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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】処理液および処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
H01L21/308 C
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020531212
(86)(22)【出願日】2019-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2019026005
(87)【国際公開番号】W WO2020017283
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2020-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2018137151
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】上村 哲也
【審査官】馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/129509(WO,A1)
【文献】特開2014-185332(JP,A)
【文献】特開2014-220300(JP,A)
【文献】特表2017-508187(JP,A)
【文献】国際公開第2017/013924(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108149247(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304 ー 21/3063
H01L 21/308
H01L 21/465 ー 21/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化水素および臭化水素からなる群から選択される少なくとも1種のハロゲン化水素と、防食剤とを含む処理液であって、
前記処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数が、100個/mL未満であり、
前記処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数が、500個/mL未満であり、かつ、
前記処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数に対する、前記処理液1mLあたりの粒子径0.1μm以上の粗大粒子の個数の比が、0.010超、1.000未満であり、
前記防食剤の含有量に対する、前記ハロゲン化水素の含有量の比の値が0.01~50である、処理液。
【請求項2】
前記ハロゲン化水素の含有量が、前記処理液の全質量に対して、0.01質量%~15質量%の範囲内である、請求項1に記載の処理液。
【請求項3】
標準電極電位が0V超である金属イオンおよび酸化剤からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含み、
前記金属イオンおよび前記酸化剤の合計含有量が、前記処理液の全質量に対して、10質量ppb以下である、請求項1または2に記載の処理液。
【請求項4】
前記酸化剤の含有量が0.5質量ppb以下である、請求項3に記載の処理液。
【請求項5】
前記金属イオンおよび前記酸化剤の合計含有量に対する、前記ハロゲン化水素の含有量の比の値が10000~10000000の範囲内である、請求項3または4に記載の処理液。
【請求項6】
前記金属イオンおよび前記酸化剤の合計含有量に対する、前記防食剤の含有量の比の値が1000~5000000の範囲内である、請求項3~5のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項7】
前記防食剤が、ヒドロキシカルボン酸、アミノカルボン酸、ヒドロキサム酸、芳香族ジカルボン酸、ヘテロ環化合物、アルカリ土類金属、ランタノイドおよびこれらのイオンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項8】
前記防食剤が、クエン酸、グルコン酸、サリチル酸、フタル酸、アントラニル酸、ランタノイド、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、5-アミノテトラゾールサリチルヒドロキサム酸、アルカリ土類金属、ランタノイドおよびこれらのイオンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~7のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項9】
前記防食剤の含有量が、前記処理液の全質量に対して、0.01質量%~1質量%の範囲内である、請求項1~8のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項10】
電気伝導度が1.5mS/cm~500mS/cmである、請求項1~9のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項11】
pHが2以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項12】
カチオン界面活性剤をさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項13】
前記カチオン界面活性剤が、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン二塩酸塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルアミン塩酸塩、および塩化ドデシルピリジニウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項12に記載の処理液。
【請求項14】
前記カチオン界面活性剤の含有量が、前記処理液の全質量に対して、1質量ppm~0.5質量%の範囲内である、請求項12または13に記載の処理液。
【請求項15】
前記処理液が、さらに、塩化テトラメチルアンモニウムおよびポリアクリル酸アンモニウムの少なくとも一方を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項16】
InAl(1-y)Asを含むInAlAs層と、InPを含むInP層とを有する積層体の前記InP層を選択的に除去する処理方法であって、
請求項1~15のいずれか1項に記載の処理液を前記積層体に接触させる接触工程を含む、処理方法。
ただし、xおよびyは、それぞれ独立に、0超、1以下の実数である。
【請求項17】
InAl(1-y)Asを含むInAlAs層と、InPを含むInP層と、タングステンを含むW層とをこの順で有し、かつ、前記W層は前記InP層の表面の一部にのみ配置されている積層体の前記InP層の前記W層が配置されていない部分を選択的に除去する処理方法であって、
請求項12~14のいずれか1項に記載の処理液を前記積層体に接触させる接触工程を含む、処理方法。
ただし、xおよびyは、それぞれ独立に、0超、1以下の実数である。
【請求項18】
InAl(1-y)Asを含むInAlAs層と、InPを含むInP層とを有する積層体の前記InP層を選択的に除去する処理方法であって、
処理液を前記積層体に接触させる接触工程を含み、
前記処理液が、塩化水素および臭化水素からなる群から選択される少なくとも1種のハロゲン化水素と、防食剤とを含む処理液であって、前記処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数が、100個/mL未満であり、前記処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数が、500個/mL未満であり、かつ、前記処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数に対する、前記処理液1mLあたりの粒子径0.1μm以上の粗大粒子の個数の比が、0.010超、1.000未満である、処理方法。
ただし、xおよびyは、それぞれ独立に、0超、1以下の実数である。
【請求項19】
InAl(1-y)Asを含むInAlAs層と、InPを含むInP層と、タングステンを含むW層とをこの順で有し、かつ、前記W層は前記InP層の表面の一部にのみ配置されている積層体の前記InP層の前記W層が配置されていない部分を選択的に除去する処理方法であって、
処理液を前記積層体に接触させる接触工程を含み、
前記処理液が、塩化水素および臭化水素からなる群から選択される少なくとも1種のハロゲン化水素と、防食剤と、カチオン界面活性剤とを含む処理液であって、前記処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数が、100個/mL未満であり、前記処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数が、500個/mL未満であり、かつ、前記処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数に対する、前記処理液1mLあたりの粒子径0.1μm以上の粗大粒子の個数の比が、0.010超、1.000未満である、処理方法。
ただし、xおよびyは、それぞれ独立に、0超、1以下の実数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置は、通常、シリコン半導体基板に形成された受光素子(光電変換素子、フォトダイオード)を備えている。一方で、Siのエネルギーバンドギャップは1.1eVであることから、1.1μmよりも長波長の赤外線を検出することは原理的にできない。そこで、赤色から近赤外領域における受光素子の感度低下の問題を克服すべく、シリコンの代わりに、例えば、InP層とInGaAs層の積層構造からなる光電変換層を用いる技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の受光素子が2次元マトリックス状に配列されており、各受光素子は、第1電極、光電変換層および第2電極からなり、光電変換層は、第1電極側から、n-InGaAs層からなる第1化合物半導体層、および、p-InP層からなる第2化合物半導体層が積層された積層構造を有しており、受光素子と受光素子との間の領域における第2化合物半導体層は除去されており、第1電極および第1化合物半導体層は、受光素子間で共通であり、第1電極近傍における第1化合物半導体層の不純物濃度は、第2化合物半導体層近傍における第1化合物半導体層の不純物濃度よりも低い撮像装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/013924号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された撮像装置を製造する際には、InP層に対するエッチング処理が必要となるが、同時に、エッチングストップ層として機能するInAlAs層に対する防食も必要となる。
【0006】
そこで、本発明は、InP層とInAlAs層とを含む積層体に適用した際に、InP層を選択的に除去でき、かつ、InAlAs層に対するコロージョンが抑制された処理液および処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、所定の処理液によれば、InP層とInAlAs層とを含む積層体に適用した際に、InP層を選択的に除去でき、かつ、InAlAs層に対するコロージョンが抑制できることを知得し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下の[1]~[17]を提供する。
[1] 塩化水素および臭化水素からなる群から選択される少なくとも1種のハロゲン化水素と、防食剤とを含む処理液であって、
上記処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数が、100個/mL未満であり、
上記処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数が、500個/mL未満であり、かつ、
上記処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数に対する、上記処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数の比が、0.010超、1.000未満である、処理液。
[2] 上記ハロゲン化水素の含有量が、上記処理液の全質量に対して、0.01質量%~15質量%の範囲内である、上記[1]に記載の処理液。
[3] 標準電極電位が0V超である金属イオンおよび酸化剤からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含み、
上記金属イオンおよび上記酸化剤の合計含有量が、上記処理液の全質量に対して、10質量ppb以下である、上記[1]または[2]に記載の処理液。
[4] 上記酸化剤の含有量が0.5質量ppb以下である、上記[3]に記載の処理液。
[5] 上記金属イオンおよび上記酸化剤の合計含有量に対する、上記ハロゲン化水素の含有量の比の値が10000~10000000の範囲内である、上記[3]または[4]に記載の処理液。
[6] 上記金属イオンおよび上記酸化剤の合計含有量に対する、上記防食剤の含有量の比の値が1000~5000000の範囲内である、上記[3]~[5]のいずれか1つに記載の処理液。
[7] 上記防食剤が、ヒドロキシカルボン酸、アミノカルボン酸、ヒドロキサム酸、芳香族ジカルボン酸、ヘテロ環化合物、アルカリ土類金属、ランタノイドおよびこれらのイオンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の処理液。
[8] 上記防食剤が、クエン酸、グルコン酸、サリチル酸、フタル酸、アントラニル酸、ランタノイド、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、5-アミノテトラゾールサリチルヒドロキサム酸、アルカリ土類金属、ランタノイドおよびこれらのイオンからなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の処理液。
[9] 上記防食剤の含有量が、上記処理液の全質量に対して、0.01質量%~1質量%の範囲内である、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の処理液。
[10] 上記防食剤の含有量に対する、上記ハロゲン化水素の含有量の比の値が0.01~50である、上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の処理液。
[11] 電気伝導度が1.5mS/cm~500mS/cmである、上記[1]~[10]のいずれか1つに記載の処理液。
[12] pHが2以下である、上記[1]~[11]のいずれか1つに記載の処理液。
[13] カチオン界面活性剤をさらに含む、上記[1]~[12]のいずれか1つに記載の処理液。
[14] 上記カチオン界面活性剤が、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン二塩酸塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルアミン塩酸塩、および塩化ドデシルピリジニウムからなる群から選択される少なくとも1種である、上記[13]に記載の処理液。
[15] 上記カチオン界面活性剤の含有量が、上記処理液の全質量に対して、1質量ppm~0.5質量%の範囲内である、上記[13]または[14]に記載の処理液。
[16] InAl(1-y)Asを含むInAlAs層と、InPを含むInP層とを有する積層体の上記InP層を選択的に除去する処理方法であって、
上記[1]~[15]のいずれか1つに記載の処理液を上記積層体に接触させる接触工程を含む、処理方法。
ただし、xおよびyは、それぞれ独立に、0超、1以下の実数である。
[17] InAl(1-y)Asを含むInAlAs層と、InPを含むInP層と、タングステンを含むW層とをこの順で有し、かつ、上記W層は上記InP層の表面の一部にのみ配置されている積層体の上記InP層の上記W層が配置されていない部分を選択的に除去する処理方法であって、
上記[13]~[15]のいずれか1つに記載の処理液を上記積層体に接触させる接触工程を含む、処理方法。
ただし、xおよびyは、それぞれ独立に、0超、1以下の実数である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、InP層とInAlAs層とを含む積層体に適用した際に、InP層を選択的に除去でき、かつ、InAlAs層に対するコロージョンが抑制された処理液および処理方法を提供できる。
【0010】
本発明の処理液は、InP層に対するエッチングレートとInAlAs層に対するエッチングレートの比〔InP ER/InAlAs ER〕が大きいので、InP層に対する選択性が高い。
【0011】
また、本発明の処理液および処理方法によれば、InAlAs層上の残渣物が少ない。
また、本発明の処理液および処理方法によれば、InAlAs層上の表面粗さが小さい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、撮像装置の一例の模式的な一部端面図である。
図2図2は、撮像装置の製造方法の一例を説明するための光電変換層等の模式的な一部端面図である。
図3図3は、撮像装置の製造方法の一例を説明するための光電変換層等の模式的な一部端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、「~」を用いて表される範囲は「~」の両端をその範囲に含むものとする。例えば、「A~B」は「A」および「B」をその範囲に含む。
また、1Åは、0.1nmである。
【0014】
[処理液]
本発明の処理液について詳細に説明する。
本発明の処理液は、塩化水素および臭化水素からなる群から選択される少なくとも1種のハロゲン化水素と、防食剤とを含む。
【0015】
また、本発明の処理液は、処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数をA[個/mL]、処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数をB[個/mL]として、下記式(1)~(3)で表される関係を同時に満たす。
つまり、本発明の処理液においては、処理液1mLあたりの粒子径0.1μm以上の粗大粒子の個数が、100個/mL未満であり、処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数が、500個/mL未満であり、かつ、処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数に対する、処理液1mLあたりの粒子径0.1μm以上の粗大粒子の個数の比が、0.010超、1.000未満である。
A<100 (1)
B<500 (2)
0.010<A/B<1.000 (3)
【0016】
本発明においては、AおよびBが上記関係を満たすことが必須である。これらの関係を満たさない場合には、処理液の性能に悪影響を与えることとなる。
【0017】
A/B≧1.000であると、粒子径が大きな粗大粒子が過剰に存在するため、InP層をエッチングにより除去した後、この粒子が残存しやすく、InAlAs層上の残渣が増加する。また、InAlAs層のコロージョンも悪化する。
A/B≦0.010であると、粒子径が小さな粗大粒子が過剰に存在するため、InP層をエッチングにより除去する際に、この粒子が防食剤のInAlAs層への吸着を阻害するため、InAlAs層のコロージョンおよび表面粗さが悪化する。
【0018】
ここで、処理液中の粗大粒子の個数は、液中パーティクルカウンタ(KS-18F,リオン社製)を用いて測定した、粒子径0.10μm以上または粒子径0.05μm以上の粒子の個数(個/mL)である。
【0019】
処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数Bに対する、処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数Aの比の値A/Bは、好ましくは0.05~0.80であり、より好ましくは0.08~0.50であり、さらに好ましくは0.10~0.30である。
処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粗大粒子の個数Aは、上記A/Bが上記関係を満たす限りにおいて、好ましくは1個/mL以上100個/mL未満であり、より好ましくは1個/mL~80個/mLであり、さらに好ましくは1個/mL~50個/mLである。
処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粗大粒子の個数Bは、上記A/Bが上記関係を満たす限りにおいて、好ましくは1個/mL以上500個/mL未満であり、より好ましくは1個/mL~300個/mLであり、さらに好ましくは3個/mL~200個/mLである。
【0020】
〈ハロゲン化水素〉
ハロゲン化水素は塩化水素および臭化水素からなる群から選択される少なくとも1種であり、好ましくは塩化水素である。
【0021】
塩化水素は、本発明の処理液中において、分子状の塩化水素で存在していてもよいし、電離して水素イオンと塩化物イオンに解離していてもよい。
本発明の処理液を製造する際に用いる塩化水素は特に限定されないが、水溶液である塩酸を使用することが好ましい。
【0022】
臭化水素は、本発明の処理液中において、分子状の臭化水素で存在していてもよいし、電離して水素イオンと臭化物イオンに解離していてもよい。
本発明の処理液を製造する際に用いる臭化水素は特に限定されないが、水溶液である臭化水素酸を使用することが好ましい。
【0023】
《ハロゲン化水素の含有量》
本発明の処理液において、ハロゲン化水素の含有量は特に限定されないが、処理液の全質量に対して、0.001質量%~25質量%の場合が多い。
なかでも、処理液の全質量に対して、好ましくは0.01質量%~15質量%の範囲内であり、より好ましくは0.1質量%~10質量%の範囲内であり、さらに好ましくは0.5質量%~5質量%の範囲内であり、いっそう好ましくは0.5質量%~1質量%の範囲内である。ここで、ハロゲン化水素は、分子状のハロゲン化水素のみならず、ハロゲン化水素が水溶液中で電離して生じたとみなしうるハロゲン化物イオンおよび水素イオンを含む。
本発明の処理液において、ハロゲン化水素の含有量がこの範囲内であると、InAlAs上の表面粗さがより小さくなる。
【0024】
(ハロゲン化物イオンの測定方法・測定条件)
本発明の処理液中のハロゲン化水素の含有量は、イオンクロマトグラフィー法によって、アニオン成分であるハロゲン化物イオンを測定して求める。
イオンクロマトグラフィー法によるハロゲン化物イオンの含有量の測定範囲は、通常、数質量ppm~数十質量ppmであるため、ハロゲン化物イオンの含有量が数質量%の試料溶液の測定を行う場合は、適当な希釈倍率(通常、10~10000倍)で試料溶液を希釈して測定を行い、測定値に希釈倍率をかけて得られた値を試料溶液中のハロゲン化物イオンの含有量とする。
試料溶液中のハロゲン化物イオンの含有量がまったく未知である場合は、希釈倍率を1000倍として測定を行い、希釈した試料溶液中のハロゲン化物イオンの含有量が測定レンジ(数質量ppm~数十質量ppm)に入っているときは、その測定値に希釈倍率をかけて希釈前の試料溶液中のハロゲン化物イオンの含有量とし、測定レンジに入っていないときは、希釈倍率を変更して、測定値が測定レンジに入るまで測定を繰り返す。
【0025】
イオンクロマトグラフィー法によるハロゲン化物イオンの測定条件を以下に示す。
使用カラム: イオン交換樹脂(内径4.0mm、長さ25cm)
移動相: 炭酸水素ナトリウム溶液(1.7mmol/L)-炭酸ナトリウム溶液(1.8mmol/L)
流量: 1.5mL/min
試料注入量: 25μL
カラム温度: 40℃
サプレッサ: 電気透析形
検出器: 電気伝導度検出器(30℃)
【0026】
〈防食剤〉
防食剤は、好ましくはInAlAs(インジウムアルミニウムヒ素)層に対する防食剤である。
InAlAs層のハロゲン化水素によるエッチングはAlを起点として溶解が進行するが、防食剤がAlに吸着されることにより、Alの溶出が抑制され、InAlAs層がエッチング処理液から保護される。
【0027】
防食剤は、好ましくは、ヒドロキシカルボン酸、アミノカルボン酸、ヒドロキサム酸、芳香族ジカルボン酸、ヘテロ環化合物、アルカリ土類金属、ランタノイドおよびこれらのイオンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0028】
上記ヒドロキシカルボン酸の例は、クエン酸、グルコン酸およびサリチル酸(別名:2-ヒドロキシ安息香酸)であるが、これらに限定されるものではない。また、上記ヒドロキシカルボン酸は脱プロトン化されてイオンになっていてもよい。
【0029】
上記アミノカルボン酸の例は、アントラニル酸(別名:2-アミノ安息香酸)であるが、これに限定されるものではない。また、上記アミノカルボン酸は脱プロトン化またはプロトン化されてイオンになっていてもよい。
【0030】
上記ヒドロキサム酸の例は、サリチルヒドロキサム酸であるが、これに限定されるものではない。また、上記ヒドロキサム酸は脱プロトン化またはプロトン化されてイオンになっていてもよい。
【0031】
上記芳香族ジカルボン酸の例は、フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸であるが、これらに限定されるものではない。上記芳香族ジカルボン酸は、好ましくはフタル酸である。また、上記芳香族ジカルボン酸は、脱プロトン化されてイオンになっていてもよい。
【0032】
上記ヘテロ環化合物の例は、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、および5-アミノテトラゾールであるが、これらに限定されるものではない。上記ヘテロ環化合物はプロトン化されてイオンになっていてもよい。
【0033】
上記アルカリ土類金属の例は、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)であるが、これらに限定されるものではない。上記アルカリ土類金属は、好ましくはストロンチウム(Sr)またはバリウム(Ba)である。上記アルカリ土類金属はイオンになっていてもよい。上記アルカリ土類金属のイオンの例は、カルシウムイオン(Ca2+)、ストロンチウムイオン(Sr2+)およびバリウムイオン(Ba2+)であるが、これらに限定されるものではない。上記アルカリ土類金属のイオンは、好ましくはストロンチウムイオン(Sr2+)またはバリウムイオン(Ba2+)である。上記アルカリ土類金属のイオンの供給源は、例えば、上記アルカリ土類金属の水溶性塩である。このようなアルカリ土類金属の水溶性塩は好ましくは塩化物である。
【0034】
上記ランタノイドの例は、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロジウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)およびルテチウム(Lu)であるが、これらに限定されるものではない。上記ランタノイドはイオンになっていてもよい。上記ランタノイドのイオンの例は、ランタンイオン(La3+)、セリウムイオン(Ce3+,Ce4+)、プラセオジムイオン(Pr3+)、ネオジムイオン(Nd3+)、サマリウムイオン(Sm3+)、ユウロピウムイオン(Eu2+,Eu3+)、ガドリニウムイオン(Gd3+)、テルビウムイオン(Tb3+)、ジスプロジウムイオン(Dy3+)、ホルミウムイオン(Ho3+)、エルビウムイオン(Er3+)、ツリウムイオン(Tm3+)、イッテルビウムイオンYb3+)およびルテチウムイオン(Lu3+)であるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
上記防食剤は、好ましくはクエン酸、グルコン酸、サリチル酸、フタル酸、アントラニル酸、ランタノイド、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、5-アミノテトラゾールサリチルヒドロキサム酸、アルカリ土類金属、ランタノイドおよびこれらのイオンからなる群から選択される少なくとも1種であり、より好ましくはクエン酸、グルコン酸、サリチル酸、フタル酸およびアントラニル酸からなる群から選択される少なくとも1種であり、さらに好ましくはクエン酸およびフタル酸からなる群から選択される少なくとも1種であり、いっそう好ましくはクエン酸である。
【0036】
《防食剤の含有量》
本発明の処理液において、上記防食剤の含有量は特に限定されないが、処理液の全質量に対して、0.001質量%~5.0質量%の範囲の場合が多い。
なかでも、好ましくは0.01質量%~1.0質量%の範囲内であり、より好ましくは0.01質量%~0.08質量%であり、さらにいっそう好ましくは0.02質量%~0.07質量%である。
本発明の処理液において、防食剤の含有量がこの範囲内であると、InAlAsのコロージョンがより抑制され、かつ、InAlAs上の残渣物がより少なくなる。
【0037】
(防食剤の含有量の測定方法・測定条件)
なお、本発明の処理液中の防食剤の含有量は、ガスクロマトグラフィー-質量分析GC/MS)法によって測定することができる。
【0038】
GC/MS法による防食剤の含有量の測定条件を以下に示す。
ガスクロマトグラフ質量分析装置:GCMS-2020(島津製作所社製)
キャピラリーカラム:InertCap 5MS/NP 0.25mmI.D.×30m df=0.25μm
試料導入法:スプリット 75kPa 圧力一定
気化室温度:250℃
カラムオーブン温度:80℃(2min)-500℃(13min)昇温速度15℃/min
キャリアガス:ヘリウム
セプタムパージ流量:5mL/min
スプリット比:25:1
インターフェイス温度:250℃
イオン源温度:200℃
測定モード:Scan m/z=85~500
試料導入量:1μL
得られた測定結果から、防食剤を分類し、標品と比較して含有量を求める。
【0039】
〈ハロゲン化水素と防食剤の含有量比〉
本発明の処理液において、上記防食剤の含有量(Y[質量%]とする)に対する、上記ハロゲン化水素の含有量(X[質量%]とする)の比の値(X/Y)は特に限定されないが、好ましくは0.01~50であり、より好ましくは0.1~50であり、さらに好ましくは0.5~50である。
本発明の処理液において、X/Yがこの範囲内であると、InP層に対する選択性がより良好となり、さらに、InAlAs上の残渣物とInAlAs上の表面粗さのうち少なくとも一方がより良好になる。
【0040】
〈金属イオン・酸化剤〉
本発明の処理液は、標準電極電位が0V超である金属イオンおよび酸化剤からなる群から選択される少なくとも1種(以下「酸化剤等」という場合がある。)をさらに含んでもよい。
本発明の処理液が酸化剤等をさらに含む場合の酸化剤等の合計含有量は、特に限定されないが、処理液の全質量に対して、好ましくは10質量ppb以下であり、より好ましくは検出されないことである。酸化剤等が検出されない場合、処理液は酸化剤等を実質的に含まないということができ、酸化剤等の含有量を0質量pptとみなすことができる。
本発明の処理液において、酸化剤および標準電極電位が0V超である金属イオンからなる群から選択される少なくとも1種の含有量がこの範囲内であると、InAlAs層に対するコロージョンをより抑制することができる。
【0041】
《標準電極電位が0V超である金属イオン》
標準電極電位は、ある電気化学反応(電極反応)について、標準状態(反応に関与する全ての化学種の活量が1かつ平衡状態となっている時の電極電位であり、標準水素電極の電位を基準(0V)として表したものである。
標準電極電位が0V超である金属イオンの例は、ビスマスイオン(Bi3+,0.3172V)、銅イオン(Cu2+,0.340V)、水銀イオン(Hg 2+,0.796V)、銀イオン(Ag,0.7991V),パラジウムイオン(Pd2+,0.915V)、イリジウムイオン(Ir3+,1.156V)、白金イオン(Pt2+,1.188V)および金イオン(Au3+,1.52V)であるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
なお、本発明の処理液中の標準電極電位が0V超である金属イオンの含有量は、ICP/MS(誘導結合プラズマ/質量分析)法によって測定することができる。
【0043】
(金属イオンの含有量の測定条件)
ICP/MS法による金属イオンの含有量の測定条件を以下に示す。
ICP-MS分析装置:Agillent8800(Agillent社製)
RF出力(W):600
キャリアガス流量(L/min):0.7
メークアップガス流量(L/min):1
サンプリング位置(mm):18
【0044】
《酸化剤》
酸化剤は、本発明においては、InAlAs層のアルミニウムを酸化し、処理液中に溶出させる速度を加速する化合物を意味する。
酸化剤の例は、硝酸、過酸化水素および過ヨウ素酸であるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
本発明の処理液が酸化剤を含む場合の酸化剤の含有量は、特に限定されないが、処理液の全質量に対して、好ましくは0.5質量ppb以下であり、より好ましくは検出されないことである。
【0046】
(酸化剤の含有量の測定方法・測定条件)
本発明の処理液中の酸化剤の含有量は、イオンクロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー、分光光度計、マイクロプレートリーダーまたは滴定など、酸化剤の種類に応じた測定方法によって、測定することができる。
【0047】
((硝酸の含有量の測定方法・測定条件))
本発明の処理液中の硝酸の含有量は、イオンクロマトグラフィー法によって、アニオン成分である硝酸イオンを測定して求める。
イオンクロマトグラフィー法による硝酸イオンの含有量の測定範囲は、通常、数質量ppm~数十質量ppmであるため、硝酸イオンの含有量が数質量%の試料溶液の測定を行う場合には、適当な希釈倍率(通常、10~10000倍)で試料溶液を希釈して測定を行い、測定値に希釈倍率をかけて得られた値を試料溶液中の硝酸イオンの含有量とする。
試料溶液中の硝酸イオンの含有量がまったく未知である場合は、希釈倍率を1000倍として測定を行い、希釈した試料溶液中の硝酸イオンの含有量が測定レンジ(数質量ppm~数十質量ppm)に入っているときは、その測定値に希釈倍率をかけて希釈前の試料溶液中の硝酸イオンの含有量とし、測定レンジに入っていないときは、希釈倍率を変更して、測定値が測定レンジに入るまで測定を繰り返す。
【0048】
イオンクロマトグラフィー法による硝酸イオンの測定条件を以下に示す。
使用カラム: イオン交換樹脂(内径4.0mm、長さ25cm)
移動相: 炭酸水素ナトリウム溶液(1.7mmol/L)-炭酸ナトリウム溶液(1.8mmol/L)
流量: 1.5mL/min
試料注入量: 25μL
カラム温度: 40℃
サプレッサ: 電気透析形
検出器: 電気伝導度検出器(30℃)
【0049】
((過酸化水素の含有量の測定方法・測定条件))
本発明の処理液中の過酸化水素の含有量は、平沼過酸化水素カウンタ(HP-300,日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定する。
通常、一般的な測定濃度範囲は数質量ppm~数十質量ppmであるため、数質量%の試料の測定を行う場合には、適当な範囲に希釈(10~10000倍)して測定する。
測定して得られた値に希釈倍率を掛け、その値を実液の濃度とする。
濃度が未知の場合には、1000倍に濃縮して測定し、そのピークが数質量ppm~数十質量ppmに入っている場合は、その値を採用する。入っていない場合には、希釈倍率を変更し、最適化を行って濃度を求める。
【0050】
《ハロゲン化水素と酸化剤等の含有量比》
本発明の処理液において、上標準電極電位が0V超である金属イオンおよび記酸化剤の合計含有量(C+D[質量ppt])に対する、上記ハロゲン化水素の含有量(X[質量%])の比の値〔X/(C+D)〕は、特に限定されないが、5000~12000000の範囲内の場合が多い。
なかでも、好ましくは10000~10000000の範囲内であり、より好ましくは30000~8000000であり、さらに好ましくは50000~1000000である。ただし、ハロゲン化水素の含有量をX[質量%]、標準電極電位が0V超である金属イオンの含有量をC[質量ppt]、酸化剤の含有量をD[質量ppt]とする。
本発明の処理液において、X/(C+D)がこの範囲内であると、InAlAsのコロージョンをより抑制することができる。
【0051】
《防食剤と酸化剤等の含有量比》
また、本発明の処理液において、上記防食剤の含有量(Y[質量%])と上記標準電極電位が0V超である金属イオンおよび酸化剤の合計含有量(C+D[質量ppt])の比の値〔Y/(C+D)〕は、特に限定されないが、500~5500000の範囲内の場合が多い。
なかでも、好ましくは1000~5000000の範囲内であり、より好ましくは3000~4000000の範囲内であり、さらに好ましくは5000~1000000の範囲内である。ただし、防食剤の含有量をY[質量%]、酸化剤の含有量をC[質量ppt]、標準電極電位が0V超である金属イオンの含有量をD[質量ppt]とする。
本発明の処理液において、Y/(C+D)がこの範囲内であると、InAlAs上の残渣物がより少なくなる。
【0052】
〈カチオン界面活性剤〉
本発明の処理液は、さらに、カチオン界面活性剤を含んでもよい。
【0053】
《カチオン界面活性剤の種類》
上記カチオン界面活性剤の例は、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン二塩酸塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルアミン塩酸塩、および塩化ドデシルピリジニウムである。本発明の処理液は、これらのカチオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
上記カチオン界面活性剤はタングステンに対する防食剤として機能し、本発明の処理液がカチオン界面活性剤を含むと、エッチングによりInP層を除去する際にタングステンを含む層が溶解することを避けることができる。
【0054】
《カチオン界面活性剤の含有量》
本発明の処理液におけるカチオン界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、処理液の全質量に対して、1質量pp以上である場合が多い。
なかでも、好ましくは、処理液の全質量に対して、好ましくは1質量ppm~0.5質量%の範囲内であり、より好ましくは10質量ppm~0.3質量%の範囲内であり、さらに好ましくは100質量ppm~0.1質量%の範囲内である。
本発明の処理液において、カチオン界面活性剤の含有量がこの範囲内であると、InP層に対するエッチングレートを損なうことなく、タングステンを含む層に対するエッチングレートをより小さくすることができる。
【0055】
(カチオン界面活性剤の含有量の測定方法・測定条件)
本発明の処理液中のカチオン界面活性剤の含有量は、イオン交換クロマトグラフィー法、ガスクロマトグラフィー-質量分析法または液体クロマトグラフィー-質量分析法など、カチオン界面活性剤の種類に応じた測定方法によって測定することができる。
【0056】
液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)法により本発明の処理液中のカチオン界面活性剤の含有量を測定する場合の測定条件を以下に示す。
液体クロマトグラフ質量分析装置:UPLC-H-Class, Xevo G2-XS QTof(サーモフィーシャーズ社製)
・LC条件
装置: UPLC H-Class
カラム: ACQUITY UPLC C8 1.7μm,2.1×100mm
カラム温度: 40°C
移動相: A:0.1%ギ酸、B:0.1%ギ酸含有MeOH
流速: 0.5mL/min
注入量: 2μL
・MS条件
装置: Xevo G2-XS Q-Tof
イオン化モード: ESI ポジティブ/ネガティブ
キャピラリー電圧: 1.0kV/2.5kV
脱溶媒ガス: 1000L/hr,500°C
コーンガス: 50L/hr
コーン電圧: 40V(オフセット 80V)
コリジョンエナジー: 2eV
測定範囲: m/z 100-1000
測定モード: MS Sensitivity Mode(分解能/30,000)
・MS/MS条件
コリジョンエネルギー
Low Energy: 6eV
High Energy: 30eV to 50eV(ramp start to end)
得られた測定結果から、有機不純物中のm/Zが300~1000である帰属不明成分有機不純物を分類し、その含有量(相対量)もあわせて求める。
【0057】
〈添加剤〉
本発明の処理液の特性を損なわない範囲で、処理液は添加剤を含んでもよい。このような添加剤の例は、塩化テトラメチルアンモニウム(TMACl)およびポリアクリル酸アンモニウム(PAA)であるが、これらに限定されるものではない。
本発明の処理液がこれらの添加剤を含むと、InPの選択性がより良好なものとなる。
【0058】
〈pH調整剤〉
本発明の処理液の特性を損なわない範囲で、処理液はpH調整剤を含んでもよい。pH調整剤は、ハロゲン化水素およびその水溶液(ハロゲン化水素)、防食剤、界面活性剤、酸化剤および上記添加剤ではない。このようなpH調整剤の例は、メタンスルホン酸(MSA)およびジアザビシクロウンデセン(DBU)であるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
〈溶媒〉
本発明の処理液は溶媒を含んでもよい。
溶媒はハロゲン化水素および防食剤を溶解できるものであれば特に限定されない。溶媒としては、水が好ましい。
本発明の処理液の溶媒として使用することができる水は、特に限定されないが、高純度であることが好ましい。なかでも、蒸留水、ミリQ水またはRO(逆浸透)水が好ましい。
【0060】
〈電気伝導度〉
本発明の処理液の電気伝導度は、特に限定されないが、好ましくは1.5mS/cm~500mS/cmであり、より好ましくは10mS/cm~300mS/cmである。
本発明の処理液において、電気伝導度がこの範囲内であると、InAlAsのコロージョンをより抑制することができ、さらに、InAlAs上の残渣物をより少なくすることができ、かつ、InAlAs上の表面粗さをより小さくすることができる。
【0061】
本発明の処理液の電気伝導度は、電気伝導率計(導電率計(電気伝導率計):ポータブル型D-70/ES-70シリーズ,堀場製作所社製)を用いて測定した電気伝導度(mS/cm)である。
【0062】
〈pH〉
本発明の処理液のpHは、特に限定されないが、好ましくは3以下であり、より好ましくは2以下であり、さらに好ましくは1以下である。pHの下限は特に限定されないが、好ましくは-3である。
本発明の処理液において、pHがこの範囲内であると、InP層に対する選択性がより良好となる。
【0063】
本発明の処理液のpHは、23℃でpHメーター(pH計:ポータブル型D-70シリーズ,堀場製作所社製)を用いて測定したpHである。
【0064】
[処理液の製造方法]
本発明の処理液は、例えば、上記成分を混合し、精製することにより製造できる。
精製は、フィルターを用いて処理液をろ過することが望ましい。
【0065】
〈ろ過処理〉
本発明の処理液の製造方法は、フィルターを用いて被精製物である処理液をろ過することが望ましい。フィルターを用いて被精製物をろ過する方法は特に制限されないが、ハウジングと、ハウジングに収納されたフィルターカートリッジと、を有するフィルターユニットに、被精製物を加圧または無加圧で通過させる(通液する)のが好ましい。
【0066】
《フィルターの細孔径》
フィルターの細孔径は特に制限されず、被精製物のろ過用として通常使用される細孔径のフィルターが使用できる。中でも、フィルターの細孔径は、処理液が含有する粗大粒子の個数を低減しやすい点で、200nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましく、20nm以下が特に好ましく、10nm以下が最も好ましい。下限値としては特に制限されないが、一般に1nm以上が、生産性の観点から好ましい。
なお、本明細書において、フィルターの細孔径、および、細孔径分布とは、イソプロパノール(IPA)または、HFE-7200(「ノベック7200」、3M社製、ハイドロフロオロエーテル、COC)のバブルポイントによって決定される細孔径および細孔径分布を意味する。
【0067】
なお、フィルターは単独で用いてもよいし、他の細孔径を有するフィルターとともに使用してもよい。中でも、生産性により優れる観点から、細孔径のより大きなフィルターとともに使用するのが好ましい。この場合、予め細孔径のより大きなフィルターによってろ過した被精製物を、細孔径のより小さなフィルターに通液させれば、細孔径のより小さなフィルターの目詰まりを防げる。
【0068】
細孔径の異なる2種以上のフィルターを順次使用する形態としては特に制限されないが、被精製物が移送される管路に沿って、フィルターユニットを順に配置する方法が挙げられる。このとき、管路全体として被精製物の単位時間当たりの流量を一定にしようとすると、細孔径のより小さいフィルターユニットには、細孔径のより大きいフィルターユニットと比較してより大きな圧力がかかる場合がある。この場合、フィルターユニットの間に圧力調整弁、および、ダンパ等を配置して、小さい細孔径を有するフィルターユニットにかかる圧力を一定にしたり、また、同一のフィルターが収納されたフィルターユニットを管路に沿って並列に配置したりして、ろ過面積を大きくするのが好ましい。このようにすれば、より安定して、薬液中における粒子の数を制御できる。
【0069】
《フィルターの材料》
フィルターの材料としては特に制限されず、フィルターの材料として公知の材料が使用できる。具体的には、樹脂である場合、ナイロン(例えば、6-ナイロン及び6,6-ナイロン)等のポリアミド;ポリエチレン、及び、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリスチレン;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリ(メタ)アクリレート;ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー、エチレン-クロロトリフロオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、及び、ポリフッ化ビニル等のポリフルオロカーボン;ポリビニルアルコール;ポリエステル;セルロース;セルロースアセテート等が挙げられる。中でも、より優れた耐溶剤性を有し、得られる薬液がより優れた欠陥抑制性能を有する点で、ナイロン(中でも、6,6-ナイロンが好ましい)、ポリオレフィン(中でも、ポリエチレンが好ましい)、ポリ(メタ)アクリレート、及び、ポリフルオロカーボン(中でも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)が好ましい。)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。これらの重合体は単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
また、樹脂以外にも、ケイソウ土、及び、ガラス等であってもよい。
他にも、ポリオレフィン(後述するUPE等)にポリアミド(例えば、ナイロン-6又はナイロン-6,6等のナイロン)をグラフト共重合させたポリマー(ナイロングラフトUPE等)をフィルターの材料としてもよい。
【0070】
また、フィルターは表面処理されたフィルターであってもよい。表面処理の方法としては特に制限されず、公知の方法が使用できる。表面処理の方法としては、例えば、化学修飾処理、プラズマ処理、疎水処理、コーティング、ガス処理、及び、焼結等が挙げられる。
【0071】
プラズマ処理は、フィルターの表面が親水化されるために好ましい。プラズマ処理して親水化されたろ過材の表面における水接触角としては特に制限されないが、接触角計で測定した25℃における静的接触角が、60°以下が好ましく、50°以下がより好ましく、30°以下が更に好ましい。
【0072】
化学修飾処理としては、基材にイオン交換基を導入する方法が好ましい。
すなわち、フィルターとしては、上記で挙げた各材料を基材として、上記基材にイオン交換基を導入したフィルターが好ましい。典型的には、上記基材の表面にイオン交換基を含有する基材を含む層を含むフィルターが好ましい。表面修飾された基材としては特に制限されず、製造がより容易な点で、上記重合体にイオン交換基を導入したフィルターが好ましい。
【0073】
[処理方法]
本発明の処理方法は、InAl(1-y)Asを含むInAlAs層と、InPを含むInP層とを有する積層体のInP層を選択的に除去する処理方法であり、本発明の処理液を積層体に接触させる接触工程を含む。
また、本発明の処理液のうちカチオン界面活性剤を含む処理液を用いる場合には、本発明の処理方法は、InAl(1-y)Asを含むInAlAs層と、InPを含むInP層と、タングステンを含むW層とをこの順で有し、かつ、W層はInP層の表面の一部にのみ配置されている積層体のInP層のW層が配置されていない部分を選択的に除去する処理方法であり、本発明の処理液(カチオン界面活性剤を含む処理液)を積層体に接触させる接触工程を含む。
ただし、xおよびyは、それぞれ独立に、0超、1以下の実数である。
【0074】
以下では、図1図3を参照しながら、より詳細に説明する。
〈撮像素子〉
図1は、InP層とInGaAs層の積層構造からなる光電変換層を用いた撮像装置の模式的な一部端面図である。
【0075】
《撮像素子の構造》
図1に示す撮像装置の一例において、複数の受光素子10が2次元マトリックス状に配列されており、各受光素子10は、第1電極31、光電変換層20および第2電極32からなり、光電変換層20は、第1電極31側から、第1導電型(具体的には、n型)を有する第1化合物半導体層21、および、第1導電型とは逆の導電型である第2導電型(具体的には、p型)を有する第2化合物半導体層22が積層された積層構造を有しており、受光素子10と受光素子10との間の領域11における第2化合物半導体層22は除去されており、第1電極31および第1化合物半導体層21は、受光素子の間で共通である。
【0076】
図1に示す撮像装置の一例において、第1化合物半導体層21はn-InGaAs層(例えば、In0.53Ga0.47As)からなり、第2化合物半導体層22は、厚さ0.1μmのp-InP層からなる。そして、第1化合物半導体層21と第2化合物半導体層22との間にはp-AlInAs層24が形成されており、このp-AlInAs層24は、第2化合物半導体層22が除去された受光素子10と受光素子10との間の領域(第2化合物半導体層・除去領域23)に延在している。p-AlInAs層24の延在部24Aはエッチングストップ層として機能し、受光素子10と受光素子10との間の領域において第2化合物半導体層22を除去するとき、第1化合物半導体層21における損傷の発生を確実に防止することができる。
【0077】
第2化合物半導体層22の上には、SiNからなり、厚さ0.05μmのパッシベーション膜25が形成されており、これによって、キャリアが再結合し難い構造となっている。カソード電極(陰極)として機能する(すなわち、電子を取り出す電極として機能する)第1電極31は、厚さ0.02μmのITO(酸化インジウムスズ)、ITiO、NiO、またはこれらの材料からなる層の積層構造からなる。一方、アノード電極(陽極)として機能する(すなわち、正孔を取り出す電極として機能する)第2電極32はTi/Wの積層構造からなる。第2電極32と第2化合物半導体層22との間には、厚さ0.05μmのp++-InGaAsからなるp側コンタクト(図示せず)が形成されている。第2電極32およびパッシベーション膜25の上には、SiOといった絶縁材料からなる絶縁層26が形成されている。また、絶縁層26には、第2電極32に接続された銅(Cu)からなるコンタクト部27が形成されている。図1に示した例では、図示しない読出し用集積回路(ROIC,Readout Integrated Circuit)および銅(Cu)からなる接続部51が形成された駆動用基板50と、受光素子10とは、接続部51とコンタクト部27が接するように重ね合せ、接続部51とコンタクト部27とを接合することで、積層されている。第1電極31の光入射面には、SiOからなる反射防止膜28が形成されている。接続部51と接続部51の間の駆動用基板50には、絶縁材料層52が形成されている。
【0078】
図1に示す撮像装置の一例において、受光素子10の配列ピッチは5μm以下である。受光素子10によって、CMOS〔相補型MOS;MOS,Metal-Oxide-Semiconductor(金属-酸化物-半導体)〕イメージセンサまたはCCD〔Charge-Coupled Device(電荷結合素子)〕イメージセンサといった撮像素子が構成される。
【0079】
《撮像素子の製造方法》
図1に示す撮像装置の一例の製造方法は、例えば、以下の工程を含む。
まず、図2に示すように、n-InPからなる成膜用基板60上に、周知のMOCVD〔metal organic chemical vapor deposition(有機金属気相成長)〕法に基づき、第1導電型(具体的には、n型)を有する第1化合物半導体層21(第1層21Aおよび第2層21B)、ならびに、第1導電型とは逆の導電型である第2導電型(具体的には、p型)を有する第2化合物半導体層22が積層された積層構造からなる光電変換層20を形成する。なお、成膜用基板60と第1化合物半導体層21との間に、n-InGaAsからなるエッチングストップ層(図示せず)を形成する。また、エッチングストップ層と第1化合物半導体21との間に、厚さ0.3μmのn-InPからなるバッファ層、厚さ10nmのn++-InGaAsからなるn側コンタクト層、厚さ20nmのn-InPからなる窓層(これらは図示せず)を形成してもよい。さらには、第1化合物半導体層21と第2化合物半導体層22の間に、p-AlInAs層24を形成する。
【0080】
その後、周知の方法に基づき、受光素子10を形成すべき第2化合物半導体層22の領域に、周知の方法に基づき、第2電極32を形成する(図2参照)。なお、第2化合物半相対層22の上にp側コンタクト層を形成してもよい。次いで、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術(例えば、ウェットエッチング技術)に基づき、受光素子10と受光素子10との間の領域11における第2化合物半導体層22を除去する(図3参照)。エッチングストップ層として機能するp-AlInAs層24が形成されているので、この第2化合物半導体層22のエッチング時、第1化合物半導体層21に損傷が発生することはない。こうして、第2化合物半導体層・除去領域23によって素子分離され、2次元マトリックス状に配列された複数の受光素子10を得ることができる。
【0081】
《本発明の処理液の使用方法》
本発明の処理液は、受光素子10と受光素子10との間の領域11における第2化合物半導体層22(InPを含むInP層に相当する)を除去する際のエッチャントとして使用することができる。
第1化合物半導体層32(n-InGaAs層)と第2化合物半導体層22との間にはp-AlInAs層24(InAl(1-y)Asを含むInAlAs層に相当する)が形成されており、このp-AlInAs層24がエッチングストップ層として機能し、第1化合物半導体層21に損傷が発生しない。
本発明の処理液がカチオン界面活性剤を含む場合、カチオン界面活性剤はタングステンの防食剤と機能するため、Ti/Wの積層構造からなる第2電極32を溶解せず、第2化合物半導体層22(InPを含むInP層に相当する)を選択的に除去することができる。
【実施例
【0082】
[実施例1~55,比較例1~5]
〈処理液の製造〉
表1に示す組成で各成分を混合し、表2に示す細孔径を有するHDPE(高密度ポリエチレン)製フィルターで1回または2回のろ過を行って、処理液を製造した。
【0083】
〈pH、電気伝導度〉
実施例1~55および比較例1~5の処理液について、pHおよび電気伝導度を測定した。
【0084】
《pHの測定》
pHは、pHメーター(pH計:ポータブル型D-70シリーズ,堀場製作所社製)を用いて、23℃で測定した。
表1の「pH」の欄に、測定により得られた各処理液のpHを示す。なお、表中、「<1」は、1未満を表す。
【0085】
《電気伝導度の測定》
電気伝導度は、電気伝導率計(導電率計(電気伝導率計):ポータブル型D-70/ES-70シリーズ,堀場製作所社製)を用いて測定した。
表1の「電気伝導度」の欄に、測定により得られた各処理液の電気伝導度を示す。
【0086】
【表1-1】
【0087】
【表1-2】
【0088】
【表1-3】
【0089】
表1中、XおよびYは、それぞれ、以下に示す意味である。
X・・・ハロゲン化水素の含有量(質量%)
Y・・・防食剤の含有量(質量%)
【0090】
表1中、TMACl、PAA、MSAおよびDBUは、それぞれ、以下に示す意味である。
TMACl・・・塩化テトラメチルアンモニウム
PAA・・・ポリアクリル酸アミド
MSA・・・メタンスルホン酸
DBU・・・ジアザビシクロウンデセン
【0091】
【表2-1】
【0092】
【表2-2】
【0093】
【表2-3】
【0094】
〈粗大粒子数の測定〉
実施例1~55および比較例1~5の処理液について、液中パーティクルカウンタ(KS-18F,リオン社製)を用いて、処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粒子数A(個/mL)および処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粒子数B(個/mL)を測定した。
次に、測定により得られたAおよびBから、A/Bを算出した。
表3の「粗大粒子」の欄に、処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粒子数A(個/mL)、処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粒子数B(個/mL)、および処理液1mLあたりの粒子径0.10μm以上の粒子数A(個/mL)と処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粒子数B(個/mL)の比の値A/Bを示す。なお、A/Bは小数点以下4桁目を四捨五入し、小数点以下3桁まで求めた。
【0095】
〈酸化剤および金属イオンの含有量の測定〉
実施例1~55および比較例1~5の処理液について、トリプル四重極ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)(Agilent 8800シリーズ,アジレントテクノロジーズ社製)を用いて標準電極電位が0V超である金属イオンの含有量C(質量ppt)を測定した。また、これらの処理液について、上述した測定方法によって、酸化剤の含有量D(質量ppt)を測定した。
表3の「金属イオン」の欄に標準電極電位が0V超である金属イオンの含有量C(質量ppt)を、「酸化剤」の欄に、酸化剤の含有量D(質量ppt)を、それぞれ示す。
【0096】
〈含有量比の算出〉
実施例1~55および比較例1~5の処理液について、ハロゲン化水素の含有量X(質量%)、防食剤の含有量Y(質量%)、標準電極電位が0V超である金属イオンの含有量C(質量ppt)および酸化剤の含有量D(質量ppt)から、以下の含有量比を算出した。
・ハロゲン化水素の含有量X(質量%)と標準電極電位が0V超である金属イオンおよび酸化剤の合計含有量C+D(質量ppt)の比の値 X/(C+D)
・防食剤の含有量Y(質量%)と標準電極電位が0V超である金属イオンおよび酸化剤の合計含有量C+D(質量ppt)の比の値 Y/(C+D)
・ハロゲン化水素の含有量X(質量%)と防食剤の含有量Y(質量%)の比の値 X/Y
表3の「含有量比」の欄に、X/(C+D)、Y/(C+D)、およびX/Yを、それぞれ示す。
【0097】
【表3-1】
【0098】
【表3-2】
【0099】
【表3-3】
【0100】
表3中、A、B、C、D、X、およびYは、それぞれ、以下に示す意味である。
A・・・処理液1mLあたりの粒子径0.1μm以上の粒子数(個/mL)
B・・・処理液1mLあたりの粒子径0.05μm以上の粒子数(個/mL)
C・・・標準電極電位が0V超である金属イオンの含有量(質量ppt)
D・・・酸化剤の含有量(質量ppt)
X・・・ハロゲン化水素の含有量(質量%)
Y・・・防食剤の含有量(質量%)
【0101】
〈評価試験〉
《エッチングレート》
(試験基板の作製)
市販のシリコン基板(直径:8インチ)上にInP、Ti、W、またはInAllAsを蒸着して厚さ100Åに成膜した。
エッチング速度(ER)(Å/min)については、エリプソメトリー(分光エリプソメーター、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン株式会社 Vaseを使用した)を用いてエッチング処理前後の膜厚を測定することにより算出した。5点の平均値を採用した(測定条件 測定範囲:1.2-2.5eV、測定角:70,75度)。
【0102】
《InAlAsのコロージョン》
8インチSi基板上に100ÅのInAlAs、InP膜を成膜した基板、実施例1~55および比較例1~5の処理液中に浸漬させ、それぞれの基板の腐食電位とその差を求めコロージョンを評価した。測定器は東陽テクニカ製の基板対応の電気化学測定器を用いた。
評価は以下の基準に従って行った。
A 腐食電位差(コロージョン電位)が0.2mV未満である
B 腐食電位差(コロージョン電位)が0.2mV以上0.5mV未満である
C 腐食電位差(コロージョン電位)が0.5mV以上0.8mV未満である
D 腐食電位差(コロージョン電位)が0.8mV以上である
【0103】
《InAlAs上の残渣物》
8インチSi基板上に100ÅのInAlAs層を成膜し、さらに、その上に50ÅのInP層を成膜した。この基板を実施例1~56および比較例1~5の処理液を用いてエッチング処理し、InP層を除去した。
処理後のウエハを欠陥検査装置(Surfscan XP2,KLA-Tencor社製)を用いて検査し、基板上に残る残渣の数から欠陥性能を評価した。
評価は以下の基準に従って行った。
A 欠陥数が50未満である
B 欠陥数が50以上100未満である
C 欠陥数が100以上200未満である
D 欠陥数が200以上である
【0104】
《InAlAs上の表面粗さ》
8インチSi基板上に100ÅのInAlAs膜を成膜した基板を、InAlAs膜の50Å相当が除去される時間だけ、実施例1~56および比較例1~5の処理液を用いてエッチング処理した。
処理後のウエハを原子間力顕微鏡(日立ハイテクノロジー社製)を用いて観察し、表面粗さ(Ra)を評価した。
評価は以下の基準に従って行った。
A 1.0μm□の測定領域においてRaが0.2Å未満である
B 1.0μm□の測定領域においてRaが0.2Å以上0.5Å未満である
C 1.0μm□の測定領域においてRaが0.5Å以上1.0Å未満である
D 1.0μm□の測定領域においてRaが1.0Å以上である
【0105】
【表4-1】
【0106】
【表4-2】
【0107】
【表4-3】
【0108】
表4中、エッチングレートの欄に記載した記号は以下の意味である。
InP ER ・・・ InP層のエッチングレート
Ti ER ・・・ Ti層のエッチングレート
W ER ・・・ W層のエッチングレート
InAlAs ER ・・・ InAlAs層のエッチングレート
【0109】
[結果の説明]
実施例1~55および比較例1~5の処理液について、InP、Ti、W、InAlAsに対するエッチングレート、ならびに、InAlAsのコロージョン、InAlAs上の残渣物およびInAlAs上の表面粗さを評価した。
実施例1~55の処理液は、いずれも、InP層を選択的に除去でき、かつ、InAlAs層に対するコロージョンが抑制されていた。
さらに、実施例1~55の処理液は、InAlAs上の残渣物および表面粗さがいずれも低い水準であり、InP層を除去した後の工程に悪影響を与えないと考えられた。
実施例1~55の中でも、実施例35~44の処理液は、タングステンに対する防食剤を含有するため、タングステンに対するエッチングレートが小さい。そのため、図2、3に例示する基板において、Ti/Wの積層構造からなる第2電極32を溶解しない。
【0110】
[実施例1、4~9]
実施例1および4~9のうち、実施例1および5~8は、InAlAs上の表面粗さの評価がAまたはBであるのに対して、実施例4および9は、InAlAs上の表面粗さの評価がCであり、ハロゲン化水素(塩化水素)の含有量が0.01質量%~15質量%の範囲内である実施例1および5~8は、範囲外である実施例4および9と比べて、InAlAs上の表面粗さがより小さくなっていた。
【0111】
実施例1および4~9のうち、実施例1、5、6および9は、InAlAsのコロージョンの評価がAであるのに対して、実施例4、7および8は、InAlAsのコロージョンの評価がBであり、酸化剤等の含有量(C+D)に対するハロゲン化水素(塩化水素)の含有量Xの比の値〔X/(C+D)〕が10000~10000000の範囲内である実施例1、5、6および9は、範囲外である実施例4、7および8と比べて、InAlAsのコロージョンがより抑制されていた。
【0112】
[実施例1、10~15]
実施例1および10~15のうち、実施例1および12~14は、InAlAs上の残渣物の評価がAであるのに対して、実施例10、11および15は、InAlAs上の残渣物の評価がBまたはCであり、防食剤の含有量が0.01質量%~1質量%の範囲内である実施例1および12~14は、範囲外である実施例10、11および15と比べて、InAlAs上の残渣物がより少なくなっていた。
また、実施例1および12~14は、InAlAsのコロージョンの評価がAまたはBであるのに対して、実施例10、11および15は、InAlAsのコロージョンの評価がCであり、防食剤の含有量が0.01質量%~1質量%の範囲内である実施例1および12~14は、範囲外である実施例10、11および15と比べて、InAlAsのコロージョンがより抑制されていた。
【0113】
実施例1および10~15のうち、実施例1、10および12~14は、InAlAs上の残渣物の評価がAまたはBであるのに対して、実施例11および15は、InAlAs上の表面粗さの評価がCであり、酸化剤等の含有量(C+D)に対する防食剤の含有量Yの比の値〔Y/(C+D)〕が1000~5000000の範囲内である実施例1、10および12~14は、範囲外である実施例11および15と比べて、InAlAs上の残渣物がより少なくなっていた。
【0114】
[実施例1、4~15]
実施例1および4~15のうち、実施例1、5~10および12~15は、InAlAs上の残渣物の評価およびInAlAs上の表面粗さの評価のうち少なくとも一方がAまたはBであるのに対して、実施例4および11は、InAlAs上の残渣物の評価およびInAlAs上の表面粗さの評価がいずれもCであり、防食剤の含有量Yに対するハロゲン化水素の含有量Xの比のあたりX/Yが0.01~50の範囲内である実施例1、5~10および12~15は、範囲外である実施例4および11と比べて、InAlAs上の残渣物とInAlAs上の表面粗さのうち少なくとも一方がより良好になっていた。
【0115】
[実施例1、35~44」
実施例35~44はInP ER/InAlAs ERが60以上、かつ、InP ER/InAlAs ERが120以上であったのに対して、実施例1はER/InAlAs ERが23であり、InP ER/InAlAs ERが11であった。
カチオン界面活性剤を含む実施例35~44は、含まない実施例1に比べて、InPの選択性がより優れていた。
【符号の説明】
【0116】
10…受光素子
11…受光素子と受光素子との間の領域
20…光電変換層
21…第1化合物半導体層
21A…第1化合物半導体層のInAlAs層
21B…第1化合物半導体層のInP層
22…第2化合物半導体層
23…第2化合物半導体層・除去領域
24…p-AlInAs層
25…パッシベーション層
26…絶縁層
27…コンタクト部
28…反射防止膜
31…第1電極
32…第2電極
50…駆動用基板
51…接続部
52…絶縁材料層
60…成膜用基板
…受光素子10の配列ピッチ
…隣接する受光素子の間の距離(隣接画素間の距離)
…第1化合物半導体層21の厚さ
…第2化合物半導体層22の厚さ
図1
図2
図3