(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】リン及びAl-ホスホネートを有するポリアミド
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20221219BHJP
C08K 3/02 20060101ALI20221219BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20221219BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K3/02
C08K3/32
C08K7/02
(21)【出願番号】P 2019571281
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2018066535
(87)【国際公開番号】W WO2018234429
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-18
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ロート,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ホイスラー,ミヒャエラ
(72)【発明者】
【氏名】ウスケ,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ミンゲス,クリストフ
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-509114(JP,A)
【文献】特開2004-204194(JP,A)
【文献】特開2013-116982(JP,A)
【文献】特表2015-529270(JP,A)
【文献】特表2016-515656(JP,A)
【文献】特表2015-504926(JP,A)
【文献】特開2013-194196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/00
C08K 3/02
C08K 3/32
C08K 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)10~98.5質量%の熱可塑性ポリアミド、
B)1~
10質量%の赤リン、
C)0.5~15質量%のホスホン酸のアルミニウム塩、
D)0~55質量%の繊維状又は粒状充填剤又はその混合物、
E)0~30質量%のさらなる添加剤
を含み、A)~E)の質量百分率の合計が100%である、熱可塑性成形材料。
【請求項2】
A)20~97.5質量%
B)1~10質量%
C)0.5~15質量%
D)1~50質量%
E)0~25質量%
を含み、A)~E)の質量百分率の合計が100%である、請求項1に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項3】
成分C)が、
[Al
2(HPO
3)
3・x(H
2O)
q (式I)
(式中、q=0~4である)
又は
Al
2M
a(HPO
3)
b(OH)
cx(H
2O)
d (式II)
(式中、
Mはアルカリ金属イオンを表し、
a = 0.01~1.5
b = 2.63~3.5
c = 0~2
d = 0~4である)
又は
Al
2(HPO
3)
e(H
2PO
3)
fx(H
2O)
g (式III)
(式中、
e=2~2.99
f=2~0.01
g=0~4である)
又は
アルミニウムホスファイト及びAI
2(HPO
3)
3x0.1~30AI
2O
3x0~50H
2O (式IV)の種類の酸化アルミニウムの混合物
又は
一級アルミニウムホスホネート[Al(H
2PO
3)
3] (式V)
又は
塩基性アルミニウムホスホネート[Al(OH)H
2PO
3)x・2H
2O] (式VI)
又はそれらの混合物、
から構成される、請求項1又は2に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項4】
成分C)として式IIの化合物を含有し、式中、Mがナトリウム及び/又はカリウムを表す、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項5】
成分C)が、
二級アルミニウムホスホネート[Al
2(HPO
3)
3] (式Ia)
又は
アルミニウムホスホネート四水和物[Al
2(HPO
3)
3・4H
2O] (式Ib)
又はそれらの混合物から構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項6】
成分C)が、アルミニウムホスファイト及びAI
2(HPO
3)
3x0.2~20Al
2O
3x0~50H
2O(式IV)の種類の酸化アルミニウムの混合物から構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項7】
成分C)が式IIの化合物から構成され、式中、aが0.15~0.4、及びbが2.80~3、及びcが0.01~0.1である、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項8】
成分C)が式IIIの化合物から構成され、式中、eが2.834~2.99、及びfが0.332~0.03、及びgが0.01~0.1である、請求項1から7のいずれか一項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項9】
繊維、フィルム及び成形品の製造のための、請求項1から8のいずれか一項に記載の熱可塑性成形材料の使用方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の熱可塑性成形材料から得ることができる繊維、フィルム及び成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
A)10~98.5質量%の熱可塑性ポリアミド、
B)1~20質量%の赤リン、
C)0.5~15質量%のホスホン酸のアルミニウム塩、
D)0~55質量%の繊維状又は粒状充填剤又はその混合物、
E)0~30質量%のさらなる添加剤
を含み、A)~E)の質量百分率の合計が100%である、熱可塑性成形材料に関する。
【0002】
本発明はさらに、これらポリアミド混合物から構成される難燃性成形材料、及び繊維、フィルム及び成形品を製造するためのそのような成形材料の使用、及び得られる任意の種類の成形物、繊維及びフィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
赤リンは、特にガラス繊維強化ポリアミド及び数々のさらなるプラスチックのための極めて効果的な難燃剤として、長い間知られている。しかしながら、非常に幅広い様々な応用に対して、プラスチック成形材料には、単なる高い難燃性以上のものを提供することが必要とされる。代わりに、特に電気及び電子分野における要求が厳しい応用の場合、高い難燃性と共に非常に良好な機械的抵抗及びグローワイヤ抵抗からなる均衡のとれた製品プロファイルを達成するために、材料特性を調整することの重要性が高まっている。
【0004】
特に、例えば高応力のスナップフィットが設けられる薄壁の構成要素部品においては、用いる材料が特に良好な伸び値を有するだけでなく、その靭性の点で非常に堅牢であることが重要である。
【0005】
難燃剤を含まない同様の組成物と比較して、ハロゲン非含有の難燃剤を含むガラス繊維強化ポリアミド化合物は一般に、機械的特性、特に破断伸び及び衝撃強さに関して低下を示す。しかしながら、オレフィン(コ)ポリマーをベースにした耐衝撃性改良剤を添加すると、多くの場合、難燃性特性が著しく低下し、特にグローワイヤ抵抗が不十分になる。
【0006】
WO2013/083247は、ジアルキルホスフィン酸と組み合わせて熱可塑性プラスチックに一般に用いることができるホスファイトをベースとする難燃剤を開示している。
【0007】
しかしながら、機械的特性及びグローワイヤ試験には、改善が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって本発明は、十分な難燃性、特にグローワイヤ抵抗性、及びより良好な機械的特性を、様々な組成物のAlホスファイトを赤リンへ添加することにより達成する、ハロゲン非含有の難燃性熱可塑性成形材料を提供することを目的とする。
【0010】
よって導入部で定義した成形材料が見出された。好ましい実施形態は従属請求項に見出される。
【0011】
本発明の成形材料は、成分A)として、10~98.5質量%、好ましくは20~97.5質量%、特に30~80質量%の、少なくとも1種のポリアミドを含む。
【0012】
本発明による成形材料のポリアミドは一般に、ISO 307に従って96質量%硫酸中0.5質量%溶液で25℃で測定して、90~350ml/g、好ましくは110~240ml/gの固有粘度を有する。
【0013】
例として米国特許第2071250号、第2071251号、第2130523号、第2130948号、第2241322号、第2312966号、第2512606号及び第3393210号に記載されている種類の、モル質量Mw(質量平均)が少なくとも5000の半結晶性又は非晶質樹脂が好ましい。
【0014】
その例は、7~13員環を有するラクタム、例えばポリカプロラクタム、ポリカプリロラクタム及びポリラウロラクタムから誘導されるポリアミド、及びジカルボン酸のジアミンとの反応により得られるポリアミドである。
【0015】
用いることができるジカルボン酸には、6~12個の炭素原子、特に6~10個の炭素原子を有するアルカンジカルボン酸、及び芳香族ジカルボン酸が含まれる。これらには酸のみ、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオイック酸、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸が含まれる。
【0016】
特に適したジアミンは、6~12個の炭素原子、特に6~8個の炭素原子を有するアルカンジアミン、及びm-キシリレンジアミン(例えば、BASF SE社からのUltramid(登録商標)X17、MXDAのアジピン酸に対するモル比が1:1)、ジ(4-アミノフェニル)メタン、ジ(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(4-アミノシクロヘキシル)プロパン又は1,5-ジアミノ-2-メチルペンタンである。
【0017】
好ましいポリアミドは、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、及びポリカプロラクタム、及び特に5~95質量%の割合のカプロラクタム単位を有する6/66コポリアミド(例えば、BASF SE社からのUltramid(登録商標)C31)である。
【0018】
適したポリアミドは、ω-アミノアルキルニトリル、例えばアミノカプロニトリル(PA6)、及びヘキサメチレンジアミンとアジポジニトリルと(PA66)から、いわゆる水の存在下における直接重合によって得ることができるものをさらに含み、例えばDE-A10313681、EP-A1198491及びEP922065に記載されている。
【0019】
また、例えば1,4-ジアミノブタンをアジピン酸と高くした温度で凝縮させることよって得ることができるポリアミド(ポリアミド4、6)も含まれる。この構造を有するポリアミドの製造方法は、例えばEP-A38094、EP-A38582及びEP-A39524に記載されている。
【0020】
また、2種以上の上述のモノマー又は任意の所望の混合比での複数のポリアミドの混合物の共重合によって得ることができるポリアミドも適している。ポリアミド66と他のポリアミドとの混合物、特に6/66コポリアミドが、特に好ましい。
【0021】
0.5質量%未満、好ましくは0.3質量%未満のトリアミン含有率を有する半芳香族コポリアミド、例えばPA6/6T及びPA66/6T(EP-A299444参照)も、特に有利であることが証明されている。さらなる高温耐性を有するポリアミドが、EP-A1994075に開示されている(PA6T/6I/MXD6)。
【0022】
低いトリアミン含有率を有する好ましい半芳香族コポリアミドの製造は、EP-A129195及び129196に記載されている方法によって行い得る。
【0023】
次の非包括的なリストは、述べたポリアミド及び本発明における他のポリアミドA)、及び存在するモノマーを含む。
【0024】
ABポリマー:
PA6 ε-カプロラクタム
PA7 エナントラクタム
PA8 カプリロラクタム
PA9 9-アミノペラルゴン酸
PA11 11-アミノウンデカン酸
PA12 ラウロラクタム
AA/BBポリマー
PA46 テトラメチレンジアミン、アジピン酸
PA66 ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸
PA69 ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸
PA610 ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸
PA612 ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸
PA613 ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸
PA1212 1,12-ドデカンジアミン、デカンジカルボン酸
PA1313 1,13-ジアミノトリデカン、ウンデカンジカルボン酸
PA6T ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA9T 1,9-ノナンジアミン、テレフタル酸
PA MXD6 m-キシリレンジアミン、アジピン酸
PA6I ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸
PA6-3-T トリメチルヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA6/6T (PA6及びPA6T参照)
PA6/66 (PA6及びPA66参照)
PA6/12 (PA6及びPA12参照)
PA66/6/610 (PA66、PA6及びPA610参照)
PA6I/6T (PA6I及びPA6T参照)
PA PACM12 ジアミノジシクロヘキシルメタン、ドデカンジオイック酸
PA6I/6T/PACM PA6I/6T+ジアミノジシクロヘキシルメタンなど
PA12/MACMI ラウロラクタム、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、イソフタル酸
PA12/MACMT ラウロラクタム、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、テレフタル酸
PA PDA-T フェニレンジアミン、テレフタル酸
PA410 1,4-テトラメチレンジアミン、セバシン酸
PA510 1,5-ペンタメチレンジアミン、セバシン酸
PA10T 1,10-デカンジアミン、テレフタル酸
本発明の成形材料は、成分B)として、1~50質量%、特に1~20質量%、好ましくは1~10質量%、及び特に2~8質量%の赤リンを含む。
【0025】
好ましいハロゲン非含有の難燃剤B)、特にガラス繊維強化成形材料と組み合わせたものは、処理されていない形態で用いられ得る元素赤リンである。
【0026】
しかしながら、特に適しているのは、その中でリンが低分子量液体物質、例えばシリコーンオイル、パラフィンオイル又はフタル酸(特にジオクチルフタレート、EP176836参照)又はアジピン酸のエステルで、又はポリマー又はオリゴマー化合物で、例えばフェノール樹脂又はアミノプラスト及びポリウレタンで(EP-A384232、DE-A19648503参照)、表面コーティングされている製剤である。そのようないわゆる鈍化剤は一般に、100質量%のB)に対して0.05~5質量%の量で存在する。
【0027】
赤リンの濃縮物も、例えばポリアミドA)又はエラストマーE)中で、適した難燃剤である。特にポリオレフィンホモポリマー及びコポリマーは、適した濃縮ポリマーである。しかしながら、ポリアミドが熱可塑性樹脂として使用されない場合、濃縮ポリマーの割合は、本発明による成形材料中の成分A)~E)の質量に対して35質量%を超えてはならない。
【0028】
好ましい濃縮組成物は、
30~90質量%、好ましくは45~70質量%のポリアミドA)又はエラストマー(E)、
10~70質量%、好ましくは30~55質量%の赤リン(B)である。
【0029】
バッチに用いられるポリアミドは、A)とは異なり得る、又は不適合性又は融点の違いが成形材料に悪影響を及ぼさないように、好ましくはA)と同一であり得る。
【0030】
成形材料中に分布するリン粒子の平均粒径(d50)は、好ましくは0.0001~0.5mmの範囲にあり、特に0.001~0.2mmである。
【0031】
本発明の成形材料は、成分C)として、0.5~15質量%、好ましくは0.5~13質量%、特に1~10質量%のホスホン酸の少なくとも1種のアルミニウム塩を含む。
【0032】
ホスホン酸は、実験式H3PO3を有する化合物を意味すると理解される[CAS番号13598-36-2]。ホスホン酸の塩は、ホスホネートとして知られている。ホスホン酸は、2種の互変異性体の形態であり得、その三重結合型(tribonded form)はリン原子上に自由電子対を持ち、及び四重結合型(tetrabonded form)はリンに二重結合した酸素を持つ(P=O)。互変異性平衡は全体に、二重結合した酸素を持つ型の側面にある。
【0033】
A.F.Holleman,E.Wiberg:Lehrbuch der Anorganischen Chemie、第101版、Walter de Gruyter,Berlin/New York 1995,ISBN3-11-012641-9、第764頁によれば、「亜リン酸」及び「ホスファイト」という用語は、三重結合型にのみ使用するべきである。
【0034】
現在の文献においては、「亜リン酸」及び「ホスファイト」という用語は、リンに二重結合した酸素(P=O)を持つ四重結合型にも使用され、従ってホスホン酸及び亜リン酸及びホスホネート及びホスファイトという用語が互いに同義で使用される。
【0035】
好ましい成分C)は、
[Al2(HPO3)3・x(H2O)q (式I)
(式中、q=0~4である)
又は
Al2Ma(HPO3)b(OH)cx(H2O)d (式II)
(式中、
Mはアルカリ金属イオンを表し、
a = 0.01~1.5
b = 2.63~3.5
c = 0~2
d = 0~4である)
又は
Al2(HPO3)e(H2PO3)fx(H2O)g (式III)
(式中、
e=2~2.99
f=2~0.01
g=0~4である)
又は
アルミニウムホスファイト及びAI2(HPO3)3x0.1~30AI2O3x0~50H2O (式IV)の種類の酸化アルミニウムの混合物
又は
一級アルミニウムホスホネート[Al(H2PO3)3] (式V)
又は
塩基性アルミニウムホスホネート[Al(OH)H2PO3)x・2H2O] (式VI)
又はそれらの混合物、
から構成される。
【0036】
好ましい成形材料は、成分C)として式IIの化合物を含み、式中、Mはナトリウム及び/又はカリウムを表す。
【0037】
式Iの好ましい化合物は、
二級アルミニウムホスホネート[Al2(HPO3)3] (式Ia)
又は
アルミニウムホスホネート四水和物[Al2(HPO3)3・4H2O] (式Ib)
又はそれらの混合物である。
【0038】
式IVの好ましい化合物は、アルミニウムホスファイト及びAI2(HPO3)3x0.2~20Al2O3x0~50H2O(式IV)及び非常に特に好ましくはAI2(HPO3)3x1~3Al2O3x0~50H2Oの種類の酸化アルミニウムの混合物から構成される。
【0039】
式IIの好ましい化合物C)は、式中、aが0.15~0.4を表し、bが2.80~3を表し、cが0.01~0.1を表す化合物である。
【0040】
さらに好ましい成分C)は、式IIIの化合物から構成され、式中、eは2.834~2.99を表し、fは0.332~0.03を表し、gは0.01~0.1を表す。
【0041】
特に好ましい化合物C)は、式II又はIIIの化合物であり、式中、a、b及びcは、及びe及びfも、対応するホスホン酸のアルミニウム塩が全体的に帯電しないような数のみ想定することができる。
【0042】
CAS番号15099-32-8、119103-85-4、220689-59-8、56287-23-1、156024-71-4(二級アルミニウムホスホネート四水和物)、71449-76-8(二級アルミニウムホスホネート)及び15099-32-8を有するアルミニウムホスファイトが特に好ましい。
【0043】
記載するホスホン酸のアルミニウム塩は、個別に又は混合物として用いてよい。
【0044】
アルミニウムホスファイトが0.2~100μmの粒径を有する場合、その粒径分布は、通常の分析方法のレーザー回折により決定可能であることが好ましい。
【0045】
好ましいアルミニウムホスファイトの製造は、通常は、アルミニウム源とリン源とを、溶媒中20℃~200℃で最大4日間の期間にわたって反応させることにより行う。この目的のために、アルミニウム源及びリン源を混合し、熱水条件下又は還流下で加熱し、ろ過し、洗浄して乾燥させる。ここで好ましい溶媒は水である。
【0046】
本発明による成分C)として使用するホスホン酸のアルミニウム塩の製造は、例えばWO2013/083247によることが可能である。
【0047】
繊維状又は粒状充填剤D)の例には、炭素繊維、ガラス繊維、ガラスビーズ、非晶質シリカ、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、チョーク、粉末状石英、マイカ、硫酸バリウム及び長石が含まれ、これらは0~55質量%、好ましくは1~50質量%、特に5~40質量%の量で用いられ得る。
【0048】
好ましい繊維状充填剤には、炭素繊維、アラミド繊維及びチタン酸カリウム繊維が含まれ、ここでEガラスの形態のガラス繊維が特に好ましい。これらは、ロービング又はチョップドガラスとして商業的に通常の形態で用いられ得る。
【0049】
繊維状充填剤は、熱可塑性プラスチックとの適合性を改善するために、シラン化合物で表面前処理されていてもよい。
【0050】
適したシラン化合物は、一般式
(X-(CH
2)
n)
k-Si-(O-C
mH
2m+1)
4-k
のものであり、式中、置換基は以下のように定義される:
【化1】
【0051】
式中、nは、2~10の整数、好ましくは3~4であり、
mは、1~5の整数、好ましくは1~2であり、
kは、1~3の整数、好ましくは1である。
【0052】
好ましいシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン及び置換基Xとしてグリシジル基を含む対応するシランである。
【0053】
シラン化合物は一般に表面コーティングに、0.01~2質量%、好ましくは0.025~1.0質量%、及び特に0.05~0.5質量%の量(Dに対して)で使用される。
【0054】
針状の鉱物充填剤も適している。
【0055】
本発明において、針状の鉱物充填剤とは、際立って針状の特徴を有する鉱物充填剤を意味すると理解される。一例は、針状珪灰石である。鉱物のL/D(長さ対直径)比は、好ましくは8:1~35:1、好ましくは8:1~11:1である。鉱物充填剤は、任意に、上述のシラン化合物で前処理されていてもよいが、前処理は本質的な要件ではない。
【0056】
さらなる充填剤の例には、カオリン、焼成カオリン、珪灰石、タルク及びチョーク、沈殿カルサイト及び薄板状又は針状のナノ充填剤が、好ましくは0.1~10%の量で含まれる。この目的のために好ましく使用される材料は、マイカ、ベーマイト、ベントナイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、針状形態の酸化亜鉛及びヘクトライトである。薄板状ナノ充填剤と、有機バインダーとの間の良好な適合性を得るために、薄板状ナノ充填剤は、従来技術による有機変性に付される。本発明のナノ複合材料への薄板状又は針状のナノ充填剤の添加は、機械的強度のさらなる増加につながる。
【0057】
成形材料は、成分E)として、0~30質量%、好ましくは0~25質量%の量のさらなる添加剤を含み得る。
【0058】
ここで1~15質量%、好ましくは1~10質量%、特に1~8質量%の量で考えられるのは、エラストマーポリマー(しばしば耐衝撃性改良剤、エラストマー又はゴムとも称される)である。
【0059】
これらは非常に一般には、次のモノマーの少なくとも2種から好ましくは構成されるコポリマーである:エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブテン、イソプレン、クロロプレン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、及びアルコール成分中の1~18個の炭素原子を有する(メタ)アクリレート。
【0060】
そのようなポリマーは、例えばHouben-Weyl,Methoden der organischen Chemie[Methods of organic chemistry]、第14/1巻(Georg-Thieme-Verlag,Stuttgart,1961)、第392頁~第406頁、及びC.B.Bucknallによるモノグラフ「Toughened Plastics」(Applied Science Publishers,London,1977)に記載されている。
【0061】
これらのエラストマーのいくつかの好ましい種類を、以下に記載する。
【0062】
好ましい成分E)は、
E1) 40~98質量%、好ましくは50~94.5質量%のエチレン、
E2) 2~40質量%、好ましくは5~40質量%の、1~18個の炭素原子を有する(メタ)アクリレート、又は/及び
E3) 0~20質量%、好ましくは0.05~10質量%の、エチレン性不飽和モノ-又はジカルボン酸、
又はカルボン酸無水物又はエポキシ基又はこれらの混合物の群から選択される官能性モノマー(ここで、E1)~E3)の質量百分率の合計は100%である)、
から構成されるエチレンコポリマー、又は
最大で72%まで亜鉛で中和されているエチレン-(メタ)アクリル酸コポリマー
をベースとする耐衝撃性改良剤である。
【0063】
特に好ましくは、
E1) 50~69.9質量%のエチレン、
E2) 30~40質量%の、1~18個の炭素原子を有する(メタ)アクリレート、
E3) 0.1~10質量%の請求項1に記載の官能性モノマー、
(ここで、E1)~E3)の質量百分率の合計は100%である)
から構成されるエチレンコポリマーである。
【0064】
官能基E3)の割合は、100質量%のE)に対して、0.05~5質量%、好ましくは0.2~4質量%、特に0.3~3.5質量%である。
【0065】
特に好ましい成分E3)は、エチレン性不飽和モノ-又はジカルボン酸、又はそのような酸の官能性誘導体から構成される。
【0066】
原則として、アクリル酸又はメタクリル酸D2の第一級、第二級及び第三級C1~C18-アルキルエステルの任意のものが適しているが、1~12個の炭素原子、特に2~10個の炭素原子を有するエステルが好ましい。
【0067】
それらの例には、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチル及びtert-ブチル、2-エチルヘキシル、オクチル及びデシルアクリレート、及びメタクリル酸の対応するエステルが含まれる。これらの中で、n-ブチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレートが特に好ましい。
【0068】
エステルに加えて、オレフィンポリマーは、エチレン性不飽和モノ-又はジカルボン酸の酸官能性及び/又は潜在的に酸官能性のモノマーも含み得、又はエポキシ含有モノマーを含み得る。
【0069】
モノマーE3)のさらなる例として、アクリル酸、メタクリル酸、これらの酸の第三級アルキルエステル、特にブチルアクリレート、及びジカルボン酸、例えばマレイン酸及びフマル酸及びこれらの酸の無水物、及びそれらのモノエステルが含まれる。
【0070】
「潜在的酸官能性モノマー」とは、重合条件下で、又はオレフィンポリマーの成形材料への組み込み中に、遊離酸基を形成する化合物を意味すると理解される。例として、最大で20個までの炭素原子を有するジカルボン酸の無水物、特に無水マレイン酸、及び上述の酸の第三級C1~C12-アルキルエステル、特にtert-ブチルアクリレート及びtert-ブチルメタクリレートが含まれる。
【0071】
上記エチレンコポリマーの製造は、それ自体既知の方法により、好ましくは高圧及び高くした温度でのランダム共重合によって、行い得る。
【0072】
エチレンコポリマーのメルトフローインデックスは、一般に1~80g/10分の範囲である(2.16kg荷重下190℃で測定)。
【0073】
これらのエチレンコポリマーの分子量は、10000~500000g/mol、好ましくは15000~400000g/molである(MnはPS較正を用いて1,2,4-トリクロロベンゼン中のGPCによって判定される)。
【0074】
好ましく使用される商業的に入手可能な製品は、Fusabond(登録商標)A560、Lucalen(登録商標)A2910、Lucalen(登録商標)A3110、Nucrel3990、Nucrel925、Lotader AX9800、及びIgetabond FS7Mである。
【0075】
上記のエチレンコポリマーは、それ自体既知の方法、好ましくは高圧及び高くした温度でのランダム共重合によって製造し得る。対応する方法はよく知られている。
【0076】
他の好ましいエラストマーは、その製造が例えばBlackleyによるモノグラフ「Emulsion Polymerization」に記載されているエマルジョンポリマーである。使用し得る乳化剤及び触媒は、それ自体既知である。
【0077】
E2)単位を含まないが酸成分E3)がZnで中和されているコポリマーが、特に好ましい。ここで、最大で72%まで亜鉛で中和されているエチレン-(メタ)アクリル酸コポリマー(DuPont社からSurlyn(登録商標)9520として商業的に入手可能)が好ましい。
【0078】
上記のゴム種の混合物を使用することも可能であることが理解されよう。
【0079】
さらなる添加剤E)は、最大で30質量%まで、好ましくは20質量%までの量で存在し得る。
【0080】
成分E)として、本発明による成形材料は、0.05~3質量%、好ましくは0.1~1.5質量%、特に0.1~1質量%の滑剤を含み得る。
【0081】
10~44個の炭素原子、好ましくは12~44個の炭素原子を有する脂肪酸のAl塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、又はエステル又はアミドが好ましい。
【0082】
金属イオンは、好ましくはアルカリ土類金属及びAlであり、Ca又はMgが特に好ましい。
【0083】
好ましい金属塩は、Caステアレート及びCaモンタナート、及びAlステアレートである。
【0084】
異なる塩の混合物を任意の所望の混合比で使用することも可能である。
【0085】
カルボン酸は一塩基又は二塩基であり得る。例として、ペラルゴン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、マルガリン酸、ドデカンジオイック酸、ベヘン酸、及び特に好ましくはステアリン酸、カプリン酸並びにモンタン酸(30~40個の炭素原子を有する脂肪酸の混合物)が含まれる。
【0086】
脂肪族アルコールは一価~四価(mono- to tetrahydric)であり得る。アルコールの例には、n-ブタノール、n-オクタノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びペンタエリスリトールが含まれ、ここでグリセロール及びペンタエリスリトールが好ましい。
【0087】
脂肪族アミンは単官能~三官能であり得る。その例として、ステアリルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、及びジ(6-アミノヘキシル)アミンが挙げられ、ここでエチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミンが特に好ましい。好ましいエステル又はアミドは、対応してグリセリルジステアレート、グリセリルトリステアレート、エチレンジアミンジステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリルトリラウレート、グリセリルモノベヘナート及びペンタエリスリチルテトラステアレートである。
【0088】
異なるエステル又はアミド又はエステルをアミドと任意の所望の混合比で組み合わせた混合物も、使用することが可能である。
【0089】
成分E)として、本発明による成形材料は、0.05~3質量%、好ましくは0.1~1.5質量%、及び特に0.1~1質量%の、Cu安定剤、好ましくは銅(I)ハロゲン化物を、特に、アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくはKIとの混合物で、特に1:4の比で、含み得る。
【0090】
一価(monovalent)の銅の適した塩は、PPh3との銅(I)錯体、酢酸銅(I)、塩化銅(I)、臭化銅(I)及びヨウ化銅(I)である。これらは、ポリアミドに対して、銅5~500ppm、好ましくは10~250ppmの量で存在する。
【0091】
有利な特性は、銅がポリアミド中で分子分散の形態である場合に、特に得られる。これは、ポリアミド、一価の銅の塩及びアルカリ金属ハロゲン化物を、均質な固溶体の形態で含む濃縮物が、成形材料に添加される場合に達成される。典型的な濃縮物は、例として、79~95質量%のポリアミドと、21~5質量%のヨウ化銅又は臭化銅及びヨウ化カリウムの混合物とから構成される。均質な固溶体中の銅の濃度は、溶体の全質量に対して、好ましくは0.3~3質量%、特に0.5~2質量%であり、ヨウ化銅(I)のヨウ化カリウムに対するモル比は、1~11.5、好ましくは1~5である。
【0092】
濃縮物に適したポリアミドは、ホモポリアミド及びコポリアミド、特にポリアミド6及びポリアミド6.6である。
【0093】
適した立体障害フェノールE)には、フェノール環上に少なくとも1種のかさ高な基を有するフェノール構造を有する原則としてあらゆる化合物が含まれる。
【0094】
好ましくは、考えられる化合物は、例えば式
【化2】
(式中、
R
1及びR
2は、アルキル基、置換アルキル基又は置換トリアゾール基を表し、ここでラジカルR
1及びR
2は、同一又は異なってよく、且つR
3は、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基又は置換アミノ基を表す)
の化合物である。
【0095】
述べた種類の酸化防止剤は、例えばDE-A2702661(US4360617)に記載されている。
【0096】
好ましい立体障害フェノール類の別の群は、置換ベンゼンカルボン酸から、特に置換ベンゼンプロピオン酸から誘導される。
【0097】
この部類からの特に好ましい化合物は、式
【化3】
(式中、R
4、R
5、R
7及びR
8は、互いに独立して、それ自体置換基であり得る(そのうち少なくとも1個がかさ高な基である)C
1~C
8-アルキル基であり、R
6は、1~10個の炭素原子を有し且つ主鎖中にC-O結合を有し得る二価(divalent)の脂肪族ラジカルである)の化合物である。
【0098】
この式の好ましい化合物は、
【化4】
(BASF SE社からのIrganox(登録商標)245)
【化5】
(BASF SE社からのIrganox(登録商標)259)
である。
【0099】
立体障害フェノールは、全体で例えば、
2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジステアリル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート、2,6,7-トリオキサ-1-ホスファビシクロ[2.2.2]オクト-4-イルメチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマート、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル-3,5-ジステアリルチオトリアジルアミン、2-(2’-ヒドロキシ-3’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシメチルフェノール、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルジメチルアミン、を含む。
【0100】
特に有効であることが証明されており、従って好ましく使用される化合物は、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェニル)、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox(登録商標)259)、ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]及びN,N’-ヘキサメチレンビス-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンアミド(Irganox(登録商標)1098)、及び特に適している上記BASF SE社からのIrganox(登録商標)245である。
【0101】
単独で又は混合物として用い得る酸化防止剤E)は、成形材料A)~E)の全質量に対して、0.05~3質量%まで、好ましくは0.1~1.5質量%、特に0.1~1質量%の量で存在する。
【0102】
ある場合には、フェノール性ヒドロキシ基に対してオルト位に1個以下の立体障害基を有する立体障害フェノールが、特に拡散光中での長期間貯蔵中に色堅牢度を評価する場合に、特に有利であることが証明されている。
【0103】
本発明による成形材料は、成分E)として、0.05~5質量%、好ましくは0.1~2質量%、特に0.25~1.5質量%のニグロシンを含み得る。
【0104】
ニグロシンは一般に、様々な形態(水溶性、脂溶性、ガソリン溶性)の黒色又は灰色のフェナジン染料(アジン染料)の群を指すと理解され、インジュリンに関連し、羊毛の染色及び捺染に、絹の黒色染色に、革の染色に、及び靴クリーム、ワニス、プラスチック、熱硬化性コーティング、インク等、及び顕微鏡用染色剤として使用される。
【0105】
ニグロシンは、ニトロベンゼン、アニリン及びアニリンヒドロクロリドを、金属鉄及びFeCl3と加熱することによって工業的に得られる(名称はラテン語のniger=黒に由来する)。
【0106】
成分E)は、遊離塩基として、又は塩(例えばヒドロクロリド)として使用し得る。
【0107】
ニグロシンに関するさらなる詳細は、例として、電子百科事典Roempp Online,Version 2.8,Thieme-Verlag Stuttgart,2006の見出し語“Nigrosin”に見出し得る。
【0108】
成分E)として、本発明による熱可塑性成形材料は、従来の処理助剤、例えば安定剤、酸化遅延剤、熱分解及び紫外線分解に反作用する薬剤、滑剤及び離型剤、着色剤、例えば染料及び顔料、成核剤、可塑剤等を含み得る。
【0109】
酸化遅延剤及び熱安定剤の例は、熱可塑性成形材料の質量に対して、最大で1質量%までの濃度の、立体障害フェノール及び/又はホスファイト及びアミン(例えばTAD)、ヒドロキノン、芳香族第二級アミン、例えばジフェニルアミン、これらの群の様々な置換された代表物及びそれらの混合物である。
【0110】
成形材料に対して一般に最大で2質量%までの量で用いられるUV安定剤の例には、様々な置換されたレソルシノール、サリチラート、ベンゾトリアゾール及びベンゾフェノンが含まれる。
【0111】
添加し得る着色剤には、無機顔料、例えば二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、酸化鉄及びカーボンブラック、及び有機顔料、例えばフタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、及び染料、例えばアントラキノンが含まれる。
【0112】
用いることができる成核剤には、フェニルホスフィネートナトリウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、及び好ましくはタルクが含まれる。
【0113】
本発明による熱可塑性成形材料は、それ自体既知の方法により、慣例の混合装置、例えばスクリュー押出機、ブラベンダーミル又はバンバリーミル中で出発成分を混合し、次いで得られた混合物を押し出すことによって、製造し得る。押出後、押出し物は冷却して粉砕し得る。個別の成分を予備混合し、次いで残りの出発材料を単独で及び/又は同様に混合物の形態で添加することも可能である。混合温度は一般に230℃~320℃の範囲である。
【0114】
さらなる好ましい手順では、成分B)~E)をプレポリマーと混合し、配合してペレット化してよい。次いで得られたペレット化材料を、不活性ガス下固相中で、成分A)の融点未満の温度で、連続的に又はバッチ式で所望の粘度に凝縮させる。
【0115】
本発明による熱可塑性成形材料は、改善された難燃性、特にグローワイヤ試験、及びより良好な機械的特性を特徴とする。
【0116】
従ってそれら材料は任意の種類の繊維、フィルム及び成形品の製造に適している。例として、プラグコネクタ、プラグ、プラグ部品、ケーブルハーネス構成要素、回路マウント、回路マウント構成要素、三次元射出成形回路マウント、電気接続要素、及びメカトロニクス構成要素が含まれる。
【0117】
熱可塑性成形材料から本発明により製造される成形品又は半製品は、例として自動車両、電気、電子、電気通信、情報技術、娯楽又はコンピュータ産業において、車両及び他の輸送手段において、船舶、宇宙船において、家庭設備において、オフィス設備において、スポーツにおいて、医療において、及び一般に高めた難燃性が必要とされる建物の製品及び部品において、使用することができる。
【0118】
改善された流動性を有するポリアミドの台所及び家庭分野用の可能な応用は、台所器具の構成要素、例えばフライ用品、スムージングアイロン、ノブ/ボタンの製造、及び庭及びレジャー分野における応用である。
【実施例】
【0119】
次の成分を使用した:
成分A1:
ISO 307に従って96質量%硫酸中0.5質量%溶液として25℃で測定して、150ml/gの固有粘度IVを有するポリアミド66(BASF SE社からのUltramid(登録商標)A27を用いた)。
【0120】
成分B:
10~30μmの平均粒径(d50)を有するオレフィンポリマーE1)中の赤リンの50%濃縮物:
エチレン59.8質量%、n-ブチルアクリレート35質量%、アクリル酸4.5質量%及び10g/10分のメルトインデックスMFI(190/2.16)を有する無水マレイン酸0.7質量%。
【0121】
コポリマーは、高くした温度及び高くした圧力でのモノマーの共重合により製造した。
【0122】
成分C:
ホスホン酸のアルミニウム塩(WO2013/083247A1、実施例4に従って製造)
式(II)のアルミニウムホスファイト:
2958gの水を最初に16Iの高圧撹拌容器に入れ、155℃に加熱して撹拌した。次に、硫酸アルミニウム溶液3622gとナトリウムホスファイト溶液2780gを同時に30分かけて加えた。得られた懸濁液を排出し、80℃でろ過し、温水で洗浄し、再分散させて再度洗浄した。フィルターケーキを乾燥機で220℃で乾燥させた。非常に高い熱安定性を有する本発明によるアルカリ金属-アルミニウム混合ホスファイトが、85%の収率で得られた。原子分光分析によると、反応生成物は18.3%のAl、32.0%のP、0.3%のS、及び0.07%のNaを含んでいた。残留水分量の水0.1%は、カールフィッシャー滴定によって決定した。
【0123】
成分C1V:
アルミニウムジエチルホスフィネート(Clariant Produkte GmbH社からのExolit(登録商標)OP1230)
【0124】
成分D:
ポリアミド用の標準チョップドガラス繊維、長さ=4.5mm、直径=10μm
【0125】
成分E2:
全ての場合でそれぞれ、
0.35質量%のIrganox(登録商標)1098及び
0.55質量%の市販のカルシウムステアレート(滑剤として)及び
0.70質量%の市販の酸化亜鉛
【0126】
成分E3:
180m2/gの特定のBET表面積(DIN66131に従い測定)を有する、ポリアミド6中のガスブラックの30%濃縮物。
【0127】
成形材料の製造
本発明により記載された改善点を実証するために、対応するプラスチック成形材料を配合によって製造した。個々の成分を二軸押出機(Berstorff ZSK26)で20kg/時間のスループット及び270℃のフラット温度プロファイルで混合し、ストランドとして排出して、ペレット化可能となるまで冷却し、ペレット化した。
【0128】
表1に示す調査用の試験片は、Arburg420C射出成形機で、溶解温度約270℃で、型温度約80℃で、射出成形した。
【0129】
応力試験用の試験片をISO527-2:/1993に従って製造し、衝撃強さ測定のための試験片をISO179-2/1eAに従って製造した。
【0130】
MVR測定はISO1133に従って行った。
【0131】
一方で成形材料の難燃性は、UL94V法(Underwriters Laboratories Inc. Standard of Safety、「Test for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances」、第14頁~第18頁、Northbrook、1998年)によって判定した。
【0132】
シートのグローワイヤ抵抗GWFI(グローワイヤの可燃性指数)を、IEC60695-2-12に従って行った。GWFIは、電圧伝導部品と接触するプラスチックの一般的な適合性試験である。3つの連続した試験で次の条件の1つが満たされた最高温度を決定した:(a)サンプルの発火がない、又は(b)グローワイヤ暴露時間の終了後30秒以内のアフターバーン時間又はアフターグロー時間及び基材の発火がない。
【0133】
表1の成分A)~E)の割合の合計は100質量%であった。
【0134】
【0135】
C1~C3:比較例
例1~例3:発明例
【0136】
表1のデータから明らかなように、本発明の相乗的組成物は、特に薄壁の場合、従来技術と比較してグローワイヤ試験で著しく短い燃焼時間を示す。