(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】ポリマー体及び金属めっきを含む物品
(51)【国際特許分類】
C23C 18/16 20060101AFI20221219BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221219BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20221219BHJP
C08L 39/04 20060101ALI20221219BHJP
C23C 18/24 20060101ALI20221219BHJP
C23C 18/32 20060101ALI20221219BHJP
B32B 15/088 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C23C18/16 A
C08K3/013
C08L77/00
C08L39/04
C23C18/24
C23C18/32
B32B15/088
(21)【出願番号】P 2019565300
(86)(22)【出願日】2018-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2018062964
(87)【国際公開番号】W WO2018215303
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ヴァグナー,ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クニーゼル,ジモン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ウルバン,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,フランク
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-162084(JP,A)
【文献】特開2005-231219(JP,A)
【文献】特表2008-508399(JP,A)
【文献】特表平06-506267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00-20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー体及び金属めっきを含む物品であって、前記金属めっきが前記ポリマー体に付着され、且つ前記ポリマー体が成分として、
(A)少なくとも1種のポリアミド、
(B)少なくとも1種の充填剤、
(C)少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー、及び
(D)任意に少なくとも1種の添加剤
を含み、以下の工程、
i)前記成分(A)から(D)を含むポリマー体を提供する工程、
ii)少なくとも1種の酸でめっきされる前記ポリマー体の少なくとも1つの表面をエッチングする工程、
iii)少なくとも1種のめっき触媒を含む第1の金属層を、工程ii)の少なくとも1つのエッチングした表面上に析出させる工程、
iv)第2の金属層を、無電解金属析出により施与する工程、及び
v)少なくとも1種のさらなる金属層を、電着により施与する工程、
を含む方法によって製造される、物品。
【請求項2】
前記少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)が式(I)
【化1】
(式中、
nは、3~12であり、
mは、0~3であり、
R
1は、C
1~C
10-アルキル、C
2~C
10-アルケニル、アリール又はアラルキルであり、
R
2、R
3及びR
4は、それぞれ互いに独立して、水素、C
1~C
10-アルキル、C
2~C
10-アルケニル、アリール又はアラルキルである)
の重合単位を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)が、N-ビニルピロリドン(N-ビニル-2-ピロリドン)、N-ビニルピペリドン(N-ビニル-2-ピペリドン)及びN-ビニルカプロラクタムからなる群から選択されるN-ビニルラクタムの重合単位を含む、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項4】
前記少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)が、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピペリドン及びN-ビニルカプロラクタムからなる群から選択されるN-ビニルラクタムと、1-ビニルイミダゾール又は酢酸ビニルとの共重合単位を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)が、2,500~250,000g/モルの質量平均分子量M
wを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記ポリマー体が、
前記ポリマー体の総質量に基づいて、
35~85質量%の前記少なくとも1種のポリアミド(A)、
14.9~55質量%の前記少なくとも1種の充填剤(B)、
0.1~10質量%の前記少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)、及び
0~8質量%の前記少なくとも1種の添加剤(D)、
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記少なくとも1種のポリアミド(A)が、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド7、ポリアミド8、ポリアミド9、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド613、ポリアミド1212、ポリアミド1313、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミドMXD6、ポリアミド6I、ポリアミド6-3-T、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、ポリアミド66/6/610、ポリアミド6I/6T、ポリアミドPACM12、ポリアミド6I/6T/PACM、ポリアミド12/MACMI、ポリアミド12/MACMT及びポリアミドPDA-Tからなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記少なくとも1種の充填剤(B)が、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属ケイ酸塩、金属繊維、アスベスト、セラミック繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、二酸化チタン、酸化アルミニウム、マイカ、タルク、硫酸バリウム、石膏、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、粘土、シリカ、シリカ-アルミナ、アルミナ、セリサイト、カオリン、珪藻土、マグネシウムカーボネート、長石、珪石、カーボンブラック、ガラスビーズ、シラスバルーン、べんがら、酸化亜鉛、ウォラストナイト及びサイロイドからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
前記少なくとも1種の充填剤(B)が粒子形態であり、0.1~50μmの平均粒径を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
前記金属めっきが、銅、ニッケル、コバルト、パラジウム、クロム及びスズからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
前記少なくとも1種の添加剤が、潤滑剤、酸化防止剤、着色剤、色安定剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線に対する耐性を増加させる薬剤、耐熱性を改善する安定剤、離型剤、核剤及び可塑剤からなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の物品
。
【請求項12】
工程ii)の少なくとも1種の酸が、クロム酸、塩酸、フッ化水素酸、リン酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、酢酸及びメタンスルホン酸からなる群から選択される、請求項
1~11のいずれか一項に記載の
物品。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載
の物品を、自動車用途におけるドアハンドルとして使用する方法。
【請求項14】
成分として
(A)少なくとも1種のポリアミド、
(B)少なくとも1種の充填剤、
(C)少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー、及び
(D)任意に少なくとも1種の添加剤
を含むポリマー体を、金属めっきした物品の製造
方法における前記金属めっきした物品の一部として使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー体及び金属めっきを含む物品に関する。この物品において、金属めっきをポリマー体に付着させ、そしてそのポリマー体は成分として、少なくとも1種のポリアミド(A)、少なくとも1種の充填剤(B)、少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)、及び任意に、少なくとも1種の添加剤(D)を含む。本発明はまた、この物品を製造する方法、及びこの物品を、例えば自動車用途におけるドアハンドルとして使用する方法に関する。さらに、本発明は、金属めっきした物品の製造にこのポリマー体を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の、家庭の機器、電子及び多くの他の産業では、熱可塑性ポリマー体の機能的及び/又は装飾的な金属めっきの需要が増加している。通常は、これらのポリマー体は、銅、ニッケル、クロム、及びそれらの組み合わせで電気めっきされ、機能的及び/又は装飾的な金属表面をもたらす。電気めっきでは通常、熱可塑性ポリマー体を導電性にし、熱可塑性ポリマー体への電着金属の接着を促進するために、熱可塑性ポリマー体の表面処理が必要である。接着を促進するために、表面は通常、機械的研磨又は化学エッチングにより粗面化される。
【0003】
機能的及び/又は装飾的な使用のための金属めっきした物品は、それ自体既知である。それらを製造する方法は、例えば、US5324766及びUS4552626に記載されている。金属めっきした物品のポリマー体は、熱硬化性又は熱可塑性ポリマーを含むことができ、ここでポリアミドなどの熱可塑性ポリマーは、自動車及び電気用途に特に好ましい。
【0004】
ポリアミドは一般に半結晶性ポリマーであり、その非常に良好な機械的特性が理由で、工業的に特に重要である。特に、それらは高い強度、剛性、及び靭性、良好な耐薬品性、及び高い耐摩耗性及び耐トラッキング性を備えている。これらの特性は、射出成形品の製造に特に重要である。包装フィルムとしてのポリアミドの使用には、高い靭性が特に重要である。その機械的特性が理由で、ポリアミドは工業的に、釣り糸、登山用ロープ、敷物類などの織物の製造に使用される。ポリアミドは、壁のプラグ、ネジ、ケーブルタイの製造にも使用される。さらに、ポリアミドは、塗料、接着剤、及びコーティング材料として用いられる。その耐薬品性、剛性、寸法安定性をさらに向上させるために、ポリアミドは通常、鉱物充填剤で強化される。
【0005】
しかし、マーブリング(marbling)などの表面欠陥は、鉱物が充填されたポリアミドを含むポリマー体の表面に頻繁に現れる。これらの表面欠陥はしばしば、明るい色又は白い縞模様又は汚れの形態であり、金属めっきした物品の表面で見ることさえでき、高い棄却率をもたらす。金属めっきした物品の製造に関するさらなる問題は、電気めっきした金属がポリマー体の表面上に十分に接着しないことである。
【0006】
US2006/0292385A1は、ベンゼン及びトルエンスルホンアミドなどの可塑剤を含有する金属めっきした鉱物充填ポリアミド樹脂組成物の調製方法を開示している。さらなる添加剤として、鉱物充填ポリアミド樹脂組成物は、ドデカン二酸及びアジピン酸などのジカルボン酸を含むことができる。US2006/0292385A1の金属めっきした物品は、より少ない表面欠陥及び改善された表面外観を有する。
【0007】
それにもかかわらず、可塑剤は、金属めっきした物品の剛性及び寸法安定性の低下をもたらす。さらに、ジカルボン酸を使用すると、ポリマー体が劣化する。
【0008】
EP0690098A2は、ポリフタルアミド、粒子状充填剤、少量のシリコンオイル、及びゴム改質剤を含む、めっき用途で使用するためのブレンドを開示している。このブレンドは、改善されためっき接着性及び改善されためっき外観を有するが、少なくとも2種の様々な添加剤が必要である。改善を両方とも同時に促進するには、シリコンオイル又はゴム改質剤単独では効果がないと報告されているからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】US5324766
【文献】US4552626
【文献】US2006/0292385A1
【文献】EP0690098A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明の目的は、上記の従来技術の欠点を有しない、又はそれら欠点を著しく低減された程度でしか有しない、ポリマー体及び金属めっきを含む物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、ポリマー体及び金属めっきを含む物品であって、金属めっきがポリマー体に付着され、且つポリマー体が成分として、
(A)少なくとも1種のポリアミド、
(B)少なくとも1種の充填剤、
(C)少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー、及び
(D)任意に少なくとも1種の添加剤
を含む、物品によって達成される。
【0012】
驚くべきことに、ポリマー体が少なくとも1種のポリアミド、少なくとも1種の充填剤、及び少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマーを含む場合、ポリマー体及び金属めっきを含む物品の表面品質が改善されることが見出された。物品はより少ない表面欠陥を呈し、物品の表面は非常に均質で滑らかになる。
【0013】
さらに、驚くべきことに、この物品では、ポリマー体と金属との間の接着も改善されることも見出された。
【0014】
さらに、少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)の存在は、ポリマー体及び得られる金属めっきした物品の機械的特性の劣化をもたらさない。
【0015】
上記の利点は、少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマーによって達成されると想定する。さらに、少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマーは、ポリマー体中の少なくとも1種の充填剤の分散を改善し、その結果ポリマー体及び金属めっきした物品の表面品質が改善されると想定する。前述の想定は、本発明を限定することを意図するものではない。
【0016】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ポリマー体
本発明によれば、ポリマー体は、成分として少なくとも1種のポリアミド(A)、少なくとも1種の充填剤(B)、少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)、及び任意に少なくとも1種の添加剤(D)を含んで、使用される。
【0018】
ポリマー体は、当業者に既知である任意の形態を有し得る。ポリマー体は例えば、粉末、ペレット、フィルム、シート又は完成部品の形で存在してもよい。好ましくは、ポリマー体はシート又は完成部品の形態をとる。
【0019】
本発明における「フィルム」とは、20μm~500μmの範囲、好ましくは50μm~300μmの範囲の厚さを有する平面的なポリマー体を指す。「シート」とは、>0.5mm~100mmの範囲の厚さを有する平面的なポリマー体を指す。
【0020】
本発明の目的のための粉末とは、ふるい、光散乱又は顕微鏡検査によって決定して、1~500μmの範囲、好ましくは20~150μmの範囲の大きさを有する粒子を意味する。
【0021】
本明細書の目的のためのペレットは、顕微鏡検査又はキャリパゲージにより決定して、>0.5~10mmの範囲、好ましくは1~5mmの範囲の大きさを有する粒子である。
【0022】
ポリマー体として使用し得る完成部品は、例えば、建設部門、自動作製、海洋建設、鉄道車両建設、コンテナ建設、家庭用機器用の、衛生設備用の及び/又は航空宇宙移動用の部品である。好ましい完成部品は、例えば、ダッシュボード、包装フィルム、及び例えば漁網又は釣り糸用のモノフィラメントである。
【0023】
成分(A)
ポリマー体は、成分(A)として少なくとも1種のポリアミドを含む。本明細書において「少なくとも1種のポリアミド」とは、正確に1種のポリアミド、及び2種以上のポリアミドの混合物も意味する。
【0024】
本発明の目的のための用語「成分(A)」、「少なくとも1種のポリアミド(A)」、「ポリアミド(A)」及び「ポリアミド」は同義語であり、本発明を通して意味の区別なく使用する。
【0025】
ポリマー体は、ポリマー体の総質量に基づいて、少なくとも35質量%、より好ましくは少なくとも45質量%、特に好ましくは少なくとも50質量%の成分(A)を含むことが好ましい。
【0026】
同様に、ポリマー体は、ポリマー体の総質量に基づいて、85質量%以下、より好ましくは75質量%以下、特に好ましくは65質量%以下の成分(A)を含むことが好ましい。
【0027】
好ましい実施形態では、ポリマー体は、ポリマー体の総質量に基づいて、35~85質量%、好ましくは45~75質量%、特に50~65質量%の成分(A)を含む。ポリマー体中の成分(A)、(B)、(C)及び(D)の質量割合は、一般に合計で100%になる。
【0028】
少なくとも1種のポリアミド(A)は、好ましくは、-NH-(CH2)x-NH-単位(式中、xは4、5、6、7又は8である)、-CO-(CH2)y-NH-単位(式中、yは3、4、5、6又は7である)、及び-CO-(CH2)z-CO-単位(式中、zは2、3、4、5又は6である)からなる群から選択される少なくとも1種の単位を含む。
【0029】
少なくとも1種のポリアミド(A)は、より好ましくは、-NH-(CH2)x-NH-単位(式中、xは5、6又は7である)、-CO-(CH2)y-NH-単位(式中、yは4、5又は6である)、及び-CO-(CH2)z-CO-単位(式中、zは3、4又は5である)からなる群から選択される少なくとも1種の単位を含む。
【0030】
少なくとも1種のポリアミド(A)は、特に好ましくは、-NH-(CH2)6-NH-単位、-CO-(CH2)5-NH-単位、及び-CO-(CH2)4-CO-単位からなる群から選択される少なくとも1種の単位を含む。
【0031】
少なくとも1種のポリアミド(A)が、-CO-(CH2)y-NH-単位からなる群から選択される少なくとも1種の単位を含む場合、これらの単位は通常、5~9員環ラクタムから、好ましくは6~8員環ラクタムから、特に好ましくは7員環ラクタムから誘導される。
【0032】
ラクタムは、当業者に一般に既知である。本発明の目的のため、ラクタムは環状アミドを意味すると理解される。好ましくは、少なくとも1種のポリアミド(A)を調製するために使用するラクタムは、4~8員環の炭素原子、より好ましくは5~7員環の炭素原子、特に好ましくは6員環の炭素原子を含む。
【0033】
適したラクタムは、例えば、ブチロ-4-ラクタム(γ-ラクタム、γ-ブチロラクタム)、2-ピペリドン(δ-ラクタム、δ-バレロラクタム)、ヘキサノ-6-ラクタム(ε-ラクタム、ε-カプロラクタム)、ヘプタノ-7-ラクタム(ζ-ラクタム、ζ-ヘプタノラクタム)及びオクタノ-8-ラクタム(η-ラクタム、η-オクタノラクタム)からなる群から選択される。
【0034】
ラクタムは、好ましくは2-ピペリドン(δ-ラクタム、δ-バレロラクタム)、ヘキサノ-6-ラクタム(ε-ラクタム、ε-カプロラクタム)及びヘプタノ-7-ラクタム(ζ-ラクタム、ζ-ヘプタノラクタム)からなる群から選択される。
【0035】
少なくとも1種のポリアミド(A)が、-NH-(CH2)x-NH-単位からなる群から選択される少なくとも1種の単位を含む場合、これらの単位は通常ジアミンから誘導される。そして少なくとも1種のポリアミド(A)は、ジアミンの反応、好ましくはジアミンとジカルボン酸との反応により得られることが好ましい。
【0036】
適したジアミンは当業者に一般に既知であり、4~8個の炭素原子、好ましくは5~7個の炭素原子、より好ましくは6個の炭素原子を含む。
【0037】
適したアミンは、例えば、1,4-ジアミノブタン(ブタン-1,4-ジアミン、テトラメチレンジアミン、プトレシン)、1,5-ジアミノペンタン(ペンタメチレンジアミン、ペンタン-1,5-ジアミン、カダベリン)、1,6-ジアミノヘキサン(ヘキサメチレンジアミン、ヘキサン-1,6-ジアミン)、1,7-ジアミノヘプタン及び1,8-ジアミノオクタンからなる群から選択される。ジアミンは、好ましくは、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン及び1,7-ジアミノヘプタンからからなる群から選択される。1,6-ジアミノヘキサンが特に好ましい。
【0038】
さらに、少なくとも1種のポリアミド(A)は、m-キシリレンジアミン、ジ-(4-アミノフェニル)メタン、ジ-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ジ-(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ-(4-アミノシクロヘキシル)プロパン及び/又は1,5-ジアミノ-2-メチルペンタンから誘導される単位を含み得る。
【0039】
少なくとも1種のポリアミドが、-CO-(CH2)z-CO-単位からなる群から選択される少なくとも1種の単位を含む場合、これらの単位は通常ジカルボン酸から誘導される。そして少なくとも1種のポリアミド(A)は、ジカルボン酸の反応、好ましくはジアミンとジカルボン酸との反応により、得られることが好ましい。
【0040】
適したジカルボン酸は当業者に一般に既知であり、4~8個の炭素原子、好ましくは5~7個の炭素原子、より好ましくは6個の炭素原子を含む。
【0041】
適したジカルボン酸は、例えば、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、ヘプタン二酸(ピメリン酸)及びオクタン二酸(スベリン酸)からなる群から選択される。ジカルボン酸は、好ましくは、ペンタン二酸、ヘキサン二酸及びヘプタン二酸からなる群から選択される。ヘキサン二酸が特に好ましい。
【0042】
少なくとも1種のポリアミド(A)は、さらなる単位、例えば、10~13員環ラクタム、例えばカプリルラクタム及び/又はラウリルラクタムから誘導される単位をさらに含み得る。
【0043】
さらに、少なくとも1種のポリアミド(A)は、9~36個の炭素原子、好ましくは9~12個の炭素原子、及びより好ましくは9~10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を含み得る。さらに、芳香族ジカルボン酸も適している。
【0044】
そのようなジカルボン酸の例は、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ドデカン二酸、イソフタル酸及び/又はテレフタル酸である。
【0045】
以下の非網羅的なリストは、上記のポリアミド、及び本発明の目的のために成分(A)として適したさらなるポリアミドも含む(モノマーは括弧内に示す):
PA4 (ピロリドン)
PA6 (ε-カプロラクタム)
PA7 (エタノーラクタム(ethanolactam))
PA8 (カプリルラクタム(capryllactam))
PA9 (9-アミノノナン酸)
PA11 (11-アミノウンデカン酸)
PA12 (ラウロラクタム)
PA46 (テトラメチレンジアミン、アジピン酸)
PA66 (ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸)
PA69 (ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸)
PA610 (ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸)
PA612 (ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸)
PA613 (ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸)
PA1212 (1,12-ドデカンジアミン、デカンジカルボン酸)
PA1313 (1,13-ジアミノトリデカン、ウンデカンジカルボン酸)
PA6T (ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸)
PA9T (ノニルジアミン、テレフタル酸)
PA MXD6 (m-キシリレンジアミン、アジピン酸)
PA6I (ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸)
PA6-3-T (トリメチルヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸)
PA6/6T (PA6及びPA6Tを参照)
PA6/66 (PA6及びPA66を参照)
PA6/12 (PA6及びPA12を参照)
PA66/6/610 (PA66、PA6及びPA610を参照)
PA6I/6T (PA6I及びPA6Tを参照)
PA PACM12 (ジアミノジシクロヘキシルメタン、ラウロラクタム)
PA6I/6T/PACM (PA6I/6T及びジアミノジシクロヘキシルメタンを参照)
PA12/MACMI (ラウロラクタム、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、イソフタル酸)
PA12/MACMT (ラウロラクタム、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、テレフタル酸)
PA PDA-T (フェニレンジアミン、テレフタル酸)
【0046】
よって、本発明はまた、少なくとも1種のポリアミド(A)が、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド7、ポリアミド8、ポリアミド9、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド613、ポリアミド1212、ポリアミド1313、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミドMXD6、ポリアミド6I、ポリアミド6-3-T、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、ポリアミド66/6/610、ポリアミド6I/6T、ポリアミドPACM12、ポリアミド6I/6T/PACM、ポリアミド12/MACMI、ポリアミド12/MACMT及びポリアミドPDA-Tからなる群から選択される物品を提供する。
【0047】
これらのポリアミド及びその調製方法は既知である。当業者は、その調製に関する詳細を、「Ullmanns Enzyklopaedie der Technischen Chemie」、第4版、第19巻、第39頁~第54頁、Verlag Chemie,Weinheim 1980、「Ullmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry」、第A21巻、第179頁~第206頁、VCH Verlag,Weinheim 1992、及びStoeckhert,Kunststofflexikon,第425頁~第428頁、Hanser Verlag,Munich 1992(キーワード「ポリアミド」及びそれ以降)に見出すことができる。
【0048】
好ましくは、少なくとも1種のポリアミド(A)は、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド6/12、ポリアミド6/66、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド6I、ポリアミド6/6T及びポリアミド6I/6Tからなる群から選択される。
【0049】
成分(A)は、成分(A)の総質量に基づいて、少なくとも50質量%の、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66、ポリアミド6T、ポリアミド9T及びポリアミド6/6Tからなる群から選択される少なくとも1種のポリアミドを含むことが好ましい。
【0050】
好ましい実施形態では、成分(A)は、成分(A)の総質量に基づいて、少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、特に好ましくは少なくとも98質量%の、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66、ポリアミド6T、ポリアミド9T及びポリアミド6/6Tからなる群から選択される少なくとも1種のポリアミドを含む。
【0051】
さらに特に好ましい実施形態では、成分(A)は、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66、ポリアミド6T、ポリアミド9T及びポリアミド6/6Tからなる群から選択される少なくとも1種のポリアミドから本質的になる。
【0052】
本発明の目的のための用語「から本質的になる」とは、成分(A)が99質量%を超える、好ましくは少なくとも99.5質量%の、より好ましくは少なくとも99.9質量%の、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66、ポリアミド6T、ポリアミド9T及びポリアミド6/6Tからなる群から選択される少なくとも1種のポリアミドを含むことを意味すると理解される。
【0053】
さらに特に好ましい実施形態では、成分(A)は、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66、ポリアミド6T、ポリアミド9T及びポリアミド6/6Tからなる群から選択される少なくとも1種のポリアミドからなる。
【0054】
少なくとも1種のポリアミド(A)は、一般に30~350ml/gの範囲、好ましくは90~240ml/gの範囲、特に好ましくは100~130ml/gの範囲の粘度数を有する。粘度数は、ISO307に従って25℃で、96質量%濃度の硫酸100ml中で、0.5質量%の少なくとも1種のポリアミド(A)の溶液で決定される。
【0055】
少なくとも1種のポリアミド(A)の質量平均分子量(Mw)は、通例、500~2000000g/モルの範囲、好ましくは5000~500000g/モルの範囲、特に好ましくは10000~100000g/molの範囲である。質量平均分子量(Mw)は、ASTM D4001に従って決定される。
【0056】
少なくとも1種のポリアミド(A)の溶解温度TMは、通例、示差走査熱量測定(DSC)又は半結晶ポリアミドの動的機械熱分析(DMTA)により決定して、80~330℃の範囲、好ましくは150~250℃の範囲、特に好ましくは180~230℃の範囲である。非晶質ポリアミドの場合、TMは、少なくとも1種のポリアミド(A)(硫酸中ISO307に従い80mL/gの最小溶液粘度を有する)が、少なくとも5000Pasのゼロせん断粘度を有し、よって、溶解状態で処理可能である(TA Instruments社のDHR-1回転レオメーターで測定、プレート/プレートの形状、プレートの直径25mm、サンプルの高さ1.0mm、変形率1.0%、予熱時間1.5分、材料を事前に減圧下80℃で7日間乾燥させる)温度として定義される。
【0057】
少なくとも1種のポリアミドは通常、ガラス転移温度(Tg)を有する。少なくとも1種のポリアミド(A)のガラス転移温度(Tg)は、通常0~160℃の範囲であり、好ましくは40~105℃の範囲である。
【0058】
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)によって決定される。ガラス転移温度(Tg)の測定は、それぞれ20℃/分、20℃/分、20℃/分の加熱/冷却/加熱サイクルで、窒素雰囲気下で行う。測定のため、約0.006~0.010gの物質をアルミニウムのるつぼに密封した。1回目の加熱ではサンプルを340℃に加熱し、次いで急速に0℃まで冷却し、次いで2回目の加熱で340℃まで加熱した。それぞれのTg値は、2回目の加熱から決定する。ガラス転移温度(Tg)を決定するこの手順は、当業者に既知である。
【0059】
成分(B)
ポリマー体は、成分(B)として少なくとも1種の充填剤を含む。本明細書において「少なくとも1種の充填剤」とは、正確に1種の充填剤、及び2種以上の充填剤の混合物も意味する。
【0060】
本発明の目的のための用語「成分(B)」、「少なくとも1種の充填剤(B)」、「充填剤(B)」及び「充填剤」は同義語であり、本発明を通して意味の区別なく使用する。
【0061】
ポリマー体は、ポリマー体の総質量に基づいて、少なくとも14.9質量%、より好ましくは少なくとも24.5質量%、特に好ましくは少なくとも34質量%の成分(B)を含むことが好ましい。
【0062】
同様に、ポリマー体は、ポリマー体の総質量に基づいて、55質量%以下、より好ましくは51質量%以下、特に好ましくは47質量%以下の成分(B)を含むことが好ましい。
【0063】
好ましい実施形態では、ポリマー体は、ポリマー体の総質量に基づいて、14.9~55質量%、好ましくは24.5~51質量%、特に34~47質量%の成分(B)を含む。ポリマー体中の成分(A)、(B)、(C)及び(D)の質量割合は、一般に合計で100%になる。
【0064】
好ましくは、成分(B)は、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属ケイ酸塩、金属繊維、アスベスト、セラミック繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、二酸化チタン、酸化アルミニウム、マイカ、タルク、硫酸バリウム、石膏、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、粘土、シリカ、シリカ-アルミナ、アルミナ、セリサイト、カオリン、珪藻土、マグネシウムカーボネート、長石、珪石、カーボンブラック、ガラスビーズ、シラスバルーン、べんがら、酸化亜鉛、ウォラストナイト及びサイロイド(Syloid)からなる群から選択される。
【0065】
よって、本発明はまた、少なくとも1種の充填剤(B)が、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属ケイ酸塩、金属繊維、アスベスト、セラミック繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、二酸化チタン、酸化アルミニウム、マイカ、タルク、硫酸バリウム、石膏、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、粘土、シリカ、シリカ-アルミナ、アルミナ、セリサイト、カオリン、珪藻土、マグネシウムカーボネート、長石、珪石、カーボンブラック、ガラスビーズ、シラスバルーン、べんがら、酸化亜鉛、ウォラストナイト及びサイロイドからなる群から選択される物品を提供する。
【0066】
適したアルカリ土類金属炭酸塩の例は、マグネシウムカーボネート、カルシウムカーボネート及びバリウムカーボネートである。
【0067】
適したアルカリ土類金属酸化物の例は、マグネシウムオキシド、カルシウムオキシド及びバリウムオキシドである。
【0068】
適したアルカリ土類金属ケイ酸塩は、カルシウムシリケート及びマグネシウムシリケートである。
【0069】
少なくとも1種の充填剤は、繊維、顆粒、針、フレーク、プレートの形態又は粒子形態であってよい。
【0070】
好ましい繊維状充填剤は、セラミック繊維、ガラス繊維、炭素繊維及びアラミド繊維であり、ガラス繊維が特に好ましい。これらはロービングとして、又は市販のチョップドグラスの形態で使用することができる。
【0071】
少なくとも1種のポリアミド及び繊維状充填剤の間の適合性を改善するために、繊維状充填剤の表面をシラン化合物で処理することができる。
【0072】
適したシランは、一般式(II)
(X-(CH2)g)k-Si-(O-ChH2h+1)4-k (II)
(式中、
gは、2~10、好ましくは3~4であり、
hは、1~5、好ましくは1~2であり、
kは、1~3、好ましくは1であり、及び
Xは、アミノ基、グリシジル基又はヒドロキシ基である)
によるものである。
【0073】
好ましくは、シラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシランからなる群、及び置換基Xとしてグリシジル基を含有する対応するシラン化合物から選択される。
【0074】
好ましくは、繊維状充填剤はシラン化合物を、繊維状充填剤の総質量に基づいて、0.01~2質量%、好ましくは0.025~1質量%、特に0.05~0.5質量%の量で含む。
【0075】
少なくとも1種の充填剤(B)は、針の形態であってもよい。このような充填剤は、針状鉱物充填剤とも称される。
【0076】
本発明の目的のために、針状鉱物充填剤は、強く発達した針状特性を伴う鉱物充填剤、すなわち、細い針様の結晶の形態で存在する鉱物充填剤である。一例は、針状ウォラストナイトである。針状鉱物充填剤は、8:1~35:1、好ましくは8:1~11:1のL/D(長さ対直径)比を有することが好ましい。鉱物充填剤は、任意に上記のシラン化合物で前処理されていてもよいが、前処理は必須ではない。
【0077】
少なくとも1種の充填剤(B)は、粒子形態で存在してもよい。
【0078】
この場合、少なくとも1種の充填剤(B)は、0.1~50μm、好ましくは0.1~30μm、特に0.5~10μmの平均粒径を有することが好ましい。
【0079】
よって、本発明はまた、少なくとも1種の充填剤(B)が粒子形態であり、0.1~50μmの平均粒径を有する物品を提供する。
【0080】
少なくとも1種の充填剤(B)の平均粒子径は、Malvern Mastersizer 2000粒子径分析装置を使用して、レーザー回折により測定される。分析はフラウンホーファーの回折によって行う。測定のために、少なくとも1種の充填剤(B)を、攪拌及び10分間の超音波処理下で脱イオン水中に分散させる。
【0081】
成分(B)は、成分(B)の総質量に基づいて、少なくとも50質量%の、カオリン及びウォラストナイトからなる群から選択される少なくとも1種の充填剤を含むことが好ましい。
【0082】
好ましい実施形態では、成分(B)は、成分(B)の総質量に基づいて、少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、特に好ましくは少なくとも98質量%の、カオリン及びウォラストナイトからなる群から選択される少なくとも1種の充填剤を含む。
【0083】
さらに特に好ましい実施形態では、成分(B)は、カオリン及びウォラストナイトからなる群から選択される少なくとも1種の充填剤から本質的になる。本発明の目的のための用語「から本質的になる」とは、成分(B)が99質量%を超える、好ましくは少なくとも99.5質量%の、より好ましくは少なくとも99.9質量%の、カオリン及びウォラストナイトからなる群から選択される少なくとも1種の充填剤を含むことを意味すると理解される。
【0084】
さらに特に好ましい実施形態では、成分(B)は、カオリン及びウォラストナイトからなる群から選択される少なくとも1種の充填剤からなる。
【0085】
成分(C)
ポリマー体は、少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマーを含む。本明細書において「少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー」とは、正確に1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー、及び2種以上のポリ-N-ビニルラクタムポリマーの混合物も意味する。
【0086】
本発明の目的のための用語「成分(C)」、「少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)」、「ポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)」及び「ポリ-N-ビニルラクタムポリマー」は同義語であり、本発明全体を通して意味の区別なく使用する。
【0087】
ポリマー体は、ポリマー体の総質量に基づいて、少なくとも0.1質量%、より好ましくは少なくとも0.5質量%、特に好ましくは少なくとも1質量%の成分(C)を含むことが好ましい。
【0088】
同様に、ポリマー体は、ポリマー体の総質量に基づいて、10質量%以下、より好ましくは4質量%以下、特に好ましくは3質量%以下の成分(C)を含むことが好ましい。
【0089】
好ましい実施形態では、ポリマー体は、ポリマー体の総質量に基づいて、0.1~10質量%、好ましくは0.5~4質量%、特に1~3質量%の成分(C)を含む。ポリマー体中の成分(A)、(B)、(C)、及び(D)の質量割合は、一般に合計で100%になる。
【0090】
適したポリ-N-ビニルラクタムは、当業者に一般に既知である。
【0091】
本発明によれば、少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタム(C)は、式(I)
【化1】
(式中、
nは、3~12であり、
mは、0~3であり、
R
1は、C
1~C
10-アルキル、C
2~C
10-アルケニル、アリール又はアラルキルであり、
R
2、R
3及びR
4は、それぞれ互いに独立して、水素、C
1~C
10-アルキル、C
2~C
10-アルケニル、アリール又はアラルキルである)
の重合単位を含む。
【0092】
よって、本発明はまた、少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)が式(I)
【化2】
(式中、
nは、3~12であり、
mは、0~3であり、
R
1は、C
1~C
10-アルキル、C
2~C
10-アルケニル、アリール又はアラルキルであり、
R
2、R
3及びR
4は、それぞれ互いに独立して、水素、C
1~C
10-アルキル、C
2~C
10-アルケニル、アリール又はアラルキルである)
の重合単位を含む物品を提供する。
【0093】
本発明において、式(I)のラジカルR1、R2、R3及びR4について上記で定義したような、C1~C10-アルキルなどの定義は、この置換基(ラジカル)が1~10の炭素原子数を有するアルキルラジカルであることを意味する。アルキルラジカルは、直鎖又は分岐鎖であり得、また任意に環状でもあり得る。環状成分及び直鎖成分の両方を有するアルキルラジカルも同様に、この定義に該当する。
【0094】
アルキルラジカルはまた、任意に、官能基、例えばアミノ、アミド、エーテル、ビニルエーテル、イソプレニル、ヒドロキシ、メルカプト、カルボキシル、ハロゲン、アリール又はヘテロアリールなどで一置換又は多置換されていてもよい。特に明記しない限り、アルキルラジカルは置換基として官能基を有しないことが好ましい。アルキルラジカルの例は、メチル、エチル、n-プロピル、sec-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、2-エチルヘキシル、ターシャリー-ブチル(tert-bu/t-Bu)、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、シクロヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル又はエイコサニルである。
【0095】
本発明において、式(I)のラジカルR1、R2、R3及びR4について上記で定義したような、C2~C10-アルケニルなどの定義は、この置換基(ラジカル)が2~10の炭素原子数を有するアルケニルラジカルであることを意味する。この炭素ラジカルは、好ましくは一不飽和であるが、任意に二不飽和又は多不飽和であってもよい。直鎖性、分岐、環状画分、及び任意に存在する置換基に関して、C1~C10-アルキルラジカルに関して上で定義した類似の詳細が適用可能である。好ましくは、本発明において、C2~C10-アルケニルは、ビニル、1-アリル、3-アリル、2-アリル、シス-又はトランス-2-ブテニル又はω-ブテニルである。
【0096】
本発明において、式(I)のラジカルR1、R2、R3及びR4について上記で定義したような、「アリール」という用語は、置換基(ラジカル)が芳香族であることを意味する。芳香族は、単環式、二環式又は任意に多環式芳香族であってもよい。多環式芳香族の場合、個々の環は任意に、完全に又は部分的に飽和していてもよい。アリールの好ましい例は、フェニル、ナフチル又はアントラシル、特にフェニルである。アリールラジカルはまた、C1~C10-アルキルについて上で定義したように、任意に官能基で一置換又は多置換されていてもよい。
【0097】
本発明において、式(I)のラジカルR1、R2、R3及びR4について上記で定義したような、「アラルキル」という用語は、今度はアルキルラジカル(アルキレン)がアリールラジカルで置換されていることを意味する。アルキルラジカルは、例えば、上記の定義によるC1~C10-アルキルラジカルであり得る。
【0098】
上記式(I)において、ラジカルR1は、1回(m=1)又は複数回(m=2又は3)存在し得る。ここで、ラジカルR1は、―その頻度に応じて、環状ラクタムの任意の所望の炭素原子上の1個以上の水素原子を置き換えることができる。2個以上のラジカルR1が存在する場合、これらは同じ炭素原子又は様々な炭素原子に付着させることができる。m=0の場合、対応する環状ラクタムは非置換である。
【0099】
少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)は、nが3~5である式(I)の重合単位を含むことが好ましい。
【0100】
少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)は、mが0である式(I)の重合単位を含むことがさらに好ましい。
【0101】
少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)は、R2、R3及びR4がそれぞれ水素である式(I)の重合単位を含むことが好ましい。
【0102】
少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)は、N-ビニルピロリドン(N-ビニル-2-ピロリドン)、N-ビニルピペリドン(N-ビニル-2-ピペリドン)及びN-ビニルカプロラクタムからなる群から選択されるN-ビニルラクタムの重合単位を含むことが好ましい。
【0103】
よって、本発明はまた、少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)が、N-ビニルピロリドン(N-ビニル-2-ピロリドン)、N-ビニルピペリドン(N-ビニル-2-ピペリドン)及びN-ビニルカプロラクタムからなる群から選択されるN-ビニルラクタムの重合単位を含む物品を提供する。
【0104】
成分(C)は、成分(C)の総質量に基づいて、少なくとも50質量%の、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピペリドン及びN-ビニルカプロラクタムからなる群から選択されるN-ビニルラクタムの重合単位を含むことが好ましい。
【0105】
好ましい実施形態では、成分(C)は、成分(C)の総質量に基づいて、少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、特に好ましくは少なくとも98質量%の、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピペリドン及びN-ビニルカプロラクタムからなる群から選択されるN-ビニルラクタムの重合単位を含む。
【0106】
さらに特に好ましい実施形態では、成分(C)は、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピペリドン及びN-ビニルカプロラクタムからなる群から選択されるN-ビニルラクタムの重合単位から本質的になる。本発明の目的のための用語「から本質的になる」とは、成分(C)が99質量%を超える、好ましくは少なくとも99.5質量%の、より好ましくは少なくとも99.9質量%の、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピペリドン及びN-ビニルカプロラクタムからなる群から選択されるN-ビニルラクタムの重合単位を含むことを意味すると理解される。
【0107】
さらに特に好ましい実施形態では、成分(C)は、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピペリドン及びN-ビニルカプロラクタムからなる群から選択されるN-ビニルラクタムの重合単位からなる。
【0108】
別の好ましい実施形態では、成分(C)は、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピペリドン及びN-ビニルカプロラクタムからなる群から選択されるN-ビニルラクタムと、1-ビニルイミダゾール又は酢酸ビニルとの共重合単位を含む。この実施形態では、N-ビニルピロリドンと1-ビニルイミダゾール又は酢酸ビニルとの共重合単位が特に好ましい。
【0109】
よって、本発明はまた、少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)が、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピペリドン及びN-ビニルカプロラクタムからなる群から選択されるN-ビニルラクタムと、1-ビニルイミダゾール又は酢酸ビニルとの共重合単位を含む物品を提供する。
【0110】
別のさらに好ましい実施形態では、成分(C)は、成分(C)の総質量に基づいて、少なくとも50質量%の、N-ビニルピロリドンと1-ビニルイミダゾール又は酢酸ビニルとの共重合単位を含むことが好ましい。
【0111】
別のより好ましい実施形態では、成分(C)は、成分(C)の総質量に基づいて、少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、特に好ましくは少なくとも98質量%の、N-ビニルピロリドンと1-ビニルイミダゾール又は酢酸ビニルとの共重合単位を含む。
【0112】
別の特に好ましい実施形態では、成分(C)は、N-ビニルピロリドンと1-ビニルイミダゾール又は酢酸ビニルとの共重合単位から本質的になる。本発明の目的のための用語「から本質的になる」とは、成分(C)が99質量%を超える、好ましくは少なくとも99.5質量%の、より好ましくは少なくとも99.9質量%の、N-ビニルピロリドンと1-ビニルイミダゾール又は酢酸ビニルとの共重合単位を含むことを意味すると理解される。
【0113】
別の最も好ましい実施形態では、成分(C)は、N-ビニルピロリドンと1-ビニルイミダゾール又は酢酸ビニルとの共重合単位からなる。
【0114】
少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)の質量平均分子量(Mw)は、一般に2,500~250,000g/モルの範囲、好ましくは10,000~150,000の範囲、より好ましくは70,000~110,000g/モルの範囲である。質量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定される。ジメチルアセトアミド(DMAc)を溶媒として使用し、狭い分布のポリメチルメタクリレートを測定の標準として使用した。
【0115】
よって、本発明はまた、少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)が、2,500~250,000g/モルの質量平均分子量Mwを有する物品を提供する。
【0116】
成分(D)
ポリマー体は、成分(D)として少なくとも1種の添加剤を任意に含む。本明細書において「少なくとも1種の添加剤」とは、正確に1種の添加剤、及び2種以上の添加剤の混合物も意味する。
【0117】
本発明の目的のための用語「成分(D)」、「少なくとも1種の添加剤(D)」、「添加剤(D)」及び「添加剤」は同義語であり、本発明を通して意味の区別なく使用する。
【0118】
好ましくは、ポリマー体は、ポリマー体の総質量に基づいて、0~8質量%、より好ましくは0~5質量%、特に好ましくは0~2.5質量%の成分(D)を含む。ポリマー体中の成分(A)、(B)、(C)及び(D)の質量割合は、一般に合計で100%になる。
【0119】
ポリマー体が成分(D)を含む場合、ポリマー体は、ポリマー体の総質量に基づいて、少なくとも0.1質量%、より好ましくは少なくとも0.5質量%の成分(D)を含むことが好ましい。
【0120】
好ましい実施形態では、ポリマー体は、ポリマー体の総質量に基づいて、0.1~5質量%、より好ましくは0.5~2.5質量%の成分(D)を含む。ポリマー体中の成分(A)、(B)、(C)及び(D)の質量割合は、一般に合計で100%になる。
【0121】
好ましくは、成分(D)は、潤滑剤、酸化防止剤、着色剤、色安定剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線に対する耐性を増加させる薬剤、耐熱性を改善する安定剤、離型剤、核剤及び可塑剤からなる群から選択される。成分(D)は、特に好ましくは潤滑剤を含む。
【0122】
よって、本発明はまた、少なくとも1種の添加剤が、潤滑剤、酸化防止剤、着色剤、色安定剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線に対する耐性を増加させる薬剤、耐熱性を改善する安定剤、離型剤、核剤及び可塑剤からなる群から選択される物品を提供する。
【0123】
適した潤滑剤及び離型剤には、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸エステル、エチレンビス(ステアラミド)(EBS)及び一般に高級脂肪酸、それらの誘導体、及び12~30個の炭素原子を有する対応する脂肪酸混合物、シリコーンオイル、オリゴマーイソブチレン、又は同様の物質が含まれるが、これらに限定されない。
【0124】
適した酸化防止剤、色安定剤、及び紫外線に対する耐性を増加させる薬剤には、立体障害フェノール、第二級芳香族アミン、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビタミンE又は類似構造化合物、ハロゲン化銅(I)、障害アミン光安定剤(「HALS」)、クエンチャー、例えばニッケルクエンチャー、ヒドロペルオキシド分解剤、トリアジン、ベンゾオキサジノン、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾエート、ホルムアミジン、シンナメート/プロペノエート、芳香族プロパンジオン、ベンズイミダゾール、脂環式ケトン、ホルムアニリド(オキサミドを含む)、シアノアクリレート、ベンゾピラノン及びサリチレートが含まれるが、これらに限定されない。
【0125】
適した着色剤には、有機染料、例えばニグロシン、又は顔料、例えばウルトラマリンブルー、フタロシアニン、二酸化チタン、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、カーボンブラック及びペリレンテトラカルボン酸の誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0126】
適した難燃剤には、通常、赤リン、アンモニウムポリホスフェート、トリス(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、テトラキス(2-クロロエチル)エチレンジホスフェート、ジメチルメタンホスホネート、ジエチルジエタノールアミノメチルホスホネート、アルミニウムジエチルホスフィネート又はその誘導体(Exolit(登録商標))、次亜リン酸アルミニウム及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0127】
適した耐熱性を改善する安定剤には、元素の周期表のI族の金属(例えば、Li、Na、K)から誘導される金属ハロゲン化物(塩化物、臭化物、ヨウ化物)が含まれるが、これらに限定されない。
【0128】
適した核剤には、ナトリウムフェニルホスフィネート、アルミナ、シリカ、ナイロン-2,2、及び好ましくはタルクが含まれるが、これらに限定されない。
【0129】
適した可塑剤には、ジオクチルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、炭化水素オイル、N-(n-ブチル)-ベンゼンスルホンアミド、及びオルト-及びパラ-トリルエチルスルホンアミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0130】
ポリマー体は、当業者に既知である任意の方法により調製することができる。適した方法の例には、射出成形、押出、カレンダー加工、回転成形、及びブロー成形が含まれる。好ましい方法は、射出成形及び/又は押出である。
【0131】
ポリマー体を射出成形及び/又は押出により調製する場合、成分(A)、(B)、(C)及び任意に(D)を、押出機で配合してポリマー体を得ることが好ましい。
【0132】
少なくとも1種の添加剤(D)は、ポリマー体の製造プロセスの任意の段階で計量し得るが、少なくとも1種の添加剤(D)の安定化効果(又は他の特定の効果)が早い段階で利用できるように、早い時点が好ましい。
【0133】
成分(A)、(B)、(C)及び任意に(D)を配合する間の押出機の温度は任意の温度でよく、通常200~350℃の範囲、好ましくは220~330℃の範囲、特に好ましくは260~310℃の範囲である。
【0134】
押出機のジャケット温度は、押出機中の成分の温度より高いことができ、同様に、押出機のジャケット温度は、押出機中の成分の温度より低いことも可能である。例えば、成分を加熱する場合、最初に押出機のジャケット温度は、押出機中の成分の温度より高いことが可能である。押出機中の成分を冷却する場合、押出機のジャケット温度は、押出機中の成分の温度より低いことも可能である。
【0135】
本発明で挙げる押出機に関する温度は、押出機のジャケット温度を意味する。「押出機のジャケット温度」とは、押出機のジャケットの温度を意味する。従って、押出機のジャケット温度は、押出機バレルの外壁の温度である。
【0136】
押出機としては、配合の間の温度及び圧力で使用することができる当業者に既知である任意の押出機が適している。一般に、押出機は、少なくとも、少なくとも1種のポリアミド(A)、少なくとも1種の充填剤(B)、少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)、及び任意に少なくとも1種の添加剤(D)が配合される温度で加熱してよい。
【0137】
押出機は、単軸、二軸、又は多軸の押出機であり得る。二軸(twin-screw)押出機が好ましい。二軸押出機は、二重軸(double screw)押出機としても既知である。二軸押出機は共回転又は異回転であり得る。
【0138】
単軸押出機、二軸押出機及び多軸押出機は、当業者に既知であり、例えば、C.Rauwendaal:Polymer extrusion,Carl Hanser Verlag GmbH&Co.KG,第5版(2014年1月16日)に記載されている。
【0139】
押出機は、例えば混合要素又は混練要素などのさらなる装置を含み得る。
【0140】
混合要素は、押出機中に含まれる個々の成分の混合に役立つ。適した混合要素は、当業者に既知であり、例として、静的混合要素又は動的混合要素である。
【0141】
混練要素は同様に、押出機中に含まれる個々の成分の混合に役立つ。適した混練要素は、当業者に既知であり、例として、混練スクリュー又は混練ブロック、例えば、ディスク混練ブロック又はショルダー混練ブロック(shoulder kneading blocks)である。
【0142】
成分(A)、(B)、(C)及び任意に(D)は連続的に又は同時に押出機中に添加することができ、これら成分を押出機中で混合及び配合して、ポリマー体を得る。
【0143】
成分(A)、(B)、(C)及び任意に(D)は、任意の比率で配合することができる。好ましくは、成分(A)、(B)、(C)及び任意に(D)は、得られるポリマー体が、
ポリマー体の総質量に基づいて、
35~85質量%の少なくとも1種のポリアミド(A)、
14.9~55質量%の少なくとも1種の充填剤(B)、
0.1~10質量%の少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)、及び
0~8質量%の少なくとも1種の添加剤(D)、
を、含むような比率で配合する。
【0144】
よって、本発明はまた、ポリマー体が、
ポリマー体の総質量に基づいて、
35~85質量%の少なくとも1種のポリアミド(A)、
14.9~55質量%の少なくとも1種の充填剤(B)、
0.1~10質量%の少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)、及び
0~8質量%の少なくとも1種の添加剤(D)、
を、含む物品を提供する。
【0145】
特に好ましくは、成分(A)、(B)、(C)及び任意に(D)は、得られるポリマー体が、
ポリマー体の総質量に基づいて、
45~75質量%の少なくとも1種のポリアミド(A)、
24.5~51質量%の少なくとも1種の充填剤(B)、
0.5~4質量%の少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)、及び
0~5質量%の少なくとも1種の添加剤(D)、
を、含むような比率で配合する。
【0146】
より好ましくは、成分(A)、(B)、(C)及び任意に(D)は、得られるポリマー体が、
ポリマー体の総質量に基づいて、
50~65質量%の少なくとも1種のポリアミド(A)、
34~47質量%の少なくとも1種の充填剤(B)、
1~3質量%の少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)、及び
0~5質量%の少なくとも1種の添加剤(D)、
を、含むような比率で配合する。
【0147】
少なくとも1種のポリアミド(A)、少なくとも1種の充填剤(B)、少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー(C)、及び任意に少なくとも1種の添加剤(D)の質量割合は、一般に合計で100%になる。
【0148】
そしてポリマー体は、当業者に既知の任意の方法により、任意の所望の形態で、押出機から得ることができる。
【0149】
成分(A)、(B)、(C)及び任意に(D)を含むポリマー体は、金属めっきした物品を製造するために使用される。
【0150】
よって、本発明はまた、成分として
(A)少なくとも1種のポリアミド、
(B)少なくとも1種の充填剤、
(C)少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー、及び
(D)任意に少なくとも1種の添加剤
を含むポリマー体を、金属めっきした物品の製造に使用する方法を提供する。
【0151】
金属めっき
本発明によれば、物品は、ポリマー体及び金属めっきを含み、その金属めっきはポリマー体に付着させる。
【0152】
金属めっきは、単一の金属の又は2種以上の様々な金属の合金の層であってよい。金属めっきはまた、同じ又は様々な金属及び/又は金属合金の2種以上の層を含んでもよい。
【0153】
一般に、ポリマー体に付着させる金属めっきの材料として、任意の金属が適している。
【0154】
適した金属には、例えば、チタン、ジルコニウム、クロム、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、スズ又は鉛が含まれるが、これらに限定されない。
【0155】
好ましくは、金属めっきは、銅、ニッケル、コバルト、パラジウム、クロム及びスズからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む。
【0156】
よって、本発明はまた、金属めっきが、銅、ニッケル、コバルト、パラジウム、クロム及びスズからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む物品を提供する。
【0157】
金属めっきは、少なくとも1種の金属を含む。本明細書において「少なくとも1種の金属」とは、正確に1種の金属、及び2種以上の金属の混合物も意味する。
【0158】
好ましくは、金属めっきは、金属めっきの総質量に基づいて、少なくとも50質量%の、銅、ニッケル、コバルト、パラジウム、クロム及びスズからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む。
【0159】
別のより好ましい実施形態では、金属めっきは、金属めっきの総質量に基づいて、少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、特に好ましくは少なくとも98質量%の、銅、ニッケル、コバルト、パラジウム、クロム及びスズからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む。
【0160】
別の特に好ましい実施形態では、金属めっきは、銅、ニッケル、コバルト、パラジウム、クロム及びスズからなる群から選択される少なくとも1種の金属から本質的になる。本発明の目的のための用語「から本質的になる」とは、金属めっきが99質量%を超える、好ましくは少なくとも99.5質量%の、より好ましくは少なくとも99.9質量%の、銅、ニッケル、コバルト、パラジウム、クロム及びスズからなるグループから選択される少なくとも1種の金属を含むことを意味すると理解される。
【0161】
別の最も好ましい実施形態では、金属めっきは、銅、ニッケル、コバルト、パラジウム、クロム及びスズからなる群から選択される少なくとも1種の金属からなる。
【0162】
別の好ましい実施形態では、金属めっきは、銅、ニッケル、コバルト、パラジウム、クロム及びスズからなる群から選択される少なくとも2種の金属からなる。
【0163】
金属めっきは、当業者に既知である任意の方法によってポリマー体に付着させることができる。そのような方法の例は、無電解金属析出、電着及び古典的なコロイド活性化又はイオノゲン活性化(ionogenic activation)のような活性化方法である。金属めっきは、前述の方法の様々な組み合わせにより、ポリマー体に付着させることもできる。
【0164】
金属めっきの厚さは、一般に約0.1~250μm、好ましくは約6~200μm、より好ましくは約15~150μmの範囲である。
【0165】
物品を製造するための方法
物品、ポリマー体、金属及び成分(A)、(B)、(C)及び(D)に関する上述の実施形態及び好ましいことは、物品の製造方法にも類似的に当てはまる。
【0166】
物品を製造するための方法は、好ましくは以下の工程
i)成分として、
(A)少なくとも1種のポリアミド、
(B)少なくとも1種の充填剤、
(C)少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー、及び
(D)任意に少なくとも1種の添加剤、
を含む、ポリマー体を提供する工程、
ii)少なくとも1種の酸でめっきされるポリマー体の少なくとも1つの表面をエッチングする工程、
iii)少なくとも1種のめっき触媒を含む第1の金属層を、工程ii)の少なくとも1つのエッチングした表面上に析出させる工程、
iv)第2の金属層を、無電解金属析出により施与する工程、及び
v)少なくとも1種のさらなる金属層を、電着により施与する工程、
を含む。
【0167】
よって、本発明はまた、以下の工程
i)成分として、
(A)少なくとも1種のポリアミド、
(B)少なくとも1種の充填剤、
(C)少なくとも1種のポリ-N-ビニルラクタムポリマー、及び
(D)任意に少なくとも1種の添加剤、
を含む、ポリマー体を提供する工程、
ii)少なくとも1種の酸でめっきされるポリマー体の少なくとも1つの表面をエッチングする工程、
iii)少なくとも1種のめっき触媒を含む第1の金属層を、工程ii)の少なくとも1つのエッチングした表面上に析出させる工程、
iv)第2の金属層を、無電解金属析出により施与する工程、及び
v)少なくとも1種のさらなる金属層を、電着により施与する工程、
を含む方法を提供する。
【0168】
工程i)
工程i)において、上記の成分(A)、(B)、(C)及び任意に(D)を含む、ポリマー体を提供する。
【0169】
工程i)で提供するポリマー体は、任意の形態で存在するか、又は当業者に既知である任意の方法、例えば、上記の射出成形及び/又は押出によるポリマー体の調製によって、製造することができる。
【0170】
工程ii)
工程ii)において、めっきされるポリマー体の少なくとも1つの表面を、少なくとも1種の酸でエッチングする。本明細書において「少なくとも1種の酸」とは、正確に1種の酸、及び2種以上の酸の混合物も意味する。
【0171】
エッチングのための方法及び酸は、当業者に既知である。
【0172】
好ましくは、工程ii)の少なくとも1種の酸は、クロム酸、塩酸、フッ化水素酸、リン酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、酢酸及びメタンスルホン酸からなる群から選択される。
【0173】
よって、本発明はまた、工程ii)の少なくとも1種の酸が、クロム酸、塩酸、フッ化水素酸、リン酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、酢酸及びメタンスルホン酸からなる群から選択される方法を提供する。
【0174】
より好ましくは、少なくとも1種の酸は、硫酸又はリン酸と併用し得るクロム酸である。
【0175】
少なくとも1種の酸が硫酸及び/又はメタンスルホン酸である場合、好ましくは過マンガン酸カリウム(KMnO4)及び/又はマンガン(III)塩が少なくとも1種の酸に添加される。
【0176】
工程ii)の間の温度は一般に任意の温度でよく、通常20~110℃の範囲、好ましくは30~80℃の範囲、特に好ましくは45~60℃の範囲である。
【0177】
通常、工程ii)の継続時間は広い範囲で変化し得、通常1~20分、好ましくは3~15分、特に好ましくは5~10分の範囲である。
【0178】
工程ii)は、好ましくは、ポリマー体の少なくとも1つの表面を、少なくとも1種の酸を含む溶液に浸漬することにより行う。ポリマー体の少なくとも1つの表面の浸漬は、好ましくは、製品の動作(goods movement)又は空気攪拌によって行う。
【0179】
少なくとも1種の酸がクロム酸である場合、工程ii)の後及び工程iii)の前に、好ましくは三酸化クロムが還元される。適した還元試薬の一例は、SurTec(登録商標)961Rである。
【0180】
任意に、ポリマー体の少なくとも1つのエッチングした表面は、工程ii)の後及び工程iii)の前に、洗浄することができる。好ましくは、ポリマー体の少なくとも1つのエッチングした表面は、それを例えば脱イオン水、アルコール又はそれらの混合物のすすぎ浴に浸漬することにより、洗浄する。
【0181】
工程iii)
工程iii)において、少なくとも1種のめっき触媒を含む第1の金属層を、工程ii)の少なくとも1つのエッチングした表面上に析出させる。「少なくとも1種のめっき触媒」という用語は、めっき触媒が厳密に1種のめっき触媒及び2種以上の様々なめっき触媒を含んでよいことを意味すると理解される。
【0182】
活性化とも称されるめっき触媒を析出させる方法は、当業者に既知である。
【0183】
活性化のための既知の方法は、例えば、古典的なコロイド活性化(金属コロイドの施与)、イオノゲン(ionogenic)活性化(パラジウムカチオンの施与)、直接金属化又はUdique Plato(登録商標)、Enplate MID select又はLDS Processの名称で既知の方法である。
【0184】
好ましくは、活性化はコロイド活性化(金属コロイドの施与)により行う。
【0185】
少なくとも1種のめっき触媒は、好ましくは、チタン、ジルコニウム、鉄、ニッケル、銅、クロム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銀、金、亜鉛、スズ、又は鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属である。
【0186】
より好ましくは、少なくとも1種のめっき触媒は、チタン、ジルコニウム、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金、亜鉛、カドミウム、スズ又は鉛からなる群から選択される。
【0187】
工程iii)は、好ましくは、ポリマー体の少なくとも1つの表面を水浴に浸漬することにより行う。工程iii)はまた、好ましくは、製品の動作又は空気攪拌によって行う。
【0188】
活性化をコロイド活性化によって行う場合、好ましくは、パラジウムコロイドを少なくとも1種のめっき触媒として使用する。パラジウムコロイドは、その表面のスズ層によって保護されていることが好ましい。工程iii)の後及び工程iv)の前に、好ましくは、パラジウムコロイドの表面からスズ層を除去するために促進剤を添加する。
【0189】
任意に、ポリマー体の活性化された表面は、工程iii)の後及び工程iv)の前に洗浄することができる。好ましくは、ポリマー体の活性化された表面は、それを例えば脱イオン水、アルコール又はそれらの混合物のすすぎ浴に浸漬することにより、洗浄する。
【0190】
工程iv)
工程iv)において、第2の金属層を、無電解金属析出により施与する。無電解金属析出は、当業者に既知の方法である。
【0191】
無電解金属析出は、金属又はプラスチックなどの固体基材上に金属層を析出させるために使用される自動的な触媒化学技術である。この方法は、金属塩の金属イオンと反応して金属層を析出させる還元剤の存在に依存する。
【0192】
工程iv)による第2の金属層は、アルカリ浴又は酸性浴を使用して施与し得る。
【0193】
一般に、工程iv)で無電解金属析出により施与される第2の金属層は、任意の金属を含むことができる。適した金属には、チタン、ジルコニウム、鉄、ニッケル、銅、クロム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銀、金、亜鉛、スズ又は鉛が含まれるが、これらに限定されない。
【0194】
好ましくは、無電解金属析出により施与される第2の金属層は、ニッケル及び銅からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む。
【0195】
無電解金属析出は、通常、外部からの電子供給の助けなしに金属層を析出することができる金属塩溶液中で行う。通常は、そのような溶液は、水、少量の金属イオン(例えば水溶性金属塩から誘導される)、還元剤、及びしばしば錯化剤、pH調整剤及び安定剤を含む。
【0196】
無電解金属析出による金属層の施与に使用する適した金属塩は、工程iv)で析出させる上記の金属に対応する金属塩であり、それぞれの金属硫酸塩、金属ハロゲン化物、金属硝酸塩、及び有機及び無機の対イオンを有する他の金属塩を含む。
【0197】
ロシェル塩、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム(モノ、ジ、トリ、及びテトラナトリウム)塩、ニトリロ三酢酸及びそのアルカリ塩、グルコン酸、グルコネート、及びトリエタノールアミンが錯化剤として好ましいが、市販のグルコノラクトン及び変性エチレンジアミン酢酸も有用である。
【0198】
アルカリ浴での使用に好ましい還元剤には、ホルムアルデヒド、及びホルムアルデヒド前駆体又は誘導体、例えばパラホルムアルデヒド、トリオキサン、ジメチルヒダントイン、グリオキサールなどが含まれる。アルカリ浴での還元剤として適しているのはまた、ボロヒドリド、例えばアルカリ金属ボロヒドリド、例えばナトリウムボロヒドリド及びカリウムボロヒドリド、及び置換ボロヒドリド、例えばナトリウムトリメトキシボロヒドリドである。ボラン、例えばアミノボラン、例えばイソプロピルアミノボラン、モルホリノボランなども、還元剤として適している。
【0199】
酸性浴で通常は使用される還元剤は、例えば、次亜リン酸ナトリウム及び次亜リン酸カリウムなどの次亜リン酸塩などである。
【0200】
pH調整剤は、任意の酸又は塩基を含み得る。このため、アルカリ側のpH調節剤は通常、水酸化ナトリウム又は水酸化アンモニウムである。酸側では、pHは通常、金属塩と共通の陰イオンを有する酸で調節する。
【0201】
浴の操作中、金属塩は金属イオンの源としての役目を果たし、還元剤は金属イオンを金属の形態に還元する。上記の種類の還元剤が酸化されて金属イオンの還元のための電子が提供されると、通常水素が析出部位で放出される。錯化剤は、金属イオンを錯化する役目を果たすと同時に、還元剤の還元作用に必要に応じて金属イオンを利用できるようにする。pH調節剤は、主に浴の内部めっき電位を調整する役目を果たす。
【0202】
金属塩は通常、不活性溶媒に溶解する。一般に、使用される不活性溶媒は、金属塩の溶解度が少なくとも10g/L、好ましくは少なくとも30g/Lである限り、任意の溶媒でよい。適した不活性溶媒は、例えば、水、アルコール及びそれらの混合物などの極性溶媒である。
【0203】
第2の金属層の厚さは、通常0.1~10μmの範囲であり、好ましくは1~3μmの範囲である。
【0204】
金属イオンに加えて、周期表のIII及びV族のさらなる元素、特にB(ホウ素)及びP(リン)が無電解金属析出中に金属溶液中に存在し得、よって金属と共析出し得る。
【0205】
ポリマー体の表面は、工程iv)の後及び工程v)の前に洗浄することが好ましい。好ましくは、ポリマー体の表面は、工程iv)の後に、例えば脱イオン水、アルコール又はそれらの混合物のすすぎ浴にポリマー体を浸漬することにより洗浄する。
【0206】
工程v)
工程v)において、少なくとも1種のさらなる金属層を、電着により施与する。
【0207】
電着による金属層の施与方法は、当業者に既知である。
【0208】
「電着」という用語は、基材の表面を金属又は有機金属コーティングで覆う方法を意味すると理解され、この方法において基材を電気的にバイアスし、前記金属又は有機金属コーティングの前駆体を含有する液体と接触させて、前記コーティングを形成する。基材が電気導電体である場合、電気めっきは例えば、電極を構成するコーティングされる基材(金属又は有機金属コーティングの場合はカソード)と第2の電極(アノード)との間に電流を通すことにより行う。これは、コーティング材料の前駆体(例えば、金属コーティングの場合は金属イオン)の源、及び任意に、形成されるコーティングの特性(析出物の均一性及び微細性、抵抗率など)を改善することを意図する種々の薬剤を含有する浴で、任意に参照電極の存在下で行う。
【0209】
一般に、電着により工程v)で施与する少なくとも1種のさらなる金属層は、任意の金属を含むことができる。適した金属には、チタン、ジルコニウム、鉄、銅、コバルト、クロム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銀、金、亜鉛、スズ、鉛又はそれらの合金が含まれるが、これらに限定されない。
【0210】
好ましくは、電着により施与する少なくとも1種のさらなる金属層は、銅、ニッケル及びクロムからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む。
【0211】
通常は、電着は、均一な析出を達成するために、水、金属塩、及び有機添加剤を含む溶液中で行う。
【0212】
電着による金属層の施与に使用する適した金属塩は、工程v)で析出させる上記の金属に対応する金属塩であり、それぞれ金属硫酸塩、金属スルホン酸塩、金属ハロゲン化物、金属硝酸塩、及び有機及び無機対イオンを有する他の金属塩が含まれる。
【0213】
電着の間の電流密度は、通常0.01~20A/dm2、好ましくは0.1~10A/dm2の範囲である。
【0214】
電着の間の電圧は、通常0.1~5Vの範囲である。
【0215】
少なくとも1種のさらなる金属層の厚さは、通常、1~100μmの範囲、好ましくは10~80μmの範囲、より好ましくは30~60μmの範囲である。
【0216】
任意に、工程v)で得られるポリマー体の表面は、工程v)の後に洗浄することができる。好ましくは、工程v)で得られるポリマー体の表面は、脱イオン水のすすぎ浴中に表面を浸漬することにより洗浄する。
【0217】
完全を期すために、本発明の方法により得られる物品の金属めっきは、少なくとも3種の層を含み、これらは、本発明の方法の工程iii)、工程iv)及び工程v)に従って連続してポリマー体上に析出されることに注目されたい。
【0218】
前述の方法で得られる物品は、自動車用途、例えば内部又は外部のドアハンドル、トランクハンドル、ギアシフター(gear shifters)、ロゴ、ステアリングホイール、ホイールカバー、ハブキャップ(hub cap)、トリム、エンジンカバー、タンク充填キャップ、オートバイ及びスクーターなどのハンドルバー端などで、使用することができる。
【0219】
この物品は、金物類用途、例えば機器(例えば冷蔵庫、オーブンなど)のハンドル、引き出しの引手及びノブ、食器棚ハンドル及びノブ、シャワーヘッド、蛇口及び蛇口ハンドル、鏡の枠、タオルラック、石鹸皿、トイレットペーパーホルダー、トイレ水洗ハンドル、スイッチ及びコンセントのカバープレート、支持体、ブラケットなどに、使用し得る。
【0220】
この物品は、家庭用途、例えばガラスラック、シャンパンバケット、香水瓶ストッパー、ワインラック、ナイフラックなど、及び電子機器用途、例えばカメラ、ビデオカメラ、携帯電話、コンピューター筐体などで使用し得る。
【0221】
上記の使用及び用途の範囲を考慮すると、これらを超え、無数の用途にわたる他の物品が予測されることは、容易に理解できよう。
【0222】
よって、本発明はまた、自動車用途におけるドアハンドルとして物品を使用する方法を提供する。
【0223】
以下、実施例を参照して本発明を説明するが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0224】
成形
熱可塑性成形組成物の製造に、以下の出発材料を使用した。
【0225】
Ultramid(登録商標)T315:BASF SE社から入手した粘度数120~130g/mlの熱可塑性ポリアミド(6/6T)
Ultramid(登録商標)T15:BASF SE社から入手した粘度数50~90g/mlの熱可塑性ポリアミド(6/6T)
Ultramid(登録商標)B27:BASF SE社から入手した粘度数140~160g/mlの熱可塑性ポリアミド(6)
ポリアミドの粘度数は、25℃で96質量%濃度の硫酸中の0.5質量%濃度の溶液中で、ISO307に従って決定した。
【0226】
Translink(登録商標)445:BASF社から入手したカオリン、充填剤
カオリンの平均粒子径は1.4μmである。
【0227】
PVP:ポリ-N-ビニルピロリドン、CAS:9003-39-8
PVP-VA:ポリ-ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、CAS:25086-89-9
NaH2PO2*H2O:次亜リン酸ナトリウム一水和物、色安定剤
Irganox1098ED:N,N’-1,6-ヘキサンジイルビス[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ、安定剤
Irgafos168FF:ジ-ターシャリーブチルフェニルホスファイト、安定剤
EBS:エチレンビス(ステアラミド)、潤滑剤
ポリマー体の製造は、11個のゾーンを有するZSK25二軸押出機で行った。ポリアミド、充填剤、及び添加剤を、ゾーン0及び1に低温で導入した。ゾーン2、3及び4は、溶解及び輸送に使用した。後続のゾーン5及び6は分散に使用し、ゾーン6の一部とゾーン7を共に均質化に使用した。ゾーン8及び9で再分散を行った。脱ガス用のゾーン10及び排出用のゾーン11が後に続いた。
【0228】
押出機のスループットを20kg/hに設定し、スクリュー速度を500rpmで一定に保った。押出温度は、Ultramid(登録商標)Tの場合は290℃、Ultramid(登録商標)Bの場合は260℃であった。成形材料の構成を以下の表1に示す。ポリマー体(シート、60×60×4mm)を得るために、生成物をペレット化し、射出成形でさらに処理した。射出成形は、290℃の溶解温度及び90℃の金型温度で行った。
【0229】
成形組成物の構成及び得られたポリマー体の機械的特性を、以下の表1に示す。
【0230】
実施例E2、E4及びE5は発明例であり、実施例C1及びC3は、最新技術で記載されている成形組成物(ポリマー体)との比較に使用した。
【0231】
【0232】
Ultramid(登録商標)B
Ultramid(登録商標)Bを含むあらゆるポリマー体(C3、E4、及びE5)は、同様の機械的特性を示した。それらは、高いE-率(弾性係数)及び高い引張強さを示したが、これは、高い剛性及び増加した靭性を意味する。ポリ-N-ビニルピロリドンの添加は、剛性及び寸法安定性の低下をもたらさなかった。
【0233】
Ultramid(登録商標)T
Ultramid(登録商標)Tを含むポリマー体(C1及びE2)も、同様の機械的特性を示した。それらは、Ultramid(登録商標)Bを含むポリマー体よりも、高いE-率(弾性係数)及び高い引張強さを示しさえした。ポリ-N-ビニルピロリドンの添加は、剛性及び寸法安定性の低下をもたらさなかった。
【0234】
金属めっき
上記で得られたポリマー体を、後に続く工程により特定の操作条件下で金属めっきした(表2)。時間的順序は上から下である。すすぎに使用した水は脱イオン水であった。
【0235】
【0236】
クロスカット試験
金属めっきしたポリマー体をクロスカット試験に供した。DIN EN ISO 2409に準拠したクロスカット試験は、金属めっきの付着性及び表面の弾性に関する情報を提供する。この種のテストには、特別な刃物が必要である。明確に規定された領域(10mm×10mm)に金属めっきを通して下地に到達するまで、4本の切れ目を直角に描いた。刃の距離は、金属めっきの厚さに依存した。その後、粘着テープ(標準に定義)をカットグリッドに貼り付け、垂直方向に取り除いた。
【0237】
出現したカットグリッドを、標準図を使用して評価し、実際の結果と比較した。様々な程度の損傷を評価することができた。試験結果(クロスカット評価)は、0(非常に良い)から5(非常に悪い)の間で評価することができる。
【0238】
本発明による金属めっきしたポリマー体E2は、クラス0に分類することができた。カットの縁は完全に滑らかである。格子の正方形はどれも切り離されていなかった。E4及びE5はクラス1に分類することができた。正方形はどれも切り離されておらず、縁はほぼ完全に滑らかである。
【0239】
比較例の金属めっきしたポリマー体(C1)は、クラス4に分類することができた。コーティングは、カットの縁に沿って大きなリボン状に剥がれ、及び/又は一部の正方形が部分的又は全体的に剥離していた。35%を顕著に超えるが、65%を顕著に超えないクロスカット領域が、影響を受けた。比較例の金属めっきしたポリマー体(C3)はクラス5に分類することができた。大きなリボン状のものがポリマー体から剥離し、試験領域の外側へ剥離が続いた。