(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/47 20060101AFI20221219BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20221219BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20221219BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20221219BHJP
A61F 13/475 20060101ALI20221219BHJP
A61F 13/533 20060101ALI20221219BHJP
A61F 13/536 20060101ALI20221219BHJP
A61F 13/472 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61F13/47 300
A61F13/49 100
A61F13/53 200
A61F13/534 100
A61F13/475 112
A61F13/533 100
A61F13/536 100
A61F13/472 200
(21)【出願番号】P 2022114245
(22)【出願日】2022-07-15
【審査請求日】2022-07-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】梨子木 健人
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 沙也佳
(72)【発明者】
【氏名】新保 洋介
(72)【発明者】
【氏名】島津 健
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄大
【審査官】津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-140214(JP,A)
【文献】特開2013-166029(JP,A)
【文献】特開2019-41876(JP,A)
【文献】特開2019-97973(JP,A)
【文献】特開2020-664(JP,A)
【文献】特開2020-96749(JP,A)
【文献】特表2013-502976(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0093054(US,A1)
【文献】米国特許第4770657(US,A)
【文献】米国特許第6371948(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
展開状態において互いに交差する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、液吸収性の吸収体を備え、尿を吸収するための吸収性物品であって、
前記吸収体は、前記長手方向及び前記幅方向の両方向における中央部分に、前記長手方向に延在し且つ変形起点となる中央変形誘導部を有し、
前記吸収体は、前記幅方向の端側から前記幅方向の中央側に向かって傾斜して設けられた一対の変形誘導領域を有し、
前記変形誘導領域は、前記変形誘導領域のうち前記吸収体の前記幅方向の前記端側に位置する端部領域が、前記幅方向の中央側の中央領域よりも前記長手方向の内側に位置し、
前記吸収性物品の前記幅方向の両端部、且つ、少なくとも前記長手方向の中央部分に、前記長手方向に伸縮する伸縮部材が設けられており、
前記一対の変形誘導領域が前記長手方向の一方側及び他方側の両方にそれぞれ設けられており、
前記吸収体は、吸収性コアを有し、
前記吸収性コアは、前記長手方向の両端部の間に、前記両端部よりも前記幅方向の幅が狭い括れ部を有し、
前記長手方向の一方側に設けられた前記一対の変形誘導領域を、一対の一方側変形誘導領域とし、前記長手方向の他方側に設けられた前記一対の変形誘導領域を、一対の他方側変形誘導領域としたとき、
前記長手方向において、前記一方側変形誘導領域の少なくとも一部と、前記括れ部とが重なる部分を有し、
前記長手方向において、前記他方側変形誘導領域の少なくとも一部と、前記括れ部とが重なる部分を有し、
展開状態の前記吸収性物品の肌側表面が外側になるように前記吸収性物品を二つ折りした後に、再度前記吸収性物品を展開し、前記吸収性物品の非肌側表面を下にして水平面上に静置した状態において、股間部に対応する領域において肌側に凸状となる隆起部が形成されるように構成されており、
前記一方側変形誘導領域は、前記一方側における前記隆起部の変形起点であり、
前記他方側変形誘導領域は、前記他方側における前記隆起部の変形起点
であり、
前記吸収体は、第1吸収体と、前記第1吸収体よりも前記厚さ方向の非肌側に設けられた第2吸収体とを有し、
前記第1吸収体及び前記第2吸収体は、前記中央変形誘導部を有し、
前記吸収体の長手方向の中央部において、前記第2吸収体の吸収性コアの幅方向の寸法は、前記第1吸収体の吸収性コアの幅方向の寸法よりも小さく、
前記吸収体の長手方向の中央部において、前記第1吸収体の前記中央変形誘導部の幅方向の寸法は、前記第2吸収体の前記中央変形誘導部の幅方向の寸法よりも大きい
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記一方側変形誘導領域のうちの前記中央領域、及び前記他方側変形誘導領域のうちの前記中央領域は、前記長手方向において前記括れ部が存在する領域内に設けられている
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記中央変形誘導部の前記長手方向の少なくとも一方の端部は、前記長手方向において前記一方側変形誘導領域と重なる部分を有している
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記中央変形誘導部の前記長手方向の端部は、前記一方側変形誘導領域のうちの前記中央領域の前記長手方向の外端よりも前記長手方向の内側に位置している
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項4に記載の吸収性物品であって、
前記中央変形誘導部は、前記一方側変形誘導領域、及び前記他方側変形誘導領域と離間している
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記一方側変形誘導領域のうちの前記端部領域は、前記長手方向において前記伸縮部材が存在する領域内に設けられている
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収体の前記幅方向の両側に一対の防漏壁部を有し、
前記伸縮部材は、前記一対の防漏壁部に設けられた、前記長手方向に伸長状態で固定され且つ前記長手方向に収縮可能な防漏壁弾性部材であり、
前記吸収性物品の肌側表面が外側になるように前記吸収性物品を二つ折りした後に、再度前記吸収性物品を展開状態とし、前記吸収性物品の非肌側表面を下にして水平面上に静置した状態において、前記水平面から前記防漏壁弾性部材の高さが最も高い最高点までの高さは、前記水平面から前記吸収体の高さが最も高い最高点までの高さよりも低い
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記伸縮部材よりも前記幅方向の内側には、前記長手方向に沿って収縮する他の収縮要素が設けられていない
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記中央変形誘導部は、前記幅方向の外側から隣接する領域の坪量よりも低い低坪量部によって形成されている
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
請求項9に記載の吸収性物品
であって、
前記低坪量部は、少なくとも前記第1吸収体に設けられている
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項11】
展開状態において互いに交差する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、液吸収性の吸収体を備え、尿を吸収するための吸収性物品であって、
前記吸収体は、前記長手方向及び前記幅方向の両方向における中央部分に、前記長手方向に延在し且つ変形起点となる中央変形誘導部を有し、
前記吸収体は、前記幅方向の端側から前記幅方向の中央側に向かって傾斜して設けられた一対の変形誘導領域を有し、
前記変形誘導領域は、前記変形誘導領域のうち前記吸収体の前記幅方向の前記端側に位置する端部領域が、前記幅方向の中央側の中央領域よりも前記長手方向の内側に位置し、
前記吸収性物品の前記幅方向の両端部、且つ、少なくとも前記長手方向の中央部分に、前記長手方向に伸縮する伸縮部材が設けられており、
前記一対の変形誘導領域が前記長手方向の一方側及び他方側の両方にそれぞれ設けられており、
前記吸収体は、吸収性コアを有し、
前記吸収性コアは、前記長手方向の両端部の間に、前記両端部よりも前記幅方向の幅が狭い括れ部を有し、
前記長手方向の一方側に設けられた前記一対の変形誘導領域を、一対の一方側変形誘導領域とし、前記長手方向の他方側に設けられた前記一対の変形誘導領域を、一対の他方側変形誘導領域としたとき、
前記長手方向において、前記一方側変形誘導領域の少なくとも一部と、前記括れ部とが重なる部分を有し、
前記長手方向において、前記他方側変形誘導領域の少なくとも一部と、前記括れ部とが重なる部分を有し、
展開状態の前記吸収性物品の肌側表面が外側になるように前記吸収性物品を二つ折りした後に、再度前記吸収性物品を展開し、前記吸収性物品の非肌側表面を下にして水平面上に静置した状態において、股間部に対応する領域において肌側に凸状となる隆起部が形成されるように構成されており、
前記一方側変形誘導領域は、前記一方側における前記隆起部の変形起点であり、
前記他方側変形誘導領域は、前記他方側における前記隆起部の変形起点であり、
前記吸収体は、前記幅方向の両側に前記長手方向に沿って延在する一対の液拡散誘導部を前記長手方向の一方側及び他方側の両方に有し、
前記一方側変形誘導領域の前記長手方向の内端から外端までの前記長手方向の長さを第1長さとし、前記一方側変形誘導領域の前記長手方向の前記外端から前記第1長さ分だけ前記長手方向の外側にある位置を基準位置とし、前記長手方向において、前記一方側変形誘導領域の前記長手方向の前記内端から前記基準位置までの領域を所定領域としたとき、
前記一対の液拡散誘導部の前記長手方向の内端は、それぞれ、前記所定領域内に配置されている
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記一対の一方側変形誘導領域は、前記中央領域における前記長手方向の端が前記幅方向に離間しており、
前記一対の他方側変形誘導領域は、前記中央領域における前記長手方向の端が前記幅方向に離間している、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記長手方向及び前記幅方向の少なくとも中央に、前記吸収性物品の肌側から視認可能なデザインを有する
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項14】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
展開かつ伸長状態において、前記伸縮部材は、前記厚さ方向において、前記吸収体の肌側表面よりも非肌側に配置されている非肌側伸縮部材である
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項15】
請求項14に記載の吸収性物品であって、
前記括れ部の前記長手方向の長さは、前記非肌側伸縮部材の前記長手方向の長さよりも長く、
前記長手方向において、前記括れ部が設けられている領域内に前記非肌側伸縮部材が設けられている
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項16】
請求項15に記載の吸収性物品であって、
前記非肌側伸縮部材の前記幅方向の外端は、平面視で前記吸収性コアと重なっていない
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項17】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記長手方向を前後方向としたとき、前記前後方向における前側は、着用者の腹側に対応し、前記前後方向における後側は、着用者の背側に対応し、
前記前後方向における中央位置よりも前側に、前記吸収性コアを前記厚さ方向に変形するように誘導する前側変形誘導部が前記幅方向に一対設けられており、
一対の前記前側変形誘導部は、それぞれ、前記前後方向の前側から後側且つ前記幅方向の外側から内側へ傾斜する前側傾斜部を有する
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項18】
請求項17に記載の吸収性物品であって、
一対の前記前側変形誘導部は、それぞれ、傾斜が開始する傾斜開始点と、前記傾斜開始点よりも後側に位置し且つ傾斜が終了する傾斜終了点と、を有し、
一対の前記前側傾斜部のうちの一方側における前記傾斜開始点と前記傾斜終了点とを結ぶ直線またはその延長線は、前記厚さ方向に見たときに前記一対の一方側変形誘導領域のうちの一方と交差する
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項19】
展開状態において互いに交差する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、液吸収性の吸収体を備え、尿を吸収するための吸収性物品であって、
前記吸収体は、前記長手方向及び前記幅方向の両方向における中央部分に、前記長手方向に延在し且つ変形起点となる中央変形誘導部を有し、
前記吸収体は、前記幅方向の端側から前記幅方向の中央側に向かって傾斜して設けられた一対の変形誘導領域を有し、
前記変形誘導領域は、前記変形誘導領域のうち前記吸収体の前記幅方向の前記端側に位置する端部領域が、前記幅方向の中央側の中央領域よりも前記長手方向の内側に位置し、
前記吸収性物品の前記幅方向の両端部、且つ、少なくとも前記長手方向の中央部分に、前記長手方向に伸縮する伸縮部材が設けられており、
前記一対の変形誘導領域が前記長手方向の一方側及び他方側の両方にそれぞれ設けられており、
前記吸収体は、吸収性コアを有し、
前記吸収性コアは、前記長手方向の両端部の間に、前記両端部よりも前記幅方向の幅が狭い括れ部を有し、
前記長手方向の一方側に設けられた前記一対の変形誘導領域を、一対の一方側変形誘導領域とし、前記長手方向の他方側に設けられた前記一対の変形誘導領域を、一対の他方側変形誘導領域としたとき、
前記長手方向において、前記一方側変形誘導領域の少なくとも一部と、前記括れ部とが重なる部分を有し、
前記長手方向において、前記他方側変形誘導領域の少なくとも一部と、前記括れ部とが重なる部分を有し、
展開状態の前記吸収性物品の肌側表面が外側になるように前記吸収性物品を二つ折りした後に、再度前記吸収性物品を展開し、前記吸収性物品の非肌側表面を下にして水平面上に静置した状態において、股間部に対応する領域において肌側に凸状となる隆起部が形成されるように構成されており、
前記一方側変形誘導領域は、前記一方側における前記隆起部の変形起点であり、
前記他方側変形誘導領域は、前記他方側における前記隆起部の変形起点であり、
前記長手方向を前後方向としたとき、前記前後方向における前側は、着用者の腹側に対応し、前記前後方向における後側は、着用者の背側に対応し、
前記前後方向における中央位置よりも前側に、前記吸収性コアを前記厚さ方向に変形するように誘導する前側変形誘導部が前記幅方向に一対設けられており、
一対の前記前側変形誘導部は、それぞれ、前記前後方向の前側から後側且つ前記幅方向の外側から内側へ傾斜する前側傾斜部を有し、
前記長手方向において、前記前側変形誘導部と前記括れ部とが重なる部分を有する
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項20】
展開状態において互いに交差する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、液吸収性の吸収体を備え、尿を吸収するための吸収性物品であって、
前記吸収体は、前記長手方向及び前記幅方向の両方向における中央部分に、前記長手方向に延在し且つ変形起点となる中央変形誘導部を有し、
前記吸収体は、前記幅方向の端側から前記幅方向の中央側に向かって傾斜して設けられた一対の変形誘導領域を有し、
前記変形誘導領域は、前記変形誘導領域のうち前記吸収体の前記幅方向の前記端側に位置する端部領域が、前記幅方向の中央側の中央領域よりも前記長手方向の内側に位置し、
前記吸収性物品の前記幅方向の両端部、且つ、少なくとも前記長手方向の中央部分に、前記長手方向に伸縮する伸縮部材が設けられており、
前記一対の変形誘導領域が前記長手方向の一方側及び他方側の両方にそれぞれ設けられており、
前記吸収体は、吸収性コアを有し、
前記吸収性コアは、前記長手方向の両端部の間に、前記両端部よりも前記幅方向の幅が狭い括れ部を有し、
前記長手方向の一方側に設けられた前記一対の変形誘導領域を、一対の一方側変形誘導領域とし、前記長手方向の他方側に設けられた前記一対の変形誘導領域を、一対の他方側変形誘導領域としたとき、
前記長手方向において、前記一方側変形誘導領域の少なくとも一部と、前記括れ部とが重なる部分を有し、
前記長手方向において、前記他方側変形誘導領域の少なくとも一部と、前記括れ部とが重なる部分を有し、
展開状態の前記吸収性物品の肌側表面が外側になるように前記吸収性物品を二つ折りした後に、再度前記吸収性物品を展開し、前記吸収性物品の非肌側表面を下にして水平面上に静置した状態において、股間部に対応する領域において肌側に凸状となる隆起部が形成されるように構成されており、
前記一方側変形誘導領域は、前記一方側における前記隆起部の変形起点であり、
前記他方側変形誘導領域は、前記他方側における前記隆起部の変形起点であり、
前記長手方向を前後方向としたとき、前記前後方向における前側は、着用者の腹側に対応し、前記前後方向における後側は、着用者の背側に対応し、
前記前後方向における中央位置よりも前側に、前記吸収性コアを前記厚さ方向に変形するように誘導する前側変形誘導部が前記幅方向に一対設けられており、
一対の前記前側変形誘導部は、それぞれ、前記前後方向の前側から後側且つ前記幅方向の外側から内側へ傾斜する前側傾斜部を有し、
前記吸収体は、前記幅方向において一対の前記前側変形誘導部の間に、前記前後方向に沿った、且つ、変形起点となる前側中央変形誘導部を有している
ことを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、尿や経血等の排泄液を吸収する吸収体を備える吸収性物品では、着用時に、屈曲等によって吸収体を所定の形状に変形させることによって、防漏性の向上やフィット性の向上を図る技術が知られている。例えば、特許文献1には、吸収体の裏面シート側の面に凹部を有し、吸収体の表面シート側の面に一対の溝を有し、着用状態において、吸収体のうちの下部吸収層が溝を軸として略V字状に屈曲するとともに、上部吸収層が着用者の肌に向かって曲面状に突出した形状に変形する吸収性物品が開示されている。また、例えば、特許文献2には、吸収体配置領域の横方向の中央部、且つ吸収体と最外装シートとの間に配置された縦方向に延在する弾性部材を備え、当該弾性部材の収縮により、吸収体における平面視において弾性部材が存在する伸縮領域と重なる部分が着用者の臀裂に沿うように変形する吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4459013号公報
【文献】特開2020-103884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、着用時に吸収体が変形することでフィット性を向上させる吸収性物品は知られているが、そのような尿や経血等の排泄液を吸収する吸収性物品の使用時において、使用者の排泄量が増加した場合、或いは使用者の排泄量が元々多い場合、吸収能力を向上させるために製品の厚みを増したものやサイズの大きいものに変更することが考えられる。しかしながら、製品の厚みを増したものや大きいサイズの製品を使用した場合、使用者の身体の形状に合わせた変形や適切な装着が困難となり、結果として身体との間に隙間が生じて漏れを誘導してしまうことがある。
【0005】
この点、特許文献1の吸収性物品は、着用時に吸収体が所謂W字状に変形可能であるが、吸収体の厚みを増した場合や製品自体の大きさを大きくした場合には、そのようなW字状変形がし難くなることで身体との間に隙間が生じる虞があり、それにより身体とのフィット性が低減して漏れが発生する可能性がある。また、特許文献2の吸収性物品は、横方向中央部に備えられた縦方向に延在する弾性部材によって吸収体を収縮させて変形を促すため、同様に吸収体の厚みが増した場合、吸収体が収縮しにくくなり、着用者の臀裂に沿うような変形が実現し難くなる虞がある。つまりは、製品の厚みを増したもの、或いは、大きいサイズの吸収性物品においても、身体と吸収性物品との間に隙間が生じにくく、吸収性能を十分に発揮できるものが必要である。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、着用者の身体の形状に沿って広く面で吸収体を密着させて身体と吸収性物品との間に隙間を生じにくくし、漏れを抑制することができる吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、 展開状態において互いに交差する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、液吸収性の吸収体を備え、尿を吸収するための吸収性物品であって、
前記吸収体は、前記長手方向及び前記幅方向の両方向における中央部分に、前記長手方向に延在し且つ変形起点となる中央変形誘導部を有し、
前記吸収体は、前記幅方向の端側から前記幅方向の中央側に向かって傾斜して設けられた一対の変形誘導領域を有し、
前記変形誘導領域は、前記変形誘導領域のうち前記吸収体の前記幅方向の前記端側に位置する端部領域が、前記幅方向の中央側の中央領域よりも前記長手方向の内側に位置し、
前記吸収性物品の前記幅方向の両端部、且つ、少なくとも前記長手方向の中央部分に、前記長手方向に伸縮する伸縮部材が設けられており、
前記一対の変形誘導領域が前記長手方向の一方側及び他方側の両方にそれぞれ設けられており、
前記吸収体は、吸収性コアを有し、
前記吸収性コアは、前記長手方向の両端部の間に、前記両端部よりも前記幅方向の幅が狭い括れ部を有し、
前記長手方向の一方側に設けられた前記一対の変形誘導領域を、一対の一方側変形誘導領域とし、前記長手方向の他方側に設けられた前記一対の変形誘導領域を、一対の他方側変形誘導領域としたとき、
前記長手方向において、前記一方側変形誘導領域の少なくとも一部と、前記括れ部とが重なる部分を有し、
前記長手方向において、前記他方側変形誘導領域の少なくとも一部と、前記括れ部とが重なる部分を有し、
展開状態の前記吸収性物品の肌側表面が外側になるように前記吸収性物品を二つ折りした後に、再度前記吸収性物品を展開し、前記吸収性物品の非肌側表面を下にして水平面上に静置した状態において、股間部に対応する領域において肌側に凸状となる隆起部が形成されるように構成されており、
前記一方側変形誘導領域は、前記一方側における前記隆起部の変形起点であり、
前記他方側変形誘導領域は、前記他方側における前記隆起部の変形起点であり、
前記吸収体は、第1吸収体と、前記第1吸収体よりも前記厚さ方向の非肌側に設けられた第2吸収体とを有し、
前記第1吸収体及び前記第2吸収体は、前記中央変形誘導部を有し、
前記吸収体の長手方向の中央部において、前記第2吸収体の吸収性コアの幅方向の寸法は、前記第1吸収体の吸収性コアの幅方向の寸法よりも小さく、
前記吸収体の長手方向の中央部において、前記第1吸収体の前記中央変形誘導部の幅方向の寸法は、前記第2吸収体の前記中央変形誘導部の幅方向の寸法よりも大きい
ことを特徴とする吸収性物品である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、着用者の身体の形状に沿って広く面で吸収体を密着させて身体と吸収性物品との間に隙間を生じにくくし、漏れを抑制することができる吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1Aは、パンツ型使い捨ておむつ101を前身頃101aと後身頃101bとの接合部で分離して平面に展開して示す概略平面図であり、
図1Bは、
図1A中のA-A断面図である。
【
図2】尿取りパッド1の交換の様子を示す概略斜視図である。
【
図3】第1実施形態における展開かつ伸長状態の尿取りパッド1を肌側から見た概略平面図である。
【
図5】展開かつ伸長状態の尿取りパッド1を非肌側から見た概略平面図である
【
図6】吸収体10が変形した状態を説明する模式図である。
【
図7】展開状態の尿取りパッド1を所定条件下で水平面上に静置したときの態様を説明する図である。
【
図8】展開かつ伸長状態の尿取りパッド1の一部を肌側から見た概略平面図である。
【
図9】第2実施形態におけるおむつ200の概略斜視図である
【
図10】展開且つ伸長状態のおむつ200の平面図である。
【
図13】前側変形誘導部280の配置について説明する吸収性本体210の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
態様1は、展開状態において互いに交差する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、液吸収性の吸収体を備える吸収性物品であって、前記吸収体は、前記長手方向及び前記幅方向の両方向における中央部分に、前記長手方向に延在し且つ変形起点となる中央変形誘導部を有し、前記吸収体は、前記幅方向の端側から前記幅方向の中央側に向かって傾斜して設けられた一対の変形誘導領域を有し、前記変形誘導領域は、前記変形誘導領域のうち前記吸収体の前記幅方向の前記端側に位置する端部領域が、前記幅方向の中央側の中央領域よりも前記長手方向の内側に位置し、且つ、前記変形誘導領域は、前記吸収性物品の前記長手方向の中央線と重ならないように配置されており、前記吸収性物品の前記幅方向の両端部、且つ、少なくとも前記長手方向の中央部分に、前記長手方向に伸縮する伸縮部材が設けられていることを特徴とする吸収性物品である。
【0011】
態様1のような吸収性物品によれば、吸収性物品の装着時に、中央変形誘導部及び変形誘導領域によって、吸収体には、股間部に対応する中央領域において肌側に凸状となる大きな一つのドーム状の隆起部が形成される。当該隆起部によって、着用者の身体の形状に沿って広く面で吸収体を密着させることができ、身体と吸収性物品との間に隙間が生じにくくなり、漏れを抑制することができる。
【0012】
態様2は、前記吸収体は、吸収性コアを有し、前記吸収性コアは、前記長手方向の両端部の間に、前記両端部よりも前記幅方向の幅が狭い括れ部を有し、前記長手方向において、前記変形誘導領域の少なくとも一部と、前記括れ部とが重なる部分を有する態様1に記載の吸収性物品である。
【0013】
態様2のような吸収性物品によれば、長手方向は変形誘導領域が剛性の変化部となり、吸収体が肌側に凸上に変形する長手方向の端部を当該変形誘導領域が規定する。長手方向と交差する幅方向では、吸収性コアは括れ部によって幅方向に変形しやすくなる。そのような変形誘導領域及び括れ部の両方の作用により、立体的な隆起部(ドーム形状)を形成しやすくなる。
【0014】
態様3は、前記変形誘導領域のうちの前記中央領域は、前記長手方向において前記括れ部が存在する領域内に設けられている態様2に記載の吸収性物品である。
【0015】
態様3のような吸収性物品によれば、変形誘導領域全体が長手方向において括れ部の領域内に配置されることとなる。括れ部は吸収性コアの存在自体が少ないため変形しやすく、当該括れ部の領域に変形誘導領域全体が存在することによって、吸収体をより隆起させやすくなる。
【0016】
態様4は、前記中央変形誘導部の前記長手方向の少なくとも一方の端部は、前記長手方向において前記変形誘導領域と重なる部分を有している態様1から態様3のいずれかに記載の吸収性物品である。
【0017】
態様4のような吸収性物品によれば、肌側に凸状となる隆起部の峰に相当する部分が形成される範囲が十分に長くなり、しっかりと隆起した隆起部の形成を促進できる。
【0018】
態様5は、前記中央変形誘導部の前記長手方向の端部は、前記変形誘導領域のうちの前記中央領域の前記長手方向の外端よりも前記長手方向の内側に位置している態様1から態様4のいずれかに記載の吸収性物品である。
【0019】
態様5のような吸収性物品によれば、中央変形誘導部が変形誘導領域よりも長手方向の外側まで設けられていると、ドーム状のような隆起部形成のための変形がしにくくなるが、中央変形誘導部が内側に位置することで、隆起変形を促すことができる。
【0020】
態様6は、前記変形誘導領域のうちの前記端部領域は、前記長手方向において前記伸縮部材が存在する領域内に設けられている態様1から態様4のいずれかに記載の吸収性物品である。
【0021】
態様6のような吸収性物品によれば、変形誘導領域の端部領域が伸縮部材の範囲内にあるので、伸縮部材の収縮により、変形誘導領域を変形起点として吸収体が変形しやすくなる。
【0022】
態様7は、前記吸収体の前記幅方向の両側に一対の防漏壁部を有し、前記伸縮部材は、前記一対の防漏壁部に設けられた、前記長手方向に伸長状態で固定され且つ前記長手方向に収縮可能な防漏壁弾性部材であり、前記吸収性物品の肌側表面が外側になるように前記吸収性物品を二つ折りした後に、再度前記吸収性物品を展開状態とし、前記吸収性物品の非肌側表面を下にして水平面上に静置した状態において、前記水平面から前記防漏壁弾性部材の高さが最も高い最高点までの高さは、前記水平面から前記吸収体の高さが最も高い最高点までの高さよりも低い態様1から態様6のいずれかに記載の吸収性物品である。
【0023】
態様7のような吸収性物品によれば、防漏壁弾性部材が先行して身体と接触することを抑制し、隆起部が身体に密着しやすくなる。よって、吸収体と身体との間に隙間が形成されにくく、漏れを抑制することができる。
【0024】
態様8は、前記伸縮部材よりも前記幅方向の内側には、前記長手方向に沿って収縮する他の収縮要素が設けられていない態様1から態様7のいずれかに記載の吸収性物品である。
【0025】
態様8のような吸収性物品によれば、伸縮部材の収縮によって中央部が隆起し易くなるようにしているが、幅方向の中央部に収縮させる収縮要素がないことで、収縮力が中央部には直接及ばず、中央部は変形自由度を多く維持できる。よって、液体を吸収して吸収体が膨潤したときに吸収体の変形が許容されやすくなる。中央部に収縮要素があると、吸収体の変形自由度が低減し、吸収体の膨潤が肌側表面に凸状に出現してしまい、フィット性が損なわれる虞がある。
【0026】
態様9は、前記中央変形誘導部は、前記幅方向の外側から隣接する領域の坪量よりも低い低坪量部によって形成されている態様1から態様8のいずれかに記載の吸収性物品である。
【0027】
態様9のような吸収性物品によれば、排尿を速やかに吸収体内部に拡散することができ、吸収体の表面に液体が溜まるのを低減し、漏れを抑制することができる。
【0028】
態様10は、前記吸収体は、第1吸収体と、前記第1吸収体よりも前記厚さ方向の非肌側に設けられた第2吸収体とを有し、前記低坪量部は、少なくとも前記第1吸収体に設けられている態様9に記載の吸収性物品である。
【0029】
態様10のような吸収性物品によれば、排尿を速やかに吸収体内部に拡散することができ、吸収体の表面に液体が溜まるのを低減し、漏れを抑制することができる
【0030】
態様11は、前記吸収体は、前記幅方向の両側に前記長手方向に沿って延在する一対の液拡散誘導部を前記長手方向の一方側及び他方側の両方に有し、前記変形誘導領域の前記長手方向の内端から外端までの前記長手方向の長さを第1長さとし、前記変形誘導領域の前記長手方向の前記外端から前記第1長さ分だけ前記長手方向の外側にある位置を基準位置とし、前記長手方向において、前記変形誘導領域の前記長手方向の前記内端から前記基準位置までの領域を所定領域としたとき、前記一対の液拡散誘導部の前記長手方向の内端は、それぞれ、前記所定領域内に配置されている態様1から態様10のいずれかに記載の吸収性物品である。
【0031】
態様11のような吸収性物品によれば、一対の液拡散誘導部の長手方向の内端が所定領域内に配置されていない場合と比べて、液拡散誘導部の長手方向の内端が所定領域内に配置されているほうが、形成される隆起部の谷部の辺りに溜まる液体を吸収体の前後に誘導しやすくなる。これにより、吸収体の全面を使って効率的に吸収することができる。
【0032】
態様12は、前記一対の変形誘導領域は、前記中央領域における前記長手方向の端が前記幅方向に離間している態様1から態様11のいずれかに記載の吸収性物品である。
【0033】
態様12のような吸収性物品によれば、吸収体の中央部で吸収した液体を、一対の変形誘導領域の離間したところから長手方向の腹側及び背側に液体を誘導して吸収体全体に拡散させ、隆起部の谷部に液体が溜まるのを抑制することができる。これにより、吸収体の全面を使って効率的に吸収することができる。
【0034】
態様13は、前記一対の変形誘導領域が前記長手方向の一方側及び他方側の両方にそれぞれ設けられている態様1から態様12のいずれかに記載の吸収性物品である。
【0035】
態様13のような吸収性物品によれば、長手方向の一方側及び他方側(前側及び後側)の両方に変形誘導領域が設けられることで、中央領域において肌側に突出した大きな一つのドーム状となる隆起部をより形成しやすくなる。
【0036】
態様14は、前記長手方向及び前記幅方向の少なくとも中央に、前記吸収性物品の肌側から視認可能なデザインを有する態様1から態様13のいずれかに記載の吸収性物品である。
【0037】
態様14のような吸収性物品によれば、中央部にデザインが施されていることで使用時に中央部が視覚的に強調される。当該中央の位置は使用時に肌側に隆起する部分であり、隆起部が強調されることで、使用者にフィット性の良さや漏れに対する安全性向上のイメージを与えることができる。
【0038】
態様15は、展開かつ伸長状態において、前記伸縮部材は、前記厚さ方向において、前記吸収体の肌側表面よりも非肌側に配置されている非肌側伸縮部材である態様1に記載の吸収性物品である。
【0039】
態様15のような吸収性物品によれば、非肌側伸縮部材(レッグギャザー)によって、吸収性物品の長手方向の収縮をより促すことができ、吸収体のドーム状の隆起部を形成しやすくなる。
【0040】
態様16は、前記吸収体は、吸収性コアを有し、前記吸収性コアは、前記長手方向の両端部の間に、前記両端部よりも前記幅方向の幅が狭い括れ部を有し、前記括れ部の前記長手方向の長さは、前記非肌側伸縮部材の前記長手方向の長さよりも長く、前記長手方向において、前記括れ部が設けられている領域内に前記非肌側伸縮部材が設けられている態様15に記載の吸収性物品である。
【0041】
態様16のような吸収性物品によれば、吸収性コアは、括れ部でない部分は幅が広く、剛性が高い。それと比較して括れ部は剛性が低くなり、当該括れ部の長手方向の範囲内に非肌側伸縮部材(脚回りギャザー)の全域があることで、吸収体が長手方向に収縮しやすくなる。故に、隆起部(ドーム形状)を形成しやすくなり、漏れを抑制できる。
【0042】
態様17は、前記非肌側伸縮部材の前記幅方向の外端は、平面視で前記吸収性コアと重なっていない態様16に記載の吸収性物品である。
【0043】
態様17のような吸収性物品によれば、吸収性コアが存在しない部分を収縮させることによってより長手方向に収縮しやすくなり、吸収体の隆起部をさらに形成しやすくなる。
【0044】
態様18は、前記吸収体は、吸収性コアを有し、前記長手方向を前後方向としたとき、前記前後方向における前側は、着用者の腹側に対応し、前記前後方向における後側は、着用者の背側に対応し、前記前後方向における中央位置よりも前側に、前記吸収性コアを前記厚さ方向に変形するように誘導する前側変形誘導部が前記幅方向に一対設けられており、一対の前記前側変形誘導部は、それぞれ、前記前後方向の前側から後側且つ前記幅方向の外側から内側へ傾斜する前側傾斜部を有する態様1から態様17のいずれかに記載の吸収性物品である。
【0045】
態様18のような吸収性物品によれば、座位及び立位時において、着用者の脚の動きに合わせて前側変形誘導部の外側の吸収性コアを内側の吸収性コアの上部(肌面側)にくるように変形させることができる。漏れが発生しやすい鼠径部の隙間に吸収性コアを密着させて漏れを抑制できる。
【0046】
態様19は、一対の前記前側変形誘導部は、それぞれ、傾斜が開始する傾斜開始点と、前記傾斜開始点よりも後側に位置し且つ傾斜が終了する傾斜終了点と、を有し、一対の前記前側傾斜部のうちの一方側における前記傾斜開始点と前記傾斜終了点とを結ぶ直線またはその延長線は、前記厚さ方向に見たときに前記一対の変形誘導領域のうちの一方と交差する態様18に記載の吸収性物品である。
【0047】
態様19のような吸収性物品によれば、前側傾斜部に加わった変形を誘導する力が、変形誘導領域にも伝わりやすく、変形誘導領域を起点に吸収体を肌面側に凸状に変形させやすくなる。それにより、吸収体を密着させて漏れを抑制できる。
【0048】
態様20は、前記吸収体は、吸収性コアを有し、前記吸収性コアは、前記長手方向の両端部の間に、前記両端部よりも前記幅方向の幅が狭い括れ部を有し、前記長手方向において、前記前側変形誘導部と前記括れ部とが重なる部分を有する態様18又は19に記載の吸収性物品である。
【0049】
態様20のような吸収性物品によれば、括れ部は着用者の脚と接触しやすいところであり、括れ部に沿って前側変形誘導部を設けることで、前側変形誘導部の外側の吸収性コアを内側の吸収性コアの上部(肌面側)にくるように変形させやすい。それにより、漏れが発生しやすい鼠径部の隙間に吸収性コアを密着させて漏れを抑制できる。
【0050】
態様21は、前記吸収体は、前記幅方向において一対の前記前側変形誘導部の間に、前記前後方向に沿った、且つ、変形起点となる前側中央変形誘導部を有している態様18又は19に記載の吸収性物品である。
【0051】
態様21のような吸収性物品によれば、前側変形誘導部の外側の吸収体を内側の吸収体の上部(肌面側)にくるように変形させつつ、前側中央変形誘導部を下凸状(非肌面側)に変形させることで、漏れが発生しやすい鼠径部の隙間に吸収体を密着させつつ、前側に空間を形成できる。当該空間は尿を一時的に貯めておく空間として機能し、鼠径部の漏れを抑制できる。
【0052】
===第1実施形態===
本発明の第1実施形態に係る吸収性物品として、尿取りパッド1を例に挙げて説明する。尿取りパッド1は、例えばパンツ型使い捨ておむつ101に取り付けて使用される。
図1Aは、パンツ型使い捨ておむつ101を前身頃101aと後身頃101bとの接合部で分離して平面に展開して示す概略平面図であり、
図1Bは、
図1A中のA-A断面図である。
【0053】
図1A及び
図1Bに示すように、使い捨ておむつ101は、互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、パルプ繊維等の液体吸収性素材を含む吸収体110と、吸収体110を厚さ方向の肌側から覆う液透過性の表面シート130と、同吸収体110を非肌側から覆う液不透過性の裏面シート140と、を有している。また、おむつ101の展開形状は、
図1Aに示すように、長手方向と幅方向と厚さ方向とを有した略砂時計形状をなしている。すなわち、長手方向の中央部101mが幅方向に括れた形状をなしている。
【0054】
ここで、当該くびれた部分101mが、着用者の股間にあてがわれる股下部101mであり、股下部101mよりも長手方向の腹側の部分101aが、着用者の下腹部にあてがわれる前身頃101aであり、股下部101mよりも長手方向の背側の部分101bが、着用者の臀部にあてがわれる後身頃101bである。そして、同展開状態のおむつ101が長手方向の中央位置CL101で二つ折りされた状態において、前身頃101aの幅方向の各端部101ae2,101ae2と、後身頃101bの幅方向の各端部101be2,101be2とが、それぞれ溶着又は接着等で接合されることにより、一つの胴回り開口部と、二つの脚回り開口部とが形成されてパンツ型の使い捨ておむつ101となる。そして、当該おむつ101は、パンツのように履いて着用者に装着される。
【0055】
図2は、尿取りパッド1の交換の様子を示す概略斜視図である。同パッド1の交換は、例えば、着用者が立った状態、或いは同
図2のように椅子などに座った状態で、且つ膝下までおむつ101を下げた状態で行われる。すなわち、このおむつ101を下げた状態で、先ず、おむつ101の表面シート130の肌側面上に取り付けられている使用済みの尿取りパッド(不図示)をおむつ101から取り外す。そして、予め用意していた新品の尿取りパッド1をおむつ101に取り付けるが、ここで、通常、新品の尿取りパッド1は、
図2のように長手方向の中央位置CL1を折り位置CL1として二つ折り状態にされている。そのため、おむつ101に取り付ける際には、先ず、同折り位置CL1が先頭となるようにしながら、尿取りパッド1をおむつ101の中に入れて、そして、同折り位置CL1をおむつ101の表面シート130の肌側面に軽く押し当てる。次に、二つ折り状態の尿取りパッド1を長手方向の両側に開いて、これにより同パッド1を平面状に展開し、そして、同展開状態の尿取りパッド1をおむつ101の表面シート130の肌側面に固定する。なお、かかる固定は、例えば、尿取りパッド1の非肌側面に予め設けられた面ファスナーの雄材81,81(
図5)を、おむつ101の表面シート130に係合することでなされる。そして、おむつ101を着用者の腰の位置まで引き上げることで、尿取りパッド1の交換が完了する。
【0056】
図3は、第1実施形態における展開かつ伸長状態の尿取りパッド1を肌側から見た概略平面図である。
図4Aは、
図3中のA-A断面図であり、
図4Bは、
図3中のB-B断面図であり、
図4Cは、
図3中のC-C断面図である。
図5は、展開かつ伸長状態の尿取りパッド1を非肌側から見た概略平面図である。
【0057】
図3に示すように、尿取りパッド1は、互いに直交する三方向として長手方向と幅方向と厚さ方向とを有する。そして、尿取りパッド1の長手方向と幅方向とで規定される平面形状は、縦長形状の一例として略長方形をなしている。但し、何等これに限らず、例えば、略砂時計形状をなしていても良い。
【0058】
なお、以下では、厚さ方向に関して、使用者の身体に接触する側のことを「肌側」とも言い、おむつ101に接する側のことを「非肌側」とも言う。また、長手方向のことを「前後方向」とも言い、幅方向のことを「左右方向」とも言う。なお、使用者への装着時には、尿取りパッド1の長手方向の前側は、使用者の腹側を向き、後側は、使用者の背側を向く。また、尿取りパッド1の長手方向の寸法は、幅方向の寸法よりも長く、幅方向の寸法は厚さ方向の寸法よりも長くなっている。
【0059】
なお、尿取りパッド1の展開状態とは、尿取りパッド1をその長手方向に開くことで、尿取りパッド1を平面上に展開した状態のことである。また、尿取りパッド1の「伸長状態」とは、尿取りパッド1全体(製品全体)を皺なく伸長させた状態、具体的には、尿取りパッド1を構成する各部材(例えば、後述する伸縮部材(防漏壁弾性部材55、55、非肌側伸縮部材57等)の寸法がその部材単体の寸法(すなわち弾性部材の弾性特性が発現しない状態での寸法)と一致又はそれに近い寸法になるまで伸長させた状態のことを言う。
【0060】
<尿取りパッド1の基本構成について>
図3、
図4A~C、及び
図5に示すように、尿取りパッド1は、尿を吸収する液吸収性の吸収体10と、吸収体10を厚さ方向の肌側から覆う液透過性の表面シート30と、同吸収体10を非肌側から覆う液不透過性の裏面シート40と、表面シート30の幅方向の各端部30e2,30e2に防漏壁部52,52を形成するためのサイドシート50,50と、を有する。
【0061】
本実施形態において、吸収体10としては、厚さ方向に上下二層構造のものを用いている。すなわち、厚さ方向の肌側に設けられる第1吸収体11と、第1吸収体11よりも厚さ方向の非肌側に隣接して設けられる第2吸収体21と、を有している。なお、この二層構造の吸収体10については後述する。
【0062】
表面シート30は、排泄された尿を受け止めて速やかに厚さ方向に吸い込んで吸収体10へと導くものである。そして、
図3及び
図4A~Cに示すように、例えば吸収体10の肌側面の大半を覆うことが可能な平面形状のシートが使用され、ここでは略長方形のシートが使用されている。この表面シート30の素材には、例えばエアスルー不織布やスパンボンド不織布等の不織布が使用され、不織布の構成繊維としては、例えばポリエチレンやポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂繊維が用いられる。但し、液透過性及び柔軟性をある程度有していれば、これ以外の素材のシートを用いても良い。
【0063】
裏面シート40は、尿取りパッド1の非肌側からの尿漏れを防止する防漏シートである。そして、
図5に示すように、裏面シート40の平面形状は略長方形形状であり、例えば同シート40の外周縁部は、長手方向において吸収体10よりも外方にはみ出しており、長手方向の中央部分においては幅方向において吸収体10よりも外方にはみ出している。なお、同シート40の外周縁部は、全周に亘って吸収体10よりも外方にはみ出していてもよい。そして、
図4Cに示すように、この裏面シート40に吸収体10を載せた状態で、同シート40の幅方向の各端縁部40ee2,40ee2が、それぞれ厚さ方向の肌側に回り込んで、これにより、同シート40の各端縁部40ee2,40ee2が、表面シート30の幅方向の各端縁部30ee2,30ee2を肌側から覆っている。この裏面シート40の素材としては、例えばポリエチレンフィルム等の樹脂フィルムを例示できるが、液不透過性及び柔軟性をある程度有していれば、これ以外の素材のシートを用いても良い。
【0064】
サイドシート50は、
図4A及び
図4Bに示すように、表面シート30の幅方向の各端部30e2,30e2にそれぞれ防漏壁部52,52を形成するシートである。防漏壁部52は、尿取りパッド1の幅方向からの尿漏れを防ぐ。かかるサイドシート50は、
図3、
図4A及び
図4Bに示すように、表面シート30の幅方向の端部30e2及び裏面シート40の幅方向の端部40e2の両者に跨るように、これら端部30e2,40e2を覆いつつ、同端部30e2,40e2の位置にて表面シート30及び裏面シート40にそれぞれ接着剤(図示せず)で接合固定されている。また、サイドシート50のうちで表面シート30の端部30e2に固定された部分50bは、防漏壁部52の基部50bとなっている。すなわち、サイドシート50のうちで当該基部50bよりも幅方向の中央側の部分が、表面シート30から起立可能な自由端部分50fであり、そして、当該自由端部分50fには、長手方向に収縮可能な防漏壁弾性部材55(伸縮部材に相当)が長手方向に伸長状態で接着剤により固定されている。防漏壁弾性部材55としては、糸ゴム等が例示できる。
【0065】
防漏壁弾性部材55の長手方向の収縮によって、尿取りパッド1は全体として表面シート30側が内周側となるように尿取りパッド1を長手方向に湾曲するが、この湾曲時には、同防漏壁弾性部材55から付与される収縮力によって自由端部分50fは、長手方向に収縮して表面シート30から起立し、これにより、同自由端部分50fは防漏壁部52として機能する。
【0066】
かかるサイドシート50の素材には、撥水処理等されたSMS不織布等を例示することができる。但し、何等これに限らず、柔軟性をある程度有していれば、これ以外の素材のシートを用いても良い。
【0067】
<吸収体10について>
図3乃至
図5に示すように、尿取りパッド1は、二層構造の吸収体10を有している。すなわち、当該吸収体10は、パルプ繊維等の液体吸収性素材を含む第1吸収体11と、同じくパルプ繊維等の液体吸収性素材を含む第2吸収体21と、を有している。そして、
図3、
図4A及び
図4Bに示すように、第1吸収体11及び第2吸収体21は、それぞれ、長手方向及び幅方向の両方向における中央部分に、長手方向に延在し且つ変形起点となる中央変形誘導部10Sを有している。より具体的には、中央変形誘導部10Sは、後述する第1吸収体11の中央変形誘導部11S及び第2吸収体21の中央変形誘導部21Sによって構成される。本実施形態では、当該中央変形誘導部10Sは、幅方向の外側から隣接する領域の液体吸収性素材の坪量(g/m
2)よりも低い低坪量部10Sによって形成されている。ここでは、かかる低坪量部10Sは、坪量が零の部分、つまり空間とされているが、これに限定されない。また、当該低坪量部10Sは、尿取りパッド1の装着時に排尿点に対応する位置に形成されることが好ましい。中央変形誘導部10S(低坪量部10S)により、排尿を速やかに吸収体10の内部に拡散することができ、吸収体10の表面に液体が溜まるのを低減し、漏れを抑制することができる。なお、中央変形誘導部10Sは、低坪量部によって形成されることに限定されず、例えば、エンボス加工等によって形成される圧搾部(圧搾溝)であってもよい。中央変形誘導部10Sによって促される吸収体10の変形の詳細については、後述する。
【0068】
以下、二層構造の吸収体10に係る第1吸収体11及び第2吸収体21について詳細に説明する。第1吸収体11は、液体吸収性素材を所定形状に成形してなる第1吸収性コア13を有する。第1吸収性コア13としては、液体吸収性素材としての液体吸収性繊維と液体吸収性粒状物とを混合し、所定の形状に成形されたものを例示できる。ここでは、液体吸収性繊維としてパルプ繊維を使用し、また液体吸収性粒状物として高吸収性ポリマー(所謂SAP)を用いているが、何等これに限らない。また、液体吸収性素材として液体吸収性繊維及び液体吸収性粒状物のどちらか一方だけを含んでいても良いし、上記の二種類の液体吸収性素材に加えて、或いはどちらか一方に代えて、別種の液体吸収性素材が混合されていても良い。
【0069】
そして、
図3に示すように、第1吸収性コア13は、同コア13の平面視形状が略砂時計形状となるように、厚さ方向に上記の液体吸収性素材が積層されて形成されている。すなわち、第1吸収性コア13は、長手方向の両端部の間に、両端部よりも幅方向の幅が狭い括れ部13cを有している。当該括れ部13cは、同コア13の長手方向の中央部分において幅方向の幅が最も狭くなる部分を有している。
【0070】
また、第1吸収性コア13は、中央部分に前述の中央変形誘導部11Sを有している。そして、既述のように、この例では、低坪量部によって形成されている中央変形誘導部11Sの坪量が零であるため、当該中央変形誘導部11Sは、厚さ方向に第1吸収性コア13を貫通している。
【0071】
当該中央変形誘導部11Sを厚さ方向から見た形状は、
図3に示すように、長手方向の寸法の方が幅方向の寸法よりも大きい縦長形状となっている。詳しくは、縦長形状の一例として、本実施形態の中央変形誘導部11Sは、長手方向に沿った長円形状、且つ、長手方向の中央部分が括れた略砂時計形状を有している。
【0072】
また、
図3に示すように、本実施形態において、第1吸収性コア13の括れ部13cの前側の括れ開始位置13cpから後側の括れ開始位置13cnまでの長手方向の範囲を「括れ部13cが存在する領域」としたとき、中央変形誘導部11Sは、長手方向において括れ部13cが存在する領域内に設けられている。
【0073】
また、
図4A~
図4Cに示すように、第1吸収性コア13は、同コア13の崩れを抑制してその外形形状を保つべく、例えばティッシュペーパー等によって構成されるコアラップシート15によって被覆されている。例えば、本実施形態では、コアラップシート15を幅方向に巻き付けることによって、第1吸収性コア13の外周面の全面をくるんでおり、また、かかるコアラップシート15のつなぎ目が、第1吸収性コア13の非肌側面に位置している。但し、何等これに限らない。例えば、コアラップシート15を長手方向に巻き付けることにより、第1吸収性コア13の外周面の全面をくるんでも良いし、或いは、つなぎ目が、第1吸収性コア13の肌側面に位置していても良い。更に、コアラップシート15は、ティッシュペーパーに限らず、液透過性及び柔軟性をある程度有したシートであってもよい。
【0074】
また、コアラップシート15と第1吸収性コア13とは、少なくとも互いの一部においてホットメルト接着剤等の接着剤によって接合されている。例えば、コアラップシート15は、接着剤によって第1吸収性コア13の肌側面と接合されているとともに、同コア13の非肌側面とも接着剤によって接合されていることが好ましい。それにより、同コアラップシート15を介して第1吸収性コア13は、第2吸収体21との間で応力伝達をしやすくなり、第1吸収体11のうちで中央変形誘導部11Sの幅方向の両側に位置する各部分11cs,11cs同士が厚さ方向に位置ずれすることを抑制できる。
【0075】
図4A~
図4Cに示す第2吸収体21も、上述と同様の液体吸収性素材を成形してなる第2吸収性コア23を有する。そして、
図3に示すように、第2吸収性コア23は、同コア23の平面視形状が縦長且つ略砂時計形状となるように、厚さ方向に上記の液体吸収性素材が積層されて形成されている。すなわち、第2吸収性コア23は、長手方向の両端部の間に、両端部よりも幅方向の幅が狭い括れ部23cを有している。当該括れ部23cは、同コア23の長手方向の中央部分において幅方向の幅が最も狭くなる部分を有している。
【0076】
ここで、望ましくは、長手方向の位置が同じ位置において幅方向の寸法を比較した場合に、第2吸収性コア23の幅方向の寸法は、第1吸収性コア13の幅方向の寸法よりも小さいか又は同値にされていると良い。そして、例えば、本実施形態では、第2吸収性コア23の幅方向の寸法は、第1吸収性コア13の長手方向の中央部分の幅方向の寸法の最小値よりも小さくなっている。よって、長手方向の中央部分において、第1吸収性コア13よりも第2吸収性コア23の方が、幅方向の両側に突出しないようになっている。そうすることにより、
図4Aに示す第2吸収性コア23の幅方向の外側の各端部23ee,23eeが、着用者の股間近傍に位置する脚の付け根部にきつく当たるなどして着用者に違和感を覚えさせることを有効に防ぐことができる。
【0077】
また、第2吸収性コア23は、長手方向及び幅方向の両方向における中央部分に前述の中央変形誘導部21Sを有している。そして、既述のように、この例では、低坪量部によって形成されている中央変形誘導部21Sの坪量が零であるため、当該中央変形誘導部21Sは、厚さ方向に第2吸収性コア23を貫通している。
【0078】
当該中央変形誘導部21Sを厚さ方向から見た形状は、
図3に示すように、長手方向の寸法の方が幅方向の寸法よりも大きい縦長形状となっている。詳しくは、縦長形状の一例として、本実施形態の中央変形誘導部21Sは、長手方向に沿った長円形状である。
【0079】
また、
図3に示すように、本実施形態において、第2吸収性コア23の括れ部23cの前側の括れ開始位置23cpから後側の括れ開始位置23cnまでの長手方向の範囲を「括れ部23cが存在する領域」としたとき、中央変形誘導部21Sは、長手方向において括れ部23cが存在する領域内に設けられている。
【0080】
また、
図3、
図4A及び
図4Bに示す中央変形誘導部21Sの幅方向の寸法は、長手方向の位置が同じ位置における中央変形誘導部11Sの幅方向の寸法よりも小さくなっている。よって、第1吸収体11のうちで中央変形誘導部11Sの幅方向の両側に位置する各部分11cs,11csに第2吸収体21を確実に掛け渡し可能となり、その結果、上記各部分11cs,11cs同士の厚さ方向の位置ずれを抑制できる。
【0081】
また、
図4A~
図4Cに示すように、第2吸収性コア23も同様に、同コア23の崩れを抑制してその外形形状を保つべく、ティッシュペーパー等によって構成されるコアラップシート25によって被覆されている。例えば、本実施形態では、コアラップシート25を幅方向に巻き付けることによって、第2吸収性コア23の外周面の全面をくるんでおり、また、かかるコアラップシート25のつなぎ目が、第2吸収性コア23の肌側面に位置している。但し、何等これに限らない。例えば、コアラップシート25を長手方向に巻き付けることにより、第2吸収性コア23の外周面の全面をくるんでも良いし、或いは、つなぎ目が、第2吸収性コア23の非肌側面に位置していても良い。更に、コアラップシート25は、ティッシュペーパーに限らず、液透過性及び柔軟性をある程度有したシートであってもよい。
【0082】
また、コアラップシート25と第2吸収性コア23とは、少なくとも互いの一部においてホットメルト接着剤等の接着剤によって接合されている。例えば、コアラップシート25は、接着剤によって第2吸収性コア23の肌側面と接合されているとともに、同コア23の非肌側面とも接着剤によって接合されていることが好ましい。
【0083】
ところで、上述のように、第1吸収体11は、第1吸収性コア13をコアラップシート15で被覆したものであり、同じく、第2吸収体21も、第2吸収性コア23をコアラップシート25で被覆したものである。そのため、これら第1吸収体11と第2吸収体21とを接合する接着剤(図示せず)は、二つのコアラップシート15,25のうちの少なくともどちらか一方に塗布され、そして、当該接着剤によって二つのコアラップシート15,25同士が接合されることで、第1吸収体11と第2吸収体21とが接合されている。
【0084】
なお、上述したホットメルト接着剤等の接着剤の塗布パターンとしては、長手方向に沿った複数の線状部分が幅方向に並んでなるストライプパターンや、長手方向に沿った複数の螺旋状部分が幅方向に並んでなるスパイラルパターン等を例示できるが、何等これに限らない。
【0085】
また、上述の通り、
図4A~
図4Cにおいて、「裏面シート40の幅方向の各端部40e2,40e2は、それそれ、サイドシート50,50によって覆われている」旨を既に述べたが、この覆われた部分40e2には、糸ゴム等の長手方向に伸縮する非肌側伸縮部材57(伸縮部材に相当)が長手方向に沿って配置され(
図3)、そして、同非肌側伸縮部材57は、長手方向に伸長した状態で裏面シート40及びサイドシート50の両者に接着剤で固定されている。そして、当該非肌側伸縮部材57が固定される位置は、
図3に示すように、第1吸収性コア13の括れ部13cのうちの幅方向の幅が最も狭い部分から幅方向の端側に所定間隔だけ離間した位置であって、かかる位置は、着用者の脚回りの位置に相当する。よって、非肌側伸縮部材57の収縮力で裏面シート40及びサイドシート50が収縮することにより、同位置には、所謂脚回りギャザーが形成されている。つまり、非肌側伸縮部材57は、尿取りパッド1(吸収性物品)の幅方向の両端部、且つ、少なくとも長手方向の中央部分に設けられていればよい。また、
図4A及び
図4Bに示すように、厚さ方向において、非肌側伸縮部材57は、吸収体10の肌側表面よりも非肌側に配置されている。
【0086】
なお、本実施形態では、非肌側伸縮部材57(伸縮部材)が尿取りパッド1の幅方向の両側に2本ずつ設けられているが、非肌側伸縮部材57の数はこれに限られない。また、非肌側伸縮部材57は、糸ゴムに限らず、例えば伸縮性シートを幅方向に間隔を空けて複数配置してもよいし、1枚配置してもよい。また、
図3では、各非肌側伸縮部材57のうち伸縮性を発現する部位(所謂有効長の部位)のみを示している。よって、図示されている非肌側伸縮部材57の長手方向の全ての部分が伸縮領域である。
【0087】
また、吸収体10(第1吸収体11及び第2吸収体21)は、幅方向の端側から幅方向の中央側に向かって傾斜して設けられた一対の変形誘導領域60を有している。変形誘導領域60は、例として、ここではエンボス加工により形成された圧搾溝によって構成されている。一対の変形誘導領域60は、そのような圧搾によって吸収体10の剛性が変化した領域であり、吸収体10の変形の起点となる。また、本実施形態において、当該一対の変形誘導領域60は、吸収体10の長手方向の一方側(前側)及び他方側(後側)の両方にそれぞれ設けられている。そして、変形誘導領域60のうち吸収体10の幅方向の端側に位置する端部領域60et、60etが、幅方向の中央側の中央領域60ct、60ctよりも長手方向の内側に位置するように設けられている。また、変形誘導領域60は、尿取りパッド1の長手方向の中央線CL1と重ならないように配置されている。当該変形誘導領域60によってどのように吸収体10の変形が促されるについての詳細は、後述する。
【0088】
図3及び
図4Cに示すように、本実施形態では、吸収体10は、第1吸収体11及び第2吸収体21の両方を一緒に厚さ方向の肌側から圧搾してなる一対の液拡散誘導部70,70を有する。当該一対の液拡散誘導部70は、吸収体10の幅方向の両側に長手方向に沿って延在しており、また、長手方向の一方側(前側)及び他方側(後側)の両方に設けられている。一対の液拡散誘導部70のそれぞれの長手方向の外側端部は、第1吸収体11及び第2吸収体21の長手方向の各外側端部にまで設けられている。第1吸収体11及び第2吸収体21が吸収した尿は、当該液拡散誘導部70を通って長手方向に拡散される。それにより、尿を吸収体10の全体で吸収することができる。
【0089】
ところで、尿取りパッド1のように尿を吸収する吸収性物品において、加齢や症状悪化などに伴って失禁量が増加した際、製品の厚みを増したものやサイズの大きいものを使用することによって吸収能力を向上させようすることも考えられる。しかし、そのような厚みを増したものやサイズの大きいパッド等では、身体の形状に合わせた変形や適切な装着が困難となり、結果として身体とパッドとの間に隙間が生じて漏れを誘導してしまうことがある。故に、使用者の身体と吸収性物品との間に隙間が生じず、吸収性能を十分に発揮できるものが必要である。
【0090】
この点につき、本実施形態では、次のように吸収体10に変形を促すことによって、使用者の身体と尿取りパッド1との間に隙間を生じにくくさせている。
図6は、吸収体10が変形した状態を説明する模式図である。
図6は、尿取りパッド1をおむつ101に取り付けて使用者が装着したときの、尿取りパッド1の状態を示している。尿取りパッド1を装着した際には、尿取りパッド1の非肌面側において、非肌側伸縮部材57の収縮力により裏面シート40及びサイドシート50が収縮し、所謂脚回りギャザーが形成され、吸収体10に対しても長手方向に沿った収縮力が加わる。そして、本実施形態の吸収体10(第1吸収体11及び第2吸収体12)は、中央変形誘導部10S(11S、21S)を有し、且つ、吸収体10の長手方向の中央部1Cにおいて、上下2層の吸収体(第1吸収体11及び第2吸収体12)のうち、下側(非肌側)の第2吸収性コア23の幅方向の寸法は、上側(肌側)の第1吸収性コア13の幅方向の寸法よりも小さくなっている(
図3及び
図4A参照)。また、同様に、長手方向の中央部1Cにおいて、第1吸収体11の中央変形誘導部11Sの幅方向の寸法は、第2吸収体21の中央変形誘導部21Sの幅方向の寸法よりも
大きくなっている(
図4A)。中央変形誘導部10S(11S、21S)は、上述の通り坪量が零の低坪量部であり、つまり、吸収体10の剛性が変化し、吸収体10の変形を促す部分である。尿取りパッド1を装着した際には、尿取りパッド1の長手方向の中央部1Cに対して幅方向の両側から着用者の股締め力が付与され、この股締め力の作用によって、吸収体10は、中央変形誘導部10S(11S、21S)を起点に変形する。その際、非肌側の吸収体(第2吸収体21)及び非肌側の中央変形誘導部21Sの幅方向の寸法が肌側の吸収体(第1吸収体11)及び肌側の中央変形誘導部11Sの幅方向の寸法よりもそれぞれ小さいことから、吸収体10は当該中央変形誘導部10Sを起点に肌側に凸状となるように変形する。
【0091】
そして、非肌側伸縮部材57及び防漏壁弾性部材55の収縮によって長手方向に沿った収縮力が一対の変形誘導領域60,60にそれぞれ作用し、一対の変形誘導領域60、60に沿って、肌側に凸状に変形する吸収体10の長手方向の端部が規定される。すなわち、一対の変形誘導領域60、60を変形起点として、肌側への凸状変形が促される。このように、吸収体10には、中央変形誘導部10S(11S,21S)及び一対の変形誘導領域60,60によって、
図6に示すように、股間部に対応する中央領域において肌側に凸状となる大きな一つのドーム状の隆起部Rが形成される。当該隆起部Rによって、着用者の身体の形状に沿って広く面で吸収体10を密着させることができ、身体と尿取りパッド1との間に隙間が生じにくくなる。その結果、漏れを抑制することができる。
【0092】
本実施形態では、一対の変形誘導領域60,60が長手方向の一方側(前側)及び他方側(後側)の両方にそれぞれ設けられていることから、長手方向の中央部1Cにおいて肌側に突出した大きな一つの隆起部Rをより形成しやすくなるが、一対の変形誘導領域60,60は、長手方向の一方側(前側)及び他方側(後側)の両方に設けられていなくてもよい。一対の変形誘導領域60,60を長手方向の一方側或いは他方側の少なくとも一方に設けることで、当該変形誘導領域60が設けられている側は、剛性が変化する変形誘導領域60、60を起点に吸収体10が肌側に凸状になり易くなる。
【0093】
尚、一対の変形誘導領域60,60の形状は、本実施形態における形状に限らず、例えば、一対の変形誘導領域60,60がそれぞれ一直線状の領域によって形成されても、円弧状の領域によって形成されてもよい。
【0094】
また、装着時に股間部で肌側に凸状となる隆起部Rの長手方向の寸法は、第1吸収性コア13或いは第2吸収性コア23の長手方向の寸法の50%以下であることが好ましい。そのような寸法を有することで、装着者の股間部に対して過不足なく隆起部Rを密着させることができ、身体の前後方向で吸収体10から身体が離れることを防止でき、身体と尿取りパッド1との間に隙間を生じにくくし、漏れを抑制できる。
【0095】
また、装着時に吸収体10を変形させて当該隆起部Rを形成するとき、隆起部Rを形成する吸収体10の領域の幅方向の最狭幅は、隆起部Rの長手方向の寸法の75%以下であることが好ましい。このような隆起部Rの寸法により、装着者の股間部に対して過不足なく隆起部Rを収めることができる。結果として、身体の左右方向で吸収体10が身体から離れることを防止でき、身体と尿取りパッド1との間に隙間を生じにくくする。
【0096】
また、長手方向において、一対の変形誘導領域60,60の少なくとも一部と、第1吸収性コア13の括れ部13c(第2吸収性コア23の括れ部23c)とが重なる部分を有することが好ましい。本実施形態では、長手方向において、一対の変形誘導領域60,60は、第1吸収性コア13の括れ部13c(第2吸収性コア23の括れ部23c)と重なっている。長手方向においては、変形誘導領域60,60が剛性の変化領域となり、当該変形誘導領域60,60に沿って吸収体10が肌側に凸上に変形する長手方向の端部を規定する。長手方向と交差する幅方向では、括れ部13c(23c)によって幅方向に変形しやすくなる。そのような変形誘導領域60,60と括れ部13c(23c)との両方の作用により、より立体的な隆起部Rを形成しやすくなる。
【0097】
また、
図3に示すように、括れ部13c(23c)の長手方向の長さL13c(L23c)は、非肌側伸縮部材57の長手方向の長さL57よりも長く、つまり、長手方向において、非肌側伸縮部材57は、括れ部13c(23c)が設けられている領域内に設けられている。括れ部13c(23c)が設けられている領域内とは、長手方向において括れ部13c(23c)が存在している範囲内を意味する。第1吸収性コア13及び第2吸収性コア23は、それぞれ、括れ部13c、23cでない部分は幅方向の寸法が広く、剛性が高い。括れ部13c、23cでない部分と比較して括れ部13c、23cは剛性が低くなり、長手方向において当該括れ部13c、23cが設けられている範囲内に非肌側伸縮部材57の全域があることで、吸収体10が長手方向に収縮しやすくなる。故に、ドーム状の隆起部Rを形成しやすくなる。
【0098】
また、非肌側伸縮部材57の幅方向の外端は、平面視で第1吸収性コア13及び第2吸収性コア23と重なっていないことが望ましい。ここでいう「非肌側伸縮部材57の幅方向の外端」とは、幅方向の両側に2本ずつ設けられている非肌側伸縮部材57、57のうち、幅方向の外側に位置する方の非肌側伸縮部材57における幅方向の外端を意味する。また、非肌側伸縮部材57が、本実施形態とは異なり、例えば幅方向の両側に帯状(シート状)の伸縮部材を1本ずつ設ける場合には、当該帯状の伸縮部材の幅方向の外端を意味する。このような構成により、第1吸収性コア13及び第2吸収性コア23が存在しない部分を非肌側伸縮部材57によって収縮させることができることから尿取りパッド1はより長手方向に収縮しやすくなり、吸収体10の変形による隆起部Rをさらに形成しやすくなる。
【0099】
なお、本実施形態の尿取りパッド1は、防漏壁部52を構成する各防漏壁弾性部材55と、脚回りギャザーを形成する各非肌側伸縮部材57とを有しているが、非肌側伸縮部材57の応力は防漏壁弾性部材55の応力よりも大きいことが望ましい。ここでの応力は、非肌側伸縮部材57毎、或いは各防漏壁弾性部材55毎の応力ではなく、設けられている非肌側伸縮部材57全体の応力と、防漏壁弾性部材55全体の応力を意味する。
【0100】
また、一対の変形誘導領域60,60のうちの端部領域60et、60etは、長手方向において第1吸収性コア13の括れ部13cが存在する領域内に設けられている。また、同様に、一対の変形誘導領域60,60のうちの端部領域60et、60etは、長手方向において第2吸収性コア23の括れ部23cが存在する領域内に設けられている。括れ部13c(23c)は、第1吸収性コア13(第2吸収性コア23)の存在自体が少ないため、吸収体10(11,21)は変形しやすく、隆起部Rを形成しやすい。そのような領域に剛性変化の起点となる変形誘導領域60、60の端部領域60et、60etが存在することによって、吸収体10を隆起させやすくなる。
【0101】
また、本実施形態においては、変形誘導領域60,60のうちの中央領域60ct、60ctは、長手方向において第1吸収性コア13の括れ部13cが存在する領域内に設けられている。さらに、変形誘導領域60,60のうちの中央領域60ct、60ctは、長手方向において第2吸収性コア23の括れ部23cが存在する領域内に設けられている。すなわち、変形誘導領域60全体が長手方向において括れ部13c(23c)の領域内に配置されている。括れ部13c(23c)は、第1吸収性コア13(第2吸収性コア23)の存在自体が少ないため変形しやすく、当該括れ部13c(23c)の領域に変形誘導領域60全体が存在することによって、吸収体10をより隆起させやすくなる。
【0102】
また、本実施形態では、中央変形誘導部10Sは、既述の通り、長手方向において括れ部13c(23c)が存在する領域内に設けられている。長手方向において括れ部13c(23c)よりも中央変形誘導部10Sが長いと、括れ部13c(23c)の範囲内で吸収体10を肌側に凸状に変形させにくくなるが、中央変形誘導部10Sが括れ部13c(23c)の範囲内にあると、括れ部13c(23c)の範囲内で吸収体10を肌側に凸状に変形させ易くなる。
【0103】
本実施形態では、
図3に示すように、中央変形誘導部10Sの長手方向の前側端部10Sea及び後側端部10Sebは、長手方向において変形誘導領域60と重なる部分を有している。中央変形誘導部10Sは、装着時に吸収体10が変形して隆起部Rを形成する際、隆起部Rの峰に相当する部分となる。そのような中央変形誘導部10Sが長手方向において変形誘導領域60と重なる位置まで延在していることにより、肌側に凸状となる隆起部Rの峰に相当する部分が形成される範囲が十分に長くなる。それにより、しっかりと隆起した隆起部Rの形成を促進できる。なお、本実施形態では、中央変形誘導部10Sの長手方向の両端部10Sea、10Sebが両方とも長手方向において変形誘導領域60、60と重なる部分を有していたが、これに限らず、両端部10Sea、10Sebのうち、少なくとも一方の端部が長手方向において変形誘導領域60と重なる部分を有していればよい。
【0104】
また、
図3に示すように、中央変形誘導部10Sの長手方向の端部10Sea、10Sebは、それぞれ、変形誘導領域60のうちの中央領域60ctの長手方向の外端60seよりも長手方向の内側に位置している。仮に、中央変形誘導部10Sが変形誘導領域60よりも長手方向の外側にまで設けられていると、尿取りパッド1の装着時に、吸収体10の変形が、ドーム状のような隆起部になりにくくなる。しかしながら、中央変形誘導部10Sが長手方向において一対の変形誘導領域60が存在する範囲内に位置することで、ドーム状の隆起変形を促すことができる。
【0105】
また、
図3に示すように、変形誘導領域60のうちの端部領域60etは、長手方向において非肌側伸縮部材57が存在する領域内に設けられていることが望ましい。非肌側伸縮部材57が存在する領域とは、各非肌側伸縮部材57のうち伸縮性を発現する部位(所謂有効長の部位)のことであり、
図3に示す非肌側伸縮部材57は当該有効長の部位のみを示している。変形誘導領域60の端部領域60etが長手方向において非肌側伸縮部材57が存在する領域内にあることで、非肌側伸縮部材57の収縮力が端部領域60etに作用しやすくなり、変形誘導領域60を変形起点として吸収体10が変形しやすくなる。
【0106】
図7は、展開状態の尿取りパッド1を所定条件下で水平面上に静置したときの態様を説明する図である。ここでは、尿取りパッド1の装着時と同様の吸収体10の変形状態を示すために、尿取りパッド1の肌側表面が外側になるように尿取りパッド1を二つ折りした後に、再度尿取りパッド1を展開し、尿取りパッド1の非肌側表面を下にして水平面上に静置した状態の尿取りパッド1の一部を
図7に示している。当該状態においては、尿取りパッド1の長手方向の中央部1Cに吸収体10の変形による隆起部Rが出現する。そして、吸収体10の水平面から防漏壁弾性部材55の高さが最も高い最高点P2までの高さをH2とし、水平面から吸収体10の高さが最も高い最高点P1までの高さをH1とすると、高さH2は、高さH1よりも低くなっている(H1>H2)。このように変形することにより、防漏壁弾性部材55が先行して着用者の身体と接触することを抑制し、隆起部Rが身体に密着しやすくなる。よって、吸収体10と身体との間に隙間が形成されにくくなり、漏れを抑制することができる。
【0107】
また、吸収体10の長手方向及び幅方向の中央部の隆起変形を促すためには、非肌側伸縮部材57、57及び防漏壁弾性部材55よりも幅方向の内側には、長手方向に沿って収縮する他の収縮要素が設けられていないことが望ましい。本実施形態では、非肌側伸縮部材57,57及び防漏壁弾性部材55の収縮によって吸収体10の長手方向及び幅方向の中央部の隆起はより促されるが、幅方向の中央部に収縮させる収縮要素がないことで、収縮力が吸収体10の幅方向の中央部には直接及ばず、当該中央部は変形自由度を多く維持できる。よって、尿等の液体を吸収して吸収体10が膨潤したときに吸収体10の変形が許容されやすくなる。反対に、尿取りパッド1の幅方向の中央部に収縮要素があると、吸収体10の変形自由度が低減し、吸収体10の膨潤が肌側表面に凸状に出現してしまい、フィット性が損なわれる虞がある。
【0108】
図8は、展開かつ伸長状態の尿取りパッド1の一部を肌側から見た概略平面図である。
図8では、吸収体10の変形誘導領域60の長手方向の内端60ieから外端60seまでの長手方向の長さを第1長さNとし、変形誘導領域60の長手方向の外端60seから当該第1長さN分だけ長手方向の外側にある位置を基準位置KPとし、長手方向において、変形誘導領域60の長手方向の内端60ieから基準位置KPまでの領域を所定領域Xとしている。ここで、吸収体10に設けられている一対の液拡散誘導部70,70は、当該一対の液拡散誘導部70の長手方向の内端70ie、70ieが、それぞれ、上述の所定領域X内に配置されていることが好ましい。一対の液拡散誘導部70,70の長手方向の内端70ie、70ieが所定領域X内に配置されていない場合と比べて、液拡散誘導部70,70の長手方向の内端70ie、70ieが所定領域X内に配置されているほうが、形成される隆起部Rの谷部の辺り(一対の変形誘導領域60の長手方向外側近傍)に溜まる尿を吸収体10の前側及び後側に誘導しやすくなる。これにより、吸収体10の全面を使って効率的に吸収することができる。
【0109】
また、
図3に戻り、本実施形態においては、一対の変形誘導領域60,60は、中央領域60ct、60ctにおける長手方向の端60se、60seが幅方向に離間している。このような構成により、吸収体10の長手方向及び幅方向の中央部で吸収した尿を、一対の変形誘導領域60,60の離間したところから長手方向の腹側及び背側に誘導して吸収体10の全体に拡散させることができる。その結果、吸収体10の変形による隆起部Rの谷部に液体(尿)が溜まるのを抑制することができ、吸収体10の全面を使った効率的な吸収を促すことができる。
【0110】
尚、本実施形態では、一対の変形誘導領域60,60の中央領域60ct、60ctにおける長手方向の端60se、60seが幅方向に離間していたが、これに限定されず、中央領域60ct、60ctにおける長手方向の端60se、60seは離間せずに繋がっていてもよい。例えば、一対の変形誘導領域60,60は、所謂V字型や円弧状をなしていてもよい。中央領域60ct、60ctにおける長手方向の端60se、60seが繋がっていても、吸収体10の凸状変形の長手方向の端部を規定することができる。
【0111】
また、
図3、
図4A及び
図4Bに示すように、本実施形態の尿取りパッド1は、長手方向及び幅方向の少なくとも中央に、尿取りパッド1の肌側から視認可能なデザインを有する。当該デザインはデザインシート33dsに施されており、当該デザインシート33dsは、表面シート30と第1吸収体11との間に配置されている。本実施形態のデザインシート33dsには、
図3に示すように、格子状の図柄が施されている。尿取りパッド1の中央部にそのようなデザインが施されていることで、使用時に当該中央部が視覚的に強調される。当該デザインが施されている位置は、使用時に肌側に隆起する部分であり、隆起部(R)となる部位が強調されることで、使用者にフィット性の良さや漏れに対する安全性向上のイメージを与えることができる。
【0112】
===第2実施形態===
本発明の第2実施形態に係る吸収性物品として、パンツ型使い捨ておむつ200(以下、「おむつ200」とも呼ぶ)を例に挙げて説明する。
【0113】
<おむつ200の基本構成>
図9は、第2実施形態におけるおむつ200の概略斜視図である。
図10は、展開且つ伸長状態のおむつ200の平面図である。
図11は、
図10のC-C線での概略断面図である。なお、おむつ200の「伸長状態」とは、第1実施形態で説明した伸長状態と同様である。
【0114】
おむつ200は、自然状態においてパンツ型形状を有する使い捨ておむつであり、
図9のパンツ型状態において、互いに交差する「上下方向」と「左右方向」と「前後方向」とを有し、胴回り開口BHと一対の脚回り開口LH,LHとを有している。上下方向の上側が胴回り開口BH側に対応し、下側が股下側に対応する。また、前後方向の前側が着用者の腹側に対応し、後側が着用者の背側に対応する。また、
図10の展開状態において、おむつ200は、互いに交差する「長手方向」と「幅方向」とを有する。
図10の展開状態における長手方向は、
図9のパンツ型状態における上下方向に沿った方向である。なお、展開状態における上記の幅方向は、パンツ型状態における上記の左右方向と同じ方向である。また、
図11に示すように、おむつ200を構成する資材が積層された方向を「厚さ方向」とする。第1実施形態と同様に、厚さ方向において着用者の肌と接する側を肌側とし、その反対側を非肌側とする。
【0115】
おむつ200は、吸収性本体210(以下、「吸収体210」とも言う)と、吸収性本体210の非肌側に配置された胴回り部材220とを有している。胴回り部材220は、おむつ200の外装を構成する外装部材である。
【0116】
図10の展開状態から、長手方向の中央位置CLを折り位置として吸収性本体210及び胴回り部材220が二つ折りされる。この二つ折りの状態において互いに対向する胴回り部材220の前側部分と胴回り部材220の後側部分とが、幅方向(左右方向)の両側部にて互いに接合・連結され、一対のサイド接合部220s,220sが形成される。すなわち、一対のサイド接合部220s,220sによって胴回り部材220の前側部分と胴回り部材220の後側部分とが環状に成形される。なお、サイド接合部220sは、溶着や接着等の公知の接合手段によって形成されている。これにより、
図9に示すような胴回り開口BH及び一対の脚回り開口LH,LHが形成されたパンツ型状態のおむつ200となる。
【0117】
本実施形態では、
図10に示されるように、胴回り部材220の長手方向において、前側に形成されるサイド接合部220sと重複する部分を「前側胴回り部230」と呼ぶ。前側胴回り部230は、おむつ200の着用時に着用者の腹側に位置する部分である。同様に、胴回り部材220の長手方向において、後側に形成されるサイド接合部220sと重複する部分を「後側胴回り部240」と呼ぶ。後側胴回り部240は、おむつ200の着用時に着用者の背側(臀部側)に位置する部分である。そして、長手方向において、前側胴回り部230と後側胴回り部240との間に位置する部分を「股下部CA」と呼ぶ。股下部CAは、おむつ200の着用時に着用者の股間に位置する部分である。
【0118】
(吸収性本体(吸収体)210)
図12Aは、吸収性本体210の平面図であり、
図12Bは、
図12AのD-D線での概略断面図である。吸収性本体210は、排泄液を吸収する吸収性コア213と、吸収性コア213よりも厚さ方向の肌側に配置された表面シート216と、吸収性コア213よりも非肌側に配置された裏面シート217とを有する。但し、吸収性本体210が、これ以外のシート部材を備えていても良い。例えば、表面シート216と吸収性コア213との厚さ方向の間に、セカンドシート(不図示)を備えていてもよい。
【0119】
吸収性コア213と、表面シート216と、裏面シート217の素材は、第1実施形態の尿取りパッド1における吸収性コア(第1吸収性コア13,第2吸収性コア23)、表面シート30,及び裏面シート40とそれぞれ略同様の素材である。そして、吸収性コア213は、同コア213の崩れを抑制してその外形形状を保つべく、例えばティッシュペーパー等によって構成されるコアラップシート215によって被覆されている。本実施形態の吸収性コア213は、長手方向の両端部の間に、両端部よりも幅方向の幅が狭い括れ部213cを有している。当該括れ部213cは、同コア213の長手方向の中央部分において幅方向の幅が最も狭くなる部分を有している。また、吸収性コア213には、第1実施形態である尿取りパッドおむつ1と同様の中央変形誘導部10S’及び一対の変形誘導領域60’,60’がそれぞれ設けられている。
【0120】
本実施形態では、表面シート216は、
図12Bのように吸収性コア213を巻き込むように幅方向(左右方向)の両側歩が非肌側に折り返されている。また、吸収性本体210の幅方向の両側部には、長手方向に沿って一対の防漏壁部252が設けられている。本実施形態において、防漏壁部252は、防漏壁シート250によって形成されている(
図12B)。防漏壁部252の肌側端部には、長手方向に収縮可能な糸ゴム等の防漏壁弾性部材255(伸縮部材に相当)が長手方向に伸長状態で固定された状態で取り付けられている。おむつ200の着用時には、該防漏壁弾性部材255が発現する伸縮性に基づいて、防漏壁部252が着用者の肌側に起立し、着用者の股間部にフィットする。
【0121】
(胴回り部材220)
胴回り部材220は、
図11に示されるように、厚さ方向の肌側に配置された肌側シート221と、肌側シート221の非肌側に隣接するように積層された非肌側シート232(前側)及び非肌側シート242(後側)とを有する。
【0122】
前側胴回り部230は、肌側シート221と、非肌側シート232と、両者の厚さ方向の間に設けられた胴回り弾性部材235を有する。肌側シート221は、おむつ220の前側胴回り部230から後側胴回り部240まで連続するシート部材であり、例えばSMS不織布等によって形成されている。非肌側シート232は、肌側シート221の非肌側に積層されたシート部材であり、例えばSMS不織布等によって形成されている。非肌側シート232の上端部(前後方向における前側端部)は非肌側から肌側、且つ、前後方向の前側から後側に折り返され、折り返し部232fを形成している。但し、折り返し部232fは必ずしも設けられていなくても良い。
【0123】
胴回り弾性部材235は、糸ゴム等によって構成され、肌側シート221と非肌側シート232との間に、上下方向に間隔を空けて複数配置されるとともに、幅方向に伸長された状態で取り付けられている。この胴回り弾性部材235が発現する伸縮性によって、前側胴回り部230が着用者の腹側胴回りにフィットする。
【0124】
胴回り弾性部材235の取り付けは、何れもホットメルト接着剤等の接着剤を用いて行うことができる。例えば、胴回り弾性部材235に沿って連続的若しくは断続的にホットメルト接着剤を塗布し、所定の伸長倍率で伸長させて肌側シート221と非肌側シート232とで挟み込むことによって胴回り弾性部材235を取り付けることができる。
【0125】
胴回り部材220のうち、後側胴回り部240は、前側胴回り部材230と略同様の構成を有する。すなわち、後側胴回り部420は、厚さ方向の肌側に配置された肌側シート221と、肌側シート221の非肌側に積層された非肌側シート242と、肌側シート221と非肌側シート242との厚さ方向の間に設けられた胴回り弾性部材245を有する。
【0126】
胴回り部材220の外観形状は、前後方向の前側と後側とで一部が異なっている。また、
図10のように、後側胴回り部240のサイド接合部220sよりも上下方向の下側の領域(股下部CA)に、略台形形状の臀部カバー246が設けられている。臀部カバー246は、後側胴回り部240の肌側シート221に非肌側から積層されることによって形成され、上下方向の上側から下側に向かって横方向の幅が狭くなっている。当該臀部カバー246が設けられていることによって、おむつ200の着用時に胴回り部材220が着用者の臀部を広く被覆することが可能となっている。
【0127】
臀部カバー246には、
図10及び
図11に示されるような糸ゴム等の脚回り弾性部材247が設けられている。脚回り弾性部材247は、臀部カバー246の外縁部(すなわち、脚回り開口LHの周縁部の一部)に沿って伸長した状態で肌側シート221と臀部カバー246との間に取り付けられており、該脚回り弾性部材247が発現する伸縮性によって、おむつ200着用時に、臀部カバー246が着用者の臀部にフィットしやすくなり、また、臀部から捲れにくくなる。
【0128】
(前側変形誘導部280)
第2実施形態では、
図12Aに示すように、長手方向における中央位置(CL)よりも前側に、吸収性コア213を厚さ方向に変形するように誘導する前側変形誘導部280が幅方向に一対設けられている。前側変形誘導部280は、吸収性コア213の他の領域と比較して坪量が低くなっている低坪量部である。おむつ200の着用時には、この前側変形誘導部280が折れ曲がりの起点となって、吸収性コア213を厚さ方向に変形するように誘導する。
【0129】
なお、前側変形誘導部280は上述のような低坪量部に限られるものではなく、例えば、吸収性コア213の坪量がゼロとなったスリットや、吸収性コア213の剛性が高くなった高剛性部であっても良い。また、吸収性コア213の所定の部分に折り癖を付けて折れ曲がり変形を生じ易くさせたものや、その他の構成であってもよい。
【0130】
図13は、前側変形誘導部280の配置について説明する吸収性本体210の部分拡大図である。おむつ200において、一対の前側変形誘導部280は、それぞれ、前後方向(長手方向)の前側から後側且つ幅方向の外側から内側へ傾斜する前側傾斜部280aを有する。本実施形態の前側変形誘導部280は、全体が前後方向(長手方向)の前側から後側且つ幅方向の外側から内側へ傾斜しており、すなわち、前側変形誘導部280全体が前側傾斜部280aである。
【0131】
また、前側変形誘導部280の傾斜が開始される点を傾斜開始点280asとして、傾斜開始点280asよりも後側に位置し且つ傾斜が終了する点を傾斜終了点280aeとする。前側傾斜部280aは、傾斜開始点280asと傾斜終了点280aeとの間で直線状に形成されていても良いし、曲線状に形成されていても良い。また、前側変形誘導部280は、前後方向に沿った直線部を有していても良いし、前側変形誘導部280の一部に非連続部分が有っても良い。
【0132】
おむつ200の使用者がおむつ200を着用すると、前側変形誘導部280は着用者の鼠径部に沿った位置に配置され、座位及び立位時において、着用者の脚の動きに合わせて当該前側変形誘導部280の外側の吸収性コア213を内側の吸収性コア213の上部(肌面側)にくるように変形させることができる。それにより、漏れが発生しやすい鼠径部の隙間に吸収性コア213を密着させることができ、漏れを抑制できる。
【0133】
また、
図13に示すように、一対の前側傾斜部280aのうちの一方側(ここでは右側)における傾斜開始点280asと傾斜終了点280aeとを結ぶ直線またはその延長線ET280は、厚さ方向に見たときに(所謂、平面視において)一対の変形誘導領域60’、60’のうちの一方と交差する。このような構成であれば、前側傾斜部280aに加わった変形を誘導する力が、変形誘導領域60’にも伝わりやすく、変形誘導領域60’を起点に吸収性本体(吸収体)210を肌面側に凸状に変形させやすくなる。それにより、吸収性本体(吸収体)210を密着させ易くなる。
【0134】
また、
図12Aに示すように、長手方向において、前側変形誘導部280と、吸収性コア213の括れ部213cと、が重なる部分を有する。括れ部213cは着用者の脚と接触しやすい部位であり、括れ部213cに沿って前側変形誘導部280を設けることで、前側変形誘導部280の外側の吸収性コア213を内側の吸収性コア213の上部(肌面側)にくるように変形させやすい。このような構成により、漏れが発生しやすい鼠径部の隙間に吸収性コア213を密着させて漏れを抑制できる。
【0135】
そして、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、おむつ200の装着時には、おむつ200の吸収体210が中央変形誘導部分10’及び一対の変形誘導領域60’、60’を起点に肌側に凸状となるように変形する。具体的には、おむつ200を装着する際に、吸収体210の幅方向の両側部は着用者の脚と接触しながら引き上げられるため、中央変形誘導部10S’部分が先に股下部と接触するような形となり、その際、吸収体210は、中央変形誘導部分10’及び一対の変形誘導領域60’、60’を起点に肌側に凸状となるように変形する。また、長手方向の一方側(前側)及び他方側(後側)の両方にそれぞれ設けられている変形誘導領域60’、60’は、吸収体10の肌側への凸状変形の長手方向の端部を規定し、すなわち、吸収体210には、第1実施形態と同様に、股間部に対応する中央領域において肌側に凸状となる大きな一つのドーム状の隆起部(不図示)が形成される。そして当該隆起部、及び前側変形誘導部280を起点とする鼠径部に沿った変形により、着用者の身体の形状に沿って広く面で吸収体210を密着させることができ、身体とおむつ200との間に隙間が生じにくくなる。その結果、漏れを抑制することができる。
【0136】
また、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、防漏壁弾性部材255(伸縮部材)よりも幅方向の内側には、長手方向に沿って収縮する他の収縮要素が設けられていないことが望ましい。幅方向の中央部に収縮させる収縮要素がないことで、収縮力が吸収体210の幅方向の中央部には直接及ばず、当該中央部は変形自由度を多く維持でき、尿等の液体を吸収して吸収体210が膨潤したときに吸収体210の変形が許容されやすくなる。
【0137】
図14は、おむつ200の変形例である。
図14に示すように、吸収性本体(吸収体)210は、さらに、幅方向において一対の前側変形誘導部280、280の間に、前後方向(長手方向)に沿った、且つ、変形起点となる前側中央変形誘導部285を有している。前側中央変形誘導部285は、例として、エンボス加工により形成された圧搾溝によって形成されても良い。前側中央変形誘導部285は、そのような圧搾によって吸収性本体(吸収体)210の剛性が変化した領域であり、吸収体210の変形の起点となる。なお、前側中央変形誘導部285は、圧搾溝に限定されず、例えば、幅方向の外側から隣接する領域の液体吸収性素材の坪量(g/m2)よりも低い低坪量部によって形成されてもよい。前側変形誘導部280の外側の吸収体210を内側の吸収体210の上部(肌面側)にくるように変形させつつ、前側中央変形誘導部285を下凸(非肌面側)に変形させることで、漏れが発生しやすい鼠径部の隙間に吸収体210を密着させつつ、前側に空間を形成できる。当該空間は尿を一時的に貯めておく空間として機能し、鼠径部の漏れを抑制できる。
【0138】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0139】
第1実施形態では、吸収性物品の一例として、尿取りパッド1を挙げたが、何等これに限らない。例えば、尿に代えて経血を吸収する生理用ナプキンであっても良い。
【0140】
第1実施形態では、中央変形誘導部10Sを形成する低坪量部10Sは、第1吸収体11と第2吸収体21の両方に設けられていたが、これに限られない。当該低坪量部10Sは、少なくとも第1吸収体11に設けられていればよい。第2吸収体21よりも厚さ方向において肌側に位置する第1吸収体11に低坪量部10Sが設けられていることで、排尿を速やかに吸収体10の内部に拡散することができ、吸収体10の表面に液体が溜まるのを低減し、漏れを抑制することができる。
【0141】
第2実施形態では、吸収性本体(吸収体)210は、前側中央変形誘導部285を有しているが、長手方向の他方側(後側)の変形誘導領域60’、60’よりも長手方向の外側(後側)に、さらに後側中央変形誘導部を有していてもよい。それにより、吸収体210の長手方向の後側においても後側中央変形誘導部を起点として着用者の臀部に沿った吸収性コア213の厚さ方向の変形を促すことができる。
【符号の説明】
【0142】
1 尿取りパッド(吸収性物品)
1C 中央部
10 吸収体
10S 中央変形誘導部(低坪量部)
10S’ 中央変形誘導部
10Sea 前側端部
10Seb 後側端部
11 第1吸収体
11cs 部分
11S 中央変形誘導部
12 第2吸収体
13 第1吸収性コア
13c 括れ部
13cn 括れ開始位置
13cp 括れ開始位置
15 コアラップシート
21 第2吸収体
21S 中央変形誘導部
23 第2吸収性コア
23c 括れ部
23cn 括れ開始位置
23cp 括れ開始位置
23ee 端部
25 コアラップシート
30 表面シート
30e2 端部
30ee2 端縁部
33ds デザインシート
40 裏面シート
40e2 端部
40ee2 端縁部
50 サイドシート
50b 基部(固定された部分)
50f 自由端部分
50fa 前端部
50fb 後端部
52 防漏壁部
55 防漏壁弾性部材(伸縮部材)
57 非肌側伸縮部材(伸縮部材)
60 変形誘導領域
60’ 変形誘導領域
60ct 中央領域
60et 端部領域
60ie 長手方向の内端
60se 長手方向の外端
70 液拡散誘導部
70ie 長手方向の内端
81 ファスナーの雄材
101 おむつ(使い捨ておむつ)
101a 前身頃
101ae2 端部
101b 後身頃
101be2 端部
101m 長手方向の中央部(股下部)
110 吸収体
130 表面シート
140 裏面シート
200 パンツ型使い捨ておむつ
210 吸収性本体(吸収体210)
220 胴回り部材
220s サイド接合部
230 前側胴回り部
240 後側胴回り部
213 吸収性コア
216 表面シート
217 裏面シート
215 コアラップシート
213c 括れ部
221 肌側シート
232 非肌側シート
235 胴回り弾性部材
232f 折り返し部
242 非肌側シート
245 胴回り弾性部材
246 臀部カバー
247 脚回り弾性部材
250 防漏壁シート
252 防漏壁部
255 防漏壁弾性部材(伸縮部材)
280 前側変形誘導部
280a 前側傾斜部
280as 傾斜開始点
280ae 傾斜終了点
285 前側中央変形誘導部
BH 胴回り開口
CA 股下部
LH 脚回り開口
ET280 延長線
【要約】
【課題】着用者の身体の形状に沿って広く面で吸収体を密着させて身体と吸収性物品との間に隙間を生じにくくし、漏れを抑制することができる吸収性物品を提供することにある。
【解決手段】吸収体(10)を備える吸収性物品(1)であって、吸収体(10)は、中央変形誘導部(21S)を有し、吸収体(10)は、一対の変形誘導領域(60)を有し、変形誘導領域(60)は、変形誘導領域(60)のうち吸収体(10)の幅方向の端側に位置する端部領域(60et)が、幅方向の中央側の中央領域(60ct)よりも長手方向の内側に位置し、且つ、変形誘導領域(60)は、吸収性物品(1)の長手方向の中央線と重ならず、吸収性物品(1)の幅方向の両端部、且つ、長手方向の中央部分に、長手方向に伸縮する伸縮部材(55、57)が設けられている。
【選択図】
図3