc受容体(FcRn)に対する結合親和性を示す。実質的に類似のFcRnへの結合は、Fc領域(または前記Fc領域を含む本発明の二重特異性抗原結合分子)が、天然IgG1 Fc領域(または天然IgG1 Fc領域を含む本発明の二重特異性抗原結合分子)のFcRnに対する結合親和性の約70%超、特に約80%超、さらに特に約90%超を示す場合に達成される。
【0190】
特定の態様では、Fc領域を、非操作Fc領域と比較して、減少したFc受容体に対する結合親和性および/または減少したエフェクター機能を有するよう操作する。特定の態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子のFc領域が、Fc領域のFc受容体に対する結合親和性および/またはエフェクター機能を減少させる1つまたは複数のアミノ酸突然変異を含む。典型的には、Fc領域の2つのサブユニットの各々に同じ1つまたは複数のアミノ酸突然変異が存在する。一態様では、アミノ酸突然変異が、Fc領域のFc受容体に対する結合親和性を減少させる。別の態様では、アミノ酸突然変異が、Fc領域のFc受容体に対する結合親和性を少なくとも2倍、少なくとも5倍または少なくとも10倍減少させる。一態様では、操作Fc領域を含む本発明の二重特異性抗原結合分子が、非操作Fc領域を含む本発明の二重特異性抗体と比較して、20%未満、特に10%未満、さらに特に5%未満のFc受容体に対する結合親和性を示す。特定の態様では、Fc受容体がFcγ受容体である。他の態様では、Fc受容体がヒトFc受容体である。一態様では、Fc受容体が抑制性Fc受容体である。具体的な態様では、Fc受容体が抑制性ヒトFcγ受容体、より具体的にはヒトFcγRIIBである。いくつかの態様では、Fc受容体が活性化Fc受容体である。具体的な態様では、Fc受容体が活性化ヒトFcγ受容体、より具体的にはヒトFcγRIIIa、FcγRIまたはFcγRIIa、最も具体的にはヒトFcγRIIIaである。好ましくは、これらの受容体の各々への結合が減少する。いくつかの態様では、補体成分に対する結合親和性、具体的にはC1qに対する結合親和性も減少する。一態様では、新生児Fc受容体(FcRn)に対する結合親和性が減少しない。実質的に類似のFcRnへの結合、すなわち、Fc領域の前記受容体に対する結合親和性の保存は、Fc領域(または前記Fc領域を含む本発明の二重特異性抗原結合分子)が、Fc領域の非操作型(または前記Fc領域の非操作型を含む本発明の二重特異性抗原結合分子)のFcRnに対する結合親和性の約70%超を示す場合に、達成される。Fc領域、または前記Fc領域を含む本発明の二重特異性抗原結合分子は、このような親和性の約80%超、さらには約90%超を示し得る。一定の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合分子のFc領域を、非操作Fc領域と比較して、減少したエフェクター機能を有するよう操作する。減少したエフェクター機能には、それだけに限らないが、以下の1つまたは複数が含まれ得る:減少した補体依存性細胞傷害(CDC)、減少した抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)、減少した抗体依存性細胞食作用(ADCP)、減少したサイトカイン分泌、減少した抗原提示細胞による免疫複合体媒介抗原取り込み、減少したNK細胞への結合、減少したマクロファージへの結合、減少した単球への結合、減少した多形核細胞への結合、減少したアポトーシスを誘導する直接シグナル伝達、減少した樹状細胞成熟または減少したT細胞プライミング。
【0191】
減少したエフェクター機能を有する抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327および329の1つまたは複数の置換を有するものが含まれる(米国特許第6,737,056号)。このようなFc突然変異体には、残基265および297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc突然変異体を含む、アミノ酸265位、269位、270位、297位および327位の2つ以上での置換を有するFc突然変異体が含まれる(米国特許第7,332,581号)。改善したまたは減少したFcRsへの結合を有する一定の抗体変異体が記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号;国際公開第2004/056312号およびShields,R.L.ら、J.Biol.Chem.276(2001)6591~6604)。
【0192】
本発明の一態様では、Fc領域が、E233、L234、L235、N297、P331およびP329位でのアミノ酸置換を含む。いくつかの態様では、Fc領域が、アミノ酸置換L234AおよびL235A(「LALA」)を含む。1つのこのような実施形態では、Fc領域がIgG1 Fc領域、特にヒトIgG1 Fc領域である。一態様では、Fc領域が、P329位でのアミノ酸置換を含む。さらに具体的な態様では、アミノ酸置換がP329AまたはP329G、特にP329Gである。一実施形態では、Fc領域が、P329位でのアミノ酸置換、およびE233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297DまたはP331Sからなる群から選択されるさらなるアミノ酸置換を含む。さらに特定の実施形態では、Fc領域がアミノ酸突然変異L234A、L235AおよびP329G(「P329G LALA」)を含む。アミノ酸置換の「P329G LALA」組み合わせは、PCT特許出願番号、国際公開第2012/130831号に記載されるように、ヒトIgG1 Fc領域のFcγ受容体結合をほぼ完全に消滅させる。前記文献はまた、このような突然変異Fc領域を調製する方法およびFc受容体結合またはエフェクター機能などのその特性を決定する方法も記載している。このような抗体は、突然変異L234AおよびL235Aを有する、または突然変異L234A、L235AおよびP329Gを有するIgG1である(KabatらのEUインデックスによる番号付け、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版 Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD、1991)。
【0193】
本発明の一態様では、Fc領域が、D265位およびP329位でのアミノ酸置換を含む。いくつかの態様では、Fc領域が、CH2ドメインにアミノ酸置換D265AおよびP329G(「DAPG])を含む。1つのこのような実施形態では、Fc領域がIgG1 Fc領域、特にマウスIgG1 Fc領域である。DAPG突然変異は、例えば国際公開第2016/030350号に記載されており、これを重鎖のCH2領域に導入して、抗原結合分子とマウスFcγ受容体の結合を抑止することができる。
【0194】
一態様では、Fc領域がIgG4 Fc領域である。さらに具体的な実施形態では、Fc領域が、S228位(Kabat番号付け)でのアミノ酸置換、特にアミノ酸置換S228Pを含むIgG4 Fc領域である。さらに具体的な実施形態では、Fc領域が、アミノ酸置換L235EおよびS228PおよびP329Gを含むIgG4 Fc領域である。このアミノ酸置換は、IgG4抗体のインビボFabアーム交換を減少させる(Stubenrauchら、Drug Metabolism and Disposition 38、84~91(2010)参照)。
【0195】
母方IgGの胎児への移行を担う(Guyer,R.L.ら、J.Immunol.117(1976)587~593、およびKim,J.K.ら、Immunol.24(1994)2429~2434)、増加した半減期および改善した新生児Fc受容体(FcRn)への結合を有する抗体は、米国特許出願公開第2005/0014934号に記載されている。これらの抗体は、Fc領域とFcRnの結合を改善する1つまたは複数の置換をその中に有するFc領域を含む。このようなFc変異体には、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434の1つまたは複数での置換、例えばFc領域残基434の置換を有するものが含まれる(米国特許第7371826号)。Fc領域変異体の他の例に関するDuncan,A.R.およびWinter,G.、Nature 322(1988)738~740;米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;および国際公開第94/29351号も参照されたい。
【0196】
Fc受容体との結合は、例えば、BIAcore機器(GE Healthcare)などの標準的な計装および組換え発現によって得られ得るようなFc受容体を使用したELISA、または表面プラズモン共鳴(SPR)によって容易に決定することができる。適切なこのような結合アッセイは本明細書に記載される。あるいは、Fc領域またはFc領域を含む細胞活性化二重特異性抗原結合分子のFc受容体に対する結合親和性を、FcγIIIa受容体を発現するヒトNK細胞などの特定のFc受容体を発現することが知られている細胞株を使用して評価することができる。Fc領域またはFc領域を含む本発明の二重特異性抗体のエフェクター機能は、当技術分野で公知の方法によって測定することができる。ADCCを測定するための適切なアッセイは本明細書に記載される。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの他の例は、米国特許第5,500,362号;Hellstromら Proc Natl Acad Sci USA 83、7059~7063(1986)およびHellstromら、Proc Natl Acad Sci USA 82、1499~1502(1985);米国特許第5,821,337号;Bruggemannら、J Exp Med 166、1351~1361(1987)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法を使用してもよい(例えば、ACTI(商標)フローサイトメトリーのための非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View、CA);およびCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega、Madison、WI)参照)。このようなアッセイのための有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいはまたはさらに、目的の分子のADCC活性をインビボで、例えばClynesら、Proc Natl Acad Sci USA 95、652~656(1998)に開示されるような動物モデルで評価することができる。
【0197】
以下の節は、Fc受容体結合および/またはエフェクター機能を減少させるFc領域修飾を含む本発明の二重特異性抗原結合分子の好ましい態様を記載する。一態様では、本発明は、二重特異性抗原結合分子(a)OX40に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分、(b)EpCAMに特異的に結合することができる少なくとも1つの部分、ならびに(c)安定に会合することができる第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFc領域(Fc領域が、抗体のFc受容体、特にFcγ受容体に対する結合親和性を減少させる1つまたは複数のアミノ酸置換を含む)に関する。別の態様では、本発明は、(a)OX40に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と、(b)EpCAMに特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と、(c)安定に会合することができる第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFc領域とを含む二重特異性抗原結合分子であって、Fc領域が、エフェクター機能を減少させる1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、二重特異性抗原結合分子に関する。特定の態様では、Fc領域が、アミノ酸突然変異L234A、L235AおよびP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を有するヒトIgG1サブクラスのものである。特定の態様では、Fc領域が、アミノ酸突然変異D265AおよびP329Gを有するマウスIgG1サブクラスのものである。
【0198】
ヘテロ二量体化を促進するFc領域修飾
本発明の二重特異性抗原結合分子は、Fc領域の2つのサブユニットの一方または他方に融合した、異なる抗原結合部位を含み、よって、Fc領域の2つのサブユニットが2つの非同一ポリペプチド鎖に含まれ得る。これらのポリペプチドの組換え共発現およびその後の二量体化が、2つのポリペプチドのいくつかの可能な組み合わせをもたらす。よって、組換え産生における本発明の二重特異性抗体の収率および純度を改善するために、所望のポリペプチドの会合を促進する修飾を、本発明の二重特異性抗原結合分子のFc領域に導入することが有利であるだろう。
【0199】
したがって、特定の態様では、本発明は、(a)OX40に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と、(b)EpCAMに特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と、(c)安定に会合することができる第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFc領域とを含む二重特異性抗原結合分子であって、Fc領域が、Fc領域の第1のサブユニットおよび第2のサブユニットの会合を促進する修飾を含む、二重特異性抗原結合分子に関する。ヒトIgG Fc領域の2つのサブユニット間の最も広範なタンパク質-タンパク質相互作用の部位は、Fc領域のCH3ドメイン内にある。よって、一態様では、前記修飾がFc領域のCH3ドメイン内にある。
【0200】
特定の態様では、前記修飾が、Fc領域の2つのサブユニットの一方の「ノブ」修飾およびFc領域の2つのサブユニットの他方の「ホール」修飾を含む、いわゆる「ノブ・イントゥ・ホール」修飾である。よって、本発明は、(a)OX40に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と、(b)EpCAMに特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と、(c)安定に会合することができる第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFc領域とを含む二重特異性抗原結合分子であって、ノブ・イントゥ・ホール法により、Fc領域の第1のサブユニットがノブを含み、Fc領域の第2のサブユニットがホールを含む、二重特異性抗原結合分子に関する。特定の態様では、Fc領域の第1のサブユニットが、アミノ酸置換S354CおよびT366W(EU番号付け)を含み、Fc領域の第2のサブユニットが、アミノ酸置換Y349C、T366SおよびY407V(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。
【0201】
ノブ・イントゥ・ホール技術は、例えば米国特許第5,731,168号;米国特許第7,695,936号;Ridgwayら、Prot Eng 9、617~621(1996)およびCarter、J Immunol Meth 248、7~15(2001)に記載されている。一般的に、本方法は、第1のポリペプチドの界面の隆起(「ノブ」)および第2のポリペプチドの界面の対応する空洞(「ホール」)を導入して、隆起が、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨げるように空洞内に位置することができるようにすることを含む。隆起は、第1のポリペプチドの界面の小さなアミノ酸側鎖を大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えることによって構築される。隆起と同一または類似のサイズの代償的空洞は、大きなアミノ酸側鎖を小さなもの(例えば、アラニンまたはスレオニン)で置き換えることによって、第2のポリペプチドの界面に作り出される。
【0202】
したがって、一態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子のFc領域の第1のサブユニットのCH3ドメイン中で、アミノ酸残基がより大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それによって第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞内に位置することができる隆起が第1のサブユニットのCH3ドメイン内に生成され、Fc領域の第2のサブユニットのCH3ドメイン中で、アミノ酸残基がより小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それによって第1のサブユニットのCH3ドメイン内の隆起が位置することができる空洞が第2のサブユニットのCH3ドメイン内に生成される。隆起および空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を変化させることによって、例えば部位特異的突然変異誘発またはペプチド合成によって作り出され得る。具体的な態様では、Fc領域の第1のサブユニットのCH3ドメイン中で、366位のスレオニン残基がトリプトファン残基で置き換えられており(T366W)、Fc領域の第2のサブユニットのCH3ドメイン中で、407位のチロシン残基がバリン残基で置き換えられている(Y407V)。一態様では、Fc領域の第2のサブユニット中で、さらに、366位のスレオニン残基がセリン残基で置き換えられており(T366S)、368位のロイシン残基がアラニン残基で置き換えられている(L368A)。
【0203】
なおさらなる態様では、Fc領域の第1のサブユニット中で、さらに、354位のセリン残基がシステイン残基で置き換えられており(S354C)、Fc領域の第2のサブユニット中で、さらに、349位のチロシン残基がシステイン残基によって置き換えられている(Y349C)。これらの2個のシステイン残基の導入によって、Fc領域の2つのサブユニット間にジスルフィド架橋が形成され、二量体がさらに安定化される(Carter(2001)、J Immunol Methods 248、7~15)。特定の態様では、Fc領域の第1のサブユニットがアミノ酸置換S354CおよびT366Wを含み(EU番号付け)、Fc領域の第2のサブユニットがアミノ酸置換Y349C、T366SおよびY407Vを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0204】
さらなる態様では、Fc領域の第1のサブユニットが、392位および409位にアスパラギン酸残基(D)を含み、Fc領域の第2のサブユニットが、356位および399位にリジン残基(K)を含む。いくつかの実施形態では、Fc領域の第1のサブユニット中で、392位および409位のリジン残基がアスパラギン酸残基で置き換えられており(K392D、K409D)、Fc領域の第2のサブユニット中で、356位のグルタミン酸残基および399位のアスパラギン酸残基がリジン残基で置き換えられている(E356K、D399K)。「DDKK」ノブ・イントゥ・ホール技術は、例えば国際公開第2014/131694号に記載されており、相補的アミノ酸残基を提供する重鎖保有サブユニットの組み立てを支持する。
【0205】
代替態様では、Fc領域の第1のサブユニットおよび第2のサブユニットの会合を促進する修飾が、例えばPCT公開、国際公開第2009/089004号に記載されるように、静電ステアリング効果を媒介する修飾を含む。一般的に、この方法は、ホモ二量体形成が静電気的に好ましくなくなるが、ヘテロ二量体化が静電気的に好ましくなるように、2つのFc領域サブユニットの界面の1つまたは複数のアミノ酸残基の荷電アミノ酸残基による置き換えを伴う。
【0206】
本明細書で報告される二重特異性抗体の重鎖のC末端は、アミノ酸残基PGKを有する完全なC末端終末であり得る。重鎖のC末端は、C末端アミノ酸残基の1つまたは2つが除去されている短縮C末端であり得る。1つの好ましい態様では、重鎖のC末端が短縮C末端終末PGである。本明細書で報告される全ての態様の一態様では、本明細書で特定されるC末端CH3ドメインを含む重鎖を含む二重特異性抗体が、C末端グリシン-リジンジペプチドを含む(G446およびK447、Kabat EUインデックスによる番号付け)。本明細書で報告される全ての態様の一実施形態では、本明細書で特定されるC末端CH3ドメインを含む重鎖を含む二重特異性抗体が、C末端グリシン残基を含む(G446、Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0207】
Fabドメインの修飾
一態様では、本発明は、(a)OX40に特異的に結合することができる第1のFab断片と、(b)EpCAMに特異的に結合することができる第2のFab断片と、(c)安定に会合することができる第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFc領域とを含む二重特異性抗原結合分子であって、Fab断片の一方で、可変ドメインVHおよびVL、または定常ドメインCH1およびCLが交換されている、二重特異性抗原結合分子に関する。二重特異性抗体は、Crossmab技術に従って調製される。
【0208】
1つの結合アーム中にドメイン置換/交換を有する多重特異性抗体(CrossMab VH-VLまたはCrossMab CH-CL)は、国際公開第2009/080252号およびSchaefer,W.ら、PNAS、108(2011)11187~1191に詳細に記載されている。これらは明らかに、第1の抗原に対する軽鎖と第2の抗原に対する誤った重鎖のミスマッチによって引き起こされる副産物を減少させる(このようなドメイン交換のないアプローチと比較して)。
【0209】
一態様では、本発明は、(a)OX40に特異的に結合することができる第1のFab断片と、(b)EpCAMに特異的に結合することができる第2のFab断片と、(c)安定に会合することができる第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFc領域とを含む二重特異性抗原結合分子であって、Fab断片の一方で、CH1ドメインが軽鎖の一部となり、CLドメインが重鎖の一部となるように、定常ドメインCLおよびCH1が互いに置き換えられている、二重特異性抗原結合分子に関する。さらに特に、EpCAMに特異的に結合することができる第2のFab断片で、CH1ドメインが軽鎖の一部となり、CLドメインが重鎖の一部となるように、定常ドメインCLおよびCH1が互いに置き換えられている。
【0210】
特定の態様では、本発明は、(a)OX40に特異的に結合することができる第1のFab断片と、(b)EpCAMに特異的に結合することができる第2のFab断片とを含む二重特異性抗原結合分子であって、CH1ドメインが軽鎖の一部となり、CLドメインが重鎖の一部となるように、定常ドメインCLおよびCH1が互いに置き換えられている、二重特異性抗原結合分子に関する。このような分子は、一価二重特異性抗原結合分子と呼ばれる。
【0211】
別の態様では、本発明は、(a)OX40に特異的に結合することができる2つのFab断片およびFc領域を含む抗体の2つの軽鎖および2つの重鎖と、(b)EpCAMに特異的に結合することができる2つの追加のFab断片とを含む二重特異性抗原結合分子であって、前記追加のFab断片がそれぞれ、ペプチドリンカーを介して(a)の重鎖のC末端に接続されている、二重特異性抗原結合分子に関する。特定の態様では、追加のFab断片が、VHが軽鎖の一部となり、VLが重鎖の一部となるように、可変ドメインVLおよびVHが互いに置き換えられている、Fab断片である。
【0212】
よって、特定の態様では、本発明は、(a)OX40に特異的に結合することができる2つのFab断片およびFc領域を含む抗体の2つの軽鎖および2つの重鎖と、(b)EpCAMに特異的に結合することができる2つの追加のFab断片とを含む二重特異性抗原結合分子であって、前記EpCAMに特異的に結合することができる2つの追加のFab断片が、可変ドメインVLおよびVHが互いに置き換えられており、VL-CH鎖がそれぞれ、ペプチドリンカーを介して(a)の重鎖のC末端に接続されているクロスオーバーFab断片である、二重特異性抗原結合分子を含む。
【0213】
別の態様では、正確なペアリングをさらに改善するために、(a)OX40に特異的に結合することができる第1のFab断片と、(b)EpCAMに特異的に結合することができる第2のFab断片と、(c)安定に会合することができる第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFc領域とを含む二重特異性抗原結合分子が、異なる荷電アミノ酸置換(いわゆる「荷電残基」)を含むことができる。これらの修飾は交差または非交差CH1およびCLドメインに導入される。特定の態様では、本発明は、CLドメインの1つで、123位(EU番号付け)のアミノ酸がアルギニン(R)によって置き換えられており、124位(EU番号付け)のアミノ酸がリジン(K)によって置換されており、CH1ドメインの1つで、147位(EU番号付け)および213位(EU番号付け)のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されている、二重特異性抗原結合分子に関する。
【0214】
さらに特に、本発明は、CLドメインで、123位(EU番号付け)のアミノ酸がアルギニン(R)によって置き換えられており、124位(EU番号付け)のアミノ酸がリジン(K)によって置換されており、CH1ドメインで、147位(EU番号付け)および213位(EU番号付け)のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されている、Fabを含む二重特異性抗原結合分子に関する。
【0215】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合分子のFab断片(例えば、OX40に特異的に結合することができるFab断片)の1つまたは複数が、123位(EU番号付け)のアミノ酸にアルギニン(R)および124位(EU番号付け)のアミノ酸にリジン(K)を含むCLドメインと、147位(EU番号付け)のアミノ酸にグルタミン酸(E)および213位(EU番号付け)のアミノ酸にグルタミン酸(E)を含むCH1ドメインとを含む。
【0216】
ポリヌクレオチド
本発明はさらに、本明細書に記載される本発明の二重特異性抗原結合分子またはその断片をコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0217】
本発明の二重特異性抗原結合分子をコードする単離ポリヌクレオチドは、抗原結合分子全体をコードする単一ポリヌクレオチドとして、または共発現される複数の(例えば、2つ以上の)ポリヌクレオチドとして発現され得る。共発現されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、例えばジスルフィド結合または他の手段を通して会合して、機能的抗原結合分子を形成し得る。例えば、EpCAMに特異的に結合することができる部分の軽鎖部分は、EpCAMに特異的に結合することができる重鎖部分とは別のポリヌクレオチドによってコードされ得る。共発現されると、重鎖ポリペプチドが軽鎖ポリペプチドと会合して、EpCAMに特異的に結合することができる部分を形成する。同様に、OX40に特異的に結合することができる部分の軽鎖部分は、OX40に特異的に結合することができる重鎖部分とは別のポリヌクレオチドによってコードされ得る。共発現されると、重鎖ポリペプチドが軽鎖ポリペプチドと会合して、OX40に特異的に結合することができる部分を形成する。
【0218】
一定の実施形態では、ポリヌクレオチドまたは核酸がDNAである。他の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドがRNAである、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)の形態である。本発明のRNAは一本鎖または二本鎖であり得る。
【0219】
本発明の別の態様によると、本明細書で前に定義される二重特異性抗原結合分子または本明細書で前に定義される融合ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドが提供される。本発明はさらに、本発明の単離ポリヌクレオチドを含むベクター、特に発現ベクター、および本発明の単離ポリヌクレオチドまたはベクターを含む宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態では、宿主細胞が真核細胞、特に哺乳動物細胞である。
【0220】
別の態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子を作製する方法であって、(i)本発明の宿主細胞を、前記抗原結合分子の発現に適した条件下で培養する工程と、(ii)前記二重特異性抗原結合分子を単離する工程とを含む方法が提供される。本発明はまた、本発明の方法によって作製された二重特異性抗原結合分子を包含する。
【0221】
組換え方法
本発明の二重特異性抗原結合分子は、例えば固相ペプチド合成(例えば、Merrifield固相合成)または組換え産生によって得ることができる。組換え産生のために、例えば上記の抗原結合分子またはそのポリペプチド断片をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを単離し、さらなるクローニングおよび/または宿主細胞中での発現のために1つまたは複数のベクターに挿入する。このようなポリヌクレオチドを容易に単離し、慣用的な手順を使用して配列決定することができる。本発明の一態様では、本発明のポリヌクレオチドの1つまたは複数を含むベクター、好ましくは発現ベクターが提供される。当業者に周知の方法を使用して、適切な転写/翻訳制御シグナルと共に二重特異性抗原結合分子(断片)のコード配列を含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、インビトロ組換えDNA技術、合成技術およびインビボ組換え/遺伝子組換えが含まれる。例えば、Maniatisら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、Cold Spring Harbor Laboratory、N.Y.(1989);およびAusubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、Greene Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y.(1989)に記載される技術を参照されたい。発現ベクターはプラスミド、ウイルスの一部であり得る、または核酸断片であり得る。発現ベクターは、プロモーターおよび/または他の転写もしくは翻訳制御エレメントと動作可能に会合した、二重特異性抗原結合分子またはそのポリペプチド断片(すなわち、コード領域)をコードするポリヌクレオチドをクローニングする発現カセットを含む。本明細書で使用される場合、「コード領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部である。「終止コドン」(TAG、TGAまたはTAA)はアミノ酸に翻訳されないが、コード領域の一部とみなすことができるが、存在する場合、任意の隣接配列、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロン、5’および3’非翻訳領域などはコード領域の一部ではない。2つ以上のコード領域が単一ポリヌクレオチドコンストラクト、例えば単一ベクター、または別個のポリヌクレオチドコンストラクト、例えば別個の(異なる)ベクターに存在してもよい。さらに、任意のベクターは単一コード領域を含み得る、または2つ以上のコード領域を含み得る、例えば本発明のベクターは1つまたは複数のポリペプチドをコードすることができ、これがタンパク質分解切断を介して最終タンパク質に翻訳後にまたは翻訳と同時に分離される。さらに、本発明のベクター、ポリヌクレオチドまたは核酸は、本発明の二重特異性抗原結合分子もしくはそのポリペプチド断片、またはその変異体もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドに融合したまたは融合していない、異種コード領域をコードし得る。異種コード領域は、限定されないが、分泌シグナルペプチドまたは異種機能ドメインなどの特殊エレメントまたはモチーフを含む。動作可能な会合は、遺伝子産物、例えばポリペプチドのコード領域が、遺伝子産物の発現を調節配列(複数可)の影響または制御下に置くように1つまたは複数の調節配列と会合している場合である。プロモーター機能の誘導が所望の遺伝子産物をコードするmRNAの転写をもたらす場合、および2つのDNA断片間の結合の性質が、発現調節配列が遺伝子産物の発現を指示する能力を妨害もせず、DNA鋳型が転写される能力も妨害しない場合に、2つのDNA断片(ポリペプチドコード領域およびこれと会合したプロモーターなど)が「動作可能に会合されている」。よって、プロモーターが、ポリペプチドをコードする核酸の転写を行うことができる場合に、プロモーター領域はその核酸と動作可能に会合されているだろう。プロモーターは、所定の細胞内でのみDNAの実質的な転写を指示する細胞特異的プロモーターであり得る。プロモーターに加えて、他の転写制御エレメント、例えばエンハンサー、オペレーター、リプレッサーおよび転写終結シグナルをポリヌクレオチドと動作可能に会合させて、細胞特異的転写を指示することができる。
【0222】
適切なプロモーターおよび他の転写制御領域が本明細書で開示される。種々の転写制御領域が当業者に知られている。これらには、それだけに限らないが、サイトメガロウイルス(例えば、イントロンAと連結した最初期プロモーター)、シミアンウイルス40(例えば、初期プロモーター)およびレトロウイルス(例えば、ラウス肉腫ウイルスなど)由来のプロモーターおよびエンハンサーセグメントなどの脊椎動物細胞で機能する転写制御領域が含まれるが、これらに限定されない。他の転写制御領域には、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモンおよびウサギαグロブリンなどの脊椎動物遺伝子由来のもの、ならびに真核細胞中で遺伝子発現を制御することができる他の配列が含まれる。追加の適切な転写制御領域には、組織特異的プロモーターおよびエンハンサーならびに誘導性プロモーター(例えば、テトラサイクリン誘導性プロモーター)が含まれる。同様に、種々の翻訳制御エレメントが当業者に知られている。これらには、それだけに限らないが、リボソーム結合部位、翻訳開始および終止コドン、ならびにウイルス系に由来するエレメント(特に、配列内リボソーム進入部位またはIRES、CITE配列とも呼ばれる)が含まれる。発現カセットはまた、複製起点、および/または染色体組込エレメント、例えばレトロウイルス末端反復配列(LTR)もしくはアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位配列(ITR)などの他の特徴を含み得る。
【0223】
本発明のポリヌクレオチドおよび核酸コード領域を、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を指示する、分泌またはシグナルペプチドをコードする追加のコード領域と会合させることができる。例えば、二重特異性抗原結合分子またはそのポリペプチド断片の分泌が望まれる場合、シグナル配列をコードするDNAを、本発明の二重特異性抗原結合分子またはそのポリペプチド断片をコードする核酸の上流に配置することができる。シグナル仮説によると、哺乳動物細胞によって分泌されるタンパク質は、いったん粗面小胞体を横切る成長タンパク質鎖の輸送が開始されると成熟タンパク質から切断されるシグナルペプチドまたは分泌リーダー配列を有する。当業者であれば、脊椎動物細胞によって分泌されるポリペプチドが、一般的にポリペプチドのN末端に融合したシグナルペプチドを有し、これが翻訳ポリペプチドから切断されてポリペプチドの分泌または「成熟」型が産生されることを認識している。一定の実施形態では、天然シグナルペプチド、例えば免疫グロブリン重鎖もしくは軽鎖シグナルペプチド、またはポリペプチドと動作可能に会合されたポリペプチドの分泌を指示する能力を保持するその配列の機能的誘導体が使用される。あるいは、異種哺乳動物シグナルペプチドまたはその機能的誘導体を使用することができる。例えば、野生型リーダー配列をヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)またはマウスβ-グルクロニダーゼのリーダー配列で置換してもよい。
【0224】
後の精製を促進する(例えば、ヒスチジンタグ)または融合タンパク質の標識を助けるために使用され得る短いタンパク質配列をコードするDNAを、本発明の二重特異性抗原結合分子またはそのポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド内にまたはその末端に含めてもよい。
【0225】
本発明のさらなる態様では、本発明の1つまたは複数のポリヌクレオチドを含む宿主細胞が提供される。一定の実施形態では、本発明の1つまたは複数のベクターを含む宿主細胞が提供される。ポリヌクレオチドおよびベクターは、それぞれポリヌクレオチドおよびベクターに関して本明細書に記載される特徴のいずれかを単独でまたは組み合わせて組み込み得る。一態様では、宿主細胞が、本発明の二重特異性抗原結合分子(の一部)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む(例えば、ベクターで形質転換されているまたはトランスフェクトされている)。本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本発明の融合タンパク質またはその断片を産生するよう操作することができる任意の種類の細胞系を指す。抗原結合分子を複製するおよびその発現を支持するのに適した宿主細胞は当技術分野で周知である。このような細胞を特定の発現ベクターで必要に応じてトランスフェクトまたは形質導入することができ、多量のベクター含有細胞を播種大規模発酵槽で増殖させて、臨床用途にとって十分な量の抗原結合分子を得ることができる。適切な宿主細胞には、原核微生物、例えば大腸菌(E.coli)または種々の真核細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、ヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞、昆虫細胞などが含まれる。例えば、特にグリコシル化が必要とされない場合、ポリペプチドを細菌中で産生させることができる。発現後、ポリペプチドを細菌細胞ペーストから可溶性画分で単離し、さらに精製することができる。原核生物に加えて、そのグリコシル化経路を「ヒト化」して、部分的または完全ヒトグリコシル化パターンを有するポリペプチドの産生をもたらす、真菌および酵母株を含む、糸状菌または酵母などの真核微生物がポリペプチドコードベクターに適したクローニングまたは発現宿主である。Gerngross、Nat Biotech 22、1409~1414(2004)およびLiら、Nat Biotech 24、210~215(2006)を参照されたい。
【0226】
(グリコシル化)ポリペプチドの発現に適した宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物および昆虫細胞が挙げられる。特にヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と合わせて使用され得る多数のバキュロウイルス株が同定されている。植物細胞培養物を宿主として利用することもできる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号および同第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載している)を参照されたい。脊椎動物細胞を宿主として使用してもよい。例えば、懸濁で培養するよう適合された哺乳動物細胞株が有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胚腎臓株(例えば、Grahamら、J Gen Virol 36、59(1977)に記載される293または293T細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather、Biol Reprod 23、243~251(1980)に記載されるTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍細胞(MMT 060562)、TRI細胞(例えば、Matherら、Annals N.Y.Acad Sci 383、44~68(1982)に記載されている)、MRC5細胞およびFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、dhfr-CHO細胞(Urlaubら、Proc Natl Acad Sci USA 77、4216(1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;ならびにYO、NS0、P3X63およびSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。タンパク質産生に適した一定の哺乳動物宿主細胞株の概要については、例えば、YazakiおよびWu、Methods in Molecular Biology、第248巻(B.K.C.Lo編、Humana Press、Totowa、NJ)、255~268頁(2003)を参照されたい。宿主細胞には、培養細胞、例えば、ほんの少し例を挙げれば、哺乳動物培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、細菌細胞および植物細胞が含まれるが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物または培養植物もしくは動物組織に含まれる細胞も含まれる。一実施形態では、宿主細胞が真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胚腎臓(HEK)細胞またはリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。これらの系で外来遺伝子を発現させるための標準的な技術が当技術分野で知られている。抗原結合ドメインの重鎖または軽鎖を含むポリペプチドを発現する細胞を操作して、発現産物が重鎖と軽鎖の両方を有する抗原結合ドメインとなるように免疫グロブリン鎖の他方も発現するようにすることができる。
【0227】
別の態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子を作製する方法であって、(i)本発明の宿主細胞を、前記抗原結合分子の発現に適した条件下で培養する工程と、(ii)宿主細胞または宿主細胞培養培地から前記二重特異性抗原結合分子を単離する工程とを含む方法が提供される。
【0228】
二重特異性抗原結合分子の成分を互いに遺伝子融合する。二重特異性抗原結合分子を、その成分が互いに直接的にまたはリンカー配列を通して間接的に融合するように設計することができる。リンカーの組成および長さは当技術分野で周知の方法に従って決定することができ、有効性について試験することができる。二重特異性抗原結合分子の異なる成分間のリンカー配列の例は、本明細書に提供される配列に見出される。所望であれば、例えばエンドペプチダーゼ認識配列などの追加の配列を含めて切断部位を組み込んで融合体の個々の成分を分離することもできる。
【0229】
一定の実施形態では、抗原結合分子の一部を形成するEpCAMに特異的に結合することができる部分(例えば、Fab断片またはscFv)が、少なくともEpCAMに結合することができる免疫グロブリン可変領域を含む。同様に、一定の実施形態では、抗原結合分子の一部を形成するOX40に特異的に結合することができる部分(例えば、Fab断片またはscFv)が、少なくともOX40に結合することができる免疫グロブリン可変領域を含む。可変領域は、天然に存在するまたは天然に存在しない抗体およびその断片の一部を形成することができ、これに由来することができる。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を作製する方法は当技術分野で周知である(例えば、HarlowおよびLane、「Antibodies、a laboratory manual」、Cold Spring Harbor Laboratory、1988参照)。天然に存在しない抗体は、固相ペプチド合成を使用して構築することができ、組換え的に産生することができ(例えば、米国特許第4,186,567号に記載される)、または例えば可変重鎖および可変軽鎖を含むコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって得ることができる(例えば、McCaffertyの米国特許第5,969,108号参照)。
【0230】
任意の動物種の免疫グロブリンを本発明に使用することができる。本発明で有用な非限定的な免疫グロブリンは、マウス、霊長類またはヒト由来のものであり得る。融合タンパク質をヒト使用のために意図する場合、免疫グロブリンの定常領域がヒトのものであるキメラ型の免疫グロブリンを使用することができる。ヒト化または完全ヒト型の免疫グロブリンを、当技術分野で周知の方法に従って調製することもできる(例えば、Winterの米国特許第5,565,332号参照)。ヒト化は、それだけに限らないが、(a)非ヒト(例えば、ドナー抗体)CDRを、重要なフレームワーク残基(例えば、優れた抗原結合親和性または抗体機能を保持するのに重要なもの)を保持するまたは保持しないで、ヒト(例えば、レシピエント抗体)フレームワークおよび定常領域に移植すること、(b)非ヒト特異性決定領域(SDRまたはa-CDR;抗体-抗原相互作用に重要な残基)のみを、ヒトフレームワークおよび定常領域に移植すること、または(c)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置き換えによってこれらをヒト様分泌で「クローキングする(cloaking)」ことを含む、種々の方法によって達成することができる。ヒト化抗体およびこれらを作製する方法は、例えばAlmagroおよびFransson、Front Biosci 13、1619~1633(2008)に概説されており、例えばRiechmannら、Nature 332、323~329(1988);Queenら、Proc Natl Acad Sci USA 86、10029~10033(1989);米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号および同第7,087,409号;Jonesら、Nature 321、522~525(1986);Morrisonら、Proc Natl Acad Sci 81、6851~6855(1984);MorrisonおよびOi、Adv Immunol 44、65~92(1988);Verhoeyenら、Science 239、1534~1536(1988);Padlan、Molec Immun 31(3)、169~217(1994);Kashmiriら、Methods 36、25~34(2005)(SDR(a-CDR)移植を記載している);Padlan、Mol Immunol 28、489~498(1991)(「リサーフェイシング」を記載している);Dall’Acquaら、Methods 36、43~60(2005)(「FRシャフリング」を記載している);ならびにOsbournら、Methods 36、61~68(2005)およびKlimkaら、Br J Cancer 83、252~260(2000)(FRシャフリングへの「誘導選択」アプローチを記載している)にさらに記載されている。本発明による特定の免疫グロブリンは、ヒト免疫グロブリンである。ヒト抗体およびヒト可変領域は、当技術分野で公知の種々の技術を使用して作製することができる。ヒト抗体は、van Dijkおよびvan de Winkel、Curr Opin Pharmacol 5、368~74(2001)ならびにLonberg、Curr Opin Immunol 20、450~459(2008)に一般的に記載されている。ヒト可変領域は、ハイブリドーマ法によって作製されたヒトモノクローナル抗体の一部を形成することができ、これに由来することができる(例えば、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、51~63頁(Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、1987)参照)。ヒト抗体およびヒト可変領域はまた、免疫原を、抗原曝露に応じてインタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように修飾したトランスジェニック動物に投与することによって調製することができる(例えば、Lonberg、Nat Biotech 23、1117~1125(2005)参照)。ヒト抗体およびヒト可変領域はまた、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変領域配列を単離することによっても作製することができる(例えば、Hoogenboomら Methods in Molecular Biology 178、1~37(O’Brienら編、Human Press、Totowa、NJ、2001);およびMcCaffertyら、Nature 348、552~554;Clacksonら、Nature 352、624~628(1991)参照)。ファージは、典型的には単鎖Fv(scFv)断片またはFab断片として抗体断片を示す。
【0231】
一定の態様では、本発明の抗原結合分子に含まれる関連標的(例えば、Fab断片またはscFv)に特異的に結合することができる部分を、例えばPCT公開、国際公開第2012/020006号(親和性成熟に関連する実施例参照)または米国特許出願公開第2004/0132066号に開示される方法に従って、増強した結合親和性を有するように操作する。本発明の抗原結合分子が特異的抗原決定基に結合する能力は、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)または当業者によく知られている他の技術、例えば表面プラズモン共鳴技術(Liljebladら、Glyco J 17、323~329(2000))および伝統的な結合アッセイ(Heeley、Endocr Res 28、217~229(2002))を通して測定することができる。競合アッセイを使用して、特定の抗原への結合について参照抗体と競合する抗原結合分子を同定することができる。一定の実施形態では、このような競合抗原結合分子が、参照抗原結合分子が結合するのと同じエピトープ(例えば、直鎖状またはコンフォメーションエピトープ)に結合する。抗原結合分子が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示的方法は、Morris(1996)「Epitope Mapping Protocols」、Methods in Molecular Biology 第66巻(Humana Press、Totowa、NJ)に提供される。例示的競合アッセイでは、固定化抗原を、抗原に結合する第1の標識抗原結合分子と、抗原への結合について第1の抗原結合分子と競合する能力を試験している第2の非標識抗原結合分子とを含む溶液中でインキュベートする。第2の抗原結合分子はハイブリドーマ上清中に存在し得る。対照として、固定化抗原を、第1の標識抗原結合分子を含むが、第2の非標識抗原結合分子を含まない溶液中でインキュベートする。第1の抗体と抗原の結合について許容的な条件下でのインキュベーション後、過剰な非結合抗体を除去し、固定化抗原と会合した標識の量を測定する。固定化抗原と会合した標識の量が対照試料に対して試験試料中で実質的に減少した場合、それは、第2の抗原結合分子が、抗原への結合について第1の抗原結合分子と競合していることを示す。HarlowおよびLane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual 第14章(Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY)を参照されたい。
【0232】
本明細書に記載されるように調製される本発明の二重特異性抗原結合分子は、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなどの当技術分野で公知の技術によって精製することができる。特定のタンパク質を精製するために使用される実際の条件は、部分的には、正味荷電、疎水性、親水性等などの因子に依存し、当業者に明らかであるだろう。アフィニティークロマトグラフィー精製のために、二重特異性抗原結合分子が結合する抗体、リガンド、受容体または抗原を使用することができる。例えば、本発明の融合タンパク質のアフィニティークロマトグラフィー精製のために、プロテインAまたはプロテインGを含むマトリックスを使用することができる。連続的なプロテインAまたはGアフィニティークロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーを使用して、実施例に本質的に記載されるように抗原結合分子を単離することができる。二重特異性抗原結合分子またはその断片の純度を、ゲル電気泳動、高圧液体クロマトグラフィーなどを含む種々の周知の分析法のいずれかによって決定することができる。例えば、実施例に記載されるように発現される二重特異性抗原結合分子は、還元または非還元SDS-PAGEによって実証されるように、インタクトであり、適切に組み立てられていることが示された。
【0233】
本発明はまた、本発明の方法によって作製された二重特異性抗原結合分子を包含する。
【0234】
アッセイ
本明細書で提供される二重特異性抗原結合分子を、当技術分野で公知の種々のアッセイによって、その物理的/化学的特性および/または生物活性について、同定、スクリーニングまたは特徴を明らかにすることができる。
【0235】
1.親和性アッセイ
本明細書で提供される二重特異性抗原結合分子のOX40またはEpCAMに対する親和性を、BIAcore機器(GE Healthcare)などの標準的な計装、および組換え発現によって得ることができるような受容体または標的タンパク質を使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)によって実施例に示される方法に従って決定することができる。一態様によると、Kを、25℃でBIACORE(登録商標)T200機器(GE Healthcare)を使用して表面プラズモン共鳴によって測定する。
【0236】
2.結合アッセイおよび他のアッセイ
本明細書で提供される二重特異性抗原結合分子と対応するOX40および/またはEpCAM発現細胞の結合は、例えばフローサイトメトリー(FACS)によって、特定の受容体または標的抗原を発現する細胞株を使用して評価することができる。一態様では、OX40を発現する新鮮な末梢血単核細胞(PBMC)を結合アッセイに使用する。これらの細胞を、単離直後(ナイーブPMBC)または刺激後(活性化PMBC)に使用する。別の態様では、活性化マウス脾細胞(OX40を発現する)を使用して、本発明の二重特異性抗原結合分子と対応するOX40発現細胞の結合を実証することができる。
【0237】
さらなる態様では、EpCAMを発現するがん細胞株を使用して、抗原結合分子とEpCAMの結合を実証した。
【0238】
別の態様では、競合アッセイを使用して、それぞれEpCAMまたはOX40への結合について、特定の抗体または抗原結合分子と競合する抗原結合分子を同定することができる。一定の実施形態では、このような競合抗原結合分子が、特定の抗EpCAM抗体または特定の抗OX40抗体が結合するのと同じエピトープ(例えば、直鎖状またはコンフォメーションエピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示的方法は、Morris(1996)「Epitope Mapping Protocols」、Methods in Molecular Biology 第66巻(Humana Press、Totowa、NJ)に提供される。
【0239】
3.活性アッセイ
一態様では、生物活性を有するEpCAMおよびOX40に結合する二重特異性抗原結合分子を同定するためのアッセイが提供される。生物活性には、例えばOX40を発現する細胞でのOX40を通したアゴニストシグナル伝達が含まれ得る。インビトロでこのような生物活性を有するとしてアッセイによって同定される二重特異性抗原結合分子も提供される。特に、ヒトOX40を発現し、ヒトEpCAM発現腫瘍細胞と共培養されるHela細胞でNF-κB活性化を検出するレポーター細胞アッセイが提供される(例えば、実施例6.1参照)。
【0240】
一定の態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子をこのような生物活性について試験する。本発明の分子の生物活性を検出するためのアッセイは実施例4または実施例6に記載されるものである。さらに、細胞溶解(例えば、LDH放出の測定による)、誘導アポトーシス動態(例えば、Caspase 3/7活性の測定による)またはアポトーシス(例えば、TUNELアッセイを使用)を検出するためのアッセイは当技術分野で周知である。さらに、このような複合体の生物活性は、NK細胞、NKT細胞もしくはγδT細胞などの種々のリンパ球サブセットの生存、増殖およびリンホカイン分泌に対する効果を評価する、または樹状細胞、単球/マクロファージもしくはB細胞などの抗原提示細胞の表現型および機能を調節する能力を評価することによって評価することができる。
【0241】
薬学的組成物、製剤および投与経路
さらなる態様では、本発明は、例えば以下の治療方法のいずれかに使用するための、本明細書で提供される二重特異性抗原結合分子のいずれかを含む薬学的組成物を提供する。一実施形態では、薬学的組成物が、二重特異性抗原結合分子と、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含む。別の実施形態では、薬学的組成物が、本明細書で提供される二重特異性抗原結合分子のいずれかと、例えば以下に記載される、少なくとも1種の追加の治療剤とを含む。
【0242】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される賦形剤に溶解または分散された治療的有効量の1種または複数の二重特異性抗原結合分子を含む。「薬学的にまたは薬理的に許容される」という句は、使用される投与量および濃度でレシピエントにとって一般的に非毒性である、すなわち、例えば必要に応じてヒトなどの動物に投与した場合に、有害な、アレルギー性のまたは他の都合の悪い反応をもたらさない分子実体および組成物を指す。少なくとも1種の二重特異性抗原結合分子と、場合により追加の有効成分とを含有する薬学的組成物の調製物は、参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版 Mack Printiing Company、1990によって例示されるように、本開示に照らして当業者に知られているだろう。特に、組成物は凍結乾燥製剤または水溶液である。本明細書で使用されるように、「薬学的に許容される賦形剤」は、当業者に知られるように、任意のおよび全ての溶媒、バッファー、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張化剤、塩、安定剤およびこれらの組み合わせを含む。
【0243】
非経口組成物は、注射、例えば皮下、皮内、病巣内、静脈内、動脈内筋肉内、髄腔内または腹腔内注射によって投与するために設計されたものを含む。注射用に、本発明の二重特異性抗原結合分子を、水溶液、好ましくは生理学的に適合するバッファー、例えばハンクス液、リンゲル液または生理的食塩水バッファーに製剤化することができる。溶液は、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの配合剤(formulatory agent)を含有してもよい。あるいは、融合タンパク質は、使用前に、適切なビヒクル、例えば滅菌パイロジェンフリー水で構成するための粉末形態であり得る。滅菌注射液は、必要量の本発明の融合タンパク質または二重特異性抗原結合分子を、必要に応じて、種々の以下に列挙される他の成分を含む適切な溶媒に組み込むことによって調製される。無菌状態は、例えば滅菌濾過膜を通した濾過によって、容易に達成することができる。一般的に、分散液は、種々の滅菌有効成分を、塩基性分散媒および/または他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射液、懸濁液またはエマルジョンを調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、前に滅菌濾過したその液体媒体からの、有効成分と任意の追加の所望の成分の粉末をもたらす真空乾燥または凍結乾燥技術である。液体媒体は、必要に応じて適切に緩衝化すべきであり、液体希釈剤はまず、十分な食塩水またはグルコースで注射前に等張性を付与されるべきである。組成物は、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護すべきである。エンドトキシン汚染を安全なレベルに最小限に、例えば0.5ng/mgタンパク質未満に維持すべきであることが認識されるだろう。適切な薬学的に許容される賦形剤には、それだけに限らないが、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む単糖類、二糖類および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、デキストランなどの懸濁液の粘度を増加させる化合物を含有してもよい。場合により、懸濁液はまた、適切な安定剤または化合物の溶解度を増加させて高度濃縮溶液の調製を可能にする薬剤を含有してもよい。さらに、活性化合物の懸濁液を、適切な油性注射懸濁液として調製してもよい。適切な親油性溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、またはエチルクリート(ethyl cleat)もしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが含まれる。
【0244】
有効成分を、例えば、コアセルベーション技術もしくは界面重合によって調製したマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)、またはマクロエマルジョンに封入してもよい。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第18版 Mack Printing Company、1990)に開示されている。徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の適切な例としては、ポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは成形物品、例えば膜またはマイクロカプセルの形態である。特定の実施形態では、例えばモノステアリン酸アルミニウム、ゼラチンまたはこれらの組み合わせなどの吸収を遅延させる薬剤を組成物に使用することによって、注射用組成物の延長された吸収をもたらすことができる。
【0245】
本明細書における例示的な薬学的に許容される賦形剤にはさらに、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えばヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えばrHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などの間質性薬物分散剤が含まれる。rHuPH20を含む一定の例示的sHASEGPおよび使用方法は、米国特許出願公開第2005/0260186号および同第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPがコンドロイチナーゼなどの1種または複数の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0246】
例示的凍結乾燥抗体製剤は米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤には、米国特許第6,171,586号および国際公開第2006/044908号に記載されるものが含まれ、後者の製剤はヒスチジン-酢酸塩バッファーを含む。
【0247】
上記組成物に加えて、二重特異性抗原結合分子をデポー調製物として製剤化してもよい。このような長時間作用性製剤は、移植(例えば、皮下もしくは筋肉内)または筋肉内注射によって投与され得る。よって、例えば、二重特異性抗原結合分子を、適切なポリマーもしくは疎水性物質(例えば、薬学的に許容される油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂を用いて、あるいは難溶性誘導体、例えば難溶性塩として製剤化してもよい。
【0248】
本発明の二重特異性抗原結合分子を含む薬学的組成物は、慣用的な混合、溶解、乳化、カプセル化、捕捉または凍結乾燥方法によって製造され得る。薬学的組成物は、タンパク質の、薬学的に使用することができる調製物への加工を容易にする1種または複数の生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤または補助剤を使用して慣用的な様式で製剤化され得る。適切な製剤は選択される投与経路に依存する。
【0249】
二重特異性抗原結合分子を遊離酸または塩基、中性または塩型の組成物に製剤化してもよい。薬学的に許容される塩は、遊離酸または塩基の生物活性を実質的に保持する塩である。これらには、酸付加塩、例えばタンパク質性組成物の遊離アミノ基で形成されるもの、あるいは例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸もしくはマンデル酸のような有機酸で形成されるものが含まれる。遊離カルボキシル基で形成される塩はまた、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムもしくは水酸化第二鉄などの無機塩基;またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンもしくはプロカインのような有機塩基から誘導することもできる。薬学的塩は、対応する遊離塩基型よりも水性および他のプロトン性溶媒に可溶性である傾向がある。
【0250】
薬学的組成物はまた、治療している特定の適応症に必要な2種以上の有効成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含有してもよい。このような有効成分は、適切には意図した目的に有効な量で組み合わせて存在する。一態様では、薬学的組成物が、二重特異性抗原結合分子と、別の活性抗がん剤とを含む。
【0251】
インビボ投与に使用するための製剤は一般的に滅菌である。無菌状態は、例えば滅菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成され得る。
【0252】
治療方法および組成物
本明細書で提供される二重特異性抗原結合分子のいずれも治療方法に使用され得る。治療方法に使用するために、本発明の抗原結合分子を、優れた医療行為に一致した様式で製剤化、服用および投与することができる。本文脈において検討する因子には、治療している特定の障害、治療している特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュールおよび医師に知られている他の因子が含まれる。
【0253】
一態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子が医薬として使用するために提供される。さらなる態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子が、疾患の治療に使用するため、特にがんの治療に使用するために提供される。一定の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合分子が、治療方法に使用するために提供される。一実施形態では、本発明は、それを必要とする個体の疾患の治療に使用するための、本明細書に記載される二重特異性抗原結合分子を提供する。一定の実施形態では、本発明は、治療的有効量の二重特異性抗原結合分子を個体に投与することを含む、疾患を有する個体を治療する方法に使用するための二重特異性抗原結合分子を提供する。一定の実施形態では、治療される疾患が、がんである。一定の実施形態では、治療される疾患が、増殖性障害、特にがんである。がんの例としては、膀胱がん、脳がん、頭頚部がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、食道がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、胃がん、前立腺がん、血液がん、皮膚がん、扁平上皮癌、骨がんおよび腎臓がんが挙げられる。本発明の二重特異性抗原結合分子を使用して治療することができる他の細胞増殖性障害には、それだけに限らないが、腹部、骨、乳房、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌線(副腎、副甲状腺、下垂体、精巣、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頚部、神経系(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟部組織、脾臓、胸部領域および泌尿生殖器系に位置する新生物が含まれる。前がん性状態または病変およびがん転移も含まれる。一定の実施形態では、がんが、腎細胞がん、皮膚がん、肺がん、結腸直腸がん、乳がん、脳がん、頭頚部がんからなる群から選択される。治療を必要とする対象、患者または「個体」は、典型的には哺乳動物、より具体的にはヒトである。
【0254】
細胞傷害性T細胞活性を上方制御または延長するのに使用するための、本発明の二重特異性抗原結合分子または本発明の薬学的組成物も本発明に包含される。
【0255】
さらなる態様では、本発明は、それを必要とする個体の疾患を治療するための医薬の製造または調製における本発明の二重特異性抗原結合分子の使用を提供する。一態様では、医薬が、治療的有効量の医薬を、疾患を有する個体に投与することを含む、疾患を治療する方法に使用するためのものである。一定の実施形態では、治療される疾患が増殖性障害、特にがんである。がんの例としては、膀胱がん、脳がん、頭頚部がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、食道がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、胃がん、前立腺がん、血液がん、皮膚がん、扁平上皮癌、骨がんおよび腎臓がんが挙げられる。本発明の二重特異性抗原結合分子を使用して治療することができる他の細胞増殖性障害には、それだけに限らないが、腹部、骨、乳房、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌線(副腎、副甲状腺、下垂体、精巣、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頚部、神経系(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟部組織、脾臓、胸部領域および泌尿生殖器系に位置する新生物が含まれる。前がん性状態または病変およびがん転移も含まれる。一定の実施形態では、がんが、腎細胞がん、皮膚がん、肺がん、結腸直腸がん、乳がん、脳がん、頭頚部がんからなる群から選択される。当業者であれば、多くの場合、二重特異性抗原結合分子が治癒を提供することができず、部分的利益を提供することができるのみであることを容易に認識する。いくつかの実施形態では、ある利益を有する生理的変化も治療的に有益であるとみなされる。よって、いくつかの実施形態では、生理的変化をもたらす二重特異性抗原結合分子の量が「有効量」または「治療的有効量」とみなされる。上記実施形態のいずれにおいても、個体が好ましくは哺乳動物、特にヒトである。
【0256】
さらなる態様では、本発明は、個体の疾患を治療する方法であって、治療的有効量の本発明の二重特異性抗原結合分子を前記個体に投与することを含む方法を提供する。一実施形態では、薬学的に許容される形態の本発明の融合タンパク質を含む組成物を前記個体に投与する。一定の実施形態では、治療される疾患が増殖性障害である。特定の実施形態では、疾患が、がんである。一定の実施形態では、本方法が、治療的有効量の少なくとも1種の追加の治療剤、例えば治療される疾患ががんである場合、抗がん剤を個体に投与することをさらに含む。上記実施形態のいずれかによる「個体」は哺乳動物、好ましくはヒトであり得る。
【0257】
疾患を予防または治療するため、(単独でまたは1種もしくは複数の他の追加の治療剤と組み合わせて使用する場合)本発明の二重特異性抗原結合分子の適切な投与量は、治療される疾患の種類、投与経路、患者の体重、融合タンパク質の種類、疾患の重症度および経過、融合タンパク質を予防目的で投与するか治療目的で投与するか、以前のまたは同時の治療介入、患者の臨床歴および融合タンパク質に対する反応、ならびに担当医の裁量に依存する。投与を担う実務家は、いずれにしても、個々の対象のための組成物中の有効成分(複数可)の濃度および適切な用量(複数可)を決定する。それだけに限らないが、単回投与または種々の時点にわたる複数回投与、ボーラス投与およびパルス注入を含む種々の投与スケジュールが本明細書で企図される。
【0258】
二重特異性抗原結合分子は、適切には一度にまたは一連の治療にわたって患者に投与される。疾患の種類および重症度に応じて、例えば1回もしくは複数回の別個の投与、または連続注入のいずれにしても、約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)の抗原結合分子が、患者に投与するための初期候補投与量となり得る。1つの典型的な1日投与量は、上述の因子に応じて、約1μg/kg~100mg/kgまたはそれ以上に及び得る。数日以上にわたる反復投与については、状態に応じて、治療が一般的に、疾患症状の所望の抑制が生じるまで維持されるだろう。融合タンパク質の1つの例示的投与量は、約0.005mg/kg~約10mg/kgの範囲であるだろう。他の例では、用量が、1投与当たり約1μg/kg体重、約5μg/kg体重、約10μg/kg体重、約50μg/kg体重、約100μg/kg体重、約200μg/kg体重、約350μg/kg体重、約500μg/kg体重、約1mg/kg体重、約5mg/kg体重、約10mg/kg体重、約50mg/kg体重、約100mg/kg体重、約200mg/kg体重、約350mg/kg体重、約500mg/kg体重~約1000mg/kg体重またはそれ以上、およびその中の任意の導出可能な範囲も含み得る。本明細書に列挙される数値から導出可能な範囲の例では、上記の数値に基づいて、約5mg/kg体重~約100mg/kg体重、約5μg/kg体重~約500mg/kg体重等の範囲を投与することができる。よって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/kgまたは10mg/kg(またはこれらの任意の組み合わせ)の1つまたは複数の用量が患者に投与され得る。このような用量は、間欠的に、例えば1週間毎または3週間毎に投与され得る(例えば、患者が約2回~約20回、または例えば約6回の二重特異性抗原結合分子の投与を受けるように)。初期のより高い負荷用量、引き続いて1回または複数回の低用量が投与され得る。しかしながら、他の投与レジメンも有用となり得る。この治療の進行は、慣用的な技術およびアッセイによって容易に監視される。
【0259】
本発明の二重特異性抗原結合分子は、一般的に意図した目的を達成するのに有効な量で使用される。疾患状態を治療または予防するために使用するために、本発明の二重特異性抗原結合分子またはその薬学的組成物は、治療的有効量で投与または施用される。治療的有効量の決定は、特に本明細書で提供される詳細な開示に照らして、十分当業者の能力の範囲内にある。
【0260】
全身投与については、治療的有効用量を、最初に細胞培養アッセイなどのインビトロアッセイから推定することができる。次いで、用量を動物モデルに処方して、細胞培養物中で決定されるIC50を含む循環濃度範囲を達成することができる。このような情報を使用して、ヒトで有用な用量をより正確に決定することができる。
【0261】
初期投与量は、当技術分野で周知の技術を使用して、インビボデータ、例えば動物モデルから推定することもできる。当業者であれば、動物データに基づいて、ヒトへの投与を容易に最適化することができるだろう。
【0262】
投与量および間隔を個々に調節して、治療効果を維持するのに十分な二重特異性抗原結合分子の血漿レベルをもたらすことができる。注射による投与のための通常の患者の投与量は、約0.1~50mg/kg/日、典型的には約0.5~1mg/kg/日に及ぶ。治療的有効血漿レベルは、各日に複数回用量を投与することによって達成され得る。血漿中のレベルは、例えばHPLCによって測定され得る。
【0263】
局所投与または選択的取り込みの場合、二重特異性抗原結合分子の有効局所濃度は、血漿濃度に関連し得ない。当業者であれば、不当な実験をすることなく治療的有効局所投与量を最適化することができるだろう。
【0264】
本明細書に記載される二重特異性抗原結合分子の治療的有効用量は一般的に、実質的な毒性を引き起こすことなく治療利益を提供する。融合タンパク質の毒性および治療有効性は、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。細胞培養アッセイおよび動物試験を使用して、LD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%で治療的に有効な用量)を決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は治療指数であり、これは比LD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を示す二重特異性抗原結合分子が好ましい。一実施形態では、本発明による二重特異性抗原結合分子が高い治療指数を示す。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータを、ヒトへの使用に適した投与量の範囲を製剤化するのに使用することができる。投与量は、好ましくは毒性がほとんどまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、種々の因子、例えば使用される剤形、利用される投与経路、対象の状態などに応じて、この範囲内で変化し得る。正確な製剤、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して、個々の医師によって選択され得る(例えば、Finglら、1975、The Pharmacological Basis of Therapeutics、第1章、1頁、全体が参照により本明細書に組み込まれる、参照)。
【0265】
本発明の二重特異性抗原結合分子で治療される患者の担当医であれば、毒性、臓器機能不全などにより投与をいつどのように終結、中断または調節するか分かるだろう。逆に、担当医であれば、(毒性を排除しながら)臨床反応が十分でない場合に、治療をより高レベルに調節することも分かっているだろう。目的の障害の管理において投与される用量の大きさは、治療される状態の重症度、投与経路などで変化する。状態の重症度は、例えば、一部は標準的な予後評価方法によって評価され得る。さらに、用量およびもしかすると投与頻度も、個々の患者の年齢、体重および反応によって変化するだろう。
【0266】
他の薬剤および治療
本発明の二重特異性抗原結合分子は、療法で1種または複数の他の薬剤と組み合わせて投与され得る。例えば、本発明の融合タンパク質は、少なくとも1種の追加の治療剤と共投与され得る。「治療剤」という用語は、このような治療を必要とする個体の症状または疾患を治療するために投与することができる任意の薬剤を包含する。このような追加の治療剤は、治療している特定の適応症に適した任意の有効成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含み得る。一定の実施形態では、追加の治療剤が別の抗がん剤である。
【0267】
このような他の薬剤は、適切には意図した目的に有効な量で組み合わせて存在する。このような他の薬剤の有効量は、使用される融合タンパク質の量、障害または治療の種類、および上で論じられる他の因子に依存する。二重特異性抗原結合分子は、一般的に同じ投与量および本明細書に記載される投与経路で、または本明細書に記載される投与量の約1~99%で、または適切であると経験的/臨床的に決定された任意の投与量および任意の経路によって使用される。
【0268】
上記のこのような併用療法は、組み合わせ投与(2種以上の治療剤が同じまたは別個の組成物に含まれる)、および別個の投与(この場合、本発明の二重特異性抗原結合分子の投与が、追加の治療剤および/またはアジュバントの投与の前、これと同時および/またはこの後に行われ得る)を包含する。
【0269】
製造品
本発明の別の態様では、上記の障害の治療、予防および/または診断に有用な物質を含有する製造品が提供される。製造品は、容器と、容器上のまたは容器に結合したラベルまたは添付文書とを含む。適切な容器には、例えばボトル、バイアル、注射器、IV溶液バッグ等が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの種々の材料から形成され得る。容器は、単独のあるいは状態を治療、予防および/または診断するのに有効な別の組成物と組み合わせた組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針によって穴開け可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は本発明の二重特異性抗原結合分子である。
【0270】
ラベルまたは添付文書は、組成物が選択された状態を治療するために使用されることを示す。さらに、製造品は、(a)組成物を中に含有する第1の容器であって、組成物が本発明の二重特異性抗原結合分子を含む容器と;(b)組成物を中に含有する第2の容器であって、組成物がさらなる細胞傷害剤または治療剤を含む容器とを含み得る。本発明の実施形態の製造品は、組成物を使用して特定の状態を治療することができることを示す添付文書をさらに含み得る。
【0271】
あるいはまたはさらに、製造品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液およびデキストロース溶液などの薬学的に許容されるバッファーを含む第2の(または第3の)容器をさらに含んでもよい。これは、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針および注射器を含む、商業的観点および使用者観点から望ましい他の物質をさらに含んでもよい。
表C. 配列
【0272】
以下の番号付けされたパラグラフ(パラ)は、本発明の態様を記載する:
1.(a)OX40に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と、
(b)上皮細胞接着分子(EpCAM)に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と
を含む二重特異性抗原結合分子。
2.(c)安定に会合することができる第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFc領域
をさらに含む、パラ1に記載の二重特異性抗原結合分子。
3.OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号1のアミノ酸配列を含む、またはからなるポリペプチドに結合する、パラ1またはパラ2に記載の二重特異性抗原結合分子。
4.EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号49のアミノ酸配列を含む、またはからなるポリペプチドに結合する、パラ1から3のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
5.OX40に特異的に結合することができる部分が、
(i)配列番号4および配列番号5からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-H1、
(ii)配列番号6および配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-H2、ならびに
(iii)配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13および配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-H3
を含むVHと、
(iv)配列番号15、配列番号16および配列番号17からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-L1、
(v)配列番号18、配列番号19および配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-L2、ならびに
(vi)配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25および配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含むVLと
を含む、パラ1から4のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
6.OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43および配列番号45からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44および配列番号46からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む、パラ1から5のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
7.OX40に特異的に結合することができる部分が、
(i)配列番号33のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号34のアミノ酸配列を含むVL、
(ii)配列番号35のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号36のアミノ酸配列を含むVL、
(iii)配列番号37のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号38のアミノ酸配列を含むVL、
(iv)配列番号39のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号40のアミノ酸配列を含むVL、
(v)配列番号41のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号42のアミノ酸配列を含むVL、
(vi)配列番号43のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号44のアミノ酸配列を含むVL、または
(vii)配列番号45のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号46のアミノ酸配列を含むVL
を含む、パラ1から6のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
8.EpCAMに特異的に結合することができる部分が、
(i)アミノ酸配列、配列番号51を含むCDR-H1、
(ii)アミノ酸配列、配列番号52を含むCDR-H2、および
(iii)アミノ酸配列、配列番号53を含むCDR-H3
を含むVHと、
(iv)アミノ酸配列、配列番号54を含むCDR-L1、
(v)アミノ酸配列、配列番号55を含むCDR-L2、および
(vi)アミノ酸配列、配列番号56を含むCDR-L3
を含むVLと
を含む、パラ1から7のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
9.EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号64のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む、パラ1から8のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
10.EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号63のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号64のアミノ酸配列を含むVLとを含む、パラ1から9のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
11.(i)配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43および配列番号45からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVH、ならびに配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44および配列番号46からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVLを含む、OX40に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と、
(ii)配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVH、および配列番号64のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVLを含む、EpCAMに特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と
を含む、パラ1から10のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
12.(i)配列番号35のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号36のアミノ酸配列を含むVLを含む、OX40に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と、
(ii)配列番号63のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号64のアミノ酸配列を含むVLを含む、EpCAMに特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と
を含む、パラ1から11のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
13.OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号2のアミノ酸配列を含む、またはからなるポリペプチドに結合する、パラ1またはパラ2に記載の二重特異性抗原結合分子。
14.EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号50のアミノ酸配列を含む、またはからなるポリペプチドに結合する、パラ1、2または13のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
15.OX40に特異的に結合することができる部分が、
(i)アミノ酸配列、配列番号27を含むCDR-H1、
(ii)アミノ酸配列、配列番号28を含むCDR-H2、および
(iii)アミノ酸配列、配列番号29を含むCDR-H3
を含むVHと、
(iv)アミノ酸配列、配列番号30を含むCDR-L1、
(v)アミノ酸配列、配列番号31を含むCDR-L2、および
(vi)アミノ酸配列、配列番号32を含むCDR-L3
を含むVLと
を含む、パラ1、2、13または14のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
16.OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号47のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号48のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む、パラ1、2または13から15のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
17.OX40に特異的に結合することができる部分が、配列番号47のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号48のアミノ酸配列を含むVLとを含む、パラ1、2または13から16のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
18.EpCAMに特異的に結合することができる部分が、
(i)アミノ酸配列、配列番号57を含むCDR-H1、
(ii)アミノ酸配列、配列番号58を含むCDR-H2、および
(iii)アミノ酸配列、配列番号59を含むCDR-H3
を含むVHと、
(iv)アミノ酸配列、配列番号60を含むCDR-L1、
(v)アミノ酸配列、配列番号61を含むCDR-L2、および
(vi)アミノ酸配列、配列番号62を含むCDR-L3
を含むVLと
を含む、パラ1、2または13から17のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
19.EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号65のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号66のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む、パラ1、2または13から18のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
20.EpCAMに特異的に結合することができる部分が、配列番号65のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号66のアミノ酸配列を含むVLとを含む、パラ1、2または13から19のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
21.(i)配列番号47のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号48のアミノ酸配列を含むVLを含む、OX40に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と、
(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号66のアミノ酸配列を含むVLを含む、EpCAMに特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と
を含む、パラ1、2または13から20のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
22.Fc領域がIgG、特にIgG1 Fc領域またはIgG4 Fc領域である、パラ2から21のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
23.Fc領域が、Fc受容体に対する抗体の結合親和性および/またはエフェクター機能を減少させる1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、パラ2から22のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
24.Fc領域が、(i)アミノ酸突然変異L234A、L235AおよびP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含むヒトIgG1サブクラス、または(ii)アミノ酸突然変異D265AおよびP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含むマウスIgG1サブクラスのものである、パラ2から23のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
25.Fc領域が、Fc領域の第1のサブユニットと第2のサブユニットの会合を促進する修飾を含む、パラ2から24のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
26.ノブ・イントゥ・ホール法に従って、Fc領域の第1のサブユニットがノブを含み、Fc領域の第2のサブユニットがホールを含む、パラ2から25のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
27.(i)Fc領域の第1のサブユニットが、アミノ酸置換S354CおよびT366W(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含み、Fc領域の第2のサブユニットが、アミノ酸置換Y349C、T366SおよびY407V(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む、または
(ii)Fc領域の第1のサブユニットが、アミノ酸置換K392DおよびK409D(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含み、Fc領域の第2のサブユニットが、アミノ酸置換E356KおよびD399K(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む、
パラ2から26のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
28.(a)Fc領域に接続されたOX40に特異的に結合することができる少なくとも2つのFab断片と、
(b)Fc領域のC末端に接続されたEpCAMに特異的に結合することができる少なくとも1つの部分と
を含む、パラ1から27のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
29.(a)OX40に特異的に結合することができる2つのFab断片およびFc領域を含む抗体の2つの軽鎖および2つの重鎖と、
(b)EpCAMに特異的に結合することができる部分のVHおよびVLであって、VHが(a)の2つの重鎖の一方のC末端に接続されており、VLが(a)の2つの重鎖の他方のC末端に接続されているVHおよびVLと
を含む、パラ1から28のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
30.(a)OX40に特異的に結合することができる2つのFab断片およびFc領域を含む抗体の2つの軽鎖および2つの重鎖と、
(b)EpCAMに特異的に結合することができる2つのFab断片であって、Fab断片の一方が(a)の2つの重鎖の一方のC末端に接続されており、Fab断片の他方が(a)の2つの重鎖の他方のC末端に接続されている、2つのFab断片と
を含む、パラ1から29のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
31.(a)各重鎖がOX40に特異的に結合することができるFab断片のVHおよびCH1ドメインならびにFc領域サブユニットを含む、2つの重鎖と、
(b)各軽鎖がOX40に特異的に結合することができるFab断片のVLおよびCLドメインを含む、2つの軽鎖と、
(c)EpCAMに特異的に結合することができる部分のVHおよびVLであって、VHが(a)の2つの重鎖の一方のC末端に接続されており、VLが(a)の2つの重鎖の他方のC末端に接続されている、VHおよびVLと
を含む、パラ1から30のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
32.(a)各重鎖がOX40に特異的に結合することができるFab断片のVHおよびCH1ドメインならびにFc領域サブユニットを含む、2つの重鎖と、
(b)各軽鎖がOX40に特異的に結合することができるFab断片のVLおよびCLドメインを含む、2つの軽鎖と、
(c)EpCAMに特異的に結合することができる2つのFab断片であって、Fab断片の一方が(a)の2つの重鎖の一方のC末端に接続されており、Fab断片の他方が(a)の2つの重鎖の他方のC接続に結合している、2つのFab断片と
を含む、パラ1から28またはパラ30のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
33.EpCAMに特異的に結合することができる2つのFab断片が、各々がVL-CH1鎖およびVH-CL鎖を含み、VL-CH1鎖の一方が(a)の2つの重鎖の一方のC末端に接続されており、VL-CH1鎖の他方が(a)の2つの重鎖の他方のC末端に接続されている、クロスオーバーFab断片である、パラ30またはパラ32に記載の二重特異性抗原結合分子。
34.OX40に特異的に結合することができる4つのFab断片を含む、パラ1から33のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
35.(a)の2つの重鎖の各々が、OX40に特異的に結合することができるFab断片の2つのVHドメインおよび2つのCH1ドメインを含む、パラ29から34のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
36.OX40に特異的に結合することができるFab断片の1つまたは複数が、
123位(EU番号付け)のアミノ酸のアルギニン(R)および124位(EU番号付け)のアミノ酸のリジン(K)を含むCLドメインと、
147位(EU番号付け)のアミノ酸のグルタミン酸(E)および213位(EU番号付け)のアミノ酸のグルタミン酸(E)を含むCH1ドメインと
を含む、パラ28から35のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子。
37.配列番号183のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、
配列番号184のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、
各々が配列番号182のアミノ酸配列を含む、4つの軽鎖と
を含む二重特異性抗原結合分子。
38.各々が配列番号186のアミノ酸配列を含む、2つの重鎖と、
各々が配列番号187のアミノ酸配列を含む、2つの軽鎖と、
各々が配列番号185のアミノ酸配列を含む、4つの軽鎖と
を含む二重特異性抗原結合分子。
39.配列番号192のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、
配列番号193のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、
各々が配列番号191のアミノ酸配列を含む、4つの軽鎖と
を含む二重特異性抗原結合分子。
40.パラ1から39のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチド。
41.パラ40に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
42.パラ40に記載のポリヌクレオチドまたはパラ41に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
43.二重特異性抗原結合分子を作製する方法であって、パラ42に記載の宿主細胞を、二重特異性抗原結合分子の発現に適した条件下で培養することと、二重特異性抗原結合分子を単離することとを含む方法。
44.パラ1から39のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子と、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物。
45.医薬として使用するための、パラ1から39のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子またはパラ44に記載の薬学的組成物。
46.(i)T細胞応答の刺激、
(ii)活性化T細胞の生存の支持、
(iii)感染症の治療、
(iv)がんの治療、
(v)がんの進行の遅延、または
(vi)がんを患っている患者の生存の延長
に使用するための、パラ1から39のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子またはパラ44に記載の薬学的組成物。
47.がんの治療に使用するための、パラ1から39のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子またはパラ44に記載の薬学的組成物。
48.がんを治療するための医薬の製造における、パラ1から39のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子またはパラ44に記載の薬学的組成物の使用。
49.がんを有する個体を治療する方法であって、有効量のパラ1から39のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子またはパラ44に記載の薬学的組成物を個体に投与することを含む方法。
50.細胞傷害性T細胞活性を上方制御または延長するのに使用するための、パラ1から39のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子またはパラ44に記載の薬学的組成物。
51.細胞傷害性T細胞活性を上方制御または延長するための医薬の製造における、パラ1から39のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子またはパラ44に記載の薬学的組成物の使用。
52.がんを有する個体の細胞傷害性T細胞活性を上方制御または延長する方法であって、有効量のパラ1から39のいずれか1つに記載の二重特異性抗原結合分子またはパラ44に記載の薬学的組成物を個体に投与することを含む方法。
【実施例
【0273】
以下は、本発明の方法および組成物の例である。上に提供される一般的な説明を考慮すると、種々の他の実施形態を行うことができることが理解される。
【0274】
組換えDNA技術
Sambrookら、Molecular cloning:A laboratory manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク、1989に記載されるように、標準的な方法を使用してDNAを操作した。製造業者の指示に従って分子生物学試薬を使用した。ヒト免疫グロブリン軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列に関する一般的な情報は、Kabat,E.A.ら、(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、NIH Publication 番号91-3242に示される。
【0275】
DNA配列決定
DNA配列を二本鎖配列決定によって決定した。
【0276】
遺伝子合成
所望の遺伝子セグメントを、適切な鋳型を使用してPCRによって作製した、または自動化遺伝子合成によって合成オリゴヌクレオチドおよびPCR産物からGeneart AG(Regensburg、ドイツ)によって合成した。正確な遺伝子配列が入手可能でない場合、オリゴヌクレオチドプライマーを最も近いホモログからの配列に基づいて設計し、遺伝子を、適切な組織に由来するRNAからRT-PCRによって単離した。単一の制限エンドヌクレアーゼ切断部位が隣接した遺伝子セグメントを標準的クローニング/配列決定ベクターにクローニングした。プラスミドDNAを形質転換細菌から精製し、濃度をUV分光法によって決定した。サブクローニング遺伝子断片のDNA配列をDNA配列決定によって確認した。遺伝子セグメントを適切な制限部位を用いて設計して、それぞれの発現ベクターへのサブクローニングを可能にした。全てのコンストラクトを、真核細胞中で分泌するためのタンパク質を標的化するリーダーペプチドをコードする5’末端DNA配列を用いて設計した。
【0277】
タンパク質精製
タンパク質を、標準的なプロトコルを参照して濾過細胞培養物上清から精製した。手短に述べれば、抗体をプロテインAセファロースカラム(GE healthcare)にアプライし、PBSで洗浄した。抗体の溶出をpH2.8で達成し、引き続いて直ちに試料を中和した。凝集タンパク質を、PBSまたは20mM ヒスチジン、150mM NaCl pH6.0中、サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200、GE Healthcare)によってモノマー抗体から分離した。モノマー抗体画分をプールし、例えばMILLIPORE Amicon Ultra(30MWCO)遠心濃縮機を使用して濃縮し(必要であれば)、冷凍し、-20℃または-80℃で保存した。試料の一部を、例えばSDS-PAGE、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)または質量分析によるその後のタンパク質分析および分析特徴づけに供した。
【0278】
SDS-PAGE
製造業者の指示に従って、NuPAGE(登録商標)Pre-Castゲルシステム(Invitrogen)を使用した。特に、10%または4~12%NuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)Bis-TRIS Pre-Castゲル(pH6.4)およびNuPAGE(登録商標)MES(還元ゲル、NuPAGE(登録商標)Antioxidant泳動バッファー添加剤を含む)またはMOPS(非還元ゲル)泳動バッファーを使用した。
【0279】
分析サイズ排除クロマトグラフィー
抗体の凝集およびオリゴマー状態を決定するためのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)をHPLCクロマトグラフィーによって行った。手短に述べれば、プロテインA精製抗体を、Agilent HPLC 1100システムで、300mM NaCl、50mM KHPO4/KHPO、pH7.5中Tosoh TSKゲル G3000SWカラムに、またはDionex HPLC-Systemで2×PBS中Superdex 200カラム(GE Healthcare)にアプライした。溶出タンパク質を、UV吸光度またはピーク面積の積分によって定量化した。BioRad Gel Filtration Standard 151-1901が標準として役立った。
【0280】
実施例1
OX40抗体の作製
1.1 抗原の調製、精製および特徴づけ、ならびにファージディスプレイによる新規なOX40バインダーの作製のためのスクリーニングツール
ヒト、マウスまたはカニクイザルOX40の外部ドメイン(表1)をコードするDNA配列を、ノブ上のヒトIgG1重鎖CH2およびCH3ドメインとインフレームでサブクローニングした(Merchantら、Nat Biotechnol(1998)16、677~681)。AcTEVプロテアーゼ切断部位を抗原外部ドメインとヒトIgG1のFcとの間に導入した。指示されたビオチン化用のAviタグを抗原FcノブのC末端に導入した。S354C/T366W突然変異を含む抗原-Fcノブ鎖と、Y349C/T366S/L368A/Y407V突然変異を含むFcホール鎖を組み合わせることによって、OX40外部ドメイン含有鎖の単一コピーを含むヘテロ二量体を作製し、よってFc-結合抗原のモノマー型を作り出すことが可能になる(図1)。表1は、種々のOX40外部ドメインのアミノ酸配列を示す。表2は、図1に描かれるモノマー抗原Fc(kih)融合分子のcDNAおよびアミノ酸配列である。
表1.抗原外部ドメイン(ECD)のアミノ酸番号付けおよびその起源
表2. モノマー抗原Fc(kih)融合分子(1つのFcホール鎖と1つの抗原Fcノブ鎖の組み合わせによって作製)のcDNAおよびアミノ酸配列
【0281】
全てのOX40-Fc-融合体コード配列を、MPSVプロモーターからのインサートの発現を駆動し、CDSの3’末端に位置する合成ポリAシグナル配列を含むプラスミドベクターにクローニングした。さらに、ベクターは、プラスミドのエピソーム維持のためのEBV OriP配列を含んでいた。
【0282】
ビオチン化モノマー抗原/Fc融合分子を調製するために、指数関数的に増殖する懸濁HEK293 EBNA細胞に、融合タンパク質の2つの成分(ノブ鎖およびホール鎖)ならびにBirA、ビオチン化反応に必要な酵素をコードする3つのベクターをコトランスフェクトした。対応するベクターを2:1:0.05比(「抗原ECD-AcTEV-Fcノブ」:「Fcホール」:「BirA」)で使用した。
【0283】
500ml振盪フラスコ中でのタンパク質産生のために、4億個のHEK293 EBNA細胞を、トランスフェクションの24時間前に播種した。トランスフェクションのために、細胞を210gで5分間遠心分離し、上清を、予熱したCD CHO培地と交換した。発現ベクターを、200μgのベクターDNAを含む20mLのCD CHO培地に再懸濁した。540μLのポリエチレンイミン(PEI)を添加した後、溶液を15秒間ボルテックスし、室温で10分間インキュベートした。その後、細胞をDNA/PEI溶液と混合し、500mL振盪フラスコに移し、5%CO雰囲気でインキュベーター中、37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション後、160mMのF17培地を添加し、細胞を24時間培養した。トランスフェクションの1日後、1mMバルプロ酸および7%フィードを培養物に添加した。7日間の培養後、細胞上清を、細胞を210gで15分間スピンダウンすることによって回収した。溶液を滅菌濾過し(0.22μmフィルター)、アジ化ナトリウムを補足して最終濃度0.01%(w/v)にし、4℃で維持した。
【0284】
分泌タンパク質を、プロテインAを使用したアフィニティークロマトグラフィー、引き続いてサイズ排除クロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製した。アフィニティークロマトグラフィーのために、上清を、40mM 20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム pH7.5で平衡化したHiTrap プロテインA HPカラム(CV=5mL、GE Healthcare)にロードした。少なくとも10カラム体積の20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウムおよび0.5Mクエン酸ナトリウムを含有するバッファー(pH7.5)で洗浄することによって、未結合タンパク質を除去した。20カラム体積の20mMクエン酸ナトリウム、0.01%(v/v)Tween-20、pH3.0に対して作り出された線形pH勾配の塩化ナトリウム(0~500mM)を使用して、結合タンパク質を溶出した。次いで、10カラム体積の20mMクエン酸ナトリウム、500mM塩化ナトリウムおよび0.01%(v/v)Tween-20を含有する溶液、pH3.0でカラムを洗浄した。
【0285】
1/40(v/v)の2M Tris、pH8.0を添加することによって、回収した画分のpHを調整した。タンパク質を濃縮し、pH7.4の2mM MOPS、150mM塩化ナトリウム、0.02%(w/v)アジ化ナトリウム溶液で平衡化したHiLoad Superdex 200カラム(GE Healthcare)にロードする前に濾過した。
【0286】
1.2 一般的Fabおよび一般的軽鎖ライブラリーからのOX40特異的8H9、20B7、49B4、1G4、CLC-563、CLC-564および17A9抗体の選択
抗OX40抗体を、3つの異なる一般的ファージディスプライライブラリー:DP88-4(クローン20B7、8H9 1G4および49B4)、一般的軽鎖ライブラリーVk3_20/VH3_23(クローンCLC-563およびCLC-564)およびλ-DP47(クローン17A9)から選択した。
【0287】
軽鎖のCDR3(L3、3つの異なる長さ)および重鎖のCDR3(H3、3つの異なる長さ)にランダム化配列スペースを含むVドメインペアリングVk1_5(κ軽鎖)とVH1_69(重鎖)を使用して、ヒト生殖系列遺伝子に基づいて、D88-4ライブラリーを構築した。重複伸長によるスプライシング(splicing by overlapping extension)(SOE)PCRを適用して3つのPCR増幅断片の組み立てによってライブラリー作製を行った。断片1はランダム化L3を含む抗体遺伝子の5’末端を含み、断片2はL3からH3に広がる中心定常断片であるが、断片3はランダム化H3および抗体遺伝子の3’部分を含む。以下のプライマー組み合わせを使用して、DP88-4ライブラリーのためにこれらのライブラリー断片を作製した:それぞれ、断片1(逆方向プライマーVk1_5_L3r_SまたはVk1_5_L3r_SYまたはVk1_5_L3r_SPYと組み合わせた順方向プライマーLMB3)、断片2(逆方向プライマーRJH32と組み合わせた順方向プライマーRJH31)および断片3(逆方向プライマーfdseqlongと組み合わせた順方向プライマーDP88-v4-4またはDP88-v4-6またはDP88-v4-8)。ライブラリー断片を作製するためのPCRパラメータは、94℃で5分間の初期変性、25サイクルの94℃で1分、58℃で1分、72℃で1分および72℃で10分間の末端伸長とした。アセンブリーPCRのために、鋳型として等モル比のゲル精製単一断片を使用して、パラメータを94℃で3分間の初期変性および5サイクルの94℃で30秒間、58℃で1分間、72℃の2分間とした。この段階で、外側プライマー(LMB3およびfdseqlong)を添加し、72℃で10分間の末端伸長前に追加の20サイクルを行った。十分な量の完全長ランダム化Fabコンストラクトの組み立て後、これらをNcoI/NheI消化し、同様に処理したアクセプターファージミドベクターに連結した。精製したライゲーションを、約60回のエレクトロコンピテント大腸菌(E.coli)TG1への形質転換に使用した。Fabライブラリーを提示するファージミド粒子をレスキューし、PEG/NaCl精製によって精製して選択に使用した。これらのライブラリー構築ステップを3回繰り返して、最終ライブラリーサイズ4.4×109を得た。ドットブロットでC末端タグ検出によって決定される機能的クローンの割合は、それぞれ軽鎖については92.6%および重鎖については93.7%であった。
【0288】
定常非ランダム化一般的軽鎖Vk3_20および重鎖(H3、3つの異なる長さ)のCDR3のランダム化配列スペースを含むVドメインペアリングVk3_20(κ軽鎖)とVH3_23(重鎖)を使用して、ヒト生殖系列遺伝子に基づいて、一般的軽鎖ライブラリーVk3_20/VH3_23を構築した。重複伸長によるスプライシング(SOE)PCRを適用して2つのPCR増幅断片の組み立てによってライブラリー作製を行った。断片1はL3からH3に広がる定常断片であるが、断片2はランダム化H3および抗体遺伝子の3’部分を含む。以下のプライマー組み合わせを使用して、Vk3_20/VH3_23一般的軽鎖ライブラリーのためにこれらのライブラリー断片を作製した:それぞれ、断片1(逆方向プライマーDP47CDR3_ba(mod.)と組み合わせた順方向プライマーMS64)および断片2(逆方向プライマーfdseqlongと組み合わせた順方向プライマーDP47-v4-4、DP47-v4-6、DP47-v4-8)。ライブラリー断片を作製するためのPCRパラメータは、94℃で5分間の初期変性、25サイクルの94℃で1分、58℃で1分、72℃で1分および72℃で10分間の末端伸長とした。アセンブリーPCRのために、鋳型として等モル比のゲル精製単一断片を使用して、パラメータを94℃で3分間の初期変性および5サイクルの94℃で30秒間、58℃で1分間、72℃の2分間とした。この段階で、外側プライマー(MS64およびfdseqlong)を添加し、72℃で10分間の末端伸長前に追加の18サイクルを行った。十分な量の完全長ランダム化VHコンストラクトの組み立て後、これらをMunI/NotI消化し、同様に処理したアクセプターファージミドベクターに連結した。精製したライゲーションを、約60回のエレクトロコンピテント大腸菌(E.coli)TG1への形質転換に使用した。Fabライブラリーを提示するファージミド粒子をレスキューし、PEG/NaCl精製によって精製して選択に使用した。最終ライブラリーサイズ3.75×109を得た。ドットブロットでC末端タグ検出によって決定される機能的クローンの割合は、それぞれ軽鎖については98.9%および重鎖については89.5%であった。
【0289】
以下のVドメインペアリング:Vl3_19λ軽鎖とVH3_23重鎖を使用して、ヒト生殖系列遺伝子に基づいて、λ-DP47ライブラリーを構築した。ライブラリーを軽鎖(L3)のCDR3および重鎖(H3)のCDR3にランダム化し、「重複伸長によるスプライシング」(SOE)PCRによって3つの断片から組み立てた。断片1はランダム化L3を含む抗体遺伝子の5’末端を含み、断片2はL3の末端からH3の始まりまで広がる中心定常断片であるが、断片3はランダム化H3およびFab断片の3’部分を含む。以下のプライマー組み合わせを使用して、ライブラリーのためにライブラリー断片を作製した:それぞれ、断片1(LMB3-Vl_3_19_L3r_V/Vl_3_19_L3r_HV/Vl_3_19_L3r_HLV)、断片2(RJH80-DP47CDR3_ba(mod))および断片3(DP47-v4-4/DP47-v4-6/DP47-v4-8-fdseqlong)。ライブラリー断片を作製するためのPCRパラメータは、94℃で5分間の初期変性、25サイクルの94℃で60秒間、55℃で60秒間、72℃で60秒間および72℃で10分間の末端伸長とした。アセンブリーPCRのために、鋳型として等モル比の3つの断片を使用して、パラメータを94℃で3分間の初期変性および5サイクルの94℃で60秒間、55℃で60秒間、72℃の120秒間とした。この段階で、外側プライマーを添加し、72℃で10分間の末端伸長前に追加の20サイクルを行った。十分な量の完全長ランダム化Fab断片の組み立て後、これらを、同様に処理したアクセプターファージミドベクターと並んでNcoI/NheI消化した。15μgのFabライブラリーインサートを13.3μgのファージミドベクターと連結した。精製したライゲーションを60回の形質転換に使用して、1.5×10個の形質転換体を得た。Fabライブラリーを提示するファージミド粒子をレスキューし、PEG/NaCl精製によって精製して選択に使用した。
【0290】
ファージディスプレイ選択のための抗原としてのヒトOX40(CD134)を、HEK EBNA細胞中でN末端モノマーFc融合体として一過的に発現させ、受容体鎖(Fcノブ鎖)を有するFc部分のC末端に位置するavi-タグ認識配列でBirAビオチンリガーゼの共発現を介してインビボで部位特異的にビオチン化した。
【0291】
選択ラウンド(バイオパニング)を、以下のパターンに従って溶液中で行った:
1.10μg/mlの非関連ヒトIgGでコーティングしたmaxisorpプレート上で約1012個のファージミド粒子を事前洗浄して、抗原のFc部分を認識する抗体のライブラリーを枯渇させる、
2.総体積1mlでFcバインダーをさらに枯渇させるために100mM非関連非ビオチン化Fcノブ・イントゥ・ホールコンストラクトの存在下で、非結合ファージミド粒子を100nMビオチン化ヒトOX40と0.5時間インキュベートする、
3.ビオチン化huOX40を捕捉し、4ウェルのニュートラアビジンプレコーティングマイクロタイタープレートに10分間移すことによって結合ファージに特異的に結合させる(ラウンド1および3)、
4.5×PBS/Tween20および5×PBSを使用してそれぞれのウェルを洗浄する、
5.1ウェル当たり250μlの100mM TEA(トリエチルアミン)を添加し10分間置くことによって、ファージ粒子を溶出し、500μl 1M Tris/HCl pH7.4を4つのウェルのプールした溶出液に添加することによって中和する、
6.Fcバインダーを最終的に除去するために、100nMビオチン捕捉Fcノブ・イントゥ・ホールコンストラクトとニュートラアビジンプレコーティングマイクロタイタープレートをインキュベートすることによって、中和溶出液を後洗浄する、
7.対数期の大腸菌(E.coli)TG1細胞を溶出ファージ粒子の上清で再感染させ、ヘルパーファージVCSM13で感染させ、30℃で一晩、振盪機上でインキュベートし、その後ファージミド粒子をPEG/NaCl沈殿させて次の選択ラウンドに使用する。
【0292】
100nMの一定抗原濃度を使用して、3または4ラウンドにわたって選択を行った。カニクイザルOX40だけでなく、マウスOX40にも交差反応性であるバインダーの可能性を増加させるために、いくつかの選択ラウンドで、ヒトOX40の代わりにマウス標的を使用した。ラウンド2および4で、ニュートラアビジンに対するバインダーの濃縮を回避するために、5.4×10個のストレプトアビジンコーティング磁気ビーズを添加することによって、抗原:ファージ複合体の捕捉を行った。以下の通り、ELISAによって特異的バインダーを同定した:100μlの25nMビオチン化ヒトOX40および10μg/mlのヒトIgGを、それぞれニュートラアビジンプレートおよびmaxisorpプレート上にコーティングした。Fab含有細菌上清を添加し、結合Fabを、抗Flag/HRP二次抗体を使用してFlag-タグを介して検出した。ヒトOX40上でシグナルを示し、ヒトIgG上で陰性のクローンをさらなる分析のための候補一覧に入れ、カニクイザルおよびマウスOX40に対しても同様に試験した。これらを0.5l培養体積で細菌的に発現させ、親和性精製し、Bio RadのProteOn XPR36バイオセンサーを使用してSPR分析によってさらに特徴を明らかにした。
【0293】
表3は一般的ファージディスプレイ抗体ライブラリー(DP88-4)の配列を示し、表4はライブラリーDP88-4生殖系列鋳型のcDNAおよびアミノ酸配列を提供し、表5はDP88-4生殖系列鋳型を作製するために使用したプライマー配列を示す。
表3. 一般的ファージディスプレイ抗体ライブラリー(DP88-4)の配列
表4. ライブラリーDP88-4生殖系列鋳型のcDNAおよびアミノ酸配列
表5. DP88-4ライブラリーを作製するために使用したプライマー配列
【0294】
表6は一般的ファージディスプレイ抗体一般的軽鎖ライブラリー(Vk3_20/VH3_23)の配列を示す。表7は一般的軽鎖ライブラリー(Vk3_20/VH3_23)生殖系列鋳型のcDNAおよびアミノ酸配列を提供し、表8は一般的軽鎖ライブラリー(Vk3_20/VH3_23)を作製するために使用したプライマー配列を示す。
表6. PCRに使用した一般的ファージディスプレイ抗体一般的軽鎖ライブラリー(Vk3_20/VH3_23)鋳型の配列
表7. 一般的軽鎖ライブラリー(Vk3_20/VH3_23)生殖系列鋳型のcDNAおよびアミノ酸配列
表8. 一般的軽鎖ライブラリー(Vk3_20/VH3_23)を作製するために使用したプライマー配列
【0295】
表9はPCRに使用した一般的ファージディスプレイλ-DP47ライブラリー(Vl3_19/VH3_23)鋳型の配列を示す。表10はλ-DP47ライブラリー(Vl3_19/VH3_23)生殖系列鋳型のcDNAおよびアミノ酸配列を提供し、表11はλ-DP47ライブラリー(Vl3_19/VH3_23)を作製するために使用したプライマー配列を示す。
表9: PCRに使用した一般的ファージディスプレイλ-DP47ライブラリー(Vl3_19/VH3_23)鋳型の配列
表10. λ-DP47ライブラリー(Vl3_19/VH3_23)生殖系列鋳型のcDNAおよびアミノ酸配列
表11. λ-DP47ライブラリー(Vl3_19/VH3_23)を作製するために使用したプライマー配列
【0296】
λ-DP47ライブラリーを構築するために使用した追加のプライマー、すなわちDP47CDR3_ba(mod.)、DP47-v4-4、DP47-v4-6、DP47-v4-8およびfdseqlongは、一般的軽鎖ライブラリー(Vk3_20/VH3_23)を構築するために使用したプライマーと同一であり、表8で既に列挙している。
【0297】
クローン8H9、20B7、49B4、1G4、CLC-563、CLC-564および17A9は、上記の手順を通してヒトOX40特異的バインダーとして同定された。これらの可変領域のcDNA配列を以下の表12に示し、対応するアミノ酸配列を表Cに見出すことができる。
表12. ファージ誘導抗OX40抗体についての可変領域塩基対配列。下線は相補性決定領域(CDR)である。
【0298】
1.3 抗OX40 IgG1 P329G LALA抗体の調製、精製および特徴づけ
選択された抗OX40バインダーの重鎖および軽鎖DNA配列の可変領域を、ヒトIgG1の定常重鎖または定常軽鎖とインフレームでサブクローニングした。Pro329Gly、Leu234AlaおよびLeu235Ala突然変異を、国際特許出願公開第2012/130831号に記載される方法に従って、ノブおよびホール重鎖の定常領域に導入してFcγ受容体への結合を抑止した。
【0299】
抗OX40クローンのcDNAおよびアミノ酸配列を表13に示す。全ての抗OX40-Fc融合体コード配列を、MPSVプロモーターからのインサートの発現を駆動し、CDSの3’末端に位置する合成ポリAシグナル配列を含むプラスミドベクターにクローニングした。さらに、ベクターは、プラスミドのエピソーム維持のためのEBV OriP配列を含む。
表13. P329GLALAヒトIgG1フォーマットにおける抗OX40クローンの配列
【0300】
HEK293-EBNA細胞に、ポリエチレンイミンを使用して哺乳動物発現ベクターをコトランスフェクトすることによって、抗OX40抗体を作製した。細胞に、1:1比(「ベクター重鎖」:「ベクター軽鎖」)で対応する発現ベクターをトランスフェクトした。
【0301】
500ml振盪フラスコ中での産生のために、4億個のHEK293 EBNA細胞を、トランスフェクションの24時間前に播種した。トランスフェクションのために、細胞を210×gで5分間遠心分離し、上清を、予熱したCD CHO培地と交換した。発現ベクター(200μgの総DNA)を、20mLのCD CHO培地中で混合した。540μLのPEIを添加した後、溶液を15秒間ボルテックスし、室温で10分間インキュベートした。その後、細胞をDNA/PEI溶液と混合し、500mL振盪フラスコに移し、5%CO雰囲気でインキュベーター中、37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション後、160mMのF17培地を添加し、細胞を24時間培養した。トランスフェクションの1日後、1mMバルプロ酸および補足物を含む7%フィードを添加した。7日間の培養後、上清を210×gで15分間の遠心分離によって回収した。溶液を滅菌濾過し(0.22μmフィルター)、アジ化ナトリウムを補足して最終濃度0.01%(w/v)にし、4℃で維持した。
【0302】
抗原Fc融合体の精製について上記のプロテインAを使用して、細胞培養上清からの抗体分子の精製をアフィニティークロマトグラフィーによって行った。
【0303】
タンパク質を濃縮し、20mMヒスチジン、pH6.0の140mM NaCl溶液で平衡化したHiLoad Superdex 200カラム(GE Healthcare)にロードする前に濾過した。
【0304】
アミノ酸配列に基づいて計算したモル吸光係数を使用して、280nmでODを測定することによって、精製抗体のタンパク質濃度を決定した。LabChipGXII(Caliper)を使用して、還元剤(Invitrogen、米国)の存在および非存在下で、CE-SDSによって抗体の純度および分子量を分析した。25℃で25mM KHPO、125mM NaCl、200mM L-アルギニン一塩酸塩、0.02%(w/v)NaN、pH6.7泳動バッファーで平衡化したTSKゲルG3000SW XL分析サイズ排除カラム(Tosoh)を使用して、抗体試料の凝集体含量を分析した。
【0305】
表14は、抗OX40 P329G LALA IgG1抗体の収量および最終含量を要約している。
表14: 抗OX40 P329G LALA IgG1クローンの生化学分析
【0306】
実施例2
OX40および上皮細胞接着分子(EpCAM)を標的化する二重特異性抗体の作製
2.1 ヒトOX40およびヒト上皮細胞接着分子(EpCAM)を標的化する二重特異性抗体の作製
OX40についての四価結合およびEpCAMについての一価結合を有する二重特異性アゴニストOX40コンストラクト(すなわち、「4+1」コンストラクト)を調製した。
【0307】
この例では、抗原結合分子は、抗OX40 49B4 Fcノブ(P329G/LALA)のVHCH1_VHCH1、引き続いて(G4S)4リンカーおよび抗EpCAM抗体クローン3-17lのVLを含む第1の重鎖(HC1)と;抗OX40 49B4 Fcホール(P329G/LALA)のVHCH1_VHCH1、引き続いて(G4S)4リンカーおよび抗EpCam3-17lのVHを含む第2の重鎖(HC2)とを含んでいた。
【0308】
抗EpCAM抗体3-17lの作製は、例えば国際公開第2010142990号に記載されている。scFvの3-17lおよびIgG1フォーマットについてのヌクレオチドおよびアミノ酸配列(ならびにそのVHおよびVL配列)は、例えば国際公開第2010142990号の表1および図1で開示されている。
【0309】
ノブ・イントゥ・ホール技術は、例えば米国特許第5,731,168号および米国特許第7,695,936号に記載されており、HC1およびHC2の組み立てを可能にする。国際特許出願公開第2012/130831号に記載されている方法に従って、Pro329Gly、Leu234AlaおよびLeu235Ala突然変異を重鎖の定常領域に導入してFcγ受容体への結合を抑止した。
【0310】
重鎖融合ポリペプチドHC1およびHC2を、抗OX40クローン49B4の軽鎖(CLVL)と共発現して、OX40についての四価結合およびEpCAMについての一価結合を有する分子(すなわち、「4+1」コンストラクト)を作製した。図2Aを参照されたい。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列をそれぞれ表15および表16に示す。
【0311】
OX40についての四価結合およびEpCAMについての二価結合を有する二重特異性アゴニストOX40コンストラクト(すなわち、「4+2」コンストラクト)も調製した。
【0312】
4+2コンストラクトについては、重鎖は、抗OX40 49B4_Fc(P329G/LALA)のVHCH1_VHCH1、引き続いて(G4S)4リンカーおよびFcのC末端に融合したEpCAM結合抗体3-17lの交差Fabユニット(VLCH1)を含む。重鎖融合ポリペプチドを抗OX40クローン49B4(CLVL)の軽鎖(LC1)と共発現した。抗OX40 FabのCHおよびCLは、Bence Jonesタンパク質の産生を防ぎ、LC1とHCの正しいペアリングをさらに安定化するための荷電残基を含んでいた。具体的には、置換E123RおよびQ124K(EU番号付けによる残基)を、OX40(49B4)VLCL軽鎖のCLドメイン中に作り出し、軽鎖配列、配列番号185を得た;また置換K147EおよびK213E(EU番号付けによる残基)を、OX40(49B4)のCH1ドメイン中に作り出し、重鎖配列、配列番号186を得た。
【0313】
この場合、両HCは同じドメインを含むので、ノブをホールに導入することが必要でなかった。重鎖融合ポリペプチドおよびLC1ポリペプチドを、抗EpCAM結合クローン3-17lのVHおよびCLをコードするポリペプチドと共発現させた。
【0314】
OX40についての四価結合およびEpCAMについての二価結合有する得られた分子(すなわち、「4+2」コンストラクト)を図2Bに示す。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列をそれぞれ表15および表16に示す。
表15. 成熟二重特異性、四価抗OX40、一価および二価抗EpCAM huIgG1 P329GLALA分子の塩基対配列
表16. 成熟二重特異性、四価抗OX40、一価および二価抗EpCAM huIgG1 P329GLALA分子のアミノ酸配列
【0315】
2.2 マウスOX40およびマウス上皮細胞接着分子(EpCAM)を標的化する二重特異性抗体の作製
マウスOX40についての四価結合およびマウスEpCAMについての一価結合を有する二重特異性コンストラクト(すなわち、「4+1」コンストラクト)も調製した。
【0316】
この例では、抗原結合分子が、抗マウスOX40抗体クローンOX86Fcノブ(DAPG)のVHCH1_VHCH1、引き続いて(G4S)4リンカーおよび抗マウスEpCAM抗体クローンG8.8のVLを含む第1の重鎖(HC1)と;抗マウスOX40 OX86 Fcホール(DAPG)のVHCH1_VHCH1、引き続いて(G4S)4リンカーおよび抗マウスEpCAM G8.8のVHを含む第2の重鎖(HC2)とを含んでいた。
【0317】
ラット抗マウスOX40抗体クローンOX86の作製は、例えばAl-Shamkhaniら Eur J Chem(1996)26:1695~1699または国際公開第2016/057667号に記載されている。
【0318】
ラット抗マウスEpCAM抗体G8.8の作製は、例えばFarrら、J Histochem Cytochem.(1991)39(5):645~53に記載されており、Developmental Studies Hybridoma Bank、アイオワ大学、アイオワシティ、IAから入手可能である。抗体は国際公開第2013/113615号にも記載されている。
【0319】
「DDKK」ノブ・イントゥ・ホール技術は、例えば国際公開第2014/131694号に記載されており、HC1およびHC2の組み立てを可能にする。手短に述べれば、アスパラギン酸残基(D)を、392位および409位(Kabat EUインデックスによる番号付け;すなわちK392DおよびK409D)に相当する位置で重鎖の一方(HC1)のFc領域サブユニットに提供し、リジン(K)残基を、356位および399位(Kabat EUインデックスによる番号付け;すなわち、E356KおよびD399K)に相当する位置で重鎖の他方(HC2)のFc領域サブユニットに提供する。
【0320】
例えばBaudinoら J.Immunol.(2008)、181、6664~6669または国際公開第2016/030350号に記載される方法に従って、DAPG突然変異を重鎖の定常領域に導入して、マウスFcγ受容体への結合を抑止した。手短に述べれば、アラニン(A)を265位に相当する位置でFc領域に提供し、グリシン(G)を329位に相当する位置でFc領域に提供する(Kabat EUインデックスによる番号付け;すなわち、D265A、P329G)。
【0321】
重鎖融合ポリペプチドHC1およびHC2を抗OX40クローンOX86の軽鎖(CLVL)と共発現させて、マウスOX40についての四価結合およびマウスEpCAMについての一価結合を有する分子(すなわち、「4+1」コンストラクト)を作製した。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列をそれぞれ表17および表18に示す。
表17. 成熟二重特異性、四価抗muOX40、一価抗muEpCAM huIgG1 DAPG kih 4+1分子の塩基対配列
表18. 成熟二重特異性、四価抗muOX40、一価抗muEpCAM muIgG1 DAPG kih 4+1分子のアミノ酸配列
【0322】
異なる二重特異性抗OX40、抗EpCAM抗原結合分子を作製するために、全ての遺伝子を、CMVプロモーターエンハンサー断片と組み合わせたMPSVコアプロモーターからなるキメラMPSVプロモーターの制御下で一過的に発現させた。発現ベクターはまた、EBNA(エプスタイン・バーウイルス由来核抗原)含有宿主細胞中でのエピソーム複製用のoriP領域を含む。
【0323】
HEK293-EBNA細胞に、ポリエチレンイミンを使用して哺乳動物発現ベクターをコトランスフェクトすることによって、二重特異性抗OX40、抗EpCam分子を作製した。細胞に、1:1:4比(4+2分子については「ベクター重鎖」:「ベクター軽鎖1」:「ベクター軽鎖2」)および1:1:4(4+1分子については「ベクター重鎖1」:「ベクター重鎖2」:「ベクター軽鎖」)で対応する発現ベクターをトランスフェクトした。
【0324】
500mL振盪フラスコ中での200mL産生のために、2億5千万個のHEK293 EBNA細胞を、補足物を含むExcell培地にトランスフェクションの24時間前に播種した。トランスフェクションのために、細胞を210×gで5分間遠心分離し、上清を、予熱したCD CHO培地と交換した。発現ベクターを、20mLのCD CHO培地中で混合して、最終的な量を200μg DNAとした。540μLのPEI(1mg/mL)を添加した後、溶液を15秒間ボルテックスし、室温で10分間インキュベートした。その後、細胞をDNA/PEI溶液と混合し、500mL振盪フラスコに移し、5%CO雰囲気および165rpmでの振盪でインキュベーター中、37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション後、160mMの補足物を含むExcell培地を添加し、細胞を24時間培養した。この時点で、バルプロ酸濃度は1mMである(培地中に、5g/L PepSoyおよび6mM L-グルタミンも存在する)。トランスフェクションの24時間後、細胞に、12%最終体積(24mL)のFeed7および3g/Lグルコース(500g/Lストックから1.2mL)を補足した。7日間の培養後、細胞上清を2000~3000×gで45分間の遠心分離によって回収した。溶液を滅菌濾過し(0.22μmフィルター)、アジ化ナトリウムを補足して最終濃度0.01%(w/v)にし、4℃で維持した。
【0325】
抗ヒトOX40、抗ヒトEpCAM分子のアフィニティークロマトグラフィーのために、上清を、30mL 20mMクエン酸ナトリウム、20mMリン酸ナトリウム、pH7.5で平衡化したProtA MabSelect Sureカラム(CV=5mL、GE Healthcare)にロードした。6~10カラム体積の20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウムを含有するバッファー、pH7.5で洗浄することによって、未結合タンパク質を除去した。8CVの20mMクエン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウム、100mMグリシン、pH3.0で段階溶出を使用して、結合タンパク質を溶出した。
【0326】
抗マウスOX40、抗マウスEpCAM分子のアフィニティークロマトグラフィーのために、上清を、30mL 1Mグリシン、0.3M塩化ナトリウム、pH8.6で平衡化したProtA MabSelect Sureカラム(CV=5mL、GE Healthcare)にロードした。6~10カラム体積の平衡化バッファーで洗浄することによって、未結合タンパク質を除去した。20~100%の20mMクエン酸ナトリウム、0.3M NaCl、0.01%Tween pH2.5からの勾配溶出を使用して、15CVで結合タンパク質を溶出した。
【0327】
抗ヒトOX40、抗ヒトEpCAM分子と抗マウスOX40、抗マウスEpCAM分子の両方について、1/10(v/v)の0.5M NaHPO、pH8.0を添加することによって、回収した画分のpHを調整した。タンパク質を濃縮し、20mMヒスチジン、140mM NaCl、0.01%Tween20、pH6.0で平衡化したHiLoad Superdex 200カラム(GE Healthcare)にロードする前に濾過した。
【0328】
アミノ酸配列に基づいて計算したモル吸光係数を使用して、280nmでODを測定することによって、精製二重特異性四価4+1および4+2コンストラクトのタンパク質濃度を決定した。LabChipGXII(Caliper)を使用して、還元剤(Invitrogen、米国)の存在および非存在下で、CE-SDSによって二重特異性コンストラクトの純度および分子量を分析した。25℃で25mM K2HPO4、125mM NaCl、200mM L-アルギニン一塩酸塩、0.02%(w/v)NaN3、pH6.7泳動バッファーで平衡化したTSKゲルG3000SW XL分析サイズ排除カラム(Tosoh)を使用して、二重特異性コンストラクトの凝集体含量を分析した。
表19. 二重特異性、四価抗OX40、抗EpCAM IgG1 4+1および4+2コンストラクトの生化学分析
【0329】
2.3 抗OX40、抗EpCAM 4+1および4+2コンストラクトの凝集温度の決定
全てのフォーマットを直接比較するために、静的光散乱(SLS)および印加した温度応力に応じた固有タンパク質蛍光を測定することによって、熱安定性を監視した。1mg/mlのタンパク質濃度の30μgの濾過タンパク質試料を2連でOptim 2機器(Avacta Analytical Ltd)に適用した。温度を0.1℃/分で25℃から85℃に傾斜して、半径および総散乱強度を回収した。固有タンパク質蛍光を決定するために、試料を266nmで励起させ、発光を275nm~460nmで回収した。
表20. 二重特異性、抗OX40、抗EpCAM 4+1および4+2コンストラクトについての凝集温度
【0330】
実施例3
マウスOX40およびマウス上皮細胞接着分子(EpCAM)を標的化する二重特異性抗体の結合
3.1 マウスOX40発現細胞:ナイーブ脾細胞および活性化脾細胞への結合の分析
マウス脾臓をC57Bl/6雌マウスから得て、3mL DPBSに回収した。注射器の背面を使用して70μm細胞ストレーナー上で脾臓をすりつぶすことによって、単一細胞懸濁物を作製した。10%熱不活性化ウシ胎児血清(Gibcoカタログ番号16140-071、ロット番号1797306A)、1%(v/v)GlutaMAXI(GIBCO by Life Tehnologies、カタログ番号35050038)、1mMピルビン酸ナトリウム(SIGMA、カタログ番号S8636)、1%(v/v)非必須アミノ酸(SIGMA、カタログ番号M7145)および50μM β-メルカプトエタノール(SIGMA、M3148)を補足したRPMI 1640培地(Gibco by Life Technology、カタログ番号42401-042)からなる10mlのT細胞培地でフィルターを洗浄し、細胞を350×gで4℃で7分間遠心分離した。遠心分離後、細胞ペレットを6mlの1×溶解バッファー(BD Pharm Lyse(商標):濃縮(10×)塩化アンモニア系溶解試薬、BD Biosciences、カタログ番号555899)に再懸濁し、室温で3分間インキュベートした。10mlのT細胞培地を添加することによって、赤血球溶解を停止した。細胞をX-Vivo 15培地(Lonza、カタログ番号04-744Q)で1回洗浄し、10mlのX-Vivo 15培地に再懸濁し、70μm細胞ストレーナーを通して濾過してデブリを除去した。
【0331】
脾細胞を、6ウェルプレート中110個細胞/mLの密度で抗CD3[クローン145-2C11、BD Bioscience、カタログ番号553057 1μg/mL]および抗CD28[クローン37.51、Biolegend、カタログ番号102102 1μg/mL]抗体を含有するX-Vivo 15培地中で活性化してマウスOX40を上方制御し、37℃、5%COで2日間インキュベートした。OX40を検出するために、ナイーブ脾細胞と活性化脾細胞を混合した。ナイーブ脾細胞を活性化脾細胞と区別することを可能にするために、eFluor670細胞増殖色素(eBioscience、カタログ番号65-0840-85)を使用して結合アッセイ前にナイーブ細胞を標識した。
【0332】
標識のために、細胞を収集し、予熱した(37℃)DPBSで洗浄し、DPBS中1×10個細胞/mLの細胞密度に調整した。eFluor670細胞増殖色素(eBioscience、カタログ番号65-0840-85)を、最終濃度2.5μMおよび最終細胞密度DPBS中0.5×10個細胞/mLで、ナイーブ脾細胞の懸濁物に添加した。次いで、細胞を暗所中、室温で10分間インキュベートした。標識反応を停止するために、4mLの熱不活性化FBSを添加し、細胞をT細胞培地で3回洗浄した。次いで、1×10個の静止eFluor670標識脾細胞と1×10個の非標識活性化脾細胞の混合物を、丸底懸濁96ウェルプレート(Greiner bio-one、cellstar、カタログ番号650185)のウェルに添加した。
【0333】
生細胞と死細胞を識別するために、試料を、室温で10分間、DPBS中Zombie Aqua Viability Dye(Biolegend、カタログ番号423102)で染色した。次いで、細胞をFACSバッファーで1回洗浄し、その後、滴定抗OX40抗原結合分子を含有する50μL/ウェル 4℃ FACSバッファー中、暗所中、4℃で90分間染色した。過剰なFACSバッファーで3回洗浄した後、細胞を、蛍光標識抗マウスCD4(クローンGK1.5、ラットIgG2b、κ、BioLegend、カタログ番号100438)、抗マウスCD8(クローン53-6.7、ラットIgG2a、κ、BioLegend、カタログ番号100748)およびPEコンジュゲートAffiniPure抗マウスIgG Fcγ断片特異的ヤギIgG F(ab’)2断片(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号115-6-71)の混合物を含有する25μL/ウェル 4℃ FACSバッファー中、暗所で、4℃で30分間染色した。
【0334】
プレートを最後に85μL/ウェルのFACSバッファーに再懸濁し、4レーザーLSR-IIサイトメーター(BD Bioscience DIVAソフトウェアを使用)を使用して同じ日に取得した。
【0335】
図3A図3Dに示されるように、OX40特異性抗原結合分子のいずれも、OX40について陰性の静止マウスCD4+T細胞またはCD8+T細胞への結合を示さなかった。対照的に、OX40特異的抗原結合分子の全てが、OX40を発現する活性化CD8+またはCD4+T細胞への結合を示した。マウスOX40についての四価結合を有する異なる二重特異性抗マウスOX40分子が、OX40について同等の結合強度を示した(EC50値 表21)。muEpCAM結合部分の存在は、4+1 OX40分子のOX40結合に対して最小限の影響しか有さなかった(三角形と白丸を比較)。
【0336】
3.2 マウスEpCAM発現細胞およびEpCAM陰性腫瘍細胞への結合
マウスEpCAMを安定的に発現するマウスEpCAM陽性CT26muEpCAM cl25細胞を使用して、細胞表面マウスEpCAMへの結合を分析した。マウスFAPを安定的に発現するmuEpCAM陰性細胞株CT26muFAPへの結合を決定することによって、結合の特異性を分析した。
【0337】
抗原結合分子の結合を分析するために、0.5×10個のCT26muEpCAMまたは0.5×10個のCT26muFAP細胞を、丸底懸濁細胞96ウェルプレート(Greiner bio-one、Cellstar、カタログ番号650185)のウェルに添加した。生細胞と死細胞を識別するために、試料を、室温で10分間、PBS中Zombie Aqua Viability Dye(Biolegend、カタログ番号423102)で染色した。次いで、細胞をFACSバッファーで1回洗浄し、その後、滴定抗OX40抗原結合分子を含有する50μL/ウェル 4℃ FACSバッファー(DPBS(Gibco by Life Technologies、カタログ番号14190326)w/BSA(0.1%v/w、Sigma-Aldrich、カタログ番号A9418)中、暗所中、4℃で90分間染色した。過剰なFACSバッファーで3回洗浄した後、細胞を、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)コンジュゲートAffiniPure抗マウスIgG Fcγ断片特異的ヤギIgG F(ab’)2断片(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号115-096-071)を含有する25μL/ウェル 4℃ FACSバッファー中、暗所中、4℃で30分間染色した。
【0338】
プレートを最後に85μL/ウェル FACSバッファーに再懸濁し、4レーザーLSR-IIサイトメーター(BD Bioscience DIVAソフトウェアを使用)を使用して同じ日に取得した。
【0339】
図4Aおよび図4Bに示されるように、マウスEpCAM標的化抗原結合分子は、muEpCAM陰性CT26muFAP細胞への結合を示さなかった一方、マウスEpCAM結合ドメインを含む分子は、CT26muEpCAM細胞への結合を示した。親二価抗muEpCAM抗体(muEpCAM IgG;白三角形)は、CT26muEmCAM細胞上のmuEpCAMへの強力な結合を示し、マウスEpCAMについて一価結合を有する4+1分子(黒三角形)は、二価IgGと比較すると、比較的減少した結合能力を示した。しかしながら、VH/VL融合は結合を妨げなかった。
【0340】
活性化マウスCD4TおよびCD8T細胞ならびにmuEpCAM陽性腫瘍細胞への結合のEC50値を表21に要約する。
表21. 抗マウスOX40、抗マウスEpCAM抗原結合分子とマウスOX40またはマウスEpCAMを発現する細胞の結合についてのEC50値
【0341】
実施例4
マウスOX40およびマウスEpCAMを標的化する二重特異性抗原結合分子の生物活性
4.1 最適以下TCR誘因マウス脾細胞のOX40媒介共刺激および細胞表面マウスEpCAMによる超架橋
マウスEpCAM標的化四価抗OX40抗原結合分子が静止マウス脾細胞の最適以下TCR刺激をレスキューする能力を分析した。CT26muEpCAM cl25細胞を、抗体を架橋するアッセイに使用した。
【0342】
新たに単離したマウス脾細胞は、(1)静止OX40陰性CD4およびCD8T細胞、ならびに(2)細胞表面上に種々のFc-γ受容体分子を有する抗原提示細胞、例えばB細胞および単球を含有している。抗マウスCD3抗体(クローン145-2C11、BD Bioscience、カタログ番号553057)は、そのFc部分で提示Fc-γ受容体分子に結合し、静止OX40陰性CD4およびCD8T細胞上でのTCR活性化延長を媒介することができる。次いで、これらの細胞は数時間以内にOX40を発現し始める。OX40に対する機能的アゴニスト化合物は、活性化CD8およびCD4T細胞上に存在するOX40受容体を介してシグナル伝達し、TCR媒介刺激を支持することができる。
【0343】
静止CFSE標識マウス脾細胞を、照射CT26muEpCAM cl25細胞の存在下で、最適以下濃度の抗CD3抗体で3日間刺激し、OX40抗原結合分子を滴定した。T細胞生存および増殖に対する効果を、フローサイトメトリーによって生細胞中でFSC免疫、総細胞数およびCFSE希釈を監視することによって分析した。さらに、細胞をT細胞活性化マーカーCD25に対する蛍光標識抗体で共染色した。
【0344】
細胞解離バッファー(Invitrogen、カタログ番号13151-014)を使用して37℃で10分間、CT26muEpCAM cl25細胞を収集した。細胞を、DPBSで1回洗浄し、4,500RADの線量でx線照射器で照射して、腫瘍細胞株による脾細胞の後の過剰増殖を防止した。インキュベーター(SteriCyclei160)中37℃および5%COで一晩、滅菌96ウェル丸底接着組織培養プレート(TPP、カタログ番号92097)のウェル中、X-Vivo 15培地で、1ウェル当たり0.210個細胞の密度で照射細胞を培養した。
【0345】
マウス脾細胞を上記のように単離し、以下の通りCFSEで標識した。新たに単離したPBMCを予熱した(37℃)DPBSで洗浄し、DPBS中2×10個細胞/mLの細胞密度に調整した。Cell Trace CFSE増殖色素(Thermofisher、カタログ番号C34554)を、最終濃度0.2μMおよび最終細胞密度DPBS中1×10個細胞/mLで脾細胞の懸濁物に添加した。次いで、細胞を暗所中、37℃/5%COで10分間インキュベートした。標識反応を停止するために、20mLの熱不活性化FBSを添加し、細胞をT細胞培地で3回洗浄し、最後にX-Vivo 15培地に再懸濁した。脾細胞増殖およびその生存能力の維持に最適のアッセイ培地として選択されたので、X-Vivo 15培地で全ての抗体希釈を行った。
【0346】
次いで、CFSE標識脾細胞を、1ウェル当たり110個細胞の密度でウェルに添加した。抗マウスCD3抗体(クローン145-2C11)を最終濃度0.5μg/mlで添加し、抗OX40分子を指示される濃度で添加した。細胞を、インキュベーター(SteriCyclei160)で、5%CO雰囲気中37℃で3日間活性化した。
【0347】
生細胞と死細胞を識別するために、試料を、室温で10分間、PBS中Zombie Aqua Viability Dye(Biolegend、カタログ番号423102)で染色した。次いで、細胞をFACSバッファーで1回洗浄し、その後、4℃で20分間、蛍光色素コンジュゲート抗体抗マウスCD4(クローンGK1.5、ラットIgG2b、κ、BioLegend、カタログ番号100438)、抗マウスCD8(クローン53-6.7、ラットIgG2a、κ、BioLegend、カタログ番号100748)および抗マウスCD25(クローン3C7、ラットIgG2b、κ BioLegend、カタログ番号101912)で表面染色した。細胞ペレットをFACSバッファーで1回洗浄し、85μL/ウェルのFACSバッファーに再懸濁し、4レーザーLSR-IIサイトメーター(BD Bioscience DIVAソフトウェアを使用)を使用して同じ日に取得した。
【0348】
結果を図5A図5Dおよび図6A図6Dに示す。CT26muEpCAM細胞の存在下での培養によるOX40に結合した抗原結合分子の超架橋は、成熟(CD4およびCD8細胞のサイズの増加によって証明される)(図5Aおよび図5B)、および細胞増殖(図5Cおよび図5D)を強力に促進し、マウスCD4およびCD8T細胞で活性化(CD25)表現型増強(図6A図6D)を誘導した。非標的化4+1対照分子は最小限の活性しか示さず、架橋の重要性を実証した。対照muEpCAM IgGは、抗CD3刺激単独と比較して追加の活性を示さなかった。
【0349】
結果は、OX40受容体オリゴマーの細胞表面固定化が、四価抗マウスOX40抗原結合分子の最適アゴニスト活性を得るために重要であることを示唆している。
【0350】
実施例5
ヒトOX40およびヒト上皮細胞接着分子(EpCAM)を標的化する二重特異性抗体の結合
5.1 ヒトOX40発現細胞:ナイーブPBMCおよび活性化PBMCへの結合の分析
バフィーコートをチューリッヒ献血センターから得た。新鮮な末梢血単核細胞(PBMC)を単離するために、バフィーコートを等体積のDPBS(Gibco by Life Technologies、カタログ番号14190326)で希釈した。50mLポリプロピレン遠心管(TPP、カタログ番号91050)に、15mLのHistopaque 1077(SIGMA Life Science、カタログ番号10771、ポリスクロースおよびジアトリゾ酸ナトリウム、密度1.077g/mLに調整)を供給し、バフィーコート溶液をHistopaque 1077の上に積層した。管を、低加速で中断なしに、室温で、400×gで30分間遠心分離した。その後、PBMCを中間相から回収し、DPBSで3回洗浄し、10%ウシ胎児血清(FBS、Gibco by Life Technology、カタログ番号16000-044、ロット941273、ガンマ線照射、マイコプラズマフリー、56℃で35分間熱不活性化)、1%(v/v)GlutaMAX I(GIBCO by Life Technologies、カタログ番号35050038)、1mMピルビン酸ナトリウム(SIGMA、カタログ番号S8636)、1%(v/v)MEM非必須アミノ酸(SIGMA、カタログ番号M7145)および50μM β-メルカプトエタノール(SIGMA、M3148)を補足したRPMI 1640培地(Gibco by Life Technology、カタログ番号42401-042)からなるT細胞培地に再懸濁した。
【0351】
単離直後(静止ヒトPBMCへの結合の分析用)、またはT細胞の細胞表面上でのヒトOX40発現の高発現をもたらす刺激後(活性化ヒトPBMCへの結合の分析用)の実験にPBMCを使用した。刺激のために、ナイーブPBMCを、37℃および5%COで、6ウェル組織培養プレートのウェルにおいて、400U/mLのプロロイキン(Novartis)および2μg/mLのPHA-L(Sigma-Aldrich、L2769-10)を供給したT細胞培地中で2日間培養した。
【0352】
OX40を検出するために、ナイーブヒトPBMCと活性化ヒトPBMCを混合した。ナイーブヒトPBMCを活性化ヒトPBMCと識別することを可能にするために、ナイーブ細胞を、eFluor670細胞増殖色素(eBioscience、カタログ番号65-0840-85)を使用して結合アッセイの前に標識した。
【0353】
標識のために、細胞を収集し、予熱した(37℃)DPBSで洗浄し、細胞密度DPBS中1×10個細胞/mLに調整した。eFluor670細胞増殖色素(eBioscience、カタログ番号65-0840-85)を、最終濃度2.5μMおよび最終細胞密度DPBS中0.5×10個細胞/mLで、ナイーブヒトPBMCの懸濁物に添加した。次いで、細胞を暗所中、室温で10分間インキュベートした。標識反応を停止するために、4mLの熱不活性化FBSを添加し、細胞をT細胞培地で3回洗浄した。次いで、1×10個の静止eFluor670標識ヒトPBMCと1×10個の非標識活性化ヒトPBMCの混合物を、丸底懸濁96ウェルプレート(Greiner bio-one、Cellstar、カタログ番号650185)の各ウェルに添加した。
【0354】
生細胞と死細胞を識別するために、試料を、室温で10分間、DPBS中Zombie Aqua Viability Dye(Biolegend、カタログ番号423102)で染色した。次いで、細胞をFACSバッファーで1回洗浄し、その後、滴定抗OX40抗原結合分子を含有する50μL/ウェルの4℃冷却FACSバッファー中、暗所中、4℃で90分間染色した。過剰なFACSバッファーで3回洗浄した後、細胞を、蛍光標識抗ヒトCD4(クローンRPA-T4、マウスIgG1 k、BioLegend、カタログ番号300532)、抗ヒトCD8(クローンRPa-T8、マウスIgG1k、BioLegend、カタログ番号3010441)およびフルオレセインイソチオシアネート(FITC)コンジュゲートAffiniPure抗ヒトIgG Fcγ断片特異的ヤギIgG F(ab’)2断片(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号109096098)の混合物を含有する25μL/ウェル 4℃ FACSバッファー中、暗所中、4℃で30分間染色した。
【0355】
次いで、細胞を85μL/ウェルのFACSバッファーに再懸濁し、4レーザーLSR-IIサイトメーター(BD Bioscience DIVAソフトウェアを使用)を使用して同じ日に取得した。
【0356】
図7A図7Dに示されるように、OX40に特異的な抗原結合分子のいずれも、細胞表面でOX40を発現していない静止ヒトCD4T細胞またはCD8T細胞に結合しなかった。対照的に、二重特異性抗OX40、抗EpCAM分子の全てが、OX40を発現する活性化CD8またはCD4T細胞への結合を示した。CD4T細胞への結合は、CD8+T細胞への結合よりもはるかに強力であった。活性化ヒトCD8T細胞は、活性化CD4T細胞による発現のレベルよりもはるかに低レベルでOX40を発現する。OX40についての発現レベルは刺激の動態および強度に依存し、条件がここではCD4T細胞上でのOX40の発現について最適化されていたが、CD8T細胞については最適化されていなかった。4+1および4+2フォーマットにおける四価、二重特異性抗OX40抗原結合分子は、OX40発現細胞との比較できる結合強度を示した(そのEC50値によって示される、表22参照)。huEpCAM結合部分の存在は、(単一特異性、四価、抗OX40非標的化対照と比較して)4+1 OX40バインダーのOX40結合に影響を及ぼさなかった。
【0357】
5.2 ヒトEpCAM発現腫瘍細胞およびEpCAM陰性腫瘍細胞への結合
huEpCAM陽性KATO-III細胞(ATCC HTB-103)を使用して、二重特異性抗ヒトOX40、抗ヒトEpCAM抗原結合分子が細胞表面で発現されたヒトEpCAMに結合する能力を分析した。ヒトEpCAM陰性細胞株A549 NucLight Red(Essen Bioscienceカタログ番号4491)への結合を分析することによって、結合の特異性を決定した。A549細胞は赤色タンパク質を発現し、KATO-IIIとA549 NLR細胞を識別するのを可能にした。
【0358】
抗ヒトEpCAM抗体(クローンEBA-1、BDカタログ番号347198)を使用して、腫瘍細胞上のhuEpCAMの発現を分析した。ヒトEpCAMはKATO-III細胞上で高レベルで発現され、NIH/3T3 huEpCAMクローン44細胞(細胞表面でヒトEpCAMを安定的に発現している)上でより低い程度に発現されたが、HeLa_huOX40_NFkB_Luc1細胞上では発現されなかった(図8)。
【0359】
抗原結合分子とヒトEpCAM陽性細胞およびヒトEpCAM陰性細胞の結合を決定するために、0.5×10個のKATO-III細胞および0.5×10個のA549 NLR細胞を、丸底懸濁細胞96ウェルプレート(Greiner bio-one、Cellstar、カタログ番号650185)のウェルに添加した。生細胞と死細胞を識別するために、試料を、室温で10分間、PBS中Zombie Aqua Viability Dye(Biolegend、カタログ番号423102)で染色した。次いで、細胞をFACSバッファーで1回洗浄し、その後、滴定抗OX40抗原結合分子を含有する50μL/ウェル 4℃ FACSバッファー(DPBS(Gibco by Life Technologies、カタログ番号14190326)w/BSA(0.1%v/w、Sigma-Aldrich、カタログ番号A9418)中、暗所中、4℃で90分間染色した。過剰なFACSバッファーで3回洗浄した後、細胞を、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)コンジュゲートAffiniPure抗ヒトIgG Fcγ断片特異的ヤギIgG F(ab’)2断片(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号109096098)を含有する25μL/ウェル 4℃ FACSバッファー中、暗所中、4℃で30分間染色した。
【0360】
次いで、細胞を85μL/ウェルのFACSバッファーに再懸濁し、4レーザーLSR-IIサイトメーター(BD Bioscience DIVAソフトウェアを使用)を使用して同じ日に取得した。
【0361】
結果を図9Aおよび図9Bに示す。ヒトEpCAM標的化分子とhuEpCAM陰性A549 NLR細胞の結合は観察されなかった(図9B)。親二価抗ヒトEpCAM抗体(クローン3-17l、Affitech)は、KATO-III細胞上で発現されたヒトEpCAMへの強力な結合を示した(図9A;白三角形)。二重特異性四価抗ヒトOX40、二価抗ヒトEpCAM 4+2分子は、親二価抗ヒトEpCAM抗体と比較して低下したレベルのKATO-III細胞への結合を示した(図9A;黒三角形と白三角形を比較)。二重特異性四価抗ヒトOX40、一価抗ヒトEpCAM 4+1分子とKATO-III細胞の結合は観察されず、この標的に対するVH/VL融合のフォーマット制約を示唆している。
【0362】
活性化ヒトCD4 TおよびCD8 T細胞ならびにhuEpCAM陽性腫瘍細胞への結合のEC50値を表22に要約する。
表22. 抗ヒトOX40、抗ヒトEpCAM抗原結合分子とヒトOX40またはヒトEpCAMを発現する細胞の結合についてのEC50
【0363】
実施例6
ヒトOX40およびヒトEpCAMを標的化する二重特異性抗原結合分子の生物活性
6.1 ヒトOX40およびレポーター遺伝子NF-κB-ルシフェラーゼを発現するHeLa細胞
Ox40とそのリガンドのアゴニスト結合は、核因子κB(NFκB)の活性化を介して下流シグナル伝達を誘導する(A.D.Weinbergら、J.Leukoc.Biol.2004、75(6)、962~972)。その表面上でヒトOX40を発現する組換えレポーター細胞株HeLa_huOX40_NFκB_Luc1を作製した。この細胞株は、NFκB感受性エンハンサーセグメントの制御下でルシフェラーゼ遺伝子を含むレポータープラスミドを抱える。OX40の結合および活性化はNFκBの用量依存性活性化を誘導し、次いでNFκBが核に移行し、ここでレポータープラスミドのNFκB感受性エンハンサーに結合して、ルシフェラーゼタンパク質の発現を増加させる。ルシフェラーゼは、ルシフェリン酸化を触媒して、オキシルシフェリンをもたらし、これが発光する。ルミノメーターを使用して光を検出および定量化することができる。よって、HeLa_huOX40_NFkB_Luc1レポーター細胞を使用して、抗OX40分子がNFκB活性化を誘導する能力を生理活性の尺度として分析することができる。
【0364】
37℃で10分間、細胞解離バッファー(Invitrogen、カタログ番号13151-014)を使用して、接着HeLa_huOX40_NFkB_LucI細胞を収集した。細胞をDPBSで1回洗浄し、MEM(Invitrogen、カタログ番号22561-021)、10%(v/v)熱不活性化FBS、1mMピルビン酸ナトリウムおよび1%(v/v)非必須アミノ酸を含むアッセイ培地中、細胞密度2×10に調整した。細胞を蓋付きの滅菌白色96ウェル平底組織培養プレート(Greiner bio-one、カタログ番号655083)に1ウェル当たり0.3×10個細胞の密度で播種し、インキュベーター(Hera Cell 150)中、5%CO雰囲気下、37℃で一晩インキュベートした。
【0365】
翌日、種々のOX40を標的化する滴定二重特異性抗原結合分子を含有するアッセイ培地を添加することによって、HeLa_huOX40_NFkB_Luc1細胞を5時間刺激した。生理活性に対する超架橋の効果を分析するために、二次抗体抗ヒトIgG Fcγ断片特異的ヤギIgG F(ab’)断片(Jackson ImmunoResearch、109-006-098)を含有する25μL/ウェルの培地を1:2比で添加した(一次抗OX40抗原結合分子より2倍多い二次抗体)。NIH/3T3huEpCAM cl44細胞を含有する25μL/ウェルの培地を3:1比で添加することによって(1ウェル当たり、レポーター細胞の3倍のEpCAM腫瘍細胞)、細胞表面ヒトEpCAM細胞によるコンストラクトの超架橋を試験した。
【0366】
インキュベーション後、アッセイ上清を吸引し、プレートをDPBSで2回洗浄した。製造業者の指示に従って、ルシフェラーゼ100アッセイシステムおよびレポーター溶解バッファー(共にPromega、カタログ番号E4550およびカタログ番号E3971)を使用して、発光の定量化を行った。手短に述べれば、1ウェル当たり30μLの1×溶解バッファーを添加することによって、細胞を-20℃で10分間溶解した。細胞を37℃で20分間解凍した後、1ウェル当たり90μLのルシフェラーゼアッセイ試薬を添加した。全ての波長を回収するためにいかなるフィルターも使用することなく、500msの積分時間を使用して、TECAN SPARK 10Mプレートリーダーで発光を直ちに定量化した。発せられた相対光単位(RLU)を、HeLa_huOX40_NFkB_Luc1細胞の基礎発光によって補正し、Prism6(GraphPad Software、米国)を使用して対数一次抗体濃度に対してプロットした。生得のシグモイド曲線用量反応を使用して、曲線をデータに当てはめた。全てのフォーマットをより良く比較するために、それぞれの用量反応曲線の曲線下面積(AUC)を、各コンストラクトのアゴニスト能力についてのマーカーとして定量化した(図10D)。
【0367】
図10に示されるように、抗OX40抗原結合分子の全てが、限定されたNFkB活性化を誘導した(図10A)。抗ヒトFc特異的二次抗体による架橋は、標的化部分と独立に生理活性を強力に増強した(図10B)。二重特異性、四価抗ヒトOX40、二価抗ヒトEpCAM 4+2分子を使用した場合にのみ、ヒトEpCAM発現腫瘍細胞はNFκB媒介ルシフェラーゼ活性化の誘導を増加させ、二重特異性、四価抗ヒトOX40、一価抗ヒトEpCAM 4+1分子を使用した場合には増加させなかった(図10Cおよび図10D参照);これは、二重特異性、四価抗ヒトOX40、一価抗ヒトEpCAM 4+1分子が、ヒトEpCAM発現細胞への結合を示さないという知見と一致する(図9A参照)。
【0368】
これらの結果は、EpCAMによる超架橋およびOX40についての高い結合価がOX40アゴニスト活性にとって重要な決定因子であることを示している。
【0369】
6.2 最適以下TCR誘因静止ヒトPBMCのOX40媒介共刺激および細胞表面ヒトEpCAMによる超架橋
図6.1および図10に示されるように、huEpCAM+腫瘍細胞の添加は、OX40受容体の強力なオリゴマー化を提供することによって、huEpCAM標的化四価抗OX40抗原結合分子により、ヒトOX40陽性レポーター細胞株でNFκB活性化を強力に増加させることができる。EpCAM標的化四価抗OX40抗原結合分子を、ヒトEpCAM発現KATO-IIIまたはNIH/3T3huEpCAMクローン44細胞の存在下で、静止ヒトPBMCの最適以下TCR刺激をレスキューするその能力について分析した。
【0370】
ヒトPBMC調製物は、(1)静止、OX40陰性CD4およびCD8T細胞、ならびに(2)その細胞表面上に種々のFc受容体分子を有する抗原提示細胞、例えばB細胞および単球を含有する。ヒトIgG1アイソタイプの抗ヒトCD3抗体は、そのFcを通して、Fc-γ受容体分子に結合し、静止OX40陰性CD4およびCD8T細胞上でのTCR活性化延長を誘因する。次いで、これらの細胞は、数時間以内にOX40を発現し始める。OX40に対する機能的アゴニスト化合物は、活性化CD8+およびCD4T細胞上に存在するOX40受容体を介してシグナル伝達し、TCR媒介刺激を支持することができる。
【0371】
静止CFSE標識ヒトPBMCを、照射KATO-IIIまたはNIH/3T3huEpCAM cl44細胞の存在下で、最適以下濃度の抗CD3抗体で5日間刺激し、抗OX40抗原結合分子を滴定した。T細胞生存および増殖に対する効果を、フローサイトメトリーによって生細胞中の総細胞数およびCFSE希釈を監視することによって分析した。さらに、細胞を、T細胞活性化マーカーCD25に対する蛍光標識抗体で共染色した。
【0372】
37℃で10分間、細胞解離バッファー(Invitrogen、カタログ番号13151-014)を使用して、KATO-IIIおよびNIH/3T3huEpCAM cl44細胞を収集した。細胞をDPBSで1回洗浄した。KATO-IIIおよびNIH/3T3huEpCAM cl44細胞を、4,500RADの線量を使用してx線照射器で照射して、後の腫瘍細胞株によるヒトPBMCの過剰増殖を防いだ。照射細胞を、インキュベーター(SteriCyclei160)中、37℃および5%COで一晩、滅菌96ウェル丸底接着組織培養プレート(TPP、カタログ番号92097)で、T細胞培地中1ウェル当たり0.210個細胞の密度で培養した。
【0373】
ヒトPBMCをficoll密度遠心分離によって単離し、以下の通りCFSEで標識した。新たに単離したPBMCを予熱した(37℃)DPBSで洗浄し、細胞密度DPBS中2×10個細胞/mLに調整した。Cell Trace CFSE増殖色素(ThermoFisher、カタログ番号C34553)を、最終濃度0.2μMおよび最終細胞密度DPBS中1×10個細胞/mLで静止ヒトPBMCの懸濁物に添加した。次いで、細胞を暗所中、37℃および5%COで10分間インキュベートした。標識反応を停止するために、20mLの熱不活性化FBSを添加し、細胞をT細胞培地で3回洗浄した。次いで、細胞を、1ウェル当たり0.610個細胞の密度で各ウェルに添加した。最終濃度10nMの抗ヒトCD3抗体(クローンV9、ヒトIgG1)、および指示される抗OX40抗原結合分子を指示される濃度で添加した。細胞をインキュベーター(SteriCyclei160)中、37℃および5%COで5日間活性化した。生細胞と死細胞を識別するために、試料を、室温で10分間、PBS中Zombie Aqua Viability Dye(Biolegend、カタログ番号423102)で染色した。次いで、細胞をFACSバッファーで1回洗浄し、その後、4℃で20分間、蛍光色素コンジュゲート抗体抗ヒトCD4(クローンRPA-T4、BioLegend、カタログ番号300532)、抗CD8(クローンRPA-T8、BioLegend、カタログ番号3010441)および抗CD25で表面染色した。その後、細胞をFACSバッファーで1回洗浄し、85μL/ウェルのFACSバッファーに再懸濁し、4レーザーLSR-IIサイトメーター(BD Bioscience DIVAソフトウェアを使用)を使用して同じ日に取得した。
【0374】
実験の結果を図11図14に示す。
【0375】
二重特異性、四価抗ヒトOX40、二価抗ヒトEpCAM(4+2)分子のKATO-III細胞による超架橋は、ヒトCD4およびCD8T細胞の増殖および成熟を強力に促進し(図11;黒三角形)、活性化(CD25)表現型増強を誘導した(図12;黒三角形)。他方、二重特異性、四価抗ヒトOX40、一価抗ヒトEpCAM(4+1)分子は、単一特異性、四価抗ヒトOX40、非標的化(4+1)対照分子の活性と類似の活性を示した(図11および図12;白丸と比較した黒丸)。この知見は、二重特異性、四価抗ヒトOX40、一価抗ヒトEpCAM4+1分子がヒトEpCAM発現細胞への結合を示さないという知見と一致していた(図9A参照)。
【0376】
NIH/3T3huEpCAM cl44細胞を使用して、二重特異性、四価抗ヒトOX40、二価抗ヒトEpCAM(4+2)分子を架橋した場合に、同様の知見が得られた。二重特異性、四価抗ヒトOX40、二価抗ヒトEpCAM(4+2)分子は、ヒトCD4およびCD8T細胞の増殖および成熟を強力に促進し(図13;黒三角形)、活性化(CD25)表現型増強を誘導した(図14;黒三角形)。これらの実験では、CD4およびCD8T細胞が、5日後により急速に増殖し、抗原結合分子による堅牢な追加の効果を見ることがより困難になった。
【0377】
これらの結果は、T細胞での最適なOX40アゴニズムのために、OX40の十分なオリゴマー化が必要なだけでなく、さらに、OX40オリゴマーの細胞表面固定化も必要であることを示唆している。
図1
図2A-B】
図3A-D】
図4A-B】
図5A-D】
図6A-D】
図7A-D】
図8
図9A-B】
図10A-D】
図11A-D】
図12A-D】
図13A-D】
図14A-D】
【配列表】
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